2003年度

Physica B: Condensed Matter


310952
Development of a spin flipper for an application of a neutron magnetic device
奥隆之* ; 酒井健二* ; 安達智宏* ; 池田一昭* ; 清水裕彦* ; 丸山龍治* ; 日野正裕* ; 田崎誠司* ; 鬼柳善明* ; 加美山隆* ; 岩佐浩克* ; 佐々木敬太* ; 猪野隆* ; 古坂道弘* ; 山崎大* ; 鈴木淳市 ; 海老澤徹*
Physica B: Condensed Matter 335(1-4), p.226-229(2003) ; (JAERI-J 20435)

 中性子ビームを集束・偏極するための超伝導六極磁石への応用を目的として,正接な磁場勾配を与える高周波スピンフリッパーを開発した.このスピンフリッパーは,直径50mmの大きなビーム断面積を持つ4A以上の冷中性子ビームのスピンを制御することが可能である.偏極冷中性子ビームを用いた試験により,高いフリッピング特性が確認された.


310848
Resonant X-ray scattering in KCuF3
高橋学* ; 五十嵐潤一
Physica B: Condensed Matter 329-333(Part2), p.870-871(2003) ; (JAERI-J 20341)

 KCuF3におけるCu K 吸収端における共鳴X線散乱を,LDA+U近似をもちいたバンド計算に基づき研究した.格子歪みはインプットパラメーターとして取り扱った.K-吸収端のまわりの光子エネルギーの関数として,実験スペクトルをよく再現する結果を得た.スペクトルは磁気秩序や軌道秩序とはほとんど関係なく,おもにヤーンテラー歪みの大きさに依存することが明らかになった.


310847
Mechanism of resonant X-ray scattering in DyB2C2
長尾辰哉* ; 五十嵐潤一
Physica B: Condensed Matter 329-333(Part2), p.628-630(2003) ; (JAERI-J 20340)

 共鳴X線散乱と軌道秩序の関係を明らかにするために,DyB2C2の反強四重極秩序相において,Dy LIII吸収端近傍でのスペクトルを計算した.Dyの4f軌道は原子的に,5d軌道はバンドを構成するとした微視的モデルに基づいた計算を行い,格子変形を仮定せずに,最近の実験とよく一致するスペクトルを得ることができた.このことは,この物質では,共鳴X線散乱スペクトルは5d-4fクーロン相互作用の異方的部分により5d軌道が分極することにより生じていることを強く示している.


310762
Charge disproportionation and magnetic properties in perovskite iron oxides
森本かおり* ; 森本正太郎* ; 那須三郎*
Physica B: Condensed Matter 329-333(1-4), p.736-737(2003) ; (JAERI-J 20275)

 ぺロブスカイト型鉄酸化物の物理的性質はFeO6八面体のネットワークに関係している.SrFeO3では起こらない電荷分離(2Fe4+→Fe3+ + Fe5+)が,SrのLaへの置換や次元性の変化によるFeO6八面体のネットワークの切断により発現する.また,Sr3Fe2O7のFeを40%Coに置換すると,磁性は反強磁性から強磁性へと変化し電荷分離も抑制される.


310761
Polarized neutron scattering study of the CuO2 chains in Ca2Y2Cu5O10
松田雅昌 ; 中村充孝* ; 武田全康* ; 加倉井和久 ; 山口博隆* ; 伊藤利充* ; 岡邦彦*
Physica B: Condensed Matter 329-333(1-4), p.711-712(2003) ; (JAERI-J 20274)

 Ca2Y2Cu5O10は辺共有CuO2鎖を有する物質であり,低温において反強磁性相転移を示す.磁気構造は鎖内で強磁性的,鎖間で反強磁性的である.これまでの非偏極中性子回折実験による強度解析からは,磁気モーメントが単純にCu位置に局在してCuO2面に垂直方向(b面)を向いているのではく,O位置にもモーメントが存在することが示唆されていた.しかし,モーメントの方向が決まらないと磁気構造を確定することは困難であった.今回,偏極中性子回折実験を行い,この化合物の磁気構造を詳細に調べ,磁気モーメントの方向がb軸であることを決定した.その結果,モーメントがO位置に拡がった存在することが明らかになった.これは,強磁性CuO2鎖におけるCuとOの強い電子軌道混成によるものである.


310760
Electronic structure and the Fermi surface of UTGa5 (T=Fe, Co, Rh)
眞榮平孝裕* ; 樋口雅彦* ; 長谷川彰*
Physica B: Condensed Matter 329-333(1-4), p.574-575(2003) ; (JAERI-J 20273)

 今回,UFeGa5,UCoGa5と同じHoCoGa5-type tetragonal 結晶構造をもつ重い電子系化合物,URhGa5の電子構造とフェルミ面を相対論的バンド計算に基づいて理論的に明らかにした.得られた電子構造は,フェルミレベル近傍においてUの5f成分とGaの4p成分がよく混成し,スピン−軌道相互作用により,フェルミレベル上方において,バンドが大きく2つのグループに分裂している.また15,16番目のバンドが,それぞれ閉じたフェルミ面を形成し,キャリアー数の計算から補償された金属であるということが理解された.フェルミ面のトポロジーは,Ce-115系やUFeGa5とは異なり,ブリルアンゾーン内の大きな2次元的フェルミ面は形成しないという結果があらたに得られた.


310759
Neutron diffractioin study of 5f itinerant antiferromagnet UPtGa5 and UNiGa5
金子耕士* ; 目時直人 ; Lander, G. H.* ; Bernhoeft, N.* ; 常盤欣文* ; 芳賀芳範 ; 大貫惇睦* ; 石井慶信
Physica B: Condensed Matter 329-333(1-4), p.510-511(2003) ; (JAERI-J 20272)

 5f遍歴反強磁性体UTGa5(T=Ni, Pt)について,粉末中性子回折実験から磁気構造を決定し,加えて温度変化の測定から磁歪について調べた.その結果,両者は酷似した結晶構造を持っているにもかかわらず,磁気モーメントの大きさとともに,c底面内の最隣接間相互作用の符号が異なっていることを明らかにした.またその相互作用の違いに対応して,面内の磁歪も異なっていることを見いだした.このようなことを生じる原因の一つとして,軌道の影響が考えられるが,単結晶を用いた中性子回折実験の結果から,実際に両者では軌道磁気モーメントの凍結の様子が異なっていることを明らかにした.以上の結果から,この系における遍歴性と軌道磁気モーメントの凍結の間に明瞭な関係があることを見いだした.これらの結果について,他の5f化合物との比較検討も含めて行う.


310758
Resonant X-ray scattering study on the filled skutterudite PrFe4P12
石井賢司 ; 稲見俊哉 ; 村上洋一* ; Hao, L.* ; 岩佐和晃* ; 神木正史* ; 青木勇二* ; 菅原仁* ; 佐藤英行* ; 今田真* ; 中尾裕則* ; 澤博* ; 若林裕介*
Physica B: Condensed Matter 329-333(1-4), p.467-468(2003) ; (JAERI-J 20271)

 充填スクッテルダイトPrFe4P12の異常秩序相(TA=6.5K)について共鳴X線散乱による研究を行った.PrのLIII吸収端において,TA以上のbcc構造では禁制であるh+k+l=oddの反射に共鳴散乱が観測された.これらの反射はbccの単位胞中にある2つのPr原子の異常散乱項の差を含んでいることから,この秩序相は電子状態の異なった2つのPr原子が秩序化したものと考えられる.


310757
Formation of carbon nanotubes under conditions of Co+C60 film
Lavrentiev, V.* ; 阿部弘亨 ; 山本春也 ; 楢本洋 ; 鳴海一雅
Physica B: Condensed Matter 323(1-4), p.303-305(2002) ; (JAERI-J 20270)

 コバルトとフラーレンの混合物を蒸着法により作製して,その微細構造や結合状態を電子顕微鏡及びラマン分光法により調べた.その結果,コバルトはフラーレンの高分子化を促進し,さらに高分子化したフラーレンから,コバルト原子の串団子を内部に含むと考えられる炭素ナノチューブを形成した.さらに,このナノチューブからコバルト原子がなくなると,最小直径の0.4 nmの炭素ナノチューブが形成されることを見出した.これらの観察をベースに,コバルト原子が関与する炭素ナノチューブの低温形成の模型を発表・討論する.


310846
Angle-resolved photoemission study of quasi-two-dimensional heavy-fermion compounds CeRhIn5 and CeIrIn5
藤森伸一 ; 井野明洋* ; 岡根哲夫 ; 藤森淳* ; 播磨尚朝* ; 青木大* ; 池田修悟* ; 宍戸寛明* ; 芳賀芳範 ; 常盤欣文* ; 大貫惇睦*
Physica B: Condensed Matter 312-313, p.132-133(2002) ; (JAERI-J 20339)

 重い電子系化合物CeRhIn5とCeIrIn5に対して,角度分解光電子分光実験を行った.得られたスペクトルを,Ce 4f電子を遍歴として取り扱ったバンド計算の結果と比較したところ,Rh, Ir及びInによる状態は計算によって良く再現されたものの,Ce 4f電子の寄与が大きいフェルミ準位付近については一致が良くなかった.


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