2003年度

プラズマ・核融合学会誌


320236
SiC/SiC複合材料を採りいれた核融合動力炉の設計例
西尾敏
プラズマ・核融合学会誌 80(1), p.14-17(2004) ; (JAERI-J 20759)

 将来の核融合炉の構造材料にとってSiC/SiC複合材料は極めて有力な候補材料である.有力であることの内容は,高温運転が可能であることによる高熱効率,低放射化材料であることによる廃棄物処理負荷の軽減及び電磁力が作用しないことによる構造設計の容易さ,である.ここでは,これらSiC/SiC複合材料の利点を活かしたトカマク型動力炉の設計例について紹介する.


320235
2.トカマクにおける電流分布の多様性; 2.2 電流ホール配位の形成機構と閉じ込め特性
滝塚知典
プラズマ・核融合学会誌 79(11), p.1123-1129(2003) ; (JAERI-J 20758)

 トカマクプラズマにおける電流ホールの形成機構を解説する.JT-60Uの実験結果を示す.内部輸送障壁(ITB)が作り出すブートストラップ電流が重要な役割を果たす.電流ホール内の電流密度はほぼ0に保たれる.電流ホールを持つトカマクプラズマの平衡の新概念を紹介する.軸対称三磁気島(ATMI)平衡と呼ばれる配位は3個の磁気島(中心磁気島には負電流,両側の2磁気島には正電流が流れる)がR方向に並ぶ.ATMI領域内の電流値が小さい時,この平衡は安定に維持される.箱型ITBを持つ電流ホール配位における閉じ込め特性について述べる. ITB内側のコアポロイダルベータに関して導出された比例則は平衡限界を示唆している.コア閉じ込めエネルギーが加熱パワーに依存はしていないが, ITB領域で評価された熱拡散係数は新古典拡散係数に適度な相関がある.


320063
日本原子力研究所トリチウムプロセス研究棟(TPL)におけるトリチウムの計量管理; 15年間の実績と研究開発
西正孝 ; 山西敏彦 ; 林巧 ; 山田正行 ; 鈴木卓美
プラズマ・核融合学会誌 79(10), p.1078-1084(2003) ; (JAERI-J 20613)

 原研トリチウムプロセス研究棟(TPL)では核融合炉の燃料プロセス技術及びトリチウム安全取扱技術の研究開発が進められてきた.TPLは1g(約0.36PBq)以上のトリチウムを取り扱うことの許可された国内唯一の施設であり,その運転管理自体が核融合炉施設の開発にとってトリチウム管理の観点から重要である.TPLでは1988年以来,22PBqまでのトリチウムを放射線障害防止法に則って取り扱い,種々の実験を安全に遂行してきた.さらに,TPLでは自主的なトリチウムの計量管理計画を立て,15年間の安全実績を通してその手法を確立した.また,核融合炉でのキログラム規模のトリチウム取扱に備えて計量管理方法の研究を進め,新技術を開発してきた.本報では,ITERのトリチウム燃料システムの工学設計に大きく貢献したこれらTPLの運転実績や研究開発及び今後の課題についてレビューする.


320062
Spectroscopic diagnostics for ITER
杉江達夫 ; Costley, A. E.* ; Malaquias, A.* ; Walker, C.*
プラズマ・核融合学会誌 79(10), p.1051-1061(2003) ; (JAERI-J 20612)

 ITERでは,可視からX線領域の広い波長領域を,受動的及び能動的分光計測システムを駆使して測定し,プラズマの中心,周辺,スクレープオフ層,及びダイバータ領域での,不純物の種類,不純物の密度/流入束,イオン温度,プラズマ回転速度,実効電荷,安全係数等を求める.能動的分光計測の例としては,イオン温度,プラズマ回転速度,不純物密度を測定する荷電交換分光があるが,ITER用に最適化した1MeVの加熱用中性粒子ビームでは,荷電交換断面積が小さくなり測定が不可能である.そのためITERでは,最適なエネルギー100keVの計測専用中性粒子ビームが設置される.加熱用中性粒子ビームは,モーショナル・シュタルク効果偏光計での安全係数分布計測に利用される.一方,計測用ミラー,観測窓,光ファイバーなどの計測機器要素が,現存の核融合実験装置に比べて2桁以上高い放射線(中性子,γ線等)や高エネルギー粒子にさらされ,反射率や透過率などの性能が劣化することが懸念されている.これらの計測機器要素に対する放射線及び粒子照射効果は,ITER工学R and Dの中で精力的に研究され,多くの基礎データが得られ,耐放射線性機器も開発された.分光計測システムは,それらの結果を十分に反映させて,設計が進められている.


320061
Development of fast charge exchange recombination spectroscopy by using interference filter method in JT-60U
小林進二* ; 逆井章 ; 小出芳彦 ; 坂本宜照 ; 鎌田裕 ; 波多江仰紀 ; 大山直幸 ; 三浦幸俊
プラズマ・核融合学会誌 79(10), p.1043-1050(2003) ; (JAERI-J 20611)

 JT-60Uでは従来より分光器とCCDカメラを組合わせた荷電交換分光(CXRS)装置を開発しており,最高16.7ミリ秒でのイオン温度・回転速度計測が行われてきた.今回開発したフィルター法を用いた装置は,中心波長の異なる3つの干渉フィルターに光電子増倍管を組合わせることによって,従来より1桁以上速い時間分解能でスペクトルを分光計測することが可能である.各干渉フィルターを透過する信号の強度比はスペクトル形状を反映しているので,Maxwell分布を仮定し,強度比をあらかじめ計算したうえで実測値と比較することにより,イオン温度・回転速度の時間変化を短時間に評価することができる.ADCのサンプリング時間は最高160マイクロ秒で,最大空間6点の同時計測が可能である.本計測装置をJT-60Uのプラズマに適用したところ,従来の装置では観測できなかった,内部崩壊及び周辺部崩壊におけるイオン温度と回転速度の急速な時間変化を0.8ミリ秒で評価することが可能となった.


311073
JT-60Uにおける電子サイクロトロン加熱・電流駆動技術の進展
森山伸一 ; 池田佳隆 ; 関正美 ; 坂本慶司 ; 春日井敦 ; 高橋幸司 ; 梶原健* ; 諫山明彦 ; 鈴木隆博 ; 福田武司* ; 井手俊介 ; 今井剛 ; 藤井常幸
プラズマ・核融合学会誌 79(9), p.935-944(2003) ; (JAERI-J 20524)

 局所電流駆動によってプラズマ中の磁気的揺動を抑えたり,電流分布を最適に制御することは,より高いプラズマ性能を得るための鍵である.JT-60Uでは電子サイクロトロン加熱装置を用いて加熱及び局所電流駆動の実験を行っている.新型アンテナはポロイダル方向に加えてトロイダル方向にもビームをスキャンできる機能を実現するため,2つの角度可変反射鏡を用いる設計とした.ポロイダルスキャンにより加熱,電流駆動の位置を変化させることができる.この機能を用い,新古典テアリングモード(NTM)の位置を検出し,入射角度をフィードバック制御して揺動を抑制することに成功した.一方トロイダルスキャンは,局所的な逆電流駆動や電流を駆動しない加熱を可能にした.高周波を発振する電子管では,高周波吸収体を内蔵することで寄生発振を抑制して長パルス化が可能になり,2.8MW3.6秒間(約10MJ)という世界最高の入射エネルギーを得た.また,電子管のアノード電圧を高速でON/OFFする技術を用いて従来困難であった入射パワーの変調を可能にし,プラズマの熱パルス伝搬を調べる実験を行うことができた.


311072
Development of supercritical pressure water cooled solid breeder blanket in JAERI
秋場真人 ; 石塚悦男 ; 榎枝幹男 ; 西谷健夫 ; 小西哲之
プラズマ・核融合学会誌 79(9), p.929-934(2003) ; (JAERI-J 20523)

 原研における超臨界圧水を冷却水に用いた核融合発電プラント用ブランケットの設計,開発の現状に関するレビュー論文である.原研では超臨界圧水を用いた核融合発電プラントの概念設計を進めた結果,システムの発電効率として40%以上が得られる見通しを得た.この成果に基づき,発電プラント用ブランケットのより詳細な構造検討を実施した.まず2次元コードを用いてブランケット内の固体増殖・増倍材の温度分布を評価し,各々の充填層の厚さを決定した.これに基づいて2次元輸送コードを用いてトリチウム増殖比の評価した結果,局所で1.4以上,全体で1以上のTBRを得られる見通しを得た.さらに複雑な構造の製作手法として高温等方加圧法を採用して第一壁の模擬試験体を製作し,5000回以上の熱サイクルに耐えることを実証した.


311071
粒子輸送解析
竹永秀信
プラズマ・核融合学会誌 79(8), p.790-804(2003) ; (JAERI-J 20522)

 トロイダルプラズマにおける粒子輸送解析手法についてまとめたものである.粒子束を拡散項と対流項の和で表す粒子輸送モデルを導入し,それらの特性を表す粒子拡散係数と対流速度を評価するために必要な実験手法及び解析手法について説明した.まず最初に,プラズマ内の粒子バランスについて述べ,粒子輸送モデルを説明した.さらに,そのモデルを用いて,簡単な場合の密度分布について考察し,粒子拡散係数と対流速度及び粒子源分布によりプラズマ密度分布が決定されていることを示した.次に,粒子輸送解析に必要な粒子源の評価について,水素原子密度測定法とプラズマ中の水素原子・分子挙動をモデル化したモンテカルロ法によるシミュレーションを組み合わせた解析手法を説明した.これらをもとに,粒子拡散係数と対流速度の導出方法について,解析例を示しながら密度勾配と粒子束の関係を用いた手法,電子密度分布の時間発展計算による手法,及び定常解と摂動法を組み合わせた手法を説明した.また,不純物輸送に関しても,不純物ガスパフ変調法と不純物密度分布の時間発展計算による手法について説明した.


310868
Wave form of current quench during disruptions in Tokamaks
杉原正芳 ; Lukash. V.* ; 河野康則 ; 芳野隆治 ; Gribov, Y.* ; Khayrutdinov, R. * ; 三木信晴* ; 大森順次* ; 嶋田道也
プラズマ・核融合学会誌 79(7), p.706-712(2003) ; (JAERI-J 20361)

 トカマクのプラズマディスラプション時の電流減衰波形に関して,JT-60の実験解析を行い,ITER設計の物理ガイドラインを導出した.速い電流減衰は指数関数的波形でよく表され,遅い電流減衰は直線的波形でよく表される.


311070
熱輸送解析
白井浩
プラズマ・核融合学会誌 79(7), p.691-705(2003) ; (JAERI-J 20521)

 エネルギーバランスの式に基づいたトロイダルプラズマにおける熱輸送解析及び熱輸送シミュレーションの手法をまとめた.ジュール加熱,NBI加熱,RF加熱,α加熱の概要を説明した.エネルギー損失機構の中で,熱伝導損失と放射損失は,それぞれプラズマ中央部及び周辺部において支配的である.トカマクにおいてによって生じる異常輸送は新古典輸送よりもはるかに大きい.輸送を増加させるその他のメカニズムである鋸歯状振動及び磁気島形成についても示す.


310792
乱流と層流が混在した「多階層・複合系プラズマ研究」の展開
岸本泰明 ; 井戸村泰宏 ; Li, J.*
プラズマ・核融合学会誌 79(5), p.478-488(2003) ; (JAERI-J 20305)

 本稿では,時空間スケールを限定した単一の物理階層のみならず,階層間の相互作用が本質的役割を果たす現象の一つである「プラズマ中に発生する乱流と層流」に話題を限定し,多階層・複合概念が核融合プラズマの高性能に果たす役割の一端を紹介する.また,今後の構造形成に準拠した高性能の核融合研究を推進する上で,幅広い時空間スケールを包含する多階層シミュレーション研究の重要性について考察する.


310696
プラズマX線レーザー媒質の高空間分解測定
田中桃子 ; 河内哲哉
プラズマ・核融合学会誌 79(4), p.386-390(2003) ; (JAERI-J 20210)

 X線レーザー媒質における利得領域のターゲット表面からの位置,及びその大きさは,発振線のビーム品質に大きく影響する.例えば,密度勾配が急峻な高密度領域での発振では増幅光が屈折の影響を受けるためX線レーザービームの品質が低下する.そこで,ポンプレーザーの照射条件に対する利得領域の空間分布の相関をおさえることにより,最適なレーザー照射条件を見いだす必要がある.X線レーザー光の強度は媒質プラズマからの自然放出光に比べて数桁強いので,多層膜鏡を用いて像転送することによりX線レーザー光のみの強度空間分布を観測することが可能である.本記事では,波長13.9nmのニッケル様銀X線レーザーの利得媒質プラズマを,モリブデン・シリコン多層膜ミラーを用いた拡大光学系で空間分解分光した結果,利得領域の形状や10μm程度の内部構造を観測することができたことなどを紹介する.


310695
Theoretical EUV spectrum of near Pd-like Xe
佐々木明
プラズマ・核融合学会誌 79(4), p.315-317(2003) ; (JAERI-J 20209)

 次世代半導体リソグラフィのためのEUV光源として注目される,Xeプラズマの発光スペクトルの理論解析を行った.HULLAコードによってXeイオンのエネルギー単位,衝突,輻射過程のレート係数の計算を行い,Whiamコードシステムによってレベルポピュレーションとスペクトル計算を行った.その結果,Xe7+〜Xe18+の4d-4f遷移がほぼすべて11nm帯で発光して強いピークとして観測されるのに対し,4d-5p遷移の波長は価数が高くなるに従って短波長側にシフトすることがわかった.放電励起による低密度プラズマでは,Xe10+の4d-5p遷移がEUV光源として要求されている13.5nm帯で発光することがわかった.


310694
核融合炉トリチウム燃料システム開発; 日米協力14年間の成果
西正孝 ; 山西敏彦 ; 洲亘
プラズマ・核融合学会誌 79(3), p.290-298(2003) ; (JAERI-J 20208)

 日米核融合研究協力協定付属書IVの下における,トリチウム燃料システム開発に関する14年間の日米協力の成果について紹介する.本協力の前半7年間では,米国ロスアラモス国立研究所のトリチウムシステム試験施設(TSTA)の核融合炉実規模の燃料システムを日米共同運転し,総合システムとして技術を実施した.この中で原研の開発した燃料精製システムのシステム構成は,その後の同システムの基本構成となっている.本協力の後半7年間はトリチウム安全工学に関する研究を実施し,核融合炉実規模室内におけるトリチウム挙動の解明,実規模トリチウム除去設備の性能実証等の成果を得た.また,プリンストンプラズマ物理研究所のトリチウム汚染した大型トカマク(TFTR)のトリチウム汚染状況のデータを得るとともに除染技術の開発を行った.これらの成果は,ITER等の核融合炉の燃料システムの設計の基盤となっている.


310568
日本原子力研究所Fusion Neutronics Source(FNS)におけるD-T中性子スカイシャイン実験
西谷健夫 ; 落合謙太郎* ; 吉田茂生* ; 田中良平* ; 脇坂雅志* ; 中尾誠* ; 佐藤聡 ; 山内通則* ; 堀順一* ; 高橋亮人* ; 金子純一* ; 澤村晃子*
プラズマ・核融合学会誌 79(3), p.282-289(2003) ; (JAERI-J 20122)

 核融合炉からのスカイシャインは炉の安全の評価上重要であるが,これまでD-T中性子に対するスカイシャインの実験的評価はほとんどなかった.そこで原研の核融合中性子源FNSを用いてD-T中性子に対するスカイシャインの実験を実施した.FNS第一ターゲット室の天井のスカイシャインの実験用遮蔽ポート(1m×1m)を開放し,上空向かって中性子を打ち上げ,散乱中性子及び2次γ線の分布を線源から 550mまでの範囲で測定した.中性子に対しては,He-3レムカウンタ,BF-3比例計数管,γ線に対しては,大形NaIシンチレータ検出器及びGe半導体検出器を使用した.測定された中性子線量分布に対し,JENDL-3.2を用いたモンテカルロ計算(MCNP-4B)と比較した結果,230mまでは,実験値とよく一致することがわかった.遠方における差異の原因としてはレムカウンターの感度のエネルギー依存性に問題があると考えている.また空中に打ち上げられた中性子を線上中性子源とみなす解析モデルは150mまでよく実験値を再現することがわかった.本実験においては,2次γ線による線量は,中性子による線量の1/50であり,MCNPによる計算と良く一致した.以上により,MCNPによる計算はスカイシャインによる線量を十分な精度で評価できることがわかった.


310693
日本原子力研究所Origin3800システムにおける大規模核融合プラズマシミュレーション及びストレージグリッドの開発
井戸村泰宏 ; 足立将晶* ; 五來一夫 ; 鈴木喜雄 ; Wang, X.*
プラズマ・核融合学会誌 79(2), p.172-187(2003) ; (JAERI-J 20207)

 これまで数値トカマク実験(NEXT)研究計画の下でさまざまな流体コード,粒子コード,あるいは,ハイブリッドコードが開発されてきた.これらのコードには高性能プロセッサー,高速ストレージシステム,及び,高速並列可視化システムから構成されるシミュレーション環境が必要とされる.本論文では,こういった観点から原研Origin3800システムの性能を検証した.性能評価においては,代表的な粒子コードと流体コードは512プロセッサーを用いた並列計算で14〜40%という実効性能が示された.I/OについてはStorage Area Network (SAN)による高速並列データ転送が実現している.並列可視化処理システムに関しては,以前のワークステーションに比べて飛躍的に高速な大規模データの可視化処理が可能になっている.このように原研Origin3800システムでは非常に先進的なシミュレーション環境が実現している.また,最近では遠隔ユーザの利便性を向上するためにストレージグリッドの開発を進めている.ストレージグリッドはSANと波長分割多重伝送装置(WDM)の組み合わせにより構成される.初期テストにより,ストレージグリッドでは従来のデータ転送手法と比較して飛躍的に高速なデータ転送(〜100Gbps)が広域ネットワークを経由して可能であることが示された.


310791
トカマクプラズマにおける高ベータ化
鎌田裕
プラズマ・核融合学会誌 79(2), p.123-135(2003) ; (JAERI-J 20304)

 高ベータ定常化を目指す,トカマクのMHD安定性研究をレビューする.そこでは,プラズマ電流,圧力,回転の空間分布及びプラズマ形状の最適化が主要な役割を果たしている.また,対象とする重要な不安定性は,新古典テアリングモード,抵抗性壁モード,周辺局在化モード等である.経済性に優れた魅力的なトカマク炉を実証するためには,十分な総合性能を持つプラズマでベータ値を高める必要がある.そこでは,自律性の高いプラズマシステムの安定制御が本質的役割を持つ.


310790
エネルギー市場における核融合の経済効果; 核融合導入による経済的インパクト
小西哲之 ; 時松宏治*
プラズマ・核融合学会誌 78(11), p.1192-1198(2002) ; (JAERI-J 20303)

 今世紀後半の核融合エネルギーの寄与を,エネルギーモデルを用いて評価した.核融合の経済的なインパクトは,将来のエネルギー支出の削減,エネルギー市場での売り上げによるGDPの増加,核融合発電関連機器の売り上げの面から評価できる.エネルギー市場での核融合のシェアは,導入時期により大きく異なり,導入時期は核融合が市場での競合可能となるコストを達成する時期によって決められる.この競合可能コストは,他のエネルギー源に対する環境制約の影響が大きい.モデル計算の結果,核融合は環境制約のある場合には大きな市場可能性を持っていること,ことにエネルギー需要が大きく増加する途上国地域への機器輸出の効果が大きいことが見いだされた.この経済効果と比較することにより現在の研究開発の意義を分析することも可能であるが,将来価値は割引率により現在に換算すると大きく減ずる.


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