2003年度

材料と環境


310700
照射誘起応力腐食割れ(IASCC)と研究の動向
塚田隆
材料と環境 52(2), p.66-72(2003) ; (JAERI-J 20214)

 軽水炉の炉内構造材料は,高レベルの中性子・γ線の照射を伴う約300℃の高温高圧水中という他の工業プラントにはない環境で使用され,照射と化学環境の作用により特有の劣化損傷を生じる.中性子照射を受けると,合金のミクロ組織や粒界近傍等の局所的な化学組成は,格子原子のはじき出しに始まる照射損傷過程により刻々と変化する.ここで紹介する照射誘起応力腐食割れ(IASCC: Irradiation Assisted Stress Corrosion Cracking)は,炉内中性子照射の影響により発生するSCC現象である.IASCCの研究は,1980年代中頃に軽水炉高経年化・長寿命化の検討に伴い各国で本格化した.重大な問題へつながるIASCC損傷はこれまで経験されていないが,IASCCの発生と進展のメカニズムについてはまだ十分解明されておらず,さらに基礎的な研究が必要な状況にある.また,IASCCは軽水炉のみならず照射場に水冷却系を有するシステムに共通の材料損傷要因となり得る.例えば,国際熱核融合実験炉ITERの第1壁ブランケット構造物の材料についてもIASCCの検討が行われている.本解説では,IASCCについてこれまでに得られた主な知見と研究の動向を紹介する.


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