2003年度

低温工学


311083
磁気顕微鏡による磁束観測
鈴木淳市 ; 門脇和男* ; 畑慶明* ; 岡安悟 ; 西尾太一郎* ; 掛谷一弘* ; 小田原成計* ; 永田篤士* ; 中山哲* ; 茅根一夫*
低温工学 38(9), p.485-492(2003) ; (JAERI-J 20534)

 最近,微小超伝導体に拘束された量子化磁束が特異な空間秩序を示すことが理論的に明らかとなり,注目を集めている.このような秩序化は,高い空間分解能を有する磁気顕微鏡により観測が可能である.われわれは,微細加工技術を利用した磁気検出コイルサイズの微小化とスタンドオフの縮小により,磁気顕微鏡の高空間分解能化に成功した.そして,この高空間分解能磁気顕微鏡を利用して,Nb,及び,YBa2Cu3O7-d微小超伝導体の量子化磁束配列を観測することにより,量子化磁束配列の変化に対応した磁化の量子振動を明らかにすることができた.


311081
ITERニオブアルミ・インサート・コイルのAE特性
二ノ宮晃* ; 新井和昭* ; 高野克敏* ; 津川一仁* ; 石郷岡猛* ; 海保勝之* ; 中嶋秀夫 ; 奥野清 ; CSモデル・コイル実験グループ
低温工学 38(8), p.425-433(2003) ; (JAERI-J 20532)

 国際熱核融合実験炉(ITER)では大型超伝導コイル・システムの安定な運転が,その成功の鍵を握ると言っても過言ではない.このため,アコースティックエミッション(AE)技術を用いて超伝導コイルの状態を常時監視し,コイル内部の状態を推定することが重要となる.このような観点から,平成12年から14年に渡り実施されたCSモデル・コイル及びNb3Alインサート・コイルを含めた三つのインサ−ト・コイルの通電試験では,AE信号の頻度,強度等を長時間にわたり計測し解析を行った.その結果,AE信号のエンベロープ波形の記録・解析で状態推定が行えること,及び,一定間隔毎に一定量のデータを記録する方法により,長時間に渡って超伝導コイルの状態監視が可能であることが示された.また,AE計測結果からは,これら開発されたコイルが安定した状態で運転されていると判断され,超伝導コイルの技術開発成果を裏付ける結果を得た.


311082
ITERニオブアルミ・インサート・コイルのAE特性
二ノ宮晃* ; 新井和昭* ; 高野克敏* ; 津川一仁* ; 石郷岡猛* ; 海保勝之* ; 中嶋秀夫 ; 奥野清 ; CSモデル・コイル実験グループ
低温工学 38(8), p.425-433(2003) ; (JAERI-J 20533)

 ITER計画の一つであるCSモデル・コイルとTFインサート・コイル試験は2001年9月から約一ヶ月かけて実施された.このTFインサート・コイルはトロイダル磁場発生用の9ターンのコイルであり,ロシア・エフレモフ研究所にて開発された.試験において内部から発生するAE信号を受動的に計測する手法を用いて,TFインサート・コイルの機械的擾乱量の推移とコイルの安定性を評価する.計測手法はAE信号のエネルギー強度,イベント数と電圧,電流などの他の計測信号とを同時に測定してコイルの機械的な安定性について検討した.その結果,TFインサートのAE特性は,明確なトレーニング現象を示すことが明らかになった.このことにより,同コイルの機械的な安定性は高いことが示された.


310970
Nb3Al導体の電磁力下での圧力損失特性; 圧力損失特性と撚線剛性の関係
濱田一弥 ; 松井邦浩 ; 高橋良和 ; 中嶋秀夫 ; 加藤崇 ; CSモデル・コイル実験グループ
低温工学 38(8), p.417-424(2003) ; (JAERI-J 20453)

 日本原子力研究所は, ITERの工学設計活動の一環として,Nb3Alインサート・コイル等を製作し,13Tの磁場下で国際共同実験を行った.これらの実験の結果,通電中の導体の圧力損失の変化を調べることによって,コイル状態では見ることのできない導体内部の撚線の動きを推測できることが明らかとなった.今回,Nb3Sn素線とは機械的性質が異なるNb3Al線材を用いた導体について,電磁力に対する圧力損失の挙動に注目して圧力損失を測定し,過去に行われた導体の測定結果とともに解析してまとめた.その結果,(1)定常状態における圧力損失は,Nb3Snを使用した導体とNb3Al導体は,撚線構造が同じであれば,同様の特性を示すことがわかった.(2)同じ撚線構造でも,圧力損失特性にはばらつきが見られる.これは4次撚線とジャケット,中心チャンネル間に発生する隙間の効果であり,撚線ピッチが長い導体に発生し易いと考えられる.(3)圧力損失に対する電磁力の影響は,同じ撚線構造のNb3Sn導体よりもその影響は小さく,Nb3Al撚線は剛性が高いことがわかった.(4)ボイド率が小さくなるにつれて,圧力損失に対する電磁力の影響は少なくなり,撚線の動きを低減できることが明らかとなった.


311080
ケーブル・イン・コンジット導体の交流損失特性; 撚線の機械的特性が結合損失の減衰に及ぼす影響
松井邦浩 ; 高橋良和 ; 小泉徳潔 ; 礒野高明 ; 濱田一弥 ; 布谷嘉彦 ; CSモデル・コイル実験グループ
低温工学 38(8), p.410-416(2003) ; (JAERI-J 20531)

 ITER計画の一環として,中心ソレノイド・モデル・コイル,CSインサート・コイル,Nb3Alインサート・コイルを製作し,2002年までにそれらの試験を実施した.これらのコイルの交流損失測定は,コイルの特性を明らかにするために重要な試験項目の一つである.CSインサート・コイルとNb3Alインサート・コイルの交流損失を,それぞれ熱量法及び磁化法で測定した.両コイル内には,複数の時定数を持つ結合損失が存在し,コイルに取り付けられた電圧タップやホール素子で循環電流が観測された.結合損失は,素線間の焼結が電磁力を受けることで剥がれ,素線間の接触抵抗が大きくなり,ある減衰定数をもって指数函数的に減少した.また,圧力損失の測定及び解析結果より,撚線とコンジットの間に電磁力により発生する隙間が,導体内を流れる冷媒の圧力損失に依存することが示されている.本論文では,結合損失の減衰定数が導体内に発生する隙間に依存することを明らかにした.仮に,コイルの本運転前にこの減衰定数を知ることができ,減衰定数に相当する電磁力をコイルに加えることができるならば,コイルの運転開始時には損失が低下した状態で使用することが可能となる.


311079
Nb3Alインサート・コイルの臨界電流性能評価
小泉徳潔 ; 布谷嘉彦 ; Takayasu, Makoto* ; 杉本誠 ; 名原啓博 ; 押切雅幸* ; CSモデル・コイル実験グループ
低温工学 38(8), p.399-409(2003) ; (JAERI-J 20530)

 トロイダル磁場コイルへのNb3Al導体とReact-and-wind法の適用性を実証するために,Nb3Alインサート・コイルを開発した.本コイルの導体には,熱処理後0.4%の曲げ歪を印可した.臨界電流値試験の結果,Nb3Alインサート・コイル導体の素線に加わった実効歪は,素線とコンジットの熱歪差に起因する成分が-0.4%,導体の曲げに起因する成分がほぼゼロと評価できた.後者は,予想よりも小さかったが,Nb3Al導体を用いたReact-and-wind法の適用性を実証するとともに,Nb3SnコイルへのReact-and-wind法の適用性も示唆した.さらに,Nb3Alインサート・コイル導体と同規模のNb3Sn導体では,電磁力が増加するに従って臨界電流値が低下する現象が観測されたが,Nb3Alインサート・コイルでは,このような予想外の臨界電流性能の劣化は観測されなかった.これは,Nb3Al線の剛性が高い,及びその臨界電流値の歪に対する低下度が小さいためと考えられた.これは,Nb3Al導体が,高磁場,大電流応用に適していることを示す.また,導体内の電流分布について解析し,その臨界電流値の評価への影響を考察した.その結果,本影響が小さいことを明らかにした.


311078
核融合炉応用を目指したNb3Al導体の開発と大型超電導コイルへの適用
小泉徳潔 ; 奥野清 ; 中嶋秀夫 ; 安藤俊就* ; 辻博史
低温工学 38(8), p.391-398(2003) ; (JAERI-J 20529)

 原研は,1980年代にNb3Al導体の開発を開始し,1990年代終りには約1トンのNb3Al線を製造し,150m長の大電流Nb3Al導体を開発した.本導体を用いてNb3Alインサート・コイルを開発し,試験した.本コイルの開発では,コイル端子の電気的接続部の開発や,従来の知見では予想されていなかった熱応力への対処法の考案等を行った.さらに,Nb3Alインサート・コイルの製作では,Nb3Al線の歪による臨界電流値の低下が小さいことを利用して,Nb3Al生成熱処理後に巻線加工を行うことで,コイル製作方法を簡易にする手法を採用した.この手法の適用性検証のため,熱処理後の導体に人為的に曲げ歪を印加した.このようにして,2001年1月にNb3Alインサート・コイルの製作を完了し,2002年4月に通電試験を行った.その成果として,46kA-13Tの定格励磁に成功した.また,60kA-12.5Tの拡張試験も行い,大きな電磁力の下でも,コイルを安定に運転できることを実証した.さらに,熱処理後の導体の曲げの臨界電流性能への影響も十分小さく,コイル製作方法の簡易化が可能であることを示した.


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