2003年度

Chemical Physics Letters


320014
Quantum path-integral molecular dynamics calculations of the dipole-bound state of the water dimer anion
志賀基之 ; 高柳敏幸
Chemical Physics Letters 378(5-6), p.539-547(2003) ; (JAERI-J 20564)

 水ダイマーアニオンについての平衡構造を経路積分分子動力学法によって計算した.過剰電子と原子核の運動の両方を量子力学的に取り扱った.水−水のポテンシャルは半経験的な関数を,電子−水の擬ポテンシャルについては,最近開発された解析関数を用いた.電子が水ダイマーに付加すると,クラスターの構造が極めてフロッピーになることが計算によって示された.特に,ドナー交換,ドナー−アクセプター交換が量子力学的トンネル効果によって,容易に起こる事がわかった.このことは,核と電子の運動を分離するボルンオッペンハイマー近似が成り立たなくなっていることを示唆するものである.


310517
Theoretical study of hydrolysis reactions of tetravalent thorium ion
岡本穏治* ; 望月祐志* ; 津島悟*
Chemical Physics Letters 373(1-2), p.213-217(2003) ; (JAERI-J 20071)

 4価トリウムイオンは,pHが3よりも大きい条件では容易に加水分解反応(Th4++4H2O←Th(OH)22++2H3O+)を起こすことが古くから知られているが,反応の活性障壁,反応熱,電子分布の変化などの詳細については未知のまま残されていた.本研究では,非経験的分子軌道計算により,トリウムイオンと水の集合体から成るクラスターモデルを系統的に拡大させながら,反応をシミュレートした.計算から,反応が大きな発熱を伴うこと,始原系に近い遷移状態構造を持つこと,協調的に電子移動が起きることなどが示された.


310516
On the electronic structures of Th4+ and Ac3+ hydrate models
望月祐志* ; 津島悟*
Chemical Physics Letters 372(1-2), p.114-120(2003) ; (JAERI-J 20070)

 アクチニドの代表的な4価イオンであるトリウム(Th4+)の水和モデルをDirac-Hartree-Fock法によって計算し,電子構造を詳細に調べた.比較のため同じ5f0イオンであるAc3+のモデルも同様に計算した.Th4+の場合,空の6dや5f殻への水側からの電子供与が大きいが,合わせて準内殻の6pに「孔」が開き,これにより水側の電子構造も影響を受けていることがわかった.また,有効ポテンシャル近似に誘電体水和場法を組み合わせた計算も併せて行い,妥当なTh-O距離を得るにはバルクの水和場の考慮が重要であることも示した.


310515
Photodissociation of acetaldehyde, CH3CHO→CH3+HCO; Direct ab initio molecular dynamics study
黒崎譲 ; 横山啓一
Chemical Physics Letters 371(5-6), p.568-575(2003) ; (JAERI-J 20069)

 UB3LYP/cc-pVDZレベルでの直接非経験的分子動力学法を用いて,T1ポテンシャル面上での光分解反応,CH3CHO→CH3+HCO,について全部で400本のトラジェクトリを計算した.その結果,反応生成物であるCH3は振動,回転ともに励起しないが,HCOは振動励起しないものの回転励起することが予測された.トラジェクトリ計算の結果を平均するとHCOの回転エネルギーは1.1kcal/molとなり,これは利用可能なエネルギー,7.3kcal/molの15.1%にあたる.本計算結果は実測値と数%の誤差で一致している.


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