2003年度

Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry


310941
Measurement and evaluation of k0 factors for PGA at JAERI
松江秀明 ; 米澤仲四郎
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 257(3), p.565-571(2003) ; (JAERI-J 20424)

 中性子即発γ線分析(PGA)は,他の方法では困難なH,B,N,S等の軽元素を含む多元素を非破壊で定量することができる.PGAの元素定量法として,元素の相対感度比を検出効率で規格化して求められた汎用的な校正係数(k0係数)によって多元素を定量するk0法を開発した.JRR-3Mの冷及び熱中性子ビームを使用し,Clを内標準とする27元素のk0係数を3%の精度で測定した.得られたk0係数の正確さを,(1)他の施設で測定された係数との比較,(2)計算値との比較,(3)標準物質の分析によって評価した.その結果,大部分の1/v元素では10%以下であった.Cd,Sm等の非1/v元素は中性子スペクトルの影響を受け,装置間で10%以上の違いが認められた.今後これらの元素について中性子スペクトルの補正法の開発が必要である.開発したk0-PGA法を各種標準物質の分析に応用した.


310605
Study of particle size distribution and formation mechanism of radioactive aerosols generated in high-energy neutron fields
遠藤章 ; 佐藤薫 ; 野口宏 ; 田中進 ; 飯田孝夫* ; 古市真也* ; 神田征夫* ; 沖雄一*
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 256(2), p.231-237(2003) ; (JAERI-J 20140)

 高エネルギー中性子場で発生する放射性エアロゾルの生成機構を解明するために,DOPエアロゾルを浮遊させたアルゴン及びクリプトンガスを45MeV及び65MeVの準単色中性子ビームを用いて照射し,生成される38Cl,39Cl,82Br及び84Brエアロゾルの粒径分布を測定した.生成される放射性エアロゾルの粒径分布に対して,添加するDOPの粒径,照射に用いる中性子ビームのエネルギーの影響,また,生成される核種による粒径分布の違いを検討した.その結果,実測された放射性エアロゾルの粒径分布は,中性子照射による核反応で生成された放射性核種がDOPエアロゾルの表面に付着するモデルを用いて解析できることを明らかにした.


310547
Migration mechanisms of 237Np and 241Am through loess media
田中忠夫 ; 向井雅之 ; 前田敏克 ; 松本潤子 ; 小川弘道 ; Li, Z.* ; Wang, X.* ; Fan, Z.* ; Guo, L.* ; Liu, C.*
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 256(2), p.205-211(2003) ; (JAERI-J 20101)

 中国山西省から採取した黄土中における237Np(V)及び241Am(III)の移行実験をカラムシステムで実施するとともに,NpとAmの黄土への吸着メカニズムを溶媒抽出法で調べた.カラムへ流入したNpのほとんどはカラム流入端に吸着し,その吸着は表面錯体形成に基づくことがわかった.また,黄土層中におけるNpの移行は分配係数モデルでおおむね評価できることを示した.一方,Amは流入液中で粒子状化学種を形成し,移行する間に黄土層によって捕獲されることがわかった.そのような粒子状Am化学種の移行は濾過理論で説明できることを示した.


310384
Determination of elemental composition of airborne dust and dust suspended in rain
宮本ユタカ ; 齋藤陽子 ; 間柄正明 ; 臼田重和
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 255(3), p.553-557(2003) ; (JAERI-J 19962)

 核物質や放射性核種,公害物質などが環境に与える評価の指標となり得る大気浮遊塵について,浮遊塵の組成に及ぼす天候の影響や起源を調べるために,東海研においてエアーサンプラーで連続的に大気浮遊塵を捕集した大気浮遊塵の元素組成を中性子放射化分析法で定量した.その結果,元素濃度の変動から定量元素を3つのグループに分けることができた.この濃度パターンの違いは降雨による影響を反映しているものと思われる.


310383
Production of endohedral 133Xe-fullerene by ion implantation
渡辺智 ; 石岡典子 ; 関根俊明 ; 長明彦 ; 小泉光生 ; 下村晴彦* ; 吉川広輔* ; 村松久和*
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 255(3), p.495-498(2003) ; (JAERI-J 19961)

 イオン注入法による放射性原子内包フラーレンの生成の可能性を調べることを目的として,内包原子として133Xeを用い,イオン注入法による133Xe内包フラーレンの生成を行った.Ni基盤上に蒸着したC60またはC70をターゲットとし,同位体分離器により133Xeを40keVでイオン注入した.照射後のターゲットをo-ジクロロベンゼンに溶解した後,HPLCカラムに通し,溶出液中のC60またはC70をUV検出器で,133Xeの放射能をGe検出器でそれぞれ測定した.得られた溶離曲線に,133XeとC60またはC70とのピークの強い相関が見られたことから,133Xe内包フラーレンが生成していると結論付けた.また,133Xeピークにテーリングが見られた.このテーリングは,空のフラーレンからの133Xe内包フラーレンの単離の可能性を示した.


310458
Association of Am with humic substances isolated from river waters with different water quality
長尾誠也* ; 藤嶽暢英* ; 児玉宏樹* ; 松永武 ; 山澤弘実
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 255(3), p.459-464(2003) ; (JAERI-J 20024)

 腐植物質のような高分子の有機物は環境中において微量元素及び放射性核種との錯体の配位子として重要であることは広く認識されている.腐植物質は生成される環境によりその構造,官能基等の特性が異なるため,放射性核種等との錯形成,錯体の特性が変動する可能性が考えられる.しかしながら,腐植物質は天然水中には微量にしか存在しないこと,分離精製には大量の天然水の処理が必要なために多くの労力と時間がかかること,さらに腐植物質の特性分析には各種の分析法が必要なために,放射性核種等と腐植物質との錯体特性に関する検討はそれほど進んではいない.本研究では,水質の異なる4つの河川水から分離精製した腐植物質を用いて,Amとの錯体特性を分子サイズの観点より比較検討した.その結果,Amの分子サイズ分布は,フミン酸共存下では2つのパターン,フルボ酸存在下では3つのパターンに分類された.この分類は,フミン酸及びフルボ酸自体の分子サイズ分布のパターンに相当していた.このことは,腐植物質の特性がAmとの錯形成を支配していることを示唆している.


311039
Isothermal gas chromatography of chlorides of Zr and Hf as Rf homologs
金子哲也* ; 小野佐和子* ; 後藤真一* ; 羽場宏光* ; 浅井雅人 ; 塚田和明 ; 永目諭一郎 ; 工藤久昭*
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 255(2), p.381-384(2003) ; (JAERI-J 20490)

 超アクチノイド元素のオンライン気相化学研究に向けて等温ガスクロマトグラフ装置の開発を行った.本装置を用いて,超アクチノイド元素ラザフォージウムRf(原子番号104)のモデル実験として周期表同族元素と考えられるジルコニウムZr,ハフニウムHfの等温クロマトグラフ挙動を求めた.


310457
Atmospheric deposition of 7Be, 40K, 137Cs and 210Pb during 1993-2001 at Tokai-mura, Japan
上野隆 ; 長尾誠也 ; 山澤弘実
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 255(2), p.335-339(2003) ; (JAERI-J 20023)

 放射性核種の地表面への移行を評価するため,1993年から2001年まで東海村の原研構内において水盤により降下物の採取を行った.月ごとの降下物試料を蒸発法により前処理して残査試料を得た.それらの試料中の天然及びフォールアウト核種を井戸型Ge検出器により測定した.測定結果の解析により,早春に降下物量が多くなることを明らかにした.40K及び137Csの降下量は降下物の重量と良い相関を示すが,7Be及び210Pbの降下量はより低い相関であった.この違いは2つのグループの核種の起源の違いに依っている.また,降下物中の各核種の濃度における特徴は,発生から輸送及び沈着までに関係する粒子の大きさと輸送及び沈着過程における異なるメカニズムと起源の違いによるものと考えられる.


310382
Variation of 14C, 137Cs and stable carbon composition in forest soil and its implications
Guo, J.* ; 安藤麻里子 ; 天野光
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 255(1), p.223-229(2003) ; (JAERI-J 19960)

 本研究では,14Cの表層環境中挙動を評価するために,茨城県内3地点の未攪乱森林土壌において,有機物含有量,δ13C値,14C,137Csの土壌中深度分布を測定・解析した.137Cs比放射能のピークは3地点でともに地表から5-10cmの所に存在した.137Csのフォールアウトは1963-1964年に最高値を示していたことが知られていることから5-10cmの深さが1964年近くに対応していることがわかる.14C比放射能は,高速燃焼−二酸化炭素吸収−液体シンチレーション測定法により測定した.14C比放射能も同様に上層10cmまでにピークが存在したが,そのピークは137Csのピークよりも上方にずれる傾向を示し,14Cが137Csより地表を循環する傾向が強いことを示唆している.


310381
Depth profiles of long lived radionuclides in Chernobyl soils sampled around 10 years after the accident
天野光 ; 小沼義一*
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 255(1), p.217-222(2003) ; (JAERI-J 19959)

 チェルノブイル事故炉周辺30km圏で採取した土壌につき,Cs-127,Sr-90,及びPu同位体の土壌中深度分布と存在形態を調べた.存在形態は,化学的分画法である選択的抽出法によった.調べた土壌は,砂質土,ピート土,及びポドゾル土である.ポドゾル土については,汚染が燃料の微細粒子であるホットパーティクルによるものと,Cs-137についていわゆる凝縮成分と呼ばれているものとについても調べた.事故後10年以上経過しているが,汚染の初期形態の如何にかかわらず調査した放射性核種の大部分は依然として表層に留まっている.一方,少量であるが下方浸透する成分も存在している.核種ごとの特徴として,ホットパーティクルから溶け出した後,各核種は主にイオン交換的に下方浸透し,土壌マトリックスと反応する.Cs-137はピート土のような有機性土壌では浸透が大きく,一方Pu同位体は腐植物質のような有機物と結合性を有する,などがわかった.


310380
Neutron spectrum correction of k0-factors for k0-based neutron-induced prompt γ-ray analysis
松江秀明 ; 米澤仲四郎
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 255(1), p.125-129(2003) ; (JAERI-J 19958)

 k0-中性子即発γ線分析法(k0-PGA)は,内標準法に基づき,比較標準試料を使用しないで多元素を正確に定量できる.われわれはk0-PGAの検討を行い,27元素のk0係数を測定してきた.K0係数は他の施設でも共用でき,核データからも計算可能である.しかし,現在利用可能な核データ集としてLoneのデータがあるが,十分ではない.このため,昨年度よりIAEAの主催する国際共同研究「中性子即発γ線分析のためのデータベースの開発」においてk0係数の測定,及び必要な核データの評価が始められた.その一環として,ハンガリー同位体及び表面化学研究所(IKI)のグループが79元素のk0係数を報告し,また,ローレンス・バークレイ国立研究所(LBNL)及びIKI共同で軽元素の核データが公開された.本研究では,演者らの測定値とIKIのk0係数,LBNL-IKI及びLoneのデータから計算したk0係数を比較しk0係数の正確さの評価を行った.


310379
Non-destructive determination of trace amounts of iodine in biological samples by epithermal neutron activation and Compton suppression γ-ray spectrometry
米澤仲四郎 ; 松江秀明 ; 湯川雅枝*
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 255(1), p.105-109(2003) ; (JAERI-J 19957)

 放射線防護,栄養学及び生物の代謝研究等において重要な,微量ヨウ素を正確に分析するため,熱外中性子放射化とコンプトンサプレッションγ線スペクトロメトリーによる非破壊定量法の検討を行った.分析は,試料をJRR-4の気送管照射設備で熱外中性子照射し,直ちにGe-BGO検出器を使用したコンプトンサプレッション型γ線スペクトロメーターによってγ線を測定する方法によって行った.熱外中性子照射により,微量ヨウ素の定量に妨害する38Clと24Naの生成量とそのコンプトンバックグラウンド計数値が大幅に抑制され,ヨウ素の検出限界は通常の熱中性子放射化とγ線測定では2600ppbであるのに対し,熱外中性子放射化により450ppb,さらにコンプトンサプレッション測定により14ppbまで改善することができた.確立した分析法により,甲状腺,食事試料,ミルク粉末,牛の筋肉等の各種生体試料中の数十ppb以上のヨウ素を定量した.


311038
Characteristics of asymmetric mass distribution in proton-induced fission of actinides
後藤真一* ; 加治大哉* ; 西中一朗 ; 永目諭一郎 ; 市川進一 ; 塚田和明 ; 浅井雅人 ; 羽場宏光* ; 光岡真一 ; 西尾勝久* ; 阪間稔* ; Zhao, Y.* ; 末木啓介* ; 谷川勝至* ; 高宮幸一* ; 工藤久昭* ; 中原弘道*
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 255(1), p.73-76(2003) ; (JAERI-J 20489)

 核分裂における質量収率分布と分裂片殻構造の相関について,233Th,233,235,238Uの陽子誘起核分裂を用いて調べた.分裂片の質量収率分布は二重飛行時間法を用いて高精度で求めた.非対称質量分布の収率が分裂片の原子番号50に基づく殻構造の影響を強く受けていることを明らかにした.


311037
Primary fragment mass-yield distributions for asymmetric fission path of heavy nuclei
Zhao, Y. L.* ; 西中一朗 ; 永目諭一郎 ; 塚田和明 ; 末木啓介* ; 後藤真一* ; 谷川勝至* ; 中原弘道*
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 255(1), p.67-72(2003) ; (JAERI-J 20488)

 233Pa,239Np,245Am,249Bkの励起エネルギー20MeVの非対称質量分裂における初期分裂片の質量分布を調べた.質量分布は,分裂核の質量数が大きくなるにしたがつて非対称性の小さくなる傾向を示す異なる形状であった.これらの質量分布の比較から,重い分裂片の質量分布ピークの小さい質量数側の裾が,質量数130近辺に収束することを見いだした.質量数130は陽子数50の魔法数に相当し,球形の殻構造を持つことから,重核の非対称核分裂において分裂片の球形殻構造が大きな役割を果たしていることがわかった.


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