2003年度

Nuclear Fusion


320198
Performance of ITER as a burning plasma experiment
嶋田道也 ; Mukhovatov, V.* ; Federici, G. * ; Gribov, Y.* ; Kukushkin, A. S.* ; 村上好樹 ; Polevoi, A. R.* ; Pustovitov, V. D.* ; 仙石盛夫 ; 杉原正芳
Nuclear Fusion 44(2), p.350-356(2004) ; (JAERI-J 20721)

 ITERの誘導運転において10以上のQを達成することの確実性をさらに向上させた.経験則による解析によると,ITERでは十分な裕度をもって10以上のQを達成できる.理論モデルを用いた解析によれば,10以上のQを達成するためには3.2-5.3keV以上の周辺ペデスタル温度が必要であるが,ペデスタルの比例則によると,この程度のペデスタル温度は達成可能である.タイプIのELMに伴う熱負荷は高密度運転によって許容範囲に低減できる可能性がある.もし必要であればダイバータ板をさらに傾斜させ,さらに熱流束密度を低減させることもできる.高磁場側からペレット入射によってQを増加させELM熱負荷を低減できる可能性がある.また閉じ込め性能とベータ値への要求度がより少ない定常運転シナリオを開発した.このような運転領域で必要となる抵抗性壁モードの安定化は,真空容器が二重構造を持つことを考慮しても現有のコイル及び電源で実現可能であることを明らかにした.


320197
Advanced fusion technologies developed for JT-60 superconducting Tokamak
逆井章 ; 石田真一 ; 松川誠 ; 秋野昇 ; 安藤俊就* ; 新井貴 ; 江里幸一郎 ; 濱田一弥 ; 市毛尚志 ; 礒野高明 ; 神永敦嗣 ; 加藤崇 ; 河野勝己 ; 菊池満 ; 木津要 ; 小泉徳潔 ; 工藤祐介 ; 栗田源一 ; 正木圭 ; 松井邦浩 ; 三浦友史 ; 宮直之 ; 三代康彦 ; 森岡篤彦 ; 中嶋秀夫 ; 布谷嘉彦 ; 及川晃 ; 奥野清 ; 櫻井真治 ; 笹島唯之 ; 佐藤和義 ; 清水勝宏 ; 竹治智* ; 竹永秀信 ; 玉井広史 ; 谷口正樹 ; 飛田健次 ; 土屋勝彦 ; 浦田一宏* ; 柳生純一
Nuclear Fusion 44(2), p.329-334(2004) ; (JAERI-J 20720)

 超伝導トカマク装置へのJT-60改修が計画されている.原型炉に繋がる先進的な核融合技術として,JT-60改修装置(JT-60SC)の設計のために超伝導マグネット技術やプラズマ対向機器を開発した.JT-60SCの超伝導トロイダル磁場コイル用として,高い臨界電流密度を可能とする,高い銅比4のニオブアルミ超伝導素線を新規に開発し,量産化に成功した.この素線と,突合せ溶接で作った全長30 mの丸穴四角のステンレス製コンジットを用いて,実機サイズのケーブル・イン・コンジット導体を製作した.この導体を用いて,リアクト&ワインド法(熱処理後に巻線作業を行う製作方法)を実証するR&Dを進めた.ニオブアルミ導体の歪み劣化が小さいことを利用したこの製作方法は,将来の大型コイル製作の技術的な信頼性向上と低コストに繋がる先進的な超伝導技術として注目されている.JT-60SCのダイバータへの熱負荷10-15MW/m2に耐える機器として,スクリュウ管を銅製ヒートシンクに設け,これと炭素繊維複合材,緩衝材を一体ロウ付けすることで,良好なプラズマ対向機器を開発した.電子ビーム照射試験により,この対向機器は従来のスワール管の場合と比較して約1.5倍の高い熱伝達率を達成することを明らかにした.


320195
Design and technology development of solid breeder blanket cooled by supercritical water in Japan
榎枝幹男 ; 古作泰雄 ; 秦野歳久 ; 黒田敏公* ; 三木信晴* ; 本間隆 ; 秋場真人 ; 小西哲之 ; 中村博文 ; 河村繕範 ; 佐藤聡 ; 古谷一幸 ; 朝岡善幸* ; 岡野邦彦*
Nuclear Fusion 43(12), p.1837-1844(2003) ; (JAERI-J 20718)

 本論文は,高い経済性を有する核融合発電プラント用ブランケットの設計と開発に関するものである.高い経済性と実現性の双方を有する発電ブランケットとして,超臨界圧水冷却方式の固体増殖ブランケットの概念設計を明らかにした.最重要設計項目として,モジュール構造の核特性,熱機械特性に関し基本的な成立性を示した.また,発電システムとして41%以上の発電効率を有することを示し,本方式の経済的な魅力を明らかにした.また,構造体製作技術開発の成果としては,実機構造を模擬する第一壁パネル試験体を用いて,原型炉で想定している最高熱負荷1MW/m2に相当する加熱試験を行い,試験体が母材と同等の熱疲労寿命を持つことを実証した.さらに,ブランケット熱設計の要となる増殖材充填層の有効熱伝導率研究に関しては,湿式法で製造したLi2TiO3を用いて,充填層の有効熱伝導率を明らかにし,裕度のある設計を可能とした.


320194
Neural-net disruption predictor in JT-60U
芳野隆治
Nuclear Fusion 43(12), p.1771-1786(2003) ; (JAERI-J 20717)

 JT-60のデータを用いてニューラルネットによるディスラプション予測の研究を行った.「プラズマ安定度」という新しい基準を導入し,かつ従来の方法とは異なる2段階でニューラルネットを教育する新しい方式を開発した.これにより,密度限界,プラズマ電流低減時の高内部インダクタンス,低密度ロックドモードによって発生するディスラプションについて,30ms以前に約90%の予測成功率を約2%の予測失敗率のもとで得ることができた.「プラズマ安定度」を導入したことにより,初めて,各予測時点における予測成功率を評価し,予測成功率と予測失敗率との関係を明らかにした.この結果として,ディスラプション予測の高精度化への道を拓いた.


320193
Overview of JT-60U results leading to high integrated performance in reactor-relevant regimes
藤田隆明 ; JT-60チーム
Nuclear Fusion 43(12), p.1527-1539(2003) ; (JAERI-J 20716)

 高総合性能に向けての最近のJT-60Uの結果を炉心相当条件への見通しに力点をおいて報告する.負イオン源中性粒子ビーム及び電子サイクロトロン波のパワーはそれぞれ,6.2MW,3MWに達した.完全非誘導電流駆動の高ポロイダルベータHモードが1.8MAで得られ,核融合三重積は3.1E20m-3keVsに達した.実時間制御を用いた新古典テアリングモードの抑制に成功し,規格化ベータの改善が得られた.電流ホールの安定な存在が観測された.DT等価核融合エネルギー増倍率0.8を0.55秒間維持した.負イオン源中性粒子ビーム及び低域混成波を用いて高自発電流割合の負磁気シアプラズマにおける電流分布制御を実証した.中心ソレノイドコイルを用いずに高い自発電流割合及び内部輸送障壁を有するプラズマを生成する新しい運転シナリオを開発した.新しいタイプのアルヴェン固有モードを提案し,それにより観測された周波数の時間的変化を説明できることがわかった.高ポロイダルベータモードにおいて電子サイクロトロン波によりアルゴンを排出した.


320034
Achievement of high fusion triple product, steady-state sustainment and real-time NTM stabilization in high-βp ELMy H-mode discharges in JT-60U
諫山明彦 ; 鎌田裕 ; 林伸彦 ; 鈴木隆博 ; 及川聡洋 ; 藤田隆明 ; 福田武司 ; 井手俊介 ; 竹永秀信 ; 牛草健吉 ; 小関隆久 ; 池田佳隆 ; 梅田尚孝 ; 山田弘司* ; 磯部光孝* ; 成嶋吉朗* ; 池田勝則* ; 榊原悟* ; 山崎耕造* ; 長崎百伸* ; JT-60チーム
Nuclear Fusion 43(10), p.1272-1278(2003) ; (JAERI-J 20584)

 JT-60Uでは定常高βp Hモード放電の最適化を行い,以下の結果を得た.(1)NNBを用いて完全非誘導電流駆動の下で核融合三重積3×1020m-3・s・keV(世界最高値)を達成した.この結果は従来の結果を50%上回る.(2)規格化ベータ値βNが2.7のプラズマをNBや電源の機器限界に近い7.4秒間(エネルギー閉じ込め時間の約60倍)維持した.(3)高規格化ベータ値(βN=3.05)のプラズマをエネルギー閉じ込め時間の5倍の間維持した.(4)電流分布や圧力分布の最適化により新古典テアリングモードの発生を再現性よく抑制した.(5)電子温度揺動分布から磁気島中心を実時間で検出し電子サイクロトロン電流駆動を行うシステムを開発し,高ベータ領域(βp=1.1,βN=1.5)における新古典テアリングモードを完全に安定化した.安定化後ベータ値や閉じ込め改善度が上昇した.


311045
Asymmetry of collapse of density pedestal by type I ELM on JT-60U
大山直幸* ; 三浦幸俊 ; Chankin, A. V.* ; 竹永秀信 ; 朝倉伸幸 ; 鎌田裕 ; 及川聡洋 ; 篠原孝司 ; 竹治智
Nuclear Fusion 43(10), p.1250-1257(2003) ; (JAERI-J 20496)

 反射計によるtype I ELMの詳細測定の結果,ELMによる密度ペデスタルの崩壊はプラズマの弱磁場側に局在化していることが予想された.そこで,反射計とFIR干渉計を用いてプラズマの弱磁場側と強磁場側の同時密度計測を行い,ポロイダル非対称性を確認する実験を行った.反射計の位相変化から評価した弱磁場側反射層の変位は約5cmであった.この変位に対応する強磁場側干渉計の密度変化を評価したところ0.67×1019m-2と見積もられたが,実際の観測では強磁場側における密度変化は観測されていない.つまり,ELMによる密度ペデスタルの崩壊は弱磁場側に局在化していることを示している.また,ELMに伴う周辺部密度増加の詳細を調べるため,プラズマを水平方向に動かした時の密度変化を測定した.その結果,強磁場側ではELMによる密度の吐き出しは観測されない,つまり強磁場側の密度ペデスタルは壊れていないことを確認するとともに,周辺部干渉計で観測された線積分密度の増加はスクレイプオフ層とペデスタル部における密度増加が支配的であることを明らかにした.


320033
Relationship between particle and heat transport in JT-60U plasmas with internal transport barrier
竹永秀信 ; 東島智 ; 大山直幸 ; Bruskin, L. G.* ; 小出芳彦 ; 井手俊介 ; 白井浩 ; 坂本宜照 ; 鈴木隆博 ; Hill, K. W.* ; Rewoldt, G.* ; Kramer, G. J.* ; Nazikian, R.* ; 滝塚知典 ; 藤田隆明 ; 逆井章 ; 鎌田裕 ; 久保博孝 ; JT-60チーム
Nuclear Fusion 43(10), p.1235-1245(2003) ; (JAERI-J 20583)

 JT-60Uの負磁気シア及び高βpモードプラズマにおける内部輸送障壁(ITB)での粒子と熱輸送の関係について系統的に調べた.ヘリウムと炭素はITB内側で蓄積しないが,重不純物のアルゴンはITB内側で蓄積することを明らかにした.ヘリウムの拡散係数とイオンの熱拡散係数は,高βpモードプラズマでは,新古典値より5-10倍程度大きく,異常輸送が支配的である.負磁気シアプラズマでは,ヘリウムの拡散係数はイオンの熱拡散係数とともに,異常拡散が支配的な領域から新古典値程度まで減少する.炭素及びアルゴンの密度分布は,イオンの熱拡散係数が新古典値程度まで減少していても,新古典理論から計算される分布より平坦であり,炭素,アルゴンの拡散係数は新古典値より大きい.高βpモードプラズマに電子サイクロトロン加熱(ECH)を適用した場合に,密度と中心部の軟X線強度が顕著に減少し,アルゴンが中心領域から吐き出されることを見いだした.このとき,密度のITBはほぼ無くなっており,それにより新古典理論で予測される密度勾配によるアルゴンの内向き速度が減少する.負磁気シアプラズマでは,ECHによる明確な密度及び軟X線強度の減少は観測されなかった.このことは,不純物の蓄積を抑えるためには,密度勾配の制御が重要であることを示している.


320032
Observation of high recycling steady H-mode edge and compatibility with improved core confinement mode on JFT-2M
神谷健作* ; 木村晴行 ; 小川宏明 ; 川島寿人 ; 都筑和泰 ; 佐藤正泰 ; 三浦幸俊 ; JFT-2Mグループ
Nuclear Fusion 43(10), p.1214-1219(2003) ; (JAERI-J 20582)

 JFT-2M装置において,第一壁のボロン化後に高リサイクリング定常(HRS)H-modeが得られる新しい運転領域を開拓した.このH-modeは定常性を有しており,大きなELMが無いのでダイバータ板への熱負荷を低減可能で,グリーンワルド密度(nGW)の約70%付近までの高密度運転が可能である(閉じ込め改善度H89P〜1.5).HRS H-mode遷移時にコヒーレント成分を有する特徴的な磁場揺動が観測されており,その運転領域は比較的高い中性粒子圧力化での高規格化密度(ne/nGWが約40%以上)で観測され易いが,広い範囲の安全係数q95(2〜3付近の低安全係数でも)で得られている. HRS H-mode境界の最大の特徴は,プラズマコア部の閉じ込め改善モードと両立可能な点にある.今回,HRS H-mode境界に内部輸送障壁(ITB)を重畳させることによって,過渡的ながら規格化ベータ値(βN)が約3.1に達する高性能プラズマを得ている.


320031
Pellet injection as a possible tool for plasma performance improvement
Polevoi, A. R.* ; 杉原正芳 ; 竹永秀信 ; 諫山明彦 ; 大山直幸 ; Loarte, A.* ; Saibene, G.* ; Pereverzev, G. V.*
Nuclear Fusion 43(10), p.1072-1076(2003) ; (JAERI-J 20581)

 高磁場側からのペレット入射によるITERの運転シナリオについて考察した.特にELMにより排出されるエネルギー量を,ペレット入射により,ダイバータ板の侵食に対して許容レベルにまで低減できるシナリオを示した.輸送コードにより,Q値〜20の運転が各種運転限界内で可能であることを示し,ペレットサイズや入射周波数に対する要求を明らかにした.


311044
Stabilization effect of early ECCD on a neoclassical tearing mode in the JT-60U tokamak
長崎百伸* ; 諫山明彦 ; 井手俊介 ; JT-60チーム
Nuclear Fusion 43(10), p.L7-L10(2003) ; (JAERI-J 20495)

 高ベータトカマクプラズマにおいては自発電流により新古典テアリングモード(NTM)が発生する可能性がある.NTMは閉じ込め性能を劣化させるので,電子サイクロトロン電流駆動(ECCD)により安定化する必要がある.これまで,JT-60UではNTMの成長が飽和した後に電子サイクロトロン(EC)波を入射し安定化を実証してきたが,今回,ECをNTM発生前に入射(「早期EC入射」と呼ぶ)したときのNTMの抑制効果を調べた.その結果,早期EC入射によりNTMの揺動レベルが抑えられることや,NTMを完全に抑制するために必要なECパワーが約20%低減できることが明らかになった.また,早期EC入射の場合でも,NTM抑制効果はEC入射角に強く依存することが明らかになった.


320196
Ferromagnetic and resistive wall effects on the beta limit in a Tokamak
栗田源一 ; 津田孝 ; 安積正史 ; 石田真一 ; 竹治智* ; 逆井章 ; 松川誠 ; 小関隆久 ; 菊池満
Nuclear Fusion 43(9), p.949-954(2003) ; (JAERI-J 20719)

 原型炉の開発における二つの重要な課題は高ベータ化と低放射化材料の開発である.後者の低放射化材料の開発に関しては,現在低放射化フェライト鋼が最有力候補であると考えられているが,強磁性体であるためMHD不安定性による摂動磁場を吸い込むことによってMHD安定性を劣化させ前者のベータ限界を下げる可能性がある.ここでは,フェライト鋼(強磁性体)壁の効果を含んだMHD安定性解析を行うことによって限界ベータに対する強磁性体壁の影響を調べた.


311046
Comparison of ITER performance predicted by semi-empirical and theory-based transport models
Mukhovatov, V.* ; 下村安夫 ; Polevoi, A. R.* ; 嶋田道也 ; 杉原正芳 ; Bateman, G.* ; Cordey, J. G.* ; Kardaun, O. J. F.* ; Pereverzev, G. V.* ; Voitsekhovich, I.* ; Weiland, J.* ; Zolotukhin, O.* ; Chudnovskiy, A.* ; Kritz, A. H.* ; Kukushkin, A.* ; Onjun, T.* ; Pankin, A.* ; Perkins, F. W.*
Nuclear Fusion 43(9), p.942-948(2003) ; (JAERI-J 20497)

 ITER のQの値=(核融合出力)/(補助加熱入力) を3つの異なる方法を用いて予測し比較した.第1の方法は経験的な閉じ込め時間比例則及び規定された輸送係数の分布を用いる.第2のアプローチは規格化パラメータをITERに類似した値に規定した放電に基づく外挿(ITER相似実験)を用いる.第3のアプローチは部分的に理論に基づいた輸送モデルに基づく.プラズマ電流15MA,プラズマ密度がグリーンワルド密度を15%下回る密度の条件ではITERH-98(y,2)比例則によるエネルギ−閉じ込め時間は3.7秒,標準偏差が14%である.第1の方法によってQの範囲を予測すると,補助加熱入力40MWの場合[6-15]である.また,良好なELMy Hモード閉じ込めが得られる範囲で補助加熱入力を最小に設定した場合は[6-30]である.JETにおけるITER相似実験による予測,及び,理論に基づいたモデルによる予測は,閉じ込め時間の経験則による予測と,不確定性の範囲内で一致する.


320036
Development of advanced blanket materials for a solid breeder blanket of a fusion reactor
河村弘 ; 石塚悦男 ; 土谷邦彦 ; 中道勝 ; 内田宗範* ; 山田弘一* ; 中村和幸 ; 伊藤治彦 ; 中沢哲也 ; 高橋平七郎* ; 田中知* ; 吉田直亮* ; 加藤茂* ; 伊藤義夫*
Nuclear Fusion 43(8), p.675-680(2003) ; (JAERI-J 20586)

 核融合原型炉を実現するために,先進ブランケットの設計研究が行われている.これらの設計では,より高い発電効率を目指して冷却材温度を500℃以上としており,高温に耐え,また高中性子照射量まで使用できるブランケット材料(トリチウム増殖材料及び中性子増倍材料)の開発が求められている.本論文では,原研及び国内の大学,産業界が共同で実施してきたこれら先進ブランケット材料の開発の現状について報告する.トリチウム増殖材料に関しては,トリチウム放出特性に悪影響を及す高温での結晶粒径成長を抑制できる材料の開発として,TiO2を添加したLi2TiO3に注目し,湿式造粒法による微小球の製造技術開発を実施した.この結果,固体ブランケットに用いる微小球製造に見通しが得られた.中性子増倍材料に関しては,融点が高く化学的に安定な材料としてベリリウム金属間化合物であるBe12Ti等に注目し,回転電極法による微小球の製造技術開発及び特性評価を実施した.この結果,ベリリウムの含有量を化学量論値より多くすることにより,延性を増すことによって,微小球の製造に見通しが得られた.また,Be12Tiはベリリウムより中性子照射によるスエリングが小さいことなど,優れた特性を有していることが明らかとなった.


320035
Development of high performance negative ion sources and accelerators for MeV class neutral beam injectors
谷口正樹 ; 花田磨砂也 ; 伊賀尚* ; 井上多加志 ; 柏木美恵子 ; 森下卓俊* ; 奥村義和 ; 清水崇司* ; 高柳智弘* ; 渡邊和弘 ; 今井剛
Nuclear Fusion 43(8), p.665-669(2003) ; (JAERI-J 20585)

 メートル級の真空長ギャップにおいて負イオン源加速器に相当する条件での放電特性を実験的に明らかにし,ITER等のNBI運転条件で1MVの高圧を保持できる見通しを示した.上記のデータに基づき,真空絶縁方式のMeV級負イオン加速器を設計製作し,その耐電圧と負イオン加速実証試験を行った.その結果,世界で初めて真空絶縁方式による負イオン加速器によって,ほぼ定格のエネルギーである970keVまでの負イオン加速に成功し,本方式の実現性を実証した.また,負イオン生成の効率改善の研究として,低ガス圧力で高密度の負イオン生成の可能なイオン源を開発した.従来0.3Pa程度の動作圧力であったものを,イオン源フィルター磁場等の改良により0.1Paの極めて低い圧力条件でも31mA/cm2の高密度負イオンを生成する事に世界で初めて成功した.


310946
Development of 170 and 110 GHz gyrotrons for fusion devices
坂本慶司 ; 春日井敦 ; 池田佳隆 ; 林健一* ; 高橋幸司 ; 森山伸一 ; 関正美 ; 假家強* ; 満仲義加* ; 藤井常幸 ; 今井剛
Nuclear Fusion 43(7), p.729-737(2003) ; (JAERI-J 20429)

 プラズマの加熱電流駆動用大電力ジャイロトロン開発を行った.ITERで要求される周波数170GHzにおいて,準連続運転となる0.9MW/9秒,0.75MW/17秒,0.5MW/30秒,0.3MW/60秒等の出力を達成し,連続出力ジャイロトロンの開発に大きな見通しを得た.パルス幅は内部の冷却強化によりさらに延長可能である.また,JT-60U用110GHzジャイロトロンで1.2MW/4秒等の出力を得た.110GHzジャイロトロンは4MWのJT-60U電子サイクロトロン共鳴加熱電流駆動装置の発振源として使用されている.


310945
Effects of complex magnetic ripple on fast ions in JFT-2M ferritic insert experiments
篠原孝司 ; 川島寿人 ; 都筑和泰 ; 浦田一宏* ; 佐藤正泰 ; 小川宏明 ; 神谷健作* ; 笹尾一* ; 木村晴行 ; 河西敏 ; 草間義紀 ; 三浦幸俊 ; 飛田健次 ; JFT-2Mグループ ; Darrow, D. S.*
Nuclear Fusion 43(7), p.586-593(2003) ; (JAERI-J 20428)

 JFT-2MではAdvanced Material Tokamak Experiment (AMTEX) プログラマの第3段階として真空容器内にプラズマをほぼ覆うようにフェライト鋼壁を設置した(FIW).ポートと周期的な設置が困難なため,磁場構造は,非周期的な複雑リップルとなる.このような複雑リップル下で,その高速イオン損失に与える影響を理解するための実験を行った.FIWではフェライト鋼の厚みを最適化することでトロイダル磁場リップルの強さを小さくしているが,この手法によるトロイダル磁場リップルの低減が観測され,さらに,リップルの低減に伴い,高エネルギー粒子の損失の低減が確認された.また,積極的に磁場構造を変えるために真空容器の外に外部フェライト鋼をつけた実験も行った.結果,局所リップルの役割はリップル井戸のポロイダル断面形状の影響を強く受けることがわかった.さらに,複雑磁場構造を扱えるように改良したOFMCコードと実験結果の比較を行った.実験で使用したさまざまな複雑磁場構造の熱流速について,実験結果と計算結果が良い一致を示した.


310748
Long timescale plasma dynamics and explosive growth driven by the double tearing mode in reversed shear plasmas
石井康友 ; 安積正史 ; 岸本泰明 ; Leboeuf, J.-N.*
Nuclear Fusion 43(7), p.539-546(2003) ; (JAERI-J 20261)

 JT-60Uの負磁気シアプラズマの低βディスラプションで観測される時定数遷移現象が,ダブルティアリングモード(DTM)の非線形不安定化現象で説明できる可能性を示した.JT-60U実験データに基づく平衡配位に対して,トロイダル線形抵抗性MHD解析を行うことにより,抵抗性交換型モードが不安定なパラメータ領域においても,DTMが最大不安定モードとなりえることを明らかにした.さらに,円柱プラズマに対する非線形MHDシミュレーションを行うことにより,DTMの非線形不安定化とそれに伴う電流点形成に起因する時定数遷移現象の存在を明らかにした.また,トロイダルプラズマに対する非線形MHDシミュレーションを行うことにより,乱雑磁場中でも電流点が形成されることを示し,トカマクプラズマ中での電流点の実現可能性を示した.


310747
Neutronics experiments for DEMO blanket at JAERI/FNS
佐藤聡 ; 落合謙太郎* ; 堀順一* ; Verzilov, Y.* ; Klix, A.* ; 和田政行* ; 寺田泰陽* ; 山内通則* ; 森本裕一* ; 西谷健夫
Nuclear Fusion 43(7), p.527-530(2003) ; (JAERI-J 20260)

 原研FNSのDT核融合中性子線源を用いて,原型炉ブランケットに関する中性子工学実験を行った.ブランケット内トリチウム生成実験とシーケンシャル反応断面積測定実験を行った.「ブランケット内トリチウム生成実験」核融合原型炉の増殖ブランケット模擬体系積分実験を実施し,生成トリチウムに対する測定値と計算値の比較・検討を行った.モンテカルロ中性子輸送計算コードMCNPと核データJENDL-3.2による計算値は実験値より1.2〜1.4倍過大評価であり,その原因解明のために,ベリリウムの(n, 2n)反応の二重微分断面積については再検討の必要性を示す結果が得られた.「シーケンシャル反応断面積測定実験」冷却水からの反跳陽子による冷却水配管表面のシーケンシャル反応率を,鉄,銅,チタン,バナジウム,タングステン,鉛に対して測定した.冷却水配管表面のシーケンシャル反応率は,材料自身のシーケンシャル反応率に比べて,一桁以上増加することを明らかにした.


310746
Improvement of beam performance in the negative-ion based NBI system for JT-60U
梅田尚孝 ; Grisham, L. R.* ; 山本巧 ; 栗山正明 ; 河合視己人 ; 大賀徳道 ; 藻垣和彦 ; 秋野昇 ; 山崎晴幸* ; 薄井勝富 ; 本田敦 ; Lei, G.* ; 渡邊和弘 ; 井上多加志 ; 花田磨砂也 ; 柏木美恵子 ; 森下卓俊* ; 大楽正幸 ; 高柳智弘*
Nuclear Fusion 43(7), p.522-526(2003) ; (JAERI-J 20259)

 JT-60用負イオンNBIはプラズマ加熱と電流駆動を目的として設計され1996年より運転を行っている.目標性能はビームエネルギー500keV,入射パワー10MW,パルス幅10秒の中性粒子ビームをプラズマに入射することである.今まで,パルス幅はポートリミタの過大な熱負荷のために5.3秒に制限されていた.3.5mの位置での負イオンビームの分布を計測することによって,電極セグメント端部のビームが外側へ偏向していることが明らかになった.引出部下流における凹みによる電界の不整が原因であった.これを改善することによって,端部のビームの偏向を14mradから4mradまで減少させた.この結果,定格の10秒入射をビームエネルギー355keV,入射パワー2.6MWで達成した.


310745
Geometrical improvements of rotational stabilization of high-n ballooning modes in tokamaks
古川勝* ; 徳田伸二 ; 若谷誠宏*
Nuclear Fusion 43(6), p.425-429(2003) ; (JAERI-J 20258)

 トロイダルシア流が存在すると,高nバルーニングモードの摂動エネルギーの時間発展に減衰フェーズが現れることを数値的に発見した.その減衰が,悪い磁場曲率の領域における指数的成長を上回ると,バルーニングモードは安定化される.この機構を通じて,プラズマ断面形状のD型化,低アスペクト比化,及びトーラス内側のX点の存在は,トロイダルシア流による安定化効果をより強くする.


310460
Global gyrokinetic simulation of ion temperature gradient driven turbulence in plasmas using a canonical Maxwellian distribution
井戸村泰宏 ; 徳田伸二 ; 岸本泰明
Nuclear Fusion 43(4), p.234-243(2003) ; (JAERI-J 20026)

 ジャイロ運動論的トロイダル粒子コードGT3Dを開発した.GT3Dでは,軸対称トロイダル系における運動の恒量により定義される正準マックスウェル分布に基づく手法,高(m,n)モードのグローバル解析を可能にする準バルーニング展開,あるいは,粒子,エネルギーなどの保存則を改善する最適化粒子配分法といった新しい手法が実装されており,実装置パラメータにおける高精度のプラズマ乱流シミュレーションが可能になっている.本コードを大型トカマク(a/ρi=320〜460)におけるITG(イオン温度勾配駆動)モードの解析に適用し,反転磁気シア配位はqmin領域におけるITGモードの実質的な安定化に寄与することを明らかにした.また,GT3Dでは正準マックスウェル分布を用いた実装により,軸対称モード,特に,乱流抑制に寄与する乱流駆動E×B帯状流の応答が正しく表現されている事を確認し,従来の局所マックスウェル分布を用いた乱流シミュレーションにおける重要な問題点を明らかにした.


310389
Investigation on ripple loss reduction by ferritic steel plate insertion in JFT-2M; Comparison between experimental and computational data
佐藤正泰 ; 木村晴行 ; 三浦幸俊 ; 中山武* ; 飛田健次 ; 川島寿人 ; 都筑和泰 ; 伊世井宣明
Nuclear Fusion 42(8), p.1008-1013(2002) ; (JAERI-J 19967)

 JFT-2Mではフェライト鋼とプラズマとの整合性を調べる先進材料プラズマ試験を現在段階的に進めている.第一段階のリップル低減試験では,トロイダル磁場コイルの直下で真空容器の外側にフェライト鋼板(FP)を設置して,トロイダル磁場のリップル(強弱)を低減し,高速イオンのリップル損失減少を実証した.フェライト鋼を装着した場合,磁場の構造が複雑に変化し,トロイダル磁場コイルの数に相当するトロイダルモード数の磁場リップルだけでなく,その高調波が発生する.磁場の強さとフェライト鋼の厚さを変え,基本波リップルと2倍高調波リップルを変化させることにより,リップル捕捉損失は,肩部の基本波リップル率に強く依存することを明らかにした.FPにより作り出される磁場を考慮に入れて軌道追跡モンテカルロコード(OFMC)を拡張し,実験結果と比較した.その数値結果は,リップル捕捉損失は肩部の基本波リップル率に強く依存し,実験事実を定性的に説明できる.


310388
Measurement of the chemical sputtering yields of CH4/CD4 and C2Hx/C2Dx at the carbon divertor plates of JT-60U
仲野友英 ; 久保博孝 ; 東島智 ; 朝倉伸幸 ; 竹永秀信 ; 杉江達夫 ; 伊丹潔
Nuclear Fusion 42(6), p.689-696(2002) ; (JAERI-J 19966)

 JT-60Uの炭素材ダイバータ板におけるCH4,CD4,C2Hx及びC2Dxの化学スパッタリング率を測定した.CH4,CD4,C2Hx及びC2Dx分子の発生量を求めるためにCH,CD及びC2分子からのバンド光を分光測定した.ダイバータ板への水素イオン束に対する炭化水素分子発生量で定義される化学スパッタリング率は,ダイバータ板の表面温度が約360,420及び540Kにおいて,CH4については約1%,1-2%及び2-3%,C2Hxについては約2%,4%及び7%であった.ダイバータ板への水素イオン束が増加すると,水素イオン束の-0.15〜-0.33乗に比例して化学スパッタリング率は減少した.いずれの分子種及び表面温度においても,重水素イオンによる化学スパッタリング率は,軽水素イオンによる化学スパッタリング率の約1.2倍であった.C2Hx及びC2Dxが起源の炭素原子数は,化学スパッタリングで発生した炭素原子数の約80%を占めることがわかった.


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