2003年度

Physical Review C


320209
High spin states in 158Dy
早川岳人 ; 藤暢輔 ; 大島真澄 ; 松田誠 ; 初川雄一 ; 静間俊行 ; 片倉純一 ; 飯村秀紀 ; 御手洗志郎* ; Zhang, Y.* ; 菅原昌彦* ; 草刈英榮*
Physical Review C 68(6), p.067303_1-067303_4(2003) ; (JAERI-J 20732)

 原研のタンデム加速器を用いて12Cビームを加速し,150Nd金属薄膜に照射することで完全核融合反応を起し,158Dyの励起状態を生成した.158Dyの励起状態から放射されたγ線を多重γ線検出装置でインビームγ線核分光を行い,158Dyの高スピン状態を観測した.6個の回転バンドと,多数のバンド間の遷移を観測した.新たに発見した2個のバンドは典型的なhigh-Kバンドである.2つのサイドバンドは既に知られていたが,物理的な本質は不明であった.γ線の角度分布の測定よりバンド間遷移のスピンを決定し,近傍の原子核とバンドエネルギーを比較することで,この2つのバンドがオクタポールバンドであると結論した.


320208
Half-life of 228Pu and α-decay energy of 228Np
西尾勝久 ; 池添博 ; 光岡真一 ; 佐藤健一郎* ; Lin, C. J.*
Physical Review C 68(6), p.064305_1-064305_6(2003) ; (JAERI-J 20731)

 融合反応34S+198Ptを用いて,これまで知られたプルトニウム同位体としてはもっとも軽い228Puを合成し,このα-崩壊の半減期を初めて測定した.結果は1.1+2.6-0.5sであった.この値は文献にある上限値としての評価値4msよりはるかに長いものであった.われわれの測定した半減期とα-崩壊エネルギーは,Pu同位体のGeiger-Nuttall法則を満たした.このことは,228Puの崩壊はα-崩壊が支配的であることを示す.本実験では,228Npのα-崩壊も初めて測定し,エネルギ7097±61keVを得た.228Pu,228Np及び225Uの断面積は,統計モデル計算でよく再現された.


320207
Nuclear moments and isotope shifts of 135La, 137La and 138La by collinear laser spectroscopy
飯村秀紀 ; 小泉光生 ; 宮部昌文 ; 大場正規 ; 柴田猛順 ; 篠原伸夫 ; 石田佳久* ; 堀口隆良* ; Schuessler, H. A.*
Physical Review C 68(5), p.054328_1-054328_7(2003) ; (JAERI-J 20730)

 コリニアー・レーザー分光の手法によって,不安定同位体135La, 137La, 138La,及び安定同位体139Laの一価イオンの同位体シフトと超微細構造を測定した.このうち135La, 137Laについては,天然には存在しないのでタンデム加速器を用いて生成した.これらの測定により,これらの原子核の電磁気的モーメント及び核半径の変化量が決定された.核半径の変化量については,FRDMやHFBCSなどの理論的模型による予測値より実験値は小さくなった.この不一致の原因は,これらの模型では動的な変形の効果が取り入れられていないためと考えられる.


320206
Measurement of B(M1) for the π p3/2 ν p1/2-1 doublet in 68Cu
Hou, L.* ; 石井哲朗 ; 浅井雅人 ; 堀順一* ; 小川建吾* ; 中田仁*
Physical Review C 68(5), p.054306_1-054306_6(2003) ; (JAERI-J 20729)

 FNS施設の14MeV中性子を用いて(n,p) 反応により68Cumを生成し,そのγ崩壊を2台のBaF2検出器を用いて同時測定することにより,68Cuの励起準位の寿命を測定した.第一励起準位(84keV, 2+)の半減期7.84(8)nsが得られた.この寿命は,B(M1; 2+→1+)=0.00777(8) μN2に相当する.隣接核のg因子の実験値を用いることにより,このB(M1)値は最小限のモデル空間π p3/2ν p1/2-1の殻模型計算により予測可能である.また,f7/2-r(p3/2 f5/2p1/2)n+r (r=0,1)モデル空間での殻模型計算により,B(M1) 値が小さくなることが説明できた.


311050
Possibility of ΛΛ pairing and its dependence on background density in a relativistic Hartree-Bogoliubov model
谷川知憲* ; 松崎昌之* ; 千葉敏
Physical Review C 68(1), p.015801_1-015801_8(2003) ; (JAERI-J 20501)

 Λ粒子間の引力がこれまで知られていたよりも弱い可能性が最近報告されたが,それは中性子星の性質に大きな影響をもたらす.そこでわれわれは,核子とΛ粒子の混合物質中におけるΛΛ対ギャップを相対論的Hartree-Bogoliubov模型で計算した.対を組むΛ粒子は常伝導状態にある背景核子中に存在する.ギャップ方程式には,系のLagrangianから相対論的に導出される現象論的ΛΛ相互作用を用いた.核子密度が飽和密度の2.5倍程度ではΛΛ対ギャップは非常に小さいこと,核子密度が増すとΛΛ対ギャップが減少することを見出した.この結果は相対論的模型で混合物質を扱う際に特有の,核子密度に対する新たな依存性を示唆するものである.


310855
Spin effects and baryon resonance dynamics in φ-meson photoproduction of few GeV
Titov, A. I.* ; Lee, T.-S. H.*
Physical Review C 67(6), p.065205_1-065205_17(2003) ; (JAERI-J 20348)

 回折的なφ中間子光生成の振幅には,スピン−スピンまたはスピン−起動相互作用に相当する項が含まれていることを,世界で初めて示した.これらの項は,クォーク−グルーオン間の特徴的な相互作用を反映し,非偏極または偏極光子ビームを用いた反応において,φ中間子崩壊で生成されるK+K-対の方位角分布に30%以上の大きな非対称度を生じさせる.この非対称度は,重心系エネルギーや運動量移行に依存する.同様の結果は,多くの実験の観測量で得られている.また,ω中間子とφ中間子の光生成理論モデルを組み合わせた結果,φNN結合においてOZI則の破れが強く現れ,ω中間子に対するφ中間子生成量が,静的クォークモデルで予想される比の4倍であった.この結果は,ストレンジネスが0の重粒子中に多量のストレンジクォーク対成分が含まれていることを示唆している.


310854
Projectile Coulomb excitation of 78Se
早川岳人 ; 藤暢輔 ; 大島真澄 ; 長明彦 ; 小泉光生 ; 初川雄一 ; 宇都野穣 ; 片倉純一 ; 松田誠 ; 森川恒安* ; 菅原昌彦* ; 草刈英榮* ; Czosnyka, T.*
Physical Review C 67(6), p.064310_1-064310_6(2003) ; (JAERI-J 20347)

 原研のタンデム加速器で加速された78Seビームを鉛の金属薄膜に照射した.ビームに用いた78Seは,鉛との多重クーロン励起反応によって高励起状態まで励起された.励起された78Seから脱励起によって放出されたγ線と,クーロン散乱された78Se粒子を同時計測した.78Seから放出されたγ線の角度分布,強度を最小二乗フィットコードGOSIAを用いて解析した.その結果,γ線の電気遷移確率と励起状態の電気的四重極変形の大きさを得ることができた.その結果を,三軸非対称模型計算と比較して,78Seが三軸非対称になっていることを明らかにした.


320116
Di-triton molecular structure in 6He
秋宗秀俊* ; 山県民穂* ; 中山信太郎* ; 有本靖* ; 藤原守* ; 伏見賢一* ; 原圭吾* ; 大田雅久* ; 塩川敦子* ; 田中正義* ; 宇都宮弘章* ; 原かおる* ; 吉田英智* ; 與曽井優*
Physical Review C 67(5), p.051302_1-051302_4(2003) ; (JAERI-J 20650)

 t+tの分子的構造を持つ共鳴が6Li(7Li,7Be t)3H反応で発見された.励起エネルギーは18±0.5MeVで,幅は7.7±1.0MeVであった.崩壊分岐比としては90±10%でほぼ100%がt+tに崩壊していることがわかった.


310464
Fragment mass distribution of the 239Pu(d,pf) reaction via the superdeformed β-vibrational resonance
西尾勝久 ; 池添博 ; 永目諭一郎 ; 光岡真一 ; 西中一朗 ; Duan, L.* ; 佐藤健一郎* ; 後藤真一* ; 浅井雅人 ; 羽場宏光* ; 塚田和明 ; 篠原伸夫 ; 市川進一 ; 大澤孝明*
Physical Review C 67(1), p.014604_1-014604_5(2003) ; (JAERI-J 20030)

 核分裂の双山障壁の第二の谷には,β-振動準位が存在する.本研究は,この振動準位を経由したときの核分裂片質量数分布を初めて測定したものである.かつて,障壁上にあるγ振動準位を経由したとされる核分裂実験が行われたことがあり,その結果は質量非対称成分が増加したと報告されている.β振動準位を経由すれば,対称分裂が支配的になると考えた.β振動レベルに励起状態が一致すると,共鳴トンネル核分裂によって核分裂断面積が増大するので,この共鳴ピークにゲートをかけて質量数分布を測定した.得られた結果は,(240Puの核分裂),Pu-239熱中性子核分裂や,240Pu isomerと同じような質量非対称な分布であった.β振動準位を経由しても,系は従来の質量非対称ポテンシャルの谷をころがり落ちること,つまり質量対称のポテンシャルの谷には現れないことがわかった.


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