2003年度

Physical Review Letters


320211
Energetic protons from a few-micron metallic foil evaporated by an intense laser pulse
松門宏治* ; Esirkepov, T. Z.* ; 木下健一* ; 大道博行 ; 内海隆行* ; Li, Z.* ; 福見敦* ; 林由紀雄 ; 織茂聡 ; 西内満美子 ; Bulanov, S. V.* ; 田島俊樹 ; 野田章* ; 岩下芳久* ; 白井敏之* ; 竹内猛* ; 中村衆* ; 山崎淳* ; 池上将弘* ; 三原貴憲* ; 森田昭夫* ; 上坂充* ; 吉井康司* ; 渡部貴宏* ; 細貝知直* ; Zhidkov, A.* ; 小方厚* ; 和田芳男* ; 久保田哲生*
Physical Review Letters 91(21), p.215001_1-215001_4(2003) ; (JAERI-J 20734)

 東京大学原子力工学研究施設の超短パルスレーザーを用いたイオン発生実験を行った.レーザーパラメーターは,波長800nm,パルス長50fs,ピーク強度6×1018W/cm2でコントラストは10-5程度,ターゲットは厚さ5μmのタンタル箔を用いた.その結果,1MeVのプロトンと2MeVの電子の発生を確認した.この実験結果を解釈するために,ターゲットがプリパルスによって完全にプラズマ化した状態でメインパルスと相互作用をする低密度プラズマスラブを用いた新しいイオン加速機構を導入し,さらにそれに基づくシミュレーションを行った.実験結果とシミュレーション結果は良好な一致を示した.また,新しい加速機構が有する独自のレーザー強度に対するスケーリング側に基づいて,実用的なレーザープラズマイオン源の可能性が示される.


320210
Charge-ordered state in single-crystalline CaFeO3 thin film studied by X-ray anomalous diffraction
赤尾尚洋* ; 東勇介* ; 薄田学* ; 西畑保雄 ; 水木純一郎 ; 浜田典昭* ; 林直顕* ; 寺嶋孝仁* ; 高野幹夫*
Physical Review Letters 91(15), p.156405_1-156405_4(2003) ; (JAERI-J 20733)

 X線異常分散効果を利用した実験とバンド理論計算を実験結果の解析手法として利用し,CaFeO3の電荷分離状態の実態を議論した.これまでの実験では,電荷分離状態は290K以下でFeに2-siteが出現し,それぞれの価数が3価と5価に分離したと考えられていた.しかし,今回のわれわれの実験によりFeの3d電子の数は変化しないで,Fe-Oにおける3d-2p電子の混合状態が変わること,すなわち酸素2p状態にホールが局在した状態であることを示した.


320118
Beam-palarization asymmetries for the p(→γ,K+)Λ and p(→γ,K+0 reactions for Eγ=1.5-2.4 GeV
Zegers, R. G. T.* ; 住浜水季* ; Ahn, D. S.* ; Ahn, J. K.* ; 秋宗秀俊* ; 浅野芳裕 ; Chang, W. C.* ; Date, S.* ; 江尻宏泰* ; 藤村寿子* ; 藤原守* ; Hicks, K.* ; 堀田智明* ; 今井憲一* ; 石川貴嗣* ; 岩田高広* ; 河合秀幸* ; Kim, Z. Y.* ; 木野幸一* ; 郡英輝* ; 熊谷教孝* ; 牧野誠司* ; 松村徹* ; 松岡伸行* ; 三部勉* ; 三輪浩司* ; 宮部学* ; 宮地義之* ; 森田昌孝* ; 村松憲仁* ; 中野貴志* ; 新山雅之* ; 能町正治* ; 大橋裕二* ; 大場隆人* ; 大熊春夫* ; Oshuev, D. S.* ; Rangacharyulu, C.* ; 坂口篤志* ; 佐々木隆寛* ; Shagin, P. M.* ; 椎野祐樹* ; 清水肇* ; 菅谷頼仁* ; 豊川秀訓* ; 若井篤志* ; Wang, C. W.* ; Wang, S. C.* ; 米原克也* ; 依田哲彦* ; 吉村政人* ; 與曽井優*
Physical Review Letters 91(9), p.092001_1-092001_4(2003) ; (JAERI-J 20652)

 Eγ=1.5-2.4GeVでp(→γ,K+)Λ, p(→γ,K+0反応に対するビーム偏極非対称が初めて測定された.この結果は未決定のハドロン共鳴や反応機構解明に用いられる.


311052
Light intensification towards the Schwinger limit
Bulanov, S. V.* ; Esirkepov, T. Z.* ; 田島俊樹
Physical Review Letters 91(8), p.085001_1-085001_4(2003) ; (JAERI-J 20503)

 レーザーパルスを,対向して伝播するプラズマ破砕波すなわち相対論的飛翔放物鏡により反射,圧縮,周波数上昇,及び集光させることにより,高強度電磁場を生成する手法を提案する.現行のレーザーシステムに対してこの方法を適用することより,量子電気力学的臨界場(シュウィンガー限界)の達成が可能であることを示す.


311051
Generation of a self-chirped few-cycle optical pulse in an FEL oscillator
羽島良一 ; 永井良治
Physical Review Letters 91(2), p.024801_1-024801_4(2003) ; (JAERI-J 20502)

 高利得を持つ自由電子レーザー共振器では,superradiance(超放射)共鳴を経て増幅されるレーザーパルスに自己変調(周波数チャープ)が生じ,レーザーパルスの成長に従ってパルス長が短くなり,変調が強くなる現象が起こることを解析により示した.さらに,原研超伝導リニアック自由電子レーザーにおける実験によって,同解析の妥当性を確認した.FEL共振器から取り出した光パルスの自己変調を補償することで光パルス圧縮が可能である.これは,FELによる超短パルス発生の新しい方法である.


310957
Unveiling new magnetic phases of undoped and doped manganites
堀田貴嗣 ; Moraghebi, M.* ; Feiguin, A.* ; Moreo, A.* ; 柚木清司* ; Dagotto, E.*
Physical Review Letters 90(24), p.247203_1-247203_4(2003) ; (JAERI-J 20440)

 ドープされたあるいはドープされていないマンガン酸化物における新規な基底状態スピン構造を解明するために,軌道縮退二重交換模型を平均場近似や数値的手法によって解析した.ドープされていない場合,E-型と呼ばれる新しい反強磁性相が,パラメター空間において,A-型反強磁性相に隣接して現れる.その構造は,最近の実験結果と一致する.この絶縁体的なE-型反強磁性相は金属強磁性相とも競合しており,これは,ドープされていないマンガン酸化物においても超巨大磁気抵抗が現れる可能性を示唆している.また,ドープした層状マンガン酸化物に対して,Cx E1-x-型という別の新しい反強磁性状態を含む相図を得た.この新しい相の実験的検出についても議論する.


310956
Electronic structure and the Fermi surface of PuCoGa5 and NpCoGa5
眞榮平孝裕* ; 堀田貴嗣 ; 上田和夫* ; 長谷川彰*
Physical Review Letters 90(20), p.207007_1-207007_4(2003) ; (JAERI-J 20439)

 最近発見されたプルトニウムをベースとした超伝導物質PuCoGa5及び同一の結晶構造を持つNpCoGa5の電子構造とフェルミ面を相対論的バンド理論を用いて明らかにする.PuCoGa5に対しては,CeMIn5(M=Ir and Co)と類似の大きな体積を持つ円柱状フェルミ面を見いだした.一方,NpCoGa5のフェルミ面はUMGa5とよく似ている.これらの類似性はj-j結合描像に基いて議論され,HoCoGa5型のf電子化合物における超伝導機構を理解するヒントを与える.


320117
Excitation and decay of the Isovector giant monopole resonances via the 208Pb(3He, tp) reaction at 410 MeV
Zegers, R. G. T.* ; Abend, H.* ; 秋宗秀俊* ; Van den Berg, A. M.* ; 藤村寿子* ; 藤田裕彦* ; 藤田佳孝* ; 藤原守* ; Gales, S.* ; 原圭吾* ; Harakeh, M. N.* ; 石川貴嗣* ; 川畑貴裕* ; 川瀬啓悟* ; 三部勉* ; 中西康介* ; 中山信太郎* ; 豊川秀訓* ; 内田誠* ; 山県民穂* ; 山崎かおる* ; 與曽井優*
Physical Review Letters 90(20), p.202501_1-202501_4(2003) ; (JAERI-J 20651)

 410MeVでの208Pb(3He, tp)反応を用いてアイソベクトル型巨大単極子共鳴の励起と崩壊モードを研究した.208Biのこの共鳴は60±5%の和則を尽し,29MeV〜51MeVに存在することが初めてわかった.共鳴の中心エネルギーは37±1MeVで,その幅は14±3MeVと決定した.陽子崩壊の分岐比は52±12%であった.


310611
Friedel oscillation in charge profile and position dependent screening around a superconducting vortex core
町田昌彦 ; 小山富男*
Physical Review Letters 90(7), p.077003_1-077003_4(2003) ; (JAERI-J 20146)

 超伝導状態では,磁場は磁束量子として量子化され,限定された範囲に閉じ込められることが知られている.その一方,最近の磁束量子に関する研究により,磁束量子は電荷さえ磁束中心部に閉じ込め可能かもしれないという問題が,高温超伝導体で発見されたホール効果の異常を背景に多くの実験及び理論家により議論されている.本論文では,この最新のホットな話題である電荷閉じ込めに対し,微視的理論を基に数値計算した結果から,電荷分布の特徴と電荷の遮蔽効果を議論した.数値計算結果として特筆すべき新しい結果は,磁束のコア近傍で電荷のフリーデル振動がはっきり現れることであり,この発見は,電荷の遮蔽が超伝導体では,もっぱらトーマス・フェルミ型の単純な遮蔽効果で記述されるとした理論的常識を覆つがえした言える.しかも,このフリーデル振動は,超伝導コヒーレンスが短い量子極限では,磁束コア半径よりもさらに大きなスケールで現れるため観測可能であることも重要な発見である.本論文では,以上の計算結果を示すと同時に,超伝導磁束コアでのフリーデル振動の起源についても議論した.


310559
Dynamical matching of Josephson vortex lattice with sample edge in layered high-Tc superconductors; Origin of the periodic oscillation of flux flow resistance
町田昌彦
Physical Review Letters 90(3), p.037001_1-037001_4(2003) ; (JAERI-J 20113)

 物質材料研究機構の大井らは,最近,メゾスケールの高温超伝導体において,極めて正確な抵抗の磁気振動が観測されることを確かめた.この磁気振動は,ほぼ0.5テスラから4テスラ程度まで観測され,振動の周期は,サンプルサイズに逆比例することも確認している.本論文では,この磁気振動のメカニズムを解明するため,数値シミュレーションを行い,世界で始めて,この結果を再現することに成功した.そのうえ,実験では知ることのできない,磁束格子のダイナミクスを示し,磁束格子とサンプルエッジとの動的なマッチング効果が電気抵抗の磁気振動を与えることを明らかにした.また,実験において周期的振動が観測されうる条件が知られていたが,これについても定性的説明を与えることに成功している.


310401
Picosecond snapshot of the speckles from ferroelectric BaTiO3 by means of X-ray lasers
Tai, R.* ; 並河一道* ; 岸本牧 ; 田中桃子 ; 助川鋼太* ; 長谷川登 ; 河内哲哉 ; 加道雅孝 ; Lu, P.* ; 永島圭介 ; 大道博行 ; 圓山裕* ; 澤田昭勝* ; 安藤政海* ; 加藤義章*
Physical Review Letters 89(25), p.257602_1-267602_4(2002) ; (JAERI-J 19979)

 温度に対する無秩序表面ドメイン構造の振舞を調べるためにピコ秒X線レーザースペックル計測が初めて行われた.フェロエレクトリックドメインによって引き起こされた過渡的な表面構造はキューリー温度へ向かっての温度増加に伴い減少し,キューリー温度以上で完全に消滅する.c/aドメインの空間的な配置の急激な変化は,キューリー温度より2度以下から始まることが観測された.そしてそこでは,平気的なドメインの大きさは(Tc-T)0.37±0.02により減少することがわかった.キューリー温度近くのパラ状態において存在すると考えられていながら,従来の手法では不可能であった分極クラスターの観察を遂行できる見通しが得られた.


310557
Size-selective extended X-ray absorption fine structure spectroscopy of free selenium clusters
永谷清信* ; 八尾誠* ; 早川鉄一郎* ; 大政義典* ; 梶原行夫* ; 石井真史* ; 片山芳則
Physical Review Letters 89(24), p.243401_1-243401_4(2002) ; (JAERI-J 20111)

 中性の自由クラスターのサイズ選択EXAFS(広域X線吸収微細構造)に関する新しい方法を提案した.そこでは,X線吸収過程のみならず,下方遷移過程もまた構造情報を得るために用いられる.この方法を実験的に実証するため,われわれはEXAFSと光電子光イオンコインシデンスを同時に測定する方法を開発し,第3世代強力X線源を用いることによってセレンクラスタービームに対する実験を行った.セレンの小さなクラスターに対するEXAFSスペクトルが得られ,理論的な予言と批判的に比較された.


310856
Dominance of the excitation continuum in the longitudinal spectrum of weakly coupled heisenberg S=1/2 chains
Zheludev, A.* ; 加倉井和久 ; 増田隆嗣* ; 内野倉國光* ; 中島健次*
Physical Review Letters 89(19), (2002) ; (JAERI-J 20349)

 典型的なS=1/2ハイゼンベルグ鎖系BaCu2Si2O7における磁気励起の縦及び横揺らぎの成分を磁場を利用した「偏極解析」で実験的に明らかにした.その結果このような弱く結合したS=1/2ハイゼンベルグ鎖においては分子場近似計算により提唱される鋭い縦揺らぎのモードではなく,連続励起状態が縦成分スペクトルを支配することを指摘した.


310610
Interaction between small-scale zonal flows and large-scale turbulence; A Theory for ion transport intermittency in tokamak plasmas
Li, J.* ; 岸本泰明
Physical Review Letters 89(11), p.115002_1-115002_4(2002) ; (JAERI-J 20145)

 微視的な帯状流と巨視的乱流間の相互作用に関して議論されている.鍵となる物理機構は半径方向のモード間結合として同定された.揺らぎのエネルギーは不安定な長波長領域から安定もしくは減衰する短波長モード領域に非局所的に輸送される.その結果,乱流スペクトルは大きく変形を受けるとともに非線形のパワー則から変位する.三次元のジャイロ流体イオン温度勾配モードシミュレーションを実施し,間欠的もしくはバースト的なイオン輸送挙動が観測され,トカマクプラズマにおけるITG生成帯状流に関係したスペクトル変形に関係していることが示された.


310558
Evolution of lower hybrid driven current during the formation of an internal transport barrier
内藤磨 ; Cui, Z.* ; 井手俊介 ; 鈴木隆博 ; 及川聡洋 ; 関正美 ; 波多江仰紀 ; 藤田隆明 ; 近藤貴 ; 白井浩 ; 池田佳隆 ; 牛草健吉
Physical Review Letters 89(6), p.065001_1-065001_4(2002) ; (JAERI-J 20112)

 負磁気シア放電中の内部輸送障壁(ITB)形成時における低域混成波(LH)駆動電流分布を測定した.ITBが成長するに従い,最初は中心にピークを持っていたLH駆動電流分布が中空の分布に移行し,時として中空な電子温度分布とITBに局在する鋸歯状振動様の不安定性を伴うことがあった.これらのことから,ITBにLHのパワーが集中し,一旦ITBが成長しだすとLH波による電流分布制御が困難になることが予想される.


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