2003年度

Surface Science


310777
Orientation effect on phot-fragmentation and ion-desorption from the topmost layers of molecular solids
関口哲弘 ; 池浦広美* ; 馬場祐治
Surface Science 532-535(1-3), p.1079-1084(2003) ; (JAERI-J 20290)

 最近開発された回転型飛行時間質量分析装置(R-TOF-MS)と直線偏光放射光を用いて,分子固体表面最上層で起こる結合解離と脱離過程における分子配向効果を研究した.講演では凝縮ギ酸,ホルムアミド,ベンゼンの質量スペクトル,電子収量法,イオン収量法による高分解能NEXAFSスペクトルの偏光角度依存性を報告する.凝集ホルムアミド分子ではC1s→σ*C-H共鳴励起でH+イオン収量が増加する現象に関して顕著な配向効果が観測された.下層からの励起緩和には表面上の分子の結合方向が大きく影響を受けることから,この配向効果には内殻軌道励起による直接解離過程と電荷中性化緩和の両方が起こっていることが重要な役割を果たしていると結論された.また,あるイオン種は偏光依存性を全く示さなかった.例えば,HCOND2においてC1s励起によるD+イオン収量がそうであった.このことから内殻電子励起しても励起された原子から「遠い」結合には必ずしも直接的な解離は起こらず,解離が起こるとすれば2次電子により引き起こされるものと結論した.


310776
RHEED observation of BaTiO3 thin films grown by MBE
米田安宏 ; 阪上潔* ; 寺内暉*
Surface Science 529(3), p.283-287(2003) ; (JAERI-J 20289)

 強誘電体であるチタン酸バリウム薄膜を厚さ10モノレイヤーでチタン酸ストロンチウム基板上にMBEを用いて作製した.作製は同時蒸着と交互蒸着の2種類の方法で行った.成長中はRHEED観察によって薄膜がエピ成長していることを確認し,成長後はX線回折によって,良質の単結晶薄膜であることを確かめた.


310565
The Measurement of molecular fragments from DNA components using synchrotorn radiation
藤井健太郎* ; 赤松憲* ; 横谷明徳
Surface Science 528(1-3), p.249-254(2003) ; (JAERI-J 20119)

 本研究では光イオン化による,DNA損傷のメカニズムを明らかにするために,DNA構成分子からの分子フラグメントを放射光軟X線ビームラインに設置された,残留ガス分析装置によって観測した.DNAの放射線ダメージは変異といった致命的な遺伝子損傷を引き起こすが,一般に以下のように分類される.(1)リン酸エステル結合切断による,単鎖あるいは二重鎖切断,(2)DNAからの塩基の脱離,(3)塩基の化学構造の変化.このうち(2)と(3)の損傷のうちいくつかは塩基除去修復酵素によって修復されると報告されている.しかしながら,塩基の脱離や分子フラグメントの直接的な観測についてはほとんど報告がない.内殻軌道は原子に局在しているため単色軟X線によって引き起こされる内殻励起は,塩基の脱離やDNA中の特定のサイトで起こる分子フラグメントの観測のための重要なプローブとなる.サイト選択的光反応による塩基損傷を調べるため,われわれは窒素や酸素の内殻励起領域での分子フラグメントの直接観察を行うための装置を開発した.実験はSPring-8原研専用ビームラインBL23SUにおいて行った.DNA構成塩基は金をコーティングしたシリコン基板上に真空蒸着し,2-deoxy-D-riboseはスピンコーティングによって薄膜を作成した.脱離種は表面から〜30mm離れた残留ガス分析用質量分析器によって観測した.講演では予備的な実験結果について報告する.


310863
Active control of chemical bond scission by site-specific core excitation
和田眞一* ; 隅井良平* ; 漁剛志* ; 輪木覚* ; 佐古恵理香* ; 関口哲弘 ; 関谷徹司* ; 田中健一郎*
Surface Science 528(1-3), p.242-248(2003) ; (JAERI-J 20356)

 内殻軌道電子が特定原子に局在しているため放射光エネルギーを共鳴励起準位に合わせることにより励起された原子近傍の結合解裂が促進されると期待される.ポリメチルメタクレートポリマー,水素置換メチル基,重水素置換メチル基,エチル基を持つ硫黄系自己組織化膜(SAM)を金基板に吸着した試料を放射光照射した.パルス放射光を組合せた回転型飛行時間質量分析法により生成物を測定した.全ての分子において側鎖だけを選択的に光分解できることがわかった.また放射光の偏光角度を SAM分子の主骨格の角度に合わせたとき反応選択性が最も向上するという新しい現象が見いだされた.


310472
Photoemission spectroscopic study on influence of O2 translational kinetic energy for Si(001) initial oxidation
寺岡有殿 ; 吉越章隆
Surface Science 507-510(1-3), p.797-802(2002) ; (JAERI-J 20038)

 O2超音速分子線を用いてSi(001)表面り初期酸化に対するO2分子の並進運動エネルギーの影響を実験的に研究している.これまでに残留H2O分子の再吸着で形成された部分酸化Si(001)表面の酸化で1.0eVと2.6eVに並進運動エネルギーしきい値が見いだされ,Si-2p,O-1s光電子スペクトルにもそれに対応した変化が見いだされていた.今回は清浄Si(001)面での同様の実験結果を報告する.この場合,しきい値は観測されない.Si-2p光電子スペクトルでは1eV以下であってもSi4+まで酸化が進行することがわかった.つまり清浄Si(001)面では1eV以下でもダイマーのバックボンドまでO原子が拡散するため,そこでの直接的な解離吸着が抑制されると思われる.


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