2003年度

Physical Review B


320114
Structure and energetics of clean and hydrogenated Ni surfaces and symmetrical tilt grain boundaries using the embedded-atom method
志賀基之 ; 山口正剛 ; 蕪木英雄
Physical Review B 68(24), p.245402_1-245402_8(2003) ; (JAERI-J 20648)

 ニッケル表面上,結晶中,傾角対称粒界中へ水素原子が吸収,吸収される位置やその安定化エネルギーをEAMによる原子間ポテンシャルモデルを用いて系統的に計算した.水素の束縛エネルギーは各々の安定サイトによって異なるが,ニッケル表面で2.7-2.9eV程度,傾角対称粒界中で2.1-2.6eV程度であり,結晶中での水素原子束縛エネルギー2.1eVよりも大きい.これらは,第一原理計算から予測された結果と同程度であり,ニッケル粒界に偏析した水素は,粒界の種類によらず脆化を引き起こす可能性が高いことを示している.また,この計算からニッケル表面や粒界の構造緩和が水素トラップの大きさに重要な役割を果たしていることがわかった.


320113
Si(111)-7×7 surface probed by reflection high-energy positron diffraction
河裾厚男 ; 深谷有喜* ; 林和彦* ; 前川雅樹 ; 岡田漱平 ; 一宮彪彦*
Physical Review B 68(24), p.241313_1-241313_4(2003) ; (JAERI-J 20647)

 本論文では,よく収束された20keVの陽電子ビームを用いたSi(111)-7×7再構成表面からの初めての陽電子回折の結果について報告する.1/7次から3/7次の陽電子回折パターンが明瞭に観測された.全反射ロッキング曲線を動力学回折理論によって解析したところ,表面付着原子(アドアトム)が積層欠陥層から約1.52Åの位置にあることが明らかになった.これは,従来の理論値よりも大きな値であり,アドアトムが真空側に大きく変位していることを示している.


320205
Large orbital magnetic moment and its quenching in the itinerant uranium intermetallic compounds UTGa5 (T=Ni, Pd, Pt)
金子耕士* ; 目時直人 ; Bernhoeft, N.* ; Lander, G. H.* ; 石井慶信 ; 池田修悟* ; 常磐欣文* ; 芳賀芳範 ; 大貫惇睦*
Physical Review B 68(21), p.214419_1-214419_9(2003) ; (JAERI-J 20728)

 UTGa5(T=Ni, Pd, Pt)は,強い遍歴性を示す反強磁性体である.この内Ni, Ptでは常磁性状態において,ほぼ同じ結晶構造を持ち,電子構造も酷似しているにもかかわらず,c底面内の最隣接間相互作用の符号が異なっている点は興味深い.粉末中性子回折実験による詳細な結晶構造解析の結果,構造の一部を成すUGa3ブロックの局所的な歪みにT=Ni, Pd, Ptで系統性があることを明らかにした.またTNで磁歪の存在を見出し,それが3者の磁気構造の違いに対応した系統性を示している事を明らかにした.T=Ni, Ptについては,単結晶中性子回折実験から磁気形状因子を明らかにし,軌道磁気モーメントの大きな寄与の存在を明らかにするとともに,その凍結の度合いが,帯磁率における遍歴性と対応して,両者で大きく異なっている事を明らかにした.以上の結果から,UTGa5におけるUGa3ブロックの局所的な歪みが,最隣接間相互作用の符号に加え,磁歪,軌道磁気モーメントの凍結,遍歴性に密接に関与しているとともに,5fの遍歴系において軌道が重要な役割を演じる事を示唆している.


320053
EPR studies of the isolated negatively charged silicon vacancies in n-type 4H- and 6H-SiC; Identification of C3v symmetry and silicon sites
水落憲和* ; 山崎聡* ; 瀧澤春喜 ; 森下憲雄 ; 大島武 ; 伊藤久義 ; 磯谷順一*
Physical Review B 68(16), p.165206_1-165206_11(2003) ; (JAERI-J 20603)

 4H-及び6H-SiC中の負に帯電した孤立シリコン空孔(VSi-)を電子常磁性共鳴(EPR)によって調べた.空孔型の欠陥は,室温での3MeV電子線照射により結晶へ導入した.また,照射後,アルゴン中300℃で熱処理することでC起因の孤立空孔を消滅させた.13Cの超微細相互作用より得られるEPRシグナルを解析した結果,VSi-はSiC中のヘキサゴナルサイト及びキュービックサイトに存在するVSi-(I)とVSi-(II)があることが判明した.さらに,13Cの超微細相互作用シグナルの角度依存性を詳細に調べた結果,VSi-に近接するC原子の配置は通常のテトラヘドラルではなく,ゆがんだ(C3v)対称であることが判明した.


320112
Frozen quasi-long-range order in the random anisotropy Heisenberg magnet
板倉充洋
Physical Review B 68(10), p.100405_1-100405_4(2003) ; (JAERI-J 20646)

 中性子照射した超伝導体において,最近になって低温で冪的秩序を持ったブラッググラス相と呼ばれる相が発見され,ランダム系における新しい秩序状態として注目を集めている.本発表ではこれに類似の現象を示すより単純なモデルである,ランダム異方性を持った磁性体について大規模なシミュレーションを行った.従来の計算は近似的なモデルに限られていたが,本研究ではモデルの大規模な直接計算を行い,理論で予測されていた冪的秩序を確認し,グラス的秩序もあることを初めて指摘した.


311049
Domain boundaries in the GaAs(001)-2×4 surface
高橋正光 ; 米田安宏 ; 山本直昌* ; 水木純一郎
Physical Review B 68(8), p.085321_1-085321_5(2003) ; (JAERI-J 20500)

 従来,GaAs(001)-2×4構造は,電子線回折パターンによって,α・β・γの3つの相に区別されてきた.しかし最近では,これらの構造は基本的には類似しており,αやγの相は,β相の秩序が乱れたものであるという指摘もある.本論文では,その場表面X線回折法により見いだされた,α・γ相に特徴的な構造の乱れについて報告する.α・β・γに相当する表面について,逆格子空間のHK平面内における分数次反射のピークプロファイルを測定したところ,β相と比べ,α・γ相では,ピークが広がるとともに,ピークの位置が[110]方向に移動していることが見いだされた.モデル計算により,このピークの移動は,[110]方向の4倍周期を乱すドメイン境界によるものであることがわかった.この結果に基づき,ドメイン境界の構造について議論をおこなった.


311048
Frustrating interactions and broadened magnetic excitations in the edge-sharing CuO2 chains in La5Ca9Cu24O41
松田雅昌 ; 加倉井和久 ; Lorenzo, J. E.* ; Regnault, L. P.* ; Hiess, A.* ; 白根元*
Physical Review B 68(6), p.060406_1-060406_4(2003) ; (JAERI-J 20499)

 量子磁性体La5Ca9Cu24O41の中性子非弾性散乱実験を行った.この物質はCuO2スピン鎖を有し,低温で反強磁性秩序(鎖内は強磁性的)を示す.結晶構造と磁気構造からは,相互作用は単純であると予想されるが,磁気励起の実験結果,まず一軸性の磁気異方性が大きいことがわかった.また,CuO2スピン鎖の鎖内,鎖間ともに相互作用は弱く(10K以下),特に鎖内では相互作用が反強磁性的であり,さらに鎖内と鎖間の相互作用にはフラストレーションが働いていることがわかった.磁気励起の特徴として線幅が大きく広がっていることが挙げられるが,この原因としてフラストレーションと少量のホールによる無秩序化の効果が考えられる.このように,CuO2スピン鎖は磁気異方性とフラストレーションに由来した興味深い磁気的性質を示すことがわかった.


320115
Experimental determination of the mechanism of the tunneling diffusion of H atoms in solid hydrogen; Physical exchange versus chemical reaction
熊田高之
Physical Review B 68(5), p.052301_1-052301_4(2003) ; (JAERI-J 20649)

 酸素分子の紫外線乖離により生成した固体水素中の水素原子の再結合反応に対する圧力依存性を電子スピン共鳴法を用いて調べた.4.2K以下で13MPaで再結合速度定数は全く圧力に依存しなかった.この結果は固体水素中における水素原子のトンネル拡散が物理拡散ではなくトンネル反応H+H2→H2+H により進行していることを示す.


310955
Crystal structure, magnetic ordering, and magnetic excitation in the 4f-localized ferromagnet CeAgSb2
荒木新吾* ; 目時直人 ; Galatanu, A.* ; 山本悦嗣 ; Thamizhavel, A.* ; 大貫惇睦*
Physical Review B 68(2), p.024408_1-024408_9(2003) ; (JAERI-J 20438)

 CeAgSb2(正方晶ZrCuSi2型)はTc=9.6Kで[001]方向に強磁性モーメント0.4μβ/Ceを伴う磁気秩序を示す.磁気秩序状態における[100]方向の磁化は磁場に対して直線的に増加し,3T付近に折れ曲がりが見られ,3Tでは自発磁化より大きな値,約1.2μβ/Ceに達する.この[100]方向の大きなモーメント・磁化の折れ曲がりの起源を明らかにするため中性子散乱の実験を行った.CeAgSb2の単結晶・粉末試料を用いた弾性散乱の実験では,Tc以下において[100]方向に0.4μβ/Ceの強磁性モールントのみが観測され,基底状態は単純な強磁性であると結論づけられる.非弾性散乱では,5.2meVと12.5meVに結晶場励起が観測された.また,Tc以下では明瞭なスピン波励起を観測しており,強磁性的な相互作用でその分散を説明することができる.磁場中実験の結果,磁化の折れ曲がりは[100]方向の秩序モーメントの消失に起因するものであることがわかり,異方的な相互作用と結晶場を考慮すると,磁化・磁化率・磁歪などが統一的に理解できることがわかった.


310852
X-ray magnetic circular dichroism at the K edge of Mn3GaC
高橋学* ; 五十嵐潤一
Physical Review B 67(24), p.245104_1-245104_5(2003) ; (JAERI-J 20345)

 Mn3GaC強磁性相のK端におけるX線磁気円二色性の起源を,第一原理計算に基づき研究した.LDAに基づき,スピン軌道相互作用を取り入れて,Mn及びGaのK端におけるスペクトルを計算し,実験とよく一致する結果を得た.スペクトルの構造のそれぞれに対応する過程を解析し,p状態の軌道分極の機構をはっきりさせた.また,総和則を導いた.


310954
Magnetic ordering and spin dynamics in potassium jarosite; A Heisenberg kagome lattice antiferromagnet
西山昌秀* ; 前川覚* ; 稲見俊哉 ; 岡与志男*
Physical Review B 67(22), p.224435_1-224435_11(2003) ; (JAERI-J 20437)

 ハイゼンベルグかごめ格子反強磁性体であるポタシウムジャロサイトのスピンダイナミクスをNMRで調べた.秩序相でのスピン格子緩和時間は温度の低下とともに急速に減少し,これは,15Kのエネルギーギャップを持ったスピン波の2マグノンプロセスでよく説明できる.また副格子磁化の温度依存性もスピン波の存在を支持する.これらの結果はフラストレートした古典カゴメ格子反強磁性体の低エネルギー励起がスピン波で記述できるという初めての実験的証拠である.われわれは一イオン性異方性をいれたq=0構造でのスピン波を計算し,ハイゼンベルグかごめ格子反強磁性体のスピン揺らぎの特徴に付いて議論する.


310768
Neutron scattering study of magnetic ordering and excitations in the doped spin-gap system Tl(Cu1-xMgx)Cl3
大沢明* ; 藤澤真士* ; 加倉井和久 ; 田中秀数*
Physical Review B 67(18), p.184424_1-184424_8(2003) ; (JAERI-J 20281)

 ドープされたスピンギャップ系Tl(Cu0.97Mg0.03)Cl3における不純物誘起反強磁性秩序での磁気構造及び磁気励起を調べるために中性子散乱実験を行った.その結果,TN=3.45K以下で磁気ブラッグ散乱を観測し,磁気構造を決定した.その結果,この磁気構造は母体物質であるTlCuCl3の磁場誘起秩序相の磁気構造と同じであることがわかった.またTlCuCl3と同様に三重項磁気励起を観測し,その磁気励起の分散関係を決定した.そして,スピンギャップに対応する最小エネルギー励起も観測した.またそのスピンギャップの温度変化を調べた結果,TN以下で急激に増大する振る舞いが見られた.この結果はこの系において,不純物誘起反強磁性秩序とスピンギャップが共存しているのを強く主張している.


320204
Vibronic mechanism of high-Tc superconductivity
立木昌* ; 町田昌彦 ; 江上毅*
Physical Review B 67(17), p.174506_1-174506_12(2003) ; (JAERI-J 20727)

 高温超伝導体に対して最近中性子非弾性散乱やSpring8等で実験が行われ,フォノン分散の異常(ソフトニング)が発見されている.また,光電子分光の実験でも電子構造に平坦なバンド構造が見られ,極めて異常な様相が明らかになってきた.本研究では,これらの実験結果をもとに,電荷揺らぎが低エネルギー(60meV程度まで)領域にまでソフト化し,電荷のオーバースクリーニングが起こるという条件を仮定することで,フォノンが非常に強く電子系と結合し,高温超伝導を引起こす強い電子間引力を与えることを発見した.また,その機構のもと,エリアシュベルク方程式を数値的に解き,超伝導ギャップ波動関数を求めた.結果は高温超伝導の特質を再現したため,上記機構が高温超伝導の本質であると結論づけた.


310767
Nearly localized nature of f electrons in CeTIn5 (T=Rh, Ir)
藤森伸一 ; 岡根哲夫 ; 岡本淳* ; 間宮一敏* ; 村松康司 ; 藤森淳* ; 播磨尚朝* ; 青木大* ; 池田修悟* ; 宍戸寛明* ; 常盤欣文* ; 芳賀芳範 ; 大貫惇睦*
Physical Review B 67(14), p.144507_1-144507_5(2003) ; (JAERI-J 20280)

 層状Ce化合物であり,磁性と超伝導の競合を示すCeTIn5 (T=Rh, Ir)に対して,紫外線光源による角度分解光電子分光と,放射光による3d-4f共鳴光電子分光を行った.実験の結果,両化合物においてCe 4f電子はほとんど局在しており,両者の電子状態が似通っていることが明らかとなった.


310851
Polarization dependence of spin excitations in BaCu2Si2O7
Zheludev, A.* ; Raymond, S.* ; Regnault, L. -P.* ; Essler, F. H. L.* ; 加倉井和久 ; 増田隆嗣* ; 内野倉國光*
Physical Review B 67(13), p.134406_1-134406_10(2003) ; (JAERI-J 20344)

 典型的なS=1/2ハイゼンベルグ擬一次元系BaCu2Si2O7における磁気励起の偏極依存性を波数とエネルギーの関数として測定した.その横揺らぎの成分は平均場の近似の理論結果と良い一致を示すが,縦揺らぎの成分に関しては平均場の近似では実験結果を説明できないことが明らかになった.その理由は平均場の近似では考慮されていない高次の相関効果のためと推測される.


310554
Construction of a microscopic model for f-electron systems on the basis of j-j coupling scheme
堀田貴嗣 ; 上田和夫*
Physical Review B 67(10), p.104518_1-104518_16(2003) ; (JAERI-J 20108)

 f-電子系に対する微視的模型をj-j結合描像に基づいて構築する.得られた模型は,f-電子のホッピング項,クーロン相互作用項,結晶場項から成るが,2のスピン自由度と3つの軌道自由度を有する軌道縮退ハバードモデルとみなすことができる.実用上は,3つの軌道のうち1つを捨てることでさらに簡単化された2軌道モデルが便利である.ここでは,その内の1つの模型を厳密対角化法で解析し,さまざまな相関関数を測定することによって基底状態の性質を調べる.その計算結果を,最近発見された新しい重い電子系超伝導体CeMIn5(M=Ir, Rh, Co)の実験結果と比較する.さらに,CeMIn5,UMGa5,PuCoGa5などの115系と総称されるf-電子化合物の超伝導及び反強磁性を微視的な観点から理解する包括的なシナリオを議論する.


310553
Existence of a metallic ferromagnetic phase in models for undoped manganites
堀田貴嗣
Physical Review B 67(10), p.104428_1-104428_8(2003) ; (JAERI-J 20107)

 ドープされていないマンガン酸化物の強磁性状態における新しい金属絶縁体転移の存在が,ヤーンテラー歪みと強く結合するeg-軌道縮退ハバード模型の数値的手法による解析に基づいて議論される.基底状態相図を電子・フォノン結合定数λとクーロン相互作用uによって定義される平面に描くと,銅酸化物に対する標準的な1バンドハバード模型とは対照的に,このeg-軌道縮退ハバード模型においては,ハーフフィリングでも,λとuの有限の値に対して金属相が存在することがわかった.これは,フェルミ面の形状が,絶縁体相に特有の交替軌道秩序と整合しないためである.以上の結果に基づき,ドープされていないマンガン酸化物における超巨大磁気抵抗効果の新しいシナリオが議論される.


310853
Doping effects of Ru in L0.5Sr0.5CoO3 (L=La, Pr, Nd, Sm, and Eu)
吉井賢資 ; 阿部英樹*
Physical Review B 67(9), p.094408_1-094408_8(2003) ; (JAERI-J 20346)

 L0.5Sr0.5Co1-xRuxO3(L=La, Pr, Nd, Sm, 及び Eu)の構造・磁性・電気伝導について調べた.結晶構造はほとんどの物質で斜方晶ペロブスカイト構造Pnmaであった.Ruをドープしていない酸化物(x=0)はキュリー温度が250から140Kの強磁性金属であるが,Ruをドープすることによって強磁性が抑えられるとともに金属性が消失し絶縁体になることがわかった.逆帯磁率データからは,Ruドープにより磁気相互作用が反強磁性的になることが見出された.また,L0.5Sr0.5Co0.8Ru0.2O3(L=Sm 及びEu)では,50-60Kにスピングラス的挙動が見られた.磁性におけるこの変化をRuドープによるCoのスピン状態などと関連付けて説明した.


310769
Neutron diffraction study of field-cooling effects on the relaxor ferroelectric Pb[(Zn1/3Nb2/3)0.92Ti0.08]O3
大和田謙二* ; 廣田和馬* ; Rehrig, P. W.* ; 藤井保彦* ; 白根元*
Physical Review B 67(9), p.094111_1-094111_8(2003) ; (JAERI-J 20282)

 高電場−高温度のもと,中性子回折実験を注意深く行った結果,PZN-8%PTの分極回転の経路に関する詳細な温度電場相図を完成させた.これによりPZN-8%PTの温度−電場経歴依存性が明らかになった.さらにゼロ電場中冷却で今まで菱面体相と考えられてきた相が,実はもっと対称性の低い相であることがわかった.われわれはこの相をX相と名づけた.


310556
Magnetic resonant X-ray scattering in KCuF3
高橋学* ; 薄田学* ; 五十嵐潤一
Physical Review B 67(6), p.064425_1-064425_7(2003) ; (JAERI-J 20110)

 KCuF3におけるCuのK端での磁気共鳴X線散乱スペクトルを第一原理計算から求めた.フルポテンシャルLAPW法を用いて,格子歪みは実験から得られたものを入力した.スピン軌道相互佐用を考慮することで,磁気秩序に対応する超格子点でのブラッグ強度の実験結果を良く再現する結果を得た.また,軌道秩序に対応する超格子点でのブラッグ強度もよく再現でき,その強度が格子歪から来ていることを明らかにすることができた.


310555
Orbital excitations in LaMnO3 studied by resonant inelastic X-ray scattering
稲見俊哉 ; 福田竜生 ; 水木純一郎 ; 石原純夫* ; 近藤浩* ; 中尾裕則* ; 松村武* ; 広田和馬* ; 村上洋一* ; 前川禎道* ; 遠藤康夫*
Physical Review B 67(4), p.045108_1-045108_6(2003) ; (JAERI-J 20109)

 軌道整列したマンガン酸化物LaMnO3を共鳴非弾性X線散乱で研究した.入射X線のエネルギーをMnのK吸収端近傍に持って行くと,スペクトルに3つのピークが現われ,その励起エネルギーは2.5eVと8eV,11eVであった.8eVと11eVのピークは,それぞれ,酸素の2pバンドからマンガンの3dと4s/4pバンドへの遷移と考えられる.一方,2.5eVのピークはモットギャップ間の軌道励起と考えられ,これは,d2-r2とd3y2-r2の軌道対称性を持つ下部ハバードバンドからdy2-z2とdz2-x2 の軌道対称性を持つ上部ハバードバンドへの電子励起である.この2.5eVの励起の弱い分散関係と特徴的な方位角依存性は軌道縮重と電子相関を考慮した理論でよく再現された.


310463
Orbital ordering in UGa3; Detection by 69Ga NMR
神戸振作 ; 加藤治一* ; 酒井宏典* ; Walstedt, R. E.* ; 青木大* ; 芳賀芳範 ; 大貫惇睦*
Physical Review B 66(22), p.220403_1-220403_4(2002) ; (JAERI-J 20029)

 重い電子系反強磁性体UGa3(ネール温度67K)のGa NMRを常磁性及び反強磁性状態で測定し,ナイトシフトKの温度依存を求めた.静帯磁率の温度依存と併せて,K-静帯磁率プロットを求めた.このプロットの傾きは超微細相互作用定数に対応している.この超微細相互作用定数が常磁性状態と反強磁性状態では符号も逆転して大きく異なることを見出した.また反強磁性状態中でおきる40Kでの転移でも超微細相互作用定数が変化することも見出した.この超微細相互作用定数の変化は電子状態が大きく変化していることに対応しているが,このような大きな変化が見られた例は少ない.このことはこの反強磁性転移が何らかの電荷分布の大きな変化を伴なっていることを示している.


310766
Coarsening dynamics and surface instability during ion-beam-assisted growth of amorphous diamondlike carbon
Zhu, X. D.* ; 楢本洋 ; Xu, Y.* ; 鳴海一雅 ; 宮下喜好*
Physical Review B 66(16), p.165426_1-165426_5(2002) ; (JAERI-J 20279)

 フラーレンの蒸着と同時にイオン照射を行い,炭素同素体変換過程を含んだ蒸着とスパッターリングが競合するなかで誘起されるナノサイズのパターン形成について考察した論文である.通常炭素系非晶質に対するイオン照射では表面が平滑化するの通常の結論であるが,ここでは逆の結果が得られた.これは,フラーレンへのイオン照射による同素体変換によりどのような結合状態の炭素物質が核生成するかに依存することを示した.


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