2003年度

Physica C


310953
Test results of 60-kA HTS current lead for fusion application
礒野高明 ; 河野勝己 ; 濱田一弥 ; 松井邦浩 ; 布谷嘉彦 ; 原英治* ; 加藤崇 ; 安藤俊就* ; 奥野清 ; 坊野敬昭* ; 富岡章* ; 讃岐育孝* ; 榊喜善* ; 今野雅行* ; 上出俊夫*
Physica C 392-396(Part2), p.1219-1224(2003) ; (JAERI-J 20436)

 核融合応用を目的として,4.2Kへの熱浸入の少ない60kA高温超伝導(HTS)電流リードの開発及び試験を行った.本HTS電流リードは,低熱浸入量だけではなく,事故時の安全性も考慮した設計となっている.HTS電流リードは,強制冷凍の銅リード部と伝導冷却のHTSリード部から構成される.HTSリード部は,288本の銀合金シース型Bi-2223テープをステンレスのチューブ上に円筒状に配置しており,自己磁場のテープに対して垂直な成分を減少させることにより,HTSの臨界電流の低下を抑える工夫を行っている.さらに銀合金として,熱伝導を減少させるため10%の金を含んだ銀を使用している.HTS部の直径は146mm,長さは300mmである.試験の結果,世界最高記録である60kA通電に成功した.この時の銅リード部の冷媒条件は入口温度20Kで冷媒流量3.2g/s,4.2Kへの熱浸入量は5.5Wであり,冷凍機電力としては従来の電流リードと比較して1/3まで減らすことができた.この結果により,核融合用大型HTS電流リードの技術が確立できた.


310765
Flux quantanization in a superconducting microdisk
畑慶明* ; 鈴木淳市 ; 掛谷一弘* ; 門脇和男* ; 小田原成計* ; 永田篤士* ; 中山哲* ; 茅根一夫*
Physica C 388-389(1-4), p.719-720(2003) ; (JAERI-J 20278)

 近年,微細加工技術の発展とともに,微小領域(マイクロメーターからナノメーターオーダー)に束縛された超伝導体の磁束状態に興味が持たれている.通常の超伝導体では,磁束はφ0に量子化されて超伝導体中に分布する.しかし,微小な超伝導体では超伝導体の大きさや形状に依存した磁束の配列が実現することが理論的に示されている.例えば,微小超伝導Diskでは外形の対称性を維持するために中央に外部磁場に対応して,量子磁束の整数倍の磁束強度を持つ巨大磁束が安定である.しかし,このような超伝導体の磁束観察に関する研究の報告はほとんど存在しない.そこで,走査型SQUID顕微鏡を用いてYBCO-Diskの磁束配列の観察を試みた.試料はFIB(Forcused Ion Beam)加工を用いて作成し,直径は50μmである.走査型SQUID顕微鏡による磁束観察の結果,Disk中の磁束は外部磁場の増大に伴い個数が増加した.全ての磁束は量子化されており,巨大磁束は存在しなかった.


310764
Electrochemical synthesis of superconductive MgB2 from molten salts
吉井賢資 ; 阿部英樹*
Physica C 388-389(1-4), p.113-114(2003) ; (JAERI-J 20277)

 われわれは最近,MgCl2,NaCl, KCl, MgB2O4の混合融液をアルゴン雰囲気下で電析することにより,超伝導体MgB2が合成できることを見出した.試料の超伝導性については,帯磁率及び電気抵抗測定により確認した.電気抵抗がゼロになる試料が作成できたことは,本手法がデバイス作成へ応用できる可能性を示唆する.本発表では,試料作成の最適条件を見出すため,NaClをLiFなど他のアルカリハライドに置換することによる試料の超伝導特性の変化について調べた.


310849
Superconductivity of MI(MII0.5,Si0.5)2(MI=Sr and Ba, MII=Al and Ga), ternary silicides with the AlB2-type structure
今井基晴* ; 西田憲二* ; 木村隆* ; 北澤英明* ; 阿部英樹* ; 鬼頭聖* ; 吉井賢資
Physica C 382(4), p.361-366(2002) ; (JAERI-J 20342)

 三元系シリコン化合物MI(MII0.5,Si0.5)2 (MI=Sr及びBa, MII=Al及びGa)をアーク溶解法で合成した.X線回折からは,これらがAlB2型の結晶構造を持っていることがわかった.電気伝導及び磁化測定からは,Sr(Al0.5,Si0.5)2が4.2Kで超伝導転移を示すが,Ba(Al0.5,Si0.5)2は2Kより上の温度で超伝導を示さないことがわかった.また,Sr(Ga0.5,Si0.5)2とBa(Ga0.5,Si0.5)2もそれぞれ5.1Kと3.3K以下の温度で超伝導になることがわかった.


310609
Structural change by high-energy ion irradiation and post-annealing in EuBa2Cu3Oy
佐藤浩行* ; 石川法人 ; 岩瀬彰宏 ; 知見康弘 ; 橋本健男* ; 道上修*
Physica C 378-381(Part1), p.527-530(2002) ; (JAERI-J 20144)

 酸化物超伝導体は,高エネルギーイオン照射による高密度電子励起により,その軌跡に沿って柱状欠陥を生成する.今回は,酸素量を変えたEuBa2Cu3Oy(y=7, y=6)に200MeV Auイオンを室温で照射し,その後熱処理を行った.照射後の試料を酸素雰囲気中で熱処理(550℃)することで,c軸の格子定数は完全に回復した.ここで,生成された柱状欠陥は,熱処理では回復しないと思われる.したがって,ピニングセンターとしての柱状欠陥を残しつつ,超伝導性を回復することができるものと思われる.このように,柱状欠陥の質や数を,照射と照射後のアニールを組み合わせることにより制御することができる.


310551
Vortex charge in the superconducting state
町田昌彦 ; 小山富男*
Physica C 378-381(Part1), p.443-447(2002) ; (JAERI-J 20105)

 最近,超伝導磁束量子コア近傍における電荷の分布が注目され,幾つかの条件下では電荷の中性条件が破れているという提案がなされてきた.また,高温超伝導体に対して電荷分布を実際に測定するという実験も行われ,実際に磁束コア近傍には電荷が堆積していることが確かめられている.こうした事情を背景とし,報告者らはこれまでの現象論的解釈を越え,微視的BCS理論をもとにして電荷分布を計算する理論を構築し,実際に数値シミュレーションによりその分布を求めた.その結果,電荷分布は磁束中心を中心として超伝導コヒーレンス長程度の振動を見せながら減衰することがわかった.


310763
Vortex imaging of magnetic superconductor HoNi2B2C by scanning SQUID microscopy
畑慶明* ; 鈴木淳市 ; 掛谷一弘* ; 門脇和男* ; 中山哲* ; 永田篤* ; 小田原成計* ; 茅根一夫*
Physica C 378-381(Part1), p.420-423(2002) ; (JAERI-J 20276)

 第二種超伝導体では,ある一定以上の磁場の下で超伝導体内部に量子化された磁束が侵入する.走査型SQUID顕微鏡を用いると,この量子化された磁束の振る舞いを直接観察することができる.磁性超伝導体では,磁性イオンを含まない超伝導体とは違い,この量子磁束に内部構造が見られることが理論的に示されている.しかし,その直接観察の例はこれまでにほとんど報告されていない.そこで,走査型SQUID顕微鏡を用いて磁性超伝導体RENi2B2Cの量子磁束観察を行った.磁性超伝導体RENi2B2C系は低温での磁気的性質は磁性を担う希土類イオンの種類により大きく異なる.ErNi2B2Cではクラスター状に分布した量子化された磁束量子が観測され,印加磁場の増大にともなう磁束量子の密度の増加がみられた.磁性イオンを持たないYBCOの観察結果と比較的類似した結果が得られた.これに対してHoNi2B2Cでは量子磁束の数倍の強度を持つ大きな磁束とその周辺に逆向きの磁束分布が観測された.これは試料の持つ磁気モーメントと超伝導体中に侵入した磁束の和が量子化条件を満足するために見られる現象で,このような現象を直接観察したのはこれが初めてである.


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