2003年度

Journal of Physics: Condensed Matter


320104
X-ray structural studies on elemental liquids under high pressures
片山芳則 ; 辻和彦*
Journal of Physics; Condensed Matter 15(36), p.6085-6103(2003) ; (JAERI-J 20638)

 いくつもの元素液体の高圧におけるX線構造研究がレビューされる.シンクロトロン放射光源と大容量プレスを組合せることによって,数ギガパスカルまでの高圧下における構造のその場測定を行うことが可能になった.これらの測定から,液体アルカリ金属の圧縮は等方的であるのに対し,結合に共有的な要素を持った液体の圧縮はほとんどの場合,非等方的であることがあきらかになった.幾つかの元素では,異なった種類の体積依存性が異なった圧力領域で観察される.この振る舞いは液相を幾つかの領域にわけることが可能であることを示唆する.観察された構造変化のほとんどは連続的であるが,液体リンでは,約1GPa, 1050℃で,圧力幅0.05GPa以下で完了する急激な構造変化が観測された.この発見は1次の液体−液体相転移の存在を支持するものである.


310940
Superconductivity in the orbital degenerate model for heavy fermion systems
瀧本哲也* ; 堀田貴嗣 ; 上田和夫*
Journal of Physics: Condensed Matter 15(28), p.S2087-S2093(2003) ; (JAERI-J 20423)

 軌道縮退のある系では軌道自由度とスピン自由度の結合効果により,さまざまな興味深い現象の出現が期待されている.特に,そのような系の超伝導については,クーパー対形成や発現機構等に関して,軌道自由度が重要な要素の1つになっていると考えられる.一方,重い電子系超伝導物質中の準粒子は,f-電子の大きな軌道縮重度のために潜在的な軌道自由度を持っていると考えられる.われわれは,軌道縮退のある系における超伝導を扱うために,軌道自由度を有する微視的なf-電子モデルにゆらぎ交換(FLEX)近似を適用した.これにより以下のような結論が得られた.(1)反強磁性相の隣にd-波の対称性を持つ超伝導相が出現する.(2)2つの軌道のエネルギー分裂の増大に伴って超伝導転移温度が増大する.これらから,軌道のエネルギー分裂は,反強磁性からd-波超伝導への転移をコントロールするパラメーターであることが帰結される.


320103
Ga nuclear magnetic resonance study of UTGa5(T=Ni, Pt)
加藤治一* ; 酒井宏典* ; 徳永陽 ; 常盤欣文* ; 池田修悟* ; 大貫惇睦* ; 神戸振作 ; Walstedt, R. E.*
Journal of Physics; Condensed Matter 15(28), p.S2001-S2005(2003) ; (JAERI-J 20637)

 HoCoGa5型構造をとるUPtGa5, UNiGa5はともに,Uのもつ5f電子が遍歴的に振る舞い,TN=26K(Pt), 86K(Ni)で長距離秩序化する.常磁性層でのFermi面は両化合物でほぼ同一であり,またPt,Ni原子のp軌道は磁性に本質的にかかわりないことが示唆されているにもかかわらず,中性子回折実験で示されたTN以下での磁気構造はUPtGa5,UNiGa5で互いに相異なる.われわれは,微視的な観点からこの系の磁性を明らかにしようと常磁性相,磁気秩序相それぞれにおいて69,71Ga核についてNMR/NQR実験を行った.常磁性相で得られたナイトシフトKと,静帯磁率χはそれぞれ,温度に依存しないconst項とCurie-Weiss的な温度変化する項に分離できる.このことを手がかりに,特にスピンと軌道の役割の違いに注目して,この系の磁性について考察する.


310837
Magneic order of UGa3 investigated by means of neutron scattering under uniaxial pressure
中村充孝* ; 松田達磨* ; 加倉井和久 ; Lander, G. H.* ; 河原崎修三* ; 大貫惇睦*
Journal of Physics: Condensed Matter 15(28), p.S1997-S2000(2003) ; (JAERI-J 20330)

 UX3系ではXを変化させることによってウラン5f電子との混成効果が制御され,さまざまな磁気的性質を示す.その物理的起源については未解明の部分が多く,今回試料として選んだUGa3では全磁気モーメントの方向さえ決定的な結論が得られていない.対称性の高い結晶構造(AuCu3型)を持つUX3系では通常,マルチドメイン構造のために中性子回折では全磁気モーメントの方向を一意に決定することができない.しかし,今回われわれは一軸圧下でUGa3の非等方的なドメイン構造を誘起することに成功し,偏極中性子回折実験によりドメイン分布を定量的に決定することができた.その結果,UGa3の磁気モーメントの方向が[011]軸に沿っていることが明らかになった.


310939
Higher-order collinear interaction and magnetic excitation in the 5f localized system U3Pd20Si6
目時直人 ; 小池良浩* ; 芳賀芳範 ; 金子耕士* ; 荒木新吾* ; McEwen, K. A.* ; 神木正史* ; 阿曽尚文* ; Lander, G. H.* ; 小松原武美* ; 木村憲彰* ; 青木晴善* ; 大貫惇睦*
Journal of Physics: Condensed Matter 15(28), p.S1957-S1963(2003) ; (JAERI-J 20422)

 ウラン局在系U3Pd20Si6の磁気構造,スピン波励起と結晶場励起,そして低エネルギーの励起について,報告する.この物質はウラン化合物としてはめずらしく局在的な5f電子状態を持つ.4aサイトと8cサイトのウランの高次の相互作用にともなう,磁気相図,コリニアーな磁気構造について議論する.さらに,磁気励起についても5f電子のへん歴・局在性の観点から議論する.


310836
Crystalline electric field excitations in CeAgSb2
荒木新吾* ; 目時直人 ; Thamizhavel, A.* ; 大貫惇睦*
Journal of Physics: Condensed Matter 15(23), p.S2179-S2182(2003) ; (JAERI-J 20329)

 CeAgSb2(正方晶ZrCuSi2型)はTc=9.6Kで[001]方向に強磁性モーメント0.4μB/Ceを伴う磁気秩序を示す.磁気秩序状態における[100]方向の磁化は磁場に対して直線的に増加し,3T付近に折れ曲がりが見られ,3Tでは自発磁化より大きな値,約1.2μB/Ceに達する.この[100]方向の大きなモーメント・磁化の折れ曲がりの起源を明らかにするため中性子散乱の実験を行った.CeAgSb2の単結晶・粉末試料を用いた弾性散乱の実験では,Tc以下において[100]方向に0.4μB/Ceの強磁性モーメントのみが観測され,基底状態は単純な強磁性であると結論づけられる.非弾性散乱では,5.2meVと12.5meVに結晶場励起が観測された.また,Tc以下では明瞭なスピン波励起を観測しており,強磁性的な相互作用でその分散を説明することができる.磁場中実験の結果,磁化の折れ曲がりは[100]方向の秩序モーメントの消失に起因するものであることがわかり,異方的な相互作用と結晶場を考慮すると,磁化・磁化率・磁歪などが統一的に理解できることがわかった.


310546
Defect-induced phase separation in relaxor Pb(In1/2Nb1/2)O3 crystals
米田安宏 ; 松本徳真 ; 寺内暉* ; 安田直彦*
Journal of Physics: Condensed Matter 15(3), p.467-474(2003) ; (JAERI-J 20100)

 Pb(In1/2Nb1/2)O3単結晶の熱分析を行った.秩序相と無秩序相における相転移温度の不安定性は,格子欠陥モデルを導入することによって説明できることがわかった.


310545
Synchrotron radiation studies on pressure-induced structural changes in liquids and glasses
片山芳則 ; 稲村泰弘*
Journal of Physics: Condensed Matter 15(1), p.S343-S350(2003) ; (JAERI-J 20099)

 放射光と大容量プレスの組み合わせによって,数GPaまでの圧力,1500Kまでの温度範囲で,液体やガラスの構造変化をその場観察することが可能になった.X線回折,XAFS,X線吸収による密度測定,ラジオグラフィー法による粘性測定など,いくつもの方法がこの目的のために現在,適用可能である.われわれは元素の液体を系統的に研究し,液体セレンにおいては,特徴的な構造変化が狭い圧力温度領域で起こることを見いだした.さらに,われわれは,液体リンで急激な構造変化を発見した.リンについての実験結果は,この変化が一次の液体−液体転移であることを支持する.本講演では,現在行っている石英ガラスで急激な構造変化を検出する試みや,高圧下の水のX線回折研究についても報告する.


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