2003年度

Fusion Engineering and Design


311023
Use of micro gas chromatography in the fuel cycle of fusion reactors
Laesser, R.* ; Gruenhagen, S.* ; 河村繕範
Fusion Engineering and Design 69(1-4), p.813-817(2003) ; (JAERI-J 20474)

 核融合炉ではさまざまなガスの分析を必要とし,ガスクロマトグラフは,その有力な測定・分析手段である.従来のガスクロマトグラフの欠点は,水素同位体組成の分析に約30分以上と長い時間を要することである.近年開発を進めた低温マイクロガスクロマトグラフはそれをほぼ3分に短縮した.本論文では,核融合炉燃料サイクルにおける水素同位体と不純物のガス分析について,マイクロガスクロマトグラフの有効性を示し,利点と問題点を議論する.


320096
Numerical evaluation of experimental models to investigate the dynamic behavior of the ITER tokamak assembly
小野塚正紀* ; 武田信和 ; 中平昌隆 ; 清水克祐* ; 中村友道*
Fusion Engineering and Design 69(1-4), p.757-762(2003) ; (JAERI-J 20630)

 ITERトカマクの動的挙動について検討した.動的な事象,おもに地震時の数値解析手法検証のために,3種類の試験モデルが考えられている.振動試験のため,1998年時ITER設計ベースにて1/8サイズのトカマクモデルが製作されている.このモデルでは,静的荷重に対するトカマクの剛性,固有振動数,及び地震力に対する振動及び応答特性を把握する.減衰などの非線形の振動特性は,実寸大のモデルでしか把握できない.したがって,実寸大のコイル重力支持構造が設計されており,試験を予定している.またトカマクモデルでは真空容器が剛と仮定されている.この仮定は1/20モデルにて実証されるとしている.上述の試験モデルと試験条件は,解析及び数値計算にて評価された.例えば,静的解析及び固有値解析にて得られた静的及び動的ばね定数はよく一致した.


311022
Thermal conductivity of neutron irradiated Be12Ti
内田宗範* ; 石塚悦男 ; 河村弘
Fusion Engineering and Design 69(1-4), p.499-503(2003) ; (JAERI-J 20473)

 原型炉用中性子増倍材として期待されているBe12Tiについて,ブランケット内での熱的特性を評価するために,未照射及び中性子照射したBe12Tiの熱伝導率を測定した.ベリリウム及びチタンの粉末からHIP法で製作したBe12Tiサンプル(φ8 mm×t2mm) をJMTRで高速中性子フルエンス(E>1MeV) 4×1020 n/cm2の条件で330,400 and 500℃において照射した.熱拡散率と比熱をレーザーフラッシュ法にて1000℃まで測定し,熱伝導率を計算した.中性子照射したBe12Tiは,照射による熱伝導率の低下が見られたが,充填層の有効熱伝導率を計算モデルにより推測したところ,十分に設計可能な範囲内であった.


311021
Elementaly development for beryllide pebble fabrication by rotating electrode method
内田宗範* ; 河村弘 ; 宇田実* ; 伊藤義夫*
Fusion Engineering and Design 69(1-4), p.491-498(2003) ; (JAERI-J 20472)

 微小球製造法である回転電極法によるアーク加熱で破損しない十分な延性を持ったベリリウム金属間化合物製回転電極棒を製造するため,ベリリウム金属間化合物の製造性についての要素技術開発を実施した.候補材料のひとつであるBe12Tiについて真空アーク溶解炉を用いて溶解法による試作を行った結果,HIP(高温等方加圧法)に比べて気孔の少ない材料が得られたが,脆性を改善するに至らなかった.金相組織と延性の関係を調べるために,5at%,7.7at%(化学量論値),9at%及び15at%の組成を持つ試料を製作して,硬度測定と組織観察を実施した結果,室温における硬度はそれぞれ650,1100,1160及び1230であった.また,Be-5at%Tiが最も微細な金相組織であり,Be12TiとαBeからなることがわかった.この試料から電極棒を製作して,回転電極法を実施したところ,電極棒は割れることなくBe12TiとαBeの組織を持つ微小球が得られた.αBeを利用することによって,延性を与えることが可能であった.


311020
Improvement of sintered density of Li2TiO3 pebbles fabricated by direct-wet process
土谷邦彦 ; 河村弘 ; 内田宗範* ; Casado. S.* ; Alvani, C.* ; 伊藤義夫*
Fusion Engineering and Design 69(1-4), p.449-453(2003) ; (JAERI-J 20471)

 核融合炉ブランケットで用いられるトリチウム増殖材として,低温でのトリチウム放出性,化学的安定性等の観点から,チタン酸リチウム(Li2TiO3)微小球が注目されている.これまで,Li2TiO3溶液からLi2TiO3微小球を製造できる直接湿式法を提案し,Li2TiO3微小球の予備製造試験を行ったが,目標焼結密度(80〜85%T.D.)の微小球を得ることが出来なかった.そのため,Li2TiO3の溶解,ゲル球の生成及び焼結の各プロセスについて技術開発を行った.各種の溶媒を用いた溶解試験の結果,Li2TiO3は30%過酸化水素水で室温でも完全に溶解できた.この溶解液の粘性を調整し,アセトン中に滴下することにより,割れの少ないゲル球を製造できるとともに,こうして得られたゲル球を焼結することにより結晶粒径5μm以下で目標焼結密度を満足した微小球を製造できることを明らかにした.


311019
Effect of TiO2 on the reduction of lithium titanate induced by H2 in the sweep gas
土谷邦彦 ; Alvani, C.* ; 河村弘 ; 山田弘一* ; Casado. S.* ; Contini, V.*
Fusion Engineering and Design 69(1-4), p.443-447(2003) ; (JAERI-J 20470)

 核融合炉ブランケットのトリチウム増殖材であるチタン酸リチウム(Li2TiO3)微小球の湿式法による製造に際しては,微細な結晶粒径を得るために酸化物(TiO2等)の添加が不可欠である.しかしながら,TiO2を添加したLi2TiO3の化学的特性については明らかにされていない.そのため,スイープガス中の水素によるLi2TiO3のTiO2添加量に対する還元効果を調べた.この結果,500-800℃の温度範囲では,TiO2を添加したLi2TiO3の還元反応率は,TiO2を添加しない場合より減少することが分かった.また,Li2TiO3にTiO2を添加したものは,水分及び不純物ガスの吸着量がTiO2を添加しない場合より小さく,ブランケット初期装荷時におけるスイープガス中への不純物ガスの放出が低減できた.


311018
Evaluation of effective thermal diffusivity of Li2TiO3 pebble bed under neutron irradiation
河村弘 ; 菊川明広* ; 土谷邦彦 ; 山田弘一* ; 中道勝 ; 石塚悦男 ; 榎枝幹男 ; 伊藤治彦
Fusion Engineering and Design 69(1-4), p.263-267(2003) ; (JAERI-J 20469)

 JMTRにて中性子パルス運転模擬照射試験体の照射試験を行い,ITERブランケットテストモジュールを設計するうえで必要不可欠な中性子照射下のチタン酸リチウム(Li2TiO3)微小球充填層中の見かけの熱拡散率を調べた.定速昇温法により測定した結果,Li2TiO3微小球充填層の見かけの熱拡散率は,照射温度と中性子照射量の増加とともに減少することがわかった.一方,スイープガス流量の影響は,0〜600cm3/minの間では見られなかった.


311017
Design and analysis of plasma position and shape control in superconducting Tokamak JT-60SC
松川誠 ; 石田真一 ; 逆井章 ; 浦田一宏* ; 仙田郁夫* ; 栗田源一 ; 玉井広史 ; 櫻井真治 ; 三浦友史 ; 正木圭 ; 島田勝弘 ; 寺門恒久
Fusion Engineering and Design 66-68(1-4), p.703-708(2003) ; (JAERI-J 20468)

 本論文は,完全超伝導コイル化したJT-60装置(JT-60SC)における,プラズマ断面位置形状制御について述べるものである.基本的には,トロイダル磁場コイルの周辺に設置した超伝導ポロイダル磁場コイル(EFコイル)に低速なプラズマ断面形状位置制御を,また真空容器内に設置した常伝導コイルに高速な垂直・水平位置の制御を分担させるハイブリッド制御である.EFコイルの制御電圧は,いずれのコイルでも周回電圧で数V以下と非常に小さく,容器内コイルでさえ高々数10Vである.しかしながら,これにより十分な制御応答性の確保と電源容量の最小化が実現できることが,線形化グラッドシャフラノフ方程式を用いた数値シミュレーションにより示された.


320017
Accelerator R&D for JT-60U and ITER NB systems
井上多加志 ; 花田磨砂也 ; 伊賀尚* ; 今井剛 ; 柏木美恵子* ; 河合視己人 ; 森下卓俊* ; 谷口正樹 ; 梅田尚孝 ; 渡邊和弘 ; 山本巧
Fusion Engineering and Design 66-68, p.597-602(2003) ; (JAERI-J 20567)

 中性粒子ビーム(NB)入射は,トカマク型核融合装置において,最も有力なプラズマ加熱・電流駆動手段の一つである.原研ではJT-60UとITER用NB入射装置のために,大電流静電加速器の開発を進めてきた.この開発において最近,以下の進展があったので報告する; (1)JT-60U負イオンNB入射装置において,加速器内の電界の歪みによりビームの一部が偏向され,NB入射ポートにあるリミタに熱負荷を与えていた.不整電界の原因である電極下面の段差を埋めたところ熱負荷は従来の半分以下となって,2.6MWのH0 ビームを355 keVで10秒間連続入射することに成功した.(2)加速器耐電圧性能の向上を目指して,3重点(FRP製絶縁管,金属フランジ,真空の接点)の電界を緩和する電界緩和リングを設計し,JT-60U負イオン源加速器とITER用R&Dで使用している1MeV加速器に取り付けた.ビーム加速無しでの耐電圧試験において,良好な耐電圧性能を確認した.


320176
Development of EC H&CD launcher components for fusion device
高橋幸司 ; 石塚悦男 ; Moeller, C. P.* ; 林田一徳* ; 春日井敦 ; 坂本慶司 ; 林健一* ; 今井剛
Fusion Engineering and Design 66-68, p.473-479(2003) ; (JAERI-J 20699)

 核融合装置用ランチャーの健全性確認のために,ランチャー前方に可動ミラーを設置する先端可動型ランチャーモックアップを製作し,可動ミラー用冷却配管の動作試験及びベアリングの中性子照射効果を調べる試験を行った.何れもITERと同等の条件下で行い,冷却配管の応力は最大で60MPaで許容応力より十分低いことを実証し,また計算結果と合うことも確認した.ベアリング性能に中性子照射の影響もなく,先端可動型の有効性を実証した.後方に可動ミラーを設置する遠隔駆動型ランチャーのモックアップの大電力放射試験を行い,角度0-10°において0.5MW-3sec and 0.2MW-10secの放射に成功した.実験中及び実験後に放電や性能劣化は見られず.こちらも有効性を確認した.この結果を基に,実機と同等レベルのランチャーを設計し製作した.


320095
High power experiments of remote steering launcher for electron cyclotron heating and current drive
高橋幸司 ; Moeller, C. P.* ; 坂本慶司 ; 林健一* ; 今井剛
Fusion Engineering and Design 65(4), p.589-598(2003) ; (JAERI-J 20629)

 ECH/CDシステム用遠隔駆動型ランチャーは長さ4632mm,断面が47.5×45.7mm2の矩形導波管と導波管入口に位置する可動ミラーからなり,その原理検証のために大電力試験を行った.放射角度範囲0-10℃で低電力結果と一致するガウシアン形状のRFビーム放射を確認した.また,0.5MW-3.0sec, 0.2MW-10secという大電力長パルス放射にも成功した.ランチャー内で,実験中のアークや実験後のダメージは確認されず,遠隔駆動型ランチャーの大電力放射・伝送を実証するとともにその有効性を確証した.


310524
Rail deployment and storage procedure and test for ITER blanket remote maintenance
角舘聡 ; 柴沼清
Fusion Engineering and Design 65(1), p.133-140(2003) ; (JAERI-J 20078)

 ビークルマニピュレータシステムの概念は真空容器内の約400個のブランケットを保守するために開発された.本システムの主要な技術課題は,駆動源がない単純な構造からなる多関節軌道を真空容器内へ如何にして展開・収納するかということである.筆者らは,多関節の軌道を展開・収納する手順及び制御手法を提案し,実規模装置を使用して有効性を検証した.多関節軌道は,主駆動系としてのビークルと2つの従属的な駆動系間の過負荷を抑制するためにトルク制限付き同期制御によって展開・収納動作が行われ,提案した展開・収納手法が有効であることを実証した.


320016
Sensor based control test for remote installation of ITER blanket module
角舘聡 ; 柴沼清
Fusion Engineering and Design 65(1), p.33-38(2003) ; (JAERI-J 20566)

 ITERブランケットは,遠隔操作によって単独での交換が可能なように約400個のモジュールより構成される.ブランケットモジュールの遠隔組立における主要な技術課題は,0.25mm以下の嵌合構造であるブランケット支持キーに高い精度で4トンのブランケットを据え付けることである.このため,著者らは新しい制御方法として,距離センサによる粗計測と接触センサによる精密計測を組み合わせることによって,高い位置・姿勢精度を確保する位置決め方法を確立した.実規模における実証試験では,0.25mm以下の高精度嵌合構造である4トン−ブランケット支持構造に対し,本制御手法を適用することによってキーへの嵌合動作がなされ,その有効性が示された.


310723
Behavior of reflected extraordinary mode in the fundamental electron cyclotron heating and currrent drive in JT-60U
梶原健* ; 森山伸一 ; 高橋幸司 ; 池田佳隆 ; 関正美 ; 藤井常幸
Fusion Engineering and Design 65(1), p.27-32(2003) ; (JAERI-J 20236)

 JT-60Uにおいて周波数110GHzの高パワー電子サイクロトロン(EC)基本波が弱磁場側から斜め入射で入射された場合に,基本波に含まれる異常波の振舞を調べた.JT-60Uにおいてはポロイダル方向に入射角を変えることができる.ある特定のポロイダル角度で入射した場合にEC波の入射ポートの隣の中性粒子入射(NBI)ポートのガス圧が上昇することがわかった.この時のEC波の入射パワーは約1MW,パルス幅は3秒であった.いくつかの入射角度について光線追跡計算を行い,遮断層で反射された異常波がNBIポートに侵入するかどうか調べた.その結果,NBIポートに侵入する場合にのみガス圧が上昇することを明らかにした.これは,反射された異常波の侵入によりNBIポート内の壁が過熱され,壁面に吸着しているガスが放出されたことを示している.このように反射された異常波による有害現象が観測されたのは初めてである.高パワー長パルス入射においては,EC波中の正常波の割合を高く保つことは吸収を良くするためだけでなく,このような有害現象を防ぐために重要である.


310523
Design and R&D issues for the JT-60 modification to a full superconducting Tokamak
松川誠 ; JT-60SC設計チーム
Fusion Engineering and Design 63-64, p.519-529(2002) ; (JAERI-J 20077)

 JT-60改修計画は,トカマク型核融合炉の経済性と環境適合性の大幅な改善を図り,社会受容性のある原型炉の設計に貢献しようとするものである.このため,JT-60を完全な超伝導コイル装置に改造し,高性能プラズマの定常運転と,低放射化材料であるフェライト鋼のプラズマ適合性を実証する.改修後の達成目標領域は,SSTRやCRESTなどの原型炉設計例に基づき,規格化ベータ3.5-5.5,自発電流割合50-90%,放射損失割合約95%とした.装置主要パラメータは,トロイダル磁場3.8T,プラズマ電流4MA,主半径2.8m,副半径0.8m,非円形度2.0,三角度0.5で,プラズマ加熱入力44MW/10秒,あるいは15MW/100秒が可能である.装置設計の概要と,R&Dの進展状況について述べる.


310522
Three-dimensional analysis of water-vapor void fraction in a fusion experimental reactor under water ingress
高瀬和之 ; 小瀬裕男* ; 秋本肇
Fusion Engineering and Design 63-64, p.429-436(2002) ; (JAERI-J 20076)

 本報は,核融合炉条件に適用できるように改良したTRACコードを用いて,核融合実験炉の圧力抑制システムを縮小簡略モデルで模擬した試験装置の体系で実施した冷却材侵入時の水−蒸気系二相流挙動に関する3次元詳細解析の結果について報告する.本解析により,圧力抑制システム内部の水と蒸気の分離流挙動が初めて明らかになり,圧力抑制システムを構成する各種要素内のボイド率と侵入水量,侵入水温度,壁温度との関係を定量化できた.一連の解析の結果から,現状の圧力抑制システムの設計の考え方は十分妥当であることを証明した.また,模擬試験結果との比較から改良TRACコードが高い予測精度を有することがわかった.


310521
Numerical study on direct-contact condensation of vapor in cold water
高瀬和之 ; 小瀬裕男* ; 功刀資彰*
Fusion Engineering and Design 63-64, p.421-428(2002) ; (JAERI-J 20075)

 核融合炉で真空容器内冷却材侵入事象を生じた場合の圧力上昇を低減するために,サプレッションタンクやリリーフ配管からなる圧力抑制システムが考えられている.冷却材侵入時に真空容器内に発生する蒸気はリリーフ配管を介してサプレッションタンクに送られ,タンク内に蓄積された低温水との直接接触によって凝縮する.その結果,系統内の温度が低下し圧力上昇が抑制される.蒸気凝縮に関する従来の研究は軽水炉が対象であるため,サプレッションタンクの初期圧力が大気圧よりも十分に低い核融合炉条件とは異なる.そこで,低圧下における蒸気凝縮に関する現象解明を目的として数値解析による検討を行った.本研究では温度回復法をもとに考案した水−蒸気系凝縮モデルを二相流直接解析手法に適用した.解析結果は可視実験で観察された蒸気凝縮時の気泡の消滅や流動挙動を数値的に良く再現できることがわかった.今後はモデル実験結果との定量的評価を通して相変化を含む混相流体系下での直接解析手法の開発を行う考えである.


310594
Thermal-hydraulic characteristics of IFMIF liquid lithium target
井田瑞穂* ; 中村秀夫 ; 中村弘史* ; 中村博雄 ; 江里幸一郎 ; 竹内浩
Fusion Engineering and Design 63-64, p.333-342(2002) ; (JAERI-J 20129)

 国際核融合材料照射施設(IFMIF)の液体リチウム(Li)ターゲットの健全性を評価するために熱流動解析を実施した.重陽子ビーム照射時のLi沸騰を抑制するため,ターゲットに凹面状背面壁を採用し,遠心力によりLi沸点を344℃から約1100℃に上昇させた.一方,一平方メートルあたり1GWのビーム照射を受けてもLi最高温度は400℃であり,十分な温度余裕が有ることを示した.また,この遠心力場での対流が液体Li表面温度上昇に与える効果も調査し,温度上昇は無視できることを明らかにした.さらに,Li循環ループの過渡熱流動解析も実施し,ビーム電流が250mAから0mAへと変化する最も厳しい2本の加速器の停止時でもLi固化までに300秒の時間的余裕があることを明らかにした.この結果を温度制御方法の検討に反映させた.


310722
Radioactivity production around the surface of a cooling water pipe in a D-T fusion reactor by sequential charged particle reactions
堀順一* ; 前川藤夫 ; 和田政行* ; 落合謙太郎* ; 山内通則* ; 森本裕一* ; 寺田泰陽* ; Klix, A.* ; 西谷健夫
Fusion Engineering and Design 63-64, p.271-276(2002) ; (JAERI-J 20235)

 核融合将来炉の廃棄物処理及び安全設計を推進するためには,核融合炉材料に対して一次中性子反応のみならずシーケンシャル反応による放射能生成過程を考慮することは重要である.特に冷却材の水によって多数の反跳陽子が生成される冷却管表面においては,シーケンシャル反応によって望ましくない放射化物の生成が顕著となることが懸念される.このような背景から,本研究では冷却水を模擬したポリエチレン板に核融合炉材料箔(V,Fe,W,Ti,Pb,Cu)を層状に積み重ねた試料に対して14MeV中性子照射を行い,シーケンシャル反応生成物である51Cr,56Co,184Re,48V,206Bi,65Znの実効生成断面積及び生成量の深さ分布を求め,計算値との比較を行った.現在解析中であるため,結果は講演にて報告する.


310446
Experimental results of functional performance of a vacuum vessel pressure suppression system in ITER
柴田光彦 ; 高瀬和之 ; 渡辺博典 ; 秋本肇
Fusion Engineering and Design 63-64, p.217-222(2002) ; (JAERI-J 20012)

 本報は,核融合実験炉の圧力抑制システムが設計どおりの機能を有していることを実験的に調べたものである.試験は,核融合実験炉の構成要素(真空容器や圧力抑制システム等)を約1/1600のスケールで簡略モデル化した装置を使って,核融合実験炉の運転条件を模擬した条件下で真空容器内冷却材侵入時の圧力上昇挙動を調べた.一連の試験を行い,次の結論を得た.(1)3本のリリーフ配管を使用した場合には1本だけの場合に比べて真空容器内の最高到達圧力を約50kPa低下できる.(2)真空容器内の圧力上昇はリリーフ配管の断面積に大きく依存する.(3)最大水侵入時における真空容器内の圧力上昇速度は秒速100-200kPaである.(4)冷却材の温度,圧力,真空容器壁温,侵入水量等の広範囲な条件に対しても圧力抑制システムは設計どおりの性能を十分期待できる.


310520
Effects of breach size and dust density on activated dust mobilization in ITER during a loss-of-vacuum event
高瀬和之
Fusion Engineering and Design 63-64, p.205-210(2002) ; (JAERI-J 20074)

 本報は,核融合炉の真空境界破断時に生ずる放射化ダストの飛散挙動を数値解析的に評価したものである.解析領域は直径20m,高さ13mの円筒状で,内部に核融合炉の真空容器を簡略模擬した二重円筒容器を配置した.放射化ダストの真空容器外部への飛散に関して保守的な結果が得られるようにクライオスタットは排除した.ダスト形状は真球状で,サイズは平均径10μmで標準正規分布に従うとした.真空容器内のプラズマ対向機器を構成する5種類の材料(ベリリウム,カーボン,SUS,銅,タングステン)をダスト材として解析した結果,真空容器外部に流出するダストの量は,ベリリウムが最も多くて初期設置量の約1.5%,一方,最も少ないのはタングステンで同様に約0.1%であった.本研究の結果,破断位置や破断面積が密度の異なるダストの飛散挙動に及ぼす影響を初めて定量化できた.


310519
Evaluation of radiation shielding, nuclear heating and dose rate for JT-60 superconducting modification
森岡篤彦 ; 逆井章 ; 正木圭 ; 石田真一 ; 宮直之 ; 松川誠 ; 神永敦嗣 ; 及川晃
Fusion Engineering and Design 63-64, p.115-120(2002) ; (JAERI-J 20073)

 JT-60の超伝導トロイダルコイル化に伴う改修計画において,放射線遮へい,核発熱,線量の評価を行った.超伝導コイルの核発熱を数種の真空容器を模擬して評価した.その結果,コイルの核発熱への影響が少ない真空容器の構造を決定した.真空容器の構造は,ステンレス鋼の2重壁構造で内部には中性子線を遮へいするために厚さ100mmの水層を,そして,2重壁の外側にはγ線を遮へいするために厚さ26mmのステンレス鋼を設置する構造とした.また,DD放電に伴い放射化による真空容器内の線量について評価した結果,真空容器内にフェライト鋼を採用することで,ステンレス鋼を用いたときに比べて30%近く,放射化量が低減できることがわかった.


310355
The Effect of oxygen on the release of tritium during baking of TFTR D-T tiles
洲亘 ; Gentile, C. A.* ; Skinner, C. H.* ; Langish, S.* ; 西正孝
Fusion Engineering and Design 61-62, p.599-604(2002) ; (JAERI-J 19933)

 プラズマ対向材料表面に形成されるカーボン共堆積層からのトリチウム除去はITER真空容器内のトリチウム滞留量制御上重要である.現在ITERでは,温度240℃,酸素分圧7Torrにおける酸素ベーキングが提案されている.本研究では,プリンストンプラズマ物理研究所のTFTRでトリチウムプラズマに曝されたCFCタイルを用い,ITERの設計条件で10時間の酸素ベーキングを実施することにより共堆積層からのトリチウム除去のデータを取得した.本ベーキング処理により表面トリチウム濃度は処理する前の1/3に減少し,またサンプル内のトリチウム量も1/3に減少することを確認した.さらに,酸素を用いないベーキングとの比較により酸素がトリチウム除去に大変有効に働くことを確認した.


310445
Application of beryllium intermetallic compounds to neutron multiplier of fusion blanket
河村弘 ; 高橋平七郎* ; 吉田直亮* ; Shestakov, V.* ; 伊藤義夫* ; 内田宗範* ; 山田弘一* ; 中道勝 ; 石塚悦男
Fusion Engineering and Design 61-62, p.391-397(2002) ; (JAERI-J 20011)

 高温ブランケット用の中性子増倍材として期待されているベリリウム金属間化合物に関し,日本国内での開発現状について報告する.ベリリウム金属間化合物の開発は,原研,大学,企業が協力して実施している.ベリリウム金属間化合物の一つであるBe12Tiに関し,従来のベリリウム金属より,構造材との両立性が良いこと,スエリングが小さいこと,機械強度が高いこと,トリチウムインベントリが小さいことなどの優れた特性を有することが明らかとなった.また,ベリリウム金属間化合物は機械的に脆く,熱応力が生じる回転電極法で微小球を製造することができなかったが,組織制御によって延性を持たせることによって,微小球を製造できる見通しが得られた.


310518
Thermofluid analysis of free surface liquid divertor in Tokamak fusion reactor
栗原良一
Fusion Engineering and Design 61-62, p.209-216(2002) ; (JAERI-J 20072)

 高い核融合出力を達成するために,ダイバータは10MW/m2以上の高熱流束に耐えなければならない.20MW/m2以下の熱流束であれば,タングステンを構造材とした固体壁ダイバータでも除熱可能である.しかし,固体壁ダイバータでは,熱応力のような厳しい機械力学的状態の観点から,20MW/m2を超える高熱流束を除去するのは極めて困難である.そのため,固体壁上を流れる液膜により熱を除去する液体ダイバータ概念がオプションとして検討されている.本論文は,液体材料としてFLiBe溶融塩を採用した場合に,高熱流束を受ける自由表面液体の熱流動解析について記述した.有限要素法解析コードADINA-Fにより,45度傾けたSiC/SiC複合材第一壁上をFLiBeが厚さ10mm,初速度0.5m/s,初期温度600℃で流入するとして計算した.流体の上部表面には,熱流束として25〜100MW/m2を与えた.液膜内に水車などを設置して二次流れを生じさせることにより伝熱の向上可能性を評価するため,二次流れの効果を等価熱伝導率10kW/mKで模擬した.解析結果から,二次流れを生じさせることにより3〜4倍伝熱特性が改善し,100MW/m2の熱流束も除熱可能であることがわかった.さらに,液体ダイバータとして固液混相流を使用することで固相の融解熱を利用した熱除去可能性を検討した.


310721
Forced convective heat transfer in square-ribbed coolant channels with helium gas for fusion power reactors
高瀬和之
Fusion Engineering and Design 49-50, p.349-354(2000) ; (JAERI-J 20234)

 核融合動力炉設計では,定常運転時の第一壁ブランケット部の表面熱流束は1MW/m2程度を考えており,この程度の熱流束域では原子炉の環境安全性及び経済性の面からガス冷却が有望である.しかしながら,ガスは水や液体金属などに比べて熱容量が小さいので熱伝達率を向上させるための工夫が必要である.そこで筆者は,高温ガス炉用突起付き燃料棒の伝熱促進に関する研究成果をもとに,ヘリウムガス冷却式核融合動力炉の冷却材流路に粗面流路を適用することを考えた.従来の矩形突起付き流路の熱伝達実験の結果から,突起ピッチと高さの比が10でレイノルズ数が約50000以上の条件のときに約1MW/m2の除熱量を得られることがわかった.また,突起による流路摩擦損失の増加以上に伝熱が促進される条件(突起サイズ,レイノルズ数等)を定量的に明らかにした.本研究は,ガス冷却式核融合動力炉の第一壁ブランケット部用冷却材流路として突起付き流路が十分な適用性を有していることを示した.


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