2003年度

混相流


320059
核融合炉熱流動安全性における混相流問題
高瀬和之
混相流 17(3), p.267-276(2003) ; (JAERI-J 20609)

 本論文は日本混相流学会から依頼された解説記事である.日本原子力研究所では,国際熱核融合実験炉ITER(International Thermonuclear Experimental Reactor)のための熱流動安全性研究として,真空容器内冷却材侵入事象ICE(Ingress of Coolant Event),真空境界破断事象LOVA(Loss of VAcuum event)等に関する実験的,解析的研究を行っている.これらの事象を混相流問題として考えると,ICEの研究は真空下における水の沸騰,蒸発に伴う相変化挙動を解明することであり,LOVAの研究は真空境界破断後の放射化ダストの移動量を定量的に把握することである.本報では,核融合炉熱流動安全性における混相流問題の中でICEやLOVAに関する研究の成果について述べる.また,ITERで検討されている圧力抑制タンク内での蒸気の直接接触凝縮やICEに伴って事象の進展が考えられる真空容器内での高温蒸気と黒鉛等に代表されるプラズマ対向壁構成材との化学反応に関する研究成果についても言及する.


311068
低減速軽水炉の設計と開発課題
大久保努
混相流 17(3), p.228-235(2003) ; (JAERI-J 20519)

 低減速軽水炉は,これまで培われてきた軽水炉技術に立脚しながら,プルトニウムの多重リサイクル,さらには,プルトニウム増殖サイクルを実現可能な原子炉である.これまでの低減速軽水炉の設計研究の概要を紹介するとともに,関連する研究開発課題について,熱流動的研究の内容に力点を置いて紹介する.


310784
複合プローブによる水/溶融金属混相流場の温度・相判別同時計測; 信号処理回路の開発
柴本泰照 ; 佐川淳* ; 久木田豊* ; 中村秀夫
混相流 17(2), p.171-179(2003) ; (JAERI-J 20297)

 水/溶融物混相流実験への適用を目的として,局所における流体相判別と温度計測を同時かつ高速で行う複合プローブを開発した.細径の露出型熱電対を用いて,温度測定と同時に,溶融金属・水・蒸気のいずれの相の温度を測定しているかを検出する.100kHzの交流信号を熱電対に印加し,熱電対と接地間の電気イピーダンスを計測することで相判別を行う.交流信号は,アンプで増幅される前にローパスフィルター(LPF)によって温度信号から分離される.初期設計段階では,熱電対が金属相に接触し,電気的に接地されるたびに温度信号に大きなノイズがでる問題が生じたが,LPFを再設計することでこれを改善した.最終設計では,水−溶融物−蒸気各々の相に対して,相表面の高速移動と温度変化の計測に成功した.


310783
ROSA-V計画における炉心損傷防止のためのアクシデントマネージメントの研究
浅香英明 ; 安濃田良成
混相流 17(2), p.116-125(2003) ; (JAERI-J 20296)

 原研ROSA-V計画のもとで,LSTF装置を用いた総合実験とREALP5/MOD3コード解析により,加圧水型原子炉(PWR)の高圧ECCS注入機能喪失に伴う小破断冷却材喪失事故(SBLOCA)時におけるSGの2次系強制冷却の有効性にかかわるパラメータの体系的評価手法を示し,運転操作の判断根拠を定量的に明らかにし,運転員が把握できる情報,すなわち減圧速度と減圧開始時間のみで操作の指針となるチャートを開発した.さらに,従来のLOCA解析コードでは,SG伝熱管の入り口においてのみCCFLが発生するようにモデル化されていたため,長い液柱の形成が予測されなかった.それに対し,CCFL条件判別式を伝熱管入口だけではなく全体に適用するようモデル化することにより,安全上重要な2次系強制冷却操作によって伝熱管内に形成される水柱の高さ及び保持時間を良好に再現できることなど,ROSA-V計画におけるシビアアクシデント防止に関するアクシデントマネージメント研究の主要な成果を紹介している.


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