2003年度

原子力バックエンド研究


310679
Contribution of the surface diffusion on mass transfer of Ba2+ in granite matrix
山口徹治 ; 中山真一 ; 川田千はる*
原子力バックエンド研究 9(1), p.61-66(2002) ; (JAERI-J 20193)

 稲田花崗岩についてBa2+イオンの透過拡散実験を行い,有効拡散係数(De)と分配係数(Kd)を取得した.実験は,溶液として10-1, 1, 10 mol m-3 BaCl2溶液を用い,25℃においてそれぞれ3ランを行った.10 mol m-3 BaCl2溶液を用いた実験で得られた有効拡散係数は細孔拡散モデルから予想される値と一致していた.これに対して塩化バリウムの濃度が低い場合ほど,分配係数が高く,有効拡散係数も高くなった.バリウムの溶存形態は同じであり,同時に拡散させたI-の挙動から花崗岩試料による間隙構造にも差がないことが明らかになった.それにもかかわらず,有効拡散係数が分配係数に対して正の相関を持っていることは,表面拡散(吸着状態での拡散)の寄与を強く示すものである.


310678
地層処分における微生物の影響; 研究の現状と今後の課題
大貫敏彦
原子力バックエンド研究 9(1), p.35-42(2002) ; (JAERI-J 20192)

 さまざまな微生物が地下環境中に生息することがわかってきた.これら微生物の高レベル廃棄物処分への影響について明らかになっていない.本報告では,これまで行われてきた研究を紹介するとともに,将来の研究課題について検討した.微生物代謝による還元,酸化及び代謝産物は,処分施設使用材料の劣化,錯体生成,アクチノイド沈殿物の可溶化,nmスケールのコロイドの生成などをもたらし,処分施設の長期的な閉じこめ性能に影響を与えるとともに,放射性核種の移行を促進する可能性がある.一方,微生物の活動により,微生物による鉱物化,吸着,細胞内への取り込み,沈殿作用により,アクチノイドの閉じこめ能を増す可能性もある.これらの結果は,処分施設の性能への微生物の影響を明らかにするための研究を行う必要があることを示している.


310677
金属イオンと錯形成する腐植物質官能基のATR-FTIR法によるin situ分析
田中忠夫 ; 坂本義昭 ; 小川弘道
原子力バックエンド研究 9(1), p.29-34(2002) ; (JAERI-J 20191)

 金属イオンとの錯形成に関わる腐植物質官能基についての情報を赤外吸収スペクトルから得るため,ATR(Attenuated Total Reflection)法を用いることにより,水溶液に溶存させた状態での赤外吸収スペクトル測定について検討した.ATR法により,金属イオンとの錯形成によって腐植物質の赤外吸収スペクトルに生じる変化を確認できた.また,粉体試料を用いる従来の赤外吸収スペクトル測定では困難であった錯形成速度についての情報,pHや元素濃度など液性の変化に呼応した官能基の情報が取得できた.これらの結果から,錯形成に伴う腐植物質官能基の状態変化に関する赤外吸収スペクトル情報をin situで得るために,ATR法が適用できる可能性が見いだされた.


[ page top ]
JAEA > JAEA図書館 > JOPSS > 学会誌等掲載論文[バックナンバー] >  累積情報(2003年度) > 当ページ
Copyright(C), Japan Atomic Energy Agency (JAEA)