2003年度

Japanese Journal of Applied Physics, Part 1


320178
Development of scanning-type synchrotron radiation mossbauer microscope using focused X-ray
三井隆也 ; 小林康浩* ; 瀬戸誠*
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 43(1), p.389-393(2004) ; (JAERI-J 20701)

 第三世代放射光の高輝度X線を利用した放射光メスバウアー顕微鏡の設計を行い,SPring-8の原研ビームラインBL11XUへの導入を行った.われわれの開発した装置では,マイクロメスバウアービームが高分解能モノクロメーター,多層膜X線集光ミラー,Φ20ミクロンのピンホールスリットにより生成された.本装置を利用した走査式放射光メスバウアー測定の最初の例として,反強磁性体試料のメスバウアー時間スペクトルのX照射位置に対する依存性を調べた.得られた時間スペクトルには内部磁場の方向と試料の厚さ不均一による量子ビートパターンの変調が明瞭に観測された.この結果から,本装置は,超微細構造が不均一分布する試料の局所磁気構造解析に非常に有効であることが示された.


311026
Characterization of carbon films on the Japanese smoked roof tile "Ibushi-Kawara" by high-resolution soft X-ray spectroscopy
村松康司 ; 元山宗之* ; Denlinger, J. D.* ; Gullikson, E. M.* ; Perera, R. C. C.*
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 42(10), p.6551-6555(2003) ; (JAERI-J 20477)

 軟X線発光・吸収分光法により,いぶし瓦表面炭素膜の化学状態を分析した.その結果,この炭素膜は基本的にカーボンブラックと同様なsp2炭素からなるものの,その半分は粘土基板にほぼ平行な層構造をもち,残り半分の炭素は非晶質構造をもつことがわかった.いぶし瓦の光沢色はこの層構造成分に起因し,耐久性は非晶質構造に起因することが示唆された.


311027
Maximum entropy estimation of electron cyclotron emission spectra from incomplete interferograms in ELMy H-mode tokamak experiment
諫山明彦 ; 岩間尚文* ; 正和武志* ; 細田陽介* ; 伊世井宣明 ; 石田真一 ; 佐藤正泰
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 42(9A), p.5787-5796(2003) ; (JAERI-J 20478)

 フーリエ変換分光装置(FTS)ではマイケルソン干渉計を用いて電子サイクロトロン放射(ECE)から電子温度分布を得ている.マイケルソン干渉計では走査鏡をスキャンする(走査時間:約20ms)ことにより干渉信号を得ていて,この間プラズマの電子温度は変化しないと仮定している.しかし,ELMy Hモードプラズマでは,ELMにより発生した非熱的放射パルス(パルス幅:100μs程度)により干渉信号が歪み,電子温度分布測定が不可能になる.今回,非熱的放射パルスを検出・除去する手法を開発し,さらに,欠損の生じた干渉信号に最大エントロピー法(MEM)を適用して電子温度分布を得ることに成功した.また,最大エントロピー法を適用する際,スペクトルの平滑度を決めるパラメータ(「正規化パラメータ」)を最適化する必要があるが,今回は線形問題で用いられている最小GCV(GeneralizedCross Validation)規準を非線形問題であるMEMに適用した.その結果,最小GCV規準はMEMの正規化パラメータの決定に有用であることがわかった.今回開発した手法をJT-60U実験時の信号に適用した結果,一連のデータを放電間に自動処理できる可能性があることがわかった.


320020
Oxidation of aqueous HF-treated Si(001) surface induced by translational kinetic energy of O2 at room temperature
吉越章隆 ; 寺岡有殿
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 42(9A), p.5749-5750(2003) ; (JAERI-J 20570)

 O2の並進運動エネルギーによって誘起されるHF溶液によって処理したSi(001)表面の室温酸化を放射光光電子分光法と超音速分子線技術によって調べた.室温において,0.04eVの並進運動エネルギーでは,酸化は進まないことが分かった.一方,3.0eVの並進運動エネルギーの場合は,Si1+, Si2+及びSi3+を含む最大Si4+まで酸化が進むことが明らかとなった.最終的な酸化膜厚が0.26nmであることから,最表面のSi原子が酸化していることが明らかとなった.


320019
Real-time observation of initial stage on Si(001) oxidation studied by O-1s photoemission spectroscopy using synchrotron radiation
吉越章隆 ; 盛谷浩右* ; 寺岡有殿
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 42(7B), p.4676-4679(2003) ; (JAERI-J 20569)

 Si(001)表面のO2ガスによる熱酸化は,表面科学の基礎的理解として興味深い反応系であり,SiO2/Si(001)界面形成という応用上も重要である.これまでの実時間光電子分光実験は,ある一つ固定したエネルギーの光電子ピークに注目して,その強度の時間変化が調べられてきた.そこでわれわれは,1×10-4PaのO2ガスにおけるSi(001)表面の熱酸化初期状態の時間変化を,O-1s光電子スペクトルをリアルタイムで測定することにより調べた.実験は,SPring-8の軟X線ビームラインBL23SUに設置した表面反応分析装置(SUREAC2000)により行った.基板温度855K及び955KにおけるO-1s光電子スペクトルの面積強度の時間変化を,速度論で解析したところ,855Kにおいては単純なLangmuirタイプ及び955Kにおいてはautocatalytic反応モデルで説明できることが分かった.


310922
SiO mass spectrometry and Si-2p photoemission spectroscopy for the study of oxidation reaction dynamics of Si(001) surface by supersonic O2 molecular beams under 1000K
寺岡有殿 ; 吉越章隆 ; 盛谷浩右*
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 42(7B), p.4671-4675(2003) ; (JAERI-J 20405)

 Si(001)のO2分子による酸化反応を860Kから1300Kの温度範囲で,かつ,O2分子の運動エネルギーが0.6eVから3.0eVの範囲で研究した.表面分析には放射光光電子分光法を用いた.Si-2p光電子スペクトルを分子線を照射しながら実時間測定し,その温度依存性と運動エネルギー依存性を測定した.また,酸素同位体(質量数18の酸素)からなるO2分子を用いて脱離するSiO分子を質量分析器で検出して脱離収率の温度依存性と運動エネルギー依存性を測定した.その結果,1000K以下では酸化膜形成とエッチングが共存し,同じ温度でもエッチング,酸化膜形成,両者共存の反応様式が運動エネルギーによって決まることが明らかとなった.


310921
Simulation study on the measurements of diffusion coefficients in solid materials by short-lived radiotracer beams
Jeong, S. C.* ; 片山一郎* ; 川上宏金* ; 石山博恒* ; 宮武宇也* ; 左高正雄 ; 岩瀬彰宏 ; 岡安悟 ; 須貝宏行 ; 市川進一 ; 西尾勝久 ; 杉山康治* ; 矢萩正人* ; 高田和典* ; 渡辺遵*
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 42(7A), p.4576-4583(2003) ; (JAERI-J 20404)

 長寿命のγ線放出核をトレーサーとして用いて物質の拡散現象を研究することは確立された研究手法である.ここでは,寿命1秒程度でα線やβ線を放出する同位元素を用いた高速拡散現象を研究することを目的として,金属間化合物LiAl中の8Li(寿命0.8秒, α emmiter)を考えシミュレーション手法の開発を行った.その結果を東海研タンデム加速器を利用した実験結果と比較し,実験結果と良い一致を得た.シミュレーションではTRIMコードに基づき入射核種の運動エネルギー幅,物質中でのstragring,放出放射線の自然幅などを考慮している.発表では18F(寿命1.8時間, β+emmiter)の拡散についても考察した.


310725
Real-time monitoring of initial thermal oxidation on Si(001) surfaces by synchrotron radiation photoemission spectroscopy
吉越章隆 ; 盛谷浩右* ; 寺岡有殿
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 42(6B), p.3976-3982(2003) ; (JAERI-J 20238)

 Si(001)表面の熱酸化過程は,MOSFETのゲート絶縁膜形成において重要な反応系であり,ULSIの微細化により,酸化膜厚を数nmまで制御することが,ますます重要になっている.O2ガス圧を1×10-4Pa,表面温度を870Kから1120Kと変えたときの酸化反応を放射光Si2p及びO1s光電子分光法を用いて調べた.酸素吸着量の時間発展とその際のSi酸化状態の関係が明らかとなった.酸素吸着量の時間変化は,表面温度によりLangmuirタイプと自己触媒反応モデルという反応速度論に基づいた吸着特性で説明ができることがわかった.一方,Si2p光電子スペクトルから,この2つの酸化モデルにおけるSiの酸化状態の時間発展において,反応初期にSi4+の構造が観測されないことが明らかとなった.固定したエネルギーで光電子強度を測定したこれまでの研究では明らかにできなかった情報を,今回,リアルタイム光電子分光測定により初めて明らかにすることができた.


[ page top ]
JAEA > JAEA図書館 > JOPSS > 学会誌等掲載論文[バックナンバー] >  累積情報(2003年度) > 当ページ
Copyright(C), Japan Atomic Energy Agency (JAEA)