2003年度

Optics Letters


320202
Two-color chirped-pulse amplification in an ultrabroadband Ti:sapphire ring regenerative amplifier
山川考一 ; Barty, C. P. J.*
Optics Letters 28(23), p.2402-2404(2003) ; (JAERI-J 20725)

 われわれは,繰り返し数10Hz,出力エネルギー20mJ以上を発生する広帯域リング型チタンサファイア再生増幅器を開発した.チャープパルス増幅法と再生パルス整形技術により,出力エネルギー10mJ以上の2波長フェムト秒レーザー光(波長間隔120nm)の発生に成功した.また,発生した2波長フェムト秒レーザー光の差周波混合を行い,波長6ミクロンから11ミクロンまでの中赤外光発生に成功した.


320051
30-mJ, diode-pumped, chirped-pulse Yb:YLF regenerative amplifier
河仲準二 ; 山川考一 ; 西岡一* ; 植田憲一*
Optics Letters 28(21), p.2121-2123(2003) ; (JAERI-J 20601)

 原研光量子科学研究センターでは次世代超高ピーク出力レーザーとして半導体レーザー励起によるYb系固体レーザーの開発を行っている.これまで半導体レーザー励起によるフェムト秒発振器の開発に成功し,今回,発振器に続く初段増幅器として再生増幅器の開発を行ったので報告する.発振器からのフェムト秒パルスをファイバーにより1.2nsにまで時間伸張し再生増幅器に注入する.再生増幅用レーザー媒質としてYb:YLF結晶を用い,これまでの基礎研究から得られたデータをもとに,同材料を液体窒素クライオスタットで冷却することにより超短パルスレーザー材料としての特性を劇的に高めた.これにより再生共振器内を12往復した後,30mJの出力が得られた.これは,半導体レーザー励起のフェムト秒レーザーとしては最高出力である.増幅率は109倍であり初段増幅器としての性能を十二分に達成できた.また,回折格子ペアによるパルス圧縮を試みた結果,12mJ, 800fsの超短パルスを得ることに成功した.したがって,本システムのみで応用研究,例えば,バイオや物質加工,表面処理などの研究を遂行できることを示した.


311047
X-ray laser beam with diffraction-limited divergence generated with two gain media
田中桃子 ; 錦野将元* ; 河内哲哉 ; 長谷川登 ; 加道雅孝 ; 岸本牧 ; 永島圭介 ; 加藤義章*
Optics Letters 28(18), p.1680-1682(2003) ; (JAERI-J 20498)

 高強度で高コヒーレントなパルスX線源は材料・生物分野に有用な光源とされており,そのような光源を実験室規模で実現しうるX線レーザーは精力的に研究されてきた.中でも過渡利得方式によるX線レーザー発生は,小型で短波長X線レーザーを実現しており,高い利得,数ピコ秒程度のパルス幅などの特徴を持っている.しかしながらこの方式では,利得が大きいために短い媒質長で飽和増幅に達してしまうことや,プラズマの密度勾配による屈折の効果になどにより,ビーム発散角が10mrad程度と大きく空間コヒーレンスも他方式と比べて低いという難点があった.今回われわれは,2つの利得媒質を用いることにより,波長13.9nmのX線レーザーをビーム発散角0.2mrad(回折限界の1.8倍)で発振することに成功した.このX線レーザーは,最初の媒質から発生させたパルスX線種光を2つ目の媒質で増幅させるという方法で発生させている.X線種光を空間的・時間的にコントールして2つ目の媒質に入射することにより,媒質中でX線が屈折する効果を抑え,発散角が広がるのを防いでいる.


310950
360-W average power operation with a single-stage diode-pumped Nd:YAG amplifier at a 1-kHz repetition rate
桐山博光 ; 山川考一 ; 永井亨* ; 影山進人* ; 宮島博文* ; 菅博文* ; 吉田英次* ; 中塚正大*
Optics Letters 28(18), p.1671-1673(2003) ; (JAERI-J 20433)

 高平均出力・高繰り返しチタンサファイアレーザーの小型化,高効率化を目的として半導体レーザー(LD)励起Nd:YAGレーザーMOPA(Master-Oscillator-Power-Amplifier)システムの開発を行った.本システムは,低い入力エネルギーで高いエネルギー抽出効率を達成するため,レーザービームが励起領域を6回通過できる多重パス増幅方式を採用している.高ビーム品質の増幅を行うためにジグザグスラブ型増幅器で,さらにファラデーローテーター及びSBS位相共役鏡を用いて,それぞれ熱複屈折効果と熱レンズ効果を補償できる構成としている.また,高い変換効率で第二高調波光を発生させるために,非線形光学定数の大きいKTP結晶を採用した.本システムの動作試験を1kHzの高繰り返し率で行った.平均のLD入力パワー2.6kWにおいて362Wの高平均出力(1064-nm)を達成した.〜1500の増幅度並びに14%の光−光変換効率を得た.また,波長変換試験において222Wの入力パワーに対して132Wの高平均第二高調波出力光(532-nm)が60%の高い変換効率で得られた.


310949
0.85-PW, 33-fs Ti:sapphire laser
青山誠* ; 山川考一 ; 赤羽温 ; Ma, J.* ; 井上典洋* ; 上田英樹* ; 桐山博光
Optics Letters 28(17), p.1594-1596(2003) ; (JAERI-J 20432)

 チャープパルス増幅法(CPA法)の進展により,近年,極短パルス・超高ピーク出力レーザーの性能は飛躍的に向上しており,1020W/cm2を超えるレーザー集光強度が達成されている.実験室サイズのレーザーシステムで,より高いピーク強度を達成するために,われわれはペタワット(PW)チタンサファイアレーザーシステムの開発を行っている.この達成のためには大口径チタンサファイア増幅器における寄生発振の抑制と理論限界での高効率増幅,そして30fsまでパルス幅を再圧縮する技術の開発が不可欠となる.本PWチタンサファイアレーザーシステムは,これまでに開発された100TWチタンサファイアレーザーシステムから得られるレーザー光を直径8cmのチタンサファイアブースター増幅器によりPWレベルまで増幅するよう構成されている.このような大口径増幅器で高効率増幅を達成するには,寄生発振の制御が不可欠となり,このためチタンサファイアと同等の高屈折率(n=1.7)を有する熱可塑性プラッスチックを結晶の周囲にクラッディングとして用いる技術を開発した.その結果増幅実験では,励起エネルギー65Jに対して37.4Jを達成した.ここで得られた増幅効率はグリーン光で励起されるチタンサファイア増幅器の理論限界に及ぶ.また,パルス圧縮後に30fsのパルス幅を得るため,溝本数が異なる回折格子をそれぞれパルス伸張器と圧縮器に用いて,レーザーシステムの高次分散補償を行った.実験で得られたレーザー光のパルス幅は32.9fsであり,これによりピーク出力0.85PWを達成した.このピーク出力,エネルギーはチタンサファイア結晶を用いたレーザーシステムでは世界最高性能である.本システムの詳細な報告を論文に発表する.


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