2003年度

工業材料


310479
架橋フッ素高分子電解質膜
八巻徹也 ; 浅野雅春 ; 吉田勝
工業材料 51(4), p.39-42(2003) ; (JAERI-J 20045)

 放射線架橋ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜に放射線グラフト重合を応用することによって高分子電解質膜を作製する技術を開発した.架橋PTFE膜は,γ線をアルゴンガス雰囲気,340±5 ℃の温度で,60〜320kGy照射して得た.この架橋膜に,アルゴンガス雰囲気,室温でγ線を前照射することによりラジカルを生成させた後,60℃でスチレンを後グラフトした.最後に,グラフトされたポリスチレン鎖をクロルスルホン酸でスルホン化し,イオン交換基(スルホン酸基)を基材に導入した.合成した電解質膜のイオン交換容量は0.7〜3meq/gで,従来膜ナフィオンの0.9〜1.1meq/gよりはるかに高く,しかも広範囲で変化させることが可能であった.また,アルコールに対しては,ナフィオンが大きな膨潤性を示すのとは対照的に,われわれの電解質膜では膨潤し難く安定であることが確認できた.今後は,ポリスチレンのような炭化水素からなる側鎖の代わりに,フッ素系モノマーをグラフト重合し,燃料電池膜としての耐久性の向上を狙っている.


310867
自己再生機能をもつ自動車排ガス浄化触媒
田中裕久* ; 西畑保雄
工業材料 50(13), p.35-38(2002) ; (JAERI-J 20360)

 触媒におけるインテリジェンスとは使用される環境変化を敏感に察知して,自らの構造や機能を変えてその環境に常に適切な性能を発揮する能力といえる.現在の自動車用ガソリンエンジンはジルコニア酸素センサーを用いて,空気と燃料の比率(空燃比A/F)が化学的に等量点となるよう電子制御され,排ガス浄化触媒は常に1〜4Hzといった周波数で酸化還元変動雰囲気にさらされている.この酸化と還元という環境変化を利用した「自己再生」により,永遠の寿命を実現することが自動車触媒の持つことのできる真のインテリジェンスと考えている.われわれはこの触媒を「インテリジェント触媒」と名付け2002年秋に世界で初めて実用化に成功した.本稿ではインテリジェント触媒の研究開発について紹介する.


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