2003年度

Proceedings of the ICANS-XVI


310892
Structural integrity of cross-flow type mercury target
粉川広行 ; 石倉修一* ; 羽賀勝洋 ; 木下秀孝 ; 神永雅紀 ; 日野竜太郎
Proceedings of the ICANS-XVI, Volume 3, p.1295-1304(2003) ; (JAERI-J 20385)

 水銀ターゲットでは,パルス陽子ビームが水銀ターゲットに入射する際,水銀の急激な熱膨張によって圧力波が発生,伝ぱする.そのため,SUS316L製の水銀ターゲット容器には,過大な動的応力が発生し,ターゲット容器の構造健全性に影響を及ぼす可能性がある.そこで,水銀ターゲット容器,特にビーム窓の構造健全性を評価するために,1MWパルス陽子ビーム入射条件下での動的応力挙動を有限要素法によって解析した.半円筒状,及び平板状ビーム窓を持つ2種類のターゲット容器を解析モデルに用い,両者の結果を比較した結果,圧力波によってビーム窓で発生する動的応力が2次応力として取り扱うことが可能であり,平板状ビーム窓を持つターゲット容器が半円筒状ビーム窓のターゲット容器よりも構造的な観点から有利であることを明らかにした.併せて,セイフティーハルの構造強度評価を行い,健全性が確保させることを明らかにした.


310891
A New method for neutron-beam-line shielding calculation
前川藤夫 ; 田村昌也* ; 川合将義* ; 古坂道弘* ; 渡辺昇
Proceedings of the ICANS-XVI, Volume 3, p.1247-1255(2003) ; (JAERI-J 20384)

 モンテカルロコードを用いた中性子ビームライン遮蔽計算の新手法を開発した.第1段階として,ターゲット−モデレータ−反射体集合体,中性子ビームライン等の生体遮蔽体内の機器をモデル化し,中性子ビームラインダクトに沿った中性子流分布を計算した.第2段階として,中性子ビームラインに沿った中性子流の減少分を該当部分のビームライン遮蔽に対する線源項と考え,中性子ビームライン遮蔽の必要厚さを計算した.本手法の特徴は,第2段階計算において中性子ビームライン軸に沿った線源項分布の取り扱いの正確さである.本手法を応用し,JSNSに対して次の評価を行った.(1)中性子ビームライン遮蔽厚さと,これを簡易に計算する経験式の導出,(2)ビームストップの寸法,(3)シャッターを閉じたときの試料位置における線量,(4)T0チョッパーブレードの生成放射能評価.これらの結果は,実験ホール内における23本のビームラインの配置決定の条件を与えた.


310890
Target station design of 1MW spallation neutron source at the high intensity proton accelerator facilities J-PARC
高田弘 ; 前川藤夫 ; 本村士郎* ; 吉田勝彦* ; 寺奥拓史* ; 明午伸一郎 ; 坂井昭夫* ; 春日井好己 ; 兼近修二* ; 大竹秀範* ; 古坂道弘* ; 日野竜太郎 ; 池田裕二郎 ; 渡辺昇*
Proceedings of the ICANS-XVI, Volume 3, p.1115-1125(2003) ; (JAERI-J 20383)

 大強度陽子加速器計画で建設する1MW核破砕中性子源はヘリウムベッセル,ベッセルサポートシリンダ,遮蔽ブロック,23本の中性子ビームライン,陽子ビーム窓等の機器で構成される.機器はライナーの内側に配置され,ヘリウムベッセルを中心とし,その周囲を中性子ビームシャッターを含む鉄鋼製の遮蔽で取り囲む.鉄遮蔽の外周には重コンクリートを配置し,その外表面の線量率が12.5μSv/hを超えないことを設計条件とした.ライナーの外形は直径9.8mであり,重コンの厚さは2.2-2.7mである.ライナー内は遮蔽体の除熱とNOxガスの発生抑制のため乾燥空気を循環させる.このようなステーション構造の概要と機器構造の各論,例えば中性子ビームシャッターは2本ロッド懸垂方式の直方体状で,その一部にガイド管等を装着したダクトを挿入できる構造であること,について報告する.


310889
3-D shielding calculation method for 1-MW JSNS
前川藤夫 ; 田村昌也*
Proceedings of the ICANS-XVI, Volume 3, p.1051-1058(2003) ; (JAERI-J 20382)

 1-MW JSNSの遮蔽設計のために,MCNPX用の3次元遮蔽計算モデルを作成した.このモデルにはターゲット−モデレータ−反射体集合体,ヘリウムベッセル,中性子ビーム引き出しダクト,シャッター,遮蔽ブロック及びこれらの機器間のギャップや隙間等がモデル化されており,ストリーミング効果を詳細に考慮することができる.分散低減法として,セルインポータンスパラメータによる粒子分割/消滅法を用いた.中性子束が12桁以上減衰する直径15m高さ12mに及ぶ大きなターゲットステーションに対するセルインポータンスパラメータは,自動化された繰り返し計算により適切に求めることができた.本計算手法により,短時間(2日)でターゲットステーション全体の詳細な3次元遮蔽設計計算が可能となり,JSNSの遮蔽設計が進展した.


310976
Validation of radioactivity calculation code system DCHAIN-SP
甲斐哲也 ; 前川藤夫 ; 春日井好己 ; 仁井田浩二* ; 高田弘 ; 明午伸一郎 ; 池田裕二郎
Proceedings of the ICANS-XVI, Volume 3, p.1041-1049(2003) ; (JAERI-J 20459)

 以下の点に着目して,放射能計算コードシステムDCHAIN-SPの妥当性評価を行った.(1)20MeV以下の放射化断面積ライブラリーFENDL/A-2.0,(2)NMTC/JAMが計算する20MeV以上の高エネルギー粒子による核種生成率,(3)DCHAIN-SPによる高エネルギー粒子が誘起する全エネルギー範囲での核種生成率.42の放射化断面積と22のトリチウム生成断面積を改訂することにより,DCHAIN-SPは14-MeV中性子に対する放射化断面積を,30%以下の精度で求めることができるようになった.軽核の生成率評価の精度を向上させるため,NMTC/JAMにGEMモデルを取り入れた.しかしながら,10MeV〜10GeV陽子による核種生成率の精度は係数2〜3程度であった.2.83GeVと24GeV陽子入射による厚い水銀ターゲット周辺に置いて試料の放射能の時間変化をDCHAIN-SPコードシステムで解析した計算結果は,係数2〜3程度の範囲で実験と一致した.


310975
Neutronic study on coupled hydrogen moderator for J-PARC spallation neutron source
甲斐哲也 ; 原田正英 ; 勅使河原誠 ; 渡辺昇* ; 池田裕二郎
Proceedings of the ICANS-XVI, Volume 3, p.657-666(2003) ; (JAERI-J 20458)

 J-PARC核破砕中性子源の結合型モデレータについて中性子工学研究を行った.100%パラ水素モデレータを用いることにより,最大の15meV以下の積分強度,2meV,10meVのパルスピーク強度が得られたが,最適なモデレータ厚さはそれぞれ異なっていた.最終結論としては,140mmの厚さを選択した.また,中性子取出面上の中性子強度分布評価より,プレモデレータ近傍のモデレータ周縁部が中心部分よりも強度が高いことがわかった.このことは,モデレータと中性子取出面の設計が重要であることを示している.さらに,強度の中性子取出角度依存性を評価し,大きな角度取出しでは強度減少が著しいことがわかった.円筒型モデレータを用いることにより,この強度減少を緩和することができることが明らかになった.これらをもとに円筒型モデレータの直径を140mmと決定した.


310885
Cold moderator design of JSNS 1MW pulse source
粉川広行 ; 石倉修一* ; 日野竜太郎 ; 加藤崇 ; 麻生智一 ; 佐藤博 ; 原田正英 ; 甲斐哲也 ; 勅使河原誠 ; 前川藤夫 ; 渡辺昇*
Proceedings of the ICANS-XVI, Volume 2, p.635-644(2003) ; (JAERI-J 20378)

 中性子性能を決定する冷減速材は,核破砕中性子源における重要な機器である.JSNS核破砕中性子源では,3種類の液体水素減速材を設置する.液体水素は温度20Kで高圧に加圧された循環系となる.このため,減速材容器は設計圧力2.0MPaとした.そのため容器の構造設計が重要である.一方,中性子性能の観点から,減速材容器は,容器での中性子吸収を減少させるために薄肉にする必要がある.そのため,容器材料をアルミニウム合金 A6061-T6として,モデレータ容器の合理的な厚さを検討した.結果として, 非結合型減速材容器の中性子引出面の厚さは5ミリメートルになり,結合型減速材の中性子引出面は4ミリメートルとなった.また,これらの容器を製作するための溶接線の位置を検討し,溶接可能な位置を明らかにした.


310888
Creation of new McStas components of moderators of JSNS for developing new pulse spectrometer
田村格良 ; 相澤一也 ; 原田正英 ; 柴田薫 ; 前川藤夫 ; 曽山和彦 ; 新井正敏*
Proceedings of the ICANS-XVI, Volume 1, p.529-539(2003) ; (JAERI-J 20381)

 大強度陽子加速器計画における物質・生命科学実験施設に設置されるパルス中性子分光器の設計のため,McStasを用いたシミュレーションのコンポーネントの作成を行った.物質・生命実験施設には3種類のモデレーターが設置される.大強度用には「結合型水素モデレーター」が使用され,高分解用には「非結合型水素モデレーター」と「非結合型ポイゾンド水素モデレーター」が使用される.モデレーターから発生する中性子は分光器の性能に大きく影響を与えるので,モンテカルロ・シミュレーションにおいては線源の正確な記述が重要になる.McStasは正確な記述が可能である.NMTC/JAERI97とMCNP4aを使用して得られたモデレーターの強度のエネルギー分布,時間分布を表現する関数を作成して変数の決定を行った.本稿では「結合型水素モデレーター」を見るport16のコンポーネント作成と「非結合型水素モデレーター」を見るport11のコンポーネント作成の報告を行う. 


320132
Development of micro-strip gas chamber with individual readout
中村龍也 ; 正岡聖* ; 山岸秀志 ; 曽山和彦 ; 相澤一也
Proceedings of ICANS-XVI, Volume1, p.441-446(2003) ; (JAERI-J 20666)

 本発表では原研におけるマイクロストリップガスチャンバーを用いた二次元中性子ガス検出器の開発状況を報告する.われわれの目標とする検出器性能は,計数率>106cps/mm2,位置分解能<1mm,検出効率>60%@1.8A,良好なn/gamma弁解能を持つものである.そのためわれわれは,ポリミド基盤上に製作されたマイクロストリップ型信号検出素子と,10気圧のガス圧に耐え,かつ全信号ライン(256ch)の個別読み出しを可能とする高密度フィードスルーを備えたガスチャンバーとからなる二次元中性子ガス検出器の開発を進めてきた.このほど,本検出器の飛程測定性能を確認する目的で中性子捕獲反応により生じるプロトン,トリトンの飛程測定を行ったところ,3気圧,10%エタン混合ヘリウムのガス条件において理論計算と誤差範囲で一致する測定結果(プロトン,トリトンそれぞれ9.5mm, 3mm)を得た.このことから本中性子検出器が良好な二次粒子飛程測定性能を持つことを実証した.


310887
Development of drabkin energy filters for J-PARC project
山崎大* ; 曽山和彦 ; 海老澤徹* ; 田村格良 ; 田崎誠司*
Proceedings of the ICANS-XVI, Volume 1, p.407-415(2003) ; (JAERI-J 20380)

 Drabkin型エネルギー・フィルターは,空間的中性子スピン共鳴を利用して,望みの波長を持つ中性子を取り出すものである.これをパルス中性子に適用すれば,パルスの波長バンド幅やピーク高さを犠牲にすることなく,そのバースト幅を狭め,テールをカットすることができる.本講演では,Drabkin型エネルギー・フィルターを用いたJ-PARCパルス中性子のパルス整形についてシミュレーションを行った結果について報告する.計算では段階的な磁場勾配を導入し,J-PARCで予想されるパルスの性質に対応させて磁場の時間変化をさせるようにした.この結果,結合型モデレータから得られるパルスのテールが9割程度以上除去できること,パルス幅を非結合型モデレータ並みにすることが可能なことが示された.また,フィルター内部における磁場の周期幅の揺らぎが与える影響について考察し,100周期の磁場に対して1%以下の揺らぎであればほぼ影響はないことを示した.


310886
High efficiency indirect geometory crystal analyzer TOF spectrometer; DYANA dedicated to biology, planning in JSNS
柴田薫 ; 田村格良 ; 曽山和彦 ; 新井正敏* ; Middendorf, H. D.* ; 新村信雄*
Proceedings of the ICANS-XVI, Volume 1, p.351-354(2003) ; (JAERI-J 20379)

 生体高分子,生体物質及び関連するソフトマターの動的構造を研究することを主たる目的として計画,設計されている生物用非弾性散乱装置DYANAの最適化デザインの検討結果について述べる.本装置は,日本原子力研究所東海研究所において建設が進められている大強度陽子加速器施設プロジェクトのなかの物質・生命科学実験施設パルス中性子源に設置することが提案されている.DYANA分光器は逆転配置型結晶解析分光器でカバーするエネルギー・運動量範囲はそれぞれ数μeV〜数meV, 0.1Å-1〜数Å-1になる.これらの分光器の仕様により,蛋白質分子の運動を解析が可能になることが期待される.


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