2003年度

Radiation Risk Assessment Workshop Proceedings


310897
Effects of baseline on uncertainty of radiation risk models
中山晃志 ; 加藤正平
Radiation Risk Assessment Workshop Proceedings, p.140-150(2001) ; (JAERI-J 20390)

 放射線リスク予測モデルは,がん死亡数及び生存数をベースラインデータとして用いている.ICRPのリスクは,日本や米国等のベースラインデータにより得られたリスクを平均化することにより与えられている.また,EPAやNCRPによる不確かさ解析において,原爆生存者から得られた過剰リスクを異なった集団へ適用することが,リスク予測モデルに影響を及ぼす要素の一つとして挙げられている.この研究は,相乗リスク予測モデルにおける日米それぞれのベースラインの影響を調べるものである.まず,ICRPで用いられたベースラインデータと最近のベースラインデータから得られるリスク値に対して同等性の検定を行う.結果として,日本のベースラインで影響がみられ,米国では日本ほど影響がみられなかった.また,ベースラインを信頼して使用できる将来の年数は,ほとんどの部位において数年であったため,未来におけるリスク値の予測も行った.次に,リスク予測モデルに含まれる過剰相対リスク(ERR)の違いによるベースラインの影響を調べた.被ばく時年齢から得られる現状のERRよりも到達年齢から得られるERRを用いた方が,日本女性の若年被ばくの場合,ベースラインの影響を受け難いことがわかった.


310896
Evaluation of specific absorbed fractions in voxel phantoms using Monte Carlo simulation
木名瀬栄 ; Zankl, M.* ; 桑原潤 ; 佐藤薫 ; 野口宏 ; 船曳淳* ; 斎藤公明
Radiation Risk Assessment Workshop Proceedings, p.118-127(2001) ; (JAERI-J 20389)

 内部被ばく線量評価の精度向上を図る一環として,ボクセルファントムの比吸収割合を計算した.計算に際して,ボクセルファントム内の光子・電子輸送計算を可能とするコードを開発した.開発したコードを用いて,GSFが開発したボクセルファントムの比吸収割合を計算した結果,GSFで計算した比吸収割合とよく一致し,コードの妥当性が検証された.また,原研において開発されたボクセルファントムの比吸収割合についても計算し,他のボクセルファントムの比吸収割合と比較した結果,比吸収割合は臓器重量やファントムの構造の相違に影響することがわかった.


310895
Development of CT voxel phantoms for Japanese
佐藤薫 ; 野口宏 ; 斎藤公明 ; 江本豊* ; 古賀佑彦*
Radiation Risk Assessment Workshop Proceedings, p.102-110(2001) ; (JAERI-J 20388)

 体内に取り込まれた放射性核種による内部被ばく線量を評価するためには,あらかじめエネルギーごとに計算された比吸収割合,すなわちある臓器から放出された放射線のエネルギーが他の臓器に吸収される割合を用いる必要がある.比吸収割合は臓器の形状,大きさ及び位置に影響されることから,内部被ばく線量評価の信頼性を向上させるためには,実際の人体の構造を忠実に再現した人体ファントムを用いて計算された比吸収割合を得ることが必要である.近年,医用画像を基に,実際の人体臓器の形状,大きさ及び位置をボクセルと呼ばれる小直方体で緻密に表現したファントム(ボクセルファントム)が開発されるようになった.現在われわれは,信頼性の高い内部被ばく線量評価法の開発に必要な比吸収割合を得る目的で,CT画像を利用し,日本人成人男性のボクセルファントムを開発している.現在までに,体格の異なる3名のボランティアに対するCT撮影を行い,身長及び体重に関して日本人平均に近い中柄のボクセルファントムの開発をほぼ終了した.このファントムのボクセルサイズは0.98×0.98×1.0mm3であり,甲状腺のように小さく,複雑な構造の臓器であっても,その形状及び重量を忠実に再現することが可能であることが明らかになった.


310894
Monte Carlo simulation of initial process of radiation-induced DNA damage
横谷立子 ; 斎藤公明
Radiation Risk Assessment Workshop Proceedings, p.48-55(2001) ; (JAERI-J 20387)

 放射線によって生じるDNA損傷の特徴は,放射線のエネルギー付与とDNAの空間構造を反映していると考えられる.深刻な生物影響をもたらすと考えられるDNA損傷の多くは,飛程末端の低エネルギー電子により生成することが先行研究によって指摘されているが,飛程末端におけるナノメートルオーダーの微小領域のエネルギー分布やDNA損傷分布を実験的に観測するのは困難である.モンテカルロ法によるシミュレーションは,確率事象である放射線エネルギー付与と生体分子との相互作用を知るための有効な手段である.われわれは,放射線によるDNA損傷の特徴とメカニズムを,実験と直接比較が可能なDNA水溶液系における間接作用をモデル化し,シミュレートすることによって調べている.結果として,水溶液中でのDNA鎖切断の主原因であるOHラジカルの収率は飛跡末端付近で減少し一本鎖切断もこれを反映するが,より複雑な損傷である二本鎖切断は飛跡末端ほど効率よく生成すること,これらの収率には数10nmの範囲でのエネルギー付与の空間密度が重要であることがわかった.


310893
Molecular dynamics simulation of damaged DNA's and repair enzymes
Pinak, M.
Radiation Risk Assessment Workshop Proceedings, p.30-39(2001) ; (JAERI-J 20386)

 放射線による損傷DNAの分子動力学(MD)による研究について,修復酵素による損傷の適切な認識という観点から発表を行う.ピリミジン塩基損傷(シトシンラジカル,チミンダイマー: TD,チミングリコール: TG)とプリン損傷(8-オキソグアニン: 8-OH-G)について数百ピコ秒間のMDシミュレーションを行った.その結果,いずれの場合にも,以下に示すような明確なDNA二重らせん構造の変化が観測された.(1)塩基対間の水素結合が崩壊し,二重らせんが開く(シトシンラジカル,8-OH-G),(2)損傷部分でDNAが折れ曲がる(TD,TG),(3)損傷部分と相補的な鎖からアデニンがらせんの外側にはじき出される(8-OH-G).これらの構造の変化に加えて,損傷部位に特異的な静電エネルギーの変化が求められた.


[ page top ]
JAEA > JAEA図書館 > JOPSS > 学会誌等掲載論文[バックナンバー] >  累積情報(2003年度) > 当ページ
Copyright(C), Japan Atomic Energy Agency (JAEA)