2003年度

生物の科学 遺伝


320068
放射線耐性菌の耐性機構
鳴海一成
生物の科学 遺伝 57(5), p.57-62(2003) ; (JAERI-J 20618)

 現在の地球には強い放射線を放出する自然環境が存在しないにもかかわらず,放射線に高い耐性を持つ微生物が地球上のいたるところに生息している.γ線やX線といった電離放射線を照射すると,細胞中のDNAが切断される.DNAの鎖切断は,遺伝情報の分断を引き起こすので,一般な生物にとって最も重篤な損傷であるとともに,最も修復困難な損傷である.しかしながら,放射線耐性菌は,細胞内に生じた100箇所以上のDNA鎖切断を,いとも簡単に短時間で修復してしまうのである.1999年に,放射線耐性菌の代表であるデイノコッカス・ラジオデュランスの全ゲノム配列が解読され,放射線耐性機構の研究はポストゲノム時代に突入した.本稿では,放射線耐性菌の発見と耐性機構解明研究の歴史と現状について概説するとともに,放射線耐性獲得の起源についての仮説を紹介する.


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