2004年度

Journal of Nuclear Science and Technology


330167
Uncertainty analyses of neutron cross sections for 235U in the resonance region
柴田恵一
Journal of Nuclear Science and Technology 42(1), p.130-133(2005) ; (JAERI-J 21569)

 種々の設計計算の精度評価のために,235U中性子断面積の共分散(誤差)を共鳴領域で推定した.入射中性子エネルギーで平均された断面積の共分散を,最小自乗法を用い測定データから求めた.得られた共分散データは評価済核データライブラリーJENDL-3.3のデータと結合され,利用者が必要な共鳴領域断面積の誤差情報を提供することが可能となった.


330166
Investigation of hydride rim effect on failure of Zircaloy-4 cladding with tube burst test
永瀬文久 ; 更田豊志
Journal of Nuclear Science and Technology 42(1), p.58-65(2005) ; (JAERI-J 21568)

 水素添加ジルカロイ-4被覆管に対し室温及び620Kにおいてバースト試験を行った.NSRRでのパルス照射時に高燃焼度燃料で起こる急激なPCMIを模擬し,加圧速度は最高3.4MPa/msまで高めた.被覆管中の水素濃度範囲は150〜1050ppmであり,高燃焼度PWR燃料被覆管と同様に被覆管外周部に水素化物を集積させ,「水素化物リム」を形成させた.室温試験で,水素吸収被覆管は軸方向に長い亀裂を呈して破損した.水素化物リムでは,脆性的な破壊が見られ,破損形態はNSRR実験で観察されたものと同じであった.また,水素化物リムにより,破裂圧力や周方向残留ひずみは明確に低下した.水素化物リムの厚さが被覆管肉厚の18%を超える場合,620Kにおいても周方向ひずみは非常に小さかった.本研究の結果は,RIA条件下における高燃焼度燃料棒の破損において水素化物集積層が重要な役割を果たすことを示している.


330165
Design and structural analysis of support structure for ITER vacuum vessel
武田信和 ; 大森順次* ; 中平昌隆 ; 柴沼清
Journal of Nuclear Science and Technology 41(12), p.1280-1286(2004) ; (JAERI-J 21567)

 ITER真空容器はトリチウムや放射化ダスト等の放射性物質を閉じ込める安全機器である.現設計では,多層板バネによる真空容器支持脚はトロイダル磁場コイルに直接接続されているが,本論文では,真空容器下部ポートから支持する独立支持構造を代替案として提案する.この独立支持方式は現設計と比較して2つの利点を持つ.一つは,真空容器とトロイダル磁場コイルとの大きな温度差による熱荷重が軽減される点であり,もう一点は,トロイダル磁場コイルが真空容器と独立であることにより,安全機器として分類される必要がない点である.この支持脚の健全性を評価するため,真空容器の詳細モデルを用いて応力解析を実施した.その結果,真空容器とトロイダル磁場コイルとの相対変位は許容値100mmに対して15mmに押さえられた.また,支持脚を含む真空容器の応力はASMEで定められた許容値以下に押さえられた.これらの評価によって,提案する独立支持構造が代替案として成立することが確認された.


330078
Achievement of reactor-outlet coolant temperature of 950℃ in HTTR
藤川正剛 ; 林秀行 ; 中澤利雄 ; 川崎幸三 ; 伊与久達夫 ; 中川繁昭 ; 坂場成昭
Journal of Nuclear Science and Technology 41(12), p.1245-1254(2004) ; (JAERI-J 21497)

 日本初の高温ガス炉HTTRは,2004年4月19日に最大熱出力30MWで,原子炉出口冷却材(ヘリウムガス)温度950℃を達成した.出力上昇試験の最終段階として実施された高温試験運転では,原子炉の特性及び性能が確認され,また安全,安定運転のための種々の運転データが蓄積された.原子炉出口冷却材温度950℃の達成により,高温ガスタービンによる高効率発電が可能になるとともに,水を原料とした水素製造に十分な温度を達成したこととなり,原子力の非電力分野での利用の可能性が広がったことになる.今回の成功により,高温ガス炉を用いた水からの水素製造の実現に向けて大きく前進した.本報は,HTTRの高温試験運転の試験結果について述べたものである.


330077
Influence of hydride re-orientation on BWR cladding rupture under accidental conditions
永瀬文久 ; 更田豊志
Journal of Nuclear Science and Technology 41(12), p.1211-1217(2004) ; (JAERI-J 21496)

 高燃焼度BWR燃料被覆管では,半径及び軸方向に平行な面に沿った水素化物の析出が増加する.半径方向水素化物はRIA時の燃料挙動に重要な役割を果たし,PCMI条件下では,被覆管の延性を低下させる可能性がある.PCMI条件下における高燃焼度燃料被覆管の破損挙動に及ぼす径方向水素化物の影響を調べるために,約200〜600ppmの水素を添加した未照射BWR被覆管のバースト試験を行った.約20〜30%の水素化物を半径方向と軸方向に平行な面に沿って再配向させた.室温及び373Kにおいて,軸方向の割れを伴う大きな破損開口が生じた.しかし,破裂圧力と残留周方向歪み量に対する径方向水素化物の影響は非常に小さかった.したがって,調べた水素濃度と径方向水素化物割合の範囲において,径方向水素化物のみによって,高燃焼度BWR燃料被覆管の延性が著しく低下することはないと考えられる.


330164
Proposal of simplified model of radionuclide release from fuel under severe accident conditions considering pressure effect
日高昭秀 ; 工藤保 ; 石神努 ; 石川淳 ; 更田豊志
Journal of Nuclear Science and Technology 41(12), p.1192-1203(2004) ; (JAERI-J 21566)

 原研では,放射性物質の放出機構解明とソースターム高精度予測を目的として,シビアアクシデント条件下における燃料からの放射性物質放出を調べるVEGA実験を行っている.そのうち,圧力影響を調べた実験において,1.0MPaでは0.1MPaに比べCs放出が約30%減少することを観測した.この現象は,結晶粒内拡散に加え開気孔中ガス拡散を考慮した2段階拡散モデルにより説明できることを明らかにした.しかしながら,このモデルは計算時間がかかり,確率論的安全評価等で使用する際は現実的でない.このため,2段階拡散モデルに基づき,燃料表面における開気孔中のガス拡散流束の圧力依存性1/√Pを,放出率速度係数を与える従来のCORSOR-Mに乗じる簡易モデルを導出した.さらに,この簡易モデルを原研のソースタームコードTHALES-2に組み込んで,BWRのTQUXシーケンスにおけるCsI放出を調べた所,格納容器が早期に破損する場合は,環境中放出割合がかえって増加する場合があることを明らかにした.今後,ソースターム計算において1/√P CORSOR-Mモデルの使用を提案する.


330076
Influence of ionic strength on Curium(III) and Europium(III) sorption on Halomonas elongata
竹中陽子* ; 尾崎卓郎 ; 大貫敏彦
Journal of Nuclear Science and Technology 41(11), p.1125-1127(2004) ; (JAERI-J 21495)

 耐塩性微生物ハロモナス菌へのキュリウム及びユーロピウムの吸着へのイオン強度の影響を明らかにするため,バッチ実験を行った.その結果,ハロモナス菌はCm及びEuに対してNaCl濃度が5.2Mでも高い吸着能を示した.吸着能が高い原因は,高い塩濃度で発現した細胞表面の親水基の増加及び細胞の縮小化であることがわかった.


330022
Selective separation of Am(III) from Ln(III) with a novel synergistic extraction system, N,N,N',N'-tetrakis(2-methylpyridyl)ethylenediamine (TPEN) and carboxylic acid in 1-octanol
Mirvaliev, R.* ; 渡邉雅之 ; 松村達郎 ; 館盛勝一* ; 竹下健二*
Journal of Nuclear Science and Technology 41(11), p.1122-1124(2004) ; (JAERI-J 21451)

 高レベル廃棄物の長期放射能毒性の劇的な低減化を目指す分離変換技術の実現には,高レベル廃液からマイナーアクチノイドを分離し,ADS等に供給する分離技術の開発が重要である.しかし,マイナーアクチノイドのうちAm, Cmは溶液中で3価のイオンとなりランタノイドと類似した化学的挙動を取るため相互の分離が困難であることが知られており,各国においてこの分離に適用できる抽出剤の開発が精力的に進められている.N,N,N',N'-tetrakis(2-methylpyridyl)ethylenediamine (TPEN)は,水相中においてAmとランタノイド元素との錯体安定度定数に102の差があることが報告されており,われわれはこれまでニトロベンゼン系,D2EHPA-オクタノール系において,TPENによるAmのランタノイド元素からの抽出分離を確認してきた.今回,より実用に適した新規協同抽出系であるTPEN・デカン酸−オクタノール系において,Am(III)がLn(III)から選択的に分離されることを見いだし,その分離係数,SFAm/Euは最大84を示した.


330075
Effect of absorbed hydrogen on the stress corrosion cracking (SCC) susceptibility of unirradiated Zircaloy cladding
天谷政樹 ; 更田豊志
Journal of Nuclear Science and Technology 41(11), p.1091-1099(2004) ; (JAERI-J 21494)

 未照射ジルカロイ被覆管の応力腐食割れ(SCC)感受性に及ぼす吸収水素の影響を調べた.文献から得られたデータは,ジルカロイ-2及び-4の種類によらず,SCCしきい応力(σth)に対する0.2%耐力(σ0.2)が60ppm以下の水素濃度において水素濃度の増加とともに増加することを示している.ヨウ素ガスと水素を含むジルコニウムとの間に生じる反応について,熱力学計算を行った.その結果,水素濃度が増加すると反応が生じにくくなること,及び水素濃度が90ppm以下でのみジルコニウムとヨウ素ガスとが反応することが示唆された.これらの傾向は,水素濃度に対するσthとσ0.2の比の傾向と一致していることから,水素がヨウ素ガスとジルコニウムとの間の反応に影響を及ぼし,ジルカロイ被覆管のSCC感受性を低下させていると考えられる.


330074
Effect of cladding surface pre-oxidation on rod coolability under reactivity initiated accident conditions
杉山智之 ; 更田豊志
Journal of Nuclear Science and Technology 41(11), p.1083-1090(2004) ; (JAERI-J 21493)

 反応度事故(RIA)条件下で被覆管表面予備酸化膜が燃料棒の冷却性に及ぼす影響を調べた.照射済燃料棒の表面では膜沸騰遷移(DNB)が抑制され,またクエンチが早く生じるため,結果的に未照射燃料棒よりも冷却性が高いことがNSRR実験により示されてきた.沸騰遷移に影響を与え得る要因を考察した後,最も可能性が高いと考えられる表面予備酸化膜の影響について,未照射燃料に対するパルス照射実験により検証を行った.被覆管表面の条件としては,酸化膜無し,1ミクロン及び10ミクロン厚酸化膜付の3通りを用意した.温度計測結果により,酸化表面では温度及び燃料エンタルピに関するDNB発生しきい値が上昇し,同時に,クエンチ発生温度が上昇することで膜沸騰継続時間が短縮されることが示された.これら限界熱流束点及び極小熱流束点の変動は表面ぬれ性の増大により起こり得る.本実験においては,酸化膜の厚さではなくその有無が結果を左右していることから,酸化時の表面粗さ増大ではなく,酸化による化学ポテンシャルの変化が表面ぬれ性に影響を与えたと考えられる.


330073
Damage diagnostic of localized impact erosion by measuring acoustic vibration
二川正敏 ; 直江崇* ; 粉川広行 ; 池田裕二郎
Journal of Nuclear Science and Technology 41(11), p.1059-1064(2004) ; (JAERI-J 21492)

 高出力核破砕中性子源の開発が世界で行われている.我が国では,革新的な科学研究の推進を目的としたJ-PARCの物質生命科学研究施設に,核破砕中性子源として水銀ターゲットが設置される.水銀を内包するターゲット容器はパルス陽子線入射時に衝撃的圧力変動を受ける.この圧力変動により生じるキャビテーションは,局所衝撃壊食をターゲット容器に付加する.この衝撃壊食は,ターゲット容器の寿命を支配する因子となる.これまでに,陽子線入射励起圧力波を再現できる電磁力衝撃圧負荷試験機を開発し,衝撃壊食の成長挙動を評価した.ここでは,局所衝撃エネルギに関連する音響振動を計測し,損傷形態と比較した.その結果,音響振動は,損傷の程度を推測する有効な情報を与えうることが明らかになり,音響振動によりターゲット容器構造健全性を診断できる可能性を示した.


330021
Efficient isotope ratio analysis of uranium particles in swipe samples by total-reflection X-ray fluorescence spectrometry and secondary ion mass spectrometry
江坂文孝 ; 渡部和男 ; 福山裕康* ; 小野寺貴史 ; 江坂木の実 ; 間柄正明 ; 桜井聡 ; 臼田重和
Journal of Nuclear Science and Technology 41(11), p.1027-1032(2004) ; (JAERI-J 21450)

 保障措置スワイプ試料中に含まれる個々のウラン粒子の同位体比を効率的に分析するために,新たな粒子回収法及び高感度なスクリーニング法を開発した.スワイプ試料中に含まれる粒子を真空吸引−インパクト捕集法により試料台上に回収した.試料台にグリースを塗布した場合,その回収効率は48%であり,従来の超音波を用いた粒子回収方法よりも優れていた.また,二次イオン質量分析法(SIMS)による同位体比分析に先立って,試料中のウラン粒子の存在を確認するスクリーニング手段として全反射蛍光X線分析法(TXRF)を適用した.その結果,試料台にSiを用いることによりウランを高感度(検出限界22pg)で測定することができた.これらの方法とSIMS法を組合せることにより,個々のウラン粒子の235U/238U同位体比を効率的に分析することが可能となった.


320939
Fission gas release in irradiated UO2 fuel at burnup of 45 GWd/t during simulated Reactivity Initiated Accident (RIA) condition
天谷政樹 ; 杉山智之 ; 更田豊志
Journal of Nuclear Science and Technology 41(10), p.966-972(2004) ; (JAERI-J 21340)

 商用炉で照射された燃料から調製した試験燃料棒に対し,反応度事故条件を模擬したパルス照射を行った.パルス照射後に実施した照射後試験の一部として,試験燃料棒の光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡による観察とEPMAによる分析を行った.パルス照射後の燃料ペレット周辺部及び中心部でXe濃度の低下が認められた.パルス照射中のFPガス放出はおもにペレット中心部で生じたものと考えられる.EPMAの結果からパルス照射中のFPガス放出量は10-12%と評価され,この結果はパンクチャ試験結果と同程度であった.この評価値と炉外アニーリング試験結果とを比較した結果,ペレット中心部からベース照射中に粒界に蓄積されたFPガスのほとんどがパルス照射中に放出されたと考えられた.


320940
New laser decontamination technique for radioactively contaminated metal surfaces using acid-bearing sodium silicate gel
亀尾裕 ; 中島幹雄 ; 平林孝圀*
Journal of Nuclear Science and Technology 41(9), p.919-924(2004) ; (JAERI-J 21341)

 放射性金属廃棄物に対する新規除染技術として,ケイ酸ナトリウムと酸から調製したゲル除染剤を用いたレーザー除染法について検討した.60Coトレーサーを塗布した模擬汚染試料及び動力試験炉(JPDR)の一次冷却系統から切り出した実汚染試料に本除染法を適用したところ,2〜3回の除染で99%以上の放射能(60Co)を除去することができた.除染反応におけるレーザー照射の効果を明らかにするため,腐食生成物層中の酸素及び鉄の化学結合状態をX線光電子分光分析装置で調べた.その結果,ゲル除染剤による腐食生成物層の溶解が,レーザー照射を行うことにより大幅に促進されることがわかった.


320680
Effect of pre-hydriding on thermal shock resistance of Zircaloy-4 cladding under simulated loss-of-coolant accident conditions
永瀬文久 ; 更田豊志
Journal of Nuclear Science and Technology 41(7), p.723-730(2004) ; (JAERI-J 21112)

 冷却材喪失事故(LOCA)条件を模擬した実験を行い,酸化したジルカロイ-4被覆管の耐熱衝撃性に及ぼす水素吸収の影響を評価した.試験には人工的に水素を添加した被覆管(400〜600ppm)と水素を添加しない被覆管を用いた.急冷時の被覆管破断は主として酸化量に依存することから,破断しきい値を「等価被覆酸化量(ECR)」に関して評価した.被覆管を軸方向に拘束しない条件では,破断しきい値は56%ECRであり,水素添加の影響は見られなかった.急冷時に被覆管を拘束することにより破断しきい値は低下し,水素を添加した被覆管でより顕著であった.完全拘束条件下での破断しきい値は,水素を添加しない被覆管で20%ECR,添加した被覆管で10%ECRであった.本試験の結果は,LOCA条件下で高燃焼度燃料棒の破断しきい値が低下する可能性を示している.


320618
Improvement of Worldwide Version of System for Prediction of Environmental Emergency Dose Information (WSPEEDI), 1; New combination of models, atmospheric dynamic model MM5 and particle random walk model GEARN-new
寺田宏明 ; 古野朗子 ; 茅野政道
Journal of Nuclear Science and Technology 41(5), p.632-640(2004) ; (JAERI-J 21057)

 国外の原子力事故によって放出された放射能の国内の公衆への影響を予測するために,世界版緊急時環境線量情報予測システム「WSPEEDI」が開発されてきた.WSPEEDIは,3次元風速場診断モデル「WSYNOP」と粒子拡散モデル「GEARN」によって構成されている.この従来版WSPEEDIの短所は以下の通りである.(1)多様なスケールを持つ複数の領域についての同時計算が不可能である.(2)大気境界層の取り扱いが単純であり,混合層の時・空間変化が考慮されていない.(3)降水の3次元構造が湿性沈着過程に考慮されていない.これらの問題を改善するため,複数領域の詳細な気象場を同時に予測して粒子拡散モデル「GEARN-new」に提供することが可能な大気力学モデル「MM5」が導入された.この改良版WSPEEDIを検証するため,1986年にチェルノブイリ原子力発電所で発生した事故への適用計算が行われた.地表137Cs濃度の計算結果と測定値を比較したところ,ヨーロッパ域での放射能の拡散が精度よく再現されたことが示され,改良版WSPEEDIの妥当性が確認された.


320505
Calculation of nuclear characteristic parameters and drawing subcriticality judgment graphs of infinite fuel systems for typical nuclear fuels
奥野浩 ; 高田友幸*
Journal of Nuclear Science and Technology 41(4), p.481-492(2004) ; (JAERI-J 20953)

 「臨界安全ハンドブック」の「データ集」改訂のため,核特性パラメタを計算し,未臨界判定図を作成した.核特性パラメタは,無限中性子増倍率,移動面積及び拡散係数で,核燃料サイクル施設の臨界安全評価に用いられる11種類の典型的な燃料についてであった.これらの燃料には「データ集」に記載のなかったADU-H2O, UF6-HF及びPu(NO3)4-UO2(NO3)2溶液が含まれる.計算は,日本の評価済核データJENDL3.2及び一連の臨界計算コードSRAC,POST及びSIMCRIを用いて実施した.未臨界判定図は,中性子増倍率がkinf=0.98を満たす領域を(a)ウラン濃縮度,239Pu/Pu比,あるいはプルトニウム富化度と(b)H/(Pu+U)比という2つの変数間において,無限媒質での同じ燃料(UF6-HFを除く)について描いた.未臨界判定図の制限についても議論した.


320426
Performance test results of mock-up test facility of HTTR hydrogen production system
大橋弘史 ; 稲葉良知 ; 西原哲夫 ; 稲垣嘉之 ; 武田哲明 ; 林光二 ; 片西昌司 ; 高田昌二 ; 小川益郎 ; 塩沢周策
Journal of Nuclear Science and Technology 41(3), p.385-392(2004) ; (JAERI-J 20885)

 原研では,高温核熱利用の有用性の実証を目的として,HTTRと水素製造システム(メタンの水蒸気改質:CH4+H2O=CO+3H2)との接続技術の開発を進めている.HTTR水素製造システムの製作の前に,システムの特性把握,原子炉に対応した運転・制御技術の確立,HTTR水素製造システムの安全審査・設工認に必要なデータの取得を目的として実規模単一反応管試験を計画し,HTTR水素製造システムの1/30スケールの規模を有する試験装置を完成させた.さらに,今後の試験を行ううえで必要な水素製造能力,制御性等を確認するために,試験装置完成時にHTTR水素製造システムと同条件下で水素製造試験等の機能試験を実施した.この結果,本装置の水素製造能力は設計値110Nm3/hを満足する120Nm3/hであった.また,起動時におけるヘリウムガスの熱外乱を蒸気発生器で緩和することにより,原子炉戻りヘリウムガス温度に相当する蒸気発生器出口へリウムガス温度を設計値である±10℃以内に制御できた.本報では,機能試験の結果について述べる.


320425
Experiments on mercury circulation system for spallation neutron target
木下秀孝 ; 羽賀勝洋 ; 神永雅紀 ; 日野竜太郎
Journal of Nuclear Science and Technology 41(3), p.376-384(2004) ; (JAERI-J 20884)

 J-PARC計画の下で建設を進めている核破砕中性子源において,核破砕水銀ターゲットに水銀を安定供給する循環システムの設計開発は不可欠である.このため,循環ポンプの性能試験が必要であり,また,配管のエロージョン量や配管内に残る水銀量を明らかにすることは配管の寿命評価やシステムのメンテナンスシナリオを確立するうえで重要事項となる.そこで,水銀流動基礎実験装置を用いてポンプ試験,エロージョン試験及び水銀残留量評価を,実機と同形式のギアポンプを使用して行った.その結果,実験用ギアポンプの吐出量等については実機を実現するうえで十分な性能を示しており,また,回転数と流量の関係は比例的な関係を示した.エロージョンについては非常にその量も小さく,実機配管で30年間の運転に対して安全側に評価した場合に,減肉量として660μmという値を得た.残留水銀量については50.7g/m2という結果を得た.


320830
Development of Decommissioning Engineering Support System(DEXUS) of the Fugen Nuclear Power Station
井口幸弘* ; 兼平宜紀* ; 立花光夫* ; Johnsen, T.*
Journal of Nuclear Science and Technology 41(3), p.367-375(2004) ; (JAERI-J 21244)

 新型転換炉ふげん発電所は,2003年に運転を終了し,現在,廃止措置の準備が進んでいる.「ふげん」では,廃止措置のためにエンジニアリング支援システムを,3次元CADや仮想現実(VR)などの最新のソフトウェア技術を用いて開発しており,解体計画の作成に利用している.特に,VR技術による被ばく線量評価システムを開発し,試行した.本支援システムは,放射性廃棄物の定量化,放射能インベントリの可視化,解体工程のシミュレーション,放射線環境下での作業量評価,及び廃止措置の最適化等に用いるものである.また,作業者の教育訓練及び一般の理解を得るのにも有効である.


320424
Structural safety assessment of a tokamak-type fusion facility for a through crack to cause cooling water leakage and plasma disruption
中平昌隆
Journal of Nuclear Science and Technology 41(2), p.226-234(2004) ; (JAERI-J 20883)

 トカマク型核融合装置は,プラズマ停止に関し固有の安全性があるとされる.水リークにより,プラズマが安全停止することもあるが,プラズマディスラプションが生じる可能性もあり,この時真空容器に電磁力が作用する.真空容器はトリチウムと放射化ダストを内包する放射性安全上の物理障壁である.貫通き裂から水リークが発生し,生じた電磁力に対して真空容器が不安定破壊を起こさなければ,構造安全性が確保され,固有の安全性を証明できる.よって構造安全性を確保する系統的手法の開発を行った.まず貫通き裂と水リークの解析モデルを構築し,実験的に検証した.本モデルによりプラズマを停止させる貫通き裂長さは,約2mmと算出し,不安定破壊を起こすき裂長さは約400mmと評価した.したがってプラズマ停止を起こす貫通き裂により真空容器が不安定破壊することはないと結論づけられ,固有の安全性を証明した.


320292
Reliable method for fission source convergence of Monte Carlo criticality calculation with Wielandt's method
山本俊弘 ; 三好慶典
Journal of Nuclear Science and Technology 41(2), p.99-107(2004) ; (JAERI-J 20783)

 モンテカルロ法の臨界計算に決定論的方法の源反復で加速法として用いられるWielandt法を組み込むアルゴリズムを開発した.このアルゴリズムでは,酔歩の過程で発生した核分裂中性子の一部もその世代内で追跡を行うので,次世代の核分裂源分布がより広範囲に広がる.従来のモンテカルロ法の臨界計算が苦手とする弱結合の配列系においても,この方法を用いることで中性子相互干渉効果を強める効果があり,より少ない世代数で核分裂中源が収束するようになる.しかし,世代内で核分裂中性子の追跡を行うために,一世代あたりの計算時間が増加し,収束までの計算時間は逆に増大する.また,Wielandt法を適用することでモンテカルロ計算での核分裂源分布の統計的変動が大きくなる.しかし,より少ない世代で収束するために,収束の遅い体系においても収束判定がより確実にできるようになり,不正確な臨界計算の排除に寄与することが期待できる.


320829
Failure thresholds of high burnup BWR fuel rods under RIA conditions
中村武彦* ; 更田豊志 ; 杉山智之 ; 笹島栄夫
Journal of Nuclear Science and Technology 41(1), p.37-43(2004) ; (JAERI-J 21243)

 反応度事故を模擬した条件での高燃焼度BWR燃料の変形挙動を測定し,破損限界を検討した.NSRRで行った実験では,パルス照射のごく初期に0.4%程度の小さな周方向歪みが生じた時点で被覆管は脆性的に破損した.この変形の歪み速度は数10%/s程度であった.これらの結果をペレットの熱膨張の計算値と比較した結果,この被覆管変形はペレットの熱膨張によって生じており,ペレットに蓄積されたFPガスの影響は小さいことが示された.また,被覆管温度が破損しきい値に及ぼす影響を個別効果試験によって調べた.高燃焼度BWR燃料の破損しきい値に及ぼすパルス幅の影響について,歪み速度,変形の程度,及び被覆管温度の観点から議論した.


320423
Coupled-channels analysis of nucleon interaction data of 28,30Si up to 200 MeV based on the soft rotator model
Sun, W.* ; 渡辺幸信* ; Sukhovitskij, E.* ; 岩本修 ; 千葉敏
Journal of Nuclear Science and Technology 40(9), p.635-643(2003) ; (JAERI-J 20882)

 軟回転体模型とチャンネル結合模型を結合することにより,sdシェル原子核の28,30Siに対して,原子核レベル構造及び200MeVまでの核子散乱データの統一的解析を行った.軟回転体模型及び光学模型のパラメータを求めた.計算結果は集団準位と中性子全断面積や陽子反応断面積,核子散乱角度分布などの核子相互作用の実験データを両方ともよく再現している.


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