2004年度

Nuclear Instruments and Methods in Physics Research, B


320962
Performance of the new iodine-129 beamline at JAERI-AMS
鈴木崇史 ; 荒巻能史 ; 北村敏勝 ; 外川織彦
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 223-224(1-4), p.87-91(2004) ; (JAERI-J 21363)

 日本原子力研究所のむつ事業所に設置されている加速器質量分析計は14Cと129Iを測定できる2つの独立したビームラインを持っている.本研究ではこのヨウ素ラインの精度,正確さ,検出限界を測定した.129I測定のアクセプタンステストは連続した2日間で行われ,この2日間で得られた129I/127I比はそれぞれ(7.497±0.119)×10-11と(7.209±0.050)×10-11であり,相対標準偏差はそれぞれ1.6%, 0.7%であった.海水試料は再処理工場稼動前の西部北太平洋と六ヶ所沖で採水した.AMS測定のための海水サンプル処理は溶媒抽出法によって行われた.本論文はAMSヨウ素ラインの性能と海水試料中の129I/127I比の測定結果をまとめたものである.


320524
Characterizations of heavy ion irradiated PET membranes
高橋周一* ; 吉田勝 ; 浅野雅春 ; 埜富光男* ; 仲川勤*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 217(3), p.435-441(2004) ; (JAERI-J 20972)

 重イオン照射したフィルムの物性変化を動的粘弾性測定(DMA),DSC,FT-IR,AFM,接触角測定,引っ張り試験などを用いて検討した.サンプルとしてはポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いた.イオン照射はXeイオン(450MeV)を3×103から3×109ions/cm2のフルエンスの条件で行った.引っ張り試験とDMAの結果から,イオン照射によりPETフィルムは架橋することがわかった.しかし,3×109ions/cm2のフルエンスで照射したPETフィルムは引っ張り強度は増大したが,破断強度は低下した.このことから,高いフルエンスで照射することにより,ポリマーの主鎖切断が起こり,分解構造が形成されると結論した.また,DSCとFT-IRの結果は,イオン照射によってフィルムが非晶化することを示した.


320376
Uptake of cadmium by synthetic mica and apatite; Observation by micro-PIXE
香西直文 ; 大貫敏彦 ; Komarneni, S.* ; 神谷富裕 ; 酒井卓郎 ; 及川将一* ; 佐藤隆博*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 210, p.513-518(2003) ; (JAERI-J 20843)

 重金属イオンに対する吸着性が高い2つの材料,Na-4マイカと呼ばれる合成雲母とアパタイトによる溶液からのカドミウム除去特性について検討した.溶液のカドミウム初期濃度1×10-4M,初期pH3の条件でのNa-4マイカへの分配係数は8.4×105ml/gであり,アパタイトへの分配係数は8.2×104ml/gより一桁高かった.同じ条件で,Na-4マイカとアパタイトの等量混合試料をカドミウム溶液に接触させた後,固相の一部をグラファイト板に塗布し,マイクロPIXEによる2次元元素分析を行った.その結果,カドミウムはアパタイトにのみ認められ,Na-4マイカには認められなかった.本結果は,上述の分配係数から予測される結果と一致しないが,2つの試料へのカドミウムの吸着速度の違い及び吸着の不可逆性の観点から説明できる.


320375
A Comparative study of the radiation hardness of silicon carbide using light ions
Lee, K. K.* ; 大島武 ; Saint, A.* ; 神谷富裕 ; Jamieson, D. N.* ; 伊藤久義
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 210, p.489-494(2003) ; (JAERI-J 20842)

 プロトン,アルファ線,炭素イオンマイクロビームを108から1013ion/cm2照射した六方晶炭化ケイ素(6H-SiC)ショットキーダイオードのイオン誘起電荷収集(IBICC)の効率を調べることで耐放射線性に関する知見を得た.2MeVアルファ線マイクロビーム照射の結果,基板がn型,p型によらず類似する劣化挙動を示した.また,IBICCの減少量を非イオン化エネルギー損失(NIEL)を用いて解析したところ良い一致を示した.さらに,プロトン照射試料についてイオンルミネッセンス(IL),紫外フォトルミネッセンス(UV-PL)測定を行ったところ,2.32eVの準位が観測された.


320374
Application of micro-PIXE technique to uptake study of cesium by saccharomyces cerevisiae
大貫敏彦 ; 坂本文徳 ; 香西直文 ; 尾崎卓郎 ; 鳴海一成 ; Francis, A. J.* ; 家藤治幸* ; 酒井卓郎 ; 神谷富裕 ; 佐藤隆博* ; 及川将一*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 210, p.378-382(2003) ; (JAERI-J 20841)

 酵母に取り込まれたCsとCo及び他の元素をPIXEにより分析し,成長への影響を検討した.酵母の成長への影響を検討した結果,1mMのCsを培地に添加した場合には成長は阻害されなかったが,0.5mMのCoの添加により阻害された.Csを添加した培地で成長した酵母のPIXEスペクトルではCsのピーク強度が増加し,Pの強度が減少した.一方,Coを添加した場合には,CoとFeのピーク強度が増加したが,P,K及びZnの強度に変化はなかった.これらの結果から,PIXEは微生物の元素の変化を観察するのに有効であることがわかった.


320373
Evaluation of the characteristics of silicon carbide diodes using transient-IBIC technique
大島武 ; Lee, K. K.* ; 小野田忍* ; 神谷富裕 ; 及川将一* ; Laird, J. S.* ; 平尾敏雄 ; 伊藤久義
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 210, p.201-205(2003) ; (JAERI-J 20840)

 過渡イオンビーム誘起電流(TIBIC)システムを用いて,SiC pnダイオードの電極の信頼性を評価した.SiCダイオードのpn接合は,n型エピタキシャル単結晶SiC上に800℃でのAlイオン注入及びアルゴン中での1800℃,1分間の熱処理により形成した.電極は,Al金属蒸着後にアルゴン中で850℃,5分間熱処理または,電極熱処理後さらにAl金属蒸着した2種類を比較した.15MeV酸素イオンまたは12MeVニッケルイオンのマイクロビームを用いTIBIC測定を行った.その結果,熱処理後再度Al蒸着した試料は,得られる過渡電流量は電極面内で均一であったが,熱処理のみの試料ではムラが生ずることがわかった.一方,収集電荷量を解析したところ,得られる電荷量は電極形成条件によらず同量であり,pn接合は面内で均一であると判断できた.電流−電圧特性に関しては,いずれの試料も逆バイアス30Vでの洩れ電流はpAオーダーであり,順方向では2V程度のバイアス印加でターンオンする理想的なSiCダイオード特性を示した.以上より,TIBICを用いることで,通常の電流−電圧測定ではわからない電極の電気特性の面内均一性が評価できることが明らかになった.


320372
An Energy spread minimization system for microbeam generation in the JAERI AVF cyclotron
福田光宏 ; 倉島俊 ; 宮脇信正 ; 奥村進 ; 神谷富裕 ; 及川将一* ; 中村義輝 ; 奈良孝幸 ; 上松敬 ; 石堀郁夫 ; 吉田健一 ; 横田渉 ; 荒川和夫 ; 熊田幸生* ; 福本康志* ; 斉藤勝彦*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 210, p.33-36(2003) ; (JAERI-J 20839)

 数百MeVの重イオンマイクロビームはバイオ研究に必要とされる重要なプローブである.原研AVFサイクロトロンでは,生体機能解明研究に適した260MeV 20Ne7+マイクロビームのシングルイオンヒット技術の開発を行っている.ビーム径1μmのマイクロビームを生成するためには,集束レンズでの色収差の影響を最小限に抑えるようにビームのエネルギー幅をΔE/E=0.02%にする必要がある.サイクロトロンビームのエネルギー幅は加速電圧波形と位相アクセプタンスに依存し,正弦波を用いた従来の加速法では0.1%が通例である.第5高調波電圧を基本波電圧に重畳することによりエネルギー利得の均一化に必要なフラットトップ電圧波形を作ることができ,エネルギー幅の最小化が実現される.そこで,既設の基本波共振空洞に連結し,基本波周波数の5倍の周波数帯域(55-110MHz)の第5高調波を発生させるための同軸型共振空洞を設計・製作した.パワー試験において,ディー電極の端部に設置した加速電圧ピックアップ電極からの信号をモニターすることにより,第5高調波電圧が基本波電圧に正常に重畳されていることを確認した.


320436
Anomalous shift of Curie temperature in iron-nickel invar alloys by high-energy heavy ion irradiation
岩瀬彰宏 ; 浜谷祐多郎* ; 椋本佳範* ; 石川法人 ; 知見康弘 ; 神原正* ; Muller, C.* ; Neumann, R.* ; 小野文久*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 209(1-4), p.323-328(2003) ; (JAERI-J 20895)

 鉄ニッケルインバー合金をGeV領域のZe,Uイオンで照射し,キューリー温度の変化を測定した.照射により,キューリー温度は上昇し,それは,イオンの電子的阻止能が増加するとともに増加した.この現象は,GeVイオン照射のもたらす電子励起によって結晶格子が膨張したか,あるいは,Niの局所濃度が増加したことで説明できる.


320371
Defect production and radiation annealing in platinum irradiated with high-energy heavy ions
知見康弘 ; 岩瀬彰宏 ; 岩田忠夫*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 209, p.159-164(2003) ; (JAERI-J 20838)

 白金薄膜に〜10K以下で高エネルギーイオン照射したときの欠陥の蓄積を電気抵抗率測定により調べた.実験結果は欠陥生成と選択的照射アニーリングを記述するようなモデルを用いて解析された.高エネルギー(〜100MeV)重イオン照射において,電子励起による照射アニーリングがおもに照射初期に観測された.欠陥蓄積曲線及び欠陥回復スペクトルから,電子励起によって誘起された格子の擾乱に相当する実効温度が見積もられた.


320295
Irradiation effect of different heavy ions and track section on the silkworm bombyx mori
Tu, Z.* ; 小林泰彦 ; 木口憲爾* ; 渡辺宏*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 206, p.591-595(2003) ; (JAERI-J 20786)

 われわれは原研高崎研究所に設置された重イオン照射装置を用いて,カイコのような小動物へのラジオサージャリー技術を確立した.今回,ヘリウムイオン(4He2+, 12.5MeV/u, 水中飛程約1.5mm),炭素イオン(12C5+, 18.3MeV/u, 水中飛程約1.1mm)及びネオンイオン(20Ne8+, 17.5MeV/u, 水中飛程約0.6mm)など飛程の異なる3種の重イオンを家蚕(着色非休眠系統pnd pS)の幼虫に全体照射あるいは局部照射し,その生物影響の違いを調べるとともに,イオンの照射深度による生物影響も調査した.全体照射では,3種のイオン間に照射効果が明らかに異なり,飛程の長いものほど影響が大きいこと,局部照射では,存在部位の異なる標的組織・器官によってその影響が異なることが明らかになった.炭素イオンを用いてマイラーフィルム(厚さ100μm)で覆うことにより照射深度を制御した場合は,真皮細胞がイオンの飛程末端までのどの部分で照射されるかによって,その鱗毛形成に障害を起こす程度が大きく変化することがわかった.イオンの照射深度を制御することにより,精確に標的組織・器官のみの機能破壊が可能である.


320435
UV-ray photoelectron and ab initio band calculation studies on electronic structures of Cr- or Nb-ion implanted titanium dioxide
梅林励* ; 八巻徹也 ; 住田泰史* ; 山本春也 ; 田中茂 ; 浅井圭介*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 206, p.264-267(2003) ; (JAERI-J 20894)

 CrとNbがドープされたTiO2の電子構造を第一原理バンド計算と紫外線光電子分光(UPS)によって詳しく調べた.両ドープ体には,電子占有準位がバンドギャップ内に形成されることが明らかになった.これら不純物準位は,CrドープTiO2ではバンドギャップのほぼ中央に,Nbドープの場合は伝導帯(CB)の底付近に位置する.過去に報告された遷移金属ドープTiO2の可視域における光応答特性は,これらの不純物準位を介した電子遷移過程を考えれば系統的に説明できるものと考えられる.UPS測定では,不純物準位に起因するピークが両ドープ体ともに観測された.Crドープに由来する準位のピークは価電子帯(VB)端の近くに現れたのに対し,Nbの準位はより高エネルギー側,すなわちCBに近い側に位置した.この不純物種による違いは,上記の計算結果とほぼ一致した.われわれは,Cr,NbがTiO2にドープされたときにバンドギャップ内に形成される準位の特性を理論,実験の両面から明らかにした.


320754
Radiation damage effects in superplastic 3Y-TZP irradiated with Zr ions
本橋嘉信* ; 小林友和* ; Harjo, S.* ; 佐久間隆昭* ; 柴田大受 ; 石原正博 ; 馬場信一 ; 星屋泰二
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 206, p.144-147(2003) ; (JAERI-J 21177)

 3Y-TZP(3mol%イットリア含有正方晶ジルコニア多結晶体)セラミックスに130MeVのZr11+イオンを,日本原子力研究所東海研究所のTANDEM加速器を用いて照射した.照射量は3.5×1016及び2.1×1017ions/m2であった.照射によって生じた残留応力と機械的特性の変化,さらにその後の焼鈍効果について調べた.照射後の試験片表面について,残留圧縮応力の発生及び硬さと破壊靭性の増加が観察された.その後に実施した焼鈍では,これらの物性は焼鈍温度の増加に伴い徐々に低下し,1173K付近では非照射状態の値に戻った.硬さと破壊靱性の増加の主たる原因は,照射表面に生じた残留圧縮応力であると考えられる.


320753
Superplastic deformation characteristics of 3Y-TZP after Zr ion irradiation
柴田大受 ; 石原正博 ; 本橋嘉信* ; 馬場信一 ; 星屋泰二 ; 小林友和* ; Harjo, S.* ; 佐久間隆昭*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 206, p.139-143(2003) ; (JAERI-J 21176)

 3Y-TZP(3mol%イットリア含有正方晶ジルコニア多結晶体)セラミックスの超塑性変形特性に及ぼすZrイオン照射の影響について調べた.まず,3Y-TZP試験片に,日本原子力研究所東海研究所のTANDEM加速器を用いて+11価,130MeVのZrイオンを3.5×1016及び2.1×1017ions/m2まで照射した.TRIMコードによる解析では,最大の照射損傷は試料表面から約10μmの位置に現れた.次に照射後の試験片の機械的特性及び超塑性特性を高温での曲げ試験により調べた.その結果,超塑性変形の活性化エネルギーが照射量の増加に伴い増加することがわかった.この増加の原因としては,照射により注入した余剰なZrイオンが,3T-TZPセラミックスを構成している陽イオンの拡散を抑制し,その結果,拡散に支配される粒界すべりのための緩和機構を妨げたことが考えられる.


[ page top ]
JAEA > JAEA図書館 > JOPSS > 学会誌等掲載論文[バックナンバー] >  累積情報(2004年度) > 当ページ
Copyright(C), Japan Atomic Energy Agency (JAEA)