2004年度

Nuclear Instruments and Methods in Physics Research, A


330027
An Improved fast neutron radiography quantitative measurement method
松林政仁 ; 日引俊* ; 三島嘉一郎* ; 吉井康司* ; 岡本孝司*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 533(3), p.481-490(2004) ; (JAERI-J 21456)

 もともと熱中性子ラジオグラフィ用に提案されたΣスケーリング法の高速中性子ラジオグラフィ定量化法としての有効性をモンテカルロ計算及び高速中性子源炉弥生で実施した実験により検証した.水と銅がそれぞれ,熱中性子ラジオグラフィとの比較及び密度の大きい試料として選ばれた.シミュレーションにより実効的な巨視的断面積は異なった特性を有していることが示唆されたが,核分裂スペクトル断面積を用いたΣスケーリングにより校正した実験結果は水,銅ともに測定結果とよく一致した.このことは,Σスケーリング法が高速中性子ラジオグラフィの定量測定法としてうまく適合することを示している.


320845
Performance test of neutron resonance spin echo at a pulsed source
丸山龍治* ; 田崎誠司* ; 日野正裕* ; 武田全康 ; 海老澤徹* ; 川端祐司*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 530(3), p.505-512(2004) ; (JAERI-J 21259)

 中性子共鳴スピンエコー法は中性子準弾性散乱を高いエネルギー分解能で測定することのできる手法である.この中性子共鳴スピンエコー法をパルス中性子と組合せて使うと,非常に広範囲なスピンエコータイムをカバーすることができるため,原子炉で使用するよりも多くの利点がある.われわれは,すでに開発済みのパルス中性子用の共鳴フリッパーを利用して,0.3nmから0.9nmの範囲のパルス中性子に対して,スピンエコーシグナルを観測することに成功した.


320961
Signal processing system based on FPGAs for neutron imaging detectors using scintillators
海老根守澄 ; 片桐政樹 ; 美留町厚 ; 松林政仁 ; 坂佐井馨 ; 佐藤節夫*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 529(1-3), p.429-432(2004) ; (JAERI-J 21362)

 中性子散乱実験及びラジオグラフィーのために,シンチレータと波長シフトファイバを用いた中性子イメージ検出器を開発した.特に,高精度な中性子イメージ検出にはデータ収集システムに多チャンネルの信号処理が必要であるため,FPGAs(Field Programmable Gate Array)を用いて信号処理システムを開発した.イメージ信号処理においては64×64チャンネルイメージを扱うことを可能とするとともに,中性子入射位置の決定精度を上げるための機能を装備した.


320844
Discrimination of neutrons and γ ray by a neutron detector comprising a superconducting tunnel junction on a single crystal of Li2B4O7
中村龍也 ; 片桐政樹 ; 曽山和彦 ; 浮辺雅宏* ; 池内隆志* ; 大久保雅隆*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 529(1-3), p.402-404(2004) ; (JAERI-J 21258)

 Li2B4O7単結晶上に製作した超伝導トンネル接合素子(STJ)による低温中性子検出器の中性子/γ線弁別性能を評価した.本検出器はLiあるいはBでの中性子核反応の結果励起される多数の低エネルギーフォノンを単結晶表面に製作されたSTJ素子により測定することで中性子を検出する.本検出器のX線(5.9keV),γ線(1.17, 1.33MeV),及び中性子に対する放射線応答特性を詳細に測定した結果,STJ素子のフォノン検出信号波形の立ち上がり時間が放射線種により異なることを初めて明らかにし,この特徴を利用することでγ線,X線などのバックグランド信号と中性子信号とを簡便に弁別できることを確認した.


320843
Use of liquid helium-3 as a neutron converter for a semiconductor-based neutron detector
中村龍也 ; 片桐政樹 ; 荒殿保幸 ; 神野郁夫* ; 菱木繁臣* ; 杉浦修* ; 村瀬徳博*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 529(1-3), p.399-401(2004) ; (JAERI-J 21257)

 液体ヘリウム3を中性子コンバータとしInSb半導体検出素子で二次粒子を検出する低温中性子検出器を開発した.本低温検出器では液体状態にあるヘリウム3を中性子コンバータとして用いることで中性子とヘリウム3との核反応の結果生じた二次粒子飛程が100ミクロン以下となるため高位置分解能が期待される.また,液体ヘリウム3ではコンバータ厚さを容易に均一制御できることから検出効率の空間一様性にも優れることが予想される.試作した中性子検出器を1.6Kにて動作させ中性子検出特性試験を行い,本検出器が中性子を安定に検出することを確認し,高い位置分解能,高い効率一様性,薄い検出厚さ等を有する低温中性子検出器の実現可能性を検証することができた.


320842
Development of scintillator for a high-frame-rate neutron radiography
松林政仁 ; 片桐政樹
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 529(1-3), p.389-393(2004) ; (JAERI-J 21256)

 1000フレーム/秒を超える撮像を可能とする高速度撮像中性子ラジオグラフィがJRR-3M中性子ラジオグラフィで可能となっている.J-PARCの核破砕中性子源ではJRR-3Mよりも高強度の中性子ビームが実験装置に供給されるものと期待される.この核破砕中性子ビームを用いてより時間分解能に優れた撮像系あるいは高計数率の中性子シンチレーション検出器を可能とするためには,蛍光寿命の短いシンチレータの開発が不可欠である.ZnS系のシンチレータではキラー物質の添加が発光強度を低下させる一方で,蛍光寿命を短縮する可能性を秘めている.キラー物質としてニッケルを用いたZnS(Ag)蛍光体について,中性子照射による蛍光寿命測定,アルファ線照射による発光スペクトル測定及び光透過率の測定を行い,中性子シンチレーション検出器用のシンチレータとして優れた特性を有していることを確認した.


320841
Preliminary examination of a CCD camera with a scintillator coated fiber optic plate for neutron imaging
松林政仁 ; 曽山和彦
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 529(1-3), p.384-388(2004) ; (JAERI-J 21255)

 高空間分解能イメージングを目的として,蛍光体塗布Fiber Optic Plate(FOP)付きCCDカメラを冷・熱中性子ビームで試験した.CCDカメラとシンチレータとの光学的結合法としてFOP結合法と従来型のレンズ結合法を比較すると高空間分解能イメージングにはFOP結合法が有利である.JRR-3Mの冷・熱中性子ラジオグラフィ装置場を用いてGd2O2S(Tb)シンチレータの塗布重量,FOPのテーパー比をパラメータとして発光量,Edge Spread Function(ESF),MTFチャートの可視化等の測定を行った.その結果,テーパー比1:1の場合には塗布重量5mg/cm2で最良値が得られ熱中性子:ESF 35μm,冷中性子:ESF 37μmとなった.FOPのテーパー比を1:2あるいは1:3とした場合には25μmのLine Pairs(LP)まで冷中性子により分離可視化できた.さらに撮像応用例として小さなリチウムイオン電池の三次元CT,PC用ハードディスク軸受け部のオイルの動きの可視化を行った.


320840
Characteristics of SrBPO5:Ce3+ based materials as a neutron storage phosphor
坂佐井馨 ; 片桐政樹 ; 松林政仁 ; 中村龍也 ; 近藤泰洋*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 529(1-3), p.378-383(2004) ; (JAERI-J 21254)

 γ線感度の低い中性子イメージング用輝尽性蛍光体として有望な,軽元素から構成されるSrBPO5:Ce3+系蛍光体について調べた.SrBPO5:Ce3+蛍光体は中性子照射によって輝尽性蛍光を示した.一方,SrBPO5:Ce3+にSrF2を添加すると輝尽性蛍光量が増大することを見いだした.これはSrF2添加によって電子トラップセンターの数が増加したためである.また,SrBPO5:Ce3++SrF2蛍光体の単位中性子束あたりの輝尽性蛍光量は中性子エネルギーの-0.5乗に比例していた.さらに,この輝尽性蛍光量は中性子照射量にも比例していることも確認しており,中性子イメージング用輝尽性蛍光体として有望である.


320839
Development of a high-performance microstrip gas chamber with a capability of track discrimination for neutron detection
中村龍也 ; 山岸秀志 ; 正岡聖* ; 曽山和彦 ; 相澤一也
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 529(1-3), p.336-341(2004) ; (JAERI-J 21253)

 われわれは大強度パルス中性子源あるいは大強度フラックスである原子炉を使用した中性子散乱実験で必要不可欠な二次元中性子検出器として二次粒子弁別機能を有するマイクロストリップ型中性子ガス検出器(MSGC)の開発を行っている.本検出器では,数百チャンネルに及ぶマイクロストリップからの信号をそれぞれ独立に読み出すことで高計数率動作を可能とし,さらに,ヘリウム3と中性子の核反応の結果生じる二次粒子(プロトン,トリトン)をトラック長の違いにより識別することで高計数率特性を損なうことなく1mm以下の位置分解能を実現する.このトラック識別機能を持つMSGC検出器の試験機を製作し原理確認試験を行った結果,上記アイディアに基づくマイクロストリップ型中性子検出器が実現可能であることを確認した.


320960
Organic scintillators containing 10B for neutron detectors
釜谷英城* ; 松元深* ; 近藤泰洋* ; 中條善樹* ; 片桐政樹
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 529(1-3), p.329-331(2004) ; (JAERI-J 21361)

 高計数率に対応し,高い検出効率を持つ中性子検出器に用いるため,有機シンチレータの開発研究を進めている.10Bを構成材に含んだボロンポリマーを検出素材として基礎研究を行った.ポリマーブレンド法を用いてポリスチレンなどとブレンドしたシンチレータ試料を作製し,アルファ線,X線,UV及び中性子に対する特性を測定した.この結果,蛍光寿命が短くかつ2%の中性子に対する検出効率を有することを確認した.


320959
Neutron scintillators with high detection efficiency
小島孝弘* ; 片桐政樹 ; 筒井紀彰* ; 今井幸治* ; 松林政仁 ; 坂佐井馨
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 529(1-3), p.325-328(2004) ; (JAERI-J 21360)

 中性子イメージ検出器の高検出効率化を目指して蛍光体/中性子コンバータシンチレータの開発を進めた.その結果,市販のシンチレータに比較して6Liの含有量が2倍のZnS:Ag/6LiFの検出効率が43.5%であることがわかった.この検出効率は市販の同種シンチレータに比較して約1.6倍の検出効率である.また,中性子コンバータとして10B2O3を用いたZnS:Ag/10B2O3シートシンチレータ及びZnS:Ag/10B2O3ガラスシンチレータを開発し,約30%の検出効率を示すことを確認した.本ZnS:Ag/10B2シンチレータは熱中性子以上の中性子エネルギーの領域で高検出効率が得られる.


330090
Evaluation of ZnS-family phosphors for neutron detectors using photon counting method
久保田直義* ; 片桐政樹 ; 上条恵一* ; 南戸秀仁*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 529(1-3), p.321-324(2004) ; (JAERI-J 21509)

 ZnS:Agは他の蛍光体に対して発光量が非常に多いことなどから,中性子シンチレータ用蛍光体としてよく使われているが蛍光寿命の中に長い成分を含むため高計数率に対応できない.このため,高計数率に対応した中性子検出器を開発するため,蛍光寿命が短いZnS系蛍光体の研究を進めた.ZnO:Zn, ZnO:Ga, ZnSSe:Agなどを製作し,シンチレータ用蛍光体としての特性の評価を行った.この結果,放電プラズマ焼結装置を用いて作製したZnO:Znが早い寿命を示すこと,また,市販のP15と呼ばれているZnO:Znの場合,波長が長くなるが6LiFと組合せて中性子用シンチレータとした場合,検出効率は下がるものの蛍光寿命が短くなり,高計数率に対応できるようになることなどがわかった.


320958
Neutron/γ-ray discrimination characteristics of novel neutron scintillators
片桐政樹 ; 坂佐井馨 ; 松林政仁 ; 小島孝弘*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 529(1-3), p.317-320(2004) ; (JAERI-J 21359)

 中性子散乱実験装置に用いられる中性子イメージ検出器用のシンチレータの開発を行った.新しく開発したリチウム(Li)-ホウ酸(B)-一燐(P)ガラスシンチレータ,Li2B4O7ガラスシンチレータ及び6Liを含んだプラスチックシンチレータについて検出特性,特に中性子/γ線化について調べた.その結果,LPBガラスシンチレータ及び6Liを含んだプラスチックシンチレータは中性子/γ線弁別が可能であることが確認できた.


320957
A Compact neutron detector using scintillators with wavelength shifting fibers by backside readout method
片桐政樹 ; 松林政仁 ; 坂佐井馨 ; 中村龍也 ; 海老根守澄 ; 美留町厚 ; Rhodes, N.*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 529(1-3), p.313-316(2004) ; (JAERI-J 21358)

 蛍光体/中性子コンバータ検出シートの背面に吸収波長帯の異なる二種類の波長シフトファイバを直交して配置し,中性子の入射位置を読み出す背面読み取り法を開発した.この背面読み取り法と直角に折り曲げた波長シフトファイバとを組合せることにより,コンパクト化を実現した中性子イメージ検出器を開発した.X軸及びY軸の位置分解能はそれぞれ0.6mmと0.7mmであった.この位置分解能性能は,従来のクロスド・ファイバ読み取り法とほぼ同じ性能であった.コンパクト化が可能となったことから,中性子散乱実験装置を製作するうえで大きな問題となっていたデッドスペースを小さくすることが可能となった.


320956
Scintillation materials for neutron imaging detectors
片桐政樹 ; 坂佐井馨 ; 松林政仁 ; 中村龍也 ; 近藤泰洋* ; 中條善樹* ; 南戸秀仁* ; 小島孝弘*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 529(1-3), p.274-279(2004) ; (JAERI-J 21357)

 フォントカウンティング法を用いた中性子イメージ検出器に用いるシンチレータ素材の開発を進めている.目的は,大強度パルス中性子源を用いた中性子散乱実験に使用する検出器用の最適なシンチレータを開発するためである.検出効率,計数率,n/γ比などの特性がよくバランスしたシンチレータの開発を目標としている.ZnS蛍光体及びそのファミリィ,短寿命蛍光体,10Bを含んだ蛍光体,ガラスシンチレータなど9種類のシンチレータの研究を行った.特に,検出効率を中心に検出特性を調べた.その結果,ZnS蛍光体/中性子コンバータ検出シートについて市販のものに比較し全体的に波高が高くなり検出効率も上がることを確認できた.また,ZnO:Zn蛍光体などこれまで利用されなかった蛍光体も中性子検出器用として十分使用できることなどを確認した.


320955
Development status of position-sensitive neutron detectors for J-PARC in JAERI; A Comprehensive overview
片桐政樹
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 529(1-3), p.254-259(2004) ; (JAERI-J 21356)

 原研・KEKで建設を進めているJ-PARCの高強度中性子源を用いて行う中性子散乱実験あるいはラジオグラフィに用いる中性子イメージ検出器の開発研究を進めている.高計数率の中性子イメージングを目指して開発を進めているシンチレータを用いたイメージ検出器及びこれらの検出器の最適化のために開発した多くの蛍光体あるいはシンチレータの開発状況を報告する.また,平行して開発を進めている個別信号読み出し方式と二次粒子弁別法をベースとした高性能マイクロストリップ中性子検出器の開発状況を報告する.


320838
Performance of upgraded thermal neutron guides with supermirrors at JRR-3
田村格良 ; 鈴木正年 ; 羽沢知也 ; 盛合敦 ; 堀直彦 ; 笹島文雄 ; 曽山和彦
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 529(1-3), p.234-237(2004) ; (JAERI-J 21252)

 JRR-3熱中性子導管のNiミラーからNi/Tiスーパーミラーへの改良を行った.その際,スーパーミラーに改良した中性子導管により導かれた中性子ビームの特性試験を行った.2003年の3月に中性子導管末端での中性子の強度は金箔を用いた放射化量を測定することにより求めた.その結果,熱中性子導管末端で以前より6倍の強度になっていることを確かめた.また,熱中性子導管の末端での中性子ビームのスペクトルはTOF測定法を用いて測定した.改良に伴い中性子ビームの波長範囲が広がり,特に改良前に中性子導管の曲率による特性で輸送できなかった短波長の中性子ビームが観測されることとなった.熱中性子導管により導かれた中性子ビームの性能評価の目的のために,McStasを用いたモンテカルロシミュレーションを行った.スーパーミラーの特性は使用している中性子導管の測定値を使用することと実際の設置誤差を入力することにより実際の条件に近い計算を行い,熱中性子導管の計算値と実験値の比較を行った.計算によって得られた値は実験値を再現することを明らかにした.このことにより,TOF測定法を用いることができない中性子ビームポートの中性子スペクトル評価を行うことが可能となった.


320954
Development of a magnetic focusing device for pulsed neutrons
鈴木淳市 ; 奥隆之 ; 安達智宏* ; 清水裕彦* ; 鬼柳善明* ; 加美山隆* ; 平賀富士夫* ; 岩佐浩克* ; 佐藤孝一* ; 古坂道弘*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 529(1-3), p.120-124(2004) ; (JAERI-J 21355)

 中性子小角散乱法は,物質科学,生命科学研究にとって重要な手法である.しかし,その観測qminは,従来のピンホール型の小角散乱装置では,〜10-2nm-1に限られていた.より小さなq領域の測定を行うためには,ILLにあるD11のように非常に長尺(80m)の装置を構成する必要があったが,この問題を克服するために,近年,集光レンズを用いた小角散乱法が提案され,建設されている.例えば,集光レンズにトロイダルミラーや両凹物質レンズを用いた装置である.最近,われわれは六極磁石に基づいた中性子磁気レンズを開発し,集光型小角散乱法の実証実験を行った.中性子磁気レンズは,レンズ材によるビームの吸収や散乱が一切なく,高精度の集光には理想的な素子であると言える.実際,われわれは,数ミクロンのシリカ粒子の散乱を2×10-3nm-1まで観測することに成功した.われわれは,さらなる最適化によりqminを1×10-3nm-1まで拡張できると考える.


320837
Reflectivity enhancement of large m-Qc supermirror by ion polishing
曽山和彦 ; 角田治彦* ; 村上勝彦*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 529(1-3), p.73-77(2004) ; (JAERI-J 21251)

 イオンポリッシュ法をNi/Ti多層膜スーパーミラーに適用し,高反射率化に成功した.実験は,イオンポリッシュ条件として,Ar+イオンの照射時間,加速電圧,イオン入射角度を最適化した.これに基づき,3Qcスーパーミラー(407層)についてNi層のみにイオンポリッシュ法を適用したところ,臨界角での中性子反射率を80%から90%に増加させることができた.


320836
A Full-DC injector for an energy-recovery linac
羽島良一 ; 峰原英介 ; 永井良治
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 528(1-2), p.340-344(2004) ; (JAERI-J 21250)

 エネルギー回収型リニアックのための全直流入射加速器を提案し,設計を行った.商業的に生産されている2MeV級の直流加速器(ダイナミトロン型)と光陰極を組合せてバンチビームを生成する.このビームを周回軌道に合流後,超伝導のバンチャーブースターで20MeVまで加速する.このバンチャーブースターを,部分的なエネルギー回収モードで動作させることで,超伝導空洞の結合器容量を大幅に低減することが可能になる.本稿では,ビーム軌道計算とRFシステムの最適化の結果を報告する.


320835
Emittance compensation in a return arc of an energy-recovery linac
羽島良一
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 528(1-2), p.335-339(2004) ; (JAERI-J 21249)

 エネルギー回収型リニアックを用いた高出力自由電子レーザー,次世代放射光源の開発における重要な検討課題の一つが,周回軌道におけるビームエミッタンスの増大である.われわれは,適切な周回軌道設計を行うことによって,コヒーレント放射光によるエミッタンス増大が抑制できることを示す.また,簡便な行列計算でエミッタンス増大量の評価が可能であることを述べる.


320953
Optical resonator optimization of JAERI ERL-FEL
永井良治 ; 羽島良一 ; 沢村勝 ; 西森信行 ; 菊澤信宏 ; 峰原英介
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 528(1-2), p.231-234(2004) ; (JAERI-J 21354)

 原研ERL-FELの高出力化のために光共振器形状の最適化を行った.FELの効率は光共振器の出力効率,相互作用モード体積といった光共振器の性能に依存している.光共振器の出力効率,相互作用モード体積をそれぞれ最大化,最小化することにより形状の最適化を行った.光共振器の出力効率及び相互作用モード体積はFFTにより改良したFox-Liの手法を用いたシミュレーションコードにより計算した.


320952
Study of millimeter wave high-power gyrotron for long pulse operation
春日井敦 ; 坂本慶司 ; 南龍太郎* ; 高橋幸司 ; 今井剛
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 528(1-2), p.110-114(2004) ; (JAERI-J 21353)

 原研では,核融合プラズマの加熱・電流駆動のための大電力ミリ波源ジャイロトロンの開発を行っている.これまでに世界に先駆けエネルギー回収技術,超高次モード発振技術,人工ダイヤモンド出力窓の開発を行うとともに170GHzの周波数において0.9MW-9秒,0.5MW-30秒などの成果を挙げてきた.長パルス動作時においては,散乱RFによるジャイロトロン内部の可動ミラー部ベローズの加熱に伴うアウトガスによって長パルス動作が制限されることを明らかにした.そこで,可動ミラー部ベローズの構造を散乱RFが入り込みにくい構造に変えるとともに,ステンレス製のベローズ表面に銅メッキを施し発熱を抑え,かつ熱伝導を良くすることで蓄熱を抑制することを試みた.その結果,改良を加える前と比較し,発熱は1/10以下に,熱拡散の時定数は冷却を行っていない状態において約1/3(270秒→90秒)に減少し,改良が有効であることが確かめられた.このことから,大電力において長パルス動作を達成できる見通しが得られた.さらに水冷却可能な構造にしたことから,連続運転にも対応できるものと考えられる.


330089
Analysis of an FEL oscillator at zero detuning length of an optical cavity
西森信行
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 528(1-2), p.34-38(2004) ; (JAERI-J 21508)

 原研FELで初めて観測された光共振器の完全同期長発振の解析の報告である.完全同期長発振のFEL電場はself-amplified spontaneous emission (SASE) FELとよく似た性質を持っている.どちらの場合にも,光の先頭部分は自発放射光レベルであり,コヒーレントな増幅電場がそれに続く.完全同期長では,FEL光は光共振器でフィードバックされ,電子と繰り返し相互作用する.コヒーレント電場は成長を続け,飽和状態では 高い電子密度を持つSASE-FELの立上り電場とよく似た性質を持つ.完全同期長発振のピークパワーとパルス幅は,FELパラメーターと光共振器のロスにスケールする.


320752
XAFS simulation of highly disordered materials
岡本芳浩
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 526(3), p.572-583(2004) ; (JAERI-J 21175)

 溶融塩に代表される高温液体,つまり構造無秩序系のX線吸収スペクトル(XAFS)データを分子動力学(MD)計算から導き出す方法を考案した.従来は結晶系のXAFSシミュレーション用として用いられてきた多重散乱コードFEFFに,MD計算出力の位置データを入力データとして用いた.そのFEFF計算を数万回繰り返すことによって,MD計算の統計的積算が,XAFSのデバイワーラー因子に代表される揺らぎ成分に反映されるかどうかを調べた.実験で得た白金と幾つかのハロゲン化物溶融塩のデータが,この手法によって良好に再現できることを確認した.


320523
Coupled hydrogen moderator optimization with ortho/para hydrogen ratio
甲斐哲也 ; 原田正英 ; 勅使河原誠 ; 渡辺昇* ; 池田裕二郎
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 523(3), p.398-414(2004) ; (JAERI-J 20971)

 結合型水素モデレータの中性子性能を,パラ水素濃度,モデレータの厚さと高さ,プレモデレータの厚さを関数として評価した.100%パラ水素による厚い(120〜140 mm)モデレータが,高い15meV以下の時間−エネルギー積分強度とパルスピーク強度を得るという観点から最適であることがわかった.モデレータの中性子取出面における低エネルギー中性子強度分布より,プレモデレータ近辺の周縁部分の強度が中心部よりも高いことがわかった.この独特な分布から,プレモデレータに近いモデレータ周辺部の明るい部分を利用できるよう,モデレータと中性子取出面の設計が重要となることを示している.


320522
Characteristics of a promising tritium process monitor detecting bremsstrahlung X-rays
洲亘 ; 松山政夫* ; 鈴木卓美 ; 西正孝
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 521(2-3), p.423-429(2004) ; (JAERI-J 20970)

 簡便で精度の高い高濃度トリチウム測定手法の開発は,核融合炉のトリチウム燃料プロセス制御及び計量管理の観点から重要である.トリチウムのβ線に起因して発生する制動X線を測定する方法は,低トリチウム濃度でその有効性が確認されてきたが,トリチウムプロセスモニターへの応用のため,その純トリチウムに対する応答特性を102-108GBq/m3の広いトリチウム濃度範囲で調べた.その結果,102-106GBq/m3のトリチウム濃度範囲では制動X線の計数率とトリチウム濃度との間に良好な線形関係が見られ,またその感度計数として0.5GBq/m3per cpm とよい値を得た.次に,重水素で希釈したトリチウム(トリチウムの原子比:約1%)を用いて本モニターの応答特性に及ぼす不純物の影響を検討し,5kPa以下の全圧では不純物に影響されないことを明らかにし,本方式のトリチウムモニターがプロセスモニターとして有望であることを確認した.さらに,本モニターの応用としてトリチウム貯蔵ベッド昇温初期に放出されるヘリウム-3の測定を行い,その実用性を確認した.


330193
Cryogenic neutron detector by InSb semiconductor detector with high-density helium-3 gas converter
中村龍也 ; 片桐政樹 ; 荒殿保幸 ; 神野郁夫* ; 菱木繁臣* ; 杉浦修* ; 村瀬徳博*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 520(1-3), p.76-79(2004) ; (JAERI-J 21595)

 InSb半導体検出素子と高密度ヘリウム3ガスとからなる低温中性子検出器を開発し,その中性子検出性能を評価した.ヘリウム3ガスを中性子コンバータとする中性子検出器では,チャンバー内に封入されるヘリウム3ガスの密度が高い程,位置分解能等の検出器性能が向上する.しかしながら,チャンバー内に封入可能なガス圧はその機械的強度により制限されること,また,高ガス圧下ではガス増幅率が低減するため良好な信号対雑音比で信号を読み出すことが困難となる,といった問題があった.そこでわれわれは4.2Kの低温環境を利用することで10気圧程度のガス圧においても常温,数100気圧に相当するガス密度を実現し,かつ,中性子捕獲反応の結果生成される二次粒子を低温動作可能なInSb半導体素子で直接検出することによりそれらの問題の解決を図った.4.2K,12.5気圧で動作させた試作低温中性子検出器によりその中性子検出特性試験を行い,低温,高ガス圧下においても本検出器は中性子を安定に検出できることを確認し,高い位置分解能,高い効率一様性,薄い検出厚さ等を有する低温中性子検出器としての実現性を検証することができた.


330192
Neutron detection by superconducting tunnel junctions on a Li2B4O7 single-crystal absorber
中村龍也 ; 片桐政樹 ; 浮辺雅宏* ; 池内隆志* ; 大久保雅隆*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 520(1-3), p.67-69(2004) ; (JAERI-J 21594)

 Li2B4O7単結晶上に製作した超伝導トンネル接合素子(STJ)により中性子を検出することに成功した.本検出器は,中性子核反応(6Li+n→T+α+4.78MeV,あるいは,10B+n→7Li+α+2.3MeV)の結果励起される多数のフォノンを単結晶表面に製作された超伝導トンネル接合素子により検出することで中性子を検出する.LBO単結晶は,中性子吸収断面積の大きい6Li, 10Bから構成され,かつ,低原子番号の元素により構成されていることから,ほぼ100%に近い検出効率と低バックグランドが実現される.また,核反応の結果生じる二次粒子の飛程が短いため,直列接合型STJ素子,あるいは,STJアレイ群によりイメージング検出器を構成すると数ミクロン以下の高位置分解能も期待できる.われわれは上述の検出器を製作し,中性子検出に供することができることを実証した.さらに1.3mmの距離をおいて製作した二つのSTJ素子の波高相関測定から,中性子位置検出器としても動作可能であることを確認している.


320434
Improvement of high-voltage performance of acceleration tubes by cleaning the walls with a high-pressure water jet
竹内末広 ; 仲野谷孝充 ; 株本裕史 ; 吉田忠
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 513(3), p.429-438(2003) ; (JAERI-J 20893)

 原研(東海)タンデム加速器では加速電圧を18-20MVに改善するため加速管をコンプレスドジオメトリー型の新加速管に更新する計画をすすめている.新加速管に交換することで加速ギャッブ数が増え加速電圧を改善できる可能性がある.しかし,大型加速器では一般に交換後のコンディショニングには1-2か月の長い期間を要する.そこで,加速管内面をあらかじめ高圧純水洗浄により洗浄し,放電の源となる,あるいは放電を助長する絶縁体表面の汚れや微粒子を除去することにより,放電活動を抑制し短期間で期待する電圧にすることを考えた.高圧純粋洗浄した従来の加速管1MV分6本をタンデム加速器で高電圧試験を行い,また新加速管3MV分6本を高圧純粋洗浄し加速管メーカーのNEC社の3MV試験装置で高電圧試験を行った.結果は,どちらも定格電圧を短時間で越え,かつ放電は従来の加速管と比べ極めて少なかった.新加速管3MVの試験ではコンディショニングは加速管が安定に近い状態で進み24時間内に高度に安定な状態に達した.これで加速電圧の改善計画に明るい展望が開けた.本文では洗浄効果,セラミックスの表面などについての研究成果を述べており,放電活動は絶縁体表面の汚れや微粒子が主な原因であったことを明らかにしている.


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