2004年度

Radiation Physics and Chemistry


320981
Application of radiation-graft material for metal adsorbent and crosslinked natural polymer for healthcare product
玉田正男 ; 瀬古典明 ; 吉井文男
Radiation Physics and Chemistry 71(1-2), p.223-227(2004) ; (JAERI-J 21382)

 放射線加工によるグラフト重合と橋かけは汎用性ポリマーを改質するために有力な手法である.グラフト重合では,キレート機能を基材ポリマーに導入することにより金属捕集材を作製した.得られた金属捕集材は海水中のウラン捕集に応用した.グラフト捕集材を使用した3年間の海域試験で1kgのウランを捕集することができた.澱粉やセルロースの誘導体などの天然ポリマーはペースト状態で放射線橋かけしハイドロゲルとなる.これらのハイドロゲルは橋かけ後も生分解性を維持している.生分解性ハイドロゲルのマットは蓐瘡を防止できることから福祉品として有効である.ハイドロゲルは分解により肥料となるため,使用後の処理が容易である.


320542
Dyed Polyvinyl Chloride films for use as high-dose routine dosimeters in radiation processing
Mai, H. H.* ; Duong, N. D.* ; 小嶋拓治
Radiation Physics and Chemistry 69(5), p.439-444(2004) ; (JAERI-J 20990)

 放射線加工処理用実用線量計の使用を目的として,マラカイトグリーンまたは6GX-セトグロウシンを単独で0.11wt%含む厚さ約100μmの2種の着色ポリ塩化ビニルフィルム(PVC)の特性を調べた.これらは,基本的には線量1-50kGyの範囲で60Co γ線照射により退色する.ともに,線量計の感度及び線量応答曲線の直線性は2.5%の抱水クロラール[CCl3CH(OH)2]と0.15%のハイドロキノン[HOC6H4OH]の添加により改良できた.また,これにより,食品照射や医用品の滅菌工程の品質保証をカバーする1kGyまで下限を拡張できる.両PVCフィルムの線量応答は,25℃と比較して20-35℃では一定だが,35-55℃では温度係数(0.43±0.01)%/℃を持つ.照射前及び照射後60日間は線量計の特性は25℃で1%以内で安定である.


320635
Radiation-induced decomposition of trace amounts of 17 β-estradiol in water
木村敦* ; 田口光正 ; 新井英彦* ; 平塚浩士* ; 南波秀樹 ; 小嶋拓治
Radiation Physics and Chemistry 69(4), p.295-301(2004) ; (JAERI-J 21074)

 水中に微量存在している17β-エストラジオール(E2)の60Coγ線分解挙動を調べた.フェノールを用いた比較実験からE2とOHラジカルの反応速度定数を1.6×1010mol dm-3s-1と求めた.LC-MS及びELISAによってそれぞれ求めたE2濃度及びE2-等価濃度はともに線量の増加に対して減少した.すなわちγ線照射によりE2は指数関数的に濃度減少し,10Gyで完全に分解した.一方,E2等価濃度は10Gyでは残存し,30Gyで環境に影響を及ぼさないレベル以下まで減少した.


320541
3-45MeV/u ion beam dosimetry using thin film dosimeters
小嶋拓治 ; 須永博美 ; 瀧澤春喜* ; 花屋博秋 ; 橘宏行*
Radiation Physics and Chemistry 68(6), p.975-980(2003) ; (JAERI-J 20989)

 低LET放射線に対する特性が明らかになっている4種のフィルム線量計を3-45MeV/uのイオンビームに応用した.低LET放射線を基準とした線量計の相対応答は,いずれもおよそ1から10MeV/(mg/cm2)であり,阻止能が高くなるにしたがって徐々に小さくなる.特性を明らかにしたこれらの線量計によるイオンビーム線量測定における不確かさは,フルエンス測定における不確かさを±2%含んで±5%(1σ)より良かった.特性を明らかにしたGaf線量計を用いることにより,それぞれ1及び10μmより良い空間分解能で平面及び深度方向の線量分布測定ができることがわかった.


320540
Applicability study on existing dosimetry systems to high-power Bremsstrahlung irradiation
Mehta, K.* ; 小嶋拓治 ; 須永博美
Radiation Physics and Chemistry 68(6), p.959-962(2003) ; (JAERI-J 20988)

 既存線量計システムの高出力制動放射線への適用性を線量相互比較を通して調べた.5MeV電子加速器から得た高出力制動放射線を用いて数種の線量計をファントム中で4-12kGy照射した.線量計には,3種のアラニン線量計と3種の液体化学線量計(硫酸セリウム,重クロム酸及びエタノールクロロベンゼン)及びグルタミン線量計を用いた.制動放射線に対する線量応答については,Co-60γ線の校正曲線から線量値を決定した.いずれの線量計も3線量レベルの値は3%以内でよく一致し,高出力制動放射線にも応用できることが示された.


320539
Trans-1,2-dichloroethylene decomposition in low-humidity air under electron beam irradiation
Sun, Y.* ; 箱田照幸 ; Chmielewski, A. G.* ; 橋本昭司*
Radiation Physics and Chemistry 68(5), p.843-850(2003) ; (JAERI-J 20987)

 電子ビーム照射による揮発性有機化合物の分解に関する研究の一環として,低水分空気中に含まれたトランス-1,2-ジクロロエチレン(trans-DCE)の分解について調べた.trans-DCEや有機性分解生成物をガスクロマトグラフ-FID検出器で分析し,また二酸化炭素及び一酸化炭素濃度を全有機炭素計により測定した.その結果,炭素換算で分解生成物の10%程度が,幾何学異性体のシス-1,2-ジクロロエチレンであることがわかった.また,同ベースガス中に含まれたtrans-DCEと構造異性体の1,1-ジクロロエチレンについて分解率及び分解生成物について化学反応シミュレーション計算を行うことにより,trans-DCEの分解反応を引き起こす活性種の特定や連鎖分解反応について考察した.


320302
Positronium formation reaction of trapped electrons and free positrons; Delayed formation studied by AMOC
鈴木直毅* ; 平出哲也 ; 斎藤文修* ; 兵頭俊夫*
Radiation Physics and Chemistry 68(3-4), p.647-649(2003) ; (JAERI-J 20793)

 1980年台からいろいろな物質中で低温で陽電子消滅寿命測定を行うとポジトロニウム形成が増加する現象が見られてきた.1998年,平出らはこれを低温で陽電子の照射効果によって形成される捕捉電子と自由陽電子との反応であると説明し,予測されるいろいろな現象を実験で確かめ,従来の間違った解釈を改めた.われわれはさらに,今回,予測されていた,遅れて起こるポジトロニウム形成を,陽電子寿命−運動量相関測定(AMOC)により確認することに成功したので,その結果について報告する.


[ page top ]
JAEA > JAEA図書館 > JOPSS > 学会誌等掲載論文[バックナンバー] >  累積情報(2004年度) > 当ページ
Copyright(C), Japan Atomic Energy Agency (JAEA)