2004年度

Applied Surface Science


320802
Structure of sub-monolayered silicon carbide films
馬場祐治 ; 関口哲弘 ; 下山巖 ; Nath, K. G.*
Applied Surface Science 237(1-4), p.176-180(2004) ; (JAERI-J 21216)

 炭化ケイ素(SiC)はシリコンに代わる次世代の半導体物質として期待されている.SiC薄膜の製造法の一つに,有機ケイ素化合物を用いた蒸着法が知られており,ミクロンオーダーの厚みを持つSiC薄膜が合成されている.本研究では,ナノメートルオーダーの厚みを持つ極薄SiCの構造を調べるため,テトラメチルシランを放電気体として用いたイオンビーム蒸着法により1原子層以下のSiCをグラファイト上に堆積させ,その電子構造を放射光光電子分光法,X線吸収微細構造法により調べた.その結果,0.1ナノメーターの厚みの蒸着層を850℃まで加熱すると,バルクのSiCと異なった二次元構造を持つSiCが生成することがわかった.この物質のX線吸収微細構造スペクトルの偏光依存性を測定したところ,Si原子周辺にπ*軌道的な性質を持つ軌道が存在し,このπ*軌道が表面に垂直であることがわかった.このことから,得られたSiC膜は,グラファイトと同様な二次元状の構造をとることが明らかとなった.


320801
Electronic structures of ultra-thin silicon carbides deposited on graphite
馬場祐治 ; 関口哲弘 ; 下山巖 ; Nath, K. G.*
Applied Surface Science 234(1-4), p.246-250(2004) ; (JAERI-J 21215)

 炭化ケイ素(SiC)は耐熱性,化学的安定性を持つワイドギャップ半導体としての応用が期待されている材料である.しかしSiC結晶はsp3結合でできており固体表面では3次元的に成長するため,数原子層以下の薄膜化は難しい.しかし最近,sp2結合でできたグラファイト状の構造を持つSiC単原子層が安定に存在するという理論計算が報告された.本研究はこれを実験的に確かめるため,グラファイト単結晶表面にイオンビーム蒸着法で作成した単原子層以下のSiCの構造をX線光電子分光法(XPS),X線吸収微細構造法(XANES)などの放射光を用いた内殻分光法で調べた.その結果,XPSの化学シフト及びXANESのピークエネルギーなどから,バルクのSiCと異なる構造を持つ二次元状SiCの存在を示唆する結果が得られた.また,XANESスペクトルの偏光依存性から,この二次元相がグラファイトと類似の構造を持つことが明らかとなった.


320800
Study of the oxidation for Si nanostructures using synchrotron radiation photoemission spectroscopy
Nath, K. G.* ; 下山巖 ; 関口哲弘 ; 馬場祐治
Applied Surface Science 234(1-4), p.234-239(2004) ; (JAERI-J 21214)

 ナノクラスター,ナノ粒子など,ナノメートルスケールの大きさを持つ物質の構造と物性の解明はナノテクノロジーの分野では極めて重要な課題となっている.代表的な半導体物質であるシリコンの場合,ナノメートルスケールの幅を持つ線状物質であるシリコンナノワイヤーが注目を集めており,ナノテクノロジーへの応用も期待されている.本研究では,化学的に不活性なグラファイト表面にシリコンナノワイヤーを生成させ,その酸化反応を光電子分光法により調べた.その結果,幾つかのナノ構造を持つ薄膜は,バルクのシリコンに近い構造を持つ厚い膜に比べて酸化しにくいことを見いだした.とくに0.4オングストロームの厚みの極薄膜は,全く酸化が起こらないことが明らかとなった.これらの酸化反応の違いを,ナノクラスターの立体構造及びクラスターサイズとの関係において詳細に議論した.


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