2004年度

Journal of Photopolymer Science and Technology


320831
Electron-beam induced reactions of sulfonium salts in a crystalline state
榎本一之* ; 前川康成 ; Moon, S.* ; 下山純治* ; 後藤一幸* ; 成田正* ; 吉田勝
Journal of Photopolymer Science and Technology 17(1), p.41-44(2004) ; (JAERI-J 21245)

 酸発生剤であるトリフェニルスルホニウム塩(1)結晶に電子線照射すると,光反応とは異なり,1にフェニル基が置換したビフェニル置換スルホニウム塩(2)を中間体として与える.ビフェニル体2の反応率は1の3.7倍と,電子線レジスト薄膜としての高感度化が示唆された.本論文では,スルホニウム塩結晶の電子線反応性や選択性に及ぼすカチオン部位と対アニオンの効果を調べ,電子線に対して感受性の高い酸発生剤の設計指針を得ることを目的とする.スルホニウム塩のカチオン部位にビフェニル及びジフェニルスルフィドを導入した2p, phSを別途合成し,電子線反応を行った.その結果,2p及びphSの分解速度は一次速度式で最適化でき,速度定数(×104s-1)は1で3.7,2pで14,phSで21であった.放射線感度の指標となるイオン化ポテンシャル(Ip)は,ベンゼンで9.24,ビフェニルで8.16,ジフェニルスルフィドで7.85である.このことから,より低いIpを有する置換基をカチオン部位に導入することで,スルホニウム塩の分解速度が増加することがわかった.また,芳香族系対アニオンを有するスルホニウム塩は,非晶化前後で速度定数が2倍増加し,脂肪族系よりも高感度を示した.


320941
Electron-beam-induced fries rearrangement and oxidation reactions of sulfonic acid esters in crystalline state
湯浅加奈子* ; 榎本一之* ; 前川康成 ; 加藤順* ; 山下俊* ; 吉田勝
Journal of Photopolymer Science and Technology 17(1), p.21-28(2004) ; (JAERI-J 21342)

 電子線感受性や反応選択性の高い有機分子の設計を目的に,スルホン酸誘導体を合成し,その結晶状態でのFries転位及び酸化反応挙動を詳細に検討した.phenyl p-toluenesulfonate(1a)結晶は,電子線照射によりFries転位が進行し,o, p-Fries転位体,分解生成物であるフェノールに加え,光反応では報告例のないFries転位体の酸化体を与えた.反応初期,結晶格子支配により1aのFries転位体はo-体のみを選択的に生成した.室温で液体のphenyl benzenesulfonate(1b)は,1aと同様,o, p-Fries転位体,フェノール及び酸化体を与えた.1bは,電子線に対して高反応性を示したが,Fries転位体の位置選択性は低かった.一方,phenyl 1-naphthalenesulfonate結晶は,酸化体の生成なしにo, p-Fries転位体及びフェノールを与えた.上記スルホン酸誘導体の反応は,電子線照射によりS-O結合が選択的に開裂し,Fries転位体を与えること,電子線固有である酸化体の生成は,空気酸化やo-Fries転位体同士の酸化還元反応により生成するのではなく,系中に存在する分解物による酸化反応より生成することがわかった.


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