学会誌等掲載論文
※下記の研究開発成果は資料名順に並んでいます。

2005年10月


330810
Wandering in color-space; Why is the life of pentaquark is so long ?
前沢祐* ; 丸山敏毅 ; 板垣直之* ; 初田哲男*
Acta Physica Hungarica A 22(1-2), p.61-68(2005) ; (JAERI-J 22071)

 最近SPring-8で見つかり話題になっている5クォーク粒子(ペンタクォーク)は核子+K中間子の状態より高いエネルギーの共鳴状態であるが,そのエネルギー幅が非常に狭い(長寿命である)原因がわからず,議論の的となっている.われわれはペンタクォークの崩壊をカラー分子動力学により計算し,その長寿命の原因を探った.その結果,ペンタクォークはトータルで白色になるようにカラー空間で混合した状態となっていて,これがそれぞれ白色の核子とK中間子とに分離する(狭い出口)まで,カラー空間と座標空間の両方の広いパラメータ空間をさ迷うことが長寿命のダイナミカルな原因となっているというシナリオを提唱した.


330811
Simulations of an accelerator-based shielding experiment using the particle and heavy-ion transport code system PHITS
佐藤達彦 ; Sihver, L.* ; 岩瀬宏* ; 中島宏 ; 仁井田浩二*
Advances in Space Research 35(2), p.208-213(2005) ; (JAERI-J 22072)

 宇宙船内における重粒子被ばく線量を評価するためには,重粒子の核反応を精度よく再現するモデルの検討を行った.核子あたり1GeVの鉄イオンがポリエチレン,アルミニウム,鉛ターゲットに入射したときに生成されるフラグメント測定実験を,重イオン輸送計算コードPHITSを用いて解析した.その結果,軽核同士が衝突する反応に対しては,核反応モデルJQMDの限界から実験値との不一致が見られたが,それ以外の反応に対して,PHITSは精度よく実験値を再現できることが明らかとなった.


330812
Preparation and characterization of magnesium-silicon based oxide coating on high-crystalline SiC fiber as an interphase in SiC/SiC composite
井川直樹 ; 田口富嗣 ; 山田禮司 ; 石井慶信 ; 實川資朗
Ceramic Engineering and Science Proceedings 26(2), p.27-34(2005) ; (JAERI-J 22073)

 SiC繊維強化SiC複合材料は繊維とマトリックスの間に界面層を導入することで,繊維の引き抜け効果を利用した擬似延性機能を発現させることができる.この機能により本材料の機械特性の向上が図れる.近年,従来よりも高温安定性や耐酸化性に優れた高結晶性SiC繊維が開発され,酸化物系の界面層の利用が可能になりつつある.本研究では,Mg-Si系酸化物界面層の作製とその評価を行った.高結晶性SiC繊維へのコーティング層の作製はアルコキシド法を用いて行った.コーティング層は熱処理温度の上昇によってMgO単相からMgSiO3, Mg2SiO4及びSiO2の混合相へと変化した.また,1400℃までの温度では,繊維の引張強度劣化も20%程度に留まり,これはコーティングを施さない繊維における劣化とほぼ同程度であるなど,実用に耐えうる結果が得られた.


330813
Improved direct bonding method of Nd:YVO4 and YVO4 laser crystals
杉山僚 ; 奈良康永*
Ceramics International 31(8), p.1085-1090(2005) ; (JAERI-J 22074)

 アルゴンイオンビームを用いて新たに開発したドライエッチング処理法により,YVO4母結晶接合型Nd:YVO4レーザー結晶の接合に成功した.5×6mmの接合界面で生じる光学歪は633nmにて0.05波長であった.半導体レーザー励起による通常結晶との比較では,複合レーザー結晶は,99.2%のほぼ同じ偏光度を保ったままで,約2倍に出力を増加させることができた.接合した結晶における温度分布について把握するために,有限要素法による熱解析を行った結果,複合レーザー結晶は優れた熱伝達特性を有することが明らかになった.


330814
Novel separation system of trivalent actinides-combined effects of substituted tris(2-pyridylmethyl)amine ligand and hydrophobic counter-anion
石森健一郎* ; 渡邉雅之 ; 木村貴海 ; 矢板毅 ; 山田たかし* ; 片岡悠美子* ; 篠田哲志* ; 築部浩*
Chemistry Letters 34(8), p.1112-1113(2005) ; (JAERI-J 22075)

 三脚状の構造を持つトリス(2-ピリジルメチル)アミンは,ピリジン環を3個持ち,3価アクチノイドの分離に対して注目されているソフトドナー配位子である.本研究では,これを立体化学的に置換した配位子を用いて,3価のアクチノイドの分離を行った.その結果,置換か所を一か所から二か所に増やすことにより,3価ランタノイドとアクチノイドが効果的に分離され,また2-ブロモデカン酸をこれら置換した配位子と組合せることでさらによい分離性能が得られることを見いだした.


330815
Sedimentation of substitutional solute atoms in condensed matter; New type of diffusion
真下茂*
Defect and Diffusion Forum 237-240(1), p.30-37(2005) ; (JAERI-J 22076)

 100万Gレベルの超重力場下では凝縮物質中で原子の沈降や非平衡な結晶化学状態が期待できる.しかしながら,生化学分野で分子や高分子の沈降が使われていながら,超重力場下の物質研究は未踏の分野として残っている.われわれは100万Gレベルの重力場を高温で発生できる装置を開発し,Bi-Sb, In-Pb, Bi-PB系などの合金系や金属間化合物で置換型溶質原子の沈降を世界ではじめて実現した.Bi-Sb系では沈降の拡散係数は化学ポテンシャルによる拡散係数に比べて20倍以上大きく見積もられた.そのメカニズムはまだ不明であるが,この凝縮物質中の置換型溶質原子の沈降は新しいタイプの拡散に位置付ることができる.本論文では超重力場下の原子の沈降の研究の最近の発展をレビューし,拡散メカニズムと応用を議論した.


330816
Development of workstation-based CAMAC data acquisition system for JT-60 data processing system
佐藤稔 ; 次田友宣 ; 大島貴幸 ; 坂田信也 ; 岩崎慶太* ; 松田俊明 ; 射場克幸 ; 小関隆久
Fusion Engineering and Design 71(1-4), p.145-149(2004) ; (JAERI-J 22077)

 JT-60データ処理設備では,プラズマ計測の制御及びデータ収集にCAMACが広く使われている.運用から15年以上も経過しており,老朽化による保守や機能拡張に支障をきたしているため,CAMACを制御するミニコンピュータ及びマイクロコンピュータをUNIXのワークステーションに置き換えた.また,GUIによる画面制御やネットワークを介しての遠隔計測環境を構築するために,アプリケーションソフトウェアの開発を行い,システムの更新を図った.さらに,次期CAMAC制御システムに向けて,Linux用のCAMACデバイスドライバの開発を進めている.


330817
Natural convection heat transfer of high temperature gas in an annulus between two vertical concentric cylinders
稲葉良知 ; Zhang, Y.* ; 武田哲明 ; 椎名保顕
Heat Transfer-Asian Research 34(5), p.293-308(2005) ; (JAERI-J 22078)

 高温ガス炉の炉容器冷却システムの1つに,水による冷却パネルを用い,自然対流と熱放射により間接的に炉心を冷却するシステムがあり,高温工学試験研究炉(HTTR)においても,このシステムが採用されている.本研究では,HTTRの原子炉圧力容器−冷却パネル間内高温気体の熱伝達特性を調べるため,内筒を加熱,外筒を冷却した鉛直同心二重円筒内の面間の熱放射を伴う自然対流熱伝達に関する実験と数値解析を行った.実験において,環状空間の高さに基づいたレイレー数は,ヘリウムガスに対して2.0×107<Ra<5.4×107,窒素ガスに対して1.2×109<Ra<3.5×109となった.また数値解析の結果は,加熱壁面と冷却壁面の温度に関して実験とよく一致した.実験と数値解析の結果から,面間の熱放射を伴う自然対流熱伝達に関する相関式を,レイレー数,半径比,加熱壁面及び冷却壁面の温度と熱放射率の関数として得た.


330818
Growth of ZnO nanorods on Cu implanted substrates
武山昭憲 ; 山本春也 ; 吉川正人 ; 伊藤洋
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 44(1B), p.750-753(2005) ; (JAERI-J 22079)

 銅イオン注入と熱処理によりピラミッド形状をした銅化合物微粒子を生成させたSi(100)基板上へ,化学気相蒸着法(CVT)によりナノメートルサイズの柱状酸化亜鉛(酸化亜鉛ナノロッド)を成長させた.その結果,直径が約200nmのナノロッドを基板に対してほぼ垂直に成長させることに成功した.さらに単位面積あたりに成長した酸化亜鉛ナノロッドの数は,単位面積あたりに生成した銅化合物微粒子数に比例して増加することから,銅化合物微粒子は酸化亜鉛ナノロッドが成長する際に触媒として機能していると考えられた.


330819
Effects of ultrastrong gravitational field on the crystalline state of a Bi-Sb alloy
Huang, X.* ; 真下茂* ; 小野正雄* ; 冨田健 ; 沢井友次 ; 長壁豊隆 ; 毛利信男*
Journal of Applied Physics 96(3), p.1336-1340(2004) ; (JAERI-J 22080)

 本研究では,超重力場下の結晶状態の変化を調べるために,Bi70Sb30合金とBi単体について固相状態の温度で100万Gレベルの超重力場実験を行った.191-205℃で超重力場処理後の試料は組成の変化が見られなかったが,結晶粒径が数mmから数10μmまで微細化された.同じ条件で処理したBi単体試料は結晶粒径が変化しなかった.220-240℃で処理後の試料は二つの領域を示している.弱い重力場領域では,結晶が数10μmまで微細化されたが,強い重力場領域では,原子の沈降による組成変化が起きたほか,結晶が重力方向に沿って成長し,その長さが数mm程度に達している.成長した結晶はかなり歪んでおり,その歪みが重力の強い方向に沿って増大していること,また,六方晶のc軸が重力方向にほぼ平行になっていることがわかった.この特殊な結晶状態の形成は原子の沈降によるものと考えられる.


330820
High-injection carrier dynamics generated by MeV heavy ions impacting high-speed photodetectors
Laird, J. S.* ; 平尾敏雄 ; 小野田忍* ; 伊藤久義
Journal of Applied Physics 98(1), p.013530_1-013530_14(2005) ; (JAERI-J 22081)

 放射線環境で使用される高速光検出器に高エネルギーイオンが入射すると,信号に雑音が入り,情報伝達に支障が発生する.このようなシングルイベント現象は,高エネルギーイオンで誘起する高密度の電子・正孔対(プラズマ)の動的挙動と密接に関連する.本研究では,Si pinフォトダイオードにMeV級重イオンを照射し,発生する電子・正孔プラズマの動的挙動を調べ,その過渡応答特性を評価した.実験には複数のイオン種を使用し,その飛程が等しくなるようにエネルギーを調整して照射を行い,過渡応答特性のプラズマ密度依存性を解析した.その結果,過渡応答特性は次の3つのフェーズに分類できることを見いだした.すなわち(a)素子固有の周波数帯域でキャリアの移動が制限される領域,(b)キャリアがアンバイポーラ両極性拡散によって広がる領域,(c)キャリアが空乏層領域の電界によりドリフト運動する領域.


330821
Hydration structure of Y3+ and La3+ compared; An Application of metadynamics
池田隆司 ; 平田勝 ; 木村貴海
Journal of Chemical Physics 122(24), p.244507_1-244507_5(2005) ; (JAERI-J 22082)

 水溶液中でのY3+とLa3+の水和構造をカー・パリネロ分子動力学に基づくメタダイナミクス法を用いて調べた.メタダイナミクスの集団変数として金属イオンに関する酸素の配位数を用いることにより,10ps程度のシミュレーションで構造の異なる水和錯体を生成することができた.メタダイナミクスの処方箋に従い自由エネルギ−面を求めたところ,3価希土類イオンの水和の特徴が再現されていることがわかった.このことより,カー・パリネロ分子動力学に基づくメタダイナミクスは溶液のような複雑な系の自由エネルギー探査に有効な手法であることが確認できた.


330822
Formation and growth of ice XI; A Powder neutron diffraction study
深澤裕 ; 星川晃範* ; 山内宏樹 ; 山口泰男* ; 石井慶信
Journal of Crystal Growth 282(1-2), p.251-259(2005) ; (JAERI-J 22083)

 水素(重水素)原子の配置が秩序化したIce XIと呼ばれる氷結晶の形成と成長過程を調べるために,KODを含有したD2Oの粉末氷中性子回折プロファイルを測定した.測定中,氷の温度は相転移点76Kより十分に低い57Kで約17時間維持し,さらに温度を上げて68Kで55時間程度アニールした.57Kで得られた中性子回折プロファイルは時間によらず一定で,水素(重水素)の配置が無秩序であるIce Ihの回折プロファイルと同じであった.一方,57Kから68Kに温度を上げることで回折プロファイルが変化することを発見した.そこで,68KにおけるIce XIの出現と成長の構造的証拠を得るために二相モデルを用いたリートベルド解析を実施した.その解析から,Ice XIは空間群Cmc21の構造を有していることがわかった.さらに,Ice XIの核が68Kで発生し,その質量比は時間の経過に伴って増加することが見いだされた.そして,Ice XIの核生成はKODを含有した氷の内部で数日間にわたって継続した.本研究により,未だ不明な点が多いIce XIの生成条件と成長過程の分析が初めて可能になった.


330823
Ultrahigh CHF prediction for subcooled flow boiling based on homogenous nucleation mechanism
Liu, W.* ; 成合英樹*
Journal of Heat Transfer 127(2), p.149-158(2005) ; (JAERI-J 22084)

 サブクール沸騰流動系において,極めて高圧や高流速条件での限界熱流束では,壁面温度が均質核生成温度を超えることがあるため,壁面上の蒸気膜形成が均質核生成により行われる可能性を指摘し,均質核生成の発生に判定基準を提案した.この判定基準に基づき,限界熱流束データの分類を行った.極めて高圧や高流速条件での限界熱流束に対して,均質核生成メカニズムに基づき,機構論的なモデルを作成した.このモデルを実験データで検証し,よい精度で限界熱流束を予測できることがわかった.


330824
DPA Calculation in Japanese Spallation Neutron Source
原田正英 ; 渡辺昇* ; 今野力 ; 明午伸一郎 ; 池田裕二郎 ; 仁井田浩二*
Journal of Nuclear Materials 343(1-3), p.197-204(2005) ; (JAERI-J 22085)

 JSNSにおけるメンテナンスや保管シナリオ構築のために,構造材の寿命を評価する必要がある.DPA(Displacement per Atom)は,放射線損傷の度合いを示す主要な指標である.そのため,まず,DPA計算の機能を粒子及び重イオン輸送計算コード"PHITS"に追加した.DPA計算には,はじき出し断面積が必要であったので,150MeV以下の中性子のはじき出し断面積はLA150ライブラリよりNJOYコードを用いて作成し,150MeV以上の中性子とすべてのエネルギーの陽子のはじき出し断面積はPHITSコードにおける核反応生成物のエネルギーから計算した.このPHITSコードを用いて,JSNS線源集合体のDPA値とDPAマッピングを計算した.その結果,各部の5000MWh運転によるDPAのピーク値は,ターゲット容器で4.1,反射体及びモデレータ容器で2.8,陽子ビーム窓で0.4となった.これらの結果から,ターゲット寿命は1年,モデレータ及び反射体寿命は6年と評価した.


330825
Effect of ion irradiation and implantation of H and He on the corrosion behavior of austenitic stainless steel
根本義之 ; 三輪幸夫 ; 加治芳行 ; 塚田隆
Journal of Nuclear Materials 343(1-3), p.313-317(2005) ; (JAERI-J 22086)

 核破砕中性子源の構造材料として考えられているオーステナイト・ステンレス鋼の照射による腐食挙動の変化を調べるため,高純度Fe-18Cr-12Niを用いて研究を行った.この試料に473-773KでNiイオン照射及びH, He注入を行い,腐食試験を行った.腐食挙動の評価には原子間力顕微鏡を使用した.腐食量は照射損傷量の増加に伴い増加した.また,照射温度の上昇に依存して腐食が大きくなった.そして,H注入は低温では腐食を促進したが高温では腐食を抑制した.また,He注入はいずれの温度条件においても腐食を抑制した.


330826
Determination of uranium and rare-earth metals separation coefficients in LiCl-KCl melt by electrochemical transient techniques
Kuznetsov, S. A.* ; 林博和 ; 湊和生 ; Gaune-Escard, M.*
Journal of Nuclear Materials 344(1-3), p.169-172(2005) ; (JAERI-J 22087)

 使用済み燃料の乾式再処理プロセスの検討では溶融塩中のアクチニドとランタニドの分離係数が重要である.723から823KにおいてUCl3とLaCl3を含んだLiCl-KCl共晶溶融塩試料のボルタンメトリを行い,ウランとランタンの還元ピークからそれぞれの式量電位を求め,ウランとランタンの分離係数を導出した.また,U3+イオンの拡散係数,U(III)/U(0)電極反応の電子授受速度など速度論的定数を測定した.


330827
Evaluation of γ-ray dose components in criticality accident situations
曽野浩樹 ; 柳澤宏司* ; 大野秋男* ; 小嶋拓治 ; 空増昇*
Journal of Nuclear Science and Technology 42(8), p.678-687(2005) ; (JAERI-J 22088)

 臨界事故時のγ線放出挙動のさらなる理解及び外部被ばくの正確な評価のためには,γ線線量の成分分析が不可欠である.その線量成分を,臨界継続中の即発成分,遅発成分及び擬似成分,並びに臨界停止後の残存成分に区分して評価した.この評価は,TRACY施設におけるホウ酸リチウム熱蛍光線量計(TLD)を用いた線量計測実験とモンテカルロ・コードによる解析の組合せにより行った.評価の結果,上記成分の線量割合がTRACYの炉心タンクからの距離によって変化することが確かめられた.その変化は,各成分の炉心タンクからの距離に応じた減衰の差によるものであった.評価された線量割合は,γ線被ばくの正確な評価のために除外すべき擬似及び残留成分の寄与を定量的に明らかにした.


330828
The Recommended k0-factors for neutron-induced prompt γ-ray analysis and the prompt γ-ray emission probabilities
松江秀明 ; 米澤仲四郎
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 262(1), p.49-55(2004) ; (JAERI-J 22089)

 これまでに原研JRR-3Mの冷及び熱中性子ビームで測定された即発γ線分析用のk0係数のうち,中性子スペクトルの影響が無くPGAによる分析が有効な24元素について合計81本のk0係数の推奨値を統計処理により求めた.得られたk0係数の推奨値から正確なデータが得られている原子量,同位体存在比,熱中性子断面積を使用し,即発γ線放出率のデータを求めた.得られたγ線放出率をENSDFと比較した結果,両データの標準偏差はENSDFに近年の測定値が反映されたCaまでの軽元素では±10%とよく一致したが,古いデータが含まれる重元素では±40%と大きな違いが見られた.


330829
Gas release of SiC implanted with deuterium or helium
相原純 ; 沢和弘 ; 古屋吉男* ; 北條智博* ; 古野茂実* ; 山本博之 ; 北條喜一 ; 石原正博
Journal of the American Ceramic Society 88(8), p.2319-2321(2005) ; (JAERI-J 22090)

 ヘリウムもしくは重水素を注入したSiCのTDSを調べた.ヘリウムの放出スペクトルは1270K付近に一つの鋭いピークを持ち,そのピークは1次の放出反応に基づく式に比較的よくフィッティングされ,その活性化エネルギーは約4.4eVであった.一方,重水素の放出ピークは明らかに重なりあう二つのピークから成り(600K付近と1000K付近),その形は昇温速度によって著しく異なった.重水素放出の過程は独立した二つの2次反応では記述できないものと思われる.


330830
High energy-resolution inelastic neutron scattering experiments on triplet bound state excitations in SrCu2(BO3)2
阿曽尚文* ; 陰山洋* ; 温井克行* ; 西正和* ; 門脇広明* ; 上田寛* ; 加倉井和久
Journal of the Physical Society of Japan 74(8), p.2189-2192(2005) ; (JAERI-J 22091)

 二次元S=1/2Shastry-Sutherland系SrCu2(BO3)2において4から7meVのエネルギー遷移領域でトリプレット束縛励起の波数依存性を高エネルギー分解能冷中性子非弾性散乱実験で初めて観測した.この直交ダイマー系ではこのエネルギー領域に分散のない2トリプレット束縛励起状態が数多く存在することが明らかになった.


330831
Single crystal growth and fermi surface properties of an antiferromagnet UPdGa5
池田修悟* ; 松田達磨 ; 芳賀芳範 ; 山本悦嗣 ; 中島美帆* ; 桐田伸悟* ; 小林達夫* ; 辺土正人* ; 上床美也* ; 山上浩志* ; 宍戸寛明* ; 植田泰輝* ; 摂待力生* ; 大貫惇睦*
Journal of the Physical Society of Japan 74(8), p.2277-2281(2005) ; (JAERI-J 22092)

 ガリウムの自己フラックス法により,反強磁性体UPdGa5の純良な単結晶を育成することに成功した.ドハース・ファンアルフェン効果測定を行うことにより,この系には,反強磁性体UPtGa5とよく似た円柱状フェルミ面が含まれていることがわかった.また加圧下電気抵抗測定により,ネール点が3.1GPaで消失することを明らかにした.つまり加圧によって,3.1GPa以上では,反強磁性から常磁性状態へと変化することがわかった.


330832
Analytical study on biaxial strength of structural ceramics under tension-compression condition
塙悟史 ; 石原正博 ; 本橋嘉信*
Key Engineering Materials 297-300, p.40-46(2005) ; (JAERI-J 22093)

 セラミックス構造材料における健全性確保の観点から,適切な破壊強度予測モデルの検討が重要である.特に黒鉛材料は,強度が結晶粒径や気孔径及びその分布等の微細構造に左右されることが知られていることから,本研究では強度と材料の微細構造の相関を取り扱うことが可能である微視破壊モデルを用いて,引張−圧縮二軸応力下に適用可能な多軸破壊モデルを提案した.また提案モデルを検証するために,実測値された多軸強度データとの比較を行った.その結果,提案モデルによる予測値は実測値に対して平均強度のみならず強度分布も良い予測を与えることが明らかとなった.さらに,提案モデルにより多軸応力下における材料異方性の影響を解析的に検討し,異方性と強度のばらつきの関係について言及した.


330833
Anisotropic deformation effect on the fracture of core components made of two-dimensional C/C composite
角田淳弥 ; 柴田大受 ; 石原正博 ; 伊与久達夫 ; 辻延昌*
Key Engineering Materials 297-300, p.143-147(2005) ; (JAERI-J 22094)

 C/C複合材は高温ガス炉の炉内構造物の材料として有望であるが,繊維に対して平行方向と垂直方向とで熱・機械的特性に大きな異方性を有しており,構造材の強度特性の評価は困難である.本研究では,中性子照射条件の黒鉛の応力解析に用いられている有限要素法を用いたVIENUSコードをC/C複合材の異方性を取り扱えるように改良し,2次元C/C複合材で炉内構造物を製作した場合について,弾性係数,熱膨張率等の異方性をパラメータとして炉の運転状態に応じた変形・応力解析を行った.また,解析結果に基づき構造物の破壊強度を競合リスク理論を用いて評価した.その結果,2次元C/C複合材の層間のせん断応力が破壊を生じる要因の一つであることを示した.


330834
Buckling fracture of two-dimensional carbon-fiber reinforced carbon-matrix composite
石原正博 ; 山地雅俊* ; 馬場信一 ; 塙悟史
Key Engineering Materials 297-300, p.201-206(2005) ; (JAERI-J 22095)

 炭素繊維強化炭素複合材料(C/C複合材)は高温耐熱性に優れ,原子力分野でも高温ガス炉用材料や核融合炉材料としての利用が期待されている.C/C複合材料のうち,PAN系二次元C/C複合材料(2D-C/C複合材料)がその特性及びコストの観点から最も有望視されており,原子力分野への適用を念頭に各種強度特性データなども取得されはじめている.C/C複合材料の構造材への適用を考えた場合,座屈破壊の防止は重要な検討項目の一つであるが,C/C複合材料の座屈破壊に関する研究は皆無の状態である.そこで本研究では,試験片のアスペクト比を変えた2D-C/C複合材料の座屈試験を行うとともにSEMによる破面観察を行った.検討の結果,2D-C/C複合材料の座屈には三つのモードが存在することが明らかとなり,それらは等方性材料などに一般的に用いられるオイラーの理論では説明できないものであった.


330835
Basic concept on structural design criteria for zirconia ceramics applying to nuclear components
柴田大受 ; 角田淳弥 ; 馬場信一 ; 山地雅俊* ; 石原正博 ; 伊与久達夫 ; 辻延昌*
Key Engineering Materials 297-300, p.728-733(2005) ; (JAERI-J 22096)

 熱・機械的特性に優れるセラミックス材料は,高温ガス炉の炉内構造物への適用が期待されている.結晶粒径を微細化した3モル%イットリア含有正方晶ジルコニア多結晶体(3Y-TZP)セラミックスは,高温での超塑性現象を利用した圧延加工が可能であり有望な材料であるが,強度に関するデータは炉内構造物へ適用するために必要な設計基準を作るうえでは十分でない.本研究では,3Y-TZPセラミックスについて,室温で引張り,曲げ,圧縮試験を実施し,得られた強度データに基づき設計基準の概念検討を行った.その結果,平均の引張り強度は曲げ強度よりかなり小さく,応力条件下での正方晶から単斜晶への相変体機構を考慮することが重要であることを示した.また,得られた強度データをWeibull理論により確率論的に検討し,ジルコニア製構造物に対する設計基準の概念を提案した.


330836
Annealing effect of thermal conductivity on thermal stress induced fracture of nuclear graphite
角田淳弥 ; 柴田大受 ; 石原正博 ; 伊与久達夫 ; 辻延昌*
Key Engineering Materials 297-300, p.1698-1703(2005) ; (JAERI-J 22097)

 高温ガス炉の炉内構造物には黒鉛が使用されるが,事故などで炉心温度が上昇する場合には黒鉛構造物の熱応力が増加し,それによって引き起こされる破壊の確率が増加する.黒鉛の熱伝導率は炉内の中性子照射によって低下するが,焼き鈍しによりある程度回復することが知られており,黒鉛構造物の破壊・強度の評価においては熱伝導率の回復の影響を適切に考慮することが重要である.本研究では,IG-110黒鉛の熱伝導率の焼き鈍し効果について,照射温度,照射量,焼き鈍し温度を関数とした回復因子のモデル化を行い,有限要素法による熱応力解析を実施して破壊確率を評価した.その結果,炉内の黒鉛構造物の温度評価値は,熱伝導率の回復効果を考慮した場合では考慮しない場合に比べて最大で約70℃低い結果となり,それに伴い破壊確率が減少することが明らかとなった.


330837
Role of low order rational q-values in the ITB events in JT-60U reverse shear plasmas
Neudatchin, S. V.* ; 滝塚知典 ; 林伸彦 ; 諫山明彦 ; 白井浩 ; 藤田隆明 ; 鎌田裕 ; 小出芳彦 ; 鈴木隆博
Nuclear Fusion 44(9), p.945-953(2004) ; (JAERI-J 22098)

 JT-60Uの正磁気シア放電においてq=3面の近傍で内部輸送障壁(ITB)が形成されることが知られている.JT-60Uの負磁気シアプラズマにおいては,極小q値(qmin)が3.5, 3, 2.5, 2のときのITB形成に対する役割はよくわかっていなかった.ITB事象(ITBの中または近傍で起きる非局所的な閉じ込めの分岐現象)が正及び負磁気シアプラズマで観測されている.十分加熱パワーが大きいとき,ITB事象はqminが有理数でも非有理数でも発生する.このとき電子温度とイオン温度の時間空間変動は類似しており,電子とイオンの輸送機構が同様であることが示唆された.負磁気シアモードにおいてqminが3を通過するとき,改善と劣化の周期的ITB事象の後に強いITBが形成されるのを見いだした.低パワーのときのITB事象はqminが有理数のときにのみ観測された.弱い負磁気シア放電において,イオン温度の上昇がよく観測されているが,qmin=3.5のときに急激な電子温度上昇があるのを見いだした.低パワーのときに見られる電子温度とイオン温度の挙動の相違は,電子とイオンの輸送の非連携性を示唆している.


330838
Stationary high confinement plasmas with large bootstrap current fraction in JT-60U
坂本宜照 ; 藤田隆明 ; 井手俊介 ; 諫山明彦 ; 武智学 ; 鈴木隆博 ; 竹永秀信 ; 大山直幸 ; 鎌田裕 ; JT-60チーム
Nuclear Fusion 45(7), p.574-580(2005) ; (JAERI-J 22099)

 本講演では,高自発電流割合を持つプラズマの長時間維持に関する実験結果について報告する.まず弱磁気シアHモードプラズマでは,自発電流割合45%を電流拡散時間よりも長い5.8秒間維持することに成功した.電流分布を最適化することにより,新古典テアリング不安定性を抑制したことが長時間維持の成果に繋がった.またこの放電は,ITER定常運転シナリオに必要な大部分の要素を同時に達している.次に負磁気シアHモードプラズマにおいて自発電流割合75%を電流拡散時間より長い7.4秒間維持することに成功した.維持時間は高パワーNB入射時間で制限されている.また非常に高い閉じ込め改善度(〜3.0)が得られており,非誘導電流駆動割合も90%以上に達している.電流分布と圧力分布の時間発展から準定常状態に到達している.


330839
R&D on a high energy accelerator and a large negative ion source for ITER
井上多加志 ; 谷口正樹 ; 森下卓俊 ; 大楽正幸 ; 花田磨砂也 ; 今井剛* ; 柏木美恵子 ; 坂本慶司 ; 関孝義* ; 渡邊和弘
Nuclear Fusion 45(8), p.790-795(2005) ; (JAERI-J 22100)

 原研では,1MeV加速器と大型負イオン源の開発を推進してきた.本論文はITER NBシステムの実現に向けた1ステップである,以下の開発の進展を報告する.(1)加速器開発:耐電圧性能の向上により,H-イオンの1MeV級エネルギー加速試験が進展している.1MeV, 100mA級H-イオンビームを実用規模である100A/m2程度の電流密度で発生しており,イオン源の調整により,電流密度のさらなる増大が見込まれる.(2)大型負イオン源開発:既存負イオンNBシステムにおいては,負イオンの空間一様生成がNB入射性能を左右する要因となっている.本研究では,磁気フィルターから局所的に洩れ出た高速電子が負イオン源引き出し領域に生成した負イオンを破壊していることを明らかにした.本論文では,幾つかの対応策とその試験結果についても報告する.


330840
Energy loss for grassy ELMs and effects of plasma rotation on the ELM characteristics in JT-60U
大山直幸 ; 坂本宜照 ; 諫山明彦 ; 武智学 ; Gohil, P.* ; Lao, L. L.* ; Snyder, P. B.* ; 藤田隆明 ; 井手俊介 ; 鎌田裕 ; 三浦幸俊 ; 及川聡洋 ; 鈴木隆博 ; 竹永秀信 ; 東井和夫* ; JT-60チーム
Nuclear Fusion 45(8), p.871-881(2005) ; (JAERI-J 22101)

 grassy ELMは,type I ELMの約15倍早い,数kHzになる周期的な崩壊により特徴付けられる.ダイバータ板への熱流速はtype I ELMの10%程度であり,熱流速が小さい理由はELMによる崩壊領域が狭いためであることがわかった.このType I ELMとgrassy ELMにおける崩壊領域の違いは理想MHD安定性の計算と定性的に矛盾しない.また,grassy ELMにより失われるエネルギーはペデスタル部に蓄えられているエネルギーの0.4-1%である.高三角度領域においてプラズマ電流と逆方向のトロイダル回転を増加させると,type I ELMから周波数の高いgrassy ELMへと変化することがわかった.一方,低三角度領域では,プラズマ位置を最適化しつつ,プラズマ電流と逆方向のトロイダル回転を増加させることによりELMを安定化すること(QH-mode)ができた.プラズマ周辺部に局在化した揺動がペデスタル圧力を減少することによりQH-modeが3.4秒間にわたり維持できていると思われる.


330841
Profile formation and sustainment of autonomous tokamak plasma with current hole configuration
林伸彦 ; 滝塚知典 ; 小関隆久
Nuclear Fusion 45(8), p.933-941(2005) ; (JAERI-J 22102)

 電流ホール配位トカマクプラズマの分布形成と維持を,電流ホール内に三磁気島平衡に基づく電流制限モデルを適用した1.5次元輸送コードを用いて調べた.負磁気シア領域で急に減衰する異常輸送モデルが,JT-60Uで観測された分布の時間発展を再現でき,負磁気シア領域で輸送は新古典レベルになり,その結果,大きなブートストラップ電流を介して内部輸送障壁と電流ホールのある分布が自律的に形成されることがわかった.新古典レベルの輸送で決まる内部輸送障壁幅は,JT-60U実験と一致し,内部輸送障壁内に閉じ込められるエネルギーは,JT-60U閉じ込め則と一致する.この閉じ込め則は,内部輸送障壁内のプラズマがMHD平衡限界に支配され,閉じ込めエネルギーが自律的に制限されることを意味する.大きな電流ホールを持つプラズマは,ブートストラップ電流による完全電流駆動により維持される.一方,小さな電流ホールでブートストラップ電流割合が小さいプラズマは,誘導電流の染込みにより収縮してしまう.適切な外部電流駆動により,この収縮を妨げ,さらに電流ホールの大きさを制御することができる.電流ホールプラズマが,外部電流駆動に対して自律的に反応することを明らかにした.核融合炉への電流ホールプラズマの適用性を議論した.


330842
CsI(Tl)/Plastic phoswich detector enhanced in low-energy γ-ray detection
山外功太郎 ; 堤正博 ; 大石哲也* ; 吉澤道夫 ; 吉田真
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 550(3), p.609-615(2005) ; (JAERI-J 22103)

 大面積プラスチックシンチレーション検出器の低エネルギー領域の感度を改善するため,薄板状CsI(Tl)シンチレータとプラスチックシンチレータとを組合せたホスウィッチ検出器を開発し,その実用可能性を評価した.検出限界放射能を向上するため,立ち上がり時間解析を用いたCsI(Tl)信号成分の分離抽出を行った.検出限界放射能の評価から,大面積プラスチック検出器の前面に薄板状CsI(Tl)を貼り付けることで,その検出可能エネルギー範囲を数十keVまでに拡張可能であることが明らかになった.


330843
Formation of Cu precipitates by ion implantation and thermal annealing for the growth of oxide nanorods
武山昭憲 ; 山本春也 ; 伊藤洋 ; 吉川正人
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 232(1-4), p.333-337(2005) ; (JAERI-J 22104)

 イオン注入と熱処理によって,Si(100)基板上に銅化合物微粒子を生成させた.熱処理時間を長くすると,銅化合物微粒子の形状は長方形から細長いピラミッド状に変化した.この形状変化は,銅化合物微粒子が基板との界面エネルギーを最小化するため,基板上にエピタキシャル成長した結果生じたと考えられる.一方,熱処理時間が長くなるほど(<1時間)銅化合物微粒子の生成密度は増加するが,逆にその大きさは減少することがわかった.以上の結果から,銅化合物微粒子の形状,大きさ及び生成密度が熱処理時間の長短によって制御可能であることがわかった.したがって,銅化物微粒子の大きさを上述の方法でナノメートルサイズに制御することにより,ナノメートルサイズの柱状酸化亜鉛(酸化亜鉛ナノロッド)の形成が可能である見通しを得た.


330844
Current status of adsorbent for metal ions with radiation grafting and crosslinking techniques
瀬古典明 ; 玉田正男 ; 吉井文男
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 236(1-4), p.21-29(2005) ; (JAERI-J 22105)

 環境水から有害金属を取り除くことは環境負荷軽減の目的から重要なことである.放射線グラフト重合及び架橋技術を用いて作製した吸着材はこれらの金属に対して優れた吸着除去性能を示す.グラフト重合法は材料に汎用のフィルムや繊維などを用い,これらの既存の成型を保ったまま金属除去可能な官能基を容易に導入できる特色を持った技術である.この技術を用いてヒ素を除去するための吸着材を作製したとところ,市販の同タイプのものと比較して100倍の吸着速度で処理できることがわかった.また,アミドキシム型やイミノジ酢酸型の吸着材はホタテ貝中に濃縮されているカドミウムを効率的に除去できる.さらに,キチン,キトサンのような天然高分子をペースト状態で架橋させたものも吸着材としての使用が可能で,この吸着材は使用後生分解できる利点がある.


330845
Application of poly(lactic acid) modified by radiation crosslinking
長澤尚胤 ; 金田綾子* ; 金澤進一* ; 八木敏明 ; 三友宏志* ; 吉井文男 ; 玉田正男
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 236(1-4), p.611-616(2005) ; (JAERI-J 22106)

 生分解性のポリ乳酸は硬く,透明性のよい樹脂であるが,ガラス転移温度60℃以上で変形が起きるため,耐熱性の改善が急務である.これを改善するには橋かけ構造の導入が有効であるため,反応性の多官能性モノマーについて検討した結果,トリアリルイソシアヌレートが橋かけに最も有効であることを見いだした.照射橋かけにより耐熱性が向上したポリ乳酸は,融点(160℃)以上でも融解しないことから熱収縮チューブへの応用を可能にした.また,橋かけPLAは結晶化が起こらないため熱湯を注いでも透明性を保持しており,食器類への応用が期待できる.


330846
Adsorption of metal ions by carboxymethylchitin and carboxymethylchitosan hydrogels
Wasikiewicz, J. M.* ; 長澤尚胤 ; 玉田正男 ; 三友宏志* ; 吉井文男
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 236(1-4), p.617-623(2005) ; (JAERI-J 22107)

 電子線照射して架橋したカルボキシメチルキチン(CMCT)及びカルボキシメチルキトサン(CMCTS)ハイドロゲルの金属イオン吸着特性について研究した.これらのゲルは,さまざまな希金属イオンの中でスカンジウムイオンと金イオンの吸着能力が高く,2時間といった短時間でほぼ吸着が飽和した.特に金イオンの吸着について詳細に検討し,ラングミア式で算出した結果,乾燥ゲル1gあたりの金イオンの最大吸着量が,CMCTゲルで0.06μmol/g,CMCTSゲルで0.19μmol/gであった.両ハイドロゲルは金カチオンの有効な吸着材である.


330847
Precision hfs of 126Cs(T1/2 = 1.63 m) by ABMR
Pinard, J.* ; Duong, H. T.* ; Marescaux, D.* ; Stroke, H. H.* ; Redi, O.* ; Gustafsson, M.* ; Nilsson, T.* ; Matsuki, S.* ; 岸本泰明* ; Kominato, K.* ; Ogawa, I.* ; Shibata, M.* ; Tada, M.* ; Persson, J. R.* ; Nojiri, Y.* ; Momota, S.* ; Inamura, T. T.* ; Wakasugi, M.* ; Juncar, P.* ; Murayama, T.* ; Nomura, T.* ; 小泉光生 ; ISOLDE Collaboration*
Nuclear Physics A 753(1-2), p.3-12(2005) ; (JAERI-J 22108)

 磁場が原子核内で有限な分布を持つと超微細構造異常(ボーア ワイスコップ効果)が生じる.この効果を系統的に調べるためには,超微細構造定数と核磁気モーメントを系統的に高い精度で求める必要がある.本研究では,不安定核の超微細構造定数の精密測定のために,オンライン−レーザー光ポンピング原子線磁気共鳴装置を開発し,126Cs(T1/2=1.63m)の基底状態6s2S1/2の超微細分岐Δνを求めた.その結果,Δν=3629.514(0.001)MHzを得た.


330848
Benchmark experiments of thermal neutron and capture γ-ray distributions in concrete using 252Cf
浅野芳裕 ; 杉田武志* ; 広瀬秀幸 ; 須崎武則*
Nuclear Science and Engineering 151(2), p.251-259(2005) ; (JAERI-J 22109)

 近年,経済的な観点から加速器などの遮蔽設計にますます厳密さが求められている.また,放射性廃棄物の区分を円滑に進めるために放射化物の強度分布を正確に評価する必要がある.そのためには重遮蔽における中性子及び捕獲γ線分布を精度よく評価する必要がある.そこで,最近公開された核データと従来より使用されている核データライブラリーを用いて熱領域で大きく異なる2種類の郡構造を持つ断面積データを作成し,SN法による比較計算を実施した.また,コンクリート内での熱中性子分布測定結果及びγ線線量分布測定結果と比較することにより計算手法の確認を行った.


330849
Effect of orbital fluctuations on magnetic properties of f-electron systems
堀田貴嗣
Physica B; Condensed Matter 359-361, p.1003-1005(2005) ; (JAERI-J 22110)

 充填スクッテルダイト化合物の磁気的性質を理解するために,軌道自由度のあるアンダーソン模型の磁化率を数値繰り込み群法によって計算した.その結果,Prイオンを含む充填スクッテルダイト化合物で実験的に示唆されているように,局所基底状態がΓ1であっても,Γ4(2)がわずかなエネルギー差で励起状態として存在していれば,磁気揺らぎが顕著に残ることを見いだした.


330850
Observation of strong soft-X-ray amplification at 8.8 nm in the transient collisional-excitaion scheme
河内哲哉 ; 佐々木明 ; 田中桃子 ; 岸本牧 ; 長谷川登 ; 永島圭介 ; 小池雅人 ; 大道博行 ; 加藤義章*
Physical Review A 69(3), p.033805_1-033805_4(2004) ; (JAERI-J 22111)

 われわれはニッケル様ランタンイオン4d-4p遷移(波長8.8nm)の強い増幅を観測した.用いた励起レーザーは小型のCPAガラスレーザーで励起エネルギーは18Jであった.この実験で励起レーザーパルスはプリパルスとメインパルスからなり,パルス幅は各々200ps, 7ps,パルス間隔は250psであった.KeV領域のX線分光と理論計算から,プリパルスの強度を下げることにより臨界密度付近のプラズマの温度を効果的に上昇させることができ,その領域からの電子熱伝導によって臨界密度よりも高い密度領域に実効的な利得領域を生成することを明らかにした.


330851
Effects of hole doping on magnetic ground and excited states in the edge-sharing CuO2 chains of Ca2+xY2-xCu5O10
松田雅昌 ; 加倉井和久 ; 黒木章悟* ; 工藤一貴* ; 小池洋二* ; 山口博隆* ; 伊藤利充* ; 岡邦彦*
Physical Review B 71(10), p.104414_1-104414_8(2005) ; (JAERI-J 22112)

 Ca2+xY2-xCu5O10は辺共有CuO2鎖を有する物質であり,低温において反強磁性相転移を示す.スピン構造は鎖内で強磁性的,鎖間で反強磁性的である.Ca2Y2Cu5O10において詳細な中性子非弾性散乱実験を行ったところ,鎖方向にはゾーン中心では鋭い磁気励起が観測されるが,中心から離れるに従って磁気励起のピーク幅の増加が見られた.また,この磁気励起の温度依存性,ホール濃度依存性について調べた結果,鎖に垂直方向の相互作用は温度上昇,ホールドープとともに減少するが,鎖方向の相互作用はほとんど変化しないことがわかった.さらに,高ホール濃度領域では,ホールの部分的秩序化を示唆する結果を得た.この結果から,高ホール濃度領域で見られるスピングラス的振る舞いの起源がフラストレーションによるものではなく,ホールの相分離により反強磁性クラスターができるためであることが明らかになった.


330852
Structural properties and phase transition of hole-orbital-ordered (C2H5NH3)2CuCl4 studied by resonant and non-resonant x-ray scatterings under high pressure
大和田謙二 ; 石井賢司 ; 稲見俊哉 ; 村上洋一* ; 菖蒲敬久* ; 大隅寛之* ; 池田直* ; 大石泰生*
Physical Review B 72(1), p.014123_1-014123_10(2005) ; (JAERI-J 22113)

 構造とそれに関係する共鳴X線散乱(RXS)の圧力効果がホール軌道秩序物質(C2H5NH3)2CuCl4において調べられた.ラマン散乱によって示唆されたPc=4GPaの相転移が斜方晶−単斜晶相転移に伴うピークスプリットから直接観測された.ヤーンテラー歪みの圧力による減少を構造解析から明らかにした.それに伴い,黄色い結晶は赤に赤方変移することが顕微鏡観察で確認した.また,われわれはRXS強度の起源が3d-4pクーロン相互作用の結果ではなく,八面体歪みを感じた4p軌道の分極であることを突き止めた.高圧下でのRXSが調べられたが,Pcまでに強度の変化は余りなく,Pc以上で急激に強度がなくなることが観測された.これに伴いPc以上での2つの可能な構造が提案された.


330853
Magnetic structure and metamagnetism in single crystals of NpCoGa5
目時直人 ; 金子耕士 ; Colineau, E.* ; Javorsky, P.* ; 青木大* ; 本間佳哉* ; Boulet, P.* ; Wastin, F.* ; 塩川佳伸* ; Bernhoeft, N.* ; 山本悦嗣 ; 大貫惇睦* ; Rebizant, J.* ; Lander, G. H.*
Physical Review B 72(1), p.014460_1-014460_8(2005) ; (JAERI-J 22114)

 単結晶のNpCoGa5の中性子散乱実験によって,磁気構造とメタ磁性転移を明らかにした.その結果Npの磁気モーメントはC軸方向に向き,C面内で強磁性的に配列したNp層が反強磁性的に積層した,いわゆるA-typeの構造であることを明らかにした.磁気モーメントは0.8ボーア磁子であった.C軸方向に5Tの磁場をかけると強磁性構造になることを明らかにした.


330854
Crystal and magnetic structure of Ca3Ru2O7
吉田良行* ; 池田伸一* ; 松畑洋文* ; 白川直樹* ; Lee, C. H.* ; 片野進
Physical Review B 72(5), p.054412_1-054412_7(2005) ; (JAERI-J 22115)

 二重層化合物Ca3Ru2O7の結晶構造を電子線回折と中性子回折によって調べた.回折パターンの温度依存性は全ての格子定数が48Kの一次のメタル−ノンメタル転移点で,結晶空間群の変化を伴うことなく,突然変化することを明らかに示した.またNeel温度56K以下の温度で磁気反射が観測された.この結果から,磁気構造は面内で強磁性的に,面間で反強磁性的に配列しているモデルを提案した.このモデルによれば,6T付近での磁気抵抗の磁場依存性が矛盾なく説明できる.


330855
Magnetic properties of the overdoped superconductor La2-xSrxCuO4 with and without Zn impurities
脇本秀一* ; Birgeneau, R. J.* ; Kagedan, A.* ; Kim, H.-K.* ; Swainson, I.* ; 山田和芳* ; Zhang, H.*
Physical Review B 72(6), p.064521_1-064521_9(2005) ; (JAERI-J 22116)

 過剰に電荷担体(ホール)を導入したLa2-xSrxCuO4について,非磁性不純物であるZnを少量Cuサイトに置換した試料と,Zn不純物を含まない試料を用いて,磁化測定と中性子非弾性散乱実験を行った.磁化測定の結果から,Zn不純物を含まない試料で,あるしきい値を超えて電荷担体が導入されると,常磁性的なキュリー項が現れることを示した.Zn置換した試料との比較から,このキュリー項はZn置換の場合と同様,何らかの理由で反強磁性的相関が局所的に断ち切られることによることがわかった.中性子散乱の結果からは,Zn置換した試料では,Znを含まない試料に比べ,動的反強磁性相関が強くなることがわかった.これらの結果は,過剰ドープ領域の試料が反強磁性相関を伴う超伝導相と,常磁性的相関を持つフェルミ液体相への微視的相分離を示すためと考えられる.


330856
Identification of the Kπ=11/2+ isomer in neutron-rich 187W
静間俊行 ; 早川岳人 ; 御手洗志郎* ; 森川恒安* ; 石井哲朗
Physical Review C 71(6), p.067301_1-067301_4(2005) ; (JAERI-J 22117)

 深部非弾性散乱反応を用いて,中性子過剰核187Wの励起状態を生成した.反応チャンネルの選別のため,ビーム様フラグメントをシリコン検出器を用いて測定した.また,ゲルマニウム検出器を用いて,遅延γ線の測定を行った.その結果,187Wにおいて,励起エネルギー411keVに,新たに1.56(28)マイクロ秒の核異性体の観測に成功した.近傍の原子核の準位構造から,この核異性体は,11/2+[615]準粒子配位を持つことがわかった.


330857
β-decay half-lives of new neutron-rich rare-earth isotopes 159Pm, 162Sm, and 166Gd
市川進一 ; 浅井雅人 ; 塚田和明 ; 羽場宏光* ; 永目諭一郎 ; 柴田理尋* ; 阪間稔* ; 小島康明*
Physical Review C 71(6), p.067302_1-067302_4(2005) ; (JAERI-J 22118)

 ガスジェット搬送装置と結合したオンライン同位体分離器を用い,ウランの陽子誘起核分裂で生成する中性子過剰未知希土類核,159Pm, 162Sm, 166Gdを発見し,それぞれの半減期を1.5±0.2s, 2.4±0.5s, 4.8±1.0sと決定した.また,166Gdについては部分崩壊図式を構築した.さらに,以前に見いだした166Tbの半減期を精度よく再測定し25.6±2.2sと決定した.本研究で見いだした新核種の半減期は,大局的理論で予測された半減期と良い一致を見た.


330858
Effect of charge polarization on the coulomb barrier for cold-fusion reactions
市川隆敏* ; 岩本昭*
Physical Review C 71(6), p.067601_1-067601_4(2005) ; (JAERI-J 22119)

 コールドフュージョン反応の入口チャネルでの電荷分極が原因で生じるクーロン障壁の高さの減少を見積もった.超重核合成のための重イオン反応では入射核と標的核の陽子数の増加とともにクーロン反発力が大きくなるので,電荷分極が生じると考えられる.生じた電荷分極は衝突間のクーロン相互作用エネルギーを減少させる一方,標的核と入射核の自己エネルギーは対称エネルギーの増加のために増加する.われわれは生じる電荷の変位は表面と体積電荷成分の和と仮定して,自己エネルギーはDropletモデルを用いて電荷分極の大きさを見積もった.本論文中で軽い核と重い核の電荷分極の違いと,超重核合成に関するクーロン障壁の高さの減少を見積もる.


330859
29Na; Defining the edge of the island of inversion for Z=11
Tripathi, V.* ; Tabor, S. L.* ; Mantica, P. F.* ; Hoffman, C. R.* ; Wiedeking, M.* ; Davies, A. D.* ; Liddick, S. N.* ; Mueller, W. F.* ; 大塚孝治* ; Stolz, A.* ; Tomlin, B. E.* ; 宇都野穣 ; Volya, A.*
Physical Review Letters 94(16), p.162501_1-162501_4(2005) ; (JAERI-J 22120)

 中性子数20の魔法数が中性子過剰核で消滅することは知られているが,このことが起きる要因の一つとして,中性子過剰核においては殻ギャップエネルギーそのものが安定核のものよりもかなり狭まるということを,われわれはモンテカルロ殻模型計算に基づいて提唱してきた.これが実際に正しいとすると,中性子数が20よりも少ない原子核の励起エネルギーにその痕跡が見られることが予言されるが,この論文でなされた,29Ne核によるベータ崩壊から得られた29Naの準位の測定で,予言されたものに対応する準位が初めて測定された.中性子18を持つ29Naではこれまで励起状態が全く知られていなかったが,この実験によって1.5MeV近傍に2本,log(ft)値から明らかに正パリティでかつ,中性子数20の魔法構造を破った状態があることがわかった.同時に28Naの励起状態も測定し,この核の低励起状態にはそのような状態がないこともわかった.これらの実験結果はモンテカルロ殻模型による予言によく対応しており,魔法数の変化のメカニズムに対してさらに深い理解を与えたものである.


330860
Momentum dependence of charge excitations in the electron-doped superconductor Nd1.85Ce0.15CuO4; A Resonant inelastic X-ray scattering study
石井賢司 ; 筒井健二* ; 遠藤康夫* ; 遠山貴己* ; 前川禎通* ; Hoesch, M.* ; 葛下かおり* ; 坪田雅己* ; 稲見俊哉 ; 水木純一郎 ; 村上洋一* ; 山田和芳*
Physical Review Letters 94(20), p.207003_1-207003_4(2005) ; (JAERI-J 22121)

 共鳴非弾性X線散乱(RIXS)による電子ドープ型高温超伝導体Nd1.85Ce0.15CuO4の電荷励起の研究について報告する.低エネルギーにある電荷励起を観測できるように実験条件を適切にあわせることで,フェルミエネルギーを越えるバンド内励起とバンド間励起を初めて分離することができた.バンド内励起では幅に運動量(q)依存があるような分散関係が現れるのに対し,バンド間励起では強度がゾーン中央で2eV付近に集中する.これらの実験結果は,ハバードモデルに基づくRIXSスペクトルの理論的な計算と一致している.


330861
Development of a thermal neutron focusing device using neutron supermirrors
長壁豊隆 ; 曽山和彦
Review of Scientific Instruments 76(7), p.073102_1-073102_5(2005) ; (JAERI-J 22122)

 中性子の集光は,試料が非常に小さくなってしまう極端条件下の実験において不可欠な手法となる.この論文では,三軸型中性子散乱装置で使用するための熱中性子集光デバイスの開発について報告する.開発した集光デバイスは全長400mmのコンパクトなもので,三軸分光器の第二コリメーターと試料の間に設置され,焦点距離はデバイス下端から150mmとなる.デバイスは円形状の3m仕様NiC/Ti製スーパーミラーを全18枚持ち,各円形状ミラーの延長は試料位置に一致する.中性子は各ミラーの内面を等角度で連続的に反射され,焦点位置,つまり試料位置に到達する.実際の集光試験の結果から,30.5meV以下の中性子ビームに対して試料位置で2倍以上のゲインがあることがわかった.


330862
Quantitative modeling of photoassimilate flow in an intact plant using the Positron Emitting Tracer Imaging System (PETIS)
松橋信平 ; 藤巻秀 ; 河地有木* ; 阪本浩一* ; 石岡典子 ; 久米民和
Soil Science and Plant Nutrition 51(3), p.417-423(2005) ; (JAERI-J 22123)

 高濃度炭酸ガス環境に対する植物の応答を明らかにすることを目的に,異なる炭酸ガス濃度下での光合成産物の移行をポジトロンイメージング装置で計測し,輸送速度と輸送中の分配について定量的解析を行った.炭酸ガス濃度を通常大気中(350ppm)及び高濃度(1000ppm)としたソラマメの本葉から11CO2を吸収させ,茎中での11C光合成産物の移行をポジトロンイメージング計測により画像化した.得られたデータを伝達関数法を用いた数理的な手法により解析した結果,本葉の炭酸ガス濃度上昇への応答として,茎中での光合成産物の移行速度と根への分配比が高まることを明らかにした.また,光合成産物の輸送速度は,11CO2を吸収させた本葉から遠くなるほど大きくなることを明らかにした.


330863
Size of small Si and Ge clusters on Si(111) and Ge(111) surfaces
朝岡秀人 ; Cherepanov, V.* ; Voigtlander, B.*
Surface Science 588(1-3), p.19-25(2005) ; (JAERI-J 22124)

 Si(111)表面上でのSi, Geの成長初期過程に現れる微小クラスターは,その存在範囲を7×7単位格子内に限定され配置されるため,ナノ物質創製の観点から注目されている.しかしながらそのクラスターに内在する原子数の測定はSTM探針先端の形状に左右されるため過大に評価される傾向があり,これまで体系的な評価がなされなかった.そこでわれわれは内在する原子数をSTMで観察されるサイズによらない評価法を用いた.表面構造,元素の違いによるクラスターサイズの影響を評価するためにSi(111)-7×7表面のほか,Si(111)面上にGeエピタキシャル成長させたウエッティングレーヤGe(111)-5×5表面,高さ10bilayer程の3Dアイランド上に現れるGe(111)-7×7表面を使用した.Si(111)-7×7表面のSi, Geそれぞれのクラスター内には平均8.3個,7.5個の原子が存在し,元素の違いによる大きな差が存在しない.またGe(111)7×7単位格子に対しておよそ半分の面積であるGe(111)-5×5単位格子内の原子数はGe(111)7×7表面上と比較しほぼ半数になっており,クラスター範囲を限定する表面単位格子に大きく影響されていると考えられる.


330864
Damage evaluation techniques for FBR and LWR structural materials based on magnetic and corrosion properties along grain boundaries
星屋泰二* ; 高屋茂* ; 上野文義 ; 根本義之 ; 永江勇二* ; 三輪幸夫 ; 阿部康弘* ; 近江正男 ; 塚田隆 ; 青砥紀身*
Transactions of the Materials Research Society of Japan 29(4), p.1687-1690(2004) ; (JAERI-J 22125)

 高速炉(FBR)及び軽水炉(LWR)の構造材料の劣化評価のため,結晶粒界に沿った磁気及び腐食特性に基づく新しい評価技術の開発に着手した.経年化したFBR構造材料に対し,磁気的方法を適用し,き裂発生以前の初期段階のクリープ損傷を非破壊検出することができる.そこで,クリープ損傷を受けた常磁性のステンレス鋼について,自然磁化に対する負荷応力の効果を調べた.一方,イオン照射したステンレス鋼の粒界近傍の腐食特性及び光磁気特性はそれぞれAFM及びKerr効果顕微鏡を用いて評価した.これらの劣化はCr欠乏等の粒界近傍の性質変化によって引き起こされた.この結果,原子炉構造材料の劣化進行過程の初期段階は,粒界に沿った磁気及び腐食特性によって検出できることがわかった.


330865
熱化学水素製造法ISプロセスと分離技術
久保真治 ; 吉田光徳* ; 桜井誠* ; 田中耕太郎* ; 宮下礼子*
分離技術 35(3), p.148-152(2005) ; (JAERI-J 22126)

 熱化学水素製造法は,複数の化学反応を組合せることによって,直接熱分解に要求される数千度という高温より低い温度レベルの熱エネルギーを用いて,水を分解しようとするものである.近年の燃料電池技術の急速な進展に伴って,原子力エネルギーを熱源とした熱化学水素製造法は,二酸化炭素を排出することなく大量の水素需要に応えることのできる水素製造技術として注目されるようになった.本稿では,熱化学水素製造法の中で有望と考えられているISプロセスについて,プロセスに用いられる分離,液液相分離のモデル化,ヨウ化水素の濃縮分離に関する問題点について述べる.


330866
核燃料サイクル関連物質の分析
佐藤宗一* ; 鈴木徹* ; 檜山敏明* ; 渡部和男
ぶんせき 2005(8), p.451-457(2005) ; (JAERI-J 22127)

 核燃料サイクルに関連する分析の進歩について,2000年から2004年の研究論文を中心にサーベイして取りまとめた.近年の傾向として,原子炉材料や核燃料の分析に関する研究報告は,極めて少なくなっている.一方,核不拡散,廃棄物,環境関連の分析研究が増加している.特に,保障措置の環境試料分析に関しては,極微量の核物質の同位体比測定,粒子一個一個の同位体比測定など,従来要求されなかったような高感度な分析方法が要求され,開発されている.


330867
Compatibility of lithium oxide single crystals with tungsten sputtered films; The Effect of passivation films
那須昭一* ; 永田晋二* ; 吉井樹一郎* ; 高廣克己* ; 菊地直人* ; 草野英二* ; Moto, Shintaro* ; 山口貞衛* ; 大橋憲太郎* ; 野田健治 ; 四竈樹男*
粉体および粉末冶金 52(6), p.427-429(2005) ; (JAERI-J 22128)

 酸化リチウムは核融合炉のトリチウム増殖材料の候補材料である.表面をアルミニウム,シリコン又はチタンの保護膜で覆った酸化リチウム単結晶とその上につけたタングステン膜との化学的両立性をラザホード後方散乱法より調べた.保護膜のない酸化リチウムでは573Kで1分及び623-673Kで1分の加熱でタングステンとの化学反応が見られた.一方,保護膜をつけた酸化リチウムでは,すべての試料について,573Kにおける1分の加熱で少量のタングステンが保護膜や酸化リチウム中へ拡散することが見られたが,その後の623Kから723Kの加熱において顕著な拡散は見られなかった.このことから,アルミニウム,シリコン又はチタン保護膜は酸化リチウムをタングステンとの反応から保護するために有用であると考えられる.


330868
集光型偏極中性子小角散乱装置(SANS-J-II)へのシナリオ
小泉智 ; 岩瀬裕希* ; 田中宏和* ; 橋本竹治* ; 鈴木淳市 ; 奥隆之 ; 笹尾一* ; 清水裕彦*
波紋 14(4), p.266-274(2004) ; (JAERI-J 22129)

 ソフトマター中性子散乱グループを中心として展開している,中性子小角散乱装置SANS-Jの改造の計画と現状をまとめた.改造の主な内容は,磁気レンズ及び物質レンズを用いた中性子集光技術の利用であり,これにより,これまで達成されていないQ<0.0001Å-1の実現を目指している(ここでQは散乱中性子の波数である).さらに,集光技術を強度に活用すれば,数倍の強度増が可能となる予定である.また,偏極中性子の利用も新たに検討されていて,偏極解析を行うことで,実験的に非干渉性部分の除去が可能になる予定である.これらの改造を達成すると,集光型偏極中性子小角散乱装置(SANS-J-II)が実現する.


330869
軟X線磁気円二色性分光で観る超高密度垂直磁気記録媒体
安居院あかね ; 水牧仁一朗* ; 朝日透*
放射光 18(4), p.215-222(2005) ; (JAERI-J 22130)

 垂直磁化膜の磁気異方性エネルギーや保磁力などのマクロスコピックな報告が多くなされている一方で,それらの磁性膜の構成元素ごとの磁気特性に着目したミクロスコピックな測定から得られる物理量と,それらのマクロスコピックな物理量との相関について論じた研究の例は多くない.本稿では垂直磁化膜の磁気的性質を軟X線磁気円二色性分光法を用いて元素選択的・軌道選択的に測定し,ミクロスコピックな観点から人工格子薄膜の下地効果や,アモルファス合金膜で希土類元素が果たす役割などについて研究した例を紹介する.


330870
放射線によるクラスターDNA損傷の生成機構
横谷明徳 ; 鹿園直哉 ; 漆原あゆみ* ; 藤井健太郎 ; 赤松憲 ; 渡邊立子
放射線生物研究 40(2), p.168-184(2005) ; (JAERI-J 22131)

 放射線によるDNAへの作用と活性酸素(ROS)などの内因性ラジカルによる作用が大きく異なる点は,後者がラジカルの熱的拡散によるランダムヒット事象であるのに対し,前者は放射線の飛跡構造(トラック)に大きく依存することである.このような放射線による直接ヒットによるDNA損傷は,放射線のトラックに沿った微小領域に生じた複数の励起やイオン化を起点とする,いわゆるクラスター化して生じたDNA損傷を引き起こすと考えられるが,その化学構造を含めた実体及びこれに対する細胞中での修復作用機序については未だほとんど解明されていない.本稿では,クラスターDNA損傷研究の最近の動向とわれわれのグループが最近行っている実験の試みを紹介し,クラスターDNA損傷の生成機構と生体内での役割について考察する.


330871
鉛直狭隘流路内大規模気泡流に関する数値的可視化
高瀬和之 ; 小瀬裕男* ; 吉田啓之 ; 秋本肇 ; 青木尊之*
可視化情報 25(Suppl.1), p.435-436(2005) ; (JAERI-J 22132)

 著者らは過渡的な界面構造を正確にとらえることができる界面追跡法を利用した二相流解析コードの開発を行っている.本報では革新的水冷却炉の炉心燃料チャンネルを流れる水−蒸気系気泡流を対象にして行った大規模シミュレーションの結果を可視的に検討した結果について述べる.具体的には,燃料チャンネルを模擬した一辺2mmの正方断面を有する矩形ダクト内に500個以上のマイクロバブルが存在する場合の気泡流解析を行い,微細な気泡は下流へと移行しながら合体し,次第に大きな気泡が形成される.その結果,気泡の合体により気液界面が大きく変形し,それに伴って発生する気泡周囲の流体の複雑な速度分布が気泡の合体をより促進させている,ことを明らかにした.


330872
ダイヤモンドの核融合プラズマ計測への応用
草間義紀 ; 石川正男*
NEW DIAMOND 21(3), p.24-25(2005) ; (JAERI-J 22133)

 JT-60などのプラズマ閉じ込め装置においては,プラズマ加熱を担う高エネルギー粒子の挙動に関する研究が進められている.これまでは,電場/磁場を用いたエネルギー分析器を利用して高速中性粒子のエネルギー分布を測定することから,高エネルギー粒子の閉じ込めに関する情報を得てきた.1990年代の後半に,シリコンなどの半導体を用いた放射線計測用検出器の発展として,耐放射線性に優れたダイヤモンドを用いた検出器(ダイヤモンド検出器)が開発され,トカマクプラズマ計測でも利用されるようになった.ダイヤモンドのバンドギャップは5.5eVとシリコン(1eV)に比べて大きいため,常温で使える利点がある一方,エネルギー分解能が劣る.そのため,使用にあたっては,エネルギー分解能を把握しておく必要がある.また,ダイヤモンド検出器は中性子に対して比較的高い感度を有する.そのため,JT-60ではポリエチレンと鉛で覆ってバックグラウンドの低減を図っている.このダイヤモンド検出器を用いて,JT-60の中性子発生環境で詳細な高速中性粒子の測定が可能となった.


330873
モンテカルロ法による中性子深層透過問題におけるウェイト下限値推定法
桜井淳 ; 山本俊弘
日本原子力学会和文論文誌 4(2), p.172-176(2005) ; (JAERI-J 22134)

 MCNPデフォルト法,経験式法,単色中性子減衰曲線法,MCNP wwg法及び随伴線束法のような代表的なウェイト推定法について解説した.単色中性子減衰曲線法は著者が提案した方法である.経験式法と単色中性子減衰曲線法の推定精度を評価するために,同じ計算体系でMCNP wwg法でウェイト下限値を算出し,比較した.前者の方法は30cmの鉄深層透過でも1/10-1/100過小評価するが,後者は1mの鉄を透過後でも1/20程度と推定精度がよいことを確認した.


330874
リアルタイム光電子分光によるTi(0001)表面酸化反応の観察
高桑雄二* ; 小川修一* ; 石塚眞治* ; 吉越章隆 ; 寺岡有殿
触媒 47(5), p.352-357(2005) ; (JAERI-J 22135)

 Ti(0001)表面酸化反応を高輝度放射光とHe-I共鳴線を用いた光電子分光でリアルタイムモニタリングした.Ti2pとO1s内殻準位,価電子帯の光電子スペクトルから求めた酸素吸着量,酸化状態,酸化膜厚,電子状態,仕事関数の時間発展から解明した酸素吸着モデルと極薄酸化膜形成過程について解説した.


330875
Development of a quake-proof information inference system by using data mining technology
Shu, Y.* ; 中島憲宏
Proceedings of 11th International Conference on Human-Computer Interaction (HCI International 2005) (CD-ROM), 9p.(2005) ; (JAERI-J 22136)

 原研では原子力発電設備の経年変化による健全性保全などの検証や予測技術を計算科学技術の観点から,3次元仮想振動台の研究開発を行っている.われわれは,3次元仮想振動台における各種シミュレーションの入出力データの意味を解釈し,その物理的意味を明らかにする情報推論システムを開発している.本論文は人間認識モデルが含めたハイブリッドデータマイニング手法を提案し,それに基づく情報推論システムを開発する.本システムでは,解析者を模擬したマイニングコントロールエージェントが出力データを分析・検証し,データマイニングプロセスを直接的に制御する.また,本マイニングシステムの中心的構成要素となるニューラルネットワーク手法は,再学習機能と説明機能が付加された高機能なものである.われわれは,ここで提案した手法に基づく情報推論システムを試作し,実運用状態のプラント内で発生する現象を解析する際に不可欠な物理情報の意味を解釈する道具としての有効性を確認するため,複雑な耐震データを用いた検証試験を行った.


330876
Fuels and materials researches in the HTTR project
沢和弘
Proceedings of KNS-AESJ Joint Summer School 2005 for Students and Young Researchers, 2, p.161-167(2005) ; (JAERI-J 22137)

 原研がHTTRプロジェクトとして進めてきた,高温ガス炉燃料の製造,照射特性,モデル化,黒鉛を中心とした材料の設計手法,品質保証の考え方,等を述べる.また,第四世代原子炉の候補の一つである超高温ガス炉に向けた,耐熱性の高い燃料,高燃焼度対応燃料,セラミックス複合材製炉内構造物等の研究開発計画を紹介する.


330877
Stress analysis of two-dimensional C/C composite components for HTGR's core restraint mechanism
塙悟史 ; 角田淳弥 ; 柴田大受 ; 石原正博 ; 伊与久達夫 ; 沢和弘
Transactions of 18th International Conference on Structural Mechanics in Reactor Technology (SMiRT-18), p.600-605(2005) ; (JAERI-J 22138)

 炭素繊維強化炭素複合材料(C/C複合材)は高強度かつ優れた耐熱性を有することから高温ガス炉の炉内構造材として有望視されている.C/C複合材の原子力適用に際しては,黒鉛材料と同様に中性子照射による損傷がC/C複合材にも生じることが予想される.そこで,C/C複合材の熱・照射応力を評価するためにC/C複合材の高い異方性を考慮できる有限要素コードVIENUSを開発した.本報告では,炉心拘束機構への2次元C/C複合材の適用を想定し,C/C複合材の厚さや炉心拘束機構取付時のギャップをパラメータとした熱・照射応力解析を実施した.その結果,厚さとギャップの適切な設定によりC/C複合材は炉心拘束機構へ適用可能であること,また照射による寸法収縮に起因してC/C複合材に生じる周方向引張応力は増加するが,炉心拘束機構としてのC/C複合材の適用を考えた場合その増加は十分に小さいことが明らかとなった.


330878
Structural integrity assessments of helium components in the primary cooling system during the safety demonstration test using the HTTR
坂場成昭 ; 橘幸男 ; 中川繁昭 ; 濱本真平
Transactions of 18th International Conference on Structural Mechanics in Reactor Technology (SMiRT-18), p.4499-4511(2005) ; (JAERI-J 22139)

 高温ガス炉固有の安全性を定量的に実証するため,HTTRを用いた安全性実証試験が行われている.安全性実証試験による成果は,将来高温ガス炉及び第四世代原子炉システムの候補の一つであるVHTRの経済性の向上につながることが期待されている.安全性実証試験の一つとして実施されている冷却材流量の部分喪失を模擬した循環機停止試験では,温度及び冷却材であるヘリウム中の不純物組成が過渡状態となる.そこで,循環機停止試験における,温度及びヘリウム中の化学組成の実測値をもとに,1次系の主要な機器である,高温二重管,1次加圧水冷却器等の健全性を評価した.温度変化に基づく応力評価及び化学組成変化による炭素析出の評価の結果,原子炉出力100%からの試験における1次系主要機器の健全性が確認された.


330879
Temperature evaluation of core components of HTGR at depressurization accident considering annealing recovery on thermal conductivity of graphite
角田淳弥 ; 柴田大受 ; 中川繁昭 ; 塙悟史 ; 伊与久達夫 ; 石原正博
Transactions of 18th International Conference on Structural Mechanics in Reactor Technology (SMiRT-18), p.4822-4828(2005) ; (JAERI-J 22140)

 黒鉛材料は,熱・機械的特性が優れているため,HTGR炉心の構成要素として用いられる.原子炉の運転中に,黒鉛構造物の熱伝導率は中性子照射によって低下するが,照射温度以上に加熱されるとアニーリング効果が期待されるため,熱伝導率がある程度回復すると考えられる.本研究では,HTGRの減圧事故時についてアニーリング効果を考慮した温度解析を実施し,アニーリング効果が燃料最高温度に及ぼす影響について検討した.検討の結果,アニーリング効果を考慮した燃料最高温度の解析値は約100℃低くなり,燃料最高温度をより精度よく評価できることが明らかになった.また,HTTRで実施した安全性実証試験について,アニーリング効果を考慮した評価手法を適用し解析を行った.


330880
炉心燃料チャンネル内大規模二相流シミュレーション
高瀬和之 ; 小瀬裕男* ; 吉田啓之 ; 秋本肇 ; 青木尊之*
第24回日本シミュレーション学会大会発表論文集, p.161-164(2005) ; (JAERI-J 22141)

 著者らは二相流計算に特有の実験式や構成式を極力用いないで原子炉内の水や蒸気の挙動を正確に予測する解析手法の開発を行っている.本報では,革新的水冷却炉に用いられる稠密燃料集合体内の複雑な水−蒸気系二相流挙動を,地球シミュレータ等のスパコンを利用した大規模3次元シミュレーションによって予測評価し,狭隘流路を流れる気泡の流動に及ぼす流路壁の影響や燃料棒表面を流れる液膜に及ぼすスペーサの影響などを定量的に明らかにした.今研究によって,大規模シミュレーションを主体とした炉心熱設計手法の開発に対して高い見通しを得ることができた.


330881
稠密格子燃料集合体の除熱技術開発,2; 大規模シミュレーションによる燃料集合体内二相流動解析
高瀬和之 ; 吉田啓之 ; 秋本肇 ; 小瀬裕男*
日本混相流学会年会講演会2005講演論文集, p.231-232(2005) ; (JAERI-J 22142)

 日本原子力研究所では,シミュレーションを主体とした先進的な炉心熱設計手法を確立し,効率的な新型炉開発を図ることを目的として,気液界面構造を詳細にとらえることができる新しい二相流直接解析手法の開発を行っている.地球シミュレータ等のスパコンを利用した大規模シミュレーションによって,原子炉燃料集合体内の水−蒸気二相流の3次元分布を従来手法よりも詳細に予測できることを一連の解析結果から明らかにした.


330882
PLC遠隔制御Javaツール開発
川瀬雅人* ; 高橋博樹 ; 榊泰直 ; 伊藤雄一* ; 杉本誠* ; 渡邊和彦*
Proceedings of 2nd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 30th Linear Accelerator Meeting in Japan, p.633-635(2005) ; (JAERI-J 22143)

 J- PARC制御系では,ネットワークコントローラ(NTC)を有する機器がEPICSを用いて操作される.NTCは,上位計算機と直接接続できるが,EPICSでは,IOCと呼ばれるプロトコル変換計算機を上位計算機とNTC間に別途設置する.NTC制御試験の通信エラー時にはIOCの原因かNTCの原因か直ちに判断しなければならないが,原因追求時に操作画面上でEPICS経由/直接接続を容易に切換えることが可能であれば原因追求が非常に効率的になる.これを実現するツールについて報告する.


330883
Direct injection schemeによる高価数炭素ビームの大電流加速
柏木啓次 ; 岡村昌宏* ; Jameson, R. A.* ; 服部俊幸* ; 林崎規託* ; 榊原和彦* ; 高野淳平* ; 山本和男* ; 岩田佳之* ; 藤本哲也*
Proceedings of 2nd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 30th Linear Accelerator Meeting in Japan, p.182-184(2005) ; (JAERI-J 22144)

 RFQ Linacとレーザーイオン源を組合せた手法"Direct injection scheme"によってレーザーイオン源からの高強度ビームをRFQ電場で捕獲し加速する研究を行っている.この方法によりNd-YAGレーザーイオン源からの高価数炭素イオンの加速実験を100MHz RFQ Linacで行った.


330884
J-PARCリニアックにおける高周波源の現状
千代悦司 ; 堀利彦* ; 小林鉄也 ; 鈴木浩幸* ; 菅沼和明 ; 山崎正義* ; 穴見昌三* ; Fang, Z.* ; 福田茂樹* ; 福井佑治* ; 久保田親* ; 門倉英一* ; 川村真人* ; 道園真一郎* ; 山口誠哉* ; 吉田光宏*
Proceedings of 2nd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 30th Linear Accelerator Meeting in Japan, p.236-238(2005) ; (JAERI-J 22145)

 発表では,J-PARC線形加速器の建設状況,クライストロン電源,立体回路及び周辺機器の設置,立上げ試験状況,ローレベル制御系の試験・評価結果,972MHzクライストロンの開発状況など線形加速器高周波の現状について報告を行う.


330885
原研972MHz RFテストスタンドの現状2005
堀利彦* ; 千代悦司 ; 山崎正義* ; 鈴木浩幸* ; 長谷川和男 ; 吉田光宏* ; 山口誠哉* ; 穴見昌三* ; 福田茂樹*
Proceedings of 2nd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 30th Linear Accelerator Meeting in Japan, p.239-241(2005) ; (JAERI-J 22146)

 原研972MHz RFテストスタンドで昨年度実施した活動状況を報告する.第1点目は972MHzクライストロン初号機で観測された発振原因は,第2空洞とクライストロンビームとの高次モード結合だったことが判明し,この結果を反映した2号機改修管での再試験の結果,ほぼ設計値どおりの良好なデータを得たことである.第2点目は超伝導クライオモジュールの大電力試験についての成果である.長パルス(3ms)幅・大電力RFの要求性能を満足するシステム構成を検討・試作したところ,カソード電圧サグに起因するパルス平坦度の性能不足を,低電力RF機器に任意波形発生器を新たに採用することで性能の向上を図った.今回のシステム構成は非常に簡易であり,位相性能を問題にしないRFエージング試験などにおいては,非常に有用な回路構成であると言える.


330886
J-PARC DTL第3空洞の高周波特性試験
伊藤崇 ; 浅野博之* ; 森下卓俊 ; 加藤隆夫* ; 高崎栄一* ; 田中宏和* ; 吉野一男* ; 内藤富士雄*
Proceedings of 2nd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 30th Linear Accelerator Meeting in Japan, p.242-244(2005) ; (JAERI-J 22147)

 日本原子力研究所と高エネルギー加速器研究機構(KEK)が共同で進めている大強度陽子加速器計画(J-PARC)では,3MeV〜50MeVまでのH-イオンの加速に,ドリフトチューブリニアック(Drift Tube Linac:以下DTL)が用いられる.DTLは全3空洞から成り,それぞれの空洞は3台のユニットタンクを結合することで構成される.DTL第一空洞(DTL1)は,KEKにおいて組立て,設置,及び加速試験までが行われ,各種ビーム特性測定が行われた.また,DTL2及びDTL3は,組立て終了後,各空洞の電場分布調整・周波数調整等,RF特性試験を行った.チューナー及びポストカプラーの調整の結果,共振周波数323.914MHz,各セルの平均電場分布のばらつき±0.8%以下という値を得た.


330887
Present status of the L3BT for J-PARC
大川智宏* ; 青寛幸 ; 池上雅紀*
Proceedings of 2nd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 30th Linear Accelerator Meeting in Japan, p.251-253(2005) ; (JAERI-J 22148)

 L3BTは,J-PARCのリニアックとRCSをつなぐビーム輸送系である.詳細なビームシミュレーションを実施し,電磁石,デバンチャー,スクレーパ等の各構成機器の仕様を確定し,現在,製作中でまもなく設置が開始される.今回,L3BTのビームシミュレーション結果及び各構成機器の製作状況について報告する.


330888
J-PARCリニアックにおけるアライメント
森下卓俊 ; 青寛幸 ; 伊藤崇 ; 上野彰 ; 長谷川和男 ; 池上雅紀* ; 久保田親* ; 高崎栄一* ; 田中宏和* ; 内藤富士雄* ; 吉野一男*
Proceedings of 2nd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 30th Linear Accelerator Meeting in Japan, p.266-268(2005) ; (JAERI-J 22149)

 J-PARC線形加速器において,加速器要素機器の正確なアライメントは高品質のビーム加速にとって不可欠である.インストール時の基準となる墨出しは,機器の搬入に先立ってすべてのフロアーで完了している.本発表では墨出しの結果とインストール時におけるアライメントターゲットの設置精度の評価とアライメント手順,及び建物の長期変動をモニターするセンサーとそのメンテナンス装置の開発状況について報告する.


330889
J-PARCリニアック低電力高周波アナログフィードバック制御系の特性評価
小林鉄也 ; 千代悦司 ; 鈴木浩幸* ; 穴見昌三* ; 山口誠哉* ; 道園真一郎* ; 川村真人* ; 福井佑治* ; Fang, Z.*
Proceedings of 2nd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 30th Linear Accelerator Meeting in Japan, p.320-322(2005) ; (JAERI-J 22150)

 J-PARCリニアックにおける324MHz低電力高周波制御の実機用システムがほぼ完成し,その性能評価を行った.本システムでは,クライストロン出力の安定性(高圧電源変動に依存)及び線形性を補償するためにアナログ回路のフィードバック制御システムを用いる.評価の結果,期待される性能(入出力特性の線形性,及び振幅・位相安定性それぞれ±0.23%, ±0.22°)が得られた.また,その制御系の応答関数(振幅・位相の両方)を測定により得ることができたので,それによるトランジェントな解析の可能性について考察する.


330890
J-PARC ACS空洞開発の現状
青寛幸 ; 上野彰 ; 森下卓俊 ; 長谷川和男 ; 山崎良成 ; 池上雅紀*
Proceedings of 2nd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 30th Linear Accelerator Meeting in Japan, p.332-334(2005) ; (JAERI-J 22151)

 ACSモジュールの初号機は5セルのACSタンクが2台と5セルのブリッジ空洞で構成され,バンチャー空洞として用いる予定である.3台のRFチューナーがブリッジ空洞に取り付けられており,RFの微調整を行う.運転周波数972MHzに合わせるため,ロウ付け前に各ACSタンクをこの微調整範囲に収まるように調整した.調整手順はRF解析やコールドモデル測定から検討を行ってきた.本論文ではRF調整の結果と製作状況,及び関連する開発項目等について報告する.


330891
加速器コンポーネントデータベースのユーザーインターフェイス開発
渡邊和彦* ; 吉川博 ; 榊泰直 ; 高橋博樹 ; 川瀬雅人* ; 杉本誠*
Proceedings of 2nd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 30th Linear Accelerator Meeting in Japan, p.451-453(2005) ; (JAERI-J 22152)

 J-PARCでは機器の物理情報,及び制御情報をデータベースにより管理することが決定し,その構築が行われている.このデータベースに各機器担当者が容易にアクセスできるよう,ユーザーインターフェイスは,ある程度データ収集時に使用した表フォーマットを踏襲したものとし,柔軟な検索・ソート機能を付加すれば活用しやすくなる.これは,上記の目的で開発したユーザーインターフェイスについて報告するものである.


330892
J-PARCリニアックにおけるデータベースシステムとコミッショニングへの応用
佐甲博之 ; 榊泰直 ; 高橋博樹 ; 吉川博 ; 伊藤雄一* ; 加藤裕子* ; 上窪田紀彦* ; 杉本誠* ; 渡邊和彦* ; 池田浩* ; 寺島靖志*
Proceedings of 2nd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 30th Linear Accelerator Meeting in Japan, p.462-464(2005) ; (JAERI-J 22153)

 J-PARCリニアックの機器・制御情報を記録する機器データベースとコミッショニング・運転時の運転パラメータの履歴を記録する運転ログデータベースの開発状況について報告する.機器データベースを用いたDTQ電源の制御試験について述べ,上位アプリケーション,シミュレーション,データベース相互のデータフローの設計と,KEKでのJ-PARCテストベンチ(MEBT1)でのプロトタイプの試験結果について報告する.


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3GeVRCS制御システムの概要,2
高橋博樹 ; 榊泰直 ; 佐甲博之 ; 吉川博 ; 伊藤雄一* ; 加藤裕子* ; 川瀬雅人* ; 杉本誠* ; 渡邊和彦*
Proceedings of 2nd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 30th Linear Accelerator Meeting in Japan, p.531-533(2005) ; (JAERI-J 22154)

 J-PARC 3GeV RCSは,高い周波数(25Hz)で連続的にMLFとMRにビームを入射する.そのため,RCS制御システムには,MLFとMRの入射ビームを区別した監視・操作を行うという,他に類をみない機能が必須である.本発表では,昨年の検討状況報告に引き続き,開発を進めている25Hz同期データ収集を可能としたDAQシステムとRCSの加速器構成機器データ管理システムを中心に,現状報告を行う.


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原研AVFサイクロトロンにおけるシングルターン取り出し技術の開発
倉島俊 ; 宮脇信正 ; 奥村進 ; 石堀郁夫 ; 吉田健一 ; 柏木啓次 ; 福田光宏 ; 奈良孝幸 ; 上松敬 ; 中村義輝
Proceedings of 2nd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 30th Linear Accelerator Meeting in Japan, p.717-719(2005) ; (JAERI-J 22155)

 原研サイクロトロンでは,バイスタンダー効果やアポトーシスなどイオンビームの生物影響や宇宙用半導体のシングルイベント効果の研究をより微細な領域で行うために,集束方式のマイクロビーム形成技術によりビームスポット径及び照準位置精度1ミクロンを目指して研究開発を行っている.サイクロトロンによって加速されたビームをスポット径1ミクロンに集束させるためには,四重極レンズでの色収差の影響を考慮すると,ビームのエネルギー幅を0.02%以下にする必要がある.しかし,サイクロトロンから引き出されるビームのエネルギー幅は,一般的に0.1%程度である.そこで,エネルギー幅を最小化するために,加速電圧波形を最適化してビームのエネルギー利得を均一化するフラットトップ加速技術の開発を行っている.フラットトップ加速を実現するためには,一つのビームバンチを一度に取り出すシングルターン取り出しが必要条件である.シングルターン取り出しを簡便に確認するために高分解能デフレクタプローブを開発し,ビーム開発を行った結果,従来に比べて短時間でシングルターン取り出しが可能になった.


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トコトンやさしい核融合エネルギーの本
井上信幸* ; 芳野隆治
トコトンやさしい核融合エネルギーの本, p.1-159(2005) ; (JAERI-J 22156)

 本書は,核融合エネルギーについて平易な言葉で概説するものである.核融合が究極のエネルギー源であること,核融合炉の炉心は高温プラズマであること,トカマク装置が核融合炉実現への道を切り拓いたこと,さらに,ITER計画の経緯と日本の大きな貢献,核融合炉の持つさまざまな特徴について説明している.

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