学会誌等掲載論文
※下記の研究開発成果は資料名順に並んでいます。

2005年11月


330916
Crystallization of a 2:2 complex of Granulocyte-Colony Stimulating Factor (GCSF) with the ligand-binding region of the GCSF receptor
本庄 栄二郎; 玉田 太郎; 前田 宜丈*; 小柴 琢己*; 松倉 康子*; 岡本 智之*; 石橋 松二郎*; 徳永 正雄*; 黒木 良太
Acta Crystallographica Section F 61(8), p.788-790(2005) ; (JAEA-J 00001)

 顆粒球刺激因子(GCSF)受容体は顆粒球前駆体の分化や増殖を調節する刺激を細胞内へ伝える。その受容体のリガンド結合部位とGCSFの2:2複合体の結晶化を行った。結晶は1.0Mギ酸ナトリウムを含む0.1M酢酸緩衝液(pH4.6)の条件で結晶化した。空間群はP41212(もしくはP43212)で、セル長はa=b=110.1Å, c=331.8Åであった。しかしながら5Å以上の回折データが収集できなかったことから、受容体を陰イオン交換クロマトグラフィーで精製し、再度結晶化を試みた。その結果、3Å以上の回折データが収集可能な新たな晶形の結晶が得られた。その結晶の空間群はP3121(or its enantiomorph P3221)で、セル長はa=b=134.8, c=105.7Åであった。


330917
Postbounce evolution of core-collapse supernovae; Long-term effects of the equation of state
住吉 光介*; 山田 章一*; 鈴木 英之*; Shen, H.*; 千葉 敏; 土岐 博*
Astrophysical Journal 629(2, Part1), p.922-932(2005) ; (JAEA-J 00002)

 ニュートリノ輸送を考慮した球対称の一般相対論流体力学手法により、太陽質量の15倍の星が起こす超新星爆発における、重力崩壊からコアバウンスの1秒後までの長時間の時間発展を計算した。特に核・ハドロン物質の状態方程式(EOS)の効果を見るために2種類のEOSを用いた。ここで用いたどちらのEOSでも、ショック波は約100ミリ秒後に外向き伝搬をやめ、爆発に至らないことがわかった。しかし状態方程式の違いは、生成される原始中性子星の中心密度に2倍程度、ピーク温度で10MeV程度の差異を与えることがわかった。また、放出されるニュートリノのスペクトルにも有意な差があり、地上での実験でそれを検地できる可能性があることもわかった。


330918
Decomposition behavior of PCDD/F isomers in incinerator gases under electron-beam irradiation
廣田 耕一; 小嶋 拓治
Bulletin of the Chemical Society of Japan 78(9), p.1685-1690(2005) ; (JAEA-J 00003)

 ごみ燃焼排ガス中ダイオキシンとフランの電子ビーム分解挙動について各異性体別に調べた。その結果、ダイオキシンではすべての異性体について高い分解率が得られ、それは照射によって生成するOHラジカルによる酸化反応であることがわかった。これに対して、フランは熱電子付着による脱塩素反応により、1, 2, 8, 9-, 2, 3, 7, 8-, 3, 4, 6, 7-TeCDFsなど化学構造に対称性のある異性体が生成していることがわかった。


330919
A Severe artifact in simulation of liquid water using a long cut-off length; Appearance of a strange layer structure
米谷 佳晃
Chemical Physics Letters 406(1-3), p.49-53(2005) ; (JAEA-J 00004)

 18Åの長いカットオフ距離を用いて水の分子動力学シミュレーションを行ったところ、水の挙動に著しいアーティファクトが現れた。この結果から、カットオフ距離の増加によりシミュレーション結果が改善されるとは限らないことが判明した。さらに、これまでに長いカットオフ距離を用いて行われてきた水を含む生体分子系のシミュレーションにも予想外に大きいアーティファクトが存在していた可能性が示唆されている。


330920
External feedback effect on magnetic islands in tokamaks
Konovalov, S. V.; Mikhailovskii, A. B.*; Kovalishen, E. A.*; Kamenets, F. F.*; 小関 隆久; Shirokov, M. S.*; 滝塚 知典; Tsypin, V. S.*
Doklady Physics 49(7), p.405-408(2004) ; (JAEA-J 00005)

 真空容器の外側に設置されたフィードバックシステムによる新古典テアリングモードの制御効果を解析的に明らかにした。磁気島列に対する外部制御パラメータは、ステップ状の平衡電流分布に対して求められた。適切なパラメータの設定により、磁気島幅と回転の応答を説明できた。このフィードバックシステムは磁気島の回転制御をもたらし、特にNTMの分極電流効果の安定化に重要であることを示した。


330921
Mixing behavior of molten PbCl2 with alkali chlorides
岡本 芳浩; 矢板 毅; 湊 和生
電気化学および工業物理化学 73(8), p.745-747(2005) ; (JAEA-J 00006)

 溶融PbCl2とアルカリ塩化物との混合による構造変化について、PbのL3吸収端XAFS測定によって調べた。混合により、最近接Pb-Cl間距離は長くなり、配位数も6へと増加した。一方デバイワーラー因子と3次のキュムラントは小さくなる傾向が得られた。これらのことから、単体では存在しない(PbCl6)4-配位構造が、アルカリ塩化物との混合により形成されて、安定化していることが結論付けられた。


330922
Electron holography; A Maximum entropy reconstruction scheme
松下 智裕*; 吉越 章隆; 安居院 あかね
Europhysics Letters 71(4), p.597-603(2005) ; (JAEA-J 00007)

 一般的に光電子ホログラフィー法はホログラムから3次元的な原子配列をフーリエ変換で再構成しているが、現実的には原子で散乱された電子波は理想的なs波でないため、単純なフーリエ変換で3次元実空間に戻すのは難しい。われわれはフーリエ変換を用いずに単一エネルギーのホログラムから3次元実空間を再構成するのにマキシマムエントロピー法を利用する方法を提案し、Si(100)シングルエネルギー光電子ホログラムに適応し3次元電子像を精度よく再構成した。


330923
Pressure-temperature-time-transition diagram in a strong metallic supercooled liquid
Wang, W. H.*; 内海 渉; Wang, X. L.*
Europhysics Letters 71(4), p.611-617(2005) ; (JAEA-J 00008)

 Zr46.75Ti8.25Cu7.5Ni10Be27.5(vit4)バルク金属ガラスの過冷却領域における結晶化のカイネティクスと核発生メカニズムを放射光による高温高圧その場X線回折実験により調べた。圧力−時間−温度変換ダイヤグラム(PTTTプロット)にまとめられた結果を報告する。


330924
Generation and evaluation of a 1020 W/cm2 intensity by focusing wavefront corrected 100 TW, 10 Hz laser pulses
赤羽 温; Ma, J.; 福田 祐仁*; 青山 誠; 桐山 博光; 井上 典洋*; 辻 公一*; 中井 善基*; 山本 洋一*; Sheldakova, J. V.*; Kudryashov, A. V.*; 山川 考一
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 44(8), p.6087-6089(2005) ; (JAEA-J 00009)

 フィードバック制御波面補償光学系により日本原子力研究所100TWチタンサファイアレーザーシステムにおいてレーザー集光強度の向上が達成された。レーザーパルスの光学パラメータ計測結果及び観測された希ガス原子のトンネルイオン化レートのレーザーエネルギースケーリング性により1020W/cm2を越える超相対論的強度が10Hzの繰り返し動作で発生することを実験的に確認した。


330925
Concept and results of new operation scheme with improved control system for radio frequency heating in JT-60U
森山 伸一; 篠崎 信一
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 44(8), p.6224-6229(2005) ; (JAEA-J 00010)

 実時間波形整形の手法を用い、分散処理の概念に基づいて、JT-60U高周波加熱装置の制御設備の改造を行った。改造後のシステムが、従来の集中処理システムに比べて高い性能と信頼性を発揮しているのは当然であるが、実時間波形整形機能により装置運転の役割分担を見直し、高効率で円滑な運転を実現したことは注目すべきことである。実験装置の性格上、実験運転と装置調整は平行して進められ、調整の完了は事実上ありえない。特にプラズマ対向機器でありかつ高い高周波電界の発生するアンテナのコンディショニングには、磁場やプラズマの存在する条件で、きめ細かく入射パラメータを設定することが不可欠である。改造後の典型的な役割分担では、JT-60U全体の実験パラメータを把握する実験オペレータが矩形の入射パワー波形をプログラムし、一方で高周波加熱装置、特にアンテナのその時点での状態を熟知したRFオペレータが、パワー上昇率限界など機器に固有のパラメータを入力する。これらの情報を実時間で合成した入射命令を機器側に送出するようにした。この改造では制御機器間の信号伝達を可能な限り単純化し、汎用機器を多用した。本改造で構築した単純で柔軟性のある分散処理システムは、核融合研究用高周波加熱装置の制御系のあり方を提案するものである。


330926
Element-selective observation of electronic structure transition between semiconducting and metallic states in boron-doped diamond using soft X-ray emission and absorption spectroscopy
飯原 順次*; 村松 康司; 武部 敏彦*; 澤村 明賢*; 難波 暁彦*; 今井 貴浩*; Denlinger, J. D.*; Perera, R. C. C.*
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 44(9A), p.6612-6617(2005) ; (JAEA-J 00011)

 軟X線分光法を用いてホウ素ドープダイヤモンドの半導体−金属間電子構造の変化を観測した。ホウ素濃度が数十ppmから数万ppmに増加するにつれて、ホウ素と炭素原子のバンド構造(価電子帯と伝導帯)が半導体構造から金属構造に変化してゆく様子が明瞭にとらえられた。本分光法によるバンド構造変化の観察は、ダイヤモンド半導体のバンドギャップ制御に重要な情報をもたらす。


330927
Normal-mode analysis of circular DNA at the base-pair level, 1; Comparison of computed motions with the predicted behavior of an ideal elastic rod
松本 淳; Tobias, I.*; Olson, W. K.*
Journal of Chemical Theory and Computation 1(1), p.117-129(2005) ; (JAEA-J 00012)

 著者らは、すでに数百塩基対からなる線形のDNAの低振動モードを研究する手法を開発している。ここでは、拘束条件を加え、さらにエネルギー極小化のステップを加えることにより、空間的に制約の加わった二重らせんDNAの立体構造の動的構造の解析を行えるようにした。最初の応用として、平衡状態でまっすぐなDNAの両端をつないで環状にして、その環状DNAの動的構造の解析を行った。


330928
Normal-mode analysis of circular DNA at the base-pair level, 2; Large-scale configurational transformation of a naturally curved molecule
松本 淳; Tobias, I.*; Olson, W. K.*
Journal of Chemical Theory and Computation 1(1), p.130-142(2005) ; (JAEA-J 00013)

 著者らは、平衡状態で曲がっているDNAを用いて環状構造を作り、その動的構造の解析を行った。このような環状DNAは、まっすぐなDNAから作られた環状DNAよりも構造変化がより容易に起こされることが示された。また環状DNAでは、ねじれのエネルギーが蓄積されると、大規模な構造変化を起こし、8の字型の構造になる。基準振動解析とエネルギー極小化を用いることにより、環状から8の字型への構造変化の行程を明らかにすることができた。


330929
Molecular to ionic transition of BiCl3 in LiCl-KCl eutectic melt
岡本 芳浩; 矢板 毅; 湊 和生
Journal of Molecular Structure 749(1-3), p.70-73(2005) ; (JAEA-J 00014)

 溶融BiCl3及びそのLiCl-KCl共晶塩融体中における局所構造をX線吸収スペクトル構造解析(XAFS)によって調べた。BiCl3単体ではBi-Cl間距離が共有結合半径の和にほぼ等しく、配位数も3であったことから、分子性液体であることがわかった。一方、LiCl-KCl中に25%溶けた状態では、Bi-Cl間距離が長くなり、イオン半径の和に近くなった。配位数も4へと増加した。これらの結果は、単体では分子性液体であったBiCl3が、イオン性液体へと変化したことを示唆する。


330930
Estimation of pitting damage induced by cavitation impacts
祖山 均*; 二川 正敏; 本間 加奈*
Journal of Nuclear Materials 343(1-3), p.116-122(2005) ; (JAEA-J 00015)

 キャビテーション衝撃により水銀ターゲット容器が受けるピッティング損傷の評価手法を提案した。ピッティング損傷の潜伏期間を評価することは、容器壁厚さが薄いことから重要である。本報では、そのための二つの評価法を提案している。一つは、壊食試験から得た質量減少の対数表示結果から見積もる方法、他方は、潜伏期の塑性変形領域の観察結果から見積もる方法である。


330931
Tensile properties of austenitic stainless steels irradiated at SINQ target 3
斎藤 滋; 菊地 賢司; 宇佐美 浩二; 石川 明義; 西野 泰治; 川合 將義*; Dai, Y.*
Journal of Nuclear Materials 343(1-3), p.253-261(2005) ; (JAEA-J 00016)

 核破砕中性子源やADSのターゲット及びビーム入射窓は、高エネルギー陽子と核破砕中性子の双方の照射を受ける。しかし、照射データは極めて乏しく、特に、核変換反応によって生じる大量のガス原子の影響は十分にわかっていない。そこで、スイスのポール・シェラー研究所(PSI)で、各種材料について590MeVプロトンの照射試験を行い、原研に輸送して照射後試験を行った。本発表では、3種類のオーステナイト鋼(SA-JPCA, SA-316F及びCW-316F)の引張り試験の結果について報告する。その結果、照射後の0.2%耐力は未照射材の3倍以上に増加し、破断歪みも未照射材の50%以上から20%前後へと低下したが、試験後の破面はいずれも延性破面であり、照射後も延性を維持していることがわかった。


330932
Comparison of the corrosion behavior of austenitic and ferritic/martensitic steels exposed to static liquid Pb-Bi at 450 and 550℃
倉田 有司; 二川 正敏; 斎藤 滋
Journal of Nuclear Materials 343(1-3), p.333-340(2005) ; (JAEA-J 00017)

 加速器駆動核変換システムで使用される液体鉛ビスマス中での腐食挙動に及ぼす温度と合金元素の影響を明らかにするため、種々の鋼材を用いて、3000hの静的腐食試験を実施した。腐食試験は450℃及び550℃の飽和酸素濃度の液体鉛ビスマス中で行った。この条件では、両方の温度で鋼材表面に酸化膜が形成した。450℃では鋼材中のCr量の増加とともに、腐食深さは減少した。450℃では、オーステナイト系ステンレス鋼でNiやCrの明らかな溶解は認められなかった。550℃では、JPCAや316ssでNi及びCrの溶解が起こり、厚いフェライト層が形成した。その結果、これらのオーステナイト系ステンレス鋼の腐食深さは大きくなった。Si添加鋼は形成した緻密な保護酸化膜がNiやCrの溶解を防ぎ、550℃でも優れた耐食性を示した。


330933
Pitting damage by pressure waves in a mercury target
二川 正敏; 直江 崇; Tsai, C.-C.*; 粉川 広行; 石倉 修一*; 池田 裕二郎; 祖山 均*; 伊達 秀文*
Journal of Nuclear Materials 343(1-3), p.70-80(2005) ; (JAEA-J 00018)

 核破砕中性子源水銀ターゲットには、大強度のパルス陽子ビームが入射される。このとき、水銀内には熱衝撃に起因する膨張波が生じ、その伝播過程でキャビテーションによる損傷がターゲット容器内壁に形成される。この損傷挙動を電磁力衝撃圧負荷試験装置により観察し、繰り返し周波数及び入力パワー依存性について調べた。さらにバブル崩壊により誘発される音響振動に着目した損傷ポテンシャルを提案するとともに、バブルダイナッミックスに基づく数値解析を行った。その結果、以下の結論を得た。(1)侵食挙動は微小領域塑性変形支配の潜伏期と質量減少を伴う定常期に大別できる。(2)定常期の質量減少を予測しうる実験式を導出した。(3)潜伏期間は、入力パワーの増加とともに縮小し、繰り返し周波数の増加により拡大する。


330934
Improved cavitation resistance of structural materials in pulsed liquid metal targets by surface hardening
Koppitz, T.*; Jung, P.*; Muller, G.*; Weisenburger, A.*; 二川 正敏; 池田 裕二郎
Journal of Nuclear Materials 343(1-3), p.92-100(2005) ; (JAEA-J 00019)

 圧力波による構造材料のキャビテーション損傷は、高出力パルス中性子源における寿命を決定する因子の一つである。損傷を低減する方法として2つの方法を提案している。一つは、ガスバブル注入法であり、他方は材料の表面硬化法である。8〜13%Crのマルテンサイト鋼の表面硬化が電子線及びレーザー加熱処理、さらにプラズマ窒化により行われ、処理条件の影響について調べられた。熱処理では600Hv硬度、一方窒化では1200Hvが得られた。12%Cr鋼がパルス陽子入射あるいは機械的パルス入射条件下における水銀環境下で試験された。表面損傷が光学顕微鏡,レーザー顕微鏡,電子顕微鏡で観察され、硬化処理による損傷低減化が確認できた。


330935
Fabrication and electrochemical behavior of nitride fuel for future applications
荒井 康夫; 湊 和生
Journal of Nuclear Materials 344(1-3), p.180-185(2005) ; (JAEA-J 00020)

 原研で進めているマイナーアクチノイド(MA)核変換用窒化物燃料の製造及び使用済窒化物燃料の乾式処理技術開発のための電気化学測定に関する研究成果を報告する。MA窒化物燃料の製造については、高純度窒化物合成のための炭素熱還元,MAを含む窒化物固溶体形成及び窒化物の焼結挙動について報告する。乾式処理技術開発のための電気化学測定については、塩化物溶融塩中での陽極溶解挙動,液体陰極回収挙動及び再窒化挙動について報告する。


330936
Phase equilibria and thermal expansion of CaTiO3 doped with neptunium
佐藤 剛*; 山下 利之; 松井 恒雄*
Journal of Nuclear Materials 344(1-3), p.67-72(2005) ; (JAEA-J 00021)

 CaTiO3及びCa(Ti,Al)O3とNpO2の相関係をX線回折法により調べた。用いた試料はAr-8%2中1773Kで調製したものである。単相の固溶体がCaTiO3及びCa(Ti,Al)O3についてそれぞれ、0-7.5モル%Np及び1-10モル%Npで得られた。TiをAlで置換することにより、Npの固溶量は増加する。Npの固溶挙動をUやPuと比較し、添加物の酸化状態やイオン半径の観点から議論した。Np添加CaTiO3の熱膨張を室温から1273Kの範囲で、高温X線回折法により測定した。試料の体積膨張係数は組成によらずほぼ一定であり、Npの添加によるCaTiO3の安定化は見られなかった。これは、顕著な安定化が観測されているPuを添加したCaTiO3とは、大きく異なっている。


330937
Behavior of pre-hydrided Zircaloy-4 cladding under simulated LOCA conditions
永瀬 文久; 更田 豊志
Journal of Nuclear Science and Technology 42(2), p.209-218(2005) ; (JAEA-J 00022)

 冷却材喪失事故(LOCA)時の高燃焼度燃料棒挙動に関し、未照射ジルカロイ-4被覆管を用い、LOCA模擬試験を行った。水素濃度約100〜1400ppmを有する被覆管を、水蒸気中にて1220〜1500Kの温度範囲で等温酸化した後、冠水により急冷した。急冷時に生じる燃料棒の収縮を拘束したが、生じる荷重の最大値を4段階に調節した。主として肉厚に占める酸化割合に依存して、被覆管は急冷時に周方向亀裂を伴って破断した。酸化割合に関する破断/非破断のしきい値は、初期水素濃度と拘束荷重の増大とともに低下した。結局、拘束荷重が535N以下であれば、水素濃度にかかわらず、破断しきい値は酸化割合20%を超え、日本におけるECCS性能評価指針の基準値を上回ることが明らかになった。


330938
Application of pressure swing adsorption to water detritiation process
岩井 保則; 山西 敏彦; 西 正孝; 鈴木 優*; 栗田 晃一*; 島崎 正則*
Journal of Nuclear Science and Technology 42(6), p.566-572(2005) ; (JAEA-J 00023)

 核融合発電プラントに向けた新たな水処理プロセスとして気相吸着法に着目した。気相吸着法は同位体分離機能と迅速な脱水機能を有する新たなトリチウム処理プロセスとして、また大量のトリチウム水処理に対する第一段階のシステムとしての適用が期待される。NaXゼオライト吸着剤を用いた吸・脱着実験を実施した。気相吸着法における水分吸着剤候補であるNaXゼオライトのトリチウム水分離機能について、明確にH2OとHTOで破過時間が異なることが観察された。よって、その差を利用してトリチウム濃縮水とトリチウム減損水に分離することが可能であることを実証した。迅速な脱水は減圧とパージガスの流通により達成される。減圧により脱着した水蒸気はその一部分がパージガスにより系外に移送されるが、残りは吸着材に再吸着する。再吸着した水分は拡散により徐々に脱着する。高脱着率を得るには吸着時と脱着時の圧力差を大きくすることが有効であることを確認した。また十分な水蒸気保持容量を持つパージガスを流すことが高い脱着率の確保に必須であることを明らかとした。


330939
Experimental investigation of lead-bismuth evaporation behavior
大野 修司*; 宮原 信哉*; 倉田 有司
Journal of Nuclear Science and Technology 42(7), p.593-599(2005) ; (JAEA-J 00024)

 鉛ビスマス共晶合金(LBE)の蒸発について基礎的な知識を得るため、LBEの平衡蒸発実験を行った。実験には、等温蒸発容器中に飽和させた蒸気を不活性のキャリアーガスによって移行させ、容器の外で捕集するトランスパイレーション法を用いた。実験温度範囲は450℃から750℃であった。LBEの飽和蒸気圧,LBEで飽和したガス中のPb, Bi, Bi2の蒸気濃度,LBE中の鉛の活量係数及びLBE蒸発速度に関する実験データを取得した。550℃から750℃の温度範囲で、LBE蒸気圧の評価式を得た。


330940
Development of dose monitoring system applicable to various radiations with wide energy ranges
佐藤 達彦; 佐藤 大樹; 遠藤 章; 山口 恭弘
Journal of Nuclear Science and Technology 42(9), p.768-778(2005) ; (JAEA-J 00025)

 高エネルギー加速器施設の作業環境,環境中のバッグランドに存在する中性子,光子,ミューオンによる線量を高感度に測定できる線量測定システムDARWIN(Dose monitoring system Applicable to various Radiations with WIde energy raNges)を開発した。この測定システムは、検出器に液体有機シンチレータをLi-6含有ZnS(Ag)シンチレータで取り囲んだホスウィッチ型検出器を用い、各粒子に起因する信号を波形弁別により識別し、これに線量変換係数を乗じることでリアルタイムで線量を評価することができる。実験及び計算により、DARWINは、従来のモニタに比べ感度,適用粒子の多様性及び適用エネルギー範囲の点で優れた特性を有することを明らかにした。


330941
Application of X-ray nonlinear processes to the measurement of 10 fs to sub-ps of X-ray pulses
森林 健悟; 香川 貴司*; Kim, D. E.*
Journal of Physics B; Atomic, Molecular and Optical Physics 38(13), p.2187-2194(2005) ; (JAEA-J 00026)

 2つの短パルスX線をΔtの時間間隔だけあけてSi原子に照射し内殻励起,多重内殻励起からのX線数の計算を行った。多重内殻励起の生成は、多X線吸収、すなわち、X線非線形過程で生じることを用いて2つのX線パルスの重なりによるX線数の違いからパルス幅の測定ができる可能性を探った。200fsのX線パルスの場合、理論上、この方法で正確にパルス幅の測定ができるが、20fsパルスでは、100%以上の誤差が生じた。これは、内殻励起状態の寿命(25fs程度)がX線パルスと同程度であったためと予想される。すなわち、1つめのパルスで生成した(多重)内殻励起状態が2つのパルスが到着しても残っていれば、それが内殻電離を起こし、多重内殻励起状態からのX線数を増やすためであると考えられる。そこで、自動イオン化の時定数を1fs, 10fsとした場合のパルス測定の精度を計算した。20, 50, 80fsのX線パルス幅に対して、自動イオン化の時定数が1fsの場合は、この方法で正確な値を導くことができたが、自動イオン化の時定数が10fsになると算出した値は、それぞれ、28, 55, 80fsとなった。すなわち、この方法では、X線パルス幅よりも短い時定数の自動イオン化状態を持つ標的を取り扱う必要があることが明らかとなった。


330942
Small saturation moment due to the crystalline electric field effect for Th site symmetry in the ferromagnet UFe4P12
松田 達磨; Galatanu, A.; 芳賀 芳範; 池田 修悟; 山本 悦嗣; 辺土 正人*; 上床 美也*; 竹内 徹也*; 杉山 清寛*; 金道 浩一*; 摂待 力生*; 大貫 惇睦*
Journal of the Physical Society of Japan 73(9), p.2533-2538(2004) ; (JAEA-J 00027)

 立方晶強磁性体UFe4P12の単結晶育成に成功し、その単結晶を用いて電気抵抗,比熱,磁化率及び高磁場中磁化測定を行った。強磁性転移温度3.1K,飽和磁化1.3μB/Uまた磁化の温度依存性について、5f2をもとにした結晶場モデルによって説明を試みた。


330943
Multipole fluctuations in filled skutterudites
堀田 貴嗣
Journal of the Physical Society of Japan 74(9), p.2425-2429(2005) ; (JAEA-J 00028)

 充填スクッテルダイト化合物の特異な多極子物性を明らかにするために、j-j結合描像を用いて構築された多軌道アンダーソン模型に基づいて、局所f電子数nが1から5の場合に多極子感受率を計算した。n=1の場合、磁気揺らぎが低温電子物性を支配するが、n=2と4の場合は、電子状態は磁気及び四極子揺らぎによって支配される。n=3及び5に対しては、結晶場ポテンシャルに依存して、八極子揺らぎが顕著になる場合がある。これらの結果と、充填スクッテルダイトに対する実験結果との関連を議論する。


330944
R-dependence of spin exchange interactions in RMnO3 (R = Rare-Earth Ions)
梶本 亮一; 望月 秀記*; 吉澤 英樹*; 新谷 寛*; 木村 剛*; 十倉 好紀*
Journal of the Physical Society of Japan 74(9), p.2430-2433(2005) ; (JAEA-J 00029)

 A型反強磁性秩序を示すPrMnO3と長距離磁気秩序を示すTbMnO3のマグノン励起を中性子非弾性散乱実験によって調べた。LaMnO3の結果(K. Hirota et al.)も合わせて議論することでRイオンの違いによるスピン交換相互作用の系統的な変化を明らかにした。Rイオンの半径が小さくなるにつれてab面内の最近接サイト間の交換相互作用は急激に減少し、TbMnO3では有限の次近接サイト間交換相互作用が存在する。対照的にc軸方向の交換相互作用のR依存性は非常に小さい。これらの結果は、RMnO3における磁気構造の変化は最近接サイト間相互作用と次近接サイト間相互作用の競合によって引き起こされるという説(T. Kimura et al.)と整合している。


330945
Heat treatment effects on microstructures and DBTT of F82H steel doped with boron and nitrogen
大久保 成彰; 若井 栄一; 松川 真吾*; 古谷 一幸; 谷川 博康; 實川 資朗
Materials Transactions 46(2), p.193-195(2005) ; (JAEA-J 00030)

 核融合炉構造材料の第一候補材であるF82H鋼において核変換生成物であるHe原子の影響を評価することは重要である。HFIRやJMTR炉でこの影響を評価するための模擬試験材としてF82H鋼にB単独及びB+Nを同時添加した試料を作製した。無添加材と比較して、B単独添加材の靭性は低下したが、B+N同時添加材では低下しなかった。今回は、BとNの添加による靭性の変化と微細組織,結晶(旧オーステナイト)粒径及びB等の元素分布との相関関係を調べた。結晶粒径及び微細組織を評価するために組織観察及びTEM観察を行った。また、B等の元素分布を調べるためにTOF-SIMSによる面分析を行った。光学顕微鏡観察の結果、結晶粒径はB単独添加により増大したが、B+N同時添加では無添加材と同等であった。TEM観察の結果、B添加材中の炭化物のサイズは、他の試料より大きかった。SIMS測定の結果、B添加材では粒界への顕著な局在化が生じ、B+N同時添加によりこの局在化は抑えられる傾向を示した。以上の結果から、B添加材のDBTT上昇の原因は、Bの局在化及び炭化物の粗大化によるものと考えられる。B+N同時添加によりBは均一に分散したことから、中性子場の模擬試験材として使用可能である。


330946
Characterization of rust layer formed on Fe, Fe-Ni and Fe-Cr alloys exposed to Cl-rich environment by Cl and Fe K-edge XANES measurements
小西 啓之; 山下 正人*; 内田 仁*; 水木 純一郎
Materials Transactions 46(2), p.329-336(2005) ; (JAEA-J 00031)

 少量のクロムを含む従来型耐候性鋼の耐食性は、塩分飛来環境下では著しく減少する。そのため合金元素としてニッケルを添加した耐候性鋼が、塩分飛来環境下での使用に耐える新型鋼材として注目される。このような耐候性鋼の保護性さび層の構造を知る手がかりとして、宮古島で大気暴露した鉄,鉄ニッケル合金,鉄クロム合金の各試料片の表面に生成したさび層の分析を放射光を用いたCl K-XANES, Fe K-XANESによって行った。Fe K-XANESスペクトルをパターンフィッティング解析することで、さび層の主要構成成分であるゲーサイト,アカガネイト,レピドクロサイト,マグネタイトの組成比を求めることができた。いずれのさび試料についても最も組成比の高い成分はアカガネイトであり、しかもFe-Ni合金のさび中のアカガネイト組成比はFe-Cr合金さび中のそれよりも高い結果となった。一般にアカガネイトは鋼材の腐食をより進行させるということを考えると、塩分環境でより耐食性が高いはずのFe-Ni合金でさび中のアカガネイト量が多いことは意外である。両者のさび中のアカガネイトが質的に異なるものであり、Fe-Ni合金さび中のアカガネイトは腐食の進行に関与しないと考えられる。一方、さび層のCl K-XANESスペクトルは人工育成アカガネイトのそれと極めてよく似ているが、主吸収ピークの立ち上がりにアカガネイトのスペクトルにはないショルダーピークが見られることから、さび層はアカガネイト以外にも何らかの塩化物を含んでいる。幾つかの参照用塩化物試料とスペクトルを比較したが、さび中の塩化物を特定するには至っていない。しかしこのことはClが直接CrやNiなどの添加合金元素と結合していないこと、したがって金属塩化物を生成することにより添加合金元素の耐食性に関する役割を阻害するものではないことがわかる。ショルダーピークは合金元素の添加量がそれぞれある値より低いときにのみ現れており、この塩化物の生成プロセスと鋼材の腐食率との間に関連性があると考えられる。


330947
Structure analysis of cation selective Cr-goethite as protective rust of weathering steel
小西 啓之; 山下 正人*; 内田 仁*; 水木 純一郎
Materials Transactions 46(2), p.337-341(2005) ; (JAEA-J 00032)

 Cr-ゲーサイト中のCrの配位数を決定するために、人工育成Cr-ゲーサイトに対するEXAFS解析を行った。スペクトルはフォトンファクトリー(PF)の放射光を用いて測定した。フーリエ・フィルタリングを用いて最近接原子によるEXAFS振動を抽出し、カーブフィッティングで構造パラメータを求めた。その結果、(7±1)個のO2-がCrに配位していることがわかった。このことから、耐候性鋼のCr-ゲーサイト保護性さび層の最も特徴的な保護効果は、Cr3+に配位するO2-によってCr-ゲーサイト粒子に負の固定電荷がもたらされることで生じるものと説明できる。


330948
Tempering treatment effect on mechanical properties of F82H steel doped with boron and nitrogen
大久保 成彰; 若井 栄一; 松川 真吾*; 谷川 博康; 沢井 友次; 實川 資朗; 大貫 惣明*
Materials Transactions 46(8), p.1779-1782(2005) ; (JAEA-J 00033)

 核融合中性子照射がもたらす核変換生成Heと弾き出し損傷の影響を調べるために、B添加した鋼に核分裂炉照射を行う手法がしばしば用いられる。BをF82H鋼に添加すると、靭性が低下する場合があるが、BN化合物を形成するNを同時に添加(F82H+B+N)すること及び、熱処理条件の調整により、Bを添加しない場合と同様な特性とすることができた(前報)。ここでは、F82H+B+N材の引張特性,シャルピー衝撃特性、さらにイオン照射による硬化挙動について報告する。なお、照射硬化の評価には極微小硬さ試験機を用いた。シャルピー試験による延性−脆性遷移温度は、焼き戻し温度が750℃(30分)の場合、F82H鋼と同等で約-100℃であったが、焼き戻し温度を低くすると約50℃上昇した。このとき、降伏応力も増加を示した。イオン照射による硬さ変化は、この損傷領域では焼き戻し温度によらずほぼ一定であり、これはF82H鋼の場合と同様である。以上のように、F82H+B+N材では、B単独添加やNi添加鋼の場合のような照射による顕著な硬化はみられなかったことから、核分裂炉照射によるHe効果の評価精度向上が期待できる。


330949
R&D on a high energy accelerator and a large negative ion source for ITER
井上 多加志; 谷口 正樹; 森下 卓俊; 大楽 正幸; 花田 磨砂也; 今井 剛*; 柏木 美恵子; 坂本 慶司; 関 孝義*; 渡邊 和弘
Nuclear Fusion 45(8), p.790-795(2005) ; (JAEA-J 00034)

 本論文では、ITER NBIシステムを実現するために原研が行ってきた、1MeV加速器と大型負イオン源の開発研究に関する以下の成果を報告する。(1)加速器開発:耐電圧性能の向上により、H-イオンのMeV級加速試験が進展した。これまでに、1MeV, 100mA級H-イオンビームを実用規模である100A/m2程度の電流密度で発生しており、イオン源運転条件の調整により、さらなる電流密度の増大が見込まれる。(2)大型負イオン源開発:従来、大面積引き出し面上に生成する負イオンの一様性が問題となっていたが、本研究により、磁気フィルターから局所的に漏れ出た高速電子が負イオン引き出し部に生成した訃音を破壊していることが明らかになった。本論文では、高速電子漏洩の遮断による一様性改善の結果を報告する。


330950
Scaling of the energy confinement time with β and collisionality approaching ITER conditions
Cordey, J. G.*; Thomsen, K.*; Chudnovskiy, A.*; Kardaun, O. J. W. F.*; 滝塚 知典; Snipes, J. A.*; Greenwald, M.*; Sugiyama, L.*; Ryter, F.*; Kus, A.*; Stober, J.*; DeBoo, J. C.*; Petty, C. C.*; Bracco, G.*; Romanelli, M.*; Cui, Z.*; Liu, Y.*; McDonald, D. C.*; Meakins, A.*; 三浦 幸俊; 篠原 孝司; 都筑 和泰; 鎌田 裕; 浦野 創; Valovic, M.*; Akers, R.*; Brickley, C.*; Sykes, A.*; Walsh, M. J.*; Kaye, S. M.*; Bush, C.*; Hogewei, D.*; Martin, Y.*; Cote, A.*; Pacher, G.*; Ongena, J.*; Imbeaux, F.*; Hoang, G. T.*; Lebedev, S.*; Leonov, V.*
Nuclear Fusion 45(9), p.1078-1084(2005) ; (JAEA-J 00035)

 ELMyHモードデータベースの最新版の状況を再検査した。一般最小2乗回帰法における幾つかの変数について偏りがあることが確認された。これらの欠点に注意して、3種の解析手法、(a)主要素回帰法,(b)変数内誤差手法、及び(c)偏りの小さい少数変数による解析、を取り入れた。標準的な工学的変数で表した比例則とともに、無次元物理変数を用いた比例則を導出した。新比例則は従来の比例則に比べて、ITERの標準的ベータ運転に関して同様な性能を予測するが、より高いベータの運転では性能が高くなると予測する。


330951
Design of a single moderator-type neutron spectrometer with enhanced energy resolution in energy range from a few to 100 keV
谷村 嘉彦; 三枝 純; 吉澤 道夫; 吉田 真
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 547(2-3), p.592-600(2005) ; (JAEA-J 00036)

 最適な中性子スペクトロメータの減速材構造をMCNP-4Bを用いて設計した。当該スペクトロメータは、円筒状の減速材及び位置検出型熱中性子検出器で構成されており、減速材軸上の熱中性子束分布から入射中性子のエネルギー分布を得ることができる。入射側減速材の一部に低水素密度材を用い、熱中性子の拡散を抑制する熱中性子吸収材を設置することにより、数10から100keVの低エネルギー中性子に対するエネルギー分解能を改善した。設計したスペクトロメータは、数keVから20MeVまでの範囲で中性子エネルギー分布の測定に適用できる。


330952
Neutronic performance of rectangular and cylindrical coupled hydrogen moderators in wide-angle beam extraction of low-energy neutrons
甲斐 哲也; 原田 正英; 勅使河原 誠; 渡辺 昇; 鬼柳 善明*; 池田 裕二郎
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 550(1-2), p.329-342(2005) ; (JAEA-J 00037)

 結合型モデレータに対する多数の中性子ビームの要求に応えるため、中性子ビームの取出角度を大きくする必要がある。このとき、低エネルギー中性子の時間積分、及びパルスピーク強度を最大とするため、中性子特性計算を行った。中性子強度の合計はビーム本数の増加に伴って増加したが、それぞれの中性子ビームの強度は、反射体に設けられたビーム取出孔に起因する反射体欠損により減少した。直方型モデレータにおいて取出角度が大きな場合(法線から25度)、その方向へ向かう低エネルギー中性子の空間分布を計算すると、大きく強度が減少している領域が生じていることがわかった。代案として提案した円筒型モデレータを用いることにより、強度減少の見られる領域を縮小することができた。さらに円筒型モデレータについて、時間積分,パルスピーク強度,パルス幅,パルス減衰特性をモデレータ直径の関数として計算した結果、直径140mmが最適であることがわかった。両者の比較の結果、円筒型の方が、時間積分強度とパルス減衰特性は同等で、高いパルスピーク強度,狭いパルス幅,平坦な角度依存性の中性子ビームを供給できることがわかった。両者のパルス特性の違いについての説明も行っている。J-PARC核破砕中性子源において、円筒型の結合型モデレータを採用することとした。


330953
0.5-kHz, 5-W optical parametric oscillator pumped by the second harmonic of a Nd:YAG laser
丸山 庸一郎
Optical Engineering 44(9), p.094202_1-094202_3(2005) ; (JAEA-J 00038)

 発振繰り返し数0.5kHzのNd:YAGレーザーによってポンピングされるβバリウムボーレイト(BBO)結晶を用いた光パラメトリック発振器を開発した。これにより、タイプ-IBBOパラメトリック発振器で平均出力5.4W,エネルギー変換効率45%を達成した。出力は依然上昇傾向を示し、また出力ビームにも熱的な影響は観測されなかった。


330954
Preparation and characterization of single-phase SiC nanotubes and C-SiC coaxial nanotubes
田口 富嗣; 井川 直樹; 山本 博之; 社本 真一; 實川 資朗
Physica E 28(4), p.431-438(2005) ; (JAEA-J 00039)

 カーボンナノチューブをテンプレート材料として、Si粉末とともに真空中で熱処理を行う簡便な方法により、単相SiCナノチューブ及び同軸C-SiCナノチューブを合成した。さらに、それらの透過型電子顕微鏡による微細構造観察及びキャラクタリゼーションを行った。その結果、1450℃における熱処理では、50-200nmの粒径を有するSiC粒が連なったナノワイヤーが合成された。1300℃における熱処理においては、同軸C-SiCナノチューブのみが合成された。1200℃,100時間熱処理により、わずかではあるが、単相のSiCナノチューブの合成に成功した。単相SiCナノチューブの収率を増加させるため、1200℃,100時間熱処理材を、さらに600℃,1時間、大気中で熱処理を行った。この大気中熱処理により、同軸C-SiCナノチューブ内部のカーボン相が消失したため、半数以上のナノチューブが単相SiCナノチューブへと変換した。EDX測定結果から、単相SiCナノチューブのSiとCとの元素比は、ほぼ1であることがわかった。つまり単相SiCナノチューブは、化学量論比に近いSiC結晶粒から構成されていることが示された。


330955
Dispersive coupled-channel analysis of nucleon scattering from 232 Th up to 200 MeV
Soukhovitskij, E. Sh.*; Capote, R.*; Quesada, J. M.*; 千葉 敏
Physical Review C 72(2), p.024604_1-024604_12(2005) ; (JAEA-J 00040)

 非局所効果に起因する分散項を含むレーン型チャンネル結合模型を用いて、0.001〜200MeVの範囲で232Thによる核子散乱過程の研究を行った。分散項を考慮することで、エネルギー依存性の無い形状因子と簡単なエネルギー依存線を持つポテンシャル強度で測定データをよく再現できた。陽子チャンネルに対しては、クーロンバリア以下のエネルギー領域で分散項から来るクーロン補正が主要であることがわかった。また、核力の非局所性が要請する虚数ポテンシャルの振る舞いが、100MeV以上でデータを記述するうえで重要なことが判明した。


330956
Alfven eigenmodes in reversed shear plasmas in JT-60U negative-ion-based neutral beam injection discharges
武智 学; 福山 淳*; 石川 正男; Cheng, C. Z.*; 篠原 孝司; 小関 隆久; 草間 義紀; 竹治 智*; 藤田 隆明; 及川 聡洋; 鈴木 隆博; 大山 直幸; 森岡 篤彦; Gorelenkov, N. N.*; Kramer, G. J.*; Nazikian, R.*; JT-60チーム
Physics of Plasmas 12(8), p.082509_1-082509_7(2005) ; (JAEA-J 00042)

 JT-60Uの負磁気シア(RS)及び弱磁気シアプラズマ(WS)におけるアルフベン固有モード(AE)実験の結果について報告する。低βhのRS放電において負イオンNBI(NNBI)及びICRFによって加熱中に観測された急激な周波数の掃引を伴うモードは負磁気シア励起AE(RSAE)とこのRSAEからトロイダルAE(TAE)への遷移によって説明可能である。われわれはJT-60Uにおいて磁気揺動の観測と安全係数分布の計測を行い、RSAEの存在とRSAEからTAEへの遷移を初めて証明した。中性子発生率の計測によってRSAEからTAEへ遷移時に高速イオンが吐き出されることが明らかになった。


330957
Response to comment on "Grain Boundary Decohesion by Impurity Segregation in a Nickel-Sulfur System"
山口 正剛; 志賀 基之; 蕪木 英雄
Science 309(5741), p.1677d(2005) ; (JAEA-J 00043)

 本報は著者らがScience vol.307(2005年)に投稿した論文に対し、「Ni粒界中の硫黄原子の偏析エネルギーは、平均値ではなく各原子ごとの増加分のエネルギーとするべき」、とのコメントがGengらによって寄せられたものの反論である。Gengらは著者らの論文を参考に同じ計算を行い、増加分のエネルギーをとれば、粒界結合力が1/10にまで低下する偏析(GB0 4/4, GB2 4/4)は実現する確率が1%程度になってしまい生じ得ないという。しかしながら、Gengらは硫黄原子が偏析していく順番には幾通りもあるということを見落としている。著者らの再計算によれば、ある順番においては増加分のエネルギーを使っても最低50%は偏析することがわかった。そのうえ、偏析の順番は数多くあるのですべてを調べ尽くすことは現在のところ困難であり、もっと偏析しやすくなる可能性もある。しかし、いずれにせよ単純なMcLeanモデルを使う限り偏析濃度の予測は定量的とはいい難いので、Gengらの主張はあまり意味がない。また、Gengらは別の原子配置の偏析(GB1 4/4, GB2 4/4)こそが起こり得ると主張しているが、著者らの再計算ではそうはならないので、Gengらの計算ミスではないかと思われる。さらにGengらは、脆化はS-S間反発に起因するのではなく、Ni-Sの結合方向の変化に起因するという新説を提案しているが、その根拠(電子密度図や粒界構造図)を示していないうえに、これも間違った計算に基づいて提案していると思われる。


330958
ホットラボの廃止措置と将来計画
海野 明; 斎藤 光男; 金澤 浩之; 高野 利夫; 岡本 久人; 関野 甫*; 西野 泰治
デコミッショニング技報 (32), p.2-12(2005) ; (JAEA-J 00044)

 日本原子力研究所(以下、原研という。)のホットラボは、研究炉で照射された燃料及び材料の照射後試験を実施するために、日本初のホットラボ施設として、昭和36年に建設された。施設は、重コンクリートケーブ10基,鉛セル38基(現在:20基)を備える、地上2階,地下1階の鉄筋コンクリート構造であり、原研における研究計画に貢献してきたが、所内の老朽化施設の合理化の目的により、「東海研究所の中期廃止措置計画」に沿って、平成15(2003)年3月をもって全ての照射後試験を終了し、施設の一部解体・撤去を開始した。これまでに鉛セル18基の解体・撤去を完了している。ホットラボで実施されてきた燃料・材料に関する試験は、燃料試験施設及びWASTEFで引続き実施される予定である。さらに建屋の一部は、所内の未照射核燃料や大強度陽子加速器施設の運転によって発生する放射化機器の一時保管施設としての利用が計画されている。


330959
海水ウラン採取用のモール状捕集材の合成と実規模システムの検討
玉田 正男; 瀬古 典明; 笠井 昇; 清水 隆夫*
FAPIG (169), p.3-12(2005) ; (JAEA-J 00045)

 モール状捕集材は係留システムの軽量化により捕集コストの低減化が期待できる新しい形状の捕集材である。海水ウランの捕集に関しては、アミドキシム基が海水中に溶存するウランに対して高い親和性を持つ。この官能基を放射線グラフト重合によりポリエチレン糸に導入し、そののち編み込み加工によりモール状のウラン捕集材を合成した。2.8mmol/g-捕集材の官能基密度を持つ捕集材の作製には5時間のグラフト重合反応が必要であった。得られた捕集材を沖縄沖に係留した結果、30日の浸漬で1.5g/kg-捕集材のウランの吸着が可能であった。年間1200トンのウランを捕集するためには134km2の海域が必要であるが、沖縄から土佐湾にかけての海域でウランの捕集に適した海域は6000km2あることがわかった。


330960
腫瘍の形態変化を考慮した発がん数理モデルの一考察
大内 則幸
保健物理 40(2), p.166-169(2005) ; (JAEA-J 00047)

 低線量における発がん過程を念頭においた新しい発がん数理モデルの開発について報告する。細胞レベルの物理的ダイナミクスを考慮した、細胞がん化から腫瘍の形成までを記述する新しいモデルを構築した。モデルは細胞集団レベルにおいて、細胞間の接着,変形,移動などの物理的に記述可能なダイナミクスと、突然変異による細胞の変異,細胞分裂,細胞死、など細胞内部のダイナミクスの両方を持ち、細胞ががん化し、腫瘍を形成する様子を経時的に調べることができる。


330961
大強度陽子加速器計画における中性子源施設
大山 幸夫; 池田 裕二郎
放射線と産業 (107), p.45-51(2005) ; (JAEA-J 00049)

 原研とKEKが進める大強度陽子加速器計画(J-PARC)の中性子源施設について、J-PARC計画の概要とともに、中性子源設計の詳細について解説をする。


330962
NEXAFSによるNi(111)上のh-BN薄膜の電子構造解析
下山 巖; 馬場 祐治; 関口 哲弘; Nath, K. G.
表面科学 25(9), p.555-561(2004) ; (JAEA-J 00051)

 六方晶窒化ホウ素(h-BN)はグラファイト構造を持つ絶縁体であり、超薄膜絶縁体材料としての興味深いターゲットである。近年幾つかの遷移金属単結晶表面上にエピタキシャルh-BNモノレイヤーが形成されることが報告された。そのうちNi(111)はh-BNとの格子整合性が高いためエピタキシャル薄膜成長に対し有利であるがその薄膜−基板間相互作用については十分明らかになってはいない。そこでわれわれは吸収端近傍X線微細構造(NEXAFS)分光法を用いてh-BN/Ni(111)の電子構造を調べ、薄膜−基板間相互作用を明らかにすることを試みた。ボラジン(B3N3H6)を用いたCVD法によりNi(111)上にh-BN薄膜を形成し、そのB K端でのNEXAFSスペクトルを測定した。得られたスペクトルはバルクh-BNでは観測されない新しいπ*ピークを示した。このピークの解釈のためモデルクラスターを用いたDV-Xα分子起動計算を行い、新しいピークがおもにNi4p軌道とh-BNのπ*軌道との混成により生じたものであることを明らかにした。この結果からわれわれはh-BNモノレイヤーとNi(111)基板は化学吸着的な強い相互作用を持つと結論した。


330963
流体抗力を低減するための随伴変数法による形状最適化とそのITBLへの適用
篠原 主勲; 奥田 洋司*; 伊東 聰*; 中島 憲宏; 井田 真人
計算工学講演会論文集 10(2), p.629-632(2005) ; (JAEA-J 00053)

 体積一定の制約条件下で圧力抵抗が最低となる最適な形状を構築するため、随伴変数法を定式化し、最急降下法を用いてArmijoの基準に基づく直線探索法の並列化アルゴリズムを構築した。またITBLというグリッド・コンピューティング環境で並列分散処理機能を用いて、効率的に演算処理する方式を提案した。構造の特性,信頼性,コスト性が複雑に絡み合う評価関数,制約条件からなる高負荷の計算が要求されるラグランジュ関数の極値の探索方法を構築した。極値探索で生じる膨大な計算量を、不特定多数のスーパーコンピュータを用いて、ホスト間のデータ通信を削減し、最適な形状更新ベクトルの探索を並列分散処理することで、実時間の計算処理を可能とした。


330964
新元素の認定について
永目 諭一郎; 中原 弘道*
日本物理学会誌 60(9), p.707-709(2005) ; (JAEA-J 00054)

 最新の110, 111番元素の命名や、新元素の発見から承認,命名までの手続き、あるいは元素命名に関する基準などについて解説する。特に、最近の重元素発見に伴う新元素としての承認手続きを、国際純正応用化学連合の手続きに沿って紹介する。


330965
超重元素の化学的研究
篠原 厚*; 塚田 和明; 永目 諭一郎
日本物理学会誌 60(9), p.709-716(2005) ; (JAEA-J 00055)

 原子番号が100を越すような非常に重たい元素は、マクロ量で世の中に存在することは無く、その化学的性質は、加速器を使って合成しつつ、1個1個の原子を対象に調べることになる。それゆえ、現在でも未知の領域であり、普通の「化学」を議論できるレベルのデータはほとんど無い。しかし最近、理化学研究所(理研)の113番元素の合成で象徴されるように、超重元素といわれる領域の研究が盛んになっており、その化学的研究も本格化してきた。本稿では、超重元素領域の化学の特徴と研究手段について簡単に説明し、世界の研究の現状と併せて、最近、日本原子力研究所(原研)で見いだされた104番元素ラザホージウム(Rf)の興味ある化学的性質を中心に、世界のトップレベルに達しつつある我が国の超重元素に関する化学的研究の現状と将来を概観する。


330966
超重元素はどこまで存在するか; 質量公式からみた重・超重核領域の原子核崩壊
小浦 寛之; 橘 孝博*
日本物理学会誌 60(9), p.717-724(2005) ; (JAEA-J 00056)

 重・超重核領域の原子核崩壊様式について解説を行う。まず近年の新同位体同定実験の経緯について簡単に述べ、次いで原子核質量公式について説明する。そして原子核が引き起こす崩壊現象を各様式ごとに記述し、われわれの開発した質量公式を用いた理論予測をもとに、重・超重核領域の崩壊様式について議論を展開する。そこでは、自発核分裂が優勢であると予想される未知核種領域の指摘や、超重核の安定性の島の性質、さらに超重核と星のr過程元素合成との関係などについて述べる。最後に、超重核の安定性の島より中性子過剰な核の存在について、その可能性を指摘する。


330967
均一な無限厚試料のα線スペクトロメトリーによる簡易放射能定量法
亀尾 裕; 藤原 亜佐子; 渡辺 幸一*; 河野 信昭; 中島 幹雄
日本原子力学会和文論文誌 4(3), p.187-193(2005) ; (JAEA-J 00057)

 化学分離を行わず簡易にα線放出核種を定量するため、ホウ砂球反応を用いた均一な無限厚試料の作製とα線スペクトロメトリーによる測定手法について検討した。α線放出核種とホウ砂あるいは鉛ガラスを混合した後、電気炉で溶融することにより、ガラス状の均一な測定試料を調製することができた。放射性希ガスの娘核種を生成する228Thとホウ砂を溶融して作製したガラス試料を測定した結果、Rnとその娘核種に起因する検出器の汚染はほとんど起こらないことがわかった。228Thを含む試料の測定から得られたα線スペクトルとホウ砂の化学組成から求めた阻止能を用いて、ほぼ放射平衡にあるTh系列のα線放出核種を定量することが可能であった。さらに使用済燃料溶解液から採取した試料溶液とホウ砂から作製したガラス試料について、本測定法により定量された244Cm, 238Pu+241Am及び全α放射能濃度は、精密分析により求められた値とよく一致した。


330968
よくわかる核融合炉のしくみ,8; トリチウムを扱う燃料循環システム,気体状トリチウム燃料の取扱い技術
深田 智*; 林 巧
日本原子力学会誌 47(9), p.623-629(2005) ; (JAEA-J 00059)

 核融合炉の燃料処理技術については、なぜ重水素とトリチウムを燃料として使用し循環処理する必要が有るのか、どのようにプラズマ排ガスから水素同位体を精製し、重水素やトリチウムを同位体分離し、効率よく貯蔵(供給)するのかを解説する。また、トリチウムの安全取扱技術についても、その性質や安全取扱の考え方を整理し、万一の想定異常時にいかに検知し、除去し、その除去したトリチウム(トリチウム水)を処理するのかを解説する。


330969
プラズマ・核融合シミュレーションの発展と将来への期待; 磁場閉じ込め核融合の観点から
岸本 泰明*
プラズマ・核融合学会誌 80(5), p.390-395(2004) ; (JAEA-J 00061)

 近年の高性能の磁場閉じ込め核融合プラズマは、プラズマ中にさまざまな構造を形成することによって達成しており、そこでは時空間スケールの異なった物理過程が複合的に寄与している。そのような複雑かつ複合的な性質を持つプラズマの理解にあたっては大規模シミュレーションに基づく研究が本質的である。本論文では、このようなプラズマの構造形成を支配する物理的な素過程を論じるとともに、幅広いダイナミックレンジを包含する将来の数値シミュレーションの展望を提案する。


330970
プローブ計測の基礎から応用まで
雨宮 宏*; 和田 元*; 豊田 浩孝*; 中村 圭二*; 安藤 晃*; 上原 和也; 小山 孝一郎*; 酒井 道*; 橘 邦英*
プラズマ・核融合学会誌 81(7), p.482-525(2005) ; (JAEA-J 00063)

 プラズマ核融合学会からの依頼原稿である。幅広い専門分野にわたる学会誌読者のために核融合プラズマでのプローブ測定の実際を解説した。第1章では、シングルプローブにおけるプローブ特性から電子温度と密度を決定する手順と電子エネルギー分布関数の測定法及びイオン温度の測定について静電エネルギー分析器,イオン感受プローブを取り上げて解説した。第2章ではダブルプローブにおけるイオン温度とフローの測定法を非対称プローブと回転対称プローブを取り上げて解説した。原研のトカマクのJFT-2, JFT-2a及びJFT-2Mで得られたデータを紹介してプローブ測定の実際を解説した。


330971
Instability in the frequency range of Alfven eigenmodes driven by negative-ion-based neutral beams in JT-60U
篠原 孝司; 石川 正男; 武智 学; 草間 義紀; 藤堂 泰*; Gorelenkov, N. N.*; Cheng, C. Z.*; 福山 淳*; Kramer, G.*; Nazikian, R.*; 松永 剛; 小関 隆久
プラズマ・核融合学会誌 81(7), p.547-552(2005) ; (JAEA-J 00064)

 負イオン源中性粒子ビームを用いて高速イオンの圧力の高い状態を作るとアルベン固有周波数帯にバースト状で数十ミリ秒以下の時間スケールの周波数掃引を伴った不安定性(Fast FSやALEと呼んでいる)が観測された。これらの不安定性により高速イオンの輸送が助長されていることが明らかになった。最近、自然組成ダイヤモンド検出器を用いた中性粒子束分布計測により、輸送高速イオンの共鳴的エネルギー依存性が明確に観測された。結果は輸送が、高速イオンと不安定性とが共鳴的に相互作用し、不安定性の電磁場を静的に感じて起きていることを示唆している。また、Fast FSの周波数掃引についても、粒子-MHD混成数値計算コードにより、最近、実験結果を再現する結果を得ており、波動による粒子捕捉領域の軌道周回周波数が変化することによって生じる現象であると考えられる。このような非線形現象について高速イオン圧力分布との関連について報告する。さらに、負磁気シア誘導アルベン固有モード(Reversed Shear-induced AE; RSAE)の発生をTASK/WMコードにより理論的に予測していたが、MSEによる詳細なq分布計測等を用いてJT-60においてこれを同定した。NOVA-Kコードを用いて、RSAEの安定性解析を行い、実験と数値計算の比較を報告する。


330972
Experimental validation of beam particle self interaction in JT-60U by use of N-NB
岡野 邦彦*; 鈴木 隆博; 梅田 尚孝; 日渡 良爾*; 正木 圭; 飛田 健次; 藤田 隆明
プラズマ・核融合学会誌 81(8), p.579-580(2005) ; (JAEA-J 00065)

 トロイダル系では中性粒子ビーム入射により生成されトーラスを循環する高速イオンが中性粒子ビーム自身の停止断面積に影響を与える。この効果は主著者(岡野)により初めて提案され「ビーム粒子自己相互作用(BPSI)」と名付けられた。最近のJT-60Uにおける350keV軽水素原子ビーム入射実験によって、世界で初めてこのBPSI効果を同定した。電子密度1×1019m-3程度の低密度放電においてビームの突き抜けはビーム入射開始後数100ms以内に35%減少した。この結果はBPSI理論による予言と一致する。


330973
Characteristics of post-disruption runaway electrons with impurity pellet injection
河野 康則; 仲野 友英; 諫山 明彦; 朝倉 伸幸; 玉井 広史; 久保 博孝; 竹永 秀信; Bakhtiari, M.; 井手 俊介; 近藤 貴; 波多江 仰紀
プラズマ・核融合学会誌 81(8), p.593-601(2005) ; (JAEA-J 00066)

 ディスラプション時に発生する高エネルギー逃走電子に対する不純物ペレット入射の緩和効果を調べるための実験をJT-60Uにおいて実施した。まず、逃走電子プラズマ中に不純物ネオンペレットがデポジションすることをプラズマ電子密度の増加を通して観測した。また、ペレット入射時の逃走電子電流減衰時間は、約1/2に短くなった。さらに、逃走電子電流減衰率の変化量とプラズマ外への逃走電子損失を示す光中性子信号の変化量は、ほぼ比例する関係にあった。以上より、不純物ネオンペレット入射による逃走電子の損失増大,緩和効果を見いだした。


330974
環境負荷物質移行予測コード「MOGRA:モグラ」とその適用
天野 光
資源環境対策 41(12), p.89-96(2005) ; (JAEA-J 00067)

 人間の生活圏に加えられる重金属や放射性物質等の環境負荷物質による環境影響を評価し、汚染防止策や防護対策を立案するためには、生活圏内におけるそれら物質の移行挙動を把握する必要があるが、人間の生活圏には種々の土地利用形態や土地分類が混在しており、それぞれの土地における環境負荷物質の挙動も多種多様である。また、環境負荷物質の放出量が時間変化する場合や、農作物の生育期間のように環境条件が変化する場合を評価する際には、環境負荷物質の挙動の時間変化を解析する必要がある。このような、人間の生活圏内での環境負荷物質の挙動を実用的に解析・予測するコードとして、環境負荷物質移行予測のための汎用コードMOGRA(モグラ:Migration Of GRound Additions)を開発した。本解説は、MOGRAの概要,その特徴,MOGRAを用いた解析例等につき紹介した。


330975
Recent R&D of Thomson scattering diagnostics for JT-60U and ITER
波多江 仰紀; 近藤 貴; 内藤 磨; 中塚 正大*; 吉田 英次*
Proceedings of 12th International Symposium on Laser-Aided Plasma Diagnostics (LAPD-12) (CD-ROM) , 6p.(2005) ; (JAEA-J 00068)

 JT-60の近年のトムソン散乱計測の開発研究について報告を行う。非協同トムソン散乱計測では、誘導ブリルアン散乱位相共役鏡を応用し、トムソン散乱計測の測定性能改善を図った。トムソン散乱への直接的な応用としては、位相共役鏡によりレーザービームを往復させ、迷光を著しく増加させることなく散乱光を倍増させる手法(ダブルパス散乱)を開発した。ダブルパス散乱を発展させ、一対の位相共役鏡間にレーザー光を閉じ込め、数倍以上の散乱光を発生することができるマルチパス散乱も考案した。散乱光のS/N改善のため、位相共役鏡を既存のYAGレーザー装置に組み込み、レーザー装置の高出力化も行った。位相共役鏡は高出力増幅器で誘起される波面歪みを効果的に補正し、レーザー出力が当初の8倍を超える368W(7.4J×50Hz)に到達した。これを踏まえ位相共役鏡を搭載した、最適化されたITER用レーザーシステムの設計・検討を行った。また、JT-60では核燃焼プラズマのイオン温度や高速α粒子の振る舞いを測定する炭酸ガスレーザを用いた協同トムソン散乱計測の開発を行っている。初期実験結果に基づきレーザーの縦モードの質,ヘテロダイン受信機の電気ノイズの低減,光軸調整の改善を進め、2005年冬から始まるJT-60実験では改善された計測装置で測定を行う予定である。


330976
X-ray absorption fine structure spectra of rust layers on Fe-based binary alloys exposed to Cl-rich environment
小西 啓之; 山下 正人*; 内田 仁*; 水木 純一郎
Proceedings of 16th International Corrosion Congress (CD-ROM) , 6p.(2005) ; (JAEA-J 00069)

 耐候性鋼保護性さび層の構造的特徴と合金元素及び塩化物イオンとの関係を明らかにするために、塩化物環境下で大気暴露した純鉄、Fe-Cr及びFe-Ni合金の表面さび層のXANESを放射光を用いて測定した。Cl K吸収端XANES測定からこれらのさび層がアカガネアイト以外の塩化物を含むことがわかったが、その塩化物の特定には至っていない。Fe K吸収端XANES測定からこれらのさび層がゲーサイト,アカガネアイト,レピドクロサイト及びマグネタイトを主成分とすることがわかった。特にFe-Ni合金のさび層中のアカガネアイトの成分比はFe-Cr合金と比べて相対的に多い。またFe-Cr合金さび層のCr K吸収端XANESスペクトルはCr添加量に依存してわずかに変化するが、Fe-Ni合金さび層のNi K吸収端XANESにはそのような傾向は見られず、Ni添加量のある範囲においてNi周辺の局所構造は変化しないことがわかる。


330977
Helium chemistry in high-temperature gas-cooled reactors; Chemistry control for avoiding Hastelloy XR corrosion in the HTTR-IS system
坂場 成昭; 平山 義明*
Proceedings of International Conference on Nuclear Energy System for Future Generation and Global Sustainability (GLOBAL 2005) (CD-ROM) , 6p.(2005) ; (JAEA-J 00072)

 高温ガス炉の熱を用いた熱化学IS法による水素製造は、その製造過程で二酸化炭素を排出することなく大量の水素を製造することが可能である。原研では、日本初の高温ガス炉HTTRを化学プラントである熱利用システムに接続することを計画しているが、ISシステムは熱利用システムの有力候補である。HTTR-ISシステムにおける高温環境下で使用される構造材(例えば、HTTRの中間熱交換器伝熱管及びHTTRとISシステムを接続する高温二重管のライナ材に使用されるハステロイXR等)の構造健全性維持のためには、ヘリウム化学の確立による化学組成制御が必要不可欠であるが、実機で応用可能な知見は、先行高温ガス炉を含め、これまでに得られていない。そこで、本報では、ハステロイXRの腐食の一つである脱炭・浸炭を防止するため、不純物による影響を、クロムスタビリティ図を用いて個別に評価し、最も影響を与える不純物が一酸化炭素であることを明らかにした。加えて、ハステロイXRの腐食を防止するために化学組成の下限を明らかにした。この知見は、HTTR-ISシステムはもとより、将来高温ガス炉あるいは第四世代原子炉システムの候補であるVHTRに生かされることが期待できる。


330978
Benchmark solution for unstructured geometry PWR problem by method of characteristics using combinatorial geometry
久語 輝彦; 森 貴正
Proceedings of International Topical Meeting on Mathematics and Computation, Supercomputing, Reactor Physics and Nuclear and Biological Applications (M&C 2005) (CD-ROM) , 10p.(2005) ; (JAEA-J 00073)

 複雑な幾何形状を有する革新的原子炉の核設計における非均質輸送計算のために、特性曲線法(MOC法)に基づく決定論的輸送計算コードを開発し、非構造形状を有するPWR燃料集合体ベンチマーク問題を対象として、その適応性を検討した。GMVPコードを用いた正確なモンテカルロ計算の結果との比較によって、開発したMOC法コードが非構造形状を十分精度よく取り扱うことができることが明らかとなった。


330979
原研ERL-FEL制御系のWebベースデータベースシステムの開発
菊澤 信宏; 永井 良治
Proceedings of 2nd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 30th Linear Accelerator Meeting in Japan , p.430-432(2005) ; (JAEA-J 00078)

 加速器に関する膨大な計測データを有効活用するためには、必要なデータを簡単な操作で検索して可視化できることが重要である。このためソースコードが公開されているオープンソースソフトウェアを利用してWebデータベース(DB)の開発を行った。データの管理や表示をWeb上で行えるようになったことにより、ネットワークでつながった端末であれば機種や場所を選ばずにデータの編集や検索などが行えるため、効率的に管理できるようになった。現在では計測データのほかにも機器の設定情報や作業マニュアルなどもWeb上で検索できるようになっており、情報の共有化を進めている。本研究会ではこのWeb DBシステムの開発について報告する。


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