学会誌等掲載論文
※下記の研究開発成果は資料名順に並んでいます。

2005年12月


330984
Extraction capacity of diglycolamide derivatives for Ca(II), Nd(III) and Zr(IV) from nitric acid to n-dodecane containing a solvent modifier
佐々木 祐二; Zhu, Z.-X.; 須郷 由美; 鈴木 英哉*; 木村 貴海
Analytical Sciences 21(10), p.1171-1175(2005) ; (JAEA-J 00079)

 新しい抽出剤であるジグリコールアミド化合物の抽出特性研究の一環として、硝酸−ドデカン系で+2, +3及び+4価の陽イオンの抽出容量を調べた。金属イオンの最大抽出量(LOC)は硝酸濃度,抽出剤濃度に大きく依存した。LOCを増加する目的で、添加剤や疎水性の高いDGA化合物(側鎖アルキル基の長いDGA)を利用した。その結果、LOCは添加剤のDHOAモノアミド濃度やDGAのアルキル基長さに依存して増加することを明らかにした。


330985
X-ray diffraction study on GaAs(001)-2×4 surfaces under molecular-beam epitaxy conditions
高橋 正光; 米田 安宏; 水木 純一郎
Applied Surface Science 237(1-4), p.219-223(2004) ; (JAEA-J 00080)

 その場表面X線回折法により、GaAs(001)-(2×4)再構成表面を詳しく調べた。試料は、他の解析用真空槽に搬送することなく、分子線エピタキシー条件下でそのまま測定に付した。一定のAs圧下において、GaAs(001)-(2×4)構造のβ相に相当する範囲内で基板温度を上げていきながら、多数のX線回折パターンを測定した。545℃までの比較的低い温度では、測定されたX線回折パターンはβ2(2×4)表面とよく一致した。しかしながら、585℃では、(2×4)周期性をなお保ちながら、β2(2×4)とは異なる回折パターンが得られた。この変化は、Asダイマーが一部脱離し、β2(2×4)とα2(2×4)とが混在した表面になったことにより説明できる。


330986
Development of a Rhenium-186-labeled MAG3-conjugated bisphosphonate for the palliation of metastatic bone pain based on the concept of bifunctional radiopharmaceuticals
小川 数馬*; 向 高弘*; 荒野 泰*; 小野 正博*; 花岡 宏史*; 石野 誠悟*; 橋本 和幸; 西村 洋*; 佐治 英郎*
Bioconjugate Chemistry 16(4), p.751-757(2005) ; (JAEA-J 00081)

 患者のQOL(生活の質)の向上を目指した癌性骨転移の疼痛緩和薬剤として、ビスホスホネート化合物の一つであるHEDPにβ線を放出する186Reを標識した186Re-HEDP化合物が検討されているが、血液クリアランスの遅さや胃への高い集積などが問題となっている。これはおもに、186Re-HEDPが多核錯体であり、体内で不安定であるためであると考えられている。そこで、本研究では、二官能性放射性医薬品の概念に基づき、安定な186Re単核錯体である186Re-MAG3(メルカプトアセチルトリグリシン)をビスホスホネート骨格を持つ化合物に導入した新規薬剤186Re-MAG3-HBPを設計・合成し、その特性を調べた。その結果、MAG3-HBPと186Re標識クエン酸の配位子置換反応により、186Re-MAG3-HBPを95%以上の放射化学的純度で合成できた。また、本化合物は、リン酸緩衝溶液において、24時間後でも分解は観察されず、186Re-HEDPに比べてかなり安定であった。さらに、動物実験の結果、186Re-MAG3-HBPは、186Re-HEDPに比べて、高い骨への集積,速い血中クリアランス及び低い胃への集積を示し、癌性骨転移の疼痛緩和薬剤として優れた特性を有していることが明らかになった。


330987
Interactions of uranium with bacteria and kaolinite clay
大貫 敏彦; 吉田 崇宏*; 尾崎 卓郎; Samadfam, M.*; 香西 直文; 湯葢 邦夫*; 三頭 聰明*; 笠間 武史*; Francis, A. J.*
Chemical Geology 220(3-4), p.237-243(2005) ; (JAEA-J 00082)

 6価ウランの微生物及びカオリナイトとの相互作用について、吸着,脱離実験を行った。その結果、ウランはカオリナイトに比べて微生物表面官能基に強く吸着することがわかった。さらに、微生物とカオリナイトとの混合物へのウランの吸着実験を行い、ウランが微生物に選択的に吸着していることを電子顕微鏡による分析から明らかにした。選択的吸着には微生物表面のリン酸基が関与することが示唆された。


330988
Molecular dynamics simulation for the baryon-quark phase transition at finite baryon density
秋村 友香; 丸山 敏毅; 吉永 尚孝*; 千葉 敏
European Physical Journal A 25(3), p.405-411(2005) ; (JAEA-J 00083)

 クォーク多体系の分子動力学を用いて、低密度のバリオン物質から高密度のクォーク物質への相転移の機構を調べ、相互作用と運動エネルギーの競合により物質の状態が変化することを明らかにした。また、中間子交換力をクォーク間に導入することで、バリオン物質の状態方程式をよく知られているものに合わせることができた。これにより、相転移が起こる高密度でストレンジ物質と通常原子核物質のどちらが安定であるかを議論することができるようになった。さらに、有限温度でのシミュレーションを行い、温度−密度平面でのバリオン物質,クォーク物質の相図を求めた。


330989
Radiated power profile observed by a tangentially viewing IR imaging bolometer in JT-60U tokamak
木島 滋; Peterson, B. J.*; 芦川 直子*; 三浦 幸俊; JT-60チーム
Europhysics Conference Abstracts (CD-ROM) 29C, 4p.(2005) ; (JAEA-J 00084)

 イメージング・ボロメータは広い視野が取れるなど核燃焼トカマク実験装置の放射損失計測法として有望である。2003-2004年に接線方向にも視野を持つ赤外イメージング・ボロメータをJT-60トカマクに設置した。2.5ミクロンの受光薄膜の耐久性はこれまで2年間の運転で確かめられた。測定装置としてはまだ未完成であるが、これまでの予備試験で幾つかの興味ある観測結果が得られた。ディスラプション時には受光膜に明瞭な温度上昇が観測され、温度分布は既存の抵抗型ボロメータの測定結果と矛盾しない。さらに、トーラスに沿って弧状に分布するダイバータ部の放射損失を初めてとらえることにも成功した。得られた温度上昇のアナログ画像データをディジタル処理し、既存のボロメータの結果との比較検討を開始した。放射損失のトロイダル分布など新しい知見も得られると期待している。


330990
Low-energy auger- and photo-electron effects on the degradation of thymine by ultrasoft X-irradiation
赤松 憲*; 藤井 健太郎; 横谷 明徳
International Journal of Radiation Biology 80(11-12), p.849-853(2004) ; (JAEA-J 00085)

 放射線エネルギーが生体分子に移動した場合、分子の励起や共有結合の切断を起こすことが知られている。吸収線量と突然変異等の関係についてはこれまで多くの情報の蓄積があるが、付与されたエネルギーと分子損傷の定量・定性関係についてはほとんど知られていない。これを明らかにすることにより線質による放射線影響の相違をさらに明確化できると考えられる。われわれはこれまでに放射光の分光により得られる単色軟X線を用いることでDNA構成分子の特定原子を選択的にK殻励起できることを示してきた。また単色軟X線により光電子やオージェ電子等の二次電子のエネルギーが決まるので、二次電子からのエネルギー付与と分子変化の特徴を抽出して調べることが可能である。本研究では上記目的のための最初のステップとして照射サンプルにチミンを選択した。光子には395, 407, 538eV単色光子及び60Coγ線を用いた。分析はEPR法により行った。EPR分析では5-thymil radicalなどの安定ラジカルが同定された。生成したラジカルの種類は用いた光子間で明確な差はなかったが、定量的には違いが認められた。これらの相違はサンプル中に発生する全ラジカル種の密度の違いによるものと考えられる。本発表では生成したラジカル種の定性的性質についても詳細に報告する。


330991
Micro-impact damage caused by mercury bubble collapse
二川 正敏; 直江 崇*; 粉川 広行; 伊達 秀文*; 池田 裕二郎
JSME International Journal, Series A 48(4), p.234-239(2005) ; (JAEA-J 00086)

 J-PARCに設置される核破砕パルス中性源には、ターゲット材として液体水銀を使用する。大強度陽子線入射時には、熱衝撃に伴う圧力波が水銀中に発生する。この圧力波の伝播過程で水銀中でキャビテーション気泡が生成し、気泡崩壊に伴う局所衝撃がターゲット容器の水銀接液界面に負荷する。本報では、液体水銀衝撃パルス負荷実験により形成したキャビテーション衝撃壊食痕、すなわちマイクロピット形状から局所衝撃力を評価した。さらに、気泡崩壊時に発生するマイクロジェット衝撃力を液球体による固/液界面の衝撃問題として数値解析を行い、実験結果と比較した。その結果、ピット半径と深さの比に着目すれば、マイクロジェット衝撃速度を推定できることがわかった。さらに、MW-classの水銀ターゲットでは気泡崩壊時に300m/s程度の衝撃負荷が発生することが推定された。


330992
Evaluation of mechanical properties and microstructure in ion-irradiated surface layer
直江 崇*; 二川 正敏; 内藤 明*; 粉川 広行; 池田 裕二郎; 本橋 嘉信*
JSME International Journal, Series A 48(4), p.280-285(2005) ; (JAEA-J 00087)

 核破砕中性子源水銀ターゲット容器材料は、核破砕条件による陽子&中性子同時照射と水銀環境に曝される。これらの環境によるターゲット容器材料の劣化を評価するために、核破砕条件を模擬したイオン照射と水銀浸漬実験を容器候補材316ステンレス鋼に対して行い、材料表面層の機械的特性の変化を押し込み試験技術と微細組織観察結果から評価した。押し込み荷重−深さ曲線に逆解析を適用して評価した応力歪み曲線から、核破砕条件下で照射後に水銀浸漬を施すと最大引張り強さまでの延びは、受け入れ材の約1/3程度に低下すると推測された。さらに、キャピテーション壊食低減技術として窒化&浸炭硬化処理を施した表面層は、照射の影響をほとんど受けないことがわかった。微細組織観察から、硬化処理により生じた転位群が照射による発生した転移のシンクとして作用するためと考察できた。


330993
Design and operation of high-energy and high-average-power diode-pumped single Nd:YAG amplifier with stimulated-Brillouion-scattering phase conjugate mirror
桐山 博光; 山川 考一; 影山 進人*; 宮島 博文*; 菅 博文*; 吉田 英次*; 中塚 正大*
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 44(10), p.7464-7471(2005) ; (JAEA-J 00088)

 高平均出力・高繰り返しチタンサファイアレーザーの小型化,高効率化を目的として半導体レーザー(LD)励起Nd:YAGレーザーMOPA(Master-Oscillator-Power-Amplifier)システムの開発を行った。本システムは、低い入力エネルギーで高いエネルギー抽出効率を達成するため、レーザービームが励起領域を6回通過できる多重パス増幅方式を採用している。高ビーム品質の増幅を行うためにジグザグスラブ型増幅器で、さらにファラデーローテーター及びSBS位相共役鏡を用いて、それぞれ熱複屈折効果と熱レンズ効果を保証できる構成としている。また、高い変換効率で第二高調波光を発生させるために、非線形光学定数の大きいKTP結晶を採用した。本システムの動作試験を1kHzの高繰り返しで行った。平均のLD入力パワー2.6kWにおいて362Wの高平均出力(1064-nm)を達成した。〜1500の増幅度並びに14%の光−光変換効率を得た。また、波長変換試験において222Wの入力パワーに対して132Wの高平均第二高調波出力光(532-nm)が60%の高い変換効率で得られた。


330994
Laser ablation of silicon in neon gas; Study of excitation mechanism of neon neutrals by ablated silicon ions
佐伯 盛久; 平田 紘一*; 作花 哲夫*; 大場 弘則; 横山 淳
Journal of Applied Physics 98(4), p.044912_1-044912_6(2005) ; (JAEA-J 00089)

 Nd:YAGレーザーの基本波を用いてネオンガス中でシリコンのレーザーアブレーションを行い、アブレーション生成物であるシリコンイオンによるネオンの励起過程を分光学的手法により調べた。その結果、ネオンは入力エネルギーの数十倍のエネルギー準位まで励起されており、その励起過程は早い成分(<100ns)と遅い成分(<300ns)に分類できることがわかった。さらに、早い成分は特定の励起状態においてのみ観測された。シリコンイオンとネオンで発光の時間変化を比較した結果、早い成分はシリコンイオンとネオンの電子状態間での共鳴的なエネルギー移動過程によるものであり、遅い成分はシリコンイオンの衝突エネルギーによりネオンが励起される過程であることが明らかになった。


330995
Synchrotron radiation photoabsorption and photoemission spectroscopy for thermal-induced reoriented Si polymer
Nath, K. G.; 下山 巖; 関口 哲弘; 馬場 祐治
Journal of Electron Spectroscopy and Related Phenomena 144-147, p.323-326(2005) ; (JAEA-J 00090)

 放射光を使った光電子分光法とX線吸収分光法を用い、ポリジメチルシランポリマー{PDMS, [Si(CH3)2]n}の電子状態と分子配向に対するレーザー加熱による効果を調べた。試料は高配向焼結グラファイト基板上にPDMS粉末を担持したものである。Si 1s励起のX線光電子分光測定及びSi-1s X線吸収端微細構造(NEXAFS)測定ともにアニーリングにより電子状態変化が起こるという結果が得られた。さらに角度依存NEXAFS測定を行った。その結果、アニーリング前には分子鎖はランダム配向であったのに対し、アニーリングにより生成した薄膜には強いSi-Si分子鎖配向が生じるという現象が見いだされた。


330996
Model testing using data on 131I released from Hanford
Thiessen, K. M.*; Napier, B. A.*; Filistovic, V.*; 本間 俊充; Kanyar, B*; Krajewski, P.*; Kryshev, A. I.*; Nedveckaite, T.*; Nenyei, A.*; Sazykina, T. G.*; Tveten, U.*; Sjoblom, K.-L.*; Robinson, C.*
Journal of Environmental Radioactivity 84(2), p.211-224(2005) ; (JAEA-J 00091)

 IAEAの主催するBIOMASS計画の線量再構築ワーキンググループでは、1963年に米国ハンフォードの化学分離施設から事故で環境に放出されたヨウ素-131に関するモニタリングデータを用いて、環境移行モデル,線量評価モデル等の妥当性の検証を行った。サイト周辺数カ所の沈着量のモデル予測は、参加機関及び評価地点により、ファクター5から80の違いがあった。また、子供に対する食物摂取線量の予測は、評価法の違い,パラメータ値の選択の相違等により、参加機関によって1桁の開きがあった。この検証作業は、概念モデルと数学的評価手法の比較,モデル予測の実測データによる検証,不確かさに寄与する因子の同定の点で有意義であった。予測結果に影響を及ぼす重要な要因として、不完全なデータの取り扱い方法,入力情報の解釈,パラメータ値の選択,サイト特有な状況へのモデルの調整,不確かさの取り扱いが見いだされた。


330997
Model testing using data on 137Cs from Chernobyl fallout in the Iput River catchment area of Russia
Thiessen, K. M.*; Sazykina, T. G.*; Apostoaei, A. I.*; Balonov, M. I.*; Crawford, J.*; Domel, R.*; Fesenko, S.*; Filistovic, V.*; Galeriu, D.*; 本間 俊充; Kanyar, B*; Krajewski, P.*; Kryshev, A. I.*; Kryshev, I. I.*; Nedveckaite, T.*; Ould-Dada, Z.*; Sanzharova, N. I.*; Robinson, C.*; Sjoblom, K.-L.*
Journal of Environmental Radioactivity 84(2), p.225-244(2005) ; (JAEA-J 00092)

 チェルノブイリ事故以後に収集されたデータは、陸域や水系の汚染に関する計算モデルの信頼性を検証するユニークな機会を提供した。IAEAの主催するBIOMASS計画の線量再構築ワーキンググループでは、イプト河シナリオが採用され、多数の被ばく経路が関係する評価モデルの検証に用いられた。チェルノブイリの北東約200kmに位置するイプト河流域の農耕地帯は、ロシアで最も汚染した地域の一つで、単位平方kmあたり平均800kBq、局所的には1500kBqの137Csに汚染され、この地域で実行されたさまざまな防護対策をモデル化する必要があった。淡水魚,きのこ類などの摂取を含むさまざまな経路に対して、事故後10年にわたるデータがモデル検証に利用できた。参加機関の最終結果に多くは、ファクター2から3で測定値との一致を見た。計算を実行するうえで困難な点は、局所汚染を考慮したデータの平均化,137Csの土壌深部への移行と可給態の同定,防護対策のモデル化であった。モデル予測の正確さは、少なくとも入力情報を解釈する解析者の経験や判断,パラメータ値の選択,不確かさの取り扱いに依存する。


330998
Analysis on lift-off experiment in Halden reactor by FEMAXI-6 code
鈴木 元衛; 草ヶ谷 和幸*; 斎藤 裕明*; 更田 豊志
Journal of Nuclear Materials 335(3), p.417-424(2004) ; (JAEA-J 00094)

 燃料解析コードFEMAXI-6により、ハルデン炉でのリフトオフ実験を、測定された詳細な試験条件を用いて解析した。燃料棒内部の過圧による被覆管のクリープアウトの影響を分析するために、二種の仮定に基づいて計算した燃料中心温度が実測値と比較した。仮定(1)は、過圧による被覆管のクリープアウト期間中、ペレット−被覆管のボンディング層を通した高い熱伝達が維持される仮定、仮定(2)は、被覆管のクリープアウトによってボンディング層が破壊される仮定である。実測された中心温度上昇は、仮定(1)の計算結果より数十度高いが、この差は仮定(2)に基づく計算結果よりはるかに小さい。したがって、実測された中心温度上昇は、被覆管のクリープアウトにより引き起こされたペレット片の不規則な再リロケーションなどによる実効的熱伝達低下に起因すると考えることが適当である。


330999
Multi-machine comparisons of H-mode separatrix densities and edge profile behaviour in the ITPA SOL and Divertor Physics Topical Group
Kallenbach, A.*; 朝倉 伸幸; Kirk, A.*; Korotkov, A.*; Mahdavi, M. A.*; Mossessian, D.*; Porter, G. D.*
Journal of Nuclear Materials 337(339), p.381-385(2005) ; (JAEA-J 00095)

 ITPA活動で収集した周辺プラズマ分布のデータを利用して、6つのダイバータトカマクの典型的なELMyHモードについて、周辺輸送障壁での電子密度・温度分布,それらの勾配、及び最も急勾配になる領域の幅などに注目し、解析結果をまとめた。特に、セパラトリクスにおける密度は、高密度ダイバータ生成に重要な要因であり、ペデスタルにおける密度との比を比較し0.3-1まで広範囲で異なることがわかった。密度勾配の特性長に関して、中性粒子の密度や荷電交換反応の発生確率などのパラメータを設定し、スケーリングを行った。また、電子温度分布の勾配の特性長と急勾配領域の幅は、装置の主半径の大きさとともに増加することが明らかとなった。


331000
Cladding technique for development of Ag-In-Cd decoupler
勅使河原 誠; 原田 正英; 斎藤 滋; 菊地 賢司; 粉川 広行; 池田 裕二郎; 川合 將義*; 栗下 裕明*; 小無 健司*
Journal of Nuclear Materials 343(1-3), p.154-162(2005) ; (JAEA-J 00096)

 大強度陽子加速器計画(J-PARC)では物質・生命科学施設として核破砕中性子源の建設が進められている。早い時間減衰を持ったパルス中性子ビームを得るため、非結合型及びポイゾン型減速材を用いる。これらの減速材はデカップラと呼ぶ熱中性子吸収材を用いる。炭化硼素(B4C)が多く用いられてきた。しかしながら、MWクラスの中性子源では(n,α)反応のHe生成を起因とするスウェリングのため使用が困難である。そこで、B4Cに似た特性を有するヘリウム生成を伴わない共鳴吸収型の材料としてAg-In-Cd系の合金に着目した。この合金をCdの焼損の観点からAg-Cd及びAg-In合金の2枚に分割する。熱除去及びコロージョンの観点から減速材の構造材であるアルミ合金(A6061-T6)と密着される必要がある。そのため、Ag-In, Ag-Cd合金とアルミ合金とに十分な接合を得ることを目的として、熱間等方加圧接合(HIP)を用いて接合試験を行った。温度:803K,圧力:100MPa,保持時間:1時間で十分な接合が得られた。特に、Ag-In板をAg-Cd板で挟み、それをアルミ合金で被覆した条件がより良い接合となった。拡散層部には非常に硬い層が観測されたが、接合部の破断応力は設計応力の20MPaを越える値であった。


331001
Effect of proton beam profile on stress in JSNS target vessel
粉川 広行; 石倉 修一*; 佐藤 博; 原田 正英; 高玉 俊一*; 二川 正敏; 羽賀 勝洋; 日野 竜太郎; 明午 伸一郎; 前川 藤夫; 池田 裕二郎
Journal of Nuclear Materials 343(1-3), p.178-183(2005) ; (JAEA-J 00097)

 JSNSのために開発を進めているクロスフロー型(CFT)水銀ターゲットでは、ビーム窓近傍での水銀の停滞領域発生を抑制するために、水銀を陽子ビームに直交するようにフローガイドブレードに沿って流す。これまで、水銀のモデルに弾性モデルを用いて動的応力解析を行ってきた。しかしながら、実際に陽子ビームを用いた最近の実験結果から、水銀のモデルにカットオフ圧力モデルを用いた方が実験結果に近い動的応力が得られることが示された。そこで、カットオフ圧力モデルを用いて動的応力解析を行った結果、半円筒型ビーム窓に発生する動的応力が、平板型ビーム窓に発生する応力よりも低くなることを明らかにした。また、陽子ビームを広げてピーク発熱密度を218W/ccまで低減して、ビーム窓の発生応力を許容応力以下にした。一方、陽子ビーム窓を広げたため、フローガイドブレード先端の発熱密度が高くなり、許容応力を超える熱応力が発生したが、ブレードの先端の形状を、水銀の流動分布に影響を及ぼさない範囲で薄くすることによって、発生する熱応力を許容応力以下にした。


331002
Radiation hardening and -embrittlement due to He production in F82H steel irradiated at 250℃ in JMTR
若井 栄一; 實川 資朗; 富田 英樹*; 古谷 一幸; 佐藤 通隆*; 岡 桂一朗*; 田中 典幸*; 高田 文樹; 山本 敏雄*; 加藤 佳明; 田山 義伸; 芝 清之; 大貫 惣明*
Journal of Nuclear Materials 343(1-3), p.285-296(2005) ; (JAEA-J 00098)

 低放射化マルテンサイト鋼F82Hの照射硬化と脆化に及ぼすHe生成効果とその生成量依存性を引張試験片(SS-3)と破壊靭性試験片(0.18DCT)を用いて評価した。中性子照射はJMTR炉にて250℃で約2.2dpaまで行った。本研究ではHeを材料中に生成させるためにボロン10を添加した。He生成量を変数にするため、ボロン10とボロン11の配合比(0:1, 1:1, 1:0)を変えて、ボロン添加総量を60mass ppmに揃えた3種類の添加材を作製し、照射前後の特性を比較してボロンの化学的な効果を最小限に抑えた。また、これらの試料での生成He量は約5, 150, 300appmである。一方、ボロンの効果を完全に排除した50MeVのサイクロトロン照射実験も行った。この方法ではボロンを添加しないF82H鋼を用い、直径3mm,厚さ0.3mmのTEM片に約120℃で約85appmのHeを均一に注入した後、スモールパンチ試験によって強度特性を評価した。この弾き出し損傷量は約0.03dpaであった。これらの試験結果から中性子照射後の降伏応力と最大引張応力はHe生成量の増加に伴ってやや増大した。また、中性子照射後の延性脆性遷移温度(DBTT)は40℃から150℃の範囲にあり、He生成量の増加に伴って高温にシフトした。また、サイクロトロンHe照射法によっても同様のHeによるDBTTシフト効果が確認できた。


331003
Current status of 1 MW pulse spallation neutron source (JSNS) of J-PARC
池田 裕二郎
Journal of Nuclear Materials 343(1-3), p.7-13(2005) ; (JAEA-J 00099)

 原研とKEKが共同で進めている大強度陽子加速器計画(J-PARC)の物質生命科学実験施設の中心施設となる1MWパルス核破砕中性子源の現状を報告する。中性子源を構成する機器の設計現状と製作,建設スケジュールとともに、水銀ターゲット容器の寿命に関する材料選択,モデレータ材料など、残された技術開発課題とその取り組みを紹介する。


331004
Control of particle size and density of Li2TiO3 pebbles fabricated by indirect wet processes
土谷 邦彦; 河村 弘; 高山 智生*; 加藤 茂*
Journal of Nuclear Materials 345(2-3), p.239-244(2005) ; (JAEA-J 00101)

 核融合炉ブランケットで用いられるトリチウム増殖材として、取扱いの容易さ,トリチウム放出特性等の観点からリチウムタイタネイト(Li2TiO3)微小球が有望視されている。一方、微小球充填率の向上等から、大小2種類の直径を有するLi2TiO3微小球が求められている。そのため、間接湿式法のうち、脱水型ゲル化法及び置換型ゲル化法を考案し、Li2TiO3微小球の製造試験を行った。その結果、焼結後の微小球の直径をφ0.2〜2.0mmに制御することができた。また、製造目標値である焼結密度80〜85%T.D.及び結晶粒径5μm以下であるとともに、化学形,化学分析値等の特性も十分満足できる結果となった。以上より、JMTRで実施する照射試験用Li2TiO3微小球の製造に見通しが得られた。


331005
Development of three kinds of tissue substitutes for a physical phantom in neutron dosimetry
津田 修一; 遠藤 章; 山口 恭弘
Journal of Nuclear Science and Technology 42(10), p.877-887(2005) ; (JAEA-J 00102)

 中性子線量測定用物理ファントムに必要な3種類の組織等価材料を開発した。中性子による吸収線量分布について、人体の軟組織,肺及び骨組織と等価な特性を有するように、数種類の高分子樹脂を合成し、元素組成及び密度を調整した。実験的に本材料の特性評価を行うために、単色中性子源(0.565, 5, 14.2MeV)と252Cf中性子源を用いて、材料内の吸収線量分布の測定・評価を行った。その結果、モンテカルロ放射線輸送計算コードMCNPによる計算結果は、測定した各材料内の吸収線量分布をよく再現することがわかった。同様の手法で0.1〜20MeVの中性子に対する本材料内の吸収線量分布のエネルギー特性を評価した結果、開発した各材料は一般的な速中性子場において、人体組織に等価な特性を有することがわかった。


331006
Impedance spectra analysis of thermoresponsive poly(acryloyl-L-proline methyl ester) gel membrane in LiCl solution
Chen, J.; 浅野 雅春; 坪川 紀夫*; 前川 康成; 八巻 徹也; 吉田 勝
Journal of Polymer Science, Part B; Polymer Physics 43(20), p.2843-2851(2005) ; (JAEA-J 00103)

 γ線キャスト重合により、熱応答性ポリ(アクリロイル-L-プロリンメチルエステル)ゲル膜を合成した。LiCl溶液を満たした電極付きH型ガラスセルを用いたインピーダンス装置により、ゲル膜のイオン導電性を測定するための新しい手法を提案した。さらに、温度を変化させたインピーダンス分析の結果から、ゲル膜のイオン導電性は14℃で最も高いイオン導電率(約0.2S/cm)を示すことがわかった。このイオン導電性の温度依存性はポリ(アクリロイル-L-プロリンメチルエステル)ゲルの相転移に基づく複雑な非線形に起因していると、推察した。


331007
Analysis of MOX fuel behavior in reduced-moderation water reactor by fuel performance code FEMAXI-RM
鈴木 元衛; 斎藤 裕明*; 岩村 公道
Nuclear Engineering and Design 227(1), p.19-27(2004) ; (JAEA-J 00104)

 低減速スペクトル炉の31%-Pu MOX燃料の熱的,機械的ふるまいに関する成立性を評価するため、106GWd/tHMまで照射されると仮定した1本の燃料棒の解析を、FEMAXI-6コードの拡張バージョンであるFEMAXI-RMコードによって行った。解析においては、燃料棒の設計仕様と照射条件が入力され、MOX及びUO2燃料における入手可能な物性値とモデルが相補的に利用された。計算の結果、FPガス放出率は数10%であるが、燃料棒内圧は冷却材圧力を越えず、燃料最高中心温度は2400Kとなった。また、ペレットスエリングによって生じた被覆管の直径増大は1%歪み以内であった。これらより、燃料棒の健全性は照射期間中保持されることが示された。しかし、MOX燃料の実際のスエリングふるまいは今後詳細に研究される必要がある。


331008
Analysis of mechanical load on cladding induced by fuel swelling during power ramp in high burn-up rod by fuel performance code FEMAXI-6
鈴木 元衛; 上塚 寛; 斎藤 裕明*
Nuclear Engineering and Design 229(1), p.1-14(2004) ; (JAEA-J 00105)

 高燃焼BWR燃料棒における燃料スエリングによる被覆管への機械的負荷を燃料ふるまいコードFEMAXI-6によって解析した。このコードは有限要素法をもちいて軽水炉燃料の通常運転及び過渡(事故ではなく)条件における燃料ふるまいを解析するために開発された。高燃焼度燃料の出力ランプにおいては、即発的なペレットスエリングは定常速度のスエリングモデルから予測されるレベルを有意なほど超え、被覆管に周方向の大きな歪みを与えることがある。この現象をFPガスバブル成長を考慮に入れた新しいスエリングモデルによってシミュレートし、この新モデルが、照射後試験データと比較して、被覆管の直径拡大の満足すべき予測を与えることを見いだした。このバブル成長モデルはバブルサイズ,表面張力,内圧とバブルに働く外圧との間の平衡関係を仮定し、バブルサイズの決定計算とFPガス原子の拡散方程式との連立解を求める。さらに、コードに組み込まれた、ペレットの外面と被覆管内面に強固な機械的結合を想定するボンディングモデルにより、ランプ時における被覆管の二軸応力状態が予測された。


331009
Conference summary; Progress in experiments on confinement, plasma-material interactions and innovative confinement concepts
二宮 博正
Nuclear Fusion 45(10), p.S13-S31(2005) ; (JAEA-J 00107)

 第20回IAEA核融合エネルギー会議で発表された閉じ込め実験,プラズマと材料の相互作用実験、及び革新的閉じ込め概念の三分野に関するサマリーである。発表のハイライトは、高ベータで高自発電流割合での長時間維持が電流拡散時間以上に達したこと,放電シナリオ最適化とそのITERへの外挿が顕著に進展したこと、及び閉じ込めと輸送物理に関する理解が大きく進んだことである。


331010
Small ELM regimes with good confinement on JET and comparison to those on ASDEX Upgrade, Alcator C-mod and JT-60U
Stober, J.*; Lomas, P. J.*; Saibene, G.*; Andrew, Y.*; Belo, P.*; Conway, G. D.*; Herrmann, A.*; Horton, L. D.*; Kempenaars, M.*; Koslowski, H.-R.*; Loarte, A.*; Maddison, G. P.*; Maraschek, M.*; McDonald, D. C.*; Meigs, A. G.*; Monier-Garbet, P.*; Mossessian, D. A.*; Nave, M. F. F.*; 大山 直幸; Parail, V.*; Perez, C. P.*; Rimini, F.*; Sartori, R.*; Sips, A. C. C.*; Thomas, P. R.*; Contributors to the EFDA-JET Workprogramme; ASDEX Upgradeチーム
Nuclear Fusion 45(11), p.1213-1223(2005) ; (JAEA-J 00108)

 JET装置では、閉じ込めがよく、かつELMの小さな運転領域を開発している。ASDEX Upgrade装置におけるtype II ELM、Alcator C-mod装置におけるEDA H-modeそしてJT-60U装置におけるgrassy ELMを再現する実験をJET装置で行った。その結果、安全係数の高い領域でポロイダルベータ値を高くするという、JT-60U装置で開発されたgrassy ELMの運転シナリオを用いたときに、振幅の小さなELMを得ることに成功した。プラズマ電流の高い領域での試験はされていないが、この運転シナリオはITERに適用できる可能性を持っている。


331011
Development of PVB film for low-dose dosimetry in radiation processing
Solomon, H. M.*; 小嶋 拓治
Nucleus 33, p.16-20(2005) ; (JAEA-J 00109)

 ポリブチルブチラル(PVB)と酸感応色素であるマラカイトグリーン(LMG)との混合によるフィルムに基づく低線量用線量計の開発を行った。フィルム線量計の感度を向上するために、抱水クロラール(RX)を添加した。LMGをPVB1gに対して9.07×10-5モルとし、異なるRX:LMG比の試料を検討した。その結果、単位厚さあたりの吸光度(波長628nm)は、線量及びRX濃度とともに直線的に増加した。RXのLMGに対して10倍以上の場合では、PVB-LMG線量計システムは、60Coγ-線に対して1-100Gyの測定範囲を持つことが明らかとなった。


331012
In-beam γ-ray spectroscopy of 240U using the (18O,16O) reaction
石井 哲朗; 重松 宗一郎; 浅井 雅人; 牧嶋 章泰*; 松田 誠; 金子 順一*; Hossain, I.*; 市川 進一; 河野 俊之*; 小川 雅生*
Physical Review C 72(2), p.021301_1-021301_5(2005) ; (JAEA-J 00110)

 200MeVの18Oビームと238U標的による2核子移行反応により、中性子過剰核である240Uの脱励起γ線を測定した。SiΔE-E検出器を用いて16O粒子と同時計測することにより、240Uのγ線であることを同定した。16O粒子の運動エネルギーの値を使い、240Uの励起エネルギーを中性子分離エネルギー以下に限定した。240Uにおいて、12+状態までの基底バンドと9-状態までのKπ=0-の8重極バンドを確立した。240Uの8重極バンドヘッドは、236,238Uのものよりも100keVほど高いエネルギーに位置する。このことは、U原子核の8重極相関が、中性子数144から146の領域で第2の極大値を持つことを示唆している。


331013
Branching mechanism of intergranular crack propagation in three dimensions
板倉 充洋; 蕪木 英雄; 荒川 忠一*
Physical Review E 71(5), p.055102_1-055102_4(2005) ; (JAEA-J 00111)

 遅く進展する三次元の粒界割れ現象について、メゾスケールの有限要素法モデルを新たに構築しシミュレーションを行った。その結果、粒界の幾何学的なランダムネスによって亀裂先端の一部が進展を阻害され、その部分を迂回する過程で亀裂に分岐ができる三次元に独特なメカニズムを発見した。またより一般的な連続空間での亀裂進展現象においても同様なメカニズムによって亀裂の分岐が生じる可能性を指摘した。


331014
Fundamental and harmonic emission from the rear side of a thin overdense foil irradiated by an intense ultrashort laser pulse
Eidmann, K.*; 河内 哲哉; Marcinkevicius, A.*; Bartlome, R.*; Tsakiris, G.*; Witte, K.*; Teubner, U.*
Physical Review E 72(3), p.036413_1-036413_9(2005) ; (JAEA-J 00112)

 固体ターゲットを用いた高次高調波発生の基礎過程を明らかにするために、パルス幅150fsの超高強度チタンサファイアレーザーを照射したアルミニウムフォイルターゲット裏面からの発光を詳細に調べた。実験結果とParticle-in-Cellシミュレーションとの比較により、裏面発光はレーザーの共鳴吸収によってフォイル表面に生成した電子バンチが裏面側の電子の振動を誘起させ、双極子放射を起こすことを明らかにした。


331015
Reduced heat transport between edge-localized-mode bursts at low collisionality and small poloidal larmor radius
浦野 創; 滝塚 知典; 鎌田 裕; 大山 直幸; 竹永 秀信; 三浦 幸俊
Physical Review Letters 95(3), p.035003_1-035003_4(2005) ; (JAEA-J 00113)

 HモードにおけるELM間に起こる熱輸送についての無次元パラメータ依存性を調べた。低い周辺衝突周波数では、ELM間の熱輸送に割り当てられる熱流束は低減し、ELM損失パワーが増大した。そのELM間においては、エネルギー閉じ込め時間は周辺衝突周波数及びポロイダルラーマ半径の減少とともに増大した。ELM間に起こる電子の熱拡散係数は、ELMのバーストにおいて崩壊するプラズマ周辺領域において、イオンの新古典輸送レベルにまで低下することがわかった。


331016
Intermediate glassy phase for the mean-field Potts glass model in a field
横田 光史
Physics Letters A 344(2-4), p.211-219(2005) ; (JAEA-J 00114)

 外場中のポッツグラス模型に対する平均場理論において、外場方向の秩序変数に対するレプリカ対称解の安定性を調べた。ポッツ成分の数が4以上のときに、外場と垂直方向のグラス秩序が形成されるよりも高い温度でレプリカ対称性の破れが起こっていることを示した。レプリカ対称性の破れ方も求めた。


331017
Blister formation in rutile TiO2 (100) thin films by helium ion implantation
山本 春也; 永田 晋二*; 武山 昭憲; 吉川 正人
Transactions of the Materials Research Society of Japan 30(3), p.789-792(2005) ; (JAEA-J 00115)

 二酸化チタン(TiO2)は優れた光触媒材料であるが、薄膜状で光触媒反応を利用する場合には、薄膜表面の微細構造化による表面積の拡大が必要とされる。本研究では、ヘリウムなど希ガスを材料表面にイオン注入した場合に形成されるブリスター(膨れ)を利用して薄膜表面の微細構造の形成制御を試みた。今回は、ヘリウムイオンの照射エネルギー(1〜4keV),照射量(1×1016〜2.3×1017ions/cm2)など、ブリスター形成条件について調べた。実験では、レーザー蒸着法によりα-Al2O3基板上に(100)面に結晶配向したルチル型TiO2膜を作製し、室温でヘリウムイオン照射を行った。走査型電子顕微鏡(SEM),原子間力顕微鏡(AFM)により薄膜の表面構造の観察を行い、またX線回折(XRD),ラザフォード後方散乱(RBS)により結晶構造評価を行った。その結果、照射エネルギー:2〜4keV,照射量:4×1016ions/cm2以上で直径が約100nm、高さが20nmのブリスターが照射領域に一様に形成することが確認できた。また、照射量に対してブリスターの大きさがほとんど変化しなかったが、照射量が2×1017ions/cm2以上になるとブリスター表面の剥離が発生することがわかった。


331018
Characterization of surface carbon films on weathered Japanese roof tiles by soft X-ray spectroscopy
村松 康司; 山下 満*; 元山 宗之*; 広瀬 美佳*; Denlinger, J. D.*; Gullikson, E. M.*; Perera, R. C. C.*
X-Ray Spectrometry 34(6), p.509-513(2005) ; (JAEA-J 00116)

 軟X線分光法を用いて、いぶし瓦表面炭素膜の耐候性を調べた。軟X線吸収分光測定から、炭素膜の表面では酸化反応が進行し、この酸化状態は主としてカルボキシル基の形成で説明できた。軟X線発光分光測定から、数年程度の外部環境被爆では炭素膜内部の層構造は乱れないことがわかった。以上から、いぶし瓦の耐候性は自然酸化反応が炭素膜の表面から進行することで理解できた。


331019
高温ガス炉核熱を用いた熱化学水素製造法の研究開発
笠原 清司; 久保 真治; 小川 益郎
伝熱 44(188), p.25-30(2005) ; (JAEA-J 00117)

 原研では高温ガス炉水素製造システムを構成する高温ガス炉,高温ガス炉と水素製造プロセスとのシステムインテグレーション技術,水素製造プロセスの各々について、研究開発を進めている。本稿では、高温ガス炉水素製造システムの研究開発の経緯と現状を、熱化学水素製造法ISプロセスに重点を置いて概説する。


331020
下北沖海域における海況予測システムの構築
印 貞治*; 島 茂樹*; 中山 智治*; 石川 洋一*; 外川 織彦; 小林 卓也; 川村 英之
月刊海洋 37(9), p.674-680(2005) ; (JAEA-J 00118)

 本報告は、日本海洋科学振興財団,京都大学及び原研が協力して実施している下北沖海域における現況解析・海況予測システムの構築について解説するものである。この事業の中で、原研は同財団からの受託研究として、気候値を使用した海水循環モデル及び海水中放射性核種移行モデルの整備、並びにモデルの検証と改良のための沈降粒子特性データの取得実験を担当している。本解説では、解析・予報システムの概要と整備の進捗状況を述べるとともに、システムを使用した予備計算結果を示した。予備計算の結果、データ同化モデルにより西部北太平洋における解析・予報結果が改善されることが理解され、また下北沖海域特有の沿岸モード(冬季)と渦モード(夏季)がほぼ再現されることがわかった。


331021
公開文献から読み取れるモンテカルロ計算における分散低減法の懸念事項; モンテカルロ計算の論理=経験から科学へ
桜井 淳; 山本 俊弘
日本原子力学会和文論文誌 4(3), p.219-226(2005) ; (JAEA-J 00121)

 モンテカルロ法による中性子深層透過計算のような固定線源問題においては、分散低減法の適用は、効率的で信頼性の高い計算のために最も重要である。しかし、公開文献に記されたMCNP入力は最適解になっていない。最も懸念すべき事項は、ウェイトウインドウ法におけるウェイト下限値とポイントエスティメータの設定法である。文献には、ウェイト下限値の推定法として、経験による方法かMCNPウエイトウインドウ・ジェネレータによる方法が記されている。後者の場合、チューニング操作なしにそのまま利用されている。異常に大きなウェイト下限値が入力されると、多くの中性子がルシアンルーレットによって無意味に殺されてしまう。ウェイト下限値の推定法としては、今後、標準分散低減法として、随伴線束法を採用する必要がある。モンテカルロ計算は、これまでの経験による方法から随伴線束法のような科学的方法に方向転換する必要がある。


331022
新しい海水ウラン捕集システムの提案
瀬古 典明; 笠井 昇; 清水 隆夫*; 玉田 正男
日本海水学会誌 59(5), p.316-319(2005) ; (JAEA-J 00122)

 モール状捕集材を海底から立ち上げて係留するシステムにおいて、1kgあたり1.5gのウランを捕集できる捕集材で年間1200トンのウランを捕集するには、捕集材の長さを60m、係留間隔を8mとした場合、捕集材210万本を係留する必要があり、係留面積は134km2となると推定された。モール状捕集材を用いて海水中のウランを捕集するのに適した海域は、南西諸島から土佐湾の水深100mから200mの領海内と考えられ、総面積はおおよそ6000km2に達する。


331023
微視的乱流のδfシミュレーション
井戸村 泰宏
プラズマ・核融合学会誌 81(8), p.581-592(2005) ; (JAEA-J 00123)

 ジャイロ運動論的粒子シミュレーションはトカマクプラズマの微視的乱流を研究するための有効な手段である。ジャイロ運動論的粒子シミュレーションにおける標準的な手法となっているδf法は、粒子ノイズの低減により粒子シミュレーションの効率を大幅に向上させ、完全トーラス配位の乱流シミュレーションを可能にした。本稿ではδf法を概説し、完全トーラス配位のジャイロ運動論的粒子シミュレーションにおける問題点を議論する。


331024
論文アブストラクトから原子分子の状態の情報を検出,抽出する方法の研究
佐々木 明; 村田 真樹*; 金丸 敏幸*; 白土 保*; 井佐原 均*; 上島 豊; 山極 満
プラズマ・核融合学会誌 81(9), p.717-722(2005) ; (JAEA-J 00125)

 科学論文のアブストラクト中の原子分子の状態を抽出して表示し、研究者の論文の内容の理解と、原子分子データの収集を支援するための、情報科学の成果を応用した新しいソフトウエアの開発について報告する。原子分子データは基礎科学,産業応用のいろいろなシミュレーションで利用されているが、多種,多量の原子分子データの収集,評価がこれまで問題であった。本研究では、電子化された論文アブストラクト中で、原子・イオン種,電子配置,微細構造などの固有情報が、特定の書式に従って記述されることに注目し、テキスト処理の技術を応用したプログラムを開発してそれらをほぼ確実に抽出できるようにした。本研究の成果を活用することにより、研究者による科学論文の内容の理解,原子分子データの収集,評価,データベース化を効率化する可能性について議論する。


331025
Recent RF experiments and application of RF waves to real-time control of safety factor profile in JT-60U
鈴木 隆博; 諫山 明彦; 井手 俊介; 藤田 隆明; 及川 聡洋; 坂田 信也; 末岡 通治; 細山 博己*; 関 正美; JT-60チーム
AIP Conference Proceedings 787 , p.279-286(2005) ; (JAEA-J 00126)

 JT-60において、低域混成波による電流駆動とモーショナルシュタルク効果による安全係数分布計測を用いた実時間安全係数分布制御システムを開発した。実時間制御のクロックである10ms以内で安全係数分布を高速に評価するための計算手法を開発し、精度よく安全係数分布を計算できることを示した。低域混成波の位相制御により電流駆動位置を制御した。中心での安全係数q(0)〜1の正磁気シアプラズマを対象にq(0)〜1.3の正磁気シア安全係数分布を目標として制御を行ったところ、安全係数分布は目標分布に近づき、q(0)〜1.3の状態を低域混成波が安定に入射されている間(3秒間)維持した。電子サイクロトロン波による新古典テアリングモードの安定化及び、プラズマの着火・立ち上げについても本招待講演において報告する。


331026
Analytical results of coolant flow reduction test in the HTTR
高松 邦吉; 中川 繁昭; 伊与久 達夫
Proceedings of 11th International Topical Meeting on Nuclear Reactor Thermal Hydraulics (NURETH-11) (CD-ROM) , 12p.(2005) ; (JAEA-J 00127)

 高温工学試験研究炉(HTTR)では、安全性実証試験として循環機停止試験を実施しており、冷却材流量低下事象に対して原子炉を緊急に停止させなくても、原子炉出力は安定状態に落ち着き、炉内温度の過渡変化が非常に緩慢であるという高温ガス炉の固有の安全性を実証している。本研究では、循環機停止試験の試験データを用いて、動特性解析SIRIUSコードの検証を行った。SIRIUSコードは、原子炉圧力容器表面からの放熱による原子炉残留熱挙動を解析でき、1点炉近似動特性を考慮した原子炉出力の変化や原子炉圧力容器内の温度分布を求めることができる。検証の結果、解析結果は試験データを再現していることが明らかとなり、SIRIUSコードによる炉心動特性解析は妥当であることを確認できた。


331027
Simultaneous measurement of fluid temperature and phase during water jet injection into high temperature melt
柴本 泰照; 久木田 豊*; 中村 秀夫
Proceedings of 11th International Topical Meeting on Nuclear Reactor Thermal Hydraulics (NURETH-11) (CD-ROM) , 15p.(2005) ; (JAEA-J 00128)

 溶融鉛ビスマス中に貫入する水ジェットの挙動について実験的に検討した。両相の混合と相互作用を流体温度と流体相判別を同時測定することで検出した。計測には、本実験のために新たに開発したプローブを使用した。従来研究例の多い融体注入モードにおいては、水中に投入された融体の温度低下によって膜沸騰が不安定になることが、蒸気爆発の原因(トリガリング)であると考えられている。一方、本研究の対象とする冷却材注入モードでは、融体中に注入された水の温度は上昇し続け、これは一般的には膜沸騰を安定化させる効果を持つはずである。しかしながら、本研究の実験においては、水及び融体の初期温度が最も高い場合に最も不安定かつ急速な蒸気生成が起こり、融体注入モードとは明らかに異なる現象が起こっていることが明らかとなった。融体及び水の初期温度とジェット速度を系統的に変えた実験の結果から、このような不安定現象は、融体と水が液液接触した時の界面温度が水の均質核生成温度を超え、かつキャビティ内に大量の飽和水が蓄積されているときに起こることが明らかになった。一方、界面温度が水の均質核生成温度より十分に低い場合には安定な沸騰を維持できることも明らかになった。


331028
Numerical simulation of droplet dynamics using level set method
渡辺 正
Proceedings of 11th International Topical Meeting on Nuclear Reactor Thermal Hydraulics (NURETH-11) (CD-ROM) , 8p.(2005) ; (JAEA-J 00129)

 浮遊液滴は、容器壁の影響を受けないため、高温の溶融金属の物性測定に利用される。粘性は、液滴の径方向の振動の減衰から、また表面張力は、振動数から線形理論に基づき求められることが多い。本報告では、液滴の3次元振動挙動を数値シミュレーションにより求め、液滴の径方向の振動数と減衰挙動を調べた。シミュレーションには、ナビエストークス方程式と液滴界面位置の輸送方程式を連立させて解くレベルセット法を用い、液滴形状として球面調和関数による変形を与えた。2次元計算と3次元計算の結果を比較したところ、最低次の変形に対しては、振動数に差が出るものの、減衰については、いずれも線形理論と一致した。2次元計算については、3次の変形に対しては減衰が過小に計算され、また、4次の変形では不規則に振動する現象が見られ、高次のモードに対しては2次元計算では不十分であることがわかった。また、変形振動の周波数は、変形振幅が大きくなるほど低下するが、低下の度合いは、振幅が大きくなるほど理論値よりも小さいことが示された。これにより、変形の振幅が液滴径の30%を超えると非線形性が顕著になるため注意が必要であることを明らかにした。


331029
RANNS code analysis on the local mechanical conditions of cladding of high burnup fuel rods under PCMI in RIA-simulated experiments in NSRR
鈴木 元衛; 斎藤 裕明*; 更田 豊志
Proceedings of 2005 Water Reactor Fuel Performance Meeting (CD-ROM) , p.579-601(2005) ; (JAEA-J 00130)

 RANNSコードは反応度事故条件における1本の燃料棒ふるまいを解析する。このコードは二種の力学モデルを持つ。軸方向セグメント全長に対する一次元モデルと、新開発の、ペレット1個長に対する局所変形モデルである。NSRR実験OI-10及びOI-11の解析を行い、被覆管の変形をこの二モデルとPIEデータとの間で比較した。FEMAXI-6で解析したパルス照射前の燃料状態に基づき、RANNSによりパルス実験における変形を計算した。二次元モデルにより、被覆管の塑性歪みの局所的な不均一やそれに伴う応力の差を計算し、PIEデータと比較し、応力の差の影響を検討した。


331030
NSRR RIA-simulating experiments on high burnup LWR fuels
更田 豊志; 杉山 智之; 笹島 栄夫; 永瀬 文久
Proceedings of 2005 Water Reactor Fuel Performance Meeting (CD-ROM) , p.633-645(2005) ; (JAEA-J 00131)

 NSRRでは軽水炉燃料の反応度事故(RIA)時挙動の研究を行っている。最近実施したOI-10及び-12実験では燃料破損には至らず、OI-11実験では破損時エンタルピが高いという結果を得た。これらの結果は、PWR運転中の耐食性が向上した新型被覆管の性能を反映しており、これらの被覆管を備えた燃料はジルカロイ4被覆燃料に比べてより大きな安全裕度を有すると言える。加えて、大粒径ペレットによる粒界ガス蓄積量の低減は、OI-10実験で観測されたように、RIA時のFPガス放出量を抑制し得る。VA-1実験は燃焼度78MWd/kgUのMDA被覆PWR燃料に対して実施した。高い燃焼度及び約81μmという厚い酸化膜にもかかわらず、破損時エンタルピは燃焼度50〜60MWd/kgUで40μm程度の酸化膜を持つ燃料に対する結果と同程度だった。この結果は、ペレットの固体熱膨張がPCMIの主要因であるため、ペレット周辺部の高燃焼度組織(リム組織)が破損時エンタルピの低下に及ぼす影響は小さいことを示唆している。


331031
Embrittlement and fracture behavior of pre-hydrided cladding under LOCA conditions
永瀬 文久; 更田 豊志
Proceedings of 2005 Water Reactor Fuel Performance Meeting (CD-ROM) , p.668-677(2005) ; (JAEA-J 00132)

 原研では高燃焼度燃料のLOCA時挙動を調べる体系的な研究計画を進めている。同計画の一環として再冠水時に燃料棒が急冷される際の破断限界を明らかにするため、燃焼度39〜44GWd/tの照射済PWR燃料から採取したジルカロイ-4被覆管を対象に急冷時耐破断特性試験を実施した。破断限界は被覆管が吸収している初期水素量の増加によって低下するものの、照射済燃料被覆管と水素を吸収させた未照射被覆管との間で明らかな違いは見られなかった。また、あらかじめ酸化・水素吸収させ、急冷を経た被覆管に対するリング引張及び圧縮試験を通じて急冷による延性の低下について調べ、欧米で規制に用いられている延性ゼロ基準は、急冷時破断特性試験に比べてより保守的な結果を与えることなどを示した。


331032
VEGA; An Experimental study of radionuclides release from fuel under severe accident conditions
工藤 保; 日高 昭秀*; 更田 豊志
Proceedings of 2005 Water Reactor Fuel Performance Meeting (CD-ROM) , p.883-889(2005) ; (JAEA-J 00133)

 VEGA計画を、日本原子力研究所において実施している。本計画では、シビアアクシデント条件下における燃料からの放射性物質放出に関する実験及び数値計算による実験後解析を行っている。雰囲気圧力,燃料温度,不活性または水蒸気雰囲気及びMOXに関して放出に対する影響を研究した。これらの影響は、高温及び高圧を含む実験実施の困難さからこれまでほとんど研究されてこなかった。加圧下におけるCsの放出は、大気圧下に比べて低下した。UO2の融点より低く、燃料が泡状化するような温度領域においてCsの放出が促進された。水蒸気雰囲気においては、He不活性雰囲気に比べてCs及びRuの放出が増加した。2800K以上においてPuの放出量が、それまでの温度に比べて約3桁増加した。


331033
Modification of ring tensile test for LWR fuel cladding
杉山 智之; 永瀬 文久; 更田 豊志
Proceedings of 2005 Water Reactor Fuel Performance Meeting (CD-ROM) , p.912-932(2005) ; (JAEA-J 00134)

 反応度事故条件下では膨張する燃料ペレットとの機械的相互作用により高燃焼度燃料被覆管が破損し得る。被覆管の破損限界を評価するため、ジルカロイ被覆管の機械特性を適切に測定するためのリング引張試験の改良を行った。その結果、試験片の摩擦や曲げモーメントに起因する不要因子を最小限にする試験手法及び試験片形状を開発した。その手法を非照射ジルカロイ4被覆管に適用し、機械特性の水素吸収量及び温度に対する依存性を評価した。水素濃度700ppm以上においては、300から473Kまでの温度範囲において明確な延性の増大が見られた。一方、500ppm以下の場合は300から573Kの温度範囲において延性の温度依存性が比較的小さいことを明らかにした。


331034
Lattice dynamics of methane hydrate
山内 宏樹; 井川 直樹; 石井 慶信
Proceedings of 5th International Conference on Gas Hydrates (ICGH-5), Volume 5 , p.1615-1618(2005) ; (JAEA-J 00136)

 格子ダイナミクスに関する情報を得るために、メタンハイドレート粉末試料を用いて中性子非弾性散乱実験を行った。非干渉性散乱の影響を極力含まない、より詳細なフォノンの情報を得るために、非干渉性散乱をほとんど含まないCD4-D2Oを用いて実験を行った。6.5meVと10meV付近に、おもに音響フォノン由来と考えられるあまり温度依存性を示さない、比較的明瞭なピークが観測された。一方、10Kで観測された4meVの小さな肩は、明瞭な温度依存性を示し、100Kではブロード化しピーク高が減じるような振る舞いであった。これは、メタンハイドレートの大ケージ内に存在するメタン分子の振動モードが10Kでは調和振動的であるのに対し、100Kでは非調和効果の影響が増していることに対応する現象と考えられる。


331035
Maximum entropy method analysis of neutron powder diffraction patterns of methane deuterohydrates
星川 晃範; 井川 直樹; 山内 宏樹; 石井 慶信; Stern, L. A.*
Proceedings of 5th International Conference on Gas Hydrates (ICGH-5), Volume 5 , p.1619-1626(2005) ; (JAEA-J 00137)

 メタンハイドレートのStructure Iと呼ばれる構造では、水分子が水素結合により12面体と14面体の二種類のカゴを作り、これらのカゴを積み重ねた結晶構造をしている。しかし、カゴに内包されたメタン分子中の水素の原子座標などは特定されていない。そこで、内包されたメタンの構造を明らかにするため、原研のJRR-3に設置してあるHRPDを用いて回折パターンを測定し、Rietveld法とマキシマムエントロピー法による精密構造解析を行った。水素と重水素では中性子散乱長の符号が異なることから、重水とメタン(CH4)でメタンハイドレート試料を合成し、カゴ中の重水素とメタンの水素を区別した。カゴの種類によりメタンの構造に違いがあり、さらにデバイワラー因子の温度依存性及び中性子散乱長密度分布がカゴの種類により違うことが明らかになった。


331036
Enhanced electrochemical oxidation of spent organic solvent under ultrasonic agitation
杉川 進; 梅田 幹; 小林 冬実; 長田 正信*; 土尻 滋; 天野 昌江*
Proceedings of International Conference on Nuclear Energy System for Future Generation and Global Sustainability (GLOBAL 2005) (CD-ROM) , 4p.(2005) ; (JAEA-J 00138)

 銀電解酸化法によるα汚染された有機液体廃棄物の分解・無機化処理技術は、高温熱分解法などに比べて、低温及び常圧下で無機化が図れる安全性及び経済性に優れた方法である。このため、1996年からTBP-ドデカン溶媒での分解・無機化試験を行い、溶媒が完全にリン酸,二酸化炭素及び水に分解されることが確認されたが、電流効率が低いことが難点であった。このため、超音波による溶媒と銀2価イオン水溶液の強力な混合下で酸化分解を行い、電流効率の大幅な改善を図った。その結果、電流効率はTBP,ドデカン及びTBPの中間生成物の分解では、いずれも機械的攪拌に比べて2倍以上となった。これらの結果に基づいて、少量溶媒のための分解プロセスと多量溶媒のためのアルカリ過水分解とを組合せた分解プロセスを提案した。


331037
Study of the 17N reactor power monitor
米田 政夫
Proceedings of International Conference on Nuclear Energy System for Future Generation and Global Sustainability (GLOBAL 2005) (CD-ROM) , 5p.(2005) ; (JAEA-J 00139)

 原子炉で17O(n,p)17N反応により生成される17Nを測定することにより、原子炉出力モニターとして利用することができる(以下、N-17モニターと略)。今回、研究炉JRR-3において炉心で発生する17Nを計算及び実験により求め、17Nの原子炉出力モニターへの適用性についての検討を行った。その結果、N-17モニターは制御棒位置や燃料燃焼の影響を受けにくいという点において、原子炉出力モニターとして優れた特性を持つことがわかった。


331038
Sorption and migration of neptunium in porous sedimentary materials
田中 忠夫; 向井 雅之; 中山 真一
Proceedings of International Conference on Nuclear Energy System for Future Generation and Global Sustainability (GLOBAL 2005) (CD-ROM) , 6p.(2005) ; (JAEA-J 00140)

 再処理施設等から発生するTRU廃棄物のうち、アルファ核種濃度が低い廃棄物の相当量は浅地中処分が対象となる。TRU核種は浅地中環境で種々の化学形態をとるばかりではなく、土壌や岩石との相互作用も複数のメカニズムが関与しているとされている。このようなTRU核種の移行現象は、固液間相互作用として従来から用いられている単一の分配係数を用いるモデルでは十分に説明できない。本研究では、種々の土壌を対象としてネプツニウムの移行挙動をカラム実験で調べ、さらにカラム内移行メカニズム及び収着メカニズムを検討した。実験結果に基づき、移行現象を説明するための現象解析モデルを提案し、その適用性を検証した。


331039
Geologic disposal of radioactive waste produced by application of partitioning-transmutation technology to nuclear fuel cycle
中山 真一; 森田 泰治; 西原 健司; 大井川 宏之
Proceedings of International Conference on Nuclear Energy System for Future Generation and Global Sustainability (GLOBAL 2005) (CD-ROM) , 6p.(2005) ; (JAEA-J 00141)

 分離変換から発生する放射性廃棄物の量や物理的・化学的性状に基づいて、分離変換が廃棄物管理に及ぼす影響を定量的に評価した。分離後の高レベル廃棄物の容積は、分離しない場合のガラス固化体に比べて3分の1程度に減り、また定置面積は6分の1程度に減ると予想された。定置面積の減少は地層処分場の容量増加を意味する。


331040
Investigation on Innovative Water Reactor for Flexible Fuel Cycle (FLWR), 1; Conceptual design
内川 貞夫; 大久保 努; 久語 輝彦; 秋江 拓志; 中野 佳洋; 大貫 晃; 岩村 公道
Proceedings of International Conference on Nuclear Energy System for Future Generation and Global Sustainability (GLOBAL 2005) (CD-ROM) , 6p.(2005) ; (JAEA-J 00142)

 軽水炉技術に立脚し、現行軽水炉燃料サイクルに適合したプルトニウム有効利用を実現し、将来的には同一炉心構成の下で増殖型への発展が可能な革新的水冷却炉概念(FLWR)を、低減速軽水炉概念を発展させて構築した。本論文では、軽水炉技術によるプルトニウム利用高度化の考え方,FLWRの基本構成と主要特性、並び関連する要素技術の研究開発状況を報告する。


331041
Master plan and current status for feasibility study on thermal/hydraulic performance of reduced-moderation water reactor
大貫 晃; 高瀬 和之; 呉田 昌俊*; 吉田 啓之; 玉井 秀定; Liu, W.; 中塚 亨; 三澤 丈治; 秋本 肇
Proceedings of International Conference on Nuclear Energy System for Future Generation and Global Sustainability (GLOBAL 2005) (CD-ROM) , 6p.(2005) ; (JAEA-J 00143)

 日本原子力研究所は水冷却増殖炉(RMWR)高稠密格子炉心の熱流動成立性に関する研究・開発プロジェクトを電力,メーカ,大学の協力を得て平成14年度より開始した。RMWRは成熟した軽水炉技術を活用し、ウラン資源の有効利用,プルトニウムの多重リサイクル,高燃焼度,長期サイクル運転といった長期的なエネルギー供給を担える革新的な水冷却炉としての特徴を有している。RMWRの開発においては熱流動に関する成立性が大きな課題となっている。本研究では、研究・開発の全体計画を示すとともに、37本体系の大型試験装置による実験的な検討、並びに燃料棒間隙幅といった形状効果の解析的評価の実現を目指した3次元解析手法の開発に関する進展状況を述べる。現在までに間隙幅1.3mmと1.0mm体系における定常並びに過渡限界出力試験を行い、成立性を確認している。


331042
Investigation on Innovative Water Reactor for Flexible Fuel Cycle (FLWR), 2; Recycle characteristics
大久保 努; 内川 貞夫; 久語 輝彦; 秋江 拓志; 竹田 練三*
Proceedings of International Conference on Nuclear Energy System for Future Generation and Global Sustainability (GLOBAL 2005) (CD-ROM) , 6p.(2005) ; (JAEA-J 00144)

 軽水炉技術に立脚した将来の持続的なエネルギー供給のため、革新的水冷却炉(FLWR)概念の研究を原研で進めている。本論文では、種々の再処理方法の下でのFLWRのリサイクル特性の検討結果を報告する。転換比が0.9程度の高転換型炉心においても、比較的高い除染係数を有する簡素化PUREX法の下で、核分裂性プルトニウムの割合が60%以上であれば、リサイクルが可能である。増殖型炉心においては、比較的低い除染係数を有し全MAをリサイクル再処理法の下でもリサイクル可能であり、自らの炉から発生する全てのMAがリサイクルできることが示された。しかし、MAやFPの混入量に応じて炉心性能は低下する。


331043
System of the advanced volume reduction facilities for LLW at JAERI
樋口 秀和; 門馬 利行; 中塩 信行; 小澤 一茂; 藤平 俊夫; 須藤 智之; 満田 幹之; 黒澤 重信; 邉見 光; 石川 譲二; 加藤 貢; 佐藤 元昭
Proceedings of International Conference on Nuclear Energy System for Future Generation and Global Sustainability (GLOBAL 2005) (CD-ROM) , 6p.(2005) ; (JAEA-J 00145)

 日本原子力研究所は、表面線量率が2mSv/h以下の低レベル固体廃棄物を対象として、高い減容比と安定性が得られる溶融処理及び高圧縮処理を行う高減容処理施設を建設整備した。本施設により将来の処分に適した廃棄物パッケージを作製するとともに廃棄物の蓄積を減少することができる。本施設は解体分別保管棟及び減容処理棟から構成される。解体分別保管棟の解体設備では、タンクや塔槽類等200lドラム缶以上の大型廃棄物を、材質や形状に応じて、レーザー切断機,プラズマ切断機等適切な切断機器を選択して切断する。本設備は1999年7月より供用を開始し、前年度まで大型廃棄物を約600m3処理し、約1/3に減容した。減容処理棟における処理対象廃棄物は、難燃物やガラス,コンクリート,金属等の不燃物である。放射能評価の容易な原子炉施設から発生した金属廃棄物は、高圧圧縮装置で減容する。その他の放射性物質の種類と量が多種多様な廃棄物は均一化することにより放射能評価が容易に行える金属または非金属溶融設備により減容を行う。減容処理棟は、2003年に整備を終了し、現在、作業者の訓練や均一化のための溶融条件把握のためのコールド運転を実施中であり、2005年度より実廃棄物を用いた運転を開始する予定である。


331044
複数気泡系モデルとしての3結合振動子に観測されるavoided crossing
井田 真人
日本流体力学会年会2005講演論文集(CD-ROM) , 6p.(2005) ; (JAEA-J 00147)

 流体中で音響的に相互作用する3つの気泡の共振周波数と脈動位相について議論し、複数気泡系にavoided crossingが起こりうることを示す。結合振動子モデルを用いた解析により、気泡が3つ以上存在し相互作用する場合には、気泡間距離の関数として示された共振周波数がavoided crossingを示しうることを明らかにする。さらに、気泡の脈動位相と遷移周波数[Ida, Phys. Lett. A 297, 210 (2002); J. Phys. Soc. Jpn. 71, 1214 (2002)]に着目することで、avoided crossing領域において気泡間で明確な状態交換がなされることを示す。この状態交換は、共振周波数には相当しない遷移周波数が共振周波数と交わる点上で引き起こされる。


331045
Development of fuel performance code FEMAXI-6 and analysis of mechanical loading on cladding during power ramp for high burn-up fuel rod
鈴木 元衛; 上塚 寛
IAEA-TECDOC-CD-1345 (CD-ROM) , p.217-238(2003) ; (JAEA-J 00148)

 軽水炉燃料の通常時及び過渡時のふるまい解析のためのコードFEMAXI-6を開発した。このコードは有限要素法の力学解析を用い、高燃焼燃料の様々な現象のモデルを持つ。本研究では、高燃焼BWR燃料のスエリングによるPCMIを解析した。出力ランプ時には大きなスエリングが生じ、被覆管の大きな直径増大をもたらすが、この現象をFPガスバブルの成長による新しいモデルを適用して解析した。その結果、実測値にほぼ等しい被覆管の直径増加を再現することに成功した。このバブル成長モデルはバブルサイズと外圧の間のバランスを仮定した平衡論モデルであり、FPガスの拡散、放出の計算と連成している。また本コードは、ペレットと被覆管のボンディングモデルを持ち、このモデルによって高燃焼燃料はランプ時のペレットスタックスエリングによって被覆管の軸方向の応力が発生して、被覆管は周方向及び軸方向の2軸引張り応力状態になることを見出した。


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