学会誌等掲載論文
※下記の研究開発成果は資料名順に並んでいます。

2006年1月


34000001
Approach to optimize conversion efficiency of discharge-pumped plasma extreme ultraviolet sources
Masnavi, M.*; 中島 充夫*; 佐々木 明; 堀田 栄喜*; 堀岡 一彦*
Applied Physics Letters 87(11), p.111502_1-111502_3(2005) ; (JAEA-J 00149)

 MHDシミュレーションと、HULLACコードによる原子データを用いた原子過程シミュレーションを組合せ、キャピラリー放電によるEUV光源の変換効率が、電流パルスの形状を整形することで改善される可能性について理論的に解析した。電流パルスの形状を制御し、プラズマのダイナミクスを制御し、プラズマがピンチされた状態を維持することで、発光のパルス幅を伸ばし、準定常的なプラズマを生成することにより効率の改善を図る。


34000002
Function and molecular evolution of multicopper blue proteins
中村 建介; 郷 信広
Cellular and Molecular Life Sciences 62(18), p.2050-2066(2005) ; (JAEA-J 00150)

 マルチ銅ブルー蛋白質(MCBP)は銅イオンの特徴的な酸化還元機能を利用するマルチドメイン蛋白質である。MCBPはドメインの構成と機能により大きく3つのグループに分類されている。(1)2ドメインの亜硝酸還元酵素タイプ, (2)3ドメインのラッカーゼタイプ, (3)6ドメインのセルロプラスミンタイプである。(2)と(3)を合わせてマルチ銅オキシダーゼ(MCO)とも呼ばれる。近年のゲノム解析の急速な進展に伴い、おもにバクテリアゲノムよりMCBPドメインを含む幾つかの新しいタイプの蛋白質が見いだされている。このレビューではこれらの新しいタイプの蛋白質を中心にMCBPに関する近年の機能と構造の研究を紹介する。レビューの後半ではわれわれがMCBPファミリーの共通祖先と同じタイプであることを提唱している2ドメインのMCBPを中心に紹介する。


34000003
Optimization of the process parameters of an electrochemical cell in the IS process
野村 幹弘*; 奥田 泰之; 笠原 清司; 中尾 真一*
Chemical Engineering Science 60(24), p.7160-7167(2005) ; (JAEA-J 00151)

 熱化学的水分解ISプロセス内のブンゼン反応(SO2+I2+2H2O=H2SO4+2HI)を、カチオン交換膜を用いた電気化学セルを用いて検討した。アノード液,カソード液の最適濃度をプロセス全体の熱効率によって評価した。I2/HI比は電圧にほとんど影響しなかったため、熱効率を下げることなく0.5まで削減できる。HI, H2SO4濃度は効率に大きく影響した。膜抵抗は効率に大きい影響を及ぼすため、重要なパラメータである。温度を313Kから363Kに上げることで、熱効率は3.0%改善した。


34000004
Development of reliable diamond window for EC launcher on fusion reactors
高橋 幸司; Illy, S.*; Heidinger, R.*; 春日井 敦; 南 龍太郎; 坂本 慶司; Thumm, M.*; 今井 剛
Fusion Engineering and Design 74(1-4), p.305-310(2005) ; (JAEA-J 00152)

 核融合炉におけるECランチャー用銅コーティングダイヤモンド窓を開発した。ダイヤモンド窓は周辺冷却で設計するが、そのディスクエッジに銅コーティングを施し、エッジが破損したとしても冷却水が伝送系内に浸透しないという機能を持つ。また、冷却構造を付加するためにディスクエッジにアルミロウ付けでインコネル製筒を接合するが、銅コーティングはそのロウ付け部の腐食防止にも効果的である。この窓の冷却性能を調べるため、170GHz、大電力伝送実験を行った。高周波パワーは55kW、パルス幅は3.0秒である。この時の温度上昇は45度程度となり、tanδ=4.4×10-4,熱伝導率1.9kW/m/Kでの計算結果とよく一致する。実験で使用したダイヤモンドは誘電損が通常より20倍程高く(4.4×10-4)、今回の実験で得られた温度上昇(誘電損失)は、実際使用する高品質ダイヤモンドにおける1MW伝送と同レベルである。本実験結果から、銅コーティングは冷却性能を阻害しないことを実証した。また、窓エッジ破損によるトラブルも回避できるという観点から、銅コーティングによりダイヤモンド窓の信頼性が向上したと言える。


34000005
The Basic methods for understanding of plasma equilibrium toward advanced control
栗原 研一; 川俣 陽一; 末岡 通治; 細山 博己*; 米川 出; 鈴木 隆博; 及川 聡洋; 井手 俊介; JT-60チーム
Fusion Engineering and Design 74(1-4), p.527-536(2005) ; (JAEA-J 00153)

 トカマク型核融合研究は、実験炉ITERを国際協力で製作する段階へと一歩踏み出そうとしている中で、JT-60を含む既存のトカマク装置は、さらなる先進的運転シナリオを求めて実験探究することが期待されている。そのようなシナリオをJT-60のプラズマ実験で検証するために、プラズマ平衡状態を把握する基本的な方法群を、ITERへの応用も視野にいれつつ開発して来ている。一部は既に完成しているが、以下の課題も残っている。すなわち、(1)実時間かつ高精度でプラズマ断面全体像を再構築する機能(プラズマ全電流や磁気軸なども含む)。(2)構造物に流れる渦電流も考慮する機能。(3)断面内のプラズマ電流分布も実時間で制度よく再構築する機能。(4)DT燃焼時には、プラズマ近傍には耐放射線性に優れたピックアップコイルセンサーを設置し信号積分して磁場に変換する。同時に遠方には耐放射線性に劣る絶対磁場計測センサーを配置し、遠方定常センサーで近傍センサー用積分器を時折補正することになるが、その補正演算機能。以上4項目である。シンポジウムでは、これらの方法をJT-60における実験結果やITER体系での計算とともに示す。また、それらの議論に基づき、ITERや核融合発電実証プラントにおけるプラズマ平衡制御の未来像についての予想を試みる。


34000006
Tritium release behavior from JT-60U vacuum vessel during air exposure phase and wall conditioning phase
磯部 兼嗣; 中村 博文; 神永 敦嗣; 東島 智; 西 正孝; 小西 哲之*; 西川 正史*; 田辺 哲朗*
Fusion Science and Technology 48(1), p.302-305(2005) ; (JAEA-J 00154)

 核融合炉真空容器内トリチウムインベントリー低減・制御技術開発の一環として、水分濃度を管理した空気をJT-60U真空容器内に封入した場合のトリチウムの壁面からの放出挙動を観測した。トリチウムの放出は300ppmから水分濃度の上昇とともに促進されることがわかり、3400ppmにおいては13MBqのトリチウム放出量となった。この放出量は、放電洗浄によるトリチウム除去運転で最もトリチウム放出量の多かった5時間の水素雰囲気グロー放電に匹敵し、水との同位体交換反応により容易にトリチウムが除去されることを確認した。また壁調整運転の一環として、水素,ヘリウム及びアルゴンガスを真空容器内にパージさせた場合の排ガス中におけるトリチウム濃度も測定した。その結果、排ガス中におけるトリチウム濃度は、ガス種や導入圧力にかかわらず、約0.1Bq/cm3であった。このことから、単なる水素ガスパージでは、同位体交換反応によるトリチウム除去を期待できないことが判明した。


34000007
Tritium accounting stability of a ZrCo bed with "In-bed" gas flowing calorimetry
林 巧; 鈴木 卓美; 山田 正行; 西 正孝
Fusion Science and Technology 48(1), p.317-323(2005) ; (JAEA-J 00155)

 核融合炉燃料であるトリチウムの安全貯蔵とその効率的な計量の観点から、ZrCo金属間化合物を用いた通気式熱量計量方式による「その場」トリチウム計量機能付き貯蔵ベッドを開発し、計量精度: ±1%のITERの要求性能を実証するとともに、試験的に実用に供して総合的実証を進めている。本ベッドは、一次容器内にZrCo金属間化合物700gを充填したもので、ZrCoT1.8として約25g-T2,約100Lの水素同位体ガスを貯蔵できる。また、ZrCoの一次容器内に螺旋状の配管を有し、この配管内部にHeガスを循環することにより、貯蔵したトリチウムの崩壊熱を循環Heの温度上昇として計測し、トリチウム貯蔵量を計量できる構造となっている。今回は、長期保管後の計量性能の確認のため、約13gの純トリチウムの7か月間の安定貯蔵、及び約5gのトリチウムを同量の重水素で希釈したガスの5年4か月間の安定貯蔵の前後にくり返し熱量計測を実施し、初期の計量性能と比較した。その結果、計測条件(一次容器内に蓄積する3Heガス圧など)を整えることにより、初期の計量感度(約0.2g)及び精度(約0.05g)を維持できること、などを確認し、現状までのトリチウム貯蔵においては計量性能の劣化はないことを確証した。


34000008
Evaluation of tritium behavior in the epoxy painted concrete wall of ITER hot cell
中村 博文; 林 巧; 小林 和容; 西 正孝
Fusion Science and Technology 48(1), p.452-455(2005) ; (JAEA-J 00156)

 トリチウムに汚染した炉内機器等を取り扱うITERホットセルに関し、セル内に放出されたトリチウムの挙動を解析・評価した。解析は、コンクリートとエポキシ塗装の多層構造壁中におけるトリチウムの1次元拡散モデルと完全混合下での換気によるトリチウム濃度の減衰モデルを組合せて行った。解析の結果、ホットセル内のトリチウム濃度は、トリチウム放出源を取り除いた後すみやかに低下し、数日で300DAC(240Bq/cm3)から1DAC(0.8Bq/cm3)まで低下することを明らかとした。また、ホットセル壁中のトリチウムインベントリは20年間の運転後約0.1PBqとなり、壁材の数10%はクリアランスレベルを超えるが、壁から外部へのトリチウム透過は無視し得る量であるとの結果を得た。さらに、コンクリート壁へのエポキシの塗布は、トリチウムの透過やインベントリを数桁低減する効果があることを明らかにした。


34000009
Study on tritium removal performance by gas separation membrane with reflux flow for tritium removal system of fusion reactor
岩井 保則; 山西 敏彦; 林 巧; 西 正孝
Fusion Science and Technology 48(1), p.456-459(2005) ; (JAEA-J 00157)

 既存の触媒酸化吸着除去方式雰囲気トリチウム除去プロセスへの気体分離膜を用いた膜分離プロセスの付加は、大容量雰囲気ガス処理を必要とする核融合プラントには魅力的である。このため、ガス分離膜による雰囲気からのトリチウム分離に関し、その分離機構の解明と工学設計への適用を目的とした静特性及び動特性コードを開発してきた。本報告では膜分離の新しい概念である還流膜分離を提案する。中空糸膜による膜分離の駆動力は膜を介した目的成分の分圧差であるので、透過側ガスの一部を供給側に還流することで意図的な駆動力の向上を見込むことができる。今回の検討で得られた主な結果は、(1)還流には駆動力の向上という正の効果と、還流による供給流量の増加という負の効果であり、よって還流比には最適値がある,(2)トリチウム回収には透過側圧力値が強く影響する,(3)高い透過係数を有する成分ほど還流の効果が顕著となるが、トリチウムガスとトリチウム水は他の空気構成成分より高い透過係数を有することからトリチウム回収に還流膜分離は適している。また、還流膜分離は高価な膜分離モジュールの規模低減効果も見込め、さらにトリチウム除去システム全体のコスト改善への貢献も期待できる。


34000010
Case study on unexpected tritium release happened in a ventilated room of fusion reactor
岩井 保則; 林 巧; 小林 和容; 西 正孝
Fusion Science and Technology 48(1), p.460-463(2005) ; (JAEA-J 00158)

 換気中の室内にトリチウム漏洩が発生した場合のトリチウム挙動とその初期閉じ込め性能を把握するための三次元コードを開発し、その整備を続けている。今回、本コードを用い、室内トリチウム漏洩事象が発生した際に単位時間あたりの室内換気回数がトリチウム閉じ込め性能に与える影響,トリチウム漏洩検知までにかかる時間に換気回数が与える影響,ダクトとトリチウムモニターの最適位置について検討した。本検討の結果、(1)換気回数のトリチウム閉じ込め率への影響は小さく、37GBqのトリチウム漏洩を想定した場合では99%を大きく上回る閉じ込め率が得られること,(2)漏洩を検知するまでにかかる時間は換気回数が小さい程長くなる傾向にあるものの数分以内であり、室内に排気ダクトを均等に配してトリガーモニターを各排気ダクト内に設置することで漏洩の迅速な検知が可能であること,(3)緊急遮断弁閉止後、トリチウム濃度が均一になるまでにかかる時間は数時間のオーダーであること、などが得られた。トリチウムは漏洩直後にはプルームを形成して室内の換気流れに従い広がる。よって初期の閉じ込めではプルームを直接排気しないことが重要であり、排気口を壁面から離して配することが有効な対処法である。


34000011
The Oxidation performance test of detritiation system under existence of CO and CO2
小林 和容; 寺田 修*; 三浦 秀徳*; 林 巧; 西 正孝
Fusion Science and Technology 48(1), p.476-479(2005) ; (JAEA-J 00159)

 ITERのトリチウムに関する安全を確証するうえで、トリチウム除去設備の通常運転時及び異常発生時における水素及びメタン形のトリチウムの除去性能を確認することは非常に重要である。ITERのトリチウム除去設備は、触媒酸化水分吸着方式であり、水素やメタン形のトリチウムを触媒酸化して水形に転換した後、水分を吸着除去する。本方式のトリチウム除去設備の通常運転時の性能については十分実証されているものの、火災等の異常時における酸化性能を実証するデータは非常に少ない。そこで火災時に発生しうる一酸化炭素及び二酸化炭素を共存させて水素及びメタンに対する酸化性能試験を実施した。実験に用いた装置の通常の雰囲気下における水素及びメタンの酸化性能は、それぞれ99.99%及び99.9%以上であるが、最大30%の二酸化炭素共存下における水素及びメタンの酸化性能が通常時性能と同等であることを確認した。また、10%の一酸化炭素共存下でも通常時性能と同等の性能が得られており、影響がないことを確認した。


34000012
Evaluation of tritium permeation from lithium loop of IFMIF target system
松廣 健二郎; 中村 博文; 林 巧; 中村 博雄; 杉本 昌義
Fusion Science and Technology 48(1), p.625-628(2005) ; (JAEA-J 00160)

 IFMIFの安全評価やトリチウム処理システムの設計に必要となるIFMIFターゲットシステムのリチウムループでのトリチウム透過量及びインベントリについて詳細な評価を行った。その結果リチウムループからのトリチウム透過量は1.0×106Bq/hとなり、その内約95%が窒素除去用ホットトラップ(873K)からのものであることがわかった。透過したトリチウムはリチウムループエリアに放出されアルゴン排ガス処理システムでテストモジュールから発生したトリチウム(6×107Bq/h)とともに処理される。また、アルゴン雰囲気調整装置で分離された空気中に最大3.5×10-2Bq/cm3混入する可能性があるが、空気排ガス処理システム(最大処理トリチウム濃度5Bq/cm3)で処理されることからリチウムループからのトリチウム透過は問題とならない。一方リチウムループ機器材料中のトリチウムインベントリは5×107Bqであり、ターゲットシステムにおけるリチウム中(9 m3)のトリチウムインベントリ(5×1014Bq)に比べ問題とならない。


34000013
Interlinked test results for fusion fuel processing and blanket tritium recovery systerms using cryogenic molecular sieve bed
山西 敏彦; 林 巧; 河村 繕範; 岩井 保則; 磯部 兼嗣; 鵜澤 将行*; 西 正孝
Fusion Science and Technology 48(1), p.63-66(2005) ; (JAEA-J 00161)

 増殖ブランケットにおけるヘリウム(He)スイープガス中のトリチウム(T)回収を目的として液体窒素冷却低温吸着塔を開発した。吸着塔は、Heスイープガスから、Tを含む水素同位体を少量のHeとともに分離するものであり、そのガスを燃料処理系に送り処理することでT回収が最終的に成立する。本論文は、吸着塔と燃料処理系の連結実証試験を行い、連結時のシステムの成立性及び応答特性を報告するものである。ブランケットスイープ模擬ガス(ITERテストブランケットと同規模流量及び組成)を低温吸着塔に供給して軽水素(H)及びTを吸着し、減圧・昇温により塔を再生してそのガスを不純物除去装置(パラジウム膜拡散器)に送り、H及びTのみを最終的に回収した。吸着塔再生は、初期は減圧操作のみであり、吸着塔内の残留Heのみがパラジウム膜拡散器に送られる。その後の昇温により、H及びTが急速に脱着してパラジウム拡散器に送られる。この組成の大幅な変化に対し、システムは問題なく稼働し、吸着塔に送られた水素同位体ガス(H及びT)と再生操作で最終的に回収された水素同位体ガス量は、測定誤差範囲内で一致(99%以上の水素同位体回収を実証)し、システムの定量的成立性が実証された。


34000014
Tritium recovery from solid breeder blanket by water vapor addition to helium sweep gas
河村 繕範; 岩井 保則; 中村 博文; 林 巧; 山西 敏彦; 西 正孝
Fusion Science and Technology 48(1), p.654-657(2005) ; (JAEA-J 00162)

 核融合炉固体増殖ブランケットにおいて水素添加ヘリウムスイープガスをトリチウム回収に使用した場合、冷却系へのトリチウム透過漏洩が懸念される。原研で行われた実証炉に関する設計研究では、典型的な水素添加スイープガス条件で、透過漏洩量が生成トリチウム量の約20パーセントに上ると試算されている。これらのトリチウムをITER規模の水処理システムで回収しようとすれば、何らかの透過防止措置により透過量を0.3パーセント以下に低減する必要がある。有力な透過防止措置の一つとして、水素に代わり水蒸気を添加したスウィープガスを使用する場合について検討した。水蒸気添加では、同位体交換の反応速度は水素より大きく、平衡定数はほぼ1.0であると予想される。水素添加同様H/T比を100として増殖領域でのトリチウムインベントリーを比較すると、水蒸気分圧の増加に伴いインベントリーは増加するもののそれほど大きくないことがわかった。トリチウム回収システムとしてはトリチウムを含む水蒸気をヘリウムから分離するのは比較的容易であるが、燃料として利用するために分解して水素同位体に戻すプロセスが必要である。


34000015
Radiochemical reactions between tritium molecule and carbon dioxide
洲 亘; 大平 茂; 鈴木 卓美; 西 正孝
Fusion Science and Technology 48(1), p.684-687(2005) ; (JAEA-J 00163)

 核融合炉の燃料処理系において起こり得るβ線誘起放射化学反応を研究する一環として、T2-CO2系の放射化学反応について研究した。40kPaのT2と同量のCO2を混合して室温に保持し、レーザーラマン分光法で反応過程を、また質量分析法で反応生成物を測定した。ガス混合後の30分以内では反応が速く、その後は大変遅くなることを明らかにした。また、T2-CO2系の放射化学反応の主な生成物は、ガス相ではCO、容器の壁面に付着した凝縮相においてはT2Oであることを明らかにした。さらに、容器を真空排気した後、250℃までの加熱により、容器内壁に凝縮していた生成物がCO, CO2, T2, T2Oなどに熱分解されることを明らかにした。


34000016
Genomic relationships among Nicotiana species with different ploidy levels revealed by 5S rDNA spacer sequences and FISH/GISH
北村 智; 田中 淳; 井上 雅好*
Genes and Genetic Systems 80(4), p.251-260(2005) ; (JAEA-J 00164)

 タバコ属植物における倍数化の経緯を探るため、4倍体野生タバコ種において、高等生物に必須の遺伝子である5S rDNAのスペーサー領域を単離しシーケンス解析した。既に解析済みであった2倍体タバコ種におけるスペーサー配列と比較することにより、2倍体種と4倍体種からなる複数のグループが形成された。また5S rDNAの座乗染色体を調べたところ、グループ内の種は類似した染色体に5S rDNAが位置することがわかった。これらの結果から、同一グループに分類された倍数性の異なる種は、5S rDNAを基準にすると、非常に系統学的に近い関係にあると言える。この結果が、5S rDNAという一つの遺伝子だけでなくゲノム全体に関しても言えるかどうかを調査するために、GISHによるゲノムレベルの解析を行った。その結果、シーケンス解析で認められたグループは、ゲノムレベルでも非常に近縁関係にあることがわかった。


34000017
Incorporation of CO2 exchange processes into a multilayer atmosphere-soil-vegetation model
永井 晴康
Journal of Applied Meteorology 44(10), p.1574-1592(2005) ; (JAEA-J 00165)

 大気−土壌−植生モデルSOLVEGへのCO2交換過程の導入及びその感度解析と気孔抵抗計算が冬小麦畑における潜熱フラックスに及ぼす影響の考察について記述する。大気と地表面間の熱及び水交換に関するモデル構成の妥当性は、先の論文(Nagai:2002, 2003)において確認された。本研究では、CO2交換過程をモデルに導入し、その性能評価を行った。試験計算において、モデルは地上2mのCO2フラックス測定値を良好に再現した。モデル設定及びパラメータの不確実さを明確にするための感度解析においては、土壌中のCO2生成がCO2計算に最も重要であることがわかった。また、CO2計算過程が潜熱フラックス計算へ及ぼす影響の考察も行った。その結果、新しいモデルは、地表面におけるCO2交換だけでなく熱及び水交換の研究に対しても有効であることが示された。


34000018
Calculation of heat capacities of light and heavy water by path-integral molecular dynamics
志賀 基之; 篠田 渉*
Journal of Chemical Physics 123(13), p.134502_1-134502_8(2005) ; (JAEA-J 00166)

 比熱には、特に低い温度で量子力学的効果が非常に強く効くからである。例えば、今までの通常の古典的分子動力学法では水の比熱を過大評価してしまうことが知られている。本研究では、量子効果を考慮した経路積分分子動力学法を用いて、比熱が計算できることを示す。水の三態の比熱とその同位体効果について、計算が広い温度領域で実験を再現することに初めて成功した。


34000019
Post irradiation plastic properties of F82H derived from the instrumented tensile tests
田口 富嗣; 實川 資朗; 佐藤 道隆*; 松川 真吾*; 若井 栄一; 芝 清之
Journal of Nuclear Materials 335(3), p.457-461(2004) ; (JAEA-J 00167)

 核融合炉用構造材料の候補材料である、F82H鋼及び2%Ni添加F82H鋼の照射後引張試験を室温で行った。F82H及び2%Ni添加F82Hは、米国オークリッジ国立研究所のHFIR炉において、300℃で最大20dpaまで照射された。引張試験中、継続して試料のネッキング部分の画像をビデオカメラで記録した。これら画像及び荷重変位曲線から、試料の真応力−真歪曲線を求め、中性子照射による試料の硬化挙動を評価した。その結果、欠陥導入型の硬化が照射によりおもに生じたが、300℃で照射されたF82Hにおいては、同じflow stressレベルでは、歪硬化に対して強く影響を及ぼさないことを明らかにした。しかしながら、2%添加F82Hでは、照射が歪硬化に強く影響を及ぼすことがわかった。


34000020
Synergistic effects of implanted helium and hydrogen and the effect of irradiation temperature on the microstructure of SiC/SiC composites
田口 富嗣; 井川 直樹; 三輪 周平*; 若井 栄一; 實川 資朗; Snead, L. L.*; 長谷川 晃*
Journal of Nuclear Materials 335(3), p.508-514(2004) ; (JAEA-J 00168)

 SiC/SiC複合材料は、優れた高温強度特性を有し、照射後誘導放射能が低いことから核融合炉の構造材料として期待されている。核融合炉環境下では、SiC内に核変換生成物としてHeやHが生成する。そこで、本研究では、1000及び1300℃におけるSiC/SiC複合材料の微細組織変化に及ぼすHe及びHの同時照射効果を検討した。その結果、1000℃以上の照射によりマトリクス中にHeバブルが生成し、H注入量の増加とともにHeバブルの平均径は減少した。Heバブルの数密度は、H注入量の増加及び照射温度の上昇により増加した。1000℃照射においては、Heバブルは結晶粒界にのみ生成した。一方、1300℃照射においては、Heバブルは結晶粒界及び結晶粒内両方に生成した。結晶粒界に精製したHeバブルの平均径は、結晶粒内に生成したそれに比べ、とても大きかった。SiC繊維内に生成したHeバブルは、マトリクス内に生成したそれに比べ小さかった。


34000021
Estimation of covariance matrices for nuclear data of 237Np, 241Am and 243Am
中川 庸雄
Journal of Nuclear Science and Technology 42(11), p.984-993(2005) ; (JAEA-J 00169)

 JENDL-3.3に格納されている237Np, 241Am及び243Amの核分裂断面積,捕獲断面積及び核分裂あたりの放出中性子数に対する共分散マトリックスを推定した。核分裂断面積の共分散はGMAコード,捕獲断面積のそれはKALMANコードを用いて推定した。低エネルギー領域では、共鳴パラメータの誤差を与えた。即発中性子数は一次関数を仮定して、共分散を求めた。遅発中性子については誤差のみを与えた。結果はENDF-6フォーマットで編集し、JENDL-3.3のデータと合わせたデータファイルを作成した。


34000022
Benthic front and the Yamato Basin Bottom Water in the Japan Sea
千手 智晴*; 磯田 豊*; 荒巻 能史*; 乙坂 重嘉; 藤尾 伸三*; 柳本 大吾*; 鈴木 崇史; 久万 健志*; 森 康輔*
Journal of Oceanography 61(6), p.1047-1058(2005) ; (JAEA-J 00170)

 日本海,日本海盆から大和海盆にかけて底層付近の詳細な水塊構造を観測した。観測は研究船白鳳丸KH03-3次航海(2002年10月14日〜19日)で行った。大和海盆の底層付近では0.085度以上の、日本海盆では0.070度以下の海水が分布しており、これらの海水は両海盆間の境界付近でestuary型のフロントを形成しながら会合していた。フロントの構造から、底層での日本海盆から大和海盆への流入と、その上層での大和海盆からの流出が示唆された。また、日本海盆から流入した底層水は、大和海盆内の時計回りの循環に捕捉され、鉛直拡散,海底加熱,酸素消費の過程を通して、大和海盆底層水に変質されると推測された。ボックスモデルにより大和海盆底層水の熱収支を解析した結果、海底加熱は鉛直拡散の約70パーセントの大きさを持ち、これらによって日本海盆からの冷たい底層水の移流効果が打ち消されていることがわかった。さらに、大和海盆底層水の平均滞留時間は9.1年であると見積もられた。


34000023
151Eu-Mossbauer spectroscopic and X-ray diffraction study of the Eu2(Ce1-xZrx)2O7 and LnEuZr2O7(Ln=lanthanide) systems
正木 信行; 中村 彰夫; 古内 史人*; 日夏 幸雄*
Journal of Physics and Chemistry of Solids 66(2-4), p.312-317(2005) ; (JAEA-J 00171)

 欠陥蛍石型構造とパイロクロア構造の関連を調べるために、パイロクロア組成(A3+2B4+2O7)の固溶体2系統(a)Eu2(Ce1-xZrx)O7(0≦x≦1.0)及び(b)LnEuZr2O7(Ln=La, Pr, Nd, Sm, Gd, Tb, Dy, Ho, Y, Er, Tm)を調製し、151Euメスバウア分光,X線回折を行った。X線回折から、AサイトとBサイトの平均イオン半径比(rA/rB)が1.465以下のとき、つまり系(a)では0≦x<0.85,系(b)ではLn=Tb-Tmのとき、欠陥蛍石型構造相(DF)が生成し、(rA/rB)が1.465以上のとき(系(a)では0.9<x≦1,系(b)ではLn=La-Gd)、パイロクロア構造相(P)が生成することが示された。メスバウア分光から得られるEu3+の異性体シフトは、DF相領域において、両系ともにrA/rBの増加に従って減少し、DF-P相の境界(rA/rB〜1.465)で顕著に低下し、P相領域においてもrA/rBの増加に従って減少した。Eu3+まわりの酸素配位の歪みを示す4極分子分裂の大きさもP相領域で明らかに増加した。


34000024
Substitution effect on orientation of organosilicon compounds (CH3)3SiX (X = F, Cl, Br, I, NCO) as studied using NEXAFS spectroscopy
関口 哲弘; 馬場 祐治; 下山 巖; Nath, K. G. *; Uddin, M. N.*
Journal of Physics; Condensed Matter 17(36), p.5453-5466(2005) ; (JAEA-J 00172)

 ハロゲン置換,NCO-基置換した有機シリコン化合物について、その凝集試料のSi K吸収端近傍におけるX線吸収スペクトル(NEXAFS)測定とその偏光依存性測定を行い、その電子状態及び分子配向性、特に配向性が発生する機構を明らかにした。凝集表面において分子間の双極子−双極子相互作用により反平行配置を取りやすく、それが系全体の平均配向として現れること、正四面体型分子に近い構造の場合ほど最密充填構造をとり水平配向度が高くなる傾向があるなどのことが明らかとなった。また、スペクトルの蒸着速度依存性測定から動力学的要因によっても分子軸配向が影響を受けることを明らかにした。


34000025
De novo design of a redox-active minimal rubredoxin mimic
Nanda, V.*; Rosenblatt, M. M.*; Artur, O.*; 河野 秀俊; Getahun, Z.*; Dutton, P. L.*; Saven, J. G.*; DeGrado, W. F.*
Journal of the American Chemical Society 127(16), p.5804-5805(2005) ; (JAEA-J 00173)

 酸化還元機能をもつルビドキシンミミック蛋白質を、計算機により設計し、実験的にその酸化還元機能を確かめた。このような蛋白質設計は、新規の有用材料開発への道を開くとともに、もともとの蛋白質の機能発現のメカニズムを解明するのに、有用である。


34000026
First observation of de Haas-van Alphen effect in PuIn3
芳賀 芳範; 青木 大*; 山上 浩志*; 松田 達磨; 中島 邦久; 荒井 康夫; 山本 悦嗣; 中村 彰夫; 本間 佳哉*; 塩川 佳伸; 大貫 惇睦
Journal of the Physical Society of Japan 74(11), p.2889-2892(2005) ; (JAEA-J 00174)

 常磁性Pu化合物PuIn3において初めてdHvA効果の観測に成功した。観測されたdHvA周波数は、遍歴5f電子を仮定した理論計算とよく一致する。実験で得られた有効質量は4.8m0と大きい。239Puによる自己照射効果のため、dHvA振幅は時間とともに減衰するが、これを電子の平均自由行程の変化として定量的に求めた。


34000027
Nuclear resonant scattering of synchrotron radiation by 158Gd
三井 隆也; 増田 亮*; 北尾 真司*; 瀬戸 誠*
Journal of the Physical Society of Japan 74(11), p.3122-3123(2005) ; (JAEA-J 00175)

 われわれは、SPring-8のBL11XUのアンジュレーターを利用して、粉末の酸化ガドリニウムGd2O3中に自然に24.84%だけ含まれる親核のないメスバウアー各種である158Gd(核共鳴エネルギー:79.51KeV)の放射光による核共鳴励起実験を行い、全方位に散乱される核共鳴散乱信号の観測に初めて成功した。得られた結果から決定された核共鳴エネルギーと崩壊時間はこれまで報告されていた結果とよく一致していた。本実験結果はSPring-8の高エネルギーX線を利用すれば、70keV以上の高エネルギー領域に核共鳴エネルギーを有する原子核を対象とする核共鳴散乱実験が実現可能であることを示唆している。


34000028
Radiation-induced radical polyaddition of Bis(α-trifluoromethyl-β, β-difluorovinyl) terephthalate with excess of various ethers
榎本 一之*; 前川 康成; 勝村 庸介*; 宮崎 豊明*; 吉田 勝; 浜名 浩*; 成田 正*
Macromolecules 38(23), p.9584-9593(2005) ; (JAEA-J 00176)

 燃料電池用電解質膜や超微細加工用レジスト用樹脂としての利用が期待できるフッ素系ポリマーの合成を目的として、フッ素系モノマーと過剰量存在する種々のエーテル類との放射線ラジカル重付加反応について検討した。フッ素系モノマーBFPは、0℃で、大過剰のエーテルの存在下でγ線照射すると、ラジカル重付加反応により、BPFとエーテル類が交互に配列したフッ素系ポリマーが生成することを見いだした。特に、エーテルとして、ジオキサン(DOX)とジエチルエーテルを用いたとき、Mnが5100と3900の線状交互共重合体が得られた。これらのモデル反応とその速度論解析より、BFPがエーテル類と反応して生成した一置換体が、速やかに二分子目のエーテル類と反応することで、大過剰のエーテルが存在するにもかかわらず、重付加反応が進行し、高分子量の交互ポリマーを与えることを明らかとした。


34000029
Neural-net predictor for beta limit disruptions in JT-60U
芳野 隆治
Nuclear Fusion 45(11), p.1232-1246(2005) ; (JAEA-J 00177)

 トカマクプラズマにおいてベータ限界時に発生するディスラプションを予測するニューラルネットワークをJT-60Uのデータを用いて開発した。ベータ限界ディスラプションでは数10ms前に予兆現象を観測できないので、まず、2msごとに規格化ベータの限界値を出力するサブネットワークを開発した。第一段階ではこの限界値の目標値を適当に与えて訓練し、第二段階では第一段階の訓練で得た出力を用いて限界値の目標値を調整し訓練した。これにより安定放電に対する誤り警報の発生率を大きく低減した。誤り警報の発生率をさらに低減するために、上記訓練で得たネットワークから出力する規格化ベータ限界値と実際の規格化ベータ値との差をほかの11種類のデータとともに主ネットワークに入力し、プラズマの安定度を出力するようにした。この安定度がある警報レベルより低下するとディスラプションの発生を予測する。この結果、ディスラプション発生の10ms前に、80%の予測成功率を4%の誤り警報で得られることを示した。80%は、誤り警報発生率4%における従来の予測成功率10%に比べて格段の性能向上である。さらに90%の予測成功率を誤り警報の発生率12%で得られることを示した。この12%は、従来得られていた誤り警報発生率の約半分である。


34000030
Requirements for pellet injection in ITER scenarios with enhanced particle confinement
Polevoi, A. R.*; 嶋田 道也; 杉原 正芳; Igitkhanov, Y. L.*; Mukhovatov, V.*; Kukushkin, A. S.*; Medvedev, S. Y.*; Zvonkov, A. V.*; Ivanov, A. A.*
Nuclear Fusion 45(11), p.1451-1456(2005) ; (JAEA-J 00178)

 粒子閉じ込めが改善された種々の閉じ込めシナリオにおいてペレット入射が満足すべき条件を検討した。その結果ペレット入射に必要な粒子補給量は100Pam3/sで十分であることを明らかにした。この検討にはペデスタル輸送モデル,ヘリウム輸送モデル,SOL及びダイバータ輸送と整合性のある境界条件を用いた。誘導運転のHモード(HH98(y,2)=1)におけるペレット条件は衝突度が小さい領域における粒子閉じ込め改善を考慮した。ハイブリッド及び定常運転におけるペレット条件は改善閉じ込め(HH98(y,2)>1)を考慮した。粒子輸送条件が広範囲に変化してもプラズマ性能はそれほど変化しないことを示した。中性粒子電流駆動及び電子サイクロトロン電流駆動のみを用いた新しい定常運転シナリオを開発した。この運転シナリオは低域混成波電流駆動を必要としないためペレット入射による電流駆動効率の低下の問題を回避することが可能である。


34000031
Observation of the bootstrap current reduction at magnetic island in a neoclassical tearing mode plasma
及川 聡洋; 鈴木 隆博; 諫山 明彦; 林 伸彦; 藤田 隆明; 内藤 磨; 津田 孝; 栗田 源一; JT-60チーム
Nuclear Fusion 45(9), p.1101-1108(2005) ; (JAEA-J 00179)

 JT-60Uトカマクにおいて、新古典テアリング不安定性発生中の磁気島形成に伴う電流密度の小半径方向分布の時間発展を世界で初めて観測した。磁気島構造の成長に伴い、電流密度分布は磁気島位置において平坦化し凹型の構造が現れた。そして磁気島の縮小に伴い、この平坦部は狭まり、磁気島消滅後には平坦化構造も消滅した。一方、MHD不安定性の無いプラズマではそのような電流密度分布の変形は見られなかった。テアリングモード放電で現れた電流密度分布の発展は、磁気島部での自発電流の減少を仮定した非定常輸送シミュレーションによって再現できた。また、実験結果と定常解の比較からも、電流密度分布と安全係数分布の時間発展を説明できる。これら実験結果とシミュレーション結果から、磁気島O点での自発電流の減少を結論づけた。


34000032
Structural studies on liquids and glasses under high pressure and high temperature
片山 芳則; 稲村 泰弘*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 238(1-4), p.154-159(2005) ; (JAEA-J 00180)

 多くの物質が結晶状態で異なった構造を持ち、圧力の変化によって一次の構造相転移を起こすことはよく知られている。一方、液体やガラスの状態では、圧力誘起構造変化は単調であると考えられてきた。最近の放射光光源の発達によって、高温高圧条件下における液体やガラスの構造研究を行うことが可能になった。これらの研究は、液体やガラス状態での変化が必ずしも単調でないことを明らかにした。われわれは、液体リンと石英ガラスの最近の結果について報告する。


34000033
X-ray diffraction experiments under pulsed magnetic fields above 30T
稲見 俊哉; 大和田 謙二; 松田 康弘*; 上田 勇治*; 野尻 浩之*; 村上 洋一*; 有馬 孝尚*; 太田 寛人*; Zhang, W.*; 吉村 一良*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 238(1-4), p.233-236(2005) ; (JAEA-J 00181)

 通常強磁場下でのX線回折実験は超伝導マグネットを用いて行われ、このため、最大磁場は15Tとなっている。この限界を超えるため、われわれは、パルス磁場を組み込んだX線回折システムを構築した。8T近傍で起こるPr0.6Ca0.4MnO3の構造相転移と26T近傍で起こるYbInCu4の価数転移をデモンストレーションとして示す。


34000034
Search for neutron excitations across the N=20 shell gap in 25-29Ne
Belleguic, M.*; Azaiez, F.*; Dombradi, Zs.*; Sohler, D.*; Lopez-Jimenez, M. J.*; 大塚 孝治*; Saint-Laurent, M. G.*; Sorlin, O.*; Stanoiu, C.*; 宇都野 穣; Penionzhkevich, Yu.-E.*; Achouri, N. L.*; Angelique, J. C.*; Borcea, C.*; Bourgeois, C.*; Daugas, J. M.*; De Oliveira-Santos, F.*; Dlouhy, Z.*; Donzaud, C.*; Duprat, J.*; Elekes. Z.*; Grevy, S.*; Guillemaud-Mueller, D.*; Leenhardt, S.*; Lewitowicz, M.*; Lukyanov, S. M.*; Mittig, W.*; Porquet, M. G.*; Pougheon, F.*; Roussel-Chomaz, P.*; Savajols, H.*; Sobolev, Y.*; Stodel, C.*; Timar, J.*
Physical Review C 72(5), p.054316_1-054316_7(2005) ; (JAEA-J 00182)

 原子核の殻構造が不安定核で変化する可能性が指摘されているが、その是非を明らかにするにはいわゆる侵入者状態の励起エネルギーを系統的に調べることが必要である。この論文では、GANIL研究所で不安定核26-28Neの新たな準位を見つけ、その結果を原研らのグループによってなされたモンテカルロ殻模型計算の結果と比較したものである。これらの不安定核を36S16+ビームの入射核破砕反応によって生成し、脱励起γ線を観測することにより、新しい準位を見つけた。26,27Neにおいては、観測された準位はsd殻を仮定した殻模型計算の結果とよく一致し、低励起状態において侵入者状態は見つからなかった。一方、この実験で新たに見つかった28Neにおける2.24MeVの状態は、旧来のsd殻模型で対応するものが存在しないため、侵入者状態が支配的と考えられる。実際、モンテカルロ殻模型計算によって2.2MeV付近にこのような0+状態があると予言される。この実験で得られたN=18核における非常に低い0+状態の存在は、不安定核においてN=20の殻ギャップが非常に狭まっていなくては説明できず、不安定核で魔法数が消滅するメカニズムの解明に大きな知見を与えるものである。


34000035
Avoided crossings in three coupled oscillators as a model system of acoustic bubbles
井田 真人
Physical Review E 72(3), p.036306_1-036306_7(2005) ; (JAEA-J 00183)

 音響的に相互作用する三気泡の共振周波数と脈動位相について議論し、複数気泡系にavoided crossingが現れうることを示す。シンプルな結合振動子モデルを用い、気泡が三つ以上存在する場合には、その系の共振周波数がavoided crossingを起こしうることを明らかにする。さらに、気泡の脈動位相と遷移周波数[Ida, Phys. Lett. A 297, 210 (2002); Ida, J. Phys. Soc. Jpn. 71, 1214 (2002)]に注目することで、avoided crossing領域中のある点(そこでは三気泡系の共振周波数と遷移周波数が交わる)において、気泡間で明確な状態交換が行われることを示す。


34000036
Current clamp at zero level in JT-60U current hole plasmas
藤田 隆明; 鈴木 隆博; 及川 聡洋; 諫山 明彦; 波多江 仰紀; 内藤 磨; 坂本 宜照; 林 伸彦; 濱松 清隆; 井手 俊介; 竹永 秀信
Physical Review Letters 95(7), p.075001_1-075001_4(2005) ; (JAEA-J 00184)

 軸対称トーラス形状の磁場閉じ込め高温プラズマにおいて、いったん中心部の電流密度がゼロ近傍となる(電流ホール)と、電気伝導度が高いにもかかわらず、中心部で電流が流れないことを発見した。この電流クランプは、JT-60Uトカマクの実験において、トロイダル電場や高周波を用いた電流駆動に対して観測された。これは、軸対称トーラスプラズマにおける新しい、硬直な、自己組織化された磁場構造である。


34000037
Phase properties and interaction force of acoustically interacting bubbles; A Complementary study of the transition frequency
井田 真人
Physics of Fluids 17(9), p.097107_1-097107_13(2005) ; (JAEA-J 00185)

 音場中の複数気泡系が持つとされる特徴周波数「遷移周波数」について理論的に再検討し、その存在の確認と物理的性質の解明を行った。結合強制振動子モデルを用いた解析により、以下の成果を得た。(1)遷移周波数の特性に関する詳細,(2)副遷移周波数が現れる閾距離の理論的決定,(3)相互作用力の符号反転に関する簡易な解釈法,(4)二気泡系における自然周波数,共振周波数,遷移周波数の類似性と差異の明瞭化。この試みにより、「複数気泡系には共振を引き起こさない遷移周波数が存在する」というわれわれの主張がより確かなものとなり、また、遷移周波数の物理的効果及び相互作用力の符号反転における役割がより明確なものとなった。


34000038
Chain terminations in the decomposition reactions of chloroethylenes in air through the deposition of alkylperoxy radicals on the wall of an irradiation vessel
箱田 照幸; 小嶋 拓治
Radiation Physics and Chemistry 74(5), p.302-309(2005) ; (JAEA-J 00186)

 内面積に対する体積比(S/V)が異なる照射容器中にクロロエチレンを含む空気を封入し、異なる線量率で電子ビーム及びγ線照射を行い、クロロエチレンの連鎖分解反応やその停止反応を調べた。その結果、線量率が高い電子ビーム照射の場合には、アルキル過酸化ラジカル同士の反応のみが連鎖停止反応として生じていることがわかった。これに対して、線量率が低いγ線照射、あるいは大きなS/V値を有する照射容器を用いた場合には、連鎖停止反応としてアルキル化酸化ラジカル同士の反応に加えて、このラジカルの照射容器壁への付着による反応も寄与していることが明らかとなった。


34000039
Chemical studies on rutherfordium (Rf) at JAERI
永目 諭一郎; 塚田 和明; 浅井 雅人; 豊嶋 厚史; 秋山 和彦; 石井 康雄; 佐藤 哲也; 平田 勝; 西中 一朗; 市川 進一; 羽場 宏光*; 榎本 秀一*; 松尾 啓司*; 雑賀 大輔*; 北本 優介*; 長谷川 浩子*; 谷 勇気*; 佐藤 渉*; 篠原 厚*; 伊藤 摩耶*; 斎藤 順子*; 後藤 真一*; 工藤 久昭*; 菊永 英寿*; 木下 哲一*; 横山 明彦*; 末木 啓介*; 大浦 泰嗣*; 中原 弘道*; 阪間 稔*; Schadel, M.*; Bruchle, W.*; Kratz, J. V.*
Radiochimica Acta 93(9-10), p.519-526(2005) ; (JAEA-J 00187)

 東海研究所タンデム加速器を用いて進めてきた超重元素(104番元素)ラザホージウム(Rf)の単一原子レベルでの化学挙動研究について報告する。特に短寿命(78秒)で数分間に1原子の割合で生成するRfのイオン交換挙動を調べるために開発した自動迅速イオン交換分離装置の概要を紹介する。また最近得られたRfのフッ化物錯体のイオン交換挙動について詳しく述べる。これはRfのフッ化水素酸溶液中での陰イオン交換挙動が、周期表同族元素であるジルコニウムやハフニウムの挙動とは大きく異なっていて、Rfのフッ化物形成に相対論効果が寄与している可能性を指摘する興味深い結果である。


34000040
Direct and indirect processes in photon-stimulated ion desorption from condensed formamide
池浦 広美*; 関口 哲弘; 馬場 祐治; 今村 元泰*; 松林 信行*; 島田 広道*
Surface Science 593(1-3), p.303-309(2005) ; (JAEA-J 00188)

 われわれが近年開発した脱離イオン種をプローブとする(XAFS)分光法の基礎データ拡充のため、ホルムアミド分子の凝縮系試料の実験を行った。分子内のC, N, O元素におけるXAFS測定が可能でありC-H, N-H結合を区別して最表面の配向構造分析することが可能であることが示された。さまざまなX線励起エネルギー,生成物種,励起偏光角度について測定した飛行時間質量スペクトルから生成物が放出される際の初期運動エネルギーを求め、イオン脱離機構を調べた。運動エネルギーは発生メカニズム(直接解離/間接解離機構)を大きく反映すること、また多成分存在することが示された。


34000041
Mechanism of state-specific enhancement in photon-stimulated desorption as studied using a polarization-dependent technique
関口 哲弘; 馬場 祐治; 下山 巖; Wu, G.*; 北島 義典*
Surface Science 593(1-3), p.310-317(2005) ; (JAEA-J 00189)

 回転型飛行時間質量分析装置(R-TOF-MS)を用いて、分子固体表面最上層で起こる結合解離と脱離過程における分子配向効果を研究した。凝縮塩化ベンゼンの質量スペクトル,電子収量法,イオン収量法による高分解能NEXAFSスペクトルの偏光角度依存性を報告する。凝集分子ではCl 2s→σ*C-Cl共鳴励起でCl+イオン収量が増加する現象に関して顕著な配向効果が観測された。下層による緩和に表面上の分子の結合方向が大きく影響を受けることから、この配向効果には電荷中性化緩和が重要な役割を果たしている。π*C=C共鳴励起では偏光依存性を全く示さなかった。このことから離れた原子を内殻励起しても「遠い」結合には直接解離が起こらず、おもに2次電子により解離が引き起こされるものと考察する。


34000042
Desorption of cluster ions from frozen gases following high-density electronic excitation
馬場 祐治; 関口 哲弘; 下山 巖
Surface Science 593(1-3), p.324-330(2005) ; (JAEA-J 00190)

 極低温(9K)で凝縮した固体窒素表面を、低エネルギーHeイオン照射により高密度励起したときのイオン脱離機構について検討した。3keV Heイオン照射では、n=30までのクラスターイオン(Nn+)の脱離が観測された。脱離強度はn=4までが大きく、n≧5では急激に減少した。またn≧5のクラスターイオンでは、偶数個のクラスターが隣接する奇数個のクラスターより常に大きかった。これらのクラスターイオンの分布は、気相における窒素クラスターイオンの安定性と一致した。また、比較のため測定した固体酸素,固体メタン,固体アルゴンからのイオン脱離強度も、それぞれの気体の気相での安定性と類似の傾向を示した。クラスターイオン分布の照射エネルギー依存性と、イオン照射部の時間に依存した温度分布の計算結果から、クラスターイオンの脱離は、イオン照射部分の局所的,瞬間的加熱による気化現象で説明できることを明らかにした。


34000043
Dislocation networks in conventional and surfactant-mediated Ge/Si(111) epitaxy
Filimonov, S. N.*; Cherepanov, V.*; Paul, N.*; 朝岡 秀人; Brona, J.*; Voigtlander, B.*
Surface Science 599(1-3), p.76-84(2005) ; (JAEA-J 00191)

 サーファクタント(界面活性剤)としてのBiの有無によるGe/Si(111)界面に生じる転位のネットワークについてシミュレーションとSTM観察を用いて評価を行った。その結果、サーファクタントを用いた成長では転位が三角格子ネットワークであるのに対して、用いていない成長ではハニカム格子ネットワークを有することがわかった。また欠陥密度はサーファクタントを用いていない成長の方が少なくGe/Siのミキシングによる緩和が原因と考えられる。


34000044
Neutron shielding and blanket neutronics study on low aspect ratio tokamak reactor
山内 通則*; 西谷 健夫; 西尾 敏
電気学会論文誌,A 125(11), p.943-946(2005) ; (JAEA-J 00192)

 内側トロイダル磁場コイルに超伝導を用いた低アスペクト比トカマク炉を実現するために、中性子工学の観点から遮蔽体やトリチウム増殖ブランケットの設計条件を検討した。炉の形状を考慮するとトーラス内側は超伝導コイルの遮蔽専用、トーラス外側はトリチウムの増殖を主たる機能に特化するのが有利と考え、内側遮蔽体には先進的な遮蔽材を採用して最適な組成とコイル遮蔽に必要な遮蔽厚さを評価した。また外側には、先進的なトリチウム増殖材を用いて、増殖比を最大にするために最適なブランケットの組成や構造を検討した。さらに、アスペクト比に対するトリチウム増殖比の変化を求め、アスペクト比が2〜2.5程度の幾つかのブランケット構造に対するトリチウム増殖比とそれらを1.1以上にするための条件を明らかにした。


34000045
1991年のサイクロンによるベンガル湾の高潮場の再解析; 波浪・高潮結合モデルによる白波砕波の影響評価
Kim, K.; 山下 隆男*
海岸工学論文集 52(1), p.211-215(2005) ; (JAEA-J 00194)

 大気・海洋間の運動量,熱,物質の交換には、風波が重要な役割をする。風波の発生・発達・減衰機構のモデル化には、(1)wave-induced stressのような風波により発生する比較的大規模な大気乱流による形状抵抗とwaveletsによる空力学的粗度特性を波齢及び大気の安定度との関数で系統的に表現できる理論の構築と、(2)breaker stress等の定義による白波砕波減衰を通しての波浪から吹送流への運動量変換モデル、及び(3)波齢の高いfast waveに対する波浪増幅・減衰機構の定式化に関する研究が必要となる。これらの研究成果を、極浅海域での波浪・高潮相互作用場に適用するため、波浪推算モデル(Wave Watch3(WW3)),メソ気象モデル(MM5),海洋モデル(POM)の連結系数値モデルを用いて、1991年のサイクロンによるベンガル湾の高潮場の再解析を行い、波浪・高潮結合系における白波砕波の影響を評価した。


34000046
原子力研修の現状と今後; 社会のニーズに合わせるために
傍島 眞
日本原子力学会誌 47(10), p.693-697(2005) ; (JAEA-J 00195)

 原子力研修における社会人の教育は、これまで原子力エネルギー技術,放射線技術及び防災の各分野を対象に、多数の研修終了者を育ててきた。これらのニーズは時代とともに変化しており、国内では新たな大学連携や教育の補完的役割が求められ、保有する原子力施設を活用して、実践的な技術者を養成することが一層期待されている。また、新設された原子力・放射線技術士への講習も原子力を再び活気づけるのに有益と考えられる。一方、国際研修では、アジアの国々に原子力利用を安定に根付かせるうえで日本は重要な役割を果たしており、各国の専門技術者教育の自立を支援することが、今後も続けられる。


34000047
よくわかる核融合炉のしくみ,10; 炉内機器を修理する遠隔保守ロボット,大型重量物を高精度で操作する最先端ロボット技術
柴沼 清
日本原子力学会誌 47(11), p.761-767(2005) ; (JAEA-J 00196)

 核融合炉のブランケットやダイバータなどの炉内構造物は、核融合反応時に発生する中性子により放射化され、核融合反応を停止した後でもγ線の線量率が最大500Gy/hに達する。このため、これらの炉内構造物が損傷したり故障した場合には、人が炉内に近づくことができないために、これらの保守はロボットにより行う必要がある。ここでは、国際熱核融合実験炉ITERを例に取り、核融合炉の炉内構造物の保守を行う代表的なロボットについて、求められる機能や研究開発の現状を紹介する。


34000048
ラチス構造物の波動伝播特性に関する実験的研究
宮崎 明美; 川口 健一*
日本建築学会構造系論文集 597, p.69-76(2005) ; (JAEA-J 00197)

 線材から構成される立体ラチス構造物は近年大規模化・複雑化の傾向にあり、従来の振動解析技術を超えた視点が必要とされている。本研究では定常状態である振動状態へ至る前の過渡状態に着目し、構造物内の波動伝播特性を調査することを目的としている。多くの部材が任意に連結されたラチス構造物を対象とした波動伝播実験が少ないことを踏まえ、本論文では数種類の平板型ラチス構造試験体を用いて行った波動伝播実験の結果について述べている。最初に片持ち梁による予備実験を行い、実験結果及び理論解をもとに平板型ラチス構造試験体を固定するための境界部治具の設計を行った。次に平板型ラチス構造試験体による波動伝播実験を行い、得られた結果よりラチス部材の部材配置及び配置密度と波動伝播特性の関係について考察した。また、連続体平板の実験結果と比較することにより、ラチス構造物特有の減衰特性評価への足がかりを示した。また、連続体平板の結果を理論解と比較し、実験及び測定精度の妥当性を示した。


34000049
JT-60UにおけるN-NBI加熱・電流駆動とトカマク定常化
池田 佳隆; 及川 聡洋; 井手 俊介
プラズマ・核融合学会誌 81(10), p.773-778(2005) ; (JAEA-J 00198)

 トカマク定常核融合炉では、循環エネルギーが低い非誘導運転を行うために、高効率な電流駆動方式と高い自発電流の割合が必要である。NBIは電流駆動と加熱に対し強力かつ有効な手段である。JT-60Uでは350keV以上のエネルギー粒子を入射する負イオンNBIを有し、ITER級の領域でNBIの電流駆動と加熱を研究している。本解説は、ITERやトカマク核融合炉の連続運転に向けた最近の負イオンNBI実験と装置の進展について述べたものである。


34000050
ITER NB system; Compact beamline and design against radiation
Krylov, A.*; 井上 多加志
プラズマ・核融合学会誌 81(10), p.779-784(2005) ; (JAEA-J 00199)

 ITER NBシステムの設計には以下の2つの特徴がある。そのひとつは短尺のビームライン設計であり、もうひとつは放射線環境下で1MV高電圧を真空絶縁するビーム源(イオン源と加速器)である。ビームライン軸長の短尺化は、中性化セル内部を幅の狭いチャンネルに区切ることによってガスコンダクタンスを低減し、中性化に必要なターゲット厚さを保ったままガス流量を減らして実現する。中性粒子ビームの輸送効率と再電離損失を最適化し、ITER NB入射装置は高効率と短い軸長(23.4m)を両立している。3次元中性子輸送解析の結果、高電圧絶縁に SF6等のガスを用いると、放射線誘起伝導によってガス中に過大な発熱が起こりうることが明らかになった。そこで現在のITER NBシステムでは、真空絶縁型ビーム源の設計が確立されている。


34000051
核融合炉用負イオン源・加速器の開発の現状
井上 多加志; 花田 磨砂也
プラズマ・核融合学会誌 81(10), p.785-791(2005) ; (JAEA-J 00200)

 ITERに向けたMeV級加速器と大型負イオン源開発の現状をまとめる。現在、日本原子力研究開発機構のMeV級加速器は、高電流密度(200A/m2)のH-のイオンをMeV級のビームエネルギーまで加速することを目指している。真空絶縁技術の進展に伴うMeV級加速器における1MVの安定保持(2時間以上)に引き続き、高電流密度の負イオンビーム加速試験では、146A/m2で836keVのビームが得られている。これは世界で最初の「ITER級」高パワー密度負イオンビームの実証である。最近の大型負イオン源における負イオン一様性の研究では、高速電子の磁気フィルターからの漏洩が問題であり、負イオン体積生成(セシウム添加なし)時には引き出し領域局所の負イオンが破壊されて、負イオンの一様性が阻害されることが明らかになった。一方セシウムを添加したときには、高速電子により生成する水素原子や正イオンの局所密度が増大し、負イオン表面生成が局所で過度に促進されて一様性が得られなくなる。これは、負イオン源磁場配位を正イオン源様として引き出し領域近傍に高密度プラズマを生成すれば、高密度負イオンが一様に得られる可能性を示唆するものである。そこで原型炉に向けて、電子温度の高いRF駆動プラズマを用いた負イオン源の開発に着手している。


34000052
NBI技術の波及効果
渡邊 和弘; 安東 靖典*
プラズマ・核融合学会誌 81(10), p.792-797(2005) ; (JAEA-J 00201)

 中性粒子入射装置(NBI)で開発された大出力イオン源や電源技術の波及効果について述べる。具体的には、高集積電子デバイス,ハードディスクの大容量化,大型液晶モニターなどのようなハイテク製品実現を支える製造装置への波及が上げられる。つまり、これらの技術の進展の裏には、それを製造する際に必要な道具、いわゆる製造装置の性能向上が不可欠であり、それを可能にしたのがNBIで培われた大面積大出力イオンビーム技術である。さらに、NBI電源技術についても、サージ抑制素子の高性能化技術などが、高エネルギー加速器の小型化高性能化に大きく貢献している。本稿では、NBI開発によって進展したイオンビーム技術が、今日のIT化時代を支える柱の一つとなっていること、さらに、加速器などの分野への貢献を含めて具体的な例を挙げながら紹介する。


34000053
JT-60Uの加熱用中性粒子ビーム中の酸素量とプラズマ中の酸素量との関係
仲野 友英; 小出 芳彦; 本田 敦; 梅田 尚孝; 秋野 昇; 東島 智; 竹永 秀信; 久保 博孝
プラズマ・核融合学会誌 81(9), p.708-716(2005) ; (JAEA-J 00202)

 中性粒子ビーム入射実験を開始した直後では中性粒子ビームには重水素に対して8%以上の酸素が含まれており、炉心プラズマに含まれる酸素量のうち約50%が中性粒子ビームに由来するものであった。中性粒子ビームに含まれる酸素量はビーム入射を重ねるごとに減少し、約850ショット後には約1%になった。このとき、プラズマに含まれる酸素量のうち中性粒子ビームに由来する酸素量は20%以下であった。中性粒子ビームから入射された酸素のプラズマにおける閉じ込め時間は0.18秒と評価された。


34000054
放射線防護・医学分野で用いられる放射性核種崩壊データベースの開発
遠藤 章
RIST News (40), p.19-29(2005) ; (JAEA-J 00203)

 被ばく線量計算用の放射性核種崩壊データには、これまで国際放射線防護委員会(ICRP),米国核医学会内部放射線量委員会(MIRD)が1980年代に編集したデータが利用されてきた。現在、ICRP, MIRDでは、それぞれの崩壊データを改訂する計画を進めており、これに日本原子力研究開発機構において編集されたデータDECDC2が採用されることになった。本稿では、ICRP, MIRDのデータが編集された経緯,これまでの利用及びデータの改訂に至った背景、また、DECDC2の開発と今後の展開について述べる。


34000055
高エネルギー中性子輸送計算コード開発の現状; 高精度線量評価を目指して
佐藤 達彦
RIST News (40), p.3-8(2005) ; (JAEA-J 00204)

 高エネルギー加速器施設の作業者,航空機の乗務員及び宇宙飛行士に対する被ばく線量評価では、20MeV以上の高エネルギー中性子による被ばくが問題となる。しかし、高エネルギー中性子は、一般に物質との反応過程が複雑であるため、その線量の正確な測定は極めて困難である。したがって、高エネルギー中性子輸送を扱えるモンテカルロ計算コードの開発が世界各国で精力的に進められ、線量評価に利用されている。本報告では、それら計算コードの開発の現状について解説し、その使用時における留意点や、今後解決すべき課題について整理する。


34000056
水平層状二相流における界面成長及び変形の格子ボルツマンシミュレーションの紹介
海老原 健一
RIST News (40), p.30-41(2005) ; (JAEA-J 00205)

 格子ボルツマン法は、流動現象を粒子分布の運動によって表現する手法であり、その二相流体モデルは、二相界面の複雑な形状変化を比較的容易にシミュレーションすることが可能である。本解説では、格子ボルツマン法の二相流体モデルの水平層状二相流における界面成長及び界面からの液滴発生のシミュレーション、さらに、その結果による流動様式線図や相関式の再現について紹介する。


34000057
連続エネルギー法及び多群法に基づく汎用中性子・光子輸送計算モンテカルロコードMVP/GMVP II
長家 康展
RIST News (40), p.9-18(2005) ; (JAEA-J 00206)

 これまで核設計技術開発グループでは、おもに高速高精度な炉心計算を目的とした中性子・光子輸送計算モンテカルロコードMVP/GMVPを開発してきた。最近、これまでに行ってきた改良や新機能を取り込んだMVP/GMVPコードを第2版として正式に公開した。追加された主な機能は(1)ENDF-6形式のファイル6(MF=6)を用いて表現された散乱モデルへの対応,(2)時間依存タリー,(3)ポイントワイズ応答関数を用いた反応率計算,(4)線源指定法の改良,(5)任意温度における連続エネルギーモンテカルロ計算,(6)固有値問題における分散のバイアス評価,(7)点検出器及び面検出器,(8)確率論的幾何形状モデル,(9)炉雑音解析機能(ファインマン-α実験のシミュレーション),(10)任意形状の格子枠,(11)周期境界条件,(12)標準並列ライブラリ(MPI, PVM)を用いた並列化,(13)対応プラットフォームの拡充,(14)連続エネルギー法による燃焼計算(MVP-BURN)である。本稿では新たに組み込まれた機能を中心にMVP/GMVPコードについて紹介している。


34000058
超アクチノイド元素研究の現状と展望
永目 諭一郎
Radioisotopes 54(11), p.555-567(2005) ; (JAEA-J 00207)

 原子番号104を超える超アクチノイド元素研究の最新の成果を、合成と化学的研究という観点からレビューする。昨年理化学研究所で合成された113番元素の実験や結果について紹介するとともに、ロシア原子核研究所が進めている超アクチノイド元素合成研究について概説する。一方化学的研究では、原研での104番元素ラザホージウムの溶液化学的性質で極めて興味ある結果が得られている。これを紹介するとともに、ヨーロッパのグループが行った108番元素ハッシウムの気相化学実験を解説する。また昨年決定した111番元素の命名についても簡単に触れる。


34000059
固/液界面衝突解析モデルによるピッティング損傷評価
直江 崇; 二川 正敏; 大井 俊志; 石倉 修一*; 池田 裕二郎
材料 54(11), p.1184-1190(2005) ; (JAEA-J 00208)

 高出力の核破砕中性子源の開発が世界的に行われている。大強度陽子加速器施設(J-PARC)の物質生命科学実験施設では、核破砕水銀ターゲットからの発生する中性子を用いて、物質生命科学の先駆的研究が展開される。陽子ビームが水銀ターゲットへ入射することにより、水銀中では熱膨張による圧力波が生じる。この圧力波の伝ぱ過程で発生する水銀中のキャビテーションは、ターゲット容器内壁に局所的な衝撃壊食損傷を形成する。この衝撃壊食は、構造健全性を低下させるため、ターゲット容器交換寿命を決定する重要な因子となる。局所的な衝撃壊食損傷を再現するために、電磁式衝撃圧負荷試験装置(MIMTM)を開発し、壊食損傷形成を評価した。さらに、独立した壊食痕形状と、キャビテーション気泡崩壊時に生じるマイクロジェットの衝突速度との相関を評価するために、液滴衝突解析を適用した。その結果、壊食痕の半径/深さで規格化した値を用いることにより、マイクロジェット衝突速度が同定可能であり、陽子ビーム入射時の損傷を再現する実験における衝突速度は、225〜325m/sであることを示した。また、塑性変形による壊食痕形成抑制の観点から、表面硬化処理が有用であることを示し、その有効厚さについても評価した。


34000060
A Large-scale numerical simulation of bubbly and liquid film flows in narrow fuel channels
高瀬 和之; 吉田 啓之; 小瀬 裕男*; 秋本 肇
Proceedings of 2005 ASME International Mechanical Engineering Congress and Exposition (CD-ROM) , 8p.(2005) ; (JAEA-J 00209)

 サブチャンネル解析コードに代表される従来の炉心熱設計手法に、スパコン性能の極限を追求したシミュレーションを主体とする先進的な熱設計手法を組合せることによって、効率的な革新的水冷却炉開発の可能性について研究している。今回は、隣り合う燃料棒の間隔が1.0mmと1.3mmの2種類の稠密炉心を対象にして大規模な二相流シミュレーションを行い、燃料棒まわりに形成される複雑な水と蒸気の3次元分布の詳細予測に成功した。一連の成果を基に、より高性能な稠密炉心の仕様緒元をシミュレーションによって探索できる高い見通しが得られた。


34000061
PIE technique of LWR fuel cladding fracture toughness test
遠藤 慎也; 宇佐美 浩二; 仲田 祐仁; 福田 拓司*; 沼田 正美; 木崎 實; 西野 泰治
Proceedings of 2005 JAEA-KAERI Joint Seminar on Advanced Irradiation and PIE Technologies , p.S2_7_1-S2_7_11(2005) ; (JAEA-J 00210)

 近年、高燃焼度燃料を使用した出力急昇試験において、被覆管の軸方向に脆性割れが観察されている。この脆性割れは、高燃焼度化に伴う被覆管の水素吸収に起因した機械的特性の劣化と考えられているが、引張試験やバースト試験等の従来からの照射後試験技術では、その抵抗性を評価することは不可能である。燃料被覆管の脆性割れに対する抵抗性評価技術は、高燃焼度化燃料の健全性評価のうえで極めて重要であり、新たな照射後試験技術としての確立が急務となっている。脆性材料の壊れ抵抗性評価は、破壊靱性試験によってのみ可能である。しかしながら、規格化された既存の破壊靱性試験標準試験法は、平面歪状態を満足する形状の試験片に対するものであり、燃料被覆管のような薄肉で細径の管状材料には適用できない。このため、原子燃料工業によってコールド試験用に開発されたNCT試験法の照射後試験への適用が提案された。本セミナーでは、原子燃料工業とホット試験室との共同研究で開発した、NCT試験法による燃料被覆管の破壊靱性試験のための照射後試験技術、すなわち、使用済み燃料被覆管からのサンプル加工技術,試験片組立技術,疲労予き裂導入技術,NCT破壊靭性試験等の遠隔操作技術とを適用した照射後試験での有効性について概要を報告する。


34000062
Uncertainty of thermodynamic data of smectite and its impact on smectite alteration
柴田 雅博
Proceedings of 2nd Japan-Korea Joint Workshop on Radioactive Waste Disposal 2005: Interaction between NBS and EBS , p.192-200(2005) ; (JAEA-J 00211)

 スメクタイトの熱力学データの不確実性の検討を行うため、提案されている熱力学データ推定手法のレビューを行うとともに、幾つかの手法を用いて、生成自由エネルギー及び反応平衡定数の導出を行った。さらに、それらの値を用いて、値の不確実性がスメクタイトの安定性に及ぼす影響を検討したところ、一部の値は天然事例とは整合しない値であることがわかった。したがって、さまざまなモデル推定値による値の幅をもって不確実性の幅とすることは適切ではなく、現実的な不確実性の幅の決定には、より詳細なモデルのレビューと導出される値に対する検討が必要であることがわかった。


34000063
Investigation on Innovative Water Reactor for Flexible Fuel Cycle(FLWR)
大久保 努; 内川 貞夫; 久語 輝彦; 秋江 拓志; 岩村 公道
Proceedings of 3rd Asian Specialist Meeting on Future Small-sized LWR Development , p.9_1-9_12(2005) ; (JAEA-J 00212)

 これまでに培われてきた軽水炉技術に立脚して、将来の持続的なエネルギー供給を確保するために、日本原子力研究開発機構では革新的水冷却炉(FLWR)概念の検討を進めてきた。本概念は、プルトニウムの多重リサイクルを2段階に分けて行うことにより、ウラン及びプルトニウム資源の有効かつ柔軟な利用を目指したものである。第1段階では、FLWR炉心は高転型炉心概念であり、軽水炉やプルサーマル利用から大きな技術的なギャップなしにスムーズな連続性を確保することを目指したものである。第2段階の炉心は低減速軽水炉炉心概念であり、軽水炉技術によるプルトニウムのリサイクルによって持続的・長期的なエネルギー供給に有効な1.0以上の転換比を達成するものである。重要な点は、両方の概念は両立性の有る同じ大きさの燃料集合体を使用することから、原子炉の寿命期間中に、同じ原子炉において第1から第2ステップへ進むことができる点であり、天然ウラン資源状況やMOX使用済み燃料用再処理の確立等の将来の燃料サイクル環境に柔軟に対応可能である。これまでに、詳細な検討が、炉心設計をはじめ稠密炉心における熱流動等の関連する実験も含めた研究とともに進められてきており、それらの成果により本提案概念の成立性は高く有望であるとの見通しが得られている。2030年代におけるFLWRの商用化のために、400MWe級の小型炉を2010年代に導入炉として建設することを提案している。


34000064
Predicted three-dimensional bubbly and liquid film flow behavior in narrow fuel channels
高瀬 和之; 小瀬 裕男*; 吉田 啓之; 秋本 肇; 佐竹 信一*
Proceedings of International Conference on Jets, Wakes and Separated Flows (ICJWSF 2005) , p.137-144(2005) ; (JAEA-J 00213)

 著者らは水や蒸気からなる二相流現象を実験式や構成式を極力用いないで予測する新しい二相流解析手法の開発を行っている。本手法では従来手法よりも大量の計算格子数が必要である。そこで、著者らは地球シミュレータ等のスーパーコンピュータを用いた効率的な大規模シミュレーション法開発や大規模解析データの可視化表示法開発も併せて行っている。本報では、開発中の二相流解析手法を使って予測した将来型水冷却炉の燃料集合体内を流れる気泡流及び液膜流挙動の結果を示す。燃料棒が稠密に配置された将来型炉の燃料集合体において、狭隘な燃料棒間における大規模な気泡の合体・分裂に関する挙動がはじめて詳細に明らかになった。また、スペ−サまわりの液膜挙動の詳細も明らかになり、数値計算によるスペ−サ形状の最適設計実現に対して高い可能性が得られた。


34000065
The Clearance and disposal of uranium contaminated waste in Japan
吉田 拓司*; 片寄 直人*; 川妻 伸二; 岩沢 信夫*
Proceedings of International Conference on Nuclear Energy System for Future Generation and Global Sustainability (GLOBAL 2005) (CD-ROM) , 4p.(2005) ; (JAEA-J 00214)

 ウラン廃棄物の主要発生3者(日本原燃(発表代表者),ウラン加工メーカ,JAEA)から共同でポスター発表を行う。ポスターでは、日本におけるウラン廃棄物のクリアランスと処分にかかわる現状と課題について紹介するとともに、その解決策について処分概念案などの例を示し、会議参加者と議論することにより幅広の意見収集や本課題の認知を行い、今後の検討に資するものとする。


34000066
Recent progress in X-ray laser research in JAERI
河内 哲哉; 永島 圭介; 岸本 牧; 長谷川 登; 田中 桃子; 越智 義浩; 錦野 将元; 川染 勇人; Tai, R.; 並河 一道*; 加藤 義章
Proceedings of SPIE's International Symposium on Optics and Photonics 2005, Vol.5919 , p.59190L_1-59190L_11(2005) ; (JAEA-J 00215)

 原研におけるX線レーザー開発の現状について報告する。波長13.9nmのニッケル様銀レーザーの応用実験については、X線スペックルを用いた強誘電体の微視的なクラスター構造についての観測や、内殻電子の光イオン化についての実験について紹介する。X線レーザーの高品質化については、高次高調波を種光としてネオン様マンガンレーザー(波長23.6nm)の時間的にコヒーレントなX線レーザーを発生させたことについて報告する。また、現在開発中のX線レーザー発生用高繰返しガラスレーザー(繰返し数0.1Hz)についての紹介も行う。


34000067
Numerical analysis of three-dimensional two-phase flow behavior in a fuel assembly
高瀬 和之; 吉田 啓之; 小瀬 裕男*; 秋本 肇
WIT Transactions on Engineering Sciences, Vol.50 , p.183-192(2005) ; (JAEA-J 00216)

 原子炉熱設計に必要である炉心内水−蒸気系二相流構造の詳細を大規模シミュレーションによって明らかにする研究を行っている。従来の熱設計手法ではサブチャンネル解析コードに代表されるように実験データに基づく構成式や経験式を必要とするが、新型炉に関しては熱流動に関する実験データが十分ではないため、従来手法による熱設計では高精度の予測は困難である。そこで、著者らは、シミュレーションを主体とした先進的な熱設計手法を開発し、これに従来手法を組合せることによって効率的な新型炉開発の実現を目指している。本論文では、次世代型水冷却炉を対象にして気泡流や液膜流に関する大規模な気液二相流シミュレーションを行い、燃料棒が3角ピッチ状に稠密に配置され、流れ方向にスペ−サを有する燃料集合体内における複雑な水と蒸気の3次元分布を定量的に明らかにした結果を示す。


34000068
兵庫県南部地震後の神戸市東灘区LPガス漏洩事故による住民避難の要因分析
梅本 通孝*; 熊谷 良雄*; 石神 努; 村松 健
平成17年度秋季地域安全学会研究発表会講演論文集 (7), p.341-350(2005) ; (JAEA-J 00217)

 1995年1月17日の兵庫県南部地震によって神戸市東灘区沿岸の人工島:東部第二工区の事業所からLPガスが漏洩する事故が発生した。この事故への対処として翌1月18日早朝には周辺地域に避難勧告が発令され、対象となる住民は約72,000人に及んだ。この事例における避難勧告の情報伝達状況、及び住民避難の実態を把握するために、事故から2年後に避難勧告対象地域の住民へのアンケート調査を行い、406人から回答を得た。この収集データを用いて住民が避難勧告を知った状況,避難実施の有無,避難開始のタイミング,避難勧告解除の認知等について、個人属性や地理的要因等との関連性分析を行った。調査分析の結果、本調査回答者の89%が当日中に避難勧告を認知していたこと、さらにその78%がLPガス漏洩事故理由での避難を行ったこと、この避難実施状況には回答者の居住区域、及び勧告前夜の所在という2要因が強く影響したこと、等を明らかとした。


34000069
微小流路内大規模気泡流構造に関する数値予測
高瀬 和之; 吉田 啓之; 秋本 肇; 小瀬 裕男*; 青木 尊之*
日本機械学会2005年度年次大会講演論文集,Vol.7 , p.17-18(2005) ; (JAEA-J 00218)

 原子炉燃料集合体内のサブチャンネル間を大量の気泡が合体,分裂を繰り返しながら下流へと移行する挙動を調べた。サブチャンネルの代表長さは2mm程度であり、このサイズで大規模な気泡流の挙動を実験的に把握することは容易ではないため、数値解析を行った。大規模気泡流に関する一連の解析結果をもとに、狭隘流路を流れる気泡の合体分裂メカニズムについて有益な知見が得られた。


34000070
物体後流におけるガス巻込み現象解析
伊藤 啓; 堺 公明
日本機械学会第18回計算力学講演会講演論文集 , p.433-434(2005) ; (JAEA-J 00219)

 高速増殖炉の実用化設計研究において、上部プレナム部自由液面におけるガス巻込みの発生が懸念されている。炉心へのガスの混入は出力の変動を生じるため、ガス巻込みの発生を防止する必要がある。設計研究は種々の機器配置を検討することから、各配置例に対するガス巻込み判定が必要であるが、ガス巻込み現象は体系形状(寸法)や局所の流速分布によって支配されるため、個々の体系に対するガス巻込み挙動の変化を図面上で予測することは困難である。このため、現在、ガス巻込み挙動を確実に評価する方法として、体系の局所形状を忠実に模擬した実規模試験が用いられている。しかし、原子炉のような大きな体系では、機器配置の変更の度に実規模試験によってガス巻込み評価を行うのは現実的ではなく、数値解析を用いた設計手法の効率化が望まれている。本件は、比較的単純な体系において、境界条件や体系形状を変化させた場合のガス巻込み挙動の変化を数値解析によって評価し、旋回渦によるガス巻込みの支配パラメータに関して検討した結果、次の知見を得た。(1)渦によるガス巻込みは、ガスコア先端から気泡が離脱するタイプと、ガスコアが吸い込み口まで到達するタイプがある。(2)ガスコアが吸い込み口に到達するような強い吸い込みが存在する場合、連続的に多量のガスが吸い込まれる。(3)吸い込み流速が液面に与える影響は、吸い込み口近傍の体系形状に大きく依存する。以上より、吸い込み流速及び吸い込み口近傍形状という、設計上留意すべき2つのパラメータが抽出された。


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