学会誌等掲載論文
※下記の研究開発成果は資料名順に並んでいます。

2006年10月


34001076
Yield point of metallic glass
清水 大志; 尾方 成信*; Li, J.*
Acta Materialia 54(16), p.4293-4298(2006) ; (JAEA-J 01226)
 ほとんどの金属ガラス(BMG)においては、約2%の単軸歪εyによりせん断帯が形成される。本論文では、この現象の臨界条件が萌芽的せん断帯(ESB)の進展に依存し、生成にはよらないという理論を提案する。ESBが進展するためには、各原子が疎外化された糊状領域が摩擦加熱によってガラス転移温度Tgに達するまで、遠方のせん断応力τ〜 Eεy/2が準定常状態の摩擦力τglueを越えていなければならない。その時点で、ESBはせん断き裂的なものにまで成熟する。この成熟に必要な長さのスケールlincはZrベースのBMGについて〜102nmと見積もることができるが、これ以下のサイズではせん断変形の局所化は起こらない。疎外化領域におけるせん断変形局所化への抵抗は極めて高速な(すなわち原子振動と同程度のタイムスケールを持つような)散逸プロセスによることから、分子動力学(MD)シミュレーションによって追跡することが可能である。われわれは2元素のレナードジョーンズモデル系や埋め込み原子法(EAM)ポテンシャル,5元素のEAMポテンシャルによるMDシミュレーションを実施し、εyの予測として2.1〜2.9%という範囲の値を得た。

34001077
Extension of cross section homogenization method for particle-dispersed media to layered particles
山本 俊弘
Annals of Nuclear Energy 33(9), p.804-812(2006) ; (JAEA-J 01227)
 Shmakovらによって開発され、その後山本らが改良を行った、粒子がランダムに分散した媒質に対する断面積均質化手法を高温ガス炉の燃料のような多層粒子に適用できるよう拡張を行った。ここでは二層からなる同心球の粒子に対して立式化を行った。これを連続エネルギーモンテカルロコードMCNPに組み込みを行い、単純化した高温ガス炉炉心を含むいくつかの計算例に対して適用を行った。二層粒子に対して拡張を行った本手法は、単層粒子に対する従来の手法とほぼ同等の結果を与える。単純化した高温ガス炉炉心に対する本手法の中性子実効増倍率は、二層粒子を直接燃料コンパクト中にランダムに分散させたときの参照解に対して数百pcmの範囲内で再現できる。従来の単層粒子に対する手法は解析的に解くことができたのに対して、本手法は数値積分を要するために計算効率が低下する。しかし、二層粒子を直接非均質でモンテカルロ法で解いたときに比べてはるかに短い時間で計算が可能である。

34001078
Protein-DNA recognition patterns and predictions
皿井 明倫*; 河野 秀俊
Annual Review of Biophysics and Biomolecular Structure 34, p.379-398(2005) ; (JAEA-J 01228)
 蛋白質とDNAの相互作用について、構造生物学的観点からレビューする。蛋白質のDNA認識は、塩基とアミノ酸の直接的な認識とDNA自体の構造変形を認識する間接認識とに分けて考えることができる。多くの蛋白質とDNAの複合体構造を定量的に評価した結果、蛋白質のDNA認識における配列特異性は、この2つのほぼ同等な寄与により達成されていた。

34001079
Sequence analysis of the gliding protein Gli349 in Mycoplasma mobile
目次 正一*; 上野山 敦子*; Adan, J.*; 宮田 真人*; 由良 敬; 河野 秀俊; 郷 信広
Biophysics 1, p.33-43(2005) ; (JAEA-J 01229)
 マイコプラズマは、これまでにしられている滑走する生物とは全く異なる滑走メカニズムを持っていると信じられている。われわれは、滑走メカニズムを解明するために、滑走関連蛋白質であると特定されたGli349蛋白質の配列解析を行った。この蛋白質は、他の生物の蛋白質と全く相同性を持たない新規の蛋白質であることがわかった。さらに、100残基程度の弱い相同性をもつリピート配列を少なくとも13個もっていることがわかった。リピート長から推定される蛋白質の大きさと電子顕微鏡で観察される塊のサイズがほぼ同程度であることが推定されることから、リピートが構造単位であることが強く示唆された。

34001080
Simple fabrication process for CeO2-MgO composite as surrogate for actinide-containing target for use in nuclear fuel
逢坂 正彦; 三輪 周平; 舘 義昭
Ceramics International 32(6), p.659-663(2006) ; (JAEA-J 01230)
 原子力において使用されるアクチニド含有ターゲットの模擬として、CeO2-MgOコンポジットのシンプルな製造プロセスを確立した。プロセスは現行核燃料用のものへ適合する。製造されたターゲットは、高密度等良好な特性を有していた。とりわけ、CeO2は理想的な目標としたように球ではないものの、楕円形状であり、熱伝導度測定結果から、この形状は不利とはならないことが示された。このことは、ゾルゲル法等のかなり複雑な先進プロセスと比べて本プロセスがそん色ないことを示す。

34001081
Anisotropy and effect of salinity in diffusion and activation energy of Cs+ ions in compacted smectite
佐藤 治夫
Clay Science 12(suppl.2), p.160-165(2006) ; (JAEA-J 01231)
 Naスメクタイト中のCs+イオンに対する非定常拡散実験を、スメクタイト粒子の配向方向に対して配向方向と直角方向に、乾燥密度,塩濃度,温度を変えて行い、見掛けの拡散係数(Da)と活性化エネルギー(Ea)の異方性と塩濃度の影響について議論した。配向方向へのDaの方が直角方向よりも大きく、異方性が見られた。また、塩濃度の増加に伴い一様に増加した。Eaは、低乾燥密度においても、水中の拡散係数よりも明らかに高いEaが得られ、密度の増加に伴い増加した。この高いEaは、低乾燥密度においては、スメクタイト中のCs+とNa+イオンとのイオン交換エンタルピーで説明できるが、高乾燥密度においては、間隙水の活量低下の影響も作用していると考えられた。

34001082
Progress in the development and application of computational methods for probabilistic protein design
Park, S.*; 河野 秀俊; Wang, W.*; Boder, E. T.*; Saven, J. G.*
Computers & Chemical Engineering 29(3), p.407-421(2005) ; (JAEA-J 01232)
 計算科学的アプローチによる蛋白質設計法の開発と応用の最近の進歩をレビューする。

34001083
Particle simulation of the transient behavior of one-dimensional SOL-divertor plasmas after an ELM crash
滝塚 知典; 細川 哲成*
Contributions to Plasmas Physics 46(7-9), p.698-703(2006) ; (JAEA-J 01233)
 ELMyHモードプラズマ中のELM崩壊後のダイバータ板への大きな粒子束と熱束は、トカマク核融合炉運転において重要問題である。このときのSOLとダイバータプラズマの過渡的挙動に及ぼす運動論的影響についてよくはわかっていない。ここで、先進的粒子シミュレーションコードPARASOLを用いてこの問題を研究する。粒子と熱の伝搬の衝突度への依存性を系統的に調べる。また、粒子リサイクリングの影響についても調べる。

34001084
Association of europium(III), americium(III), and curium(III) with cellulose, chitin, and chitosan
尾崎 卓郎; 木村 貴海; 大貫 敏彦; 桐島 陽*; 吉田 崇宏*; 磯部 博志*; Francis, A. J.
Environmental Toxicology and Chemistry 25(8), p.2051-2058(2006) ; (JAEA-J 01234)
 正3価のf元素であるユウロピウム,アメリシウム及びキュリウムと天然ポリマー(セルロース,キチン,キトサン)との相互作用を調べた。バッチ実験により得られたポリマーへの各元素の吸着率と計算による各元素の化学種の推定結果から、上記ポリマーはいずれもアルカリ性溶液中で分解し、分解生成物はこれらの元素の環境中での易動性を高めることが示唆された。また、易動性を高める度合いの最も高いポリマーはセルロースであることがわかった。一方、レーザー分光法によりこれらのポリマー内でのユウロピウムの吸着状態を調べたところ、キチン,キトサン内ではそれぞれ内圏型及び外圏型の錯体として存在し、ユウロピウムとセルロース内の官能基との相互作用はキチン及びキトサン内でのそれよりも弱いことがわかった。これらの結果から、天然ポリマーが正3価のf元素の環境挙動に与える影響の推定には、元素とポリマー内の官能基との親和性の強弱だけでなく、ポリマーからの分解生成物との相互作用も考慮する必要があることが示された。

34001085
Characterization of C60 films polymerized by ion irradiation
鳴海 一雅; 境 誠司; 楢本 洋*; 高梨 弘毅
Fullerenes, Nanotubes, and Carbon Nanostructures 14(2-3), p.429-434(2006) ; (JAEA-J 01235)
 7MeV C2+イオンを照射したC60薄膜をX線回折法とラマン分光法を用いて評価し、イオン照射によるC60固体のポリマー化の過程を調べた。ラマンスペクトルにおいては、照射量の増加に伴い、Ag(2)モードのピーク収量の絶対値が減少するとともに、Ag(2)からHg(7)にかけての低波数側の成分が相対的に顕著になった。一方、X線回折の照射量依存については、照射量の増大に伴う111, 222, 333反射の大角度側へのシフトが観測された。これらの結果から、イオン照射に伴うC60分子の分解によってC60分子の絶対数は減少するが、同時に、分解せずに残ったC60分子のうち、ポリマー化したものの割合は増加し、1×1016/cm2照射後に残っているC60分子はほとんどがポリマー化していること、また、この時の(111)面の面間隔は、未照射の試料に比べるとポリマー化によって4%程度収縮していることがわかった。

34001086
Characterization of JT-60U exhaust gas during experimental operation
磯部 兼嗣; 中村 博文; 神永 敦嗣; 都筑 和泰; 東島 智; 西 正孝; 小林 靖典*; 小西 哲之*
Fusion Engineering and Design 81(1-7), p.827-832(2006) ; (JAEA-J 01236)
 トカマク試験装置の排ガス組成を知ることは、今後の核融合装置の燃料循環処理系の最適化設計を検討していくうえで非常に重要である。今回、2003年から2004年にかけて実施されたJT-60U試験運転時の排ガス組成を測定し、プラズマ放電内容との相関を調査した。排ガス中における水素同位体の濃度は、放電ごとにピーク値を持ち、高性能プラズマや長時間運転で高い値を示す傾向が見られた。一方、ヘリウムや炭化水素などの不純物成分は、ディスラプション時やグロー放電,テイラー放電といった壁調整放電時に高い濃度で検出された。また、通常のプラズマ放電においても、水素同位体と同様に高性能プラズマや長時間運転で高い濃度を示す傾向が見られ、最大で8%の炭化水素濃度が測定された。

34001087
Burn control study using burning plasma simulation experiments in JT-60U
竹永 秀信; 三浦 幸俊; 久保 博孝; 坂本 宜照; 平塚 一; 市毛 尚志; 米川 出*; 川俣 陽一; 飯尾 俊二*; 坂本 隆一*; 小林 進二*
Fusion Science and Technology 50(1), p.76-83(2006) ; (JAEA-J 01237)
 JT-60Uにおいて、自律性が強い燃焼プラズマの制御性を明らかにするために、自己加熱模擬用と外部加熱模擬用の2つのNBグループを用いた核燃焼模擬実験を行った。自己加熱模擬用では、実時間制御システムを用いてDD反応による中性子発生率に比例して加熱パワーを入射した。外部加熱模擬用では、蓄積エネルギー帰還制御を自己加熱模擬と同時に適用可能なように制御系を改良した。ELMy Hモードプラズマに、外部加熱模擬用NBパワー一定の下で自己加熱模擬を適用した場合には、自己加熱模擬用の比例定数を大きくすることにより、中性子発生率と加熱パワーの増加ループが発生し、蓄積エネルギーも増加した。蓄積エネルギー帰還制御を自己加熱模擬と同時に適用した場合には、自己加熱模擬用NBパワーが増加しても、蓄積エネルギー帰還制御により外部加熱模擬用NBパワーが減少し、蓄積エネルギーは一定に制御された。0次元モデル計算により、自己加熱模擬用の比例定数を大きくすることは閉じ込め性能が高くなった場合を模擬していることを示した。また、同計算により、蓄積エネルギー帰還制御を行った場合、Q=5では十分な制御性が確保されているが、Q=30では制御性が小さいことが示された。このことは、実験結果と矛盾しない。

34001088
Role of inter and intramolecular interactions in protein-DNA recognition
Gromiha, M. M.*; Siebers, J. G.*; Selvaraj, S.*; 河野 秀俊; 皿井 明倫*
Gene 364, p.108-113(2005) ; (JAEA-J 01238)
 蛋白質のDNA認識は蛋白質とDNAの分子間相互作用とDNA自身の分子内相互作用に分けて考えることができるが、その両者の寄与バランスはよくわかっていない。われわれは、最近その定量化方法を提案している。その方法を用いて多くの蛋白質とDNAの複合体を評価し、蛋白質とDNAの相互作用から計算される配列特異性への寄与とDNA構造の変形がもたらす配列特異性への寄与バランスを調べた。その結果、転写因子は幅広いバランスを持つが、酵素は分子間特異性が強いことがわかった。

34001089
Variations in the 3He/4He ratios of hot springs on Shikoku Island, Southwest Japan
梅田 浩司; 金沢 淳; 角田 地文*; 浅森 浩一; 及川 輝樹
Geochemistry, Geophysics, Geosystems (Internet) 7(4), p.Q04009_1-Q04009_11(2006) ; (JAEA-J 01239)
 西南日本の前弧域における温泉ガスのヘリウム同位体比の分布を明らかにするため、これまでデータが得られていない四国地方を対象に温泉ガスの採取,分析を行った。その結果、東北日本の前弧域の温泉に比べて高いヘリウム同位体比が四国全域で認められた。沈み込み帯の前弧域におけるヘリウム同位体比の異常については、スラブから脱水した流体によって運ばれるマントル起源の3Heの影響が指摘されている。しかしながら、四国下の地殻内地震の活動が極めて乏しいこと、震源メカニズムが圧縮応力場を示すこと等を考慮すると、深部流体による3Heの寄与は小さいと考えられ、ヘリウム同位体比の分布は、中新世の火成岩体,地殻及び大気起源のヘリウムの混合によって説明できる。

34001090
Numerical simulation of the critical current and n-value in Nb3Sn strand subjected to bending strain
広橋 雅元*; 村上 陽之*; 石山 敦士*; 植田 浩史*; 小泉 徳潔; 奥野 清
IEEE Transactions on Applied Superconductivity 16(2), p.1721-1724(2006) ; (JAEA-J 01240)
 Nb3Sn CIC導体のITERへの適用性を実証するために試験したモデル・コイルで、臨界電流値とn値の劣化が観測された。この原因として、導体内の素線の局所的で連続的な曲げが考えられている。そこで、臨界電流値、及びn値に対するこのような連続曲げの影響を、より一般的に評価するために、新たなモデルを構築し、解析コードを開発した。本モデルでは、フィラメントのツイスト効果や、隣接するフィラメントだけでなく他の離れたフィラメントとの電気的接触も考慮した。解析手法として、分布定数回路方程式を差分法により離散化し、ニュートン・ラプソン法で非線形方程式を解いて、フィラメント間の転流を計算した。解析結果は、これまでの実験結果を比較的よく模擬したが、より精度の高い解析のためには、フィラメント間の抵抗のモデル化を改良する必要があることがわかった。

34001091
Development of a new thermochemical and electrolytic hybrid hydrogen production system for sodium cooled FBR
中桐 俊男; 加瀬 健; 加藤 章一; 青砥 紀身
JSME International Journal, Series B 49(2), p.302-308(2006) ; (JAEA-J 01241)
 高速増殖炉(FBR)の熱を利用し、水を原料とする、熱・電気併用による低温水素製造システムが日本原子力研究開発機構(JAEA)により提案された。このシステムは硫酸合成・分解反応を組合せた既存のプロセス(ウェスティングハウスプロセス)をもとに、三酸化硫黄分解プロセスに酸素イオン伝導性固体電解質による電気分解を適用して200から300℃低温化したものである。SO3電解は500から600℃の温度範囲で0.5V以下で行えることが確認され、化学反応ベースの熱効率は硫酸濃度と熱回収の影響で35%から55%の範囲で変化することも確認された。さらに、プロセス全体を実現するための水素製造実験が実施された。安定な水素と酸素の発生が観察され、最長実験時間は5時間である。

34001092
Direct identification of magnetic surface by a differential double probe in JFT-2M
上原 和也; 都筑 和泰; 雨宮 宏*; 永島 芳彦*; 星野 克道; 定本 嘉郎*
Japanese Journal of Applied Physics, Part 2 45(24), p.L630-L633(2006) ; (JAEA-J 01242)
 トカマクの磁気面位置を検知したデータが示される。バイアス電圧をかけられた段差のある2つのダブルプローブで、磁気面位置を移動させた時に、2つのダブルプローブの電流の差を読み取るとセパラトリックスの位置で変化が生じる。この値から、セパラトリックスの位置が推定され、磁気面コードとの違いを評価した。この値は同じプローブで測定した浮遊電位の揺動の相関とも比較され良い一致を示した。同時に、このプローブでイオン温度を測定した。

34001093
In situ magnetic measurements under neutron radiation in Fe metal and low carbon steel
高橋 正氣*; 菊池 弘昭*; 荒 克之*; 海老根 典也; 鎌田 康寛*; 小林 悟*; 鈴木 雅秀
Journal of Applied Physics 100(2), p.023902_1-023902_6(2006) ; (JAEA-J 01244)
 低炭素鋼と純鉄について原子炉内で中性子照射中に磁気ヒステリシスのマイナーループを測定した。照射中の銅の析出と転位ループを調べるために、格子欠陥に非常に敏感なマイナーループの係数に注目した。その結果、低炭素鋼では、照射量の増加とともにマイナーループ係数が急増し、1×1019cm-2の照射量で最大値を示し、その後徐々に減少した。最大値の出現は、マトリックス中での銅の析出と転位ループが内部応力を増加させている一方で、転位の近傍で成長した銅析出物は転位の内部応力を補なっているという内部応力の2つのメカニズムの存在を示唆している。他方、純鉄では、マイナーループ係数は照射量とともに単調な増加を示した。

34001094
Integration of bioinformatics and computational biology to understand protein-DNA recognition mechanism
皿井 明倫*; Siebers, J. G.*; Selvaraj, S.*; Gromiha, M. M.*; 河野 秀俊
Journal of Bioinformatics and Computational Biology 3(1), p.169-183(2005) ; (JAEA-J 01245)
 構造バイオインフォマティクスと計算生物学を融合して蛋白質のDNA認識機構について調べた。既に多くの蛋白質とDNAの複合体が解かれており、その立体構造をもとに蛋白質-DNA相互作用の統計ポテンシャルを作成し、蛋白質によるDNA認識の特異性を定量化した。また、計算機シミュレーションにより、DNA3塩基対とアミノ酸残基1つからなる小さな系で、塩基対まわりの自由エネルギー面を計算した。この自由エネルギー面は、実際に観測される塩基のまわりのアミノ酸分布をよく再現しており、自由エネルギー面から蛋白質のDNA認識を考察することができた。

34001095
Observation of hydrogen in deuterated methane hydrate by maximum entropy method with neutron powder diffraction
星川 晃範; 井川 直樹; 山内 宏樹; 石井 慶信
Journal of Chemical Physics 125(3), p.034505_1-034505_6(2006) ; (JAEA-J 01246)
 メタンハイドレートのStructure Iと呼ばれる構造では、水分子が水素結合により12面体と14面体の二種類のカゴを作り、これらのカゴを積み重ねた結晶構造をしている。しかし、カゴを構成する水分子や、内包されたメタン分子中の水素原子の様子はよくわかっていない。そこで、内包されたメタンの構造を明らかにするため、原子力機構のJRR-3に設置してあるHRPDを用いて回折パターンを測定し、Rietveld法による精密構造解析を行った。これまで、カゴを構成するすべての水分子の水素は一様な空間的広がりを持つと考えられていたが、一部の特定の原子位置において特に広がっていることが明らかになった。さらに、内包されているメタン分子の水素原子の位置はカゴを構成する面の中心付近に高い密度分布が観測され、温度の上昇に伴い、メタン分子中の水素原子の分布が特定の向きを除いて、広がっていくことが明らかになった。

34001096
Chemical thermodynamic representation of (U,Pu,Am)O2-x
逢坂 正彦; 滑川 卓志; 黒崎 健*; 山中 伸介*
Journal of Nuclear Materials 344(1-3), p.230-234(2005) ; (JAEA-J 01247)
 (U,Pu,Am)O2-xの酸素ポテンシャル等温曲線を化学熱力学モデルにより解析した。5つの化学種及びそれらの間の相互作用を考慮した。(Am,U)O2-xの酸素ポテンシャルを解析し、Am5/4O2とUO2の間の相互作用を求め、本モデルに導入することにより、実験値を良好に表す曲線を得た。

34001097
Thermal diffusivity of Americium mononitride from 373 to 1473 K
西 剛史; 高野 公秀; 伊藤 昭憲; 赤堀 光雄; 湊 和生; 木ア 實
Journal of Nuclear Materials 355(1-3), p.114-118(2006) ; (JAEA-J 01248)
 窒化アメリシウム(AmN)の熱拡散率をレーザフラッシュ法により373から1473Kの範囲で測定した。アメリシウム二酸化物(AmO2)から炭素熱還元によりAmNを調整し、これを粉砕した後、円板状に400MPaで加圧成形し、窒素・4%水素気流中1823Kで、10時間加熱してAmN焼結体を得た。AmNの熱拡散率は、温度の上昇とともに3.4×10-6〜2.8×10-6m2/sの範囲内で緩やかに減少した。測定した熱拡散率,密度から熱伝導率を評価するに際し、AmNの比熱容量の文献値が存在しないため、PuNの比熱容量の文献値を用いて熱伝導率を試験的に評価した。AmNの熱伝導率は、温度の上昇とともにわずかに増加する傾向を示した。また、理論密度のAmNの熱伝導率はUN, NpN及びPuNの値よりも小さいのに対し、UO2及び(U0.8Pu0.2)O2よりも大きいことが明らかとなった。

34001098
Development of aluminum (Al5083)-clad ternary Ag-In-Cd alloy for JSNS decoupled moderator
勅使河原 誠; 原田 正英; 斎藤 滋; 及川 健一; 前川 藤夫; 二川 正敏; 菊地 賢司; 加藤 崇; 池田 裕二郎; 直江 崇*; 小山 智史*; 大井 俊志*; Zherebtsov, S.*; 川合 將義*; 栗下 裕明*; 小無 健司*
Journal of Nuclear Materials 356(1-3), p.300-307(2006) ; (JAEA-J 01249)
 現在、J-PARCで建設が進められている核破砕中性子源において、パルス特性を向上させるために熱中性子吸収材としてAg-In-Cd合金が採用された。一方、熱除去及び冷却水による浸食の観点からAg-In-Cd合金をAl合金(Al5083)で被覆する必要があり、Ag-In-Cd合金とAl5083と接合に関する開発が急務になった。そこで、HIP(熱間等方圧延)を用いてAl5083と3元系Ag-In-Cd合金との接合に関する試験を行った。小試験片(φ20mm)において良い接合条件が見つかり、接合領域にAlAg2生成による硬い相の形成が見られるものの、必要とされる機械的強度(20MPa)より大きい結果が得られた。実機を模擬した大型試験片(200×200×30mm3)においても、接合が成功し、小試験片と比較して機械的強度が多少落ちるが必要とする強度を満足した結果が得られた。

34001099
A Novel concept for americium-containing target for use in fast reactors
逢坂 正彦; 小井 衛; 高野 渉*; 山根 義宏*; 三澤 毅*
Journal of Nuclear Science and Technology 43(4), p.367-374(2006) ; (JAEA-J 01251)
 高速炉用、高性能アメリシウム添加ターゲットとして、(Th,Am)OxをMoに分散させた低酸素ポテンシャルターゲットを提案した。同位体組成が異なる種々のMoを使用した場合の炉心特性へ与える影響を評価した。

34001100
The Effect of montmorillonite partial density on the role of colloid filtration by a bentonite buffer
黒澤 進; 田中 知*; James, S.C.*; 油井 三和
Journal of Nuclear Science and Technology 43(5), p.605-609(2006) ; (JAEA-J 01252)
 ベントナイト緩衝材の間隙構造を評価するため、均質化法モデルを用いて、間隙の大きさと有効粘土密度の関係について検討した。その検討では、コロイドの大きさとして最小の1nmと間隙の大きさが同等となるような有効粘土密度を試算した。その結果、ベントナイト系緩衝材中の有効粘土密度が1.5 Mg/m3以上の場合、間隙の大きさは1nm以下と見積もられ、この場合にはコロイドは緩衝材中を移行し得ないと考えられる。

34001101
Effects of microstructural evolution on charpy impact properties of modified ferritic/martensitic steel after neutron irradiation
矢野 康英; 岡 桂一郎*; 赤坂 尚昭; 吉武 庸光; 阿部 康弘; 大貫 惣明
Journal of Nuclear Science and Technology 43(6), p.648-654(2006) ; (JAEA-J 01253)
 実用化段階の高速炉炉心材料としては、耐スエリング性に優れたフェライト鋼を候補材として研究開発を進めている。一方、フェライト鋼を炉心材料として適用する上では高速中性子照射に伴う材料の照射脆化挙動評価が重要な課題である。そこで、「常陽」で照射したPNC-FMS鋼のシャルピー衝撃試験及び微細組織観察を行い、衝撃特性に及ぼす組織の影響について評価した。

34001102
A Feasibility study on a small sodium cooled reactor as a diversified power source
近澤 佳隆; 岡野 靖; 堀 徹*; 大久保 良幸*; 島川 佳郎*; 田中 俊彦*
Journal of Nuclear Science and Technology 43(8), p.829-843(2006) ; (JAEA-J 01254)
 実用化戦略調査研究の一環として、都市近郊設置型の電源を想定したナトリウム冷却小型炉の概念検討を実施した。原子炉構造及び主冷却系構成をパラメータとしてプラント概念案のサーベイ検討を実施し中間熱交換器・電磁ポンプ直列配置タンク型炉を選定した。炉心コンパクト化及び中間熱交換器と電磁ポンプの直列配置による原子炉容器構造の簡素化を中心に検討を実施した。炉心型式はZr含有率3領域単一Pu富化度炉心を採用して炉心出口温度を510℃から550℃に上昇した。この効果により熱効率が向上し原子炉電気出力は150MWeから165MWeに向上した。建設単価の評価では、都市近郊設置型電源の建設単価目標として35万円/kWeを設定したが、本概念は初号基建設単価(FOAK)は目標の160.1%となった。ただし、複数基の建設を前提とした建設単価(NOAK)では85.6%となり目標を達成する可能性があることが示された。

34001103
Effect of cooling history on cladding ductility under LOCA conditions
宇田川 豊; 永瀬 文久; 更田 豊志
Journal of Nuclear Science and Technology 43(8), p.844-850(2006) ; (JAEA-J 01255)
 軽水炉の冷却水喪失事故において、燃料被覆管は崩壊熱により酸化され、徐冷(ゆっくりと冷却)された後、再冠水により急冷される。徐冷時の冷却速度と急冷開始温度が急冷後の被覆管の延性に及ぼす影響を調べた。試験では、未照射ジルカロイ-4被覆管試料が水蒸気中で1373及び1473Kの高温で酸化され、次いで2〜7K/sの冷却速度で徐冷され、最後に1073K〜1373Kに達した時点で急冷された。急冷後の延性をリング圧縮試験により、ミクロ組織を金相試験と硬さ試験,酸素分析により調べた。冷却時温度履歴により、prior-β相中に析出した高酸素濃度のα相組織が変化した。析出したα相領域の、被覆管断面における面積率は、低い温度で急冷された試料で大きくなり、被覆管の延性は減少した。低延性のα相領域は亀裂伝播の経路となりうるので、α相領域の面積率増大が破断を容易にし、延性を低下させる可能性がある。一方、徐冷過程の冷却速度を変化させてもα相領域の面積率はほぼ一定であり、冷却速度が被覆管急冷後の延性に及ぼす影響は無視しうる程度であった。

34001104
Energy and angular responses of the criticality accident detector using a plastic scintillator
辻村 憲雄; 吉田 忠義
Journal of Nuclear Science and Technology 43(8), p.903-907(2006) ; (JAEA-J 01256)
 サイクル機構で現在使用している臨界検出器について,モンテカルロ計算と実験により,エネルギー特性と方向特性を評価した。

34001105
A Model for striation formation in ac PDP discharges
村岡 克紀*; 安積 正史; 鈴木 敬三*; 山形 幸彦*; 矢木 雅敏*
Journal of Physics D; Applied Physics 39(10), p.2135-2139(2006) ; (JAEA-J 01257)
 プラズマ・ディスプレイ・パネル放電での縞状発光現象をモンテカルロ法によるシミュレーションにより再現し、その物理機構を解明した。シミュレーション結果は電子密度分布とエネルギー分布の逆位相性など実験結果とのよい一致を示している。提案された物理機構のモデルは、縞状発光のピッチからマイクロ放電中での電場を評価できることを示している。

34001106
Preparation and characterization of radiation-grafted polymer electrolyte membrane for applications in fuel cells
Chen, J.; 浅野 雅春; 前川 康成; 吉田 勝
Journal of Radiation Research and Radiation Processing 24(2), p.65-71(2006) ; (JAEA-J 01258)
 高分子電解質膜は高分子型燃料電池の心臓部である。この膜は、プロトンを伝導する本来の性質と、水素と酸素が混ざらないようにする隔膜の役割を担っている。電池性能を上げるためには、高いプロトン導電性と燃料に対する優れた安定性を持つ電解質膜の開発が必要になっている。われわれは、放射線を利用した高分子電解質膜を開発している。本論文では、高性能電解質膜を開発するために、基材,モノマー及び架橋剤の選択,グラフト条件(照射雰囲気,線量,グラフト時間及び温度)などについて、詳細に検討した結果をまとめたものである。

34001107
Isotope hydrograph separation for modeling of runoff mechanisms of atmospherically derived chemical and radioactive pollutants
松永 武; 柳瀬 信之; 半澤 有希子; 都築 克紀; 長縄 弘親
Journal of Water and Environment Technology (Internet) 3(2), p.243-252(2005) ; (JAEA-J 01259)
 久慈川水系の支流において、雨水・河川水中の水素及び酸素の安定同位体(2H, 18O)をトレーサーとして、降水時の水流出成分の分離を研究した。降雨時の水流出を、降雨の前から河川を涵養している「古い水」(地下水流出成分)と、その降水から来る「新しい水」の2つに分離した。この観測では、「新しい水」の水流出としての寄与は極めて小さいことが見いだされた。次に、流出する微量元素の由来を、河川水中の濃度変動と地下水中濃度に基づいて、その2つの成分に分離した。この結果、幾つかの有害性微量元素(Sb, Cu, Cr)は、「新しい水」にかなりの比率(24-54%)が由来することが推定された。この結果は、「新しい水」が大気から降下した有害性微量元素の流出挙動に大きな役割を有することを示唆している。

34001108
Sequence-dependent conformational energy of DNA derived from molecular dynamics simulations: Toward understanding the indirect readout mechanism in protein-DNA recognition
Ara'uzo-Bravo, M. J.*; 藤井 聡*; 河野 秀俊; Ahmad, S.*; 皿井 明倫*
Journal of the American Chemical Society 127(46), p.16074-16089(2005) ; (JAEA-J 01260)
 すべてのテトラマー配列(136通り)を12merのDNA配列の真中にもつDNAの分子動力学計算を行い、DNA構造,ダイナミクスの配列依存性を解析した。その結果、ピリミジン−プリンステップをもつ配列は非常に前後の配列の影響を受けやすいことがわかった。また、分子動力学計算から得られた構造アンサンブルから統計ポテンシャルを計算し、簡便にDNAの構造エネルギーを評価できるようにした。

34001109
J-PARC linac facilities and their features
大内 伸夫
Journal of the Korean Physical Society 48(4), p.711-715(2006) ; (JAEA-J 01261)
 600MeVリニアック,3GeVシンクロトロン,50GeVシンクロトロン並びに実験施設により構成されるJ-PARCは、世界で最も強度の強い陽子加速器の一つであるだけでなく、中性子科学,ミューオン科学,原子核素粒子物理学並びに原子力工学の分野のための多目的加速器施設である。リニアック建家構造並びにユーティリティ設備は、加速器の安定な運転とともに将来のアップグレードを見据えて設計,施工された。地上2階,地下2階のリニアック建家は2005年4月に完成し、ユーティリティ設備に関しても2005年8月に完成した。リニアックの据付は2005年4月より開始され、イオン源,RFQ,MEBT,DTL空洞並びに3GeVシンクロトロンへのビーム輸送系の据付は既に終了し、SDTL空洞,高周波システムについては現在据付中である。本論文では、建家構造とユーティリティ設備の観点からのJ-PARCリニアックの特徴とともに、リニアック据付の現状について述べる。

34001110
Polarized neutron inelastic scattering study of the anisotropic magnetic fluctuations in quasi-one-dimensional ising-like antiferromagnet TlCoCl3
大沢 明*; 加倉井 和久; 西脇 洋一*; 加藤 徹也*
Journal of the Physical Society of Japan 75(7), p.074719_1-074719_4(2006) ; (JAEA-J 01262)
 擬一次元イジング的反強磁性物質TlCoCl3の偏極中性子非弾性散乱実験を行い、この系において従来の横揺らぎの成分Sxx(Q,ω)に加え初めて連続スピン波励起の縦揺らぎSzz(Q,ω)の観測に成功した。この実験結果を石村・斯波による純イジング反強磁性鎖の理論結果と比較した。

34001111
Direct observation of polymerization-reaction-induced molecular self-assembling process; In-situ and real-time SANS measurements during living anionic polymerization of polyisoprene-block-polystyrene
山内 一浩*; 長谷川 博一*; 橋本 竹治; 田中 宏和; 元川 竜平; 小泉 智
Macromolecules 39(13), p.4531-4539(2006) ; (JAEA-J 01263)
 本稿では、ポリスチレンとポリイソプレンからなるジブロック共重合体のリビングアニオン重合過程を、時間分割中性子小角散乱法を用いて追跡した結果について報告した。重合反応過程では、始めにポリイソプレン鎖の成長が起こり、次にその末端からポリスチレン鎖が形成されることでブロック化が進行する。その際、ブロック共重合体の分子量と溶液濃度の上昇に伴うミクロ相分離、及びシリンダー構造からラメラ構造への転移を観察することに成功した。また、中性子小角散乱測定の結果からアニオン性の活性末端を有する高分子鎖が、溶液中で会合体を形成していることが明らかにされ、会合体を形成する高分子鎖の本数についても考察を行った。この会合体は、モノマーの反応速度(生長反応速度)を制御していると考えられ、化学反応と構造形成が密接に関わり合うことを示すことができた。

34001112
Lattice boltzmann simulation of solution chemistry for crevice corrosion
海老原 健一; 蕪木 英雄
Mathematics and Computers in Simulation 72(2-6), p.117-123(2006) ; (JAEA-J 01264)
 本論文は、2005年8月に京都で開催された「第14回複雑系における流体力学の離散シミュレーションに関する国際会議」における講演内容をまとめたものである。2次元格子ボルツマン法を隙間腐食に対する溶液化学のシミュレーションへ適用した。隙間内におけるpH及び電位の2次元分布が数値シミュレーションによって得られた。急速な隙間腐食を引き起こすpHの臨界値と溶液がその値に達するまでの潜伏期間をシミュレーション結果から見積もった。見積もられたpHと潜伏期間は、実験で得られる値に近い値となることがわかった。

34001113
Analytical tool development for coarse break-up of a molten jet in a deep water pool
森山 清史; 中村 秀夫; 丸山 結*
Nuclear Engineering and Design 236(19-21), p.2010-2025(2006) ; (JAEA-J 01265)
 軽水炉シビアアクシデント時における溶融炉心/冷却材相互作用(FCI)の粗混合過程及びデブリベッド形成過程を解析的に評価するため、FCI粗混合解析コードJASMINE-preを開発した。JASMINE-preは融体ジェット,融体粒子,融体プールの3成分からなる融体モデルを、二相流解析モデルと連成したものである。二相流モデルは原研で開発されたACE-3Dコードに基づくものである。融体ジェット及び融体プールモデルは各々水中を流下する溶融炉心と底部で塊状になった融体を一次元で表したものであり、融体粒子モデルではラグランジュ的なグループ粒子の概念を用いている。また、簡易的なモデルとして、静止水中における粒子の生成と沈降・冷却のみを考慮したコード「pmjet」を開発した。これらのモデルを用いて、コリウム融体の冷却実験であるFARO実験のうち、水プールが飽和温度の場合と高サブクール条件の場合のシミュレーションを行った。JASMINE-preによる計算結果は、圧力上昇及び融体分裂について実験とおおむね一致した。また、計算結果より、粗混合領域内の溶融状態のコリウム質量は、定常的な融体ジェット分裂のもとでほとんど一定に保たれることがわかった。さらに、この粗混合融体量の計算結果について、JASMINE-preとpmjetの間でよい一致が見られた。

34001114
Hydrogen retention of JT-60 open divertor tiles exposed to HH discharges
柴原 孝宏*; 田辺 哲朗*; 廣畑 優子*; 大矢 恭久*; 小柳津 誠*; 吉河 朗*; 大西 祥広*; 新井 貴; 正木 圭; 奥野 健二*; 宮 直之
Nuclear Fusion 46(10), p.841-847(2006) ; (JAEA-J 01266)
 JT-60でダイバータタイルとして使用され、軽水素放電に曝された黒鉛タイルからポロイダル方向に試料をサンプリングし、昇温脱離(TDS)実験を行うことでタイル中の水素蓄積量を評価した。なお、タイルのプラズマ対向面のほとんどは再堆積層で覆われていた。得られたTDSスペクトルの構造は、再堆積層の非常に薄い試料を除けば試料による差は少なく、タイル中に蓄積されていた水素の大部分は水素分子の形態で、970K付近に脱離のピークが存在した。全脱離水素量は再堆積層の厚さにほぼ比例していた。この結果は、ほとんどの水素原子が再堆積層中に均一に蓄積されていたことを示している。求めた水素濃度はH/C=0.03となり、飽和水素濃度(H/C=0.4-1.0)に比べて非常に低かった。水素濃度が低くなった原因として、水素蓄積時に再堆積層の温度が関係していたと考えられ、壁温度を高くすることで水素蓄積量を大幅に減少できる。

34001115
Study of global wall saturation mechanisms in long-pulse ELMy H-mode discharges on JT-60U
竹永 秀信; 仲野 友英; 朝倉 伸幸; 久保 博孝; 木島 滋; 清水 勝宏; 都筑 和泰; 正木 圭; 田辺 哲朗*; 井手 俊介; 藤田 隆明
Nuclear Fusion 46(3), p.S39-S48(2006) ; (JAEA-J 01267)
 長時間放電におけるグローバルな壁飽和機構を解明するために、第一壁での局所的な壁飽和時間を評価した。局所的な壁飽和時間は、第一壁への粒子束とそこでの吸収率及び最大粒子吸収量により評価可能である。第一壁への粒子束は、中性粒子輸送解析コードDEGAS2を用いて評価した。その際、プラズマパラメータは2次元流体ダイバータコードUEDGEで評価した。Dα発光強度分布が実験と合うようにDEGAS2で評価した壁へのイオン束と中性粒子束を用いて、壁での吸収率を10%、壁での最大粒子吸収量を1×1021m-2(実験室データをもとに評価)とし、局所的な壁飽和時間を評価した。その結果、ダイバータ領域では1秒以内に壁飽和に達していることが明らかになった。また、バッフル板は10秒程度、主プラズマまわりの壁は100秒程度で壁飽和に達すると評価された。バッフル板での粒子吸収は、10秒程度の時間スケールでグローバルな壁飽和が観測された実験結果と関連していると考えられる。一方、主プラズマまわりの壁での粒子吸収は、放電を繰り返すことによりグローバルな壁飽和状態に近づいていくことと関連していると考えられる。これらの結果をもとに、動的な粒子吸収特性を示す領域と静的な特性を示す領域によりグローバルな壁飽和が起こるというモデルを提唱した。

34001116
The Development of SIMMER-III, an advanced computer program for LMFR safety analysis, and its application to sodium experiments
飛田 吉春; 近藤 悟; 山野 秀将; 守田 幸路*; Maschek, W.*; Coste, P.*; Cadiou, T.*
Nuclear Technology 153(3), p.245-255(2006) ; (JAEA-J 01269)
 SIMMER-IIIは2次元,3速度場,多相多成分のオイラー座標系流体コードと空間依存核動特性モデルを結合した解析コードである。SIMMERコードは、通常の高速炉から加速器駆動未臨界炉(ADS)までのさまざまな中性子スペクトルと冷却材の組合せによる原子炉に適用できるように、汎用性と柔軟性を備えた解析手法として開発されてきた。SIMMER-IIIを液体金属冷却高速炉の安全解析に適用できる実用的なコードとするには、コードの信頼性と安定性を確保し、かつ充分に検証される必要があるため、包括的かつ系統的な検証研究を行った。検証研究は、個別モデルの検証を行う基礎的なPhase1と高速炉の安全性において重要な複合現象に関する検証を行うPhaes2が行われた。これらの系統的な検証研究により、コードで用いられている物理モデルの包括的な検証が段階的に進められ、高速炉の炉心損傷事故における過渡多相流の解析を適切に行うことができる最新のコードシステムであることが示された。本論文では、これらの研究の中で、おもにナトリウムを用いた実験研究に関する成果について報告を行う。

34001117
Structure-based calculation of direct and indirect readout energies and specificities for protein-DNA recognition
Ahmad, S.*; 河野 秀俊; Ara'uzo-Bravo, M. J.*; 皿井 明倫*
Nucleic Acids Research 34(Web Server issue), p.W124-W127(2006) ; (JAEA-J 01270)
 転写因子などのDNA結合蛋白質はDNA配列に特異的に結合する。DNA結合蛋白質のDNA配列の認識は、おもに静電相互作用,水素結合,ファンデルワールス相互作用などの塩基とアミノ酸残基の直接的な相互作用によって行われていると考えられてきた。しかし、多くの蛋白質−DNA複合体構造が明らかになるにつれ、直接的な相互作用の数が少ないこと,直接に蛋白質と相互作用をしていない塩基配列を変えても結合強度が変わることなどが明らかになり、直接的でない認識、つまり、間接認識の重要性も認知されるようになってきた。間接認識とは、配列に依存したDNAの特異構造や曲がりやすさなどの構造情報や物性情報を通してDNA配列を蛋白質が間接的に認識することをさす。したがって、蛋白質とDNAの認識機構を解明するには、この両者の寄与を明らかにする必要がある。しかしながら、直接認識と間接認識の寄与を定量化することが難しいため、その寄与バランスはよくわかっていない。われわれは、両者の寄与を定量化する方法を開発し、研究者がさまざまな蛋白質−DNA複合体についてその寄与バランスを知ることができるように、寄与バランスを計算できるツールをインターネット上に公開した。

34001118
Possible unconventional superconductivity and weak magnetism in NaxCoO2・yH2O probed by μSR
髭本 亘; 大石 一城; 幸田 章宏*; 門野 良典*; 桜井 裕也*; 高田 和典*; 室町 英治*; 佐々木 高義*
Physica B; Condensed Matter 374-375, p.274-277(2006) ; (JAEA-J 01271)
 超伝導物質NaxCoO2・yH2Oにおける超伝導と磁性の研究を行った。x=0.35, y=1.3においては超伝導状態においてμSR信号に変化が見られず、このことは時間反転対称性の破れていない超伝導状態にあることを示唆している。またわずかに組成がずれた試料においては微弱な磁性が観測され、このことは超伝導と磁性が密接に関連していることを示している。

34001119
Magnetic and dielectric properties of the ruthenium double perovskites La2MRuO6 (M=Mg, Co, Ni, and Zn)
吉井 賢資; 池田 直*; 水牧 仁一朗*
Physica Status Solidi (A) 203(11), p.2812-2817(2006) ; (JAEA-J 01272)
 ルテニウムを含む標記酸化物につき、その磁性及び誘電特性について調べた。結晶構造解析からは、結晶構造は、知られているように単斜晶であることが確かめられた。磁化測定からは、MがCoとNiの場合には、20-30Kに反強磁性転移が起こり、また、MがZnとMgの場合には磁気転移は起こらないことがわかった。MがZnの場合の結果は、強磁性転移が160Kに起こるとされている文献の結果とは異なる。誘電測定の結果からは、MがCoとNiの場合には数千程度の大きな誘電率が室温で観測されるが、MがMgとZnの場合には100くらいの誘電率であった。これらの結果を各イオンの電子状態などと関連付けて議論する。

34001120
Direct observation of a quasiparticle band in CeIrIn5; An Angle-resolved photoemission spectroscopy study
藤森 伸一; 藤森 淳; 島田 賢也*; 成村 孝正*; 小林 健一*; 生天目 博文*; 谷口 雅樹*; 播磨 尚朝*; 宍戸 寛明*; 池田 修悟; 青木 大*; 常盤 欣文*; 芳賀 芳範; 大貫 惇睦
Physical Review B 73(22), p.224517_1-224517_5(2006) ; (JAEA-J 01273)
 重い電子系超伝導体CeIrIn5に対して、高分解能4d-4f共鳴角度分解光電子分光を行った。Ce 4f共鳴スペクトルには、約30meVの分散を持つ準粒子バンドが観測された。この結果は、この化合物において、Ce 4f電子は局在した成分がほとんど支配的であるものの、小さな遍歴成分が存在し、この成分が超伝導を担っていることを示している。

34001121
Dielectric properties and lattice dynamics of Ca-doped K0.95Li0.05TaO3
脇本 秀一; Samara, G. A.*; Grubbs, R. K.*; Venturini, E. L.*; Boatner, L. A.*; Xu, G. Y.*; 白根 元*; Lee, S.-H.*
Physical Review B 74(5), p.054101_1-054101_12(2006) ; (JAEA-J 01274)
 量子常誘電体であるKTaO3のKサイトにイオン半径の小さいLiをドープすると、リラクサー強誘電性を示すことが知られている。本研究ではK0.95Li0.05TaO3に15ppm以下のCa不純物を導入した単結晶試料を用い、誘電率測定と中性子散乱実験を行った。誘電率測定から、Liが[100]方向へずれたoff-center位置を占めることによる秩序−無秩序転移的ダイナミクスがデバイ緩和として200K以下で観測された。Ca不純物を含まない試料との比較から、Ca不純物はLiの緩和には影響していないことを示した。中性子散乱ではブラッグ反射まわりに現れる散漫散乱と、格子振動を測定した。散漫散乱はLiイオンの緩和に伴い150K以下で現れ始めた。誘電率の結果と合わせて、Liの凍結により、その周りに微小分極領域(Polar-nano-region: PNR)が形成される様子を明らかにした。さらに散漫散乱の複数のゾーンでの強度比較から、他の典型的リラクサーであるPb(Mg1/3Nb2/3)O3と同様にuniform phase shiftがあることが示された。この結果、uniform phase shiftはリラクサーに共通の性質であり、リラクサーがバルクな強誘電状態に転移できない原因であることが示された。

34001122
Characterization of coherent magnetic fluctuations in JFT-2M high recycling steady high-confinement mode plasmas
神谷 健作; 大山 直幸; 井戸 毅*; Bakhtiari, M.*; JFT-2Mグループ 
Physics of Plasmas 13(3), p.032507_1-032507_9(2006) ; (JAEA-J 01275)
 JFT-2Mでは高リサイクリング定常(HRS)Hモードと呼んでいる新しい運転領域が開拓されている。HRS Hモードに附随して、10-100kHzのオーダーの特徴的な磁場揺動が磁気プローブに観測され、特にトロイダルモード数がn=1とn〜7の2つの揺動が重要と考えられる。本研究ではこれら2つの相互作用を明らかにするために、バイコヒーレンスの手法を用いて磁気プローブデータを解析することで、位相結合による別の揺動成分の存在を明らかにした。他装置で観測されるELM無しあるいは小振幅ELMのHモード中に観測される揺動との比較についても言及する。

34001123
Radiation-induced catalytic reduction of chromium(VI) in aqueous solution containing TiO2, Al2O3 or SiO2 fine particles
永石 隆二; 吉田 善行; 山田 禮司; 籏野 嘉彦
Radiation Physics and Chemistry 75(9), p.1051-1054(2006) ; (JAEA-J 01276)
 γ線照射下の中性あるいはアルカリ性水溶液中で6価クロムの還元がTiO2, Al2O3またはSiO2等の酸化物微粒子の溶液への添加によって促進した。ここで、酸化物微粒子は放射線照射下で働く触媒として機能して、6価クロムの還元量はその初期濃度に依存することなく放射線の線量の増加とともに増加した。さらに、6価クロムの還元で最終的に生成する不溶な3価クロムの酸化物も触媒として機能することを確認した。

34001124
Simulation of the advection-diffusion-scavenging processes for137Cs and239,240Pu in Japan sea
中野 政尚
Radioactivity in the Environment, Vol.8, p.433-448(2006) ; (JAEA-J 01277)
 日本海に関して、海洋大循環モデルと連携した移流拡散スキャベンジングモデルを開発し、137Cs及び239,240Puの海水中鉛直濃度分布を用いて検証した。概して海水中137Cs及び239,240Pu濃度は計算値と観測値でよく一致した。日本海においては水平拡散係数3×107cm2s-1、鉛直拡散係数0.3 cm2s-1で海水中鉛直濃度分布が最も良好に再現できることがわかった。本研究のシミュレーションによって日本海における137Cs 及び239,240Pu の定量的な起源と挙動を明らかにできた。また、日本海における137Cs 及び239,240Pu の挙動は太平洋とは大きく異なっていることも明らかにできた。

34001125
Confinement of alpha particles in a low-aspect-ratio tokamak reactor
谷 啓二; 飛田 健治; 飯尾 俊二*; 筒井 広明*; 西尾 敏; 青木 尊之*
電気学会論文誌,A 125(11), p.938-942(2005) ; (JAEA-J 01280)
 低アスペクト比トカマク炉VECTORにおけるアルファのリップル損失を軌道追跡モンテカルロコードを用いて検討した。リップル損失は、アスペクト比は小さくになるにしたがって急激に減少する。このため、VERCTORではアルファ粒子は非常によく閉じ込められる。低アスペクト炉における良好なアルファ粒子閉じ込めにより、プラズマ外側端近傍の真空容器に冷却機構を設け、トロイダル磁場コイル内径を30%程度大きくすることで、トロイダル磁場コイル数を6程度まで削減できることがわかった。

34001126
大電力マイクロ波ビームを用いた大気圧プラズマの発生とロケット推進への応用
小田 靖久*; 小紫 公也*; 高橋 幸司; 春日井 敦; 今井 剛*; 坂本 慶司
電気学会論文誌,A 126(8), p.807-812(2006) ; (JAEA-J 01281)
 周波数170GHz,MW級出力ジャイロトロンを用いたマイクロ波プラズマ生成実験とマイクロ波推力に関する研究を行っている。パラボラ型推進器モデルにマイクロ波を入射すると、収束点においてプラズマが生成され、そのプラズマは追随するマイクロ波エネルギーを吸収しながら伝搬していく。その伝搬速度は、マイクロ波エネルギー密度が75kW/cm2以上になると音速程度になることや、運動量結合係数(マイクロ波エネルギーの推力への変換係数)が、プラズマの伝搬速度が音速に近くなるにつれて増加していくことを明らかにした。これは、音速程度のプラズマ伝搬が衝撃波を作り出している可能性を示唆している。

34001127
怒涛の勢い,世界の光研究; 日本も早急な戦略体制づくりを
田島 俊樹
エネルギーレビュー 26(8), p.23-26(2006) ; (JAEA-J 01282)
 光科学は、典型的21世紀の科学と言えよう。光の学問は古くからあるものの、また近年新たな衣をまとい、装いを新たにした新しい光科学が展開されはじめている。世界の科学先進国は競ってこの新しい光科学の開発に乗り出している。「弱い光」は通信などによく使われる。一方、「強い光」は近年、産業や医療への利用が広がりはじめている。また、原子力などエネルギー分野での革新をもたらす技術として各国注目している。我が国でも、光科学の将来的ポテンシャルを直視し、戦略体制を整備する必要がある。

34001128
植物ポジトロンイメージング技術による植物機能の解析; 成長中のイネにおけるカドミウム動態の可視化
松橋 信平
原子力eye 52(8), p.34-37(2006) ; (JAEA-J 01283)
 植物ポジトロンイメージング技術は、原子力機構が植物の機能を解析するために開発したユニークな研究手法である。これまでに、栄養成分や環境汚染物などのポジトロン放出核種標識化合物を用いて、生きた植物中での動態の可視化に関する研究を進めてきた。これまでの研究で得られた知見をもとに、食の安全で問題となるカドミウムによるコメの汚染問題の解決に向け、カドミウムのポジトロン放出核種の製造法を開発し、生きたイネ中での動態の可視化に世界で初めて成功した。この成果は、カドミウムによるコメの汚染低減に向けた新品種開発などに役立つ。

34001129
室温における酸素分子のSi(111)-7×7表面での初期吸着ダイナミクス
吉越 章隆; 成廣 英介; 盛谷 浩右; 寺岡 有殿
表面科学 27(8), p.449-454(2006) ; (JAEA-J 01287)
 O2の室温におけるSi(111)-7×7表面への初期吸着ダイナミクスを超音速分子線技術と放射光リアルタイム光電子分光を組合せることによって調べた。初期吸着確率及び飽和酸素吸着量に関して入射酸素分子の並進運動エネルギー依存性を0.03eV、いわゆるガス吸着条件から2.3eVまでの広いエネルギー範囲に対して測定した。低並進運動エネルギーでは前駆的吸着状態を経由した解離吸着過程が支配的であるが、0.07eV以上のエネルギー領域では前駆的吸着状態を経由した解離吸着過程の寄与が小さくなり、直接解離吸着過程が支配的になることがわかった。0.4eVから1.7eVの並進運動エネルギーにおいて、その増加に伴い飽和酸素吸着量の増加が明瞭に観察された。1.7eVにおけるピーク面積強度の値は、0.03eVの場合と比べて約1.8倍であった。これらの結果は、入射エネルギーが室温においてさらなるO2解離吸着を促進させる、活性化吸着を誘起していることを示している。

34001130
SiC-based ceramic fibers prepared via organic-to-inorganic conversion process; A Review
岡村 清人*; 下尾 聰夫*; 鈴谷 賢太郎; 鈴木 謙爾*
日本セラミックス協会学術論文誌 114(1330), p.445-454(2006) ; (JAEA-J 01288)
 今日、有機ポリマーの焼成による無機化によって多くのSi基セラミックス繊維が開発されている。本稿では、こうした有機−無機変換プロセスによるセラミックス繊維開発の先駆けとなった有機ケイ素ポリマーであるポリカルボシランから作られるSiC繊維について、その製造方法と繊維構造、高温での熱的安定性について解説した。はじめに典型的なポリカルボシラン系SiC繊維であるSi-C-O繊維について、次に放射線不融化法による低酸素含有繊維(Si-C繊維)について、最後に近年開発されたほぼ化学量論的にSiC組成を持つSiC繊維について報告する。これらの繊維は、直径が10ミクロン程度の長繊維である。

34001131
核融合材料照射施設用加速器開発の課題
杉本 昌義
加速器 3(2), p.196-201(2006) ; (JAEA-J 01290)
 核融合材料照射施設はDEMO炉に向けた材料開発のための加速器型高エネルギー強力中性子源であり、その加速器仕様としては、連続波の40MeV-250mA重陽子ビームを88%以上という極めて高い稼働率で運転供給することが求められる。そのような要求を満たすには運転時の安定度を確保するコンセプトが重要であり、これまで、主要要素技術開発を実施してきた。今後、将来の建設判断に資する工学設計を完成するために、10MeV程度までの低エネルギープロトタイプ加速器の日欧協力による建設が予定されている。

34001132
「常陽」MK-III炉心における性能試験計画と結果
関根 隆; 前田 幸基; 青山 卓史; 有吉 昌彦
日本原子力学会和文論文誌 5(4), p.259-275(2005) ; (JAEA-J 01291)
 高速実験炉「常陽」のMK-III計画では、冷却系改造工事終了後、交換した機器を含めた総合的なプラント性能を確認する「総合機能試験」及び原子炉運転状態での炉心及びプラント性能を確認する「性能試験」を実施した。2001年8月〜2003年3月に実施した総合機能試験では、改造後のプラントが原子炉運転に向けて、十分な性能を有していることを確認した。引き続き、2003年6月に原子炉を起動した後、原子炉出力を約20%、50%、75%、90%及び100% (140MWt)と段階的に上昇させ、炉心の核熱特性、交換した冷却系機器の性能等を確認する性能試験を実施した。これらの試験を通じ、定格熱出力までの炉心・プラント状態において、「常陽」が所期の性能を有することを確認し、11月27日にMK-III改造工事を完遂した。ここでは、総合機能試験及び性能試験の結果について報告する。

34001133
低減速炉の技術開発の進捗及び課題; 軽水炉技術によるプルトニウムのマルチリサイクルや増殖を目指して
大久保 努; 師岡 慎一*; 竹田 練三*
日本原子力学会誌 48(7), p.484-489(2006) ; (JAEA-J 01294)
 低減速炉は、軽水炉技術をベースにしてプルトニウムのマルチリサイクルさらには増殖サイクルが実現可能な魅力的な原子炉である。一方、稠密燃料配置を使用するため除熱性能そして正になりやすいボイド係数など、稠密炉心に関連した固有の技術課題を含んでいる。ここ数年は、経済産業省そして文部科学省の原子力技術公募事業にも採択されて、多くの技術ノウハウが蓄積され、これらの課題に関する技術開発が進展した。今までに蓄積された技術そして今後の課題について解説する。

34001134
海産生物における超ウラン核種の濃縮係数について
中野 政尚; 竹安 正則; 藤田 博喜; 武石 稔
Radioisotopes 55(4), p.197-203(2006) ; (JAEA-J 01296)
 1987年から2004年までの東海村地先周辺海域における測定結果から,海産生物のPu及びAmに対する濃縮係数を算出し,過去の濃縮係数と比較した。その結果約20年前のデータによって算出した値に比べて,ヒラメ,貝,海藻におけるPuの濃縮係数が見かけ上大きくなった。これら海産生物のように海底に生息する生物種に対しては,非常に海水濃度が低くなった状態において,表層海水ではなく,海底間隙水,餌,海底土からの移行が大きく寄与すると考えられる。 また,Cm, Npに関する濃縮係数についてはわが国での測定結果が極めて少なく,海産生物の濃縮係数を算出するに至らないため,知見,諸外国のデータを総合的に勘案して推定した。

34001135
ITER用170GHzジャイロトロンの高出力,長パルス,高効率動作
春日井 敦; 高橋 幸司; 小林 則幸; 假家 強*; 満仲 義加*; 坂本 慶司
信学技報 106(200), p.77-82(2006) ; (JAEA-J 01297)
 日本原子力研究開発機構では、高出力化,長パルス動作及び高効率動作の同時達成を目指したITER用170GHz高周波発生装置ジャイロトロンの開発を行っている。これまでジャイロトロン内部の高周波損失による発熱及びビーム電流減少に伴う異常発振が、高出力化,長パルス化を制限してきた。放射器及び内部ミラーの高周波出力回路部の改良により、高周波損失をこれまでの約8パーセントから約2パーセントへ大幅に改善できた。これにより、ジャイロトロン内部の発熱を大幅に軽減した。さらに、カソードヒーター電圧のプレプログラミングによるビーム電流一定制御を行い発振の安定化を実現した。また、電子ビームの速度分散を抑えることにより発振効率を向上させた。これらの改善の結果、約2週間の調整運転でこれまでの性能を上回る、出力約0.6MW,パルス幅1000秒間(ITERの代表的な放電時間)の発振を、約45パーセントの高効率で動作させることに成功した。この成果は、ITER用ジャイロトロンでは世界最高性能であるとともに、最終的な目標である、1MW-定常動作-50パーセントへ向けた大きな性能の進歩である。

34001136
大強度陽子加速器施設3GeVシンクロトロンに用いるセラミックビームダクトの真円度・真直度計測
西澤 代治*; 金正 倫計; 金澤 謙一郎; 荻原 徳男; 齊藤 芳男*; 久保 富夫*; 佐藤 吉博*
真空 47(4), p.339-343(2004) ; (JAEA-J 01298)
 大強度陽子加速器施設3GeVシンクロトロンでは、主電磁石部ビームダクトとして、世界で初めて大口径の円筒状アルミナセラミック製ダクトを採用する。十分大きなビーム開口径を保ちかつ多段接合時の接合面積を確保するには、ダクト断面の真円度、円筒軸の真直度を把握することが不可欠である。われわれは大口径セラミックダクト用の真円度・真直度計測機を開発するとともに、その計測法及びデータ解析法を確立してセラミックビームダクトの真円度・真直度を始めとする製作精度の計測・評価を進めている。今般、3GeVシンクロトロンのビームダイナミクスからの要求に応じ、初めてBM(偏向電磁石)用楕円セラミックダクト(楕円円筒状セラミックダクト)を試作し、円筒状ダクト同様の製作精度評価を行った。本発表では、これら得られたデータ・知見について報告する。

34001137
一定応力下におけるFeMnSi基形状記憶合金の形状回復特性
和田 学*; 直井 久*; 月森 和之
塑性と加工 47(545), p.522-526(2006) ; (JAEA-J 01299)
 FeMnSi基形状記憶合金は、完全に一方向性の形状記憶能を持ち、非鉄系形状記憶合金と比較して形状回復温度が高いこと,比較的安価なFeとMnをベースとしており低コストであること,加工性が良好であること,従来の鉄鋼用生産設備を利用可能であることから、これらの特徴を活かして配管設備や大型構造部材等への適用が検討されている。形状記憶合金の実用化においては、形状回復量と形状回復力の把握が重要である。とりわけFeMnSi基形状記憶合金の形状記憶管継手への適用に際しては、相手管との相互作用下における形状回復量と締結力の予測が、構造材料への適用に際しては、荷重を受けながらの形状回復挙動の予測等、応力下での形状回復挙動の予測が肝要と考える。そこで本研究では、FeMnSi基形状記憶合金に一定の応力を付加した状態で形状回復処理を施し、この時の挙動を詳細に調査した。また一定応力下における形状回復動作をFeMnSi基形状記憶合金の形状回復動作を支配する、応力誘起マルテンサイト変態の機構に基づいて考察を試みた。

34001138
トリチウムを利用した燃料電池用架橋フッ素系電解質膜のメタノール透過機構の検討
関根 敏彦; 八巻 徹也; 鈴木 晶大*
東京大学アイソトープ総合センターニュース 37(1), p.2-5(2006) ; (JAEA-J 01300)
 本研究では、DMFCへの応用が期待される架橋PTFE電解質膜に対してトリチウムをトレーサーとして用いた水/メタノールの透過実験を行い、それによりメタノール透過機構に関する知見を得たので、その一端を紹介する。放射能既知のトリチウム水及び純水とメタノールから、300Bq/mLの放射能を持つ濃度2mol/Lのメタノール水溶液を調製した。電解質膜で仕切った2室型セルに、トリチウム水をトレーサーとして含むメタノール水溶液と純水をそれぞれ満たし、拡散透析を行った。その結果、Nafionにおけるメタノール拡散は非常に速く、その大部分をPTFE主鎖部が担っている一方、炭化水素系グラフト側鎖とのハイブリッド構造を持つ架橋PTFE電解質膜では、この主鎖部の拡散がほとんど起こらないことが優れたメタノール透過抑制能の起源であることがわかった。今後は、本研究を継続させることでメタノール透過機構を明らかにし、そこで得られた基礎的な知見を膜設計に反映させることによって、さらなる高性能化を目指していく。

34001139
HTTR test programme towards coupling with the IS process
伊与久 達夫; 坂場 成昭; 中川 繁昭; 橘 幸男; 笠原 清司; 川崎 幸三
Nuclear Production of Hydrogen , p.167-176(2006) ; (JAEA-J 01304)
 来るべき水素社会では大量の水素が必要となるが、高温ガス炉の熱を熱化学IS法に用いれば、水分解により二酸化炭素を排出せずに大量の水素を製造することが可能である。これは原子炉による水素製造という新産業創出として期待されている。日本初の高温ガス炉HTTRは2004年4月に世界で初めて原子炉出口冷却材温度950℃を達成し、ISプロセスに必要な原子炉側の準備は整いつつある。本報では、HTTRによる原子炉出口冷却材温度950℃を達成するまでの試験実績を述べるとともに、ISプロセスを接続するために必要となるHTTRを用いた今後の試験計画及びHTTRにISプロセスを接続するHTTR-IS計画について報告する。

34001140
Neutron scattering study of LiNiO2
Basar, B.*; Xianglian*; 本田 宏之*; 佐久間 隆*; 高橋 東之*; 安部 修実*; 井川 直樹; 石井 慶信
Proceedings of 10th Asian Conference on Solid State Ionics , p.121-128(2006) ; (JAEA-J 01305)
 LiNiO2は次世代のLiイオン電池用のカソード電極材料としての利用が期待されているが、結晶構造の複雑さゆえにその合成が難しい。そこで、合成時のアニール過程の条件が及ぼす本材料の結晶子径の大きさに着目し、粉末中性子回折法とScherrerの解析法によってその評価を行い、最適な合成条件を確定した。

34001141
Diffuse X-ray and neutron scattering from powder PbS
Xianglian*; Basar, B.*; 本田 宏之*; 北條 智之*; 佐久間 隆*; 高橋 東之*; 井川 直樹; 石井 慶信
Proceedings of 10th Asian Conference on Solid State Ionics , p.185-192(2006) ; (JAEA-J 01306)
 室温及びび15Kの温度でPbSのX線及び中性子粉末回折を行い、得られた回折パターンから散漫散乱を解析した。散漫散乱を解析するにあたり、熱振動の相関効果を取り入れた解析式を導入し、さらに中性子回折を用いることでPbSの散漫散乱に対する第2近接であるPb-Pb間の寄与が明確に観察できること,Pb-Pb間の距離は4.19Å であることなどを今回初めて明らかにした。

34001142
Crystal structure and heat capacity of Ba3Ca1.18Nb1.82O8.73
下山 智隆*; 鷺谷 純*; 東條 壮男*; 川路 均*; 阿竹 徹*; 井川 直樹; 石井 慶信
Proceedings of 10th Asian Conference on Solid State Ionics , p.201-205(2006) ; (JAEA-J 01307)
 プロトン伝導体Ba3Ca1.18Nb1.82O8.73に軽水または重水を含浸させて、試料中にプロトンを導入し、その熱容量の温度依存性と結晶構造を解析した。熱容量は2〜300Kの温度範囲では相転移などに伴う明確な熱容量異常は観察されず、また、試料中への含水量の増加に従って一様に熱容量が増加することがわかった。さらに粉末X線回折及び粉末中性子回折法によって含水試料と乾燥試料の結晶構造を比較・解析することで、結晶構造中におけるプロトンの配位位置が24eサイトであることが明らかになった。

34001143
Seismic imaging for 3-D VSP data using image point transform
Lee, C.*; 松岡 稔幸; 石垣 孝一; 田上 正義*; 成田 憲文*; 小島 正和*; 土家 輝光*; 松岡 俊文*
Proceedings of 10th International Symposium on Recent Advances in Exploration Geophysics (RAEG 2006) , p.143-146(2006) ; (JAEA-J 01308)
 3次元VSPは、ボーリング孔近傍に存在する高角度の断層や亀裂の性状を把握するための手法として優れている。筆者らは、Cosma et al.(2003)が破砕帯からの微弱な反射信号を強調するために開発したIP変換法を応用して3次元VSPのイメージングを行う方法を考案し、その方法をモデリング波形に適用した。その結果、高角度の断層が良好にイメージングされており、本方法が有効であることを確認した。

34001144
Verification of the plant dynamics analytical code CERES using the results of the plant trip test of the prototype fast breeder reactor MONJU
西 義久*; 植田 伸幸*; 木下 泉*; 宮川 明; 加藤 満也*
Proceedings of 14th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-14) (CD-ROM) , 10p.(2006) ; (JAEA-J 01309)
 CERESは、電中研で開発されたプラント動特性解析コードである。CERESは、1次元ネットワークコードとしての機能に加え、プレナムの多次元流動を解くことができる。1995年12月に実施された高速増殖原型炉「もんじゅ」のトリップ試験を用いて、CERESの検証を実施した。本研究はJAEAと電中研の共同研究として実施した。(1)1次,2次及び補助冷却系にわたる解析(R/V内プレナムはR-Z2次元でモデル化),(2)R/V内プレナムの熱流動挙動に着目した解析(R/V内プレナムは3次元でモデル化),(3)IHX内プレナムの熱流動挙動に着目した解析(IHX内プレナムは3次元でモデル化)。解析の結果、CERESの結果は試験結果との良い一致を示し、CERESの基本的能力を確認することができた。また、「もんじゅ」のプレナム内の特徴的な流動特性を明らかにすることができた。

34001145
Large eddy simulation of a mixing-T experiment
Coste, P.*; Quemere, P.*; Roubin, P.*; Emonot, P.*; 田中 正暁; 上出 英樹
Proceedings of 2006 International Congress on Advances in Nuclear Power Plants (ICAPP '06) (CD-ROM) , p.1626-1635(2006) ; (JAEA-J 01311)
 T字合流配管内の温度変動に関する水試験(WATLON)について、Large Eddy Simulationと有限要素法に基づくTRIO-Uコードを用いた実験解析を行った。これまでに実施された直交座標系を用いた有限体積法に基づく解析で生じた実験との不一致は、本解析ではみられなかった。配管内乱流に基づく乱れを周期境界を使ったperiodic boxにより解析体系に与えた。入口でのより現実的な速度変動は物理的に意味のある乱れの発達を促し解析結果の精度を向上させた。主配管の入口側にエルボを設置した体系では、2次流れがT管内の平均温度分布並びに温度変動強度に与える影響が確認できた。

34001146
Development of a long-range atmospheric transport model for nuclear emergency and its application to the Chernobyl nuclear accident
寺田 宏明; 茅野 政道
Proceedings of 2nd International Conference on Radioactivity in the Environment , p.15-18(2005) ; (JAEA-J 01312)
 原子力緊急時において放射性物質の大気拡散のリアルタイム予測を行う計算モデルは非常に有用である。発表者らはこれまで緊急時環境線量情報予測システムSPEEDIとその世界版WSPEEDIを開発してきた。従来のWSPEEDIは質量保存風速場モデルWSYNOPと粒子拡散モデルGEARNから構成されていた。WSYNOPは診断型モデルであり気象場を予測することは不可能であるため、予測精度及び解像度が入力気象データに依存し、また鉛直拡散及び降雨沈着過程の詳細な考慮が不可能であった。これを改良するために大気力学モデルMM5を導入した。この改良版WSPEEDIを1986年に発生したチェルノブイリ原子力事故に適用し、数値モデルの予測性能の検証を行った。CASE-1:ヨーロッパ全域を含む広域計算と、CASE-2:広域とチェルノブイリ周辺域での2領域ネスティング計算の2ケースの計算を行った。CASE-1の計算結果より137Csの大気中濃度と地表沈着量を水平分布図及び統計解析で測定データと比較した結果、ヨーロッパスケールでの輸送の挙動をよく予測できていた。CASE-2の計算では、領域ネスティング計算によりCASE-1の広域計算では計算不可能であった詳細な沈着量分布を予測することができた。

34001147
Recent measurements of neutron capture cross sections for minor actinides by a JNC and Kyoto University Group
原田 秀郎; 坂根 仁; 中村 詔司; 古高 和禎; 堀 順一*; 藤井 俊行*; 山名 元*
Nuclear Data Needs for Generation IV Nuclear Energy Systems , p.216-221(2006) ; (JAEA-J 01313)
 核燃料サイクル開発機構と京都大学が共同で実施したマイナーアクチニド核種の中性子捕獲断面積に関する最近の測定研究についてレビューする。特に、 237Npと238Npの結果に焦点を絞り、測定結果と評価値等と比較する。また、開発した新しい測定技術を紹介すると共に、今後の課題及び展望を述べる。

34001148
Properties of minor actinide compounds relevant to nuclear fuel technology
湊 和生; 高野 公秀; 西 剛史; 伊藤 昭憲; 赤堀 光雄
Recent Advances in Actinide Science , p.317-322(2006) ; (JAEA-J 01314)
 高レベル廃棄物の放射性毒性を低減し、地層処分場を有効に使用するために、将来の燃料サイクルの選択肢として、プルトニウムばかりでなくマイナーアクチノイド(MA)もリサイクルすることが考えられている。MA含有燃料の研究開発のために、新しい不活性雰囲気の実験設備を整備し、MA窒化物,MA酸化物の熱物性を測定した。MA窒化物は炭素熱還元法によりMA酸化物から調製した。格子定数及びその熱膨張を高温X線回折により測定し、熱拡散率をレーザフラッシュ法により測定した。

34001149
Separation of minor actinides and lanthanides from nitric acid solution by R-BTP extraction resin
星 陽崇*; Wei, Y.*; 熊谷 幹郎*; 朝倉 俊英; 森田 泰治
Recent Advances in Actinide Science , p.596-598(2006) ; (JAEA-J 01315)
 近年、硫黄や窒素といったソフトドナー配位子を有する抽出剤が、ランタニド(Ln)に比べ三価のマイナーアクチニド(MA=Am, Cm)に対して抽出選択性を示すことが見いだされた。Koralikらは新規の窒素ドナー配位子2,6-bis(5,6-dialkyl-1,2,4-triazinie-3-yl)-pyridine(R-BTP)がMA(III)に対して高い選択性を有することを報告している。しかしながら、R-BTPはプロトネーションにより酸性溶液中に溶解しやすいため、長鎖のアルキル基あるいは分岐分子鎖を導入することで酸性溶液中の安定性を改良した。本試験では新規のR-BTP含浸吸着剤を用いて、硝酸溶液中からのMA(III)とLn(III)の分離を検討した。分岐分子鎖を導入したR-BTP吸着剤は濃度4Mまでの硝酸溶液でAmに対して高い吸着性能を示し、分配係数は104を超えた。

34001150
放射線架橋フッ素系燃料電池用電解質膜
八巻 徹也; 浅野 雅春; 吉田 勝
フッ素系材料の応用技術 , p.115-123(2006) ; (JAEA-J 01316)
 筆者らの主眼は、放射線による架橋とグラフト重合の技術を利用し、燃料電池用の新規電解質膜を開発することである。本研究では、この2つのプロセスを組合せたことによって、世界初の架橋フッ素系電解質膜を開発することができた。まず、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜に放射線で架橋構造を付与し、これを基材とした放射線グラフト重合による電解質膜の作製法と膜特性を報告する。また、この先行研究で取得した知見をもとに作製法の高度化を図ったところ、より優れた特性を有する電解質膜を開発することができたので、その成果についても併せて述べる。

34001151
過冷却液体からの新規酸化物ガラスの創製とその機能及び構造
小原 真司*; 鈴谷 賢太郎
機能性ガラス・ナノガラスの最新技術 , p.159-174(2006) ; (JAEA-J 01318)
 本稿は、固体物質をガス等で浮上させ、遠方からのレーザー加熱によって溶融する、いわゆる坩堝等の容器を用いない無容器法によって過冷却液体状態を作り出し新規機能性ガラスの合成を行う新しいガラス作製法についての解説である。内容は、以下のとおりである。(1)無容器法の原理,(2)無容器法から合成されたガラスとその機能,2.1.無容器法によるYAG組成ガラスファイバの開発,2.2.無容器法による高誘電性ガラス・セラミックスの開発,(3)無容器法から合成されたガラスの特異な構造,3.1.X線回折,中性子回折を用いたガラスの構造解析,3.2.典型的な酸化物ガラスとかんらん石ガラス

34001152
モンテカルロ計算の基礎理論及び実験解析への適用
長家 康展
日本原子力学会第38回炉物理夏期セミナーテキスト;燃焼試験&モンテカルロ法 , p.153-188(2006) ; (JAEA-J 01319)
 日本原子力学会炉物理部会主催の夏季セミナーのテキストとして、モンテカルロ法の基礎理論と実験解析に適用した例をまとめた。モンテカルロ法の基礎となる乱数の発生方法とサンプリング手法,粒子輸送モンテカルロコードで用いられている手法が述べられている。また、本セミナーのテーマである燃焼計算について、モンテカルロ法による燃焼計算手法についても述べられている。さらに、モンテカルロ法を実験解析に適用し、詳細なモデルによる計算結果と実験値を比較した例を示している。

34001153
照射後試験とベンチマーク
須山 賢也
日本原子力学会第38回炉物理夏期セミナーテキスト;燃焼試験&モンテカルロ法 , p.37-63(2006) ; (JAEA-J 01320)
 照射後試験(PIE)は実用燃料の特性を調べるために広く行われているが、得られるデータの中でも同位体組成の測定データは、核計算コードや核データ評価に重要な役割を持っている。本稿では、日本原子力研究開発機構で行われた、軽水炉燃料の使用済燃料同位体組成取得のためのPIEと、それを使ったベンチマーク計算を総括する。

34001154
「常陽」照射試験に向けた金属燃料製造技術の開発; 電解還元による原料U-Pu合金の製造
加藤 徹也*; 中村 勤也*; 中島 邦久; 岩井 孝; 荒井 康夫
電力中央研究所報告(L05010) , 13p.(2006) ; (JAEA-J 01321)
 射出鋳造法によるU-Pu-Zr合金燃料の製造に適した稠密な原料U-Pu合金の製造手法を確立するために、U-Pu混合酸化物の溶融LiCl-Li2O中での電解還元試験並びに還元生成物からの電解浴塩の蒸留分離試験を行った。電解還元試験では、電気化学測定を行いながら段階的に陰極に装荷する酸化物の量を拡大し、最大で4個のU-60wt%Pu混合酸化物ペレットのほぼ全量を還元することができた。蒸留試験では、加熱中のU-Pu合金の酸化を抑制するために多孔性の還元生成物を溶融してインゴットを形成した後、30Pa程度の減圧下での加熱により電解浴塩を蒸留した。インゴットとして回収したU-Pu合金の重量は、電解還元試験に装荷した混合酸化物中の金属量とよく一致し、電解還元試験と蒸留試験を通した物質収支は良好だった。また、インゴット中のU/Pu比も混合酸化物中の値と変化は見られず、酸素含有量は1000ppm未満であった。

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