学会誌等掲載論文
※下記の研究開発成果は資料名順に並んでいます。

2006年11月


34001172
Neutron diffraction analysis of deuterium transfer in chiral β-thiolactam formation in the crystalline state
細谷 孝明*; 植草 秀裕*; 大橋 裕二*; 大原 高志; 田中 伊知朗*; 新村 信雄*
Acta Crystallographica Section B 62(1), p.153-160(2006) ; (JAEA-J 01322)
 N,N-dibenzyl-1-cyclohexenecarbothioamide(1)の単結晶に光を照射すると水素原子の転移が起こり、単結晶状態を保ったまま光学活性なβ-thiolactamが生成することが知られている。今回、この反応のメカニズムを明らかにするため、反応部位に標識として重水素原子を導入した(1)の単結晶を調製し、これに光を照射した後単結晶中性子構造解析を行って重水素原子がどこに移動したかを調べた。その結果、重水素原子は生成物のシクロヘキサン環に移動し、キラルメチレン基(-C*HD-)を形成していた。このキラルメチレン基の絶対配置から、水素原子の移動が分子内で起こることで反応が進行することが明らかとなった。

34001173
Self-regenerating Rh- and Pt-based perovskite catalysts for automotive-emissions control
田中 裕久*; 谷口 昌司*; 上西 真里*; 梶田 伸彦*; 丹 功*; 西畑 保雄; 水木 純一郎; 成田 慶一*; 木村 希夫*; 金子 公良*
Angewandte Chemie 45(36), p.5998-6002(2006) ; (JAEA-J 01323)
 貴金属のペロブスカイト酸化物粒子への可逆な固溶析出現象を利用して、貴金属の使用量を削減しながら高性能な自動車触媒を創ることができる。パラジウムに引き続き、白金とロジウムに関しても自己再生機能を持たせることに成功した。

34001174
Ab initio path integral molecular dynamics simulation study on the dihydrogen bond of NH4+ ・・・BeH2
林 愛子*; 志賀 基之; 立川 仁典*
Chemical Physics Letters 410(1-3), p.54-58(2005) ; (JAEA-J 01324)
 水素結合は通常、水素と電気陰性度の高いフッ素,酸素,窒素などの原子の間に働くことが多いが、幾つかの例外がある。二水素結合はその一つで、正と負にそれぞれ帯電した水素原子に働く引力である。この研究では、二水素結合を持つ簡単な分子クラスター系BeH2-NH4+を例にとり、二水素結合の特徴に関して第一原理経路積分分子動力学シミュレーションにより詳細に解析した。

34001175
Performance and design of clay barriers for high-level radioactive waste repository
油井 三和
Clay Science 12(Suppl.2), p.166-170(2006) ; (JAEA-J 01325)
 粘土バリアは、高レベル放射性廃棄物(HLW)の地層処分において放射性核種の遅延にとって重要であり、その性能を、さまざまなプロセスの理解,モデル化,データベースをもとに解析した結果を中心に報告する。また、粘土バリアの設計要件とそれに影響を与えるプロセス(例えば、亀裂内侵入,ガス移行)研究の成果についても報告する。本報告は、招待講演である。

34001176
Extension of the Newcomb equation into the vacuum for the stability analysis of tokamak edge plasmas
相羽 信行; 徳田 伸二; 石澤 朋子*; 岡本 正雄*
Computer Physics Communications 175(4), p.269-289(2006) ; (JAEA-J 01326)
 2次元Newcomb方程式を数値的に取り扱うための定式化を、ベクトルポテンシャル法を用いて真空磁場エネルギー積分の計算を可能にするために拡張した。この定式化を数値安定性解析コードMARG2Dに実装し、トロイダルモード数の小さいモードから大きいモードまでの理想外部電磁流体(MHD)モードを対象とした安定性解析を1つの物理モデルに基づいて行うことを可能にした。また、この数値コードは並列計算による安定性の評価が可能である。これによって、実験解析やトカマク輸送コードとの連結による統合シミュレーションなどにかかる計算時間の短縮を実現しており、トカマク周辺プラズマの理解を進めるうえで有用な数値解析コードである。

34001177
Gravitational effect on release conditions of dust particle from plasma-facing wall
冨田 幸博*; Smirnov, R.*; 滝塚 知典; Tskhakaya, D.*
Contributions to Plasmas Physics 46(7-9), p.617-622(2006) ; (JAEA-J 01327)
 プラズマ対向壁から球形ダスト粒子が離脱する条件に対する重力の影響を1次元解析により調べた。重力が壁方向に向くとき、ダストの離脱には大きな電場力が必要であり、そのための壁電位閾値が存在する。閾値はプラズマ条件に依存せず、ダスト粒子形状に依存する。壁電位が閾値より大きく、かつダスト粒子半径がある臨界半径より小さなとき、ダストは離脱できる。重力が大きいと臨界半径は小さくなる。プラズマ密度,温度等のプラズマパラメータ及び壁電位を変化させて、壁から離脱するダスト粒子の大きさを制御できることが、この解析結果からわかった。

34001178
Two-dimensional simulation study on charging of dust particle on plasma-facing wall
Smirnov, R.*; 冨田 幸博*; Tskhakaya, D.*; 滝塚 知典
Contributions to Plasmas Physics 46(7-9), p.623-627(2006) ; (JAEA-J 01328)
 プラズマ対向壁上に導電性球形ダスト粒子があるときのシース形成について自己無撞着な2次元粒子シミュレーションを行った。ダストの荷電状態のダスト粒子半径依存性及び壁電位依存性を求め、そのシミュレーション結果を簡単な1次元モデルと比較した。1次元モデルの有効性を評価することが可能となった。また、プラズマによるダスト粒子の遮蔽効果を明らかにすることができた。

34001179
Alternative splicing in human transcriptome; Functional and structural influence on proteins
由良 敬; 塩生 真史*; 萩野 圭*; 土方 敦司*; 平島 芳則*; 中原 拓*; 江口 達哉*; 篠田 和紀*; 山口 昌太*; 高橋 健一*; 伊藤 剛*; 今西 規*; 五條堀 孝*; 郷 通子*
Gene 380(2), p.63-71(2006) ; (JAEA-J 01333)
 選択的スプライシングとは、一つの遺伝子から複数個のタンパク質を生み出す分子機構のことである。この論文でわれわれは、ヒトの完全長cDNAのデータを用いて、選択的スプライシングによってタンパク質の機能と構造にどのような多様性が生み出されているのかを解析した。まず、選択的にスプライスされる部分の長さは、ほとんどの場合タンパク質のドメインよりも短いことを見いだした。短い配列の挿入欠失及び置換によって変化がもたらされるタンパク質には、情報伝達や転写翻訳関連のタンパク質が多いことがわかった。アミノ酸配列に変化がもたらされる部分は、機能部位であることが目立つ。興味深いことに67%の場合では、選択的スプライシングがタンパク質のコア領域に変化をもたらしていることがわかった。このことは選択的スプライシングによって、タンパク質の立体構造に大きな変化がもたらされる可能性が示唆される。選択的スプライシングは、タンパク質の立体構造変化を通してタンパク質ネットワークを調整する機構と考えられる。

34001180
Biological effects of anhydrobiosis in an African chironomid, Polypedilum vanderplanki on radiation tolerance
渡邊 匡彦*; 坂下 哲哉; 藤田 昭彦*; 黄川田 隆洋*; 堀川 大樹*; 中原 雄一*; 和田 成一*; 舟山 知夫; 浜田 信行*; 小林 泰彦; 奥田 隆*
International Journal of Radiation Biology 82(8), p.587-592(2006) ; (JAEA-J 01336)
 本研究の目的は、クリプトビオシス生物であるネムリユスリカの放射線耐性が乾燥休眠により変化するかどうかを確かめることである。乾燥・非乾燥時の幼虫へのγ線照射が、幼虫の生存率,脱水能力,変態率,繁殖率に与える影響を調べた。非乾燥の場合には、2000Gy以上の線量で線量依存的に幼虫の生存率が減少し、4000Gyの照射後8時間経過した時点で実験に供したすべての幼虫が死滅した。一方、乾燥時の照射の場合には、7000Gyの照射でさえも一部の幼虫が生存した。変態時においても、乾燥幼虫が非乾燥幼虫に比べて放射線により抵抗性であった。しかしながら、繁殖に対しては乾燥による放射線耐性の効果はなかった。これらの結果は、繁殖を除くネムリユスリカの生活環境において、乾燥休眠が放射線抵抗性を高めることを示す。

34001181
Integrated description of deformation modes in a sedimentary basin; A Case study around a shallow drilling site in the Mizunami area, eastern part of southwest Japan
伊藤 康人*; 天野 健治; 熊崎 直樹*
Island Arc 15(1), p.165-177(2006) ; (JAEA-J 01337)
 反射法地震探査とボーリング調査に古地磁気学的手法を組合せた統合的な研究により、瑞浪地域に分布する堆積盆地が被った変動作用の変遷が明らかにされた。ボーリング孔は、反射法地震探査や地表地質調査によって推定されていた断層を貫通するように浅い深度を対象とした傾斜孔として掘削された。また、古地磁気測定は、孔壁画像上の構造姿勢を用いて方位付けした岩芯試料を用いて実施された。古地磁気測定においては、段階熱消磁・交流消磁実験により、計6深度で安定かつ特徴的な残留磁化が得られるとともに、段階等温実験により磁性鉱物が磁鉄鉱であることが明らかになった。本結果をボーリングデータの構造解析から推定される多段階の変形作用を基準に補正し、既存データを組合せて評価した結果、残留磁化方位は中期中新世以前の時計回りの島弧回転を反映した東偏であることが確認された。信頼性の高い古地磁気情報のデータセットから、中期中新世以降の西南日本東部の相対的回転は伊豆−ボニン弧の衝突によってもたらされており、われわれの研究結果は以下2点の新しい地質学的知見を示唆する。(1)瑞浪地域は赤石列線に接する強変形帯に隣り合う,(2)西南日本前弧側の変形作用は赤石列線周辺に限られ、衝突に関連する顕著な地殻の破断作用がない背弧側の漸移的な屈曲作用と大きく異なる。

34001182
Two-dimensional sodium fluctuation at high temperatures in high-temperature thermoelectric material γ-Na0.7CoO2
社本 真一; 長谷川 裕毅*; 梶谷 剛*
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 45(8A), p.6395-6397(2006) ; (JAEA-J 01338)
 高温でZT>1となる高い性能指数を持つ熱電物質γ-Na0.7CoO2について、粉末パルス中性子回折データの結晶PDF解析を用いて調べた。高温でのナトリウムと酸素原子間の相関においてPDFピークの幅が顕著に広がった。このことからナトリウム原子がNaO6プリズムから頻繁に出ていることを示している。言い換えれば、ナトリウム原子は高温で2次元層内で動き回っている。ナトリウム原子がプリズムから抜け出すNa-O相関の臨界距離以下でのPDF強度は、熱伝導度と反比例している。このことは、頻繁に起こるナトリウムの飛び移りに伴い、フォノンの寿命が短くなり、それにより熱電発電の性能が高くなっていることを示している。

34001183
Channel-dependent fission barriers of n+235U analyzed using selective channel scission model
太田 雅之; 中村 詔司
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 45(8A), p.6431-6435(2006) ; (JAEA-J 01339)
 選択チャンネル核分裂モデルに基づき、熱中性子に対する核分裂収率の報告値から、n+235U反応に対するチャンネル依存の核分裂障壁を求めた。ここで得られたチャンネル依存の核分裂障壁を用いて、thermal, 1MeV, 2MeV, 4MeV, 5.5MeVの入射中性子エネルギーに対する核分裂収率の質量分布を求めたところ、他の入射中性子エネルギーに対しても収率の報告値との良い一致が得られた。また、この解析によって得られた核の変形度と、Y. L. Zhao等による分裂時の核の変形度を比較した。定義が異なるため絶対値は一致しないが、変形度の分裂片質量依存性に同様の傾向がみられた。Zhao等による分裂時の核の変形度は、対称・非対称の核分裂モードに関係している。この解析によって得られた核の変形度も、分裂の対称・非対称性を示していると考えられる。

34001184
Crystal and magnetic structures and their temperature dependence of Co2Z-type hexaferrite (Ba, Sr)3Co2Fe24O41 by high-temperature neutron diffraction
高田 幸生*; 中川 貴*; 徳永 仁寿*; 福田 泰成*; 田中 貴佳*; 山本 孝夫*; 橘 武司*; 川野 眞治*; 石井 慶信; 井川 直樹
Journal of Applied Physics 100(4), p.043904_1-043904_7(2006) ; (JAEA-J 01340)
 Co2Z型六方晶フェライト(Ba, Sr)3Co2Fe24O41の高温中性子粉末回折を行い、回折パターンのRietveld解析から結晶構造及び磁気構造の温度依存性を調べた。Ba3Co2Fe24O41及びBa1.5Sr1.5Co2Fe24O41では、磁気モーメントが523-573Kにおいてc面方向からc軸方向へと変化することがわかった。また、Sr3Co2Fe24O41ではその磁化容易方向の変化温度が50K低下することを見いだした。

34001185
Control of biodegradability of poly(3-hydroxybutyric acid) film with grafting acrylic acid and thermal remolding
和田 勇生; 三友 宏志*; 粕谷 健一*; 長澤 尚胤; 瀬古 典明; 片貝 秋雄; 玉田 正男
Journal of Applied Polymer Science 101(6), p.3856-3861(2006) ; (JAEA-J 01341)
 放射線グラフト重合法により、生分解性ポリマーであるポリ(3-ヒドロキシブチレート)(PHB)フィルムにアクリル酸をグラフトした。グラフト率が5%を超えると、酵素分解性が失われた。酵素分解性を失ったグラフトフィルムを再加熱成形することにより、酵素分解性は再現した。その場合グラフト率が10%に増加すると加熱成形したフィルムは、PHBフィルムに比べ酵素分解性が向上した。酵素分解性が失われるのは、フィルム表面にアクリル酸がグラフトし、PHB部分に酵素が接触できなくなったためである。また、再加熱により酵素分解性が再現するのは、グラフト鎖がフィルム内に混合され、フィルム表面部分にPHBが現れ、その部分から酵素分解されるためだと考えられる。

34001186
Preparation of an extractant-impregnated porous membrane for the high-speed separation of a metal ion
浅井 志保; 渡部 和男; 須郷 高信*; 斎藤 恭一*
Journal of Chromatography A 1094(1-2), p.158-164(2005) ; (JAEA-J 01342)
 放射性廃棄物を安全かつ経済的に処分するためには、放射性廃棄物に含まれる放射能量を測定する必要がある。測定対象となる放射性核種のうち、α線及びβ線放出核種については、測定の前処理として化学分離が必要となる。本研究では、化学分離の迅速化を目指して、抽出試薬を担持したグラフト多孔性膜を開発した。まず、ポリエチレン製の多孔性中空糸膜に電子線を照射してラジカルを生成させ、エポキシ基を有するモノマー、glycidylmethacrylate(GMA)をグラフト重合し、GMA膜を作製した。次に、エポキシ基の開環反応によってオクタデシルアミノ基(C18H37NH基)をグラフト鎖に導入し、疎水性膜とした。疎水性膜を抽出試薬担持溶液(抽出試薬/エタノール=5/95, (v/v))に浸漬し、抽出試薬担持膜とした。抽出試薬は希土類元素に選択性を持つHDEHPを用いた。HDEHPの担持量は、最大2.1mol/kg-GMA膜となり、膜の体積は1.4倍に膨潤した。その結果、細孔径が増大し透水性が向上した。得られたHDEHP担持膜にイットリウム水溶液を透過させたところ、0.38mol-Y/kg-GMA膜のイットリウムが吸着し、7M硝酸で全て溶出できた。吸着・溶出の繰り返し操作後も吸着容量は変化しなかった。

34001187
Development of a fine and ultra-fine group cell calculation code SLAROM-UF for fast reactor analyses
羽様 平; 千葉 豪; 杉野 和輝
Journal of Nuclear Science and Technology 43(8), p.908-918(2006) ; (JAEA-J 01344)
 超微細群計算と詳細群計算に基づく高精度に実効断面積を作成できる高速炉用格子計算コードSLAROM-UFを開発した。超微細群計算では、52.5keV以下について共鳴構造を直接的に扱える詳細な群数で減速方程式を解き、詳細群計算ではその他のエネルギー範囲について最小レサジー幅0.008で格子計算を行う。SLAROM-UFの解析精度を連続エネルギーモンテカルロ法による参照解と比較することにより検証した結果、既存の70群炉定数に対して、「常陽」MK-I燃料に対する格子計算では無限増倍率について0.15%のずれが0.01%以内に改善することを、ZPPR-10Aに対する炉心計算では、臨界性で0.2%改善し、参照解と一致することを確認した。

34001188
Overestimation of parallel component of neutron leakage observed in sodium void reactivity worth calculation for fast critical assemblies
千葉 豪
Journal of Nuclear Science and Technology 43(8), p.946-949(2006) ; (JAEA-J 01345)
 Naボイド反応度はNa冷却高速炉で安全解析上、鍵となるパラメータであるが、複雑な要素によって決定されるため正確に解析することが難しい。ボイド反応度解析にかかわる中性子の「非漏洩成分と漏洩成分の比」という尺度で導入することによって、各成分ごとに解析精度を評価した。その結果、非漏洩成分の解析精度は良好であること,漏洩成分については実験データによっては過大評価することがわかった。さまざまな臨界実験データを解析し比較評価した結果、過大評価は漏洩成分のうち、セルに平行な成分で生じている可能性が高いことがわかった。

34001189
Behavior of 60 to 78 MWd/kgU PWR fuels under reactivity-initiated accident conditions
更田 豊志; 杉山 智之; 永瀬 文久
Journal of Nuclear Science and Technology 43(9), p.1080-1088(2006) ; (JAEA-J 01346)
 高燃焼度PWR燃料を対象としたNSRRにおける反応度事故時燃料挙動実験から得られた最新の知見を報告する。高燃焼度対応のために実用化が進められている改良被覆管を備えた燃焼度60〜78MWd/kgUのPWR燃料を対象とした最近の4回の実験OI-10, -11, -12及びVA-1の結果を通じて、耐食性が向上している改良被覆管を備えた燃料では従来のジルカロイ被覆燃料に比べて破損に至るまでの裕度が増していること,燃料ペレットの大粒径化が反応度事故時のFPガス放出抑制に効果があることを示した。さらに、反応度事故時のPCMI(燃料ペレット/被覆管機械的相互作用)にあっては燃料ペレットの固体熱膨張による負荷がほとんどでガスの効果は無視できること,高燃焼度燃料組織構造(リム組織)形成が反応度事故時燃料挙動に与える影響は小さいことなどについて論じた。

34001190
RANNS code analysis on the local mechanical conditions of cladding of high burnup fuel rods under PCMI in RIA-simulated experiments in NSRR
鈴木 元衛; 斎藤 裕明*; 更田 豊志
Journal of Nuclear Science and Technology 43(9), p.1097-1104(2006) ; (JAEA-J 01347)
 RANNSコードは反応度事故条件における燃料棒ふるまいを解析する。このコードは二種の力学モデルを持つ。一つは、燃料棒の各々の軸方向セグメント長における一次元変形モデルである。もう一つは、新開発の、一ペレット長における局所変形の二次元モデルである。NSRRにおける反応度事故を模擬した、高燃焼度PWR 燃料棒実験OI-10の解析を行い、被覆管変形について計算と実測で比較した。事故直前の燃料状態は燃料解析コードFEMAXI-6によって予測された。RANNSの二次元モデルの計算において、PCMIにおける被覆管のリッジ部の間の塑性歪み増加が計算と実測で比較検討され、局所的な不均一歪みに起因する応力の変動がクラック成長に与える影響を考察した。

34001191
Fracture behavior of irradiated Zircaloy-4 cladding under simulated LOCA conditions
永瀬 文久; 更田 豊志
Journal of Nuclear Science and Technology 43(9), p.1114-1119(2006) ; (JAEA-J 01348)
 高燃焼度燃料のLOCA時破断限界を評価するために、燃焼度39及び44GWd/t照射済PWR燃料から採取したジルカロイ-4被覆管を対象に急冷時耐破断特性評価試験を実施した。急冷時の破断限界は被覆管の初期水素濃度の増加によって低下するものの、照射済被覆管と同等の水素を吸収させた未照射被覆管の間で明らかな違いは見られなかった。また、試験対象被覆管の破断限界がLOCA指針の基準値以上であることが明らかになった。

34001192
High-temperature and high-pressure in situ SCC device for synchrotron radiation diffraction experiments and application using an austenitic stainless steel
山本 厚之*; 中東 重雄*; 寺澤 倫孝*; 三田村 徹*; 秋庭 義明*; 山田 孝幸*; Liu, L.*; 菖蒲 敬久; 椿野 晴繁*
Journal of Synchrotron Radiation 13(1), p.14-18(2006) ; (JAEA-J 01349)
 原子炉内シュラウドや再循環系配管で発生する応力腐食割れの機構解明を行うために、沸騰水中型原子炉と同じ環境である高温高圧水中下におけるオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lを用いた応力その場観察測定のための技術開発を行った。独自に開発したオートクレーブ内に鍵状に作成した試験片を固定し、沸騰水を流すことで高温高圧環境を模擬させた。このオートクレーブには10mm厚のサファイア窓があり、ここから高エネルギー放射光X線を入射、及び出射できる。このようにして、試料に内在する応力をsin2ψ法で観測することに成功した

34001193
Geometrical H/D isotope effect on hydrogen bonds in charged water clusters
立川 仁典*; 志賀 基之
Journal of the American Chemical Society 127(34), p.11908-11909(2005) ; (JAEA-J 01350)
 水素の同位体効果は水素結合の強さを微妙に変えることがある。水クラスターの正イオンと負イオンの配置の同位体効果を第一原理経路積分分子動力学法により詳細に解析したところ、重水素置換により正イオンでは酸素間結合が縮むのに対し、負イオンでは酸素間結合が伸びることを見いだした。前者はOH結合の非調和性のためであり、後者はO-H-O結合の共鳴のためであると考えられる。

34001194
Single crystal synchrotron X-ray diffraction study under pressure in UGe2
阿曽 尚文*; 大和田 謙二; 綿貫 徹; 町田 晃彦; 大村 彩子; 稲見 俊哉; 本間 佳哉*; 塩川 佳伸*; 廣田 和馬*; 佐藤 憲昭*
Journal of the Physical Society of Japan 75(Supplment), p.88-90(2006) ; (JAEA-J 01351)
 強磁性超伝導体UGe2において、低温高圧下において理論的に予測されたCDWの探索を行った。実験は放射光を用いた振動写真法により行われたが、基本反射強度の10-4の範囲でCDWを示唆する反射を観測することはできなかった。

34001195
Orbital-controlled superconductivity in f-electron systems
久保 勝規; 堀田 貴嗣
Journal of the Physical Society of Japan 75(8), p.083702_1-083702_5(2006) ; (JAEA-J 01352)
 われわれは、軌道自由度によって制御される超伝導という新しい機構を提案し、その典型例としてCeMIn5(M=Co, Rh, and Ir)を取り上げる。われわれはCeMIn5に対する多軌道モデルに対して、揺らぎ交換近似を適用する。そして、たとえフェルミ面の形状が変わらない場合であっても、フェルミ面近傍の電子を構成する軌道状態に応じて、基底状態が常磁性状態,反強磁性状態,超伝導状態と変わることを見いだした。実験で得られた結晶場軌道状態を注意深く解析した結果、この描像はCeMIn5の低温の性質をよく説明することがわかった。

34001196
Development of silicon carbide coating on Al2O3 ceramics from precursor polymers by radiation curing
Wach, R.; 杉本 雅樹; 吉川 正人
Key Engineering Materials 317-318, p.573-576(2006) ; (JAEA-J 01353)
 ケイ素高分子から合成されるSiCセラミックスは、アモルファス構造を有することから水素等のガス選択透過性が予想される。また、SiCは耐熱・耐蝕性に優れていることから、高温水素分離フィルター等への応用が期待できる。本講演ではSiCセラミックスの前駆体であるケイ素系高分子を溶媒に溶かして、アルミナセラミック基板上に成膜し、電子線により酸化架橋した後、不活性ガス中で1000℃まで焼成してセラミックに転換することにより、SiCコーティングの合成を試みた。ケイ素系高分子は焼成に伴い収縮するが、膜厚を500μm以下に制御することで、クラックの生成を抑制することが可能であること,コーティング膜に生成するピンホールはアルミナ基板の平滑性に依存していることを明らかにした。

34001197
Self-assembly of block copolymer thin films having a half-domain-spacing thickness; Nonequilibrium pathways to achieve equilibrium brush layers parallel to substrate
福永 謙二*; Ribbe, A. E.*; 橋本 竹治
Macromolecules 39(18), p.6171-6179(2006) ; (JAEA-J 01355)
 バルク試料中でラメラ構造を形成するブロック共重合体を試料に用いて、膜圧がバルク試料のラメラ周期の1/2となるように、スピンキャスト法により超薄膜(膜圧20nm)を作成した。この薄膜の熱処理に伴う構造変化を明らかにした。その概要は次の通りである。成膜直後の薄膜においては、ブロック共重合体のミクロドメイン構造の界面は、薄膜の空気表面,支持体表面に対して垂直な配向を有した。この薄膜を長時間そのガラス転移温度以上の温度で熱処理すると、ミクロドメイン構造の界面は空気表面及び支持体表面に平行となることを発見した。成膜直後の構造は、成膜中に存在した溶媒の効果により生じた安定(平衡)構造が、溶媒蒸発後も凍結固化されて発現した非平衡構造と考えられる。この薄膜における垂直界面配向という非平衡構造から平行界面配向という平衡構造への転移が界面に沿ったブロック共重合体高分子の協同運動と界面の変形・熱運動によりもたらされることを明らかにした。またこれにより、平衡構造が発現する際の非平衡過程・経路を明らかにすることができた。

34001198
Design of engineering diffractometer at J-PARC
Harjo, S.; 盛合 敦; 鳥居 周輝; 鈴木 裕士; 鈴谷 賢太郎; 森井 幸生; 新井 正敏; 友田 陽*; 秋田 貢一*; 秋庭 義明*
Materials Science Forum 524-525, p.199-204(2006) ; (JAEA-J 01356)
 J-PARCにおいて工業部品内での応力や結晶構造の評価を含めた材料工学におけるさまざまな課題を解決するために工学利用の中性子回折装置(新材料解析装置)を設計・建設する。本装置は、許容の波長範囲では対称性の良い回折プロファイルを作ることができる遅い中性子を発生させるポイゾン型の非結合型液体H2減速材を見て、減速材−試料及び試料−検出器のフライトパスはそれぞれ40m及び2.0mである。中性子強度のロス及び速中性子やγ線を低下させるためにカーブスパーミラーガイド管を導入する。モンテカルロシミュレーションを用いて本装置の最適化を行い、試料のゲージ幅が5.0mm以下では分解能Δd/dが0.2%以下である。1.0mmゲージ幅用のラジアルコリメータの試作機を作製し、中性子を用いた実験から正規分布の半値幅が1.0mmでありシミュレーションした結果と一致した。

34001199
Evaluation of subsurface distribution of residual stress in austenitic stainless steel using strain scanning method
菖蒲 敬久; 小西 啓之; 水木 純一郎; 鈴木 賢治*; 鈴木 裕士; 秋庭 義明*; 田中 啓介*
Materials Science Forum 524-525, p.691-696(2006) ; (JAEA-J 01357)
 粗大粒や集合組織を持つSUS304Lオーステナイト系ステンレス鋼の表面にショットピーニングを施した材料の表面下の残留応力分布を評価するためにひずみスキャニング法を適応した。SPring-8内BL22XUにおいて測定を行った。エネルギーは70.14keV,ビームサイズは2×0.2mm2,受光側にGe(111)アナライザを用いた。試験片にはSUS304Lの焼鈍材とショットピーニング材で20×20×5mm3の角材を使用し、その粒サイズは37μmだった。十分な数の結晶粒からの回折を得るために、試料に対して並進,回転,あおりなどの揺動を加えた。その結果、並進揺動を行うことで正確な応力分布が得られることがわかった。本揺動と表面効果の補正を加えることで、ショットピーニングを施したオーステナイト系ステンレス鋼の表面から内部の残留応力分布を決定することに成功した。

34001200
Concept of Innovative Water Reactor for Flexible Fuel Cycle (FLWR)
岩村 公道; 内川 貞夫; 大久保 努; 久語 輝彦; 秋江 拓志; 中野 佳洋; 中塚 亨
Nuclear Engineering and Design 236(14-16), p.1599-1605(2006) ; (JAEA-J 01358)
 成熟した軽水炉やきたるべきプルサーマルの技術に立脚して将来の持続的なエネルギー供給を可能とすることを目指し、革新的水冷却炉(FLWR)の概念検討を原子力機構で進めている。この概念は、時間的につながる2つの部分から構成されている。最初の部分は、高転換型炉心概念で、軽水炉やプルサーマルから技術的に大きなギャップ無しにスムーズな連続性を保つことを目的としている。2番目の部分は低減速軽水炉(RMWR)の炉心概念であり、軽水炉技術に基づいたプルトニウムの多重リサイクルによって長期的かつ持続的なエネルギー供給のために1.0を超える高い転換比の実現を目指すものである。ここで重要な点は、この2つの炉心概念は、整合性のある同じサイズの燃料集合体を利用する点であり、これにより、最初の概念が、60年程度と考えられている炉の運転期間中における将来の燃料サイクル環境に柔軟に対応しながら、同じ原子炉システム内で2番目の概念に進んでゆくことができる。FLWRのこれら2つの炉心概念について、概念設計,プルトニウムの多重リサイクル性の検討,稠密格子炉心での熱流動特性の検討等が進められており、これまでに有望な結果が得られている。

34001201
Current status of thermal/hydraulic feasibility project for reduced-moderation water reactor, 2; Development of two-phase flow simulation code with advanced interface tracking method
吉田 啓之; 玉井 秀定; 大貫 晃; 高瀬 和之; 秋本 肇
Nuclear Engineering and Technology 38(2), p.119-128(2006) ; (JAEA-J 01359)
 日本原子力研究開発機構において開発が進められている超高燃焼水冷却増殖炉の熱設計においては、詳細二相流解析手法により、稠密炉心の除熱性能を評価する。この一環として本研究では、改良界面追跡法を用いた詳細二相流解析コードTPFITの開発を行っている。本報では、解析コードのベクトル並列化を行い、大規模解析に対応させるとともに、解析コード検証解析や稠密炉心を模擬した体系における解析結果を示す。

34001202
Key R&D activities supporting disposal of radioactive waste; Responding to the challenges of the 21st century
宮本 陽一; 梅木 博之; 大澤 英昭; 内藤 守正; 中野 勝志; 牧野 仁史; 清水 和彦; 瀬尾 俊弘
Nuclear Engineering and Technology 38(6), p.505-534(2006) ; (JAEA-J 01360)
 クリーンで経済的で社会が受容できるエネルギーの十分な供給を確立することは、21世紀において重要で世界的なチャレンジである。原子力の役割をさらに拡大することが選択の一つと思われるが、このオプションの実施は、すべての放射性廃棄物を安全に処分することにかかっている。安全な処分は専門家の間ではその基本的な実現可能性についてコンセンサスは得られているが、特に主要なステークホルダーにより受け入れられるよう、その概念をもっと実際的なものとしなければならない。ここでは、世界的なトレンドを考慮し、また日本の例を引き合いにして、将来の研究開発の鍵となる分野を明らかにし、有益と思われる国際協力のシナジー効果が生まれる可能性のある分野に焦点を当てていくこととする。

34001203
Overview of the national centralized tokamak programme
菊池 満; 玉井 広史; 松川 誠; 藤田 隆明; 高瀬 雄一*; 櫻井 真治; 木津 要; 土屋 勝彦; 栗田 源一; 森岡 篤彦; 林 伸彦; 三浦 幸俊; 伊藤 智之*; Bialek, J.*; Navratil, G. A.*; 池田 佳隆; 藤井 常幸; 栗原 研一; 久保 博孝; 鎌田 裕; 宮 直之; 鈴木 隆博; 濱松 清隆; 川島 寿人; 工藤 祐介; 正木 圭; 高橋 弘行*; 武智 学; 秋場 真人; 奥野 清; 石田 真一; 市村 真*; 今井 剛*; 橋爪 秀利*; 三浦 友史*; 堀池 寛*; 木村 晃彦*; 筒井 広明*; 松岡 守*; 上杉 喜彦*; 相良 明男*; 西村 新*; 清水 昭比古*; 坂本 瑞樹*; 中村 一男*; 佐藤 浩之助*; 岡野 邦彦*; 居田 克巳*; 嶋田 隆一*; 岸本 泰明; 疇地 宏*; 田中 知*; 谷津 潔*; 吉田 直亮*; 犬竹 正明*; 藤原 正巳*; 井上 信幸*; 細金 延幸; 栗山 正明; 二宮 博正
Nuclear Fusion 46(3), p.S29-S38(2006) ; (JAEA-J 01361)
 トカマク国内重点化装置(NCT)計画は、大学における成果を取り込みつつJT-60Uに引き続き先進トカマクを進めるための国内計画である。NCTのミッションは発電実証プラントに向けて高ベータ定常運転を実現するとともに、ITERへの貢献を図ることである。高ベータ定常運転を実現するために、装置のアスペクト比,形状制御性,抵抗性壁モードの帰還制御性,電流分布と圧力分布の制御性の機動性と自由度を追求した。

34001204
Confinement degradation with beta for ELMy H-mode plasmas in JT-60U tokamak
浦野 創; 滝塚 知典; 竹永 秀信; 大山 直幸; 三浦 幸俊; 鎌田 裕
Nuclear Fusion 46(8), p.781-787(2006) ; (JAEA-J 01362)
 JT-60Uにおいて、トロイダルベータ値の増加に伴うエネルギー閉じ込めの劣化を無次元輸送解析によって明らかにした。エネルギー閉じ込め性能のベータ依存性は、JT-60UにおけるELMy Hモード閉じ込めデータベースの解析、またρT*, ν*、及びその他の磁気形状パラメータを固定したベータ値のスキャン実験の結果の両方から調べた。いずれの場合も、エネルギー閉じ込め性能はベータ値の増加に伴って、BTτE∝βT-(0.6-0.7)の関係を満たすように劣化することがわかった。この結果は、IPB98(y,2)閉じ込め比例則の予測よりも弱い依存性である。本研究の結果から、核融合エネルギー増倍率は、βT0.3-0.4BTに比例して増加することが予測される。

34001205
The Roles of specific glycosylases in determining the mutagenic consequences of clustered DNA base damage
鹿園 直哉; Pearson, C.*; O'Neill, P.*; Thacker, J.*
Nucleic Acids Research 34(13), p.3722-3730(2006) ; (JAEA-J 01363)
 電離放射線の持つ高い生物効果はクラスター化したDNA損傷に原因があると予想されているが、その突然変異誘発効果についてはほとんど研究が進んでいない。われわれは変異原性をもたない塩基損傷である5,6-ジヒドロチミン(DHT)を相補鎖上に配置させ、変異原性である8-オキソグアニン(8oxoG)の変異誘発効果に影響を与えるかを調べた。その結果、大腸菌の野生株及びグリコシラーゼ欠損突然変異株において、DHTと8-oxoGのクラスターは単独の8-oxoGよりも変異風発頻度が高いことが明らかとなった。このクラスターの修復の初期過程において、エンドヌクレアーゼIIIはDHTを除去し8-oxoGの相補鎖上に脱塩基部位(AP)もしくは鎖切断(SSB)を生じさせる役割があると考えられる。このAPもしくはSSBを持つ中間体は、多くのクラスター化した塩基損傷に共通すると思われる。また、クラスター化した損傷による突然変異誘発の抑制に最も重要なグリコシラーゼは、複製後に働くMutYであった。大腸菌内では変異を持つプラスミドともたないプラスミドがさまざまな量比で混在したことから、損傷を持つ2つの鎖は異なる速度で複製されることが示唆された。

34001206
Large-scale identification and characterization of alternative splicing variants of human gene transcripts using 56 419 completely sequenced and manually annotated full-length cDNAs
武田 淳一*; 鈴木 豊*; 中尾 光輝*; Barrero, R. A.*; 小柳 香奈子*; Jin, L.*; 本野 千恵*; 秦 裕子*; 磯貝 隆夫*; 永井 啓一*; 大槻 哲嗣*; Kuryshev, V.*; 塩生 真史*; 由良 敬; 郷 通子*; Jean, T.-M.*; Danielle, T.-M.*; Wiemann, S.*; 野村 信夫*; 菅野 純夫*; 五條堀 孝*; 今西 規*
Nucleic Acids Research 34(14), p.3917-3928(2006) ; (JAEA-J 01364)
 56 419本のヒト完全長cDNAにもとづく選択的スプライシング解析の結果をここに報告する。6877遺伝子から少なくとも、18 297個の選択的スプライシングの産物があらわれることがわかった。このうちタンパク質のアミノ酸配列まで影響が及ぶ場合は6005個存在する。6005個のうち3015個の場合はタンパク質アミノ酸配列モチーフに変化が見られ、2982個の場合は細胞内局在部位決定モチーフに、1348個の場合は膜貫通部位決定モチーフに影響が及ぶ。今まで知られていない選択的スプライシングのパターンとして、2つの遺伝子が1つになってしまう例などがあった。これらのデータは選択的スプライシング解析の基礎となっていくであろう。

34001207
Vortex imaging of Tl-based superconductors with a scanning SQUID microscopy
岡安 悟; 西尾 太一郎; 小野 正雄; 真下 茂; 田中 靖資*; 伊豫 彰*
Physica C 445-448, p.245-248(2006) ; (JAEA-J 01365)
 超伝導転移温度以下の領域でタリウム系1223超伝導体薄膜の磁束量子観察を走査型SQUID顕微鏡を用いて行った。磁束量子の配列は転移温度以下でほとんど変わらず、このことは試料中にきわめて強いピン止め中心が存在していることを示している。この強いピン止め中心は試料表面の不均質に起因する。

34001208
Soft X-ray absorption spectroscopy and magnetic circular dichroism study of electroless-deposited CoNiFe ternary alloy soft magnetic films
田中 真人*; 中村 尚倫*; 朝日 透*; 津森 俊宏*; 安居院 あかね; 水牧 仁一朗*; 逢坂 哲彌*
Physica Status Solidi (C) 3(8), p.2783-2786(2006) ; (JAEA-J 01366)
 超高密度磁気記録に有望な垂直二層膜磁気記録媒体の開発には、高飽和磁束密度を有する軟磁性薄膜から成る裏打ち層と呼ばれる磁性薄膜の研究が鍵となっている。本研究では裏打ち層としてCoNiFeB無電解めっき膜を用い、SPring-8 BL23SUの偏光変調方式による軟X線磁気円二色性の測定から、この裏打ち層の元素別磁気特性を明らかにした。また作製時に磁場を印加しためっき膜ではCo, Ni原子の軌道角運動量が増加することを明らかにした。

34001209
Resonant Cu Lα,β emission spectra of CuGeO3 single crystal
安居院 あかね; Guo, J.*; Sathe, C.*; Nordgren, J.*; 日高 昌則*; 山田 勲*
Physica Status Solidi (C) 3(8), p.2880-2883(2006) ; (JAEA-J 01367)
 擬1次元系CuGeO3に単結晶について、CuのL吸収端の吸収分光と共鳴発光分光を行った。発光スペクトルは強い励起エネルギー依存性をしめした。このスペクトルはCu 3d間のd-d励起をしめしている。d電子は物性にかかわる電子であるので分光データから、系の電子構造などについて言及する。

34001210
Numerical studies on the effect of normal-metal coatings on the magnetization characteristics of type-II superconductors
Carty, G. J.*; 町田 昌彦; Hampshire, D. P.*
Physical Review B 71(14), p.144507_1-144507_9(2005) ; (JAEA-J 01368)
 超伝導体にコーティングする金属の特性とともに超伝導体の磁化過程がどのように変化するかという問題は、超伝導体の磁場中での性質を制御するうえで極めて重要な問題であり、系統的な大規模数値シミュレーションにより初めて理解可能である。本研究では、この問題意識に答えるべく、超伝導体の超伝導電子密度の時空間発展を現象論的レベル(巨視的レベル)で記述する時間依存のギンツブルクランダウ方程式を数値的に解き、任意の電気抵抗を持つ金属をコーティングした超伝導体の磁気特性(磁化過程)を調べた。その結果、量子化磁束の侵入が金属の臨界温度や電気抵抗に強く依存することを初めて直接示すことに成功したほか、コーティングの膜厚依存性についても、定性的理解を得ることができた。

34001211
Nuclear electromagnetic current in the relativistic approach with the momentum-dependent self-energies
丸山 智幸*; 千葉 敏
Physical Review C 74(1), p.014315_1-014315_12(2006) ; (JAEA-J 01369)
 ワード・高橋の恒等式を用いて、運動量依存のディラック場における保存則を満たすような電磁カレントを定義する。従来、相対論的ハートリー理論による取り扱いで有効質量が小さすぎるために過大評価となっていたアイソベクトルの磁気モーメントが本研究で提案するディラックフォックカレントにより減少し、測定値との一致が改善されることがわかった。

34001212
Isobaric cold-fusion channels for synthesis of 276114, 286114 and 290114
Gherghescu R. A.*; 永目 諭一郎
Physical Review C 74(1), p.014611_1-014611_12(2006) ; (JAEA-J 01370)
 超重元素276114, 286114, 290114を合成するための冷たい核融合反応系を理論的に調べた。計算には入射重イオン核及び標的核の変形と二つの核の中心間距離を考慮したポテンシャル面を使用した。変形エネルギーにはbinary macroscopic-microscopic法を、また質量テンソルの計算にはWerner-Wheeler近似法を用いた。同じ質量非対称系に対して電荷非対称をポテンシャル面に沿って変化させて計算した。最も高い確率で276114を合成する入射系は116,118Cdで、286114の場合は142Ba、また104Kr, 108Sr, 112Zrが290114を合成するのに最も適していることがわかった。

34001213
Neutrino-nucleus reactions based on new shell model hamiltonians
鈴木 俊夫*; 千葉 敏; 吉田 敬*; 梶野 敏貴*; 大塚 孝治*
Physical Review C 74(3), p.034307_1-034307_9(2006) ; (JAEA-J 01371)
 スピン・アイソスピン相互作用の重要な特徴を考慮したp-殻核に対する新しい殻模型ハミルトニアンを用いて、静止崩壊ニュートリノ及び超新星ニュートリノに対するニュートリノ・12C反応断面積を求めた。さまざまなチャンネルへの崩壊分岐比はHauser-Feshbach理論を用いて計算した。同様にニュートリノ・4Heについての計算も行った。われわれの計算はほかのの計算に比べて、4He, 12Cとも反応断面積が増大し、その結果、超新星爆発時に合成される軽元素、特に7Liと11Bの量も増加することがわかった。

34001214
Does bulk metallic glass of elemental Zr and Ti exist?
服部 高典; 齋藤 寛之; 金子 洋; 岡島 由佳; 青木 勝敏; 内海 渉
Physical Review Letters 96(25), p.255504_1-255504_4(2006) ; (JAEA-J 01372)
 最近ZhangとZhaoとY. Wang et al. によって報告されたZr, Tiにおける高圧下におけるガラス形成を確認するために、それらの高圧下での状態を、新たに開発した2次元検出器とX線に透明な高圧アンビルを用いた角度分散X線回折法を用いて調べた。これまで報告されてきたガラス化する温度圧力領域において、従来の方法である一次元検出器を用いたエネルギー分散法においては高圧下においてすべてのブラッグピークが消失するが、今回用いた二次元検出器で得られたデータは、依然鋭いブラッグピークが存在することを示した。これらのことは、Zr, Tiはガラス化せず、高温高圧下において粒径が大きくなったために生じたブラッグピークの消失を見誤ったものと思われる。

34001215
Pressure-induced site-selective disordering of Ge2Sb2Te5; A New insight into phase-change optical recording
Kolobov, A.*; Haines, J.*; Pradel, A.*; Ribes, M.*; Fons, P.*; 富永 淳二*; 片山 芳則; Hammounda, T.*; 宇留賀 朋哉*
Physical Review Letters 97(3), p.035701_1-035701_4(2006) ; (JAEA-J 01373)
 われわれは、DVD-RAMなどの相変化光記録媒体に使われているGe2Sb2Te5(GST)が、圧力を加えることによってアモルファスになりうることを示した。この構造変化は、GSTの準安定な正方晶相の長距離秩序を決定している非常に強い第2最近接Te-Te相互作用及び空孔の存在によるものであることが議論される。この新しく発見された現象は、圧力がアモルファス相を生成するための重要な因子であることを示唆するものであり、相変化による光学記録の機構について新しい洞察に導くものである。

34001216
A Small acidic protein 1 (SMAP1) mediates responses of the arabidopsis root to the synthetic auxin 2,4-dichlorophenoxyacetic acid
Rahman, A.*; 中曽根 光*; Chhun, T.*; 大浦 千春*; Biswas, K. K.*; 内宮 博文*; 鶴見 誠二*; Baskin, T. I.*; 田中 淳; 大野 豊
Plant Journal 47(5), p.788-801(2006) ; (JAEA-J 01374)
 2,4-Dは、IAAの化学的アナログで、オーキシンとして投与し植物の生長を制御する際に広く使用されており、IAAと共通した応答経路で作用すると考えられている。本論文では、2,4-Dに対して感受性が低下しているがIAAに対しては野生型と同様の感受性を示す変異体であるアンチオーキシン耐性変異体(aar1)について報告する。aar1の2,4-D応答変化の特異性は、DR5:GUS, HS:AXR3NT-GUSなどのマーカー遺伝子の発現やIAA11遺伝子のリアルタイムPCR法などにより確認された。2系統のaar1変異遺伝子座を調べたところ、両者とも複数の遺伝子にまたがるゲノムDNAの欠失が起こっていた。そこで、相補試験、及びRNAi形質転換体の解析を行い、欠失領域に存在する単一の遺伝子が2,4-D応答変化に関与していることを証明した。この遺伝子は、機能未知のタンパク質をコードする遺伝子(SMAP:small acidic protein 1)で動植物には存在するが、菌類や原核生物には報告がないものであった。本研究により、SMAP1は2,4-D応答の調節因子であること,2,4-DとIAAに対する応答反応は部分的に異なる経路で引き起こされることが示唆された。

34001217
Experimental study of nonlinear processes in edge turbulence of toroidal plasmas
永島 芳彦*; 星野 克道; 永岡 賢一*; 篠原 孝司; 藤澤 彰英*; 上原 和也; 草間 義紀; 居田 克巳*; 吉村 泰夫*; 岡村 昇一*; 松岡 啓介*; 江尻 晶*; 高瀬 雄一*; 伊藤 公孝*; 矢木 雅敏*; 伊藤 早苗*; JFT-2Mグループ ; CHSグループ *
Plasma and Fusion Research (Internet) 1(9), p.041_1-041_15(2006) ; (JAEA-J 01375)
 トロイダルプラズマ周辺での乱流揺動とメソスケール構造との間の非線形過程をバイスペクトル解析により調べた。JFT-2Mでは、リミター配位のみならず、ダイバータ配位についても解析し、ポテンシャル揺動のバイスペクトル関数の強度と位相は、ドリフト波−帯状流系の解析と整合することがわかった。CHS装置においては、Hモードの周辺プラズマについて調べ、重水素線強度の減少の以前(約30ms)から周辺ポテンシャルが減少すること,周辺部揺動は、低周波のMHD揺動,ドリフト波様の広帯域静電揺動、及び高周波の電磁揺動より構成されていることを見いだした。これらの間の非線形結合について解析を行い、コヒーレントMHD揺動と広帯域静電揺動及び高周波電磁揺動の非線形結合を初めて見いだした。

34001218
Effects of shear flow on a semidilute polymer solution under phase-separating condition
遠藤 まや*; 竹中 幹人*; 橋本 竹治
Polymer 47(20), p.7271-7281(2006) ; (JAEA-J 01376)
 ポリスチレン,DEM溶液の準希薄高分子溶液を曇点以下におくと、相分離する。この相分離溶液に、さまざまな一定ズリ速度を加えた時の流動誘起構造形成を解明した。

34001219
Analytical functions to predict cosmic-ray neutron spectra in the atmosphere
佐藤 達彦; 仁井田 浩二*
Radiation Research 166(3), p.544-555(2006) ; (JAEA-J 01377)
 大気中における宇宙線由来の中性子スペクトルに関する情報は、航空機乗務員の被ばく線量や地表面における半導体ソフトエラー発生率を評価するうえで不可欠である。そこで、われわれは、汎用モンテカルロ計算コードPHITSに最新の核データライブラリを組合せて大気中の粒子輸送計算を行い、航空機内や地表面における中性子スペクトルを導出した。その結果、本シミュレーションは、従来の計算モデルと比較して格段に精度よく中性子スペクトルの測定値を再現できることが判明した。また、計算した中性子スペクトルの高度・太陽活動周期・地磁気緯度・近傍幾何形状に対する依存性を系統的に評価することにより、大気中のあらゆる地点における中性子スペクトルを導出可能な予測モデルを構築した。開発した予測モデルは、航空機乗務員被ばく線量や半導体ソフトエラー発生率の推定精度向上に多大に貢献できると思われる。

34001220
Orbital ordering phenomena in d- and f-electron systems
堀田 貴嗣
Reports on Progress in Physics 69(7), p.2061-2155(2006) ; (JAEA-J 01378)
 近年、d及びf電子系物質の特異な磁性現象が物性物理分野において活発に議論されている。これらの物質群は、強相関電子系という同一のカテゴリーに括られることが多い。たとえば、両方の物質に共通の性質として、活性な軌道自由度の存在が挙げられる。その一方で、f電子系では一般にスピン・軌道相互作用が強く、低エネルギーの物理はd電子系のそれとは異なって見える。そのためこれらの物質群は、これまで別々のコミュニティで独立して研究されることが多かった。しかし、自然は複雑ではあるが気まぐれではない。軌道自由度の存在のために、一見すると非常に複雑に見える磁性現象も、d及びf軌道によらない共通の原理で理解することができるのである。このレビューでは、d及びf電子系のそれぞれの複雑な磁気相図を理解するとともに、軌道秩序の概念によって、それらに共通の「軌道物理」の姿を浮き彫りにし、磁性物理学の新たなパラダイムへの扉を開く。

34001221
Gas-cluster targets for femtosecond laser interaction; Modeling and optimization
Boldarev, A. S.*; Gasilov, V. A.*; Faenov, A. Y.*; 福田 祐仁; 山川 考一
Review of Scientific Instruments 77(8), p.083112_1-083112_10(2006) ; (JAEA-J 01379)
 ガスジェット中でのクラスター生成過程に関する新しい数学モデルを開発した。このモデルでは、クラスターターゲットは連続ガス相と不連続クラスター相の2成分媒体として記述され、クラスターターゲットの時間空間分布に関するすべてのパラメータの記述が可能である。また、初めてノズルの詳細な構造を考慮に入れたモデルとなっている。大量の数値計算を実施し、従来モデルであるHagenaモデルとの比較を行い、このモデルの優位性を検証した。大量のマイクロメータサイズのクラスターを生成させるため、本モデルを用いて特殊な形状を有する3ステージノズルの設計を行った。このような特殊ノズルは、従来モデルでは設計不可能であった。この特殊ノズルを用いて生成させたマイクロメータサイズのクラスターと高強度レーザーとの相互作用実験を行った。これまでにない高輝度のkeV領域X線の発生、及び、X線発生量のさまざまな実験パラメータに対する依存性、からノズル設計の正当性を評価した。

34001222
Construction and evaluation of an experimental station and reaction apparatus for the chemical reactions of aqueous solution systems with soft X rays from a sychrotron radiation light source
清水 雄一; 小池 雅人; 佐野 一雄*
Review of Scientific Instruments 77(9), p.094102_1-094102_4(2006) ; (JAEA-J 01380)
 シンクロトロン放射光からの軟X線を用いて水溶液系の化学反応を効率よく行うための実験システムを設計・構築して、その評価を行った。このシステムは立命館大学シンクロトロン放射光センターのビームライン(BL-11)のエンドステーションに設置された。反応装置内での万一の溶液の漏洩による突然の真空破壊及び汚染から蓄積リングやビームラインを防護するために、このシステムは反応装置部における安全機構に加えて、次の二つの防護機構を有している。(1)微小孔径のオリフィス型ガスケットを備えた差動排気部,(2)速断シャッターなどを備えた緊急インターロックシステム部である。ここでは、本システムの詳細な説明とシステムの評価のために行われた予備的な実験結果について述べる。

34001223
イオン液体を用いた溶媒抽出法の新展開; 大環状化合物を用いた金属イオン・生体高分子の抽出
下条 晃司郎
分離技術 36(4), p.241-246(2006) ; (JAEA-J 01381)
 環境調和型溶媒として注目を浴びているイオン液体を用いた溶媒抽出法について、発表者が近年行ってきた研究を総括的に紹介する。大環状包接化合物カリックスアレーンを抽出剤に用いて貴金属である銀イオンの抽出を行った。その結果、従来の有機溶媒を用いた系と比較して大幅に抽出能が向上した。また、大環状化合物クラウンエーテルを抽出剤に用いて、定量的なタンパク質の抽出にも成功した。その結果、タンパク質の立体構造が変化し、水系では観測されないような新機能を持つようになった。

34001224
岐阜県東濃地方に分布する瑞浪層群土岐夾炭層の凝灰質砂岩のフィッション・トラック年代
笹尾 英嗣; 岩野 英樹*; 檀原 徹*
地質学雑誌 112(7), p.459-468(2006) ; (JAEA-J 01382)
 岐阜県南東部に分布する中新統瑞浪層群最下部の土岐夾炭累層について、フィッション・トラック年代測定と記載岩石学的性質に基づいて、その堆積年代を検討した。試料はボーリングコアから得た4つの凝灰質砂岩である。また、砕屑物の供給源である可能性の高い、基盤の土岐花崗岩も併せて分析した。凝灰質砂岩及び土岐花崗岩中の斜長石の屈折率分布から、凝灰質砂岩は安山岩質凝灰岩と花崗岩起源の砕屑物の混在物であることが明らかになった。また、ジルコンの粒子年代分布を統計的に解析し、同一年代とみなされる粒子集団を分類した結果、17〜21Ma及び56〜67MaのFT年代が識別された。若い方の年代は凝灰岩の年代を表すと考えられ、土岐夾炭累層の堆積年代を示す。古い方の年代は、土岐花崗岩(FT年代は59〜61Ma)の年代とほぼ一致する。上位層の堆積年代に関する従来の研究結果を考慮すると、土岐夾炭累層は約18.5〜21Maに堆積したと推定される。

34001225
核燃料サイクル施設の廃止措置における安全上重要課題の検討
水越 清治; 助川 武則
デコミッショニング技報 (34), p.26-39(2006) ; (JAEA-J 01384)
 核燃料サイクル施設の廃止措置を安全に遂行するためには、廃止措置における安全確保のための技術基準,廃止措置計画認可の際の審査基準等を整備する必要があり、そのため、廃止措置の先行事例や技術動向,代表プラントにおける汚染の分布・形態等の現状について調査を行い、安全上の重要課題について検討を実施している。本報告では、主としてウラン濃縮施設及び再処理施設を対象に、施設及び廃止措置の事例,除染・解体技術の動向等についての調査結果と廃止措置における安全上重要課題の検討結果について紹介する。

34001226
ウラン取扱施設におけるクリアランスについて
船橋 英之; 片寄 直人*; 岩沢 信夫*
デコミッショニング技報 (34), p.40-44(2006) ; (JAEA-J 01385)
 ウラン廃棄物の特徴及び日本原燃株式会社,ウラン燃料加工メーカー((株)グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン,三菱原子燃料(株),原子燃料工業(株),(株)ジェー・シー・オー),日本原子力研究開発機構のウラン取扱施設から発生するクリアランス対象物について紹介する。また、IAEA安全指針RS-G-1.7「規制除外,規制免除及びクリアランスの概念の適用」におけるウランのクリアランスレベルに適用できる放射能濃度値設定の考え方及び我が国におけるその適用性について述べる。

34001227
レーザー溶接法を用いたITERブランケット補修のための照射材接合試験
山田 弘一*; 土谷 邦彦
FAPIG (173), p.16-20(2006) ; (JAEA-J 01386)
 国際熱核融合実験炉(ITER: International Thermonuclear Experimental Reactor)の中で、炉内機器の一つである遮蔽ブランケットを補修・交換する際、ブランケット背面から伸びる冷却配管は溶接により既設の冷却配管と接続する必要がある。しかしながら、本体側冷却配管であるステンレス鋼は中性子により照射されているため、照射済ステンレス鋼と未照射ステンレス鋼を接合することになる。本稿では、レーザー溶接法を用いた照射済ステンレス鋼の接合に関する試験結果についてまとめた。本試験により、ITERの照射条件まで中性子照射したSUS316LN-IG材のレーザー溶接法による接合が可能であり、材料中に核変換で生成したヘリウムが約3appmであっても有意な接合試料の特性低下を引き起こさないことがわかった。

34001228
セメント平衡水中におけるスラグの溶解挙動
前田 敏克; 馬場 恒孝*; 水野 大*; 寺門 正吾; 喜多川 勇; 沼田 正美
廃棄物学会論文誌 17(4), p.271-281(2006) ; (JAEA-J 01391)
 シリコン,カルシウム及びアルミニウムを主成分とするスラグ試料を用いて、セメント平衡水中における静的浸出試験を90℃で行い、スラグの溶解挙動を調べた。セメント平衡水中では溶液のアルカリ性のため、脱イオン水中に比べてスラグの溶解量が増大することがわかった。また、スラグ表面には溶解に伴いケイ酸カルシウム水和物(C-S-H)を成分とする二次相の生成が認められ、C-S-Hが生成する期間中は同じpHのアルカリ溶液中に比べてスラグの溶解が抑制される効果がみられた。

34001229
原子力あるいは放射線緊急事態における各国の短期防護措置の現状
木村 仁宣; 本間 俊充
保健物理 41(2), p.76-87(2006) ; (JAEA-J 01392)
 緊急事態における計画,準備及び管理は、各国の原子力発電計画の重要な要素である。特に、放射性物質の放出前あるいは直後の緊急防護対策の詳細な実施手順を含め、原子力の緊急時計画と準備は、国の緊急時計画実施の重要な一部を成す。経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)では、こうした各国の緊急時計画と準備のアプローチを理解し、行動手順を比較する目的で、NEA加盟国に短期防護措置に関するアンケート調査を実施し、2003年に「原子力あるいは放射線緊急事態における短期防護措置」と題する報告書を発行した。本解説では、この報告書を中心に、筆者らの調査を加えて、各国における短期防護措置(おもに避難,屋内退避,安定ヨウ素剤予防服用)にかかわる実施基準等の現状について紹介する。

34001230
外部被ばく換算係数
山口 恭弘
放射線科学 49(9), p.311-319(2006) ; (JAEA-J 01394)
 ICRP Publication 74に収録されている光子,電子,中性子の外部被ばく線量評価のための線量換算係数及びこれを理解するための背景や基礎知識に関して解説する。

34001231
放射線を用いて開発した材料で温泉から有用金属を回収する方法
瀬古 典明
放射線と産業 (111), p.52-55(2006) ; (JAEA-J 01395)
 温泉水中にはスカンジウムやバナジウムといった希少な金属が溶存している。本稿では、これらの金属を放射線グラフト重合により作製した吸着材を用いて吸着評価したものである。草津町の源泉で23時間の浸漬を行ったところ、鉱石中のスカンジウム濃度に対して15倍の吸着材1キログラムあたり1.5gのスカンジウムの回収に成功した。

34001232
大強度陽子加速器施設(J-PARC)の建設; 世界最高強度の陽子ビームを利用する
大山 幸夫
検査技術 11(9), p.1-7(2006) ; (JAEA-J 01396)
 日本原子力研究開発機構と高エネルギー加速器研究機構とが共同で建設を進める大強度陽子加速器施設(J-PARC)の概要と現状について解説をする。

34001233
衝突噴流熱伝達特性の実験的解明とJSNS用モデレータ設計への応用
麻生 智一; 門出 政則*; 佐藤 博; 日野 竜太郎; 達本 衡輝; 加藤 崇
日本原子力学会和文論文誌 5(3), p.179-189(2006) ; (JAEA-J 01398)
 J-PARCのMW級核破砕中性子源(JSNS)では、水素(液体又は超臨界)をモデレータ材料として用いる。水素モデレータは過酷な中性子場による核発熱条件下にあり、モデレータ容器の効率的な冷却が要求される。そこで、衝突噴流による冷却特性に着目し、水素の温度上昇を抑えて水素密度が大きく変化しないように容器構造と流動条件を検討することとした。容器壁のある閉空間における衝突噴流による熱伝達特性を評価するために、2次元定常熱伝導の逆問題解を用いた熱伝達率を求める手法を導入し、JSNSモデレータの円筒型容器を模擬した試験体による実験結果から、熱伝達率分布は、壁のない水平平板に対する分布と異なり、容器壁の影響によって噴流Re数の増加に伴い容器壁周辺の熱伝達率が増加し、モデレータ容器底面r=0〜70mmの範囲における平均ヌセルト数Nuavは、ノズル高さH/d<0.4の場合、管内強制対流熱伝達のDittus-Boelterの式の2.5倍以上となることを明らかにした。そして、中性子性能や液体水素の強制循環に影響を及ぼさないような実機運転条件を評価した。

34001234
潜熱蓄熱を利用した流体温度変動低減化
椎名 保顕
日本原子力学会和文論文誌 5(3), p.190-199(2006) ; (JAEA-J 01399)
 固液相変化潜熱を用いて伝熱流体の温度変動を低減化する場合の温度変動低減特性の把握を目的として、温度が変動する伝熱流体が流れる円管外側に蓄熱体を配した実験を行った。実験では、潜熱蓄熱体としてオクタデカン,気孔率が約0.96の発泡ニッケル及び発泡銅にオクタデカンを含浸させた複合蓄熱体を用い、実験,数値解析及び近似解析を比較することにより温度変動低減の評価を行った。その結果以下の結論を得た。(1)PCMに発泡ニッケル及び発泡銅を含浸させた複合蓄熱体を用いると、実効熱伝導率を2倍から10倍高くすることができ、それにより、PCMのみの場合よりも伝熱流体の温度変動を大きく低減させることができることを示した。温度変動率の低減効果はレイノルズ数が高くなると大きくなる。(2)使用した発泡金属のうち、温度変動低減効果は、発泡銅が最も高く、気孔径の小さいニッケル(NiF),気孔径の大きいニッケル(NiC)の順であった。また、発泡銅と発泡ニッケル(NiF)の温度変動低減効果は大きく違わなかった。(3)相変化を考慮した熱伝導による数値解析は、PCMのみの場合にはPCM内の自然対流により融解時に不一致が観察されたが、複合蓄熱体に対しては比較的よく実験結果と一致した。これは、多孔体金属により液相PCM中の自然対流が大きく抑制されるためであると考えられる。(4)実験,数値解析及び近似解析の比較により、温度変動低減率は近似解析結果でよく近似できることが示された。(5)伝熱管本数等を考慮すると、潜熱蓄熱による温度変動を低減するには乱流域で使用する方が効果的である。

34001235
緊急時対応のための長距離大気拡散計算による放出源推定手法の開発
佐伯 朗子; 茅野 政道; 山澤 弘実*
日本原子力学会和文論文誌 5(3), p.229-240(2006) ; (JAEA-J 01400)
 原子力緊急時における放出源推定手法の開発を行った。対象とする情報は、放出点・放出開始時刻・放出継続時間・放出量の4つである。この手法では、可能な放出源情報の多数の組合せを初期条件とした多数の大気拡散計算を実行し、それぞれの計算結果をモニタリングサイトで取得された放射性物質の大気中濃度あるいは空気吸収線量率のデータと比較し、最も誤差の少ないケースを選択する手法を採択している。また本手法の正当性を検証するため、欧州拡散実験ETEXのデータを原子力緊急時のモニタリングデータと見なした推定計算も行った。

34001236
HTTR環状炉心の炉心解析モデルの検討
野尻 直喜; 半田 雄一*; 島川 聡司; 後藤 実; 金子 義彦*
日本原子力学会和文論文誌 5(3), p.241-250(2006) ; (JAEA-J 01401)
 HTTRの環状炉心実験から過剰反応度の実験値と解析値のずれは最大で3%Dk/kに達することが明らかになった。このずれを改良するためにHTTR環状炉心のパラメータ解析を行った。炉心解析にはSRACコードシステムを用いた。解析の結果として、環状炉心の過剰反応度に以下のものが影響を与えることが明らかになった。(1)炉心拡散計算のメッシュ間隔,(2)燃料格子計算の黒鉛領域のメッシュ構造,(3)ブノアの非等方拡散係数。以前報告された有意に大きいずれは、改良した環状炉心モデルにより約1%Dk/kに減少した。

34001237
離散系のシミュレーション手法,1
山本 敏久*; 森 貴正
日本原子力学会誌 48(8), p.579-585(2006) ; (JAEA-J 01402)
 日本原子力学会計算科学技術部会企画の連載講座「計算科学手法と原子力分野における応用」第5回離散系のシミュレーション(その1)として、モンテカルロ法に基づく中性子輸送計算シミュレーション手法の概要と、最近の話題を取りまとめた。

34001238
J-PARCの緑化計画; 保全と再生への取り組み
山西 毅; 瀬下 和芳; 北見 俊幸; 丹 左京*
日本緑化工学会誌 32(1), p.191-194(2006) ; (JAEA-J 01403)
 大強度陽子加速器施設(J-PARC)の建設では、3.3haに及ぶ松林の伐採が行われている。当地は、保安林と自然環境保全地域に指定されており、その復旧にあたっては、環境保全に十分配慮することが求められているため、貴重植物の保護や森林植栽等、さまざまな試みを行っている。試験植栽については、第35回大会において口頭発表を行ったが、その後の追跡調査結果、伐採から復旧までの経緯と環境保全,再生への取り組みについて報告をする。

34001239
圧縮ベントナイト中の表面拡散現象に関する均質化解析
藤井 直樹; 市川 康明*
応用力学論文集 9, p.323-332(2006) ; (JAEA-J 01404)
 ベントナイト中の拡散による物質移行において、均質化法を適用しスメクタイトのミクロレベルの構造と化学特性からマクロの拡散挙動を評価する研究が実施されている。しかしながら陽イオンを対象とした場合、計算した拡散係数が実験から得られた実効拡散係数より小さくこの差が表面拡散の影響であると考えられている。そこで、陽イオンの粘土表面への濃集による表面拡散現象を均質化法によって定式化し数値解析を実施した。この結果から、分配比の増加に伴って全体の拡散が大きくなることが示され、局所的な濃度勾配の増加によるフラックスの増加が表面拡散の大きな要因となることが確かめられた。

34001240
核不拡散のための極微量核種分析
篠原 伸夫
Radioisotopes 55(9), p.557-565(2006) ; (JAEA-J 01406)
 本論文では、まず原子力機構における包括的核実験禁止条約(CTBT)検証制度に関連する核不拡散技術開発研究の状況について報告する。その主題は、(1)CTBT検証制度の概要,(2)沖縄放射性核種監視観測所(RN37),高崎放射性核種監視観測所(RN38)並びに東海実験施設(RL11)の整備及び運用,(3)放射性核種データのための国内データセンター(NDC)の整備である。次に、高度環境分析研究棟(Clean Laboratory for Environmental Analysis and Research,CLEAR)における(4)保障措置にかかわる環境試料分析の技術開発の状況とともに、極微量の核物質を対象とするスワイプ試料の(5)バルク分析,(6)パーティクル分析,(7)ホットセル試料分析にかかわる技術を紹介する。このようなCTBT超高感度放射能測定技術開発や核物質の極微量分析は、核不拡散のための国際貢献として意義がある。

34001241
電子線(EB)によるVOC処理事例
小嶋 拓治; 木下 忍*
塗装技術 45(9), p.87-92(2006) ; (JAEA-J 01407)
 塗装工程における種々の臭気対策技術の現状と課題に関するレビューの中で、電子ビーム(EB)を利用したVOC処理について、EBの基礎とEB装置,EBの特長と物質への作用,EBによるガス処理の基礎,EBによるVOC処理の事例、及びEB加工吸着剤による脱臭技術について概説する。

34001242
曲面上の遮熱コーティングの残留応力と変形特性
鈴木 賢治*; 川村 昌志*; 菖蒲 敬久; 田中 啓介*; 秋庭 義明*
材料 55(7), p.634-640(2006) ; (JAEA-J 01408)
 プラズマ溶射された遮熱コーティング(TBC)の残留応力及び機械的挙動は、高温機器の性能にかかわる重要な問題である。本研究では、曲面上にプラズマ溶射されたTBCを高温酸化処理しその際に発生するき裂形態を検討した。その結果、局率半径が小さくなるに従い測定された半径応力は大きくなることを見いだした。また半径応力の最大値とはく離き裂密度との比較から、はく離き裂の発生は局率半径の減少により促進される結果を得た。

34001243
2D-C/C複合材料構造物の強度予測法の提案
塙 悟史; 石原 正博; 柴田 大受; 沢 和弘; 本橋 嘉信*
材料 55(9), p.868-873(2006) ; (JAEA-J 01409)
 本報では、汎用的な2次元C/C複合材構造物の強度予測法を提案した。提案手法は、競合リスクモデルに基づく脆性破壊モデルを有限要素法応力解析へ拡張したものであり、基本的な破壊様式として繊維方向及び繊維垂直方向への引張及び圧縮破壊,せん断破壊の5つの破壊様式を考慮した。提案手法の適用性を評価するために、応力集中を有する構造要素の破壊試験を行い、得られた結果を提案手法による予測結果と比較した。その結果、提案手法は若干高めの予測強度を与えるものの良い予測結果を示した。また、従来の複合材料の破壊則との比較の結果、提案手法は従来の複合材料の破壊則よりも正確な強度予測が可能であった。本検討の結果、提案手法により任意形状の2次元C/C複合材構造物に対して理論的な強度予測が可能であることが示された。

34001244
Synchrotron radiation study on structure of atmospheric corrosion products formed on steel surfaces
小西 啓之; 山下 正人*; 水木 純一郎; 内田 仁*
Characterization of Corrosion Products on Steel Surfaces , p.199-222(2006) ; (JAEA-J 01411)
 大気腐食によって低合金鋼表面に生成する腐食物(さび)層には、鋼表面を保護し耐食性を高める働きのあることがわかっている。このような保護性さび層の機能や生成機構の詳細については未だに解明されていない点が多い。本稿ではCr及びNiを主要添加合金元素とする鋼材を用いた長期大気暴露試験によって得られたさび試料について、われわれが行った放射光XAFS実験の詳細を解説し、さび層保護機能に関して得られた知見を紹介する。また放射光白色X線を用いた回折実験によってFe-Cr, Fe-Ni合金表面の液膜腐食過程のその場観察についても詳述し、液膜中に共存するイオン種と腐食生成物との相関を示す。

34001245
Virtual design laboratory for fast reactor system using a combined processing of knowledge and numerical technologies
村松 壽晴
Proceedings of 11th AIAA/ISSMO Multidisciplinary Analysis and Optimization Conference (CD-ROM) , 11p.(2006) ; (JAEA-J 01413)
 ナトリウム冷却高速増殖炉の多目的最適化設計作業に資するため、知識処理融合型仮想設計システムの開発を進めている。このシステムの妥当性と適用性を確認するため、二重ディッププレート部ラビリンスギャップ6種類を設計変数とし、2水準系直交表に基づいた数値解析と4応答変数に対する応答曲面近似を行い、カバーガス巻き込み抑制を目的関数とした多目的最適設計解を評価した。さらに、この多目的最適設計解条件での数値シミュレーションを行い、その結果の妥当性から、多目的最適化設計手法の実用化に向けての技術的見通しを得た。

34001246
Application of near wall model to large eddy simulation based on boundary layer approximation
高田 孝*; 山口 彰*; 田中 正暁; 大島 宏之
Proceedings of 14th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-14) (CD-ROM) , 8p.(2006) ; (JAEA-J 01414)
 温度揺らぎなど熱荷重による構造材破損評価には、壁近傍の温度変動挙動の予測が重要である。この予測にラージエディーシミュレーション(LES)の適用が有効であるが、壁近傍には非常に多くのメッシュを配置しなければならず、多くの計算資源を要求するというデメリットがある。この弱点を解消するため、境界層近似に基づく二層モデルをエネルギー式まで拡張し、計算効率の向上を図った。適用解析により、大規模体系において計算時間の短縮に大きな効果があることを確認した。

34001247
Spectra thermal fatigue tests under frequency controlled fluid temperature variation; Transient temperature measurement tests
川ア 信史; 小林 澄男; 長谷部 慎一; 笠原 直人
Proceedings of 2006 ASME Pressure Vessels and Piping Division Conference (PVP 2006)/International Council on Pressure Vessel Technology (ICPVT-11) (CD-ROM) , 8p.(2006) ; (JAEA-J 01416)
 これまで、サーマルストライピング現象による破損を防止するために、サーマルストライピング評価法が検討されてきた。周波数応答関数を用いることで、流体温度履歴から構造物の温度と応力の応答を計算することができるため、周波数応答関数を用いた手法は、優れた評価手法であると考えられている。流体から構造物への温度応答を計測し、応答の周波数特性を確認するために、温度計測試験が実施された。温度計測試験においては、0.05, 0.2, 0.5Hzという3種類の異なる周期の正弦波状の流体温度履歴が周波数制御流体温度変動熱疲労試験装置(SPECTRA)を用いて与えられ、構造物内表面及び外表面の温度応答が試験体軸方向に沿って計測された。その結果、流体から構造物への温度伝達(減衰)プロセスにおける周波数効果が試験により計測・確認されるとともに、周波数応答関数評価法において採用されている有効熱伝達関数(周波数応答関数)の妥当性が示された。

34001248
Electric discharge suppression by outgassing reduction from kicker magnet of J-PARC RCS
神谷 潤一郎; 金正 倫計; 荻原 徳男
Proceedings of 22nd International Symposium on Discharges and Electrical Insulation in Vacuum (ISDEIV 2006), Vol.2 , p.821-824(2006) ; (JAEA-J 01417)
 J-PARC/RCSにおける3GeVビーム取り出し用キッカー電磁石は数10kVもの大電圧がかかるパルス電磁石である。そのため磁石全体は真空中に設置される。その際にいかにして放電を防ぐかが、安定して長期的に電磁石を運転するうえで重要となる。本論文では、放電を防ぐために施されたキッカー電磁石構造の改善、及び部材段階からの徹底したアウトガス低減による放電抑制の結果について報告する。

34001249
Development and application of hybrid fast-coarse-grained-particle/molecular-dynamics simulation method
五十嵐 誉廣; 尾形 修司*; 塚田 隆
Proceedings of 3rd International Conference on Multiscale Materials Modeling , p.179-182(2006) ; (JAEA-J 01418)
 材料の破壊・損傷などの諸現象は、さまざまなサイズにおける材料の化学的・機械的特性の変化や、環境の効果などが複雑に影響を及ぼし合う現象であるため、各種の実験解析から得られた結果を総合的に考慮する必要がある。しかし、実験解析で取り扱えるサイズには限界があること、そして実験では短い時間スケールの動的振る舞いを追うことが難しいことから、破壊・損傷現象の素過程を追うための解析手法として計算機解析が注目されている。計算機を用いた連続体−原子マルチスケール手法は、計算精度を保ちつつ解析時間の削減が可能であるため、ナノ〜サブミクロンサイズの材料に関する諸物理現象の素過程を解析するための適切な手法の一つである。本研究では、新しいマルチスケール手法である、高速粗視化粒子−分子動力学ハイブリッドシミュレーション法の開発を行い、開発したハイブリッドシミュレーション法を用いてα-Fe系のシミュレーション解析を行った。原子ポテンシャルはFeとCuを扱うことができるAcklandポテンシャルを採用した。特に粒界を含むFe系に対し応力が作用したときのFe原子の振る舞いについて、原子論的な視点から議論を行う。

34001250
Effect of high burn-up and MOX fuel on reprocessing, vitrification and disposal of PWR and BWR spent fuels based on accurate burn-up calculation
吉川 崇倫*; 岩崎 智彦*; 和田 康太郎*; 須山 賢也
Proceedings of American Nuclear Society Topical Meeting on Physics of Reactors (PHYSOR 2006) (CD-ROM) , 8p.(2006) ; (JAEA-J 01422)
 再処理,ガラス固化、そして地層処分の手順を調べるために、PWR及びBWRの高燃焼度及びMOX燃料の正確な燃焼計算がSWAT及びSWAT2コードによって行われた。SWAT及びSWAT2は、燃焼計算コードORIGEN2とSRAC(衝突確率法に基づく)又はMVP(連続エネルギモンテカルロコード)を組合せた統合化燃焼計算コードシステムである。高燃焼度化とMOX燃料の導入によって発熱量とMo及びPt濃度が増大し、ガラス固化及び地層処分の現在の手順にも影響を与えることがわかった。SWAT2による計算は、BWR燃料において、特にそのMOX燃料におけるこれらの効果を議論するためには、集合体計算が必要であることを示している。

34001251
Creation of benchmark data on JOYO and DCA reactor physics experiments
羽様 平; 庄野 彰*; 横山 賢治
Proceedings of American Nuclear Society Topical Meeting on Physics of Reactors (PHYSOR 2006) (CD-ROM) , 10p.(2006) ; (JAEA-J 01423)
 「常陽」MK-I,重水臨界実験装置(DCA)で実施された炉物理実験を詳細評価し、ベンチマークデータとしてOECD/NEAの国際炉物理ベンチマーク実験(IRPhE: International Reactor Physics Benchmark Experiments)プロジェクトに登録した。ノミナル値の再評価だけでなく、幾何形状や組成など考え得る要因をすべて考慮した詳細な誤差評価を実施した。「常陽」MK-Iデータの評価では、臨界性,制御棒価値,ボイド反応度,燃料置換反応度,等温温度係数について再評価した。特に、反応度評価の鍵となる制御棒反応度価値については、干渉を効果を含めて詳細に解析した。世界的にも数少ない実機でのデータであり、高速炉設計の基盤データとして有用である。DCAデータの評価では、1.2%U燃料炉心で測定された臨界性,238U熱外中性子捕獲反応率比,集合体内の熱中性子反応率比を評価した。データは集合体ピッチ2種類,冷却材ボイド反応率4種類の組合せでできる8体系について系統的に整理されており、核データの検証に有用である。

34001252
MONJU experimental data analysis and its feasibility evaluation to build up the standard data base for large FBR Nuclear core design
杉野 和輝; 岩井 武彦*
Proceedings of American Nuclear Society Topical Meeting on Physics of Reactors (PHYSOR 2006) (CD-ROM) , 10p.(2006) ; (JAEA-J 01424)
 国内の高速炉用詳細解析手法を用いて「もんじゅ」炉物理性能試験解析を行った。また、炉定数調整法を用いて「もんじゅ」積分実験情報のFBR用核設計基本データベースへの適用性評価を行った。検討の結果、「もんじゅ」積分実験情報はFBR用核設計基本データベースの拡充の観点から非常に有用であることがわかった。また、拡充したデータベースを用いることにより「もんじゅ」の核特性評価精度が大幅に改善される可能性のあることがわかった。

34001253
International comparison of a depletion calculation benchmark devoted to fuel cycle issues results from the phase 1 dedicated to PWR-UOx fuels
Roque, B.*; Gregg, R.*; Kilger, R.*; Laugier, F.*; Marimbeau, P.*; Ranta-Aho, A.*; Riffard, C.*; 須山 賢也; Thro, J. F.*; Yudkevich, M.*; Hesketh, K.*; Sartori, E.*
Proceedings of American Nuclear Society Topical Meeting on Physics of Reactors (PHYSOR 2006) (CD-ROM) , 10p.(2006) ; (JAEA-J 01425)
 UOx燃料の核燃料サイクルのための燃焼計算国際相互比較第1フェーズの結果を、本論文で述べる。このベンチマーク問題は、経済協力開発機構・原子力機関(OECD/NEA)の原子炉システムにおける科学的問題についてのワーキングパーティー(WPRS)で決められた。本ベンチマークの目的は、核燃料サイクルにとって重要な同位体とその物理量についての研究を行うことである。参加者間で、多数の同位体の組成計算結果は良い一致をみせた。しかし、燃料中の不純物から生成される放射化物の計算結果の一致は悪かった。また、中性子放出率については若干の不一致がみられたが、これは中性子放出に関係する同位体量の計算結果の差に起因する。全崩壊熱計算結果については良い一致が示された。

34001254
Status of the JENDL general-purpose file
柴田 恵一; 中川 庸雄; 岩本 修; 市原 晃; 岩本 信之; 国枝 賢; 深堀 智生; 大塚 直彦; 片倉 純一
Proceedings of American Nuclear Society Topical Meeting on Physics of Reactors (PHYSOR 2006) (CD-ROM) , 10p.(2006) ; (JAEA-J 01426)
 旧日本原子力研究所シグマ研究委員会の協力のもとに、JENDL汎用ファイルの第1版を公開してから約30年が経過した。ユーザーからの要望に応えるべく、ライブラリーの更新を行ってきた。最新版JENDL-3.3はいろいろな分野で使われており、その信頼度の高さには定評がある。われわれは現在、原子力機構の中期計画として新ライブラリーであるJENDL-4の作成を行っている。そのために、核反応モデルコードの開発を行った。また、低エネルギー断面積を決定する分離共鳴パラメータを再検討し、最新の測定値を用いてパラメータを更新した。FP領域では、高エネルギーの断面積評価のためにチャネル結合光学模型パラメータの導出を行った。一方、MAでは核分裂及び中性子捕獲断面積を評価した。共分散(誤差)に関しては、MA核種を中心に評価を実施している。

34001255
16.447 Tflops and 159-billion-dimensional exact-diagonalization for trapped fermion-hubbard model on the earth simulator
山田 進; 今村 俊幸*; 町田 昌彦
Proceedings of International Conference for High Performance Computing, Networking and Storage (SC '05) (CD-ROM) , 10p.(2005) ; (JAEA-J 01427)
 発表者らは、閉じ込められた多数のフェルミオン粒子が示す新しいタイプの超流動状態(粒子が電子なら超伝導状態に相当する)を探索するため、地球シミュレータを用いて超大規模並列数値シミュレーションを行った。扱った数学モデルは、閉じ込めポテンシャル下のハバードモデルと呼ばれ、最近、多くの物理学者の興味を惹いている。発表者らは、このモデルを行列で表現し、それを対角化することで量子基底状態を求めた。この際、現れる行列は最大で千数百億次元を超えるため、地球シミュレータ上で全ノードを使う必要があるほか、できるだけパフォーマンスを上げるため通信を隠蔽し、かつ、演算密度を上げる工夫をした。本会議では、おもにこのパフォーマンスを上げるための工夫とその努力について発表する。

34001256
Application of thin film in potentially hazardous environment
北村 哲浩
Proceedings of International Conference on Application of Fluid Mechanics in Industry and Environment , p.50-54(2006) ; (JAEA-J 01428)
 潜在的に危険が存在する環境では、薄膜を応用することが望ましい局面がある。ここで潜在的に危険がある環境には、化学物質取扱施設,核物質取扱施設,解体現場など、細かい粒子,液体,ガスが作業環境に容易に拡散する恐れのある場所が含まれる。潜在的に危険を孕む物質を取り扱う場合や、潜在的に危険が存在する環境下で作業を行う場合、危険物質を含む細かい粒子,液体やガスを体内に吸引する恐れや包蔵環境外へ漏洩する恐れがある。本講演では、このような環境下で何故薄膜を使うことが望ましいかの事例を紹介するとともに、作業安全と効率を向上させる薄膜の応用事例を示す。

34001257
Development of low alkaline cement considering pozzolanic reaction for support system in HLW repository construction
中山 雅; 入矢 桂史郎*; 藤島 敦; 三原 守弘; 畑中 耕一郎; 栗原 雄二*; 油井 三和
Proceedings of Materials Research Society Symposium, Vol.932 , p.159-166(2006) ; (JAEA-J 01429)
 数千年以上の半減期の核種を含む放射性廃棄物を処分するにあたって、セメント系材料を使用することが検討されている。しかし、普通セメントを用いた場合には、処分施設周辺環境が高アルカリ性となり、バリア材料として用いられるベントナイトや周辺の岩盤が超長期的に変質する可能性がある。この変質を低減させるために、ポゾラン材料を普通セメントに多量に混合することにより、普通セメントに比べ、浸出水のpHが低いセメントを開発した。本研究では,その浸出水のpHが11程度であること、締め固め不要コンクリートや吹付けコンクリートとして構造物への適用が可能であることを示した。

34001258
An Experimental investigation of the effects of americium addtion to (U,Pu)O2-x on phase relation
逢坂 正彦; 三輪 周平; 吉持 宏; 田中 健哉; 黒崎 健*; 山中 伸介*
Recent Advances in Actinide Science , p.406-408(2006) ; (JAEA-J 01431)
 (U,Pu,Am)O2-xの相状態をXRD、金相観察及びDTAにより実験的に評価した。解析の結果、Amは3価の状態で存在し、電気的中性を補償するためにUが5価になることが示唆された。

34001259
Vaporization behaviour of Pu-Cd intermetallic compounds
中島 邦久; 中園 祥央; 荒井 康夫
Recent Advances in Actinide Science , p.448-450(2006) ; (JAEA-J 01432)
 使用済燃料の乾式再処理工程には、Puを回収するためのCd蒸留プロセスがある。この蒸留プロセスのふるまいを理解するために、PuCd2+PuCd4及びPuCd4+PuCd6サンプルを調製しクヌーセンセルとを組合せた質量分析計を用いてこれら金属間化合物上のCd(g)の蒸気圧測定を行った。また、得られた平衡蒸気圧からPuCd2及びPuCd4の熱力学的諸量を評価した。

34001260
QMSを用いた呼気ガス及び皮膚排泄ガス分析技術の開発
平塚 一; 阿部 哲也; 根本 正博; 長谷川 浩一; 新井 貴; 秦野 歳久
平成18年度機器・分析技術研究会報告 , p.163-166(2006) ; (JAEA-J 01435)
 QMS(四重極質量分析計)によるガス分析技術をヒトが吐き出す呼気分析に応用し、ヒトの健康状態を知る技術の開発を進めている。ヒトの皮膚から排泄されるガスを特殊なガス捕集袋に採取し、ガス組成を測定する方法を新たに考案した。これまでに、呼気ガス及び皮膚排泄ガスの二酸化炭素,酸素及びアルコール成分等の含有割合の計測に成功しており、本技術によって、ヒトの健康状態をその場で把握できるものと期待される。

34001261
環境分離型天秤の開発
長谷川 浩一; 阿部 哲也; 根本 正博; 平塚 一; 新井 貴; 秦野 歳久
平成18年度機器・分析技術研究会報告 , p.169-172(2006) ; (JAEA-J 01436)
 産学連携推進部では、化学変化や吸着作用などによる材料のごく微量な重量変化を試験容器内で連続的に測定しながら、試験容器内の雰囲気と周囲の環境との間に気密性を保つことができる環境分離型天秤を開発した。試料が腐食進行する特殊・有害環境下での重量変化の測定では、測定試料の雰囲気と天秤の置かれた外部環境とを分離して量ることが有効であるが、従来、分離のための気密性を保持しつつ、重量を測定することが技術的に困難であった。環境分離型天秤では、永久磁石を挿入した特殊フランジの中心貫通孔に試料吊下げワイヤーを通してできた隙間に磁性流体を注入することにより、磁力で磁性流体を中心部に保持させてワイヤーの可動性と気密性を兼ね備える分離壁を作ることに成功した。この分離壁の生成により、周囲の環境に左右されず、天秤本体部にも影響を及ぼすことのない状況を確保でき、腐食進行などの化学変化や材料の吸着作用による試料の質量変化の測定が可能となった。

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