学会誌等掲載論文
※下記の研究開発成果は資料名順に並んでいます。

2006年12月


34001281
Improvement of moment-based probability table for resonance self-shielding calculation
千葉 豪; 宇根崎 博信*
Annals of Nuclear Energy 33(13), p.1141-1146(2006) ; (JAEA-J 01450)
 サブグループ法による共鳴自己遮蔽効果の計算に用いられる確率テーブルを作成するための方法を改良した。この方法は数値計算より見いだされた、実効断面積と断面積モーメントとの関係より導出された。この方法を用いることで、通常手法よりも少ない点数でより精度の高い確率テーブルを作成することができる。

34001282
Principle of universality of γ-process nucleosynthesis in core-collapse supernova explosions
早川 岳人; 岩本 信之; 梶野 敏貴*; 静間 俊行; 梅田 秀之*; 野本 憲一*
Astrophysical Journal 648(1, Part2), p.L47-L50(2006) ; (JAEA-J 01451)
 コア爆縮型超新星爆発モデルを用いて、γ過程の普遍性の原理を追及した。γ過程の普遍性とは個々の独立した超新星爆発において、光核反応で生成されるp核と呼ばれる同位体と、元の原子核であるs核と呼ばれる同位体の量の比が元素に関係なく一定であるという現象である。このγ過程の普遍性は、次の3つのメカニズムによって発現することが判明した。まず、超新星爆発以前に発生するs過程によって元の原子核の質量分布が変化することである。次に、光核反応で生成されるp核と元のs核の比が原子核反応に依存しないという事実である。最後が、p核が生成されるγ過程の発生する領域が移動することである。われわれの計算は、これまで知られていた普遍性を拡張した。p核とs核の比が一定であるばかりでなく、s/pの値が特別な値である3になるという普遍性である。この拡張された普遍性を検証するために、インジウムの同位体分離を伴った天体観測を提唱する。

34001283
Chemical reaction at specific sites and reaction-induced self-assembly as observed by in situ and real time SANS; Enzymatic polymerization to synthetic cellulose
橋本 竹治; 田中 宏和; 小泉 智; 黒崎 一裕*; 大前 仁*; 小林 四郎*
Biomacromolecules 7(9), p.2479-2482(2006) ; (JAEA-J 01452)
 酵素重合法により人工合成されるセルロース分子の自己秩序化過程を、世界で初めて中性子散乱法によりその場,実時間解析をし、セルロースの重合反応に誘起されて起こるセルロース分子集合構造の形成過程・機構を解明することに成功した。その概要は次の通りである。酵素触媒という特異な場(モノマー分子の認識,活性化,重合を司る3nm×0.55nm2の狭い空間)で次々と合成されるセルロース分子(300分子/毎分/1酵素)は、反応溶液中を拡散し互いに衝突すると水素結合により会合体を形成する。会合体は合成されたセルロース分子の拡散に律速された成長をし、反応の進行に伴いより大きな分子集合体が形成される。合成されたセルロース分子は、このような自己秩序化過程・機構に従い、20nmから20mmにわたる長さの尺度で、酵素触媒のまわりに表面フラクタル構造(フラクタル次元2.3)を発現することを明らかにした。

34001284
Regioselectivity control of radiation-induced reaction; Electron beam-induced Fries rearrangement of sulfonamide within β-cyclodextrin inclusion complex
加藤 順*; 掛端 博之*; 前川 康成; 山下 俊*
Chemical Communications (43), p.4498-4500(2006) ; (JAEA-J 01453)
 量子ビームを利用した有機機能性材料創製の一環として、β-シクロデキストリンで包摂されたスルホンアミド誘導体結晶の電子線フリース転位反応について検討した。非包摂体であるスルホンアミド誘導体結晶の電子線反応と比較したところ、包摂により、反応速度が著しく向上することに加え、生成物のレジオ選択性が、包摂化により逆転することがわかった。このように電子線反応とナノスペースを持ったβ-シクロデキストリンによる包摂結晶化を組合せることで、溶媒フリーという環境にやさしく、しかも、反応性の向上と反応選択性の制御が実現できることを明らかとした。

34001285
Radiation loss in a compound plasma system with high and low temperature regions
Cheng, F.-Y.*; 滝塚 知典; 林 伸彦; Shi, B.-R.*
Chinese Physics 13(11), p.1902-1906(2004) ; (JAEA-J 01454)
 複合系プラズマにおける不純物の非平衡放射損失計算コードを開発した。複合系プラズマは、高温プラズマ領域と低温プラズマ領域で構成される。不純物種として炭素を考えた場合の放射損失量を計算し評価した。2つの領域間の粒子交換によって、複合系における放射損失率は単一系の放射損失率よりも低くなる。放射損失量は、低温領域の方が高温領域よりもはるかに大きくなる。これは、低温領域が体積としては小さいが、比較的低温で高密度であるためである。

34001286
Design optimization of a HTS current lead with large current capacity for fusion application
礒野 高明; 濱田 一弥; 奥野 清
Cryogenics 46(9), p.683-687(2006) ; (JAEA-J 01455)
 電流リードに高温超伝導(HTS)を適用することで、冷凍機の消費電力を軽減することが期待されている。筆者らは、核融合用に60kAのHTS電流リードを開発し、その特性及び消費電力が軽減できることを確認した。そのHTSの動作温度は40Kであったが、近年のHTSの性能向上とコスト低下により、より高い温度での動作が可能となってきた。本論文では、60kA HTS電流リードの開発成果をもとにして、最適な動作温度を求めるための設計検討を行った。HTSは銀合金シース型Bi-2223テープ線材を使用し、磁場による特性劣化を軽減するために円筒状に配置している。HTS動作温度の最適値は運転期間に依存するが、5年の運転期間として75Kが最適であり、このとき従来と比較して1/5まで消費電力を軽減する可能性があることを明らかにした。

34001287
Interferonβ-induced changes in metallothionein expression and subcellular distribution of zinc in HepG2 cells
長嶺 竹明*; 草壁 孝彦*; 高田 久嗣*; 中里 享美*; 酒井 卓郎; 及川 将一*; 佐藤 隆博; 荒川 和夫
Cytokine 34(5-6), p.312-319(2006) ; (JAEA-J 01456)
 インターフェロンは抗ウイルス,抗腫瘍,免疫調節など多岐にわたる生理活性を有するが、その機序は未だ明らかになっていない。そこで、マイクロPIXEを利用して、インターフェロンの生理活性について亜鉛代謝の面から検討を行った。その結果、インターフェロンはS期の細胞核内へ亜鉛の移送を促進させることが確認された。このことから、細胞内でメタロチオネインと結合した亜鉛は、S期の核内へ移行し、遺伝子発現と関連していることを明らかにした。

34001288
Development of CAD/MCNP interface program prototype for fusion reactor nuclear analysis
佐藤 聡; 飯田 浩正; 西谷 健夫
Fusion Engineering and Design 81(23-24), p.2767-2772(2006) ; (JAEA-J 01457)
 核融合炉核設計計算を高精度でかつ簡便に実施できるよう、CADデータからモンテカルロコードへの自動変換プログラムの開発に着手した。CADデータには、物体領域データのみが存在する。一方モンテカルロ核計算コードでは、空間領域データの記述が必要である。本研究では、自動変換プログラムプロトタイプとして、空間領域データ作成プログラムを開発する。物体領域データをブーリアン演算することにより、空間領域データを作成する手法を開発した。核融合炉では、ブランケット,ダイバータ,真空容器,各種ポート,超伝導コイル等の構造物が物体領域データである。核融合炉全体から、それらの構造物を除いた領域が空間領域であり、空間領域は、大規模でかつ非常に複雑な形状である。核融合炉全体の空間領域データをモンテカルロコード入力データ用の3次元空間における方程式で表現すると、非現実的な莫大な数の方程式が必要となる。本課題を解決するために、CADデータ全体を自動的にキューブ状に細分割し、分割した各キューブごとにブーリアン演算を行う手法を開発した。本手法の開発により、各キューブにおける空間領域の形状は簡易化され、各キューブごとに空間形状を現実的な数の方程式で表現可能となる。開発したプログラムをITER3次元CADベンチマーク問題に適用し、空間領域の形状を作成し、プログラムの妥当性を実証した。

34001289
Engineering design, installation, and conditioning of ferritic steel plates/wall for AMTEX in JFT-2M
山本 正弘*; 柴田 孝俊; 都筑 和泰; 佐藤 正泰; 木村 晴行; 岡野 文範; 川島 寿人; 鈴木 貞明; 篠原 孝司; JFT-2Mグループ ; 浦田 一宏*
Fusion Science and Technology 49(2), p.241-248(2006) ; (JAEA-J 01458)
 将来の核融合炉における構造材料として低放射化フェライト鋼F82Hの適合性をJFT-2M装置を用いて研究する先進材料プラズマ試験計画についてまとめた。トロイダル磁場リップルの低減を目的としたフェライト鋼板(壁)は、JFT-2M真空容器の外側や内側位置に三段階に分けて設置した。本論文は、これら3回の構造変更における技術的な課題として、フェライト鋼板を適切に固定するための電磁解析,許容誤差を少なくする設置方法,設置時の基準表として真空容器の実際の形状の情報を得るために使用された3次元磁場測定装置に焦点を当てて述べた。錆びやすいフェライト鋼板に対して良好な表面状態を確保するために、設置前の表面処理を念入りに実行した。酸素不純物を低減するために、安全で操作が容易なトリメチルボロンを使用したボロン化処理システムを開発した。

34001290
Study of impurity injection scenario in burning plasmas
竹永 秀信; 久保 博孝; 鎌田 裕; 三浦 幸俊; 岸本 泰明; 小関 隆久
Fusion Science and Technology 50(4), p.503-507(2006) ; (JAEA-J 01459)
 核融合炉では、不純物入射により主プラズマ周辺部でも放射損失を増大させ、ダイバータ板への熱負荷集中を避けることが考えられている。一方で、密度勾配に比例した新古典輸送による内向き速度のため、不純物はプラズマ中心に蓄積しやすく、過度な蓄積を抑制する必要がある。本研究では、燃焼プラズマでの不純物入射シナリオを確立するために、先進定常トカマク炉(A-SSTR2)のパラメータを用いて、不純物入射により主プラズマとその周辺部で400MWの放射損失を得たときに、4GW出力に必要な閉じ込め性能と周辺密度をさまざまな不純物蓄積度,電子密度分布において評価した。評価には、1次元輸送解析コードTOPICS/IMPACTを用い、不純物はアルゴンとした。JT-60Uの内部輸送障壁を有する弱磁気シアプラズマで観測された電子の2倍程度のアルゴン蓄積度では、蓄積しない場合と比較して若干の閉じ込め改善で4GW出力を得ることが可能である。密度分布尖塔化による不純物蓄積のため必要となる閉じ込め性能の増加も小さい。一方、不純物の拡散が新古典値まで低減した場合には、尖塔化した密度分布では、強いアルゴンの蓄積により中心部の放射損失が増大し、高い閉じ込め性能が要求される。以上の結果から、アルゴンの蓄積度が電子の2倍程度であれば、尖塔化した密度分布でも不純物入射シナリオが成立することを明らかにした。

34001291
A New model to simulate critical current degradation of a large CICC by taking into account strand bending
小泉 徳潔; 布谷 嘉彦; 奥野 清
IEEE Transactions on Applied Superconductivity 16(2), p.831-834(2006) ; (JAEA-J 01460)
 ITERモデル・コイル試験で、大型Nb3Snケーブル・イン・コンジット(CIC)導体に、臨界電流値(Ic)とn値の劣化が観測された。また、この劣化は、電磁力が大きくなる程大きくなった。他方、Nb3Al導体を使用したCIC導体では、劣化は観測されなかった。これらの結果を説明するために、素線の試験結果をもとにした新たに解析モデルを考案した。本モデルでは、個々の素線の横荷重によるIcとn値の劣化を測定し、静水圧モデルを仮定して導体断面内の横荷重を求め、これらの結果から、導体内の個々の素線のIcとn値を評価し、その結果として、導体のIcとn値を求める。解析の結果、Nb3Sn導体では、電磁力が積分され、素線に加わる横荷重が最大となる低磁場側から常伝導転移が起こり、その結果として、Icとn値の大幅な劣化が起こることがわかった。他方、Nb3Al導体では、常伝導転移は高磁場側から起こり、そこでは、横荷重は小さいため、素線の劣化が小さく、結果として、導体のIc, n値の劣化が無いことが模擬できた。以上より、新たに開発したモデルの妥当性が検証できた。

34001292
Challenge to ultra-trace analytical techniques of nuclear materials in environmental samples for safeguards at JAERI; Methodologies for physical and chemical form estimation
臼田 重和; 安田 健一郎; 國分 陽子; 江坂 文孝; Lee, C. G.; 間柄 正明; 桜井 聡; 渡部 和男; 平山 文夫; 福山 裕康; 江坂 木の実; 井口 一成; 宮本 ユタカ; Chai, J.
International Journal of Environmental Analytical Chemistry 86(9), p.663-675(2006) ; (JAEA-J 01461)
 IAEAは、保障措置の強化策の一環として、未申告の原子力活動を検知するため、1995年保障措置環境試料分析法を導入した。核物質を扱う原子力活動は、施設内外から採取された環境試料中の極微量核物質を精確に分析することにより、その痕跡を立証できるという原理に基づく。現在は、施設内で拭き取ったスワイプ試料に含まれる極微量のUやPuの同位体比を分析している。将来は、施設外で採取された植物・土壌・大気浮遊塵なども環境試料として想定される。環境試料中の核物質の物理的・化学的形態がわかれば、その起源,取り扱い工程,移行挙動が推定できる。保障措置の観点からは、このような情報も重要である。原研では、CLEARを整備して以来、文科省の要請を受け、我が国とIAEA保障措置に貢献するため、おもにスワイプ試料中の核物質を対象とした高度な極微量分析技術の開発に挑戦してきた。本発表では、(1)原研で開発した極微量環境試料分析技術の全般,(2)物理的・化学的形態評価にかかわる現在の分析技術開発,(3)極微量核物質に将来適用可能な形態分析技術にかかわる方法論について述べる。

34001293
Anomalous increase in effective channel mobility on γ-irradiated p-channel SiC metal-oxide-semiconductor field-effect transistors containing step bunching
Lee, K. K.*; 大島 武; 大井 暁彦*; 伊藤 久義; Pensl, G.*
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 45(9A), p.6830-6836(2006) ; (JAEA-J 01463)
 六方晶炭化ケイ素(6H-SiC)上に作製した金属−酸化膜−半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)のチャンネル移動度(μ)にステップバンチングが及ぼす影響を調べた。チャンネル方向がステップバンチングに平行又は垂直になるように設計した6H-SiC MOSFETのμを比較したところ、ステップバンチングに垂直なチャンネル方向を有するMOSFET(垂直MOSFET)のμは平行なもの(平行MOSFET)に比べ低いことが判明した。さらに、これらのMOSFETにγ線を照射したところ、平行MOSFETのμは単調に減少するのに対し、垂直MOSFETのμは4Mradまでの照射では増加を示し、それ以上の照射量では減少することが見いだされた。また、表面平坦性4nm以下の基板に作製したMOSFETのμは、γ線照射により単調に減少することが確認された。これらの結果から、垂直MOSFETでは、結晶表面の乱れから電流はチャンネルの最表層ではなく深い部分を流れるため、μを減少させる原因となる界面準位の影響を受けづらいこと、さらに、低線量のγ線照射ではスクリーニング効果により見かけ上μが増加することが示唆される。

34001294
Pair-distribution function analysis of bismuth titanate
米田 安宏; 小原 真司*; 水木 純一郎
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 45(9B), p.7556-7559(2006) ; (JAEA-J 01464)
 チタン酸ビスマスは酸素欠損により大きく誘電物性が低下することが知られているが、酸素欠損による構造変化についてはあまり知られていない。これは酸素欠損が局所的に起こり、Bragg反射に現れるような長距離構造となって現れることがないためである。そこで、局所構造を反映するPDF解析を用いてチタン酸ビスマスの酸素欠損構造を調べた。その結果、酸素欠損によって、ペロブスカイト層のTiO6八面体が回転し、酸素抜けによる構造緩和を引き起こしていることが明らかになった。

34001295
Unusual cooling of the Middle Miocene Ichifusayama Granodiorite, Kyushu, Japan
及川 輝樹; 梅田 浩司; 金沢 淳; 松崎 達二*
Journal of Mineralogical and Petrological Sciences 101(1), p.23-28(2006) ; (JAEA-J 01465)
 南部九州の西南日本外帯に貫入した市房山花崗閃緑岩から黒雲母K-Ar,ジルコンFT,アパタイトFT年代を求めその岩体の冷却史を明らかにした。その結果、市房山花崗閃緑岩は約10-13Maに300-100℃冷えた。この花崗岩体の約13Maの急冷は、九州外帯がフィリピン海プレートへオブダクションしたことが原因と考えられる。

34001296
Production and chemistry of transactinide elements
永目 諭一郎
Journal of Nuclear and Radiochemical Sciences 6(8), p.205-210(2005) ; (JAEA-J 01466)
 周期表の重い上限に位置する超アクチノイド元素の合成と化学的研究に関してレビューする。超アクチノイド元素は加速器を使って人工的に合成されるが、生成量はきわめて少なく1分間に1原子程度又はそれ以下である。しかも寿命が短く数10秒以下で壊変してしまう。このため化学操作で一度に扱える原子の数は1個しかなく、実験的に超アクチノイド元素の化学的性質を明らかにするのは非常に困難である。ここではヨーロッパのグループが行った、周期表第7族に属すると期待される107番元素ボーリウムの合成と気相化学的研究を紹介し、同じ族と予想されるテクネチウムやレニウムの性質との比較などを議論する。また原研で進めている104番元素ラザホージウムの溶液化学的研究の最新の成果を紹介しながら、超アクチノイド元素の化学的研究の現状とこれまでの到達点を概説する。

34001297
Oxygen potential of (Pu0.91Am0.09)O2-x
逢坂 正彦; 黒崎 健*; 山中 伸介*
Journal of Nuclear Materials 357(1-3), p.69-76(2006) ; (JAEA-J 01467)
 H2O/H2平衡ガス及び希釈O2ガスにより、1123K, 1273K及び1423Kにおいて(Pu0.91Am0.09)O2-xの酸素ポテンシャルを熱重量分析法により測定した。酸素ポテンシャルは、定比からO/M=1.99までは非常に高く、定比近くではAmO2-xより幾分小さな値を示した。一方、O/M=1.96以下においては、酸素ポテンシャルはAmO2-xのものよりかなり小さな値であった。実験的に測定されたデータを、AmとPuの酸化物中における原子価数についての仮定の下、酸素分圧−定比からのずれ曲線の傾き,金属の平均原子価数の関数としての酸素ポテンシャル,AmO2-xの活量係数,部分モルエンタルピー及びエントロピー等を用いて評価した。その結果、(Pu0.91Am0.09)O2-xの酸素ポテンシャルの特性は、本仮定によりうまく解釈できること、及びAmとPuの間に相互作用があることが結論付けられた。

34001298
Hydrogen isotope retention of JT-60U W-shaped divertor tiles exposed to DD discharges
柴原 孝宏*; 田辺 哲朗*; 広畑 優子*; 大矢 恭久*; 小柳津 誠*; 吉河 朗*; 大西 祥広*; 新井 貴; 正木 圭; 奥野 健二*; 宮 直之
Journal of Nuclear Materials 357(1-3), p.115-125(2006) ; (JAEA-J 01468)
 JT-60UのW型ダイバータで、重水素放電に曝された炭素材タイルからポロイダル方向に試料をサンプリングし、昇温脱離(TDS)実験を行うことでタイル中の水素同位体の蓄積量をTDS及びSIMSで評価した。外側ダイバータタイルは、厚い再堆積層に覆われており、その再堆積層中の水素濃度は場所によらずほぼ一定で(D+H)/Cの原子比で約0.03であった。このように水素濃度が低いのはタイル表面の再堆積層がプラズマ入熱によりかなり温度があがっていたためである。DD放電終了後トリチウム除去のために行われたHH放電により、さらに再堆積層の厚さが増加するとともに、先に蓄積されていたDの一部はHに置き換えられていることがわかった。放電中の温度の上昇,ダイバータの幾何学的構造が水素の蓄積に大きな影響を持つことを明らかにした。

34001299
Long-term erosion and re-deposition of carbon in the divertor region of JT-60U
後藤 純孝*; 田辺 哲朗*; 石本 祐樹*; 正木 圭; 新井 貴; 久保 博孝; 都筑 和泰*; 宮 直之
Journal of Nuclear Materials 357(1-3), p.138-146(2006) ; (JAEA-J 01469)
 1997年より2002年までの長期間のJT-60U重水素実験運転を通して、W型ダイバータ部における炭素タイル表面の損耗・再堆積分布を評価した。損耗・再堆積の内外ダイバータでの非対称性が確認された。ドーム部においては、内側ドームウィングで損耗が、また外側ドームウィングのアウトボード側領域では堆積が観測された。再堆積層は第一壁表面の垂直線に対しある傾度を持って成長する柱状組織構造を示している。ダイバータ領域での損耗・再堆積分析結果及び外側ドームウィングの再堆積構造のポロイダル方向分布の分析結果から、損耗領域からトーラス内側方向へ向かう炭素輸送の存在を示した。ダイバータ領域での損耗・再堆積の収支結果から得られた評価期間の全損耗量は0.55kgであり、そのうちの38%は第一壁領域からきたものであった。実験期間中でのNBI加熱の積算時間内で評価した炭素の再堆積率は9×1020C/sとなった。ダイバータ排気スロットがプライベート領域に位置するJT-60Uのダイバータ構造は、内側排気スロットの影の部分における炭素再堆積層の蓄積を抑える効果があると考えられる。

34001300
Establishment of freezing model for reactor safety analysis
神山 健司; Brear, D. J.*; 飛田 吉春; 近藤 悟
Journal of Nuclear Science and Technology 43(10), p.1206-1217(2006) ; (JAEA-J 01470)
 高速炉の仮想的な炉心崩壊事故の影響を合理的に評価するため、溶融炉心物質の移行について機構論的シミュレーションが必要とされている。溶融炉心物質が炉心領域に配置されている流路に侵入した際の固化挙動は、燃料の炉心領域からの排除に影響するため、重要な役割を持つ。したがって、固化挙動を扱う機構論的モデルを開発し、高速炉安全解析コードSIMMER-IIIに導入した。結晶体の微視的物理学に基づいた2つの重要な想定、すなわち、流路壁面近傍での溶融物質の過冷却及び融体と壁面との不完全な接触による接触熱抵抗を導入した。その結果、二酸化ウラン及び金属の固化試験で得られた溶融物質の侵入長さ及び固化形態について、良い一致を得ることができた。さらに、開発したモデルの信頼性向上のため、過冷却温度を予測する実験相関式を導いた。この新しい実験相関式を含んだモデルにより、ステンレス・スティール及びアルミナの固化挙動も再現することができた。

34001301
Synthesis of 286114 and 290114 using low-energy fusion channels
Gherghescu R. A.*; Poenaru, D. N.*; Greiner, W.*; 永目 諭一郎
Journal of Physics G; Nuclear and Particle Physics 32(11), p.L73-L84(2006) ; (JAEA-J 01471)
 114番元素286114並びに290114合成のための低エネルギー核融合反応を理論的に考察した。ポテンシャルエネルギー面の計算にはターゲット並びに入射粒子それぞれの変形度を考慮し、二つの核の中心間距離は動的最小化で求めた値を使用した。変形エネルギーはbinary macroscopic-microscopic法で、質量テンソルはWerner-Wheeler近似を用いて計算した。合成のための最も大きい生成断面積は、286114合成には入射粒子として142Baを、また290114合成には104Kr, 108Sr, 112Zrを入射粒子として用いる場合であることがわかった。

34001302
日欧の幅広いアプローチ計画と国内計画によるJT-60SA計画
菊池 満; 松田 慎三郎; 吉田 直亮*; 高瀬 雄一*; 三浦 幸俊; 藤田 隆明; 松川 誠; 玉井 広史; 櫻井 真治; 池田 佳隆; 藤井 常幸
プラズマ・核融合学会誌 82(8), p.455-469(2006) ; (JAEA-J 01472)
 JT-60SA計画は、核融合エネルギーの実現に向けて実験炉ITERを支えつつ、我が国独自の魅力あるトカマク型原型炉の実現を目指すトカマク国内重点化装置計画と、ITER計画の主要参加国である欧州と日本の共同計画としてのサテライト・トカマク計画との合同計画である。JT-60SA計画の経緯,目的と意義,装置設計,運営形態について述べる。

34001303
Revaluation of the correlation of isomer shift with Np-O bond length in various neptunyl(V and VI) compounds
佐伯 正克; 中田 正美; 川崎 武志*; 西村 健*; 北澤 孝史*; 竹田 満洲雄*
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 270(2), p.379-384(2006) ; (JAEA-J 01473)
 5価と6価のネプツニル化合物の構造と異性体シフトの相関に関する再評価を行った。その結果、5価ネプツニル化合物の異性体シフトと全配位子とネプツニウムとの平均結合距離の間に直線関係が成り立つことを見いだした。6価ネプツニル化合物の異性体シフトとの間にはネプツニル基内のネプツニウムと酸素の間に強い相関があることが判明した。さらに、ネプツニウムへ配位する配位子の電気陰性度の大きさに従い異性体シフトが変化することを示唆した。

34001304
Incommensurate longitudinal SDW state with a long periodicity in UCu2Si2
本多 史憲; 目時 直人; 松田 達磨; 芳賀 芳範; 大貫 惇睦
Journal of the Physical Society of Japan 75(Suppl.), p.121-123(2006) ; (JAEA-J 01474)
 UCu2Si2の磁気構造が、85.7Å の長周期スピン/電荷密度波状態であることを、中性子散乱実験によって明らかにした。この長周期構造は、5f電子の遍歴性に起因すると思われる。同じ結晶構造を持つ他の化合物で報告されたより短周期の構造は、局在5f電子間のフラストレートした反強磁性相互作用に基づくいわゆるANNNIモデルによって説明されてきたが、UCu2Si2の磁気構造はこのモデルで説明できない。そのため、5f電子の遍歴性は、同じ結晶構造を持つ一連の化合物の共通の性質であることを結論した。

34001305
Photon stimulated ion desorption from condensed thiophene photoexcited around the S 1s-edge
Rocco, M. L. M.*; 関口 哲弘; 馬場 祐治
Journal of Vacuum Science and Technology A 24(6), p.2117-2121(2006) ; (JAEA-J 01475)
 軟X線照射による固体表面での選択的化学反応の機構を明らかにすることを目的とし、固体表面に凝縮したチオフェン分子にイオウ1s吸収端近くの放射光X線を照射したときの脱離イオンとオージェスペクトルを測定した。S 1s励起による主な脱離イオン種としてはH+, S+、及びS2+の3種類が観測された。H+イオン強度のX線エネルギー依存性を測定したところ、二次電子強度のそれと類似していることから、H+イオンの脱離はX線照射によって生じる二次電子の効果によるものであることがわかった。一方、S+の脱離強度は、内殻共鳴吸収ピークよりも3eV高いエネルギーで増大することを見いだした。種々のX線エネルギーにおけるオージェ電子スペクトルを測定した結果、3eV高いエネルギーでの脱離は、S 1s軌道からRydberg状態へ共鳴励起された電子がオージェ遷移の間、Rydberg状態に留まることによって引き起こされることを明らかにした。

34001306
Novel electron-beam-induced reaction of a sulfonium salt in the solid state
榎本 一之*; Moon, S.*; 前川 康成; 下山 純治*; 後藤 一幸*; 成田 正*; 吉田 勝
Journal of Vacuum Science and Technology B 24(5), p.2337-2349(2006) ; (JAEA-J 01476)
 イオン・電子ビームによる微細加工に関する研究として、電子線リソグラフィー用レジストの高感度化に関する研究を行った。電子線のエネルギーはレジスト薄膜中の感光剤のイオン化ポテンシャルを越えるため、イオン化又は高い励起状態からの反応が優先する放射線化学反応を考慮していくことが、その反応制御に必要である。そこで、レジスト用酸発生剤であるトリフェニルスルホニウム塩誘導体の固相状態での電子線反応性について、そのアニオン部,カチオン部の構造の影響を調べた。カチオン部にビフェニル基,フェニルチオフェニル基、及び、アニオン部に芳香族スルホン酸を導入することで、酸発生効率は2倍から6倍向上した。その効果は、アニオン部よりもカチオン部で高いこと、及び、置換基のイオン化ポテンシャルに依存することがわかった。これらの知見は、電子線レジスト用高感度酸発生剤の分子設計の重要な指針となる。

34001307
High space-resolutive evaluation of subsurface stress distribution by strain scanning method with analyzer using high-energy synchrotron X-rays
菖蒲 敬久; 水木 純一郎; 鈴木 賢治*; 秋庭 義明*; 田中 啓介*
JSME International Journal, Series A 49(3), p.376-381(2006) ; (JAEA-J 01477)
 材料に対する透過性が非常によい、高エネルギー放射光X線を用いたひずみスキャニング法に、従来まで使用されていなかったアナライザを組合せた測定手法の評価を行った。その結果、供試材として使用したフェライト鋼S45C について、表面0.05mmから0.6mm程度の深さまで10μm程度の深さ分解能で補正する必要のないひずみ分布を得ることに成功した。一方、表面近傍についても補正を施すことで信頼性の高いひずみ分布を得る方法を確立し、面内等二軸応力が仮定できる材料であれば、ラボX線で得られた表面残留応力を用いることで、表面から内部までの残留応力分布を求める手法も同時に確立した。

34001308
Crystallization of isotactic polypropylene under shear flow observed in a wide spatial scale
荻野 慈子*; 福島 一*; 高橋 伸明; 松葉 豪*; 西田 幸次*; 金谷 利治*
Macromolecules 39(22), p.7617-7625(2006) ; (JAEA-J 01478)
 アイソタクチックポリプロピレン(iPP)の流動場における結晶化を時間分割広角X線(WAXS),小角X線(SAXS),偏光解消光散乱(DPLS),偏光光学顕微鏡(POM)測定により観察し、いわゆるシシ・ケバブ構造の形成過程を0.1nmから数十ミクロンに及ぶ広範囲な空間スケールにおいて研究した。時間分割DPLS, SAXS, WAXS測定からはシシ・ケバブそれぞれの結晶核形成,結晶成長過程が明らかとなった。また、結晶が異方的成長を示すひずみ速度の臨界値が存在することがわかった。実験結果を踏まえてシシ・ケバブ構造の形成過程の一つの可能性を提案した。

34001309
Charge induced in 6H-SiC pn diodes by irradiation of oxygen ion microbeams
大島 武; 佐藤 隆博; 及川 将一*; 小野田忍; 平尾 敏雄; 伊藤 久義
Materials Science Forum 527-529, p.1347-1350(2006) ; (JAEA-J 01479)
 炭化ケイ素(SiC)半導体を用いた耐放射線性粒子検出器開発の一環として、酸素イオン入射により六方晶(6H)SiC pnダイオード中に発生する電荷を調べた。pnダイオードはp型6H-SiCエピタキシャル基板上に、800℃でのリンイオン注入及び1650℃での熱処理(Ar中、5分間)によりn型領域を形成することで作製した。6〜8MeVのエネルギーの酸素イオンマイクロビームをpnダイオードに入射し、イオンビーム誘起過渡電流(TIBIC)を測定することで生成電荷量を評価した。その結果、イオンの飛程が電界層である空乏層長より短い場合は、pnダイオードで収集した電荷量は理論計算より見積もったイオン誘起電荷量と良い一致を示し、収集効率が100%であることが確認された。また、イオンの飛程が空乏層長より長い場合、イオン入射により発生する過渡的な電界(ファネリング)の効果により、空乏層より深い領域からも電荷が収集されることを見いだした。

34001310
Specificity of mutations induced by carbon ions in budding yeast Saccharomyces cerevisiae
松尾 裕一郎*; 西嶋 茂宏*; 長谷 純宏; 坂本 綾子; 田中 淳; 清水 喜久雄*
Mutation Research 602(1-2), p.7-13(2006) ; (JAEA-J 01480)
 真核生物におけるイオンビーム誘発突然変異の特徴を解析する目的で、出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeに対する炭素イオン照射の効果をγ線照射の効果と比較した。酵母URA3遺伝子をマーカーとして、炭素イオンビームによって誘発された54個のura3突然変異をシークエンスし、突然変異の特異性を解析した。その結果、炭素イオンビームによって誘発された突然変異の種類は、トランスバージョンが68.7%, トランジションが13.7%で、挿入/欠失は17.6%であった。トランスバージョンはおもに、G:C塩基対からT:A塩基対へ置換であったのに対し、トランジションのすべてはG:C塩基対からA:T塩基対への置換であった。突然変異が生じた塩基の周辺の配列を比較すると、ACA又はACT配列の真ん中のCが置換されているケースが多く見られた。高等植物であるシロイヌナズナに対しては、イオンビームは短い欠失や染色体の再編成を生じさせることが報告されているが、これとは対照的に酵母では大きな欠失や配列の重複はみられなかった。さらに、酵母におけるイオンビーム誘発突然変異で最も特徴的だったのは、ヌクレオソーム構造のリンカー領域の付近に変異が集中し、ホットスポットを形成している点である。一方、γ線ではこのようなホットスポットは見られなかった。このことから、炭素イオンビームは、DNA配列とヌクレオソーム構造の両方に依存して突然変異を誘発させていることが示唆された。

34001311
Steady state operation of magnetic fusion devices and MHD of advanced scenarios; Report on the 4th IAEA technical meeting, Ahmedabad, India 1-5 February 2005
菊池 満
Nuclear Fusion 46(3), p.S1-S2(2006) ; (JAEA-J 01481)
 2005年2月1〜5日に開催された、磁場核融合装置における定常運転と先進シナリオのMHDに関するIAEA主催第4回技術会合の会議サマリの報告であり、IAEAが発行するNuclear Fusion誌の特別号に掲載される同会議関連論文集に掲載される。会議では、90名の参加者があり、新しい超伝導装置(インドのSST-1,中国のEAST,韓国のKSTAR,ドイツのW7-X,日本のNCT)の設計,建設が報告されるとともに、既存の装置であるLHD(日本),Tore Supra(仏),TRIAM-1M(日本),HT-7(中国),NSTX(米国),FTU(伊),DIII-D(米)、そしてJT-60Uから実験結果の報告があった。会議では、長パルス運転の進歩に関する実験成果が報告されるとともに、長時間運転のための加熱電流駆動装置の開発,超伝導磁石の製作に関する報告があった。

34001312
Measurements of the change of neutronic performance of a hydrogen moderator at Manuel Lujan Neutron Scattering Center due to conversion from ortho- to para-hydrogen state
大井 元貴; 猪野 隆*; Muhrer, G.*; Pitcher, E. J.*; Russell, G. J.*; Ferguson, P. D.*; Iverson, E. B.*; Freeman, D.*; 鬼柳 善明*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 566(2), p.699-705(2006) ; (JAEA-J 01482)
 液体水素モデレータの中性子特性において、水素のオルソパラ比は重要なパラメータである。液体水素モデレータのオルソ・パラ比の影響に関する知見を得るために、アメリカ・ロスアラモス研究所のLujan中性子散乱施設において、水素の液化直後からの結合型液体水素モデレータの中性子特性の測定を行った。液体水素モデレータから放出される中性子エネルギースペクトル、及び放出時間分布を測定した。結果として、オルソ・パラ比のコントロールを行わない場合、液体水素モデレータの中性子特性は、液化直後から変化が始まっており、中性子散乱実験を行ううえでこの影響を十分に考慮する必要があることがわかった。

34001313
Single particle transfer for quantitative analysis with total-reflection X-ray fluorescence spectrometry
江坂 文孝; 江坂 木の実; 間柄 正明; 桜井 聡; 臼田 重和; 渡部 和男
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 251(1), p.218-222(2006) ; (JAEA-J 01483)
 個々の粒子を電子顕微鏡に付設したマニピュレータにより測定用試料台上に移動し、全反射蛍光X線分析法により定量分析を行う方法について検討を行った。その結果、試料台上にあらかじめ内標準物質を添加しておくことにより、直径3.04-8.84マイクロメートルの銅粒子に対して計算値からの偏差10%以内で定量を行うことができた。一方、直径10.17マイクロメートル以上の銅粒子に対しては偏差が33%以上であり、正確な定量が不可能であった。しかし、このような大きな直径の粒子に対しても、粒子を測定に先立って溶解することにより偏差9%以内で定量が可能であった。本法は真ちゅう粒子の定量にも応用され、その有効性が確認された。今後、環境試料中の微粒子に含まれる核物質量の測定についても検討を行っていく。

34001314
Development and verifications of fast reactor fuel design code CEPTAR
小澤 隆之; 安部 智之
Nuclear Technology 156(1), p.39-55(2006) ; (JAEA-J 01484)
 高速炉燃料の高出力化及び高燃焼度化を実現するためには中空燃料の採用が有効であると考えられている。高燃焼度まで照射された中空燃料は照射中で変形と組織変化による中空部の潰れが観られるが、この挙動は燃料設計において許容最大線出力を決定する際の溶融限界線出力に大きな影響を及ぼす一つの要因でもある。このような中空燃料挙動を精度よく予測するためにCEPTARコードを開発し、照射試験結果を用いて検証した。本コードでは、ボイド移動で計算した径方向密度分布を用いた質量保存則に則って中心空孔径を評価し、熱膨張,スエリング及びクリープ変形については平面歪近似の応力・歪解析で評価する。さらに、本コードは高燃焼度燃料の被覆管−ペレットギャップ部に観察されるJOGの燃料スエリング抑制及びギャップ部熱伝達の改善といった効果についても考慮することが可能である。本稿ではCEPTARコードの概略と検証結果について報告する。

34001315
237Np -17O cross relaxation in NpO2 driven by indirect spin-spin coupling
徳永 陽; Walstedt, R. E.*; 本間 佳哉*; 青木 大*; 神戸 振作; 酒井 宏典; 藤本 達也; 池田 修悟; 山本 悦嗣; 中村 彰夫; 塩川 佳伸*; 安岡 弘志
Physical Review B 74(6), p.064421_1-064421_7(2006) ; (JAEA-J 01485)
 本論文は現在八極子秩序基底状態が示唆され注目を集めているNpO2において行った酸素核での核スピン−格子緩和時間(T1)の測定結果を報告している。0.5から10テスラまでの広い磁場領域において測定を行った結果、低磁場領域においては、非常に広い温度領域に渡ってT1に大きな磁場依存性が存在することがわかった。一方、5テスラ以上の高磁場領域ではそのような磁場依存性は全く観測されなかった。われわれはこの特異なT1の磁場依存性が237Np-17O間の異種核緩和によるものとしてよく理解できることを見いだした。さらにその解析から初めてNp核のT1及び237Np-17O間のスピン−スピン結合の大きさを見積もった。

34001316
Analytical description of free-electron-laser oscillations in a perfectly synchronized optical cavity
西森 信行
Physical Review E 74(3), p.036502_1-036502_14(2006) ; (JAEA-J 01486)
 光共振器の完全同期長における自由電子レーザー(FEL)発振を1次元FEL方程式を解析的に解いて記述する。光共振器内で貯めこまれたFEL光が、レサジー効果にもかかわらず高ゲイン低ロス領域では、高強度の少数サイクルパルスに成長することを示す。光パルスの先頭から最初のピークと定義される立ち上がり部が、この少数サイクル高強度光パルスの生成に重要な役割を果たすことがわかった。光パルスの立ち上がり部と電子のFEL相互作用を摂動的に解き、電子の位相空間での成長を求め、さらに光の成長の解析解を求めた。飽和時のFELのピーク振幅とパルス幅は電子ビーム密度と光共振器ロスにスケールすることがわかった。このスケーリング則は高出力FELで生成された高強度少数サイクルFELとよく一致する。

34001317
Advanced tokamak research on long time scales in JT-60U upgrade
藤田 隆明; JT-60チーム
Physics of Plasmas 13(5), p.056112_1-056112_10(2006) ; (JAEA-J 01487)
 JT-60Uにおいては、加熱パワーの入射時間を10秒から30秒に伸長し、電流拡散時間を超え、壁飽和時間に近い時間スケールでのプラズマ特性の研究を開始した。負磁気シアプラズマにおいて、高自発電流割合75%を7.4秒間(電流拡散時間の2.7倍)維持した。電流分布及び圧力分布は定常状態に近づきつつあるが、プラズマ内部の周回電圧分布は一様ではなく定常に達するにはなお維持時間を伸長する必要がある。高プラズマ圧力Hモードにおいては、規格化ベータ値2.5を15.5秒間維持し、周回電圧分布が一様となる状態を実現した。後半において壁排気量の低減により周辺密度が上昇するとともに密度,温度分布が平坦に近づき閉じ込めが劣化し、壁排気の変化に伴う密度の制御が重要であることが明らかとなった。高密度放電を繰り返すことにより、壁の粒子吸蔵量が飽和し壁排気がゼロとなる状態をJT-60で初めて得た。スクレイプオフ層プラズマにおける粒子輸送の解析により、主プラズマ周りの第一壁が100秒程度の時定数で飽和していることを明らかにした。リップルを低減するためにフェライト鋼を真空容器内に設置するのに先立ってトロイダル磁場のリップルによる高速イオンの損失がHモードの境界輸送障壁に及ぼす影響を系統的に調べた。その結果から、2005年12月からのリップル低減後の実験では、プラズマ性能の向上が期待できる。

34001318
Impact of the edge pedestal characteristics on the integrated performance in advanced tokamak operation modes in JT-60U
鎌田 裕; 大山 直幸; 井手 俊介; 坂本 宜照; 諫山 明彦; 藤田 隆明; 浦野 創; 鈴木 隆博; 吉田 麻衣子
Plasma Physics and Controlled Fusion 48(5A), p.A419-A427(2006) ; (JAEA-J 01489)
 定常核融合炉の炉心プラズマに必要な総合性能を確保し、これを高めるうえで、Hモードの周辺ペデスタル部は要の役割を果たす。これを、JT-60における先進運転モード(弱磁気シアモード及び負磁気シアモード)の実験結果から定量的に評価した。炉心プラズマの性能指標であるGファクター(=規格化ベータ値x閉じ込め改善度/安全係数の自乗)の上限値は、ペデスタル部のベータ値とともにほぼ線形に上昇することがわかった。また、炉心級の低衝突度の運転においても、Type I ELMによる周期的な崩壊領域はプラズマ小半径の7-8割程度までであり、内部輸送障壁を劣化させることは無い。特に、高三角度では、コアプラズマのポロイダルベータ値の上昇とともにELMで制限されるペデスタル部のポロイダルベータ値(あるいは圧力勾配)が上昇する。ただし、その傾きは弱磁気シアモードの方が負磁気シアモードよりも強い。これらの結果は、シャフラノフシフトの上昇が周辺部の安定性を改善することを示している。

34001319
Evaluation of transient current in Si PIN photodiode induced by high-energy charged particles
小野田 忍; 平尾 敏雄; 伊藤 久義; 岡本 毅*
Proceedings of the School of Engineering of Tokai University 31, p.1-4(2006) ; (JAEA-J 01490)
 シングルイベント過渡電流が原因となって、宇宙環境で使用される通信用の半導体素子では、ビットエラーが引き起こされる。特に、高エネルギーの陽子が誘起するビットエラーが問題となっている。高エネルギー陽子は、半導体材料と核反応などの相互作用を経て、高エネルギーの重荷電粒子を生成する。重荷電粒子は、半導体中で高密度の電離を引き起こし、その結果、過渡電流が発生する。本研究では、高エネルギーの重荷電粒子が誘起する過渡電流を直接観測し、その波形形状を過渡電荷解析(TCT)法により解析した。従来のTCT法は、アルファ線のように線エネルギー付与(LET)が低い場合に有効であるが、重荷電粒子のようにLETが高い場合に誤差を生じる。その原因は高注入効果を考慮していない点にあると考えられるため、これを導入するための一次近似として、通常のキャリア移動度に補正係数を乗した実効移動度を導入した。実験結果と計算結果を比較した結果、従来のTCT法に比べ、計算精度が著しく向上した。

34001320
Acceleration of MeV-class energy, high-current-density H--ion beams for ITER neutral beam system
谷口 正樹; 井上 多加志; 柏木 美恵子; 渡邊 和弘; 花田 磨砂也; 関 孝義*; 大楽 正幸; 坂本 慶司
Review of Scientific Instruments 77(3), p.03A514_1-03A514_4(2006) ; (JAEA-J 01494)
 ITER用中性粒子入射装置では、放射線誘起伝導のため高電圧の絶縁にSF6等の絶縁ガスが使用できない。このため、原研では加速器全体を真空中に置く真空絶縁型加速器(VIBS)の開発を行っている。大型電界緩和リングの装着等の耐圧改善を行った結果、加速可能な負イオン電流密度は大きく増大し、900keVにおいて0.1Aレベルのビームを運転期間中175ショット安定に加速することに成功した。また、ITERで要求されるイオン源運転ガス圧条件(<0.3Pa)を満たす領域で、電流密度146A/m2(エネルギー836keV)の負イオンビーム加速に成功し、ITER NBIに向けて着実に性能が向上していることを示した。

34001321
Improvement of beam uniformity by magnetic filter optimization in a Cs-seeded large negative-ion source
花田 磨砂也; 関 孝義*; 高戸 直之*; 井上 多加志; 戸張 博之; 水野 貴敏*; 畑山 明聖*; 大楽 正幸; 柏木 美恵子; 坂本 慶司; 谷口 正樹; 渡邊 和弘
Review of Scientific Instruments 77(3), p.03A515_1-03A515_3(2006) ; (JAEA-J 01495)
 セシウム添加方式体積生成型負イオン源のビーム非一様性の原因究明を行うために、フィルター磁場と負イオンビームの長手方向の強度分布との相関関係について実験的に調べた。実験では、3種類のフィルター強度(49, 370, 800Gauss・cm)について調べた。それぞれのフィルター強度に対して、イオン源に少量のセシウム(約0.3g)を添加して、負イオン電流値を添加前よりも3〜4倍に増加させた後、ビーム強度分布を測定した。いずれのフィルター強度に対しても、ビーム強度を長手方向に積分したビーム電流値はほぼ一定であった。しかしながら、ビーム強度分布の偏差は、フィルター強度が800Gauss・cmの時、平均値に対して30%であったが、フィルター強度を49Gauss・cmに下げることにより、17%まで低減した。この結果、フィルター強度を低減することによって、ビーム電流値を下げることなく、大幅にビーム強度分布を改善できることが明らかになった。また、プローブ測定の結果、フィルター強度を下げると、プラズマ電極近傍のプラズマ密度及び電子温度は一様になっていることがわかった。これらの結果から、ビーム強度分布の非一様性の原因は、フィルター磁場によってプラズマ電極近傍のプラズマが偏在するためであることが明らかとなった。

34001322
Beam deflection by plasma grid filter current in the negative-ion source for JT-60U neutral beam injection system
梅田 尚孝; 池田 佳隆; 花田 磨砂也; 井上 多加志; 河合 視己人; 椛澤 稔; 小又 将夫; 藻垣 和彦; 大賀 徳道
Review of Scientific Instruments 77(3), p.03A529_1-03A529_3(2006) ; (JAEA-J 01496)
 JT-60NBI用の負イオン源では、大面積で一様に負イオンを生成するためにプラズマ電極に数kAの電流を流してフィルター磁場を形成している。この電流によって、イオン源加速部とその下流で負イオンビームと電子ビームの軌道が曲げられる。この負イオンビーム及び電子ビームの軌道を実験及び計算で評価した。3.5mの位置で負イオンの単一ビームを計測したところ、PGフィルター電流を1kA増加させると7mmビームが変位することが明らかになった。また、2004年の長パルスの実験で、イオン源から〜1mの位置のビームラインが一部が溶融したが、これは100keV以上のエネルギーの電子が偏向され熱負荷となったことが明らかになった。

34001323
Detailed in situ laser calibration of the infrared imaging video bolometer for the JT-60U tokamak
Parchamy, H.*; Peterson, B. J.*; 木島 滋; 林 浩己*; Seo, D. C.*; 芦川 直子*; JT-60Uチーム
Review of Scientific Instruments 77(10), p.10E515_1-10E515_4(2006) ; (JAEA-J 01497)
 JT-60Uトカマク用赤外イメージング・ボロメータは、受光部として黒化処理した厚さ2.5ミクロン,有効面積9cm×7cmの金薄膜を用いている。赤外カメラで測定した温度分布データから、プラズマの放射損失パワー分布を求めるには、薄膜各部の特性値が必要である。薄膜の各点での熱拡散係数κ,熱伝導率kと膜厚tの積ktなどを既知とする2次元熱拡散方程式により、温度分布から入熱分布を求めることができる。われわれは2006年2月に、He-Neレーザーを用いて測定に使用した薄膜の特性値を求めるその場較正試験を行った。あらかじめ強度分布を測定しておいたレーザー光を放射源として薄膜に照射し、照射点の温度分布とその減衰時定数を赤外カメラで測定する。薄膜面上の約100点についてレーザー光照射による温度分布と減衰時定数の測定を行った。現在、有限要素法を用いて測定結果の解析を行っている。分布情報からκを、また時定数からktを求めることができる。また、赤外カメラ(Indigo社-Omega)の感度は、ほぼ同じ輻射率を持ち温度制御が可能な模擬薄膜を用いて較正試験を行った。赤外カメラのデータはStefan-Boltzmann則と良い一致を示している。会議ではこれら測定の詳細と解析結果を報告する。

34001324
Structure and stability of Pr2O3/Si(001) heterostructures grown by molecular beam epitaxy using a high temperature effusion source
Tinkham, B. P.*; 高橋 正光; Jenichen, B.*; 綿引 達郎*; Braun, W.*; Ploog, K. H.*
Semiconductor Science and Technology 21(12), p.1552-1556(2006) ; (JAEA-J 01498)
 微小角入射X線回折とX線反射率法とを用いて、Si(001)上にエピタキシャル成長したPr2O3膜の構造を調べた。CMOS製造プロセスに関係する成長中・成長後・アニールの各過程での構造について報告する。高温蒸着源を用い、1970℃でPr6O11をPr2O3に変換しつつ蒸着させた。蒸着直後の膜には、Pr2O3の二つの相と、Si界面に生成した珪酸化物の層が認められた。立方晶Pr2O3は、単結晶として成長し、多結晶の六方晶Pr2O3よりも量的には多かった。膜の結晶構造は800℃までのアニールに対して安定で、800℃では、Pr2O3が減って珪酸化物が増加した。

34001325
Structure of GaAs(001)-c(4×4); Comparison of X-ray diffraction and first-principles calculation
高橋 正光; Kratzer, P.*; Penev, E.*; 水木 純一郎
Surface Science 600(18), p.4099-4102(2006) ; (JAEA-J 01499)
 GaAs(001)-c(4×4)表面構造をシンクロトロンを用いたX線回折で調べた。原子座標と温度因子を表面第6層目まで決定した。その結果は、Ga-As非対称ダイマーの形成を示すものであった。求められた原子座標を、第一原理計算の結果と比較した。理論的には単位胞あたり1つのGa-Asダイマーを含む構造が安定であることが示されているにもかかわらず、実験結果は3つのGa-Asダイマーを含む構造ともっともよく一致した。3つのGa-Asダイマーからなる構造が形成される理由を、2×4からc(4×4)への構造変化と関係付けて議論する。

34001326
Reflection high-energy positron diffraction pattern from a Si(111)-(7×7) surface
林 和彦; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
Surface Science 600(19), p.4426-4429(2006) ; (JAEA-J 01500)
 陽電子に対する物質の結晶ポテンシャルは正の値になるので、陽電子ビームを真空層から物質に入射すると、ある入射角度以下で全反射が観察される。反射高速陽電子回折(RHEPD)における全反射では、入射陽電子の物質への侵入深さは浅く、陽電子ビームはおもに表面原子で回折される。このためRHEPDパターンのスポット強度分布は、最表面原子位置に強く依存している。したがって、スポット強度分布を解析することで、最表面原子の位置を正確に決定することが可能である。本研究では、アドアトムの原子位置を決定するために、Si(111)7×7表面からのRHEPDパターンを観測し、スポット強度分布を動力学的回折理論を用いて解析した。その結果、アドアトムの高さは下の層から1.55±0.10Å 、平行位置は±0.10Å の誤差範囲内で2層目のほぼ真上であった。さらに、全反射領域での陽電子の侵入深さは、アドアトムと2層目の層間距離の2Å 程度であることがわかった。また、運動学的回折理論を用いた計算結果において、分数次のラウエゾーン上のスポット強度分布については、実験結果をよく再現しているが、整数次のラウエゾーン上のスポット強度分布については、実験結果と異なっていることがわかった。

34001327
電極表面連続研磨器具付き白金電極を用いる水溶液酸化還元電位の安定測定
井岡 聖一郎; 岩月 輝希; 加藤 修*; 今北 毅*
分析化学 55(10), p.793-797(2006) ; (JAEA-J 01503)
 不活性条件化において白金電極を連続的に研磨しながら溶液の酸化還元電位を測定する場合と、連続研磨無しで溶液の酸化還元電位を測定する場合に得られる酸化還元電位の差異について検討した。連続研磨を実施した測定条件下では、溶液の酸化還元電位は、すぐに安定状態に達した。その溶液の酸化還元電位は、HS-とS42-が酸化還元平衡にあるとの仮定に基づいて熱力学的に算出される酸化還元電位とほぼ一致していることから、HS-とS42-の酸化還元反応が酸化還元電位におもに寄与していると考えられた。一方、連続研磨を行わずに溶液の酸化還元電位を測定した場合、連続研磨を実施した場合の酸化還元電位より約0.2V高い値が得られた。この原因として、白金電極表面への硫酸アニオンの吸着などの、電極−溶液間の電気化学的環境の変化が考えられた。

34001328
地下深部における地球化学的環境の長期的変遷; 炭酸塩鉱物中の微量元素に基づく解析例
水野 崇; 岩月 輝希
地球化学 40(2), p.33-45(2006) ; (JAEA-J 01504)
 地下水の滞留時間を越える範囲で地下水の化学的環境の変遷を把握するためには、過去の地下水の化学的環境を保存していると考えられる二次鉱物を用いることが有効であると考えられる。本研究では、土岐花崗岩中の割れ目に産する方解石を対象として、地下水の化学的環境(特に酸化還元環境)の変遷を推察するための研究を行った。その結果、方解石が沈殿する過程において、地下水の化学組成や水質形成機構が変化した可能性があるものの、酸化還元環境については沈殿の過程を通して、研究対象地域の地下水が還元的な環境を保持した可能性を示した。

34001329
原子炉の安全を確保せよ; NSRRにおける原子炉安全性研究
杉山 智之
伝熱 45(192), p.71-76(2006) ; (JAEA-J 01505)
 反応度事故に対する安全確保を目的としたわが国の取り組みについて、原子炉安全性研究炉NSRRにおける研究・開発の歴史を中心に紹介するものである。反応度事故研究は米国では1950年代に開始されていたが、大きく遅れて1975年に開始されたNSRR計画が、結果的には質・量ともに米国を上回るデータを世に発信することとなった。これは、NSRRという柔軟性に富んだ道具を、常に拡張し続け、効果的に利用してきたからにほかならない。軽水炉燃料の高燃焼度化及びMOX燃料の本格導入を迎えた今日も、NSRRは依然として重要な役割を果たしている。

34001330
合成吸着樹脂を用いた地下水腐植物質の採取と特性分析
上田 正人; 坂本 義昭*
原子力バックエンド研究 12(1-2), p.31-39(2006) ; (JAEA-J 01506)
 核種移行に影響を及ぼす可能性がある地下水中の溶存腐植物質を濃縮法により採取し、採取した腐植物質の特性を確認した事例はわが国にはほとんどない。われわれは、深度約50mの地点から地下水を採水し、地下水中の溶存腐植物質を合成吸着樹脂を用いた濃縮法等により採取した。採取した腐植物質及びNordic腐植物質,Aldrichフミン酸などの標準的な腐植物質並びに採水した地下水について種々の特性データを取得し、比較検討を行った。この結果、採取した腐植物質及び地下水の紫外可視・蛍光スペクトル及びフミン酸/フルボ酸濃度比には有意な差がなく、本実験で採用した溶存腐植物質の一連の採取法が有効であることが示唆された。また、採取したフルボ酸の分子量分布,三次元蛍光スペクトル,赤外スペクトル,NMRスペクトルなど、腐植物質固有の特性は標準腐植物質と異なっていたが、アメリシウムとの錯生成において、腐植物質の分子量によらず一様に錯体を生成する点で地下水腐植物質とNordic腐植物質は同様の特徴を示した。これらの結果は、わが国の地下水中の溶存腐植物質が、放射性核種との錯生成に関して、既往の多くの研究で用いられている水系腐植物質であるNordic腐植物質と類似の特性を持つ可能性を示唆している。

34001331
放射性核種の地層中移行におけるコロイド影響評価手法に関する研究; コロイドの多孔質媒体中移行モデルの実験による評価
向井 雅之; 田中 忠夫; 湯川 和彦; Suryantoro*
原子力バックエンド研究 12(1-2), p.41-51(2006) ; (JAEA-J 01507)
 地下水中におけるコロイド共存下での放射性核種の移行を評価するため、計算コードを作成した。ラテックスコロイドを海岸砂及び赤色土カラムへ流入する実験を行い、流出曲線に対する4種類の多孔質媒体中コロイド移行モデル(瞬時平衡反応モデル,1次反応速度モデル,ろ過モデル,付着容量に制限を設けた1次反応速度モデル)の適用性を検討した。海岸砂からの流出曲線は、瞬時平衡反応モデルでは破過のタイミングと相対濃度1への到達速度とを同時に表すことが困難である一方、ブロッキング現象を模擬したモデルの1つである1次反応速度モデルでは流出曲線を良好に再現できた。赤色土からの流出曲線には、コロイドを繰り返し流入させたことに対応してコロイド流出濃度が階段状に高くなる特徴的な挙動が観察された。可逆的な瞬時平衡反応モデル及び1次反応速度モデルではこの挙動を表すことができなかった。しかしながら、ろ過に非可逆的な容量制限を設けた1次反応速度モデルにより特徴的な流出曲線を再現可能であった。天然バリア中の核種移行に及ぼすコロイドの影響を評価するモデルの基盤となるコロイド単体の移行モデルが実験結果に基づいて確証できた。

34001332
放射線グラフト重合による金属イオンの捕集材の開発
玉田 正男
HiKaLo技術情報誌 6(2), p.15-18(2006) ; (JAEA-J 01508)
 グラフト重合は、既存の高分子材料に金属イオンに親和性の高い官能基を導入できる手法である。吸着する金属イオンに対して、特定の官能基を入れることにより、選択性の高い金属捕集材を作製することができる。このように作製した金属捕集材は、有害金属の除去の目的で、ホタテ貝のウロからのカドミウム除去によるウロの肥料及び飼料への有効利用,廃焼却炉洗浄水の鉛を除去する小型浄化装置に応用されている。また、有用金属の捕集では、海水からのウラン捕集,温泉水からのスカンジウムの回収に応用可能である。

34001333
広島原爆における速中性子線の評価
柴田 徳思
放射線 32(3), p.156-166(2006) ; (JAEA-J 01510)
 原爆による被ばく線量の評価には、これまで線量評価システムDS86が用いられてきた。DS86が発表されて以降、熱中性子及び速中性子により生成される放射性核種の測定が行われ、極近距離の結果がDS86の値より小さいこと,遠方での生成量に関して精度の良いデータが得られたこと、また、より精度のよい計算が行われたこと、を合わせて、新しい線量評価システムDS02が発表された。広島原爆における速中性子線の評価については、原爆投下直後に32S(n,p)32P反応で生成される32Pの測定が理研及び京大のグループにより測定された。これらの測定の結果、近距離での生成量については得られているが、遠距離のデータは統計誤差が大きい。新たに63Cu(n,p)63Ni反応により生成される63Niの測定の可能性が提案され、日本グループによる低バックグランド液体シンチレーションカウンタによる測定及び米国とドイツのグループによる加速器質量分析法による測定が行われ、これらの結果がDS02の値と矛盾の無いことが示された。なお残された問題として、バックグランドである超遠距離で測定された63Niの値は、宇宙線による寄与だけでは説明ができず、原因はわかっていない。

34001334
気相中有機汚染物質の電子ビーム分解除去に関する研究
箱田 照幸
放射線化学 (82), p.41-47(2006) ; (JAEA-J 01511)
 有害な揮発性有機化合物(VOC)を含む換気空気を電子ビーム(EB)照射により低吸収線量で効率よく無害化するためには、VOCの酸化分解過程や中間生成物の物性の特徴を利用した処理プロセスの開発が必要である。本稿では、洗浄剤及び塗料溶剤としてそれぞれ用いられるクロロエチレン類及び芳香族有機化合物について行った分解・除去に関する研究開発成果の概要を述べる。具体的には、クロロエチレン類は、EB照射により生じたOHラジカルとの反応を起点として連鎖反応により酸化分解すること、及びこの分解生成物は水に溶解して濃縮・除去できることを明らかにした。また、照射による酸化分解とともに酸化分解が困難な粒子状の中間生成物が生じるキシレン等芳香族有機化合物について、従来利用されてこなかったイオンなどの荷電種からの電荷移動による粒子状有機物の帯電及びその後の電場印加による電極上への捕集・除去を組合せた処理技術を開発した。

34001335
原子力研究開発と地域社会からの支援
永田 敬
保全学 5(3), p.87-90(2006) ; (JAEA-J 01512)
 高速増殖炉開発に携わってきた者として、その重要性が改めて社会的に認知され、研究開発の促進が図られようとする現状は大いに歓迎するところであるが、その一方、社会は大きく変化しており、その変化に対応して研究開発の進め方をこれまでとさまざまな点で変えていく必要がある。その1つが立地地域とのかかわりである。原子力事業に携わる者として、地域社会とコミュニケーションを密にとりつつ、こうした活動を重視しながら、研究開発を進めていきたいと考えている。

34001336
ミュオンで雷を落とす?
鳥居 建男
Isotope News (629), p.14-16(2006) ; (JAEA-J 01513)
 冬季雷活動時に観測される放射線量率の上昇から雷雲中で発生していると考えられる逃走絶縁破壊について、これまで得られた研究成果をもとに述べるとともに、高エネルギーミュオンを用いた人為的に雷を誘発させる手法の可能性について言及する。

34001337
温泉水から希少金属を採取する
玉田 正男
Isotope News (630), p.2-3(2006) ; (JAEA-J 01514)
 日本は、世界5位の火山国であり、温泉大国となっている。温泉はマグマ中の水分やマグマに加熱された地下水が長年かけて地上に達するため、地殻中の多くの希少金属を含んでいる。群馬県の草津温泉にある万代源泉の含有成分を調べた結果、原子番号の最も小さい希土類元素であるスカンジウムが溶けていることがわかった。スカンジウムは、アルミニウム合金の耐熱性の向上や燃料電池の電解質膜に有用な元素として注目されている。放射線グラフト重合により、リン酸型捕集材を合成し、スカンジウムの吸着特性を調べた。濃度がそれぞれ18, 40ppbである草津温泉の酸性温泉排水(pH1.8, 36℃)及び源泉(pH1.4, 92℃)中に捕集材片(2×5cm)をプラスチック製の籠に充填して浸漬した。23時間の浸漬でそれぞれ捕集材1kgあたり0.2g, 1.5gのスカンジウムを吸着できることがわかった。

34001338
水銀キャビテーションにおける気泡挙動
直江 崇; 二川 正敏; 小山 智史*; 粉川 広行
実験力学 6(3), p.301-307(2006) ; (JAEA-J 01516)
 核破砕中性子源水銀ターゲットに高強度のパルス陽子線が入射されると、熱衝撃により圧力波がターゲット容器内の水銀中に発生する。その伝播過程で容器壁と水銀の界面において負圧が生じ、キャビテーションが発生する。このキャビテーション気泡の崩壊により容器内壁は壊食損傷を受ける。本報では、液体水銀中の急激な圧力変動に伴う微小気泡の成長・崩壊挙動を把握し、損傷形成のメカニズムを明らかにすることを目的として、まずバブルダイナミックスに関する Rayleigh-Plessetの式を援用した解析を行い、水銀中の単一気泡の成長挙動と圧力変動との相関を評価した。さらに、電磁式衝撃圧負荷試験装置を用いた衝撃圧負荷試験における水銀中の気泡挙動を高速度ビデオカメラを用いて観察し、解析結果と比較した。その結果、気泡サイズ及び寿命は負荷圧力変動、特に負圧の飽和時間に依存すること,15kHz以上の高周波数成分はバブル崩壊により励起されることを示した。

34001339
高エネルギー重イオン照射場におかれた無機材料の挙動
岩瀬 彰宏*; 石川 法人; 知見 康弘
まてりあ 45(6), p.456-463(2006) ; (JAEA-J 01518)
 最近筆者らが行った研究の成果を中心に、100MeV-GeV領域の高エネルギー重イオン照射場、特に、それによる高密度電子励起が無機材料に及ぼす効果と、そのメカニズムに関する考察について述べる。そして、この現象の材料改質への応用や原子炉の燃料体における照射効果についても言及する。

34001340
熱移流を考慮した日本列島の熱流束分布
坂川 幸洋; 梅田 浩司; 浅森 浩一
日本地熱学会誌 28(2), p.211-221(2006) ; (JAEA-J 01519)
 我が国では1957年以降精力的に地殻熱流量(伝導熱流束)測定が行われ日本周辺の分布が明らかにされている。だが、伝導項と移流項からなり火山地域の熱輸送評価等に必要な総熱流束の分布はまだ明らかにされていない。著者らは日本の坑井温度プロファイルデータに一次元熱輸送モデルを適用して熱流束と流体流動速度を解析した。その結果、総熱流束は東北日本では太平洋側で低く日本海側で高い傾向があり、西南日本では、瀬戸内海周辺で相対的に低い値であること,高い総熱流束がほとんど第四紀火山付近にしか見られないこと,1W/m2以上の高総熱流束は熱源により流体対流系中に局所的に発生する速い上昇流がもたらした可能性が考えられること等がわかった。

34001341
コロイドプローブ原子間力顕微鏡によるNaCl水溶液中のモンモリロナイト粒子の相互作用力の測定
黒澤 進; 水上 雅史*; 佐藤 久夫*; 野澤 純*; 辻本 恵一*; 栗原 和枝*
日本原子力学会和文論文誌 5(3), p.251-256(2006) ; (JAEA-J 01520)
 本研究では、コロイドプローブAFMにより、モンモリロナイト粒子間の相互作用力をイオン強度〜500mMの水溶液中で直接測定した。その結果、粒子間には斥力が支配的に作用することが観察され、モンモリロナイト粒子の分散性は高いことが示唆された。また、この測定結果において観られた粒子間が接近する距離での斥力は、DLVO理論による理論予測とは不一致を示すものであった。

34001342
詳細二相流解析による原子炉熱設計手法の確立を目指して; 数値拡散を低減した界面追跡法の開発
吉田 啓之
日本原子力学会誌 48(9), p.690-695(2006) ; (JAEA-J 01521)
 原子力機構では、大規模実験に依存せず原子炉の熱設計を可能とする、機構論的な熱設計手法の研究開発を行っている。この研究開発においては、界面を含む粗粒の挙動を詳細かつ正確に予測するため、改良界面追跡法と呼ぶ新しい詳細二相流解析手法を開発した。さらに、本手法を組み込んだ詳細二相流解析コードTPFITを開発し、熱設計に用いるために必要な検証などの作業を実施している。本解説は、改良界面追跡法について、その基本的な考え方をわかりやすく説明するとともに、TPFITコードの検証のために実施した解析結果の一例により、機構論的熱設計手法開発の現状を示した。

34001343
軽水炉の確率論的安全評価(PSA)入門,7; 公衆のリスクを評価するレベル3PSA
本間 俊充
日本原子力学会誌 48(10), p.773-779(2006) ; (JAEA-J 01522)
 連載講座「軽水炉の確率論的安全評価(PSA)入門」の第7回として、原子炉施設の事故時に環境に放出された放射性物質による施設外への影響を定量化するレベル3 PSAについて紹介する。ここで紹介するレベル3 PSAの主要な部分は敷地外に生ずる影響の評価(環境影響評価)であり、狭い意味で確率論的事故影響評価(Probabilistic accident Consequence Assessment)と呼ばれている。レベル3 PSAの結果は、米国の原子炉安全研究(WASH-1400)やシビアアクシデントのリスク評価(NUREG-1150)のような原子力発電所の潜在的リスクの評価だけでなく、施設の立地,防災等にも役立つ情報を提供する。本連載講座では、レベル3 PSA手法の手順とその内容をわかりやすく説明し、諸外国及び我が国におけるレベル3PSA手法適用の現状について概観した。

34001344
高放射線環境用の架橋ゴム材料の開発
中務 定義*; 煙崎 岳*; 草野 譲一; 増川 史洋
日本ゴム協会誌 79(9), p.429-434(2006) ; (JAEA-J 01523)
 高放射線環境で使用する架橋ゴムとして、従来のEPDM等の耐放射線特性を大幅に上回る特性を示すエラストマーを得る配合を開発した。放射線環境で使用するエラストマーについて、種々のポリマーの架橋ゴムを作成し、Co-60のγ線を用いた照射試験を行い、γ線照射前後の物理特性変化を評価・検討した。多数のポリマーのγ線照射試験の結果を踏まえ、エラストマーの放射線曝露による特性劣化を改善するためにEPDMとIIRをブレンドし、そのポリマーに老化防止剤及び芳香族油を添加することにより、可能性に優れた架橋ゴムを得る配合を開発した。新たに開発された架橋ゴムの中で最も優れた特性を示したエラストマーは、γ線7MGy超の照射後も、表面のブリード,ブルームも見られず、硬さ変化が少なく、なおかつ伸び率150%を確保している。

34001345
SP試験法による低放射化フェライト鋼の高温引張特性評価
中田 隼矢; 駒崎 慎一*; 中島 基樹*; 幸野 豊*; 谷川 博康; 芝 清之; 香山 晃*
日本金属学会誌 70(8), p.642-645(2006) ; (JAEA-J 01524)
 スモールパンチ(SP)試験では、これまで原子力材料の分野で延性脆性遷移温度(DBTT)や靱性の評価などが行われてきた。われわれの研究で、SP試験を改良したSPクリープ試験によって、核融合炉構造材料である低放射化フェライト鋼F82H及びJLF-1の非照射環境でのクリープ特性を評価できることを報告している。今回、SPクリープ試験と同様にF82H及びJLF-1について、非照射環境にて室温と高温域(823〜923K)でSP試験を行った結果、標準の高温引張試験結果と良好な相関関係が成立っていることを新たに明らかにした。両試験結果の間には、次のような関係式、σy=1.5Fy+96, σB=0.37Fmax+85が成立つことがわかった。ここで、FyFmaxはそれぞれSP試験にて局部変形が開始する荷重とその最大荷重である。またσyσmaxは引張試験により得られた降伏強度と引張強度である。これらの関係には、鋼種及び温度の明瞭な依存性は認められなかった。以上の結果より、SP試験法によってこれまで報告されてきた靱性やクリープ特性だけではなく、高温引張強度も評価できることがわかった。

34001346
ITERブランケット遠隔保守時における真空容器内への軌道展開に関する機構解析
角舘 聡; 柴沼 清
プラズマ・核融合学会誌 82(9), p.628-637(2006) ; (JAEA-J 01526)
 ITERブランケット遠隔保守機器を開発するための最も重要な研究課題の1つは、関節部に駆動源がない8個の軌道リンクから構成される多関節軌道をドーナツ型真空容器へ展開するための手法を開発することである。この課題を解決するために、まず、軌道展開時における軌道リンクの幾何学姿勢を同定する解析モデルを提案した。提案した解析モデルは、関節に駆動源がなく従来の方法では解析が困難であった多関節軌道に対して、リンク間角度と駆動機構の位置関係とを定義するベクトル方程式を導入し、従来のマニピュレータの幾何学関係式との連立によって、幾何学的姿勢を求める方法を提案した。次に、本解析モデルにより、軌道展開中に1つの軌道姿勢に同定できない不安定となる姿勢モードが存在することを明らかにした。この不安定な姿勢モードを回避する新たな駆動機構配置、及び多関節軌道の展開シナリオを提案した。さらに、提案した軌道展開シナリオを実規模装置に適用し、3つの駆動機構による単純な繰り返し動作によって各軌道リンクが安定に展開できることを確認した。

34001347
超高速ペタワットレーザーシステム
山川 考一
レーザー研究 34(2), p.109-116(2006) ; (JAEA-J 01527)
 30兆分の一秒(33fs)の間に850兆ワット(0.85PW)の光を放つテーブルトップレーザーが完成した。このようなレーザーは、瞬間的にエネルギーを微小領域に集中することができるため、超高強度,超高圧,超高密度等の極限状態の下で初めて発現する現象の研究が飛躍的に進展し、荷電粒子の加速からガン治療まで幅広い応用が期待される。本論文では、このペタワットチタンサファイアレーザー装置を中心に、こうした超高速レーザー開発において最も重要となる極短パルスレーザー光の発生と増幅、そして増幅過程におけるレーザー制御技術の現状と課題について紹介したい。

34001348
放射線抵抗性細菌の新規DNA修復促進タンパク質
佐藤 勝也; 大庭 寛史; 鳴海 一成
生物物理 46(5), p.270-274(2006) ; (JAEA-J 01528)
 これまでにわれわれは、放射線抵抗性細菌デイノコッカス・ラジオデュランスのDNA修復能欠損変異株の解析から、当該菌の放射線抵抗性に重要な役割を担う新規DNA修復促進タンパク質PprAを同定し、PprAタンパク質の有するDNA結合活性などの生化学的機能や放射線誘導性であるPprAタンパク質をコードする遺伝子の放射線応答プロモーターについて解析を進めてきた。本総説では、これまで得られた知見をもとにデイノコッカス・ラジオデュランスのDNA修復機構と放射線応答機構について示している。デイノコッカス・ラジオデュランスは、組換え修復タンパク質RecAが中心的な役割を担う既知のDNA修復機構を備えつつ、新規転写制御因子PprIに制御される新規DNA修復タンパク質PprAを中心とした独特なDNA修復機構を兼ね備えることで卓越したDNA修復能力を有していると考えられる。

34001349
高出力・広帯域光パラメトリックチャープパルス増幅システム; 数サイクルテラワットレーザーパルスの発生
山川 考一
信学技報 106(90), p.49-52(2006) ; (JAEA-J 01529)
 近年進展の著しい光パラメトリックチャープパルス増幅(OPCPA)による高強度超短パルス発生技術ついて現況を紹介するとともに、今回新たに提案した半導体直接励起Yb:YLFチャープパルス増幅(CPA)システムを励起源としたテラワット級数サイクルOPCPAシステムの開発現状について言及する。また、OPCPAシステムのさらなる高繰り返し化,高エネルギー化についても議論する。

34001350
基本拡散式による地上濃度推定のための実効風速の決定方法
林 隆
大気環境学会誌 41(6), p.289-299(2006) ; (JAEA-J 01530)
 原子力施設の安全審査に使用されている基本拡散式には、代表風速を入力しなければならない。この代表風速に放出高風速を用いた計算結果は、拡散実験で得た地上測定濃度と一致しなかった。著者は計算結果と測定濃度を合致させる実効風速を求める方法を発見した。拡散実験時の実効風速を求め、実効風速との気象要素との関係について示した。

34001351
ピッティング損傷による疲労強度劣化
直江 崇; 二川 正敏; 大井 俊志; 涌井 隆; 本橋 嘉信*
材料 55(10), p.944-950(2006) ; (JAEA-J 01531)
 J-PARC核破砕水銀ターゲットでは、パルス陽子線が水銀ターゲットに入射すると、水銀中で熱衝撃に伴った圧力波が生じる。これにより、ターゲット容器は、圧力波に起因した巨視的応力変動と、キャビテーション気泡崩壊による局所衝撃を受ける。これらの事象は同時に進行し、ターゲット容器構造材を劣化させる。したがって、ピッティング損傷時の疲労強度を評価することは、ターゲット容器の構造健全性を確保するうえで不可欠である。そこで、まず陽子ビーム入射回数によるピッティング損傷の成長挙度を評価するために、高サイクルの衝撃圧力負荷試験を行った。さらに、ピッティング損傷を付加した材料を用いて疲労試験を行い、ピッティング損傷深さと疲労強度の劣化について検討した。その結果、水銀ターゲット容器は、設計寿命である半年間の1MW運転後にピッティング損傷による残強度が1/2程度に低下することが推測された。

34001352
アルカリ性条件における炭素鋼の腐食に伴う硝酸イオンの化学的変遷挙動
本田 明; 加藤 卓; 建石 剛*; 今北 毅*; 増田 薫*; 加藤 修*; 西村 務*
材料と環境 55(10), p.458-465(2006) ; (JAEA-J 01532)
 放射性廃棄物を地下に処分したときの放射性物質の移行現象は、環境の酸化還元状態や配位子濃度によって影響を受ける可能性があるため、セメント環境を想定したアルカリ性条件で硝酸イオンの金属による還元挙動を検討した。その結果、亜硝酸イオン濃度1.0mol/Lの場合及び硝酸イオン濃度1.0mol/Lの場合と硝酸イオンも亜硝酸イオンも含まない場合の同一電位での電流密度を比較すると、それぞれおよそ2桁から3桁程度及び1桁から2桁程度大きいにもかかわらず、炭素鋼の腐食速度は、硝酸塩の濃度の影響は受けないかむしろ低下し、腐食反応系がアノード支配型であることがわかった。また炭素鋼の腐食に伴う硝酸イオンの還元過程は、硝酸イオン→亜硝酸イオン→アンモニアなる逐次反応と考えられる。また、アノード支配型の腐食反応におけるカソード過程として、硝酸イオンの還元反応は、水の還元反応と競合すると考えられる。硝酸イオン濃度が高い場合(e.g. 1.0mol/L)には、硝酸イオンの共存しない場合と比較して、腐食に伴う水素発生速度が1/100から1/500と非常に小さくなった。アンモニアの生成速度は、硝酸イオン濃度が1.0E-3mol/Lから1.0mol/Lの範囲でほとんど影響はなかった。

34001353
Large-scale direct simulation of two-phase flow structure around a spacer in a tight-lattice nuclear fuel bundle
高瀬 和之; 吉田 啓之; 小瀬 裕男*; 秋本 肇
Compotational Fluid Dynamics 2004 , p.649-654(2006) ; (JAEA-J 01533)
 日本原子力研究開発機構が研究を進めている革新的水冷却炉は減速材の割合を減らして中性子の減速を抑制することで高い転換比が期待できる原子炉であり、炉心には直径13mm程の燃料棒が1mm程度の燃料棒間ギャップ幅で三角ピッチ状に稠密に配置される。このような狭隘流路内の二相流挙動を高温高圧の原子炉条件下で詳細に計測することは困難であることから、著者らは実験データを必要としないシミュレーションだけによる評価法の開発を行っている。本論文では、革新的水冷却炉の炉心燃料集合体1カラム内二相流を対象にして、超高性能計算機による大規模シミュレーションの結果を示す。本研究によって、燃料集合体内の狭隘流路に設置されるスペーサまわりの気相と液相の挙動や燃料棒外表面を薄膜状に流れる液膜挙動などが定量的に明らかになるとともに、シミュレーションを主体とした炉心熱設計手法の実現に対して高い見通しが得られた。

34001354
Effects of the orientation of clay particles and ionic strength on diffusion and activation enthalpies of I- and Cs+ ions in compacted bentonite, 2
佐藤 治夫
Materials Research Society Symposium Proceedings, Vol.932 , p.905-912(2006) ; (JAEA-J 01536)
 Naスメクタイト中のI-とCs+イオンに対する非定常拡散実験を、スメクタイト粒子の配向方向に対して配向方向と直角方向に対して、乾燥密度,塩濃度,温度を変えて行い、見掛けの拡散係数(Da)と活性化エンタルピー(Ea)の異方性と塩濃度の影響について考察した。前回の報告で、イオン電荷に依存して拡散移行経路が異なることを報告したが、Eaの乾燥密度依存性については、Daの温度依存性に対するばらつきが大きかったため、定性的な議論にとどまった。本報告では、特にEaについて定量的に議論する。I-イオンのEaは、低乾燥密度において水中の拡散係数(Do)のEaとほぼ等しく、密度の増加に伴い増加した。Cs+イオンのEaは、低乾燥密度においても明らかに高いEaが得られ、密度の増加に伴い増加した。この高いEaは、低乾燥密度においてはスメクタイト中のCs+とNa+イオンとのイオン交換エンタルピー(Ho)の影響で説明でき、高乾燥密度においてはHoに加えて間隙水の活量低下の影響によると考えられた。

34001355
Effects of sequence, cyclization, and superhelical stress on the internal motions of DNA
松本 淳; Olson, W. K.*
Normal Mode Analysis; Theory and Applications to Biological and Chemical Systems , p.187-211(2005) ; (JAEA-J 01537)
 最近、DNA2重らせんの局所的な構造の塩基配列依存性を無視することなく、比較的長いDNA分子の動的構造特性を研究するための新しい計算機手法を開発した。DNA分子を粗視化することにより、通常の計算では扱えない長さのDNAの運動を解析することが可能になった。また、粗視化モデルを用いることにより、局所的な構造とその動的性質の変化が、DNAの全体構造の運動に与える影響を、容易に推測することができるようになった。このレビューでは、まず、DNA2重らせんに対する基準振動解析計算によって明らかになったDNAの配列とDNA全体の運動の関係について述べる。次に、DNAが環状になった際の、DNAの運動の変化について考察する。さらに、DNAにねじれが加わった際に起こる大規模な構造変化について議論する。

34001356
Characteristic of thermal neutron flux distribution in phantom with extended collimator developed for head and neck cancer
中村 剛実; 熊田 博明; 岸 敏明
Proceedings of 12th International Congress on Neutron Capture Therapy (ICNCT-12) , p.535-538(2006) ; (JAEA-J 01538)
 頭頚部癌に対するBNCTでは、患者の肩等が壁に当たるため患部をビーム孔に接近させることが困難である。そこでJRR-4の既存の内径12cmのコリメータを壁から15cm延長し、ビーム孔部を壁から突出させた形状のコリメータを開発した。この延長コリメータを用いて熱及び熱外中性子ビームモードを使用して外径18.6cmの円筒水ファントム内に長さ10cm,外径0.25mmの金線を配置させて、ファントム内の金線反応率から熱中性子束分布を測定した。熱中性子モード1に対して、ビーム軸上熱中性子束プロファイルの最大値は、ファントムの表面から深さ6mmで現れ、定格出力3500kWで2.4×109(n/cm2/s)であった。同様に、熱外中性子ビームモードに対して、ビーム軸上熱中性子束プロファイルの最大値は、ファントムの表面から深さ16mmで現れ、定格出力3500kWで1.8×109(n/cm2/s)であった。このレポートでは水ファントム内の熱中性子束分布から延長コリメータでの中性子ビームに対する特性を報告する。現在、延長コリメータはJRR-4での頭頸部癌の臨床試験に利用されている。

34001357
Shape optimization using an adjoint variable method in ITBL grid environment
篠原 主勲; 奥田 洋司*; 伊東 聰*; 中島 憲宏; 井田 真人
Proceedings of 14th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-14) (CD-ROM) , 10p.(2006) ; (JAEA-J 01539)
 実機適用を目指して、非定常流れ場における随伴変数法を定式化し、スムージング手法,ロバストなメッシュ変形技術を実装することで円柱などの初期形状でも最適形状に収束させる随伴変数法による3次元形状最適化アルゴリズムを構築した。ラグランジュ関数の停留条件より導出した最適化の試験開始時間から最適化の試験終了時間を各時間ステップでの圧力,流速からなる状態変数を順時間で求める。その各時間での状態変数を用いながら随伴方程式の随伴変数を逆時間で計算していく。このことより、非定常流れ場に配置された円柱形状でも最適形状に収束可能とする随伴変数法による形状最適化アルゴリズムを提案する。

34001358
Preliminary calculation of stress change of fuel pin using SiC/SiC composites for GFR with changing of thermal conductivity degradation by irradiation
Lee, J.-K.; 永沼 正行
Proceedings of 15th Pacific Basin Nuclear Conference (PBNC-15) (CD-ROM) , 6p.(2006) ; (JAEA-J 01540)
 ガス冷却高速炉(GFR)はGeneration IVの候補概念の一つとして研究が行われている。GFRの主な特徴として、熱伝達効率のためには冷却ガスを高温かつ高圧に維持する必要がある。本研究では、ガス冷却高速炉として、SiC/SiC複合材料被覆管を用いる燃料ピン型炉心を想定し、被覆管壁の熱応力を線出力,温度条件に対して評価した。本作業を通して、SiC/SiC複合材料の適用可能性を高めるためには製造過程におけるマトリックスの緻密化と界面相の改善が効果的であることがわかった。また、炉心設計の観点からは照射による熱伝導度の減少が最も重要な因子であることが確認された。これらの結果は、炉心構成要素の寸法・形状の決定だけでなく、SiC/SiC複合材料の改善方向を提示するために有用である。

34001359
JSFR; Japan's challenge towards the competitive SFR design concept with innovative technologies
三原 隆嗣; 小竹 庄司
Proceedings of 15th Pacific Basin Nuclear Conference (PBNC-15) (CD-ROM) , 6p.(2006) ; (JAEA-J 01541)
 JSFR(JAEA Sodium Fast Reactor)の設計研究では、経済的競争力の向上が重要な開発目標の1つである。JSFRの設計研究では、NSSSの物量削減のために数々の革新技術を採用し、またBOPの物量削減を狙って完全自然循環型崩壊熱除去系を採用した。このような方策を導入した結果、経済性にかかわる設計要求を満たす可能性のあることが確認され、プラント建設費1000USD/kWe(NOAK,オーバーナイトコスト)が達成できる見通しを示すことができた。

34001360
JOYO, the irradiation and demonstration test facility of FBR development
青山 卓史; 関根 隆; 仲井 悟; 鈴木 惣十
Proceedings of 15th Pacific Basin Nuclear Conference (PBNC-15) (CD-ROM) , 6p.(2006) ; (JAEA-J 01542)
 高速実験炉「常陽」は、日本の自主技術によりナトリウム冷却高速炉の設計・建設・運転を行い、技術的知見を後続炉に反映するとともに、高速中性子照射場として活用することを目的として建設された。「常陽」は1977年にMK-I炉心としての初臨界を達成して以降、運転保守技術経験を蓄積するとともに、1982年の照射用炉心(MK-II炉心)としての運転開始からは、高速中性子による照射試験を中心として高速炉技術開発に貢献してきた。さらに、2003年には、高速中性子束を約1.3倍,照射スペースを約2倍に拡大することにより、照射性能を約4倍に向上させたMK-III炉心での運転を開始した。さらに、低除染TRU燃料サイクル技術開発を目的としたMA含有MOX燃料や、金属燃料及び酸化物分散強化型フェライト鋼等の照射実績の少ない照射試験を効率的に実施するため、キャプセル型照射装置の開発等を進め、先進的な燃料及び材料の照射試験を着実に進めている。世界の高速炉が停止されていく中で、「常陽」はGNEP等の国際的な枠組みにおいても照射施設としての役割が期待されている。今後、「常陽」は、高速炉開発にとどまらず、広く原子力一般,学術分野等の研究開発にも貢献していく。

34001361
Probabilistic safety assessment of Japanese sodium-cooled fast reactor in conceptual design stage
栗坂 健一
Proceedings of 15th Pacific Basin Nuclear Conference (PBNC-15) (CD-ROM) , 6p.(2006) ; (JAEA-J 01543)
 FBRサイクルの導入に伴うリスクを社会に存在する他のリスクよりも十分低く抑制する観点から、炉心損傷頻度の目標値を10-6/炉年未満と定め、FBRサイクルの実用化戦略調査研究フェーズ2の一環として、実用化候補の主概念である2ループのナトリウム冷却炉(大型炉及び中型炉)を対象に確率論的安全評価を実施した。その結果、大型炉,中型炉ともに出力運転時における内的起因事象による炉心損傷の発生頻度の点推定値は目標値の10-6/炉年を十分下回ることを示した。

34001362
Statistics of individual doses of JAERI for the past 48 Years
関口 真人; 高橋 聖; 宮内 英明; 橘 晴夫; 小室 祐二*; 根本 喜代子*; 大川 伊久子*; 吉澤 道夫
Proceedings of 2nd Asian and Oceanic Congress Radiological Protection (AOCRP-2) (CD-ROM) , p.114-117(2006) ; (JAEA-J 01544)
 日本原子力研究所では、設立の翌年(1957年)から放射線業務従事者の個人被ばく線量管理が開始された。本報告では、2005年に核燃料サイクル開発機構と統合し日本原子力研究開発機構が設立したのを機に、48年間の個人被ばくの統計(総線量,平均線量,最大線量及び線量分布等)をまとめた。1960年代は、施設のトラブルや改造に伴う被ばくが多く、総線量が1200人・mSvを超え平均線量も0.4mSvを超える年が多い。その後、線量低減が図られ、総線量は400人・mSv以下(ピーク時の約1/3)に、平均線量は0.04mSv程度(ピーク時の約1/10)まで減少した。ホットラボ施設における除染,施設の解体,実験設備の改造等による作業が多い近年においても、総線量はあまり増加していない。また、累積頻度の解析から、近年では、比較的被ばく線量の高い特定の作業者集団が存在することがわかった。

34001363
Airborne radioiodine monitoring at Tokai reprocessing plant
三上 智; 小嵐 淳; 宮内 亨; 秋山 聖光; 小林 博英
Proceedings of 2nd Asian and Oceanic Congress Radiological Protection (AOCRP-2) (CD-ROM) , p.308-312(2006) ; (JAEA-J 01545)
 東海再処理施設においては、周辺環境への影響評価のために1週間単位で放射性ヨウ素(I-129)の放出量を正確に評価しているが、併せて施設運転管理上重要な放射性ヨウ素放出率の急激な上昇等の情報を迅速に捉えるため放射性ヨウ素の連続モニタリングも実施している。さらに、クリプトンガス(Kr-85)の放出が伴う燃料処理運転時における放射性ヨウ素の放出監視機能を強化する目的で、クリプトンガスの影響を受けない放射性ヨウ素連続監視装置を開発し運用している。このように原子力機構では再処理施設の排気に特有な放射線状況に応じた排気中放射性ヨウ素モニタリング技術を開発,確立している。

34001364
Development of dust monitor for rapid detection of plutonium with background compensation system
眞田 幸尚; 小林 博英; 橋本 哲夫*
Proceedings of 2nd Asian and Oceanic Congress Radiological Protection (AOCRP-2) (CD-ROM) , p.313-317(2006) ; (JAEA-J 01546)
 プルトニウム等のアルファ線を放出する放射性核種の迅速な測定を目的とし、時間間隔解析法の理論を応用することによって天然放射性核種のバックグラウンドを補償できるダストモニタを開発した。空気粉塵試料のアルファ線を測定するうえで妨害となるマイクロセコンド単位の半減期を持つ214Poを、時間間隔解析法により選択的に測定することによってバックグラウンドを補償する。ダストモニタは、原子力施設で一般的に用いられているろ紙(HE-40T)上に集めた空気粉塵をSi半導体検出器によって直接ベータ線とアルファ線を測定し、パルス間の時間間隔とパルス波高をデータリストとして保存する構成とした。本ダストモニタを、実際に再処理施設の作業場に設置し測定を行った。214Poを選択的に測定することによってバックグラウンドを差し引くことができるため、全アルファ線の計数は0cps付近を示した。また、アルファ線放出核種の混入を模擬し、小型の241Am線源を導入して測定を行ったところ、バックグラウンドを補償しない場合より測定は迅速かつ正確となることが示唆された。

34001365
Specific absorbed fractions for photon and electron to a simple stomach model considering stem cells
木名瀬 栄; 横谷 立子; 斎藤 公明
Proceedings of 2nd Asian and Oceanic Congress Radiological Protection (AOCRP-2) (CD-ROM) , p.509-513(2006) ; (JAEA-J 01547)
 本研究では、モンテカルロ計算により、光子及び電子に対する胃壁全体や幹細胞位置などの比吸収割合(SAF)を評価した。また、評価したSAFを用い、陽電子放出核種について、胃壁全体や幹細胞位置などのS値を評価した。その結果、胃内容物に均一分布した線源に対し胃の幹細胞位置の光子SAFは、10keV-4MeVの光子エネルギー範囲において、これまで放射線防護分野などで利用してきた胃壁全体の光子SAFに比べ最大5倍程大きくなること,胃の幹細胞位置に対する電子SAFは、これまで放射線防護分野などで利用されてきた電子SAFのような定数ではなく、電子エネルギーに対して大きく依存すること、などを明らかにした。また、18Fなどの低エネルギー陽子放出核種に対する胃の幹細胞位置のS値は、これまで放射線防護分野などで利用されてきた胃のS値に比べ0.7倍程小さくなることがわかった。これにより、胃組織内の標的部位の決定が、線量評価に直接関係するSAFやS値評価において極めて重要であることを明らかにした。

34001366
Improvement of the FP gas discharge quantification method preparing for reactor accident
橋本 周; 薄井 利英
Proceedings of 2nd Asian and Oceanic Congress Radiological Protection (AOCRP-2) (CD-ROM) , p.1175-1181(2006) ; (JAEA-J 01548)
 原子炉施設において気体状放射性物質の放出が発生した場合に、既存のガスモニタを用いて放出管理を行う必要がある。一般的にガスモニタは、放出ガスの放射能を連続的に評価するための十分な情報を得ることができない。そのため、核種組成を決定する手法の一つとして、放出ガスをサンプリングし、Ge-PHAで核種分析を実施している。ところが現状では、核分裂生成物(FP)の希ガス核種に対する感度の評価が不十分であったり、複数核種が放出された場合の評価手法の整備も不十分であった。そこで、FPガス核種に対するガスモニタの応答について、モンテカルロ法を用いて計算的に評価を行った。その結果、FPガス核種に対するガスモニタの換算定数を与えることができた。複数核種が放出された場合の評価手法の改善として、ガスサンプリング容器の整備を行った。従来の金属製容器から樹脂製容器に変更したことで低エネルギーγ線の検出感度が上昇した。また、この分析結果に基づき、ガスモニタの測定値から個々のガス濃度を導く方法について具体化を図り、ガスモニタを用いたモニタリングと放出評価の手法について整備することができた。

34001367
Impurity-induced decohesion in iron grain boundary; A First-principles study
山口 正剛; 西山 裕孝; 志賀 基之; 蕪木 英雄; 松澤 寛*
Proceedings of 3rd International Conference on Multiscale Materials Modeling , p.733-735(2006) ; (JAEA-J 01549)
 bcc鉄(Fe)の対称傾角粒界Σ3(111)に不純物や固溶原子を加えることにより発生する粒界脆化に対し、第一原理計算を用いてその脆化メカニズムを調べた。不純物及び固溶原子としては、B, C, N, O, Si, P, S, Mn, Ni, Cuを用いて、粒界の原子間結合に与える影響を調べた。その結果、固溶原子の偏析エネルギー,引っ張り強さ,粒界の結合エネルギー等の値を導出することに成功した。また、これらの値は実験結果をよく説明していることが明らかになった。

34001368
Development of core dynamics analysis of coolant flow reduction tests of HTTR
高松 邦吉; 中川 繁昭; 武田 哲明
Proceedings of 3rd International Topical Meeting on High Temperature Reactor Technology (HTR 2006) (CD-ROM) , 6p.(2006) ; (JAEA-J 01550)
 高温工学試験研究炉(HTTR)は、原子炉熱出力30MW,原子炉出口冷却材温度950℃の黒鉛減速,ヘリウムガス冷却の高温ガス炉である。HTTRを用いた循環機停止試験は、強制循環冷却機能の部分喪失を生じさせ、原子炉保護設備が通常の流量設定値で作動しない場合でも、負の反応度フィードバック特性により原子炉出力が低下し、原子炉が安定に所定の状態に落着き、この間、冷却材温度,炉内構造物温度等の変化が緩慢であることを実証した。また、動特性解析では、炉心全体の熱移動を考慮したモデルと燃料チャンネルモデルを結合し、1点炉近似動特性方程式を解くことで、実機の試験データを再現することが可能となり、設計・評価に関する解析手法を高精度化することができた。さらに、適切な安全裕度を仮定することで、経済的に優れた超高温ガス炉(VHTR)システムの設計が可能となった。

34001369
Study on the separation distance in the HTGR hydrogen production system (GTHTR300C)
西原 哲夫; 國富 一彦; 村上 知行
Proceedings of 3rd International Topical Meeting on High Temperature Reactor Technology (HTR 2006) (CD-ROM) , 8p.(2006) ; (JAEA-J 01551)
 高温ガス炉水素製造システムにおいて、水素製造プラントは原子炉に近接されるため、水素漏えい事故に対する設計上の考慮が必要となる。配管破断時には高圧水素はジェットとして噴出するため、水素蒸気雲爆発に対する安全評価を実施するには、原子炉施設周りの水素の噴流拡散挙動を解析する必要がある。本検討においては、水素漏えい量,配管口径,障壁等の効果を調べることを目的として、STAR-CDを用いた解析により、拡散特性を評価した。水平移動距離を移流距離と定義し、それぞれのケースについて比較検討を行った。爆風圧力の評価は汎用的なマルチエネルギー法を用いた。爆発時の有効エネルギーは拡散解析の結果を元に算出した。水素ガスの移流拡散距離と爆風圧減衰距離を組合せたものを離隔距離として提案した。この方法を用いて、水素製造プラントと原子炉施設に離隔距離を最適化することができる。

34001370
Performance recovery of proton-irradiated III-V solar cells by current injection
佐藤 真一郎; 宮本 晴基; 大島 武; 今泉 充*; 森岡 千晴*; 河野 勝泰*; 伊藤 久義
Proceedings of 7th International Workshop on Radiation Effects on Semiconductor Devices for Space Application (RASEDA-7) , p.161-164(2006) ; (JAEA-J 01554)
 陽子線を照射したIII-V族半導体太陽電池の電流注入による特性回復を調べた。InGaP/GaAs/Ge三接合太陽電池に50keV又は10MeVの陽子線をそれぞれ1×1012及び1×1010ions/cm2まで室温で照射したのちに同じく室温で電流注入を行い、それらの電気特性の回復を調べた。その結果、三接合太陽電池の短絡電流は回復が見られなかったが、開放電圧が回復した。また、50keV陽子線を照射した試料は10MeV陽子線を照射した試料よりも大きな回復を示すことが判明した。

34001371
Electron irradiation test method for the evaluation of space solar cells
宮本 晴基; 佐藤 真一郎; 大島 武; 今泉 充*; 森岡 千晴*; 伊藤 久義; 河野 勝泰*
Proceedings of 7th International Workshop on Radiation Effects on Semiconductor Devices for Space Application (RASEDA-7) , p.189-191(2006) ; (JAEA-J 01555)
 宇宙用のInGaP/GaAs/Ge三接合太陽電池とSi太陽電池に1.0MeV, 0.8MeVの電子線を大気中にて照射(1×1015〜5×1015/cm2)する際に、照射窓と試料の間の距離を20から50cmと変化させ、そのときの電気特性劣化の差異を調べた。今回の試料条件では照射される電子線のエネルギーは大気及び試料窓材(Ti)により0.93から0.71MeVまで変化するが、電子線照射による三接合太陽電池の劣化に関しては、照射窓と試料の間の距離の違いによる差異は見られなかった。Si太陽電池については0.93MeVと0.87MeVの電子線照射については変化が見られなかったが、0.73MeVまで電子のエネルギーが減衰すると劣化の減少が見いだされた。

34001372
資源・環境問題の調和的解決を目指した高速増殖炉サイクルシステムの開発
向 和夫
21世紀の環境とエネルギーを考える,Vol.31 , p.5-20(2006) ; (JAEA-J 01557)
 我が国におけるFBRサイクル導入の意義は、エネルギー資源の問題と環境負荷低減の問題との調和的な解決を図ることにある。「FBRサイクルの実用化戦略調査研究」のフェーズIIでは、総合的に最も優れた概念と評価された「ナトリウム冷却炉,先進湿式法再処理及び簡素化ペレット法燃料製造の組合せ(酸化物燃料)」を主として開発を進めていく概念として選定した。本概念については、経済性向上のため出力や処理規模の増加、そして多くの革新技術が導入されている。研究開発リスクの低減を図りつつ、多くの革新技術を含む実用施設の建設・運転を実現していくには、実験・実証施設や機器の規模の段階的なスケールアップを図り、開発目標への適合性や革新技術の実現性・信頼性を着実に検証していく必要がある。世界ではFBRサイクルの実用化を目指した研究開発が大きく加速されつつある。FBRサイクル技術の先進国として「常陽」,「もんじゅ」,「再処理施設」及び「MOX燃料製造施設」を有し、FBRサイクルの具体的な実用化概念を提示してきた実績と優位性を活かし、我が国の総力を挙げてFBRサイクルの実用化への研究開発を着実に進めていく必要がある。

34001373
大規模揚水試験による水理地質構造の推定
竹内 真司; 竹内 竜史; 三枝 博光
日本地下水学会2006年秋季講演会講演要旨 , p.264-269(2006) ; (JAEA-J 01559)
 日本原子力研究開発機構が岐阜県瑞浪市で進めている超深地層研究所計画では、現在、主立坑(直径6.5m)及び換気立坑(直径4.5m)の掘削を行っている。この立坑掘削中の水位変動に伴う周辺観測孔などの水圧応答を利用して地下深部の水理質構造を推定した。その結果、立坑周辺に分布する断層などの遮水構造の存在や岩盤の大局的な透水性などを推定することができた。

34001374
難透水性岩石を対象とした閉鎖型フローポンプ式室内透水試験法の適用性
瀬尾 昭治*; 戸井田 克*; 小林 一三*; 田中 真弓*; 松井 裕哉; 國丸 貴紀; 操上 広志
日本地下水学会2006年秋季講演会講演要旨 , p.310-315(2006) ; (JAEA-J 01560)
 日本原子力研究開発機構は、北海道幌延町に分布する新第三紀堆積岩を対象として、高レベル放射性廃棄物の地層処分技術の研究開発を主たる目標としたプロジェクト(幌延深地層研究計画)を実施している。本プロジェクトで対象としている新第三紀珪質岩は、透水性が極めて小さい難透水性岩石であることがわかっており、その透水係数の定量的評価は、信頼性の高い水理地質構造モデル構築のうえで重要な課題の一つである。難透水性岩石を対象とした室内透水試験法としては、トランジェントパルス法,フローポンプ法などが適用されているが、本報では新第三紀珪質岩に対して、従来型のフローポンプ式透水試験装置を改良した閉鎖型フローポンプ式透水試験装置を適用した結果について報告する。なお、透水試験に用いた岩石試料は、幌延深地層研究計画の中で掘削したHDB-10孔(掘削長約550m)のボーリングコアのうち深度約500mから採取した珪質泥岩(稚内層)試料である。

34001375
炉心内複雑二相流挙動に関する数値解析
高瀬 和之; 吉田 啓之; 玉井 秀定; 小瀬 裕男*; 青木 尊之*; Xu, Z.*
日本機械学会2006年度年次大会講演論文集, Vol.2 , p.39-40(2006) ; (JAEA-J 01561)
 次世代型軽水炉の燃料集合体を対象にして、開発中であるシミュレーションを主体とした炉心熱設計手法を使って複雑な二相流挙動の予測評価を行った。使用したコードは著者らが開発している界面追跡法を改良したTPFITと商用コードとして世界的に有名であるFLUENTである。TPFITは気液二相流現象の高精度予測が可能であり、FLUENTは非構造格子による複雑流路形状の解析が可能である。本研究によって、燃料棒表面を流れる液膜の挙動,燃料チャンネルを流れる気泡の挙動,スペーサ領域で飛散する液滴の挙動などの詳細を定量的に把握することが可能になり、熱設計精度向上に関しての見通しが得られた。

34001376
Reduction of fluctuation and small bias observed in continuous volume monitoring taken in an annular tank for plutonium nitrate
細馬 隆; 向 泰宣; 田中 秀樹
STI/PUB/1298 (CD-ROM) , p.699-705(2007) ; (JAEA-J 01564)
 再処理及び転換施設では、計量管理及び保障措置の目的で、環状槽内の硝酸プルトニウム溶液の密度と液量を浸漬管により正確に測定している。この方法は、浸漬管先端における静水圧測定を原理としており、測定中は溶液を静置することが前提である。本前提は、計量測定のための短い時間中は満たされるが、それ以外の時間は、安全上の理由から常時撹拌されている。その結果、溶液は槽内で流動し、静水圧に振動を与えるうえ、条件によってはわずかながら測定上のバイアスをもたらす。槽の連続監視データは保障措置上の非常に重要な情報であるが、以上の理由で見かけの液量変化が現れる。このような測定値の変動やバイアスは、槽の底部に近い浸漬管は撹拌の影響を受けにくい一方、底部から数百mmの高さにある浸漬管は撹拌の影響を受けやすいため、撹拌の影響が相殺されることなく密度測定値と液量測定値に現れるために生じると考えられる。測定原理上、密度測定値に+の変動が生じると液量測定値には-の変動を生じる。そこで、液量と密度の積から求まる溶液重量に着目し演算処理したところ、変動や測定バイアスは著しく減少した。

34001377
Growth of oxygen adlayer on Ru(0001) with high energy supersonic oxygen molecular beam
高橋 真*; 藤本 洋介*; 寺岡 有殿; 吉越 章隆; 盛谷 浩右*; 有賀 哲也*
KEK Proceedings 2006-3 , p.80-82(2006) ; (JAEA-J 01566)
 高エネルギー超音速分子ビームによるRu(0001)表面での酸素吸着層の成長過程を高エネルギー分解能X線光電子分光法を用いて研究した。Ru 3d 5/2内殻準位を使って0.5から0.6反原子層(ML)領域の酸素吸着層成長を監守した。その光電子スペクトルはバルクとふたつの表面成分、S1(2O)とS1(3O)、に分離することができる。これらの表面成分はふたつ又は三つの酸素原子と結合した最表面Ru原子である。酸素の供給量に対する各成分の強度変化はRu(0001)表面上での部分的な島状成長の可能性を示唆している。

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