学会誌等掲載論文
※下記の研究開発成果は資料名順に並んでいます。

2006年2月


34000072
Ultraviolet photolysis of urine for suppression of color quenching prior to liquid scintillation counting of tritium
渡部 陽子; 桑原 潤
Analytical and Bioanalytical Chemistry 384(2), p.547-550(2006) ; (JAEA-J 00221)

 現在日本原子力研究開発機構では、トリチウムによる内部被ばく検査の目的で、作業者の尿を液体シンチレーションカウンタ(LSC)により測定している。尿の吸収波長領域はシンチレータ中蛍光体の発光領域と重なるため、測定時に色クエンチングが起こる。そのため、これまでは試料含有率を2%(v/v)と少なくすることにより、計数効率の低下や試料ごとのばらつきを最小限に抑えてきたが、高感度でトリチウムの検出を行うためには試料含有率を増加させることが望ましい。本研究では、近年、簡便さと有機物分解特性が評価されている紫外線照射を用いた前処理を実施することにより、試料含有率を増加させることを試みた。紫外線照射により色クエンチングの原因である有機化合物が分解され、トリチウム測定用試料中の尿含有率を40%まで増加させることができた。この尿含有率の増加により検出下限値は0.031Bq/mlと今までよりも一桁低い値を取った。また、検出下限値を従来の値に保つと測定時間は30分から0.5分まで短縮できた。これらの結果は、トリチウムの定期内部被ばく検査だけでなく緊急時の検査にも有用である。


34000073
Interaction of nitrogen with vacancy defects in N+-implanted ZnO studied using a slow positron beam
Chen, Z. Q.; 前川 雅樹; 河裾 厚男; 鈴木 良一*; 大平 俊行*
Applied Physics Letters 87(9), p.091910_1-091910_3(2005) ; (JAEA-J 00222)

 N+, O+イオンを酸化亜鉛結晶に注入、あるいは共注入した。これにより空孔集合体が導入されることが陽電子消滅法により示された。800℃でアニールを行うと、N+イオン注入によって発生した空孔集合体はその一部が消失するに留まるのに対し、酸素イオン注入の場合には全量が消失する。これは、窒素と空孔集合体の間には強い相互作用があることを示している。空孔欠陥を検出限界以下とするためには1250℃での高温アニールが必要である。さらに、窒素はアクセプタとして作用すると思われたが、実際にはn型の伝導型を示すことがホール測定により示された。一方、O+/N+イオンの共注入ではほとんどの空孔集合体が800℃で消失する。これは窒素−酸素複合体の形成のために酸素が窒素を捕獲し、空孔集合体の消失が促進されるためであると考えられる。これはO+/N+イオン共注入により、非常によく補償された半絶縁層を形成できることを示している。


34000074
Experimental study on spatial uniformity of H- ion beam in a large negative ion source
花田 磨砂也; 関 孝義*; 高戸 直之*; 井上 多加志; 森下 卓俊; 水野 貴敏*; 畑山 明聖*; 今井 剛*; 柏木 美恵子; 坂本 慶司; 谷口 正樹; 渡邊 和弘
Fusion Engineering and Design 74(1-4), p.311-317(2005) ; (JAEA-J 00223)

 原研10A負イオン源を用いて、JT-60U負イオン源の問題点の1つである負イオン源内の負イオン密度の空間的不均一の原因について、実験的に調べた。測定の結果、ビームの空間分布はJT-60U負イオン源同様フィルター磁場に対して垂直な高さ方向(長手方向)に非対称であり、上半分領域の強度は下半分の約60%〜80%程度であった。また、この時のプラズマ電極近傍の電子温度は高さ方向に対して均一なフィルター磁場を形成しているにもかかわらず不均一であり、上半分領域では1〜3.5eVで、下半分領域ではほぼ1eV一定であった。高速電子の軌道を計算した結果、この高い電子温度の原因はカソードから放出した高速電子がイオン源の上部壁近傍に存在する10Gauss以下の領域を通って、フィルター磁場を飛び越えて、プラズマ電極に漏れ出すためであることが明らかになった。そこで、プラズマ電極への高速電子の漏れ出しを抑制するために、計算で予測された位置に、5cm×5cmの閉止板を取り付けた。その結果、イオン源上部の電子温度は1eV程度まで減少し、上半分領域における負イオンビームの一様性も大きく改善され、20%程度ビーム電流値が増加した。本研究により、負イオン密度の不均一性の原因の一つは高速電子のプラズマ電極への漏洩であることが明らかになった。


34000075
Recent progress of negative ion based neutral beam injector for JT-60U
梅田 尚孝; 山本 巧; 花田 磨砂也; Grisham, L. R.*; 河合 視己人; 大賀 徳道; 秋野 昇; 井上 多加志; 椛澤 稔; 菊池 勝美*; 藻垣 和彦; 山崎 晴幸*; 渡邊 和弘; 池田 佳隆
Fusion Engineering and Design 74(1-4), p.385-390(2005) ; (JAEA-J 00224)

 JT-60U用負イオン中性粒子入射装置において、パルス幅を設計の10秒から30秒に伸ばす改造が行われた。パルス幅の延伸を妨げていたのは、イオン源接地電極とビームラインリミタへの過大な熱負荷であった。熱負荷を下げるために、イオン源のビーム引出領域を長パルス化に最適化するとともに、ビームリミタを熱容量が約2倍のものに変更した。これらにより、接地電極を冷却している水温上昇を定常運転に必要な40℃以下に抑えることができ、リミタの温度上昇も60%に抑えた。これにより、パルス幅を伸ばすことができ、これまでエネルギー336keV,パワー1.6MWで17秒間のビームをプラズマに入射することができており、今後30秒まで入射パルスを伸ばす予定である。


34000076
Temperature dependence of the transmission loss in KU-1 and KS-4V quartz glasses for the ITER diagnostic window
西谷 健夫; 杉江 達夫; 森下 憲雄; 横尾 典子*
Fusion Engineering and Design 74(1-4), p.871-874(2005) ; (JAEA-J 00225)

 ITERの分光計測用の窓材としては2種類のロシア製溶融石英、KU-1とKS-4Vが候補になっている。KU-1はOH基を約800ppm添加することにより耐放射線性を高めており、逆にKS-4Vは不純物を極力少なくすることにより耐放射線性を高めている。ITERにおける窓の取付け位置の線量は数MGyであり、そのような線量領域の照射効果の温度依存性のデータはほとんどなかった。そこで、原研高崎研究所のCo-60γ線照射施設を用い、KU-1とKS-4Vの透過率変化を室温,100,200,300℃の4点において、10MGyの線量まで測定した。試料寸法はφ16mm×8mmである。190〜2500nmの波長域で測定したが、400nm以上では有意な変化は見られなかった。KS-4Vでは100℃以上においてほとんど温度依存性がみられないが、215nmにおいても70%近い透過率を保っている。これに対し、KU-1では温度依存性が大きく、高温ほど透過損失が小さいが、室温〜200℃では215nmにおいて1%以下に減衰している。以上のことからITERの分光計測用窓材としてはKS-4Vが優れており、100℃程度で加熱して使用すれば、さらに透過損失の増加を抑制できることがわかった。


34000077
Updating the design of the feeder components for the ITER magnet system
吉田 清; 高橋 良和; 礒野 高明; Mitchell, N.*
Fusion Engineering and Design 75-79, p.241-247(2005) ; (JAEA-J 00226)

 約50GJの磁気エネルギーを蓄積するITER用超伝導コイル・システムは、核発熱や交流損失などで約23kWの熱が発生する。30本のフィーダーはその発熱を除去するための冷媒と、コイルに電流を供給する。フィーダーは、電源や冷凍機との取合を行うコイル端子箱(CTB),コイルの熱収縮を緩和するS字曲げ導体を収納するクライオスタット貫通部,クライオスタット内のフィーダーなどから構成される。またCTB内には、極低温装置へ電流を供給する電流リードが配置される。電流リードは、冷媒流量制御が容易で、狭い場所での水平配置が可能なガス冷却型電流リードに超臨界圧ヘリウムを供給する方式とした。本報告は、機器配置を最適化するとともに部品構造の改良を行った最新のフィーダー設計を示す。


34000078
Behavior on Li2TiO3 under varied surface condition
Olivares, R.*; 小田 卓司*; 大矢 恭久*; 田中 知*; 土谷 邦彦
Fusion Engineering and Design 75-79, p.765-768(2005) ; (JAEA-J 00227)

 チタン酸リチウム(Li2TiO3)は、核融合炉ブランケット用トリチウム増殖材の第1候補材として有望視されている。Li2TiO3からのトリチウム放出挙動を把握するため、表面における水素同位体の状態や水分の吸脱着特性を明らかにする必要がある。このため、Li2TiO3表面での水分吸脱着特性,水素同位体の化学状態及び表面の酸化還元状態を調べた。その結果、前処理を施していない試料に対してArスパッタリングを行ったLi2TiO3表面は、LiとOが選択的にスパッタされ、Li組成比の減少,Ti4+のTi3+への還元が観察された。その後の加熱実験では、473K以上の温度からTiの酸化及びLi空孔の回復が起こり、673Kで完全になる。一方、加熱後の水蒸気曝露により、水は解離吸着した。以上より、Li2TiO3表面のLi及びOの空孔は、H2Oの吸着を起こすこと、Li2TiO3表面はTiO2に近い状態であることがわかった。


34000079
The HFR Petten high dose irradiation programme of beryllium for blanket application
Hegeman, J. B. J.*; Van der Laan, J. G.*; 河村 弘; Moslang, A.*; Kupriyanov, I.*; 内田 宗範*; 林 君夫
Fusion Engineering and Design 75-79, p.769-773(2005) ; (JAEA-J 00228)

 ベリリウム(Be)のペブルベッドの寸法変化やトリチウム保持挙動に関する照射挙動を研究するため、オランダPettenの照射試験炉HFRによるベリリウム(Be)の高線量照射試験が、ヘリウム冷却ペブルベッド(HCPB)開発のための欧州計画の枠内で行われる予定となっている。原型炉でのBeのスエリング,クリープ,トリチウム・インベントリ,トリチウムの吸脱着メカニズム,熱機械的モデル等を研究するには、高線量照射が必要である。このBe高線量照射(HIDOBE)は、He生成量6000appm,温度400-800℃で行われる。本論文は、照射の現状,核的及び照射パラメータ,Beの材料パラメータ、すなわち試験マトリックスについて発表するものである。材料の一部は、IEA協定を通じて、日本及びロシアから供給されたものである。なお、本発表は、IEA協定(核融合炉材料の照射損傷に関する研究開発計画)の附属書2に基づいて実施された研究の成果に関するものである。


34000080
Thermal and thermal-stress analyses of IFMIF liquid lithium target assembly
井田 瑞穂*; 中村 博雄; 清水 克祐*; 山村 外志夫*
Fusion Engineering and Design 75-79, p.847-851(2005) ; (JAEA-J 00229)

 IFMIF条件下でのターゲットアセンブリ構造の熱的健全性を評価するため熱応力解析を実施した。強力中性子束の核発熱により、アセンブリ/背面壁間の熱伝達が15.8W/m2Kと小さい場合は背面壁に局所的に440℃の高温部が生じ、回転拘束の背面壁でも熱応力は最大で約500MPaとなり、リチウム流れに接する部分が2mm変位し、安定なリチウム流形成が困難となることを示した。熱伝達を150W/m2Kとすれば最大熱応力は約260MPaに軽減され、背面壁変位が0.3mmとなることを示した。これにより、現設計に対し、背面壁の拘束方法や冷却方法の考慮を加えることとした。次に、ターゲットアセンブリ全体の温度維持の成立性を評価するため温度解析を実施した。定常運転時に相当するテストセル真空条件0.1Paではアセンブリ,背面壁ともに温度がLi融点180℃以上であるが、メンテナンス時の1気圧Ar雰囲気では180℃以下となることを示した。同時に得られた必要なヒーター容量は15kW、熱遮蔽は0.2mm厚さのステンレス鋼で16層であり、これらの知見はターゲットアセンブリの設計見直しに反映される。


34000081
Fatigue assessment of the ITER TF coil case based on JJ1 fatigue tests
濱田 一弥; 中嶋 秀夫; 高野 克敏*; 工藤 祐介; 堤 史明*; 奥野 清; Jong, C.*
Fusion Engineering and Design 75-79, p.87-91(2005) ; (JAEA-J 00230)

 ITER TFコイル・ケースのインボード側(D形状の直線部及び上下コーナー部)材料は、4Kで、0.2%耐力が1000MPa以上,破壊靱性値200MPam0.5以上が要求される。原研が、鉄鋼メーカーと共同で開発したJJ1は、これらの要求を満足するステンレス鋼であり、インボード材料の候補となっている。TFコイル・ケースには繰り返し荷重が加わるが、これまで、ケース材料の母材及び溶接部の疲労寿命(S-N)特性については、十分なデータがなく、この面からの疲労解析はほとんど行われてこなかった。今回、JJ1について、母材及び溶接部の疲労寿命を、1万から200万サイクルまで、4.5Kで詳細に測定し、S-N曲線を得た。そして、原研が策定に協力しているITER構造技術基準(案)に則り、破断回数に対して20倍、応力強さ振幅に対して2倍の安全率を考慮した設計S-N曲線を導き、TFコイル・ケースの繰り返し荷重に関する疲労評価を実施した。その結果、TFコイルの仕様である6万回の繰り返し荷重に対して、疲労設計が技術基準案を満たすことを示した。


34000082
Effects of gelation and sintering conditions on granulation of Li2TiO3 pebbles from Li-Ti complex solution
土谷 邦彦; 河村 弘; Casadio, S.*; Alvani, C.*
Fusion Engineering and Design 75-79, p.877-880(2005) ; (JAEA-J 00231)

 チタン酸リチウム(Li2TiO3)微小球が、日本及び欧州の核融合炉用ブランケット設計に提案されている。Li2TiO3微小球の製造に関して、低コスト大量製造,リチウムの再利用の観点から湿式法やゾルゲル法が有望である。これまで、直接湿式法によるLi2TiO3微小球の予備製造試験を行い、微小球の焼結密度は80-85%T.D.に達したものの、結晶粒径及び真球度は満足したものではなかった。このため、Li2TiO3の溶解や凝固剤中への滴下効果及びゲル球の乾燥や焼結の効果を調べた。溶解試験では、2種類の30%-H2O2及び30%-H2O2+C6H8O7とも、溶解温度を60-100℃にすることにより、溶解率は97%以上であった。これらの溶解液を濃縮し、凝固剤として用いたアセトン中に滴下した結果、30%-H2O2+C6H8O7で溶解した溶液を用い、25℃のアセトン中に滴下した時、ゲル球が生成することがわかった。TG-DTA分析及びX線回折の結果、600℃までに4つのピークが観察されるとともに、得られた物質はLi2TiO3であることが明らかになった。


34000083
Non-stoichiometry of Li2TiO3 under hydrogen atmosphere condition
星野 毅; 土谷 邦彦; 林 君夫; 寺井 隆幸*; 田中 知*; 高橋 洋一*
Fusion Engineering and Design 75-79, p.939-943(2005) ; (JAEA-J 00232)

 核融合炉ブランケット用トリチウム増殖材料の第1候補材料であるチタン酸リチウム(Li2TiO3)は、良好なトリチウム放出特性を維持するために高温使用時における結晶粒の成長を抑制すること,水素雰囲気で使用されることに伴う構造変化への影響が少ないことが必要とされている。本研究では、結晶粒成長抑制材としての効果を示した酸化物(ZrO2, CaO, Sc2O3)を添加したLi2TiO3の結晶構造をエックス線回折測定にて解析するとともに、熱天秤を用い、水素雰囲気中におけるLi2TiO3の非化学量論性を調べた。Li2TiO3に酸化物を添加することにより、CaO添加はLi2Ti1-xO3+CaTiO、ZrO2添加はLi2TiO3+ZrO2の二相混合物となり、Sc2O3添加はLi2-xTi1-yScyO3-zの単一相となることを明らかにした。さらに、これらの試料は水素雰囲気中では還元され、酸素欠陥による重量減少がみられた。各試料の1mol あたりの酸素欠損量はCaO添加<無添加<ZrO2添加<Sc2O3添加の順となり、酸化物の添加はLi2TiO3の結晶粒成長を抑制するだけでなく、水素雰囲気中における酸素の欠損量にも大きな影響を与えることを解明した。


34000084
Synchrotron radiation photoelectron emission study of SiO2 film formed by a hyperthermal O-atom beam at room temperature
田川 雅人*; 十河 千恵*; 横田 久美子*; 鉢上 隼介; 吉越 章隆; 寺岡 有殿
Japanese Journal of Applied Physics 44(12), p.8300-8304(2005) ; (JAEA-J 00233)

 神戸大学が持つ酸素原子ビーム装置を用いてSi(001)基板上に室温で作製したシリコン酸化膜をSPring-8の原研軟X線ビームラインで光電子分光解析した。酸素原子ビームで作製したシリコン酸化膜では通常の熱酸化膜に比べてサブオキサイドが少ないことが明らかになった。


34000085
Selective OD bond dissociation of HOD; Photodissociation of vibrationally excited HOD in the 5νOD state
赤木 浩; 深澤 裕; 横山 啓一; 横山 淳
Journal of Chemical Physics 123(18), p.184305_1-184305_7(2005) ; (JAEA-J 00234)

 HOD分子のOD伸縮高振動状態(5νOD状態)を243.1nmの紫外光で光分解した。OH結合切断とOD結合切断の分岐比を、生成したH及びD原子を検出することにより決定した。OH切断によって生成したH原子は検出されず、OD結合切断が主な分解過程であることがわかった。量子波束計算により、今回観測された高い選択性の原因が、(1)5νOD状態がローカルモード的であること,(2)励起エネルギーが励起状態ポテンシャル曲面上の鞍点より低いこと、にあることを明らかにした。


34000086
Synthesis and characterization of copper hydroxide acetate with a layered discoid crystal
香西 直文; 三田村 久吉; 福山 裕康; 江坂 文孝; Komarneni, S.*
Journal of Materials Research 20(11), p.2997-3003(2005) ; (JAEA-J 00235)

 層状遷移金属水酸化物塩は、陰イオン交換性層状化合物の一種であり、陰イオン吸着材及びインターカレーションホストとして最近注目を集めるようになった。それゆえ、その種類,合成法,特性などに関する論文数は少ない。本研究では、従来とは異なる方法で合成した層状水酸化酢酸銅の基本的な特性について報告する。酢酸銅溶液を水酸化ナトリウム溶液でpH6.5まで滴定し、引き続き40℃で熟成することによって得られた化合物は、既知の層状水酸化酢酸銅Cu2(OH)3(OCOCH3)H2Oと組成及び幾つかの特性が類似している。酢酸含有率がわずかに低いこの化合物は、既知の化合物に比べて、結晶形、383K以下での固相への酢酸イオンの結合安定性,溶液中の陰イオンとの反応などが異なる。


34000087
Retention characteristics of hydrogen isotopes in JT-60U
正木 圭; 杉山 一慶*; 林 孝夫; 落合 謙太郎; 後藤 純孝*; 柴原 孝宏*; 廣畑 優子*; 大矢 恭久*; 宮 直之; 田辺 哲朗*
Journal of Nuclear Materials 337-339, p.553-559(2005) ; (JAEA-J 00236)

 JT-60Uにおいて、DD反応で生成されたトリチウム及び重水素のプラズマ対向壁への蓄積分布を評価し、真空容器内での水素同位体挙動を調べた。(1)プラズマ対向壁に蓄積されたトリチウムのIP及び燃焼法による測定と、損耗及び再堆積測定から以下の結果を得た。ドーム頂部でトリチウム濃度が最も高く、厚い堆積層が存在する内側ダイバータ部では低かった。(2)この結果とOFMC解析結果から、JT-60Uで得られたトリチウム分布は、DD反応で生成された高エネルギー(1MeV)トリチウムがリップルロスによりプラズマから損失し、エネルギーをあまり失うことなく壁に深く入射されたものであることが明らかとなった。(3)NRAによる重水素蓄積量測定結果では、プラズマ対向壁における重水素分布は、トリチウム分布と異なり、最も高い重水素蓄積量を示したドーム外側ウイングでもD/C〜0.05と低い値を示した。厚い堆積層の存在する内側ダイバータではさらに低く、D/C〜0.01以下であった。いずれの結果も、共堆積により多くのトリチウムが残留するJETのトリチウム分布とは大きく異なり、JT-60Uプラズマ対向壁における水素同位体の挙動は、それぞれの粒子のプラズマ対向壁への入射分布及び壁(炉内構造物)温度の影響を受けていることを示すものである。


34000088
Incident energy dependence of blistering at tungsten irradiated by low energy high flux deuterium plasma beams
Luo, G.; 洲 亘; 西 正孝
Journal of Nuclear Materials 347(1-2), p.111-117(2005) ; (JAEA-J 00237)

 鏡面仕上げした焼結材タングステン試料片にITERダイバータ周辺プラズマを模擬する重水素プラズマを照射し、そのブリスタリング挙動を調べた。今回行った照射の条件は、フラックス:1×1022D/m2/s,エネルギー:7〜98eV/D,フルエンス:3×1023〜6×1025D/m2,照射温度:室温であるが、いずれのエネルギーの照射においても、ブリスタリングの発生がSEM観察により確認された。また、ブリスタリング発生のフルエンス閾値が入射エネルギーの減少とともに増加すること、特に20eV/D以下の入射エネルギーの場合には、この閾値の増加が著しいことを見いだした。本現象は、試料表面に酸化皮膜が存在し、重水素の外部への再放出と内部への侵入に影響を及ぼしていると考えることによって説明できる。さらに、ブリスタの寸法と数はフルエンスの増加とともに初期にはいずれも増加するが、直径が2μm程度に逹すると成長が止まり、数のみが増加していく結果を得た。本結果は、ブリスタが2μm程度に成長すると亀裂が発生して内部のガスが放出されるため、と考えられる。


34000089
Radiochemical studies of the transactinide element, rutherfordium (Rf) at JAERI
永目 諭一郎
Journal of Nuclear and Radiochemical Sciences 6(2), p.A21-A28(2005) ; (JAEA-J 00238)

 原研における超アクチノイド元素ラザホージウムの放射化学的研究をレビューする。超アクチノイド核種261Rfを東海研タンデム加速器を用いて248Cm(18O,5n)反応で合成し、最大生成断面積を13nbと決定した。生成率は2分間に1原子であった。この261Rfの酸溶液中でのイオン交換挙動を、当グループで開発した迅速イオン交換分離装置を用いて単一原子レベルで系統的に調べた。その結果、塩酸や硝酸溶液中ではラザホージウムが周期表第4族元素の性質を示すことを明らかにした。一方フッ化水素酸溶液中では、他の第4族元素とは著しく異なるイオン交換挙動を示した。この奇妙な化学挙動は重元素領域で期待される相対論的効果の影響を示唆している。


34000090
Development of EC launcher components for ITER
高橋 幸司; 小林 則幸*; 春日井 敦; 坂本 慶司
Journal of Physics: Conference Series 25, p.75-83(2005) ; (JAEA-J 00239)

 ITER水平ポートランチャーの構成機器、例えば、可動ミラー,導波管伝送系,ダイヤモンド窓の開発における最近の進展について報告する。可動ミラー開発では設計・解析を中心に、冷却水供給用のスパイラル配管の繰り返し応力試験等も実施し、現実的な可動ミラー系の構造を確立した。ダイヤモンド窓開発では、窓表面あるいは内部において発生する可能性があるクラックと、冷却している窓周辺までの到達を仮定したときに起こり得る冷却水漏洩を防止することを目的として、周辺部に銅コーティングした窓を開発し、1MW級相当の大電力実験を行った。その結果、温度上昇は従来窓と比べて大きな変化は無く、コーティング部には問題となり得る熱応力も発生しないことを実証し、銅コーティングによりダイヤモンド窓の安全性が向上することを明らかにした。


34000091
Electron density behavior during fast termination phase of post-disruption runaway plasma
河野 康則; 仲野 友英; 朝倉 伸幸; 玉井 広史; 諫山 明彦; 近藤 貴; 波多江 仰紀; 竹永 秀信; 井手 俊介
Journal of Plasma and Fusion Research 81(10), p.743-744(2005) ; (JAEA-J 00240)

 ディスラプションにより発生する逃走電子プラズマが急速に消滅する際の特性理解を目的として、JT-60Uにおいて、接線炭酸ガスレーザ干渉計を用いた電子密度計測を行った。その結果、1回目の逃走電子電流急速減衰時には、直後に電子密度が急増することを観測した。また、2回目の急速減衰時には、電子密度が周期約1ミリ秒のスパイク状電子密度変動を伴い増加する場合があることを見いだした。このとき、増加した電子密度により電流減衰が速まっている可能性が示唆された。


34000092
Development of a heat-resistant neutron shielding resin for the national centralized tokamak
森岡 篤彦; 櫻井 真治; 奥野 功一*; 玉井 広史
Journal of Plasma and Fusion Research 81(9), p.645-646(2005) ; (JAEA-J 00241)

 フェノール樹脂を母材に、ホウ素を5重量%を混練して成形した300℃の耐熱性能を有する中性子遮へい樹脂材を新たに開発した。開発した中性子遮へい樹脂材の252Cf中性子源を使用した中性子遮へい性能は、代表的な中性子遮へい材であるポリエチレンの中性子遮へい性能とほぼ同じであった。この中性子遮へい樹脂材は、重水素放電時に超伝導コイルの核発熱を低減するための中性子遮へい材、並びに真空容器のポート部の漏洩中性子の遮へい材として適用可能である。


34000093
Single crystal growth and fermi surface properties of ThIn3
松田 達磨; 芳賀 芳範; 池田 修悟; 宍戸 寛明*; 摂待 力生*; 播磨 尚朝*; 大貫 惇睦
Journal of the Physical Society of Japan 74(12), p.3276-3282(2005) ; (JAEA-J 00242)

 ThIn3の純良単結晶育成をインジウムフラックス法により成功した。この試料を用いて電気抵抗,磁化率,ドハース・ファンアルフェン効果測定を行った。トリウムは、その電子配置にf電子を持たないため、劇的な物性異常は期待できないが、化合物中において価数が4価であることが期待されるため、遍歴的なf電子状態を持つセリウム化合物の電子状態を研究するうえで、極めて良い参照物質となる。今回の研究では、ドハース・ファンアルフェン効果測定の結果を圧力下で行われたCeIn3の実験結果やエネルギーバンド計算の結果と比較を行った。バンド計算の結果と極めて良い一致を示す一方、CeIn3との比較においては、小さいフェルミ面の極値断面積に違いがあることが明らかとなった。さらに、サイクロトロン有効質量については、CeIn3において100倍近くも増強されていることが明らかとなった。


34000094
Overview of JT-60U progress towards steady-state advanced tokamak
井手 俊介; JT-60チーム
Nuclear Fusion 45(10), p.S48-S62(2005) ; (JAEA-J 00243)

 本論文はJT-60Uにおける、前回のIAEA会議以降の実験研究成果について、特に先進トカマク開発に着目しつつレビューするものである。主な成果:規格化圧力βN=2.3の22.3秒間/βN=3の6.2秒間維持(どちらも電流拡散時間以上)、定常炉で望まれているような高い自発電流割合(0.75)を電流拡散時間以上の7.4秒間維持、に維持することに成功した。長時間高リサイクリングELMy H-modeプラズマ放電を得、壁飽和に関する新たな知見を得た。ECCDの早期入射が新古典テアリングモード抑制に効率的であることを示し、高βN(3)でのモード抑制を実証した。その他、MHD,高エネルギー粒子閉込め,電流ホール,Hモード等に関する研究が進展した。


34000095
Nonlinear behaviour of collisionless double tearing mode induced by electron inertia
松本 太郎; 内藤 裕志*; 徳田 伸二; 岸本 泰明*
Nuclear Fusion 45(11), p.1264-1270(2005) ; (JAEA-J 00244)

 核融合プラズマの中心部のような高温になると電気抵抗が小さくなるとともに、電子慣性等の非衝突効果(運動論的効果)が磁気再結合過程に深くかかわる。本研究では、これらプラズマの粒子性を物理的に忠実に取り扱う観点から、ジャイロ運動論的粒子モデルを用いた3次元シミュレーションにより、反転磁気シア配位トカマクにおける磁気再結合を伴うMHD不安定性に対する運動論的効果の解明を目的とした。反転磁気シア配位において二つの共鳴面の距離が近いと、互いの共鳴面における摂動が結合し、ダブルテアリングモード(DTM)と呼ばれる内部モードが生じる。高温プラズマにおいて電子慣性により誘起される運動論的DTMは、抵抗性モデルにより予期されるものより、速い内部崩壊を引き起こし得ることが明らかとなった。さらに、内部崩壊により掃き出された電流は、DTMが作り出した静電ポテンシャルに導かれて凹型に再集中し得ることが明らかになった。本研究は、低ベータ負磁気シア実験におけるディスラプション機構の一端を示しており、またDTMを経た電流分布の再分配により負磁気シア配位を再構築し得ることを示唆している。


34000096
Development of advanced superconducting coil technologies for the National Centralized Tokamak
木津 要; 三浦 友史*; 土屋 勝彦; 安藤 俊就*; 小泉 徳潔; 松井 邦浩*; 逆井 章; 玉井 広史; 松川 誠; 石田 真一; 奥野 清
Nuclear Fusion 45(11), p.1302-1308(2005) ; (JAEA-J 00245)

 トカマク国内重点化装置の工学研究をとおして、将来の核融合装置に適用できる先進的な超伝導コイルの製作技術を開発した。その開発技術の一つは超伝導導体を熱処理後巻き線する方法(リアクト・アンド・ワインド法:R&W法)のNb3AlのD型コイル製作への適用である。R&W法による導体の曲げの影響を評価するために臨界電流測定部がトロイダル磁場コイル実機と同じ曲率となるD型のコイルを開発し、臨界電流を測定した。その結果、R&W法による曲げ歪は、導体の臨界電流特性に影響を与えないことが見いだされた。また、中心ソレノイドコイル用のNb3Sn導体の開発においては、熱処理後のNb3Snコイル導体に故意に曲げ歪を加えることにより、導体の交流損失を減らす方法を考案し、その効果を実験的に実証した。また、平衡磁場コイル用NbTi導体の開発においては、高銅比化による安定性とフィラメント径の極細化による低交流損失を同時に達成するNbTi素線を開発し、実断面サイズの導体サンプルの通電試験により、臨界電流目標値を達成することを確認した。


34000097
Advanced tokamak research on JT-60
岸本 浩; 石田 真一; 菊池 満; 二宮 博正
Nuclear Fusion 45(8), p.986-1023(2005) ; (JAEA-J 00246)

 大型トカマク装置JT-60は、高い閉じ込め及び高い温度と密度を持つ高性能プラズマを、可能な限り小さな外部入力による非誘導電流駆動で長時間維持することに焦点を合わせて研究を進めてきた。高ポロイダルベータ放電による自発電流割合80%以上の最初の実証、及びこの結果に基づく定常トカマク炉SSTRの概念構築を契機に、いわゆる先進トカマク研究が開始された。JT-60における内部輸送障壁の最初の観測が内部輸送障壁を持つ負磁気シア放電研究の引き金となった。負磁気シア放電により、世界最高のDT等価エネルギー利得1.25が達成された。また、高ポロイダルベータ放電において世界最高のイオン温度45keVと世界最高の核融合積が達成された。先進トカマク研究は現在のトカマク研究開発の主流である。さらにコンパクトITERの概念がJT-60の研究に基づき検討され提案された。


34000098
Recrystallization behavior in SiC amorphized with He or Ne irradiation
相原 純; 北條 智博*; 古野 茂実*; 石原 正博; 沢 和弘; 山本 博之; 北條 喜一
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 241(1-4), p.559-562(2005) ; (JAEA-J 00247)

 TEM(透過型電子顕微鏡)観察用に調整した炭化硅素(SiC)試料がTEM内で30keVNeまたは4.5keVHeイオンで室温で照射され、引き続き1273Kで焼鈍された。NeとHeは注入希ガス原子の濃度を変えるために照射イオンとして選ばれた。これらのイオン種のエネルギーとフラックスは同じようなdpa深さプロファイルとdpa速度を得るためにTRIMの計算に基づき選ばれた。この条件では、同じピークdpaに対してHeのピーク濃度はNeの約5倍と見積もられる。Heで6.3dpa(ピーク)まで照射した試料では結晶核生成が観察されたが、Neで15dpa(ピーク)まで照射した試料では観察されなかった。すなわち、He照射の場合はNe照射の場合よりも少ないdpaで結晶核生成が起こった。注入した不活性ガスの濃度が結晶核生成挙動に影響を与えることがわかった。


34000099
Microstructural change with annealing of SiC irradiated with Ne at 573-673 K
相原 純; 北條 喜一; 古野 茂実*; 志村 憲一郎; 北條 智博*; 沢 和弘; 山本 博之; 本橋 嘉信*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 242(1-2), p.441-444(2006) ; (JAEA-J 00248)

 CVD-SiCのTEM試料を色々な温度で20keVNe+で1.5×1020Ne+/m2まで照射して引き続き1273Kで焼鈍した。573と583K照射では照射により非晶質化が起こり、焼鈍によって結晶核生成が起こった。598K照射では部分的非晶質化が起こったが焼鈍による結晶核生成は観察されなかった。673K照射では非晶質化が起こらなかった。低温照射の結果も報告する。


34000100
Photoluminescence of β-FeSi2 thin film prepared by ion beam sputter deposition method
志村 憲一郎; 山口 憲司; 山本 博之; 笹瀬 雅人*; 社本 真一; 北條 喜一
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 242(1-2), p.673-675(2006) ; (JAEA-J 00249)

 イオンビームスパッタ蒸着(IBSD)法により作製したβ-FeSi2薄膜の発光特性を調べ、本手法によるβ-FeSi2としては初めて、100K以下の温度にて0.77及び0.83eV付近に発光ピークを観測した。さらに1153Kで24時間以上アニールすることにより、ピーク位置は0.81eVへとシフトするものの、6Kでの発光強度は1桁以上増加した。アニール前の発光スペクトルは100K以上で消光してしまったのに対し、アニール後は、室温付近まで発光を観測することができた。


34000101
Modification of thin SIMOX film into β-FeSi2 via dry processes
志村 憲一郎; 山口 憲司; 笹瀬 雅人*; 山本 博之; 社本 真一; 北條 喜一
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 242(1-2), p.676-678(2006) ; (JAEA-J 00250)

 絶縁性の酸化物層上に100nm程度のSi層を有するSIMOX基板を用い、イオンビームスパッタ蒸着法によるドライ・プロセスでβ-FeSi2層を絶縁層上に作製することを試みた。しかし、Feターゲットを用いてSi層をシリサイド化させる過程で、直下の酸化層から酸素が拡散することがわかった。そこで、このシリサイド層をテンプレートとし、この上にFeSi2ターゲットを用いて蒸着を行うことで、酸素の混入がほとんどない厚膜のシリサイド層の作製が可能になった。


34000102
Resonant inelastic X-ray scattering study of overdoped La2-xSrxCuO4
脇本 秀一; Kim, Y.-J.*; Kim, H.*; Zhang, H.*; Gog, T.*; Birgeneau, R. J.*
Physical Review B 72(22), p.224508_1-224508_7(2005) ; (JAEA-J 00251)

 銅K吸収端を用いた共鳴非弾性X線散乱を過剰ドープ領域La2-xSrxCuO4(x=0.25, 0.30)に対して初めて行った。低ホール濃度試料と同様に、8.992keVに電荷輸送励起を、8.998keVに分子軌道励起をそれぞれ観測した。低濃度試料との比較から、ホール濃度増加に伴い電荷輸送ギャップが単調増加し、母体物質であるLa2CuO4と比べて過剰ドープ試料のギャップは1eV程度大きいことがわかった。これはARPESの結果から予想される化学ポテンシャルの変化より大きく、バンドのエネルギー順位の変化がある可能性を示唆した。また、ホールをドープするにつれ、電荷輸送ギャップ内に現れる連続体的励起を、銅K吸収端共鳴非弾性X線散乱としては非常に高い分解能(0.13eV)を用いて、精密観測を行った。結果、過剰ドープ試料では、連続体励起上に新たなピークが存在することを示し、電子ドープ系などで観測されているバンド内励起がホールドープ系でも存在することが示唆された。


34000103
Is a global coupled-channel dispersive optical model potential for actinides feasible?
Capote, R.*; Soukhovitskij, E. Sh.*; Quesada, J. M.*; 千葉 敏
Physical Review C 72(6), p.064610_1-064610_6(2005) ; (JAEA-J 00252)

 核力の非局所性の効果を含む分散関係に基づくアイソスピン依存のチャンネル結合ポテンシャルを構築し、238Uと232Thの中性子反応データ(強度関数,散乱半径,全断面積,散乱断面積)と陽子反応データ(散乱断面積)を同時に解析した。ポテンシャルの形状因子は質量によらないと仮定し、分散関係が与える滑らかなエネルギー依存性が232Thと238Uの全断面積の差をよく再現できることがわかった。一方、分散関係を用いない従来型のポテンシャルではこの差を再現することはできない。この研究により、今回構築したポテンシャルが近接するアクチノイド領域核に対して拡張可能であることが示唆された。


34000104
Experimental identification of spin-parities and single-particle configurations in 257No and its α-decay daughter 253Fm
浅井 雅人; 塚田 和明; 阪間 稔*; 市川 進一; 石井 哲朗; 永目 諭一郎; 西中 一朗; 秋山 和彦; 長明彦; 大浦 泰嗣*; 末木 啓介*; 柴田 理尋*
Physical Review Letters 95(10), p.102502_1-102502_4(2005) ; (JAEA-J 00253)

 257Noのα崩壊に伴うγ線及び内部転換電子をα線との同時計数法により測定し、娘核253Fmの励起準位を構築した。257No線源の作成にはガスジェット搬送法とオンライン同位体分離法を用いた。測定された内部転換係数から253Fmの124.1keV準位のスピン・パリティを決定し、124.1keV準位及び257Noの基底状態の中性子軌道配位を3/2+[622]と同定した。257Noの基底状態の配位は同じ中性子数155を持つ軽い核の配位とは異なることを明らかにした。


34000105
Analytical solution for phase space evolution of electrons operating in a self-amplified spontaneous emission free electron laser
西森 信行
Physical Review Special Topics; Accelerators and Beams 8(10), p.100701_1-100701_9(2005) ; (JAEA-J 00254)

 SASE FELにおける電子の位相空間分布の成長についての解析解を提示する。また、FEL発振波長でマイクロバンチされた電子から生じるコヒーレント遷移放射の解析解を導き、その強度がSASE FELの強度に比例して時間的に増加することを示した。


34000106
Feasibility of beam crystallization in a cooler storage ring
百合 庸介; 岡本 宏巳*
Physical Review Special Topics; Accelerators and Beams 8(11), p.114201_1-114201_12(2005) ; (JAEA-J 00255)

 蓄積リング内を周回する荷電粒子ビームが空間電荷限界においてクーロン結晶化することは理論的に知られている。そのような最終的な状態はクリスタルビームと呼ばれ、そのエミッタンスは量子力学的な雑音を除いてゼロである。この論文では、現在利用可能な加速器技術を用いてビーム結晶化が実現可能であるかについて議論する。まず、超低温ビームの力学的性質及び結晶化に必要な条件について簡単に概観する。このユニークな現象を解析するため、実際のビーム冷却実験の状況を考慮して分子動力学シミュレーションを行う。蓄積リングにおいてクリスタルビームの生成を妨げる要因について議論する。現存する蓄積リングでのビーム結晶化の実現可能性を探るため、イオンビームのドップラーレーザー冷却についても数値シミュレーションを行う。


34000107
Laser polarization dependence of proton emission from a thin foil target irradiated by a 70 fs, intense laser pulse
福見 敦*; 高井 満美子; 大道 博行; Li, Z.*; 匂坂 明人; 小倉 浩一; 織茂 聡; 加道 雅孝; 林 由紀雄; 森 道昭; Bulanov, S. V. ; Esirkepov, T. Z. ; 根本 孝七*; 大石 祐嗣*; 名雪 琢弥*; 藤井 隆*; 野田 章*; 中村 衆
Physics of Plasmas 12(10), p.100701_1-100701_4(2005) ; (JAEA-J 00256)

 p, s, 円偏光レーザーパルスを3μm厚のタンタルターゲットに照射し、生成されるプロトンの依存性を計測した。いずれの偏光条件でもプロトンは薄膜ターゲットのターゲットノーマル方向のみに観測された。プロトンの最大エネルギーはp, s, 円偏光でそれぞれ880keV, 610keV, 660keVとなり、p偏光時にエネルギー,収量が最大となった。p偏光とs偏光の違いを、同時に測定した電子スペクトルの結果と比較し議論した。


34000108
Study on the etching conditions of polycarbonate detectors for particle analysis of safeguards environmental samples
井口 一成; 江坂 木の実; Lee, C. G.; 伊奈川 潤; 江坂 文孝; 小野寺 貴史; 福山 裕康; 鈴木 大輔; 桜井 聡; 渡部 和男; 臼田 重和
Radiation Measurements 40(2-6), p.363-366(2005) ; (JAEA-J 00257)

 保障措置環境試料のパーティクル分析において、フィッショントラック法による核分裂性物質を含む粒子の検出法はサブミクロン粒子まで対応できることから特に重要である。演者が開発した方法は、粒子をポリカーボネートフィルタの上に捕集した後、フィルタを溶解,乾燥してフィルム(検出器)にすることで粒子を検出器の中に閉じ込める。熱中性子照射した後、検出器をエッチングすることで粒子を検出する。この方法は操作が簡単であり、粒子を容易に高感度で検出することができる。しかし、エッチングにより、フィルムの表面近傍に存在している粒子が脱落する可能性があるので、適切なエッチング条件を決めることは重要である。今回は、エッチング時間とウランの濃縮度の関係を調べた結果、高濃縮度ほどエッチング時間を短くする必要があることがわかった。


34000109
Electrochemical and spectroelectrochemical behaviour of Np(VI) ions in nitric acid solutions
Kim, S.-Y.; 朝倉 俊英; 森田 泰治
Radiochimica Acta 93(12), p.767-770(2005) ; (JAEA-J 00258)

 ネプツニウムの電気化学反応について、サイクリックボルタンメトリー法,光透過性薄層電極法を用いた測定等により、1-8Mいずれの硝酸濃度において研究した。Np(VI)-Np(V)間の酸化還元反応において、酸化還元電位は硝酸濃度の増加とともに減少し、NpO22+はNpO2+に電子還元され、Np(VI)/Np(V)が準可逆であることを示した。1-8M硝酸濃度におけるNp(VI)の酸化還元電位は、+0.906, +0.908, +0.909, +0.902, +0.896, +0.895, +0.888, +0.884V(vs. Ag/AgCl)であった。Np(VI)の酸化還元領域を把握し、分光電気化学測定した。電位が+1.10〜+0.60Vの範囲では1224nm付近(NpO22+)の吸収の減少、及び980, 1094nm付近(NpO2+)に吸収の出現が確認された。電位を変化させた際の、吸収スペクトルの測定により、NpO22+の還元後に存在する化学種は1種類であることを明らかにした。


34000110
原子力分野におけるファントム利用の現状と標準化に向けての課題
栗原 治
FBNews (349), p.7-11(2006) ; (JAEA-J 00259)

 国際放射線単位及び測定委員会(ICRU)によれば、ファントムとは、人体における放射線の相互作用を模擬するものと定義される。ファントムには、実在する物理ファントムと計算機上で定義される数値ファントムがあるが、放射線治療,放射線診断,放射線防護,放射線生物学など電離放射線を用いるさまざまな分野で利用されている。原子力分野におけるファントムの利用は、放射線防護に関連したものであり、その代表的な例として、等価線量や実効線量を定義するために用いられる数値ファントム,個人線量計の校正の際に人体の代用として用いられる物理ファントム,体内放射能の定量に用いられる放射能及び人体組織等価材を内蔵する物理ファントムなどがある。本稿では、原子力分野で利用されるファントムの中で、主として、測定に用いられるファントムに着目し、その標準化に向けての課題を検討した。


34000111
高輝度・高分解能放射光で見えてきた表面化学反応ダイナミクス; 超音速O2分子線で誘起される表面酸化反応のその場光電子分光
寺岡 有殿; 吉越 章隆; 盛谷 浩右; 高桑 雄二*; 小川 修一*; 石塚 眞治*; 岡田 美智雄*; 福山 哲也*; 笠井 俊夫*
放射光 18(5), p.298-309(2005) ; (JAEA-J 00260)

 SPring-8の原研軟X線ビームラインの表面化学実験ステーションを活用して行われてきた表面酸化反応ダイナミクスに関する研究の中から代表的な成果について解説した。原研の独自研究からSi(001)表面の高温酸化の際にSiO分子が脱離する反応機構について解説した。大阪大学との協力研究からは、Cuの酸化反応ダイナミクスにおいて衝突誘起原子吸収が起こることを紹介した。東北大学との協力研究からは、Ti(0001)の酸化反応ダイナミクスにおいて初期吸着確率に二つのエネルギーピークが観測され、解離吸着のポテンシャルエネルギー障壁であることを紹介した。


34000112
生体分子の軟X線自然円二色性
中川 和道*; 田中 真人*; 安居院 あかね
放射光 18(6), p.363-372(2005) ; (JAEA-J 00261)

 生体分子の自然円二色性はこれまでおもに可視紫外領域で観測されてきたが、軟X線領域では自然円二色性の信号強度はX線吸収端近傍構造の信号強度の約0.1パーセントと小さく、技術的困難が大きいため測定はなされてこなかったが、われわれは、軟X線領域の偏光制御技術を利用し、世界で初めて生体分子の軟X線領域における自然円二色性の観測に成功した。軟X線NCDは軽元素を元素選択して観測できるため、生体分子の構造情報を、原子近傍の構造に特化して得ることができ、従来の可視紫外領域のNCDよりも詳細な構造情報を得られる有利さがある。今回の成果は創薬や生命起源の研究に有益なヒントを与えるものである。


34000113
時間分解蛍光分光法によるアクチノイドの溶液化学研究における最近の進展
木村 貴海; 桐島 陽*; 有阪 真
希土類 (47), p.43-56(2005) ; (JAEA-J 00262)

 時間分解レーザー誘起蛍光分光法は、単に高感度かつ高選択的な分析手法としてだけでなく、イオンの溶液内構造や熱力学的特性をも測定可能な用途の広い方法として、今ではアクチノイド研究にとって重要な研究手段の一つとなっている。本講演では、アクチノイド(III)とランタノイド(III)の配位環境の比較,固液界面における微量化学種の状態解明,水熱溶液中でのウラン(VI)の加水分解・錯形成反応,水溶液中におけるウラン(IV)の初めての蛍光測定など、最近の進展を報告する。


34000114
共鳴非弾性X線散乱で見る強相関電子系物質の電子励起
石井 賢司
放射光 18(6), p.347-355(2005) ; (JAEA-J 00264)

 高温超伝導や巨大磁気抵抗効果を示す強相関電子系物質は現代の固体物理の重要な研究対象となっている。硬X線領域での共鳴非弾性X線散乱(RIXS)を用いて電子励起を観測することで、それらの電子状態を明らかにしようという研究が発展してきている。最近、筆者らが行ってきたモット絶縁体に電荷をドープして金属化したマンガン酸化物と銅酸化物のRIXSによる研究成果について紹介する。いずれの場合も、金属化してもモットギャップが残存しており、電子相関の影響が強く残っている。さらに、電子ドープ型銅酸化物においては、モットギャップ励起に加えて、上部ハバードバンドでのバンド内励起の分散関係も観測できている。


34000115
ラドン測定におけるガス封入型電離箱法の諸特性について
石森 有
Radioisotopes 54(12), p.599-608(2005) ; (JAEA-J 00266)

 ガス封入型電離箱法は、ラドン測定の標準法として日本の多くの研究所で一般に使用されている。この報告では、電離箱法の諸特性について、次のとおり検討した。壁効果については、異なる封入ガス、すなわち、窒素と乾燥空気に対してモンテカルロシミュレーションで評価した。柱状再結合については、2つの異なる手法により評価した。まず、一般的な電離電流の逆数と印加電圧の逆数の関係から評価した。さらに、異なるガス圧力における電離電流値と予測される壁効果の関係から評価した。2つの結果は互いに一致した。全体として、1.5Lの電離箱の効率は 101.3kPaの空気に対して0.02706Bq.fA-1, 93.3kPaの窒素に対して0.02701Bq.fA-1であると計算され、それらの値は3%以内の差で文献値の換算係数と一致している。さらに、湿度の影響について予察的検討を行った。その影響は絶対湿度の1%に対して約3%の効率低下をもたらすが、それは適当な除湿剤により容易に除くことができる。これらの検討はガス封入型電離箱法が、ラドン測定のために高い精度を持つことを証明した。241Am標準線源を上述の結果を確認するために同様に使用した。


34000116
Development of public dose assessment code for decommissioning of nuclear reactors (DecDose)
島田 太郎; 大島 総一郎; 石神 努; 柳原 敏
Proceedings of 10th International Conference on Environmental Remediation and Radioactive Waste Management (ICEM '05) (CD-ROM) , 8p.(2005) ; (JAEA-J 00267)

 申請された廃止措置計画を規制当局が迅速かつ適切にレビューできるように、廃止措置における周辺公衆被ばく線量評価コード(DecDose)を開発した。本コードは、平常作業時において、年度ごとの周辺公衆被ばく線量を、作業工程に従って、被ばく経路別に一括して評価するものである。切断等の解体作業内容を考慮して大気及び海洋へ放出された放射性物質量を算出し、放射性雲,地表沈着及び食物摂取等さまざまな被ばく経路の線量を評価している。また、建屋内に一時保管されている収納容器から放出される放射線(直接放射線及びスカイシャイン放射線)についても、解体して収納された機器・構造物の放射能量に基づいて、周辺監視区域境界における線量当量率を評価している。サンプル計算の結果、本コードが原子炉施設の廃止措置中の周辺公衆被ばく線量を評価するのに有効であることが示された。


34000117
Rationalization of the fuel integrity and transient criteria for the super LWR
山路 哲史*; 岡 芳明*; 石渡 祐樹*; Liu, J.*; 越塚 誠一*; 鈴木 元衛
Proceedings of 2005 International Congress on Advances in Nuclear Power Plants (ICAPP '05) (CD-ROM) , 7p.(2005) ; (JAEA-J 00268)

 スーパー軽水炉、すなわち高温超臨界圧水炉(SCLWR-H)において燃料健全性を保証することは最も基本的な事項の一つである。SCLWR-Hのほとんどの異常過渡事象は、短時間持続するだけであり、燃料は炉心で照射された後交換される。本研究では、燃料棒の機械的損傷を被覆管の歪みによって代表させることが可能である事実に立脚し、燃料健全性に関する基準を合理的に設定した。新しく設計したステンレス被覆管の燃料棒では、被覆管の応力を緩和するため、及びペレットと被覆管のギャップ熱伝達を向上させるために加圧した。通常運転時及び異常過渡時における燃料健全性を原研のFEMAXI-6コードを用いて評価した。


34000118
Japanese underground research laboratory project and prediction of rock mass behavior around deep shafts and galleries using continuous and discontinuous models
佐藤 稔紀; 見掛 信一郎; 中間 茂雄; 瀬野 康弘; 森 孝之*; 岩野 圭太*; 郷家 光男*; 多田 浩幸*
Proceedings of 7th International Conference on Analysis of Discontinuous Deformations (ICADD-7) (CD-ROM) , p.245-256(2005) ; (JAEA-J 00269)

 日本の二つの深地層の研究施設のうち,瑞浪超深地層研究所の建設や研究の現状を紹介するとともに、MBCモデルやクラックテンソルモデルなどの連続体モデルと、クラックプロパゲーションコードを用いた不連続体モデルによる坑道掘削解析の結果を紹介する。


34000119
Experiments on the behavior of americium in pyrochemical process
林 博和; 赤堀 光雄; 湊 和生
Proceedings of International Conference on Nuclear Energy System for Future Generation and Global Sustainability (GLOBAL 2005) (CD-ROM) , 3p.(2005) ; (JAEA-J 00270)

 今後の核燃料サイクルの開発には超ウラン元素(TRU)の挙動を理解することが重要である。TRU濃度の高い使用済み燃料に対応可能な乾式再処理法の開発が進められているが、そのTRU挙動基礎データは十分とは言えない。酸素や水分などとの反応性の高い塩化物を用いた乾式再処理プロセスの基礎試験を行うため、放射線遮蔽体を持ち高純度の不活性ガス雰囲気を保つことができるTRU高温化学モジュール(TRU-HITEC)を原研東海NUCEF施設に設置した。TRU-HITECでの乾式再処理プロセスにおけるアメリシウムの挙動研究について紹介する。


34000120
Wind-wave-surge coupled model; Application to storm surge simulation in the bay of Bengal
Kim, K.; 山下 隆男*
Proceedings of International Symposium on Fluvial and Coastal Disasters (CD-ROM) , 8p.(2005) ; (JAEA-J 00271)

 大気・海洋間の運動量,熱,物質の交換には、風波が重要な役割をする。風波の発生・発達・減衰機構のモデル化には、(1)wave-inducedストレスのような風波により発生する比較的大規模な大気乱流による形状抵抗とwaveletsによる空力学的粗度特性を波齢及び大気の安定度との関数で系統的に表現できる理論の構築と、(2)breakerストレス等の定義による白波砕波減衰を通しての波浪から吹送流への運動量変換モデル、及び(3)波齢の高いに対する波浪増幅・減衰機構の定式化に関する研究が必要となる。これらの研究成果を、極浅海域での波浪・高潮相互作用場に適用するため、波浪推算モデル(WW3),メソ気象モデル(MM5),海洋モデル(POM)の連結系数値モデルを用いて、1991年のサイクロンによるベンガル湾の高潮場の再解析を行い、波浪・高潮結合系における白波砕波の影響を評価した。


34000121
Specific absorbed fractions for photon and electron to a simple stomach model considering stem cells
木名瀬 栄; 横谷 立子; 斎藤 公明
KEK Proceedings 2005-10 , p.33-38(2005) ; (JAEA-J 00273)

 本研究では、内部被ばくによる胃腸管の合理的な線量評価法を開発することを目的として、胃腸管の1区分である胃に着目し、放射線感受性の高い細胞である幹細胞の位置を仮定できる胃の簡易モデルを開発するとともに、モンテカルロ計算により、光子及び電子に対する胃壁全体や幹細胞位置などの比吸収割合(SAF)を評価した。その結果、胃の幹細胞位置の光子SAFは、10keV-4MeVの光子エネルギー範囲において、これまで放射線防護分野などで利用してきた胃壁全体の光子SAFに比べ最大5倍程大きくなること,胃の幹細胞位置に対する電子SAFは、これまで放射線防護分野などで利用されてきた電子SAFのような定数(たとえば、2.0kg-1)ではなく、電子エネルギーに対して無関係ではないこと、などを明らかにした。これにより、光子及び電子に対する胃の線量評価手法の開発において、モンテカルロ計算の有効性を示すとともに、胃組織内の標的部位の決定がSAF評価において極めて重要であることを明らかにした。


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