学会誌等掲載論文
※下記の研究開発成果は資料名順に並んでいます。

2006年3月


34000128
Development of a numerical simulation model for long-range migration of rice planthoppers
古野 朗子; 茅野 政道; 大塚 彰*; 渡邊 朋也*; 松村 正哉*; 鈴木 芳人*
Agricultural and Forest Meteorology 133(1-4), p.197-209(2005) ; (JAEA-J 00274)

 高精度の大気拡散モデルにイネウンカの飛来特性を組み込むことにより、イネウンカ類の長距離移動の高精度シミュレーションを行った。モデルは気象場を計算する大気力学モデルと粒子拡散モデルから成っている。またモデルにはウンカの飛び立ちエリア及び飛び立ち開始時間を推定する機能もある。本研究では、このモデルと1998年6月中旬の西日本でのネットトラップデータを用いて、飛び立ち域推定のケーススタディを行った。このシミュレーションでは、それぞれ緯度経度方向に2°の広さを持った56の領域を飛び立ち可能地域と仮定した。この中から実際の飛び立ち領域を確定するために、それぞれの飛び立ちエリアから西日本の各地点に到達した計算値と実際の観測データを、順位相関係数を用いて比較した。相関が高く、飛び立ち域として可能だと思われる領域は、福建省や台湾を含む北緯23°〜27°の領域だった。このシミュレーションにおいて、飛翔限界温度と連続飛翔可能時間がもっとも精度を左右するパラメータであることが示された。


34000129
Novel mechanism of antibiotic resistance originating in vancomycin-intermediate Staphylococcus Aureus
Cui, L.*; 岩本 昭; Lian, J.-Q.*; Neoh, H.*; 丸山 敏毅; 堀川 弥太郎*; 平松 啓一*
Antimicrobial Agents and Chemotherapy 50(2), p.428-438(2006) ; (JAEA-J 00275)

 世界中の病院で猛威をふるうMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)に対して、唯一強力な効果を発揮する抗生物質であるバンコマイシンは抗生物質のエースとして知られていたが、1996年に順天堂大学の平松により、このバンコマイシンに耐性を示すMRSAが臨床的に分離され、以来世界各地で追認が続いた。現在はVISAと呼ばれるこの菌の耐性のメカニズム解明のため、反応拡散方程式を拡張した定式化を行い、平松研究室の実験データを用いた計算を行った結果、この菌の特異な耐性機構を以下のように明らかにした。(1)バンコマイシンが細胞壁を拡散する際に、「目詰まり効果」というメカニズムにより、後から来るバンコマイシンの拡散が妨げられる。(2)「目詰まり効果」と、さらに細胞壁の厚さを通常の感受性菌の1.6倍程度にする戦略の相乗効果として、細胞壁の透過に要する時間を本来数分であったものを20〜30分にまでに長引かせる。(3)この長引かされた時間を利用して、バンコマイシンが細胞壁透過後に増殖機能を破壊する以前に細胞分裂を行い、増殖継続を可能にする。以上に述べた細菌の耐性メカニズムは今まで全く知られていなかったもので、細菌の耐性メカニズムの知見を広げ、また院内感染の予防などの実用面からの研究にも役立つと考えられる。


34000130
Analysis of interaction between DNA and Deinococcus radiodurans PprA protein by Atomic force microscopy
村上 正弘*; 鳴海 一成; 佐藤 勝也*; 古川 章*; 早田 勇*
Biochimica et Biophysica Acta; Proteins and Proteomics 1764(1), p.20-23(2006) ; (JAEA-J 00276)

 放射線抵抗性細菌デイノコッカス・ラジオデュランスからDNA修復促進タンパク質PprAが単離されたが、その分子機構については未だ詳細に解析されていない。われわれは、DNA修復経路におけるPprAタンパク質の役割を解明するために、直鎖状DNAとPprAタンパク質の相互作用を、固定や染色の操作をせずに原子間力顕微鏡を用いて直接可視化することで解析した。その結果、直鎖状DNAの分子内部と分子末端部へ結合したPprAタンパク質が観察されたが、結合特性の割合を考慮すると、PprAタンパク質は直鎖状DNA分子末端部への結合親和性が高いことがわかった。また、ある条件下において、DNAとPprAタンパク質の環状構造複合体も観察された。さらに、ゲルろ過クロマトグラフィー解析によって、DNAと結合していないPprAタンパク質は、水溶液中で多量体を形成していることが示唆された。


34000131
Development of beam monitor DAQ system for 3NBT at J-PARC
大井 元貴; 甲斐 哲也; 明午 伸一郎; 木下 秀孝; 酒井 健二; 坂元 眞一; 神永 雅紀; 加藤 崇; 加藤 直彦*
Europhysics Conference Abstracts 29J, 6p.(2005) ; (JAEA-J 00277)

 大強度陽子加速器施設(J-PARC)の3GeV陽子ビーム輸送施設(3NBT)は、3GeVシンクロトロン施設(RCS)から物質生命科学実験施設(MLF)まで大強度の陽子ビームを輸送するための施設である。ハンズオンメンテナンスのために3NBTの設計目標は平均ビームロスで1W/m以下を目指している。そのため、電磁石の制御や陽子ビームモニターシステムは非常に重要である。J-PARCにおいては、加速器システム制御用に開発され、UNIXで稼動する制御用言語であるEPICSを制御システムに採用されており、3NBTの陽子ビームモニターにおいてもEPICSを使用する。本論文はEPICSを用いた陽子ビームモニター用DAQシステム開発の現状を紹介し、初めて25Hz周期で動作させた場合の性能を報告する。


34000132
Modeling of plasma current decay during the disruption
大脇 浩和; 杉原 正芳; 河野 康則; Lukash, V. V.*; Khayrutdinov, R. R.*; Zhogolev, V.*; 小関 隆久; 畑山 明聖*
Europhysics Conference Abstracts (CD-ROM) 29C, 4p.(2005) ; (JAEA-J 00278)

 ディスラプション時のトカマク装置への電磁力負荷を評価するうえで最も重要な、プラズマ電流の減衰過程を評価する数値モデルを構築した。このモデルでは、粒子の輸送とリサイクルを考慮した密度の微分方程式によって密度を評価し、ジュール加熱パワーと不純物の混入による放射パワーとのバランスPjoule(Te)=Prad(Te)によって電子温度とプラズマ抵抗を決定する。加えてプラズマ平衡・輸送・回路方程式を解くコードDINAを用いることで、プラズマ電流減衰の時間発展を矛盾無く求める。不純物混入量,粒子の閉じ込め時間,リサイクリング率は、おおよそ実験で想定される値をパラメータとして与えることで、JT-60Uのプラズマ電流波形を模擬できた。また、この3つの物理量がプラズマ電流の減衰過程に与える影響を調べた。


34000133
Emission rates of CH/CD and C2 spectral bands for hydrocarbon-loss-events measured in JT-60U divertor plasmas
仲野 友英; 都筑 和泰; 東島 智; 久保 博孝; 朝倉 伸幸
Europhysics Conference Abstracts (CD-ROM) 29C, 4p.(2005) ; (JAEA-J 00279)

 CH4, CD4及びC2H6が解離,電離及び輸送により損失するまでにCH及びC2スペクトルバンド光を放出する確率をJT-60Uのダイバータプラズマを用いて計測した。取得されたデータは化学スパッタリングによって発生する炭化水素の発生量を分光計測により評価するために用いられる。1つのCH光子放出に対するCH4の損失事象の回数は電子温度30eVから70eVの範囲でおよそ200であった。CD4に対しても同様の計測を行ったところ、CH4と有意な差は観測されなかった。また、CH光子及びC2光子放出に対するC2H6の損失事象の回数はそれぞれ200-300及び600-1800であり、CHとC2スペクトルバンド光の強度比は3-6であった。化学スパッタリングによって発生する炭化水素のうちC2H6のみによってC2スペクトルバンドが放出されると仮定すると、求めたCHとC2の強度比からC2H6に由来するCHスペクトルバンド光の強度を求められる。その強度は観測されたCHスペクトルバンド光強度を超える強度となった。この結果は、C2H6は化学スパッタリングによって発生する炭化水素のうち少数でありCHとC2の強度比の小さな炭化水素(C2H4など)が多数を占めることを示唆する。


34000134
Transient electron heat transport and reduced density fluctuation after pellet injection in JT-60U reversed shear plasmas
竹永 秀信; 大山 直幸; 諫山 明彦; 稲垣 滋*; 滝塚 知典; 藤田 隆明; 三浦 幸俊
Europhysics Conference Abstracts (CD-ROM) 29C, 4p.(2005) ; (JAEA-J 00280)

 強い内部輸送障壁(ITB)を有するJT-60Uの負磁気シアプラズマにおいて、ペレットを入射した直後に、密度揺動の低下を示す反射計スペクトルの変化を得るとともに、中心密度や蓄積エネルギーの増加が観測された。ペレット入射前後での粒子及びパワーバランス解析では、実効的粒子拡散係数とイオン熱拡散係数の低下が観測されたが、電子熱拡散係数の低下は観測されなかった。密度揺動と電子系熱輸送の関係を明らかにするために、ペレット入射から20msまでの過渡輸送解析を行った。ペレットの侵入位置はITBの外側(r/a=0.8近傍)であり、ペレット溶発によるコールドパルスがITB領域に到達した後に、反射計スペクトルが変化している。コールドパルスの伝搬による電子温度の時間変化を説明するためには、反射層近傍の内側ITB領域で熱拡散係数が減少、外側ITB領域で増加させる必要があることを明らかにした。内側ITB領域での熱拡散係数減少の時間スケールは、反射計スペクトル変化の時間スケールより緩やかであり、電子温度分布の変化の時間スケールと同程度である。この結果は、電子温度分布がペレット入射前と同程度に回復した時刻でのパワーバランス解析と矛盾しない。このことは、電子系の熱輸送が測定された波数領域の密度揺動と直接的に関連していないことを示していると思われる。


34000135
Characteristics of runaway plasmas in JT-60U
河野 康則; 仲野 友英; 諫山 明彦; 波多江 仰紀; 木島 滋; 大山 直幸; 近藤 貴; 玉井 広史; 久保 博孝; 朝倉 伸幸; 竹永 秀信; 井手 俊介
Europhysics Conference Abstracts (CD-ROM) 29C, 4p.(2005) ; (JAEA-J 00281)

 トカマクのディスラプション時に発生する逃走電子の緩和を目的として、不純物ペレット入射などの外部アクチュエータを用いた実験を実施した。その結果、不純物ペレット入射による逃走電子排出効果及び逃走電子電流減衰効果を見いだした。また、逃走電子電流の基本的な振る舞いが、逃走電子のアバランシェ過程による発生とシンクロトロン放射の効果を取り入れたAndersson-Helanderモデルに基づく減衰とのバランスで説明できる可能性を示した。他方、電流消滅時間が逃走電子により伸張されることに着目し、逃走電子を用いた電流消滅回避実験を実施した。実験では、発生した逃走電子により、電子温度が数10eV以下まで低下し、また不純物ペレットが入射された状態でも放電を維持できることが示された。このとき、プラズマ電流は指令値通りに継続及び停止を行うことが可能であった。逃走電子のダイナミクスを詳細に調べることを目的として、レーザ逆コンプトン散乱に基づく能動的,直接な診断法を新たに提案した。


34000136
Thermal analysis and Ohmic loss estimation of polarizer for ITER ECCD system
三枝 幹雄*; 高橋 幸司; 柏 吉忠*; 大石 晋平*; 星 勇気*; 中畑 裕行*; 春日井 敦; 坂本 慶司; 今井 剛*
Fusion Engineering and Design 74(1-4), p.473-478(2005) ; (JAEA-J 00282)

 国際熱核融合実験炉用電子サイクロトロン電流駆動装置の偏波器を開発し、170GHz, 441kW, 6sまでの大電力長パルス試験を行った。また、偏波器へ入力する直線偏波の入射偏波面を別の偏波器で回転させて偏波器の損失を温度上昇で測定したところ、偏波器の高周波損失は、入射偏波と回折格子の回転角に大きく依存し、その依存性は電磁界解析結果と定性的に一致した。電子サイクロトロン波のプラズマへの高効率結合に必要な入射偏波条件における損失の変化範囲は、理論値で0.2%から1.6%程度にまで変化した。


34000137
ITER towards the construction
下村 安夫
Fusion Engineering and Design 74(1-4), p.9-16(2005) ; (JAEA-J 00283)

 ITERの建設の技術的準備は整い、建設開始に向けて、日本,欧州,ロシア,中国,米国,韓国の参加を得て、政府間協議が進められている。2004年には、ITER計画の建設母体である国際機関が設立され、2014年の運転開始が見込まれている。ITERは人類最初の核融合実験炉である。この装置を用いて、炉心プラズマを開発し、50万キロワットの核融合反応出力を得て、安全に信頼性高く運転することを通して、核融合炉の実用化の見通しを得る。またこの装置において、トリチウム生産兼発電用エネルギーの取り出し用のブランケットの試験なども行われる。


34000138
Development of an RF-input coupler with a multi-loop antenna for the RFQ linac in IFMIF project
前原 直; 森山 伸一; 三枝 幹雄*; 杉本 昌義; 今井 剛; 竹内 浩
Fusion Engineering and Design 75-79, p.823-827(2005) ; (JAEA-J 00284)

 IFMIFのRFQライナックのために、同軸導波管を用いたマルチループアンテナによるRF入力結合系の開発を行っている。ループアンテナを用いた場合、ループアンテナの構造がそれぞれの位相差やパワーバランスに影響を与える。パイプ直径10mmを用いたループアンテナを試作し、位相差とパワーバランスを低電力試験で測定した。ループアンテナの挿入距離を3cmにすると位相差やパワーバランスが乱れないことが判明した。しかし、耐電圧の面で単一ループアンテナによるマルチMW級の結合は難しいことから、2つもしくは4つのループアンテナを用いた結合の方が単一ループアンテナより、耐電圧及びパワーバランスの観点から良いと思われる。そこで2つケースに対して位相差とパワーバランスを測定した。平均位相差として179°と8%程度のパワーバランスの良い測定結果が得られた.これらの結果は、IFMIF 175MHz RFQにおいてマルチループアンテナを用いたRF入力結合系に対する有効性の一つを示した。


34000139
Effective bending strain estimated from Ic test results of a D-shaped Nb3Al CICC coil fabricated with a react-and-wind process for the National Centralized Tokamak
安藤 俊就*; 木津 要; 三浦 友史*; 土屋 勝彦; 松川 誠; 玉井 広史; 石田 真一; 小泉 徳潔; 奥野 清
Fusion Engineering and Design 75-79, p.99-103(2005) ; (JAEA-J 00285)

 トカマク国内重点化装置のTFコイルはNb3Al導体を用い、リアクト・アンド・ワインド法で製作することが検討されている。その製作方法の妥当性を実証するために、実機サイズの導体に0.4%の曲げ歪みを加えて巻き線したコイルサンプルを試作し、試験した結果、その臨界電流値は曲げ歪みを加えていない導体サンプルの臨界電流値とほとんど同じであった。このことは、コイル製作時の曲げ歪みによって臨界電流値が約10%低下するとの予想に反し、実機コイルの製作には朗報である。この現象について解析を行った結果、導体のケーブル部を構成するNb3Al線が曲げ加工中に互いに滑ったことが予想された。その考察,解析について議論する。


34000140
Design and development of EC H&CD antenna mirrors for ITER
高橋 幸司; 小林 則幸*; 春日井 敦; 坂本 慶司
Fusion Engineering and Design 81(1-7), p.281-287(2006) ; (JAEA-J 00286)

 ITER用EC H&CDアンテナは、8あるいは9のRFビーム束を可動ミラーで反射しプラズマに入射する。1ビームあたりのパワーは1MWで、ミラーの大きさは250×360mm2、厚みは50mmである。中性子照射,プラズマ熱流束,RFビーム反射時の損失パワーを考慮すると、ピーク熱負荷は3.17MW/m2である。このとき、プラズマ不純物等によるミラー表面の電気抵抗増加(4倍)を考慮している。この条件下における熱応力解析の結果、ミラー本体に銅合金、内部に設置する水冷却配管にステンレスを採用することで、構造成立性の見通しを得た。EC H&CDアンテナシステムとして、アンテナ後方に設置する真空窓や閉じ込め磁場を作る超伝導コイルの遮蔽性能が課せられる。その遮蔽を目的として、マイターベンドを用いてシステム内の伝送ラインを屈曲構造にする必要がある。今回、そのベンドミラーについて、ITER設計をもとにモックアップを製作し、大電力伝送実験を行った。ミラー表面は銅合金(厚み5mm)、それ以外はステンレス製である。パワー/パルス幅450kW/5.0secの伝送実験の結果、ベンドミラーでの損失は伝送パワーの〜0.2%となり、銅合金の電気抵抗2.0×10-8Ωmを考慮した計算とよく一致する結果となった。


34000141
Experimental examination of heat removal limitation of screw cooling tube at high pressure and temperature conditions
江里 幸一郎; 鈴木 哲; 大楽 正幸; 秋場 真人
Fusion Engineering and Design 81(1-7), p.347-354(2006) ; (JAEA-J 00287)

 核融合炉高熱流束機器用冷却管開発の一環として、冷却内面に三角フィンを加工した冷却管を提案している。この冷却管では、三角フィンを簡単なねじ切り加工で形成しており、スクリュウ管と呼ばれる。これまでの室温における実験の結果、フィン形状M10ピッチ1.5mmで最も高い限界熱流束が得られている。本研究では、同形状を有するスクリュウ管の熱伝達係数(HTC)とさらに高温のITERダイバータ冷却条件に相当する4MPa・100℃における片側加熱条件における限界熱流束(CHF)実験結果を報告する。熱伝達実験の供試体は無酸素銅製スクリュウ管に、管壁温度測定用の熱電対を埋設したものである。HTCの評価は、実験で得られた壁温度の周方向分布と数値解析を比較することにより行った。解析では冷却面のHTCとして強制対流域における平滑円管のHTCの3倍までを仮定した。実験で得られた壁温は2倍のHTCを適用した場合とほぼ同じであることから、スクリュウ管が平滑管に比べて約2倍の熱伝達係数を持つことを示している。限界熱流束実験の結果、ITERダイバータの設計値である26MW/m2のCHFを得るのに必要な流束は4MPa・入口温度100℃において約4.5m/sであり、室温(40℃)の場合と比較して約20%の減少が生じることを明らかにした。


34000142
Positive and negative ion sources for magnetic fusion
Hemsworth, R. S.*; 井上 多加志
IEEE Transactions on Plasma Science 33(6), p.1799-1813(2005) ; (JAEA-J 00288)

 本論文は、磁気核融合研究に用いられる中性粒子入射装置の主要機器である、正・負イオン源に関するレビュー論文である。高プロトン比(>90%),大電流密度(〜2kA/m2),低ガス圧運転(0.4Pa),高効率、並びにイオンの大面積一様生成といった、高い性能を同時達成するために開発されてきた正イオン源の物理をレビューする。また核融合炉用の高エネルギー中性粒子ビーム生成に不可欠となる、負イオン源開発の現状についても報告する。負イオン源開発の進展により、核融合炉用中性粒子入射装置で求められる、低ガス圧(<0.3Pa)での大電流密度(>200A/m2)負イオン(D-)生成,低引き出し電子電流といった多くの要求性能がすでに達成されている。さらに、将来の中性粒子入射装置で求められる高い性能を満足するために必要な開発項目についても言及する。


34000143
Method for detection of separatrix surface using differential double probe
雨宮 宏*; 上原 和也
Japanese Journal of Applied Physics 45(1A), p.247-249(2006) ; (JAEA-J 00289)

 トカマクの磁気面は磁気プローブの信号をもとにして平衡コードを用いた計算で推定されるが、その絶対位置については不明である。これを求めるために径方向に段差のついた2組のダブルプローブシステムに正負のバイアスをかけ、プラズマを動かしてプローブがセパラトリックス表面を横切った時に、ダブルプローブのイオン飽和電流値の増加が現われることに注目して、これを差動増幅器で精密に測定して評価した。さらに、得られる電流値はイオン温度の情報を有していることも示した。


34000144
Effects of surface modification by ion irradiation on the electrochemical hydrogen absorption rate of Pd
阿部 浩之; 森本 亮*; 佐藤 史篤*; 東 順人*; 内田 裕久*
Journal of Alloys and Compounds 404-406, p.288-292(2005) ; (JAEA-J 00290)

 パラジウム(Pd)の水素吸収特性の改善を目指し、イオン照射による表面改質がPdの水素吸収速度に及ぼす影響を調べた。イオン種としてはプロトン,ヘリウムイオン,窒素イオン,アルゴンイオンを用い、加速エネルギー範囲30〜350keVで、最大照射量1×1017cm-2まで照射を実施した。電気化学的水素化測定の結果、イオン照射Pdは未照射Pdに比べ吸収速度が向上し、向上割合はイオン照射のエネルギーと照射量に依存する傾向が得られた。この原因は、照射により生成される欠陥が水素トラップとして働き、水素吸収速度を高めていると考えられる。


34000145
Incident angle dependence of MCD at the Dy M5-edge of perpendicular magnetic DyxCo100-x films
安居院 あかね; 水牧 仁一朗*; 朝日 透*; 佐山 淳一*; 松本 幸治*; 森川 剛*; 松下 智裕*; 逢坂 哲彌*; 三浦 義正*
Journal of Alloys and Compounds 408-412, p.741-745(2006) ; (JAEA-J 00291)

 次世代高密度記録媒体材料の候補として期待される希土類−遷移金属アモルファス薄膜の垂直磁気異方性の濃度依存性を元素別に調べるために、DyxCo1-x膜の軟X線吸収測定及び磁気円二色性測定を行った。MCD測定は磁化の入射角に対する軸方向への射影としてあらわれ、濃度によってDyのモーメントの広がりが変化することがわかった。


34000146
Deep-level defects introduced by 1 MeV electron radiation in AlInGaP for multijunction space solar cells
Lee, H. S.*; 山口 真史*; Ekins-Daukes, N. J.*; Khan, A.*; 高本 達也*; 安居院 高明*; 上村 邦夫*; 兼岩 実*; 今泉 充*; 大島 武; 伊藤 久義
Journal of Applied Physics 98(9), p.093701_1-093701_4(2005) ; (JAEA-J 00292)

 変換効率30%以上を有する新型宇宙用三接合太陽電池のトップセルとして期待されているAlInGaP半導体へ1MeV電子線照射を行い、キャリア(正孔)濃度の変化及び深い準位の欠陥の発生を調べた。ホール測定により基板の正孔濃度を調べた結果、電子線照射量の増加とともに減少すること、キャリア減少率が1/cmであることが見いだされた。このキャリア減少率は、現在多接合太陽電池のトップセルとして用いられているInGaPの2〜10/cmに比べ小さい値であり、耐放射線性に優れていることが明らかになった。また、450Kまでの深部準位(DLTS)測定を行うことで、照射によりH1, H2の二つの正孔トラップとE1, E2, E3という三つの電子トラップが発生することを見いだし、これらのトラップの温度依存性を解析することでH1がEV+0.50V、H2がEV+0.90V、E2がEC-0.70V、E3がEC-0.70Vのエネルギー準位に存在することを決定した。さらにH1及びH2の導入率を見積もったところ0.39/cmであり、キャリア減少率の1/cmとは直接対応しないことが判明し、正孔濃度減少の起源はH1やH2の生成とは関係が薄いことが示唆された。電流注入による劣化の回復減量を調べるために照射後試料に100mA/cm2の電流注入を行った。その結果、H2トラップが注入時間の増加とともに減少することが見いだされ、電流注入温度とH2減少量の関係からアニーリング活性化エネルギーを見積もったところ0.60eVが決定できた。


34000147
Experimental and theoretical elastic cross sections for electron collisions with the C3H6 isomers
Makochekanwa, C.*; 加藤 英俊*; 星野 正光*; 田中 大*; 久保 博孝; Bettega, M. H. F.*; Lopes, A. R.*; Lima, M. A. P.*; Ferreira, L. G.*
Journal of Chemical Physics 124(2), p.024323_1-024323_9(2006) ; (JAEA-J 00293)

 構造異性体関係にあるプロペンC3H6とシクロプロパンc-C3H6の電子衝突断面積について報告する。これら分子の電子衝突断面積は、核融合プラズマ,プロセスプラズマにおいて重要な基礎データである。エネルギー1.5-100eV,散乱角20-120度の領域で電子散乱微分断面積を測定した。一方で、弾性散乱の全断面積,微分断面積及び運動量移行断面積をSchwinger-multichannel法を用いて計算した。プロペンの1.2-2.0eVのエネルギー領域で観測されたπ*形状共鳴がC2H4, C2F4と類似していることは、これら分子の分子構造における2重結合の効果を示す。60eV以下の衝突エネルギー領域では、プロペンとシクロプロパンの全断面積,微分断面積及び運動量移行断面積のピークのエネルギー,大きさに異性体効果による違いが観測された。


34000148
The Present status and future prospects of the ITER project
下村 安夫
Journal of Nuclear Materials 329-333(1), p.5-11(2004) ; (JAEA-J 00294)

 ITER建設の技術的準備は整い、建設開始に向けて、日本,欧州,ロシア,カナダ,中国,米国の参加を得て、政府間協議が進められている。2004年には、ITER計画の建設母体である国際機関が設立され、2014年の運転開始が見込まれている。ITERは人類最初の核融合実験炉である。この装置を用いて、炉心プラズマを開発し50万キロワットの核融合反応出力を得て、安全に信頼性高く運転することを通して、核融合炉の実用化の見通しを得る。またこの装置において、トリチウム生産兼発電用エネルギー取り出し用のプランケットの試験なども行われる。


34000149
Derivation of simple evaluation method for thermal shock damage on accelerator materials caused by out-of-control beam pulses and its application to J-PARC
武井 早憲; 小林 仁*
Journal of Nuclear Science and Technology 42(12), p.1032-1039(2005) ; (JAEA-J 00295)

 大強度陽子加速器施設において、ビームパルスを制御する電磁石が故障すると、制御を外れたパルスが加速器に入射され、熱衝撃損傷を生じることがある。J-PARCのような大強度施設において、このような損傷を防ぐために機器保護システム(MPS)を適正に設計することが重要である。本論文において、MPSが動作を開始する前にビーム入射が許容される時間を、材料における熱応力と降伏点の関係に着目して簡易に評価する方法を導出した。導出した評価方法をJ-PARCに適用したところ、J-PARCの各コンポーネントに対して入射許容時間は1.5〜330μsとなった。


34000150
Neutron powder diffraction study of methane deuterohydrate by the maximum entropy method
星川 晃範; 井川 直樹; 山内 宏樹; 石井 慶信
Journal of Physics and Chemistry of Solids 66(10), p.1810-1814(2005) ; (JAEA-J 00296)

 メタンハイドレートのStructure Iと呼ばれる構造では、水分子が水素結合により12面体と14面体の二種類のカゴを作り、これらのカゴを積み重ねた結晶構造をしている。しかし、カゴに内包されたメタン分子中の水素の原子座標などは特定されていない。そこで、内包されたメタンの構造を明らかにするため、原研のJRR-3に設置してあるHRPDを用いて回折パターンを測定し、Rietveld法とマキシマムエントロピー法による精密構造解析を行った。水素と重水素では中性子散乱長の符号が異なることから、重水とメタン(CH4)でメタンハイドレート試料を合成し、カゴ中の重水素とメタンの水素を区別した。カゴの種類によりメタンの構造に違いがあり、さらに中性子散乱長密度分布がカゴの種類により違うことが明らかになった。


34000151
Electronic excitations in hole-doped La1-xSrxMnO3 studied by resonant inelastic X-ray scattering
石井 賢司; 稲見 俊哉; 大和田 謙二; 葛下 かおり; 水木 純一郎; 村上 洋一; 石原 純夫*; 遠藤 康夫*; 前川 禎通*; 廣田 和馬*; 守友 浩*
Journal of Physics and Chemistry of Solids 66(12), p.2157-2162(2005) ; (JAEA-J 00297)

 La1-xSrxMnO3(x=0.2,0.4)についてMnのK吸収端での共鳴X線非弾性散乱法により電子励起の研究を行った。ホールドープで金属化したことによるギャップの消失がLa0.6Sr0.4MnO3において観測できた。また、温度により金属絶縁体転移を示すLa0.8Sr0.2MnO3では、散乱強度の温度変化に顕著な異方性が見られており、これはMn酸化物に特有の軌道自由度を反映した異方的な電子状態の変化を捉えたものと考えられる。


34000152
Thermal neutron spin-echo studies on dynamics of a glass-forming polymer in a high Q range
金谷 利治*; 加倉井 和久; 筑紫 格*; 井上 倫太郎*; 渡辺 宏*; 西 正和*; 中島 健次; 竹村 和浩*; 古屋 秀峰*
Journal of the Physical Society of Japan 74(12), p.3236-3240(2005) ; (JAEA-J 00298)

 グラス形成高分子系の重水素置換ポリブタヂエンの3.5Å-1までのQ領域における熱中性子スピンエコー実験が実施され、S(Q)の第一及び第二ピークの領域における干渉性準弾性散乱ピークのdecay rateの波数依存性が観測された。第一ピーク上で従来観測された"de Gennes"型ナローイングは第二ピーク上では存在しないことが明らかになり、これはこのQ領域で柔らかい-CD2-CD2- and=CD-CD2- による揺らぎと柔らかい単位と硬い単位の自身による運動によりナローイングが隠されているものと解釈できる。


34000153
Magnetic susceptibility of multiorbital systems
久保 勝規; 堀田 貴嗣
Journal of the Physical Society of Japan 75(1), p.013702_1-013702_4(2006) ; (JAEA-J 00299)

 常磁性相における帯磁率に対する軌道縮退の効果を平均場近似の範囲内で調べる。ある結晶場下では、磁気モーメントは2つの独立したモーメント、例えばスピンモーメントと軌道モーメントの和になる。そのような場合、帯磁率は2つの異なるキュリー・ワイス則の和になり、キュリー・ワイス則からずれる。そのような振舞いは、d電子系のt2g基底状態や、f電子系のΓ8基底状態において観測されることが期待される。この理論の適用例として、UO2とNpO2の帯磁率の温度依存性の違いの説明を試みる。その結果、この温度変化の違いはNpO2の八極子モーメントの効果として、自然に理解できることがわかった。


34000154
Simulation of electron bunch generation by an ultrashort-pulse high-intensity laser-driven wakefield
山極 満; Bulanov, S. V.*; Esirkepov, T. Z. *; Koga, J. K.; 神門 正城; 上島 豊; 斎藤 寛二; 若林 大輔*
Laser Physics 16(2), p.252-258(2006) ; (JAEA-J 00300)

 超短パルス高強度レーザーが有限長のアンダーデンスプラズマ層を伝播する際に励起する航跡場による電子加速について、2次元粒子シミュレーションを行う。中強度から高強度のレーザー場に対して、電子のエネルギー分布を解析する。レーザーパルス長がプラズマ波長のほぼ半分程度となる電子密度に対して、レーザー強度の増大は密度構造に劇的な変化をもたらし、キャビティとバンチを生成する。さらに、位相空間において限局した高速電子成分が生じ、そのエネルギー分布の解析的表式についても論議する。


34000155
Safety studies on hydrogen production system with a high temperature gas-cooled reactor
武田 哲明
Nuclear Engineering and Technology 37(6), p.537-556(2005) ; (JAEA-J 00301)

 高温ガス炉の一次冷却系配管が破断した場合には、破断口から空気が浸入し、黒鉛構造物が酸化する可能性がある。本論文では、配管破断事故時の空気浸入現象に関する実験と解析結果、及び空気浸入防止方法を述べる。黒鉛酸化反応による各成分気体の濃度,混合気体密度及び空気の自然循環流発生時間に関する数値解析結果は実験結果とよく一致した。HTTRに接続する水素製造システムはHTTRの10MWの核熱を用いて、熱化学法ISプロセスによる水素製造が可能である。HTTR水素製造システムは世界で初めて原子炉に接続するシステムであり、このため、数値解析コードの開発と安全審査に必要な中間熱交換器内の水素同位体透過に関する基礎データを取得した。ここでは、ハステロイXRの水素及び重水素透過係数についても報告する。


34000156
Global profile effects and structure formations in toroidal electron temperature gradient driven turbulence
井戸村 泰宏; 徳田 伸二; 岸本 泰明
Nuclear Fusion 45(12), p.1571-1581(2005) ; (JAEA-J 00302)

 ジャイロ運動論的グローバルトロイダルコードを用いて正磁気シア及び反転磁気シアトカマクにおけるトロイダル電子温度勾配駆動(ETG)乱流を調べた。非線形乱流状態において正磁気シア及び反転磁気シア配位におけるETG乱流は全く異なる構造形成を示す。正磁気シア配位においては、ETG乱流はバルーニング構造を示すストリーマにより支配され、電子温度Te分布は乱流の時間スケールで急速に緩和し臨界安定状態に至る。反転磁気シア配位においては、正磁気シア領域がストリーマで特徴付けられるのに対し、負磁気シア領域では準定常な帯状流が生成される。この結果、電子熱拡散係数χeqmin面をまたがってギャップ構造を形成し、温度勾配は臨界安定より上の状態で準定常に長時間維持される。これらの結果は、正磁気シアトカマクにおけるTe分布の硬さ、及び、反転磁気シア配位におけるTe輸送障壁形成の可能性を示唆している。


34000157
Design study of national centralized tokamak facility for the demonstration of steady state high-β plasma operation
玉井 広史; 秋場 真人; 疇地 宏*; 藤田 隆明; 濱松 清隆; 橋爪 秀利*; 林 伸彦; 堀池 寛*; 細金 延幸; 市村 真*; 居田 克己*; 今井 剛*; 石田 真一; 伊藤 智之*; 鎌田 裕; 川島 寿人; 菊池 満; 木村 晃彦*; 木津 要; 久保 博孝; 工藤 祐介; 栗原 研一; 栗田 源一; 栗山 正明; 正木 圭; 松川 誠; 松岡 守*; 三浦 幸俊; 三浦 友史*; 宮 直之; 森岡 篤彦; 中村 一男*; 二宮 博正; 西村 新*; 岡野 邦彦*; 奥野 清; 相良 明男*; 坂本 瑞樹*; 櫻井 真治; 佐藤 浩之助*; 嶋田 隆一*; 清水 昭比古*; 鈴木 隆博; 高橋 弘行*; 高瀬 雄一*; 武智 学; 田中 知*; 土屋 勝彦; 筒井 広明*; 上杉 喜彦*; 谷津 潔*; 吉田 直亮*
Nuclear Fusion 45(12), p.1676-1683(2005) ; (JAEA-J 00303)

 トカマク国内重点化装置の設計研究をまとめた。装置の設計は、プラズマのアスペクト比と形状制御性に関して自由度を広く確保できることが求められている。これは、ITERと平行して研究を進めるとともに、定常高ベータプラズマ運転についての科学的なデータベースをDEMOへ提供する観点から重要である。この目標に合致するように、プラズマのアスペクト比と形状の自由度の確保について、これまで比較的困難であったダイバータ排気性能との両立が図られるように装置設計を行った。この装置設計に基づいて、閉じ込め,安定性,電流駆動,ダイバータプラズマ等の物理性能を評価し、主目的である定常高ベータプラズマを実現するための制御方法を検討した。


34000158
Optics and beam transport in energy-recovery linacs
羽島 良一
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 557(1), p.45-50(2006) ; (JAEA-J 00304)

 エネルギー回収型リニアックにおけるビーム光学,ビーム輸送系の諸問題をまとめ、研究の最新動向を述べる。合流部及び周回軌道における空間電荷,コヒーレント放射によるエミッタンス増大の評価方法とその抑制方法の提案,ビーム電流の上限を与えるHOM不安定性現象の閾値電流計算手法と不安定性を抑制するためのビーム光学的なアプローチ、さらに、FEL,放射光,電子冷却などの目的に応じたビーム周回軌道の設計方法などである。


34000159
Analysis of a BWR turbine trip experiment by entire plant simulation with spatial kinetics
朝日 義郎; 鈴土 知明; 石川 信行; 中塚 亨
Nuclear Science and Engineering 152(2), p.219-235(2006) ; (JAEA-J 00305)

 BWRタービントリップの実験をTHYDE-NEUコードを用いて解析した。プラントは(コンデンサを含む)閉ループとして扱った(このような解析例は著者は他には知らない)。このためには湿分分離器モデルとジャンクションでの流路面積変化による可逆圧変化を考慮に入れることが必要である。反応度概念を用いない3次元動特性モデルを使用した。THYDE-NEUはこの体系の熱水力結合の零過渡解析ができることを確認した。本実験での3次元動特性に影響を与える諸因子の中にはバイパス弁開度の時間変化,気液非平衡モデル,断面積のテーブル内挿で使う冷却材密度の表現法がある。これらを調整すれば炉平均LPRM値が0.63sでスクラム信号発生の設定値に達するという実験条件を満足させることができることがわかった。他の計算結果も実験結果とよく一致した。


34000160
Development of control technology for the HTTR hydrogen production system
西原 哲夫; 稲垣 嘉之
Nuclear Technology 153(1), p.100-106(2006) ; (JAEA-J 00306)

 日本原子力研究所では高温ガス炉HTTRを利用した水素製造の研究開発を進めている。本システムの主要課題の1つとして、安定な運転を行うための制御技術の開発がある。化学反応器の下流に設置する蒸気発生器を用いてヘリウム温度の変動を緩和し、熱負荷変動を吸収することを提案した。起動運転と化学反応器の負荷喪失事象を対象として熱流動解析を行った。原料ガスの流量変化に伴う化学反応器出口の大きなヘリウム温度の変動は蒸気発生器出口で緩和されることを示した。この結果、HTTRは原料ガスの流量によらず、通常運転を継続することができる。


34000161
Prepulse-free, multi-terawatt, sub-30-fs laser system
桐山 博光; 井上 典洋*; 赤羽 温; 山川 考一
Optics Express 14(1), p.438-445(2006) ; (JAEA-J 00307)

 プリパルスフリー・高強度レーザーパルスの生成を目的として、OPAをCPAレーザーの前置増幅部に組み込んだシステムの開発を行った。本システムは低い励起エネルギーで有効にプリパルスを低減させるために、新たに考案した再生増幅器からの出力光を減光し、OPAで主パルスのみを選択的に増幅する構成を採用している。OPAにはタイプI位相整合のBBO結晶を2つ用い、その励起光には単一縦モードのQスイッチNd:YAGレーザーの第二高調波光を用いた。シード光をOPAで増幅することにより24mJのシグナル増幅光が高いコントラストで得られた。後段のチタンサファイアレーザー増幅器でさらに増幅することにより、高エネルギーのシグナル増幅光が得られた。


34000162
Selective transition to the closely-lying states Cs(7D3/2) and Cs(7D5/2) by femtosecond laser pulses
山田 秀尚; 横山 啓一; 寺西 慶哲*; 杉田 明宏; 白井 稔三*; 青山 誠; 赤羽 温; 井上 典洋*; 上田 英樹*; 山川 考一; 横山 淳; 川崎 昌博*; 中村 宏樹*
Physical Review A 72(6), p.063404_1-063404_5(2005) ; (JAEA-J 00308)

 量子制御による近接準位の超高速で精確な選択の実証を報告している。波形整形器で位相ロックされたフェムト秒パルス対を作り、これによってセシウム原子を基底状態からCs(7D3/2)及びCs(7D5/2)状態へ二光子吸収によって励起させているそれぞれのスピン−軌道状態からの蛍光検出によって、励起状態のポピュレーションを測定している。パルス対の位相差を制御することによって、精確な超高速選択が達成されている。パルスペアの遅延時間400フェムト秒以内の条件において、選択比の最小に対する最大の比は1000を超えている。


34000163
Analysis of f-p model for octupole ordering in NpO2
久保 勝規; 堀田 貴嗣
Physical Review B 72(13), p.132411_1-132411_4(2005) ; (JAEA-J 00309)

 NpO2の八極子秩序の起源を探るために、ネプツニウムの5f軌道と酸素の2p軌道から構成される微視的なモデルを提案する。このモデルの多極子秩序の可能性を調べるために、われわれはf-p軌道間の跳び移り積分に対する4次摂動論を用いて、有効多極子相互作用モデルを導出した。この有効モデルを数値的に解析した結果、Γ5u反強八極子秩序が起こる傾向を見いだした。


34000164
Multipole ordering in f-electron systems on the basis of a j-j coupling scheme
久保 勝規; 堀田 貴嗣
Physical Review B 72(14), p.144401_1-144401_12(2005) ; (JAEA-J 00310)

 f電子系の多極子秩序を格子構造に着目し、微視的な観点から調べた。そのために、まずj-j結合描像に基づいて、単純立方格子,体心立方格子,面心立方格子上の強束縛モデルを構築した。次に、これらのモデルの強結合極限での有効モデルを、f電子の跳び移り積分に対する2次摂動論によって導出した。これらの有効モデルに対して平均場近似を適用した結果、格子構造に依存して異なる多極子秩序状態が実現することがわかった。単純立方格子ではΓ3gの反強四極子転移がある温度で起こり、さらに低温で強磁性転移が起こる。体心立方格子ではΓ2uの反強八極子転移が最初に起こり、さらに強磁性転移が起こる。面心立方格子では縦型の三重変調したΓ5uの八極子転移が起こる。


34000165
Observation of nonlinear coupling between small-poloidal wave-number potential fluctuations and turbulent potential fluctuations in Ohmically heated plasmas in the JFT-2M tokamak
永島 芳彦*; 星野 克道; 江尻 晶*; 篠原 孝司; 高瀬 雄一*; 都筑 和泰; 上原 和也; 川島 寿人; 小川 宏明; 井戸 毅*; 草間 義紀; 三浦 幸俊
Physical Review Letters 95(9), p.095002_1-095002_4(2005) ; (JAEA-J 00311)

 JFT-2Mトカマクのオーム加熱プラズマの周辺部で、高速駆動静電プローブにより、ポテンシャル揺動スペクトルを測定した。その結果、二種類のコヒーレントな静電揺動(約1kHzと10-15kHz)を初めて見いだした。これらのモードは、最外殻磁気面の内側に存在する。このうちの高周波のモードは測地的音波(GAM)の特徴を有する。しかし低周波のモードは測地的音波かどうか不明である。バイスペクトル解析により、これらの静電揺動と背景乱流揺動にはパラメトリック変調的な非線形結合がみられることがわかった。すなわち、高周波のGAMモードや背景乱流はこの低周波のモードで変調を受けている(さらに背景乱流はGAMモードからも変調されている)ことを初めて見いだし、この低周波モード(周波数約1kHz)が非線形的に乱流輸送に影響を与えていると推定されることを初めて示した。


34000166
Comparison of He I line intensity ratio method and electrostatic probe for electron density and temperature measurements in NAGDIS-II
梶田 信*; 大野 哲靖*; 高村 秀一*; 仲野 友英
Physics of Plasmas 13(1), p.013301_1-013301_9(2006) ; (JAEA-J 00312)

 静電プローブを用いたプラズマ計測では、特に低温プラズマで電流−電圧特性に異常がみられ、電子温度・密度の評価が難しくなる場合がある。一方、電子温度・密度は分光計測(中性ヘリウムの発光線の強度比を用いる)からも評価することができる。この2つの計測法で得られた電子温度・密度を比較するため、名古屋大学のダイバータシミュレータNAGDIS-IIでヘリウムプラズマを用いて実験を行った。その結果、電子温度・密度ともに分光計測から得られた値の方がわずかに大きかった。この理由を放射輸送などの効果を取り入れた解析コードにより議論する。


34000167
Time-of-flight system with a movable ion detector for absolute measurement of cyclotron beam energy
奥村 進; 倉島 俊; 宮脇 信正; 吉田 健一; 福田 光宏
Review of Scientific Instruments 76(11), p.113106_1-113106_6(2005) ; (JAEA-J 00313)

 サイクロトロンのビームエネルギー絶対値を計測するために、飛行時間測定法による計測システムを開発した。検出器にはマイクロチャンネルプレート検出器とプラスチックシンチレーション検出器を用い、高時間分解能での飛行時間計測を達成した。短い飛行距離で高精度のエネルギー計測を可能にするために、プラスチックシンチレーション検出器を移動し、異なる飛行距離に対する飛行時間差を用いることで、大幅に誤差を抑制した。その結果、サイクロトロンで加速する高エネルギービームエネルギー計測を0.1%台の精度で可能にした。また、サイクロトロンビームが加速RFに同期したパルスビームであることを利用して、本計測システムによってプラスチックシンチレーション検出器のみによるエネルギー計測も実現した。


34000168
Study of electron irradiation-induced defects in CuInSe2 and CuInxGa1-xSe2 by electron spin resonance
岡田 浩*; Lee, H.-S.*; 若原 昭浩*; 吉田 明*; 大島 武; 神谷 富裕
Solar Energy Materials and Solar Cells 90(1), p.93-99(2006) ; (JAEA-J 00314)

 次世代の宇宙用の高効率薄膜太陽電池材料として期待されるCuInSe2及びCuInxGa1-xSe2半導体中に電子線照射により発生する欠陥を電子スピン共鳴(ESR)を用いて調べた。試料は粉末原料を真空中で1080℃に加熱することで作製した多結晶を用い、2MeV電子線を室温にて1×1017/cm2照射した。3.3KでのESR測定(Xバンドマイクロ波使用)の結果、照射,未照射試料ともに1580Gと3230G付近にシグナルを観測したが、1580G付近のシグナルに関しては、結晶中に含まれる鉄(Fe)不純物に由来するものであり、照射前後でシグナルの変化はなかった。一方、3230G付近のシグナルは照射により強度が増大すること及び低磁場側に裾を引く形状に変化することがわかった。Cu空孔の形成エネルギーが他の空孔に比べ低いという理論計算の結果に基づき、Cu2+を含むESRシグナルをEasySpinプログラムを用いて計算した。その結果、実験とシミュレーション結果がよく一致することが見いだされ、電子線照射により形成されたCu空孔関連の欠陥に起因するシグナルであることが示唆された。


34000169
Intra- versus inter-site electronic excitations in NdNiO3 by resonant inelastic ultra-soft X-ray scattering at Ni 3p edge
Butorin, S. M.*; Saa the, C.*; 安居院 あかね; Saalem, F.*; Alonso, J. A.*; Nordgren, J.*
Solid State Communications 135(11-12), p.716-720(2005) ; (JAEA-J 00315)

 NdNiO3とそのモデル系としてNiOのウルトラ軟X線非弾性X線散乱測定をNi 3p端で行った。アンダーソン不純物モデルによる計算を利用し非弾性X線散乱過程におけるd-d励起の様子について検討した。その結果イントラ励起とインター励起の競合過程がわかった。


34000170
Proton conduction properties of crosslinked PTFE electrolyte membranes with different graft-chain structures
澤田 真一; 八巻 徹也; 浅野 雅春; 寺井 隆幸*; 吉田 勝
Transactions of the Materials Research Society of Japan 30(4), p.943-946(2005) ; (JAEA-J 00316)

 グラフト鎖の構造の異なる架橋PTFE電解質膜を合成し、それらの温湿度制御下におけるプロトン伝導特性をACインピーダンス法によって評価した。前照射線量を15kGy(一定)としてグラフト反応を行い、鎖の密度を等しくした膜では、イオン交換容量とともにプロトン伝導度が増大した。伝導度の最大値としては、イオン交換容量2.8meq/gの膜が温度80℃,相対湿度95%の環境下において0.20S/cmを示した。イオン交換容量が同程度のときは、グラフト鎖の密度が高く長さが短い方が、長い鎖が低密度に存在するときよりも、高い伝導度を示した。この結果は、プロトンの伝導経路である親水性領域の構造の違いに起因すると考えられる。


34000171
プラズマ溶融処理した非金属廃棄物のマイクロ波加熱装置を用いる迅速溶解法
原賀 智子; 亀尾 裕; 中島 幹雄
分析化学 55(1), p.51-54(2006) ; (JAEA-J 00317)

 非金属放射性廃棄物をプラズマ溶融処理して製作される溶融固化体の放射化学分析を行うためには、比較的多量の試料を溶液化する必要がある。本報告では、溶融固化体試料を効率的に溶液化するために、マイクロ波加熱装置を用いる迅速溶解法を検討した。従来のホットプレートのみによる外部加熱法では、一容器あたり溶液化可能な溶融固化体試料は0.1g程度であったが、マイクロ波加熱法を適用することにより、試料1gをより短時間に溶液化できるようになった。これにより、溶解操作の所要時間は1/10以下に短縮され、溶融固化体試料に対する迅速溶解法を確立することができた。また、リファレンスとして高炉スラグを用いて、マイクロ波加熱を適用した溶解法の妥当性を確認した。


34000172
高エネルギー中性子線量評価に用いる計算コード開発の現状
佐藤 達彦
放射線 31(4), p.313-318(2005) ; (JAEA-J 00319)

 高エネルギー加速器施設の作業員,航空機の乗務員及び宇宙飛行士に対する被ばく線量評価では、20MeV以上の高エネルギー中性子による被ばくが問題となる。このような背景から、高エネルギー中性子の輸送を扱える計算コードが幾つか開発され、線量評価に利用されている。本報告では、それらの計算コード開発の現状について解説し、その使用時における留意点や、今後解決すべき課題について整理する。


34000173
核燃料サイクルから放射線防護医療への期待
宮部 賢次郎
放射線防護医療 (1), p.24-27(2005) ; (JAEA-J 00320)

 原子力施設において事故・災害が発生した時の緊急被ばく医療については、原子力安全委員会で策定された「緊急被ばく医療のあり方(平成13年6月)」等に基づき、国,地方自治体,原子力事業所,医療機関等において、体制の整備,資機材やマニュアルの整備,訓練を通じた機能の充実等への取り組みが進められている。日本原子力研究開発機構核燃料サイクル工学研究所(H17年9月まで核燃料サイクル開発機構東海事業所)では、アスファルト固化処理施設の火災・爆発事故やJCO臨界事故の教訓等を踏まえて、緊急時対応の拠点となる防災管理棟の設置等による事故時対応の強化を図るとともに、緊急被ばく医療に必要な設備,機材の整備等に努めてきている。また、緊急時の放射線モニタリング技術の開発,汚染検査や除染に必要な資機材の整備や対応能力の向上,被ばく線量の測定及び線量評価技術の開発等を行ってきている。本稿では、日本原子力研究開発機構核燃料サイクル工学研究所におけるこれまでの放射線防護にかかわる研究開発や施設の放射線管理及び緊急時被ばく医療への取り組みを踏まえ、核燃料サイクルの観点から見た今後の緊急被ばく医療に期待する事項を紹介する。


34000174
無人ヘリによる放射線サーベイ手法の開発
奥山 慎一; 鳥居 建男; 澁屋 正紀*
放射線防護医療 (1), p.44-45(2005) ; (JAEA-J 00321)

 放射性物質が異常な水準で放出される原子力事故時には放出源情報の迅速な把握を目的としてモニタリングが行われるが、その際にモニタリング要員の被ばくの防止が重要な課題となる。本件では、現在行われている有人ヘリコプタによる空中モニタリングでは不可能な放出源近傍の低高度でのモニタリング,複雑地形でのモニタリングも可能な自律航行型無人ヘリを用いた空中放射線サーベイシステム開発の研究成果について報告する。本システムの使用により、高線量率環境下でも無人で遠隔線量率測定が可能となるとともに、航路等のプログラム化により、繰り返し定点観測が可能となることから、原子力災害時の緊急時モニタリングに適していることが明らかになった。


34000175
マイクロビームによる細胞のピンポイント照射
小林 泰彦
放射線と産業 (108), p.21-25(2005) ; (JAEA-J 00323)

 放射線を用いた細胞局部照射実験は、最初は細胞構造の一部を破壊してその機能を調べるためのマイクロサージャリ実験法として考案され、後には細胞内で最も放射線感受性が高い部位を特定するための手段としても利用されるようになった。マイクロビームによる細胞のピンポイント照射は放射線に対する細胞の応答を解明する究極の手法といえる。マイクロビームを用いた特定細胞への狙い撃ち照射によって、従来のランダムな照射方法では余儀なくされていた「平均値としての照射効果」の解析から脱却して個々の細胞に対する真の放射線生物学的効果を追求することが可能である。過去のさまざまなマイクロビーム細胞照射の試みと最新の研究状況を紹介する。


34000176
サイクロトロンビームの高安定化
横田 渉; 奥村 進
放射線と産業 (108), p.33-38(2005) ; (JAEA-J 00324)

 サイクロトロンは長い間、おもに原子核物理や医療の分野で用いられてきたが、1990年代に材料科学やバイオ技術の広い研究開発分野での利用が急速に進んだ。このためカクテルビーム加速やマイクロビーム照射など、従来にはなかったさまざまな加速方式や照射方法が使われるようになり、ビームの量,位置,位相などの不安定性が問題になってきた。日本原子力研究開発機構のイオン照射施設(TIARA)では、これらの不安定の最も大きな原因がサイクロトロンのわずかな磁場変動であること,サイクロトロンの磁石の温度変化が磁場変動を引起こすことを突止め、この温度を一定に保つ技術開発を行った。これにより、ΔB/B〜1×10-5の極めて高い磁場安定度を達成し、ビームの安定度は著しく向上した。本論文では、TIARAのサイクロトロンで問題となったビームの不安定とそれが磁場変動によって起こされる機構、TIARAで開発された磁場安定化技術を平易に解説する。


34000177
有機高分子膜へのナノ穿孔形成と機能化
廣木 章博; 鈴木 康之; 八巻 徹也; 浅野 雅春; 吉田 勝
放射線と産業 (108), p.4-8(2005) ; (JAEA-J 00325)

 高分子膜にイオンビームを照射すると個々のイオンの飛跡に沿って電離と励起反応が高密度に起こり、それに伴い高分子鎖の架橋や分解が引き起こされる。このイオンビーム照射とアルカリエッチングを組合せたナノスケール微細加工技術が注目されている。当研究グループではこれまでにポリエチレンテレフタレート(PET),ポリイミド(PI)などの高分子膜を用いて、ナノ微細孔の形成と機能化に関する研究を行ってきた。そこで本稿中では、最近の研究成果の中から幾つかのトピックについて紹介した。例えば、PET膜では穿孔内壁に存在する官能基を利用した化学修飾と物質選択分離、PI膜ではネガ型とポジ型のエッチング挙動などについて述べた。さらに、これらのナノスケールイオン穿孔膜を利用した材料開発の今後の展望について述べた。


34000178
ITERにおける核融合装置規格開発の考え方
中平 昌隆; 武田 信和
保全学 4(4), p.47-52(2006) ; (JAEA-J 00326)

 ITER(国際熱核融合実験炉)の構造技術基準は、ITERが核分裂炉と比較して全く異なる安全上の特徴と構造機器を有し、製作及び検査の観点から新しい技術を導入する必要があるため、革新的なものが必要である。この核融合構造技術基準は国際性が重要であることを勘案し、日本とASMEとで共同開発を開始した。本論文は、ITERの特徴を安全性,設計及び製作の観点から抽出し、核融合構造技術基準を開発する考え方を提案するものである。


34000179
高温ガス炉を利用する水素製造
塩沢 周策; 小川 益郎; 日野 竜太郎; 小貫 薫; 坂場 成昭
火力原子力発電 57(1), p.7-12(2006) ; (JAEA-J 00327)

 日本原子力研究開発機構が開発を進めている高温ガス炉を利用する水素製造に関し、環境・エネルギー問題と高温ガス炉水素製造の必要性,水素製造の現状と将来技術,高温ガス炉の構造と特徴,高温工学試験研究炉計画,水素製造に関する研究開発,高温ガス炉の導入及び長期的展望について解説する。


34000180
高温ガス炉における安全性実証試験,制御棒引抜き試験について
高松 邦吉; 中川 繁昭
高温学会誌 32(1), p.16-26(2006) ; (JAEA-J 00328)

 HTTRを用いた安全性実証試験は、炉心の耐熱性が高くかつ熱容量が大きいことなどから、異常時にも炉心の温度変化が極めて緩慢であるという高温ガス炉の固有の安全性を定量的に実証し、高温ガス炉技術の高度化に資するために行っている。具体的な目的としては、(1)実機の高温ガス炉であるHTTRにおいて、反応度投入や炉心除熱量の減少等の異常・事故に分類される事象を試験として模擬し、高温ガス炉の固有の安全性を実証すること、及び(2)試験時の原子炉挙動データを取得し、1点炉近似モデルを用いた安全解析(事故解析)コードの精度を向上させ、過度の保守性を排除して安全設計・安全評価技術を高度化することがある。反応度投入事象を模擬した制御棒引抜き試験では、制御棒の自動操作による原子炉出力の制御が行われなくても、負の反応度フィードバック特性のみにより原子炉出力の過度な上昇が抑制され、原子炉が安定な状態に落着くことを実証する。解析については、従来の手法である1チャンネル・1温度係数による結果は、保守的に原子炉出力を高めに評価するため、HTTR炉心の特徴,濃縮度の異なる燃料体の配分,炉心軸方向の温度差等に着目して、炉心を多領域に分割する解析モデルを開発し、1点炉近似モデルの評価手法の高度化を試みた。本報告は、日本で初めての高温ガス炉であるHTTRで取得された貴重な試験データを公開するとともに、原子炉初期出力30%から60%までの制御棒引抜き試験についてまとめた。


34000181
ポータブル型パルス磁場による強磁場下での放射光X線回折実験
松田 康弘*; 稲見 俊哉; 大和田 謙二; 野尻 浩之*
固体物理 40(11), p.882-890(2005) ; (JAEA-J 00329)

 30Tを超える磁場下でのX線回折を小型パルスマグネットを使うことにより大型放射光施設SPring-8で世界で初めて行った。マグネットは非常に小型で、このため、標準型のX線用冷凍器、及び回折計に容易に取り付けることができる。この解説では、この最新の強磁場下X線回折技術について述べるとともに、マンガン酸化物の磁場誘起の電荷秩序の融解と、YbInCu4の磁場誘起価数転移を、格子定数の変化を通して観測した結果を例として示す。


34000182
イオン注入法によるチタン薄膜の窒化機構
粕壁 善隆*; Wang, J. J.*; 山村 力*; 藤野 豐*; 山本 春也; 吉川 正人
まてりあ 45(1), p.23-31(2006) ; (JAEA-J 00330)

 チタンと窒素の組成比によって金属性から絶縁性まで変わる不定比化合物チタンは、次世代のデバイス材料として応用が期待されている。本研究では、窒素イオン注入法による窒化Ti薄膜の形成過程を透過電子顕微鏡法(TEM)及び電子エネルギー損失分光(EELS)でその場観察し、分子軌道計算による電子状態の計算結果と併せて評価することにより、窒化Ti薄膜の形成機構及び配向の制御性に関する知見を得てきた。本報告では、窒素イオン注入によるTi薄膜の窒素化過程とそのメカニズム、すなわち、「エピタキシャル」変態機構について紹介する。


34000183
6価クロムを無毒化してリサイクル可能に; 放射線による固体材料の新たな機能の発現とその利用
永石 隆二
未来材料 5(12), p.44-49(2005) ; (JAEA-J 00331)

 6価クロムはメッキ処理などの原材料に利用される一方、人体に有害な物質である。これを無毒化して有用物質として再利用するためには、電子線,γ線などの「放射線」やアルミナ,シリカなどの「酸化物」が鍵となる。ここでは、新たに開発した6価クロム処理法を通じて、従来材料の新規機能発現やクロム材料の機能化と回収について紹介し、有用物質リサイクルや放射線利用技術について展望したい。


34000184
地震動の不確かさを考慮した経年配管の構造信頼性評価手法の開発
杉野 英治*; 伊藤 裕人*; 鬼沢 邦雄; 鈴木 雅秀
日本原子力学会和文論文誌 4(4), p.233-241(2005) ; (JAEA-J 00332)

 本研究の目的は、既存の軽水炉原子力発電プラントの長期利用の観点から、安全上重要な機器構造物の経年変化事象を適切に考慮した地震時構造信頼性評価手法を確立することである。そこで、1次冷却系配管における応力腐食割れや地震荷重による疲労き裂進展などの経年変化事象に着目し、確率論的破壊力学に基づいた配管破損確率評価コードPASCAL-SCと、プラントサイトの地震発生確率及び地震発生確率レベルに応じた地震動を算出するための確率論的地震ハザード評価コードSHEAT-FMを開発し、これらを組合せた経年配管の地震時構造信頼性評価手法を提案した。この手法を用いてBWRモデルプラントの再循環系配管溶接線の1つについて評価した。その結果、経年配管の破損確率は、運転時間がある時期を過ぎると急激に増加する傾向にあり、相対的に地震荷重よりも経年変化による破損の影響が大きいことがわかった。


34000185
セメント共存下でのスラグの溶解挙動
前田 敏克; 馬場 恒孝*; 堀田 克敏*; 水野 大*; 小澤 達也
日本原子力学会和文論文誌 4(4), p.242-247(2005) ; (JAEA-J 00333)

 SiO2, CaO及びAl2O3を主成分とするスラグ試料を用いて、セメント共存下における静的浸出試験を90℃で行い、処分環境として想定されるセメント環境でのスラグの溶解挙動を調べた。その結果、スラグは試験期間をとおして一定の速度で溶解することがわかった。これは、スラグとともに放出された主成分Siがカルシウムシリケート水和物に取り込まれることによって液中Si濃度の低い状態が保たれ、初期における溶解反応速度が継続したためと推察された。


34000186
原子力分野におけるモンテカルロ法解析の教育方法
桜井 淳; 山本 俊弘
日本原子力学会和文論文誌 4(4), p.248-258(2005) ; (JAEA-J 00334)

 日本原子力研究所でモンテカルロセミナーが実施されている。それらは、(1)モンテカルロ基礎理論セミナー,(2)モンテカルロ法による核燃料サイクル施設の未臨界安全セミナー,(3)モンテカルロ法による遮蔽安全解析セミナー,(4)モンテカルロ法による中性子深層透過問題におけるウェイト下限値推定法セミナー,(5)MCNPXによる高エネルギー遮蔽安全解析セミナー,(6)モンテカルロ法によるストリーミングセミナー,(7)モンテカルロ法によるスカイシャインセミナー,(8)モンテカルロ法による線量評価セミナーである。基礎理論セミナーでは、筆者が考案したウェイト下限値やインポータンスを推定する新しい簡単な方法を取り入れた。未臨界セミナーでは、計算結果の信頼性を評価するために、筆者が実施した11種類のベンチマーク実験問題を組み込んだ。


34000187
よくわかる核融合炉のしくみ,12; 核融合炉実現に向けて,核融合研究開発の将来像
岡野 邦彦*; 栗原 研一; 飛田 健次
日本原子力学会誌 48(1), p.48-56(2006) ; (JAEA-J 00335)

 日本原子力学会誌の連載講座「よくわかる核融合炉のしくみ」の最終章として、核融合炉が実現したら本当にたくさんのエネルギーを供給できるのか、実現するためにどのような計画があるのか、などを紹介する。目次は以下のとおり。第1章:核融合炉の燃料って本当に無尽蔵なの?(重水素はどうやってつくるのですか?リチウムの資源は十分ですか?),第2章:燃料以外の資源で足りなくなるものはないのですか?,第3章:核融合炉実現はどのような意味を持つのですか?(エネルギー・環境問題とは?新エネルギー技術になにが期待されるのでしょう。核融合炉開発の意義とは?),第4章:実験炉ITERでは、どこまで研究が進むのでしょうか?,第5章:原型炉のイメージは固まっているのですか?,第6章:その先の市場参入後の展開のために、どのようなことを考えていますか?


34000188
アモルファス希土類遷移金属合金垂直磁化膜のスペリ磁性; 軟X線MCD測定をプローブとして
水牧 仁一朗*; 安居院 あかね; 朝日 透*
応用物理 75(2), p.227-232(2006) ; (JAEA-J 00336)

 次世代の超高密度記録媒体開発を効率的に行うためには、その材料の基礎的な磁性を理解することが重要である。アモルファス希土類遷移金属合金垂直磁化膜は超高密度記録媒体として有望なもののひとつである。軟X線磁気円二色性は、元素ごと及び軌道ごとに、フェルミ準位近傍の非占有準位の電子状態・スピン状態を調べるのに有力なプローブである。本稿ではこの系に特徴的なスペリ磁性が、そのスペクトルに与える影響を紹介しその基礎的性質について紹介する。


34000189
高い耐熱性を有する中性子遮蔽樹脂の開発
森岡 篤彦; 奥野 功一*
プラスチックス 57(1), p.148-152(2006) ; (JAEA-J 00337)

 核融合実験装置の真空容器近傍など、高温かつ機械的衝撃力の加わる環境下で使用可能な中性子遮蔽樹脂材を設計,開発した。開発した樹脂は300℃以上の耐熱性能を有し、かつ高温環境下でも極度の強度低下の少ない材料であり、従来の製品を凌ぐ性能を有することを確認した。今回はJT-60定常高ベータ装置を対象に材料設計を行ったが、耐熱性能が要求される他の放射線施設に対しても材料組成の変更が可能であり、広範囲な樹脂系中性子遮へい材料の製作に関する知見を得た。この樹脂材料の開発過程と性能を解説した。


34000190
核融合プラント実現への道
岡野 邦彦*; 菊池 満; 飛田 健次; 日渡 良爾*
プラズマ・核融合学会誌 81(11), p.839-848(2005) ; (JAEA-J 00338)

 核融合の実用化のためには、発電原価だけでなくプラントとしてのさまざまな特性が求められており、総合的見地から他のエネルギー源に対して競合可能なように開発を進める必要がある。発電原価の点では、核融合の将来的な競争相手はCO2回収付火力と考えられるが、そのコストは現行電源の1.5倍程度になると予測されている。この値は、現在の核融合プラントの概念設計の観点からはコスト目標として実現可能と考えられる。このほか、出力安定度のような運転特性,出力規模,設備利用率等の要請について核融合の開発目標を整理した。また、日本原子力研究開発機構及び電力中央研究所で検討中のそれぞれの原型炉概念を解説した。これらの原型炉では、その運転中に初代実用炉に求められる性能を実証する必要があり、そのための基本的な考え方を整理した。


34000191
発電実証プラントに向けたITER並びに炉心プラズマ研究
鎌田 裕; 嶋田 道也; 三浦 幸俊; 小川 雄一*
プラズマ・核融合学会誌 81(11), p.849-862(2005) ; (JAEA-J 00339)

 「小特集 2050年にトカマク型実用核融合プラントを稼動させるために」の第3章として、核融合発電実証プラントの開発に向けて必要な炉心プラズマ研究を概説する。燃焼プラズマとは、高エネルギーアルファ粒子による自己加熱が支配的な自律系であり、これは、現在までの実験で得られているプラズマとは質的に異なる。ITERによる研究は、この燃焼プラズマ研究という新たな領域を拓くものである。これに加えて、定常高ベータプラズマの開発は、核融合発電実証プラントの経済性の観点から特に重要である。核融合発電実証プラントに求められるプラズマの総合的性能を示し、それに対する現在までの達成度,ITER及びそれと平行する研究開発に関して概説する。


34000192
魅力ある実用化を目指した先進的技術課題
飛田 健次; 小西 哲之*; 時松 宏治*; 西尾 敏; 日渡 良爾*
プラズマ・核融合学会誌 81(11), p.875-891(2005) ; (JAEA-J 00340)

 核融合が将来の市場導入を考えたときに求められるであろう要件とそれへの対応を考察した。まず、世界エネルギーモデルに基づいて核融合が市場に導入された場合の電力シェア予測を示し、核融合の重要な意義とされる地球温暖化抑制に対する寄与を定量化した。このような将来予測はエネルギー供給コスト最小化という尺度での合理的な解ではあるが、実際の市場がこのような原理に従うとは考えにくい。核融合の導入を想定する今世紀半ばはエネルギー市場の大規模な拡大と脱化石燃料というエネルギー供給構造の一大変革期であり、新エネルギー技術に対する各国のエネルギー戦略が色濃く反映されることに留意する必要がある。このような視点から、国内市場及び世界市場への核融合の市場参入シナリオを考察した。また、核融合が市場に受け入れられた後、そのシェアを拡大していくために求められる革新技術として、炉心プラズマの高ベータ化,ブランケット高性能化等について解説した。


34000193
重イオンビームプローブによるゾーナルフロー研究,2
井戸 毅*; 浜田 泰司*; 三浦 幸俊; 星野 克道
プラズマ・核融合学会誌 81(2), p.987-992(2005) ; (JAEA-J 00341)

 重イオンビームプローブ(HIBP)は、高温プラズマのポテンシャル揺動や密度揺動の研究に有力な手段であり、これを用いた帯状流の研究が現在急速に進展している。この報文では、JIPPT-IIUトカマクやJFT-2Mトカマクで研究されてきた帯状流の一種である測地的音波モード(GAM)の特性のHIBPによる測定結果を紹介する。測定された周波数や空間構造は、理論の予測に近い。またGAM流の背景揺動への影響もみられている。


34000194
アナライザを用いたひずみスキャニング法の表面効果の補正
菖蒲 敬久; 水木 純一郎; 鈴木 賢治*; 秋庭 義明*; 田中 啓介*
材料 55(1), p.101-108(2006) ; (JAEA-J 00343)

 ゲージ体積が材料表面にもぐったときに回折角がシフトする。このときには表面効果の補正が必要である。われわれは、アニールされたS45C材料を用いて、この回折角のシフトについてGe(111)アナライザを用いたひずみスキャニング法により調査した。その結果、この現象は幾何学的なゲージ体積と装置ゲージ体積の中心が異なるために発生することを明らかにした。また前述の違いの発生要因については、(1)アナライザの発散によるゲージ体積の変化,(2)X線の侵入深さ,(3)アナライザと受光スリットの中心のずれ、という3つにより説明できる。以上の結果、本論文ではこれらの要因を考慮した補正法を提案する。さらにこの補正法を用いて、ショットピーニングを施したS45C材に関しても測定を行った。その結果、残留応力分布は、表面を徐々に取り除いて測定されたものと一致した結果を得ることができた。


34000195
J-PARC commissioning results
長谷川 和男
Proceedings of 2005 Particle Accelerator Conference (PAC '05) (CD-ROM) , p.220-224(2005) ; (JAEA-J 00344)

 原研は、高エネルギー加速器研究機構と共同で大強度陽子加速器施設(J-PARC)の建設を行っている。この施設は、世界最大強度の陽子ビームを用いて、物質科学,生命科学,原子核・素粒子などの幅広い分野の研究を推進することを目的とする。この施設で用いる加速器は、リニアック(線形加速器),3GeVシンクロトロン,50GeVシンクロトロンの3基から構成され、多くの新しい研究開発をもとに建設を進めている。各加速器機器の製作や試験を行うとともに、リニアックや3GeVシンクロトロンは、建家への据付を開始する段階にある。これらJ-PARCのコミッショニングについて、その状況を報告する。


34000196
A 175MHz RFQ design for IFMIF project
前原 直; 森山 伸一; 杉本 昌義; 齋藤 雄一*; 三枝 幹雄*
Proceedings of 2005 Particle Accelerator Conference (PAC '05) (CD-ROM) , p.904-906(2005) ; (JAEA-J 00345)

 国際核融合材料照射施設は、D-Liストリッピング反応を用いた加速器による中性子照射施設である。要求されるビーム電流250mAは、125mAの2つの加速器ビームラインにより合成され、その入射器,RFQ,DTLの出力エネルギーは、それぞれ0.1,5と40MeVである。125mAの大電流を加速のために175MHzの運転周波数が採用された。大電流ビームシミュレーションの結果、全長12mのRFQがRF入射電力2.3MW CWよりエミッタンスの広がりを最小限に抑えるために設計された。このようなRFQに対して、ループアンテナを採用したRF入力結合系,同軸高周波窓,3×4ポートによる立体回路の設計をMW-Studioコードで行った。1つのループアンテナあたり200kW-CWの耐電圧を得るために、4 1/16"の同軸導波管を採用し、4ループアンテナ入射方式により、加速空洞内の電界分布の歪みを1%以内にできることが判明した。


34000197
On-line reactor monitoring with neural network for RSG-GAS
鍋島 邦彦; Kurnianto, K.*; Surbakti, T.*; Pinem, S.*; Subekti, M.*; 水口 祐介*; 工藤 和彦*
Proceedings of ICSC Congress on Computational Intelligence Methods and Applications (CIMA'2005) (CD-ROM) , 4p.(2005) ; (JAEA-J 00346)

 ANNOMA (Artificial Neural Network of Monitoring Aids)システムを、インドネシアにある多目的原子炉(RSG-GAS)の状態監視と信号評価に適用した。フィードフォワードネットワークで原子炉の正常運転データを学習し、原子炉の動特性をモデル化する。本手法は、実際の原子炉からの測定信号とニューラルネットワークモデルによる推定値の偏差を監視することで、異常検知を行うことである。各信号の偏差のパターンから異常判別(センサ故障かシステムの異常)も可能となる。オンラインによるテスト結果から、出力上昇及び定常運転時の原子炉状態をリアルタイムで監視することに成功した。


34000198
Experimental study on long-term safety assessment considering uncertainties for geological disposal of radioactive wastes; JAERI status at 2005
山口 徹治; 坂本 好文; 飯田 芳久; 根岸 久美; 瀧 洋; 赤井 政信; 神野 文香; 木村 祐一郎; 上田 正人; 田中 忠夫; 中山 真一
Proceedings of International Conference on Nuclear Energy System for Future Generation and Global Sustainability (GLOBAL 2005) (CD-ROM) , 6p.(2005) ; (JAEA-J 00347)

 地層処分の長期評価では不確かさの定量化が必要である。日本原子力研究開発機構の確率論的核種移行評価は確率論的な評価結果の分布を計算するだけでなく、パラメータ不確かさやモデル不確かさを提示することができる。これにより、核種移行解析結果の不確かさに相関の大きいパラメータが明らかになる。これらのパラメータのうち、定量的に解明されていないものがわれわれの実験的研究の対象である。優先的に取り組むべき研究対象は具体的には、セメントの影響を受けた高pH環境下におけるベントナイト系緩衝材の変質,放射性核種の溶解度,ベントナイト系緩衝材中拡散,深地下の還元的環境を維持したまま採取した地層試料に対する重要核種の収着である。不確かさをもたらす原因としては、海水系地下水の浸入によるイオン強度の上昇,TRU廃棄物に含まれる硝酸ナトリウムの溶解に伴うNO3-, NO2-及びNH3濃度の上昇,セメント系材料に起因する高pH環境,オーバーパック腐食に伴う間隙水化学組成の変化を考慮する。本論文はこの研究の現状を報告するものである。


34000199
Transport of flavonoids; From cytosolic synthesis to Vacuolar accumulation
北村 智
Science of Flavonoids , p.123-146(2006) ; (JAEA-J 00348)

 植物特有の二次代謝産物であるフラボノイドは、その強力な抗酸化作用から、われわれ人類にとって貴重な健康機能性物質として近年注目されている。加えて、植物体内においても、色素や紫外線防護物質などのさまざまな機能を発揮する。これらの重要性から、フラボノイドに関する広範な解析が精力的に進められており、生合成過程に関してはほぼ全容が明らかになりつつある。一方、生合成が終了した後に細胞内で蓄積される機構に関してはほとんど明らかになっていない。二次代謝産物の多くは、細胞内において、液胞など所定の場所に輸送されて初めてその機能を発揮することから、フラボノイドの細胞内輸送機構の解明は、植物生産性の二次代謝産物の有効利用はもとより、二次代謝産物が植物体内で種々の機能を発揮するに至った生物学的意義を知るためにも非常に重要である。ここでは、われわれが得ている最新の知見も含めて、フラボノイドの細胞内輸送機構を多面的に考察し、細胞レベルから見た輸送モデルを提唱する。


34000200
地下水調査
小出 馨; 山川 稔*
地球をのぞくファイバースコープ; 陸上掘削サイエンス・プラン , p.75-79(2005) ; (JAEA-J 00349)

 地球科学の進歩により、地球内部の構造や変動のメカニズムが明らかになりつつあるなかで、地下深部にボーリング孔を掘削し、直接、地下深部の岩石試料を採取し、あるいはボーリング孔内において原位置計測を行い、さらに長期モニタリングを行うことによって、地球深部の環境や現象のメカニズムに関する理解を飛躍的に高めることが期待されている。このような学術的背景のもと、科学掘削の効果的な発展を目指す研究者ネットワークである日本地球掘削科学コンソーシアムが、陸上科学掘削プロジェクトの指針ともなるサイエンス・プランを取りまとめた。本稿では、本プランの「第8章科学掘削を支える技術」における地下水調査の解説として、日本原子力研究開発機構が深地層の科学的研究の一環として研究開発してきた地下水に関する調査技術を紹介している。その中で調査における品質保証・品質管理の重要性を強調し、深地層の研究施設で実施されている調査研究が、科学掘削の技術的信頼性を支える基盤情報として重要な役割を果たすことを提言している。


34000201
原研タンデム加速器の現状
松田 誠; 竹内 末広; 月橋 芳廣; 堀江 活三*; 大内 勲*; 花島 進; 阿部 信市; 石崎 暢洋; 田山 豪一; 仲野谷 孝充; 株本 裕史; 佐藤 哲也; 中村 暢彦; 神田 将*; 吉田 忠*
第18回タンデム加速器及びその周辺技術の研究会報告集 , p.11-14(2005) ; (JAEA-J 00351)

 2004年度の原研タンデム加速器の運転日数は、7月に高電圧端子との通信トラブルが発生したが、例年並の214日(約5000時間)を維持できた。そのうちブースターの利用運転は42日であった。最高端子電圧は高圧超純水洗浄を施したコンプレスドジオメトリ型加速管の更新により、約1年余りでビーム無しで18.7MV、ビーム有りで18.0MVを記録し建設以来の最高となった。KEKと共同で進めてきた短寿命核加速実験施設(TRIAC)の設置に伴い、新たなインターロックシステムを構築した。一方TRIACは3月に施設検査を終了し、ウランの陽子誘起核分裂反応で生成された138Xe(T1/2=14min)ビームの加速に初めて成功した。本研究会では、2004年度における運転,整備及び利用状況について報告する。


34000202
原研東海シングルエンド・ペレトロン加速器の現状
高橋 聖; 藤井 克年; 谷村 嘉彦; 清水 滋; 梶本 与一; 古渡 意彦; 吉澤 道夫; 山本 英明
第18回タンデム加速器及びその周辺技術の研究会報告集 , p.110-113(2005) ; (JAEA-J 00352)

 原研東海放射線標準施設棟のペレトロン加速器は放射線測定器の校正及び特性試験のための単色中性子照射場と高エネルギーγ線照射場の整備,運用を目的として、平成12年に設置された。現在までにLi, Dターゲットを用いた4種類のエネルギーの単色中性子照射場を整備し、現在T, Sc, Fターゲットを用いた照射場を開発中である。本研究会では平成15, 16年度の加速器の運転・整備状況,当該年度に整備したScターゲットの共鳴エネルギーにビームエネルギーを微調節する電圧昇圧装置及びTターゲットから放出されるトリチウム量をモニタする質量分析装置の性能等について報告する。


34000203
3MVシングルエンド加速器の改良
宇野 定則; 高山 輝充*; 江夏 昌志*; 水橋 清
第18回タンデム加速器及びその周辺技術の研究会報告集 , p.133-136(2005) ; (JAEA-J 00353)

 原研高崎の3MVシングルエンド加速器は設置当初からの懸案として、加速器本体内の構成部品の耐電圧不足があった。これが原因でタンク内放電や部品の損傷が起こり、最大定格電圧である3MVを長時間安定に保つことは困難だった。そこで、特に損傷しやすい部品であった加速電圧検出抵抗は無誘導型への改良を行い、また次に損傷の著しかった加速部アクリル板の交換及び電位固定の補強、並びにアルミ製のカラム電極支持具への変更などの改造を行った結果、3MVでの定常運転が可能となった。また、制御機器の増設に柔軟対応でき、かつ安定した運転ができるように、制御系の計算機とソフトウェアの更新を実施した。


34000204
TIARA3MVタンデム加速器によるフラーレン加速
齋藤 勇一; 千葉 敦也; 鳴海 一雅
第18回タンデム加速器及びその周辺技術の研究会報告集 , p.47-49(2005) ; (JAEA-J 00354)

 TIARAでは、高速クラスターイオンの大きな線形エネルギー付与(LET)に注目し、新たなイオンビーム応用技術の開拓を目指して、生成・照射技術の開発を行っている。今回、3MVタンデム加速器を用いて、C60(フラーレン)の加速を行い、最大エネルギー10MeV(ターミナル電圧2.5MV, C603+)のイオンの観測に成功した。また、これらMeVエネルギーC60イオンとC1イオン(通常の単原子炭素イオン)の、同一エネルギーにおけるSSD(Si)検出器のパルス波高を比較した結果、5MeVのC1に対して、大きな波高欠損がC60に見られた。


34000205
原研タンデム加速器施設インターロックシステムの更新
中村 暢彦; 花島 進; 仲野谷 孝充; 吉田 忠*
第18回タンデム加速器及びその周辺技術の研究会報告集 , p.84-87(2005) ; (JAEA-J 00355)

 原研タンデム加速器施設では、従来からのタンデム加速器及び超伝導ブースターのほかに高エネルギー加速器研究機構の放射性核ビーム加速実験装置(RNB)が設置され、それを期に新しいインターロックシステムを作ることになった。本報告ではインターロックを構成する基本概念の設定,マイクロコントローラとシリアルバスを使用したシステムのハードウエア及びソフトウエアの構成を報告する。また新規に導入された安全強化策についても紹介する。


34000206
ナトリウム冷却高速炉の熱流動現象に関する実験研究; 原子炉容器内の流動適正化
上出 英樹; 木村 暢之; 小川 博志; 江連 俊樹
第55回理論応用力学講演会論文集 , p.631-632(2006) ; (JAEA-J 00357)

 ナトリウム冷却高速炉の開発を進めるうえで、安全性を確保したうえでより経済性の高い原子炉システムとすることが求められている。その一環として原子炉容器をコンパクト化し、建設費の低減を図ることを検討している。このようなコンパクト化は、炉容器内の流速の上昇をもたらす。ナトリウム炉では原子炉容器内に自由液面を有することから、ポンプ吸い込み槽で見られるようなガス巻き込み現象の発生が、流速の上昇に伴って懸念される。そこで、原子炉容器上部プレナムの1/10縮尺モデル並びに液面近傍に着目した1/1.8縮尺部分モデルを用いた水試験を実施し、炉容器内の流動場を適正化する研究を実施し、ガス巻き込みの発生を抑制できることを示した。


34000207
不規則流体温度ゆらぎ現象に対する疲労損傷直接評価手法の適用性
岡島 智史*; 酒井 信介*; 泉 聡志*; 笠原 直人
日本材料学会第21回材料・構造信頼性シンポジウム講演論文集 , p.132-137(2005) ; (JAEA-J 00359)

 不規則流体温度ゆらぎによる熱疲労損傷を、設計時に簡便に評価する手法が期待されている。本研究では、応力パワースペクトル密度の特徴量を用いて疲労損傷を直接評価する既存の手法を取り上げ、不規則流体温度ゆらぎによる疲労損傷評価に対する本手法の適用限界を、多様な設計条件の下で検討する。


34000208
Results from studies on high burn-up fuel behavior under LOCA conditions
永瀬 文久; 更田 豊志
NUREG/CP-0192 , p.197-230(2005) ; (JAEA-J 00361)

 LOCAに関する日本の安全基準は、事故条件を模擬した試験により決められた急冷時燃料棒破断限界に基づいている。このため、原研はLOCA条件を模擬した総合的な急冷実験を行い、高燃焼度燃料の破断限界を評価している。水素を添加した未照射被覆管やPWRにおいて39あるいは44GWd/tまで照射した高燃焼度燃料被覆管を用いた試験をこれまでに行った。破断限界は基本的に酸化量に依存し、初期水素濃度と急冷時の軸方向拘束力に伴い低下することが明らかになった。また、試験対象とした高燃焼度燃料被覆管の破断限界は、同等の水素濃度を有する未照射被覆管の破断限界とほぼ同等であることも明らかになった。

[ page top ]
JAEA > JAEA図書館 > JOPSS > 学会誌等掲載論文[バックナンバー] >  2006年3月
Copyright(C), Japan Atomic Energy Agency (JAEA)