学会誌等掲載論文
※下記の研究開発成果は資料名順に並んでいます。

2006年5月


34000475
A New visualization technique for the study of the accumulation of photoassimilates in wheat grains using [11C]CO2
松橋 信平; 藤巻 秀; 内田 博*; 石岡 典子; 久米 民和
Applied Radiation and Isotopes 64(4), p.435-440(2006) ; (JAEA-J 00594)

 非侵襲でのコムギ種子への光合成産物の蓄積の可視化を、[11C]CO2とポジトロンイメージング装置(PETIS)を用いた計測により試みた。コムギの最大展開葉の中央部に[11C]CO2を供給して生産させた光合成産物が、[11C]CO2吸収から53分で穂に到達し、徐々に種子へ蓄積する過程の画像化に成功した。得られた画像では、種子の一粒一粒を識別することができた。画像データを用いて、各種子粒への光合成産物の蓄積について調べたところ、それぞれの種子で蓄積の経時曲線が異なることがわかった。本研究により、PETISが生きた植物内での物質の輸送や分配といった動態の計測と解析に有効な手法であることを示した。


34000476
Neutron powder diffraction study on the crystal and magnetic structures of BiCoO3
Belik, A. A.*; 飯久保 智; 樹神 克明; 井川 直樹; 社本 真一; 新高 誠司*; 東 正樹*; 島川 祐一*; 高野 幹夫*; 泉 富士夫*; 室町 英治*
Chemistry of Materials 18(3), p.798-803(2006) ; (JAEA-J 00595)

 BiCoO3の結晶構造と磁気構造を、T=5〜520Kで測定した粉末中性子回折データのリートベルト解析によって決定した。BiCoO3は測定したすべての温度範囲で、BaTiO3, PbTiO3と同形の結晶構造である。BiCoO3は絶縁体で、ネール温度470Kである。この反強磁性秩序に対して、伝播ベクトルk=(1/2, 1/2, 0)のモデルを提案した。このモデルではCo3+イオンの磁気モーメントが、c軸方向には平行に、ab面内には反強磁性的に整列している。つまり反強磁性秩序したab面がc軸方向に強磁性的に積み重なり、C型の反強磁性磁気構造を形成している。精密化された磁気モーメントの値は5Kで3.24μB,300Kで2.92μBである。またBiCoO3の化学量論比からのずれがないことが確認された。BiCoO3は大気中、720K以上ではCo3O4とBi25CoO39に分解する。


34000477
Case study on tritium inventory in the fusion DEMO plant at JAERI
中村 博文; 櫻井 真治; 鈴木 哲; 林 巧; 榎枝 幹男; 飛田 健次; 発電実証プラント検討チーム
Fusion Engineering and Design 81(8-14), p.1339-1345(2006) ; (JAEA-J 00596)

 現在検討を進めている核融合発電実証プラント(DEMO)の運転期間中における炉内及び冷却水中のトリチウムインベントリを評価し、その結果をITERのそれと比較した。その結果、DEMOにおける炉内及び冷却水中のトリチウムインベントリは、1mmのタングステン被膜の透過抑制策を施工した場合において、20年間の運転後に各々数グラムと百数十グラムとの結果を得た。透過抑制策無しでは冷却水中インベントリが約4桁増加することも判明した。これは冷却水中のトリチウムインベントリが、主として炉内構造物を通じてDTプラズマからの透過に起因するためである。一方、DEMOとITERでのトリチウムインベントリの比較の結果、DEMOの炉内の総トリチウムインベントリに関しては、炭素材のトリチウムとの共堆積が存在しないことによりITERに比べ約3桁以上小さくなるとの評価結果を得たものの、冷却水中トリチウムインベントリに関しては、タングステンの被膜を施行した場合においてもDEMOの方がITERより約2桁大きくなることが明らかとなった。


34000478
Safety handling characteristics of high-level tritiated water
林 巧; 伊藤 剛士*; 小林 和容; 磯部 兼嗣; 西 正孝
Fusion Engineering and Design 81(8-14), p.1365-1369(2006) ; (JAEA-J 00597)

 核融合炉では高濃度のトリチウム水が発生し一次保管される。トリチウム水は、自己放射線分解により水素や酸素ガスを発生するうえに過酸化トリチウム水となると考えられる。しかし、トリチウム水を用いた系統的実験の報告例は少なく、発生量はγ線による放射線分解のG値(100eVのエネルギーを吸収した時の特定化学種分子の生成率)とは異なっている。本報告では、高濃度トリチウム水溶液を製造後、長期保管した結果を整理し、気相発生成分については、実効的なG値のトリチウム濃度及び温度依存性データから、防爆上必要な設計上の配慮(想定トリチウム水濃度/量とタンク容積及びその換気回数など)を議論する。また、液相発生成分については、トリチウム水の液性(水素イオン濃度や酸化還元電位など)に影響をあたえる(トリチウム濃度に依存する)ことを見いだし、その理由を考察するとともに、タンクの腐食防止に必要な設計上の配慮について議論する。


34000479
Sorption and desorption of tritiated water on four kinds of materials for ITER
小林 和容; 林 巧; 西 正孝; 大矢 恭久*; 奥野 健二*
Fusion Engineering and Design 81(8-14), p.1379-1384(2006) ; (JAEA-J 00598)

 ITERで用いられる各種材料は、異常時やメンテナンス時などにおいてトリチウムに曝される可能性がある。それによって、材料はトリチウムにより汚染するが、一般にトリチウム汚染は除染されにくい。そのため、トリチウム除染の方法を確立することを目的として研究を進めている。トリチウムの汚染・除染では、ソーキング効果と呼ばれる現象の影響が非常に重要である。ソーキング効果は、材料表面へのトリチウム水の吸着・脱離が主である。本研究では、代表的な材料としてエポキシ等を取り上げ、それらの材料表面における吸着・脱離現象を評価する実験を行った。トリチウム雰囲気に曝露させた実験では、これらの材料へのトリチウム吸着量が数週間程度で飽和する結果を得た。本報告ではエポキシ等におけるトリチウムの吸着・脱離の現象について、実験結果をもとに速度論的観点から議論する。


34000480
Real-time monitoring and analysis of nutrient transportation in a living plant using a positron emitting tracer imaging system (PETIS)
松橋 信平
Gamma Field Symposia (43), p.71-79(2004) ; (JAEA-J 00599)

 植物研究用ポジトロンイメージング装置を用いて、植物の主栄養素である炭素及び窒素の吸収,同化後の体内挙動を可視化計測し、得られたデータの数理的解析研究を進めている。この手法の開発により、従来の計測手法では求めることが困難な同化産物の輸送や分配の定量が可能となった。本シンポジウムでは、ポジトロンイメージング計測の原理・特徴と利点,ポジトロンイメージング計測により可視化した、生きた植物による炭素・窒素栄養の吸収と同化産物の体内挙動について紹介する。また、数理的解析により、高濃度炭酸ガス環境で光合成産物の転流速度が上昇することを明らかにした成果などを紹介する。


34000481
Mechanisms of uranium mineralization by the yeast saccharomyces cerevisiae
大貫 敏彦; 尾崎 卓郎; 吉田 崇宏*; 坂本 文徳; 香西 直文; 若井 栄一; Francis, A. J.; 家藤 治幸*
Geochimica et Cosmochimica Acta 69(22), p.5307-5316(2005) ; (JAEA-J 00600)

 6価ウランの酵母細胞表面での鉱物化機構を濃集実験,分光学的分析,電子顕微鏡観察により解明した。ウランは細胞表面に吸着し、酵母細胞内から排出されるリンと接触することにより細胞表面でウラニルリン酸塩鉱物化することが明らかとなった。


34000482
Improved method of fission track sample preparation for detecting particles containing fissile materials in safeguards environmental samples
Lee, C. G.; 井口 一成; 江坂 文孝; 間柄 正明; 桜井 聡; 渡部 和男; 臼田 重和
Japanese Journal of Applied Physics, Part 2 45(10), p.L294-L296(2006) ; (JAEA-J 00601)

 保障措置環境試料のパーティクル分析は2次イオン質量分析器(SIMS)が有効な方法とされているが、SIMS法では1μm以下の粒子に対しては装置固有の感度上の限界がある。実際には保障措置環境試料中には1μm以下の粒子も存在しており、このような微小粒子の分析を可能とする高感度な分析法として、われわれはフィッショントラック(FT)法と表面電離質量分析(TIMS)法を組合せた方法を開発している。この方法では、粒子層と検出器の一端を固定することと検出器のエッチングのための専用の治具を開発し使用することにより、従来の2層式試料で見られた検出器のFTと粒子保持層の目的粒子との位置ずれを解決し、目的粒子の検出効率を大きく向上させた。これにより、保障措置環境試料のパーティクル分析の高感度化・効率化が期待される。


34000483
Electrochemical behavior of actinides and actinide nitrides in LiCl-KCl eutectic melts
白井 理*; 山名 元*; 荒井 康夫
Journal of Alloys and Compounds 408-412, p.1267-1273(2006) ; (JAEA-J 00602)

 ウラン,ネプツニウム,プルトニウムの金属及び窒化物のLiCl-KCl共晶塩中の電気化学的挙動を、固体電極(Mo)並びに液体電極(Cd, Bi)を用いて調べた。金属の3価/0価の平衡電位は、液体電極上ではアクチノイド金属の活量が低下するために、固体電極の場合よりも正側にシフトした。また、窒化物の平衡電位も、窒化物の生成自由エネルギーにほぼ相当する電位分だけ、正側にシフトした。これらの挙動をアクチノイド系列と希土類系列について比較して議論した。


34000484
Phenomenological nuclear level densities using the KTUY05 nuclear mass formula for applications off-stability
河野 俊彦*; 千葉 敏; 小浦 寛之
Journal of Nuclear Science and Technology 43(1), p.1-8(2006) ; (JAEA-J 00603)

 最新の原子質量模型KTUY05の殻補正エネルギーと対エネルギーを用いて量子効果を取り入れた原子核の準位密度パラメータとその系統性を現象論的に導出した。殻効果の励起エネルギー依存性としてはIgnatyukの公式を用いて、Gilbert-Cameron型の複合公式により表した準位密度公式で最新の準位間隔データを再現できるパラメータを求めた。低励起状態では低温度模型を用いて、1000以上の原子核の準位構造データを考慮してパラメータを決定した。また、求めたパラメータから、未知核種に対しても適用可能な系統式を作成した。


34000485
Application of PZC to 188W/188Re generators
松岡 弘充; 橋本 和幸; 菱沼 行男*; 石川 幸治*; 照沼 仁*; 蓼沼 克嘉*; 内田 昇二*
Journal of Nuclear and Radiochemical Sciences 6(3), p.189-191(2005) ; (JAEA-J 00604)

 レニウム-188は、高エネルギーのβ線を放出する等がん治療用として優れた核特性を持ち、さらに、188W(半減期69.4日)の娘核種として生成し、入手が容易であるため、がん治療用RIとして注目されている。しかしながら、得られる188Wの比放射能が低いため、アルミナカラムを使用した従来のジェネレーターでは、カラム容積が大きくなり、溶出した188Reの放射能濃度が低くなる問題点がある。188Reの放射能濃度の向上を目指して、原研と(株)化研が共同で開発したモリブデンの吸着容量がアルミナの100倍以上もあるジルコニウム系無機高分子PZCが188W/188Reジェネレーターへ応用可能かどうか、基礎的な検討を行った。188WのPZCカラムへの吸着収率,188Reのカラムからの長期溶離安定性,188WのPZCカラムからの脱離の確認、そして、PZCから溶離した188ReのHydroxyethylidene Diphosphonic Acid(HEDP)とMercaptoacetyltriglycine(MAG3)への標識を試みた結果、長期間における188WのPZCへの安定した吸着,188ReのPZCからの溶離安定性及び良好な標識率が確認でき実用化の可能性が示唆された。


34000486
Labeling of bifunctional chelating agent, MAG3, with carrier-free 188Re
橋本 和幸; Wan, K. W. H. B. B.*; 松岡 弘充
Journal of Nuclear and Radiochemical Sciences 6(3), p.193-196(2005) ; (JAEA-J 00605)

 治療に有効な核的特性を有するラジオアイソトープ(RI)をがんへ集積する性質を有する生理活性物質(モノクローナル抗体等)に標識した化合物は、がんの内用放射線治療への応用が期待されている。メルカプトアセチルトリグリシン(MAG3)は、生理活性物質のRI標識に有用な二官能性配位子の一つである。本研究では、がん治療に有効な核的特性を有するジェネレータ製無担体188ReによるMAG3標識について、直接合成法及び中間体を生成させるtransfer配位子(クエン酸及びグルコン酸)を用いた合成法による標識条件(Reの還元剤である塩化スズ濃度,pH,MAG3濃度,transfer配位子濃度,担体の有無等)の違いを詳細に比較検討した。最適条件下では、いずれの方法によっても90%以上の標識率が得られた。直接法とtransfer配位子法を比較すると、直接法は、反応を窒素気流中で行い、さらに溶媒の除去操作が必要であるが、transfer配位子法では必要がない。したがって、操作上は、transfer配位子法の方が簡便である。また、transfer配位子の違いにより、標識率のpH依存性の違いや室温での反応性の違いなどが観察された。今後は、transfer配位子の違いによる抗体標識及びtransfer配位子を利用した他の有用配位子の標識に関する検討を行う予定である。


34000487
Study on electrolytic reduction of pertechnetate in nitric acid solution for electrolytic extraction of rare metals for future reprocessing
朝倉 俊英; Kim, S.-Y.; 森田 泰治; 小澤 正基*
Journal of Nuclear and Radiochemical Sciences 6(3), p.267-269(2005) ; (JAEA-J 00606)

 将来の再処理のために、電解採取法、すなわち電解還元による硝酸水溶液からのTc析出について研究した。炭素電極を用い、電位-0.3V vs. SSE(標準Ag/AgCl電極)において30分定電位電解することにより、3Mの硝酸水溶液中のTc濃度が初期値の93%に低下した。これは7%の析出に相当する。Pd共存のもと±0.0V vs. SSEで60分電解することで、濃度値の低下は15%析出に相当する値に達し、PdにTcの析出を促進する効果(プロモーター効果)があることが示唆された。しかし、さらに電解を続けると、Tc濃度が初期値まで増加したことから、競合する再溶解反応があることが示唆された。サイクリックボルタンメトリー測定からは、この再溶解反応がPdを中心とする析出物の特性にも影響し、Tc-Pd-Ru-Rh溶液からの析出物はPd-Ru-Rhからの析出物よりも容易に再溶解することがわかった。電解後のTc溶液のスペクトルには、還元されたTcと亜硝酸イオンとの錯体よると考えられる吸収ピークが482nmに認められ、錯体生成によりTcが再溶解反応の機構である可能性を示した。


34000488
Technetium separation for future reprocessing
朝倉 俊英; 宝徳 忍; 伴 康俊; 松村 正和; 森田 泰治
Journal of Nuclear and Radiochemical Sciences 6(3), p.271-274(2005) ; (JAEA-J 00607)

 PUREX技術に基づいたTcの抽出分離試験を、燃焼度44GWd/tの使用済ウラン燃料を用いて行った。試験結果を、シミュレーションコードESSCAR(Extraction System Simulation Code for Advanced Reprocessing)を用いて検討した。TBP抽出によって、Tcを溶解液からほぼ定量的に抽出し、高濃度硝酸スクラブによって抽出されたTcを定量的に回収できることを示した。さらに、Tcの抽出機構では、ZrとUとの共抽出効果が支配的な要因であることをESSCARコードによる計算結果から示した。


34000489
BiScO3: Centrosymmetric BiMnO3-type oxide
Belik, A. A.*; 飯久保 智; 樹神 克明; 井川 直樹; 社本 真一; 真家 信*; 長井 拓郎*; 松井 良夫*; Stefanovich, S. Y.*; Lazoryak, B. I.*; 室町 英治*
Journal of the American Chemical Society 128(3), p.706-707(2006) ; (JAEA-J 00608)

 BiMnO3と同形のペロブスカイトBiScO3を用いて電子線回折,中性子回折による結晶構造解析を行った。この結果BiScO3の結晶構造はBiMnO3の空間群とされているC2より対称性の高い、中心対称の空間群C2/cが適当であることがわかった。BiMnO3についても同様な対称性の高い空間群である可能性がある。


34000490
Determination of ionization potential of calcium by high-resolution resonance ionization spectroscopy
宮部 昌文; Geppert, C.*; 加藤 政明; 大場 正規; 若井田 育夫; 渡部 和男; Wendt, K. D. A.*
Journal of the Physical Society of Japan 75(3), p.034302_1-034302_10(2006) ; (JAEA-J 00609)

 高分解能共鳴電離分光によりカルシウム原子のイオン化ポテンシャルを正確に決定した。単一縦モード外部共振器半導体レーザー3台を用いて、基底状態のカルシウム原子を摂動のない4snp(1P1), 4snf(1F3)系列(主量子数20-150)まで3段階共鳴励起した。観測された量子欠損を、拡張されたリッツ公式を用いて近似することで、従来より1桁高い精度で、カルシウムの系列極限を49305.9240 (20)cm-1と決定できた。


34000491
Discovery of the "Devil's flower" in a charge-ordering system; Synchrotron X-ray diffraction study of NaV2O5
大和田 謙二; 藤井 保彦; 中尾 裕則*; 村上 洋一*; 礒部 正彦*; 上田 寛*
Modern Physics Letters B 20(5), p.199-214(2006) ; (JAEA-J 00610)

 最近のNaV2O5に関する放射光回折実験結果をレビューする。単斜晶シングルドメインからの共鳴X線回折はV4+, V5+イオンのコントラストを増幅し、その結果NaV2O5Tc=35K以下における電荷秩序積層パターンをユニークに導いた。考えられる4つの電荷秩序パターンA, A', B, B'にもかかわらず、積層パターンはAAA'A'と決定された。A, A'をそれぞれISINGスピン(↑, ↓)と対応させれば高圧力下で発見された「悪魔の階段」的相転移,「悪魔の花」相図も自然に理解される。電荷秩序系において「悪魔の花」が発見されたのは初めてであり、そのような系においてISINGスピンの中身まで議論されたのは初めてである。


34000492
Electronic properties of transuranium compounds with HoCoGa5-type tetragonal crystal structure
眞榮平 孝裕*; 堀田 貴嗣; 上田 和夫*; 長谷川 彰*
New Journal of Physics (Internet) 8(24), 20p.(2006) ; (JAEA-J 00611)

 相対論的バンド計算手法を用いて、NpTGa5, PuTGa5, AmCoGa5(Tは遷移金属原子)のエネルギーバンド構造及びフェルミ面を調べた。これらの物質に共通の性質として、フェルミ準位近傍のエネルギーバンドは、5f電子とGaの4p電子の大きな混成によって生じる。PuCoGa5(T=Co, Rh, Ir)に対しては、大きな体積を持つ複数枚の円筒状フェルミ面が得られた。NpFeGa5, NpCoGa5, NpNiGa5のフェルミ面はそれぞれ、細かい点を別にすれば、UCoGa5, UNiGa5, PuCoGa5のそれに形状がよく似ている。AmCoGa5のフェルミ面は、大きな体積を持つ円筒状の電子フェルミ面と小さな閉じたホール面から構成されるが、これはPuCoGa5のフェルミ面構造とよく似ている。これらの類似性は、バンド構造が物質ごとにほとんど変化しないままフェルミ準位のみが変化する、という描像で理解される。


34000493
Analysis on split failure of cladding of high burnup BWR rods in reactivity-initiated accident conditions by RANNS code
鈴木 元衛; 斎藤 裕明*; 更田 豊志
Nuclear Engineering and Design 236(2), p.128-139(2006) ; (JAEA-J 00612)

 RIA条件での燃料ふるまいを解析するコードRANNSを開発した。このコードは1本の燃料棒の熱解析とFEM力学解析を行い、温度分布,PCMI接触力,応力歪み分布とそれらの相互作用を計算する。RANNSによる解析はFEMAXI-6の解析による事故直前状態から始める。高燃焼度BWR燃料を用いたFK-10とFK12実験の解析を行い、PCMI過程を詳細に分析した。その結果、ペレットの熱膨張は被覆管の変形を支配し、被覆管は二軸応力状態におかれること,被覆管の熱膨張は内側領域の応力を外側領域より大きく低下させることが明らかとなった。また幅の広いパルスを照射したシミュレーション計算を行い、被覆管の周方向応力値を実験に基づく推定値と比較検討した。


34000494
Observation of the interaction between the geodesic acoustic mode and ambient fluctuation in the JFT-2M tokamak
井戸 毅*; 三浦 幸俊; 星野 克道; 神谷 健作; 浜田 泰司*; 西澤 章光*; 川澄 義明*; 小川 宏明; 永島 芳彦*; 篠原 孝司; 草間 義紀; JFT-2Mグループ
Nuclear Fusion 46(5), p.512-520(2006) ; (JAEA-J 00613)

 重イオンビームプローブ(HIBP)によるポテンシャル揺動と密度揺動の同時計測により、JFT-2Mトカマクの静電揺動スペクトルと揺動粒子束を明らかにした。周波数約15kHzのコヒーレントな測地的音波モード(GAM)をLモード中に同定した。このモードはセパラトリクスから約3cm内側の位置でピークを持ち電場強度が約1.4kV/mである。算出した乱流揺動粒子束は間欠的であることがわかった。密度揺動は、広帯域にわたってGAMにより変調されており、算出した揺動粒子束もGAMの影響をうけていることがコヒーレンス解析で判明した。Hモードでは、GAMが消え、揺動,揺動粒子束も大きく減少している。算出された大きな間欠的バースト的粒子束の原因解明は今後の課題である。


34000495
X-ray absorption fine structure and photon-stimulated ion desorption from solid MoO3 at molybdenum 3p1/2, 3p3/2, and oxygen 1s edges
Wu, G.*; 関口 哲弘; 馬場 祐治; 下山 巖
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 245(2), p.406-410(2006) ; (JAEA-J 00614)

 近年、放射光照射により分子中の特定の結合を切断する例が盛んに報告されている。その原理は、特定の元素に局在した内殻軌道から反結合性空軌道への共鳴励起によりその特定の結合切断が引き起こされる。そのような選択結合切断は低温凝集分子,ポリマーなどにおいて観測されていた。これらの系は分子単位を持つのが特長である。そこで、分子単位を持たない、無限に広がった-Mo-O-結合ネットワークを持つMoO3固体について放射光照射実験を行った。t2g励起ではX線吸収と同程度でMo-O切断が起こるのに対し、eg 励起ではX線吸収をかなり上回る。eg 軌道が局在した反結合性軌道を持つため、Mo-O切断が促進されたと結論した。また、興味深いことにMo 2p, O 1s内殻励起においてはこのような選択切断が起こるのに対し、Mo 3p内殻励起では起こらない。この違いはMo 3p励起の場合だけ超高速過程であるコスタークロニッヒ遷移が起こることにより結合切断の前にeg 反軌道電子が消滅するためであると結論した。


34000496
Replica symmetry breaking for the Ising spin glass within cluster approximations
横田 光史
Physica A 363(2), p.161-170(2006) ; (JAEA-J 00615)

 スピングラス転移温度近傍におけるイジングスピングラス模型をクラスター近似を用いて調べた。スピングラス秩序パラメーター関数及び磁場中においてレプリカ対称性が破れるAT線を求めた。


34000497
Spin, charge, and orbital correlations in the one-dimensional t2g-orbital Hubbard model
Xavier, J. C.*; 大西 弘明; 堀田 貴嗣; Dagotto, E.*
Physical Review B 73(1), p.014405_1-014405_9(2006) ; (JAEA-J 00616)

 一次元t2g軌道ハバード模型の基底状態におけるスピン・電荷・軌道相関関数を、相互作用パラメータ及び電子数を変化させた場合について、密度行列繰り込み群法を用いて系統的に解析した。まず、コバルト酸化物を念頭に、電子数n=5の場合について調べた。その場合、相互作用の大きさを変化させると、非磁性絶縁相と強磁性相の間で一次相転移が起こることがわかった。また、フント結合がゼロの極限ではSU(4)対称性が存在するが、フント結合が弱い領域でも、この特殊なSU(4)対称性の名残として、四倍周期のスピン・軌道状態が実現することがわかった。さらに、電子及びホールドープによって電子数をn=5から変化させた場合には、絶縁的な状態から金属的な状態へと変化することがわかった。


34000498
Induced orbital polarization of Ga ligand atoms in UTGa5 (T=Ni, Pd, and Pt)
葛下 かおり*; 石井 賢司; Wilkins, S. B.*; Janousova, B.*; 稲見 俊哉; 大和田 謙二; 坪田 雅己; 村上 洋一; 金子 耕士; 目時 直人; 池田 修悟; 芳賀 芳範; 大貫 惇睦*; Bernhoeft, N.*; Lander, G. H.*
Physical Review B 73(10), p.104431_1-104431_5(2006) ; (JAEA-J 00617)

 反強磁性ウラン化合物UTGa5(T=Ni, Pd, and Pt)について、GaのK吸収端で行った共鳴X線散乱について報告する。ネール温度以下で大きな共鳴シグナルが観測された。π-π'及びπ-σ'偏光に対するアジマス依存性から共鳴シグナルは磁気双極子の対称性を持っていることがわかった。このバンド電子の共鳴はUの5f電子との強い混成によりGaの4p状態の軌道偏極が誘起されたとする半局在モデルで解釈できる。以上の結果は、陰イオンでの共鳴磁気X線散乱は、対称性の議論からUの5fモーメントの配置を決定でき、混成に関する情報を与えることを示している。


34000499
Structure of a quantized vortex near the BCS-BEC crossover in atomic fermi gas
町田 昌彦; 小山 富男*
Physical Review Letters 94(14), p.140401_1-140401_4(2005) ; (JAEA-J 00618)

 フェルミ原子ガスのBCS型超流動の実現が2004年に確認されたが、直接的証拠がないため未だ論争が続いている。直接的にこの事実を確認するためには、系を回転させ、回転が量子化される結果として現れる量子渦糸を観測するのが最も直接的である。しかしながら、BCS型超流動の場合は、渦糸中心にもフェルミ粒子が存在できるため、中心の粒子密度があまり減少せずに観測が困難であるとの認識が一般的であった。これに対し、著者らはBCS-BECクロスオーバー領域では強い引力により2原子分子ができ、これが渦糸中心で激減することによって観測が容易であることを示したほか、上記クロスオーバー領域からBCS領域に向けて渦糸中心の粒子密度分布の定量的変化をシミュレーションにより明らかにし、観測可能領域を予言することに成功している。


34000500
Opacity effect on extreme ultraviolet radiation from laser-produced tin plasmas
藤岡 慎介*; 西村 博明*; 西原 功修*; 佐々木 明; 砂原 淳*; 奥野 智晴*; 上田 修義*; 安藤 強史*; Tao, Y.*; 島田 義則*; 橋本 和久*; 山浦 道照*; 重森 啓介*; 中井 光男*; 長井 圭治*; 乗松 孝好*; 西川 亘*; 宮永 憲明*; 井澤 靖和*; 三間 圀興*
Physical Review Letters 95(23), p.235004_1-235004_4(2005) ; (JAEA-J 00619)

 レーザー生成スズプラズマからの極端紫外(EUV)発光へのオパシティの効果を実験的に解析した。X線放射によって電子温度30-40eVの均一なスズプラズマを生成することにより、EUV波長域(10-20nm)におけるオパシティを初めて測定した。測定されたオパシティは理論計算とほぼ一致した。理論計算で求めたオパシティを用いた輻射流体シミュレーションと実験の比較の結果は、EUV光源としての効率を高めるためには、13.5nm領域でプラズマの光学的厚みが1程度以上になることが必要だが、反面オパシティが大きすぎると吸収の効果によって効率が低下することを示し、オパシティの制御が重要なことを示す。


34000501
Homodimeric cross-over structure of the human granulocyte colony-stimulating factor (GCSF) receptor signaling complex
玉田 太郎; 本庄 栄二郎; 前田 宜丈*; 岡本 智之*; 石橋 松二郎*; 徳永 正雄*; 黒木 良太
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 103(9), p.3135-3140(2006) ; (JAEA-J 00620)

 ヒト顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)とそのヒト受容体(GCSF-R)中のリガンド結合領域との複合体の活性構造を2.8Å分解能で決定した。GCSF:GCSF-R複合体の組成比は2:2で、GCSF-R中のIg-likeドメインとGCSFがたすき掛けすることにより二量体化していた。この結合様式はヒトGCSFとマウスGCSF(CRHドメイン)複合体中の様式とは全く異なっており、インターロイキン6とその受容体であるgp130との活性複合体中で確認された様式と類似していた。このIg-likeドメインを介したGCSF-Rの二量体化はこれまでに報告されている熱力学的及び変異体解析の結果と相関性がある。


34000502
Decomposition of p-nonylphenols in water and elimination of their estrogen activities by 60Co γ-ray irradiation
木村 敦; 田口 光正; 大谷 仁己*; 瀧上 眞知子; 島田 好孝*; 小嶋 拓治; 平塚 浩士*; 南波 秀樹
Radiation Physics and Chemistry 75(1), p.61-69(2006) ; (JAEA-J 00621)

 60Coγ線照射により、水中濃度1μmol dm-3の水中p-ノニルフェノール(NPs)は吸収線量が高くなるに従い指数関数的に減少した。OH付加体と推定される分子量236を有する2つの分解生成物が、LC-MS分析により検出された。5000Gy(J kg-1)におけるNPsとその照射生成物のエストロジェン活性の消失を、イーストツーハイブリッド法により確認した。これらの結果はNPs処理の放射線利用の基礎データを提供するものである。


34000503
Characteristics study on suspended fine particles in aqueous phenol solution formed by electron beam irradiations
田口 光正; 善如寺 芳弘*; 瀧上 真知子*; Baldacchino, G.*; 木村 敦; 平塚 浩士*; 南波 秀樹; 小嶋 拓治
Radiation Physics and Chemistry 75(5), p.564-571(2006) ; (JAEA-J 00622)

 室温大気圧下において、濃度10〜40mMのフェノール水溶液に2MeVの電子線及び60Coγ線を照射した結果、白濁が観測された。この試料溶液の分析により、OHラジカルの付加した生成物と直径100-800nm程度の微粒子の生成が認められた。微粒子の直径は高線量になるに伴い増大し、また、同一線量では、フェノールの初期濃度が高いほど粒径が大きくなった。さらに、線量率を変えて照射した場合、線量率が高くなるに伴い平均粒径が小さくなり、かつ分布幅も狭くなった。また、微粒子は分子量1.9×102程度の分子から構成されていることがわかった。


34000504
Calculations for the availability of photoneutron using synchrotron radiation
浅野 芳裕; 川島 祥孝*
Radiation Protection Dosimetry 115(1-4), p.176-180(2005) ; (JAEA-J 00623)

 磁場強度10Tの超伝導ウィグラーと8GeV蓄積リングから発生する放射光をBeターゲットに照射して得られる光核反応中性子強度を評価するとともに、熱中性子利用の立場から遮蔽,減速装置を概念設計するとともに実験位置で得られる強度を既設設備と比較した。


34000505
High intensity proton accelerator project in Japan (J-PARC)
田中 俊一
Radiation Protection Dosimetry 115(1-4), p.33-43(2005) ; (JAEA-J 00624)

 大強度陽子加速器計画(J-PARC)が、2001年4月1日に日本原子力研究所・東海研究所で開始された。J-PARCの加速器複合体施設は、3種類の加速器(400MeV Linac,3GeVシンクロトロンと50GeVシンクロトロン)及び4つの実験施設(物質・生命科学実験施設,原子核素粒子物理実験施設,核変換実験施設とニュートリノ実験)から構成される。ここでは、建設の現状とともに、J-PARCの概要について説明する。


34000506
Shielding design of the ITER NBI Duct for nuclear and bremsstrahlung radiation
佐藤 聡; 飯田 浩正; 山内 通則*; 西谷 健夫
Radiation Protection Dosimetry 116(1-4), p.28-31(2005) ; (JAEA-J 00625)

 3次元モンテカルロ計算により、中性子及びブレームス輻射線源に対するITER NBIダクトの遮蔽解析を行った。核融合反応分布を線源とした中性子及び光子輸送計算により、プラズマに面しているダクト壁(FS)と隠れている壁(HS)の両者の核発熱率分布を、第一壁表面からの距離及びダクト表面からの距離を関数として、詳細に評価した。第一壁表面では、両者はほとんど同じ値であるが、第一壁表面からの距離が長くなるにしたがい、HS中の核発熱率は、FS中の値と比較して減衰が大きく、50cm以上離れた位置では、前者は後者に較べて約2〜3倍小さいことがわかった。また、ブレームス輻射分布を線源とした光子輸送計算により、ダクト壁の表面熱負荷分布を、第一壁表面からの距離を関数として、詳細に評価した。HSの表面熱負荷は、FSの値の約4分の1であリ、第一壁表面では、FSの表面熱負荷は約7〜8w/cm2、HSの表面熱負荷は約2w/cm2、第一壁表面から約1mの位置では、各々1w/cm2, 0.2〜0.3w/cm2であることを明らかにした。また、ダクト周囲の超伝導コイルの核的応答、崩壊γ線線量率を評価した。前者は基準値を充分に満足し、後者は基準値とほぼ同じ値であることがわかった。


34000507
Comparison of thermal neutron distributions within shield materials obtained by experiments, SN and Monte Carlo code calculations
浅野 芳裕; 杉田 武志*; 須崎 武則; 広瀬 秀幸
Radiation Protection Dosimetry 116(1-4), p.284-289(2005) ; (JAEA-J 00626)

 加速器遮蔽材内の熱中性子分布は放射化分布と密接な関係があり、加速器を更新するうえで重要な考慮点である廃棄物区分上もますます計算精度の重要性は高くなっている。しかしSN法とモンテカルロ法では得られる結果に若干の差が認められ、その原因を探るために、黒鉛パイルや水プールでの実験結果と計算結果とを比較検討した。


34000508
Characterization of radionuclides formed by high-energy neutron irradiation
横山 須美; 佐藤 薫; 野口 宏; 田中 進; 飯田 孝夫*; 古市 真也*; 神田 征夫*; 沖 雄一*; 金藤 泰平*
Radiation Protection Dosimetry 116(1-4), p.401-405(2005) ; (JAEA-J 00627)

 高エネルギー陽子加速器施設における内部被ばく線量評価法及び空気モニタリング技術を開発するためには、高エネルギー陽子の加速に伴い、2次的に発生する中性子や陽子と空気構成成分との核破砕反応により空気中に生成される放射性核種の性状を明らかにしておく必要がある。このため、これらの核種のうち、まだ十分なデータが得られていない放射性塩素及び硫黄ガスの物理化学的性状を明らかにするために、Arと空気を混合したガスまたはエアロゾルを添加したArガスへの中性子照射実験を実施した。この結果、浮遊性放射性塩素は非酸性ガスとして、放射性硫黄は酸性ガスとして存在すること,放射性塩素及び硫黄ともにエアロゾルに付着すること,放射性塩素は壁面へ付着しやすいことが明らかとなった。


34000509
Experiment and analyses for 14 MeV neutron streaming through a dogleg duct
山内 通則*; 落合 謙太郎; 森本 裕一*; 和田 政行*; 佐藤 聡; 西谷 健夫
Radiation Protection Dosimetry 116(1-4), p.542-546(2005) ; (JAEA-J 00628)

 核融合炉にはRF加熱ポートや計測用プラグ周りの間隙等、屈曲を設けた放射線ストリーミング経路が幾つかあり、遮蔽設計上の問題となる。モンテカルロ計算はストリーミング効果の詳細評価に重要であるが、一方簡易計算はストリーミング効果を軽減するための設計オプションの選定に有効である。実験と解析によりこれらの計算法の信頼性を評価した。実験は原研FNSの14MeV中性子源により、高さ170cm,幅140cm,厚さ180cmの遮蔽体に断面が30cm×30cmの2回屈曲ダクトを設けた体系で行った。モンテカルロ計算は実験体系,線源周り構造体、及び実験室を詳細にモデル化し、MCNP/4CコードとFENDL/2及びJENDL-3.3ライブラリーを用いて行った。実験値との差は30%以内であった。簡易計算はDUCT-IIIコードによって行った。その結果は屈曲によるストリーミング成分の変化を良好に再現し、充分な信頼性を持つことを確認した。すなわち、モンテカルロ計算法とともに簡易計算法もまた遮蔽設計評価のために有効な役割を果たすと期待できる。


34000510
High sensitive gasochromic hydrogen sensors using tungsten oxide thin films
高野 勝昌; 山本 春也; 吉川 正人; 井上 愛知; 杉山 僚
Transactions of the Materials Research Society of Japan 31(1), p.223-226(2006) ; (JAEA-J 00629)

 持続的発展をめざす水素社会の安全性を確保するには、着火源となる電源を必要としない高感度の水素センサーの開発が不可欠である。本研究では、水素に接触すると着色するガスクロミック材料を利用した水素センサーの開発を進めている。今回は、高周波スパッタ法を用いて形成したパラジウムと酸化タングステンの2層構造を最適化して水素検知素子を作製した。それをコア径50μmの光ファイバーケーブルの先端に接続して水素センサーを試作し、その性能の評価を行った。その結果、体積濃度1%の水素に対して、実用上求められる性能(反応時間が1秒以内、飽和着色率は95%以上)を満たすことに成功し、光学式水素センサーを水素検知材料と光ファイバーによって構築できることを検証した。


34000511
Gasochromic property of oriented tungsten oxide thin films
井上 愛知; 高野 勝昌; 山本 春也; 吉川 正人; 永田 晋二*
Transactions of the Materials Research Society of Japan 31(1), p.227-230(2006) ; (JAEA-J 00630)

 水素社会に向けて、可燃性ガスである水素に対して着火源となる電源などを使用しない光学式水素センサーの開発が求められている。そこで本研究では、水素検知材料として用いる酸化タングステンの薄膜をRFスパッタ法を用いて作製し、結晶状態とガスクロミック特性の関係について調べた。実験では、基板温度と雰囲気ガス圧をパラメータとし、X線回折法を用いて結晶構造の評価を行った。さらに、体積濃度1%の水素に対してのガスクロミック特性を評価した。その結果、結晶配向するほど、優れたガスクロミック特性を示すことが明らかとなった。


34000512
X-ray topography on piezoelectric La3Ga5SiO14 single crystal
米田 安宏; 岡島 由香*; 武田 博明*; 塩嵜 忠*; 水木 純一郎
Transactions of the Materials Research Society of Japan 31(1), p.7-10(2006) ; (JAEA-J 00631)

 圧電材料として有望なLa3Ga5SiO14(ランガサイト)は近年、チョクラルスキー法を用いて巨大単結晶が育成されるようになってきた。この単結晶を用いてX線トポグラフィで評価し、より高品位な結晶育成にフィードバックさせることを試みた。測定した単結晶試料の結晶性を評価するためにロッキングカーブの測定を行った。その結果、半値幅が16.75arcsecであり、われわれが期待したよりは結晶性が悪かった。この原因を明らかにするため、さらに詳細なX線回折測定を行ったところ、倍周期の超格子反射が見つかった。ランガサイトの空間群はP321であり、この2dサイトを占有するSiとGaのオーダーを示すと考えられる。さらに、非常に弱いながらも非晶質の散乱線が観測され、これは結晶化する直前の融液相の構造を反映していると考えられる。このような超格子反射や非晶質ピークはこれまでに報告例がなく、さらなる高品位結晶を得るための有力な情報として、現在解析をすすめている。


34000513
日本原子力研究開発機構における研究開発の現状
市村 敏夫; 上塚 寛
電気評論 91(2), p.62-80(2006) ; (JAEA-J 00632)

 独立行政法人日本原子力研究開発機構は、原子力に関する基礎的研究及び応用研究並びに核燃料サイクルを確立するための研究開発を総合的,計画的かつ効率的に行うとともに、これらの成果の普及等を行い、もって人類社会の福祉及び国民生活の水準向上に寄与することを目的とした、原子力に関する我が国唯一の総合的研究開発機関であり、日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構が2005年10月1日に統合することにより、設立された。原子力機構における研究開発の現状として、旧法人時代も含めた、最近1年間の研究開発の進捗と動向を紹介する。


34000514
持続的エネルギー供給を目指した将来型軽水炉の研究開発
中塚 亨
伝熱 44(189), p.9-14(2005) ; (JAEA-J 00633)

 軽水炉時代の長期化を見据え、軽水炉によるプルトニウム利用を高度化するためにさまざまなタイプの炉概念が検討されており、運転経験豊富な軽水炉技術を活用して増殖まで目指した軽水炉の研究開発が進められている。本稿では、ウラン資源の有効利用を目指して研究開発が行われている将来型軽水炉の概念を、熱水力設計を中心に紹介する。


34000515
2050年実用化の姿を描く; エネルギーと環境問題の調和的解決を
向 和夫
エネルギーレビュー 26(4), p.8-11(2006) ; (JAEA-J 00634)

 実用化戦略調査研究フェーズII成果の概要,軽水炉サイクルから高速増殖炉(FBR)サイクルへの移行,実用化に向けたFBRサイクルの研究開発の展開と課題を示し、今後の「FBRサイクル実用化への道のり」への展望を述べる。フェーズIIの成果として、主として開発を進めていく概念と補完的に開発を進めていく選択肢を提示した。今後の研究開発については、主概念に重点的に投資してくこととし、補完概念は技術的実現性の観点から重要な課題を中心に進めることが適切と考える。FBRサイクルへの移行については、既存の軽水炉の廃止が始まる2030年頃から2050年頃までは次世代軽水炉を導入し、その後は商用FBRを導入することとし、FBRの商用導入開始までは六ヶ所の軽水炉再処理で分離・回収されたPuはプルサーマルで利用する。実用化に向けたFBRサイクルの研究開発は、2015年頃までの技術体系整備に向けた第一段階,実用化を見通すためのFBRサイクル技術の実証のための第二段階,商業ベースでの本格導入を目指して実用化を推進する第三段階の三つの段階を踏んで徐々にステップアップを図りながら進めることが適切と考えられる。


34000516
IFMIF加速器構成材料の重陽子入射による放射化断面積の測定
中尾 誠; 堀 順一*; 落合 謙太郎; 久保田 直義; 佐藤 聡; 山内 通則; 石岡 典子; 西谷 健夫
FAPIG (172), p.3-7(2006) ; (JAEA-J 00635)

 IFMIF(International Fusion Material Irradiation Facility)は核融合材料照射試験を行うための強力中性子源として建設計画中の施設である。本施設では稼働率70%を目指しているが、重陽子による加速器構成材料の放射化によってメンテナンス作業が制限されることが稼働率を低下させる要因となるため、重陽子入射に対する低放射化材料の選択と放射化断面積の評価は重要な課題である。そこで、本件ではAl, Fe, Cu, Ta, Wについて、重陽子が入射した時に生成されるおもな放射性核種に対する放射化断面積の測定を行った。


34000517
核変換実験施設
大井川 宏之
原子核研究 50(4), p.113-121(2006) ; (JAEA-J 00636)

 長寿命放射性廃棄物の分離変換技術は、原子力エネルギーの持続的な利用を進めるうえで重要である。J-PARCにおいては、マイナーアクチノイド(MA)を効率よく核変換するための「加速器駆動核変換システム(ADS)」や、高速炉を含むその他の核変換システムに関する実験的研究を目的に、核変換実験施設の建設を計画している。核変換実験施設は、MAを含んだ核燃料と低出力陽子ビームを用いて核変換にかかわる物理特性やADSの運転制御に関する研究を行う核変換物理実験施設と、200kWの陽子ビームを用いてADS用核破砕ターゲットの技術開発と関連材料の開発を行うADSターゲット試験施設で構成する。


34000518
ADSターゲット試験施設の研究課題
菊地 賢司
原子核研究 50(4), p.131-149(2006) ; (JAEA-J 00637)

 J-PARC(Japan Proton Accelerator Research Complex)の核変換実験施設で計画しているADS(Accelerator Driven transmutation System)ターゲット試験施設では、加速器駆動核変換システムを実現するため、鉛ビスマス核破砕ターゲットの技術開発を行う計画である。800MWのプラント設計例に基づいて、陽子ビーム窓の使用条件、並びに、近年、実施してきた鉛ビスマス流動試験,高エネルギー陽子照射後試験を通じて明らかになった核破砕材料技術の現状と課題を述べる。それを受けて大強度の陽子加速器施設であるJ-PARCで実施可能な試験項目を挙げる。


34000519
物質・生命科学実験施設の中性子利用研究
新井 正敏
原子核研究 50(4), p.59-67(2006) ; (JAEA-J 00638)

 J-PARC中性子源(仮称JSNS)が2008年度より稼動する。学術基礎研究,産業利用,その他多くの社会のニーズに応えられる中性子利用が本格化する時代となる。JSNSは、現在我が国に現存する加速器駆動型中性子源である高エネルギー加速器研究機構KENS施設の300倍から1000倍の強度を有するものである。JSNSの活用はこれまで中性子の持つイメージを刷新し、社会にとって非常に有用であるという考えを世論にもたらすこととなろう。


34000520
幹細胞を考慮した胃簡易モデルにおける光子及び電子エネルギー付与解析
木名瀬 栄; 渡辺 立子; 斎藤 公明
保健物理 40(4), p.360-364(2005) ; (JAEA-J 00640)

 本研究では、内部被ばくによる胃腸管の合理的な線量評価法を開発することを目的にして、胃腸管の1区分である胃に着目し、放射線感受性の高い細胞である幹細胞の位置を仮定した胃の簡易モデルを開発するとともに、モンテカルロ計算により、光子及び電子に対する胃壁全体や幹細胞位置などの比吸収割合(SAF)を評価した。また、評価したSAFを用い、11C, 13N, 15O, 18Fのような陽電子放出核種について、胃壁全体や幹細胞位置などのS値を評価した。その結果、胃内容物に均一分布した線源に対し胃の幹細胞位置の光子SAFは、10keV-4MeVの光子エネルギー範囲において、これまで放射線防護分野などで利用してきた胃壁全体の光子SAFに比べ最大5倍程大きくなること、胃の幹細胞位置に対する電子SAFは、これまで放射線防護分野などで利用されてきた電子SAFのような定数(たとえば、2.0kg-1)ではなく、電子エネルギーに対して大きく依存すること、などを明らかにした。また、18Fのような低エネルギー陽子放出核種に対する胃の幹細胞位置のS値は、これまで放射線防護分野などで利用されてきた胃のS値に比べ0.7倍程小さくなることがわかった。これにより、胃組織内の標的部位の決定が、線量評価に直接関係するSAFやS値評価において極めて重要であることを明らかにした。


34000521
Development of dose assessment code for accidental tritium releases; ACUTRI
横山 須美; 野口 宏; 黒澤 直弘*
保健物理 40(4), p.376-384(2005) ; (JAEA-J 00641)

 事故時にトリチウムが放出された場合の公衆被ばく線量評価コードとして、ACUTRIコードの開発を行った。本コードは、大気中に放出されたトリチウムガス(HT)及びトリチウム水(HTO)について評価することができ、1次プルーム及び2次プルームの大気拡散,HT及びHTOの土壌への沈着,HTの土壌での酸化,土壌からのHTOの再放出などを計算することができる。さらに、わが国の原子力安全委員会の指針に基づいた従来の線量評価手法と整合性のある線量評価が可能である。このコードを用いて、さまざまな条件下で線量を計算し、計算結果に対する入力パラメータの影響を調べるとともに、野外実験結果を用いて計算値と実験値を比較し、コードの検証を行った。


34000522
3次元フレーム構造物の波動伝播特性に関する研究; チモシェンコ梁理論の導入
宮崎 明美
構造工学論文集 52B, p.119-124(2006) ; (JAEA-J 00643)

 構造物が衝撃的外力を受けたとき、構造物内部では応力波が発生し、接合部や境界における反射や透過を繰返しながら伝播する。この伝播現象を解明することは、いまだ未解明である構造物の接合部等におけるエネルギー逸散現象を解明するための有効な知見となることが期待される。従来の振動モデルでは質量が離散的に扱われているため、対象となる周波数範囲に上限が生じ、伝播現象を正確に表現することができない。一方、質量を連続的に扱った振動モデル(連続体モデル)は周波数範囲の制限がなく波動現象も扱えるため、慣性項の影響という観点からは振動・波動現象の忠実な再現が可能である。本研究では、原子力プラント全容の実運用時における動的現象シミュレーションシステム(3次元仮想振動台)の開発において、特に配管系構造物における応力波伝播現象及び減衰機構の解明を目的とする。著者らはこれまで、連続体モデルを基礎とする3次元フレーム構造物の波動伝播解析手法を開発してきた。本論文では、せん断変形が憂慮される配管系構造物に本手法を適用するためにチモシェンコ梁理論を導入し、梁のせん断波の伝播を厳密に扱える3次元フレーム要素の定式化を示す。また、チモシェンコ梁理論と従来梁理論を比較し、従来梁理論の適用範囲を明示し、本手法の有効性を述べる。


34000523
X線及び中性子回折法による残留応力測定技術
鈴木 裕士
熱処理 46(1), p.11-18(2006) ; (JAEA-J 00644)

 X線回折法による非破壊応力測定技術は、ひずみゲージなどの機械的計測法に代わる測定技術として、工業分野から研究開発分野に至るまで、さまざまな分野に応用されている。最近では、放射光から得られる高エネルギーX線や中性子線を用いた新しい応力測定技術が開発され、材料表面直下や材料深部など、実験室系では測定が困難であった領域・条件における残留応力評価が可能になっている。本解説では、これら特性X線,高エネルギーX線,中性子線による残留応力測定技術について、その基本原理と幾つかの応用例について解説した。


34000524
高温ガス炉ヘリウムガスタービン
高田 昌二; 滝塚 貴和; Yan, X.; 國富 一彦
日本ガスタービン学会誌 34(2), p.94-99(2006) ; (JAEA-J 00645)

 GTHTR300は、原子炉で850℃まで加熱したヘリウムガスでタービンを駆動する直接サイクルガスタービン発電システムである。動力変換系の設計では、可能な限り既存の技術に基づく設計とすることで、要素技術開発項目を少なくした。システムは、中間冷却なし再生式サイクルを採用した。閉サイクルヘリウムガスタービンと圧縮機は高ボス比・多段型となり、端壁境界層厚さが翼高さに対して相対的に厚くなることから、空力性能上不利となるが、これを克服するために翼端壁部の翼入口角を流れに合わせるなどして、設計目標値ポリトロープ効率93%,90%を満足させた。設計の結果、発電効率は45.8%となり、安全性に優れ、発電コストが4円/kWhとなる原子力発電プラントの成立性の見込みが得られた。高効率ヘリウムガス圧縮機の設計手法を構築するために、1/3スケール圧縮機モデルにより、端壁境界層を抑制するための端壁近傍での翼入口角の設定方法を構築するとともに、設計式の係数を修正することにより、目標の90.5%を満足する高効率ヘリウムガス圧縮機の設計を完成させた。


34000525
熱化学水素製造法ISプロセスのための硫酸分解器の開発
寺田 敦彦; 大田 裕之; 野口 弘喜; 小貫 薫; 日野 竜太郎
日本原子力学会和文論文誌 5(1), p.68-75(2006) ; (JAEA-J 00646)

 日本原子力研究開発機構では、高温ガス炉(HTTR)を用いた熱化学ISプロセスによる水素製造技術の開発を進めている。硫酸分解器は、濃硫酸を高温のヘリウムガスとの熱交換により蒸発・分解するためのISプロセス機器である。本報では、セラミックスブロック型硫酸分解器について、ブロックの強度評価と試作、及びブロックと金属フランジ間等のシール性能試験等を実施し、構造成立性に目処を得た。


34000526
21世紀の地層処分研究開発; 技術的知識基盤の構築
梅木 博之
日本原子力学会誌 48(3), p.166-171(2006) ; (JAEA-J 00647)

 事業の長期性と安全確保の長期性から、地層処分技術に関しては実施主体や規制機関の活動を支えるための技術基盤として体系化し、継続的な研究開発によってその信頼性の向上を図っていくことが不可欠である。核燃料サイクル開発機構は、2005年9月に公表したH17取りまとめにおいて、このような体系化にあたっての新たな視点として知識管理に基づくアプローチを提案している。本稿では、このアプローチの意義,地層処分技術に関する知識のセーフティケース概念に基づく構造化や知識ベースの開発について解説し、日本原子力研究開発機構の今後の研究開発の方向性を与えるものであることを紹介している。


34000527
Influence of radioluminescence on optically stimulated luminescence from natural quartz grains
藤田 博喜; 橋本 哲夫*
Radioisotopes 55(3), p.117-123(2006) ; (JAEA-J 00648)

 さまざまな起源の石英粒子からの光励起ルミネッセンス(OSL)感度が異なる原因について、照射中の発光であるラジオルミネッセンス(RL)の影響に注目した。RL波長分光測定の結果から、すべての石英粒子からのRL発光は、400nm(V-RL)及び630nm(R-RL)に幅広いピークを有する2種であることがわかった。さまざまな線量率で一定線量(20Gy)を照射したOSLの感度は、V-RLの全発光強度(20Gy)に影響されることがわかった。さらに、OSLの励起光である470nmよりも短い波長領域からのRLのブリーチング効果が、石英薄片粒子と光学フィルターを組合せた実験から確かめられた。これらの結果から、OSL/SAR法により求めた積算線量には、V-RL発光の影響があることがわかった。


34000528
放電を利用した水素同位体の除去
中村 博文; 東島 智
真空 49(2), p.62-68(2006) ; (JAEA-J 00650)

 核融合装置における各種放電方法を利用した真空容器からのトリチウム除去に関する経験について解説する。重水素−トリチウム放電の実施経験があるJET(EU)及びTFTR(米)における放電を用いた真空容器からのトリチウム除去経験では、JETでは、トカマク放電や放電洗浄によるトリチウム除去はトリチウム除去に余り大きな効果はなく、TFTRでは、酸素を用いた放電洗浄(He/O-GDC)が有効であるとの結果が得られている。これらの結果をもとにITERでの真空容器内トリチウム除去法として、He/O-GDCが採用されることになった。一方、我が国のJT-60Uに関しては、重水素トカマク放電により発生し、真空容器内に残留しているトリチウムの除去試験の結果を紹介する。JT-60U重水素置換運転の一環として実施したグロー放電,高周波放電及びテイラー放電による重水素,ヘリウム及びアルゴンを作動ガスとしたトリチウム除去実験の結果及び通常のトカマク放電中におけるトリチウム排出量,排出率を測定した結果、放電洗浄によるトリチウム除去では水素を用いた放電が有効であり、その中で水素−グロー放電が最も除去効率が高いこと、また、水素−高周波放電も放電の最適化が進めばトリチウム除去に有望であるとの結論を得た。


34000529
Microbeam system for heavy ions from cyclotron to irradiate living cells
横田 渉; 小原 祥裕; 荒川 和夫
Proceedings of 36th ICFA Advanced Beam Dynamics Workshop (NANOBEAM 2005) (CD-ROM) , 6p.(2005) ; (JAEA-J 00651)

 静電加速器のビームのマイクロビームは、TIARAを含めた世界の幾つかの施設で既に実用化されている。サイクロトロンにおいては、一般にビームのエネルギーの広がりが大きいことが、マイクロビーム形成の障害になっていた。TIARAではフラットトップ加速の導入により、エネルギーの広がりをマイクロビーム化が可能な従来の1/10に狭め、世界で初めての数百MeVの直径1ミクロン重イオンビームの実現を目指している。本マイクロビームは大気中に取出して生きた細胞に照射するもので、バイスタンダー効果等の生物照射影響研究の推進に不可欠である。本マイクロビーム開発の基礎となったTIARAの静電加速器のマイクロビーム技術の紹介,ビーム光学設計,フラットトップ加速技術,シングルイオンヒット技術,現在の到達点、及び将来計画等に関する解説を行う。


34000530
Radionuclide releases from UO2 and MOX fuel under severe accident conditions
木田 美津子; 工藤 保; 中村 武彦; 更田 豊志
Proceedings of Technical Meeting on Severe Accident and Accident Management (CD-ROM) , 10p.(2006) ; (JAEA-J 00653)

 シビアアクシデント時の燃料からの放射性物質の放射挙動を調べるVEGA計画において、照射済のPWR-UO2, BWR-UO2燃料及びATR-MOX燃料をほぼ同一条件で試験した結果を示す。


34000531
Enhancement of cesium release from fuel due to fuel oxidation and dissolution under severe accident conditions
工藤 保; 中村 武彦; 木田 美津子; 更田 豊志
Proceedings of Technical Meeting on Severe Accident and Accident Management (CD-ROM) , 11p.(2006) ; (JAEA-J 00654)

 VEGA計画では、シビアアクシデント条件下における燃料からの放射性物質放出に関する研究を行っている。本計画において、VEGA-4実験は被覆管付きの燃料を用い、水蒸気雰囲気で実施した。燃料からの放射性物質放出は、被覆管なしの燃料を用いて不活性雰囲気で行ったVEGA-1実験に比べて放出速度は大きかった。水蒸気による燃料の酸化は重要な放出機構であることが知られており、揮発性放射性物質の放出を増加させる。加えて、VEGA-4実験では被覆管との相互作用による燃料溶融が見られた。燃料溶融も放射性物質放出に影響を及ぼす。本報告では、VEGA-4実験でのセシウム放出における燃料酸化と溶融の影響をモデルを用いて評価した結果について示す。


34000532
Development of a three-dimensional CDA analysis code; SIMMER-IV, and its first application to reactor case
山野 秀将; 藤田 哲史; 飛田 吉春; 佐藤 一憲; 丹羽 元
Proceedings of Technical Meeting on Severe Accident and Accident Management (CD-ROM) , 12p.(2006) ; (JAEA-J 00655)

 炉心崩壊事故の遷移過程解析のため、2次元SIMMER-IIIコードをもとに3次元炉心安全解析コードSIMMER-IVの開発が行われた。また、世界で初めてSIMMER-IVを小型ナトリウム冷却高速炉に適用し、遷移過程の初期段階における事象推移を明らかにすることを試みた。このSIMMER-IVによる解析は、制御棒案内管の存在を無視したSIMMER-IIIによる2次元解析の場合と比較された。従来シナリオは比較的早期に高い流動性を持つ燃料プールが形成されていたが、3次元的な物質配位を考慮した本解析により、それは非現実的であり、遷移過程の初期段階では崩壊炉心は低流動性を保つ傾向があることが示された。


34000533
The Result of medium scale in-pile experiment conducted under the EAGLE-project
小西 賢介; 豊岡 淳一; 神山 健司; 佐藤 一憲; 久保 重信*; 小竹 庄司*; 小山 和也*; Vurim, A. D.*; Gaidaichuk, V. A.*; Pakhnits, A. V.*; Vassiliev, Y. S.*
Proceedings of Technical Meeting on Severe Accident and Accident Management (CD-ROM) , 16p.(2006) ; (JAEA-J 00656)

 FBR実用化に向けての炉心安全上の重要課題である、炉心損傷時における再臨界問題の排除に技術的見通しを得るため、EAGLEプロジェクトを進めている。カザフスタン共和国の試験炉IGRを用いて炉内中規模試験(WF試験)を実施し、肉厚3mmのスティール製壁構造の溶融燃料プール接触による破損挙動を調べた。試験の結果、壁の背後にナトリウムが在る場合とない場合との間の壁破損時間の差は1秒未満程度であることがわかった。過渡伝熱計算に基づき壁表面温度履歴の分析を行った結果、ナトリウムで冷やされた壁が早期に破損する現象は、燃料プールから壁に向かう20MW/m2もの高い熱流束の存在の結果として生じたことがわかった。


34000534
A Strategy for the application of steam explosion codes to reactor analysis
森山 清史; 中村 秀夫
Proceedings of Technical Meeting on Severe Accident and Accident Management (CD-ROM) , 18p.(2006) ; (JAEA-J 00657)

 水蒸気爆発は、軽水炉におけるシビアアクシデント時に格納容器の健全性に影響を及ぼし得る現象のひとつであり、原子力及びその他の産業における安全研究の分野で注目されてきた。著者らは軽水炉の安全性に対する水蒸気爆発の影響を評価するためにJASMINEコードを開発し、これまでに水蒸気爆発実験のシミュレーション及び実機規模のパラメータ解析を実施した。これらの解析経験と、水蒸気爆発の過程におけるさまざまな基礎過程の関連に関する考察に基づき、水蒸気爆発の機構論的解析コードを実機解析に適用する際の適切な方法に関する技術的な見解をまとめた。


34000535
日本原子力研究開発機構における廃棄物処分分野の安全研究の概要; 平成13年度〜平成17年度,高レベル放射性廃棄物
梅木 博之; 大澤 英昭; 園部 一志; 宮本 陽一
第5回安全研究成果報告会講演録集; 放射性廃棄物の地層処分について , p.5-29(2006) ; (JAEA-J 00658)

 サイクル機構(現、日本原子力研究開発機構)は、国の方針に基づいて高レベル放射性廃棄物地層処分研究の全体計画を作成している。その中で、全体計画にしたがって進める研究開発の成果は、事業の推進,安全規制の策定に資する共通の技術的基盤となることを目指している。特に安全規制の策定に資するという観点からは、上述した安全研究年次計画に応えるものでなければならない。このことを念頭に、年次計画に対応して安全研究計画を作成し、全体計画に沿って進められる研究開発の成果を安全研究という視点で捉えることが可能となるようにした。本稿では、サイクル機構が進めた高レベル放射性廃棄物の地層処分の研究開発について、安全研究としてどのように体系づけられているかを説明したうえで、設定された各個別課題の内容,成果の概要を示す。


34000536
原子炉解体廃棄物の有効利用調査・検討,3
西尾 繁*
平成16年度財団法人若狭湾エネルギー研究センター研究成果報告集,7 , p.54-57(2005) ; (JAEA-J 00659)

 ZrO2放射線触媒の性能を高めるために、白金助触媒との複合化とZrO2粉末の微構造の制御を検討した。その結果、ZrO2の表面積を大きくすると放射線触媒効果が大きく増大することがわかった。一方、白金助触媒は複合化の方法によらず、ZrO2の放射線触媒効果を大きく阻害することがわかった。


34000537
地質環境におけるナチュラルアナログ研究
笹尾 英嗣; 岩月 輝希; 天野 由記
放射性廃棄物安全研究年次計画(平成13年度〜平成17年度)研究成果報告集 , p.105-110(2006) ; (JAEA-J 00660)

 地層処分システムの長期的な安全評価の信頼性をさらに向上させるためには、長期的な時間スケールで生じる地質学的事象や地質環境の変化に伴う物質の移行・遅延挙動を評価することが必要である。そこで、東濃ウラン鉱床を事例研究の場として、物質の固定・移行特性を明らかにするとともに、これらの特性を評価するための調査・解析手法を開発することにより、地層処分の安全評価手法の信頼性向上に資することを目的として研究を実施した。本資料では、ウランの溶解度の長期的な変動幅,酸化還元緩衝能力の評価及び隆起・沈降の変遷と地質環境への影響について述べた。


34000538
地下水水質形成モデルの検証及び高度化に関する研究
笹本 広; 黒澤 進; 磯貝 武司*; 吉川 英樹
放射性廃棄物安全研究年次計画(平成13年度〜平成17年度)研究成果報告集 , p.146-152(2006) ; (JAEA-J 00661)

 深部地下水の水質形成モデルの改良・高度化を行うとともに、地下水と人工バリア材料との長期の相互作用及びそれに伴う緩衝材空隙水水質形成のメカニズムを解明することにより、処分場の長期的な地球化学環境を明らかにし、安全評価手法の信頼性向上に資するため、以下の研究を実施した。地下水に関しては、地表からの調査段階における地下水データの信頼性評価手法や原位置地下水を推定するための補正にあたり重要な要因についての検討例を示した。間隙水に関しては、圧縮ベントナイト中間隙水水質の時空間変化を把握するための手法開発を進め、室内でのカラム試験における間隙水pHの時空間変化を把握することが可能になった。また天然のベントナイト鉱床における間隙水水質の空間分布にかかわるデータも取得した。鉱物等の熱力学データベースに関しては、処分環境でセメント系材料が用いられた場合に想定されるような高アルカリ溶液とベントナイトが反応した場合の生成物や高アルカリ条件での支配的な化学種についての熱力学データを収集し、データベースを開発した。


34000539
環境変動に伴う地質環境の安定性評価に関する研究
中司 昇; 野原 壯; 梅田 浩司; 守屋 俊文; 浅森 浩一; 丹羽 正和
放射性廃棄物安全研究年次計画(平成13年度〜平成17年度)研究成果報告集 , p.50-56(2006) ; (JAEA-J 00662)

 火山・地熱活動,地震・断層活動,隆起・侵食などの天然現象の変化(プロセス・メカニズム)、及びそれらによる地質環境への影響に関するデータを収集・整備した。また、これらのデータを用いて環境変動シミュレーション手法の開発を行った。


34000540
ナトリウム冷却高速増殖炉の熱流動挙動に関するマルチフィジックス大規模数値シミュレーション
村松 壽晴
日本機械学会関東支部第12期総合講演会講演論文集 , p.231-232(2006) ; (JAEA-J 00663)

 高い熱伝導度を持つ液体ナトリウムを冷却材として用いる高速増殖炉の炉容器内熱流動設計では、熱疲労防止の観点から流体温度ゆらぎによる構造物への熱荷重を適切に評価するとともに、反応度異常防止の観点からナトリウム中へのカバーガスの混入を防止可能な幾何形状を規定することなどが求められる。以上の評価を数値解析により行うためには、熱流動−構造物間の熱的なマルチフィジックスシミュレーションを高精度で行うとともに、乱流挙動を考慮したうえで10m規模の炉容器内のマクロな熱流動現象をマルチスケールシミュレーションにより評価する必要がある。本報では、このような大規模複合熱流動現象の数値シミュレーションを行うための知識処理を含む数値計算モデルと高速増殖炉の上部プレナム熱流動評価への適用例を紹介する。


34000541
Fluctuations of electron and photon flux by a thundercloud electric field and the runaway air breakdown
鳥居 建男; 杉田 武志*
KEK Proceedings 2005-10 (CD-ROM) , p.27-31(2005) ; (JAEA-J 00667)

 宇宙線の雷雲電界中への入射による電子・光子束変動をモンテカルロ計算により求めた。本論文では、大気上空より1次宇宙線の主成分である陽子を入射させ、降下する中で生成される2次宇宙線と大気の相互作用により生成した高エネルギー電子が雷雲電界により加速,電磁シャワーの発生をモンテカルロ計算コードGEANT5と電界ルーチンを組み込んだEGS5により解析した。その結果、雷雲の高電界領域で、電子束が急激に上昇し、絶縁破壊を引きおこす強度より1ケタ以上低い電界で電磁シャワーが発生することがわかった。このことは、逃走電子の生成による逃走絶縁破壊を示唆するものであった。


34000542
Incorporating combinatorial geometry to the EGS5 code and its speed-up
杉田 武志*; 鳥居 建男; 高村 篤*
KEK Proceedings 2005-10 (CD-ROM) , p.7-21(2005) ; (JAEA-J 00668)

 新たに開発されたモンテカルロ計算コードEGS5にCG法が適用できるようにユーザールーチンを作成した。従来、単純な計算体系しかできなかったが、今回作成したCG法をEGS5コードに組み込むことにより、単純な幾何構造の組合せで複雑な幾何構造でも輸送計算ができるようになった。さらに、その高速化を図ることにより、複雑な体系でも十分な速さで計算できるようになった。


34000543
光ファイバ技術を用いた高速炉構造健全性監視技術の開発
松場 賢一; 川原 啓孝; 伊藤 主税; 吉田 昌宏; 仲井 悟
UTNL-R-0453 , p.12_1-12_10(2006) ; (JAEA-J 00669)

 高速炉構造物の健全性監視を精度よく行うためには、構造健全性を支配する温度やひずみなどを詳細に測定する必要がある。高速実験炉「常陽」では、高温・高放射線環境下にある高速炉構造物の温度やひずみなどを詳細かつ合理的に測定する技術を開発するため、光ファイバを用いた1次冷却系配管の温度分布及びひずみ・振動測定を行っている。これらの測定を通じて、放射線により誘起される測定誤差の補正法を適用することにより、1次冷却系配管の温度分布を3℃程度の誤差範囲内で測定できることを確認した。また、1次冷却系配管の温度変化による配管外装板の熱膨張や主循環ポンプの運転に伴う配管サポートの振動を検出できることを確認し、光ファイバを高速炉構造物の健全性監視に適用できる見通しを得た。


34000544
高速炉を用いたマイナーアクチニド消滅処理技術の開発; 「常陽」におけるAm-Np含有MOX燃料の照射試験
曽我 知則; 関根 隆; 高松 操; 北村 了一; 青山 卓史
UTNL-R-0453 , p.13_1-13_8(2006) ; (JAEA-J 00670)

 「常陽」では、Amを最大5%含むAm-MOX燃料と、Np及びAmを各々約2%含むNp/Am-MOX燃料について、キャプセル型照射装置B11による短期及び長期の照射試験を計画している。照射燃料試験施設(AGF)で製造されたAm-MOX燃料ピンとPu燃料技術開発センターで製造されたNp/Am-MOX燃料ピンは、照射燃料集合体試験施設(FMF)にてB11に装填される。本試験では、「常陽」の試験許可の範囲内で、設計上の燃料溶融を許容することにより、約430W/cmの線出力を達成するとともに、燃焼初期の段階では、燃料挙動を考慮した特殊な運転を計画している。B11照射試験は、2006年5月から開始する計画である。


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