学会誌等掲載論文
※下記の研究開発成果は資料名順に並んでいます。

2006年6月


34000548
In situ monitoring of internal strain and height of InAs nanoislands grown on GaAs(001)
高橋 正光; 海津 利行; 水木 純一郎
Applied Physics Letters 88(10), p.101917_1-101917_3(2006) ; (JAEA-J 00671)

 InAs/GaAs(001)ナノ結晶の分子線エピタキシャル成長をモニターする手法を開発した。シンクロトロン放射光の利用により、逆格子空間内でのX線強度マッピングが成長中に測定できた。Stranski-Krastanov成長したナノ結晶の内部のひずみ分布・高さが時間分解能9.6秒で追跡できた。ナノ結晶内部のひずみ緩和の過程は、成長温度に大きく依存することを示す。


34000549
Improved density functional calculations including magnetic effects for RfCl4 and its homologues
Anton, J.*; 平田 勝; Fricke, B.*; Pershina, V.*
Chemical Physics Letters 380(1-2), p.95-98(2003) ; (JAEA-J 00672)

 われわれはスピン分極を考慮した相対論密度汎関数法の開発を行い、同法を用いてラザホージウム及び同族元素の4塩化物の電子状態を調べた。スピン分極を考慮することにより、同族元素の4塩化物の構造を良好に再現することができたほか、実験的にまだ調べられていないラザホージウム4塩化物の構造予測を行った。


34000550
Solvent extraction of lanthanides into an ionic liquid containing N,N,N',N'-tetrakis(2-pyridylmethyl)ethylenediamine
下条 晃司郎; 長縄 弘親; 久保田 冨生子*; 後藤 雅宏*
Chemistry Letters 35(5), p.484-485(2006) ; (JAEA-J 00673)

  N,N,N',N'-tetrakis(2-pyridylmethyl)ethylenediamine(TPEN)を用いたランタノイドのイオン液体への抽出を検討した。その結果、従来の一般有機溶媒を用いた場合に比べてイオン液体を用いた方が、TPENのランタノイドに対する抽出能が大幅に向上することを明らかにした。さらに、イオン液体に抽出されたランタノイドは酸性の回収相を用いて容易に逆抽出できることが示された。


34000551
An Inference method of team situation awareness based on mutual awareness
Shu, Y.; 古田 一雄*
Cognition, Technology & Work 7(4), p.272-287(2005) ; (JAEA-J 00674)

 チーム状況認識(TSA)は、チームの意思決定過程内中間ステップの一つであり、原子力発電所,航空,航海などの数多くの応用分野において、人間と機械の間協調行動にとって重要な指標である。本論では、原子力発電所などのプロセスプラント運転チーム行動をモデル化したヒューマンモデルの構築を行い、多数VDUデバイスで構成され、チームによって運用されるようなプラント監視操作システムを対象として、運転チームの情報共有,相互信念を含めたヒューマンマシンインタフェース評価手法を開発した。この研究は、まず個人状況認識(SA)と相互信念に還元可能なチーム状況認識(TSA)の新概念を提案した。この新しいTSAの枠組みの上にチーム−機械協調活動におけるTSA推論の手法を開発し、シミュレーションによって人間のTSA構築能力について検討した。さらに、TSAに関しては、状態認識における推論や、認知、そして相互の反応性といった要素が共同作業において不可欠な要素であると考え、健全性と完全性といった2つの視点から、TSAの適切性の評価手法を確立できた。これにより外部環境情報を用いる有効性を確認した。


34000552
Electrochemical transient techniques for determination of uranium and rare-earth metal separation coefficients in molten salts
Kuznetsov, S. A.*; 林 博和; 湊 和生; Gaune-Escard, M.*
Electrochimica Acta 51(13), p.2463-2470(2006) ; (JAEA-J 00675)

 使用済燃料の乾式再処理プロセスの検討のためには溶融塩中のアクチノイドと希土類元素の分離係数が必要である。その一例としてウランとランタンの分離係数の導出法を示した。またUCl3とLaCl3を含んだLiCl-KCl共晶溶融塩試料の電気化学測定を行い、U(III)/U及びLa(III)/Laの酸化還元電位,U3+イオンの拡散係数,U(III)/U電極反応の電子授受速度を測定した。これらのデータを用いてウランとランタンの分離係数を求めた。


34000553
Internal promoter characterization and expression of the Deinococcus radiodurans pprI- folP gene cluster
Gao, G.*; Le, D.*; Huang, L.*; Lu, H.*; 鳴海 一成; Hua, Y.*
FEMS Microbiology Letters 257(2), p.195-201(2006) ; (JAEA-J 00676)

 PprIは、デイノコッカス・ラジオデュランスの著しい放射線耐性に重要な放射線応答スイッチタンパク質である。DNAデータベース解析により、pprI遺伝子の終止コドンは下流に存在する folP遺伝子の開始コドンとオーバーラップしており、2つの遺伝子はオペロンを形成していると示唆された。しかし、 folP遺伝子破壊株は葉酸要求性で放射線耐性、 pprI遺伝子破壊株は葉酸非要求性で放射線感受性であった。また、プライマー伸長法により、 pprI遺伝子の転写開始点を決定した。さらに、 lacZレポーターアッセイを用いて、 pprI遺伝子の発現が構成的であり、放射線照射によって誘導されないことを明らかにした。 pprIプロモーターを欠損させると、PprIタンパク質が生産されないことから、 pprI遺伝子の上流に存在するプロモーターが、デイノコッカス・ラジオデュランスの放射線耐性に重要であることがわかった。しかし、 pprIプロモーターの欠損は、folP遺伝子の発現に影響を及ぼさなかった。 folPプロモーター領域のプライマー伸長解析により、 folP遺伝子のプロモーターは、 pprI構造遺伝子内部に存在することが明らかになった。これらの結果から、 pprI folPはオペロンを形成せず、FolPタンパク質が pprI遺伝子の発現制御に関与することもないと考えられた。


34000554
Development and contribution of RF heating and current drive systems to long pulse, high performance experiments in JT-60U
森山 伸一; 関 正美; 寺門 正之; 下野 貢; 井手 俊介; 諫山 明彦; 鈴木 隆博; 藤井 常幸; JT-60チーム
Fusion Engineering and Design 74(1-4), p.343-349(2005) ; (JAEA-J 00677)

 JT-60Uにおいて、高βプラズマの長時間維持等を目指した最大65秒間放電を継続する実験を行っている。電子サイクロトロン(EC)装置は、加熱だけでなくリアルタイムで入射角度を制御できるアンテナを開発し、電流分布制御や新古典テアリングモードの抑制による閉じ込め性能改善に貢献している。これまでに2.8MW, 3.6秒(10MJ)の入射を達成しているが、プラズマの長パルス化にあわせて0.6MW, 30秒の入射を目指している。伝送系冷却と真空排気の増強,耐ノイズ性能を高める改造とともに導波管型の1MW定常模擬負荷を用いたジャイロトロン動作の調整を行い、8.7秒間のプラズマへの入射と16秒間(400kW/ユニット)のジャイロトロン出力に成功している。ジャイロトロンのパルス幅延伸には、長時間の電子放出でカソード温度が下がりビーム電流が減少して発振条件がずれる問題への対処が重要であり、パルス中にヒータ電力,アノード電圧を上げる制御を行うことで良好な発振条件を持続させることに成功した。一方、低域混成波(LH)電流駆動装置では長年の実験で変形したステンレス製アンテナ先端を炭素化する改造を行い、入射パワーと耐熱負荷性能の向上が期待される。これまでに5.1MJまでの入射を達成しておりエージングを継続中である。


34000555
Dynamical pressure anisotropy in liquid-gas model of lattice-gas
海老原 健一
International Journal of Modern Physics C 17(1), p.53-64(2006) ; (JAEA-J 00678)

 格子ガス気液モデルは、格子ガスに長距離相互作用を加えることによって構築され、Van der Waalsの気液理論と類似の相分離をシミュレーションすることができる。この気液モデルは、低密度相中に円形の高密度相を生成することができる。この論文では、外力による円形高密度相の変形を、長距離相互作用に依存する2つの気液モデルを用いてシミュレーションした。その結果、1つのモデルは、妥当な変形を示すが、他方のモデルは、非物理的な変形を示すことが観察された。また、この変形の違いは、格子ガス気液モデルの動的な圧力非等方性に起因することが、数値実験によって明らかとなった。


34000556
Interaction of Eu(III) ion and non-porous silica; Irreversible sorption of Eu(III) on silica and hydrolysis of silica promoted by Eu(III)
高橋 嘉夫*; 村田 美穂*; 木村 貴海
Journal of Alloys and Compounds 408-412, p.1246-1251(2006) ; (JAEA-J 00679)

 Eu(III)とシリカとの相互作用を吸脱着実験とレーザー誘起蛍光分光法によるEu(III)の状態分析により研究した。Eu(III)の吸着がイオン強度に無関係なこと,シリカが重い希土類元素により強い親和力を示すこと、及び吸着によりEu(III)内圏の水分子が除去されることから、シリカ表面のシラノールとEu(III)の内圏錯体形成が初期反応の重要なプロセスであることを見いだした。また、時間とともにEu(III)の水和数がさらに減少すること及びEu(III)の吸着が非可逆的であることから、Eu(III)とSiを含む新たな相がシリカ表面で形成されることが示唆された。さらに、Eu(III)の存在がシリカの溶解を著しく促進することから、Eu(III)がSi-O-Si結合を効果的に加水分解することを明らかにした。


34000557
Curium(III) species and the coordination states in concentrated LiCl-aqueous solutions studied by time-resolved laser-induced fluorescence spectroscopy
有阪 真; 木村 貴海; 永石 隆二; 吉田 善行
Journal of Alloys and Compounds 408-412, p.1307-1311(2006) ; (JAEA-J 00680)

 時間分解レーザー誘起発光分光法を適用し、高濃度塩化リチウム(LiCl)水溶液中の3価キュリウムの化学種と配位状態を調べた。3価キュリウムの発光寿命及び発光スペクトルから、その第1配位圏中の水分子数(NH2O)と化学種の分布をそれぞれ決定した。さらに、化学種の分布に基づき、第1配位圏中の塩化物イオン数(NCl)を算出し、配位数(NH2O+NCl)を評価した。LiCl濃度が6M以下の領域では、3価キュリウムの第1配位圏は水分子のみによって占められており、配位数は一定であることを明らかにした。6M以上の領域では、3価キュリウムが塩化物イオンと内圏錯体を生成していることを明らかにし、特に、10M以上の領域では、トリクロロ錯体及びテトラクロロ錯体が生成していることを見いだした。また、その配位数は6Mから10Mの領域では一定であったが、10M以上の領域ではLiCl濃度の増加に伴い減少することを見いだした。高濃度LiCl水溶液中におけるこのような配位数の減少はランタノイドでは見いだされておらず、アクチノイド特有の現象と考えられる。


34000558
Characterization of a monofunctional catalase KatA from radioresistant bacterium Deinococcus radiodurans
小林 一聖*; 田村 隆*; Haitham, S.; 鳴海 一成; 山口 庄太郎*; 梅田 幸一*; 稲垣 賢二*
Journal of Bioscience and Bioengineering 101(4), p.315-321(2006) ; (JAEA-J 00681)

 カタラーゼは、活性酸素種から細胞を防御するのに重要な役割を果たしている。この論文では、放射線抵抗性細菌デイノコッカス・ラジオデュランスのカタラーゼKatAの遺伝子クローニング,タンパク質の精製及び機能解析について報告する。KatAタンパク質単量体の分子量は65kDaであり、ゲルろ過でのサイズは240kDaであることから、KatAは溶液中でホモ4量体として存在することが示唆された。精製したKatAタンパク質の活性は、1mg当たり68,800ユニットであった。KatAの活性は、アジ化ナトリウム,シアン化ナトリウム,3-amino-1, 2, 4-triazoleによって阻害された。また、吸収スペクトルは、408nmにソレー帯を示したが、このスペクトルピークは、亜ジチオン酸塩によるKatAの還元反応によって影響を受けなかった。さらに、ペルオキシダーゼ活性は認められなかった。これらの結果は、デイノコッカス・ラジオデュランスのKatAタンパク質が典型的な単機能性のヘム含有カタラーゼであることを示している。過酸化水素ストレスに対するKatAタンパク質の安定性は、市販されているコウジカビとウシ肝臓由来カタラーゼよりも優れていた。細胞中のカタラーゼ含量が比較的豊富なことと、カタラーゼが過酸化水素に耐性を持つという性質が、ラジオデュランスの酸化損傷に対する生存戦略に役割を果たしていると考えられた。


34000559
Pressure dependence of local structure in liquid carbon disulfide
山本 夕可*; 石橋 康彦*; 稲村 泰弘; 片山 芳則; 三品 具文*; 中原 純一郎*
Journal of Chemical Physics 124(14), p.144511_1-144511_5(2006) ; (JAEA-J 00682)

 液体2硫化炭素の1.2GPaまでの高圧X線回折測定がエネルギー分散法によって行われた。その結果は、通常のレナードジョーンズポテンシャルを用いた分子動力学計算と比較された。測定されたすべての圧力点で、両者は非常によく一致した。液体構造は、結晶化の直前の圧力まで、剛体球液体へと近づくように変化した。構造変化と高圧下での光学応答の関係について議論した。


34000560
Theoretical study on the alloying behavior of γ-uranium metal; γ-uranium alloy with 3d transition metals
栗原 正義*; 平田 勝; 関根 理香*; 尾上 順*; 中松 博英*
Journal of Nuclear Materials 326(2-3), p.75-79(2004) ; (JAEA-J 00683)

 相対論DV-DFS分子軌道法を用いて3d遷移金属のγ相ウラン合金の合金化挙動を調べた。d軌道エネルギー(Md)の値は、ウラン合金化挙動と良好な相関があることがわかった。すなわち、Ti, V, Crのようにγ相ウランに固溶しやすい金属は比較的高いMd値を持つ。逆にCuのように全く固溶しない金属は、非常に低いMd値を取ることがわかった。


34000561
Assessment of human body surface and internal dose estimations in criticality accidents based on experimental and computational simulations
曽野 浩樹; 大野 秋男*; 小嶋 拓治; 高橋 史明; 山根 義宏*
Journal of Nuclear Science and Technology 43(3), p.276-284(2006) ; (JAEA-J 00684)

 臨界事故時個人線量計測法の実用化に向け、体表及び体内被ばく線量推定法の妥当性評価を、TRACY施設における臨界事故模擬実験及び計算機シミュレーションに基づき行った。模擬実験では、人体模型に装着したアラニン線量計及びホウ酸リチウム熱蛍光線量計により、人体筋肉に対する中性子及びγ線吸収線量を弁別して計測した。計算機シミュレーションでは、中性子,即発γ線及び遅発γ線による線量成分を考慮したモンテカルロ計算を行った。人体模型内線量分布の計算値と実験値との比較により、計算機シミュレーションの妥当性を検認するとともに、アラニン線量計及びホウ酸リチウム熱蛍光線量計による個人線量計測法が十分な精度でもって被ばく線量の初期推定値を提供できることを確認した。


34000562
Operation scenarios and requirements for fuel processing in future fusion reactor facilities; Hydrogen isotope separation as a key process for fuel recycle and safety
大平 茂; 山西 敏彦; 林 巧
Journal of Nuclear Science and Technology 43(4), p.354-360(2006) ; (JAEA-J 00685)

 この論文では、将来のD-T核融合炉における総合的な燃料処理プロセスの見地からのITER及び次期核融合炉の運転シナリオが、運転や安全の要求事項などに起因したシステム設計の要件の比較とともに示す。D-T核融合炉施設における燃料プロセスでは、ITERにおいても実証炉等においてもほとんどの基礎的な要求は同じと考えられる。しかし、ITERと実証炉等のそれぞれの運転シナリオの違いからシステムの設計要件もおのずと異なると考えられる。ITER及び実証炉のさまざまな運転をカバーすべきトリチウム・プラントのシステム設計要件を比較・検討した。実証炉では、真空容器内機器がITERより高い温度で運転されるため、構造材料中のトリチウム透過によるトリチウム濃度の上昇がある。このため、冷却材からのトリチウム除去はより重要になると考えられる。将来の核融合炉中の水素同位体処理と関連する幾つかの重要な制御因子についても議論する。


34000563
Theoretical analysis of electronic structure for the chemical bonding of Pu and Am in MgO
田中 久美子; 平田 勝; 関根 理香*
Journal of Nuclear and Radiochemical Sciences 5(2), p.27-31(2004) ; (JAEA-J 00686)

 本研究ではPu, Am原子で置換したMgOについて電子状態計算を行い、特に6d, 5f電子がどのように化学結合に関与するかを詳しく検討することを目的としている。計算方法には、相対論DV-DFS法を用いた。Mgをアクチノイドで置換すると、基盤MgOのイオン結合性が弱くなり、広い範囲にわたって電荷移動が起こることが推測された。また、MgO中でのAn間の有効電荷を比較すると、Pu原子がよりイオン性が大きいということがわかった。An-Oの結合の安定性を決める指標としては、An6d-O2pの結合性、及び、An5f-O2pのHOMO付近の反結合性という2つの因子が重要ではないかと考えた。


34000564
Operational progress of the 110GHz-4MW ECRF heating system in JT-60U
藤井 常幸; 関 正美; 森山 伸一; 寺門 正之; 篠崎 信一; 平内 慎一; 下野 貢; 長谷川 浩一; 横倉 賢治; JT-60チーム
Journal of Physics: Conference Series 25, p.45-50(2005) ; (JAEA-J 00687)

 JT-60U電子サイクロトロン波帯(ECRF)加熱装置は高性能プラズマの実現のために活用されている。その出力は周波数110GHzで4MWである。JT-60U ECRF加熱装置で使用するジャイロトロンの出力は、そのアノード電圧を制御することで、制御できる。これを利用して、プラズマへの入射パワーを変調するために、アノード電圧制御器を開発し、出力0.7MWで、変調周波数10〜500Hzを達成した。また、このアノード電圧制御器を使用して、入射パルス幅を5秒から16秒まで伸長することに成功した。このような長パルスにおいて、アルミナ製のDCブレークの最大温度は約140度に達した。これを解析した結果、目標とするパルス幅30秒を実現するには、DCブレークの材料を低損失の材料に変更する必要があることが判明した。実時間制御でのECRF加熱による新古典テアリングモードの安定化を実証した。この実時間制御系では、ECE計測より10msごとに予測されるNTM発生領域を狙って、ECRFビームが入射される。


34000565
Coupled electron and atomic kinetics through the solution of the Boltzmann equation for generating time-dependent X-ray spectra
Sherrill, M. E.*; Abdallah Jr., J.*; Csanak, G.*; Kilcrease, D. P.*; Dodd, E. S.*; 福田 祐仁; 赤羽 温; 青山 誠; 井上 典洋*; 上田 英樹; 山川 考一; Faenov, A. Y.*; Magunov, A. I.*; Pikuz, T. A.*; Skobelev, I. Y.*
Journal of Quantitative Spectroscopy & Radiative Transfer 99(1-3), p.584-594(2006) ; (JAEA-J 00688)

 本研究では、電子分布関数が非熱的、かつ、イオンの内部状態が非定常であるような極めて非平衡なプラズマ中における電子と原子のキネティクスを自己無矛盾に解くモデルを開発した。このモデルを用いて、原研100TWレーザーを用いて測定されたArクラスターからのK殼X線スペクトル(Heα線)の解析を行った。


34000566
X-ray photoelectron spectroscopic observation on B-C-N hybrids synthersized by ion beam deposition of borazine
Uddin, M. N.; 下山 巖; 馬場 祐治; 関口 哲弘; 永野 正光*
Journal of Vacuum Science and Technology A 23(3), p.497-502(2005) ; (JAEA-J 00689)

 B-C-Nハイブリッドは新奇半導体材料として注目されており、これまでさまざまな合成方法が試みられてきた。しかし合成された試料の多くはグラファイトと窒化ホウ素(BN)の混晶とともにさまざまな化合物を含み特定の結晶構造をもった単一成分の合成に成功した例はまだない。したがって合成方法の開発はまだ発展段階にある。われわれはイオン注入法を用いてその合成を試み、生成物のキャラクタリゼーションをX線光電子分光法(XPS)を用いて行った。イオン注入の供給ガスとしてはボラジン(B3N3H6)を用い、室温,600℃、及び850℃の3つの温度でグラファイトにイオン注入を行った。各温度におけるさまざまなイオンフルエンスで測定されたXPSスペクトルにおいてB-C, B-N, N-C、及びB-C-N結合形成が観測された。これらの結合状態は基板温度とイオンフルエンスに大きく依存し、B-C-Nハイブリッド成分が高温,低フルエンスにおいて成長したことから、温度・フルエンスによりB-C-Nの組成を制御することが可能であることを示した。


34000567
Soft X-ray absorption magnetic circular dichroism study of ferromagnetic superconductor UGe2
岡根 哲夫; 岡本 淳*; 間宮 一敏*; 藤森 伸一; 竹田 幸治; 斎藤 祐児; 村松 康司*; 藤森 淳*; 芳賀 芳範; 山本 悦嗣; 田中 新*; 本間 徹生*; 稲田 佳彦*; 大貫 惇睦*
Journal of the Physical Society of Japan 75(2), p.024704_1-024704_5(2006) ; (JAEA-J 00690)

 圧力下で超伝導と強磁性を示すUGe2の常圧下での磁性状態を軟X線吸収磁気円二色性(XMCD)測定により調べた。XMCDデータにサム・ルールを適用して磁気モーメントのスピン成分と軌道成分の比を求め、その結果からUGe2中のウランは4価より3価に近い価数状態にあることを明らかにした。またウランの6d電子の磁性への寄与は5f電子の磁性への寄与に比べて無視できるくらい小さいことを実験的に明らかにした。


34000568
Rattling of Pr in heavy-fermion superconductor PrOs4Sb12 revealed by neutron powder diffraction
金子 耕士; 目時 直人; 松田 達磨; 神木 正史*
Journal of the Physical Society of Japan 75(3), p.034701_1-034701_5(2006) ; (JAEA-J 00691)

 PrOs4Sb12について、8Kから室温までの粉末中性子回折実験を行い、Pr原子の熱振動状態について明らかにするとともに、オフセンターサイトの可能性を調べた。リートベルト解析により、観測された粉末回折パターンをよく再現することができた。その結果、Prの熱振動状態を示す等方性原子変位パラメーターとして、室温でUPr=0.0344Å2と非常に大きな値が得られた。7.7KにおいてもUPrはOs, Sbと比べて2倍以上大きいことを明らかにした。UPrの大きな温度変化は、構造相転移やSbのカゴの変化を伴っていない。大きなUPrの値やその強い温度依存性は、Sbカゴ中の浅いポテンシャルにいるPrイオンのラットリングの存在を強く示唆している。Prサイトについて(x 0 0)を導入することで、オフセンターサイトを近似し、その存在の可能性を調べたが、オフセンターサイトの導入は、解析の向上にはつながらなかった。


34000569
Ground-state band of the neutron-rich transuranium nucleus 250Cm154
石井 哲朗; 重松 宗一郎; 牧井 宏之; 浅井 雅人; 塚田 和明; 豊嶋 厚史; 松田 誠; 牧嶋 章泰*; 静間 俊行; 金子 順一*; Hossain, I.*; 當銘 勇人*; 小原 雅子*; 市川 進一; 河野 俊之*; 小川 雅生*
Journal of the Physical Society of Japan 75(4), p.043201_1-043201_4(2006) ; (JAEA-J 00692)

 248Cm標的と162MeVの18Oビームによる2中性子移行反応を利用したインビームγ線分光により、中性子過剰の超ウラン元素250Cmの基底状態バンドをスピン12まで確立した。250Cmの脱励起γ線は、Si ΔE-E検出器を用いて16O粒子の運動エネルギーを選択することにより同定した。250Cm154の慣性能率は、248Cm152の慣性能率よりもかなり小さいことが明らかになった。この結果は、CmにおいてN=152が変形閉殻構造を有することを支持している。


34000570
Chemical modification of the internal surfaces of cylindrical pores of submicrometer size in poly(ethylene terephthalate)
前川 康成; 鈴木 康之; 前山 勝也*; 米澤 宣行*; 吉田 勝
Langmuir 22(6), p.2832-2837(2006) ; (JAEA-J 00693)

 イオン穿孔膜のナノリアクターやナノ分離膜への応用を目的として、PET膜へのイオンビーム照射により作製したイオン穿孔膜の直径が200〜800nmの微細孔について、その内壁の化学修飾法による表面特性の制御を試みた。微細孔内壁と同じ構造の膜表面をモデルとして、蛍光色素を有する4-(bromomethyl)-6,7-dimethoxy-coumarin(BrCU)を用いて、膜表面の接触角変化と蛍光強度変化よりアルキル化反応の最適条件を確定した。反応溶液を強制的に導入することで、イオン穿孔膜の微細孔内壁のアルキル化反応を試みた。その蛍光,励起スペクトルともに強度が微細孔内壁の表面積に比例して増加することから、内壁表面のアルキル化反応が進行していることがわかった。さらに、蛍光顕微鏡測定において、イオン穿孔膜の孔径210nmの微細孔に対応した位置から蛍光が観察できたことから、蛍光色素がイオン穿孔膜内に化学固定化できることが確認できた。


34000571
X-ray emission from multi-inner-shell excited states produced by high-intensity short-pulse X-rays
森林 健悟; Lee, K.*; 香川 貴司*; Kim, D. E.*
Laser Physics 16(2), p.322-324(2006) ; (JAEA-J 00694)

 多重内殻電離過程を用いた短パルス高強度X線の(1)強度,(2)パルス幅測定法の提案に関して講演を行う。(1)強度測定:高輝度短パルスX線源によるSi原子への照射の原子過程を取り扱った。2p電子がすべて電離した中空原子(1s22s23s23p2)と2p電子が1つだけ残っている多重内殻励起状態(1s22s22p3s23p2)から発生するX線数の比は、照射X線源のパルス幅にほとんど依存せず、その強度のみに依存することがわかった。これにより、多重内殻電離状態から発生するX線が高輝度短パルスX線源の強度測定に利用できる可能性があることを示した。(2)パルス幅測定:2つの短パルスX線をΔtの時間間隔だけあけて照射し多重内殻励起からのX線数の計算を行った。多重内殻励起の生成は、多X線吸収、すなわち、X線非線形過程で生じることを用いて2つのX線パルスの重なりによるX線数の違いからパルス幅の測定ができる可能性を探った。この方法は、X線パルス幅よりも十分短い時定数の自動イオン化状態を持つ標的に対して有効であることが明らかとなった。


34000572
Method for detecting DNA strand breaks in mammalian cells using the Deinococcus radiodurans PprA protein
佐藤 勝也*; 和田 成一; 菊地 正博; 舟山 知夫; 鳴海 一成; 小林 泰彦
Mutation Research; Fundamental and Molecular Mechanisms of Mutagenesis 596(1-2), p.36-42(2006) ; (JAEA-J 00695)

 われわれは、過去の研究で、デイノコッカス・ラジオデュランスの放射線耐性に重要な役割を果たしている新規タンパク質PprAを同定した。この研究では、哺乳動物細胞のDNA損傷応答を評価するために、鎖切断を持つ2本鎖DNAを認識して結合するというPprAタンパク質の性質に着目し、放射線で生じるDNA鎖切断を免疫蛍光法で可視化する技術の開発を試みた。放射線照射直後におけるCHO-K1細胞核へのPprAタンパク質の結合の増加は、このタンパク質がDNA鎖切断部位に結合していることを示唆している。また、細胞の脆弱化条件を変えることで、放射線照射直後のCHO-K1細胞のミトコンドリアDNAへのPprAタンパク質の結合を検出することも可能であった。今回開発した方法は、培養細胞のDNA損傷応答の評価に有用であるとともに、環境や薬学分野における遺伝毒性試験にも応用可能であると考えられる。


34000573
Electron cyclotron heating assisted startup in JT-60U
梶原 健*; 池田 佳隆; 関 正美; 森山 伸一; 及川 聡洋; 藤井 常幸; JT-60チーム
Nuclear Fusion 45(7), p.694-705(2005) ; (JAEA-J 00696)

 JT-60Uにおいて電子サイクロトロン加熱(ECH)を用いた予備電離によるプラズマ電流立ち上げ実験を行った。プラズマ着火時に最大値をとる周回電圧を200kWのECHにより30Vから4Vまで引き下げることに成功した。この時の電場は0.26V/mであり、ITERで必要とされる0.3V/m以下の条件を満たしている。また、予備電離によるプラズマ立ち上げ特性を調べるために、初期封入ガス圧,共鳴位置,偏波角度,入射位置を変えてその依存性を取得した。これまで小,中型トカマクでの実験からECH予備電離でのプラズマ立ち上げ特性は入射位置及び偏波角度に依存しないと言われていたが、大型トカマクにおいては依存性があることを明らかにした。さらに、2倍,3倍の高調波による予備電離の実験では、2倍高調波では800kWのECHによりプラズマ電流は立ち上がり、3倍の高調波では1.6MWのECHに7MWの中性粒子加熱を加えても立ち上がらないことが判明した。


34000574
Observation of ion-irradiation induced diffusion in Pd-Si system using synchrotron radiation X-ray photoelectron spectroscopy
岩瀬 彰宏*; 知見 康弘; 石川 法人; 中谷 力造*; 加藤 雄三郎*; 福住 正文*; 土田 秀次*; 馬場 祐治
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 245(1), p.141-144(2006) ; (JAEA-J 00697)

 高エネルギーイオン照射下でのPd-Si系におけるPd中のSi原子の拡散について、放射光X線光電子分光法を用いて調べた。試料は、Si単結晶上にPdを堆積させて作製した。Pd層の厚さは10-300nmであった。照射前には、Pdのみの光電子スペクトルが観測され、Siは全く観測されなかった。3MeV Si, 1MeV O又は200MeV Xeイオンを照射すると、バルクSiの1s電子の結合エネルギーより約3eV高いところに付加的な光電子スペクトルの成分が現れた。この結果は、高エネルギーイオン照射によってSi-Pd界面からPd層表面までのSi原子の拡散が誘起されたことを示唆している。結合エネルギーのシフトは、SiからPdへの電子の移動に起因していると解釈される。イオン照射誘起拡散を反映した光電子スペクトルのイオン種及びイオン照射量依存性について議論する。


34000575
Effects of swift heavy ion irradiation on magnetic properties of Fe-Rh alloy
福住 正文*; 知見 康弘; 石川 法人; 鈴木 基寛*; 高垣 昌史*; 水木 純一郎; 小野 文久*; Neumann, R.*; 岩瀬 彰宏*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 245(1), p.161-165(2006) ; (JAEA-J 00698)

 Fe-50at.%Rh合金の高速重イオン照射を室温で行った。照射前後に、磁気特性を超伝導量子干渉計(SQUID)で、結晶構造をX線回折計(XRD)でそれぞれ測定した。また、試料表面近傍での照射誘起強磁性状態を評価するために、大型放射光施設SPring-8においてFe K吸収端近傍のX線磁気円二色性(XMCD)測定を行った。その結果、反磁性−強磁性転移温度以下でも高速重イオン照射によって強磁性状態が誘起され、そのときに格子が0.3%伸びることがわかった。照射した試料では強磁性に相当するXMCDスペクトルが得られ、これが照射イオンの質量や照射量に依存していることがわかった。電子励起及び弾性衝突によるエネルギー損失がFe-Rhの結晶格子及び磁気構造に与える影響について議論する。


34000576
Effect of high-energy ion irradiation on magnetic properties in Fe-Pt invar alloys
小野 文久*; 金光 裕昭*; 松島 康*; 知見 康弘; 石川 法人; 神原 正*; 岩瀬 彰宏*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 245(1), p.166-170(2006) ; (JAEA-J 00699)

 規則化及び不規則化したFe-28.3at.%Pt合金試料に200MeV Xeイオンを1014ions/cm2の照射量まで照射した。各試料について照射前後に交流磁化率高速測定装置を用いて交流磁化率−温度曲線を測定した。以前のFe-Ni合金での結果からの予想に反して、不規則化したFe-Ptインバー合金ではキュリー温度(Tc)が照射により約15K低下した。このことは格子膨張の効果を考慮するだけでは説明できない。Fe-Ptインバー合金では格子膨張の効果が、合金構成元素間の原子質量の大きな差に起因する何か他の効果によってキャンセルされている可能性がある。規則化したFe-Pt合金では、同じ照射量でTcは60Kも低下した。規則化及び不規則化したFe-Pt試料でのTcの値は照射後に一致した。これは照射により規則化状態が不規則化したと考えることで説明できる。


34000577
Swift heavy ion irradiation effects in nanocrystalline gold
知見 康弘; 岩瀬 彰宏*; 石川 法人; 小檜山 守*; 稲見 隆*; 神原 正*; 奥田 重雄*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 245(1), p.171-175(2006) ; (JAEA-J 00700)

 金ナノ結晶での欠陥蓄積における高速粒子照射効果を調べた。種々の結晶粒径(23〜156nm)の金ナノ結晶箔試料(厚さ3〜5μm)を、ガスデポジション法とその後の熱処理により作製した。60MeV 12Cイオン,3.54GeV 136Xeイオン及び2.0MeV電子線を低温で試料に照射した。照射中の電気抵抗率変化をその場測定することにより、欠陥蓄積挙動を観測した。電気抵抗率変化の照射量依存性を解析した結果、欠陥生成断面積(σd)及び欠陥消滅断面積(σr)が結晶粒径の減少とともに単調増加することがわかった。このことは、金多結晶よりも弾き出しエネルギーの閾値(Ed)が低くなっていると考えられる金ナノ結晶での結晶粒界近傍領域の体積分率が大きいことに起因することを示している。また、金ナノ結晶での電子励起効果の可能性についても議論する。


34000578
Microstructure and atomic disordering of magnesium aluminate spinel irradiated with swift heavy ions
山本 知一*; 島田 幹夫*; 安田 和弘*; 松村 晶*; 知見 康弘; 石川 法人
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 245(1), p.235-238(2006) ; (JAEA-J 00701)

 高速重イオン(200MeV Xe14+及び350MeV Au28+)を照射したマグネシア−アルミナ系スピネル(MgOnAl2O3(n=1.1及び2.4))の微細構造変化と原子配列の不規則化過程について調べた。透過型電子顕微鏡による明視野像と高分解能像、及び高角度分解能電子チャンネリングX線分光法(HARECXS)を用いて照射誘起構造変化の定量分析を行った。イオン入射面の明視野像では、直径4〜7nmの円柱状の黒いコントラストが観測された。複数のイオントラックが隣接して生成された場合には強い歪コントラストが見られた。また高分解能像では、イオントラック内においても鮮明な格子像が観測された。このことは、スピネル結晶はイオントラックに沿って部分的に不規則化しており、アモルファス化していないことを示している。HARECXS法による定量分析では、陽イオンの不規則化がイオン照射量に伴って進行しており、不規則化領域はイオントラックに沿った直径12±2nmの範囲に広がっていることがわかった。これは明視野像や高分解能像で観測されたイオントラックの大きさより広範囲である。


34000579
Influence of uranium enrichment on the etching rate of polycarbonate fission track detector containing uranium particles
Lee, C. G.; 井口 一成; 江坂 文孝; 間柄 正明; 桜井 聡; 渡部 和男; 臼田 重和
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 245(2), p.440-444(2006) ; (JAEA-J 00702)

 保障措置環境試料中の極微細ウラン粒子の検出法として有効なフィッショントラック(FT)法では、ウラン粒子の検出効率は検出器の化学エッチング条件に大きく依存する。本研究では、核分裂性粒子含有FT検出器のエッチング挙動を調べる目的で、ウラン粒子を閉じこめたポリカーボネート製FT検出器を作製し、エッチング速度に対するウラン濃縮度の影響を調べた。エッチング速度は、エッチングによる検出器の重量変化から評価した。全体に、検出器の重量変化はウラン粒子の濃縮度に大きく依存し、高濃縮度のウラン粒子を含む検出器ほど重量減少は大きい。検出器の重量減少の挙動から、エッチング速度が異なる二つ領域の存在が明らかになった。エッチング初期の非線形挙動は、すべての検出器において飛跡が最初に現れるエッチング時間が非線形領域内にあることから、おもに飛跡の出現によると考えられる。その後の直線的な挙動は、出現した飛跡の拡大に対応している。また、粒子1個あたりに換算したエッチング速度は(濃縮度)2/3に比例することがわかった。このような飛跡のエッチング挙動とウラン粒子の濃縮度との相関を利用することにより高濃縮度のウラン粒子だけを優先的に検出可能であることが示唆された。


34000580
Positron study of electron irradiation-induced vacancy defects in SiC
河裾 厚男; 吉川 正人; 伊藤 久義; Krause-Rehberg, R.*; Redmann, F.*; 樋口 高年*; 別役 潔*
Physica B; Condensed Matter 376-377, p.350-353(2006) ; (JAEA-J 00703)

 電子線照射によって立方晶及び六方晶SiC中に生成する原子空孔を陽電子消滅による電子運動量分布測定と理論的解析を通じて同定した結果について報告する。立方晶SiCでは、孤立シリコン空孔が主たる陽電子捕獲サイトであり、格子緩和の効果で陽電子寿命が増加していること、及び局所的な四面体対称性によりその電子運動量分布が説明できることが明らかになった。一方、六方晶SiCでは孤立シリコン空孔が熱回復した後も残留する新たな空孔型欠陥が、c軸に沿って不対電子を有していること、及び炭素1s内殻電子軌道と陽電子の消滅頻度が増加することから、炭素空孔−アンチサイト炭素複合欠陥であることが明らかになった。


34000581
Defect layer in SiO2-SiC interface proved by a slow positron beam
前川 雅樹; 河裾 厚男; 吉川 正人; 宮下 敦巳; 鈴木 良一*; 大平 俊行*
Physica B; Condensed Matter 376-377, p.354-357(2006) ; (JAEA-J 00704)

 ドライ酸化SiO2/4H-SiC界面には多くの欠陥が含まれていると言われているが、陽電子消滅法を用いて欠陥の構造評価を行った。ドップラー幅測定からは、SiO2/4H-SiC界面にはSiO2やSiCとは明白に区別される欠陥を多く含んだ界面層が存在することが明らかとなった。界面層での陽電子消滅寿命測定からは、構造がアモルファスSiO2に類似した比較的空隙を持つ構造であることがわかった。界面層での電子運動量分布測定と第一原理計算による陽電子消滅特性のシミュレーションとの比較より、陽電子は空隙に存在する酸素価電子と対消滅していることが示唆された。酸化後の加熱焼鈍による酸素価電子との消滅確率の減少は、界面準位密度の減少と同じ温度領域で起こることから、界面準位の起源となる欠陥構造は陽電子を捕獲する欠陥構造と強く関連していることが示唆された。


34000582
Direct numerical simulations for non-equilibrium superconducting dynamics and related neutron detection in MgB2
町田 昌彦; 小山 富男*; 加藤 勝*; 石田 武和*
Physica C 426-431(1), p.169-173(2005) ; (JAEA-J 00705)

 最近発見されたMgB2超伝導体は、主要構成元素としてB(ボロン)を含むため、中性子をよく吸収するため、超伝導の熱に対する鋭敏な特性を利用した中性子検出器の開発が期待されている。本講演では、この中性子検出過程を直接数値シミュレーションし、検出可能となる条件を明らかにする。特に、重要なファクターとして時空間分解能について直接数値シミュレーションから得られた結果を報告する。


34000583
Josephson half-quantized vortices in long square π junctions around d-dot
町田 昌彦; 小山 富男*; 加藤 勝*; 石田 武和*
Physica C 426-431(2), p.1566-1571(2005) ; (JAEA-J 00706)

 高温超伝導体の超伝導波動関数の対称性は、金属超伝導体のそれと違っているため、高温超伝導体と金属超伝導体の界面では、波動関数の位相の干渉が起こる。こうして、正方形の高温超伝導体を金属超伝導体に埋め込んだ場合には、4つの頂点に量子数1/2の量子磁束が自発的に現れることが知られている。本講演では、この正方形の高温超伝導体をアレイ状に並べた場合に現れる半磁束のパターンを数値シミュレーションした結果を発表する。シミュレーションによると、半磁束のパターンは、アレイを適当に配置することにより二次元イジングモデル,アイススピンモデル、そしてDNAと等価なものを作ることができるということを示した。この結果は、アレイを適当に設計することでほとんど任意の演算デバイスを作ることができることを意味しており、デバイス応用への今後の著しい発展が期待できる。


34000584
Molecular dynamics simulations of lanthanide(III) diphenyldimethylpyridinyl-dicarboxyamide complexes in water and in methanol; Evidence for both first and second sphere complexes
Dobler, M.; 平田 勝
Physical Chemistry Chemical Physics 6(8), p.1672-1678(2004) ; (JAEA-J 00707)

 3価ランタノイドイオンとピリジンジカルボキシアミドとの錯形成反応を分子動力学シミュレーション(AMBER)を用いて解析した。得られた安定構造として、水和したランタノイドイオンの外側にピリジンジカルボキシアミドが配位する外圏型錯体が比較的安定であることがわかった。


34000585
Antiferromagnetic-to-ferromagnetic transition induced by diluted Co in SrFe1-xCoxO3:Magnetic circular X-ray dichroism study
岡本 淳*; 間宮 一敏*; 藤森 伸一; 岡根 哲夫; 斎藤 祐児; 村松 康司*; 吉井 賢資; 藤森 淳*; 田中 新*; Abbate, M.*; 小出 常晴*; 石渡 晋太郎*; 川崎 修嗣*; 高野 幹夫*
Physical Review B 71(10), p.104401_1-104401_5(2005) ; (JAEA-J 00708)

 SrFe1-xCoxO3での反強磁性−強磁性転移(xc〜0.15)が電子構造へ及ぼす影響を軟X線内殻吸収磁気円二色性を用いて研究した。総和側から導いたFe 3d状態とCo 3d 状態の軌道及びスピン磁気モーメントは異なるドーピング依存性を示した。Fe 3dのスピン磁気モーメントはCoドープにしたがって徐々に増大するのに対し、Co 3dのスピン磁気モーメントは反強磁性状態において既に揃っていた。このことから、Feの磁気モーメントがCoの磁気モーメントによって揃えられることで強磁性−強磁性転移が生じていることが示された。


34000586
Ga NMR study of UGa3; Antiferromagnetically ordered state
神戸 振作; Walstedt, R. E.; 酒井 宏典; 徳永 陽; 松田 達磨; 芳賀 芳範; 大貫 惇睦
Physical Review B 72(18), p.184437_1-184437_8(2005) ; (JAEA-J 00709)

 スピン−格子緩和時間T1の温度依存をUGa3の常磁性及び反強磁性状態で測定した。反強磁性転移温度に加え62KでもT1の極小が見られた。これは2次相転移が2つの温度で連続して起きていることを明確に示唆している。69Gaと71Gaの同位体でのT1測定からこの点移転付近での揺らぎは磁気的であることがわかった。2つの相転移の性質について議論する。


34000587
A Mutation in the uvi4 gene promotes progression of endo-reduplication and confers increased tolerance towards ultraviolet B light
長谷 純宏; Trung, K. H.*; 松永 司*; 田中 淳
Plant Journal 46(2), p.317-326(2006) ; (JAEA-J 00711)

 新しいシロイヌナズナの紫外線耐性変異体uvi4を単離しその特徴を解析した。B領域紫外線を付加した条件下でのuvi4植物体の生育量は野生型の2倍以上であった。紫外線によって生成されるシクロブタン型ピリミジン二量体の修復能並びに葉に含まれる紫外線吸収物質の量は植物の紫外線耐性に重要であることが知られているが、uvi4変異体では、いずれも野生型と差が見られなかった。UVI4遺伝子は新規の塩基性タンパクをコードしていることが明らかになった。われわれは、 uvi4変異体の胚軸では核内倍加が1回多く進むことを見いだした。 uvi4変異体の葉においても核内倍加の促進が確認された。 UVI4遺伝子は細胞分裂が盛んな組織で強く発現していた。葉の発達過程においては、 UVI4遺伝子の発現は求基的に消失した。葉全体の面積は発達過程を通して uvi4変異体と野生型との間で差がみられなかったが、表皮細胞の平均面積は uvi4変異体で有意に大きいことから、 uvi4では細胞数が少なくかつ細胞が大きいことがわかった。これらの結果から、 UVI4が細胞の分裂状態の維持に必要であり、遺伝子の変異によって核内倍加が促進されることが示唆された。四倍体のシロイヌナズナは二倍体のシロイヌナズナに比べて紫外線に耐性であり、このことは、 uvi4変異体での核内倍加の促進が紫外線耐性の原因であることを支持する。


34000588
Physics of strong internal transport barriers in JT-60U reversed-magnetic-shear plasmas
林 伸彦; 滝塚 知典; 坂本 宜照; 藤田 隆明; 鎌田 裕; 井手 俊介; 小出 芳彦
Plasma Physics and Controlled Fusion 48(5A), p.A55-A61(2006) ; (JAEA-J 00712)

 JT-60U負磁気シアプラズマにおける強い内部輸送障壁(ITB)構造の物理機構を、1.5次元輸送シミュレーションにおけるモデリングにより調べた。箱型ITBの実験データベースに基づいた2つの比例則を生ずる物理を明らかにした。狭いITB幅がイオンポロイダルジャイロ半径に比例する比例則には、(1)輸送が負磁気シア領域で急に新古典輸送になり,(2)新古典輸送とブートストラップ電流を通して圧力と電流分布が自律的に形成され,(3)正磁気シア領域で新古典と異常輸送の差が大きい、ことが重要であることがわかった。一方、ITB内の閉じ込めエネルギー比例則は、閉じ込めエネルギーがMHD平衡による特定の飽和値に達していることを意味し、輸送や駆動電流に関係なく大きなポロイダル磁場非対称性がある強い負磁気シアプラズマで箱型ITBが形成されると成り立つことがわかった。


34000589
Long pulse operation of high performance plasmas in JT-60U
井手 俊介; JT-60チーム
Plasma Science and Technology 8(1), p.1-4(2006) ; (JAEA-J 00713)

 ITER先進運転や定常核融合炉の開発に向けた、JT-60における高性能プラズマ開発とその長時間化について以下に示す結果について報告を行う。正磁気シアプラズマにおける、新古典テアリングモードを伴わない高規格化圧力(〜3)の6.2秒間維持。自発電流割合〜45%の弱磁気シアプラズマを、ほぼ完全電流駆動状態で5.8秒間維持。高自発電流割合〜75%の負磁気シアプラズマを、ほぼ完全電流駆動状態で7.4秒間維持。長時間放電における、高規格化圧力(=2.3)の22.3秒間維持。また同時に、これらの成果の先進トカマク開発における意義付けや課題について議論を行う。


34000590
Switch interactions control energy frustration and multiple flagellar filament structures
北尾 彰朗*; 米倉 功治*; 米倉 さおり*; Samatey, F.*; 今田 勝巳*; 難波 啓一*; 郷 信広
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 103(13), p.4894-4899(2006) ; (JAEA-J 00714)

 細菌べん毛繊維は一種類の蛋白質フラジェリンが会合してできた生体超分子であり、細菌の運動はべん毛モーターのトルクによって誘起されるべん毛繊維の左巻き−右巻き超らせん構造転移によって制御される。われわれは、大規模分子動力学シミュレーションによってさまざまな実験データを満足する原子レベルの超らせん構造を構築するとともに、構造多型の分子メカニズムを解明することに成功した。超らせん構造構築のメカニズムには以下の3種類の相互作用が鍵となることがわかった。パーマネント相互作用はさまざまな超らせん構造において常に保たれる。スライディング相互作用は可変な疎水性及び親水性アミノ酸残基ペアの間で形成され、大きなエネルギー変化なしに蛋白質サブユニット間のずれを許容する。スイッチ相互作用の形成と解消はサブユニット間相互作用とサブユニット内相互作用をそれぞれ安定化する。われわれは構造多型の原因は両者の相互作用のフラストレーションであると結論付けた。超らせん構造間の転移は「変形=>緩和」機構によって起こる。すなわち、繊維構造は幾何学的に急速に変形させられ、その後相互作用を再構成しながら徐々にエネルギー的準安定状態へ緩和することを明らかにした。


34000591
Compact antenna for two-dimensional beam scan in the JT-60U electron cyclotron heating/current drive system
森山 伸一; 梶原 健*; 高橋 幸司; 春日井 敦; 関 正美; 池田 佳隆; 藤井 常幸; JT-60チーム
Review of Scientific Instruments 76(11), p.113504_1-113504_6(2005) ; (JAEA-J 00715)

 JT-60Uにおいて、電子サイクロトロン周波数帯(ECRF)での加熱・電流駆動実験を行うことを目的とするECRF装置用の新しいアンテナを設計製作した。プラズマにミリ波ビームを入射する際、旧型のアンテナでは1方向のみのスキャンが可能であったが、新アンテナはトロイダル,ポロイダルの両方向にビームスキャンが可能である。ポロイダルスキャンでは電流駆動の位置を制御し、トロイダルスキャンでは駆動電流の方向を制御することができるため、実験の自由度を飛躍的に向上させることができる。真空容器に支持された可動平面鏡と、真空容器外から支持された導波管先端に取り付けた回転式焦点鏡の組合せによって2次元のビームスキャンを可能にした。あえて二つの鏡を分離して支持することで、設計の自由度を確保し、非常に浅いポートの限られた空間(20cm×54cm×20cm)で、最大限のスキャン角度範囲を実現した。平面鏡は3mの長尺ドライブシャフトを介してサーボモーター駆動し、焦点鏡はエアシリンダーで駆動することで、JT-60Uの強磁場環境下での動作を可能にした。焦点鏡ベアリングに関する小改造を行って以降、3年間実験に使用して、信頼性の高い動作を実証した。電流分布制御をはじめとするECRF加熱・電流駆動実験に貢献している。


34000592
Consumption kinetics of Si atoms during growth and decomposition of very thin oxide on Si(001) surfaces
小川 修一*; 吉越 章隆; 石塚 眞治*; 寺岡 有殿; 高桑 雄二*
Thin Solid Films 508(1-2), p.169-174(2006) ; (JAEA-J 00716)

 Si(001)表面極薄酸化膜の成長とその後の分解過程における表面凹凸の変化をオージェ電子分光(AES)機能の付随した高速電子線回折(RHEED)で実時間観察し、さらに、走査トンネル顕微鏡(STM)で巨視的に観察した。RHEED観察から、690℃での二次元島成長モードでは表面のエッチングがシリコンの核化とその二量体の欠陥の横広がりで起こることが明らかになった。一方で、酸化膜は709℃では分解し、ステップフローモードでSi原子が消費される。しかし、酸化膜が一部分解した表面のSTM像ではステップフローエッチングではなく、ボイドの中の平坦なテラスに直径が10-20オングストロームのSi島が多く見られた。これらの結果はSiクラスターとSiO2の中間的な二次元島成長でできたSiリッチな酸化膜の相分離とその分解過程におけるテラス上でのSiの析出を意味している。


34000593
ナノデバイス解析のための粗視化粒子; 分子動力学ハイブリッドシミュレーション法
五十嵐 誉廣; 尾形 修司*
物性研究 86(1), p.1-36(2006) ; (JAEA-J 00717)

 大規模系に対する解析手法として、粗視化粒子/分子動力学ハイブリッド法の開発を行った。粗視化粒子法では、原子の情報を統計平均を取ることで粗視化点にくりこみ粗視化点の剛性マトリクスを得る。粗視化粒子法の変換には近似が含まれておらず第一原理的に剛性マトリクスを得ることができるので、他の粗視化法と比較して精度が良いという特徴を持つ。本研究ではオリジナルの粗視化粒子法に含まれる計算コスト,系の平行移動,系の回転の問題を解決し、応用性を高めた修正粗視化粒子法の開発を行い、計算精度の検証を行った。次に修正粗視化粒子法と古典分子動力学法を接続した粗視化粒子/分子動力学ハイブリッド法の開発を行った。接続にはbuffered-cluster法を用い、粗視化比率の変化部位については修正粗視化粒子法を各領域について適用する手法を採用した。最後に、粗視化粒子/分子動力学ハイブリッド法を用いた応用例として、アルゴン薄板系の弾性波伝播解析とα鉄系の構造解析を行った。本研究で得られたこれらの結果と古典分子動力学法の結果を比較検討し、粗視化粒子/分子動力学ハイブリッド法の有用性を議論する。


34000594
大洗研究開発センターにおける放射性廃棄物管理
前多 厚; 木幡 幸一; 山崎 保夫; 高橋 孝三; 大久保 利行; 宮崎 仁
デコミッショニング技報 (33), p.58-66(2006) ; (JAEA-J 00718)

 原子力機構では、自らの原子力施設の廃止措置及び放射性廃棄物の処理・処分を、原子力施設の設置者及び放射性廃棄物の発生者としての責任において計画的かつ効率的に進めていく。 研究開発拠点の一つである大洗研究開発センターにおける放射性廃棄物管理について現状を報告する。大洗研究開発センターの廃棄物管理施設では、安全確保を大前提に、契約により大洗地区の原子力事業者から受け入れたものも含め、低レベル放射性廃棄物の廃棄物管理を実施している。固体廃棄物の焼却,圧縮,液体廃棄物の固化等の減容,安定化,廃棄物の保管管理を着実に進め、将来処分まで適切に保管管理している。


34000595
外国における食品照射の現状; 世界から取り残された日本
久米 民和
エネルギーレビュー 26(5), p.23-26(2006) ; (JAEA-J 00719)

 世界の食品照射の現状について、各国における実施状況を紹介した。2006年1月のFAO/IAEAのデータベースでは、最新の許可品目リストとして、食品類を8つの項目に分類し、57か国が記載されている。全世界の照射食品の処理量は、1997年200,000トン,1998年210,000トン,1999年257,000トンと急速に増大しており、2005年には350,000トンに達すると推定されている。とくに香辛料の照射は照射食品全体の1/3を占め、1987年の8,000トンが1998年には80,000トンと10年間で10倍に増大し、2000年には約90,000トンに達している。米国が世界の半分を占めており、ベルギー,オランダ,フランス,南アフリカ,カナダ,メキシコ,韓国,中国なども照射量が多い。熱帯果実の検疫処理のための照射処理は、メチルブロマイドに代わる方法として実用化が進みつつあり、米国を中心とした今後の展開が注目される。


34000596
燃料電池用高分子電解質膜の開発; エネルギー・環境問題の解決に貢献する放射線プロセス技術
八巻 徹也; 浅野 雅春; 吉田 勝
Isotope News (623), p.2-7(2006) ; (JAEA-J 00721)

 本稿では、はじめに、高分子材料の加工技術として放射線による架橋とグラフト重合を概説し、次にこのような2つの放射線照射プロセスを組合せることで進めているPEFC用電解質膜の研究について現状を報告する。最後に、本研究における今後の展望とともに、エネルギー・環境問題への貢献と関連づけながら成果の拡がりについて述べる。


34000597
加速器駆動核変換用加速器への要求と開発の現状
水本 元治
加速器 3(1), p.74-92(2006) ; (JAEA-J 00723)

 原子力発電所の運転の結果生み出される長半減期の放射性核種を、短半減期あるいは安定な核種にする技術を実現するため、大強度陽子加速器と未臨界炉を一体化して核変換を行う加速器駆動システム(ADS)の開発が行われている。本レビューでは、現在設計が進められているADSシステムの概要,主要な開発項目である加速器への要求,加速器開発の現状などを記述した。


34000598
γ線架橋・グラフト反応を利用した燃料電池用フッ素系電解質膜の開発
澤田 真一; 八巻 徹也; 浅野 雅春; 吉田 勝
高分子論文集 63(3), p.149-159(2006) ; (JAEA-J 00724)

 ポリテトラフルオロエチレン膜に高温照射で架橋構造を付与し、スチレンを前照射後にグラフト重合して得た電解質膜は、Nafionと比べて2倍のプロトン伝導性と5倍のメタノール透過抑制能を示すことがわかった。次にこの電解質膜では十分でなかった耐酸化性を改善するとともに、メタノール透過抑制能をさらに向上させるため、疎水性基が置換したスチレン誘導体とグラフト鎖間を架橋させる働きを担う多官能性分子とをエチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)膜にグラフト共重合した後、室温下で放射線架橋させて電解質膜を合成した。得られた膜は従来のスチレングラフト電解質膜の6倍の耐酸化性と、Nafionの10倍のメタノール透過抑制能を示した。


34000599
高温ガス炉における制御棒引抜き試験解析の高度化
高松 邦吉; 中川 繁昭
日本原子力学会和文論文誌 5(1), p.45-56(2006) ; (JAEA-J 00725)

 高温工学試験研究炉(High Temperature engineering Test Reactor: HTTR)は原子炉出力30MW,原子炉出口冷却材温度(定格運転850℃/高温試験運転950℃)の黒鉛減速ヘリウムガス冷却型の高温ガス炉である。高温ガス炉の固有の安全性を定量的に実証するため、HTTRでは反応度投入事象として制御棒引抜き試験を実施している。従来の解析モデルを用いた1点炉近似による動特性解析では、制御棒引抜き事象を十分再現できないことが明らかになっている。本研究において、新たに領域別温度係数を用いて解析を行った結果、試験時の実測値を正確に再現することができ、高温ガス炉の動特性解析手法を高度化することができた。


34000600
高温ガス炉HTTRの高温試験運転における燃料温度の評価
栃尾 大輔; 角田 淳弥; 高田 英治*; 藤本 望; 中川 繁昭
日本原子力学会和文論文誌 5(1), p.57-67(2006) ; (JAEA-J 00726)

 日本原子力研究開発機構の高温ガス炉HTTRでは、2004年3月に高温試験運転を行い、世界初となる原子炉出口冷却材温度950℃を達成した。高温試験運転で燃料の熱的な健全性が確保されるためには、燃料温度が適正に設計・評価されており、燃料最高温度が熱的制限温度以下であることが必要となる。本報では、HTTRで用いられてきた燃料温度評価手法を改良し、実際の炉心形状に近い形状を表現した評価モデルを構築した。また、そのモデルを用いて、高温試験運転時における燃料温度の評価を行い、高温試験運転時の燃料最高温度が熱的制限温度以下であることの確認を行った。


34000601
回折効率解析プログラムの開発と最適選択則の検討
宮内 真二*; 小池 雅人
島津評論 62(3・4), p.193-199(2006) ; (JAEA-J 00729)

 回折効率に関する解析手法はさまざまなものが提案されてきたが、どの解析手法も計算精度を上げるためには、より細かな要素を設定したり、より高いフーリエ級数成分まで計算したりすることを避けることができない。一般的にそれらは巨大な行列問題に帰されることとなり、演算装置の能力(CPU速度,メモリー容量)により何がしかの制約を受けざるを得ないというのが現状である。本稿では、代表的な解析手法である厳密結合波解析(RCWA)と境界要素法(BEM)の理論を紹介する。そして、それぞれの解析手法に適した波長領域を理論的に考察し、実験や解析結果と比較することでその妥当性を明らかにする。


34000602
核融合炉用超伝導コイル試験装置の真空漏れ探索技術の開発
河野 勝己; 濱田 一弥; 奥野 清; 加藤 崇
低温工学 41(3), p.105-112(2006) ; (JAEA-J 00730)

 日本原子力研究開発機構は、核融合炉への超伝導コイルの適用を目指し、大型コイルの開発及び実験評価を行っている。超伝導コイルは、4Kまで冷却されるため、実験装置は、断熱及び電気絶縁を確保するため、高真空状態(10-5Pa以下)に維持する必要がある。超伝導コイルを収納する断熱真空容器内には、コイル本体,高圧ヘリウムが流れる配管、及び高電位であるコイルと低電位である冷却配管とを接続するFRP製電気絶縁継手が多数(100個程度)設置される。日本原子力研究開発機構では、これらの機器の漏れに対する健全性を確認するために、吸着剤を利用した10-9Pam3/s以下の高感度を有するヘリウム・リーク試験技術と、リーク発生時には場所特定ができる手法を確立し、実際の超伝導コイル・システムに適用し、これらのコイル実験を成功させてきた。論文では、開発したヘリウムリーク検査技術と実際の適用例を紹介する。


34000603
ITER中心ソレノイド用コンジット材料JK2LBの成分最適化
濱田 一弥; 中嶋 秀夫; 河野 勝己; 高野 克敏; 堤 史明; 奥野 清; 鈴木 富男; 藤綱 宣之*
低温工学 41(3), p.131-138(2006) ; (JAEA-J 00731)

 日本原子力研究開発機構(原子力機構)が神戸製鋼所と共同で開発した低温構造材料JK2(22Mn- 13Cr- 9Ni- 1Mo- 0.24N)鋼は強度,熱収縮率及び疲労特性の観点で、国際熱核融合実験炉(ITER)の中心ソレノイド(CS)導体用ジャケット材候補として期待されている。しかしながら、JK2は超伝導生成熱処理(時効)を前提としない構造材料として開発され、高炭素,高窒素化による高強度化が図られている。そのため、時効処理を施した場合、靱性が劣化すること,熱間圧延や鍛造工程において割れが生じるなど、製造性に課題があった。筆者らは、これらの問題を解決する一つのアイディアとして、ホウ素を添加すること及び炭素含有量を低下させることによる特性の改善を進めてきた。今回、ITERでは仕様内での成分のバラツキを考慮する必要があり、化学成分を変化させたサンプルを製作し、4Kでの機械特性を調査した。その結果、JK2LBの最適化学成分として、ホウ素:10-40ppm,炭素:0.03%以下,窒素:0.17-0.23%を見いだした。また、実機応用への足がかりとして、JK2LBの疲労亀裂進展速度の測定結果をもとに疲労寿命を評価し、CSへの適用が可能であることを示した。


34000604
スーパーインシュレータ(ポリイミド及びポリエステル)のγ線照射後のガス生成量と機械的特性
勅使河原 誠; 草野 譲一; 森下 憲雄; 前川 藤夫; 加藤 崇; 細山 謙二*; 原 和文*; 小島 裕二*
低温工学 41(3), p.99-104(2006) ; (JAEA-J 00732)

 大強度陽子加速器計画(J-PARC)の中心的実験施設として物質・生命科学実験施設と呼ばれる世界最高強度の核破砕中性子源施設が建設されている。この施設では、1MWの陽子ビームを水銀ターゲットに入射し、核破砕反応によって発生した中性子のエネルギーを減速させ、遅い中性子のビームとして実験に供与する。中性子の減速に超臨界水素(温度:20K,圧力:20気圧)のモデレータを用いる。超臨界水素を供給する水素輸送ラインに断熱材としてスーパーインシュレータ(SI)を用いるが、放射線に晒され、その放射線損傷(機械的強度劣化,ガス生成量等)が問題となる。そこで、ポリイミド(PI)及びポリエステル(PET)のSIについてγ線照射を行い、その後のガス生成量測定,発生ガスの分析及び機械的(引張り)特性試験を実施し、評価した。機械的強度からPIのSIは、80MGy、 PETのSIは7MGyまで使用できること。Q-massを用いたガス分析では、マスフローを導入することによりガスクロより簡便に分析でき、かつ、未知種のガス(例えば水)も識別できることを明らかにした。


34000605
誘電測定による電子線架橋hydroxypropylmethylcellulose(HPMC)ゲルの動的構造の研究
森下 敏*; 海野 裕哉*; 喜多 理王*; 新屋敷 直木*; 八木原 晋*; 古澤 和也*; 土橋 敏明*; 長澤 尚胤
東海大学紀要理学部 41, p.105-112(2006) ; (JAEA-J 00733)

 多糖類であるヒドロキシメチルセルロース(HPMC)のジオキサン溶液、及び溶媒をジオキサンとした放射線橋かけゲルの誘電分光測定を行った結果、100Hz〜100MHzでゲル、溶液ともに二つの緩和過程が観測された。300kHz〜100MHzで観測された緩和はHPMC分子鎖に起因する過程であることがわかった。本研究で初めて多糖類の溶媒・ゲル中での高分子鎖による緩和が観測された。100Hz〜300kHzの領域では、ゲルの方に直流電流伝導DCによる影響が強く表れた。溶媒が水であるHPMCゲルの放射線量によるDC変化には、水分子も大きく関与していることから、HPMC分子鎖の解離基などの影響に加えてこの因子を考慮すべきことが判明した。


34000606
Lattice and collimation system for J-PARC
金正 倫計
AIP Conference Proceedings 773 , p.45-49(2005) ; (JAEA-J 00734)

 J-PARCの加速器は、リニアック,3GeVシンクロトロン,50GeVシンクロトロン、及びそれらをつなぐビーム輸送系から構成される。それぞれの加速器及びビーム輸送系には、ビームロスを極力低減させるために、さまざまなビームコリメータが設置されている。これらの設計思想及び計算結果を報告する。


34000607
Systematic calibration of beam position monitor in the high intensity proton accelerator (J-PARC) linac
佐藤 進; 五十嵐 前衛*; Lee, S.*; 富澤 哲男; 廣木 文雄; 木代 純逸; 池上 雅紀*; 近藤 恭弘; 長谷川 和男; 上野 彰; 外山 毅*; 上窪田 紀彦*; 濁川 和幸*; 田中 幹郎*; 吉川 博
Proceedings of 22nd International Linear Accelerator Conference (LINAC 2004) , p.429-431(2004) ; (JAEA-J 00741)

 現在建設中のMWクラス大強度陽子加速器(J-PARC)においては、ビームロスを最小限に抑えることが必要である。これに伴い、数100マイクロメーター以下程度でビームの軌道の監視・制御が必要になる。加速初段はLINACを用いるが、ここでのビーム位置検出器はストリップライン型の電極(50オーム)を用いる。本論文ではLINACビーム位置検出器の系統的較正について報告する。


34000608
Status of the J-PARC linac, initial results and upgrade plan
山崎 良成
Proceedings of 22nd International Linear Accelerator Conference (LINAC 2004) , p.554-558(2004) ; (JAEA-J 00742)

 J-PARC線形加速器の建設現状,初段部のビーム試験結果,将来の増強計画について発表する。線形加速器の機器はほぼ今年度完成し、また、建築も今年度竣工することから、来年度から据え付けが開始される。一方、3-MeV RFQリニアック,中間エネルギービーム輸送系,DTL第1タンク(20MeV)のビーム試験を行っており、エミッタンス測定も行っている。平成18年度半ばから、リニアック全体のビーム試験が開始され、平成19年度当初180MeVまで加速して、シンクロトロンへの入射が始まる。また、平成19年度完成の後、平成20年度から、400MeVへのエネルギー増強を計画している。


34000609
RF reference distribution system for the J-PARC linac
小林 鉄也; 千代 悦司; 穴見 昌三*; 山口 誠哉*; 道園 真一郎*
Proceedings of 22nd International Linear Accelerator Conference (LINAC 2004) , p.727-729(2004) ; (JAEA-J 00743)

 J-PARCリニアック(全長約300m)では、加速電界(上流324MHz,下流972MHz)の位相変動,振幅変動をそれぞれ±1度,±1%以内に抑える必要がある。位相の基準信号では±0.3度(=約±1ps)の安定性を目標とし、クライストロンギャラリーに並ぶ約60台の高周源制御ステーションの位相をこの厳しい精度で揃えなければならない。本発表では、タイミング系の信号を含めた、高周波基準信号分配システムの最終的なデザインと評価結果のまとめを報告する。


34000610
Cold-model tests and fabrication status for J-PARC ACS
青 寛幸; 秋川 藤志; 上野 彰; 長谷川 和男; 山崎 良成; 池上 雅紀*; 野口 修一*; 林崎 規託*; Paramonov, V.*
Proceedings of 22nd International Linear Accelerator Conference (LINAC 2004) , p.75-77(2004) ; (JAEA-J 00744)

 J-PARCリニアックは50keVイオン源,3MeV RFQ,50MeV DTL,181MeV SDTLで2006年9月のコミッショニングを目指している。ACS空洞はJ-PARCの高ベータ領域の空洞として最適な形状であり、400MeVへのアップグレードがコミッショニングの初期に予定されている。現在、SDTLからACS間のマッチングセクションでバンチャーとして使用される予定の、ACS型空洞初号機の製作を進めている。設計の詳細や調整手順を解析やコールドモデルテストを通して検討してきた。本論文では製作の現状とこれまでの結果について報告する。


34000611
Rapid cycling synchrotron of J-PARC
鈴木 寛光
Proceedings of 3rd Asian Particle Accelerator Conference (APAC 2004) , p.499-501(2004) ; (JAEA-J 00745)

 原研とKEKが共同してJ-PARC建設を進めている。加速器は400MeVリニアック,3GeVシンクロトロン(RCS),50GeVシンクロトロン(MR)で構成される。RCSではリニアックからの400MeVプロトンビームを3GeVまで加速し、MRやMLF(生命物質科学実験施設)へと供給する。MLFには大強度中性子ビームを生成するための中性子ターゲットがある。大強度の中性子ビームを発生させるためにには、RCSで1MWの大電流ビームを発生させる必要がある。RCSの建設は2002年に始まった。全ての装置は2002年度及び2003年度から製作が始まり、2006年度に終了する。建物は2005年4月に完成し、5月から装置の搬入・据付け・調整試験が始められ、2007年5月からビームコミッショニングが開始される。この論文ではRCSの設計及び建設状況が報告される。


34000612
Development of superconducting proton linac for ADS
大内 伸夫; 赤岡 伸雄*; 浅野 博之*; 千代 悦司; 滑川 裕矢*; 鈴木 浩幸*; 植野 智晶*; 野口 修一*; 加古 永治*; 大内 徳人*; 斎藤 健治*; 宍戸 寿郎*; 土屋 清澄*; 大久保 光一*; 松岡 雅則*; 仙入 克也*; 村井 隆*; 大谷 利宏*; 築島 千尋*
Proceedings of 4th International Workshop on the Utilisation and Reliability of High Power Proton Accelerators , p.175-183(2005) ; (JAEA-J 00746)

 加速器駆動核変換システム(ADS)ではエネルギー約1GeV,ビームパワー20-30MWの大強度陽子加速器が要求される。原研,KEK,三菱重工業,三菱電機は共同でADS用超伝導陽子リニアックの開発を2002年から実施している。本技術開発では、J-PARC計画用超伝導陽子リニアックの設計をベースに、972MHzクライオモジュールの開発並びに超伝導陽子リニアックのシステム設計を行っている。クライオモジュールの開発においては、最大表面電界30MV/mの達成を目標としてクライオモジュールの試作,試験を実施している。空洞単体試験においては、2台の空洞について最大表面電界32, 34MV/mを達成した。2004年にはクライオモジュールの本格的な試験を実施し、最終目標値の達成を目指す。超伝導陽子リニアックのシステム設計では、エネルギー100〜1500MeV領域のビーム軌道解析を実施した。その結果、超伝導リニアックの構成は、10種類の超伝導空洞,クライオモジュール総数106台,全長565mとなった。低エネルギー部では高エネルギー部と比較して加速効率がかなり低下していることが判明した。


34000613
Investigation of photo neutralization efficiency of high intensity H- beam with Nd:YAG laser in J-PARC
富澤 哲男; 秋川 藤志; 佐藤 進; 上野 彰; 近藤 恭弘; 大井川 宏之; 佐々 敏信; 長谷川 和男; Lee, S.*; 五十嵐 前衛*; 外山 毅*; 池上 雅紀*
Proceedings of 7th European Workshop on Beam Diagnostics and Instrumentation for Particle Accelerators (DIPAC 2005) , p.275-277(2005) ; (JAEA-J 00747)

 負水素イオンにNd:YAGレーザーを当てると電子が一つはがれて水素イオンに変わる。これがレーザー荷電変換であるが、J-PARCにおけるビームプロファイルモニターや核変換実験施設への低出力陽子ビームの取り出しに応用できる技術である。これらの可能性を確認するために、実際に高周波四重極リニアック(RFQ)出力後のビーム輸送系(MEBT1)に実験装置を設置し、レーザーが当たった時の荷電変換効率を計測した。本稿ではこの実験装置の設置状況とレーザーが当たったすべてのビームが荷電変換した結果を報告する。


34000614
Challenges facing the generation of MW proton beams using rapid cycling synchrotrons
入江 吉郎
Proceedings of 9th European Particle Accelerator Conference (EPAC 2004) , p.113-117(2004) ; (JAEA-J 00748)

 速い繰り返しのシンクロトロン(RCS)を用いたメガワット陽子源は多くの挑戦的な側面を持つ。例えば、(1)低エネルギー入射及びこれに伴う大振幅で速い変化の磁場による大口径電磁石と非常に高い高周波電圧,(2)多少飽和した電磁石ファミリー間のトラッキング,(3)基本波及び高調波空洞を用いた高周波捕獲,(4)負水素イオン荷電変換フォイル,(5)大きいアクセプタンスの入射及び取出し直線部,(6)損失ビームの捕集,(7)ビーム不安定性等。以上の項目について、現在日本で建設中のJ-PARC 3GeV RCSをベースとして議論する。(3)から(7)までの項目は、他の方法によるメガワット中性子源、すなわち全エネルギーリニアック+蓄積リングと共通である。そこで、米国で建設中のSNSと比較して議論する。これらマシンの信頼性、または運転の効率というものは非常に重要なテーマで、実際上このマシンが成功か否かを決定するものである。既存マシンにおける経験をもとに、どのようなことが必要かについて議論する。


34000615
Design of the beam transportation line from the linac to the 3-GeV RCS for J-PARC
大川 智宏*; 池上 雅紀*
Proceedings of 9th European Particle Accelerator Conference (EPAC 2004) , p.1342-1344(2004) ; (JAEA-J 00749)

 大強度陽子加速器計画(J-PARC)の加速器は、180MeVライナック,3GeVシンクロトロン(RCS),50GeVメインリング(MR)で構成される。L3BTは、ライナックとRCSを結ぶビーム輸送系である。ビームロスを最小にするために、L3BTは、ライナックとRCSをつなぐだけでなく、RCSに受け入れられるようライナックのビーム形状を修正する役割も担う。RCSの入射点で要求されるビームパラメータは、運動量拡がり±0.1%以下,横方向エミッタンス4πmm・mrad以下である。これらの要求を達成するために、L3BTは、運動量補正,ビームハローの削除,ビーム測定の機能を持つ必要がある。本論文では、L3BTの設計とビームシミュレーション結果について報告する。


34000616
J-PARC construction and its linac commissioning
山崎 良成
Proceedings of 9th European Particle Accelerator Conference (EPAC 2004) , p.1351-1353(2004) ; (JAEA-J 00750)

 J-PARCは原研東海に建設中である。2006年末までにビーム試運転が始まる予定であるが、その前にKEKで2003年からリニアック最上流部のビーム試運転が始まっている。3MeVのRFQリニアックに続く3個のDTLタンクのうちの第1タンクで30mAのピーク電流の負水素イオンを20MeVまで加速した。J-PARC加速器の現況を報告する。


34000617
High average power and high energy laser-diode pumped Nd:YAG laser with a phase conjugate mirror and its application
桐山 博光
Recent Developments in Lasers and their Applications , p.31-51(2006) ; (JAEA-J 00751)

 高平均出力・高繰り返しチタンサファイアレーザーの小型化,高効率化を目的として、半導体レーザー(LD)励起Nd:YAGレーザーシステムの開発を行った。本システムは低い入力エネルギーで高いエネルギー抽出効率を達成するため、レーザービームが励起領域を6回通過できる多重パス増幅方式を採用している。高ビーム品質の増幅を行うためにジグザグスラブ型増幅器で、さらにファラデー・ローテーター及び位相共役鏡を用いて、それぞれ熱複屈折効果と熱レンズ効果を補償できる構成としている。また、高い波長変換効率で第二高調波を発生させるために、非線形光学定数の大きいKTP結晶を採用した。本システムの動作試験を1kHzの繰り返しで行った。平均のLD入力パワー2.6kWにおいて362Wの高平均出力(1064-nm)を達成した。約1500倍の増幅利得並びに14%の光−光変換効率を得た。また、波長変換試験において222Wの入力パワーに対して132Wの高平均第二高調波出力光(532nm)が60%の高い変換効率で得られた。このレーザーシステムの実験結果の詳細について紹介するとともに、応用研究についても議論する。


34000618
イオンビーム利用のための基礎理論
田口 光正
放射線化学のすすめ; 電子,イオン,光のビームがくらしを変える、産業をつくる , p.127-129(2006) ; (JAEA-J 00759)

 新規有機・無機材料の創製,突然変異誘発やガン治療など、新しい放射線としてのイオンビーム利用が飛躍的に進展している。ここでは、イオンと物質との初期相互作用である核や電子との衝突、また物質中を走るイオンの飛跡やその運動エネルギーの付与特性を見積もる計算コード、さらにイオン飛跡周りの平均値としての線量分布構造への実験・理論的アプローチなど、イオンビーム利用に必要不可欠な基礎理論を解説する。


34000619
マイクロドシメトリー; 微小空間の線量測定と評価
田口 光正
放射線化学のすすめ; 電子,イオン,光のビームがくらしを変える、産業をつくる , p.180-182(2006) ; (JAEA-J 00760)

 放射線の工業・医療利用やリスク評価等の研究開発において、それらの基礎となる線量測定や評価が重要である。ここでは放射線照射効果を詳細に理解するうえで重要なミクロスコピックな線量評価の概念、また実験・理論的に展開されてきたスパーモデルとトラック構造モデルについて解説する。


34000620
放射線を用いた水環境保全技術の開発
田口 光正
放射線化学のすすめ; 電子,イオン,光のビームがくらしを変える、産業をつくる , p.78-80(2006) ; (JAEA-J 00761)

 廃水への放射線照射によって生成するヒドロキシラジカルや水素原子,水和電子など活性種の酸化還元反応を利用した、微量有害有機物や重金属の処理技術に関する基礎的知見を解説するとともに、電子加速器を用いた実用プラント実験を紹介する。


34000621
J-PARC ACS空洞開発の現状
青 寛幸; 上野 彰; 森下 卓俊; 長谷川 和男; 山崎 良成; 池上 雅紀*; 林崎 規託*
Proceedings of 1st Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 29th Linear Accelerator Meeting in Japan , p.323-325(2004) ; (JAEA-J 00762)

 J-PARC Linacは当初180MeV SDTLでスタートする予定であるが、200-400MeVへのエネルギー増強用加速空洞としてACS(Annular Coupled Structure)の開発を進めている。ハイパワー用初号機(バンチャー)の設計検討,製作状況とコールドモデルテストの結果などを報告する。


34000622
Orbit following calculation of energetic ions in the design of ferritic insertion in the JT-60U
篠原 孝司; 鈴木 優; 櫻井 真治; 正木 圭; 藤田 隆明; 三浦 幸俊
Plasma and Fusion Research (Internet) 1(2), p.007_1-007_8(2006) ; (JAEA-J 00764)

 JT-60トカマクでは、先進トカマク運転に立脚した定常・高ベータプラズマの研究開発を進めてきた。さらなる性能向上には、(1)壁安定化効果の利用,(2)実効加熱パワーの増大,(3)長時間にわたるRFによる電流分布制御の実現,(4)周辺部閉じ込め改善モード(Hモード)を制限していると考えられる高速イオンの損失によるプラズマ回転の抑制が重要である。これらの観点から高速イオンの閉じ込めの改善が重要である。そこでトロイダル磁場リップルを低減することで高速イオンの損失を低減することを目的として強磁性体であるフェライト鋼の設置を行った。ここではフェライト鋼装着のための設計について高エネルギーイオン粒子の振舞の観点から発表する。JFT-2Mのフェライト鋼装着プログラムで開発された完全3次元磁場OFMCコードを用いて高エネルギーイオンの閉じ込めや第一壁への不都合な熱負荷がないことを数値的に検証し、設計を行った。最終的な設計配置では、トロイダル磁場1.9テスラの大体積プラズマにおいて高エネルギーイオンの閉じ込めが約1.3倍改善する。


34000623
A Broad-band RF buncher cavity using finemet cut cores for ion beams
渡辺 真朗; 千葉 好明*; 小関 忠*; 片山 武司*; 大城 幸光*; 渡辺 伸一*
Proceedings of 17th International Conference on Cyclotrons and Their Applications 2004 (CYCLOTRONS 2004) (CD-ROM) , 3p.(2005) ; (JAEA-J 00766)

 ファインメットカットコアを装填したRF空洞はJ-PARCでも用いられているが、従来より高い18-45MHzの周波数帯域でのファインメットカットコア空洞の開発に成功した。この空洞を東大CNSにあるHi-ECRイオン源のトランスポートラインにインストールし、イオン源から引き出された10KeVのDC陽子ビームのバンチ化に成功した。その結果、東大CNSでは理研サイクロトロンの周波数24-40MHzのバンチ化されたビームを供給できるようになり、ビームモニターの開発が可能になった。


34000624
The Extraction kicker system of the RCS in J-PARC
神谷 潤一郎; 高柳 智弘; 川久保 忠通*; 村杉 茂*; 中村 英滋*
Proceedings of 2005 Particle Accelerator Conference (PAC '05) (CD-ROM) , p.1009-1011(2005) ; (JAEA-J 00768)

 キッカー電磁石はJ-PARC RCS施設の出射部に設置され、3GeVに加速された陽子ビームを下流へけりだす役割を果たす。RCSは1MWのビームパワーを最小限のロスで出すために設計されている。そのためキッカーには大口径,超高真空,磁場の一様性という性能が求められている。本発表においては、それら性能を満たすための技術的改善とキッカーシステム全体の使用について報告する。


34000625
Design of the pulse bending magnets for the injection system of the 3-GeV RCS in J-PARC
高柳 智弘; 入江 吉郎; 神谷 潤一郎; 渡辺 真朗; 渡辺 泰広; 植野 智晶*; 野田 文章*; Saha, P. K.; 酒井 泉*; 川久保 忠通*
Proceedings of 2005 Particle Accelerator Conference (PAC '05) (CD-ROM) , p.1048-1050(2005) ; (JAEA-J 00769)

 J-PARCにおける3-GeV RCSの入射システム用パルス電磁石の設計を行った。入射システムは、入射用バンプ軌道を形成する水平シフトバンプ電磁石4台、ペインティング入射に使用する水平ペイントバンプ電磁石4台、及び、垂直ペイント電磁石2台で成り立っている。入射エネルギーは400MeVで、ビームエネルギーは1MWに達する。運転は25Hzで行う。水平シフトバンプ電磁石の位置における入射ビーム,ペインティングビーム、及び、周回ビームを含むビームの通過エリアは、横388mm,縦242mmと非常に広範囲を占める。そのため、水平シフトバンプ電磁石は非常に大きなギャップを必要とし、また、ビームロスを小さくするために磁場精度が要求される。そこで、3次元磁場解析により、0.26Tの磁場で0.4%以下の有効磁場領域を達成し得る設計を行った。


34000626
γ-ray irradiation experiments of collimator key components for the 3GeV-RCS of J-PARC
金正 倫計; 荻原 徳男; 増川 史洋; 竹田 修; 山本 風海; 草野 譲一
Proceedings of 2005 Particle Accelerator Conference (PAC '05) (CD-ROM) , p.1309-1311(2005) ; (JAEA-J 00770)

 大強度陽子加速器3GeVシンクロトロンで使用するビームコリメータ用に放射線に強い機器の開発に成功した。ターボ分子ポンプは吸収線量が15MGyのγ線照射試験に耐え、ステッピングモータは70MGyまで耐えることを確認した。また、PEEK材を用いた電線も10MGy以上の吸収線量でも使用可能であった。一方、ヒートパイプは30kGy以上では使用できないことが明らかとなった。


34000627
The Impedance of the ceramic chamber in J-PARC
菖蒲田 義博; Chin, Y. H.*; 大見 和史*; 外山 毅*
Proceedings of 2005 Particle Accelerator Conference (PAC '05) (CD-ROM) , p.1898-1900(2005) ; (JAEA-J 00771)

 J-PARCのRCS(Rapid Cycle Synchrotron)では、セラミックチェンバーを採用している。セラミックを使う理由は、ビームが引き起こす渦電流を回避するためである。また、このチェンバーの外側は、ビームが引き起こす電磁場がそとに漏れ出さないように、銅のストライプで覆われており、内側は、二次電子の放出を押さえるためにTiNでコーティングされている。ビームの不安定性を議論するためにこのようなセラミックチェンバーのインピーダンスを知っておく必要がある。従来の検討では、このインピーダンスを計算する際、簡単のため、銅のストライプを完全導体のパイプに置き換えて議論している。この論文では、銅のストライプやTiNの抵抗についても考慮しながら、銅のストライプの部分をさらに現実的に扱い、以前の評価が妥当であるかを検討した。


34000628
Alumina ceramics vacuum duct for the 3GeV-RCS of the J-PARC
金正 倫計; 荻原 徳男; 齊藤 芳男*; 壁谷 善三郎*
Proceedings of 2005 Particle Accelerator Conference (PAC '05) (CD-ROM) , p.2604-2606(2005) ; (JAEA-J 00772)

 大強度陽子加速器施設3GeVシンクロトロンに使用するセラミックス真空ダクトの開発に成功した。このダクトは2種類に大別される。一つは偏向電磁石用で、レーストラック型の断面形状を有する3.5mの長さで15度湾曲したダクト、もう一つは、四極電磁石に使用される円形断面を有するダクトである。これらは、一体もので製作するのは非常に困難であるため、0.5-0.8mのダクトをメタライズとロウ付けで接合した。外表面には、ダクトのインピーダンスを小さくするために、RFシールドを施し、内表面には、二次電子放出を小さくするために、TiN膜をコーティングした。


34000629
RF tuning and fabrication status of the first module for J-PARC ACS
青 寛幸; 森下 卓俊; 上野 彰; 長谷川 和男; 山崎 良成; 池上 雅紀*; Paramonov, V.*
Proceedings of 2005 Particle Accelerator Conference (PAC '05) (CD-ROM) , p.2684-2686(2005) ; (JAEA-J 00773)

 J-PARCリニアックは当初180MeVで運転を開始するが、近く400MeVへ21台のACSモジュールと、2台のACSバンチャー,デバンチャーを用いてアップグレードされる予定である。バンチャー初号機が製作中であり、次期バンチャー及び加速モジュールが2006年度末に向けて製作が予定されている。初号機は5セルタンクと5セルのブリッジ空洞からなる。3台のRFチューナーがブリッジに取り付けられRFの微調整を行う。運転周波数は972MHzであり、ロウ付け前の工場段階である程度調整しておく必要がある。この調整過程については電磁場解析やコールドモデル測定を行って検討を進めてきた。本論文ではこれらのRF調整の結果や製作の現状などについて報告する。


34000630
The Status of optics design and beam dynamics study in J-PARC RCS
野田 文章*; 發知 英明; Saha, P. K.; 菖蒲田 義博; 山本 風海; 林 直樹; 木代 純逸; 町田 慎二*; Molodojentsev, A. Y.*
Proceedings of 2005 Particle Accelerator Conference (PAC '05) (CD-ROM) , p.2759-2761(2005) ; (JAEA-J 00774)

 現在RCSでは、目標の1MW出力を達成するため、種々のエラーの影響評価を行っており、その評価をもとに、補正システムの検討・検証や運転パターンの検討を進めている。また空間電荷効果によるビーム挙動評価も進めており、各種エラーを取り込んだ多粒子トラッキングが可能な段階にきている。一方でRCSの最終目標は出力だけでなくユーザーに適したビームプロファイルを作ることにもあり、その検討も進めている。今回の発表ではRCSの基本的な光学設計のまとめと、上記の観点から見た最近のビームダイナミクス検討の進展について概要を報告する。


34000631
Developments of the calibration tools for beam position monitor at J-PARC LINAC
佐藤 進; 富澤 哲男; 秋川 藤志; 上野 彰; Lee, S.*; 五十嵐 前衛*; 池上 雅紀*; 外山 毅*; 上窪田 紀彦*
Proceedings of 2005 Particle Accelerator Conference (PAC '05) (CD-ROM) , p.2777-2779(2005) ; (JAEA-J 00775)

 J-PARCリニアックでは、ビームの損失を最小限にするため、ビームを真空ダクトの中心に精度よく導く必要がある。このためビーム位置モニターの位置精度は0.1mm程度にしなくてはいけない。この位置精度は、較正台と、実際のビームとの両方を用いて較正を行うが、その結果現在までに得られている、較正に関する理解について報告を行う。


34000632
An Alignment of J-PARC linac
森下 卓俊; 青 寛幸; 伊藤 崇; 上野 彰; 長谷川 和男; 池上 雅紀*; 久保田 親*; 内藤 富士雄*; 高崎 栄一*; 田中 宏和*; 吉野 一男*
Proceedings of 2005 Particle Accelerator Conference (PAC '05) (CD-ROM) , p.2851-2853(2005) ; (JAEA-J 00776)

 J-PARC線形加速器において、加速器要素機器の正確なアライメントは高品質のビーム加速にとって不可欠である。インストール時の基準となる墨出しは、機器の搬入に先立ってすべてのフロアーで完了している。本発表では墨出しの結果とインストール時におけるアライメント手順、及び建物の長期変動をモニターするセンサーとそのメンテナンス装置の開発状況について報告する。


34000633
Development of the beam diagnostics system for the J-PARC rapid-cycling synchrotron
林 直樹; 廣木 成治; 木代 純逸*; 照山 雄三*; 豊川 良治; 荒川 大*; Lee, S.*; 三浦 孝子*; 外山 毅*
Proceedings of 2005 Particle Accelerator Conference (PAC '05) (CD-ROM) , p.299-301(2005) ; (JAEA-J 00777)

 J-PARC(Japan Proton Accelerator Research Complex)ラピッドサイクリングシンクロトロンのためのビーム診断システムの開発を報告する。システムは、ビーム位置モニター(BPM),ビーム損失モニター(BLM),電流モニター(DCCT, SCT, MCT, FCT, WCM),チューンメーターシステム,324MHz-BPM,プロファイルモニター,ハローモニターからなる。BPMの電極は、静電タイプで、信号処理回路は、COD測定も、1周ごとの測定も可能となるようデザインした。5つのビーム電流モニターは、異なった時定数を持ち、全体で幅広い周波数帯域をカバーする。チューンメーターは、RFKOと信号ピックアップ電極で構成される。2種類のプロファイルモニターは、低強度のチューニングのためのマルチワイヤーモニターと非破壊の残留ガスモニターがある。


34000634
Beam dynamics design of the L3BT for J-PARC
大川 智宏*; 池上 雅紀*
Proceedings of 2005 Particle Accelerator Conference (PAC '05) (CD-ROM) , p.3091-3093(2005) ; (JAEA-J 00778)

 L3BTは、J-PARCを構成する加速器の一部で、リニアックとRCSをつなぐビーム輸送系である。今回、空間電荷が支配的な領域での分散関数の取り扱いについて詳細に検討し、ビームエンベロープでの分散関数ではなく、ビーム重心での分散関数を0にする方が良いことを確認した。分散関数の取り扱い方法及びL3BTの入射部分についてのビームシミュレーション結果について報告する。


34000635
Present design and calculation for the injection-dump line of the RCS at J-PARC
Saha, P. K.; 野田 文章*; 入江 吉郎; 發知 英明; 高柳 智弘; 林 直樹; 町田 慎二*; 酒井 泉*
Proceedings of 2005 Particle Accelerator Conference (PAC '05) (CD-ROM) , p.3739-3741(2005) ; (JAEA-J 00779)

 本講演では、J-PARC RCSにおける入射ダンプラインの詳細設計、及び、入射部で予想されるビーム損失の評価結果を報告する。ビーム損失に関しては、特に、励起H0,荷電変換用炭素薄膜との多重散乱,ローレンツストリッピングに起因する損失量の解析結果を示す。


34000636
Evaluation of nonlinear effects in the 3-GeV rapid cycling synchrotron of J-PARC
發知 英明; 野田 文章*; 谷 教夫; 木代 純逸*; 町田 慎二*; Molodojentsev, A. Y.*
Proceedings of 2005 Particle Accelerator Conference (PAC '05) (CD-ROM) , p.916-918(2005) ; (JAEA-J 00780)

 本講演では、J-PARC RCS内に存在する非線形磁場を考慮したトラッキングシミュレーションを示し、誘起されたベータトロン共鳴の補正手段を議論する。


34000637
Measurement of toroidal structure of electron temperature with electron cyclotron emission diagnostic in JT-60U
諫山 明彦; 大山 直幸; 浦野 創; JT-60チーム
Proceedings of 21th IEEE/NPSS Symposium on Fusion Engineering (SOFE 2005) (CD-ROM) , 4p.(2006) ; (JAEA-J 00781)

 JT-60の電子サイクロトロン放射(ECE)測定装置において、信号対雑音(SN)比の改善及び電子温度揺動のトロイダル構造の測定を目的として、新しい観測窓及び導波路を導入した。従来は1系統の導波路を分岐して3つのECE測定装置(フーリエ変換分光装置,回折格子型分光装置,ラジオメータ)に接続していたため、ラジオメータのSN比が十分得られない場合もあったが、今回導入した導波路をラジオメータ専用とすることにより、SN比を従来の5倍程度とすることができた。また、今回導入した観測窓は従来の観測窓とトロイダル方向に60度離れていることから、両観測窓から同時にECEを測定することにより、不安定性のトロイダル構造を測定することができる。今回、回折格子型分光装置とラジオメータの同時測定を行った結果、ECE計測装置のみでトロイダルモード数を決定することに成功した。また、負磁気シア放電のコラプス発生後には、トロイダル方向,ポロイダル方向に異なった構造が現れることが明らかになった。


34000638
Current status of experimental study and device modifications in JT-60U
栗原 研一; JT-60チーム
Proceedings of 21th IEEE/NPSS Symposium on Fusion Engineering (SOFE 2005) (CD-ROM) , 6p.(2005) ; (JAEA-J 00782)

 トカマク型磁気核融合研究は、国際プロジェクトITERに向けて一歩踏み出そうとしているこの時期に、JT-60などの既存のトカマク装置に対しては、より先進的な運転シナリオを探究する役割が期待されている。このために、JT-60では、2003年には電源及び加熱装置の制御系を改造することにより、放電,NBI/RF加熱時間をそれぞれ65秒,30秒/60秒に延伸し、(a)自発電流割合75%の負の磁気シアプラズマを7.4秒持続。(b)規格化ベータ値3.0をECCDによるNTM不安定性を抑制し6.2秒間準定常的持続、などの成果が得られた。さらなる高性能プラズマ実現に向けて、トロイダルリップル損失を最小限にするフェライト板を第一壁に装着したり、プラズマ電流分布の実時間再構築法の開発などが進行している。シンポジウムでは、JT-60におけるプラズマ実験研究の現状について、装置改造の最新情報を交えて紹介する。


34000639
Status of a superconducting linac for the J-PARC ADS
長谷川 和男; 大内 伸夫; 千代 悦司; 加古 永治*; 野口 修一*; 大内 徳人*; 宍戸 寿郎*; 土屋 清澄*
Proceedings of 34th ICFA Advanced Beam Dynamics Workshop on High Power Superconducting Ion, Proton and Multi-Species Linacs (HPSL 2005) (Internet) , 5p.(2005) ; (JAEA-J 00783)

 原研は、高エネルギー加速器研究機構と共同で大強度陽子加速器施設(J-PARC)の建設を行っている。この第1期計画の加速器は、400MeVのリニアック(線形加速器),3GeVシンクロトロン,50GeVシンクロトロンの3基から構成される。第2期計画では、400MeVから600MeVまでの超伝導リニアックを建設し、放射性廃棄物の核変換実験に用いる予定である。その開発研究として、超伝導空洞を内蔵するクライオモジュールの設計と製作試験を進めており、これまでに2Kの冷却に成功した。ここではJ-PARC計画での超伝導リニアックの開発状況について報告する。


34000640
Review of the J-PARC project
長谷川 和男
Proceedings of 34th ICFA Advanced Beam Dynamics Workshop on High Power Superconducting Ion, Proton and Multi-Species Linacs (HPSL 2005) (Internet) , 7p.(2005) ; (JAEA-J 00784)

 原研は、高エネルギー加速器研究機構と共同で大強度陽子加速器施設(J-PARC)の建設を行っている。この施設は、世界最大強度の陽子ビームを用いて、物質科学,生命科学,原子核・素粒子などの幅広い分野の研究を推進することを目的とする。この施設で用いる加速器は、リニアック(線形加速器),3GeVシンクロトロン,50GeVシンクロトロンの3基から構成され、多くの新しい研究開発をもとに建設を進めている。各加速器機器の製作や試験を行うとともに、リニアックや3GeVシンクロトロンは、建家への据付を開始する段階にある。これらJ-PARCの建設や機器の製作状況について報告する。


34000641
Order-disorder phase transition of Sn/Ge(111) surface studied by reflection high-energy positron diffraction
深谷 有喜; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
e-Journal of Surface Science and Nanotechnology (Internet) 4, p.435-438(2006) ; (JAEA-J 00785)

 Ge(111)-(√3)×(√3)-Sn表面は、半導体表面上に形成する2次元金属構造として、非常に興味が持たれている。この表面は、約220Kで、(√3)×(√3)から3×3構造へ相転移することが知られている。この相転移の原因として、初期の研究から、電荷密度波の形成が考えられていた。その後、Sn原子が動的に揺らぐモデルなどが提唱されているが、現在のところ未解決のままである。本研究では、反射高速陽電子回折法を用いて、Ge(111)-(√3)×(√3)-Sn表面の相転移前後の表面構造変化について調べた。Ge(111)-(√3)×(√3)-Sn表面は、Arイオンスパッタとアニールの繰り返しによりGe(111)表面を清浄化した後、Sn原子を1/3原子層蒸着させることにより作成した。原子位置の垂直成分に敏感な入射条件において、150Kと室温でRHEPD強度のロッキング曲線を測定した結果、温度の違いによる顕著な違いは見られなかった。動力学的回折理論に基づいて強度解析を行ったところ、相転移温度前後でSn原子の垂直位置にほとんど変化がないことがわかった。この結果から、現在のところ、秩序・無秩序相転移が起こると考えている。


34000642
Study of InAs/GaAs(001) nanoisland growth process by in-situ and real-time X-ray diffraction
高橋 正光; 海津 利行; 水木 純一郎
e-Journal of Surface Science and Nanotechnology (Internet) (4), p.426-430(2006) ; (JAEA-J 00786)

 InAs/GaAs(001)ナノドットの分子線エピタキシャル成長をモニターする方法を考案した。シンクロトロン放射光と二次元検出器との組合せにより、逆格子空間内でのX線強度マッピングを成長中に毎フレーム9.6秒の速度で測定することができた。この手法は、ナノドット内部のひずみ分布と、高さの情報をその場・リアルタイムで与えるものである。X線の使用は、大気圧下でも妨げられることがない。そのため、この手法は、気相成長などの産業応用にも適している。

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