学会誌等掲載論文
※下記の研究開発成果は資料名順に並んでいます。

2006年7月


34000651
Enhancement of high energy proton yield with a polystyrene-coated metal target driven by a high-intensity femtosecond laser
余語 覚文; 西内 満美子; 福見 敦*; Li, Z.*; 小倉 浩一; 匂坂 明人; 織茂 聡; 加道 雅孝; 林 由紀雄; 森 道昭; 大道 博行; 根本 孝七*; 大石 祐嗣*; 名雪 琢弥*; 藤井 隆*; 中村 衆*; 白井 敏之*; 岩下 芳久*; 野田 章*
Applied Physics B 83(4), p.487-489(2006) ; (JAEA-J 00788)

 厚さ3ミクロンのタンタル薄膜上に厚さ133ナノメートルのポリスチレンを被覆したターゲットに対して、パルス幅70フェムト秒,集光強度2.7×1018W/cm2のレーザーを照射し、最大エネルギーで950keVのプロトンを得た結果を報告する。薄膜裏面からのプロトンと高速電子のエネルギー分布が同時に測定された。得られたプロトンの収量はタンタルのみの薄膜の10倍であった。タンタルのみの薄膜上の表面不純物層を10ナノメートルと仮定すれば、収量における10倍の上昇は、ポリスチレン層による水素原子の増加とほぼ比例する結果である。これはポリスチレン層がプロトン収量の増加に寄与した事実を示している。


34000652
Analysis of cadmium in food by multiple prompt γ-ray spectroscopy
藤 暢輔; 大島 真澄; 小泉 光生; 長 明彦; 木村 敦; 後藤 淳*; 初川 雄一
Applied Radiation and Isotopes 64(7), p.751-754(2006) ; (JAEA-J 00789)

 原子核科学研究グループでは核物理手法の応用研究として、高感度元素定量法開発研究を実施している。JRR-3Mのc-2ビームラインにおいて、多重γ線検出法を即発γ線分析に適用した多重即発γ線分析の開発を行った。この手法を用いることにより食品等における主要妨害元素である水素の影響が低減されることを見いだした。食品中のカドミウムはコーデックス委員会食品添加物・汚染物質部会やFAO, WHOにおいて国際的なカドミウム基準値の検討が行われている。基準値原案として提案されているカドミウム濃度は0.2-1.0mg/kgと極微量であり対象となる食品数が多いため、迅速かつ高感度な測定法の開発が望まれている。多重即発γ線分析によるカドミウム分析は食品中の水素の影響をほとんど受けないために高感度で行える。現在の検出器を高度化し高効率な検出器(効率10%)を用いて行うことにより、カドミウムの分析が1試料あたり10分程度で行えると見積もられた。また、GEANT4によって高効率検出器を用いた場合のシュミレーションを行った結果、実験によって見積もられた結果とほぼ同じ結果が得られた。


34000653
Analytic cross sections for electron impact collisions with nitrogen molecules
多幡 達夫*; 白井 稔三*; 左高 正雄; 久保 博孝
Atomic Data and Nuclear Data Tables 92(3), p.375-406(2006) ; (JAEA-J 00790)

 窒素分子と窒素分子1価イオンの電子衝突断面積は、低温プラズマの研究分野では重要とされている。例えば、核融合研究では、窒素ガスをダイバータプラズマに入射し放射冷却を増大することにより低温ダイバータプラズマを生成しダイバータ板の熱負荷を低減する実験が行われているが、この低温ダイバータプラズマをモデル化及び診断するためには窒素分子と窒素分子1価イオンの電子衝突断面積が必要である。ここでは、2003年までに実験的に測定された窒素分子と窒素分子1価イオンの電子衝突断面積を収集した。対象にした衝突過程は、弾性散乱,運動量移動,回転励起,振動励起,電子励起,電離,解離,発光の74過程である。収集した断面積は、図にまとめ、評価し、推奨値として解析的表式を当てはめた。解析的表式としては、Green and McNealの経験式を変形したものを用いた。


34000654
Component analysis of particulate products in electron beam-irradiated Xylene/air mixtures using an atmospheric pressure ionizing mass spectrometer
箱田 照幸; 迫 利浩*; 島田 明彦; 石田 恒雄*; 小嶋 拓治
Bulletin of the Chemical Society of Japan 79(5), p.731-737(2006) ; (JAEA-J 00791)

 キシレンは空気中では電子ビーム照射により酸化分解し、ガス状及び粒子状物質を生成する。本研究では、キシレンの分解無害化処理において問題となるこの粒子状生成物の成分を明らかにするために、捕集した粒子状生成物を水素含有アルゴンガス中で150℃まで昇温しガス化(昇温脱離)させ、ガス化した成分を大気圧イオン化質量分析装置により分析した。その結果、温度が120℃以上において、質量数が139-203uの範囲で質量数16uごとの周期を有する成分のピークが観測された。この周期質量は酸素の原子量と一致することから、155-203uの質量数範囲の成分は質量数139uの成分に酸素原子が結合した成分であると推定された。さらに、極微小ではあるものの質量数が392uの成分が観測された。この質量数は、炭素間結合を維持した状態でキシレン1分子が最大限酸化された成分の分子量よりも大きいことから、複数のキシレンの分解生成物が反応してこのような高分子量の成分が生じた可能性がある。


34000655
DNA strand break; Structural and electrostatic properties studied by molecular dynamics simulation
Kotulic Bunta, J.*; Laaksonen, A.*; Pinak, M.; 根本 俊行*
Computational Biology and Chemistry 30(2), p.112-119(2006) ; (JAEA-J 00792)

 細胞致死の原因となるDNA二本鎖切断は、生物影響上非常に重要な損傷の一つである。将来、二本鎖切断とその修復メカニズムについて調べるための布石として、損傷のないDNA,原子価を有する一本鎖切断を持つDNA,原子価のない一本鎖切断を持つDNAについてシミュレーションを行った。その結果、原子価を有する一本鎖切断DNAは部分的にその構造が崩壊すること,原子価を持たないDNAは鎖切断の2末端の間に新たな水素結合が形成され安定化することが明らかになった。


34000656
Contribution of circulating hemocytes to the regeneration of heavy ion beams (12C5+) irradiated hematopoietic organs in the silkworm, Bombyx mori, through the way of phagocytosis of injured cells after invasion
Ling, E.*; 白井 孝治*; 金勝 廉介*; 木口 憲爾*; 小林 泰彦; 舟山 知夫; 渡辺 宏*
Developmental and Comparative Immunology 30(6), p.531-543(2006) ; (JAEA-J 00793)

 家蚕4齢幼虫の造血器官に重イオンビームを局部照射した後に組織を観察すると、照射個体の5齢初期では造血器官内の多くの細胞がネクローシス様の異常曙態を示し、造血器官を包む無細胞性の被膜組織が消失するが、5齢後期では器官内部が再び多くの血球細胞で満たされ、造血器官が再生する。この現象を解明するため、蛍光マイクロビーズが異物として血液中の顆粒細胞に取り込まれる現象を利用して循環血液中の血球が損傷造血器官に侵入することを明らかにし、血液中の循環血球が造血器官の再生に関与している可能性を示した。


34000657
Design study of fusion DEMO plant at JAERI
飛田 健次; 西尾 敏; 榎枝 幹男; 佐藤 正泰; 礒野 高明; 櫻井 真治; 中村 博文; 佐藤 聡; 鈴木 哲; 安堂 正己; 江里 幸一郎; 林 孝夫; 林 巧; 廣瀬 貴規; 井上 多加志; 河村 繕範; 小泉 徳潔; 工藤 祐介; 栗原 良一; 黒田 敏公*; 松川 誠; 毛利 憲介*; 中村幸治; 西 正孝; 野本 恭信*; 大森 順次*; 大山 直幸; 坂本 慶司; 鈴木 卓美; 武智 学; 谷川 博康; 土谷 邦彦; 鶴 大悟
Fusion Engineering and Design 81(8-14), p.1151-1158(2006) ; (JAEA-J 00794)

 原研における発電実証プラント設計検討では、中心ソレノイド(CS)の機能に着目して3つの設計オプションを検討中である。これらのうち、主案はCSの機能をプラズマ形状制御に限定してコンパクトにすることによりトロイダル磁場コイルの軽量化を図ったものであり、この設計オプションの場合、主半径5.5m程度のプラズマで3GWの核融合出力を想定する。本プラントでは、Nb3Al導体による超伝導コイル,水冷却固体増殖ブランケット,構造材として低放射化フェライト鋼,タングステンダイバータなど近未来に見通しうる核融合技術を利用する。プラントの設計思想及び要素技術に対する要請を述べる。


34000658
Consideration on blanket structure for fusion DEMO plant at JAERI
西尾 敏; 大森 順次*; 黒田 敏公*; 飛田 健次; 榎枝 幹男; 鶴 大悟; 廣瀬 貴規; 佐藤 聡; 河村 繕範; 中村 博文; 佐藤 正泰; 発電実証プラント検討チーム
Fusion Engineering and Design 81(8-14), p.1271-1276(2006) ; (JAEA-J 00795)

 2020年頃の運転開始を想定したトカマク型発電実証プラントのブランケットについて構造体としての側面から考察を行った。比較的近未来を想定しているため前提となる要素技術に過度に先進的と考えられる技術を導入することは避けた。特に留意した点は、高い稼働率の実現に鑑みてブランケットの保守方式にはセクター一括引き抜きのいわゆる、ホットセルメインテナンス方式を導入した。本方式を導入することによって強固な電磁力支持構造を確保しながら要求されるトリチウム増殖率を確保し、前述の高稼働率を得る見通しが得られた。


34000659
Concept of core and divertor plasma for fusion DEMO plant at JAERI
佐藤 正泰; 櫻井 真治; 西尾 敏; 飛田 健次; 井上 多加志; 中村 幸治; 新谷 吉郎*; 藤枝 浩文*; 発電実証プラント検討チーム
Fusion Engineering and Design 81(8-14), p.1277-1284(2006) ; (JAEA-J 00796)

 核融合出力3GWを確保する高い経済性を有するトカマク炉発電実証プラントの設計を行っている。中心ソレノイド(CS)コイルがない又は小さい場合は、炉の小型化と軽量化に大きなインパクトがある。一方高密度領域での高閉じ込め性能の確保と巨大ELMを抑制する必要から、高い三角度を必要とされる可能性がある。CSコイルの役割を電流立ち上げとプラズマ形状制御に限定して、CSの大きさに応じた3ケースについて、システムコードを用いてプラントのパラメータを選択した。熱流束のスケーリングを用いてダイバータに対する要請を求めた。CSコイルが無い場合は、最もコンパクトな炉であるが、巨大ELMを抑制するには不十分な低い三角度しか得られない。CSの役割を形状制御に限定した炉については、巨大ELM抑制に必要と考えられる三角度が得られ、磁力線の小ポロイダル入射角と長い脚長で、ダイバータの熱のハンドリングが可能である。CSの役割を電流立ち上げと形状制御を有する炉についても、巨大ELM抑制に必要と考えられる三角度が得られ、磁力線のフラックス拡大と長い脚長で、ダイバータの熱のハンドリングが可能である。また、運転シナリオについて検討し、HHファクター,グリーンワルド密度,シャインスルーの条件が運転シナリオに強い制限を与えている。


34000660
Neutronics assessment of advanced shield materials using metal hydride and borohydride for fusion reactors
林 孝夫; 飛田 健次; 西尾 敏; 池田 一貴*; 中森 裕子*; 折茂 慎一*; 発電実証プラント検討チーム
Fusion Engineering and Design 81(8-14), p.1285-1290(2006) ; (JAEA-J 00797)

 核融合炉先進遮蔽材料としての金属水素化物及びホウ化水素の中性子遮蔽性能を評価するために中性子輸送計算を行った。これらの水素化物はポリエチレンや液体水素よりも水素含有密度が高く、一般的な遮蔽材よりも優れた遮蔽性能を示した。水素解離圧の温度依存性からZrH2とTiH2は1気圧において640℃以下で水素を放出することなく使用可能である。ZrH2とMg(BH4)2は、鉄水混合材料よりも遮蔽体の厚さをそれぞれ30%と20%減らすことができる。水素化物とF82Hとの混合によりγ線の遮蔽性能が高くなる。中性子及びγ線の遮蔽性能は以下の順で小さくなる:ZrH2>Mg(BH4)2 and F82H>TiH2 and F82H>water and F82H。


34000661
A Structural study on uranyl (VI) nitrate complexes with cyclic amides: N-n-butyl-2-pyrrolidone, N-cyclohexylmethyl-2-pyrrolidone, and 1,3-dimethyl-2-imidazolidone
古志野 伸能*; 原田 雅幸*; 野上 雅伸*; 森田 泰治; 菊池 俊明*; 池田 泰久*
Inorganica Chimica Acta 358(6), p.1857-1864(2005) ; (JAEA-J 00798)

 UO2(NO3)2L2[L=N-ノルマルブチル-2-ピロリドン,N-シクロヘキシル-2-ピロリドン及び1,3-ジメチル-2-イミダゾリドン]の構造をX線回折により解析した。これらの錯体は2の六角錘を合わせた構造であることがわかり、U=O結合及びU-O(配位子)結合の距離、及びU-O-C(カルボニル基)の角度を求めることができた。また、赤外及びラマンスペクトルの測定から錯体の振動周波数を求めた。配位子の配位数とO=U=O結合の振動周波数との関係から、各配位子の配位性を求めた。


34000662
Atomistic simulation of shear localization in Cu-Zr bulk metallic glass
尾方 成信*; 清水 大志; Li, J.*; 譯田 真人*; 渋谷 陽二*
Intermetallics 14(8-9), p.1033-1037(2006) ; (JAEA-J 00799)

 Cu57Zr43金属ガラス(Bulk Metallic Glass: BMG)のモデルシステムを用い、せん断変形の分子動力学シミュレーションを実施した。計算の結果、静水圧的及びせん断平面に垂直方向の応力の両方がせん断応答に影響を及ぼすことが確認された。せん断の局所化及びせん断帯の生成の現象は、小規模システム(原子数2,000)及び大規模システム(同524,288)の両方に見られた。


34000663
Cell cycle arrest and apoptosis in Caenorhabditis elegans germline cells following heavy-ion microbeam irradiation
杉本 朋子*; 太齋 久美子*; 坂下 哲哉; 舟山 知夫; 和田 成一; 浜田 信行*; 柿崎 竹彦; 小林 泰彦; 東谷 篤志*
International Journal of Radiation Biology 82(1), p.31-38(2006) ; (JAEA-J 00800)

 重イオンマイクロビームを用いて線虫生殖細胞系の放射線影響、特にDNA損傷によるアポトーシスと細胞周期の停止とバイスタンダー効果について検討した。雌雄同体の線虫に存在する前後2つの生殖腺の後部パキテン核に対してのみ炭素イオンマイクロビームを照射する区と、生殖腺から離れた尾部に対して照射する区を設け、照射5時間後に、前後それぞれの生殖腺にみられるアポトーシス死細胞の数について測定を行った。その結果、尾部に照射した場合、野生型並びにabl-1欠損変異体のいずれにおいても、非照射区と比較して、前後の生殖腺での死細胞数の有意な増加は認められず、また、後部の生殖腺パキテン核に対して照射した場合は、照射された側のみで、アポトーシス死細胞の増加が観察された。以上の結果から、線虫の生殖細胞形成時のパキテン期チェックポイント機構によるアポトーシスに関しては、同一個体内での間接的な効果、バイスタンダー効果によりアポトーシスが誘導される可能性は低いことが示唆された。


34000664
Numerical simulation of in-line and cross-flow oscillations of a cylinder
渡辺 正; 近藤 昌也
JSME International Journal, Series B 49(2), p.296-301(2006) ; (JAEA-J 00801)

 原子力プラントでは、円柱構造物がさまざまな流れの条件のもとに使用されており、その流動誘起振動現象の解明は原子炉の安全確保にとって重要である。本報告では、数値シミュレーションにより円柱の流動誘起振動現象を解析した結果について述べる。シミュレーションでは、3次元非圧縮ナビエストークス方程式を有限要素法を用いて解き、円柱の運動と流れ場を連成させ、流れ方向及び流れと垂直方向への円柱の振動と円柱に作用する力,流れ場の渦の状態について考察した。流れ方向の振動は、換算流速が4.0以下で起こり、2.5以下では対称渦、2.9以上では交互渦の発生が見られたが、2.6付近では振動は起こらず、実験と良い一致を示した。交互渦の発生する条件では、流れと垂直方向への振動が支配的であり、垂直方向の振動により、円柱の抵抗係数,揚力係数のいずれもが増加し、また、流れ場の渦構造が時間的にも空間的にも微細化することが明らかとなった。


34000665
Local oxidation induced by inhomogeneous stress on blistered Si surface
五十嵐 慎一*; 板倉 明子*; 北島 正弘*; 中野 伸祐*; 武藤 俊介*; 田辺 哲朗*; 山本 博之; 北條 喜一
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 45(5A), p.4179-4182(2006) ; (JAEA-J 00802)

 表面に局所的なストレスが加えられた場合、その反応性が変化する可能性が指摘されている。本研究ではシリコン基板に10〜13keVの水素イオンを照射(1022ions/m2)することにより局所的なふくれ(ブリスター)を作製し、ストレスの及ぼす表面反応性の変化に関する検討を試みた。この試料を大気曝露し表面を酸化させたところ、ブリスターの形状を反映した酸素分布が観測された。ブリスター形成による局所的なストレスが、酸化速度が促進させたためと考えられる。得られた結果から、ストレスを何らかの方法で変調させ局所的な表面反応の制御やパターニングが可能であることを明らかにした。


34000666
Crystallization process of ferroelectric Bi4Ti3O12 from amorphous state
米田 安宏; 水木 純一郎; 小原 真司*; 濱崎 真一*; 高重 正明*
Journal of Applied Physics 99(7), p.074108_1-074108_5(2006) ; (JAEA-J 00803)

 チタン酸ビスマスのアモルファス状態からの結晶化過程をPDF解析を用いて明らかにした。チタン酸ビスマスは結晶化途中で中間相を生じるために結晶相でのグレイン成長が妨げられるという問題がある。そこで、PDF(Pair distribution function)解析を用いてアモルファス状態から結晶状態までを、同一の実験手法と解析手法によって構造を明らかにした。その結果、アモルファス相では短距離秩序であったパイロクロア構造が、中間相でいったん長距離化し、さらにTiO6のネットワーク構造が変化することによって結晶相が出現することをつきとめた。


34000667
EMF法による蛍石型Zr0.5Pu0.5O2-yの酸素ポテンシャル測定
音部 治幹; 中村 彰夫; 山下 利之; 湊 和生
Journal of Nuclear Materials 344(1-3), p.219-222(2005) ; (JAEA-J 00804)

 アクチノイド含有ジルコニアは、核変換燃料ターゲット,イナート・マトリックス燃料及び放射性廃棄物固化体など、原子力分野のアプリケーションにとって有望な候補材料である。ここでは、アクチノイド含有ジルコニアの一つである蛍石型(F-type)Zr0.5Pu0.5O2-yの酸素ポテンシャル(g(O2))挙動をジルコニア酸素センサーを用いたEMF法で調べた。パイロクロア(P-type)Zr2Pu2O7+xやF-type PuO2-xのg(O2)データと比較することにより、陽イオンや陰イオンの秩序(又は無秩序)構造に関連する、F-type Zr0.5Pu0.5O2-yのg(O2)の全体的な特徴を明確にすることを目的としている。793<T<1078Kの範囲では、F-type Zr0.5Pu0.5O2-yのg(O2)は、同じ酸素不定比組成(O/M)でF-type PuO2-yのg(O2)よりも150kJ/mol大きかった。また、F-type Zr0.5Pu0.5O2-yのg(O2)は、同じO/MでP-type Zr2Pu2O7+xのg(O2)よりも50kJ/mol低かった。これらの結果から、g(O2)挙動は陽イオンの組成(Pu/Zr)に大きく依存しているだけでなく、陽イオンや陰イオンの秩序(又は無秩序)構造にも依存していると考えられる。


34000668
Thermal properties of redeposition layers in the JT-60U divertor region
石本 祐樹; 後藤 純孝*; 新井 貴; 正木 圭; 宮 直之; 大山 直幸; 朝倉 伸幸
Journal of Nuclear Materials 350(3), p.301-309(2006) ; (JAEA-J 00805)

 ELMによる過渡的な熱負荷を評価するため、JT-60UW型ダイバータの内側ターゲットタイル上に形成された再堆積層の熱物性値をレーザーフラッシュ法を用いて初めて測定した。再堆積層の観察は走査電子顕微鏡によって行い、ストライクポイントの頻度が高い位置に200マイクロメートルを超える再堆積層を確認した。この位置より再堆積層のみの試料を取り出し、分析を行った。マイクロバランスを用いて試料の質量を測定し、再堆積層のかさ密度が、タイル基材である炭素繊維材料のおよそ半分であることを明らかにした。室温から1000度の領域では、比熱は参照試料である等方性黒鉛とほぼ同じであるが、熱拡散係数は、炭素繊維材料に比べておよそ2桁小さいことがわかった。測定した熱物性値をELMの熱流負荷解析に適用すると、熱負荷はタイル表面を炭素繊維材料であるとして解析した場合の10分の1程度になると示唆される。これは、赤外カメラの温度上昇から見積もったダイバータへの熱負荷がプラズマ蓄積エネルギーの減少分よりも大きくなっているという矛盾を説明する理由の1つとなることがわかった。また、熱物性値のポロイダル分布や熱負荷の非一様性を考慮する必要があることも明らかになった。


34000669
Development of RIMS apparatus for isotope analysis of Calcium nuclear waste materials
宮部 昌文; 大場 正規; 加藤 政明; 若井田 育夫; 渡部 和男
Journal of Nuclear Science and Technology 43(4), p.305-310(2006) ; (JAEA-J 00806)

 放射性廃棄物中の長寿命難分析核種である41Caを共鳴イオン化法で分析するために、光源装置の開発を行った。ルビジウム同位体のドップラーフリー吸収線に波長を固定した周波数基準レーザーと、干渉縞の相対位置からコンピューターで複数のレーザーの相対周波数を制御する機構を用いて、共鳴イオン化用レーザーの周波数制御を行う装置を開発した。ヘテロダイン分光法やカルシウムの共鳴蛍光分光法を用いて装置の周波数安定度や周波数同調精度を評価し、開発した光源が共鳴イオン化分析に十分な性能を有することを確認した。


34000670
Numerical simulations of short-term migration processes of dissolved Cesium-137 due to a hypothetical accident of a nuclear submarine in the Japan Sea
小林 卓也; 茅野 政道; 外川 織彦
Journal of Nuclear Science and Technology 43(5), p.569-575(2006) ; (JAEA-J 00807)

 海水循環モデル(Princeton Ocean Model)とランダムウォークモデル(SEA-GEARN)から構成される溶存状放射性物質移行コードシステムを開発した。モデルの応用として、原子力潜水艦の仮想事故により対馬海峡から放出された137Csの海洋中における移行を日本海南西海域において計算した。溶存状放射性物質の移行過程の季節変動を調べるために、10日ごとの瞬時放出計算を1年間に渡り実施した。溶存状放射性物質の移行傾向は2つのパターンに分類された。1月から9月に放出を開始したケースでは、全ての高濃度域が本州に沿って北東に移行した。10月から12月に放出を開始したケースでは、多くの高濃度域が西へ移行し、本州に沿って分布する137Cs 濃度は比較的低かった。東経134度線を通過する粒子数と対馬海峡の流入量の相関係数を求めたところ、R=0.718を得た。


34000671
Oxygen potential and defect structure of oxygen-excess pyrochlore Ce2Zr2O7+x
音部 治幹; 中村 彰夫; 山下 利之; 湊 和生
Journal of Physics and Chemistry of Solids 66(2-4), p.329-334(2005) ; (JAEA-J 00808)

 パイロクロア型ジルコニアは、原子力工学分野で、高レベル放射性廃棄物の処分形として大きな研究興味を惹いている。本研究では、パイロクロアCe2Zr2O7+xの酸素ポテンシャル(g(O2))と酸素不定比組成(x)と温度(T)の関係をemf測定法で明らかにした。また、その関係をもとに、xが既知のサンプルを作製して、その格子定数(a0)をXRD法で測定した。a0は、xの増加に伴いスムーズに減少した。これは、酸素イオンが格子中に挿入されることによって、Ce3+がCe4+になったためである。


34000672
Heat transfer and fluid flow of benard-cell convection in rectangular container with free surface sensed by infrared thermography
稲垣 照美*; 羽鳥 雅一*; 鈴木 智博*; 椎名 保顕
Journal of Visualization 9(2), p.145-160(2006) ; (JAEA-J 00809)

 自由界面における伝熱現象を、従来の熱電対等のセンサーを用いて計測する手法は、界面における流れや界面形状を変えてしまう等伝熱現象そのものに攪乱を及ぼすため適用が困難である。そこで、非接触で温度計測を行うことができる赤外線サーモグラフィーを自由表面を有するベナール対流の気液界面における温度計測に適用し、その計測可能性について調べた。実験では、シリコン油を用い、矩形容器の液相深さ,アスペクト比,液の粘性を変えることによりベナール対流と表面温度分布等の関係を調べ、k-εモデルを含む数値解析結果と比較した。その結果、表面温度分布から求められる対流パターンは数値解析結果とよく一致すること、実験から得られた熱伝達率は数値解析及び従来の結果とよく一致することを示し、赤外線サーモグラフィーの気液界面の伝熱現象の計測における有用性を示した。


34000673
XAFS and spectroscopic characterization for the structure and electronic structure of Ce-DMDPhPDA complexes in methanol
矢板 毅; 塩飽 秀啓; 鈴木 伸一; 岡本 芳浩; 島田 亜佐子*; Assefa, Z.*; Haire, R. G.*
Physica Scripta T115, p.302-305(2005) ; (JAEA-J 00810)

 N,N'-dimethyl-N,N'-diphenylpyridine-2,6-carboxyamide(DMDPhPDA)セリウム錯体の構造パラメータ及び電子状態についての研究を、XAFS及び蛍光,励起スペクトル法によって行った。DMDPhPDAは、3価ランタノイドからの3価アクチノイド分離のための試薬として有望なものである。SPring-8 BL11XUにおいて測定し、CeのK吸収端XAFS解析から、セリウムと酸素及び窒素の原子間距離はそれぞれ、253pm及び264pmであることを見いだした。ピリジル基の為す平面と金属の為す角はおよそ180度であった。得られた錯体は黄色の錯体で、その吸収スペクトルは大変ブロードなものであった。このピークの長波長側の部分は他のランタノイドでは見いだされなかった。XANESスペクトルは、Ceが3価であることを示しており、この吸収帯は、f-d遷移に基づくものであると推定した。


34000674
Structural analysis of Co-extracted heptavalent technetium and rhenium complexes by EXAFS
鈴木 伸一; 矢板 毅; 岡本 芳浩; 塩飽 秀啓; 本橋 治彦*
Physica Scripta T115, p.306-307(2005) ; (JAEA-J 00811)

 TBPを用いる核燃料再処理においてテクネチウムは非常に複雑な挙動を示す。特に、U(VI),Pu(IV)やZr(IV)が系内に共存するとテクネチウムは共抽出される。この共抽出のメカニズムとしては硝酸イオンと過テクネチウムイオンとの交換によるものであり、発表においては、U-Tc共抽出錯体の構造について同属であるRe(VII)やMn(VII)と比較しながら報告する。


34000675
Magnetic-field-induced transition in the lattice modulation of colossal magnetoelectric GdMnO3 and TbMnO3 compounds
有馬 孝尚*; 後藤 剛史*; 山崎 裕一*; 宮坂 茂樹*; 石井 賢司; 坪田 雅己; 稲見 俊哉; 村上 洋一*; 十倉 好紀*
Physical Review B 72(10), p.100102_1-100102_4(2005) ; (JAEA-J 00812)

 強磁場下での単結晶放射光X線回折実験を磁気誘電化合物GdMnO3とTbMnO3で行った。低温で磁場の印加によって誘起されるP//aの強誘電相は斜方晶のb軸方向へのq=1/2と1/4の整合な格子変調によって特徴づけられる。この格子変調は変調ベクトル(0 1/4 1)の反強磁性スピン配列によるものである。スピン構造の変化は直接磁場誘起誘電相転移と関係づけられる。なぜなら、いかなる(0 1/4 1)の整合スピン変調はPbnm空間群を持つ歪んだペルブスカイトのa軸に垂直な映心面を壊すからである。


34000676
Itinerant U 5f band states in the layered compound UFeGa5 observed by soft X-ray angle-resolved photoemission spectroscopy
藤森 伸一; 寺井 恒太; 竹田 幸治; 岡根 哲夫; 斎藤 祐児; 村松 康司; 藤森 淳; 山上 浩志*; 常盤 欣文*; 池田 修悟; 松田 達磨; 芳賀 芳範; 山本 悦嗣; 大貫 惇睦
Physical Review B 73(12), p.125109_1-125109_6(2006) ; (JAEA-J 00813)

 常磁性体UFeGa5に対して軟X線放射光(hν=500eV)を用いた角度分解光電子分光実験を行い、この化合物のバルクU 5f電子状態に敏感な電子状態を調べた。実験結果をU 5f電子を遍歴として取り扱ったLDAバンド計算と比較したところ、両者の一致は定性的なものであったが、フェルミ面の形状はよく再現された。この結果は、この化合物におけるU 5f電子は基本的に遍歴モデルで理解されることを示している。


34000677
Impurity effect on the diagonal incommensurate spin correlations in La2-xSrxCuO4
松田 雅昌; 藤田 全基*; 山田 和芳*
Physical Review B 73(14), p.140503_1-140503_4(2006) ; (JAEA-J 00814)

 La2-xSrxCuO4希釈ドープ領域では低温でスピングラス相と呼ばれる短距離磁気秩序相が存在する。このスピングラス相では磁気相関が非整合となっているが、特にx<0.055では、斜めストライプモデルから予想される位置に磁気散乱が観測されている。最近、この非整合磁気相関がストライプ秩序に起因するのではなく、フラストレーションによって引き起こされるスパイラル状態に起因するという可能性も指摘されている。また、適切なモデルを判別するために、La2-xSrxCuO4のCu位置をZnで置換して、非整合磁気相関の変化を調べることが提案されている。Zn置換はフラストレーションを弱めると期待されるために、非整合度(非整合ピーク間の距離)は小さくなり、ピーク幅(逆数が相関距離を反映)は狭くなることが予想される。われわれは、Cu位置をZnやNiで置換したLa1.95Sr0.05CuO4単結晶を用いて中性子散乱実験を行い、非整合磁気相関の不純物濃度依存性を調べた。Zn置換の実験結果からは、両者のモデルの善し悪しの区別がつかないが、Ni置換の実験結果からストライプモデルの方がより適切であるという結論を得た。


34000678
Finite size effects on kaonic "pasta" structures
丸山 敏毅; 巽 敏隆*; Voskresensky, D. N.*; 遠藤 友樹*; 千葉 敏
Physical Review C 73(3), p.035802_1-035802_10(2006) ; (JAEA-J 00815)

 高密度原子核物質中でのK中間子凝縮一次相転移で現れる、構造を持った混合相(パスタ構造;2相のうち体積の少ない方が、球形,棒状,板状となって格子をつくる非一様構造)を、相対論的平均場理論に基づく密度氾関数法により研究した。われわれの手法では、クーロン相互作用と荷電粒子密度分布を無撞着な形で導入することで、クーロン遮蔽効果(荷電粒子密度の再配置)を正確に記述することができる。K中間子パスタ構造に対するクーロン遮蔽と表面張力の効果を調べたところ、遮蔽効果は系のクーロンエネルギーが減少させ、その結果パスタ構造のサイズを大きくしていることがわかった。また、2相間に働く表面張力に対する相対論的平均場(σ, ω, ρ中間子)の寄与は小さく、K中間子と核子との相互作用が主な原因になっていることを示した。


34000679
Laser ion-acceleration scaling laws seen in multiparametric particle-in-cell simulations
Esirkepov, T. Z.; 山極 満; 田島 俊樹
Physical Review Letters 96(10), p.105001_1-105001_4(2006) ; (JAEA-J 00816)

 強度1020-1022W/cm2×(μm/λ)2のレーザーパルスをダブルレイヤーターゲットに照射して駆動されるイオン加速について、マルチパラメトリックPIC(Particle-in-Cell)シミュレーションにより探る。レーザー強度Iを与えた場合、広範囲の厚さl及び密度neのターゲットに対し、ある面密度σ=ne lにおいてイオンのエネルギーゲインは最も高くなり、このとき、σは√Iに比例する。また、薄膜ターゲットに対しレーザーパルス幅を最適化することにより、イオンの最大エネルギーEmaxはレーザーパルスパワーの平方根にスケールする。さらに、レーザー場の放射圧が優勢となる場合は、Emaxはレーザーパルスエネルギーに比例する。


34000680
Element-specific surface X-ray diffraction study of GaAs(001)-c(4×4)
高橋 正光; 水木 純一郎
Physical Review Letters 96(5), p.055506_1-055506_4(2006) ; (JAEA-J 00817)

 GaAs(001)-c(4×4)のその場解析を三次元構造と元素の違いに敏感な放射光表面X線回折を用いて行った。98個の独立な面内の反射と11本の分数次ロッドの測定に基づいて、原子座標と温度因子を決定した。X線解析の結果は、傾斜した表面ダイマーと表面第6層目まで及ぶひずみ場の存在を示した。表面ダイマーの原子種を特定するため、異常分散を用いた。その結果、Ga-Asからなるダイマーが形成していることが証明された。


34000681
Development of a simple reprocessing process using selective precipitant for uranyl ions; Fundamental studies for evaluating the precipitant performance
古志野 伸能*; 原田 雅幸*; 森田 泰治; 菊池 俊明*; 池田 泰久*
Progress in Nuclear Energy 47(1-4), p.406-413(2005) ; (JAEA-J 00818)

 N-シクロヘキシル-2-ピロリドン(NCP)がウラニルイオンと選択的に沈殿を生成するという性質を利用し、使用済燃料FBR燃料の簡易再処理プロセスの開発研究を実施している。NCPは、十分なウラニルイオンとの沈殿生成能力を持ち、核分裂生成物元素に対する除染性及び硝酸溶液におけるγ線への耐性も十分にあることが確かめられた。これらはNCPの再処理への適用性を示すものである。また、N-プロピル-2-ピロリドン(NProP), N-ブチル-2-ピロリドン(NBP)及びN-ブチル-2-ピリドン(NBPyr)の他の沈殿剤の性能も検討し、NProP及びNBPにおいては核分裂生成物に対してより高い除染係数が得られることを見いだした。これは、NProP及びNBPがNCPと比べ低疎水性であることによるものと考えられる。さらに、NBPyrの耐放射線性がNCPよりも優れることを示す試験結果も得た。


34000682
Development of a simple reprocessing process using selective precipitant for uranyl ions; Engineering studies on systems for precipitating and separating
山崎 和彦*; 近沢 孝弘*; 田巻 喜久*; 菊池 俊明*; 半沢 正利*; 森田 泰治; 池田 泰久*
Progress in Nuclear Energy 47(1-4), p.414-419(2005) ; (JAEA-J 00819)

 N-シクロヘキシル-2-ピロリドン(NCP)の沈殿法による使用済FBR燃料の簡易再処理プロセスの開発研究を実施している。工学技術的及び経済的成立性を評価するため、沈殿挙動についての基礎的検討をもとに将来の200tHM/yのプラントの1/20スケールの装置を整備した。おもに沈殿槽及び沈殿分離装置から成る本再処理システムには、経済的理由により連続運転が求められる。試験の結果、沈殿槽は所定の滞留時間(約30分)でウラニルイオンのNCP沈殿を安定に生成することができ、沈殿分離装置は高い効率でスラリーより沈殿を分離できることが確かめられた。さらに、洗浄操作により核分裂生成物元素に対する除染効率の向上が可能なことを見いだした。


34000683
Radiator design for detecting high-energy neutrons with a nuclear track detector
小田 啓二*; 今坂 雄一*; 山内 知也*; 中根 佳弘; 遠藤 章; 俵 裕子*; 山口 恭弘
Radiation Measurements 40(2-6), p.570-574(2005) ; (JAEA-J 00820)

 原子核飛跡検出器は、中性子に対する積算型個人線量計として広く利用されているが、10数MeV以上の高エネルギー中性子に対しては感度が急激に低下する問題がある。そこで、高エネルギー中性子との核反応によって重荷電粒子を放出し、飛跡検出器と組合せることにより、検出効率及びエネルギー特性を改良できるラジエータを提案した。中性子との相互作用に基づく解析により、重水素化物質とポリエチレンから成る二層構造が検出効率の特性改善に有望であることを見いだした。この二重構造において、重水素化物質層は、ポリエチレン層で中性子との核反応により発生した陽子の減速材としての役割に加え、自らの層内で発生する重水素の供給源の役割も担っている。そしてTIARAの準単色中性子場を用いた照射実験により、軽水及び重水ラジエータの二重構造による増感効果を実験的に確認した。また二層の厚さを変えることにより、相対感度の中性子エネルギー依存性をある程度制御できることを見いだした。


34000684
Measurement of radiolytic yield of nitric acid in air
神田 征夫*; 沖 雄一*; 横山 須美; 佐藤 薫; 野口 宏; 田中 進*; 飯田 孝夫*
Radiation Physics and Chemistry 74(5), p.338-340(2005) ; (JAEA-J 00821)

 高エネルギー加速器の運転に伴い発生するビームライン周辺の高エネルギー放射線場では、空気の放射線分解により窒素酸化物やオゾンが生成される。窒素酸化物のうち、硝酸は強い酸化力を持つことから、機器類の腐食の原因となる。J-PARCのような大強度陽子加速器施設では、空気中に大量に硝酸が生成され、放射線と同時に腐食による機器類の損傷が問題となる。しかし、高エネルギー放射線場での線量や線量率と硝酸の生成との関係についてはほとんど報告されていない。そこで、本研究では、高エネルギー陽子照射により、空気中に生成される硝酸量を定量的に評価するため、硝酸のG値(100eVあたりの生成分子数)を測定した。48MeV陽子を5分間、2nAでガラス容器に封入した室内空気を照射した結果、高エネルギー陽子照射に対する硝酸のG値は1.46±0.12となった。この値は、以前に陽子シンクロトロンの放射線場で得られた放射線分解生成物の相対的な生成比から推定した硝酸のG値よりも高かった。しかし、2000及び4300R/hの線量率でCo-60のγ線を空気に照射した場合の硝酸のG値と非常に近い値となった。


34000685
Angular distribution measurements of photo-neutron yields produced by 2.0 GeV electrons incident on thick targets
Lee, H.-S.*; 伴 秀一*; 佐波 俊哉*; 高橋 一俊*; 佐藤 達彦; 秦 和夫*; Chung, C. W.*
Radiation Protection Dosimetry 116(1-4), p.653-657(2005) ; (JAEA-J 00822)

 厚いターゲットへの2GeV電子入射による光中性子生成角度分布を測定した。本測定では、以前測定した90度方向だけでなく、48及び140度方向に対する光中性子生成率の測定も行い、角度分布に関するより詳細な情報を得た。測定対象とした中性子のエネルギー範囲は8〜250MeVで、ターゲットは、それぞれ10放射長の銅,スズ,タングステン及び鉛とした。測定値をMCNPX2.5及びEGS4とPICA3を組合せた計算値と比較した結果、計算値は、測定値を過小評価する傾向にあることが判明した。


34000686
High current carbon beam production with direct plasma injection scheme
岡村 昌宏*; 柏木 啓次; 榊原 和彦*; 高野 淳平*; 服部 俊幸*; 林崎 規託*; Jameson, R. A.*; 山本 和男*
Review of Scientific Instruments 77(3), p.03B303_1-03B303_3(2006) ; (JAEA-J 00823)

 われわれは、プラズマ直接入射法(DPIS)という新しい重イオンビーム生成技術の研究を2000年より行っている。DPIS用に設計された高周波四重極線形加速器が運転を開始し、60mAの大電流炭素ビームの加速に成功した。その加速ビームに含まれる大部分のイオンは炭素4価であることが分析によって明らかになった。


34000687
Analysis of laser-produced heavy ions for direct plasma injection scheme
榊原 和彦*; 岡村 昌宏*; Kondrashev, S.*; 服部 俊幸*; 柏木 啓次; 金末 猛*
Review of Scientific Instruments 77(3), p.03B304_1-03B304_3(2006) ; (JAEA-J 00824)

 高強度多価イオンビームを加速する手法として、われわれはレーザーイオン源を用いた直接プラズマ入射法(DPIS)を開発した。この方法では、レーザーイオン源で生成されたイオンビームを低エネルギービーム輸送部(LEBT)を介さずに直接RFQ線形加速器に入射することによって、LEBTでのビーム損失を回避する。われわれは大強度ビーム加速用RFQ線形加速器を用いてDPISによって60mAの大強度ビーム加速を達成した。次の段階として、炭素よりも原子量が大きい、アルミニウム,鉄,タンタルを用いたDPIS用レーザーイオン源として用いる。本論文はこれらの元素を3Jのガラスレーザーを用いてイオン化し、その価数分布測定を行った結果を報告する。


34000688
Convergence study of bispectral analysis in experiments of high temperature plasmas
永島 芳彦*; 伊藤 早苗*; 矢木 雅敏*; 伊藤 公孝*; 藤澤 彰英*; 星野 克道; 篠原 孝司; 上原 和也; 草間 義紀; 江尻 晶*; 高瀬 雄一*
Review of Scientific Instruments 77(4), p.045110_1-045110_6(2006) ; (JAEA-J 00825)

 トロイダルプラズマの非線形揺動解析の指標であるバイスペクトルの収束に関する研究である。収束性の理論的検討を行った。そして、現実のJFT-2Mトカマクプラズマのドリフト波揺動や帯状流を示す揺動の全二乗バイコヒーレンスやバイスペクトルの収束性は理論と傾向が一致すること、また収束するのに必要な実現サンプル数はかなり多くないといけないことを(JFT-2Mトカマクの実験データでは約1000弱)初めて明らかにした。以上のように今後の揺動解析を基礎付ける成果を得た。


34000689
Characterization of F+-irradiated graphite surfaces using photon-stimulated desorption spectroscopy
関口 哲弘; 馬場 祐治; 下山 巖; Nath, K. G.
Surface and Interface Analysis 38(4), p.352-356(2006) ; (JAEA-J 00827)

 部分電子収量(PEY)法と光刺激イオン脱離(PSID)法とを組合せた新しいX線吸収端微細構造(NEXAFS)分光法の開発を行った。その開発された検出器を用いてF+イオン照射により表面修飾を施したグラファイト最表面における結合配向を調べた。PEY法により測定されたフッ素1s内殻励起準位の角度依存NEXAFSスペクトルには大きな偏光角度依存は認められなかった。それに対し、飛行時間質量分析法によりF+イオンを検出し、その収量を縦軸とするNEXAFSスペクトルを得た。F+イオン収量スペクトルは吸収スペクトルと異なり=C-Fサイトに由来するσ*(C-F)励起において強度増強された。またそのピークのみピーク面積が顕著に偏光角度に依存した。イオン脱離と二次電子放出のそれぞれの観測深さを見積もり考察を行った。イオン収量XAFSは表面敏感であり、電子収量XAFSはバルク敏感であると結論した。またH+イオンやF+イオンの収量XAFSスペクトルも表面構造や解離・脱離過程に関して有用な知見を与えることもわかった。


34000690
In situ characterization of the heterointerfaces between SrO films and dangling-bond-terminated Si surfaces
朝岡 秀人; 山崎 竜也*; 山本 博之; 社本 真一
Thin Solid Films 508(1-2), p.175-177(2006) ; (JAEA-J 00828)

 接合界面に水素終端処理を行うことによって格子不整合度による成長物質の制約が緩和されたSiとSrとの物質間でヘテロエピタキシャル成長に成功している。RHEEDなどによるその場観察法により成長初期段階から歪みのない薄膜結晶が成長する過程を見いだした。


34000691
スウェーデン・スタズビック社における金属廃棄物の溶融除染とフリーリリース
川妻 伸二; 石川 敬二; 松原 達郎; 堂野前 寧; 今川 康弘
デコミッショニング技報 (33), p.67-74(2006) ; (JAEA-J 00831)

 旧核燃料サイクル開発機構中央安全委員会中央安全専門部会放射性廃棄物・廃止措置分科会が行った「海外調査」で平成17年8月29日にスウェーデンのStudsvik RadWaste社を訪れ、同社における金属廃棄物の溶融除染とフリーリリースの状況を調査する機会を得た。同社では1987年以降、国内外の放射性金属廃棄物を受入れ、溶融除染によりその大半をフリーリリースしてきている。その順調な操業の背景には、同社の努力はもとより、規制当局(SSI:スウェーデン放射線防護局)の強い指導力の下に達成することができたものであった。本調査は、Dr. J. Lorenzen「欧州における放射性金属廃棄物のフリーリリース:スウェーデンスタズビック社での17年間のフリーリリース経験」日本原子力学会誌Vol.46,No.9, 2004、に基づいて行っており、併せて参照されたい。


34000692
「高速増殖炉サイクルの実用化戦略調査研究」フェーズIIの研究成果まとまる
向 和夫
原子力eye 52(6), p.20-23(2006) ; (JAEA-J 00833)

 実用化戦略調査研究フェーズII成果の概要として、開発目標,有望な候補概念の検討と研究開発の重点化,今後の研究開発計画案と課題について概括した。フェーズII研究にあたっては5つの開発目標を設定して研究を進め、それぞれの能力を最大限に引き出すことが可能なFBRシステム及び燃料サイクルシステムを構築した。また、それらを組合せたFBRサイクルシステムとしての有望概念の技術総括を行い、主として開発を進めていく概念と補完的に開発を進めていく選択肢を提示した。今後の研究開発については、主概念に重点的に投資していくこととし、補完概念は技術的実現性の観点から重要な課題を中心に進めることが適切と考える。実用化に向けたFBRサイクルの研究開発は、2015年頃までの技術体系整備に向けた第一段階,実用化を見通すためのFBRサイクル技術の実証のための第二段階,商業ベースでの本格導入を目指して実用化を推進する第三段階の三つの段階を踏んで徐々にステップアップを図りながら進めることが適切である。


34000693
放射線抵抗性細菌のたんぱく質を利用した高効率DNA修復試薬の実用化
鳴海 一成
原子力eye 52(6), p.60-63(2006) ; (JAEA-J 00834)

 原子力機構では、「量子ビーム」を利用した量子ビームテクノロジーの研究開発を進めている。放射線抵抗性細菌のDNA修復機構解明研究の過程で、放射線耐性に重要な役割を果たしている新規DNA修復促進タンパク質PprAが得られた。本稿では、放射線抵抗性細菌の研究と新規遺伝子の発見の経緯、並びにPprAタンパク質を利用したバイオ研究の実用化について解説した。また、量子ビームテクノロジーを用いたDNA修復機構解明研究の今後の計画についても言及した。


34000694
自己再生自動車触媒のXAFS, DANESによる構造研究
水木 純一郎
表面科学 27(5), p.291-297(2006) ; (JAEA-J 00835)

 放射光の異常分散効果を利用した構造解析手法を自動車排ガス浄化触媒の構造解析に応用した例を紹介し、実デバイスとしての排ガス浄化触媒機能と構造との相関が解明されたことを紹介する。内容の大部分は、2002年にわれわれがNATURE誌に発表したものを解説したものであるが、それに加えて新しくin situの時間分解XAFSの実験結果を示し、実際に触媒金属であるPdが骨格であるペロブスカイト酸化物結晶から出たり入ったりする現場をその場観察することに成功した。また、実験手法としてX線吸収分光法とX線回折法とを合体させ、回折強度の吸収端近傍エネルギー依存性(DANES)を測定することが構造研究に役立つことを示す。


34000695
放射光低温高圧単結晶X線回折装置と準結晶研究への応用; 静水圧的高圧実験の低温領域への拡張に向けて
綿貫 徹; 青木 勝敏
固体物理 41(5), p.329-336(2006) ; (JAEA-J 00839)

 静水圧的高圧下での構造研究を低温領域でも可能とするため、単結晶振動写真法による低温高圧下X線回折装置を構築した。静水圧技術は微弱な変化,複雑な変化を対象としたときに効果的だが、本装置では、超格子反射や散漫散乱の観測を通じて、5-300K,常圧-50GPaの温度圧力領域で、そのような構造変化を捉えることができる。このような測定を可能とするには、静水圧実験で用いる微小試料からの回折X線が、圧力容器(ダイアモンドアンビルセル)からの散乱X線に隠されないようにすること、及び、低温においても静水圧条件を実現することが必要である。本装置では、試料サイズ径の入射X線ビームを微小試料に丁度照射することが、数ミクロンの精度で可能であり、それにより試料以外からの散乱X線の効果的低減を実現している。また、圧力媒体の硬化する低温においても試料に非静水圧的応力を加えない定圧条件下測定法を確立し、かつ、簡便に実行できるようにした。本装置を用いて、準結晶物質群の低温高圧下における構造的性質を調べている。その結果、Cd-Yb合金の近似結晶(準結晶物質と局所構造が同一である結晶物質)において、物質内部に配列するカドミウム原子団が、圧力温度に応じて敏感に向きを変え、5種類ものパターンに及ぶ配向秩序構造を示すという著しい現象を発見した。


34000696
イメージング遠隔パーティクルカウンター; 後方散乱光を利用する新しい浮遊微粒子の遠隔計測システム
大図 章; 岡本 隆太*; 川北 裕司*
クリーンテクノロジー 16(3), p.56-61(2006) ; (JAEA-J 00840)

 近年の半導体及び大型ディスプレイパネルの製造現場であるクリーンルーム(CR)では、気中に浮遊する微粒子の数量,粒径を簡便にリアルタイムでモニタリングできる計測器を必要としている。原子力関連施設から大気中に放出されるエアロゾルの検出を目的に開発した遠隔パーティクルカウンター技術をCR用に応用した微粒子遠隔計測システムを開発した。レーザーの出射及び受信光学系を改良することにより狭い室内でも使用可能となった。現在、6mまでの室内空間において粒径約0.5ミクロンまでの空間に浮遊する微粒子をモニタリングすることができ、粒径分布まで測定することができる。また、レーザー装置,カメラ感度及びレンズ倍率を改良することにより粒径0.3ミクロンまでの微粒子を測定できる目途をつけることができた。この計測手法と現在開発中のCR用計測器の性能について報告する。


34000697
天然ウラン,トリウムを含む消費財中の放射能濃度とその利用等による被ばく線量の評価
吉田 昌弘*; 遠藤 章; 佐藤 滋朗*; 大畑 勉*; 渡邊 正敏*; 大山 柳太郎*; 古屋 廣高*
日本原子力学会和文論文誌 4(3), p.213-218(2005) ; (JAEA-J 00842)

 天然起源の放射性核種を有意な量を含む物質はNORM(Naturally Occurring Radioactive Materials)と呼ばれ、NORMを含むさまざまな消費財は日常生活において広く利用されている。NORMの一つである天然のウラン,トリウムを含む消費財には、研磨剤,陶器の釉薬,タングステンアーク溶接電極棒等の工業製品のみならず、家庭用温泉器,寝具,肌着,装飾品等の家庭用品も数多くある。したがって、日常生活で身近に存在するこれらの製品中の放射能濃度と、その製品を利用することによる被ばく線量を評価することは、人体への影響,放射線防護と規制のあり方を考えるうえで重要である。本研究では、天然のウラン,トリウムを含有する市販の消費財を収集し、それらの濃度を測定するとともに、代表的な消費財に対して、典型的な使用形態を想定し被ばく線量を評価した。


34000698
発電用新型炉の高温構造設計手法と3次元免震技術の開発
井上 和彦*; 柴本 宏*; 高橋 健司; 生玉 真也*; 森下 正樹; 青砥 紀身; 笠原 直人; 浅山 泰; 北村 誠司
日本原子力学会誌 48(5), p.333-338(2006) ; (JAEA-J 00844)

 我が国の発電用新型炉である高速増殖炉(FBR)の実用化には、経済性,安全性を同時に満足する合理的設計が要求される。高温・低圧で運転されるFBRは、冷却材温度変動によって生じる熱応力が緩和しやすい薄肉の構造が有利になるが、薄肉化を進めると剛性の低下によって耐震性が損なわれることから、耐熱荷重設計と耐震設計の調和がFBR構造設計の要諦となる。FBR実用化に向けては、プラントの建設コスト低減を目指して小型で簡素な機器設備が計画されている。この計画に対し、従来の設計手法では熱荷重と地震荷重による応力の両者が厳しくなり、構造成立性を見通すことが難しくなる。さらに、将来的には設計上想定すべき地震動が引き上げられる方向にある。そこで、これらに対処するため、熱応力に対する耐性に優れるFBR用高クロム鋼,高温で生じる非弾性変形解析法や熱荷重設定法を含む高温構造設計法,設計・製作・運転を包括的に最適化するシステム化規格、これに加え地震荷重による制約を解決する3次元免震技術の開発を進めた。本研究は、「FBRサイクル実用化戦略調査研究」において、有望プラント概念の2005年度提示を目的とし実施したものである。その中で、2000〜2004年度実施の経済産業省受託研究「発電用新型炉技術確証試験」により、構造設計の実現性を見通しを示すために開発した技術成果を紹介する。これらの成果は、今後、検証データを蓄積し将来の規格・基準類化を促進するため暫定指針類として体系化した。


34000699
中性子結晶解析によって観測されたB型DNAの水和水の配向
新井 栄揮; 茶竹 俊行*; 新村 信雄
日本結晶学会誌 48(2), p.133-139(2006) ; (JAEA-J 00845)

 本研究ではB型DNA+量体d(CCATTAATGG)2について、X線及び中性子結晶構造解析を行い、多くの水和水について水素原子位置を含めて決定することに成功した。DNA二重らせん周辺の水和パターンは、核酸の構造と機能に重要な役割を果たすと考えられている。特に、AT塩基対が連なる領域のMinor groove(副溝)内には、六角形状の水和パターンが存在することが知られていた。しかし、それはX線結晶回折によって明らかにされた水分子の酸素原子位置から予想されたものであった。今回、水和水の水素原子位置が決定できたことにより、水分子の配向を含めた詳細な水和水ネットワークの様子が明らかになった。これにより、水和パターンは単純な六角形だけでは表せず、これまでの予想よりも数多くの水素結合がDNA鎖−水分子間に存在することが明らかになった。


34000700
細胞局部照射実験の歴史と粒子線マイクロビームのマイクロサージャリへの応用
小林 泰彦
Radioisotopes 55(5), p.281-292(2006) ; (JAEA-J 00846)

 重粒子線(重イオンビーム)は物体中での直進性が極めて高く撃ち込み深度の正確な制御も可能であるため、マイクロビーム化して体外から生物組織中の特定の組織,器官,細胞を狙って照射して局部的に殺滅あるいは不活性化することができる。このラジオマイクロサージャリ技術は、特定の組織や器官を外科手術的に摘出する代わりに局部照射によって生体に引き起こされる影響を解析する新しい生体機能解析法となりうる。この目的では紫外線のマイクロビームも用いられてきたが、蛋白質や細胞膜へのダメージが大きく細胞構造を破壊あるいは変化させてしまうため生体機能の解析に必ずしも最適ではなかった。これに対して電離放射線であるイオンビームでは細胞構造自体にはほとんど影響を与えずに局所的にDNA損傷が導入されることから、生体中の特定細胞の分裂阻害や遺伝子発現誘導などの極微操作も可能になると考えられる。そこで、日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)では、最小ビーム径を数μmφにまで絞った重イオンマイクロビームを大気中に取り出し、顕微鏡観察下の生物試料に対して局部照射するシステムを開発した。マイクロビームによる細胞局部照射実験について、過去の数々の試みの歴史を紹介するとともに、原研高崎研(現・高崎量子応用研究所)のイオン照射研究施設(TIARA)に設置された重イオンマイクロビーム細胞局部照射装置の概要と、カイコ受精卵の発生・分化過程の解析や植物の根の重力屈性に関する機能の研究など生物学研究への応用例を紹介する。


34000701
北海道における地震に関するアイヌの口碑伝説と歴史記録
新里 忠史; 重野 聖之*; 高清水 康博*
歴史地震 (21), p.121-136(2006) ; (JAEA-J 00847)

 北海道とその周辺海域における地震の地域性を把握するために、アイヌ文化期における地震に関するアイヌの口碑伝説と歴史記録の文献調査を行うとともに、それら史料が過去に地震に襲われた可能性を示すものかどうかの検討を行った。その結果、28の口碑伝説と歴史記録を収集できた。個々の史料を検討した結果、24の史料が地震に関するものと解釈された。アイヌ文化期とそれ以前の時期において地震に襲われたことが推定される地域は、おもに北海道の太平洋沿岸に分布する。それら地域は、北海道とその周辺において地震活動が活発な地域に隣接する。過去から現在までの地震の分布傾向に基づくと、将来の地震の分布は、アイヌ文化期とほぼ同期間の将来において、現在の地震分布とほぼ同一であると推測できるであろう。


34000702
Ice XIの中性子回折; 水素原子の配置が完全に秩序化した氷は存在するか
深澤 裕
低温科学 64, p.167-172(2006) ; (JAEA-J 00848)

 高圧下の氷は温度を下げるとIce VIIIと呼ばれる水素秩序構造に変化する。中性子回折の研究から、Ice VIIIのすべての水素原子は秩序化した配置を有することがわかっている。それでは、大気圧下に存在する通常の氷(Ice Ih)の場合、低温では何が起きるのであろうか?ここで、Ice XIと呼ばれる水素秩序構造が、長い時間を経て出現する可能性について考察する。果たして、水素原子の配置が完全に秩序化したIce XIは存在するのであろうか?


34000703
揚水試験結果の解析手法の変遷と最近の技術
進士 喜英*; 西垣 誠*; 竹内 真司
土と基礎 54(5), p.6-9(2006) ; (JAEA-J 00849)

 揚水試験は、地盤の浸透特性を原位置で評価する調査法であり、その試験結果の解析法は、Theis, Jacob法(国際的にはCooper-Jacob法と呼ばれている)が用いられている。しかし、この解析法は理想的な条件に対する方法であり、実際の現場データを解析するには種々の限界がある。この観点から、本報文では新しい揚水試験の解析法に関する最近の研究をレビューし、これらを幾つかの世代に大きく分類し、各世代での代表的な成果を取りまとめる。また、最近の調査法として注目されている観測量の時間微分項を用いた手法を説明する。


34000704
Study on response function of organic liquid scintillator for high-energy neutrons
佐藤 大樹; 佐藤 達彦; 遠藤 章; 山口 恭弘; 高田 真志*; 石橋 健二*
AIP Conference Proceedings 769 , p.1680-1683(2005) ; (JAEA-J 00850)

 高エネルギー中性子に対する有機液体シンチレータの応答関数を評価するために、SCINFUL-QMDコードを開発した。SCINFUL-QMDによる計算結果の妥当性を調べるため、放射線医学総合研究所のHIMACにおいて、有機液体シンチレータの応答関数を測定した。800MeV/uのSiイオン及び400MeV/uのCイオンを、厚い炭素ターゲットに入射させ、核破砕反応により放出された中性子に対して、飛行時間法によりその運動エネルギーを測定し、入射中性子エネルギーごとの応答関数を導出した。実験値とSCINFUL-QMDによる計算値を比較した結果、SCINFUL-QMDは、既存の応答関数計算コードよりも適切に実験値を再現できることがわかった。


34000705
Status of the JENDL project
柴田 恵一; 中川 庸雄; 深堀 智生; 市原 晃; 岩本 修; 大塚 直彦*; 片倉 純一
AIP Conference Proceedings 769 , p.171-176(2005) ; (JAEA-J 00851)

 招待講演としてJENDL計画の現状について報告する。内容は、以下の通りである。汎用ライブラリーとして、JENDL-4が開発中である。このライブラリーでは、中性子入射反応に加え、荷電粒子・光子入射反応や自発核分裂データも核種を限定して扱われる。最大入射エネルギーはニーズに応じて、現行の20MeVより拡張される。JENDL-4では、マイナーアクチニドやFPデータの精度向上,共分散データの充実等が図られるとともに、品質保証が重要なテーマとなる。一方、特殊目的ファイルとしてはJENDL高エネルギーファイル、光核反応データファイルを今年公開した。また、ADS開発のために、アクチニドファイルや共分散ファイルの作成を行っている。評価用コードの開発では、核反応断面積計算コードを作成し、最新の原子核理論をデータ評価に活用している。さらに、データ利用者のために、インターネットを介した総合核データ利用システムを開発中である。


34000706
JENDL photonuclear data file
岸田 則生*; 村田 徹*; 浅見 哲夫*; 小迫 和明*; 真木 紘一*; 原田 秀郎*; Lee, Y.*; Chang, J.*; 千葉 敏; 深堀 智生
AIP Conference Proceedings 769 , p.199-202(2005) ; (JAEA-J 00852)

 光核反応に対する核データは、高エネルギー電子加速器の遮蔽設計及び高エネルギーγ線治療の分野に必要である。JENDL光核反応データファイルは、シグマ委員会の光核反応データ評価ワーキンググループによって整備された。われわれは多くの文献サーベイから、評価に必要な十分な実験データが圧倒的に不足しているので、光核反応データファイルを実験データのみから作成するのは困難であるという結論を得た。したがって、評価は統計模型核反応モデルの助けを借りて実施した。JENDL光核反応データファイルに格納される断面積データ等の物理量は、光吸収断面積,中性子,陽子,重陽子,三重陽子,3He粒子,α粒子の収量及び二重微分断面積,同位体生成断面積である。アクチノイド核種に対しては、これに光核分裂断面積を加える。格納される2Hから237Npまでの68核種に対する最大光子入射エネルギーは140MeVである。


34000707
Neutron cross-section evaluations for 70,72,73,74,76Ge
岩本 修; Herman, M.*; Mughabghab, S. F.*; Oblozinsk'y, P.*; Trkov, A.*
AIP Conference Proceedings 769 , p.434-437(2005) ; (JAEA-J 00853)

 ゲルマニウム同位体に対する新たな評価を、熱エネルギーから20eVの中性子に対して行った。光子の生成に特に注目した。共鳴領域で以前の評価と比較し、大きな改善が行われた。高速中性子領域の評価に計算コードEMPIRE-2.19を使用した。鉄及びニオブに対する計算を通じて、光子生成の妥当性の検証を行った。また、同位体の評価値から天然元素データを構成し、天然ゲルマニウムの実験データと比較を行った。光子生成に関するさまざまな量を示し、中性子入射エネルギーに対する強い依存性について議論を行う。


34000708
Historical overview of nuclear data evaluation in intermediate energy region
深堀 智生
AIP Conference Proceedings 769 , p.47-52(2005) ; (JAEA-J 00854)

 近年、中高エネルギー核データが核変換処理のための加速器駆動システム,核破砕中性子源粒子ビームによる先端ガン治療,半導体の放射線によるエラー率推定,宇宙飛行士の被曝線量評価等の多くの研究分野から要求されている。この要求に応えるため、世界中の多くのグループが20MeV以上のエネルギー領域における核データ評価に関する活動を続けている。中高エネルギー領域の核データ評価の初期の段階は米国において開始された。例えば、1980年代後半、ブルックヘブン国立研究所核データセンターのPearlsteinは、系統式を作成し、ALICEコードを改良して、中高エネルギー陽子及び中性子核データ評価を行った。ローレンス・リバモア国立研究所では、同時期に医療用の中高エネルギー核データを開発している。これらの活動に続いて、欧州,日本,ロシア,中国,韓国等でこのエネルギー領域での核データ整備が始まった。本稿では、中高エネルギー核データ評価に関する方法・成果をレビューするとともに、JENDL高エネルギーファイルを中心に各国のファイルと実験データの比較及びベンチマーク計算結果の比較を行う。


34000709
Efficient laser acceleration of proton beams for intense sources of low energy neutrinos
Pegoraro, F.*; Bulanov, S. V.; Esirkepov, T. Z.; Migliozzi, P. *; 田島 俊樹; Terranova, F.*
AIP Conference Proceedings 827 , p.130-139(2006) ; (JAEA-J 00855)

 強いレーザーの照射により高出力の高エネルギー陽子線を発生する条件を検索する。このような陽子線があれば、コンパクトな低エネルギーニュートリノを作る線源を考案することができる。


34000710
Long-term simulation of ambient groundwater chemistry at Horonobe underground research laboratory, Japan; Application of coupled hydro-geochemical model
山本 肇*; 國丸 貴紀; 操上 広志; 下茂 道人*; Xu, T.*
Proceedings of 2nd International Conference on Coupled T-H-M-C Processes in Geo-systems; Fundamentals, Modeling, Experiments and Applications (GeoProc 2006) , p.382-387(2006) ; (JAEA-J 00856)

 日本原子力研究開発機構が進めている幌延深地層研究計画では、堆積岩の水理地質及び地球化学に関する調査・モデル化を実施している。本論文は地球化学調査及び水理−地球化学連成モデル化の現状を報告するものである。8本の深層ボーリング調査結果から、研究所設置地区周辺の地下水は浅層の淡水系地下水と深層の塩水系地下水が混合したものであることが示唆されている。本論文において、およそ50万年前から現在に至る淡水系地下水と塩水系地下水の混合及び岩石−水反応による地下水形成を解析的に検討した。その結果、(1)解析結果は塩分濃度や地下水組成の空間分布と淡水系地下水,塩水系地下水の混合というこれまでの概念と整合的である,(2)淡水系地下水の浸入は陽イオン交換を通してpHを上昇させる,(3)酸化還元フロントは酸化水の浸入により進行するが、黄鉄鉱などの鉱物の減少により緩和される、ことがわかった。


34000711
Hydrogeological model in Horonobe Underground Research Laboratory Project
操上 広志; 國丸 貴紀; 藪内 聡; 瀬尾 昭治*; 下茂 道人*; 熊本 創*
Proceedings of 2nd International Conference on Coupled T-H-M-C Processes in Geo-systems; Fundamentals, Modeling, Experiments and Applications (GeoProc 2006) , p.584-589(2006) ; (JAEA-J 00857)

 日本原子力研究開発機構が進めている幌延深地層研究計画では、堆積岩の水理地質及び地球化学に関する調査・モデル化を実施している。本論文は水理地質調査及びモデル化の現状を報告するものである。水理地質調査はおもに深層ボーリング孔を利用した水理試験,フローメーター検層,コアを利用した室内試験から成る。これまでの調査から、透水係数に深度依存性があることや割れ目帯が水理特性に大きく寄与していることがわかってきた。これらの知見に基づき、割れ目帯の空間的分布を考慮した等価不均質連続体モデルを利用した地下水流動解析を実施し、水圧と比較することでモデルの妥当性を検討した。


34000712
Developments of probabilistic fracture mechanics analysis codes for reactor pressure vessel and piping
鬼沢 邦雄; 柴田 勝之; 鈴木 雅秀
Proceedings of 6th International Conference on the Integrity of Nuclear Components , p.230-238(2006) ; (JAEA-J 00858)

 確率的破壊力学解析(PFM)手法は、従来の決定論的手法と異なり合理的に材料特性,欠陥分布,検査精度などの不明確さを取り入れるために最近注目されている。このためJAEAでは、過渡荷重や地震荷重などの設計荷重条件下における原子炉圧力容器(RPV)や配管のPFM解析コードPASCALを開発している。原子炉圧力容器(RPV)に関しては、炉心領域で材料の中性子照射脆化を考慮して、加圧熱衝撃(PTS)などの過渡条件下における条件付きのき裂発生及び破壊確率を評価することができるPASCALコードを開発している。また、経年劣化及び地震ハザードを考慮して計算される地震応力を考慮できる配管信頼性解析コードを開発している。PASCAL-SC及びPASCAL-ECは、それぞれ応力腐食割れ及び流動加速腐食を考慮して、運転荷重及び地震荷重に対する破損確率を解析するものである。これらの解析コードの概要と幾つかの結果を紹介する。


34000713
雷からの放射線発生とそのメカニズム
鳥居 建男
第29回放射線科学研究会資料集 , p.7-16(2006) ; (JAEA-J 00859)

 日本海沿岸で発生する冬季雷活動時に環境放射線モニタの指示値が上昇することがある。そこで、雷活動による放射線レベルの変動について研究してきた。その結果、雷雲中の高電界領域で逃走電子が生成され、電磁シャワーが発生する可能性が示唆された。さらには、放射線が雷放電を誘発している可能性も出てきた。本講演では、雷雲中での放射線発生機構や放射線による雷放電誘発の可能性について最近の観測事例を交えながら紹介する。


34000714
先進湿式法再処理システムに関する研究開発; 高速増殖炉サイクルの実用化戦略調査研究フェーズIIの成果
中林 弘樹; 駒 義和; 中村 博文; 佐藤 浩司
第4回再処理リサイクルセミナーテキスト , p.142-146(2006) ; (JAEA-J 00860)

 本発表は「高速増殖炉サイクルの実用化戦略調査研究」フェーズIIにおいて実施した、先進湿式法再処理システムに関する設計検討の成果を説明するものである。本システムの検討においては、FBRの使用済燃料の処理を行ううえで、安全性の確保を前提として、再処理コストの低減,環境負荷低減,資源有効利用性向上、及びシステム自体が持つ核拡散抵抗性の向上、に向けた設計要求が課せられた。この要求を満足するため、抽出工程の処理負荷低減のための晶析法の導入,抽出工程の合理化及び核拡散抵抗性向上を目指した簡素化溶媒抽出法の採用,二次廃棄物発生量の低減のための使用薬品のソルトフリー化,環境負荷低減の観点からAm/Cmの回収を行うためのMAクロマトグラフィーの導入、など新規技術を導入した先進湿式法再処理システムの概念を構築した。技術的評価の結果、本システムは本調査研究において要求された設計要求に対する適合性可能性が高く、既存技術の延長線上にあることから技術的実現性も高いことが示された。


34000715
Status and future plan of JAEA Mutsu tandetron AMS facilities
天野 光; 甲 昭二; 木下 尚喜; 鈴木 崇史; 北村 敏勝
UTTAC-74 , p.77-81(2006) ; (JAEA-J 00863)

 加速器質量分析装置(AMS: Accelerator Mass Spectrometer)は、タンデム型加速器と質量分析装置を組合せた装置である。1997年4月に原研むつ事業所に導入されたAMSは、High Voltage Engineering Europa社製の小型タンデム加速器を用いた新世代型で、炭素の同位体比測定とヨウ素等の重イオンの同位体比測定が可能なイオンビーム入射方式の異なる2つのビームラインを持っている世界で唯一のAMS施設である。炭素については、測定試料に含まれる炭素を二酸化炭素ガスとして分離・抽出した後、鉄触媒で水素ガスによりグラファイト(炭素)に還元して測定する。ヨウ素については、試料中のヨウ素を化学処理してヨウ化銀にして測定する。試料はAl製円柱状ホルダーの先端にプレスして詰め込み、ターゲットホルダーに59個まで装着、自動的に連続測定ができる。イオン源は2つのビームラインともセシウムスパッター型負イオン源である。測定について炭素ラインではC-12, C-13イオンビームはファラディーカップ,C-14イオンはパルス電離箱型検出器,ヨウ素ラインでは、I-127イオンビームはファラディーカップ,I-129イオンは飛行時間型(TOF)検出器でそれぞれ測定している。2005年末までに、約5000個の炭素,約400個のヨウ素試料を測定した。2006年4月よりは共用施設として外部機関からの測定も受け付ける。


34000716
保障措置環境試料分析技術の開発; バルク分析
平山 文夫; 黒沢 節身; 間柄 正明; 市村 誠次; 河野 信昭; 鈴木 大輔; 伊奈川 潤; 後藤 基次; 桜井 聡; 渡部 和男; 臼田 重和
KEK Proceedings 2005-4 , p.184-192(2005) ; (JAEA-J 00864)

 保障措置環境試料を対象にした極微量核物質(ウランとプルトニウム)の分析技術開発を行っている。今回、試料全体の当該核物質の平均値を求めるバルク分析について、実試料を用いたこれまでの分析結果をもとに、定量性及び化学分離性能の点でIAEAの基本要求を十分に満足していることを紹介する。また高度分析技術開発の一環として、分離操作の迅速化で取り上げた遠心イオン交換分離法が、プルトニウムの迅速精製分離に適用できること、並びに試作した低ウラン含有スワイプ材が、従来品のウラン含有量の1/100であり、かつ拭取り性能は同等で優れていることを報告する。


34000717
溶存態有機炭素中放射性炭素測定システムの開発
田中 孝幸; 乙坂 重嘉; 天野 光; 外川 織彦
UTTAC-J-16 , p.98-101(2006) ; (JAEA-J 00866)

 海水中溶存態有機炭素は、大気中の二酸化炭素に匹敵する量が存在し、微生物分解され難く海水中に長期間安定的に存在している。海水中溶存態有機炭素の挙動を解明することは、海洋の炭素循環、さらには地球温暖化の影響を紐解くうえで、非常に重要な因子と考えられる。溶存態有機炭素の動態の時間スケールや供給源の情報を与えうる溶存態有機物の安定及び放射性炭素同位体比の測定システムの確立を目指し、本研究では、加速器質量分析装置(AMS)による放射性炭素同位体測定のための初期段階として、標準的な有機物を用いて、本システムの条件等を決定した。溶存態有機物の酸化については紫外線を用いて酸化する方法,二酸化炭素のグラファイト化は鉄触媒を用い水素で還元する方法を用いた。グラファイト化の方法は既に確立されていることから、紫外線酸化法の確立に向けた検討を行った。その結果、酸素ガスを加えて紫外線酸化することで、検討に用いたすべての有機物に対して酸化効率は98±2%となり、本システムで十分な酸化効率を得ることができることが確認できた。


34000718
Effects of hydrogen peroxide and oxygen on corrosion of stainless steel in high temperature water
内田 俊介*; 佐藤 智徳; 森島 祐介*; 廣瀬 達也*; 宮澤 孝裕*; 柿沼 永郎*; 佐藤 義之*; 臼井 直志*; 和田 陽一*
Proceedings of 12th International Conference on Environmental Degradation of Materials in Nuclear Power Systems-Water Reactors (CD-ROM) , p.19-29(2005) ; (JAEA-J 00867)

 沸騰水型原子炉(BWR)の冷却水には水の放射線分解により生成した過酸化水素と酸素が混在していることが指摘されているが、ステンレス鋼の腐食や応力腐食割れに及ぼす過酸化水素の影響に関するデータは少ない。本研究では、過酸化水素及び酸素を含む、BWRを模擬する高温高圧水に浸漬されたステンレス鋼の静的,動的挙動を周波数依存複素インピーダンス(FDCI)及び腐食電位(ECP)測定により評価した。試験片の表面被膜の多元分析(LRS, SIMS, XPS, 接触電気抵抗測定など)を実施した。その結果、以下が確認された。(1)BWRの通常水質(NWC)が100pp H2O2により模擬され、水素注入(HWC)は10ppb H2O2により模擬できる。(2)HWC下でのECPはNWCと同様に高いが、酸化被膜の溶解はNWCより大変小さい。(3)NWCとHWCの同レベルのECPは被膜の電気抵抗と溶解の複合効果による。(4)100ppbH2O2に浸漬された試験片の明らかな質量減少が得られた。これらより、BWRの1次冷却水の腐食環境が過酸化水素により決定され、その評価指標がECPだけでは不十分であることが確認された。


34000719
Plastic deformation behavior of type 316LN stainless steel in non-irradiated, thermallysensitized condition or in irradiated condition during SSRT
三輪 幸夫; 塚田 隆; 實川 資朗
Proceedings of 12th International Conference on Environmental Degradation of Materials in Nuclear Power Systems-Water Reactors (CD-ROM) , p.311-318(2005) ; (JAEA-J 00868)

 熱鋭敏化又は照射した316LNステンレス鋼の応力腐食割れに影響する塑性変形挙動を調べた。熱鋭敏化は1033Kで100hとし、中性子照射は473kで1dpaまで行った。これらの試験片に対して、溶存酸素を含む573Kの高温水中にて低ひずみ速度試験を行い、粒界割れ破面率と塑性変形挙動の関係を比較した。真応力−真ひずみ関係でみると、照射材でのひずみ硬化率や照射誘起応力腐食割れ(IASCC)を生じる真応力などの塑性変形挙動は、熱鋭敏化材での塑性変形挙動と同じであった。さらに、粒界割れ破面率に及ぼす歪み速度の影響も同じであった。これらの結果から、1dpa程度まで照射した試験片では、IASCCの発生機構は、熱鋭敏化材の粒界型応力腐食割れ発生機構と同様であると考えられた。


34000720
Study of light output and response function of liquid organic scintillator for high-energy neutron spectrometry
佐藤 大樹; 佐藤 達彦; 遠藤 章; 松藤 成弘*; 佐藤 眞二*; 高田 真志*; 石橋 健二*
Nuclear Science Symposium Conference Record, 2005 IEEE, Vol.3, p.1288-1290(2005) ; (JAEA-J 00869)

 シンチレーション検出器を用いて中性子のエネルギースペクトルを測定するためには、検出器の応答関数が必要とされる。この応答関数を精度よく評価するためには、入射中性子とシンチレーション物質との核反応による荷電粒子生成と、それに伴う発光機構を解明することが重要である。そこで、液体有機シンチレータにおける、荷電粒子の運動エネルギーと光出力の相関を調べるために、放射線医学総合研究所HIMACにおいて、さまざまな荷電粒子に対する応答関数を測定した。液体有機シンチレータとして、中性子測定で広く利用されているBC501Aを用いた。各種荷電粒子は高エネルギー重イオンの炭素ターゲットへの入射核破砕反応により生成され、粒子弁別後に飛行時間からその運動エネルギーを求めた。実験から得た荷電粒子の運動エネルギーと光出力の相関を、半実験式と比較したところ、陽子と重陽子に関しては非常に良い一致を示した。しかし、α粒子に関しては、系統的に大きな値を与えることを明らかにした。


34000721
Feasibility study of imaging lidar technique for remote particle counting
大図 章; 川北 裕司*; 岡本 隆太*
Proceedings of 7th International Congress on Optical Particle Characterization (OPC 2004) (CD-ROM) , 5p.(2004) ; (JAEA-J 00870)

 従来の微粒子計測器は、装置周辺の大気に浮遊する微粒子を直接計測することによって微粒子数量及び粒径を求めるものである。これらの計測器は、空気吸引を基本とするために、計測に数分程度必要とし変動の激しい大気微粒子のリアルタイム計測は困難であり、かつ遠隔大気中の微粒子の直接計測は不可能であった。このような問題点を克服する方法として、イメージングライダーを用いた遠隔大気中の微粒子数量及び粒径分布をリアルタイムで計測可能な新規の粒子計測器を開発した。この計測器を校正するために室内試験を実施し、従来の粒子計測器で得られる計測結果と比較した。その結果、粒径0.6ミクロンまでの粒子数及び粒径分布がリアルタイムで首尾よく計測できることがわかった。


34000722
Current status and newly introduced analytical techniques for safeguards environmental samples at JAERI
間柄 正明; 臼田 重和; 桜井 聡; 渡部 和男; 江坂 文孝; 平山 文夫; Lee, C. G.; 安田 健一郎; 河野 信昭; 伊奈川 潤; 鈴木 大輔; 福山 裕康; 軍司 秀穂; 江坂 木の実; 井口 一成; 市村 誠次; 黒沢 節身; 小野寺 貴史; 國分 陽子; 宮本 ユタカ; 大図 章; Chai, J.*; Zhang, X.
Proceedings of INMM 46th Annual Meeting (CD-ROM) , 8p.(2005) ; (JAEA-J 00872)

 原研では、国際保障措置制度の堅持に貢献するため、環境試料分析のための極微量核物質の分析法を開発している。スワイプ試料のバルク及びパーティクル分析の基本技術については開発を終了し、2003年にIAEAからIAEAネットワーク分析所として認証され、現在ネットワーク分析所の一員として活動している。今回、マイナーアクチノイドや核分裂生成物,フィッショントラック法を用いたパーティクル分析法の開発を行い、ICP-TOFMAを使った効率的なパーティクル分析法,蛍光エックス線を用いたスクリーニング法の開発を開始したので、その概要と現状について報告する。


34000723
R&D on safeguards environmental sample analysis at JAERI
桜井 聡; 間柄 正明; 臼田 重和; 渡部 和男; 江坂 文孝; 平山 文夫; Lee, C. G.; 安田 健一郎; 河野 信昭; 伊奈川 潤; 鈴木 大輔; 福山 裕康; 江坂 木の実; 井口 一成; 市村 誠次; 小野寺 貴史; 國分 陽子; 宮本 ユタカ; 大図 章; Chai, J.; 後藤 基次; Zhang, X.
Proceedings of International Conference on Nuclear Energy System for Future Generation and Global Sustainability (GLOBAL 2005) (CD-ROM) , 6p.(2005) ; (JAEA-J 00873)

 IAEAが保障措置の強化策として導入した環境試料分析に対応するため、原研はクリーンルーム施設である高度環境分析研究棟を建設し、極微量核物質の分析技術の開発を進めてきた。2003年までに基本的な技術を開発し、バルク,パーティクル分析双方についてIAEAのネットワーク分析所として認定された。その後、原研は第2期計画として分析技術の高度化開発に取り組んでいる。これまでに、ウラン不純物含有量の少ないスワイプ素材や効果的な粒子回収法などを開発しており、これらは技術的側面からIAEA保障措置制度の強化に貢献している。


34000724
Waste management implications of advanced fuel cycle systems using Fast Reactors (FR)
船坂 英之; 駒 義和; 佐藤 浩司; 中島 靖雄; 塩谷 洋樹; 加藤 篤志; 樋口 達也; 難波 隆司
Proceedings of International Waste Management Symposium 2006 (WM '06) (CD-ROM) , 13p.(2006) ; (JAEA-J 00874)

 FBRサイクルの実用化戦略調査研究を1999年より日本の関係団体が協力して進めている。フェーズII(JFY 2001-2005)研究の成果を2006年3月までに取りまとめる予定であり、有望な概念と商業化のための重要な課題に関する展望を要約する。本論文では、フェーズIIで研究した候補となる再処理システムを環境負荷を低減する観点から概観する。


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