学会誌等掲載論文
※下記の研究開発成果は資料名順に並んでいます。

2006年8月


34000758
Enrichment of very metal poor stars with both r-process and s-process elements from 8-10M stars
和南城 伸也*; 野本 憲一*; 岩本 信之; 石丸 友里*; Beers, T. C.*
Astrophysical Journal 636(2, Part1), p.842-847(2006) ; (JAEA-J 00875)

 最近の分光観測から炭素やs-過程元素を豊富に含んだ金属欠乏星(金属量[Fe/H]<-2)の存在が明らかとなった。これらの星の元素組成は、連星系に属しており、もう一方の星(主星)が以前、漸近巨星分枝段階にあったときに合成されたs-過程元素がガス輸送により、観測された星(伴星)の表面を汚染した結果であると考えられている。しかし、このような星の中には、太陽系組成でのs-過程元素におけるBa/Eu比と比べて、より小さなBa/Eu比を持つものが存在することが明らかとなった。われわれはこの特異なBa/Eu比の成因を説明するために、「連星系中にある8-10Mの星が漸近巨星分枝段階でs-過程元素を合成・放出し、その後さらに超新星爆発を起こしてr-過程元素が合成・放出されたことにより、s-過程及びr-過程元素を含んだガスが伴星の表面を汚染したためである」というシナリオを提案した。そして、われわれは超新星爆発によって放出され、伴星に降着するEuの質量を計算し、その量は、もし連星の公転周期が一年であると仮定すると、銀河の化学進化で評価されている一回の超新星爆発あたりに放出されるEu質量の制限と矛盾しない、という結果を得た。


34000759
Crown ether-mediated extraction and functional conversion of cytochrome c in ionic liquids
下条 晃司郎; 中島 一紀*; 神谷 典穂*; 後藤 雅宏*
Biomacromolecules 7(1), p.2-5(2006) ; (JAEA-J 00876)

 本論文は世界で初めてイオン液体へタンパク質を抽出することに成功した成果を報告する。クラウンエーテルを抽出剤にすることによって、タンパク質の1種であるシトクロムcをイオン液体に定量的に抽出した。一方、シトクロムcをイオン液体に可溶化することで、その構造変化が生じ、本来酵素ではないシトクロムcが酵素活性を持つようになった。


34000760
The Influence of oxide ions on the electrochemical behavior of UCl4 and UCl3 in a LiCl-KCl eutectic melt
Kuznetsov, S. A.*; 林 博和; 湊 和生; Gaune-Escard, M.*
電気化学および工業物理化学 73(8), p.630-632(2005) ; (JAEA-J 00877)

 LiCl-KCl-UCl4又はLiCl-KCl-UCl3を酸化物素材と長時間接触させた場合にボルタングラムの変化が観察された。観察されたボルタングラムの変化はLiCl-KCl-UCl4又はLiCl-KCl-UCl3へ酸化物イオンを加えた際と同様であり、酸化物素材の腐食に伴う酸化物イオンの生成及びウラニルイオンの安定化が起こったものと考えられる。


34000761
Conceptual study of ECH/ECCD system for fusion DEMO plant
坂本 慶司; 高橋 幸司; 春日井 敦; 南 龍太郎; 小林 則幸*; 西尾 敏; 佐藤 正泰; 飛田 健次
Fusion Engineering and Design 81(8-14), p.1263-1270(2006) ; (JAEA-J 00878)

 本論文は、炉システム研究室が提示した発電実証炉の仕様をベースに、DEMO炉の電子サイクロトロン共鳴加熱(ECH/ECCD)システムを検討したものである。具体的には、発電実証炉のトロイダル磁場から、周波数の第一候補を300GHzとし、これに対応する超高次モード(TE31, 20)を用いた300GHz帯エネルギー回収型ジャイロトロンの設計,300GHz帯ダイヤモンド窓,伝送系,遠隔ミラー制御型結合系の概念設計を行った。併せて、必要な技術開発の方向を明らかにした。


34000762
Summary of the International Energy Agency Workshop on Burning Plasma Physics and Simulation
Donn'e, A. J. H.*; Fasoli, A.*; Ferron, J.*; Goncalves, B.*; Jardin, S. C.*; 三浦 幸俊; Noterdaeme, J.-M.*; 小関 隆久
Fusion Science and Technology 49(1), p.79-85(2006) ; (JAEA-J 00879)

 2005年7月4-5日にスペイン・タラゴーナにおいて、IEA大型トカマク協定のもとで開催された「燃焼プラズマの物理とシミュレーション」のワークショップの概要を報告する。ワークショップは、プラズマ輸送と閉込め,MHD安定性,高速粒子閉込め,燃焼プラズマの統合化モデル,計測と制御の各領域における燃焼プラズマ研究について議論が行われた。33件の最新の研究の発表があり、各々の領域での発表を踏まえた活発な議論が行われた。議論においては、各領域における、現在までの研究のレビュー,必要となる研究課題の抽出,課題克服のための方策・ロードマップについてまとめた。


34000763
Integrated simulation code for burning plasma analysis
小関 隆久; 相羽 信行; 林 伸彦; 滝塚 知典; 杉原 正芳; 大山 直幸
Fusion Science and Technology 50(1), p.68-75(2006) ; (JAEA-J 00880)

 日本原子力研究開発機構における燃焼プラズマ研究のためのモデルの統合化について述べている。時間スケール・空間スケールの大きく異なった複雑な物理要因を持つ燃焼プラズマをシミュレートするため、輸送コードTOPICSをベースとして、加熱・電流駆動,不純物輸送,ダイバータ,MHD,高エネルギー粒子挙動モデルの統合化によるシミュレーションコード群を開発している。開発したコードは検証することが重要であり、ここでは、JT-60による実験結果や第一原理に基づくシミュレーションによりモデルの妥当性を確認する。輸送とMHDの統合化モデルが、3つの典型的なMHD現象、すなわちNTM(〜0.01τR),β限界(〜τA)とELM(τEとτAの間欠現象)について開発された。NTMの統合化モデルについては、修正ラザフォード方程式を輸送方程式と連結して解くモデルを開発した。β限界モデルについては、輸送コードからときどき刻々吐出する平衡データの安定性計算によりモデル化している。ELMについては、輸送コードと安定性コードを結合し、交互に解くことにより、時定数の異なる間欠現象をモデル化した。これらの開発したモデルは、JT-60実験データによる検証を行い、燃焼プラズマの性能予測に用いられている。


34000764
The Radioation responsive promoter of the Deinococcus radiodurans pprA gene
大庭 寛史*; 佐藤 勝也*; 柳沢 忠*; 鳴海 一成
Gene 363, p.133-141(2005) ; (JAEA-J 00881)

 デイノコッカス・ラジオデュランスpprA遺伝子の転写開始点が、翻訳開始点上流-156, -154, -22であることを同定した。全ての転写産物の量が放射線照射で増加したことから、少なくとも2つの放射線応答性プロモーターの存在が示唆された。ルシフェラーゼレポーターアッセイにより、遠位プロモーターは翻訳開始点上流-208から-156の間に、近位プロモーターは-57から-22の位置にあることが明らかとなった。-57から-38の領域は、近位プロモーター活性に必須であり、また、-33の位置のチミンが放射線応答に重要な塩基であることがわかった。さらに、pprI遺伝子産物によるpprA遺伝子の発現制御がプロモーターレベルで起こることが示唆された。


34000765
Control and instrumentation for the ITER magnet system
吉田 清; 高橋 良和; 飯田 浩正
IEEE Transactions on Applied Superconductivity 16(2), p.775-778(2006) ; (JAEA-J 00882)

 ITER超伝導コイルシステムは、18個のTFコイル,6個のPFコイル,6個のCSモジュール,18個の補正コイルから構成される。これらのコイルを安全に最適に運転するには、コイルを広範囲に計測し、制御する装置が必要である。各コイルの電流と冷媒は、電源システムとヘリウム冷凍機から供給され、中央制御装置から制御される。冷凍負荷を平準化するために、コイル内の冷媒のシミュレーションを行って、各冷却ループの流量配分を制御しなければならない。また、超伝導コイルのクエンチを検出して、コイル保護を連動させる装置が独立して必要である。また、各コイルの電気絶縁を監視して、運転に警告を行う必要がある。一方、コイルやフィーダーで使用される計測センサー及び電気絶縁継手,各種共通部品は、統一仕様で一括準備することになっている。本稿ではこの計測制御システムの要求性能と機器仕様を報告する。


34000766
Simulation of quench tests of the central solenoid insert coil in the ITER central solenoid model coil
高橋 良和; 吉田 清; 名原 啓博; 枝谷 昌博*; Mitchell, N.*
IEEE Transactions on Applied Superconductivity 16(2), p.783-786(2006) ; (JAEA-J 00883)

 クエンチ時の導体の振舞いを明らかにするため、CSインサートのクエンチ実験を直流及びパルス・モードの条件で行った。その導体は実機CSとほぼ同じ形状とパラメータを有している。導体の長さは約140mである。直流モードにおいて、導体の中央部の磁場の高いところに取付けられた誘導ヒータにより人為的にクエンチを起こした。また、パルス・モードにおいて、CSインサートは0.4-2T/sの掃引速度でクエンチした。これらのクエンチ実験における導体内の電気的及び熱流体的振舞いのシミュレーションを行った結果、実験結果とよく一致した。ITERにおける実機CSのクエンチ検出は、ピックアップ・コイルを用いた電圧法で行う予定である。実験で得られた結果と比較して、その感度やクエンチ時の導体の最高温度について検討した結果、ITER-CSのクエンチ検出システムは十分な検出感度を有することが示された。


34000767
Poloidal field coil configuration and plasma shaping capability in NCT
松川 誠; 玉井 広史; 藤田 隆明; 木津 要; 櫻井 真治; 土屋 勝彦; 栗田 源一; 森岡 篤彦; 安藤 俊就; 三浦 友史
IEEE Transactions on Applied Superconductivity 16(2), p.914-917(2006) ; (JAEA-J 00884)

 本論文は、ITERと同様に発電実証炉への貢献を目指すトカマク国内重点化装置(NCT)のポロイダル磁場(PF)コイルの配置設計についてまとめたものである。核融合炉の電力売価は、建設費と核融合出力で決まり、核融合出力はプラズマの規格化ベータ値の約2乗に比例して増大する。このため、高ベータプラズマの実現が経済的な核融合実現の鍵であり、具体的には、理想MHD限界に近い高規格化ベータ値の達成が求められている。プラズマの断面形状パラメータS(=q95*Ip/a*Bt)は、限界ベータ値と相関があると考えられており、核融合炉の設計までに、これらの最適値を検証する必要がある。このため、NCTではアスペクト比やプラズマ断面形状制御性能でITERよりも広い運転領域をカバーすることを目標にしてPFコイルの配置設計を行った。結果的には、アスペクト比が2.6から3.4の領域を、プラズマの形状パラメータSはダブルヌル配位で最大7程度、シングルヌル配位で最大6程度を得ることができた。さらに小断面PFコイルを追加することでプラズマの四角度の制御性が改善できることも明らかにした。


34000768
Stress analyses of the support structure and winding pack of the superconducting TF coil in National Centralized Tokamak
土屋 勝彦; 木津 要; 高橋 弘行*; 安藤 俊就*; 松川 誠; 玉井 広史
IEEE Transactions on Applied Superconductivity 16(2), p.922-925(2006) ; (JAEA-J 00885)

 トカマク国内重点化装置における超伝導トロイダル磁場(TF)コイルの支持構造の最適化を進めている。プラズマ運転シナリオ上、最大の電磁力が加わると考えられる条件での応力や変位を、有限要素法解析により評価した。この評価に基づき、最も変位の低減に有効なコイルケースやシアパネルの配置を検討した結果、アウトボード側斜め下部において、コイルケースやシアパネル構造の増強を行えば、最も効率的に変位を抑えられることを見いだした。また、ボルトやキーの配置及び本数を調整して支持構造の簡素化を図り、構造物の応力/変位が設計基準を満たしていることを確認した。さらに、これまで未評価であった超伝導導体によって構成される巻線部に生じる歪みや、インボード部で巻線が受ける横圧縮力について、最大の電磁力荷重条件において評価した。その結果、導体長手方向の歪みは、熱処理時にコンジットから受ける歪みを緩和する伸び方向が顕著であり、導体の臨界電流劣化に寄与しないことがわかった。また、横圧縮力については、最大経験磁場の箇所で、ニオブアルミ素線の臨界電流値の劣化が始まると報告されている60MPa以下であった。このことから、現設計の支持構造は想定している導体性能に悪影響を及ぼさないことが確認できた。


34000769
Wave propagation properties of frame structures; Formulation for three-dimensional frame structures
西田 明美
JSME International Journal, Series B 49(2), p.360-367(2006) ; (JAEA-J 00886)

 構造物が衝撃的外力を受けたとき、構造物内部では応力波が発生し、接合部や境界における反射や透過を繰返しながら伝播する。この伝播現象を解明することは、いまだ未解明である構造物の接合部等におけるエネルギー逸散現象を解明するための有効な知見となることが期待される。本研究では、原子力プラントの実運用時における動的現象シミュレーションシステム(3次元仮想振動台)の開発において、特に配管系構造物における応力波伝播現象及び減衰機構の解明を目的とする。本論文では、連続体モデルを基礎とする3次元フレーム構造物の波動伝播解析手法を配管系構造物に適用するためにチモシェンコ梁理論を導入し、梁のせん断波の伝播を厳密に扱える3次元フレーム要素の定式化を示す。また、大洗研究開発センターHTTRにおいて実際に配管として用いられている鋼管を例題とし、従来梁理論の適用限界を明示し、本手法の有効性を述べる。


34000770
Si substrate suitable for radiation-resistant space solar cells
松浦 秀治*; 岩田 裕史*; 鏡原 聡*; 石原 諒平*; 米田 雅彦*; 今井 秀彰*; 菊田 真経*; 井上 裕喜*; 久松 正*; 川北 史朗*; 大島 武; 伊藤 久義
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 45(4A), p.2648-2655(2006) ; (JAEA-J 00887)

 宇宙用Si太陽電池の耐放射線性強化に関する研究の一環として、1MeV電子線または10MeV陽子線照射がSi基板中の正孔濃度に及ぼす影響をホール効果により調べた。試料は、ボロン(B), アルミニウム(Al), ガリウム(Ga)等の異なる種類のアクセプタを添加したCZ成長Si基板,MCZ法で作製したB添加Si基板及びFZ法で作製したB添加Si基板を用いた。その結果、CZ基板では、陽子線照射量の増加とともに正孔濃度が減少し、添加不純物によらず2.5×1014/cm2で伝導キャリアのタイプが正孔から電子へと変化した。また、B添加したCZ, MCZ, FZ基板を比較したところ、いずれの基板も電子線照射量の増加とともに正孔濃度は減少するが、その減少の大きさはCZ, MCZ, FZの順であり、1×1017/cm2照射でCZ基板のキャリアタイプが電子に変化したのに対してMCZ, FZは正孔のままであった。CZ基板では添加不純物によらず正孔濃度の減少は同程度であること、CZ, MCZ, FZの順で正孔濃度の減少が少ないこと、CZ, MCZ, FZの順で基板に残留する酸素原子が少なくなることを考慮すると、正孔濃度を減少させる照射誘起欠陥の構造は、添加不純物と空孔の複合欠陥ではなく、基板に残留する酸素原子と空孔型の複合欠陥であることが示唆される。


34000771
Development of frequency stabilized diode laser based on a spectroscopic study on magnetically induced circular dichroism of atomic rubidium
宮部 昌文; 加藤 政明; 大場 正規; 若井田 育夫; 渡部 和男; Wendt, K.*
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 45(5A), p.4120-4122(2006) ; (JAEA-J 00888)

 多段階共鳴イオン化分析法による難分析核種の分析に不可欠な周波数安定化レーザーシステムのうち、根幹となる周波数基準レーザーに、原子の磁気円2色性を利用した方法(DAVLL法)を適用する研究を行った。ルビジウム原子のD 2線のうち、ドップラー拡がりのある吸収線とドップラーフリー吸収線のそれぞれについて、温度や磁場による磁気円二色性スペクトルの変化を測定し、最も安定な吸収線を選定した。2台の安定化レーザーで光のビートを観測し、ビート周波数の長時間変動から波長安定度を評価した。この結果、ドップラー拡がりのない85Rb(F=3→CO3, 4)クロスオーバー吸収線にロックした場合に、波長変動を8時間で±50kHz以内にまで抑えることができ、RIMS分析用光源システムの基準レーザーとして十分な安定度が得られることを確認した。


34000772
Cross-sectional transmission electron microscopy of interface structure of β-FeSi2/Si(100) prepared by ion beam sputter deposition
笹瀬 雅人*; 志村 憲一郎*; 山本 博之; 山口 憲司; 社本 真一; 北條 喜一
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 45(6A), p.4929-4933(2006) ; (JAEA-J 00889)

 イオンビームスパッタ蒸着(IBSD)法により、Si(100)基板上にエピタキシャル成長させた鉄シリサイド膜に対する基板前処理効果を調べた。本研究では、サーマル・エッチ(TE)法並びにスパッタ・エッチ(SE)法により基板前処理を行った。そして、作製したβ-FeSi2薄膜と基板との界面を、透過型電子顕微鏡を用いた断面観察によって解析した。TE法では、処理後のSi基板は完全に結晶性を回復するものの、蒸着後の界面は波打っており生成したシリサイドは島状に凝集した。一方、SE処理後は基板表面付近にイオン照射によって生じた転位や積層欠陥が、照射後にアニールを行ったにもかかわらず観測された。しかし、973Kで蒸着したβ-FeSi2はエピタキシャル成長を遂げ、また、基板との界面も滑らかであった。このような事実から、上述した欠陥は、界面でのFe及びSi原子の相互拡散を促進し、β-FeSi2のエピタキシャル成長を容易にしたのではないかと考えられる。


34000773
Energy spectra of electrons induced by MeV atom clusters
工藤 博*; 岩崎 渉*; 内山 瑠美*; 冨田 成夫*; 島 邦博*; 笹 公和*; 石井 聡*; 鳴海 一雅; 楢本 洋; 齋藤 勇一; 山本 春也; 金子 敏明*
Japanese Journal of Applied Physics, Part 2 45(22), p.L565-L568(2006) ; (JAEA-J 00890)

 MeV原子クラスターの衝突によって固体から放出される電子のエネルギー分布を初めて観測した結果を報告する。グラファイトとSiにC+n,Al+n (n<8)を入射した場合、後方に放出される電子については、エネルギーが〜10eVより低い領域では、nの増加に伴って1原子あたりの電子の収量が減少し、n>3では、n=1の場合の50%より低くなった。実験結果は、入射粒子の阻止断面積でも露払い効果でも説明できず、おそらく、イオン化の抑制ではなく、生成された低エネルギー電子の輸送過程、あるいは表面の透過過程が抑制された結果、電子放出が抑制されたものと考えられる。


34000774
Spectroscopic study of trivalent rare earth ions in calcium nitrate hydrate melt
藤井 俊行*; 浅野 秀樹*; 木村 貴海; 山本 剛*; 上原 章寛*; 山名 元*
Journal of Alloys and Compounds 408-412, p.989-994(2006) ; (JAEA-J 00891)

 硝酸カルシウム融解水和物中の3価希土類イオンの化学状態への水分含有量の影響を種々の分光法により検討した。Ca(NO3)2RH2O中のEu(III)の蛍光分光及びNd(III)の吸光分光を用いて超高感度遷移の変化から配位対称性の変化を分析した。ラマン分光とEXASFによりY(III)に結合した酸素を解析した。Eu(III)及びDy(III)の発光寿命測定によりイオンの水和数変化を評価した。以上の結果から、水分含有量の減少とともに水和数は減少し、希土類イオンと硝酸イオン間の相互作用は増加することを見いだした。また、配位圏の対称性は、この相互作用により徐々に歪むことを明らかにした。


34000775
Preparation and properties of sulfonated ETFE-g-polyvinyltoluene membranes for application in fuel cells
Chen, J.; 浅野 雅春; 吉田 勝; 前川 康成
Journal of Applied Polymer Science 101(4), p.2661-2667(2006) ; (JAEA-J 00892)

 耐久性の向上を目的に、スチレンの誘導体であるビニルトルエンを用い、放射線グラフトによる新規な電解質膜を合成した。エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)膜へのビニルトルエンのグラフト率は前照射線量と反応時間により制御できることがわかった。たとえば、グラフト率は前照射線量が増加するほど大きくなり、4時間反応時で比較すると、それぞれ18%(前照射線量:3kGy),27%(同:5kGy),40%(同:10kGy),47%(同:15kGy),105%(同:60kGy)であった。イオン交換容量はグラフト率の増加とともに大きくなり、グラフト率105%でのイオン交換容量は3.05mmol/gになり、ナフィオンに比べ3倍のイオン交換容量を示した。また、これまでのスチレンスルホン酸電解質膜に比べて、本研究で開発された電解質膜は耐久性が向上することがわかった。


34000776
Hydrolysis of Al3+ from constrained molecular dynamics
池田 隆司; 平田 勝; 木村 貴海
Journal of Chemical Physics 124(7), p.074503_1-074503_7(2006) ; (JAEA-J 00893)

 塩化アルミニウム水溶液でのアルミニウムイオンの加水分解反応をカー・パリネロ分子動力学法に基づいた拘束条件付き分子動力学を用いて調べた。アルミニウムに関するプロトンの配位数を反応座標として用いることにより、拘束条件付き分子動力学でプロトン脱離と脱水和を実現することができた。加水分解の自由エネルギー差として8.0kcal・mol-1が得られたが、この自由エネルギー差から見積もった加水分解定数は文献値とよく一致することがわかった。加水分解の自由エネルギー差は酸性条件下では中性条件下よりも少なくとも4kcal・mol-1高くなっており、余剰プロトンにより反応が阻害されることがわかった。


34000777
Theoretical study on the structure and the frequnecy of isomers of the naphthalene dimer
佐伯 盛久; 赤木 浩; 藤井 正明*
Journal of Chemical Theory and Computation 2(4), p.1176-1183(2006) ; (JAEA-J 00894)

 ナフタレン単量体及び2量体の安定構造をab initio MO計算により求め、さらに求めた安定構造の振動数解析を行った。MP2/6-31G, MP2/6-31G*, MP2/6-31+G*, MP2/6-311Gレベルでナフタレンの構造最適化を行うと環構造が歪むのに対し、MP2/cc-pVDZレベルで計算すると実験結果をよく再現するような構造が得られた。MP2/cc-pVDZレベルでナフタレン2量体の構造を計算すると、 π-π相互作用及びC-H...π相互作用により安定化した異性体が得られた。生成エネルギーを比較した結果、π-π相互作用した構造の方がC-H...π相互作用したものよりも安定であり、さらにπ-π相互作用した構造の中でもより低い対称性を持つものがより安定であることがわかった。また、計算した赤外スペクトルを異性体間で比較することにより、THz領域のスペクトルを測定すれば異性体を区別することが可能であることを明らかにした。


34000778
Rapid and coulometric electrolysis for ion transfer at the aqueous|organic solution interface
吉住 明日香*; 上原 章寛*; 糟野 潤*; 北辻 章浩; 吉田 善行; 木原 壯林*
Journal of Electroanalytical Chemistry 581(2), p.275-283(2005) ; (JAEA-J 00896)

 電位を印加した水相と有機相界面でのイオンの移動を、迅速かつ定量的に行うための流液系電解セルを開発した。このセルは、目的イオンを含む水溶液をチューブ状の流路内に流しながら電解を行うことにより、チューブ外側の有機相にイオンを移動させる。水と1,2-ジクロロエタン界面でのカリウムイオンの電解移動の効率は99%以上であった。流液速度から計算すると、目的イオンを完全に電解移動させるには、40秒の滞在時間しか必要とせず、迅速な界面移動を達成できた。水溶液中のカリウムの電量分析に適用したところ、0.2から2mMの濃度範囲では±1%の精度が得られた。開発した電解セルはMg2+やCa2+にも適用でき、水溶液中では酸化還元しないためにこれまで電量分析を行うことができなかったアルカリ金属やアルカリ土類金属の電量分析を可能にした。


34000779
On the radiation-induced polyaddition of bisperfluoroisopropenyl terephthalate with 1,4-dioxane
榎本 一之*; 成田 正*; 前川 康成; 吉田 勝; 浜名 浩*
Journal of Fluorine Chemistry 125(7), p.1153-1158(2004) ; (JAEA-J 00897)

 γ線照射下、Bis(α-trifluoromethyl-β,β-difluorovinyl)terephthalate(BFP)と1,4-Dioxane(DOX)とのラジカル重付加は、過酸化物開始で得られたポリマーよりも高分子量のポリマーを与えた。本論文では、BFPとDOXとの放射線重付加に関するモノマー組成比と照射線量の分子量に与える影響について詳細な検討を行った。BFPの反応率は、照射線量の増加に伴い増加し、BFPが定量的に消費されるのに必要とした照射線量は、BFPに対してDOX量が8倍モルで2000kGy、16倍モルで1500kGy、32倍モルで750kGyであった。本重付加は、照射線量の増加に伴い(すなわち、BFPの転化率が高いほど)ポリマーの分子量が増加していることから、逐次重合で進行していることが示唆された。モノマーの組成比と照射線量により、ポリマーの分子量を調節できることがわかった。一方、重合反応後期、ポリマーの分子量分布に著しい増加が観測された。DOX量が8倍モルで3000kGy照射すると、複分散で重量平均分子量が23600のポリマーを与えた。このことは、γ線架橋と主鎖切断によるポリマー間の架橋反応が進行したと考えられる。上記検討により、本重付加の反応機構を提案した。


34000780
Improvement of chemical stability of polymer electrolyte fuel cell membranes by grafting of new substituted styrene monomers into ETFE films
Chen, J.; 浅野 雅春; 八巻 徹也; 吉田 勝
Journal of Materials Science 41(4), p.1289-1292(2006) ; (JAEA-J 00898)

 電解質膜の耐久性を向上させるために、スチレンに代わるモノマーとして、スチレンの誘導体であるメチルスチレン(MeSt)及びt-ブチルスチレン(tBuSt)さらに架橋剤として、高密度の架橋構造の付与が期待できるジビニルベンゼン(DVB)を組合せた新規な電解質膜を放射線グラフト重合法により合成した。このようにして得た36%のグラフト率を持つ電解質膜は、ゴア膜に比べて高いプロトン導電性を持つことがわかった。また、膜の安定性は、スチレン/DVB膜に比べて3倍向上した。


34000781
Study of plasma wall interactions in the long-pulse NB-heated discharges of JT-60U towards steady-state operation
竹永 秀信; 朝倉 伸幸; 東島 智; 仲野 友英; 久保 博孝; 木島 滋; 大山 直幸; 諫山 明彦; 井手 俊介; 藤田 隆明; 三浦 幸俊; JT-60チーム
Journal of Nuclear Materials 337-339, p.802-807(2005) ; (JAEA-J 00899)

 JT-60Uでは、高性能プラズマの電流拡散時間以上の定常維持及びプラズマ壁相互作用の長時間スケールでの変化の解明を目的に、放電時間を従来の15秒から65秒へ、NB加熱時間を10秒から30秒に伸長した。本論文では、長時間放電を用いてダイバータ板・第一壁での粒子吸収率や不純物発生率等の長時間スケールでの変化、及びその粒子バランス,プラズマ性能,粒子挙動への影響について明らかにした。長時間放電実験の開始時には、ほぼ一定のガスパフ量で30秒間密度が一定に保たれており、粒子バランス解析からこの時のダイバータ板・第一壁での粒子吸収量はダイバータ排気量より大きいと評価される。数ショット長時間放電を繰り返した後の放電では、密度を一定に維持するためのガスパフ量が減少し始め、最終的にはガスパフなしでも密度が上昇した。この時の粒子バランス解析は、壁での粒子吸蔵量が飽和状態にあることを示唆している。このように放電途中に粒子吸収率が大きく変化する現象が、放電・加熱時間を伸長することではじめて観測された。粒子吸蔵量が飽和状態にある場合には、主プラズマ周辺での圧力の低下,タイプIII ELMの出現が観測された。また、X点近傍のCII発光強度や内側ダイバータでのCDバンド光の強度が、粒子吸蔵量が飽和状態になる前から増加し始めることが観測された。


34000782
Pressure drop experiments using tight-lattice 37-rod bundles
玉井 秀定; 呉田 昌俊; 大貫 晃; 佐藤 隆; 秋本 肇
Journal of Nuclear Science and Technology 43(6), p.699-706(2006) ; (JAEA-J 00900)

 低減速軽水炉炉心の熱水力設計には、稠密格子燃料集合体における圧力損失評価手法の確立が必要である。本研究では、稠密37本バンドルにおける軸方向圧力分布を圧力2-9MPa,質量速度200-1000kg/m2・sの条件下で測定し、Martinelli-Nelsonの相関式に基づく計算結果と比較・検討した。その結果、単相摩擦損失に関しては、極端に狭い燃料棒間隙幅の場合を除いて、本評価手法を稠密格子燃料集合体にも適用できることがわかった。一方、二相圧力損失に関しては、低減速軽水炉の定格運転条件において圧力損失の約60%を占める摩擦損失を本圧力損失評価手法により適切に評価でき、燃料棒本数,燃料棒径,燃料棒間隙幅などの流路形状の効果や軸方向出力分布の影響などを含めた稠密格子燃料集合体の圧力損失を本評価手法により良好に予測できることがわかった。


34000783
Study on stabilization effect of neutral soft donor on trivalent lanthanide and actinide dicarboxylate complexes by time-resolved laser-induced fluorescence spectroscopy
佐々木 隆之*; 久保 新太郎*; 小林 大志*; 桐島 陽*; 木村 貴海; 窪田 卓見*; 高木 郁二*; 森山 裕丈*
Journal of Nuclear and Radiochemical Sciences 6(1), p.51-54(2005) ; (JAEA-J 00901)

 第2アミン,エーテル酸素などの中性ドナーを含むジカルボン酸とEu, Am及びCmなどの3価f元素との安定度定数を25℃、0.1M過塩素酸ナトリウム溶液中で溶媒抽出法により決定し、6種類のカルボン酸(グルタル酸,ジグルコール酸,イミノ二酢酸,エチレンジアミン二酢酸など)を系統的に比較検討した。さらに、時間分解レーザー誘起蛍光分光法により、1:2錯体中のEu(III)の内圏水和数を決定した。以上のデータに基づいて、f元素の錯形成におけるソフトドナー原子の役割とアクチノイドとランタノイドの選択性に関する多重ソフトドナー原子の影響について議論した。


34000784
Study on N2-added and B-doped effect in Co/Pd multilayered films using soft X-ray absorption and magnetic circular dichroism
安居院 あかね; 朝日 透*; 佐山 淳一*; 川治 純*; 水牧 仁一朗*; 田中 真人*; 逢坂 哲彌*
Journal of Physics D; Applied Physics 39(14), p.2881-2885(2006) ; (JAEA-J 00902)

 超高密度磁気記録を実現するためには強磁性結晶粒子の微細構造を制御して、強い磁気異方性を保持しながら磁気クラスターの微細化を達成しなければならない。超高密度磁気記録を実現できる磁気記録媒体の有望な候補としてCo層とPd層を交互に積層させた多層垂直磁化膜が注目されている。本研究では、Nをドープした[Co/Pd]n及び[CoB/Pd]n多層膜の軟X線磁気円二色性吸収(MCD)を測定し多層膜の磁気モーメントに関する知見を得ることを試みたので報告する。


34000785
Electrolytic reduction of Tc(VII) in nitric acid solution using glassy carbon electrode
星 陽崇*; Wei, Y.*; 熊谷 幹郎*; 朝倉 俊英; 森田 泰治
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 262(3), p.601-605(2005) ; (JAEA-J 00903)

 グラッシーカーボン電極を用い、硝酸溶液中でTc(VII)の電解還元試験を行った。電解還元は-300mV(vs. Ag/AgCl)の定電位で実施した。電解還元前後のTc濃度がほとんど変化しなかったことから、TcO2やTc等が電極表面へ析出しないと考えられる。吸光スペクトル測定及び陰イオン交換体を用いた吸着バッチ試験の結果から、Tc(VII)はTc(IV)に還元されることが、明らかとなった。


34000786
Structure, magnetism and transport of the perovskite manganites Ln0.5Ca0.5MnO3 (Ln=Ho, Er, Tm, Yb and Lu)
吉井 賢資; 阿部 英樹*; 池田 直*
Journal of Solid State Chemistry 178(12), p.3615-3623(2005) ; (JAEA-J 00904)

 小さい希土類イオンを含むペロブスカイトマンガン酸化物Ln0.5Ca0.5MnO3(Ln=Ho, Er, Tm, Yb and Lu)が斜方晶構造を取ることを見いだした。電気抵抗測定から、これらの酸化物が絶縁性であり、小さな磁気抵抗効果しか示さないことがわかった。磁化測定からは、マンガン電子の電荷秩序温度・反強磁性転移温度・グラス状態転移温度の3つが存在することがわかった。これらの物性について、結晶構造などと関連付けて議論する。


34000787
Prediction of cellular radiosensitivity from DNA damage induced by γ-rays and carbon ion irradiation in canine tumor cells
和田 成一*; Khoa, T. V.*; 小林 泰彦; 舟山 知夫; 荻原 喜久美*; 上野 俊治*; 伊藤 伸彦*
Journal of Veterinary Medical Science 67(11), p.1089-1095(2005) ; (JAEA-J 00905)

 伴侶動物で治療の対象となる重要な疾病は、感染症から腫瘍に移行しつつある。放射線治療は、腫瘍に対する効果的な治療法の一つであり、獣医療領域でも放射線治療の適用が増加すると予想される。腫瘍組織はすべてそれぞれ異なった放射線感受性を示すため、放射線治療においてはあらかじめその腫瘍の放射線感受性を把握することが重要となる。そこで、3種類のイヌ腫瘍細胞においてγ線と炭素線照射によるクロノジェニック法による生存率と中性コメットアッセイによるDNA2本鎖切断の関係を調べた。すべての腫瘍細胞において、炭素線はγ線よりも細胞致死効果が高かった。また、γ線照射及び炭素線照射において初期DNA損傷と残存DNA損傷は放射線感受性の細胞では高く、放射線抵抗性の細胞では低かった。2Gy照射時の生存率値(SF2)と初期DNA損傷及び残存DNA損傷の間に相関関係が認められる傾向が観察された。特に、線量あたりの残存損傷とSF2との間には放射線の種類によらず高い相関関係が認められた。これらのことは残存損傷を評価することによって腫瘍細胞の放射線感受性を予測できることを示唆している。


34000788
Ultraslow thermoresponse in hydrogels synthesized with radiation technique
廣木 章博; 前川 康成; 片貝 良一*; 山下 俊*; 室屋 裕佐*; 勝村 庸介*; 吉田 勝
Macromolecules 39(12), p.4132-4137(2006) ; (JAEA-J 00906)

 重合と架橋が同時に進行する放射線重合法の特性を活かし、アクリロイル-L-プロリンメチルエステルモノマーを水−アルコール混合溶液中でγ線照射することでAPMゲルを合成した。作製したポリマーゲルは、水中で14℃付近を境に低温膨潤−高温収縮する温度応答挙動を示した。水中0℃から40℃へ急激に温度変化させたときのゲルの収縮速度は、γ線照射時に存在するアルコールの種類によって大きく異なることがわかった。例えば、メタノール存在下で作製したゲルは、およそ1日で収縮したのに対し、1-プロパノール存在下では、収縮するのにおよそ半年を要した。このような超低速応答は、素早い収縮過程とゆっくりとした収縮過程の2段階から成っていた。その存在比は、各アルコール由来のα-ヒドロキシアルキルラジカルの安定性と相関しており、ラジカルが安定であるほどゆっくりした収縮過程の割合が高くなっていることが明らかとなった。GC/MS分析より、プロリン残基にアルコールが付加した化合物が存在していることがわかった。α-ヒドロキシアルキルラジカルが安定であるほど生成物の量は増加したことから、アルコール付加体の生成により形成された局所的な水素結合領域が超低速応答を発現していると推察した。


34000789
Mechanisms of reduction in hole concentration in Al-doped 4H-SiC by electron irradiation
松浦 秀治*; 鏡原 聡*; 伊藤 祐司*; 大島 武; 伊藤 久義
Microelectronic Engineering 83(1), p.17-19(2006) ; (JAEA-J 00907)

 六方晶炭化ケイ素(4H-SiC)中のアルミニウム(Al)アクセプタ不純物の電気的な性質を明らかにするために、電子線照射した4H-SiCの正孔濃度を調べた。電子線照射はSiC中の炭素原子(C)のみをはじき出すことができる200keVと、シリコン(Si), C、及びAl全ての原子をはじき出す4.6MeVのエネルギーを用いて行った。その結果、200keV電子線照射では正孔濃度が減少し、それに対応するようにAlに関連する深い準位(活性化エネルギー:350meV)が増加した。このことより、200keV電子線照射によりAlアクセプタに隣接するC原子がはじき出されAl-VCのような複合欠陥が形成されることでAlアクセプタ濃度が減少する機構と、350eV付近の深い準位はAl-VCの複合欠陥に由来することが示唆された。一方、4.6MeV電子線照射では、正孔濃度は激減し、350meVの深い準位も若干の減少を示した。このことから、Si, C, Al原子を全てはじき出す高エネルギー電子線照射では、新たな欠陥が形成されて、正孔濃度が減少するとが考えられる。


34000790
Ferroelectricity from iron valence ordering in the charge-frustrated system LuFe2O4
池田 直*; 大隅 寛幸*; 大和田 謙二; 石井 賢司; 稲見 俊哉; 加倉井 和久; 村上 洋一*; 吉井 賢資; 森 茂生*; 堀部 陽一*; 鬼頭 聖*
Nature 436(7054), p.1136-1138(2005) ; (JAEA-J 00908)

 SPring-8の放射光を用いた共鳴X線散乱実験,焦電気測定及び誘電分散測定により、混合原子価鉄イオンを含む複合酸化物LuFe2O4は、全く新しいカテゴリーに属する強誘電体であることがわかった。本系では、三角格子上において、鉄イオン間に電荷相互作用のフラストレーションが存在する。このフラストレーションは、2価と3価の鉄イオンの長周期電荷秩序構造を安定化し、その結果として、電子の密度分布変調による誘電分極を発生する。この強誘電発現機構は、基礎科学的に興味深いだけでなく、電荷・スピン・軌道といった電子の自由度により制御された、次世代の強誘電デバイス開発の可能性をも提供する大きなインパクトを持つものである。


34000791
Differential effects of X-irradiation on immature and mature hippocampal neurons in vitro
白井 克幸*; 水井 利幸*; 鈴木 義行*; 小林 泰彦; 中野 隆史*; 白尾 智明*
Neuroscience Letters 399(1-2), p.57-60(2006) ; (JAEA-J 00909)

 神経ニューロン原基細胞へのX線照射は成長後の脳の機能不全を引き起こしうる。しかし、発達期のニューロン細胞の放射線感受性の程度や、最も感受性の高い時期などの詳細についてはわかっていなかった。そこで、ラット胎児脳の海馬初代培養神経細胞を用いて、培養開始後7日目及び21日目に30GyのX線を照射し、照射の12時間後あるいは24時間後に固定、細胞の形態変化やアポトーシス誘発を調べた。その結果、培養7日目の細胞に比べて、より成熟した培養21日目の細胞は感受性が有意に低く、発達期のニューロン細胞の放射線感受性は発生ステージに依存することが示された。


34000792
Stabilization of neoclassical tearing mode by ECCD and its evolution simulation on JT-60U tokamak
長崎 百伸*; 諌山 明彦; 林 伸彦; 小関 隆久; 武智 学; 大山 直幸; 井手 俊介; 山本 聡*; JT-60チーム
Nuclear Fusion 45(12), p.1608-1617(2005) ; (JAEA-J 00910)

 JT-60Uにおける高βpHモードにおいて、電子サイクロトロン電流駆動(ECCD)によるm/n=3/2の新古典テアリングモード(NTM)の安定化に関する研究を行った。NTM安定化実験においては、電子サイクロトロン(EC)波の入射時刻をNTM発生前(「早期入射」)からNTM飽和時(「飽和期入射」)まで変えて安定化効果を調べた。その結果、NTM発生前にECCDを行う方が安定化効果が大きいことが明らかになった。また、NTMの成長が飽和した後にECCDを行う場合に比べ、NTM発生前にECCDを行う方が完全安定化に要するパワーが20%程度低いことが明らかになった。高ベータ領域(βN=3)においてもNTM安定化に成功し、NTM安定化後Hファクタが1.9から2.1に改善した。また、1.5次元輸送コードに修正Rutherford式とECコードを組み込むことによりNTMのシミュレーションを行った。その結果、シミュレーションは実験時の磁気島の成長をよく再現することが明らかになった。また、NTMを効率的に安定化するためにはECCD位置のほかECCD幅の最適化も重要であることも明らかになった。


34000793
Development of completely Solenoidless tokamak operation in JT-60U
牛込 雅裕*; 井手 俊介; 伊藤 智之*; 上瀧 恵里子*; 御手洗 修*; 白岩 俊一*; 鈴木 隆博; 高瀬 雄一*; 田中 茂利*; 藤田 隆明; Gohil, P.*; 鎌田 裕; Lao, L. L.*; Luce, T. C.*; 三浦 幸俊; 内藤 磨; 小関 隆久; Politzer, P.*; 坂本 宜照; JT-60チーム
Nuclear Fusion 46(2), p.207-213(2006) ; (JAEA-J 00911)

 中心ソレノイド(CS)を全く用いない、トカマクプラズマの立ち上げに関する研究成果についての論文。JT-60トカマクにおいて、完全CS無しの状態でヌル点が存在しない場合でも電子サイクロトロン波(ECRF)入射と外部ポロイダルコイルの電流変化で100kAのプラズマ電流(Ip)が立ち上がることを実証した。立ち上げに必要な条件(ECRFパワー,トロイダル磁場等)を明らかにした。また、CSをほとんど用いない状態で中性粒子ビーム(NB)のみによりIp=260kAを1秒維持することに功した。さらに同様の条件で、ECRFとNBのみでIpを215kAから310kAへランプアップさせることに成功した。高閉込め負磁気シア放電において、自発電流によるオーバードライブを示す結果を得た。


34000794
Impact of wall saturation on particle control in long and high-power-heated discharges in JT-60U
仲野 友英; 朝倉 伸幸; 竹永 秀信; 久保 博孝; 三浦 幸俊; 清水 勝宏; 木島 滋; 正木 圭; 東島 智; JT-60チーム
Nuclear Fusion 46(5), p.626-634(2006) ; (JAEA-J 00912)

 長い時間スケールにおけるプラズマ・壁相互作用を理解するため、放電時間を15秒から65秒に、中性粒子ビーム加熱時間を10秒から30秒に伸張した。長時間Hモード放電の後半ではダイバータ板が粒子飽和することが確認された。放電中にダイバータ板での粒子吸収が徐々に減少し、その後、粒子を吸収しない状態に達した。この壁飽和現象によって、ダイバータ排気を有効にしているにもかかわらず中性粒子ビーム以外の粒子供給がなくても主プラズマの密度が上昇した。また、総入力エネルギーが350MJに達したが、カーボンブルームと呼ばれる急激な炭素不純物の発生や、主プラズマの不純物による希釈は観測されなかった。


34000795
Development of a dc 1MV power supply technology for NB injectors
渡邊 和弘; 柏木 美恵子; 川島 秀一*; 小野 要一*; 山下 泰郎*; 山崎 長治*; 花田 磨砂也; 井上 多加志; 谷口 正樹; 奥村 義和; 坂本 慶司
Nuclear Fusion 46(6), p.S332-S339(2006) ; (JAEA-J 00913)

 1MeV級の中性粒子入射装置用電源における重要な技術は、超高電圧の高速制御,直流1MVの電送,イオン源で放電破壊の際のサージの抑制である。超高電圧の制御については、これまでのパワー半導体の進歩を反映させ、従来のGTOインバータをIEGT素子に変えたインバータについて検討した。その結果、インバータでの損失を従来の1/3に低減でき、大きさとしてもGTO方式の6割に小型化できることを示した。さらに、1MV電送については、重要な要素である超高圧のブッシングについての試作試験で十分な耐電圧を確認した。また、サージの抑制については、高磁束密度で周波応答の良いファインメットコアを用いることで、サージの吸収が可能である。これらの技術のこれまでの進展について述べる。


34000796
1 MeV, ampere class accelerator R&D for ITER
井上 多加志; 柏木 美恵子; 谷口 正樹; 大楽 正幸; 花田 磨砂也; 渡邊 和弘; 坂本 慶司
Nuclear Fusion 46(6), p.S379-S385(2006) ; (JAEA-J 00914)

 ITERに向けた静電加速器R&Dの目的は、大電流密度の負イオンを1MeVまで加速することである。原研MeV級加速器は、従来のクランプ理論やパッシェンの法則をMV級高電圧,長真空ギャップ領域に外挿して設計されている。さらに、絶縁物表面の沿面放電防止には、大型電界緩和リングによる陰極接合点の電界低減が効果的であった。これら真空絶縁技術により、真空絶縁型加速器で1MVを8,500秒間安定保持することに成功した。バイトンOリングのSF6ガス透過、並びに逆流電子によるポート損傷と真空リークを止めることにより、負イオンの表面生成が持続・促進され、カマボコ型負イオン源の高出力(<40kW)運転時に電流密度が飽和することなく増加した。この結果、電流密度146A/m2(全負イオン電流:0.206A)の負イオンビームを836keVまで加速することに成功した(パルス幅:0.2秒)。これは、ITERで必要とされる高出力密度負イオンビーム(1MeV, 200A/m2)を世界で初めて実現したものである。さらに本論文では、EGS4コードを用いて制動X線の発生量を見積もり、光電効果による放電破壊の可能性を議論する。


34000797
Direct numerical simulation on non-equilibrium superconducting dynamics after neutron capture in MgB2 superconductor
町田 昌彦; 小山 富男*; 加藤 勝*; 石田 武和*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 559(2), p.594-596(2006) ; (JAEA-J 00915)

 本研究では、超伝導体MgB2に中性子を照射した場合に生じる核反応後の超伝導非平衡現象を大規模数値シミュレーションにより明らかにする。一般に、超伝導体は、超伝導転移点近傍で電気抵抗が二桁程度変化することから、微弱な熱的信号も電気信号として捕らえることが可能である。したがって、本研究の目的は、中性子1つ1つを個々に検出できるような高精度中性子検出過程を上記の超伝導非平衡現象をシミュレーションすることで電気的にどれほどの精度でキャッチできるかを明らかにすることである。発表においては、シミュレーションにおいて得られた検出器としての空間分解能,時間分解能、そして、X線等で既に実用に供されている電圧バイアス状態での数値シミュレーション結果についても考察する。


34000798
Design optimization of ADS plant proposed by JAERI
斎藤 滋; 辻本 和文; 菊地 賢司; 倉田 有司; 佐々 敏信; 梅野 誠*; 西原 健司; 水本 元治; 大内 伸夫; 武井 早憲; 大井川 宏之
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 562(2), p.646-649(2006) ; (JAEA-J 00916)

 原研ではオメガ計画の下、高レベル廃棄物中のマイナーアクチニド(MA)を核変換するための加速器駆動システム(ADS)の開発を進めている。原研が提案するADSプラントは、熱出力800MW,鉛ビスマス共晶合金(LBE)冷却のタンク型概念を採用している。未臨界炉心にはMA+Pu窒化物燃料が装荷され、LBEは冷却材と核破砕ターゲットを兼ねている。このADSプラントでは年間約250kgのMAを核変換できる。実効増倍係数は安全性などを考慮し、0.97とした。未臨界炉心の構造に関しては、核破砕ターゲット周りの熱流動解析を行い、定常状態の陽子ビームに対して健全性を確保できる見込みの構造が得られた。同様に過渡状態の陽子ビームに対する構造健全性評価や予備的な事故評価も行った。


34000799
Minor actinide neutron capture cross-section measurements with a 4π Ge spectrometer
小泉 光生; 長 明彦; 藤 暢輔; 木村 敦; 水本 元治; 大島 真澄; 井頭 政之*; 大崎 敏郎*; 原田 秀郎*; 古高 和禎*; 坂根 仁*; 堀 順一*; 後藤 淳*; 菅原 昌彦*; 永井 泰樹*; 河出 清*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 562(2), p.767-770(2006) ; (JAEA-J 00917)

 原子核科学研究グループにおいては、文科省公募型特会事業において、マイナーアクチニドの中性子捕獲断面積を測ることを目的として、4πGeスペクトロメータを使った実験装置の準備を行っている。実験は、京大炉の電子LINAC施設で行う予定で、TOF中性子ビームラインの整備はほぼ完了している。4πGeスペクトロメータの建設は進行中である。並行して、デジタル処理テクニックに基づく新しいデータ収集システムの開発を行った。以上この事業の現状について紹介する。


34000800
Measurement of neutron spectra produced in the forward direction from thick graphite, Al, Fe and Pb targets bombarded by 350 MeV protons
岩元 洋介; 谷口 真吾*; 中尾 徳晶*; 糸賀 俊朗*; 中村 尚司*; 中根 佳弘; 中島 宏; 佐藤 大樹; 八島 浩*; 山川 裕司*; 大石 晃嗣*; 上蓑 義朋*; 民井 淳*; 畑中 吉治*; 馬場 護*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 562(2), p.789-792(2006) ; (JAEA-J 00918)

 J-PARC施設遮蔽では、詳細計算手法として、モンテカルロ輸送計算コードMCNPX, PHITS等を用いている。これら設計コードの計算精度を検証し、設計への適用性を検討するには、厚いターゲットから前方方向に放出される中性子のエネルギースペクトル実験データが重要である。しかし100MeVを超える入射エネルギー,前方方向の実験データはほとんどないのが現状である。そこで本研究では、設計コードの計算精度を検証することを目的として、大阪大学核物理研究センター(RCNP)・サイクロトロンに設置されたTOFコースにおいて、350MeV陽子入射によるTTY(Thick Target Neutron Yield)測定実験を行った。実験では、炭素,アルミニウム,鉄,鉛ターゲットから放出する前方方向の中性子エネルギースペクトルを、NE213液体有機シンチレータを用いて飛行時間法により測定した。実験では、測定におけるエネルギー分解能を上げるために、低エネルギー領域の測定では11.4m、高エネルギー領域では95mの飛行距離を用いた。実験結果をモンテカルロ輸送計算コードMCNPX, PHITSコードによる計算値と比較した結果、約20%以内で再現し、現在のJ-PARC施設遮蔽設計計算が十分な精度を有していることを検証した。


34000801
The p-process nucleosynthesis in the carbon deflagration model for type Ia supernovae
日下部 元彦*; 岩本 信之; 野本 憲一*
Nuclear Physics A 758, p.459c-462c(2005) ; (JAEA-J 00919)

 炭素爆燃型超新星爆発でのp過程元素合成計算を炭素/酸素比及び22Ne存在比が異なる環境の下で行い、これらに対する陽子過剰核の合成量の依存性を調べた。また、この炭素爆燃型超新星による陽子過剰核の合成がどの程度太陽系に存在する陽子過剰核へ寄与していたのかを、重力崩壊型超新星による合成量と比較した結果、陽子過剰核の合成サイトとして炭素爆燃型超新星も有力なサイトになり得ることを明らかにした。


34000802
Muon spin rotation study of field-induced magnetism in heavily overdoped La2-xSrxCuO4
MacDougall, G. J.*; Birgeneau, R. J.*; Kim, H.*; Kim, S.-J.*; Rodriguez, J.*; Russo, P. L.*; Savici, A. T.*; 植村 泰朋*; 脇本 秀一; Wiebe, C. R.*; Luke, G. M.*
Physica B; Condensed Matter 374-375, p.211-214(2006) ; (JAEA-J 00920)

 高温超伝導体の研究において、単結晶試料育成や化学的ドーピングの困難から、過剰ドープ領域の研究はほとんどなされていなかった。本研究では、世界初となる過剰ドープしたLa2-xSrxCuO4単結晶のμSR実験の結果を報告する。縦磁場μSRの結果から、relaxation rateの温度依存性がCurie-Weiss則に従い、そのCurie constantが磁場の関数としてC∝α Hと書かれることが見いだされた。この現象は、内部磁場分布の異常が磁場により誘起されていることを示している。磁場誘起の度合を表すαはx=0.12からすでに現れ、過剰ドープ領域のx=0.30まで単調増加し、ドープ量に依存することがわかった。この磁場誘起による異常な内部磁場分布の原因の解明は、今後の重要な課題である。


34000803
Identification of divacancies in 4H-SiC
Son, N. T.*; 梅田 享英*; 磯谷 順一*; Gali, A.*; Bockstedte, M.*; Magnusson, B.*; Ellison, A.*; 森下 憲雄; 大島 武; 伊藤 久義; Janz'en, E.*
Physica B; Condensed Matter 376-377, p.334-337(2006) ; (JAEA-J 00921)

 六方晶炭化ケイ素(4H-SiC)の固有欠陥解明研究の一環として、P6/P7とラベル付けされた格子欠陥(センター)を電子常磁性共鳴(EPR)法及び理論計算(ab initio)法を用いて調べた。室温または850℃での3MeV電子線照射により4H-SiC中にP6/P7センターを導入し、EPR測定を行った結果、P6/P7センターの近接炭素及びシリコン原子の超微細相互作用定数が電気的に中性の複空孔(VCVSi0)に対する計算値と非常によく一致することがわかった。これにより、正に帯電した炭素空孔と炭素アンチサイト対の光励起三重項状態(VCCSi2+)と従来考えられていたP6/P7センターが、C3V/C1h対称性を有するVCVSi0の三重基底状態に起因すると結論できた。


34000804
Relationship between defects induced by irradiation and reduction of hole concentration in Al-doped 4H-SiC
松浦 秀治*; 鏡原 聡*; 伊藤 祐司*; 大島 武; 伊藤 久義
Physica B; Condensed Matter 376-377, p.342-345(2006) ; (JAEA-J 00922)

 炭化ケイ素(SiC)半導体中の欠陥制御研究の一環として、p型4H-SiC中の欠陥とAlアクセプタ不純物の電気的活性化の関係を調べた。加速エネルギー200keV及び4.6MeVの電子線照射によりSiCへの欠陥導入を行った。200keVはSiC中のC原子のみがはじき出されるエネルギーであり、4.6MeVはSi, C, Al原子ともにはじき出される条件に相当する。Alアクセプタの電気的活性化に関してはHall係数の温度依存性を測定することで調べた。その結果、200keV電子線照射では、200meVの活性化エネルギーを持つAlアクセプタ濃度が減少し、それに対応して350meVの深い準位が増加することがわかった。一方、4.6MeV電子線照射では、正孔濃度が急激に減少して、Alアクセプタ濃度が一桁減少し、同時に350meVの深い準位も減少した。以上より、200keV電子線ではC空孔(VC)が形成され、そのVCとAlアクセプタが結合することでVC-Al複合欠陥となり、200meVの浅いAlアクセプタが減少すると考えられる。また、350meVの深いアクセプタ準位がVC-Al複合欠陥に起因し、200keV電子線照射では増加すると推察される。一方、4.6MeV電子線照射では、全ての構成元素がはじき出されるため、新たな欠陥生成により正孔濃度(200meV, 350meVの準位)が減少すると解釈できる。


34000805
Effects of a low-energy proton irradiation on n+/p-AlInGaP solar cells
Lee, H. S.*; 山口 真史*; Ekins-Daukes, N. J.*; Khan, A.*; 高本 達也*; 今泉 充*; 大島 武; 伊藤 久義
Physica B; Condensed Matter 376-377, p.564-567(2006) ; (JAEA-J 00923)

 次世代の高効率多接合太陽電池のトップセルとして期待されるn+p接合型AlInGaP太陽電池へ30keV陽子線照射を行い、生成する欠陥をDLTS(Deep Level Transient Spectroscopy)法により調べた。その結果、二種類の多数キャリアトラップ(HP1, HP2)及び二種類の少数キャリアトラップ(EP1, EP2)を見いだした。温度依存性よりエネルギー準位を見積もったところ、HP1はEV+0.90eV、EP1はEC-0.54eVであると決定できた。3MeV陽子線照射の報告と比較することで、EP1はリン空孔が関与した複合欠陥に由来すると帰結できた。さらに、照射試料に対し室温にて100mA/cm2の電流注入を行ったところ、HP1トラップが減少し、それに応じて正孔濃度が増加することが明らかになり、電流注入による太陽電池特性の回復現象にHP1が関与すると結論できた。


34000806
Magnetic phase diagram and change in 5f electronic states in NpNiGa5
本多 史憲; 目時 直人; 金子 耕士; 浄念 信太郎; 山本 悦嗣; 青木 大*; 塩川 佳伸*; 塩川 佳伸; 大貫 惇睦
Physica B; Condensed Matter 378-380, p.1009-1010(2006) ; (JAEA-J 00924)

 NpNiGa5は低温で強磁性と隣り合うモーメント同士が約80度傾いた反強磁性の2つの磁気秩序を示す。それぞれの相の磁場や温度に対する安定性と相転移における5f電子状態の変化を調べることを目的として、強磁場下における中性子回折実験を行った。この実験からNpNiGa5の磁場−温度相図を作成し、磁場中で反強磁性から強磁性へのメタ磁性転移を示すことを明らかにした。またこの転移において、反強磁性が消失するだけでなく、強磁性による磁気散乱強度が減少することを見いだした。これは反強磁性−強磁性の転移に伴いNpの磁気モーメントの大きさが急激に変化することを意味しており、NpNiGa5の5f電子の状態が高磁気モーメント状態(反強磁性相)から低磁気モーメント状態(強磁性相)へ変化したことを示唆している。


34000807
Multipole ordering in f-electron systems
久保 勝規; 堀田 貴嗣
Physica B; Condensed Matter 378-380, p.1081-1082(2006) ; (JAEA-J 00925)

 f電子系における多極子秩序を微視的観点から明らかにするために、われわれはj-j結合描像に基づいたΓ8モデルを、単純立方格子,体心立方格子,面心立方格子の3種類の格子の場合について解析した。このモデルは、(ffσ)結合を介した跳び移り積分を持つが、われわれはその(ffσ)に関する2次摂動論を用いて、それぞれの格子における有効モデルを導出した。さらに、それらの有効モデルに対して平均場近似を適用し、単純立方格子ではΓ3g反強四極子転移、面心立方格子ではΓ2u反強八極子転移、面心立方格子では縦型の三重変調Γ5u八極子転移が起こることがわかった。


34000808
Magnetic and dielectric properties of frustrated ferrimagnet TmFe2O4
吉井 賢資; 池田 直*; 中村 彰夫
Physica B; Condensed Matter 378-380, p.585-586(2006) ; (JAEA-J 00926)

 電荷及び磁気フラストレーションを有する酸化物TmFe2O4の磁性と誘電性を調べた。磁化測定からは240K付近に鉄スピンのフェリ磁性が観測された。また、100K以下程度で、磁気構造が変化していることが示唆された。交流誘電率測定からは、3000程度の比誘電率、及び特徴的な誘電分散が見られた。これらの結果は、すでに報告されているRFe2O4(R:希土類)と同様の物性であることがわかった。


34000809
Spin-charge-orbital ordering on triangle-based lattices
大西 弘明; 堀田 貴嗣
Physica B; Condensed Matter 378-380, p.589-591(2006) ; (JAEA-J 00927)

 幾何学的フラストレーションのある最も基本的な格子として、三角構造からなるジグザグ鎖を取り上げ、そこでの軌道自由度の効果を明らかにするために、eg軌道ハバード模型の基底状態を密度行列繰り込み群法によって解析した。まず、二軌道が縮退している場合は、スピンフラストレーションを解消するような軌道状態を取る。一方、二軌道間のレベル分裂がある場合は、低エネルギーレベルの軌道が占有されやすくなり、レベル分裂の大きさに応じて軌道状態が連続的に変化していくことがわかった。また、軌道異方性の変化に応じて、スピン状態の不整合性にも変化が生じることがわかった。


34000810
Vortex structure from BCS to BEC Superfluid
町田 昌彦; 小山 富男*; 大橋 洋士*
Physica C 437-438, p.190-194(2006) ; (JAEA-J 00928)

 本発表では、フェルミ原子ガスの渦糸構造についての最新の数値シミュレーション結果を報告する。フェルミ原子ガスの超流動状態の理論的枠組みは、超伝導と同一であり、超伝導の物質パラメータにおいてそれが実現していると仮定するなら、極めて高温(室温以上)での超伝導が実現しており、超強結合超伝導に位置づけられる。この事実より、フェルミ原子ガスは、未だ実現していない高温での超伝導状態を予言できる対象として学問的価値が高いと評価されており、そこで出現する量子渦糸は極めて特異の構造を持つことから多くの研究者の興味を惹いてきた。発表者は、最近、この渦糸構造を厳密対角化法を適用し量子状態を求め、渦糸構造の特異な振る舞いの一旦を明らかにしている。講演では、渦糸周辺の物質密度分布や励起状態の分布などについて発表し、その物理的意義を示す予定である。


34000811
Structural analysis of (Ga,Mn)N epilayers and self-organized dots using MeV ion channeling
黒田 真司*; Marcet, S.*; Bellet-Amalric, E.*; Cibert, J.*; Mariette, H.*; 山本 春也; 酒井 卓郎; 大島 武; 伊藤 久義
Physica Status Solidi (A) 203(7), p.1724-1728(2006) ; (JAEA-J 00929)

 窒化ガリウム(GaN)へMnをドープすることで希薄磁性半導体が形成できると期待されているが、結晶中のMnの占有位置により磁性が変化するため、結晶中のMn位置と磁性の関係を明らかにする必要がある。本研究では、分子線エピタキシー(MBE)で作製した(Ga,Mn)Nエピ膜及びAlN基板上に形成した(Ga,Mn)Nドット中のMnサイトに関する知見を得るためにラザフォード後方散乱(RBS)と粒子誘起X線放出(PIXE)測定を行った。その結果、RBSチャネリングに対応してPIXEにより求めたGa及びMn濃度が減少することを見いだした。このことより、ほぼ全てのMn原子がGaサイトに置換していることが明らかとなった。また、ドット中に含まれるMn濃度のPIXE分析の結果、同一条件でエピ成長をした厚膜よりMn濃度が二〜三倍高濃度であることが明らかとなり、ドット形成により多量のMnが結晶中に導入できるとの結論が得られた。


34000812
Spin multiplicity and charge state of a silicon vacancy (T V2a) in 4H-SiC determined by pulsed ENDOR
水落 憲和*; 山崎 聡*; 瀧澤 春喜; 森下 憲雄; 大島 武; 伊藤 久義; 梅田 享英*; 磯谷 順一*
Physical Review B 72(23), p.235208_1-235208_6(2005) ; (JAEA-J 00930)

 炭化ケイ素(SiC)半導体中のSiサイトの空孔型欠陥(T V2a)のスピン(S)多重度と荷電状態をパルス電子−核二重共鳴法(ENDOR)を用いて決定した。試料にはn型の六方晶SiC(4H-SiC)を用い、3MeVの電子線を4×1018/cm2照射することでT V2aを導入した。電子スピン共鳴(ESR)測定により非常に強い29Siの超微細相互作用(HF)が観測された342.3mTでのパルスENDOR測定を行い、得られたシグナルを電子スピン及び核スピンのゼーマン分裂,HF分裂を考慮して解析した結果、T V2aはこれまで提唱されていた中性空孔ではなく、荷電状態-1,スピン状態S=3/2のSi空孔であると同定できた。


34000813
Structure of SiO2/4H-SiC interface probed by positron annihilation spectroscopy
前川 雅樹; 河裾 厚男; 吉川 正人; 宮下 敦巳; 鈴木 良一*; 大平 俊行*
Physical Review B 73(1), p.014111_1-014111_9(2006) ; (JAEA-J 00931)

 ドライ酸化法によって形成されるSiO2/4H-SiC界面構造を低速陽電子ビームを用いて評価した。ドップラー幅測定より、SiO2/4H-SiC界面にはSiO2やSiCとは明白に区別される界面層が存在することが明らかとなった。界面層での陽電子消滅寿命測定からは451ps単一の寿命成分が得られた。これは界面構造がアモルファスSiO2に類似した比較的空隙を持つ構造であることを示している。界面層での電子運動量分布測定からは、陽電子は空隙に存在する酸素価電子と対消滅していることが示唆された。第一原理計算による陽電子消滅特性のシミュレーションを行ったところ、SiO2中に導入した酸素価電子を持つ欠陥構造での陽電子消滅特性は実験結果をよく反映するものであった。酸化後の加熱焼鈍によって観測される酸素価電子との消滅確率の減少挙動は、電気測定から求められる界面準位密度のそれと非常に類似したものとなった。これは、界面準位が陽電子を捕獲する欠陥構造と強く関連していることを示している。


34000814
Infrared spectroscopic study of the band-gap closure in YH3 at high pressure
大村 彩子; 町田 晃彦; 綿貫 徹; 青木 勝敏; 中野 智志*; 竹村 謙一*
Physical Review B 73(10), p.104105_1-104105_7(2006) ; (JAEA-J 00932)

 希土類金属のイットリウムは、水素と反応して三水素化物(以下、YH3)を形成すると、電子状態が大きく変化して黄褐色に透過した絶縁体となる。YH3では水素は金属格子の四面体サイトと八面体サイトを占有しているが、この金属−絶縁体転移には八面体サイトの水素が関与していると推測されている。われわれは、YH3の赤外吸収スペクトルを室温下圧力30GPaまでの加圧過程で測定し、金属−水素間の結合状態を調べた。YH3の母体金属格子は圧力10-20GPaで、hcpからfccへ構造が変化する。これに対応する変化が、赤外吸収スペクトルに圧力12GPa付近から現れた。一方、圧力12GPaまでのhcp相の領域で得られた金属−水素間振動モードの圧力変化からモードグリュナイゼンパラメータ値を算出したところ、八面体サイトでは1.91となり、四面体サイトのおよそ3倍の値であった。八面体サイトのグリュナイゼンパラメータ値1.91は他の共有結合性の物質と同程度であり、このサイトでは水素の1s軌道とイットリウムの4d軌道は混成していると考えられる。また、構造変化が完了したfccの領域の23GPaでは、試料が赤外領域で不透明となり、構造変化を伴わず不連続的にバンドギャップクロージングが生じたことを見いだした。これまで行われた理論計算では、hcpからfccの構造変化を伴う転移もしくは構造変化を伴わずhcp相内での電子転移によるギャップクロージングが提案されていた。しかしながら、今回の結果はこれらのどちらとも一致せず、23GPaで観測したギャップクロージングのメカニズムは未だ不明のままである。


34000815
Evolution of the electronic structure across the filling-control and bandwidth-control metal-insulator transitions in pyrochlore-type Ru oxides
岡本 淳*; 藤森 伸一; 岡根 哲夫; 藤森 淳*; Abbate, M.*; 吉居 俊輔*; 佐藤 正俊*
Physical Review B 73(3), p.035127_1-035127_6(2006) ; (JAEA-J 00933)

 絶縁体Sm2Ru2O7においてフィリング制御(Sm2-xCaxRu2O7)とバンド幅制御(Sm2-xBixRu2O7)による金属絶縁体転移が電子構造に及ぼす影響を光電子分光と軟X線吸収分光を用いて系統的に比較した。Fermi準位近傍の状態密度は双方とも抵抗の変化に応じた変化を示したが、Ru 4dバンド全体ではフィリング制御ではリジッドバンド的なシフトが観測されたのに対し、バンド幅制御ではスペクトル強度の移行が観測された。内殻準位の化学ポテンシャルのシフトにおいては、フィリング制御では正孔のドープに対応した単調なシフトが見られたのに対し、バンド幅制御ではRu 3d準位以外は単調な変化を示さなかった。


34000816
Limits for ordered magnetism in Pu from muon spin rotation spectroscopy
Heffner, R.; Morris, G. D.*; Fluss, M. J.*; Chung, B.*; McCall, S.*; MacLaughlin, D. E.*; Shu, L.*; 大石 一城; Bauer, E. D.*; Sarrao, J. L.*; 髭本 亘; 伊藤 孝
Physical Review B 73(9), p.094453_1-094453_5(2006) ; (JAEA-J 00934)

 μSR測定法を用いてα-Pu及びδ-Puの磁気モーメントの上限値を調べた。まず零磁場下の測定より、150K以下ではミュオンスピン緩和率は温度によらず一定となり、核磁気緩和のみ存在する見解と良い一致を示した。また、H=2Tでのα-Puにおけるナイトシフトも同様に100K以下では温度によらず一定となった。一方で100K以上では、常磁性不純物に対するミュオン拡散の効果によるナイトシフトの増加が観測された。得られたミュオンスピン緩和率より見積もられた4Kにおけるα-Pu及びδ-Puの磁気モーメントの上限は<10-3μBであると結論づけられた。


34000817
Unified model of nuclear mass and level density formulas
深堀 智生; 中村 久*
Physical Review C 72(6), p.064329_1-064329_10(2005) ; (JAEA-J 00935)

 原子核の基底及び励起準位の特徴は、原子核質量及び準位密度公式におけるパラメータの系統性を使用することにより記述される。これらの公式は、新しい方法による殻・対補正を導入した単一粒子準位密度の解析的な記述を基礎としている。主な特徴は、基底準位付近の液滴模型への殻効果,対効果,変形効果である。これらの効果は高励起エネルギーでは、消失する。本論文の主目的は、解析的枠組みの中で、改良されたエネルギー依存の殻エネルギー補正,対エネルギー補正,変形エネルギー補正を集団運動による増強因子に導入することにある。これらの補正は、非常に多くの核反応に系統的な記述を与える。新しい公式は、経験的な原子核質量データだけでなく、低エネルギーでの中性子共鳴間隔の測定値や励起エネルギー依存性に見られる実験的な系統性に非常に良い一致を示している。


34000818
Measurements of evaporation residue cross sections for the fusion reactions 86Kr+134Ba and 86Kr+138Ba
佐藤 健一郎; 池添 博; 光岡 真一; 西尾 勝久; Lin, C.*; Jeong, S. C.*
Physical Review C 73(3), p.034609_1-034609_6(2006) ; (JAEA-J 00936)

 重イオンの融合反応において、融合断面積に及ぼす原子核の殻構造の効果を調べるため、86Kr+134Ba系と86Kr+138Ba系の2つの融合反応で生成される蒸発残留核の断面積をそれぞれ測定した。86Kr+138Ba系では励起エネルギーが12MeV付近で蒸発残留核断面積の増大が見られた。他方、86Kr+134Ba系では励起エネルギー25MeV以下では蒸発残留核は検出されなかった。このことから、138Ba核の中性子数82の閉殻構造が融合反応における複合核形成に有利に作用していることがわかった。


34000819
Spectroscopic characterization of an ultrashort-pulse-laser-driven Ar cluster target incorporating both Boltzmann and particle-in-cell models
Sherrill, M. E.*; Abdallah Jr., J.*; Csanak, G.*; Dodd, E. S.*; 福田 祐仁; 赤羽 温; 青山 誠; 井上 典洋*; 上田 英樹*; 山川 考一; Faenov, A. Y.*; Magunov, A. I.*; Pikuz, T. A.*; Skobelev, I. Y.*
Physical Review E 73(6), p.066404_1-066404_6(2006) ; (JAEA-J 00937)

 電子と原子のキネティクスを連立して解くモデルを用いて、極短パルスレーザー照射Arクラスターから発生したK殼X線スペクトル(Heα線)の解析を行った。このモデルでは、非平衡電子エネルギー分布関数はPICコードを用いて生成したものを用いた。その結果、X線は極めて非平衡な状態にある高密度プラズマから発生しており、その時間スケールは約5.7psであることがわかった。また、さらに固体密度に近い1021cm-3を超えるイオン密度のクラスタープラズマの生成が可能となった場合には、X線発生のタイムスケールはフェムト秒となることが明らかとなった。


34000820
Pressure-induced phase transitions in the Cd-Yb periodic approximant to a quasicrystal
綿貫 徹; 町田 晃彦; 池田 智宏*; 青木 勝敏; 金子 洋; 菖蒲 敬久; 佐藤 卓*; Tsai, A. P.*
Physical Review Letters 96(10), p.105702_1-105702_4(2006) ; (JAEA-J 00938)

 Cd-Yb合金近似結晶の温度圧力平面上での相転移研究は周期系と準周期系との比較研究をするうえで重要な位置を占める。合金は原子クラスターの集合体として構成されているが、クラスター最内部のカドミウム4面体が温度圧力に応じて多様な配向秩序を見せることが明らかとなった。圧力5.2万気圧まで、温度10-300Kの間に5種類もの配向秩序相が出現した。秩序の伝播方向は、加圧すると約1万気圧で[110]方向から[111]方向へと変わり、さらに加圧し4万気圧程度で再び[110]に戻ることもわかった。一方、約1万気圧以上の圧力領域では冷却により2段階の相転移を起こすことも明らかとなった。常圧ではカドミウム4面体間に短距離的な相互作用しか働かないのに対して、1万気圧以上の高圧領域ではより遠くのカドミウム4面体間同士でも働く長距離的な相互作用が出現することによってこのような複雑な相転移が起こることが明らかとなった。


34000821
Identification of the carbon antisite-vacancy pair in 4H-SiC
梅田 享英*; Son, N. T.*; 磯谷 順一*; Janz'en, E.*; 大島 武; 森下 憲雄; 伊藤 久義; Gali, A.*; Bockstedte, M.*
Physical Review Letters 96(14), p.145501_1-145501_4(2006) ; (JAEA-J 00939)

 炭化ケイ素(SiC)の固有欠陥同定研究の一環として、SI5と呼ばれる欠陥の構造同定を行った。試料にはn型の六方晶(4H)SiCを用い、3MeV電子線照射を行うことでSI5を導入した。Xバンドでの電子スピン共鳴(ESR)及び電子−核二重共鳴(ENDOR)によりSI5の評価を行った。超微細相互作用の角度依存性を調べたところ、50K以下の低温ではC1h対称であるのに対し、50K以上ではC3v対称となることが見いだされた。これは、局在する電子の安定位置が温度により異なることによると考えられる。得られた実験結果を詳細に解析することでスピン−ハミルトニアンパラメータを決定するとともに、密度関数理論(Density Functional Theory)に基づいた第一原理計算を行った結果、SI5はアンチサイトC原子−C空孔ペア(CSiVC)に起因すると結論できた。


34000822
Divacancy in 4H-SiC
Son, N. T.*; Carlsson, P.*; Hassan, J. ul*; Janz'en, E.*; 梅田 享英*; 磯谷 順一*; Gali, A.*; Bockstedte, M.*; 森下 憲雄; 大島 武; 伊藤 久義
Physical Review Letters 96(5), p.055501_1-055501_4(2006) ; (JAEA-J 00940)

 電子スピン共鳴(ESR)及びab initioスーパーセル計算を用いて炭化ケイ素(SiC)中の固有欠陥であるP6/P7センターの同定を行った。試料はn型及び高抵抗(SI)の六方晶SiC(4H-SiC)を用い、3MeVの電子線を室温または850℃で2×1018, 1×1019/cm2照射し、P6/P7センターを導入した。ESR測定の結果、p型SiCではP6/P7センターは光照射下でのみ観測されていたが、n型SiCではシグナル強度は照射直後は低いものの暗状態でも観測されることが判明した。さらに、850℃照射または熱処理することでシグナル強度が増大することを見いだした。また、13C及び29Siの超微細相互作用の角度依存性の解析から、P6/P7センターがc軸に平行(C3v対称)なSi空孔(VSi)とC空孔(VC)の複空孔(VSi-VC)とc軸に対し横向き(C1h対称)のVSi-VCであると同定された。さらに、ab initioスーパーセル計算を行ったところ、対称性や超微細相互作用のテンソルの値がESRの結果をよく再現することが判明した。以上より、P6/P7センターはVSi-VCであると帰結できた。


34000823
Effects of edge boundaries on Josephson vortices in finite-size layered high-Tc superconductors
町田 昌彦
Physical Review Letters 96(9), p.097002_1-097002_4(2006) ; (JAEA-J 00941)

 本論文は、有限サイズの層状高温超伝導体が磁場下におかれた際に侵入するジョセフソン磁束量子がサンプル境界端の影響を受けどのような配置を取りうるかということを系統的に数値シミュレーションを行って得られた結果を報告しており、ジョセフソン磁束を利用するデバイス等の可能性を探索する応用研究にとっては、極めて有用な情報である。また、一般に磁束量子はお互いの反発力により三角格子を形成するが、この論文では、境界の影響で四角格子に変位することを示しており、この結果は一つの新たな物理現象の発見に位置づけられる。


34000824
Role of anomalous transport in onset and evolution of neoclassical tearing modes
Konovalov, S. V.; Mikhailovskii, A. B.*; 小関 隆久; 滝塚 知典; Shirokov, M. S.*; 林 伸彦
Plasma Physics and Controlled Fusion 47(12B), p.B223-B236(2005) ; (JAEA-J 00942)

 新古典テアリングモード(NTM)は、トカマクプラズマにおいてプラズマ圧力を制限し、閉じ込めを劣化させるものとして知られている。NTM成長における鍵となる役割は、プラズマ流,温度,密度であり、熱伝導や粒子拡散や粘性による磁場に垂直方向と水平方向の輸送によって決まる。この発表は、垂直異常熱輸送とイオンの粘性効果のNTMへの影響を理論的に調べた。


34000825
Survey of type I ELM dynamics measurements
Leonard, A. W.*; 朝倉 伸幸; Boedo, J. A.*; Becoulet, M.*; Counsell, G. F.*; Eich, T.*; Fundamenski, W.*; Herrmann, A.*; Horton, L. D.*; 鎌田 裕; Kirk, A.*; Kurzan, B.*; Loarte, A.*; Neuhauser, J.*; Nunes, I.*; 大山 直幸; Pitts R. A.*; Saibene, G.*; Silva, C.*; Snyder, P. B.*; 浦野 創; Wade, M. R. *; Wilson, H. *
Plasma Physics and Controlled Fusion 48(5A), p.A149-A162(2006) ; (JAEA-J 00943)

 この論文は、さまざまなトカマク装置で観測されているタイプI ELMダイナミクスの測定結果をまとめたものである。ペデスタル部から吐き出されたフィラメント構造による対流的な損失,周辺磁場のエルゴディック化や磁力線の再結合による磁力線に平行方向の輸送増加,径電場シアが消失することによる乱流輸送の増加といった輸送機構がELM輸送の可能性として推量されている。種々の実験結果を検証し、これらの輸送モデルとの比較・検証を行った。


34000826
Pedestal conditions for small ELM regimes in tokamaks
大山 直幸; Gohil, P.*; Horton, L. D.*; Hubbard, A. E.*; Hughes, J. W.*; 鎌田 裕; 神谷 健作; Leonard, A. W.*; Loarte, A.*; Maingi, R.*; Saibene, G.*; Sartori, R.*; Stober, J. K.*; Suttrop, W.*; 浦野 創; West, W. P.*; ITPA Pedestal Topicalグループ
Plasma Physics and Controlled Fusion 48(5A), p.A171-A181(2006) ; (JAEA-J 00944)

 Type I ELMを伴うHモード運転はITERの標準運転シナリオとして考えられているが、type I ELMによる瞬間的な熱・粒子束によるダイバータの損耗が懸念されている。近年、世界中のトカマク装置で振幅の小さなELMを伴うHモード放電の研究が進展しており、幾つかの新しい運転領域が発見されている。本論文は、Alcator C-Mod, ASDEX Upgrade, DIII-D, JET, JFT-2M, JT-60U and NSTX各装置で得られている小振幅ELM放電について、ペデスタル特性の観点から運転領域,周辺揺動,周辺部MHD安定性について比較・要約した結果を報告している。また、ITERプラズマへの適用に向けた研究課題についても議論している。


34000827
The Roles of plasma rotation and toroidal field ripple on the H-mode pedestal structure in JT-60U
浦野 創; 神谷 健作; 小出 芳彦; 滝塚 知典; 大山 直幸; 鎌田 裕; JT-60チーム
Plasma Physics and Controlled Fusion 48(5A), p.A193-A199(2006) ; (JAEA-J 00945)

 JT-60Uにおいて、異なるトロイダル磁場リップルで、トロイダル運動量入力を変化させたパワースキャンを行い、Hモードのペデスタル構造の特性を調べた。ペデスタル圧力は高速イオンの損失パワーの減少とともに増大することがわかった。一方で、トロイダル回転によって、ペデスタル圧力は大きく変化しなかった。しかしながら、リップル損失の少ないHモードプラズマでもプラズマ電流に対して順方向のトロイダル回転が大きいほど、高エネルギー閉じ込めが得られることがわかった。


34000828
Nonlocal behaviour of zonal flows in tokamak plasmas
宮戸 直亮; 岸本 泰明; Li, J.*
Plasma Physics and Controlled Fusion 48(5A), p.A335-A340(2006) ; (JAEA-J 00946)

 イオン温度勾配(ITG)駆動乱流などのドリフト波乱流と、乱流から非線形的に生成される帯状流がトカマクプラズマ中の異常輸送について、重要な役割を果たしていることはよく知られている。帯状流は乱流輸送を抑制し、輸送障壁形成のきっかけになりうる。トカマクプラズマで現れる帯状流には、低安全係数領域に現れる時間変動しない静的帯状流と、高安全係数領域に現れる振動帯状流の2種類ある。グローバルなITG乱流シミュレーションは、振動帯状流の周波数が、プラズマの小半径方向に連続的には変化せず、階段状に変化する、すなわち異なる半径において同一の周波数を持つことを示している。この非局所的な振舞いはρi/aが小さくなれば弱くなると考えられる。ここで、ρiはイオンのラーモァ半径、aはプラズマの小半径である。そこで、グローバルランダウ流体ITGシミュレーションにより、ρi/aの大きさが帯状流の非局所的振舞いに及ぼす影響を調べた。


34000829
Temporal variation of density fluctuation and transport in reversed shear plasmas on JT-60U
竹永 秀信; 大山 直幸; Bruskin, L. G.*; 間瀬 淳*; 滝塚 知典; 藤田 隆明
Plasma Physics and Controlled Fusion 48(5A), p.A401-A408(2006) ; (JAEA-J 00947)

 JT-60Uの負磁気シアプラズマにおいて、ペレット入射や電子サイクロトロン入射等の外部摂動を与えた場合に、閉じ込め性能のさらなる改善が観測されている。本発表では、その時の密度揺動と粒子輸送,イオン・電子熱輸送の変化について報告する。強い内部輸送障壁を形成した後にペレットを入射した放電では、内部輸送障壁での密度揺動レベルの顕著な減少が観測された。この時の粒子・熱バランス解析結果は、粒子輸送とイオン熱輸送は低下しているが、電子熱輸送は低下していないことを示している。一方、電子サイクロトロン入射時には、密度揺動レベルの低下を伴わない閉じ込め改善が観測されている。この時、粒子輸送とイオン熱輸送は変化しないが、電子熱輸送が低下することが観測されている。上記結果は、測定された密度揺動は粒子輸送・イオン輸送には強く関連しているが、電子熱輸送との関連は弱いことを示している。この結果は、粒子輸送・イオン熱輸送と電子熱輸送が、異なる空間スケールを持つ揺動で支配されていることを示唆している。さらに、電子サイクロトロン入射時に密度揺動が減少した放電もあり、その時の輸送特性についても報告する。


34000830
The Role of aspect ratio and beta in H-mode confinement scalings
Kaye, S. M.*; Valovic, M.*; Chudnovskiy, A.*; Cordey, J. G.*; McDonald D.*; Meakins A.*; Thomsen K.*; Akers, R.*; Bracco, G.*; Brickley, C.*; Bush C.*; Cote, A.*; DeBoo, J. C.*; Greenwald M.*; Hoang, G. T.*; Hogweij, D.*; Imbeaux, F.*; 鎌田 裕; Kardaun, O. J. W. F.*; Kus, A.*; Lebedev, S.*; Leonov, V.*; Lynch, S.*; Martin, Y.*; 三浦 幸俊; Ongena, J.*; Pacher, G.*; Petty, C. C.*; Romanelli, M.*; Ryter, F.*; 篠原 孝司; Snipes J.*; Stober, J.*; 滝塚 知典; 都筑 和泰*; 浦野 創
Plasma Physics and Controlled Fusion 48(5A), p.A429-A438(2006) ; (JAEA-J 00948)

 NSTXとMASTからの低アスペクト比データで拡大されたHモードデータベースを用いて、アスペクト比とベータの閉じ込め比例則に対する影響を、いろいろな統計手法を適用して調べた。予測変数として工学的パラメータを用いた比例則開発から、逆アスペクト比依存性は0.38から1.29乗にあることがわかった。これらの比例則を物理変数の比例則に変換すると、規格化エネルギー閉じ込め時間はベータ増加により低下する。アスペクト比とベータの間には強い相関があるので、物理変数をもとにする比例則は不確実になっている。


34000831
Response of toroidal rotation velocity to electron cyclotron wave injection in JT-60U
坂本 宜照; 井手 俊介; 吉田 麻衣子; 小出 芳彦; 藤田 隆明; 竹永 秀信; 鎌田 裕
Plasma Physics and Controlled Fusion 48(5A), p.A63-A70(2006) ; (JAEA-J 00949)

 トロイダル回転やその勾配は、プラズマの輸送や安定性に大きな影響を与える要素の一つである。現在のトカマク装置では中性粒子ビームにより大きなトロイダル回転速度を発生/制御することができるが、核融合炉では運動量入力が小さいためそれらは困難である。そこでJT-60Uのさまざまな閉じ込め運転モードプラズマにおいて、電子サイクロトロン(EC)波入射によるトロイダル回転速度分布の応答を調べた。内部輸送障壁を持つ正磁気シアプラズマでは、トロイダル回転速度がCTR方向に変化し内部輸送障壁が劣化する。一方で負磁気シアプラズマでは大きな変化はない。また低加熱パワー入力のLモードプラズマでは、CO方向に変化した。プラズマの分布の差異によるEC入射に対するトロイダル回転速度分布の応答について報告する。


34000832
Origin of the various beta dependences of ELMy H-mode confinement properties
滝塚 知典; 浦野 創; 竹永 秀信; 大山 直幸
Plasma Physics and Controlled Fusion 48(6), p.799-806(2006) ; (JAEA-J 00950)

 ELMy Hモード閉じ込めのベータ依存性について、これまで長期間調べられてきたが未だ普遍的結論は得られていない。IPB98(y,2)比例則はベータによる強い劣化を示している。一方DIII-DとJETの実験ではベータ劣化が存在しなかった。最近のJT-60Uは強いベータ劣化が実際に存在することを示した。この論文では、JT-60UのELMy Hモード閉じ込めデータベースを解析し、閉じ込め時間が加熱パワーにより強く劣化することを確認した。この劣化はベータ劣化に相当するものであり、上記の実験結果に矛盾しない。ITPA Hモード閉じ込めデータベースの詳細な解析も行った。閉じ込め時間のベータ依存性が、例えば形状パラメータのような、外部設定パラーメータによりどのように変わるかについて調べた。


34000833
Preparation of proton exchange membranes based on crosslinked polytetrafluoroethylene for fuel cell applications
八巻 徹也; 小林 和博; 浅野 雅春; 久保田 仁*; 吉田 勝
Polymer 45(19), p.6569-6573(2004) ; (JAEA-J 00951)

 架橋ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)にスチレンをγ線グラフトした後、スルホン化することによって、プロトン交換膜を合成した。グラフト率は、PTFE基材膜の架橋密度とグラフト反応の条件により7〜75%の範囲で制御された。今回の作製条件において、膜内部まで均一にスルホン酸基を導入するためには30%以上のグラフト率が必要であることがわかった。得られたプロトン交換膜は、ナフィオンのような市販のパーフルオロスルホン酸膜を大きく上回る2.9meq g-1という大きなイオン交換容量を有するとともに、含水時における高い寸法安定性も兼ね備えている。これらの優れた特性は、言うまでもなく架橋PTFEをグラフト基材に用いたことに起因し、われわれのプロトン交換膜が燃料電池に応用可能であることを強く示唆している。


34000834
LET-dependent survival of irradiated normal human fibroblasts and their descendents
浜田 信行*; 舟山 知夫; 和田 成一*; 坂下 哲哉; 柿崎 竹彦; Ni, M.; 小林 泰彦
Radiation Research 166(1), p.24-30(2006) ; (JAEA-J 00953)

 放射線照射生存子孫細胞において遅延的に増殖死が引き起こされることが知られているが、そのLET依存性は解明されていない。そこで、本研究では、高密度接触阻害培養したヒト正常二倍体線維芽細胞AG01522に60Coγ線(0.2keV/μm)及び6種のイオンビーム(16.2-1610keV/μm)を照射し、1次及び2次コロニーを形成させ、2次コロニー形成能の喪失を指標として、遅延的細胞増殖死のLET依存性を明らかにすることを目的とした。1次コロニー及び2次コロニーにおいて、γ線の一定の生存線量に対するRBEは、ともに100keV/μm近傍で最大となったことから、遅延的増殖死にもLET依存性があることがわかった。その一方、1次コロニーでの10%生存線量における2次コロニーの生存率は、LETによらず一定であったことから、遅延的増殖死の起因は1次コロニー形成期間に固定される可能性が考えられる。


34000835
Acceleration of high current fully stripped carbon ion beam by direct injection scheme
柏木 啓次; 福田 光宏; 岡村 昌宏*; Jameson, R. A.*; 服部 俊幸*; 林崎 規託*; 榊原 和彦*; 高野 淳平*; 山本 和男*; 岩田 佳之*; 藤本 哲也*
Review of Scientific Instruments 77(3), p.03B305_1-03B305_4(2006) ; (JAEA-J 00954)

 Direct injection schemeは空間電荷効果によるビーム損失を回避するために、低エネルギービーム輸送部を介さないでレーザーイオン源で生成したイオンをRFQ線形加速器に入射する新しい方法である。C6+ビームの大電流化を実現することによりシンクロトロンへのシングルターン入射が可能となり、その結果マルチターン入射に比べて電磁石の大きさを小さくすることができる。Nd-YAGレーザーで生成した大電流C6+ビームをDirect injection schemeによってRFQ線形加速器に入射し、加速実験を行った。その結果17mAのC6+ビームを加速することに成功し、大電流のフルストリップ炭素イオンビームをDirect injection schemeによって加速できることを実験的に証明した。


34000836
Development of an H--ion source for the High-Intensity Proton Accelerator (J-PARC)
小栗 英知; 上野 彰; 滑川 裕矢*; 池上 清*
Review of Scientific Instruments 77(3, Part2), p.03A517_1-03A517_3(2006) ; (JAEA-J 00955)

 原研では2001年より高エネルギー加速器研究機構と共同で大強度陽子加速器計画(J-PARC)を開始している。J-PARCの第1期では、リニアックにてビーム電流30mA,デューティーファクタ1.25%の負水素イオンを加速する。LaB6フィラメントを使用したJ-PARC用負イオン源は、セシウム未添加状態にて定常的にビーム電流35mA以上,デューティーファクタ0.9%のビーム供給を行っている。デューティーファクタはJ-PARC要求値の1/3であるが、LaB6フィラメントの交換頻度は半年に1回程度である。一方、J-PARCにおいてセシウム添加状態にて72mAのビームを発生できる負イオン源を使用し、タングステンフィラメントの寿命測定を実施した。その結果、J-PARCの目標である500時間連続運転を達成できる見込みを得ることができ、タングステンフィラメントを使用したセシウム未添加型負水素イオン源もJ-PARC用イオン源の候補になり得ることがわかった。現在、セシウム未添加型タングステンフィラメント負水素イオン源のビーム試験を実施しており、本会議ではその結果について報告する。


34000837
The First chemical enrichment in the universe and the formation of hyper metal-poor stars
岩本 信之; 梅田 秀之*; 冨永 望*; 野本 憲一*; 前田 啓一*
Science 309(5733), p.451-453(2005) ; (JAEA-J 00956)

 鉄/水素比が太陽の10万分の1という超金属欠乏星の発見は、これらの星が本当に宇宙で最初に形成された第一世代の小質量星であるのか、という問題を提起した。われわれは、これらの星が第一世代の超新星によって放出された水素やヘリウムよりも重い元素を多く含むガスから誕生した第二世代の星であると主張している。この問題の鍵となるのが、超金属欠乏星で見られる非常に特異な組成分布とその類似点及び相違点である。われわれは、物質混合とフォールバックを仮定した重力崩壊型の暗い超新星により、これらの組成の特徴を再現できることを示した。


34000838
Interaction between an acidic extractant and an octadecylamino group introduced into a grafted polymer chain
浅井 志保; 渡部 和男; 須郷 高信*; 斎藤 恭一*
Separation Science and Technology 40(16), p.3349-3364(2005) ; (JAEA-J 00957)

 多孔性膜へ担持する抽出試薬の適用範囲を拡げるため、酸性,中性、及び塩基性の抽出試薬を疎水性(C18NH)膜に担持した。抽出試薬の担持量及び担持後の膜体積の変化を評価することにより、それぞれの抽出試薬とC18NH基との間に生ずる相互作用を解明した。酸性抽出試薬(Cyanex 272)は、担持溶液中ではC18NH基のアミノ部の正電荷とCyanex 272のリン酸部と静電相互作用し、グラフト鎖間に取り込まれるため、実用上十分な担持量が得られた。また、基材内部のC18NH基にも担持されるため、Cyanex 272担持後の膜体積が膨潤して、細孔径が増大し、液体透過性能が向上した。Cyanex 272を担持した膜へ亜鉛水溶液を透過させると、Cyanex 272のリン酸部はC18NH基のアミノ部から離れて亜鉛イオンと錯体を形成するとともに、C18NH基のオクタデシル部とCyanex 272のアルキル部との間の疎水性相互作用が強められるため、Cyanex 272は、抽出性能を損なうことなくグラフト鎖へ安定に存在することが示された。また、担持されたCyanex 272の92%が亜鉛イオンの吸着に利用されることがわかった。


34000839
X-ray diffraction investigation of the hexagonal-fcc structural transition in yttrium trihydride under hydrostatic pressure
町田 晃彦; 大村 彩子; 綿貫 徹; 池田 隆司; 青木 勝敏; 中野 智志*; 竹村 謙一*
Solid State Communications 138(9), p.436-440(2006) ; (JAEA-J 00958)

 本研究ではイットリウム水素化物における圧力誘起構造相転移について、ダイヤモンドアンビルセルを用いて高圧下放射光X線回折実験を行うことにより詳細に調べた。そしてhexagonal-fcc構造相転移が11GPaから20GPaの広い圧力範囲に渡る中間領域を経て可逆的に起こることを確かめた。中間領域の回折パターンはこれまで報告されていたようなhexagonal相とfcc相の単純な二相共存状態では再現することができず、観測されたhexagonal-fcc構造相転移がもっと複雑な相転移であることを明らかにした。また、イットリウム3水素化物のhexagonal相について状態方程式を決定し、体積弾性率が他の希土類金属水素化物のものと同程度になることを明らかにした。本論文ではX線回折実験により得られたデータをもとに圧力誘起構造相転移について議論している。


34000840
Complexation of Eu(III) with dibutyl phosphate and tributyl phosphate
Zhang, P.*; 木村 貴海
Solvent Extraction and Ion Exchange 24(2), p.149-163(2006) ; (JAEA-J 00959)

 時間分解レーザー誘起蛍光分光法及び溶媒抽出法を用いて、リン酸トリブチル(TBP),リン酸ジブチル(HDBP)及びそれらの混合系でのEu(III)の錯形成を検討した。有機相中の硝酸濃度はEu(III)の抽出分配比だけでなく、抽出錯体の蛍光スペクトルや水和数に影響を及ぼした。Eu-TBP錯体について、低濃度硝酸では水分子が一つ残るが、高濃度では排除された。Eu-HDBP錯体については硝酸濃度によらず水分子一つが残った。Eu-HDBP/TBPまたはEu-HDBP/30%TBPでは複数の錯体が生成し、低濃度硝酸で第三相が生成した。種々の条件において生成するEu(III)錯体を提案するとともに可能な化学形を議論した。


34000841
地層処分の技術的知識基盤の構築; 処分計画を段階敵意に着実に進めるために
梅木 博之
エネルギー 38(12), p.72-77(2005) ; (JAEA-J 00960)

 高レベル放射性廃棄物のような長寿命の廃棄物の処分では、これまでの工学的プロジェクトと比較して安全性を考慮する時間スケールが極めて長期にわたり、モニタリングや制度的管理など人間の監視に基づく管理方法を前提としない、受動的なシステムによって安全を確保することが求められる。地層処分は、このような技術的な要求を満たすとともに、倫理的観点(IAEA, 1995; NEA, 1995)、さらには、社会の持続的発展を可能とするという観点から受け入れることのできる現実的な解決法と考えられている。地層処分を安全に行うためには、適切な地質環境を選定し、その条件に適した処分システムを設計するとともに、直接的な実証ができないシステムの性能が長期間にわたって発揮されることを、計算モデルを用いた定量的な解析に基づいて評価(これを安全評価という)しておく必要がある。こうした作業を行うためには、さまざまな分野に渡る学際的な研究開発によって、必要となる技術,関連する情報やデータ,科学的知見などを整えていくことが必要である。


34000842
中性子回折によるメタンハイドレートの精密構造解析
井川 直樹; 星川 晃範; 石井 慶信
波紋 16(2), p.116-119(2006) ; (JAEA-J 00962)

 メタンハイドレートは水分子が水素結合により2種類のカゴ(12面体及び14面体)を形成し、それらが積み重なった結晶構造であることが明らかにされているが、カゴの中に内包されたメタンの挙動や形成・分解過程などの原子レベルでの基礎物性については必ずしも明確ではない。本報告では、メタンハイドレートを形成する2種類のカゴの中のメタン分子の挙動を解明することを目的に、原子力機構のJRR-3に設置してある高分解能粉末中性子回折装置を用いて回折パターンを測定し、Rietveld法及びマキシマムエントロピー法による解析を行った。水素と重水素では中性子散乱長の符号が異なる性質を利用し、本研究ではメタン分子の水素とカゴを形成する水分子の水素を明確に識別するために重水(D2O)と一般のメタン(CH4)からメタンハイドレートを合成した。その結果、メタンハイドレート中のカゴの構造からメタン分子を浮き上がらせることに成功し、これをもとにさらに詳細な構造解析を行うことで、カゴの種類によりメタン分子の挙動に違いがあること、また、この挙動は温度によって変化することを明かにした。


34000843
コンテナレス法で作製された高純度かんらん石ガラスの特異な構造
小原 真司*; 鈴谷 賢太郎; 竹内 謙*
放射光 18(6), p.341-346(2005) ; (JAEA-J 00963)

 主要な造岩鉱物であるかんらん石(Mg2SiO4)は、酸素イオンが六方最密充填を持つように、独立したSiO4四面体と稜共有によるMgO6八面体群が配列している斜方晶であるが、SiO2の含有率が33.3mol%と小さいことから通常の融体急冷法で高純度のガラスを得ることが困難である。われわれは、レーザー加熱されたかんらん石融体を不活性ガスと音波で無容器で浮遊させ、レーザーの急断による緩やかな冷却で高純度ガラスを得た。得られたガラスの構造を高エネルギーX線回折,中性子回折を併用し、逆モンテカルロシミュレーションにより解析した。その結果、かんらん石ガラスでは、通常のガラスにおいて主要なネットワーク形成ユニットであるSiO4四面体は単量体もしくは二量体のみを形成してネットワークを作らず、MgO4, MgO5, MgO6多面体の頂点及び稜共有により形成されるMg-Oネットワークによってガラス構造が支えられていることが明らかとなった。


34000844
高エネルギー光子・電子・中性子・陽子に対する線量換算係数
坂本 幸夫
放射線 31(4), p.319-334(2005) ; (JAEA-J 00964)

 ICRP1990年勧告において、従来の線質係数Qに代わる放射線荷重係数wRが導入されるとともに、人体臓器・組織の放射線に対する感受性を表す組織荷重係数wTが見直され、被ばく線量として実効線量E及び各臓器・組織に対する等価線量HTが定義された。この勧告に沿った光子,電子及び中性子に対する実効線量への線量換算係数は、ICRP Pub.74で公表されたが、そのエネルギー範囲は限られており、加速器施設で生じる高エネルギー放射線に対する実効線量への換算係数は未整備であった。原子力機構が開発中の高エネルギー加速器施設等の設計に役立てるため、HERMESコードシステムをもとにした高エネルギー放射線の被ばく線量評価システムを整備するとともに、10GeVまでの光子,中性子及び陽子並びに100GeVまでの電子に対する実効線量への換算係数を評価した。ここでは、高エネルギー放射線の被ばく線量評価法,光子・電子・中性子・陽子の線量換算係数の結果及び諸外国での高エネルギー放射線に対する線量換算係数の現状について述べる。


34000845
中性子小角散乱; 生きたままをみる技術
小泉 智
高分子 55(3), p.161-164(2006) ; (JAEA-J 00967)

 近年隆盛であるナノサイエンスの背景には、ナノサイズのさまざまな超分子を創り出す化学の進展と、これら新物質の発見を可能とした構造評価技術の進展(走査型フォース顕微鏡や3次元電子顕微鏡)があった。一方、中性子小角散乱法も古典的ではあるが、統計平均・非破壊の構造解析、または揺らぎの直接観察の重要な手段であり、集光技術等を駆使した進展が近年著しい。本稿では中性子小角散乱法の最新に注目し、高分子ゲル,高分子重合,高分子成形への応用に直結するモデル系を例に挙げて、この手法を「生きたままをみる分析技術」として紹介した。


34000846
架橋ポリテトラフルオロエチレンを基材とした電解質膜のプロトン伝導特性
八巻 徹也; 澤田 真一; 浅野 雅春; 吉田 勝
高分子加工 55(4), p.162-169(2006) ; (JAEA-J 00968)

 日本原子力研究開発機構では、放射線を利用した独自の高分子加工技術により、ナフィオンに代替する電解質膜の開発を進めている。そして最近、PTFE膜に放射線で架橋構造を付与し、それに放射線グラフト重合法を応用することにより、プロトン伝導を担う官能基(スルホン酸基)の量を従来の3倍にまで高めた新しいフッ素系高分子電解質膜を作製することに成功した。これまでの研究において、スルホン酸基の量を制御した架橋PTFE電解質膜に対し、温度,相対湿度の制御下でプロトン伝導性を評価したところ、その指標である伝導率σが最大でナフィオンの2倍に達することがわかった。この値は、R.H.を下げても大きく低下せず、低加湿の条件下であっても高伝導膜として十分に機能した。本稿では、研究のきっかけとなったPTFEの架橋技術をはじめに概説した後、独自開発による架橋PTFE電解質膜の作製法、さらにはプロトン伝導性とそれに関連する基礎研究を紹介する。


34000847
抽出試薬担持グラフト鎖搭載多孔性膜材料を用いた放射性核種の高速分離
斎藤 恭一*; 浅井 志保
未来材料 5(12), p.38-42(2005) ; (JAEA-J 00969)

 抽出試薬を溶解した有機溶媒を使って水溶液中のさまざまな放射性核種を分離する方法の代替として、抽出試薬を樹脂ビーズに担持固定して用いる固相抽出法が提案された。しかしながら、放射性核種のビーズ内部への拡散に時間がかかるという欠点があった。最近、筆者らは多孔性中空糸膜の内部孔表面に高分子鎖を接ぎ木し、そこへ抽出試薬を高密度に担持する方法を開発した。多孔性膜内の孔に液を透過させることによって液中の放射性核種を高速で捕捉できることを紹介した。


34000848
高温ガス炉ガスタービン発電システム(GTHTR300)の経済性評価
武井 正信*; 小杉山 真一*; 毛利 智聡; 片西 昌司; 國富 一彦
日本原子力学会和文論文誌 5(2), p.109-117(2006) ; (JAEA-J 00970)

 GTHTR300では、高温ガス炉固有の安全性を生かし、安全設備を極力簡素化するとともに、発電系設計,炉心設計に独創的なアイデアを取り入れて高性能化することで、経済性の向上を図った。その結果、発電コストは約3.8円/kWhとなり、ユーザー要件である4円/kWhの目標を満足するとともに、既存の軽水炉発電プラントに対する経済的優位性の見通しを得た。


34000849
原子力機器の構造信頼性評価のための地震動評価コードの開発
杉野 英治; 小森 義久*; 鬼沢 邦雄; 鈴木 雅秀
日本原子力学会和文論文誌 5(2), p.118-124(2006) ; (JAEA-J 00971)

 原子力施設のように極めて高い信頼性が要求される構造物では、設計用基準地震動を上回る地震動の発生を想定し、確率論的手法に基づいて信頼性を評価することが必要である。著者らは、原子力機器の構造信頼性評価手法を確立するために、発電所サイト周辺の地震の震源特性や伝播経路特性を考慮した断層モデルによる地震動評価手法を用いた地震ハザード評価コードSHEAT-FMを開発した。一般的に、断層モデルによる地震動評価手法はある程度震源が特定されている地震を対象とするのが、本コードでは、震源を特定することができない地震についても、この手法を適用し地震ハザードを評価することができる。本報では、SHEAT-FMコードの概要及びモデルサイトへの適用例を示すとともに、従来の距離減衰式と比較した結果を示す。


34000850
MOX燃料加工施設に対する確率論的安全評価手法の開発
玉置 等史; 吉田 一雄; 渡邉 憲夫; 村松 健
日本原子力学会和文論文誌 5(2), p.125-135(2006) ; (JAEA-J 00972)

 MOX燃料加工施設に適用できる確率論的安全評価手順の検討を行い、MOX燃料加工施設と原子炉施設との違いを考慮し、その構成を2段階5ステップとした。第一段階を、可能性のある事故原因の候補(異常事象候補)を抜け落ちなく抽出し、リスク上重要と考えられる事象を選別する2ステップで構成されることから、「概略PSA」と呼ぶ。異常事象候補を網羅的かつ効率的に抽出する第1ステップでは、ハザード分析手法を取り入れ、設備機器の機能に着目した機能レベルのFMEAを提案した。第2ステップでは、概略的な発生頻度及び影響評価に基づくリスクマトリクスを用いて相対的なリスクの比較をもとに選別する。選別した事象に対して詳細な検討を行うため、第二段階を「詳細PSA」と呼び、事故シナリオ分析,発生頻度評価及び影響評価を原子炉施設のPSA手順に従い実施する。この方法を用いて仮想的に設定したモデルプラントを対象に分析を実施し本手順の有用性を確認した。


34000851
トカマク・プラズマでのディスラプション予測,時系列データ解析
芳野 隆治
プラズマ・核融合学会誌 82(5), p.294-299(2006) ; (JAEA-J 00976)

 トカマクプラズマにおけるディスラプションの発生をニューラルネットワークで予測する研究について紹介する。密度限界,不純物混入,エラー磁場などによって発生する電流駆動型のディスラプションは、予兆現象を用いることにより100%に近い精度で予測できるようになった。プラズマ圧力の増大により発生する圧力駆動型のディスラプションは、ベータ限界に対する裕度を算出して安定度を評価することにより、約90%の精度で予測できるようになった。


34000852
ITERテストブランケットのための核特性研究の進展
佐藤 聡; Verzirov, Y. M.; 落合 謙太郎; 西谷 健夫
プラズマ・核融合学会誌 82(5), p.306-315(2006) ; (JAEA-J 00977)

 ITERテストブランケット(TBM)の開発に向けてDT中性子を用いた中性子工学実験を行っている。最近の成果として、多層構造モックアップ及びペブル充填層核特性研究に関して報告する。多層構造モックアップ核特性実験から、モンテカルロコードによるトリチウム生成率計算結果の実験結果に対する比(C/E)は、0.87〜1.11と評価できた。C/Eの平均値は1.02であり、非常に高精度に、トリチウム生成量を予測できることがわかった。ペブル充填層核特性研究では、ペブル充填層の核特性実験に加えて、ペブル充填層をペブルとボイドによる均質化したモデルと、個々のペブルを忠実にモデル化した非均質モデルに関してモンテカルロ計算を行い、計算手法に関する研究を併せて行った。非均質モデルによるC/Eは、境界部を除くと、0.92〜1.03であった。均質モデルによる計算では、非均質モデルと比較して、トリチウム生成率が減少した。リチウム6同位体の濃縮度が増加すると、均質モデルと非均質モデルによる結果の違いが増加し、濃縮度が90%の場合、均質モデルによる結果は約5%減少することがわかった。TBMのトリチウム増殖率において、5%の減少は多大なる影響であり、今後の核設計において非均質モデルによる評価が必要であることを明らかにした。


34000853
高温ガス炉に接続する水素製造設備の動特性解析コードの開発
佐藤 博之
RIST News (41), p.21-32(2006) ; (JAEA-J 00978)

 日本原子力研究開発機構(原子力機構)は文部科学省から「核熱利用システム技術開発」を受託し、その中でHTTRと水蒸気改質法による水素製造設備との接続について検討を行った。HTTRに接続する水素製造設備は、原子炉2次冷却系の一部を構成し、起動停止時、通常運転時における水素製造設備で発生した負荷変動は、原子炉冷却材温度の変動を引き起こし、その結果原子炉の運転に影響を与える。本システムの安全評価においては、水素製造設備に起因する負荷変動によるシステムの過渡挙動を把握するための動特性解析コードが必要である。そこで、HTTRに接続する水素製造システムの起動停止、並びに運転中の異常な過渡変化時の動特性解析を行う解析コードN-HYPAC(Nuclear Hydrogen Production Analysis Code)を開発した。本コードは、水素製造システムの静定状態(通常運転時)及び動的状態(起動,停止及び異常時等の過渡変化時)における熱物質収支及び制御系の特性を解析することを目的としたもので、中間熱交換器(以下、「IHX」と呼ぶ)から下流の2次ヘリウムガス系,プロセスガス系をモデル化した。本報は、動特性解析コードN-HYPACの概要及び解析結果についてまとめたものである。


34000854
カラム電極の作製; 電極構成材料の選択とカーボン繊維作用電極の前処理
北辻 章浩; 青柳 寿夫*
Review of Polarography 52(1), p.51-53(2006) ; (JAEA-J 00979)

 カラム電極は極めて大きな電極表面積を持つため、電解効率が高く、これを用いれば迅速な全電解が可能である。また、試料溶液を電極内に流しながら電解するので、目的イオンがカラム内で繰り返し電解され、非可逆な電極反応を示す物質であっても定量的な電解を達成できる。一方、溶液の流量や電極活性を変えることによって、反応速度の遅い電極反応や、不均化反応などの後続反応を伴う酸化還元の研究にも適用可能である。さらに、カラム電極を二段あるいはそれ以上に連結することにより、不安定な化学種や反応中間体の研究にも有用である。この特長を活かして、カラム電極電解法は多様な酸化状態をとるアクチノイドなどの迅速電量分析や原子価調整,電極反応機構の解析,ラジカルの迅速調製などに用いられてきた。このような他法では得難い利点を持つカラム電極の作製にはある程度の知識や技術が必要である。本稿では、カラム電極を構成する材料の選択から、具体的な作製手順,カーボン電極の前処理法,測定手順までを、ウランの酸化還元測定を例に挙げながら詳しく解説した。


34000855
キャビテーション損傷の潜伏期の定量的予測に関する一考察
祖山 均*; 二川 正敏; 直江 崇*
ターボ機械 34(6), p.336-342(2006) ; (JAEA-J 00980)

 中性子源に生じるキャビテーション損傷の潜伏期の定量的予測法の構築を目途として、原子力機構にある電磁式衝撃試験装置(MIMTM)を用いて、キャビテーション気泡の発達時間とキャビテーション損傷にかかわるキャビテーション強さの関係を明らかにした。得たる結果を要約すると以下の通りになる。(1)本実験結果を整理した結果、キャビテーション気泡の発達時間の約7乗に比例して、キャビテーション損傷が増大する可能性があることを明らかにした。キャビテーション気泡の発達時間の観点から、本実験結果と流体機械のキャビテーション損傷の寸法効果に類似性が見られる。(2)圧力波によりキャビテーションを発生させる装置では、圧力波の入力パワーの0.5乗に比例してキャビテーション気泡の発達時間が増大する。本結果より、J-PARCの中性子源容器のキャビテーション損傷の定量的予測においても、キャビテーション気泡の発達時間のモニタリングは有効である。


34000856
レーザー結晶の接合技術開発
杉山 僚
溶接学会誌 75(3), p.175-179(2006) ; (JAEA-J 00981)

 短パルス性に着目したレーザー光源の利用が科学分野だけでなく産業分野においても進んでいる。それぞれの分野において、より幅広い利用展開を図るためには、高強度の半導体レーザー励起に耐えられる熱特性の優れたレーザー結晶が必須である。そのために、われわれは接着剤等を使わずにレーザー結晶を高強度に原子層レベルで接合する研究開発を行っている。本報告では、われわれがこれまでに開発してきた直接接合法,接合部の拡大観察並びに接合結晶の光学特性について詳述する。


34000857
Nuclear data evaluations for JENDL high-energy file
渡辺 幸信*; 深堀 智生; 小迫 和明*; 執行 信寛*; 村田 徹*; 山野 直樹*; 日野 哲史*; 真木 紘一*; 中島 宏; 小田野 直光*; 千葉 敏
AIP Conference Proceedings 769 , p.326-331(2005) ; (JAEA-J 00982)

 JENDL高エネルギーファイル(JENDL-HE)のために行われた核データ評価について概要を報告する。JENDL-HEには132核種に対する3GeVまでの中性子及び陽子入射断面積が格納される予定である。JENDL-HEの現在の版は、ENDF-6フォーマットにより、中性子全断面積,弾性散乱断面積及び角度分布,弾性散乱外断面積,粒子(n, p, d, t, 3He, α, γ)生成断面積及び二重微分断面積,同位体生成断面積,核分裂断面積が格納されている。現在のところ、評価は実験データ及びモデル計算を用いて行われている。断面積計算には、ECIS96, OPTMAN, GNASH, JQMD, JAM等の種々のモデル計算コード及びTOTELA, FISCAL等の系統式を用いたコードを用いている。評価された断面積は、実験データ及び他の評価値と比較される。今後、提案された高エネルギー断面積データニーズにしたがって、整備を進める予定である。


34000858
Review of neutron cross-section evaluations for fission products
Oblozinsk'y, P.*; Herman, M.*; Mughabghab, S. F.*; Sirakov, I.*; Chang, J.*; 中川 庸雄; 柴田 恵一; 川合 將義*; Ignatyuk, A. V.*; Pronyaev, V. G.*; Zerkin, V.*; Shen, Q.*; Zhuang, Y.*
AIP Conference Proceedings 769 , p.438-441(2005) ; (JAEA-J 00983)

 5つの主要評価済核データライブラリーに入っている核分裂生成物核種の断面積データをレビューした。本件は、評価国際協力ワーキングパーティ(WPEC)のサブグループ21の作業として行ったもので、原子番号31から68の範囲の核種に対する最善の評価済データを推奨することを目的としている。全部で、既に存在している211核種のデータを調査し、さらに新たな7核種のデータを加え、218核種に対する推奨値を決定した。


34000859
Web-based search and plot system for nuclear reaction data
大塚 直彦; 合川 正幸*; 須田 拓馬*; 内藤 謙一*; Korennov, S.*; 新井 好司*; 能登 宏*; 大西 明*; 加藤 幾芳*; 中川 庸雄; 深堀 智生; 片倉 純一
AIP Conference Proceedings 769 , p.561-564(2005) ; (JAEA-J 00984)

 EXFORとENDF書式に格納された実験データ・評価済データに対する核反応データウェブ検索作図システムが開発された。このシステムはLinux上でPerlとMySQLをCGIスクリプトとデータベースマネージャーとして動作する。それぞれ実験データと評価済データに対する2つの試作システムが紹介される。


34000860
Carrier sterilization using γ-irradiation
鳴海 一成
Biofertilizer Manual , p.44-53(2006) ; (JAEA-J 00985)

 根粒菌などのバイオ肥料の担体として用いられる泥炭や土壌の放射線滅菌には、高い透過性という点でγ線照射が最も適している。生体分子の中でもDNAが電離放射線に最も感受性を示す。γ線はDNA分子に作用し、放射線の直接効果を引き起こすが、細胞の80%は水分であるので、水の放射線分解による活性酸素種の発生も、放射線の間接効果として放射線の生物影響にとって重要である。バイオ肥料用担体の放射線滅菌で問題になるのは、放射線高耐性を持つ芽胞形成土壌微生物の中に、病原性を有するものが一部含まれることである。これに対処するためには、担体の水分を適宜、増加調整することで芽胞の発芽を促し、放射線により感受性を示す栄養型細胞に変換する方法が有効と考えられる。水分調整は、放射線の間接効果による殺菌作用を高める点でも有効である。担体の放射線滅菌は、担体由来の雑菌の増加を防ぎ、保存期間におけるバイオ肥料用接種菌の生菌数の維持を確実なものとするために必要であり、また、農地における不必要な病原菌増加のリスクを軽減するためにも重要となる。


34000861
Radiation loss by impurities measured from the large helical device
加藤 隆子*; 村上 泉*; 後藤 基志*; 森田 繁*; 居田 克巳*; Peterson, B. J.*; 舟場 久芳*; 仲野 友英
Journal of Plasma and Fusion Research SERIES, Vol.7 , p.1-4(2006) ; (JAEA-J 00986)

 真空紫外スペクトルを定量解析した。C IIIスペクトル線の強度比から求めた電子温度を用い、ネオン入射によって発生したプラズマの放射損失源を分光計測とボロメータ計測で同定した。さらに不純物の発光線強度比の時間変化から不純物による放射損失の時間変化を求めた。


34000862
Role of excited states of Li ions in the stopping power of molecular hydrogen
森林 健悟
Journal of Plasma and Fusion Research SERIES, Vol.7 , p.150-153(2006) ; (JAEA-J 00987)

 重粒子線のBragg Peak付近の領域で重要な原子分子過程に関して研究を行った。この領域では、陽子線やα線で見られるようにイオン衝突電離過程のほかに電荷移行過程,電子損失過程が重要になることが予測できるが、多くの評価済みデータが存在する水素原子,水素分子標的の断面積の原子番号(Z)依存性を調べ、各過程の断面積をZの式で表し、その傾向から重粒子線と水との衝突断面積を近似した。さらに、リチウム粒子線に関して、これらの衝突断面積とリチウムイオン・原子の基底・励起状態のエネルギーレベル,自動イオン化率,輻射遷移確率の原子データを計算し、核散乱を無視したモデルに適用させて、各原子過程のエネルギー付与への寄与を求めた。その結果、Bragg Peakのところ(約300keV/amu)では、90%程度電離過程がエネルギー付与に寄与しているが、100keV/amuのところでは、電荷移行と電子損失の寄与が10数%ずつあり、電離過程の寄与は70%程度であった。さらに、50keV/amuのところでは、電荷移行,電子損失,電離の寄与はそれぞれ約50%, 25%, 25%、10keV/amuでは、3つの過程の寄与は、35%, 25%, 40%となり低エネルギーでは、すべての原子分子過程が重要になることがわかった。


34000863
Electron capture processes in low energy collisions of C4+ ions with excited H atoms
島倉 紀之*; 本間 真由美*; 久保 博孝
Journal of Plasma and Fusion Research SERIES, Vol.7 , p.199-202(2006) ; (JAEA-J 00988)

 トカマク実験装置のダイバータプラズマでは、C IV n=6-7(722.6 nm)とn=5-6(466.0nm)のスペクトル線が、C IVの基底状態からの電子衝突励起のみを考えた場合に予想されるより、非常に強く現れる場合がある。これは、C4+がn=2に励起した水素原子と衝突し、電子を捕獲することによって起きると考えられる。このスペクトル線は、可視領域にあるので、ダイバータプラズマにおける高電離炭素イオンの挙動診断に非常に便利に利用できる。この利用のためにはC4+イオンと励起水素原子(H*(n=2))の衝突による電子捕獲断面積が必要となるが、今まで多価イオンと励起水素原子の衝突による電子捕獲断面積に対する定量的な評価は行われていなかった。ここでは、C4+イオンと励起水素原子(H*(n=2))の衝突による電子捕獲断面積を60-6000eV/amuの衝突エネルギー領域において分子基底展開緊密結合法を用いて計算した結果について報告する。


34000864
Atomic data for hollow atom production by high brightness X-rays and its applications
森林 健悟; 香川 貴司*; Kim, D. E.*
Journal of Plasma and Fusion Research SERIES, Vol.7 , p.233-236(2006) ; (JAEA-J 00989)

 高輝度X線源で生成したネオン様イオンの内殻励起状態に関係する原子データを幾つかの原子データコードで計算して、計算値の精度の評価を行い、さらに、そのデータを用いての中空原子のX線源,X線天文学への応用に関して検討を行った。原子番号が10から30のネオン様イオンの内殻励起状態の遷移エネルギーレベル,輻射遷移確率をRCI, Cowan, Declauxと呼ばれるコードで計算し、比較を行った。その結果、誤差は遷移エネルギーレベルについて2%以下、輻射遷移確率は20%以下であることがわかった。さらに、これらの原子データをもとにMg, Si, S, Ca, Feイオンの内殻励起状態及び中空原子からのX線数を種々のX線温度に対して計算した。その結果、内殻励起状態からのX線数は、X線温度にほとんど依存しないが、中空原子の場合は、例えば、Sイオンの場合、温度が1keVと3keVでX線数は二桁程度変化し、3keVを超えると内殻励起状態からのX線数に匹敵することがわかった。すなわち、これらのX線数の比較からX線温度を見積もれる可能性がある。この温度特性は、原子によって異なるので、種々の原子のスペクトル解析により、X線温度のより正確な評価が得られる可能性がある。


34000865
Cross sections of charge transfer by slow doubly-charged carbon ions from various carbon containing molecules
日下部 俊男*; 塩田 健司*; 久保 博孝; 白井 稔三*
Journal of Plasma and Fusion Research SERIES, Vol.7 , p.237-239(2006) ; (JAEA-J 00990)

 核融合プラズマ装置においてプラズマ対向面として炭素材料を用いた場合、周辺プラズマには炭素イオンや種々の炭化水素分子が不純物として発生する。これら不純物の挙動をモデル化するには、炭素イオンと炭化水素分子の電荷移行断面積が必要である。われわれは、C+2と種々の炭化水素分子及びCO, CO2の1電子及び2電子の移行断面積を0.7-6keVのエネルギー領域で測定した。その結果、ここで測定したほとんどの場合に対して電荷移行断面積はエネルギー依存性が弱いことがわかった。また、炭化水素分子の1電子移行断面積は炭化水素分子の電離エネルギーに依存することがわかった。一方、2電子移行断面積にはそのような依存性は見られなかった。


34000866
Production and compilation of charge changing cross sections of ion-atom and ion-molecule collisions
今井 誠*; 白井 稔三*; 斉藤 学*; 春山 洋一*; 伊藤 秋男*; 今西 信嗣*; 福澤 文雄*; 久保 博孝
Journal of Plasma and Fusion Research SERIES, Vol.7 , p.323-326(2006) ; (JAEA-J 00991)

 われわれは核融合研究に必要なイオン−原子,イオン−分子衝突による荷電交換断面積データの生産と収集を行ってきた。核融合炉の対向面材料から不純物として発生するBe, B, Fe, Niの1価及び2価イオンと原子(He, Ne, Ar, Kr),分子(H2, CO, CO2, CH4, C2H6, C3H8)との衝突による1電子及び2電子交換断面積を5-15keVの衝突エネルギー領域で測定した。また、1983年以降に科学雑誌に発表された荷電交換断面積の測定データを収集した。ここでは、これらのデータ生産,収集活動について報告する。


34000867
Design and implementation of an evolutional data collecting system for the atomic and molecular databases
佐々木 明; 城 和貴*; 柏木 裕恵*; 渡辺 知恵美*; 鈴木 学*; Lucas, P.*; 大石 雅寿*; 加藤 太治*; 加藤 雅敏*; 加藤 隆子*
Journal of Plasma and Fusion Research SERIES, Vol.7 , p.348-351(2006) ; (JAEA-J 00992)

 原子分子データベースは基礎科学,産業応用で利用されているが、広い分野からの需要を満たすには、現在手作業に頼っているデータ収集,評価を効率化することが不可欠である。われわれは、従来の原子データベースの構築の方法を分析し、原子分子データが記載されている論文の収集,論文中の重要データの抽出,具体的な図表のデータの読み取り,数値化の3つの段階に分け、コンピュータの活用による作業の効率化の方法の検討を行った。まず、論文の収集に関しては、多くの学術雑誌がオンライン化されていることを利用し、アブストラクトを自動的に収集することができる。次に、核融合研などにこれまでに蓄積されている、原子分子データが記載されている論文との類似性を計算することで、収集された論文の中から原子分子データが記載されている論文を選びだすことができると考えられる。本研究では、参照アブストラクトとの類似性のためにLVQ(Learning Vector Quantization)法によるテキスト分類の方法を用い、用意されたサンプルが原子分子データを含む論文かどうかの適合性を判定する実験を行い、結果の評価を行う。本研究は、会津大,奈良女子大,核融合研のグループが論文ダウンロードソフトの開発,テキスト分類ソフトの開発評価,参照用データの提供等の各要素を分担して行う。


34000868
Modeling of impurity transport in high density plasma with highly enhanced radiation loss on JT-60U
竹永 秀信; 朝倉 伸幸; 久保 博孝; 木島 滋; 仲野 友英; Porter, G.*; Rognlien, T.*; Rensink, M.*
Journal of Plasma and Fusion Research SERIES, Vol.7 , p.35-39(2006) ; (JAEA-J 00993)

 不純物入射により放射損失が高められたJT-60Uの高βp ELMy Hモードプラズマにおける不純物輸送のモデル化を行った。不純物入射による放射損失増大は、核融合炉において、ダイバータ板への熱負荷を低減するために有効な手法であると考えられている。主プラズマでの不純物輸送は1次元輸送コードを用い、ダイバータ及びスクレイプオフ層では2次元の流体コードUEDGEを用いた。主プラズマでは、入射されたアルゴンからの放射損失分布が中心領域でピーキングしているのに対して、もとから装置内に存在する炭素からの放射損失分布は周辺領域に局在している。UEDGEコードによる不純物輸送モデリングからは、ダイバータ及びスクレイプオフ層においては、炭素からの放射損失がアルゴンからの放射損失より大きいことが示された。主プラズマにおけるモデル化により評価された放射損失分布は、測定結果よりピーキングした分布となっている。また、UEDGEコードにより評価されたダイバータでの放射損失分布は測定結果と矛盾しないが、絶対値は2倍程度小さな値となっている。


34000869
Atomic and molecular data activities for fusion research at JAERI
久保 博孝; 左高 正雄; 白井 稔三
Journal of Plasma and Fusion Research SERIES, Vol.7 , p.352-355(2006) ; (JAEA-J 00994)

 核融合研究では、粒子熱制御やプラズマ診断のために、燃料である水素,核反応で生成されるヘリウム,プラズマ対向面材料から発生する不純物に関する原子分子データが必要である。ここでは、原研における核融合研究のための原子分子データ整備に関する最近の活動概要について報告する。原研では、最近、低温ダイバータプラズマにおいて重要な役割を果たす分子(水素分子,炭化水素分子等)に関する反応断面積データを収集評価している。収集評価したデータから半経験式を導き、データを使いやすくした。また、米国国立標準技術研究所と協力して、核融合プラズマにおいてプラズマ対向面材料から発生する、あるいは熱制御やプラズマ診断のために入射される重不純物(Ar, Ti, V, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Ga, Kr, Mo, W)の高電離イオンに関するスペクトルデータを収集評価している。さらに、大学の協力を得て、低エネルギー領域における電子衝突や荷電交換に関する断面積データの取得を行っている。


34000870
Towards construction of a numerical testbed for nuclear power plants
羽間 収; 鈴木 喜雄; 松原 仁; Tian, R.; 西田 明美; 谷 正之; 中島 憲宏
Proceedings of 7th MpCCI User Forum , p.132-136(2006) ; (JAEA-J 00995)

 原子炉は大規模かつ複雑な構造を持つため、その安全対策のためには非常に厳密な規則のもとに維持されなければならない。しかしながら、フルスケールの原子力装置とその冷却システムを全体として扱うことは制御実験では不可能である。そこで、特大地震や老朽化に対する原子炉の安全性を維持することを目的として、原子力機構では3次元仮想振動台をITBL環境に構築している。現在、組立部品構造法を用いることにより、高性能有限要素弾性シミュレーションシステムを開発した。このシステムを利用して、高温工学試験研究炉HTTRの有限要素モデルを構築した。


34000871
Oil spill simulation in the Japan Sea
川村 英之; 小林 卓也; 広瀬 直毅*; 伊藤 集通; 外川 織彦
WIT Transactions on Ecology and the Environment, Vol.88 , p.273-278(2006) ; (JAEA-J 00997)

 日本原子力研究開発機構では、原子力関連施設の事故等によって海洋に放出される環境負荷物質の挙動を再現・予測するための海洋環境評価システムの開発を行っている。このシステムは、海水循環モデル・海洋中物質移行モデル・被ばく線量評価モデルの三つの数値モデルにより構成されている。研究の目的は、1997年1月に日本海で起こった船舶事故により流出した重油の挙動を再現することによって、本システムの有効性を確認することである。特に現実的な海況場を再現するため、データ同化手法の一つである近似カルマンフィルターを適用した。ロシア船「ナホトカ号」の事故は1997年1月2日に島根県隠岐諸島の北100kmの海域で起こった。流出した重油はその後、兵庫県・京都府・福井県・石川県沖に広がったが、一部は21日頃までに能登半島を越えて新潟県の沿岸に漂着した。この海域には、対馬暖流が卓越しており、対馬暖流の変動・中規模渦・海上風等によって、兵庫県から石川県西部における海域に重油が広く分布したものと考えられる。一方で、日本沿岸を強く流れる対馬暖流の本流により、流出重油の一部は能登半島を越えて新潟県沿岸にまで運ばれたものと思われる。数値実験の結果、データ同化を適用して計算した海流場を用いると流出重油の分布をより現実的に再現することが可能であることが確認された。


34000872
原研高崎-TIARAのイオンマイクロビーム走査制御系の改良; ビーム描画機能実現を目指して
酒井 卓郎; 佐藤 隆博; 石井 保行; 及川 将一*; 島田 博文*; 芳賀 潤二*
第18回タンデム加速器及びその周辺技術の研究会報告集 , p.73-76(2005) ; (JAEA-J 00998)

 TIARAのマイクロビームシステムにおいては、ビームの走査制御は、PCベースのシステムで行っているが、その機能としては、Qレンズのビーム集束パラメーター調整用の二次電子画像のリアルタイム表示と、PIXE分析などに用いる均一走査照射などの単純な照射制御しか行っていなかった。今回、ビーム走査制御用PCに、新たにビーム描画機能の付加を行ったので報告する。近年、微細加工の新たな手法として、数MeV程度のイオンマイクロビームを用いた加工技術が、シンガポール国立大学等のグループによって開発され、高アスペクト比の加工が可能な方法として、注目を集めている。しかしながら従来まで、国内においては研究開発がほとんど行われておらず、新たに今年度より、芝浦工業大学のグループと共同で研究を開始した。今回予備的に行った実験では、PCにあらかじめセットしたライン&スペースのパターンに対応するビーム走査信号をデジタル−アナログ変換器(DAC)から設定した時間間隔で出力、1.7MeV水素イオンマイクロビームを試料上に描画照射することにより、レジスト材であるPMMA膜上にパターンを転写できることを確認した。


34000873
原研高崎における100MeV級重イオンマイクロビーム装置の開発とその現状,2
及川 将一*; 佐藤 隆博; 酒井 卓郎; 福田 光宏; 奥村 進; 宮脇 信正; 倉島 俊; 奈良 孝幸; 横田 渉; 神谷 富裕
第18回タンデム加速器及びその周辺技術の研究会報告集 , p.99-102(2005) ; (JAEA-J 00999)

 原研高崎イオン照射研究施設(TIARA)では、AVFサイクロトロン(K=110)の垂直ビームコースに設置する集束方式重イオンマイクロビーム装置の開発を進めている。本装置は、高LET重イオンの単一イオン照射を目的として設計されており、生体機能の解明や宇宙用半導体のシングルイベント発生機構の解明などに強力なツールとなることが期待されている。前回、シンチレータと光電子増倍管を用いた透過イオンイメージング法によりビームサイズ50μm以上という結果を報告したが、その後ビーム走査電源が発振していたことによりビームサイズを大きく見積もっていたことが判明した。それまで、この発振が原因で銅メッシュ(1000mesh/inch)の2次電子像を取得することができなかったが、発振を抑制することによって明瞭なメッシュ像が得られるようになった。このメッシュ像がよりシャープになるよう集束パラメータを調整した後、任意直線上の2次電子収量を解析したところ、X, Yともに2μm未満のビームサイズを達成していることが確認された。


34000874
高度計装システムの技術的成立性研究
山岸 秀志; 角田 恒巳*
共同研究成果概要,将来型原子力発電技術の高度化に関する研究 , p.197-211(2006) ; (JAEA-J 01003)

 本論文は、原子力機構,東北電力,東京電力及び日本原子力発電との間で、平成10年度から同13年度までの4年間行われた共同研究「高度計装システムの技術的成立性研究」の成果をまとめたものである。本共同研究では(1)光センシング計装システムの開発及び(2)炉外核計装システムの開発が行われた。光センシング計装システムの開発では、光ファイバセンサを炉心内に挿入し、出力,温度等の炉内諸情報を同時分布計測する炉内マルチ計測システムを試作開発した。同システムの試験を原子力機構の照射試験炉JMTRで行い、中性子束レベル1018n/m2・s,γ線レベル103Gy/s及び温度650℃の厳しい炉内環境において光ファイバによる連続測定を実証した。炉外核計装システムの開発では、原子炉の圧力容器側壁あるいは圧力容器内のような高中性子束かつ高γ線々量率の環境下においても作動可能で、6桁以上の広い計測範囲をカバーし、高い位置検出分解能を有する位置検出型核分裂計数管(PSFC)及びPSFCを用いた核計装システムの開発を行った。このシステムの将来の応用としては、商用発電炉PWRの炉心軸方向の出力分布を1本のPSFCにより、連続した分布で、かつリアルタイムで計測する核計装システム,BWR炉内の高精度出力分布及びボイド挙動の計測、あるいは、溶液ウラン臨界実験装置における核反応量の高精度計測システム及びボイドの挙動を計測するシステム等を実現することである。


34000875
Structure reform and special economic zone in large helium liquifier complex for the 4th generation ERL light source
峰原 英介
Proceedings of 2nd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 30th Linear Accelerator Meeting in Japan , p.200-201(2005) ; (JAEA-J 01007)

 第4世代ERL放射光の実現には、2K極低温に冷却された500m長の超伝導空洞とこれを冷却する大型極低温冷凍機が必要である。この運転は半永久無昇温運転により無故障運転を実現するとしても、この全系の完成前の保守と建設は現在の高圧ガスの規制の下では極めて高価であり、故障の元となる非合理な作業が多く、また大量の労力が必要な膨大な申請書類の処理が必要となる。これを解決するため、構造改革経済特区の実現を図る予定である。このほか放射光施設での非合理な規制解消を併せて図る予定である。


34000876
原研エネルギー回収型ライナックにおけるコヒーレント放射光の観測
高橋 俊晴*; 峰原 英介; 羽島 良一; 沢村 勝; 永井 良治; 菊澤 信宏; 飯島 北斗; 西谷 智博; 奥田 修一*
Proceedings of 2nd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 30th Linear Accelerator Meeting in Japan , p.498-500(2005) ; (JAEA-J 01008)

 原研エネルギー回収型リニアックからのコヒーレント放射光を観測した。周回軌道の第2アーク,2番偏向磁石からのシンクロトロン放射を真空外に取り出し、分光測定を行ったところ、コヒーレント放射光に対応する大強度放射がミリ波領域で観測された。


34000877
Velocity bunchingされた電子バンチのダブルスリット法によるエミッタンスの測定
飯島 北斗; 羽島 良一; 上坂 充*; 作美 明*; 坂本 文人*; 上田 徹*
Proceedings of 2nd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 30th Linear Accelerator Meeting in Japan , p.501-503(2005) ; (JAEA-J 01009)

 エネルギー回収型超伝導リニアック(ERL)は、次世代放射光源として高輝度かつコヒーレントなX線発生を実現する技術として注目を浴びている。こうしたX線の利用方法はさまざまであるが、その1つにpump-and-probe法による超高速現象の観測が挙げられ、こうした実験では高時間分解能を必要とすることから、100fs程度の電子バンチの生成が要求される。そこでわれわれは、この極短電子バンチの生成方法としてmain linacでのvelocity bunchingを考え、PARMELAによるシミュレーションでこれを評価した。加速管はTESLA型を仮定した。これにより電荷量77pCの電子バンチが3.2psから0.17psまで圧縮できることを確認した。エミッタンスに関しては1.5πmm.mradで、わずかな増大が確認されたが、それは許容範囲であった。今後、このシミュレーションをもとに低電荷量,低エミッタンスビームに対する圧縮の実証実験を東大18Lライナックで行う。


34000878
Preliminary measurements on single and multi-crystal diamond electron cathodes
峰原 英介
Proceedings of 2nd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 30th Linear Accelerator Meeting in Japan , p.55-56(2005) ; (JAEA-J 01010)

 次世代,高輝度及び大電流の電子源は光陰極,熱電子陰極,結晶ダイアモンド電子陰極及びその他のものに似ており、次世代ERL(エネルギー回収型線型加速器)に基づいた光源及びSASEのX線の自由電子レーザーを実現すると期待されている。JAERI FELグループは、大電流,高輝度及び長命電子源のための新しい結晶ダイアモンド電子陰極技術を最近開発し始めた。発表では、私たちは、戦略について説明し、議論する。そして結晶ダイアモンド陰極及び関連するダイアモンド陰極評価システムの予備的実験の測定を報告する。


34000879
原研AVFサイクロトロンにおける磁場高安定化
奥村 進; 倉島 俊; 宮脇 信正; 吉田 健一; 柏木 啓次; 福田 光宏; 奈良 孝幸; 上松 敬; 石堀 郁夫; 中村 義輝; 横田 渉
Proceedings of 2nd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 30th Linear Accelerator Meeting in Japan , p.745-747(2005) ; (JAEA-J 01011)

 原研AVFサイクロトロンでは、マイクロビーム形成を目指して、フラットトップ加速システムを始めとする技術開発を行っている。これらの技術開発においては、サイクロトロン電磁石の磁場安定性が重要となっている。通常のマルチターン引出に対しては十分な磁場安定度を達成したが、シングルターン引出ではより高安定磁場が必要となっている。本発表では、鉄心温度定温化など、サイクロトロン電磁石の磁場高安定化についての現状と今後の課題について報告する。


34000880
ERL-FELからのチャープパルス計測
飯島 北斗; 羽島 良一; 永井 良治; 峰原 英介; 山内 俊彦
Proceedings of 2nd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 30th Linear Accelerator Meeting in Japan , p.793-795(2005) ; (JAEA-J 01012)

 原研・光量子科学研究センター・FELグループはエネルギー回収型超伝導加速器(ERL)を用いた遠赤外超短パルス高出力FELの開発を進めてきた。この加速器から発振される波長約20μmのチャープされたFELは、例えば多原子分子の解離などに応用した場合、現状の技術よりも飛躍的に高い解離効率が期待される。これまでの研究で、波長23.3μm,パルス幅319fs(FWHM),チャープ量Δω/ω0=14.3%のFEL発振に成功し、これを自己相関により測定した。現在はこのチャープされたFELの時間と周波数の相関を直接観測するために、frequency-resolved optical grating (FROG)による計測の準備を進めている。加えて、FEL光輸送系の構築も行った。


34000881
Numerical study on onset of gas entrainment from free surface
功刀 資彰*; 江連 俊樹; 堺 公明; 伊藤 啓
Proceedings of 11th International Topical Meeting on Nuclear Reactor Thermal Hydraulics (NURETH-11) (CD-ROM) , 13p.(2005) ; (JAEA-J 01027)

 コンパクトな高速増殖炉を設計するためには、原子炉容器内の冷却材自由表面におけるカバーガス巻込みの防止基準を明確化する必要がある。ガス巻込み現象に関して、自由表面流速が重要なパラメータであると考えられるが、ガス巻込み現象の発生に関する定量的な基準は未だ存在しない。本研究では、ガス巻込み現象評価手法構築及び防止基準明確化の一環として、MARS法を用いて、潜り込みによるガス巻込みを対象とした二次元数値解析及び表面くぼみによるガス巻込みを対象とした三次元数値解析を実施した。二次元解析の結果、時間平均した自由表面形状は実験結果と非常によく一致した。また、自由表面波速度,最大水頭,最大界面勾配が、流入流速基準のフルード数と相関を持つことがわかった。さらに、三次元解析の結果より、くぼみ渦の非定常挙動をMARS法によって捕えることが可能であり、くぼみ渦成長において三段階の流れ場パターンが存在することを明らかにした。


34000882
Numerical simulation of single bubbles rising through subchannels with interface tracking method
吉田 啓之; 永吉 拓至*; 玉井 秀定; 高瀬 和之 ; 秋本 肇
Proceedings of 11th International Topical Meeting on Nuclear Reactor Thermal Hydraulics (NURETH-11) (CD-ROM) , 15p.(2005) ; (JAEA-J 01028)

 稠密燃料集合体内の二相流挙動を解明するために、界面追跡法による二相流解析コードを開発している。本解析コードでは、座標系としてデカルト座標系を用いている。燃料集合体内には円筒である燃料棒やスペーサなどが存在するため、燃料集合体内の二相流の流路は非常に複雑な形状をしている。このため、解析においては複雑形状を直方体の計算セルで分割する必要がある。そこで本研究では、解析コードの複雑体系への適用性を確認するため、燃料集合体を模擬した体系内の単一気泡挙動についての解析を実施し、既存の実験結果と比較した。その結果、実験で見られた気泡のらせんあるいはジグザグ運動が解析により再現され、また、気泡の上昇速度などについても実験と一致する結果が得られた。


34000883
Development of test techniques for in-pile SCC initiation and growth tests and the current status of in-pile testing at JMTR
宇賀地 弘和; 加治 芳行; 中野 純一*; 松井 義典; 川又 一男; 塚田 隆; 永田 暢秋*; 堂崎 浩二*; 瀧口 英樹*
Proceedings of 12th International Conference on Environmental Degradation of Materials in Nuclear Power Systems-Water Reactors (CD-ROM) , p.319-325(2005) ; (JAEA-J 01029)

 ステンレス鋼の照射誘起応力腐食割れ(IASCC)は軽水炉炉内機器の高経年化における重要な問題となっている。IASCCは中性子照射,応力及び高温高圧水環境が同時に作用して発生する現象であり、IASCCの機構解明のためにはその重畳効果を評価する必要があるが、炉内でのIASCC試験の実施が技術的に困難であるため、従来のIASCC研究は主として中性子照射を受けた材料を用いて炉外における照射後試験により実施されてきた。本研究では、原研大洗研の材料試験炉(JMTR)を用いて、沸騰水型軽水炉(BWR)の炉内環境を模擬した水質,温度及び圧力を高度に制御できる高温高圧水供給装置及び荷重負荷機構を有する照射下試験用キャプセルを開発するとともに、同キャプセルに照射済試験片を再装荷する技術を開発して、日本国内で初となる照射下SCC試験(き裂発生試験及びき裂進展試験)を実施している。本会議では、照射下試験のための技術開発及び照射下試験の現況について報告する。


34000884
Hydrogen production by thermochemical water-splitting IS process utilizing heat from high-temperature reactor HTTR
坂場 成昭; 笠原 清司; 大橋 弘史; 佐藤 博之; 久保 真治; 寺田 敦彦; 西原 哲夫; 小貫 薫; 國富 一彦
Proceedings of 16th World Hydrogen Energy Conference (WHEC-16) (CD-ROM) , 11p.(2006) ; (JAEA-J 01030)

 高温ガス炉は発電のみならず水素製造にも利用できる優れた特長を有している。日本原子力研究開発機構が開発している日本初の高温ガス炉HTTRは、世界最高となる950℃の核熱を炉外に取り出すことに成功した。近い将来、二酸化炭素を全く排出することなく水分解により水素を製造する熱化学法ISプロセスをHTTRに接続し、高温ガス炉による水素製造を実証する計画である。HTTRによる水素製造の実証は、原子炉と化学プラントである水素製造装置の接続技術を世界で初めて確立することになる。原子力機構では2005年度からHTTRにISプロセスを接続するHTTR-ISシステムの概念検討を開始した。本報は、HTTRの概要を示すとともに、原子力機構におけるISプロセスの開発計画,HTTR-ISの熱効率評価結果を含む概念検討結果を示す。HTTR-ISシステムによる核熱を用いた水素製造の実証は、来るべき水素社会の水素供給源として大きく期待されている。


34000885
Preliminary evaluation of reduction of prediction error in breeding light water reactor core performance
久語 輝彦; 小嶋 健介; 安藤 真樹; 岡嶋 成晃; 森 貴正; 竹田 敏一*; 北田 孝典*; 松岡 正悟*
Proceedings of 2005 International Congress on Advances in Nuclear Power Plants (ICAPP '05) (CD-ROM) , 10p.(2005) ; (JAEA-J 01031)

 MOX燃料稠密格子水冷却炉心用に実施したFCA臨界実験を活用して、バイアス因子法に基づき、水冷却増殖炉実機炉心性能の予測誤差の低減を予備的に評価した。keffに対する予測誤差は、FCA-XV-2(65V)炉心の結果を用いることにより、0.62%から0.39%に減少した。238U捕獲対239Pu核分裂反応率比については、実機の上部炉心及び上部ブランケットに対しては、FCA-XXII-1(95V)炉心及びFCA-XV-2(95V)炉心が適し、実機の下部炉心及び中間ブランケットに対しては、FCA-XXII-1(65V)炉心及びFCA-XV-2(65V)炉心が適していることがわかった。


34000886
Proving test and analyze for critical power performance in the RMWR tight lattice rod bundles under transient condition
Liu, W.; 玉井 秀定; 大貫 晃; 呉田 昌俊*; 佐藤 隆; 秋本 肇
Proceedings of 2005 International Congress on Advances in Nuclear Power Plants (ICAPP '05) (CD-ROM) , 10p.(2005) ; (JAEA-J 01032)

 本研究は、7本,37本稠密バンドルを用いて、強制循環並びに自然循環で水冷却増殖炉で想定される異常な流量低下と出力上昇に対して、初期条件(初期質量速度や初期出力),流量低下速度や出力上昇速度,最低下時流量や最高出力をパラメータとして多くの過渡試験を行った。稠密二重炉心体系においても、想定された異常な過渡変化において、その限界出力は準定常で見なせることができることを実験から確かめた。また、原研が開発した最新版限界出力相関式を過渡解析コードTRAC-BF1に組み込み、過渡時の限界出力の予測性能を評価した。改良TRACが高度で過渡限界出力を評価できることを確認した。


34000887
Current status of thermal/hydraulic feasibility project for reduced-moderation water reactor, 1; Large-scale thermal/hydraulic test
玉井 秀定; 大貫 晃; 呉田 昌俊*; Liu, W.; 佐藤 隆; 秋本 肇
Proceedings of 2005 International Congress on Advances in Nuclear Power Plants (ICAPP '05) (CD-ROM) , 8p.(2005) ; (JAEA-J 01033)

 原研で開発中の水冷却増殖炉炉心を模擬した稠密37本バンドル試験体を用いて、高温・高圧条件での定常並びに過渡時の限界出力,圧力損失等の熱特性データを取得した。また、燃料棒間ギャップ幅の異なる二つの試験体(ギャップ幅:1.3mm, 1.0mm)の試験結果を比較し、ギャップ幅が限界出力特性に及ぼす影響を評価した。その結果、定常時限界出力に及ぼす各種パラメータ効果、並びに過渡時の限界出力特性は両試験体間で同様であり、ギャップ幅が1.0mmに狭くなっても高稠密格子炉心の冷却特性に問題のないこと、及び従来の評価方法により稠密炉心の圧力損失を誤差10パーセント以内で予測できることを確認した。


34000888
Development of analytical procedures on two-phase flow in tight-lattice fuel bundles for Innovative Water Reactor for Flexible Fuel Cycle (FLWR)
吉田 啓之; 大貫 晃; 三澤 丈治; 高瀬 和之; 秋本 肇
Proceedings of 2006 International Congress on Advances in Nuclear Power Plants (ICAPP '06) (CD-ROM) , p.1593-1600(2006) ; (JAEA-J 01034)

 日本原子力研究開発機構において開発が進められている超高燃焼水冷却増殖炉の熱設計においては、詳細二相流解析手法により、稠密炉心の助熱性能を評価する。この一環として本研究では、改良二流体モデルを用いた二相流解析コードACE-3Dの開発を行っている。本報では、解析コードの概要と解析結果について述べる。


34000889
Feasibility study on thermal-hydraulic performance of Innovative Water Reactor for Flexible Fuel Cycle (FLWR)    
大貫 晃; 高瀬 和之; 呉田 昌俊; 吉田 啓之; 玉井 秀定; Liu, W.; 中塚 亨; 三澤 丈治; 秋本 肇
Proceedings of 2006 International Congress on Advances in Nuclear Power Plants (ICAPP '06) (CD-ROM) , p.1619-1625(2006) ; (JAEA-J 01035)

 日本原子力研究開発機構は水冷却増殖炉(FLWR)高稠密格子炉心の熱流動成立性に関する研究・開発プロジェクトを電力,メーカ,大学の協力を得て平成14年度より開始した。FLWRは成熟した軽水炉技術を活用し、ウラン資源の有効利用,プルトニウムの多重リサイクル,高燃焼度,長期サイクル運転といった長期的なエネルギー供給を担える革新的な水冷却炉としての特徴を有している。FLWRの開発においては熱流動に関する成立性が大きな課題となっている。本研究では、研究・開発の全体計画を示すとともに、37本体系の大型試験装置による実験的な研究に関する進展状況を述べる。現在までに間隙幅1.3mmと1.0mm体系における定常並びに過渡限界出力試験、及び燃料棒曲がり効果試験を行い、成立性を確認している。


34000890
Hydrogen production by using heat from High-Temperature Gas-Cooled Reactor HTTR; HTTR-IS plan
坂場 成昭; 笠原 清司; 大橋 弘史; 寺田 敦彦; 久保 真治; 小貫 薫; 國富 一彦
Proceedings of 2006 International Congress on Advances in Nuclear Power Plants (ICAPP '06) (CD-ROM) , p.2238-2245(2006) ; (JAEA-J 01036)

 日本原子力研究開発機構では、日本初の高温ガス炉HTTRの核熱を利用する水素製造システムの概念検討を2005年度に開始した。水を熱化学的に分解するISプロセスが水素製造システムの候補である。本報では、HTTRにISプロセスを接続するHTTR-ISシステムの概念設計について述べるとともに、HTTR-ISシステムの熱効率を評価した結果を示す。


34000891
Corrosion rate evaluations of structural materials for a iodine-sulfur thermochemical water-splitting cycle
久保 真治; 二川 正敏; 田中 伸幸; 岩月 仁; 山口 明久*; 塚田 隆治*; 小貫 薫
Proceedings of 2006 International Congress on Advances in Nuclear Power Plants (ICAPP '06) (CD-ROM) , 6p.(2006) ; (JAEA-J 01037)

 熱化学水素製造法ISプロセスは強い腐食環境で動作する。機器構造材料の腐食速度を評価するため、ブンゼン反応環境における、溶接部腐食及びすきま腐食に着目した試験を行った。タンタル及びジルコニウムの試験片を、ヨウ化水素酸にヨウ素及び硫酸を添加した腐食性溶液(大気圧、120℃)に100時間または500時間浸漬した。腐食性溶液は、ブンゼン反応環境を模擬するため、HI濃厚溶液と硫酸濃厚溶液の二通りを用いた。試験後、試験片の重量変化から腐食速度を求めた。その結果、タンタルは、いずれの腐食性溶液に対しても良好な耐食性(0.02g/m2hr以下)を示した。ジルコニウムには、HI濃厚溶液中のすきま腐食において、0.02〜0.05g/m2hrと、比較的速い腐食速度が見られた。また、ジルコニウムをHI濃厚溶液に500時間浸漬した結果、孔食が観察された。


34000892
Study on the gas entrainment design method by CFD data on steady cylindrical systems for a sodium-cooled reactor
堺 公明; 文字 秀明*; 江口 譲*; 岩崎 隆*; 大島 宏之
Proceedings of 2006 International Congress on Advances in Nuclear Power Plants (ICAPP '06) (CD-ROM) , 7p.(2006) ; (JAEA-J 01038)

 ナトリム冷却炉の液面からのガス巻込みに対する設計手法を検討した。本研究は、コンピュータ数値解析による設計手法を開発するために試行したものであり、円筒形タンク内でのくぼみ渦を対象として実施した。数値解析結果は、実験で測定された速度分布を精度よく予測するとともに、数値解析結果を用いた無次元数によって、ガス巻込み判定マップが作成可能であることが明らかになった。


34000893
A Modular metal fuel fast reactor enhancing economic potentional
近澤 佳隆; 岡野 靖; 此村 守; 佐藤 浩司; 安藤 将人*; 中西 繁之*; 澤 直樹*; 島川 佳郎*
Proceedings of 2006 International Congress on Advances in Nuclear Power Plants (ICAPP '06) (CD-ROM) , 8p.(2006) ; (JAEA-J 01039)

 小型炉は小型特有の合理化対策,設計規格化,習熟効果により投資及びR&Dリスクを削減しつつ大型炉に匹敵する経済性を達成する可能性がある。ここでは多数基設置時において大型炉と同等の経済性を達成する可能性のある300MWeナトリウム冷却小型炉の概念設計を実施した。燃料型式はPu-U-Zr3元合金の金属燃料,炉心型式は金属燃料において炉心出口温度550℃を達成可能なZr密度含有率2領域単一Pu富化度炉心を採用した。冷却系は電磁ポンプを直列2基設置することにより、1ループ化し、1次系電磁ポンプは中間熱交換器内部に組み込む方式とした。燃料貯蔵設備は原子炉建屋容積低減を考慮して原子炉容器内貯蔵(IVS)として、使用済燃料の4年間貯蔵を想定した貯蔵容量を確保した。NSSS物量は1186ton,建屋容積は65100m3と評価され同等の出力である原型炉の207000m3より大幅に小さくなった。高速増殖炉サイクル実証については、本概念と3.3tHM/y再処理・燃料製造設備を想定し、比較的少ない投資により高速炉サイクル商用化を実証できる可能性のあることを示した。


34000894
Development of sulfuric acid decomposer for thermo-chemical IS process
野口 弘喜; 大田 裕之; 寺田 敦彦; 久保 真治; 小貫 薫; 日野 竜太郎
Proceedings of 2006 International Congress on Advances in Nuclear Power Plants (ICAPP '06) (CD-ROM) , 8p.(2006) ; (JAEA-J 01040)

 ISプロセスの主要機器の中の硫酸分解器は高温高圧の濃硫酸環境にあるため極めて激しい腐食環境となるため主要材料としてSiCセラミックを使用した。硫酸分解器の構造健全性及び製作性の評価を行うために構造解析,SiCブロック間シール性試験,硫酸分解器モックアップモデルの試作、及び地震荷重を模擬した水平荷重試験等を行った。構造解析よりSiC伝熱ブロックの平均引張強さは発生応力に対して2倍程度の裕度を有していた。SiCブロック間のシール構造は純金を使用し、そのシール性能は500℃のときに7.5×10-8Pa・m3/s程度と良好なシール性能が確認できた。これらのSiC伝熱ブロックと金ガスケットを使用した硫酸分解器モックアップモデルの試作に成功した。また地震時の地震荷重を模擬した水平荷重を試験体に負荷した試験を行い、地震時でもシール構造を健全に維持できていることを確認した。


34000895
Flow and temperature distribution evaluation on sodium heated large-sized straight double-wall-tube steam generator
木曽原 直之; 森部 剛志; 堺 公明
Proceedings of 2006 International Congress on Advances in Nuclear Power Plants (ICAPP '06) (CD-ROM) , 9p.(2006) ; (JAEA-J 01041)

 実用化戦略調査研究において設計が進められている実用化FBRのNa加熱型蒸気発生器は、直管2重管方式であり、スケールメリットにより製作コストを低減するために大容量としている。本論文はこのSGの定常状態における温度・流量の多次元分布を取り扱ったものである。大型の熱交換器は、温度,流配分布が不均一になる傾向にあり、この現象は直管SGでは、伝熱管相互の熱膨張差によって、伝熱管の座屈や管−管板継手の破損に繋がる可能性がある。このような事態を避けるために、解析的な手法によってSG内部に設置されている整流機構を最適化させ、不規則な温度分布特性を明らかにした。SGの解析モデルは2つの部分、すなわち、Na入口整流プレナムと管束部から成り立っている。Na入口プレナム及び管束部の温度・流速分布解析は、それぞれ3次元流動評価コードFULUENT、及び2次元の熱流動解析コードMSGによって評価された。MSGコードは JAEA内で開発を行っているNa加熱型SG用コードである。これらのコードによってNaは流配機構によって十分に整流化され、温度分布は、伝熱管や管−管板継ぎ手の健全性を確保するための許容範囲内に入っていることが明らかとなった。


34000896
Knowledge management; The Emperor's new clothes?
河田 東海夫; 梅木 博之; McKinley, I. G.*
Proceedings of 11th International High-Level Radioactive Waste Management Conference (IHLRWM) (CD-ROM) , p.1236-1243(2006) ; (JAEA-J 01042)

 地層処分技術は学際的な分野にわたり、そのセーフティケースを作成するためには関連する広範囲の知識を必要とする。ここで知識とは、処分計画を支える形式知と暗黙知の双方のあらゆる情報を含むことができるよう非常に幅広い意味で用いている。ナレッジマネジメントでは、そのような知識であるデータ,情報,理解や経験などの取得,統合,品質保証,伝達及び更新と記録といったすべての側面を対象としている。要求される知識が実施主体,規制当局,政策決定者,一般公衆などすべてのステークホルダーに受入れられ、また知識の欠如を明らかにし優先度づけすることができるよう、知識ベースは明確かつ論理的に構造化しておくことが重要である。本論文では、最新のITツールに基づく理想的な知識管理システムの特徴を示しながら、我が国の高レベル放射性廃棄物処分計画に向けた知識管理システムの基本的な概念を提案している。


34000897
Optimising repository design for the CARE concept
増田 純男*; 河村 秀紀*; McKinley, I. G.*; Neall, F. B.*; 梅木 博之
Proceedings of 11th International High-Level Radioactive Waste Management Conference (IHLRWM) (CD-ROM) , p.507-514(2006) ; (JAEA-J 01043)

 長期にわたって廃棄物の回収を容易なままの状態に維持する高レベル放射性廃棄物や使用済燃料の地層処分場設計に対して国際的な関心が高まりつつある。これは、処分についての社会の受入を徐々に獲得していくことの必要性、あるいは将来いつでも使用済燃料を再処理することができる状態を維持したままにしておくことの要望から、処分場の閉鎖の時期を遅らせるという処分概念の発想に至っている。いずれの場合にも、異なる境界条件の下に設計を変更していくよりも、要件そのものに特化して概念を構築していくことに利点がある。本件は、その一つの設計例であり、その基本的な考え方は、処分場の操業と閉鎖後の双方の安全性を最適化するという視点で論じたものである。


34000898
Gas generation and migration analysis for TRU Waste Disposal in Japan
安藤 賢一*; 三原 守弘; 納多 勝*; 山本 幹彦*
Proceedings of 11th International High-Level Radioactive Waste Management Conference (IHLRWM) (CD-ROM) , p.655-662(2006) ; (JAEA-J 01044)

 TRU廃棄物処分システムにおいて、金属の腐食,微生物による有機物の分解及び放射線によるガス発生を考慮して、TRU廃棄物の処分システムにおけるガス移動の評価を実施した、ガスによる処分システムの圧力上昇や、処分施設内の放射性物質に汚染された地下水の押出しに気液二相流モデルを用いて評価を行なった。加えて、放射性ガスの移行や処分システムの再冠水挙動についても評価を実施した。


34000899
Generation of coherent synchrotron radiation from JAERI-ERL
羽島 良一; 峰原 英介; 沢村 勝; 永井 良治; 菊澤 信宏; 飯島 北斗; 西谷 智博; 高橋 俊晴*; 奥田 修一*
Proceedings of 27th International Free Electron Laser Conference (FEL 2005) (CD-ROM) , p.301-304(2005) ; (JAEA-J 01049)

 原研のエネルギー回収型リニアック(ERL)から発生するコヒーレント放射光の測定を行った。アンジュレータ下流の偏向磁石位置において発生するシンクロトロン放射光の測定を行ったところ、ミリ波領域において強い放射(コヒーレント効果)が確認できた。放射光のスペクトルは電子バンチの時間幅で説明できる。


34000900
JAERI 10kW high power ERL-FEL and its applications in nuclear energy industries
峰原 英介; 羽島 良一; 飯島 北斗; 菊澤 信宏; 永井 良治; 西森 信行; 西谷 智博; 沢村 勝; 山内 俊彦
Proceedings of 27th International Free Electron Laser Conference (FEL 2005) (CD-ROM) , p.305-308(2005) ; (JAEA-J 01050)

 原研高出力ERL-FELは10kWよりも高出力高効率FELに拡張された。これは原子力エネルギー産業、とその他の重工業たとえば防衛,造船,化学工業,環境科学,スペースデフリ処理,エネルギー伝送などのために開発されたものである。波長可変,高効率,高平均出力,高ピーク出力,極短パルスを実現するために、エネルギー回収配位を持つ原研独自のコンパクト,自立式,無蒸発型超伝導リニアックによって駆動される効率的な高出力のFELが必要である。このERL-FELに関する議論はこの10kWアップグレードの現状と原子力発電所の廃炉措置を行うための非熱剥ぎ取り,切断,穿孔などの応用と、また小さな立方体の低炭素ステンレス鋼を用いて、定常運転状態での原子力発電所における冷間加工応力腐食割れ故障予防の原理検証を成功裏に実行できたことについて述べられる。


34000901
Rod displacement effect on thermal-hydraulic behaviour in tight-lattice bundle based on X-ray CT measurement
光武 徹*; 秋本 肇; 三澤 丈治; 呉田 昌俊*; 勝山 幸三*; 永峯 剛*; 松元 愼一郎*
Proceedings of 4th World Congress on Industrial Process Tomography, Vol.1 , p.348-353(2005) ; (JAEA-J 01051)

 稠密格子模擬7本バンドル伝熱試験体の内部構造を高エネルギーX線CTで撮像し、ヒータロッドの配列を定量的に測定した。その結果、ヒータロッド中心位置の変位は最大0.5mmであった。その結果に基づいて、ヒータロッド周りの流路形状を計算し、サブチャンネル解析コードに入力して除熱限界出力を予測した。その結果、ヒータロッド位置の及ぼす限界出力計算値への影響は小さく、限界出力の予測誤差はほとんど減少しなかった。


34000902
Improvement of the thermal efficiency of hydrogen iodide concentration in I-S process by using radiation-induced polymerized membrane in electrodialysis system
奥田 泰之; 八巻 徹也; 久保 真治
Proceedings of AIChE 2006 Spring National Meeting (CD-ROM) , 6p.(2006) ; (JAEA-J 01052)

 熱化学水素製造ISプロセスでは、高い熱効率で水素を製造することが課題となっている。原子力機構では、高い熱効率を達成するため、ヨウ化水素分解工程に電解濃縮を導入するプロセスを提案している。本研究では、電解濃縮に、これまで使用されていた市販膜のNafionに代わって、高導電性高分子膜材料研究グループで開発された放射線重合膜を使用し、濃縮の際の水の透過係数を測定した。その結果、水の透過係数はNafionの2〜3に比べ、放射線重合膜は1程度であり、水の透過が抑えられ、効率の良い濃縮が可能であることがわかった。また、放射線重合膜を採用することによって、プロセス全体の熱効率は32.5%から35.9%へ効率向上することがわかった。


34000903
RIA- and LOCA-simulating experiments on high burnup LWR fuels
更田 豊志; 永瀬 文久; 杉山 智之
Proceedings of IAEA Technical Meeting on Fuel Behaviour Modelling under Normal, Transient and Accident Conditions, and High Burnups (CD-ROM) , 15p.(2005) ; (JAEA-J 01053)

 軽水炉燃料の安全規制に必要なデータを提供するため、原研では、異常運転時及び反応度事故(RIA)や冷却材喪失事故(LOCA)といった想定された事故時の燃料挙動について研究を行っている。高燃焼度燃料に対する一連のRIA模擬実験を原子炉安全性研究炉(NSRR)で実施しており、LOCA時の燃料挙動については被覆管急冷破断試験及び被覆管の酸化速度や機械特性に関する個別効果試験を含む広汎な研究を行っている。


34000904
Research activities for development of CTBT-related technologies in JAERI
篠原 伸夫; 浅野 善江; 広田 直樹*; 伯耆田 貴憲; 井上 洋司; 熊田 政弘; 中原 嘉則*; 小田 哲三*; 打越 貴子*; 山本 洋一
Proceedings of International Conference on Nuclear Energy System for Future Generation and Global Sustainability (GLOBAL 2005) (CD-ROM) , 3p.(2005) ; (JAEA-J 01054)

 本国際会議では、包括的核実験禁止条約(CTBT)検証体制に関連する原研の研究活動を報告する。その主題は、(1)CTBT検証制度の概要,(2)沖縄放射性核種監視観測所RN37,高崎放射性核種監視観測所RN38並びに東海実験施設RL11の整備及び運用,(3)放射性核種データのための国内データセンター(JAERI NDC)の整備である。RN38はCTBT機関/準備委員会によって認証され、毎日観測データを国際データセンター(IDC)に送っている。RN37及びRL11では、基盤整備と運用マニュアルを整備中である。JAERI NDCでは、世界中の観測所で測定されたデータをIDCから受信して試験的に解析評価するとともに、核実験あるいは原子力事故に対応するための大気拡散モデルコード(WSPEEDI: Worldwide Version of System for Prediction of Environmental Emergency Dose Information)を用いた放出源情報推定のためのシステム開発を行っている。


34000905
Critical power prediction for tight lattice rod bundles
Liu, W.; 大貫 晃; 玉井 秀定; 秋本 肇
Proceedings of International Conference on Nuclear Energy System for Future Generation and Global Sustainability (GLOBAL 2005) (CD-ROM) , 5p.(2005) ; (JAEA-J 01055)

 37本燃料棒間ギャップ幅1.0mm定常限界出力試験データを用いて、既存相関式を改良した。全ての37本バンドルデータ(ギャップ幅1.3mm, 1.0mm, データ総数295)に対する計算精度は、標準偏差で7.35%であった。拡張性を評価するため、BAPLデータとも比較した結果、よく一致することを確認した。また、改良式は各パラメータの限界出力への効果をよく評価できることも確認した。改良限界出力相関式をTRACコードに組み込み、異常な過渡事象を解析した。その結果、過渡時のBT判定が定常用限界出力相関式の計算精度の範囲内で評価できることがわかった。


34000906
Subchannel analysis of 37-rod tight-lattice bundle experiments for reduced-moderation water reactor
中塚 亨; 玉井 秀定; 秋本 肇
Proceedings of International Conference on Nuclear Energy System for Future Generation and Global Sustainability (GLOBAL 2005) (CD-ROM) , 6p.(2005) ; (JAEA-J 01056)

 水冷却増殖炉の熱水力的成立性を確認するために原研が実施している37本稠密格子バンドル試験を、サブチャンネル解析コードNASCAを用いて解析した。NASCAはギャップ幅1.3mmの場合、限界出力を良好に予測できるが、ギャップ幅1.0mmの場合予測精度が劣化した。予測されたBT位置は試験結果と一致した。今後、ギャップ幅効果を考慮してコード中のモデルを改良する予定である。


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