学会誌等掲載論文
※下記の研究開発成果は資料名順に並んでいます。

2006年9月


34000917
A Migration analysis of Sogatella furcifera (Horv'ath) (Homoptera: Delphacidae) using hourly catches and a three-dimensional simulation model
大塚 彰*; 渡邊 朋也*; 鈴木 芳人*; 松村 正哉*; 古野 朗子; 茅野 政道; 近藤 知弥*; 上室 剛*
Agricultural and Forest Entomology 8(1), p.35-47(2006) ; (JAEA-J 01057)

 2003年稲作期に1時間ごとに取得したウンカの測定データと3次元シミュレーションモデルを利用したセジロウンカの移行挙動解析を行った。それまでの通常業務で取得されていた測定データは24時間であったが、1時間ごとのデータは24時間ごとのデータでは得られなかった明瞭な4時間程度のピークを示した。また各ピークは約12時間おきに出現しており、ウンカの飛び立ちが薄明薄暮に集中する観測結果と対応した。この詳細な測定データと3次元シミュレーションモデルを用いた解析により、ウンカの発生源をより明確に推定することに成功した。このケースでは、台湾と中国福建省の海岸域が発生源と推定された。


34000918
Kinetics of irradiation-induced Cu precipitation in nuclear reactor pressure vessel steels
永井 康介*; 外山 健*; 西山 裕孝; 鈴木 雅秀; Tang, Z.*; 長谷川 雅幸*
Applied Physics Letters 87(26), p.261920_1-261920_3(2005) ; (JAEA-J 01058)

 原子炉圧力容器鋼における照射脆化は安全上極めて重要な問題であり、その予測は実機、及び照射速度が高い材料試験炉による照射データに基づいて行われている。ここで、材料試験炉による加速照射が、照射速度が低い実機の照射脆化をどの程度再現できるかについて、脆化機構の観点から明らかにすることが重要である。本研究では、照射速度が約4桁異なる原子炉圧力容器鋼の中性子照射材について、陽電子消滅法を用い、照射脆化の原因の一つとなるナノサイズの銅析出物の分析を行った。その結果、極めて低い照射速度の中性子照射によって銅析出が加速されることを明らかにした。これは、実機の原子炉圧力容器鋼における銅析出による照射脆化は、加速照射データで予測されるよりも低い照射量、すなわち短時間で起きることを意味するものである。


34000919
Reflection high-energy positron diffraction study of a Si(001) surface
林 和彦; 深谷 有喜; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
Applied Surface Science 244(1-4), p.145-148(2005) ; (JAEA-J 01061)

 反射高速陽電子回折(RHEPD)では全反射が観察される。全反射領域では、陽電子の物質への進入深さが浅いため、回折された陽電子は表面の情報のみを持つ。RHEPDを用いることで、最表面原子位置や表面デバイ温度を正確に決定することが可能となる。本研究では、RHEPDのこのような特徴を生かし、Si(001)清浄表面の構造を調べる。Si(001)表面は200K以下で、2×1構造からc(4×2)構造に相変化することが知られている。そこで、RHEPDパターン強度分布を相転移温度前後で比較した。室温において、全反射回折の起こる条件でパターンを観測した結果、(0,0), (-1/2,0), (-1,0), (-3/2,0), (-2,0)スポットを確認した。試料を150K以下に冷却すると、(0,0)スポットの強度は強くなり、(-1/2,0), (-1,0), (-3/2,0), (-2,0)スポットの強度は弱くなった。これは、表面構造が2×1からc(4×2)に変化したためであると考えられる。原子構造を決定するために、室温と150Kにおいて鏡面反射スポットの視射角依存性を測定した。現在、動力学的回折理論に基づいた計算を行い、原子位置の決定を行っている。


34000920
Characterization of homoepitaxial and heteroepitaxial ZnO films grown by pulsed laser deposition
Chen, Z. Q.; 山本 春也; 河裾 厚男; Xu, Y. H.; 関口 隆史*
Applied Surface Science 244(1-4), p.377-380(2005) ; (JAEA-J 01062)

 酸化アルミ及び酸化亜鉛単結晶基板を用いて、パルスレーザー沈殿法により、ホモ及びヘテロエピタキシャル酸化亜鉛薄膜を作製した。原子間力顕微鏡により観測された表面ラフネスは基板材料に依存していることがわかった。すなわち、ヘテロエピ膜の表面ラフネスの方が、極めて大きいことがわかった。陽電子消滅の結果は、ホモエピ膜の方がより高濃度に結晶欠陥を含むことを示した。ラマン散乱測定は閃亜鉛構造に由来する437cm-1のピークを示した。いずれの膜も非常に強い紫外発光を示し、それらが優れた光学特性を持つことが明らかになった。


34000921
Extension of the Newcomb equation into the vacuum for the stability analysis of tokamak edge plasmas
相羽 信行; 徳田 伸二; 石澤 朋子*; 岡本 正雄*
Computer Physics Communications 175(4), p.269-289(2006) ; (JAEA-J 01063)

 ベクトルポテンシャル法を用いて真空磁場エネルギーを計算するために2次元Newcomb方程式を数値的に解く定式化(MARG2Dコードの定式化)を真空領域に拡張した。コードの拡張において並列計算手法を採用した。これにより、低トロイダルモード数から高モード数の理想外部MHDモードの安定性解析を高速で行うことができ、MARG2Dコードは、輸送コードと連成される統合シミュレーションやトカマク周辺プラズマの実験解析で有力なツールとなった。


34000922
Measurement of local electrical conductivity and thermodynamical coefficients in JT-60U
菊池 満; 鈴木 隆博; 坂本 宜照; 藤田 隆明; 内藤 磨; JT-60チーム
Europhysics Conference Abstracts (CD-ROM) 29C, 4p.(2005) ; (JAEA-J 01064)

 トカマクの磁場方向輸送は新古典理論の予測に従っているという結果が1995年頃までに確立された(菊池,安積、PPCFレビュー)が、実験的には、巨視的なパラメータ比較によっていた。その後のプラズマ計測技術の発展により、局所的な電流分布が計測可能となり、電気伝導度や自発電流の局所値を実測できるようになった。本論文では、JT-60で開発した電流分布比較解析手法とそれを用いた電気伝導度,自発電流の比較評価について報告する。


34000923
Effects of γ irradiation on BCL2 and TPR53BP2 expression in the porcine ciliary body
明尾 潔*; 舟山 知夫; 小川 晃*; 浜田 信行*; 明尾 庸子*; 小林 泰彦
Experimental Animals 55(4), p.375-381(2006) ; (JAEA-J 01065)

 生体から分離された豚眼球は、血流の途絶により毛様体上皮と無色素上皮が細胞死に陥り、前房水も産生されなくなるため、眼球癆という状態となる。γ線は輸血後の細胞障害を抑制するために血液に対する照射が行われている。今回、豚眼毛様体においてアポトーシス関連遺伝子であるp53やbcl-2遺伝子にγ線照射がどのような影響を与えるか検討を行った。豚眼球から角膜,虹彩,毛様体を含む材料を作る。60Coのγ線を30分間で20Gy照射したものとしないものをHam F12培地と15%牛胎児血清による培養液中に浸漬し、0, 4, 8, 24時間後にホルマリン固定,パラフィン包埋,薄切の後に観察し、p-53とbcl-2について免疫組織染色を行った。γ線照射により毛様体無色素上皮ではp-53とbcl-2遺伝子産物が陽性となっていた。器官培養後には毛様体突起は腫大し、無色素上皮は萎縮しており、色素上皮と固有層の間にも空隙が認められた。γ線を照射した無色素上皮ではp-53の発現が抑えられ、色素上皮下に生じた空隙も狭くなり、毛様体突起の構造がよく保存されていた。生体より摘出された豚眼の毛様体にγ線を照射した際に形態が維持されたのは、γ線がアポトーシス関連遺伝子に影響を与えたためと考えられた。


34000924
Measurement of energetic charged particles produced in fusion materials with 14 MeV neutron irradiation
落合 謙太郎; 近藤 恵太郎; 村田 勲*; 宮丸 広幸*; 久保田 直義; 高橋 亮人*; 西谷 健夫
Fusion Engineering and Design 75-79, p.859-863(2005) ; (JAEA-J 01066)

 原研FNSではコリメーター14MeV中性子で照射された核融合炉候補材料から放出する核反応荷電粒子の測定を継続的に行っている。第1に候補材であるベリリウムの測定を行った、厚さ100μmのベリリウムサンプルから9Be(n,α)6He, 9Be(n,2n)2α and 9Be(n,t)7Li核反応によるアルファー粒子,トリトンのエネルギースペクトルを高精度に測定することに成功し、その値から各核反応の2重微分断面積を求めた。評価済み核データの比較から、9Be(n,2n)2α and 9Be(n,t)7Li反応の2重微分断面積は実験値と良い一致を示した。


34000925
Preparation of ITER construction and operation
下村 安夫
Fusion Engineering and Design 81(1-7), p.3-11(2006) ; (JAEA-J 01067)

 (国際核融合実験炉)計画の目的は核燃焼プラズマの研究を行い、500MWの核融合出力を長時間持続し、発電炉の鍵となる技術を実証することである。政府高官による建設地及び費用分担の交渉が2003年12月より本格的に開始された。EUはカダラッシ(仏)、日本は六ヶ所村(青森)への建設地誘致を主張し、お互いに譲らずこう着状態が続いている。EUまたは日本が非誘致極になった場合には分担費用は少なく、得る利益は多大である。建設地と機構長の早急な決定が強く望まれる。それらが決定すれば、直ちに、ITER国際研究機構をスムーズの立ち上げ,製作や建設に長期間を要するコイル,真空容器,建設などの発注手続きが開始できるように、また建設期のリスク管理が妥当に行えるようITER国際チームは各極内のチームと協力して準備を進めている。ITERの運転を効率よく行うためには、信頼性の高い種々のプラズマ計測系,プラズマの加熱,電流駆動系,遠隔保守機能,ブランケット試験体等の準備が不可欠である。


34000926
Status and prospect of JT-60 plasma control and diagnostic data processing systems for advanced operation scenarios
栗原 研一; 米川 出; 川俣 陽一; 末岡 通治; 細山 博己*; 坂田 信也; 大島 貴幸; 佐藤 稔; 清野 公広; 小関 隆久
Fusion Engineering and Design 81(15-17), p.1729-1734(2006) ; (JAEA-J 01068)

 トカマク型磁気核融合研究は、国際熱核融合実験炉ITERの国際共同建設へと一歩前に進もうとしている中、JT-60を含む既存のトカマク型実験装置は、ITERや将来の核融合発電炉に向け、さらなる先進的運転シナリオの探求を行うことが期待されている。このような状況の中、以下に示す実験上の課題がJT-60において十分検討あるいは克服されなければならないことがわかる。すなわち、高性能のプラズマを定常に維持する方法やほぼ完全にプラズマの不安定性を回避する方法を明確にするという課題である。これを動機としてJT-60では、プラズマ実時間制御及び計測データ収集系のソフトウエアからハードウエアに渡る大規模改造を実施してきた。特に、先進的運転シナリオの探求に不可欠な開発が実施され、一部は既に完成している。これらの開発では、高速ボード計算機を大容量のリフレクティブメモリーを用いたネットワークに接続するという方式を採用した。以上の制御・計測データ収集系開発の結果報告に加えて、これまで20年間に及ぶJT-60を用いたトカマクプラズマ実験運転の経験を踏まえて、核融合発電炉を視野に入れた将来のプラズマ制御・計測データ収集システム構想を試みる。


34000927
Progress of data processing system in JT-60; Development of remote experiment system
坂田 信也; 戸塚 俊之; 清野 公広; 大島 貴幸; 佐藤 稔; 小関 隆久
Fusion Engineering and Design 81(15-17), p.1775-1778(2006) ; (JAEA-J 01069)

 JT-60データ処理設備は、複数の計算機による3階層で構成されている。第一階層となる大型汎用計算機は、JT-60全系制御設備との通信を行うとともに、データ処理設備内の階層間通信を管理している。第二階層は、複数のミニコンピュータより構成され、第三階層を構成するさまざまな計測装置からプラズマ実験データを収集する。JT-60データ処理設備では、システムの経年化に伴い、第二階層を構成するミニコンピュータを維持していくことが困難な状態にあることや高度化するプラズマ実験の要求に応えるためにシステム全体の処理能力を向上させる必要があること等の理由から、UNIX系計算機を中心とした処理分散型システムの構築を実施した。さらに、処理分散型システムの構築と並行して、JT-60遠隔実験システムの開発を実施している。本システムは、遠隔地からJT-60実験運転のパラメータとなる放電条件の設定を可能にするものであり、今後の核融合共同研究において重要な課題となっている。


34000928
Advanced data handling for plasma profile control in JT-60
米川 出; 末岡 通治; 細山 博己*; 川俣 陽一; 鈴木 隆博; 栗原 研一
Fusion Engineering and Design 81(15-17), p.1897-1903(2006) ; (JAEA-J 01070)

 高ベータプラズマの不安定性を回避する手段としてプラズマ電流分布の実時間制御の導入が実施され始めている。実時間分布制御における全体の処理時間は、入力信号であるMSE計測,プラズマ位置,形状を算出するシステム及び分布制御計算機での演算処理時間とプラズマ制御系内のデータ通信を含めても十ミリ秒程度でなければならない。一方、位置(R,Z)と時間の関数となる分布量データは、データサイズが大きいことから、転送時間の短縮や保存容量の最小化を図ることが必要である。プラズマ規格化小半径(r)を導入して位置の次元を1つ減らし、(j(t),ρ(t))の2次元時系列データとすることによりデータ量の縮小を図った。さらにρの刻みを固定化することで、従来と同じ1次元時系列データとして取り扱うことが可能となり、放電条件設定等のマンマシンインターフェースを利用することができる。この報告では分布量制御における3次元時系列データの簡略取り扱い法についてその技術的な事項をハードウエア構成とともに述べることとする。


34000929
Progress in the blanket neutronics experiments at JAERI/FNS
佐藤 聡; Verzilov, Y. M.; 落合 謙太郎; 中尾 誠*; 和田 政行*; 久保田 直義; 近藤 恵太郎; 山内 通則*; 西谷 健夫
Fusion Engineering and Design 81(8-14), p.1183-1193(2006) ; (JAEA-J 01071)

 原研FNSでは、発電実証ブランケット開発に向けて、中性子工学実験を行っている。おもに、ブランケットモックアップ積分実験によるトリチウム生成率検証,クリーンベンチマークベリリウム積分実験,トリチウム生成率測定手法の国際比較を行ってきた。現在、タングステン,低放射化フェライト鋼,水,チタン酸リチウム,ベリリウムから成る試験体を用いて、ブランケットモックアップ積分実験を行っている。5, 12.6, 25.2mm厚のタングステンアーマを設置することにより、積算したトリチウム生成量は、アーマ無しの場合と比較して、約2, 3, 6%減少することを確認した。原研が進めているブランケット設計では、トリチウム増殖率の減少は2%以下と予測され、許容範囲である。反射体無しの実験では、モンテカルロコードによる積算したトリチウム生成量の計算値は、実験値と比較して4%以内で一致しており、高精度にトリチウム生成量を予測できることを明らかにした。クリーンベンチマークベリリウム積分実験では、厚さ約30cmの体系において、放射化箔やペレットによる各種反応率の計算結果は、実験結果と10%以内で一致することを明らかにした。


34000930
Blanket-plasma interaction in tokamaks; Implication from JT-60U, JFT-2M and reactor studies
菊池 満; 西尾 敏; 栗田 源一; 都筑 和泰; Bakhtiari, M.*; 川島 寿人; 竹永 秀信; 草間 義紀; 飛田 健次
Fusion Engineering and Design 81(8-14), p.1589-1598(2006) ; (JAEA-J 01072)

 トカマク型核融合炉におけるプラズマ−ブランケット相互作用は、プラズマ性能の向上とブランケット/第一壁の健全性保持という観点で重要な役割を果たす。具体的には、壁安定化効果の最適化(RWMの制御)とデイスラプション時の電磁力低減との調和,フェライト鋼を第一壁に用いた場合の誤差磁場効果,壁飽和状態での中性粒子と壁の相互作用,プラズマのスクレープオフ層と壁の相互作用、等が挙げられる。本論文では、炉設計研究,JT-60実験,JFT-2M実験における研究成果を包括的に報告する。


34000931
Transmissible and nontransmissible mutations induced by irradiating Arabidopsis thaliana pollen with γ-rays and carbon ions
内藤 健*; 草場 信*; 鹿園 直哉; 高野 敏弥*; 田中 淳; 谷坂 隆俊*; 西村 実*
Genetics 169(2), p.881-889(2005) ; (JAEA-J 01073)

 放射線による突然変異の分子メカニズムを明らかにするため、シロイヌナズナの花粉にγ線とイオンビームを照射し、それを交配することで後代における変異を追跡した。本実験系は、片親の花粉に照射することで、通常では致死になるような染色体異常も検出できる。分子マーカーを用いた欠失サイズの推定の結果、γ線照射によるDNA変異の多くは2Mbにも及ぶ巨大な欠失であり、点様の突然変異は1割以下でしかなかった。このことは、γ線は点様変異誘発が多いという従来の考え方とは異なる結果である。LETが大きい炭素イオンビームにおいても2Mb以上の巨大な欠失が多く観察されたが、そのうち幾つかは致死にならない染色体異常が観察され、γ線とイオンビームの差異を示唆するものかも知れず、今後のさらなる検討が待たれる。


34000932
Concentration and daily excretion of uranium in urine of Japanese
Tolmachev, S.*; 桑原 潤; 野口 宏
Health Physics 91(2), p.144-153(2006) ; (JAEA-J 01074)

 被ばくをしていない日本人の尿中ウラン濃度を調査し、ウランの尿中排泄率を評価した。尿中ウランの測定はマイクロウェーブによる湿式灰化及び抽出クロマトグラフィーレジン(UTEVAレジン)を用いたオンライン化学分離の後に誘導結合プラズマ質量分析計で測定した。尿中ウラン濃度の分析結果は0.8〜35.6ng/Lの範囲であった。また、尿の希釈度を補正するために、尿中ウラン濃度をクレアチニン濃度で規格化した値は1.2〜17.8ng/g-クレアチニンであった。これらの結果は、被ばくしていない人の尿中ウランのこれまでの報告値の最も低い値に対応する。ICRPが勧告する24時間クレアチニン排泄量を用いてウラン排泄率を6.45ng/日(中央値)と算出した。日本人のウランの摂取に関する文献値とともにウランの胃腸管における吸収割合(f1)を推定したところ、0.007(中央値)であった。


34000933
Internally Cu-stabilized RHQT Nb3Al superconductors with Ta matrix
竹内 孝夫*; 田川 浩平*; 野田 哲司*; 伴野 信哉*; 飯嶋 安男*; 菊池 章弘*; 北口 仁*; 小菅 通雄*; 土屋 清澄*; 小泉 徳潔; 西村 新*
IEEE Transactions on Applied Superconductivity 16(2), p.1257-1260(2006) ; (JAEA-J 01075)

 次期核融合炉では、16T以上の高磁場で大電流を流す導体が必要となる。急熱急冷変態法(RHQT)Nb3Al線は、2次熱処理前に撚線加工が行えるので、RHQT-Nb3Al CIC導体は、その有力な候補導体として考えられている。CIC導体で使用する丸線には、従来は、1900℃程度の1次熱処理でNb母材と反応しない銀を安定化材として使用していた。しかし、銀,Nbには放射化の問題があるため、タンタルを母材とし、安定化材として銅を使用する製造方法の開発を試みた。


34000934
Design of thick septa magnets based on 3D field calculation for the 3 GeV rapid cycling synchrotron of J-PARC
渡辺 真朗; 入江 吉郎; 神谷 潤一郎; 島田 太平; 高柳 智弘; 藤森 寛*; 五十嵐 進*; 川久保 忠通*; 中山 久義*
IEEE Transactions on Applied Superconductivity 16(2), p.1350-1353(2006) ; (JAEA-J 01076)

 J-PARC 3GeV RCSの入出射用セプタム電磁石は7台あり、入射に2台、廃棄ラインに2台、出射に3台用いられる。セプタム電磁石には全て機械的安定性のため、DC電流で動作するよう設計している。また、真空システムへの冷却水のリークによるアクシデント等を避けるため、真空外(air region)で動作される。われわれは3次元静磁場計算コードTOSCAを用い、セプタム電磁石を設計している。このプレゼンテーションでは磁場計算の結果について議論する。


34000935
Magnetic field measurements, 3D field calculation and heat measurements of a prototype thick septum magnet for 3 GeV rapid cycling synchrotron of J-PARC
渡辺 真朗; 入江 吉郎; 神谷 潤一郎; 島田 太平; 高柳 智弘; 鈴木 寛光; 渡辺 泰広; 川久保 忠通*
IEEE Transactions on Applied Superconductivity 16(2), p.1354-1357(2006) ; (JAEA-J 01077)

 セプタム電磁石は一般的に薄いセプタム厚構造と同時に漏れ磁場を極力小さくしなければならない。J-PARC 3GeV陽子シンクロトロンの入出射システム用に用いられるセプタム電磁石は、ロスの少ないhigh intensityのビームが通るための大きなaperture, high radiationに対する保護,high activation後のメンテナンスを避けるための高い耐久性、が要求される。プロトタイプセプタム電磁石の製作をした。ホールデバイスを用いて磁場測定を行い、その結果を3次元静磁場計算コードTOSCAの計算結果と比較をした。ギャップ内の磁場は測定とシンプルモデルによる計算がよく一致した。一方で漏れ磁場は計算結果よりも測定結果の値が大きかった。より詳細なモデルにより、リターンヨークを固定するボルト穴がヨークの実効的な断面積を小さくし、その結果透磁率が小さくなり漏れ磁場が大きくなっていることが判明した。リターンヨークの厚みが十分でないので、磁束密度は容易に飽和に近い領域で励磁されてしまう。さらに、われわれは電磁石の発熱測定とコイルの冷却効率について議論する。


34000936
Magnetic field measurement of the extraction kicker magnet in J-PARC RCS
神谷 潤一郎; 植野 智晶*; 高柳 智弘
IEEE Transactions on Applied Superconductivity 16(2), p.1362-1365(2006) ; (JAEA-J 01078)

 キッカー電磁石はJ-PARC 3GeVシンクロトロンの出射用パルス電磁石である。それは、1MWのビームパワーの陽子ビームを蹴り出すために大口径を有している。それゆえ、負荷ケーブルとのインピーダンスミスマッチ、及び端部漏れ磁場が、磁場分布の精度に影響を及ぼす。われわれはシミュレーションと測定によりそれらの影響を分析し、磁場精度を改善することを行った。本論文ではそれらの研究結果を報告する。


34000937
Kicker magnet system of the RCS in J-PARC
神谷 潤一郎; 高柳 智弘; 川久保 忠通*; 村杉 茂*; 中村 英滋*
IEEE Transactions on Applied Superconductivity 16(2), p.168-171(2006) ; (JAEA-J 01079)

 キッカー電磁石はJ-PARC 3GeVシンクロトロンの出射部に設置され、3GeVに加速された陽子ビームを下流のビームラインへ蹴り出す役割をする。J-PARCプロジェクトの目標である1MWビームパワーを達成するために、キッカー電磁石には、大口径,超高真空,磁場の均一性が要求されている。本論文ではRCSキッカー電磁石システムの仕様を紹介し、上記要求に対する技術的な改善点を報告する。


34000938
Demonstration of JK2LB jacket fabrication for ITER central solenoid
濱田 一弥; 中嶋 秀夫; 河野 勝己; 高野 克敏*; 堤 史明*; 関 秀一*; 奥野 清; 藤綱 宣之*; 溝口 満*
IEEE Transactions on Applied Superconductivity 16(2), p.787-790(2006) ; (JAEA-J 01080)

 原研では、国際熱核融合実験炉(ITER)の活動の一環として、中心ソレノイド(CS)のジャケットの試作作業を進めている。ITER CSの導体は、外形51.4mm角,内径35.1mmの穴を持つ矩形ジャケットを使用する。ジャケットは、4Kで耐力1000MPa以上,破壊靭性値KIC(J)130MPa√m以上が要求される。ジャケット材料には、原研が開発したJK2LB鋼(0.03C-22Mn-13Cr-9Ni-1Mo-0.2N-B)を使用する。素材の製作として、3ton溶解炉及びElectroslag Remelting(ESR)工程を経て、直径170mmのJK2LB鍛造ビレットを1.6ton製作し、良好な熱間加工特性及び量産が可能であることを確認した。ジャケットは外形及び内径精度が+/-0.2mm、穴の偏芯率10%以下、ジャケット単長は最低5mを達成する必要がある。試作した鍛造ビレットから、熱間押し出し及び冷間引抜によりジャケットを試作し、寸法精度を確認した。その結果、外形及び内径の変動は0.2mm以下、偏芯率は5%以下、ジャケットの単長は7mであることを確認した。以上の結果より、ITER CSジャケットの製作に必要な技術を確立できた。


34000939
Manufacturing study and trial fabrication of radial plate for ITER toroidal field coil
阿部 加奈子*; 中嶋 秀夫; 濱田 一弥; 奥野 清; 角井 日出雄*; 山岡 弘人*; 丸山 直行*
IEEE Transactions on Applied Superconductivity 16(2), p.807-810(2006) ; (JAEA-J 01081)

 ITERのTFコイルは68kA, 11.8Tで運転されるため、巨大な電磁力が発生する。この電磁力を支持するために、TFコイル導体はTFコイルケース内のラジアルプレート(RP)と呼ばれるD型構造体(13.8m×8.7m,幅610mm,厚み112mm)に加工された溝に埋め込まれる。RPは大型のため、複数の圧延板を既存加工機が使用できる大きさに溶接接合して、溝を機械加工し、最終的に溶接で一体化する製作方法が考えられる。原研は、実現可能なRP製作方法を検討するとともに、RPの加工方法及び加工時間を評価するために、実機RP素材である316LNを用いて、加工条件や工具寿命を測定した。また、高溶着TIG溶接と、溶接部の収縮を最小にするレーザー溶接の適用性を検討し、実際に316LNで溶接を行い溶接性や変形,溶接速度等を実測した。これらのR&Dに基づき、実機と同じ溝寸法を持つ小規模RP(750mmW×1000mmL,11溝)を試作し、製作方法を検証した。完成したRP試作体の平面度は1mm以下であることを確認した。以上の結果、RPの現実的な製作方法についての見通しを得た。


34000940
Effects of tensile and compressive strain on critical currents of Nb3Al strand and cable-in-conduit conductor
木津 要; 土屋 勝彦; 島田 勝弘; 安藤 俊就*; 菱沼 良光*; 小泉 徳潔; 松川 誠; 三浦 友史*; 西村 新*; 奥野 清; 妹尾 和威*; 高畑 一也*; 玉井 広史; 山田 修一*
IEEE Transactions on Applied Superconductivity 16(2), p.872-875(2006) ; (JAEA-J 01082)

 Nb3Al素線の臨界電流値(Ic)は歪みにより減少する。ケーブル・イン・コンジット導体(CICC)中の素線には熱歪みと曲げ歪みが加わる。しかしながら、JT-60定常高ベータ化計画のR&Dにおいてリアクト・アンド・ワインド法によって製作されたNb3Al-D型コイルにおいては、0.4%の曲げ歪みが印加されてもIcは減少しないことが見いだされている。これは、素線の曲げ歪みがケーブル効果により緩和したことを示唆している。CICCのIcに対する曲げの効果を評価するためには、素線に対する引張り・圧縮歪みの効果と、CICC中の素線の歪み緩和効果を調査する必要がある。そこで本研究では、素線及びCICCサンプルに引張り・圧縮歪みを印加できる装置を開発した。サンプルはベリリウム銅製のねじりコイルばね形状のサンプルホルダー表面に取り付けられ、ホルダーをねじることで歪みが印加される。CICCサンプルを取り付け可能とするために82mm径のサンプルホルダーを製作した。Nb3Al素線サンプルのIcを外部磁場6〜12T,歪み-0.86%〜+0.18%の範囲で測定することに成功した。外部磁場11T,歪み-0.86%でのIcは歪み0%の65%に減少することが見いだされた。


34000941
From CS and TF model coils to ITER; Lessons learnt and further progress
奥野 清; 中嶋 秀夫; 小泉 徳潔
IEEE Transactions on Applied Superconductivity 16(2), p.880-885(2006) ; (JAEA-J 01083)

 ITER超伝導マグネットの製作に必要な技術開発として、日本,米国,EU,ロシアの国際協力の下で中心ソレノイド・コイル及びトロイダル磁場コイルの開発を実施し、それぞれのモデル・コイルで開発目標を達成するとともに、ITER超伝導マグネットの設計・製作手法を実証した。これらの成果に基づき、設計合理化と製作時のリスク低減を目的として、マグネット要素機器のさらなる性能の向上や、実規模での試作を行っている。超伝導素線では新たな技術仕様を策定し、既にこの仕様を満たす素線が試作された。さらにトロイダル磁場コイル容器では、数十トンの試作を行い、大型製品製造技術を確立しつつある。これらにより、ITER超伝導マグネットの調達準備を進めるとともに、核融合以外の超伝導マグネットにも応用できる普遍的な技術を確立する。


34000942
Macroscopic stress measurements by neutron diffraction and the part played by the "stress-free" reference
Holden, T. M.*; 鈴木 裕士; Carr, D. G.*
ISIJ International 46(7), p.959-965(2006) ; (JAEA-J 01084)

 ここ10年の間に、中性子回折法により測定した格子ひずみから巨視応力を計算する方法について研究開発が行われてきた。ある回折について測定した格子ひずみには、巨視応力場に一致する応力成分だけでなく、第二種あるいは粒内応力に一致する応力成分が含まれている。後者は不均一塑性変形に起因して発生し、方位の異なる結晶粒ごとに異なる格子ひずみを示す。この第二種応力成分を把握する手段には、測定試料の応力分布場よりも小さい領域からクーポン試料を切り出す方法がある。クーポン試料を切り出すことにより巨視応力場は除去されるが、結晶粒スケール程度の粒内応力場や組織変化状態は変化しない。したがって、クーポンを切り出す前の試料とクーポン試料の格子面間隔を比較することで、巨視応力に関連した格子ひずみを求めることが可能となる。粒内ひずみ(応力)及び巨視ひずみ(応力)が重畳した例として、曲げ蒸気発生配管や変形圧力配管について解説した。溶接試料においても、冷却過程において塑性変形が発生することがある。さらに、溶融に伴い、微視構造や組成が変化することもある。そのため、溶接部近傍では、測定位置ごとにクーポン試料を作製して標準格子定数を明らかにする必要がある。ここでは、オーステナイト系ステンレス鋼やZr合金溶接試料を例に挙げて解説した。


34000943
Annealing process of ion-implantion-induced defects in ZnO: Chemical effect of the ion species
Chen, Z. Q.*; 前川 雅樹; 河裾 厚男; 境 誠司; 楢本 洋
Journal of Applied Physics 99(9), p.093507_1-093507_5(2006) ; (JAEA-J 01085)

 酸素イオン注入及びボロンイオン注入した酸化亜鉛を陽電子消滅法とラマン分光によって研究した。陽電子消滅測定から、ボロンイオンを注入した酸化亜鉛を500℃で熱処理すると原子空孔クラスターが集合体化しマイクロボイドになることが明らかになった。これらのマイクロボイドを取り除くためには1000℃の熱処理が必要である。一方、酸素イオン注入した酸化亜鉛では原子空孔の集合体化は殆ど観測されず、原子空孔は800℃までに回復することがわかった。ラマン分光によって検出された酸素空孔は、ボロンイオン注入の場合には700℃まで安定に存在するが、酸素イオン注入の場合には400℃で消失することがわかった。以上から、ボロンと格子間酸素が複合体を作ることで、酸素空孔を安定化させ、マイクロボイド形成を助長すると考えられる。


34000944
Effect of crosslinkers on the preparation and properties of ETFE-based radiation-grafted polymer electrolyte membranes
Chen, J.; 浅野 雅春; 八巻 徹也; 吉田 勝
Journal of Applied Polymer Science 100(6), p.4565-4574(2006) ; (JAEA-J 01086)

 スチレンの誘導体であるメチルスチレン(MeSt)のγ線グラフト重合反応及び得られた膜の特性に及ぼす架橋剤の影響について検討した。架橋剤として、ジビニルベンゼン(DVB),ビスビニルフェニルエタン(BVPE),トリアリルシアヌレート(TAC)を用いた。グラフト重合反応性は、DVBの場合、3%までグラフト率の急激な上昇が見られたが、その後濃度が高くなるに従い、急激に低下した。また、BVPEでは、40%までグラフト率の上昇が確認できた。TACの場合、グラフト率は40%まで変化しなかった。得られた架橋剤導入電解質膜の耐酸化性試験の結果、スルホン酸基の脱離は架橋剤の導入により、抑制されることがわかった。その抑制効果は、架橋剤の種類により異なり、TAC, BVPE, DVBの順に大きくなった。


34000945
Suitability of some fluoropolymers used as base films for preparation of polymer electrolyte fuel cell membranes
Chen, J.; 浅野 雅春; 前川 康成; 吉田 勝
Journal of Membrane Science 277(1-2), p.249-257(2006) ; (JAEA-J 01087)

 前照射・後グラフト重合により種々のフッ素系高分子基材へのスチレン/ジビニルベンゼン(97/3 vol%)のグラフト重合性及び機械的特性を検討した。グラフト重合の基材として、PTFE, 電子線架橋PTFE(cPTFE), PFA, FEP, ETFE, PVDF, PVFなどを用いた。その結果、グラフト重合性はFEP, cPTFE, PFA, PTFEなどの全フッ素系高分子基材に比べて、PVDF, PVA, ETFEなどの部分フッ素系高分子基材の方が高いことがわかった。この原因として、全フッ素系高分子に比べて、部分フッ素系高分子では、ラジカルの生成量が多いこと、さらに基材高分子膜の自由体積が大きいために膜内へのモノマーの浸透が速いことなどが考えられる。これらの膜をスルホン化して得た電解質膜の引っ張り強度はPFA, ETFE, PVDFなどの基材で、ナフィオン112(20MPa)より高い値を示した。伸び率ではナフィオン112に比べてすべての基材で低い値を示したが、通常、伸び率で100%以上、引っ張り強度では15MPa以上であれば、燃料電池用高分子電解質膜としての強度には問題ないことから、この値をクリアーするcPTFE, PFA, ETFE, PVDFなどは電解質膜の基材として有望であることがわかった。


34000946
Preparation of Aliquat 336-impregnated porous membrane
浅井 志保; 渡部 和男; 斎藤 恭一*; 須郷 高信*
Journal of Membrane Science 281(1-2), p.195-202(2006) ; (JAEA-J 01088)

 多孔性膜の細孔表面にグラフト重合によって付与した高分子鎖へ、パラジウムに選択性を持つ抽出試薬であるAliquat 336,塩化トリ-n-オクチルメチルアンモニウムを担持した。グラフト鎖へ6-アミノヘキサン酸基とオクタデシルアミノ基を導入することによって、高密度かつ安定に、しかも高い液体透過性能を保持した状態で、Aliquat 336を担持できることを見いだした。得られたAliquat 336担持膜へパラジウム水溶液を透過させると、担持されたAliquat 336の大部分がパラジウムの吸着に寄与していることがわかった。


34000947
Hydrogen permeation through heat transfer pipes made of Hastelloy XR during the initial 950℃ operation of the HTTR
坂場 成昭; 大橋 弘史; 武田 哲明
Journal of Nuclear Materials 353(1-2), p.42-51(2006) ; (JAEA-J 01089)

 HTTRの中間熱交換器(ハステロイXR製)におけるトリチウム透過の防止は、高温ガス炉に化学プラントを接続する際の重要な課題の一つである。本報では、HTTRに水素製造装置を接続する際に化学プラントであるISシステムの非原子力級可に資するため、HTTRの高温試験運転における実測値をもとに水素透過を保守的に評価した。ハステロイXRの活性化エネルギー及び頻度因子は、707Kから900Kにおいて、それぞれ、65.8kJ/mol, 7.8×10-9m3(STP)/(m*s*Pa0.5)と評価された。これらの値は、従来の値と同程度である。また、最確値による評価の結果から、トリチウム透過を妨げる酸化膜が伝熱管表面に形成されていることが示唆された。


34000948
Mechanical properties of weldments using irradiated stainless steel welded by the laser method for ITER blanket replacement
山田 弘一*; 河村 弘; 長尾 美春; 高田 文樹; 河野 渉*
Journal of Nuclear Materials 355(1-3), p.119-123(2006) ; (JAEA-J 01090)

 ITERの冷却配管材料候補材であるSU316LN-IGを用いて、照射材と未照射材のレーザ溶接による接合材の曲げ特性を調べた。材料は曲げは未照射材を使用している接合材では未照射材部で発生し、照射材同志の接合材では溶融金属部及び熱影響部で発生する。しかしながら、曲げ発生か所が異なっても、溶接材の曲げ特性はほぼ同じような特性を示す。また、照射材と未照射材の組合せパターンや、溶接時の入熱方向と曲げ負荷方向の関係によって、曲げ特性が変化しないことが確認された。


34000949
Measurement of response functions of a liquid organic scintillator for neutrons up to 800MeV
佐藤 大樹; 佐藤 達彦; 遠藤 章; 山口 恭弘; 高田 真志*; 石橋 健二*
Journal of Nuclear Science and Technology 43(7), p.714-719(2006) ; (JAEA-J 01091)

 800MeVまでの中性子に対するBC501A液体有機シンチレータの応答関数を、放射線医学総合研究所のHIMAC加速器を用いて測定した。高エネルギー中性子は、核子あたり400MeVのCイオン及び800MeVのSiイオンを炭素ターゲットと衝突させ生成した。中性子の運動エネルギーは、飛行時間法を用いて決定した。測定した応答関数と応答関数計算コードSCINFUL-QMDの計算値を比較し、800MeVまでのSCINFUL-QMDコードの精度検証を行った。その結果、SCINFUL-QMDは数百MeVの中性子に対する液体シンチレータの応答関数を精度よく評価できることが明らかとなった。


34000950
Evaluation of containment failure probability by Ex-vessel steam explosion in Japanese LWR plants
森山 清史; 高木 誠司*; 村松 健; 中村 秀夫; 丸山 結*
Journal of Nuclear Science and Technology 43(7), p.774-784(2006) ; (JAEA-J 01092)

 BWR Mk-II型及びPWRモデルプラントにおける炉外水蒸気爆発による格納容器破損確率を評価した。評価対象はBWRの圧力抑制プール及びペデスタル,PWRのキャビティにおける水蒸気爆発である。水蒸気爆発による負荷の確率分布を評価するために、ラテン超方格サンプリング(LHS)による確率論的手法を用い、その中で水蒸気爆発解析コードJASMINEを物理モデルとして使用した。水蒸気爆発による負荷と格納容器破損確率を関連付けるフラジリティカーブは、格納容器破損に至るシナリオについて簡略な仮定をおいて評価した。得られた条件付格納容器破損確率(CCFP)はBWR圧力抑制プールにつき6.4E-2(平均値)及び3.9E-2(中央値)、BWRペデスタルにつき2.2E-3(平均値)及び2.8E-10(中央値)、PWRにつき6.8E-2(平均値)及び1.4E-2(中央値)である。なお、これらは仮定した入力パラメータの範囲及び、保守的な簡略化により与えたフラジリティカーブに依存するものである。また、このCCFPは炉内での事故収束失敗,溶融炉心の炉外水プールへの落下、及び粗混合量が最大に近い時刻における強いトリガリングを前提条件とした確率であり、炉心損傷事象に対するCCFPはさらに小さい値となる。


34000951
Comparison of four bidentate phosphoric and diamide compounds for the extractability of actinides
佐々木 祐二; 梅谷 重夫*
Journal of Nuclear Science and Technology 43(7), p.794-797(2006) ; (JAEA-J 01093)

 リン酸化合物,ジアミド化合物の計4種を用いて、アクチノイド元素の抽出を調べ、その抽出性能を議論した。リン酸化合物はジアミド化合物より抽出性能が高い。抽出種の錯体組成はAm:L=1:3, Th:L, Np:L=1:1, U:L=1:2であり、異なる原子価のアクチノイドの抽出されやすさの順はU(VI)>Th(IV)>Am(III)>Np(V)であることを確認した。2座のリン酸化合物の一種である、BDPPMがアクチノイド抽出に最も優れていることがわかった。


34000952
Removal of metal oxide layers as a dry decontamination technique utilizing bead reaction and thermal quenching by dry ice blasting
亀尾 裕; 中島 幹雄; 平林 孝圀*
Journal of Nuclear Science and Technology 43(7), p.798-805(2006) ; (JAEA-J 01094)

 金属表面に生成した腐食生成物層を効率よく除去するため、ガラス融剤を用いて腐食生成物層を溶融した後、生成したガラス層をドライアイスブラストにより廃棄物から剥離させる乾式除染法を開発し、乾式除染法としての成立性について検討した。ガラス融剤の塗布,溶融ガラス化反応,ドライアイスブラストの各プロセスについて操作条件の最適化を行った後、BWR原子炉環境を模擬したオートクレーブで作製した模擬汚染試料を用いて腐食生成物層の除去試験を行った。その結果、ステンレス及び炭素鋼表面に生成した腐食生成物層は、本法により効果的に除去できることがわかった。剥離させたガラス層は、比較的低温で再溶融することにより減容・安定化が可能であり、本法を除染法として用いた場合、従来の化学除染法に比べ二次廃棄物の処理が極めて容易になると考えられる。


34000953
An Assessment of the multi-stage counter current extraction of TRUs from spent molten salt, into liquid metal
小林 嗣幸
Journal of Nuclear Science and Technology 43(7), p.819-823(2006) ; (JAEA-J 01095)

 向流多段抽出の新しい計算手順を開発し、その特性を研究した。第1ステージで抽出されたNdが第2ステージでマイルドな還元剤としてはたらきAmを抽出していることが確認された。これによってCd-Li抽出の分離性能がCd-U抽出より優れていることがわかった。また、Bi-Li抽出による分離性能の向上や希土類間の特性の相違を定量的に評価した。


34000954
Extraction behavior of Am(III) from Eu(III) with hydrophobic derivatives of N, N, N', N'-tetrakis(2-methylpyridyl)ethylenediamine (TPEN)
松村 達郎; 竹下 健二*
Journal of Nuclear Science and Technology 43(7), p.824-827(2006) ; (JAEA-J 01096)

 分離変換技術の課題の一つとして、化学的挙動が類似した3価のマイナーアクチノイド(MA)とランタノイド(Ln)の分離技術(4f/5f元素相互分離)の開発がある。われわれは、水溶液中におけるAm(III)及びLa(III)との錯形成定数に102以上の差が見いだされているN, N, N', N'-Tetrakis(2-pyridylmethyl)ethylenediamine(TPEN)に着目し、これを利用したAm(III)とEu(III)の分離の可能性について既に明らかにした。現在、TPENをさらに改良した誘導体の開発を進め、疎水性の向上を目指した分子構造を検討し、数種の誘導体を合成した。合成した誘導体のうち、N, N, N', N'-tetrakis(2-methylpyridyl)dibutylethylenediamine(tpdben)に、Am/Euの分離性能を見いだした。ニトロベンゼンを有機溶媒とした抽出系で、水相を3.0M NH4NO3、有機相中tpdben濃度を10mMとした場合、分離係数SFAm/Euは最大35であることを確認した。


34000955
Transmutation of technetium in the experimental fast reactor "JOYO"
青山 卓史; 前田 茂貴; 前田 幸基; 鈴木 惣十
Journal of Nuclear and Radiochemical Sciences 6(3), p.279-282(2005) ; (JAEA-J 01097)

 環境負荷低減の観点から、高速炉における超半減期核分裂生成物(Long-Lived Fission Product, LLFP)の核変換技術が検討されている。本報告では、高速実験炉「常陽」において、LLFP核変換の実現可能性を評価した結果を報告する。高効率な核変換特性を持った照射版を設置するために、反射体領域の反射体6体を中性子減速用の集合体に置き換え、その中心に試験用の集合体を配置する方法を検討した。中性子減速材としては、減速物質の代表としてベリリウム(Be)及び水素化物(ZrH1.65)を採用し、核変換効率に対する減速材充填率や炉心燃料及び遮へい集合体への影響を評価した。充填率を最適化した結果、試験用集合体の炉中心レベルにおける99Tcの核変換率はBe減速材で27.8%/年、ZrH1.65減速材で20.1%/年となった。この結果、十分な核変換率が得られる照射場の設置可能性を示し、今後の課題を摘出した。


34000956
Refractive index change and color imaging of acid-chromic polymer films using EB-induced acid generation
加藤 順; 湯浅 加奈子; 松下 晴美*; 前川 康成; 榎本 一之; 石井 達人*; 伊藤 和男*; 山下 俊*
Journal of Photopolymer Science and Technology 19(1), p.105-110(2006) ; (JAEA-J 01098)

 高密度メモリなどの電子材料への適用を目的に、電子線で酸を発生する分子(酸発生剤)と酸性で発色する化合物(環境クロミック分子)を含む高分子薄膜について、電子線によるクロミック分子の挙動と電子線描画装置(50nm径)によるナノカラーイメージング形成性を検討した。このクロミック薄膜の電子線照射により、酸が発生し、プロトン化したクロミック分子が発色することを利用している。電子線描画装置により、ナノスケールのカラーイメージングを試みた。50μCcm-2の照射量で、解像度100nmでライン/スペースのカラーイメージングが実現できた。さらに、電子線照射により、大きく屈折率が変化することを、m-line法によるTM及びTEの両モードで確認できた。


34000957
Chemical and radiation crosslinked polymer electrolyte membranes prepared from radiation-grafted ETFE films for DMFC applications
Chen, J.; 浅野 雅春; 八巻 徹也; 吉田 勝
Journal of Power Sources 158(1), p.69-77(2006) ; (JAEA-J 01099)

 放射線グラフト重合により、ビスビニルフェニルエタン(BVPE)及びジビニルベンゼン(DVB)の2成分の架橋剤とビニルトルエン(MeSt)及びt-ブチルスチレン(tBuSt)の2成分のスルホン化可能なモノマーを組合せた4元系成分電解質膜を作製した。これらの電解質膜の特性として、含水率,プロトン導電性,メタノール透過性及び耐久性について検討した。また、γ線架橋の導入としては、(1)グラフト重合前,(2)グラフト重合後,(3)グラフト重合・スルホン化後などのタイミングで行った。グラフト重合・スルホン化後などのタイミングで架橋した電解質膜の耐久性加速試験の結果、従来のポリスチレンスルホン酸電解質膜に比べて6倍耐久性が向上することがわかった。また、この電解質膜のメタノール透過はナフィオンの1/10まで抑制できることもわかった。


34000958
Exploration of "over kill effect" of high-LET Ar- and Fe-ions by evaluating the fraction of non-hit cell and interphase death
Mehnati, P.*; 森本 茂子*; 谷田貝 文夫*; 古澤 佳也*; 小林 泰彦; 和田 成一; 金井 達明*; 花岡 文雄*; 佐々木 弘*
Journal of Radiation Research 46(3), p.343-350(2005) ; (JAEA-J 01100)

 イオン照射における生物学的効果比(RBE)はLET値とともに増加するが、非常に高いLET領域では逆に減少に転ずる。この現象を説明するため、40Arあるいは56FeイオンビームをCHO細胞に照射し、試料中に混在する非ヒット細胞の割合と、ヒット細胞が分裂を経ずに死に至る間期死の頻度に注目して、照射後の細胞群を長時間に渡って追跡観察した。全細胞中の約20%が非ヒットであり、約10%が照射後も生残し、約70%が分裂死または間期死を示した。分裂死及び間期死のRBEはLET=200keV/μmあたりではほぼ同じで、30%生残線量では死細胞の約10%が間期死の経路を辿る。この率はLETによって異なり、2000keV/μmの56Feイオンでは15%に達するがX線では3%以下であった。しかし、1%生残線量の56Feイオンで照射された後も、67%が分裂死を示し、33%の間期死を凌駕していた。これらの結果から、間期死は高LET放射線被曝に特異的な細胞死の様相であり、細胞レベルのオーバーキル効果の現れではないことが示唆された。


34000959
A Simple and reliable monitoring system for 3H and 14C in radioactive airborne effluent
小嵐 淳; 三上 智; 秋山 聖光; 小林 博英; 武石 稔
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 268(3), p.475-479(2006) ; (JAEA-J 01101)

 原子力施設から大気放出される廃棄物中の3H及び14Cに対する簡易かつ信頼性の高いサンプリングシステムを設計した。本システムでは、市販の冷却トラップ装置を用いた冷却凝縮により3Hを、モノエタノールアミンを用いたCO2吸収により14Cをワンススルーで同時に捕集することができる。再処理施設からの気体廃棄物に対して本システムの性能評価を行った結果、サンプリング流量0.4lmin-1による1週間のサンプリングにおいて安定して高い捕集効率が得られることが示された。本システムによる3H及び14Cの捕集により、液体シンチレーション法による放射能測定のための試料調製が容易になり、それに要する時間も短縮できる。本システムを用いたモニタリングにおける3H及び14Cの検出下限濃度は、それぞれ3.0Bq/m3, 1.6Bq/m3であり、さまざまな原子力施設のモニタリングにも適用できると考えられる。


34000960
Magnetic excitations in the quasi-1D ising-like antiferromagnet TlCoCl3
大沢 明*; 西脇 洋一*; 加藤 徹也*; 加倉井 和久
Journal of the Physical Society of Japan 75(1), p.015002_1-015002_2(2006) ; (JAEA-J 01102)

 TlCoCl3は室温で六方晶の結晶構造を持つ擬一次元イージング系反強磁性物質である。非弾性中性子散乱によりこの系の磁気励起を観測し、磁気ドメイン壁対の揺らぎに対応するスピン励起状態を検証した。この励起状態を石村−斯波理論で解析することにより、この系の一次元的磁気相互作用(2J=14.7meV)及び異方性パラメター(ε=0.14)を決定した。


34000961
Successive magnetic phase transitions in α-Tb2S3 studied by neutron diffraction technique
松田 雅昌; 加倉井 和久; 戎 修二*; 永田 正一*
Journal of the Physical Society of Japan 75(7), p.074710_1-074710_4(2006) ; (JAEA-J 01103)

 α-Tb2S3はTbモーメントの正方格子と三角格子が積層した構造を持つため、特に三角格子の磁気フラストレーションに由来した興味ある磁性を示すと考えられる。以前、同様の結晶構造を有するα-Gd2S3の中性子粉末回折測定を行い、正方格子と三角格子上のGdモーメントが同時に磁気秩序を起こし、単純な反強磁性構造を示すことを明らかにした。今回、α-Tb2S3の中性子粉末回折測定を行ったところ、正方格子と三角格子上のTbモーメントが独立に秩序化し、特に三角格子上のTbモーメントが磁気フラストレーションを反映した構造を示すことを明らかにした。両物質における磁気構造の違いは、α-Tb2S3が有する軌道の自由度に由来すると考えられる。α-Tb2S3では軌道分布により正方格子と三角格子の間の磁気相互作用が小さくなるために、三角格子におけるフラストレーションの効果が顕著に現れたと考えられる。


34000962
Incommensurate lattice distortion in the high temperature tetragonal phase of La2-x(Sr,Ba)xCuO4
脇本 秀一; 木村 宏之*; 藤田 全基*; 山田 和芳*; 野田 幸男*; 白根 元*; Gu, G.*; Kim, H.*; Birgeneau, R. J.*
Journal of the Physical Society of Japan 75(7), p.074714_1-074714_6(2006) ; (JAEA-J 01104)

 高温超伝導体La2-x(Sr,Ba)xCuO4の高温正方晶(HTT)相において観測される格子非整合な散漫散乱を、x=0.07, 0.125(Ba), 0.15, 0.20の試料について、中性子散乱実験により系統的に調べた。測定したすべての試料において、低温斜方晶(LTO)相で現れる超格子反射がHTT相で格子非整合な散漫散乱に変化する様子が観測された。散漫散乱ピークの位置、及び構造因子の考察から、散漫散乱はLTO的な八面体の傾きがHTT相で局所構造として残ることに起因し、かつ傾きの方向(Cu02正方格子でCu-Cuの対角線方向)に格子非整合な変調を伴っていることがわかった。変調周期の逆数に相当する格子非整合性δは、温度上昇に伴い増加し、すべての試料でT/TsTs構造相転移温度)に対して、散漫散乱の積分強度は(T-Ts)-1に対して各々スケールする普遍的な振る舞いが見られた。以上の結果と、超伝導を示さないx=0.05では同様の散漫散乱が観測されないことから、格子非整合な変調を伴ったLTO歪みは超伝導領域に特有の性質であることが示された。


34000963
Ion-implantation induced defects in ZnO studied by s slow positron beam
Chen, Z. Q.; 前川 雅樹; 関口 隆史*; 鈴木 良一*; 河裾 厚男
Materials Science Forum 445-446, p.57-59(2004) ; (JAEA-J 01105)

 アルミニウムイオン注入によって酸化亜鉛中に生成する損傷の熱的振る舞いをエネルギー可変低速陽電子ビームを用いて調べた。イオン注入量が1014Al+/cm2以上に増加すると、注入層が非晶質化することが見いだされた。また、その後の600℃までの熱処理によってポジトロニウム(陽電子と電子の安定結合状態)が生成することから、注入層にはサイズの大きなボイドが形成することが判明した。そのボイドは、600℃以上の熱処理で注入層の再結晶化に伴って消失することが見いだされた。その後、注入されたアルミニウムイオンはほぼ完全に電気的に活性化されn型伝導に寄与することがわかった。電子移動度も注入以前に比べて向上することが知られた。さらに、カソードルミネッセンス測定からは、紫外発狂強度が著しく増加することがわかった。以上の知見から、酸化亜鉛の電気的・光学的特性は、アルミニウムイオン注入とその後の熱処理によって改善されることが言える。


34000964
Enzymatic recognition of radiation-produced oxidative DNA lesion; Molecular dynamics approach
Pinak, M.
Modern Methods for Theoretical Physical Chemistry of Biopolymers , p.191-210(2006) ; (JAEA-J 01106)

 数種類のDNA損傷とそれぞれの修復酵素に関する分子動力学シミュレーションの結果を紹介する。修復酵素が損傷を適切に認識する要因としての、DNAの構造変化及び静電エネルギーの変化に焦点を絞った研究を行った。DNA塩基対間の水素結合ネットワークの崩壊や、DNAの折れ曲り等の重要な構造変化が観察された。このDNA構造の変化により修復酵素が損傷DNAに結合しやすい状況ができあがっていると考えられる。また、損傷したDNAと損傷のないDNAを修復酵素が識別するのを助けると考えられる静電エネルギーの変化も観察された。


34000965
Steady state operation research in JT-60U with extended pulse length
藤田 隆明; JT-60チーム
Nuclear Fusion 46(3), p.S3-S12(2006) ; (JAEA-J 01107)

 JT-60Uにおいては、加熱パワーの入射時間を10秒から30秒に伸長し、電流拡散時間を超え、壁飽和時間に近い時間スケールでのプラズマ特性の研究を開始した。加熱装置の入射時間は順調に伸長し、入射エネルギー350MJを達成した。規格化ベータ値2.3を22.3秒間維持するなど高ベータの維持時間を大幅に伸長した。また、負磁気シアプラズマ及び弱磁気シアプラズマにおいて、完全電流駆動に近い状態での高自発電流割合の維持時間も5.8秒及び7.4秒まで伸長した。いずれの場合も電流分布は定常状態に達し、高ベータ,高自発電流割合の長時間維持に明るい見通しを得た。長時間スケールでの制御性の研究のため、電流分布の実時間制御システムを構築し、低ベータプラズマで実証した。高密度放電を繰り返すことにより、壁の粒子吸蔵量が飽和する状態をJT-60で初めて得た。壁飽和状態でダイバータ排気による粒子制御を実証した。ダイバータ板へのパルス的な熱負荷のない静かなHモード(QHモード)を初めて表面のトロイダル回転がゼロに近い状態で実現した。


34000966
Present status of the negative ion based NBI system for long pulse operation on JT-60U
池田 佳隆; 梅田 尚孝; 秋野 昇; 海老沢 昇; Grisham, L. R.*; 花田 磨砂也; 本田 敦; 井上 多加志; 河合 視己人; 椛澤 稔; 菊池 勝美*; 小又 将夫; 藻垣 和彦; 能登 勝也*; 岡野 文範; 大賀 徳道; 大島 克己*; 竹之内 忠*; 棚井 豊*; 薄井 勝富; 山崎 晴幸*; 山本 巧
Nuclear Fusion 46(6), p.S211-S219(2006) ; (JAEA-J 01108)

 JT-60Uの負イオンNBI装置では、準定常状態のプラズマ研究を行うため、パルス幅を10秒から30秒に拡張する試みに着手した。そのための最も重要な課題は、イオン源電極の熱負荷軽減であり、2つの改良を提案した。1つは、ビーム同士の相互作用によるビームの拡がりの抑制であり、そのために薄板を引出電極に取付け、局所的な電界を修正した。その厚みは、ビームの偏向を最適に制御するよう決めた。もう1つは、負イオンから電子が剥ぎ取られ、その電子がイオン源内で加速,電極に衝突するストリッピング損失の低減化である。このために加速部の真空排気速度を改善するようイオン源を改造した。これらの改造を行い、現在まで17秒,1.6MWあるいは25秒,約1MWの入射に成功した。


34000967
The Origin of beam non-uniformity in a large Cs-seeded negative ion source
花田 磨砂也; 関 孝義*; 高戸 直之; 井上 多加志; 水野 貴敏*; 畑山 明聖*; 柏木 美恵子; 坂本 慶司; 谷口 正樹; 渡邊 和弘
Nuclear Fusion 46(6), p.S318-S323(2006) ; (JAEA-J 01109)

 セシウム添加方式体積生成型負イオン源のビーム非一様性の原因について実験的に調べた。ビーム強度分布とプラズマ密度分布の相関を調べた結果、負イオン強度はプラズマが集中している領域において高かった。プラズマが集中している領域においては、負イオンの素となるプロトンばかりでなく、水素原子の密度も局所的に高かったと考えられる。さらに、フィラメントから放出する1次電子の軌道を計算した結果、プラズマの集中は、フィラメントから放出した1次電子が、フィラメント近傍の磁場によって、Bx∇Bドリフトするためであることがわかった。ビーム非一様性の原因である高速1次電子のBx∇Bドリフトを抑制するために、フィラメントの形状を変更した。その結果、ビーム強度の平均値からの偏差は、変更前の半分に減少しており、ビーム一様性を大幅に改善した。


34000968
A Simulation study on inductive ITB control in reversed shear tokamak discharges
中村 幸治; 飛田 健次; 福山 淳*; 武井 奈帆子; 高瀬 雄一*; 小関 隆久; Jardin, S. C.*
Nuclear Fusion 46(8), p.S645-S651(2006) ; (JAEA-J 01110)

 プラズマ輸送改善と整合したシミュレーションを行い、非誘導電流駆動トカマクにおいて、プラズマ外部から誘導電流を揺動的に印加すると内部輸送障壁の位置と強さの双方を制御できることを示した。内部輸送障壁位置の制御性は、揺動を受ける前の非誘導電流の駆動分布に応じて異なり、LHCDのように広がりを持ち磁気軸から外れた非誘導電流駆動の場合は動き易く、広がりの狭い局所的なECCDの場合は動かないことを明らかにした。また、この磁気シア分布の外部制御によって、高自発電流プラズマでは常に劣化する傾向にある内部輸送障壁の強度を容易に回復・維持できることを示した。


34000969
J-PARC and new era of science
大山 幸夫
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 562(2), p.548-552(2006) ; (JAEA-J 01111)

 日本原子力研究所(原研)と高エネルギー加速器研究機構(KEK)が共同で進めている大強度陽子加速器計画(J-PARC)が2001年4月に着手された。計画は原研の中性子科学計画とKEKの大型ハドロン計画を統合したものである。J-PARC加速器は400MeVリニアック,3GeVの速い繰り返しのシンクロトロンと50GeVのシンクロトロンからなり、実験研究施設は物質生命科学実験施設,ハドロン実験施設,ニュートリノ施設及び核変換実験施設から構成される。第I期では核変換実験施設を除いて建設が進められている。加速器は2007年に200MeVのリニアックで運転を開始し、2008-2010の間に400MeVまで建設する。


34000970
Evaluation of the 3-Gev proton beam profile at the spallation target of the JSNS
明午 伸一郎; 野田 文章*; 石倉 修一*; 二川 正敏; 坂元 眞一; 池田 裕二郎
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 562(2), p.569-572(2006) ; (JAEA-J 01112)

 JSNSでは3GeV陽子ビームが早い繰り返しのシンクロトロン(RCS)から水銀の核破砕中性子ターゲットに輸送される。水銀ターゲット容器におけるピッティングによる損傷を減らすためには、陽子ビームの電流密度のピークを下げることが最も効果的である。本研究では、第一ステップとしてターゲットでのビームプロファイルを評価した。ビームプロファイルはRCS出口の位相空間で決定される。位相空間における分布は、空間電荷効果を考慮したSIMPSONSコードにより計算した。実空間における、プロファイル分布はベータトロン振幅の行列変換により導出した。RCSにビームを入射する場合において、コリレーテッドペインティングよりもアンタイコリレーテッドを用いることによりピーク電流密度が減ることがわかった。


34000971
Advanced design of high-intensity beam transport line in J-PARC
坂元 眞一; 明午 伸一郎; 藤森 寛*; 原田 正英; 今野 力; 春日井 好己; 甲斐 哲也; 三宅 康博*; 池田 裕二郎
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 562(2), p.638-641(2006) ; (JAEA-J 01113)

 大強度陽子加速器施設(J-PARC)の物質・生命科学実験施設は、強力なプローブとして中性子ビームやミューオンビームを提供する実験施設である。それらの2次ビームは、3GeV陽子ビーム輸送ライン(3NBT)を通して供給される大強度陽子ビームにより生成される。大きなエミッタンスを持つ陽子ビームを非常に低いビーム損失率で輸送するために、ビーム光学やそれを実現する機器の設計を実施した。一方で、3NBTには大きなビームロスがある中間標的も設置される。この串刺し標的方式の実現のために、強い放射線で引き起こされるさまざまな問題の対策を考案し設計に反映した。


34000972
Measurements of deuteron-induced activation cross-sections for IFMIF accelerator structural materials
中尾 誠*; 堀 順一*; 落合 謙太郎; 久保田 直義; 佐藤 聡; 山内 通則*; 石岡 典子; 西谷 健夫
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 562(2), p.785-788(2006) ; (JAEA-J 01114)

 スタックフォイル法を用いてアルミ,鉄,銅,タンタル,タングステンの重陽子入射時の放射化断面積の測定を行った。TIARA施設のAVFサイクロトロンで加速された重陽子ビームをこれらの積層した箔に照射した。27Al(d,x)22,24Na, natFe(d,x)55,56Co, natCu(d,x)61Cu, natCu(d,x)62Zn, natTa(d,x)178,180Ta, natW(d,x)181,183Reの放射化断面積を20〜40MeV領域で測定した。これらの断面積を他の実験値及びALICE-Fコードの計算値であるACSELAMライブラリーの値と比較した。


34000973
Correction of X-ray detection yield in micro-PIXE analysis according to sample thickness variation measured by STIM
佐藤 隆博; 酒井 卓郎; 及川 将一*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 249(1-2), p.234-237(2006) ; (JAEA-J 01115)

 本研究の目的STIM分析によって得られた試料の厚さの情報をもとに、micro-PIXE分析における特性X線の発生量を補正することである。試料中で吸収されるX線の量を正確に見積もるためには試料の厚さをμmの精度で正確に測定する必要があるが、それはmicro-PIXE分析のみでは困難である。そこで、われわれはSTIM分析を用い、またそのデータの解析のためのコンピュータシミュレーションコードを開発した。このコードの有用性を確認するために、テスト試料として、細胞のサイズと同じくらいのイオン交換樹脂を用いてSTIM分析とmicro-PIXE分析を行った。その結果、補正前のデータではX線の吸収による間違った分布が見られたが、われわれの解析コードで補正することで、ある程度補正することができた。


34000974
Blister formation in rutile TiO2(100) films by helium irradiation
山本 春也; 永田 晋二*; 武山 昭憲; 吉川 正人
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 249(1-2), p.374-376(2006) ; (JAEA-J 01116)

 二酸化チタン(TiO2)は優れた光触媒材料であるが、薄膜状で光触媒反応を利用する場合には、薄膜表面の微細構造化による触媒反応の活性化が必要とされる。本研究では、ヘリウムなど希ガスを材料表面にイオン照射した場合に形成されるブリスター(膨れ)を利用して薄膜表面の微細構造の形成制御を試みた。今回は、ヘリウムイオンの照射エネルギー(1〜4keV),照射量(1×1016〜2.3×1017ions/cm2)などブリスター形成条件について調べた。実験では、レーザー蒸着法によりα-Al2O3基板上に(100)面に結晶配向したルチル型TiO2膜を作製し、室温でヘリウムイオン照射を行った。走査型電子顕微鏡(SEM),原子間力顕微鏡(AFM)により薄膜の表面構造の観察を行い、また、ラザフォード後方散乱(RBS)により結晶構造評価を行った。その結果、照射エネルギー:2〜4keV,照射量:4×1016ions/cm2以上で直径が約100nm,高さが20nmのブリスターが照射領域に一様に形成することを確認できた。また、照射量に対してブリスターの大きさがほとんど変化しないことがわかった。さらに、照射量が2×1017ions/cm2以上になるとブリスター表面に亀裂が発生することがわかった。


34000975
Electrical conductivity increase of Al-doped ZnO films induced by high-energy-heavy ions
須貝 宏行; 松波 紀明*; 福岡 修*; 左高 正雄; 加藤 輝雄; 岡安 悟; 志村 哲生*; 田沢 真人*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 250(1-2), p.291-294(2006) ; (JAEA-J 01117)

 AlドープZnO(AZO)半導体薄膜は、電気伝導性及び可視光透過性に優れ、低コストで環境負荷の軽い透明電極材料として応用研究が行われている。熱的過程では限界があるAZO薄膜の電気特性向上を試みて、高エネルギー重イオン照射を行った。RFマグネトロンスッパター法により作製したAZO薄膜は、Al/Zn組成比4%,膜厚0.3μmであった。フルーエンス4×1013/cm2まで100MeV Xeイオンを照射すると、電気伝導度は1.5×102から8×102S/cmまで単調に増加した。このような電気伝導度の増加は、100keV Neイオン照射の場合にも観測しているが、100keV Neイオン照射の場合には、フルーエンス3×1016/cm2(深さ0.1μmのレンジ付近で、7dpa)で電気伝導度が最大となった。100MeV Xeイオン照射の場合、フルーエンス4×1013/cm2におけるdpaは0.008となるので、100MeV Xeイオン照射における電気伝導度の増加は、電子励起効果によると考えられる。


34000976
Irradiation effects with 100 MeV Xe ions on optical properties of Al-doped ZnO films
福岡 修*; 松波 紀明*; 田沢 真人*; 志村 哲生*; 左高 正雄; 須貝 宏行; 岡安 悟
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 250(1-2), p.295-299(2006) ; (JAEA-J 01118)

 AlドープZnO(AZO)半導体薄膜は、電気伝導性及び可視光透過性に優れ、低コストで環境負荷の軽い透明電極材料として応用研究が行われている。熱的過程では限界があるAZO薄膜の電気特性向上を試みて、高エネルギー重イオン照射を行い、光学特性の変化を調べた。RFマグネトロンスッパター法により作製したAZO薄膜は、Al/Zn組成比4%,膜厚0.3μmであった。フルーエンス4×1013/cm2までの100MeV Xeイオン照射により、電子励起効果によると考えられる電気伝導度の増加(1.5×102から8×102S/cm)を観測したが、照射前後の吸光度測定及びX線回折測定によると、可視光透過率及び結晶性に大きな変化はなかった。


34000977
Rhemium-186-monoaminemonoamidedithiol-conjugated bisphosphonate derivatives for bone pain palliation
小川 数馬*; 向 高弘*; 荒野 泰*; 大高 章*; 上田 真史*; 上原 知也*; 間賀田 泰寛*; 橋本 和幸; 佐治 英郎*
Nuclear Medicine and Biology 33(4), p.513-520(2006) ; (JAEA-J 01119)

 患者のQOL(生活の質)の向上を目指した癌性骨転移の疼痛緩和薬剤の開発を目指して、二官能性放射性薬剤の概念に基づき、安定な186Re化合物である186Re-MAMA(モノアミンモノアミドジチオール)を骨への集積能を有するビスホスホネート骨格を持つ化合物に導入した新規薬剤を合成し、その特性を調べた。ビスホスホネートの中央炭素に水酸基を有した186Re-MAMA-HBPと、水酸基を持たない186Re-MAMA-BPを合成し、骨の主成分であるハイドロキシアパタイトへの結合親和性及びマウス体内分布を比較検討した。レニウム-186標識MAMA結合ビスホスホネートは、レニウムの還元剤として塩化スズを用い、クエン酸中で186ReO4-とMAMA結合ビスホスホネートを反応させ、逆相HPLCによる精製後、95%以上の放射化学的純度で得られた。186Re-MAMA-HBPは、186Re-MAMA-BPと比べ、インビトロにおいて、より高いハイドロキシアパタイトへの結合親和性を示し、インビボにおいて、より高い大腿骨への放射能集積を示した。したがって、186Re標識ビスホスホネートへの水酸基の導入は、骨集積増加に効果的であると考えられる。これらの結果は、骨指向性放射性治療薬剤のドラッグデザインに有用な指針を示すものである。


34000978
The Characterization of synthetic and natural single crystal diamonds by X-ray diffraction
前田 裕司*; 松本 徳真*; 春名 勝次*; 早乙女 隆雄*; 小野 文久*; 須貝 宏行; 大塚 英男; 大橋 一利*
Physica B; Condensed Matter 376-377, p.283-287(2006) ; (JAEA-J 01120)

 天然及び人工ダイヤモンド単結晶において、主な不純物である窒素の含有量が異なる4種類の試料、Ia型(窒素を約1000ppm含む天然の単結晶),Ib型(窒素を約100ppm含む人工単結晶),IIa型(窒素の量が10ppm以下の高純度人工単結晶),IIb型(含有窒素量は10ppm以下だが、ボロンを100ppm程度含む人工単結晶)について、X線回折によりキャラクタリゼーションを行った。X線ボンド法により求めた格子定数(298K)は、IIb型が最大(0.35670nm)で、Ia型が最小(0.35666nm)となり、その順番は IIb>Ib>IIa>Iaであった。さらに、格子定数測定とX線散漫散乱の結果を総合すると、IIb型ではボロンは置換型の欠陥として(100)面に存在し、Ia型では窒素は置換型の欠陥集合体として(100)面に存在すると推測される。


34000979
Magnetic and orbital fluctuations in filled skutterudites
堀田 貴嗣
Physica B; Condensed Matter 378-380, p.51-53(2006) ; (JAEA-J 01121)

 Prを含む充填スクッテルダイト化合物の低温電子物性を支配するスピン及び軌道揺らぎを明らかにするために、j-j結合描像によって構築された多軌道アンダーソン模型に基づいて多極子感受率を計算した。その結果、低温において、磁気及び四極子揺らぎが支配的となることを見いだした。さらに、ラトリングの効果を動的ヤーンテラーフォノンとして考慮すると、四極子及び八極子揺らぎが低温において顕著に残ることがわかった。これらは軌道揺らぎとなり、エキゾチック超伝導を誘起する可能性がある。


34000980
Fine structure in the quadrupoloar transition of the Ho L3 pre-edge observed by lifetime-broadening-suppressed XANES spectroscopy
林 久史*; 川田 雅輝*; 佐藤 敦*; 宇田川 康夫*; 稲見 俊哉; 石井 賢司; 小笠原 春彦*; 七尾 進*
Physical Review B 72(4), p.045114_1-045114_5(2005) ; (JAEA-J 01122)

 Ho2O3の2p3d共鳴非弾性X線散乱スペクトルをエネルギー分解能0.7eVで測定し、Kramers-Heisenberg形式を基にした式で解析した。内殻ホールの寿命幅(4.26eV)による幅の広がりは完全に抑えられ、位置の不確定さ0.3eVで幅0.5eV以下の鋭い吸収スペクトルが得られた。観測されたピークはよく知られた2p→4f四重極遷移に帰属され、これらは通常強い2p→5d双極子遷移に埋もれている。この手法により4f-5d相互作用をより精密に研究する道が開けたと言える。


34000981
Local spin ordering in the antiferromagnetic as well as paramagnetic LaMnO3 phase revealed by polarized spin-selected 1s→3d absorption spectra
林 久史*; 佐藤 敦*; 安積 智史*; 宇田川 康夫*; 稲見 俊哉; 石井 賢司; Garg, K. B.*
Physical Review B 73(13), p.134405_1-134405_5(2006) ; (JAEA-J 01123)

 スピン選択X線吸収スペクトルの吸収端近傍の構造を単結晶LaMnO3で45K(A型反強磁性相)と273K(常磁性相)で偏光X線を用いて研究した。観測された偏光依存性はスピン保存遷移によって結びつけられたMn 4p軌道と隣接したMnイオンの3d軌道との混成で説明される。温度依存性はほとんど観測されず、転移点よりはるかに上でも短距離スピン秩序が残っていることを示している。バルク磁気特性の結果との明らかな不一致は、X線吸収プロセスが非常に速く、吸収中心のMnイオン近傍の短時間局所構造に敏感と仮定することにより説明される。


34000982
Neutron scattering and magnetization studies of Ba2Cu2.95Co0.05O4Cl2: A Decorated two-dimensional antiferromagnet
Ramazanoglue, M. K.*; Clegg, P. S.*; 脇本 秀一; Birgeneau, R. J.*; 野呂 住子*
Physical Review B 73(5), p.054418_1-054418_6(2006) ; (JAEA-J 01124)

 Ba2Cu3O4Cl2は、2つのCu正方格子が重なったCu2O3面を持ち、それらの互いに異なる正方格子に属するCuスピン間の相関は強くフラストレートしていることが知られている。本研究では、この系のCuの一部をCoに置換した試料の磁気構造を、磁化測定と中性子散乱実験により調べた。結果として、Co置換は2つのCu正方格子各々の振る舞いには大きな変化を与えないものの、2つの正方格子間の相関には強く影響することが明らかとなった。2つの正方格子は各々320Kと30Kで磁気秩序を示すが、それらの中間温度では新たにスピングラスの振る舞いが観測された。ドープされたCoイオンが周りのスピンを面内に歪ませ、ローカルなスピンクラスターを形成し、そのクラスター間のフラストレーションからグラス的な振る舞いを示していると解釈できる。


34000983
α decay of 238Cm and the new isotope 237Cm
浅井 雅人; 塚田 和明; 市川 進一; 阪間 稔*; 羽場 宏光*; 西中 一朗; 永目 諭一郎; 後藤 真一*; 小島 康明*; 大浦 泰嗣*; 柴田 理尋*
Physical Review C 73(6), p.067301_1-067301_4(2006) ; (JAEA-J 01125)

 ガスジェット結合型オンライン同位体分離器を用いて237Cm及び238Cmのα崩壊を研究した。新核種237Cmを初めて同定し、そのα崩壊の遷移エネルギーが6656keVであることを明らかにした。238Cmのα線エネルギーを精度よく再決定し、娘核234Puの第1励起準位へ遷移するα線の観測にも成功した。234Puの第1励起準位のエネルギーは、他のPu同位体のそれに比べてかなり高いことが明らかになった。


34000984
Statics and dynamics of incommensurate spin order in a geometrically frustrated antiferromagnet CdCr2O4
Chung, J.-H.*; 松田 雅昌; Lee, S.-H.*; 加倉井 和久; 植田 浩明*; 佐藤 卓*; 高木 英典*; Hong, K.-P.*; Park, S. K.*
Physical Review Letters 95(24), p.247204_1-247204_4(2005) ; (JAEA-J 01126)

 ACr2O4(A=Mg, Zn, Cd, Hg)はスピネル型構造をしており、正四面体の頂点にあるCr3+モーメント間に幾何学的フラストレーションが存在している。このフラストレーションのために構造と磁性が密接に関連した興味ある性質を示す。CdCr2O4において中性子回折実験を行ったところ、転移温度7.8K以下で波数ベクトルQ=(0, δ, 1) (δ〜0.09)を持つ非整合磁気構造をとることがわかった。また、転移点においてc軸が伸びて、立方晶から正方晶への構造相転移も同時に起こっている。中性子非弾性散乱実験を行うことにより、Cr3+モーメント間の相互作用や磁気異方性に由来したギャップの大きさを見積もった。また、磁気モーメントのc軸方向への整列を一意的に決定した。CdCr2O4と同様の結晶構造を有するZnCr2O4やMgCr2O4では、磁気構造が複雑でありまだ確定されていないが、Crをベースとしたスピネルでは初めてCdCr2O4において詳細な磁気構造を明らかにした。


34000985
Quasi-Kondo phenomenon due to the dynamical Jahn-teller effect
堀田 貴嗣
Physical Review Letters 96(19), p.197201_1-197201_4(2006) ; (JAEA-J 01127)

 動的ヤーンテラーフォノンと結合する軌道縮退アンダーソンモデルに基づいて、非磁性近藤効果の新しい発現機構を提案する。ヤーンテラーフォノンと動的に結合する電子系の基底状態は、二重縮退のあるバイブロニック状態であるが、この縮退は、円錐型特異点まわりの時計回り及び反時計回りの回転自由度に由来する。回転方向を変えるために必要なエネルギーよりも温度を下げると、ついには回転自由度が失われ、log 2のエントロピーが解放される。これが擬似的な近藤効果をもたらすことを数値繰り込み群法によって示す。動的ヤーンテラーフォノンによる非磁性起源の近藤現象と、充填スクッテルダイト化合物におけるラットリングに起因した特異な電子物性との関連を議論する。


34000986
Transverse dynamics and energy tuning of fast electrons generated in sub-relativistic intensity laser pulse interaction with plasmas
森 道昭; 神門 正城; 大東 出; 小瀧 秀行; 林 由紀雄; 山崎 淳; 小倉 浩一; 匂坂 明人; Koga, J. K.; 中島 一久; 大道 博行; Bulanov, S. V.; 木村 豊秋
Physics Letters A 356(2), p.146-151(2006) ; (JAEA-J 01128)

 準相対論的強度における準単色電子線発生について実験的に研究を行った。われわれは、電子加速の実験結果が自己変調領域でのレーザーウェーク場加速の2次元PICシミュレーションの結果で説明されることを見いだした。


34000987
Replica symmetry breaking of the Ising spin glass in the Bethe and cluster approximations
横田 光史
Physics Letters A 356(6), p.439-445(2006) ; (JAEA-J 01129)

 磁場中のイジングスピングラス模型をベーテ近似及びそれに関係するクラスター近似で調べた。レプリカ法を用いて、スピングラス転移温度近傍でのスピングラス秩序関数とAT線を求めた。ベーテ近似での結果は、平均場理論であるSK模型での結果から大きくずれることを示した。


34000988
Effects of ion beam irradiation on the regeneration and morphology of Ficus thunbergii Maxim
高橋 美佐*; Kohama, S.*; 近藤 功明*; 羽方 誠*; 長谷 純宏; 鹿園 直哉; 田中 淳; 森川 弘道*
Plant Biotechnology 22(1), p.63-67(2005) ; (JAEA-J 01130)

 低木性のつる性植物であるヒメイタビの品種改良を行い、大気中の汚染物質を吸収,浄化することを最終目標として、イオンビームによる生物効果を調べた。茎頂切片の無菌培養体に炭素イオン,ヘリウムイオンを10Gyから200Gy照射した。照射後、培養体を再分化させたところ、形態変異が15-20%観察された。そのうち、炭素イオン20Gy照射したものでは、葉のふちなどに斑入りの変異が観察された。斑入りの変異は、生理異常や遺伝的なものなど、さまざまな原因から起こるため、斑入り部分を再度培養し、再分化させたところ、同様の斑入りが見られたことから、イオンビームによって遺伝的な斑入り突然変異体が誘発されることが初めて明らかになった。


34000989
Klavier(klv), a novel hypernodulation mutant of Lotus japonicus affected in vascular tissue organization and floral induction
吉良 恵利佳*; 舘野 久美子*; 三浦 謹一郎*; 芳賀 達也*; 林 正紀*; 原田 久也*; 佐藤 修正*; 田畑 哲之*; 鹿園 直哉; 田中 淳; 渡辺 雄一郎*; 福原 いずみ*; 長田 敏行*; 川口 正代司*
Plant Journal 44(3), p.505-515(2005) ; (JAEA-J 01131)

 300Gyのヘリウムイオンビーム照射によって高根粒形成能力を持つ新規のミヤコグザの突然変異体Klavier(klv)が得られた。ミヤコグザでは、根粒形成が減少する突然変異体は多く得られるが、本突然変異体のように、根粒形成が増進されるのは非常に稀である。klv突然変異体は、根の周りに小さな根粒を非常に多数形成するばかりでなく、葉脈の形成に異常が観察され、また花期が遅れる特徴を持ち、さらに矮化変異を伴っていた。しかしながら、染色体マッピングにより、klv遺伝子の同定を試みたところ、第一染色体の長腕の0.29cM以内の位置にマップできることがわかり、単一で劣性の遺伝子であることがわかった。このことから、根粒形成と維管束や花器形成には何らかの関連があることが示唆された。


34000990
Characterization of Type-I ELMs in tangential co-, balanced- and counter-plus perpendicular NBI heated plasmas on JT-60U
神谷 健作; 浦野 創; 小出 芳彦; 滝塚 知典; 大山 直幸; 鎌田 裕; JT-60チーム
Plasma Physics and Controlled Fusion 48(5A), p.A131-A139(2006) ; (JAEA-J 01132)

 Type-I ELMsの特性に対するプラズマ回転と高速イオンのリップルロスの影響に関して、JT-60Uにおける接線及び垂直NBIの組合せとプラズマ体積を系統的に変化させることで調べた。反電流方向NBIにてELMによるエネルギー損失割合が小さくなり、周波数は早くなることが確認された。さらに、ELMのパワーはプラズマ体積の増加とともに小さくなることが見いだされ、このことはELM間の輸送が高速イオンの損失の増大に伴い、増加することを示唆する。


34000991
Observations of the collapse and recovery of the temperature pedestal using diagnostics with the fast temporal resolution in JT-60U
吉田 麻衣子; 小林 進二*; 浦野 創; 大山 直幸; 小出 芳彦; 坂本 宜照; 竹永 秀信; 鎌田 裕; JT-60チーム
Plasma Physics and Controlled Fusion 48(5A), p.A209-A215(2006) ; (JAEA-J 01133)

 本講演では、JT-60における高時間分解能計測器を用いた周辺輸送障壁の崩壊と回復について最新の研究成果を報告する。Hモードプラズマ周辺部で観測されるEdge Localized Mode(ELM)は閉じ込め性能を決定するばかりでなく、ダイバータ板に大きな熱・粒子の負荷を与える。このためELMのダイナミクスの解明やELMにより放出されるエネルギーを評価することは、国際熱核融合実験炉(ITER)等次期装置のための重要な研究課題となっている。本研究の目的は、ELMによる周辺輸送障壁の崩壊と回復のダイナミクスの解明とELMにより放出されるエネルギーの依存性を調べることである。JT-60Uにおいて高時間分解能を有するさまざまな計測器を用い、ELM前後のプラズマ周辺部の各パラメータの計測を行った。この結果、ELM発生時にペデスタル領域での密度と温度は一旦減少し、トロイダル回転速度はELMのバーストの瞬間にプラズマ電流方向に変化し密度や温度より速くもとのレベルに戻っていることを見いだした。また、外部モーメンタム入力によりELMにより放出されるエネルギーが変わった内訳として、温度崩壊量の変化による影響が大きいと思われる結果が得られた。


34000992
The Impact of statistical models on scalings derived from multi-machine H-mode threshold experiments
McDonald, D. C.*; Meakins, A. J.*; Svensson, J.*; Kirk, A.*; Andrew, Y.*; Cordey, J. G.*; 滝塚 知典; ITPA Hモード閾値データベースワーキンググループ
Plasma Physics and Controlled Fusion 48(5A), p.A439-A447(2006) ; (JAEA-J 01134)

 国際閾値データベースをもとにして、通常最小二乗対数線形回帰法(OLS),変数内誤差対数線形通常回帰法及び最尤法からHモードパワー閾値の推定を行った。chi二乗解析によれば、3統計モデルはいずれもこれらのデータを完全に矛盾なく説明することはできない。この事実は、物理的及び統計的にさらに洗練されたモデルが必要なことを示唆している。ITERのパラメータにおける閾値について、最尤法では38.4MWが予測され、OLS法では31.1MWが予測される。


34000993
Neutron scattering investigation on quantum spin system SrCu2(BO3)2
加倉井 和久; 温井 克行*; 阿曽 尚文*; 西 正和*; 門脇 広明*; 陰山 洋*; 上田 寛*; Regnault, L.-P.*; C'epas, O.*
Progress of Theoretical Physics Supplement (159), p.22-32(2005) ; (JAEA-J 01135)

 二次元S=1/2Shastry-Sutherland系SrCu2(BO3)2の熱中性子及び冷中性子散乱実験のレビュー。中性子散乱による3meVのギャップを持つ第一励起、4から7meVのエネルギー領域で2トリプレット束縛励起状態、13meVまでの高次束縛励起状態の観測により、直交ダイマー系特有な励起状態を明らかにした。


34000994
Neutron diffraction investigation of the metamagnetic transition in Y2Cu2O5
Lebech, B.*; 松岡 有希*; 加倉井 和久; 本河 光博*
Progress of Theoretical Physics Supplement (159), p.222-227(2005) ; (JAEA-J 01136)

 Bc1=2.8T及びBc2=4.7TでCu系にはめずらしいメタ磁性転移を示すY2Cu2O5の10Tまでの場中中性子回折実験を行った。Bc1<B<Bc2でb軸方向へ格子の3倍周期を持つ磁気秩序が観測された。また反強磁性転移温度の磁場依存性も明らかにした。


34000995
Chemical abundances in the secondary star of the black hole binary V4641 Sagittarii (SAX J1819.3-2525)
定金 晃三*; 新井 彰*; 青木 和光*; 有本 信雄*; 比田井 昌英*; 大西 高司*; 田実 晃人*; Beers, T. C.*; 岩本 信之; 冨永 望*; 梅田 秀之*; 前田 啓一*; 野本 憲一*
Publications of the Astronomical Society of Japan 58(3), p.595-604(2006) ; (JAEA-J 01137)

 ブラックホール連星にある伴星V4641 Sgrについて分光観測を行い、10元素についてその存在比を得た。その結果、NとNaが太陽と比べて、それぞれ0.8dex程度過剰であることを見いだした。また、他の元素(C, O, Mg, Al, Si, Ti, Cr, Fe)を二つの典型的な晩期型B型星と比べた結果、それらの星の組成比の間には顕著な違いがなく、太陽組成と同じであった。V4641 Sgrで観測された組成を説明するようなモデルを構築した結果、ブラックホールの親星の最期に起きた超新星は、Ni-56を放出しない暗いタイプものであったという示唆を得た。


34000996
Dose calculation system for remotely supporting radiotherapy
斎藤 公明; 国枝 悦夫*; 成田 雄一郎*; 木村 英雄; 平井 正明*; Deloar, H. M.*; 金子 勝太郎*; 尾嵜 真浩*; 藤崎 達也*; 明上山 温*; 齋藤 秀敏*
Radiation Protection Dosimetry 116(1-4), p.190-195(2005) ; (JAEA-J 01138)

 光子・電子を利用した放射線治療を支援するために、患者体内の正確な線量分布を計算するためのコードシステムを開発している。このシステムでは高度人体モデル,詳細加速器ヘッドモデルとモンテカルロ計算を利用してリアリスティックな計算を行うことを目指している。線量計算センターに設置したITBL計算機上で計算を実施し、ネットワークを介して関連したデータの送受信を行う。日本で多数行われている現行の治療の品質保証を支援するとともに、先端的治療へ適用することも計画されている。研究開発プロジェクトは2003年の11月に5年計画でスタートした。システムの基本的な構成部分はすでにできあがっており、これを用いて患者の体内と体外の放射線場の特徴が明らかにされてきた。この基礎研究の成果に基づいて最終システムのデザイン,構築が行われる。


34000997
Adsorption of oxygen on Si(001) surfaces studied by reflection high-energy positron diffraction
林 和彦; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
e-Journal of Surface Science and Nanotechnology (Internet) 4, p.510-513(2006) ; (JAEA-J 01140)

 Si(001)表面上の酸素吸着の初期過程は未だに不明な点が多い。特に酸素原子の吸着位置について実験的に詳細に調べた研究は少ない。そこで、本研究では、110KにおけるSi(001)表面上の酸素の吸着位置を、最表面の構造に敏感な反射高速陽電子回折(RHEPD)を用いて調べた。まず、110KのSi(001)表面に酸素分子ガスを吸着した時の、全反射の鏡面反射強度の変化を調べた。鏡面反射強度は、酸素の暴露量とともに減少し、約4Lで一定値になった。次に、110KのSi(001)表面に酸素分子ガスを0.1L, 1.2L, 4.1L暴露した後、RHEPDの鏡面反射強度の視斜角依存性(ロッキング曲線)を測定した。酸素の暴露量が増えると、全反射と004ブラック反射のピーク強度が減少した。この実験結果を、動力学的回折理論を用いて解析した。その結果、酸素は最表面及びダイマーのバックボンド位置に存在することが明らかになった。酸素が最表面に位置する結果は、陽電子消滅励起オージェ電子分光法による実験の報告と一致している。また、ダイマーのバックボンド位置に存在する結果は、光電子分光法による実験の報告と一致している。


34000998
幌延深地層研究計画における地下研究坑道の概要と支保設計
尾留川 剛; 森岡 宏之; 山上 光憲; 村川 史朗*
電力土木 (324), p.82-86(2006) ; (JAEA-J 01141)

 日本原子力研究開発機構は、北海道幌延町において、高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する研究開発を行う場として、深度約500mまでの地下研究坑道の掘削工事に着手している。地質は新第三紀の堆積軟岩に属し、地山強度比の低い条件下での坑道掘削工事となる。坑道の設計においては、軟岩でありながら割れ目に起因する不連続体的挙動を示す可能性が確認されたため、これを反映した地山区分及び岩盤物性値の設定を行い、地山強度比の低い箇所では二重支保構造を採用することで、支保設計の合理化を図った。


34000999
JAEA原子力科学研究所環境放射線監視システムの開発
武原 一記*; 佐々 陽一; 関田 勉
FAPIG (173), p.21-29(2006) ; (JAEA-J 01142)

 日本原子力研究開発機構(JAEA)東海研究開発センター原子力科学研究所では、法令等に則り、原子力施設周辺環境の放射線測定及び気象観測,測定結果の集計・分析と、データの記録・保管及び関係機関等への報告を行っている。2005年度に環境放射線監視業務の信頼性向上と業務効率化を目的に、環境放射線監視システムの更新を実施し、新装置を2006年3月より本稼動させている。本稿では、新環境放射線監視システムの特徴や機能について紹介する。


34001000
量子たちの覚醒; 量子ビームテクノロジーの基礎と最近の動き
岡田 漱平
原子力eye 52(8), p.28-33(2006) ; (JAEA-J 01143)

 量子ビームの特性についてわかりやすく解説し、多面的に展開されている最近の量子ビームテクノロジーの研究開発と今後の広がりについて紹介する。


34001001
生物の放射線耐性と進化
渡辺 宏*; 鳴海 一成; 菊地 正博; 小林 泰彦
放射線 31(3), p.191-202(2005) ; (JAEA-J 01144)

 生物の放射線耐性は、生物の種に依存して大きく異なる。放射線に強いことが知られている芽胞を形成しないが、放射線に著しく耐性を示す細菌群が知られており、これらは、土壌や環境廃棄物など、地球のさまざまな場所に生息している。代表的な放射線抵抗性細菌であるデイノコッカス・ラジオデュランスは、電離放射線や他のさまざまなDNA変異原による致死効果及び変異誘発効果に対して極端に耐性を示すが、これは著しく効率的なDNA修復能力に起因している。最近の分子生物学的研究により、デイノコッカス・ラジオデュランスのゲノムは、DNA修復に関与する新規の遺伝子を持っていることが明らかにされている。一方、超好熱古細菌の一群にも、電離放射線に著しく耐性を示すものが存在するという知見が蓄積されている。この論文では、進化的な見地から生物の放射線耐性についてを議論する。


34001002
HTTRにおける制御棒引抜き試験解析及び炉心定数; 原子炉出力30〜60%
高松 邦吉; 中川 繁昭; 武田 哲明
日本原子力学会和文論文誌 5(2), p.81-95(2006) ; (JAEA-J 01146)

 高温工学試験研究炉(HTTR)において、反応度投入事象を模擬した制御棒引抜き試験を実施し、原子炉出力の制御が行われなくても、負の反応度フィードバック特性のみにより原子炉出力の過度な上昇が抑制され、原子炉が安定な状態に落ち着くことを確認した。本論文では、動特性解析の精度を向上させるために、解析モデルの改良等を行い、HTTR炉心の特徴,濃縮度の異なる燃料体の配分,炉心軸方向の温度差等に着目して、炉心を多領域に分割する詳細モデルを開発し、1点炉近似を用いた解析手法の高度化を試みた。また、日本で初めての高温ガス炉であるHTTRで取得された貴重な試験データを公開するとともに、原子炉初期出力60%(18MW)の安全性実証試験についてまとめた。さらに高温ガス炉の炉定数として炉心の熱的時定数及び断熱加熱率を求めた。


34001003
強い重力場下におけるIn-Pb合金中の構成原子の沈降; 実験及びシミュレーション
小野 正雄; 木下 貴博*; Huang, X. S.*; 井口 裕介*; 岡安 悟; 真下 茂*
日本金属学会誌 70(6), p.511-516(2006) ; (JAEA-J 01147)

 超重力場下における原子の沈降現象を調べるためにIn-Pb固溶系合金(In:Pb=80:20at%)について超重力場実験を行った(最大加速度:100万Gレベル,温度:融点直下(固体),出発試料:中間相のα相単相(面心正方晶,c0/a0>1),時間:30-150h)。時間の条件のみを変えた複数の実験から濃度変化の時間依存性を調べた。これにより時間の経過に伴い組成が変化し60時間以下でほぼ定常状態に達したことがわかった。また、原子の沈降プロセスのシミュレーションから、沈降の拡散係数は一般的な拡散の拡散係数の8倍程度になると見積もられた。また、60時間で定常状態に達したと考えた場合はシミュレーションから見積もられる沈降の拡散係数は10-11m2/sオーダーとなった。実験中の試料は固体であるにもかかわらずこの拡散係数は液体金属の拡散係数と同等であることから、この系の沈降の拡散メカニズムは地上の重力場下での拡散と異なるメカニズムになっている可能性が示唆された。


34001004
ひずみスキャニング法によるオーステナイト系ステンレス鋼の応力測定 
菖蒲 敬久; 水木 純一郎; 鈴木 賢治*; 鈴木 裕士; 秋庭 義明; 田中 啓介*
材料 55(7), p.647-653(2006) ; (JAEA-J 01149)

 ひずみスキャニング法をオーステナイト系ステンレス鋼のような粗大粒や集合組織を持つ材料に適応できるように手法開発を行った。質の良いデータを得るための条件,X線照射体積内に10000個以上の結晶、を満たすために試料にさまざまな揺動を施した。その結果、回転揺動では十分な結果を得ることはできなかったが、並進揺動を与えることで前述の条件を満たし、質の良いデータを得ることに成功した。


34001005
ISプロセス装置材料の高温硫酸中での耐食性; Alloy 800, Alloy 600, SUSXM15J1, SiCの耐食性
田中 伸幸; 小貫 薫; 清水 三郎; 山口 明久*
材料と環境 55(7), p.320-324(2006) ; (JAEA-J 01150)

 熱化学水素製造法ISプロセスの硫酸環境用耐食性装置材料選定の一環として、スクリーニング試験で良好な耐食性を示した材料について、おもに溶接部及び隙間部に関する最長1000時間の腐食試験を行った。850℃の硫酸分解環境では、Alloy 800及びAlloy 600の溶接部は母材と同等の優れた耐食性を示した。95wt%硫酸沸騰環境では、SiCが耐食性に優れ、隙間部においても腐食はほとんど認められなかった。


34001006
Extraction separation of Am(III) and Eu(III) with TPEN isomers and decanoic acid
松村 達郎; 竹下 健二*
ACS Symposium Series, 933 , p.261-273(2006) ; (JAEA-J 01151)

 TPENのピリジル基の結合位置が異なる3種の異性体、t2pen, t3pen, t4penを合成し、これらと脂肪酸の一種であるデカン酸との協同抽出によるAm(III)とEu(III)の分離を試みた。これら3種の異性体は、水溶液中での、水素イオン,金属イオンとの錯形成に関する挙動は非常に似ているが、AmとEuの抽出挙動はまったく異なることが明らかとなった。t2penのみがデカン酸との協同抽出によりAmを抽出可能であり、Euとの分離係数は100であった。他の2種類の異性体は、抽出能力が非常に低くAmとEuの分離は観察されなかった。ピリジル基の窒素ドナーが骨格のN-C-C-N構造に近接しているt2penのみが、Amを分離可能であった。


34001007
Relation between high ionic conductivity and boson peak in superionic glass
新井 正敏; 岩瀬 裕希; 中村 充孝; 大友 季哉*; Kartini, E.*; 伊藤 恵司*; Levett S. J.*; Bennington, S. M.*
AIP Conference Proceedings 832 , p.299-302(2006) ; (JAEA-J 01152)

 (AgI)x(Ag2S)x(AgPO3)1-2x系の超イオン伝導体ガラスについて非弾性中性子散乱実験を行い、ボゾンピークと呼ばれる3meV付近の過剰な振動状態密度が塩の添加濃度とともに増加することを見いだした。さらに、ボゾンピーク強度の組成依存性は直流イオン伝導度と系統的に相関していることもわかった。これらの現象について、塩を添加したことによるネットワーク構造の広がり、つまり自由体積の観点から議論を行った。


34001008
Unique vibrational excitations in superionic conducting glass
中村 充孝; 新井 正敏; Kartini, E.*; Taylor, J. W.*; Russina, M.*
AIP Conference Proceedings 832 , p.504-507(2006) ; (JAEA-J 01153)

 超イオン伝導体ガラス(AgI)0.33(Ag2S)0.33(AgPO3)0.34と(AgI)0.5(AGPO3)0.5は室温でσ〜10-2S/cmにも及ぶ高いイオン伝導度を有する。非弾性中性子散乱測定により、超イオン伝導体ガラスがドープしていない絶縁体ガラス(AgPO3)に比べて、より大きな強度を低エネルギー領域で示すことが明らかになった。低エネルギー領域でのQ依存性を調べることにより、超イオン伝導体ガラスでは、Q=1.8Å -1以上の領域で過剰な強度を持ち、2.2Å -1付近にピークを示すことを見いだした。これらの現象は銀系の超イオン伝導体ガラスの普遍的な特徴である。われわれはAg-Agの動的相関が連続的なホッピング過程を促進し、その結果として高いイオン伝導を引き起こすと考えた。


34001009
Explosive nucleosynthesis in different Ye conditions
岩本 信之; 梅田 秀之*; 野本 憲一*; 冨永 望*; Thielemann, F. K.*; Hix, W. R.*
AIP Conference Proceedings 847 , p.409-411(2006) ; (JAEA-J 01154)

 金属欠乏星の組成分布は超新星モデルにより全体的にはよく再現されているが、ScやKに対してはモデルによる合成量が少なすぎるために問題となっていた。しかし、最近の超新星シミュレーションによれば、中心に近い放出物質は大量のニュートリノ放射を受けるために、その物質本来のYe(核子1個あたりの電子数)から大きく変化しYe>0.5を超えることもあることが報告された。そして、この環境における爆発的元素合成では、ScやZnが多く作られることが示された。われわれは種族IIIの超新星において爆発的Si燃焼が起こる領域のYeを0.48〜0.58まで変化させて元素合成計算を行った。この結果を使ってSc, K, Znなどの合成量のYe依存性を議論し、金属欠乏星で観測された組成分布と比較した。


34001010
The p-process in the carbon deflagration model for type Ia supernovae and chronology of the solar system formation
日下部 元彦*; 岩本 信之; 野本 憲一*
AIP Conference Proceedings 847 , p.424-426(2006) ; (JAEA-J 01155)

 炭素爆燃型超新星爆発モデルで合成された短寿命放射性核種(53Mn, 92Nb, 97Tc、そして146Sm)による原子核年代測定法を利用して、太陽系形成の年代学を行っている。われわれはp-過程元素合成の結果を銀河の化学進化モデルへ適用することにより、太陽系形成環境について議論した。


34001011
Neutron-capture nucleosynthesis in the He-flash convective zone in extremely metal-poor stars
西村 高徳*; 岩本 信之; 須田 拓馬*; 合川 正幸*; 藤本 正行*; Iben, I. Jr.*
AIP Conference Proceedings 847 , p.455-457(2006) ; (JAEA-J 01156)

 われわれは小中質量,金属欠乏星でのヘリウムシェルフラッシュ現象に伴って発生した対流層内における元素合成を調べた。この対流はヘリウム層内で発生し、その上部に位置する水素層の方へと広がっていく。対流層が水素層に到達すると陽子がヘリウム燃焼殻へ運ばれ、豊富に存在する12Cに捕獲される。その結果、13Cが大量に合成される。このようにして合成される13Cの量の変化は、対流層内で起こる元素合成の結果に大きな影響を与える。初期に12Cよりも重い原子核がない状況下でも、合成された13Cが十分存在すると、二つの中性子循環反応(12C(n,γ)13C(α,n)16Oと16O(n,γ)17O(α,n)20Ne)を通じてNe, Na, Mg, Alなどの比較的軽い核が形成される。さらに、これらの核を種として中性子捕獲反応が進むことにより、鉄族元素よりも重いSrやBa、そしてPbまでの元素も合成されることを示した。


34001012
Neptunium
吉田 善行; Johnson, S. G.*; 木村 貴海; Krsul, J. R.*
Chemistry of the Actinide and Transactinide Elements, Vol.2 , p.699-812(2006) ; (JAEA-J 01157)

 1957年に初版、1986年に第2版が出版された"The Chemistry of the Actinide Elements"の第3版として、"The Chemistry of the Actinide and Transactinide Elements"が出版される。全31章から構成される本書の第6章ネプツニウムを担当した。核的性質,同位体の製造,分離・精製,金属と化合物,溶液化学,錯体化学,分析化学,分光技術などについて詳述した。


34001013
Hydrogen and hydration in proteins and nucleic acids; Neutron diffraction from bio-macromolecules at JAERI
新村 信雄; 新井 栄揮; 栗原 和男; 茶竹 俊行*; 田中 伊知朗*; Bau, R.*
Hydrogen- and Hydration-Sensitive Structural Biology , p.17-35(2005) ; (JAEA-J 01158)

 原研において、われわれは生体高分子のための幾つかの高分解能中性子回折計(BIX-type回折計)を建設した。この論文では、BIX-type回折計で得られた、蛋白質中の水素位置及び水和に関する幾つかの興味深い結果について再考する。中性子蛋白質結晶学の一般的な話題が著者らによって再考され、選ばれた幾つかのトピックスが議論される。


34001014
A Method to quantitate photosynthetic rate constant within leaf using Carbon-11-labeled carbon dioxide and positron emitting tracer imaging system
河地 有木; 阪本 浩一*; 石井 里美; 藤巻 秀; 鈴井 伸郎; 石岡 典子; 松橋 信平
Nuclear Science Symposium Conference Record, 2005 IEEE, Vol.5 , p.2908-2911(2005) ; (JAEA-J 01159)

 植物の光合成機能の環境応答を生体組織・器官レベルで解明することは、農学的に重要であるだけでなく、植物生理学における栄養素収支の理解のためにも重要である。これまでに、Positron Emitting Tracer Imaging System(PETIS)を用いた炭素動態の可視化に成功しており、光合成産物の輸送・分配の詳細かつ定量的な解析が可能にした。本研究ではさらに輸送元である葉に注目し、葉における11Cの動態を解析することで、光合成における主要プロセスである二酸化炭素固定及び光合成産物送り出しについてそれぞれ速度及び送り出し率の定量を行う。供試植物葉に11C標識二酸化炭素を供給し、光合成の各プロセスにおける炭素動態を撮像、さらに構築した生理モデルに基づき動態解析を行った。モデルの構築には2コンパートメントモデルを適用し、同一個体を用いて光強度環境を変化させ計4回の繰り返し実験を行った。本解析法によって各光環境下における二酸化炭素固定速度及び光合成産物送り出し率が定量できることを明らかにし、光環境に対して固定速度は単調に増加するが、光合成産物の送り出しには影響が少ないことがわかった。二酸化炭素固定速度からは葉内組織のガス拡散抵抗を、光合成産物送り出し率からは栄養素生産機能を議論した。


34001015
Comprehensive study on layout dependence of soft errors in CMOS latch circuits and its scaling trend for 65 nm technology node and beyond
福井 大伸*; 濱口 雅史*; 吉村 尚夫*; 親松 尚人*; 松岡 史倫*; 野口 達夫*; 平尾 敏雄; 阿部 浩之; 小野田 忍; 山川 猛; 若狭 剛史; 神谷 富裕
Proceedings of 2005 Symposia on VLSI Technology and Circuits , p.222-223(2005) ; (JAEA-J 01160)

 65nmノードのCMOSラッチ回路に対しプロトンビームによるソフトエラー加速試験を初めて行い、ソフトエラーレート(SER)のレイアウト依存性を明らかにした。臨界電荷量と電荷収集過程は拡散層サイズに強く依存するため、SERもそれらに対し依存する。拡散層サイズの最適化によりSERを70パーセント減少できることを見いだした。スケーリングの変化とSER劣化との関係において、電源電圧を高くすることでSERの増加を緩和し、劣化を抑制できることがわかった。


34001016
The Role of the engineered barrier system in safety cases for geological radioactive waste repositories: a Nuclear Energy Agency (NEA) initiative in co-operation with the European Commission (EC) process issues and modelling
Bennett, D. G.*; Hooper, A. J.*; Voinis, S.*; 梅木 博之; Van Luik, A.*; Alonso, J.*
Proceedings of 2006 International High-Level Radioactive Waste Management Conference , p.669-676(2006) ; (JAEA-J 01161)

 欧州共同体(EC)の協力の下、経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)の放射性物質管理委員会(RWMC)に設置されている「セーフティケース統合グループ(IGSC)」では、人工バリアの設計,施工,試験,モデル化及び性能の評価に向け、どのように必要となる統合化を図って行くかについて理解をより促進することを目的とした「人工バリア(EBS)プロジェクト」を実施している。また本プロジェクトでは処分場全体の性能を確かなものとするうえで人工バリアが果たす役割を明らかにすることも対象としている。本プロジェクトの枠組みは一連のワークショップによって構成され、そこでは人工バリアの設計や性能評価及び最適化に必要な幅広い作業に関する議論が行われるとともに、セーフティケース作成に向けた情報の集約が行われる。これらワークショップでは、人工バリアの設計と最適化のプロセスからなる一つのサイクルを主な視点に議題が設定される。本論文では、EBSプロジェクトの主要な成果を幅広い関係者に伝えることを目的とし、ワークショップで取り上げられた「課題とすべきプロセス」と「モデル化の役割」という2つの議題に焦点を当てている。


34001017
Present status of PSA methodology development for MOX fuel fabrication facilities
玉置 等史; 濱口 義兼; 吉田 一雄; 村松 健
Proceedings of International Conference on Nuclear Energy System for Future Generation and Global Sustainability (GLOBAL 2005) (CD-ROM) , 6p.(2005) ; (JAEA-J 01162)

 原研では、MOX燃料加工施設に適用できる確率論的安全評価手順の開発を行っている。この手順は4つの手順で構成され、第1ステップであるハザード分析は、この手順を特徴付けるものであり、残りのステップは原子炉施設のレベル1,レベル2PSAに対応する。本報告の主であるハザード分析では、機能レベルでの故障モード影響解析(FMEA)手法を用いて可能性のある事故原因の候補(異常事象候補)を抜け落ちなく抽出し、抽出した異常事象候補の発生頻度及び事故影響を概略的に評価し、これら2軸で表現される選別用リスクマトリクスを用いてリスク上有意な寄与を与える異常事象を選別する。異常事象候補の発生頻度評価のうち、臨界事象については、管理の逸脱が直ちに臨界に至ることはないため、サクセスクライテリアの把握が必要である。また、臨界管理のためにコンピュータ化されたシステムが導入されつつあり、これらの信頼性の評価が課題であった。そこで、臨界計算によりサクセスクライテリアを求め、逸脱にかかわる管理システムの故障モード分析の結果をもとに、発生頻度を評価する方法を提案した。これらの方法を用いて仮想的に設定したモデルプラントを対象に分析を実施しその有用性を確認した。


34001018
Hazard analysis approach with functional FMEA in PSA procedure for MOX fuel fabrication facility
玉置 等史; 吉田 一雄; 渡邉 憲夫; 村松 健
Proceedings of International Topical Meeting on Probabilistic Safety Analysis (PSA '05) (CD-ROM) , 11p.(2005) ; (JAEA-J 01163)

 原子力機構では、MOX燃料加工施設に適用できる確率論的安全評価手順の開発を行っている。この第一段階のハザード分析として、機能レベルでの故障モード影響解析(FMEA)手法を用いて可能性のある事故原因の候補(異常事象候補)を抜け落ちなく抽出し、次に抽出した異常事象候補から事故シナリオにリスク上有為な寄与を与える異常事象を選別するために異常事象候補が原因で想定される事故の発生頻度及び事故影響を概略的に評価し、選別用リスクマトリクスを用いて相対的なリスクの比較をもとに選別する方法を提案した。機能レベルでのFMEA手法は、工程を構成する設備・機器の機能の喪失に着目しその影響を解析する方法で、詳細な機器情報に依存せずに実施できる特徴を持つ。この方法を用いて仮想的に設定したモデルプラントを対象に分析を実施しその有用性を確認した。


34001019
Alternative repository design concepts for HLW disposal; Challenges and initiatives
増田 純男*; 河村 秀紀*; McKinley, I. G.*; 北山 一美*; 梅木 博之
Proceedings of Radioactive Waste Management; The Next Step: Confidence, Safety and Implementation , 8p.(2006) ; (JAEA-J 01164)

 地層処分の標準となる設計概念の多くは数十年前に産み出され、その後ほとんど変化していない。代替処分概念への関心は、技術的及び社会的双方の境界条件の変化に対応するという観点で、特に放射能レベルが高く長半減期の放射性廃棄物処分に対して高まる傾向にある。このことは、とくに原子力発電環境整備機構が進めている公募方式によるサイト選定プロセスを選択した日本の場合にあてはまる。原子力発電環境整備機構では、応募自治体のサイト環境特性の特徴と自治体からの要望を満たすよう柔軟な設計手法を採用することにより、処分場建設の可能性の幅を拡げるための代替処分概念の検討を行っている。もっと大きな意味では、21世紀においては、国内のみならず世界規模で将来の原子力利用に向けた課題解決が期待されている。処分事業は数十年以上にもわたって継続することから、こうした将来の原子力利用に関する不確実性に対しても配慮しておくことが重要である。


34001020
Analysis of the emission sectrum of Xe and Sn
佐々木 明; 西原 功修*; 砂原 淳*; 西川 亘*; 小池 文博*; 香川 貴司*; 田沼 肇*
Proceedings of SPIE's International Symposium on Microlithography, Vol.6151 , p.61513W_1-61513W_8(2006) ; (JAEA-J 01165)

 EUV光源用Xe, Snプラズマの原子過程の解析を行った。実験と輻射流体シミュレーションによるEUV発光スペクトルの比較を行い、主要な発光線の波長の精度が、実験結果を再現するために重要なことを示した。13.5nm帯における発光に最も重要な各価数のイオンの4d-4f共鳴線については、電荷交換分光法によって波長を正確に測定し、それによって原子データの改良を行った。サテライト線については、CI(配置混合)を考慮して波長と分布を求めるようにした。EUV波長領域でのスペクトルの形状とそのプラズマ温度,密度,光学的厚さによる変化について検討し、その効率に対する効果について考察した。


34001021
幌延深地層研究計画における地下研究坑道の耐震性能照査
尾留川 剛; 森岡 宏之; 西山 誠治*
第41回地盤工学研究発表会発表講演集 , p.1739-1740(2006) ; (JAEA-J 01169)

 日本原子力研究開発機構では、北海道幌延町において、高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する研究開発の一環として地下研究坑道の建設を開始した。施設は、深度500m程度の立坑3本と試験研究用の水平坑道からなる。耐震性能照査では、近隣の地震環境を考慮した設計地震力を定めた。立坑は、全体3次元モデルによる応答震度法で検討した結果、地表付近では、掘削解析で定まる支保仕様のうち覆工コンクリート強度を増加すれば耐震性能を満たすことがわかった。水平坑道は2次元、立坑・水平坑道の連接部・交差部は3次元モデルの部分モデルによる応答震度法で検討し、それぞれ掘削解析で定まる支保仕様で耐震安全性を満たすことを確認した。


34001022
新第三紀珪質岩の風化特性に関する実験的検討
松井 裕哉; 青柳 茂男; 宮野前 俊一*
第41回地盤工学研究発表会発表講演集 , p.495-496(2006) ; (JAEA-J 01170)

 本試験は、日本原子力研究開発機構(旧核燃料サイクル開発機構)が北海道幌延町において実施中の地下施設建設を伴うプロジェクトの一環として実施した。幌延地域に分布する新第三紀珪質岩は工学的には軟岩に分類されるため、本試験では対象岩石の膨潤特性などを調べることを主眼とした。具体的には、膨潤性(短期的な影響)と空洞掘削後に発生する可能性のある乾燥の影響(長期的な影響)に着目しスレーキング試験,含水比測定,弾性波速度測定,簡易反発硬度試験などを実施した。その結果、幌延地域に分布する珪質岩には膨張性は見られないこと、数日の乾燥に伴い岩石物性の劣化が見られることなどの知見が得られた。


34001023
塩水環境下に分布する新第三紀珪質岩の強度変形特性
丹生屋 純夫; 松井 裕哉
第41回地盤工学研究発表会発表講演集 , p.497-498(2006) ; (JAEA-J 01171)

 地下水の水質が地盤を構成している堆積岩の強度変形特性に与える影響を把握する目的で、珪藻質泥岩と硬質頁岩の異なる2地層より選定した岩石試料を、採取箇所から得られた塩水系地下水と近傍井戸から得られた淡水によってそれぞれ飽和養生させた後、物理測定・力学試験を実施した。通常の自然含水状態の試料で実施した試験結果と比較すると、井戸水で飽和養生した試料で得られた強度はほぼ同等かわずかに大きな強度を示す結果となった。一方、塩水系地下水で養生飽和した試料は、自然状態の試料による試験結果の1.5倍程度の強度を示した。今回の結果より、コア採取後、自然含水状態のまま力学試験に臨むと、現地周辺の地下水を用いて飽和養生することによって得られる結果よりも低い評価の出る可能性が示唆された。したがって、自然状態か一般水などの養生で実施した力学試験結果を地下構造物の設計定数に用いると、安全側で評価されることが予想された。


34001024
調査段階の進展に伴う水理地質モデルの信頼度に関する考察; 地球統計手法を用いた透水係数分布推定の例
本多 眞*; 鈴木 誠*; 桜井 英行*; 岩佐 健吾*; 松井 裕哉
第41回地盤工学研究発表会発表講演集 , p.51-52(2006) ; (JAEA-J 01172)

 著者らは、日本原子力研究開発機構が北海道幌延町で実施中の幌延深地層研究計画で取得されてきた各種調査データのうち、網羅的に調査可能な各種の比抵抗探査データを利用することで、比抵抗値と相関性の強い水理地質パラメータの広域三次元構造を合理的にモデル化できることを示してきた。本稿では、これまでの研究成果を踏まえ、平成12年度から開始した幌延深地層研究計画の地上からの調査段階の進展に伴う情報量の増加とモデルの信頼度との関係について定量的な評価を試み、調査の効果に関する考察を行った。具体的には、各種の比抵抗探査から推定した地盤の比抵抗値分布を補助的な情報として、離散的に得られる原位置地盤の透水係数データから地球統計手法により透水係数分布をモデル化し、調査段階毎に精度比較を行うことで、調査の進展とモデルの信頼度の関係を定量的に把握した。


34001025
深部地下環境下における核種移行データの取得及びデータベースの整備
吉川 英樹; 柴田 雅博; 笹本 広; 飯島 和毅; 佐藤 治夫; 北村 暁; 石寺 孝充; 藤原 健壮; 黒澤 進; Xia, X.; 吉田 泰*; 陶山 忠宏*
放射性廃棄物安全研究年次計画(平成13年度〜平成17年度)研究成果報告集 , p.153-170(2006) ; (JAEA-J 01175)

 地層処分の安全評価に用いるデータの信頼性向上に資するため、地層処分の安全評価に必要となる深部地下環境下での熱力学的基礎データ,核種挙動評価データ等の取得を行うとともに、国際的な最新情報の調査・評価を実施し、情報をデータベース化した。


34001026
人工バリアのナチュラルアナログ研究
宮原 要; 吉川 英樹; 上野 健一
放射性廃棄物安全研究年次計画(平成13年度〜平成17年度)研究成果報告集 , p.233-239(2006) ; (JAEA-J 01176)

 平成13年度から17年度まで実施された安全研究のうち「人工バリアのナチュラルアナログ研究」についてとりまとめた。


34001027
イオンビームによる生物突然変異
鹿園 直哉; 田中 淳
放射線化学のすすめ; 電子,イオン,光のビームがくらしを変える、産業をつくる , p.147-150(2006) ; (JAEA-J 01177)

 イオンビームは細胞内に高密度に電離や励起を起こすため、DNAに非常に近接した損傷(クラスター損傷)を生じ、結果として特異的な誘発突然変異を誘発することが示唆されるが、植物ではその利用研究が進められていなかった。そこで、世界に先駆けてイオン照射研究施設(TIARA)を用いて、植物へのイオンビーム照射による突然変異誘発の特徴解析を行った。その結果、炭素イオン照射による誘発突然変異率は、低LET放射線に比べて数倍以上高く、誘発される変異は、逆位や転座などの大きな構造変化が生じやすいという特徴が見られた。また、キクやカーネーション等の花色・花型の変異では、イオンビームは誘発変異スペクトルが広いことも明らかとなった。さらに、シロイヌナズナでは紫外線耐性や色素蓄積,花弁フリルなど新規な変異体も得られてきた。しかし、変異の誘発機構や変異の特徴に関して解明されるべき課題も残されている。


34001028
石炭灰(フライアッシュ)の高強度吹付けコンクリートへの適用性
尾留川 剛; 小島 亘; 白戸 伸明*; 齋藤 敏樹*
コンクリート工学年次論文集 28(1), p.1637-1642(2006) ; (JAEA-J 01178)

 日本原子力研究開発機構が建設する地下研究坑道に、高強度吹付けコンクリート(設計基準強度36N/mm2)の使用を計画している。そこで、環境保全の観点から石炭火力発電所から発生するフライアッシュを有効利用し、細骨材置換した吹付けコンクリートの配合設計を行うこととした。その結果、フライアッシュの使用により所要の流動性を確保するための高性能減水剤量は若干多くなるものの、単位セメント量及び単位急結剤量を減少させることができ、経済性にも優位であることを確認した。また、施工性はフライアッシュを使用しない場合と遜色なく、高強度吹付けコンクリートに適用可能であることが確認された。


34001029
ポゾラン高含有低アリカリ性吹付けコンクリートの施工性
入矢 桂史郎*; 中山 雅; 小西 一寛; 三原 守弘
コンクリート工学年次論文集 28(1), p.173-178(2006) ; (JAEA-J 01179)

 数千年以上の半減期の核種を持つ放射性廃棄物を処分する施設に適用するために、普通ポルトランドセメントよりも浸出水のpHが低い、フライアッシュを高含有したシリカフュームセメントを開発した。放射性廃棄物の処分施設の建設では吹付けコンクリートとして施工することが考えられているが、凝結時間や若材齢強度などに課題がある。本研究では、ポゾランの混合割合や水結合材比及び急結剤の種類を適切に選定することで、トンネル支保工としての適用が可能であることを示した。


34001030
福井県の特徴を踏まえた高経年化研究計画について
榊原 安英; 磯村 和利; 山下 卓哉; 渡士 克己; 土井 基尾; 大草 享一; 田川 明広; 平原 謙司
日本保全学会第3回学術講演会要旨集 , p.283-286(2006) ; (JAEA-J 01182)

 原子力発電所の高経年化対策の充実を図るために、原子力学会の高経年化に関するロードマップに沿って、調査研究を、長期運転プラントや研究機関等が集積化する福井県下で実施した。


34001031
高温ガス炉の炉特性・安全性解析手法の開発・検証
高松 邦吉; 武田 哲明; 中川 繁昭; 後藤 実
日本機械学会第11回動力・エネルギー技術シンポジウム講演論文集 , p.211-212(2006) ; (JAEA-J 01184)

 我が国におけるHTGR技術の高度化に資することを目的に、国からの受託事業として、高温工学試験研究炉(HTTR)を用いて、事故を模擬した試験「安全性実証試験」を実施し、安全評価手法の高度化を図り、HTGR機器の健全性評価を行った。安全性実証試験の内容は、反応度の投入を模擬した試験「制御棒引抜き試験」である。高温ガス炉の動特性解析については、高温ガス炉用のプラント動特性解析コードにより実施し、本報告で提案した解析モデルについて、制御棒引抜き試験に対する精度を確認することができた。提案した解析モデルはVHTRにも適用可能であり、ここで明らかとなった精度と解析モデルの適用範囲を考慮したうえ、適切な安全裕度を仮定することで、より合理的な安全解析の実施が可能となる。


34001032
高温ガス炉に関する安全性解析手法の開発・検証
武田 哲明; 中川 繁昭; 後藤 実; 高松 邦吉
日本機械学会第11回動力・エネルギー技術シンポジウム講演論文集 , p.213-216(2006) ; (JAEA-J 01185)

 日本原子力研究開発機構(以下、原子力機構)では、高温ガス炉システムの研究開発に関し、原子炉技術と核熱利用技術に関する研究開発を進めている。ここでは、高い固有の安全性と経済性を有する実用高温ガス炉システムの開発を目指した炉特性・安全性評価解析手法の開発と検証に関する研究開発について、これまで実施してきた解析コードの開発とHTTR及び炉外試験装置を用いた検証の状況、及び今後の計画を報告する。さらに、検証解析の一例として、原子力機構が設計研究を進めている電気出力約300MWeのブロック型高温ガス炉水素製造システム(Gas Turbine High Temperature Reactor for Hydrogen: GTHTR300H)に関する安全設計の成立性を検討するための事前解析として行った配管破断減圧事故時の空気浸入事象の解析結果とGTHTR300Hのプラント配置による空気浸入抑制効果を示す。


34001033
Development of dose assessment method for high-energy neutrons using intelligent neutron monitor
佐藤 大樹; 佐藤 達彦; 遠藤 章; 山口 恭弘; 松藤 成弘*; 佐藤 眞二*; 高田 真志*
NIRS-M-192 , p.224-225(2006) ; (JAEA-J 01195)

 インテリジェント中性子モニタを用いた線量評価において、検出器である液体有機シンチレータの高エネルギー中性子に対する応答関数の評価が必要となる。この評価のために開発したSCINFUL-QMDコードの計算精度向上のため、荷電粒子に対するシンチレータの発光量を系統的に測定した。実験は、放射線医学総合研究所のHIMACにて行った。荷電粒子は核破砕反応を利用して生成し、飛行時間法によりその運動エネルギーを決定した。得られたデータをもとに新たに発光量データベースを構築し、SCINFUL-QMDに組み込んだ。これにより、SCINFUL-QMDは高エネルギー中性子に対する応答関数も精度良く計算できるようになった。


34001034
Current challenges facing recycling and clearance of fusion radioactive materials
El-Guebaly, L. A.*; Forrest, R. A.*; Marshall, T. D.*; Taylor, N. P.*; 飛田 健次; Zucchetti, M.*
UWFDM-1285 , 17p.(2005) ; (JAEA-J 01196)

 核融合炉の環境適合性向上は、運転中及び廃炉後に発生する放射性廃棄物に十分配慮した設計によってのみ実現されるものである。このような放射性廃棄物の発生を最小化または低減化するためには、貯蔵管理の後(最長100年)、クリアランス廃棄物としてスクラップ市場に放出すること、及び、このような処理ができない放射性廃棄物については原子力関連施設においてリサイクルすることが必要になる。放射線リスクのほとんどない物質をクリアランス処分するため、米国核規制委員会,欧州委員会,日本の原子力安全委員会及びIAEAではクリアランスレベルの設定や改訂を行っているところである。本稿では、各国の核融合炉設計研究で明らかになってきた、従来のクリアランスレベル評価において欠落している核融合特有の核種やそれらのクリアランスレベルをまとめた。また、放射性物質を原子力関連施設においてリサイクルするための条件,トリチウム含有廃棄物の処理の考え方等に関する最近の研究をレビューした。


34001035
Control of growth of neoclassical tearing mode by central Co-ECCD in JT-60U
諌山 明彦; 大山 直幸; 浦野 創; 鈴木 隆博; 武智 学; 井手 俊介; 鎌田 裕; 小関 隆久; 長崎 百伸*; JT-60チーム
Plasma and Fusion Research (Internet) 1(6), p.030_1-030_3(2006) ; (JAEA-J 01197)

 プラズマ中心部にプラズマ電流と同じ方向(co方向)に電子サイクロトロン電流駆動(ECCD)を行うことにより、ポロイダルモード数m=3,トロイダルモード数n=2の新古典テアリングモード(NTM)の成長を抑制した。プラズマ電流の約10%のECCDにより、m/n=3/2のNTMの振幅がECCDを行わないときの約1/5に維持された。磁場揺動の周波数スペクトルによると、鋸歯状振動崩壊によりm/n=3/2のNTMの周波数が変調されていて、NTMと鋸歯状振動との間で相互作用があることが明らかになった。プラズマ圧力と磁場圧力の比であるベータ値は、同じ入力パワーのもとでもECCDを行わないときに比べ6%高かった。この結果は、NTM制御のための新しい運転シナリオの可能性を示唆している。


34001036
Development of integrated SOL/divertor code and simulation study in JAEA
川島 寿人; 清水 勝宏; 滝塚 知典; 櫻井 真治; 仲野 友英; 朝倉 伸幸; 小関 隆久
Plasma and Fusion Research (Internet) 1(6), p.031_1-031_13(2006) ; (JAEA-J 01198)

 トカマク装置におけるダイバータプラズマの性能を予測し、熱・粒子制御性の向上を計るためのSOL/ダイバータコードの開発を進め、JT-60実験の解析やトカマク国内重点化装置(NCT)のダイバータ設計検討のシミュレーションを実施した。本コードは、(1)中性粒子や不純物粒子の挙動をモンテカルロ(MC)法で計算し、物理機構を高精度で模擬,(2)MCノイズ低減化により、他に類のない細密メッシュでの計算を可能とし、接触/非接触プラズマ状態の変化に対応,(3)高速処理化(従来の10倍以上)によりパラメータサーベイが可能、などの特徴を持つ。JT-60のMARFE解析では、実験結果を再現する低温高密度状態が得られ、X点付近に集中する放射損失は化学スパッタリングによる炭素不純物の深い侵入が支配的要因であることを示唆した。一方、NCTのダイバータ設計に関する物理検討では、シミュレーションにより、排気口幅やストライク点位置に依存した粒子排気特性を明らかにし、形状や運転シナリオの最適化に貢献した。これらの結果を講演で発表する。


34001037
Development of a system for integrated geological modelling and groundwater flow simulation
三枝 博光; White, M. J.*; Robinson, P.*; Guimera, J.*
Proceedings of 11th International High-Level Radioactive Waste Management Conference (IHLRWM) (CD-ROM) , p.330-337(2006) ; (JAEA-J 01199)

 調査と地質環境モデルの構築を組合せることによって、地質環境特性を効率的・合理的に把握するためには、調査終了後、迅速に取得したデータの解釈を行い、地質環境モデルを構築し、その結果に基づき次の調査計画を立案できることが重要である。このような迅速な地質環境モデルの構築を支援することを目的に、地質構造モデルの構築から水理地質構造モデルの構築及び地下水流動解析までの一連の作業に必要なソフトウェアや解析コードを統合したシステムを構築した。このシステムを用いて東濃地域における地質構造モデルの構築,水理地質構造モデルの構築、及び地下水流動解析を実施した。この際、複数の岩相(花崗岩,堆積岩)や断層が複雑に分布する地域の地質構造モデルを、可視化画像で確認しながら視覚的に構築することができた。また、地質構造モデルから地下水流動解析を行うための分割要素(離散モデル)が自動的に作成されることにより、煩雑な要素分割作業がなくなり大幅に労力を削減できた。特に、複数の地質構造モデルを作成した場合、離散モデルの自動構築機能は労力の削減に効果的と言える。さらに、地下水流動解析結果を可視化し、解析結果の考察を効率的に進めることができた。以上のことから、複雑な地質構造をモデル化するとともに、それに基づく地下水流動解析を実施する場合や、複数のモデルを作成するような場合(感度解析など)に、本システムは非常に有用であることが明らかとなった。


34001038
One-loop operation of primary heat transport system in MONJU during heat transport system modifications
後藤 健博; 津島 広行; 桜井 直人; 城 隆久
Proceedings of 14th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-14) (CD-ROM) , 13p.(2006) ; (JAEA-J 01200)

 高速増殖原型炉もんじゅでは、2005年3月より改造工事を開始した。改造工事に先立つ2004年6月より、予熱等にかかわる経費節減を目的として2次系のナトリウムをすべてドレンし、1次冷却系の1ループのみを循環して炉内ナトリウム温度を維持する1次主冷却系単独ループ運転としている。実施条件として次の2つの検討を行った。まず、冷却材であるナトリウムが循環する1次冷却系及び原子炉容器での放散熱が炉心崩壊熱を大きく上回ること,逆に炉内ナトリウム温度を200℃に保つためのヒータ容量が十分に確保されていることである。放散熱と崩壊熱の関係については、1次冷却系での放散熱は概算で約90から170KWであり、炉心崩壊熱は解析値から21.2KWと算出され、ポンプ入熱等を考慮しても明らかに放散熱より少なく、実機試験でも確認された。次にヒータ容量については、放散熱よりも実際に投入される予熱ヒータによる入熱が少なかった。このため、原子炉容器室の温度を上昇させ放散熱を抑制し、予熱ヒータの設定値を変更して予熱ヒータの投入量を増加させた。これらの措置により、1冷却系単独運転を実施することができた。1次冷却系単独ループ運転によって、発電所内の消費電力量を削減することができた。また、改造工事にあたっても2次系のすべてのループのナトリウムをドレンしているため大幅な工期短縮が図られた。


34001039
Numerical analysis on air ingress behavior in GTHTR300H
武田 哲明; Yan, X.; 國富 一彦
Proceedings of 14th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-14) (CD-ROM) , 5p.(2006) ; (JAEA-J 01201)

 日本原子力研究開発機構(以下、原子力機構)では、高温ガス炉システムの研究開発に関し、原子炉技術と核熱利用技術に関する研究開発を進めている。特に、原子炉技術の開発においては、高温工学試験研究炉(High Temperature engineering Test Reactor: HTTR)を用いて、技術基盤の確立と高温ガス炉技術の高度化に関する研究を進めてきた。原子力機構が設計研究を進めている電気出力約300MWeのブロック型高温ガス炉水素製造システム(Gas Turbine High Temperature Reactor for Hydrogen: GTHTR300H)に関する安全設計の成立性を検討するための事前解析として行った配管破断減圧事故時の空気浸入事象の解析結果を示し、GTHTR300Hのプラント配置による空気浸入防止方法等の検討結果をまとめた。GTHTR300Hでは、熱交換器容器に充填されたヘリウムガスが炉心部への空気浸入を妨げる効果を有することがわかった。


34001040
Design study of mechanical disassembly system for FBR fuel reprocessing
遠矢 優一; 鷲谷 忠博; 小泉 健治; 森田 眞一
Proceedings of 14th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-14) (CD-ROM) , 6p.(2006) ; (JAEA-J 01202)

 実用化戦略調査研究の一環として、日本原子力研究開発機構(JAEA)では高速炉酸化物燃料の再処理における合理的な解体システムを検討している。解体技術として、レーザビーム方式及び機械方式の2種類について検討を進めた結果、レーザビーム方式ではYAGレーザを適用することにより良好な切断性能及び設備の小型化が確保できることを確認したが、レーザ切断時における燃料ピンの損傷や溶着の発生が課題とされた。そこで、溶着を回避できる機械式解体方式に着目した。機械式解体システムでは、燃料集合体ラッパ管及び燃料ピン束の切断に切断砥石を使用し、ラッパ管を引抜くことで燃料ピンと分離する。模擬燃料集合体を用いた基礎試験を実施し、切断砥石の切断性能及び耐久性、並びにラッパ管の引抜性能を評価した結果、本システムが適用可能であることを確認した。また、実プラントにおける本装置の構造概念を確立した。


34001041
Improvement of predictive accuracy on subchannel analysis Code (NASCA) for tight-lattice rod bundle tests; Optimization of Ueda's entrainment model parameter and cross flow model parameters
千年 宏昌*; 堀田 亮年*; 大貫 晃; 藤村 研*
Proceedings of 14th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-14) (CD-ROM) , 6p.(2006) ; (JAEA-J 01203)

 革新的水冷却炉の熱設計に使用するサブチャンネル解析コードNASCAの物理モデル(液滴発生モデル及び横流れモデル)を原子力機構で行った試験結果を活用して改良した。


34001042
Entrainment of water around a single rod immersed in water pool with gas jet impingement
曽我 和生*; 新倉 英人*; 杉山 憲一郎*; 奈良林 直*; 大島 宏之; 須田 一則
Proceedings of 14th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-14) (CD-ROM) , 6p.(2006) ; (JAEA-J 01204)

 Na-水反応現象における水蒸気ジェットの挙動を理解する基礎研究として、水中に設置した単一水平円筒へArガスジェットを噴出させる可視化実験を実施し、化学反応がないジェット体系におけるガスジェットと周囲水との混合挙動を明らかにした。


34001043
Development of crystallizer for advanced aqueous reprocessing process
鷲谷 忠博; 菊池 俊明*; 柴田 淳広; 近澤 孝弘*; 本間 俊司*
Proceedings of 14th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-14) (CD-ROM) , 7p.(2006) ; (JAEA-J 01205)

 晶析技術は従来の湿式再処理に比べて多くの利点を有することから次世代の再処理技術として注目されている。本報告は、この晶析装置開発に関するこれまでの開発成果を報告するものである。日本原子力開発機構では晶析技術開発として先進的湿式再処理プロセス(NEXTプロセスと称する)におけるウラン晶析技術の開発を進めるとともに、三菱マテリアル,埼玉大学と共同でプルトニウムをウランと同時回収する共晶析技術の開発も実施している。上記の2つの晶析プロセスにおいて、結晶を生成する晶析装置は同様の形式の晶析装置が適用可能であり、日本原子力開発機構と三菱マテリアルは晶析システムの連続処理による処理量の向上と連続化による晶析工程の最適化を図るため、各種の晶析装置の比較検討を行い、円環型連続晶析装置からなる連続晶析システムを開発し、工学規模晶析装置を用いたウラン実証試験を実施した。この円環型晶析装置は傾斜して配置され、周囲に冷却ジャケットを持った円筒容器中に螺旋状のスクリューを有するシリンダーが回転する構造となっている。原料である溶解液は冷媒によって冷却されることで硝酸ウラニルが結晶として析出する。析出した結晶スラリーは回転する内筒スクリューにより移送され、結晶排出口から装置外に排出される。本報告では、この円環型連続晶析装置の構造,晶析特性等について報告する。


34001044
Reaction, transport and settling behavior of lead-bismuth eutectic in flowing liquid sodium
宮原 信哉; 大野 修司; 山本 信弘; 斉藤 淳一; 平林 勝
Proceedings of 14th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-14) (CD-ROM) , 7p.(2006) ; (JAEA-J 01206)

 ナトリウム冷却高速炉の蒸気発生器伝熱管破損事故によるナトリウム−水反応を防止するため、ナトリウムと水との間に液体鉛ビスマス(LBE)を熱媒体として用いる中間熱交換器(AIHX)の概念がある。しかし、AIHXにおけるナトリウム-LBE間の伝熱管が破損した場合には、LBEがナトリウム系に漏えいすることが考えられる。そこで本研究では、400℃の流動するナトリウム中に同温度のLBEを漏えいさせ、その反応挙動及び反応生成物の移行と沈降挙動を実験的に調べた。その結果、漏えいしたLBEは流動するナトリウムと発熱反応することによりBiNa3を主成分とする固体粒子状の反応生成物が生じること,これら粒子は凝集してナトリウムループ底部に沈降し濃度は徐々に減衰すること,超音波を利用したLBEの漏えい検出は熱電対による温度上昇測定と同様に有効な漏えい検出器となりうること等を明らかにした。


34001045
Experimental investigation of evaporation behavior of polonium and rare-earth elements in lead-bismuth eutectic pool
大野 修司; 宮原 信哉; 倉田 有司; 桂 了英*; 吉田 茂*
Proceedings of 14th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-14) (CD-ROM) , 7p.(2006) ; (JAEA-J 01207)

 液体鉛ビスマス共晶合金(LBE)中の放射性不純物の移行挙動を明らかにするために、LBE中のポロニウム(Po-210)及び希土類元素(Gd, Eu)を対象とした平衡蒸発実験を実施した。実験では、等温容器中に生成した飽和蒸気を不活性ガスで容器外へ移送・捕集する「トランスパイレーション法」を用いた。LBE及びLBE中テルルの蒸発挙動についてはICONE12-49111にて報告済みであるが、今回は液体LBE中に放射化生成物や核破砕生成物として蓄積されるPo-210と希土類元素に関する実験の概要と結果をまとめる。希土類元素の実験では非放射性の同位体を使用した。LBEプールは質量約330〜670g、4cm×14cmの表面積を有する。Po-210実験では小型の実験装置を使用し、Po-210は材料試験炉JMTRにおけるLBEの中性子照射で作成した。本実験研究を通じて、Po-210の蒸気濃度,蒸気分圧,LBE中の不純物の気液平衡分配係数などの基礎的かつ有益な蒸発データを450〜750℃の温度条件で取得した。Po-210実験では、PoはLBE中において保持され蒸発しにくくなる特徴を有するが、その揮発性はLBE溶媒に比べれば高いことが明らかとなった。また、Eu実験の一部では、Poに匹敵する高い揮発性が示唆された。この傾向は、プール表面付近に溶質濃度の高い部分が形成されたことに起因するものと考えられるが、さらに調査が必要である。本実験研究で得られた結果は、LBE冷却型原子炉システムにおいて放射性物質がガス空間へ移行する挙動を評価するにあたり重要かつ不可欠なものである。


34001046
In-pile SCC growth behavior of type 304 stainless steel in high temperature water at JMTR
加治 芳行; 宇賀地 弘和; 塚田 隆; 松井 義典; 近江 正男; 永田 暢秋*; 堂崎 浩二*; 瀧口 英樹*
Proceedings of 14th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-14) (CD-ROM) , 7p.(2006) ; (JAEA-J 01208)

 照射誘起応力腐食割れ(IASCC)は、軽水炉のステンレス鋼製構造物の長期運転において、重要な課題の一つである。一般に、IASCCは高速中性子のしきい照射量以上照射した材料を用いて照射後試験(PIE)により試験が行われている。IASCC研究分野では、照射下でのSCC試験を実施することは大変困難なため、おもに照射材を用いたPIEを実施している。したがって照射下SCC試験の重要な技術として、負荷応力レベル,水化学,照射条件等の効果に関する情報を得るために試験技術の開発を行ってきた。JMTRにおいて、照射済み304ステンレス鋼を用いて照射下IASCC進展試験に成功した。本論文では、IASCCにおける同時作用効果の観点から、照射下SCC進展試験結果とPIEの結果とを比較し議論する。


34001047
Development of a slim manipulator type fuel handling machine for a commercialized fast reactor
近澤 佳隆; 臼井 伸一; 此村 守; 定廣 大輔*; 戸澤 克弘*; 堀 徹*; 戸田 幹雄*; 小竹 庄司*
Proceedings of 14th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-14) (CD-ROM) , 7p.(2006) ; (JAEA-J 01209)

 ナトリウム冷却大型炉の燃料交換機としてアームスイング式マニプレータ型燃料交換機の概念設計を実施した。耐震解析評価の結果から、軸受内部隙間に起因したガタが切込付UISと燃料交換機の干渉に及ぼす影響が大きく、軸受内部隙間をなくすことにより干渉回避を確実にすることができることが明らかになった。このため燃料交換機軸受として予圧負荷により軸受内部隙間をなくすことが可能なアンギュラ玉軸受を採用することとした。燃料交換機軸受はナトリウムベーパを含む200℃アルゴンガス中において使用されるため、通常用いられる液体潤滑材を使用することができない。このため燃料交換機軸受に適用可能な固体潤滑仕様をパラメータとして1/10スケール軸受を用いた気中試験を実施し、内外輪MoS2コーティングステンレス,セラミックボールの組合せを選定した。また、実機運転環境を模擬したナトリウムベーパを含むアルゴンガス中において実規模軸受の耐久試験を実施した。実機軸受面圧1580MPaに対して不確かさを考慮して1745MPaを負荷し、燃料交換5回相当の期間において軸受の運転に問題がないことを確認した。


34001048
Development program of IS process pilot test plant for hydrogen production with high-temperature gas-cooled reactor
岩月 仁; 寺田 敦彦; 野口 弘喜; 今井 良行; 伊地知 雅典; 金川 昭宏; 大田 裕之; 久保 真治; 小貫 薫; 日野 竜太郎
Proceedings of 14th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-14) (CD-ROM) , 8p.(2006) ; (JAEA-J 01210)

 日本原子力研究開発機構(JAEA)では、将来の水素エネルギー社会を目指してHTTR(高温工学試験研究炉)を用いた水素製造実証試験を計画している。原子力機構ではこれまでに、ベンチ規模のガラス製の水素製造試験装置を用いて、1週間の連続水素製造(水素製造量:30Lm3/h)に成功しており、この成果を踏まえて、次段階のパイロットプラント試験(水素製造量:30Nm3/h規模)に移行することを計画している。パイロットプラントは、ガラスライニング,SiCセラミックス等のような工業原料を用いて製作され、2MPaの圧力下で運転予定である。パイロットプラントは、ISプロセス試験装置とヘリウムガス(He)循環装置(Heループ)から構成される。Heループは、400kWのHe加熱器,He循環器及びHe冷却器として機能する蒸気発生器から構成されるHTTRの運転環境を模擬している。設計研究と並行して、高温,高腐食環境下で使用されるH2SO4分解器、及びSO3分解器のようなISプロセスの主要機器は、設計及び試作により製作性が確認されている。また、その他の腐食やHIxプロセスについても、現在研究開発中である。本報では、パイロットプラント試験に向けた現状について報告する。


34001049
Development of the ISI device for fast breeder reactor MONJU reactor vessel
田川 明広; 上田 雅司; 山下 卓哉
Proceedings of 14th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-14) (CD-ROM) , 8p.(2006) ; (JAEA-J 01211)

 高速増殖原型炉「もんじゅ」では、安全上重要な機器に対し、供用期間中検査(ISI: In-service inspection)を実施する計画である。原子炉容器(RV: Reactor Vessel)は原子力プラントの最重要機器であり、その安全性の重要度が高いのは言うまでもない。このため、万一のナトリウム漏洩に備え、RV外側にガードベッセル(GV: Guard Vessel)を設けて、崩壊熱除去に必要な液位を確保できる構造となっている。原子炉容器の検査項目としては、目視検査による外観からのナトリウム漏洩痕跡の有無の確認がある。また、研究開発の位置づけとして電磁超音波探触子を開発し体積検査を実施している。検査環境は、冷却材の凍結防止のため、検査時の温度は約200℃に維持され、放射線環境は約10Sv/hrと、温度,放射線レベルともに軽水炉検査環境(常温,低放射線)に比べ高い。このため、「もんじゅ」では原子炉容器の検査に用いる耐熱・耐放射線の検査機の開発整備を行っている。


34001050
Analytical study on micro-indentation method to integrity evaluation for graphite components in HTGR
角田 淳弥; 塙 悟史; 柴田 大受; 多田 竜也; 伊与久 達夫; 沢 和弘
Proceedings of 14th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-14) (CD-ROM) , 8p.(2006) ; (JAEA-J 01212)

 マイクロインデンテーション法による高温ガス炉黒鉛構造物の健全性解析評価を行った。インデンテーション法は、物質の機械的特性を測定できる簡便な方法で、荷重と深さの関係から残留応力の評価に適用できると考えられている。本研究では、高温ガス炉黒鉛構造物の寿命評価においてマイクロインデンテーション法の適用性を確認することを目的として、IG-110黒鉛のSu値を考慮しながら応力・ひずみ負荷状態におけるインデンテーション荷重及び深さ挙動を検討した。さらに、酸化黒鉛及び残留ひずみを負荷した酸化黒鉛のインデンテーション荷重及び深さの挙動を解析的に評価した。結果として、インデンテーション法は黒鉛構造物の健全性評価に適用できる可能性があることが示唆された。


34001051
Study on applicability of numerical simulation to evaluation of gas entrainment from free surface
伊藤 啓; 堺 公明; 大島 宏之
Proceedings of 14th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-14) (CD-ROM) , 8p.(2006) ; (JAEA-J 01213)

 ナトリウム冷却高速増殖炉における、自由表面渦によるガス巻込み現象に対する数値解析手法の適用性を調査するために、ガス巻込み基礎試験体系を対象とした数値解析を実施した。解析によって得られた流速分布や自由表面形状を試験結果と比較した結果、メッシュ解像度の不足によりガス巻込み現象そのものを正確に再現することはできなかったが、数値解析によって得られた、ガスコアの移流挙動や渦発生周期,渦の成長挙動は、試験結果と良い一致を示した。また、自由液位及び吸込み流速という、ガス巻込み現象関連パラメータを変化させた解析を実施した結果、液位が減少するほど、また、吸込み流速が増加するほど、ガス巻込み現象の発生が促進される傾向が得られた。これらの数値解析結果より、数値解析手法が、ガス巻込み現象に対して十分な適用性を有することが確認された。


34001052
Sodium-water reaction and thermal hydraulics at gas-liquid interface: Nnumerical interpretation of experimental observations
山口 彰*; 高田 孝*; 大島 宏之; 須田 一則
Proceedings of 14th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-14) (CD-ROM) , 8p.(2006) ; (JAEA-J 01214)

 高速炉の安全評価の観点からナトリウム−水反応を解明することを目的として、対向流拡散反応の実験及び解析を実施した。熱流動境界条件と試験装置形状を最適化して反応場を可視化・計測することに成功した。実験と解析の一致は良好であり、反応域と反応生成物が存在する領域の位置が異なるなどの注目すべき結果が得られた。


34001053
Comprehensive cost estimation method for decommissioning
工藤 健治; 川妻 伸二; 林道 寛; 渡部 晃三; 富居 博行; 白石 邦生; 八木 直人; 福島 正; 財津 知久
Proceedings of 14th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-14) (CD-ROM) , 8p.(2006) ; (JAEA-J 01215)

 2001年12月の閣議決定にしたがい、2005年10月1日、日本原子力研究所(以下、原研)と核燃料サイクル開発機構(以下、サイクル機構)は統合し、新たに日本原子力研究開発機構(以下、原子力機構)となった。この新しい法人は、総合的な原子力研究開発法人であり、政府関連法人の中で最も大きな法人となった。法人の主要な業務は、原子力の基礎研究開発,核燃料サイクル研究開発,自らの原子力施設の廃止措置及び放射性廃棄物処理・処分にかかわる技術開発,安全と核不拡散に関する寄与、などである。原子力機構には、JRR-2や常陽などの試験研究炉,ふげんやもんじゅなどの研究開発段階炉,人形峠ウラン濃縮原型施設や東海MOX燃料製造施設や東海再処理施設などの核燃料サイクル施設,その他JRTFやFMFなどのホットラボ施設がある。二法人統合準備の一環として、原研とサイクル機構は、これまでの施設解体や改修工事などの実績をもとに、総合的な廃止措置費用評価手法を共同で開発した。また、費用評価試算にあたっては、評価項目を増加する等により信頼性の向上を図った。本評価手法を用いた原研とサイクル機構における廃止措置費用の総計は、約6,000億円(約50億$)と試算した。


34001054
Study on transient void behavior during reactivity initiated accidents under low pressure condition; Development and application of measurement technique for void fraction in bundle geometry
佐藤 聡; 丸山 結; 浅香 英明; 中村 秀夫
Proceedings of 14th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-14) (CD-ROM) , 8p.(2006) ; (JAEA-J 01216)

 原子力機構では、燃料の一層の高燃焼度化に備え、反応度事故時におけるボイド反応度フィードバックを考慮した、最大燃料エンタルピのより現実的な評価に資する知見の取得を目的に、炉外過渡ボイド挙動試験を実施している。本報では、バンドル体系の長尺試験体を用いた、低圧の低温零出力条件を模擬する試験(低圧・長尺試験)を実施するにあたり、バンドル体系内のボイド率の過渡変化を計測する手法を開発し、電場解析,模型試験及び定常沸騰試験により、その適用性を確認した。さらに低圧・長尺試験体を用いた過渡ボイド試験に本ボイド率計を適用することにより、バンドル内における過渡ボイド挙動の、ヒーターピン出力及びサブクール度への依存性に関する知見を取得した。


34001055
Applicability examination and evaluation of reactor dismantlement technology in the Fugen; Examination of double tubes cutting by abrasive water jet
中村 保之; 菊池 孝一; 森下 喜嗣; 臼井 龍男*; 大鐘 大介*
Proceedings of 14th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-14) (CD-ROM) , 9p.(2006) ; (JAEA-J 01217)

 「ふげん」原子炉本体解体における固有の課題である、2重管構造である圧力管とカランドリア管の解体工法を明確にする必要がある。これら2重管部材は、高放射化したジルコニウム材であるため、公衆への環境影響を考慮すると、機械式切断工法が望ましい。また、工期短縮を図るため、2重管を同時に切断することを考えると、比較的スタンドオフを長くとれる工法が望ましい。以上のことから、切断工法として、アブレイシブウォータジェット工法を選定し、2重管解体への適用性の確認試験を行った。この結果、アブレイシブウォータージェット工法は、炉心部2重管の内側及び外側から同時に切断可能であることや、最厚肉の構造物にも適用可能であることを確認するとともに、研掃材供給量と切断速度の関係や二次廃棄物発生量や性状を明らかにした。


34001056
Development of water radiolysis code for the JMTR IASCC test loop
塙 悟史; 佐藤 智徳; 森 雄一郎; 扇柳 仁; 加治 芳行; 内田 俊介*
Proceedings of 14th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-14) (CD-ROM) , 9p.(2006) ; (JAEA-J 01218)

 照射試験中における照射場の水質を評価するために、照射ループ用ラジオリシスコードを開発した。ラジオリシスコードでは、中性子線及びγ線による放射線分解生成種の直接生成,二次反応による化学種の生成・消失及び金属壁面との相互作用を考慮した。また、温度の分布や中性子線・γ線の吸収線量の分布をもつ照射ループを取り扱うために、複数ノードモデルを用いた。開発したラジオリシスコードの適用性を確認するため、幾つかの水質条件下で照射装置の水質を測定し、測定結果とラジオリシスコードによる解析結果を比較した。さらに、開発したラジオリシスコードを用いて照射領域における水質の分布を評価した。


34001057
Numerical simulation of sodium-water reaction phenomena under small leakage condition in a steam generator
須田 一則; 渡部 晃*; 大島 宏之
Proceedings of 14th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-14) (CD-ROM) , 9p.(2006) ; (JAEA-J 01219)

 ナトリウム冷却高速炉の蒸気発生器内で発生するナトリウム−水反応現象を研究することを目的として、数値計算コードを開発した。本報では、SWAT-1R試験体系を用いて検証解析を実施した。その結果、SERAPHIMコードは、最高温度及び高温の領域を予測可能であり、その結果起こり得る高温ラプチャーの評価可能であることを明らかにした。


34001058
A Rational identification of creep design area using negligible creep curve
祐川 正之*; 磯部 展宏*; 柴本 宏; 田中 良彦*; 笠原 直人
Proceedings of 2006 ASME Pressure Vessels and Piping Division Conference (PVP 2006)/International Council on Pressure Vessel Technology (ICPVT-11) (CD-ROM) , 5p.(2006) ; (JAEA-J 01220)

 非クリープ設計域の拡張による許容応力の拡大及び設計手順の簡素化のため、NC(Negligible Creep)カーブを用いたクリープ設計域の合理的な設定法について検討した。この結果、国産の材料データに基づき、6種類の高速炉用の鋼種について、応力レベル1.5Sm時のNCカーブを設定した。従来の高温構造設計基準では、一定の温度上限値を用いて、非クリープ域を保守的に制限していた。実用高速炉で使用予定の316FR鋼,12Cr-Mo鋼は特に優れた材料特性を有しており、NCカーブを用い非クリープ設計域の拡大を図る効果が大きい。本クリープ設計域の合理的な設定法はFDS暫定案に採用された。NCカーブを用いることにより通常時、比較的低温で用いられる機器の低温設計が可能となる。


34001059
Measurement of thermal ratcheting strain on the structures by the laser speckle method
渡辺 大剛*; 中馬 康晴*; 大谷 知未*; 柴本 宏; 井上 和彦*; 笠原 直人
Proceedings of 2006 ASME Pressure Vessels and Piping Division Conference (PVP 2006)/International Council on Pressure Vessel Technology (ICPVT-11) (CD-ROM) , 7p.(2006) ; (JAEA-J 01221)

 繰返し熱荷重を受ける高速炉の高温機器において、熱ラチェットによる破損防止は重要課題である。ラチェット挙動を明らかにするため、構造モデル試験が計画された。熱ラチェット現象を理解するうえでひずみ測定は重要であるが、高温下では従来のひずみゲージによる測定は困難である。このため、2つのレーザービームを用いたレーザースペックル法が構造物モデルのひずみを測定するために開発された。このシステムは原子炉の実際の運転状態を模擬した熱ラチェット試験に適用された。単軸試験結果との比較を通じ、レーザースペックル法が確証された。構造物モデル試験の測定データは、高速炉機器のひずみ予測法を記載している非弾性設計解析に関するガイドラインを検証するために用いられた。


34001060
Control mechanisms of stress redistribution locus in structures
笠原 直人; 古橋 一郎*
Proceedings of 2006 ASME Pressure Vessels and Piping Division Conference (PVP 2006)/International Council on Pressure Vessel Technology (ICPVT-11) (CD-ROM) , 8p.(2006) ; (JAEA-J 01222)

 高温構造物は塑性やクリープなどの非弾性挙動を生じやすいことから、その設計には適切な非弾性挙動の予測が必要である。非弾性挙動は一般に形状の他に材料特性や荷重の大きさにも依存するが、著者らはそれらにあまり依存しない一本の応力再配分軌跡(Stress Redistribution Locus: SRL)が存在することを明らかにした。この性質を利用すると精度の良い非弾性挙動の簡易評価が可能となる。本研究では上記性質を裏付けるため、SRL曲線の決定機構を明らかにする。


34001061
Improvements to PFM analysis code PASCAL and some case studies on RPV integrity during pressurized thermal shock
鬼沢 邦雄; 柴田 勝之; 小坂部 和也; 田中 和久
Proceedings of 2006 ASME Pressure Vessels and Piping Division Conference (PVP 2006)/International Council on Pressure Vessel Technology (ICPVT-11) (CD-ROM) , 8p.(2006) ; (JAEA-J 01223)

 原子炉構造機器の健全性評価にあたって、各種評価パラメータの不確かさを考慮でき、合理的な評価が可能となる確率論的破壊力学解析が最近注目されている。日本原子力研究開発機構では、加圧熱衝撃時における原子炉(圧力))容器を対象として、確率論的破壊力学解析コードPASCALの開発を進めている。当該事業において改良を進めているPASCALについて、モンテカルロ法、非破壊検査効果の評価法、入出力に関するGUI等についての改良を行い、PASCAL version 2とするとともに、代表的なPTS時におけるケーススタディを実施した。き裂存在確率分布に関して、従来のマーシャル分布と米国の新しいPNNL提案の分布を比較し、表面き裂と内部欠陥にそれぞれ対応する両者の結果が、ほぼ同じオーダーの破損確率になることを示した。化学成分の効果について、国内の1970年代の原子炉に対応する2通りの値を用いた場合の破損確率を評価し、異なるトランジェントに対しても高照射量領域ではほぼ等しい差になることを示した。また、非破壊検査の効果に関して、供用前検査と供用中検査の組合せや、供用中検査の回数について感度解析を行い、その効果を定量的に示すことができた。


34001062
Stress intensity factor estimation for embedded and a surface cracks in an RPV subjected to yielding of cladding
柴田 勝之; 鬼沢 邦雄; 田中 和久; 鈴木 雅秀
Proceedings of 2006 ASME Pressure Vessels and Piping Division Conference (PVP 2006)/International Council on Pressure Vessel Technology (ICPVT-11) (CD-ROM) , 9p.(2006) ; (JAEA-J 01224)

 原子炉容器の健全性評価に適用される加圧熱衝撃等の熱流体トランジェントの下では、容器壁の母材が弾性範囲に留まる一方、内面冷却によりクラッドには降伏を超える高い熱応力が発生することがある。容器の健全性評価は、線形破壊力学に基づき、応力拡大係数(K値)を用いて行われるが、この荷重条件でのK値は有限要素法による解以外には得られていない。本研究では、クラッドの塑性崩壊条件に基づくK値簡易推定法を提案した。この推定法から得られたアンダークラッドき裂と表面き裂のK値について、既存の解と比較した結果良い一致が見られた。


34001063
Dose calculation using Japanese voxel phantoms for diverse exposures
斎藤 公明; 佐藤 薫; 木名瀬 栄; 野口 宏; 船曳 淳*; 高木 俊二*; 佐藤 理*; 江本 豊*; 古賀 助彦*
Proceedings of Monte Carlo 2005 Topical Meeting (CD-ROM) , 14p.(2005) ; (JAEA-J 01225)

 原研ではCTデータに基づいて作成された日本人成人の男女ボクセルファントムを放射線防護の目的で使用してきた。また、ボクセルファントムとともに使用する、光子及び電子による外部被・内部被ばく線量計算用のEGS4のユーザーコードを整備してきた。これらを用いて線量計算を行い、MIRDタイプの数式ファントム等との線量の比較を行った結果、条件によって明らかな線量の差が観察された。外部被ばく線量の差は単純に体の大きさだけでは説明が難しく、臓器の位置が重要な要因であることが明らかになった。内部被ばくで線源臓器と標的臓器が異なる場合には、臓器間の位置関係が比エネルギー吸収に大きな影響を与える。さらに2つの臓器が接する場合のS値を求めるために用いられて来たICRPによる単純な近似は、過度に安全の結果を与えることがわかった。これらの結果によりボクセルファントムとモンテカルロ計算の使用が、線量計算において有効であることが示された。


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