学会誌等掲載論文
※下記の研究開発成果は資料名順に並んでいます。

2007年1月


35000020
Themochemical and thermophysical properties of advanced fission fuel materials
湊 和生; 高野 公秀; 西 剛史; 赤堀 光雄; 荒井 康夫; 宇埜 正美*
Advances in Science and Technology 45, p.1931-1940(2006) ; (JAEA-J 01569)
 マイナーアクチニドの燃焼/核変換は将来の核燃料サイクルにおけるオプションとして考えられており、研究開発が進められている。マイナーアクチニドを含有した燃料は、現行のウラン燃料とは特性が大きく異なることが予想される。窒化物燃料は、マイナーアクチニド含有燃料として候補の一つである。マイナーアクチニド含有窒化物燃料の熱化学的及び物理的特性について、これまでの研究をレビューするとともに、最新の研究成果を紹介する。

35000021
Extractive solubilization, structural change, and functional conversion of cytochrome c in ionic liquids via crown ether complexation
下条 晃司郎; 神谷 典穂*; 谷 文都*; 長縄 弘親; 成田 吉徳*; 後藤 雅宏*
Analytical Chemistry 78(22), p.7735-7742(2006) ; (JAEA-J 01570)
 ヘムタンパク質の1種であるシトクロムcをクラウンエーテルとの錯体形成によってイオン液体中に抽出可能であることを明らかにした。その抽出効率にはイオン液体の疎水性や官能基との相互作用が大きく影響することが示された。一方、イオン液体に溶解したシトクロムcは構造変化を引き起こし、過酸化水素のような基質を取り込みやすくなることが明らかとなった。その結果、本来酵素ではないシトクロムcが酵素のようなペルオキシダーゼ活性を持つようになった。

35000022
Noble gases in solar-gas-rich and solar-gas-free polymict breccias
大澤 崇人; 長尾 敬介*
Antarctic Meteorite Research (19), p.58-78(2006) ; (JAEA-J 01571)
 ポリミクト角礫岩に対する希ガス同位体分析を行った。18試料中5個がレゴリスブレッチアと判定され、うち4つがHコンドライトであった。この結果はレゴリスの厚みと関係するものと思われる。レゴリスブレッチアが系統的に長い宇宙線照射年代を持つという事実は確認されず、母天体での照射が数千万年程度であることを示していた。

35000023
Protective layer formation during oxidation of Cu3Au(100) using hyperthermal O2 molecular beam
岡田 美智雄*; 橋之口 道宏*; 福岡 正幸*; 笠井 俊夫*; 盛谷 浩右*; 寺岡 有殿
Applied Physics Letters 89(20), p.201912_1-201912_3(2006) ; (JAEA-J 01572)
 超熱酸素分子ビームを用いたCu3Au(100)の酸化について放射光X線光電子分光によって調べた。酸素の吸着曲線の運動エネルギー依存性から、金の合金化によって酸素分子の解離性吸着が高い活性化障壁を持つこと、それ故に反応性が低いことがわかった。解離性吸着は表面での銅の偏析を伴う。2eVの運動エネルギーの酸素分子でさえもCu2Oの目立った成長は見られなかった。このことは銅の金合金化がバルク領域への酸化進行に対して阻害層として作用することを表している。

35000024
Nano-structure controlled polymer electrolyte membranes for fuel cell applications prepared by ion beam irradiation
八巻 徹也; 小曾根 雄一; 廣木 章博; 浅野 雅春; 久保田 仁*; 吉田 勝
ECS Transactions 3(1), p.103-112(2006) ; (JAEA-J 01573)
 日本原子力研究開発機構イオン照射施設が保有するサイクロトロン加速器からの重イオンビームを用いて、水電解システムや燃料電池に応用可能なフッ素系高分子電解質膜を作製した。このいわゆるナノ構造制御型電解質膜は、照射後の化学エッチングによって孔径100nmのポリフッ化ビニリデンイオン穿孔膜を作製し、次に得られた細孔へのγ線グラフト重合によりプロトン伝導性基を導入する、という2段階のプロセスで得られた。イオン交換容量を制御した電解質膜では膜厚方向のみに異方的なプロトン伝導性を示したことから、イオンの入射により生成した潜在飛跡に沿って一次元的なプロトン伝導経路が形成されていることが明らかになった。市販膜ナフィオンと比較すると、含水や物質(メタノール)透過の抑制能において優位性が確認できた。

35000025
Preparation of fuel cell membranes by photografting in vapor and liquid phases
Chen, J.; 浅野 雅春; 前川 康成; 坂村 高洋*; 久保田 仁*; 吉田 勝
Electrochemical and Solid-State Letters 9(5), p.G184-G186(2006) ; (JAEA-J 01574)
 光グラフト重合を利用した燃料電池用電解質膜の作製を試み、得られた膜の特性を評価した。気相系の光グラフトの場合、キトサンを塗布したETFE膜をスチレンモノマー蒸気に暴露することにより行った。一方、液相系の光グラフトでは、スチレン−水/アセトン(1/5vol%)溶液中にキトサンを塗布したETFE膜を浸漬することにより行った。それぞれの膜をグラフト後、スルホン化した電解質膜のプロトン導電性を測定したところ、気相系と液相系で得た電解質膜の膜面方向のプロトン導電性には違いが見られなかった。しかしながら、膜厚方向のプロトン導電性では、同じイオン交換容量において違いが生じ、気相系に比べて液相系で得られた電解質膜のプロトン導電性が高くなることがわかった。ちなみに、イオン交換容量が2.0mmol/gでの膜厚方向のプロトン導電性では、気相系の0.036S/cmに対し、液相系では0.072S/cmであった。この原因を明らかにするために、膜断面のEDS分析により、膜中のイオウ(S)成分の分布を調べたところ、液相系では膜表面と膜中央に均一にイオウ成分が分布していることがわかった。それに対し、気相系の場合、イオン成分の分布は膜表面に集中し、膜中心部には少ないことがわかった。これらの結果から、膜中のスルホン酸基の均一・不均一分布が膜厚方向のプロトン導電性の違いに影響を与えたと結論した。

35000026
Polytetrafluoroethylene-based proton-conducting membranes prepared by ultraviolet-induced photografting
Chen, J.; 浅野 雅春; 前川 康成; 坂村 高洋*; 久保田 仁*; 吉田 勝
Electrochemical and Solid-State Letters 9(11), p.G326-G329(2006) ; (JAEA-J 01575)
 紫外線を利用した燃料電池用PTFE系電解質膜の作製を試み、得られた膜の特性を評価した。紫外線照射により、PTFE膜内部までスチレンをグラフト重合することに成功した。7%と低いグラフト率にもかかわらず、ナフィオンと同程度のプロトン導電性を持つ電解質膜を得た。また、機械的強度が、従来放射線法で得られたPTFE系電解質膜により優れていることが確認できた。

35000027
Japanese contributions to the procurement of the ITER superconducting magnet
奥野 清; 中嶋 秀夫; 杉本 誠; 礒野 高明
Fusion Engineering and Design 81(20-22), p.2341-2349(2006) ; (JAEA-J 01576)
 ITER計画では、本年6月にモスクワで開催された第2回6極閣僚級会合において、ITER本体施設のカダラシュへの設置が正式に決定された。このサイトの決定により、ITERはその実現に向けて大きな一歩を踏み出した。ITER計画には日本, 中国, 欧州連合, 韓国, ロシア連邦, 米国の6極が参加し、ITERトカマク本体のほとんどの構成機器を物納という形でこれら6極が調達する。このうち超伝導マグネットに関しては主要部分を日本及びEUが分担する。このため、日本原子力研究開発機構では、ITER工学設計活動で得られた成果をもとに、トロイダル磁場コイルを中心に、実規模での要素試作による製作プロセスや品質保証技術の確立, 量産技術の実証、さらに設計の合理化など、実機製作のための技術基盤の確立を行っている。本件では、これら日本におけるITER建設準備のための技術活動の成果について発表する。

35000028
Long pulse operation of 170 GHz ITER gyrotron by beam current control
春日井 敦; 南 龍太郎; 高橋 幸司; 小林 則幸; 坂本 慶司
Fusion Engineering and Design 81(23-24), p.2791-2796(2006) ; (JAEA-J 01577)
 日本原子力研究開発機構では、170GHz ITER用ジャイロトロンの開発を精力的に継続している。長パルス化を阻害する要因として、発振に重要な役割を果たす電子ビーム電流が、動作中に徐々に減少し、それに伴い出力が減少するあるいは他の不要モードを誘起し目的の発振モードを維持できないという課題が指摘されていた。そこでこの課題を解決し、ジャイロトロンの長パルス動作を実証するために、カソードヒータの制御にプレプログラミング制御を導入し、ビーム電流を維持することを試みた。プレプログラミング制御の結果、発振を伴わないビーム電流引き出し試験において、ITERで必要とされる安定なビーム電流を1000秒間維持することを実現し、プレプログラミング制御の有効性を実証した。また、170GHzジャイロトロンの長パルス発振試験においても、ビーム電流一定制御を実現し、動作時間中で0.5A以内の変動幅に抑えることができた。その結果、約200kWで、最大約8分間の安定した発振を実現し(ダミーロードから求められるパワーが一定)、管内真空度も安定であった。達成した成果は出力エネルギーとしては、原研が開発したジャイロトロンの中では最大である。一方で、パルス幅はジャイロトロン内部の発熱により制限されたが、1MW出力時に発生しうる不要RFのパワーによるジャイロトロン内部の発熱の軽減、及び除熱を強化すべき箇所を明らかにでき、1MW出力時の冷却性能向上に見通しを得た。

35000029
Ripple reduction with ferritic insert in JFT-2M
篠原 孝司; 佐藤 正泰; 川島 寿人; 都筑 和泰; 鈴木 貞明; 浦田 一宏*; 伊世井 宣明; 谷 孝志; 菊池 一夫; 柴田 孝俊; 木村 晴行; 三浦 幸俊; 草間 義紀; 山本 正弘*; JFT-2Mグループ 
Fusion Science and Technology 49(2), p.187-196(2006) ; (JAEA-J 01578)
 JFT-2Mではフェライト鋼の挿入によりトロイダル磁場のリップルを低減した。二種の低減法が試された。最初の場合では、フェライト鋼はトロイダルコイルと真空容器に挟まれる空間に設置された。二つ目の場合ではフェライトは真空容器の内面をほぼ全面覆うように設置された。いずれの場合もリップルの低減に成功し、高速イオンの熱負荷の低減を確認した。また、フェライト鋼によって発生する複雑磁場に対応したOFMCコードも作成した。ここではJFT-2Mのフェライト鋼挿入によるリップル低減についてレビューする。

35000030
Irregular loops with long time constants in CIC conductor
谷貝 剛*; 佐藤 秀成*; 津田 理*; 濱島 高太郎*; 布谷 嘉彦; 高橋 良和; 奥野 清
IEEE Transactions on Applied Superconductivity 16(2), p.835-838(2006) ; (JAEA-J 01579)
 ITERに用いられるCIC型導体内には、撚りピッチの2乗に比例する規則的損失と短尺導体サンプルの実験結果から予測できない不規則的損失がある。以前のわれわれの論文により、素線がつくる不規則なループは数百秒という長い時定数を持つこと,ループをつくる2本の素線は線接触であることがわかった。より詳細に素線間の接触を研究するために、NbTi素線から構成される撚線(1m)を11mmごとに接触の状況を調査した。調査の結果、導体製作時の圧縮により元の位置から素線が移動することにより線接触をつくることが明らかになった。線接触の長さは約10mmにも達し、点接触の長さ(0.01mm)の千倍にもなるという有用な情報が得られた。

35000031
Implications of NbTi short-sample test results and analysis for the ITER Poloidal Field Conductor Insert (PFCI)
Zanino, R.*; Bagnasco, M.*; Baker, W.*; Bellina, F.*; Bruzzone, P.; della Corte, A.*; Ilyin, Y.*; Martovetsky, N.*; Mitchell, N.*; Muzzi, L.*; Nijhuis, A.*; 布谷 嘉彦; 奥野 清; Rajainmaki, H.*; Ribani, P. L.*; Ricci, M.*; Salpietro, E.*; Richard, L.*; Shikov, A.*; Sytnikov, V. E.*; 高橋 良和; Taran, A.*; Vedernikov, G.*; Zapretilina, E.*
IEEE Transactions on Applied Superconductivity 16(2), p.886-889(2006) ; (JAEA-J 01580)
 那珂核融合研究所においてITERポロイダル磁場コイル導体インサート(PFCI)の実験が予定されている。このため、PFCIの適切な実験プログラムを作成することを目的として、NbTi短尺導体サンプル実験から得られた結果の解析を行った。特に、次の項目について検討を行った;(1)巻線内の導体ジョイントがクエンチする前に導体自身の分流開始温度Tcsを測定できる可能性に関する検討。(2)解析コードMithrandirを用いて短尺導体サンプルの実験結果を解析し、いわゆる突然の又は早期のクエンチの可能性に関する検討。(3)PFCI実験における熱量法によるACロス測定の可能性。検討の結果、Tcs及びACロスの測定は可能であることがわかった。しかし、突然のクエンチについては今後のこれらの検討が必要である。

35000032
Characterization of neutron fields using mcnp in the experimental fast reactor JOYO
前田 茂貴; Wootan, D. W.; 関根 隆
Journal of ASTM International (Internet) 3(8), 9p.(2006) ; (JAEA-J 01581)
 高速実験炉「常陽」は、高速中性子照射炉としての照射性能を向上させたMK-III炉心の本格運転を開始した。このMK-III炉心での照射場の詳細な評価を行うため、連続エネルギーモンテカルロコード"MCNP"を用いた照射条件評価手法を確立した。MCNPによる解析では、JENDL-3.2ベースの断面積ライブラリーを用い、計算体系については炉心構成要素を燃料ピンレベルまで詳細にモデル化し、別途拡散理論に基づく炉心管理コードシステムで求めた燃焼組成を入力し、固有値計算を行った。中性子束の絶対値は、定格出力での総発熱量を用いて規格化した。本解析手法の精度をMK-II炉心での実測ドシメトリーにより評価した結果、反応率及び中性子束の比較で良い一致を示し、従来用いている輸送計算手法に比べて、非均質性の強い試験用集合体内や反射体領域での中性子束を精度良く評価できることを確認した。今後は、MK-III炉心第1サイクル、第2サイクルで実施した核特性測定試験の結果によりMK-III炉心での評価精度を確認し、照射条件評価手法として利用していく。

35000033
Anthropogenic radionuclides in sediment in the Japan Sea; Distribution and transport processes of particulate radionuclides
乙坂 重嘉; 天野 光; 伊藤 集通; 川村 英之; 小林 卓也; 鈴木 崇史; 外川 織彦; Chaykovskaya, E. L.*; Lishavskaya, T. S.*; Novichkov, V. P.*; Karasev, E. V.*; Tkalin, A. V.*; Volkov, Y. N.*
Journal of Environmental Radioactivity 91(3), p.128-145(2006) ; (JAEA-J 01582)
 1998年から2002年にかけて、日本海の22観測点で観測した堆積物中の放射性核種(90Sr, 137Cs及び239+240Pu)の存在量と存在比から、同海域における粒子状放射性核種の輸送と蓄積過程を明らかにした。日本海における堆積物中の90Sr, 137Cs及び239+240Puの存在量は、それぞれ0.6-87Bq/m2, 5.9-379Bq/m2及び0.6-78Bq/m2の範囲であった。日本海盆及び大和海盆では、深海(水深2km以深)部における堆積物中の放射性核種存在量は同程度であったが、堆積物中の平均239+240Pu/137Cs比は大和海盆に比べて日本海盆で大きかった。特に西部日本海盆で見られた大きな239+240Pu/137Cs比は、この海域表層へのPu/Cs比の大きな粒子の生成と深海への急速な粒子沈降がもたらした結果であると結論付けられた。対馬海盆及び大和海盆縁辺部では、堆積物中の放射性核種の存在量及び239+240Pu/137Cs比が大きかった。対馬暖流による粒子状放射性核種の水平輸送が南部及び東部日本海における堆積物への大きな放射性核種の蓄積をもたらしたと考えられた。

35000034
Developments in the fabrication technology of low density MOX pellets for fast breeder reactor fuel
朝倉 浩一; 山口 俊弘; 大谷 哲雄
Journal of Nuclear Materials 1-3(357), p.126-137(2006) ; (JAEA-J 01583)
 密度降下剤として数種類の有機化合物を用いて低密度MOXペレットの製造法を研究した。7.5kgの二酸化ウランを用いたペレット製造試験においては、5種類の密度降下剤のうち、K3が最も優れた性能を発揮したが、36kgのMOXを用いたペレット製造試験ではプルトニウムの崩壊熱がK3の性能に影響を与えている可能性が高く、同様の性能を発揮できなかった。K3と新しく導入した高い軟化温度を有する密度降下剤であるアビセルとの熱的安定性の比較試験において、K3は報告されている融点(84-88℃)より低い70℃において球状の形状を喪失し、結果として密度降下剤としての性能を失った。一方、アビセルは150℃までその球状の形状を維持できた。MOX燃料ペレットの量産規模と同じスケールである36kgのMOXを用いたペレット製造試験においてもアビセルのポア形成性能は確認できた。

35000035
Evaluation of residual tritium in stainless steel irradiated at SINQ target 3
菊地 賢司; 中村 博文; 辻本 和文; 小林 和容; 横山 須美; 斎藤 滋; 山西 敏彦
Journal of Nuclear Materials 356(1-3), p.157-161(2006) ; (JAEA-J 01584)
 SINQターゲットで高エネルギー陽子を鉄鋼材に照射すると、種々の放射性核種とともに、1dpaあたり水素が数百appm、ヘリウムが数十appm生成される。しかしこれまでトリチウムガスの生成量については報告されていない。そこで、ターゲットモデレータ体系の計算と、γ線測定による計算手法のベンチマーク試験、及び加熱法による試料から放出されるトリチウムを液体シンチレーションカウンターで測定し、照射終了時に試料に残存していた量を評価した結果、計算推定量の約20%以下(照射温度が250℃以下の試料に対して)であることがわかった。加熱時のガス放出開始は250℃以上であった。

35000036
Measurement of LBE flow velocity profile by UDVP
菊地 賢司; 武田 靖*; 大林 寛生*; 手塚 正雄*; 佐藤 博
Journal of Nuclear Materials 356(1-3), p.273-279(2006) ; (JAEA-J 01585)
 核破砕ターゲットモデル反転流部の鉛ビスマス流を超音波で測定した。鉛ビスマス流の測定はこれまでに報告がなく、それは濡れ性が悪いことが原因であることが今回の実験で明らかになった。モデルループは同軸二重管の環状流が反転して管状流に移行するため、流れ場の遷移が非定常となる。鉛ビスマスの駆動は電磁ポンプ,流量測定は電磁流量計で行った。測定の結果、陽子ビームが当たる窓部では流れが淀み、熱伝達特性に影響を及ぼす局所流れの様子がわかった。

35000037
Neutronics calculations of HTTR with several nuclear data libraries
後藤 実; 野尻 直喜; 島川 聡司
Journal of Nuclear Science and Technology 43(10), p.1237-1244(2006) ; (JAEA-J 01586)
 HTTRを対象とした臨界ベンチマーク計算を行った。計算コードには連続エネルギーモンテカルロコードMVPを用い、中性子断面積セットはJENDL-3.3, JENDL-3.2, ENDF/B-6.8及びJEFF-3.0に基づくものを用いた。計算は、室温での環状炉心,室温及び全出力運転での円柱状の全炉心について行い、keffを求めた。核データライブラリの違いに起因するkeffの差異の検討,その差異に寄与する核種の同定、及びkeffの計算結果と試験結果の比較を行った。その結果、各核データが与える計算結果は試験結果に対して、JENDL-3.3は1.5%Δk以内、JENDL-3.2は1.7%Δk以内、そしてENDF/B-6.8とJEFF-3.0は1.8%Δk以内で一致し、HTTRの臨界計算についてはJENDL-3.3が最も良い計算結果を与えることがわかった。また、JENDL-3.3とJENDL-3.2の間の差異は、U-235のデータの違いによるものであり、その大きさは温度に依存すること,JENDL-3.3とENDF/B-6.8及びJENDL-3.3とJEFF-3.1の間の差異は黒鉛(炭素)のデータのわずかな違いによるものであることがわかった。

35000038
Emission probabilities of γ rays from the decay of 233Pa and 238Np, and the thermal neutron capture cross section of 237Np
原田 秀郎; 中村 詔司; 太田 雅之; 藤井 俊行*; 山名 元*
Journal of Nuclear Science and Technology 43(11), p.1289-1297(2006) ; (JAEA-J 01587)
 237Npの熱中性子捕獲断面積を決定するために、233Paから放出される312keVγ線及び238Npから放出される984keVγ線に対する1崩壊あたりのγ線放出率を放射能とγ線強度の比から測定した。γ線の強度は、Ge検出器で測定し、放射能強度は、Si検出器で測定した。この結果、233Paから放出される312keVγ線の放出率として、41.6±0.9%を、また、238Npから放出される984keVγ線の放出率として25.2±0.5%を得た。これらの結果を用いて、従来γ線分光法で求まった中性子捕獲断面積を補正すると237Npの熱中性子捕獲断面積として168±6bが得られた。また、本研究では、α線分光法を用いて独立に237Npの熱中性子捕獲断面積を測定した。この結果、172±6bを得た。測定したγ線放出率及び熱中性子捕獲断面積について、従来の文献値と比較し、議論している。

35000039
Equilibrium evaporation behavior of polonium and its homologue tellurium in liquid lead-bismuth eutectic
大野 修司; 倉田 有司; 宮原 信哉; 桂 了英*; 吉田 茂*
Journal of Nuclear Science and Technology 43(11), p.1359-1369(2006) ; (JAEA-J 01588)
 液体鉛ビスマス(LBE)冷却型原子炉システムにおいて生成・蓄積される放射性ポロニウム(210Po)の平衡蒸発挙動に関する実験研究をトランスパイレーション法によって実施した。実験は2種類すなわち、同族元素テルル(Te)を対象とした予備的な蒸発実験及び中性子照射によって210Poを蓄積させたLBEの蒸発実験から成る。LBE中のTeを対象とした蒸発実験から、Po試験技術・試験条件の妥当性を確認するための知見を得るとともに、気相中においてTeはPbTeの化学形態で存在するとの示唆を得た。LBE中210Poの蒸発実験では、気相中の210Poの蒸気濃度と蒸気分圧,LBE中の210Poの熱力学的活量係数と気液平衡分配係数などの基礎データを取得し、450-750℃の温度範囲における実験相関式を導出した。また、得られた実験結果をもとに、典型的なLBE冷却原子炉システムの冷却材カバーガス空間における210Poと210mBiの放射能蒸気濃度を見積もり、その結果から210Poの蒸発挙動の重要性を示した。

35000040
Calculation of criticality condition data for single-unit homogeneous uranium materials in six chemical forms
奥野 浩; 吉山 弘; 三好 慶典
Journal of Nuclear Science and Technology 43(11), p.1406-1413(2006) ; (JAEA-J 01589)
 「臨界安全ハンドブック」の参考データとして添付された「臨界安全ハンドブック・データ集」の改訂のため、単一ユニットの臨界条件データを均質ウラン物質の6種類の化学形態について計算した。計算された臨界条件データは、質量,球体積,無限長円柱直径,無限平板厚さの推定臨界値及び推定臨界下限値で、核燃料サイクル施設の臨界安全評価で遭遇するウラン物質の典型的な6種類の化学形態についてのものである。化学形態はU-H2O, UO2-H2O, UO2F2水溶液,UO2(NO3)2水溶液,ADU-H2O及びUF6-HFであり、このうち、U-H2O及びUF6-HFは「データ集」には含まれていなかった。計算は連続エネルギーモンテカルロ計算コードMVPと日本の評価済み核データライブラリJENDL-3.2を用いて行われた。従来の計算結果及びドイツの臨界ハンドブックとの比較も行った。文献値及び以前の計算結果との比較により、値及び計算精度についても議論した。

35000041
High sensitivity measurement of Iodine-129/Iodine-127 ratio by accelerator mass spectrometry
鈴木 崇史; 北村 敏勝; 甲 昭二*; 外川 織彦; 天野 光
Journal of Nuclear Science and Technology 43(11), p.1431-1435(2006) ; (JAEA-J 01590)
 日本原子力研究開発機構の加速器質量分析装置にヨウ素ラインを設置した。このヨウ素ラインは高分解能の分析電磁石及び高エネルギー分解能の静電ディフレクターによって妨害イオンを除去するシステムになっている。ヨウ素ラインを設置後、さまざまなトラブルに見舞われたが修理,改善を行った結果、0.53%の再現性と1.1%の精度に達した。10-10から10-12までのヨウ素同位体比を持つ標準試料を測定した結果、このヨウ素ラインは129Iを精度よく測定できることを実証した。低レベルの129Iを測定する際、メモリー効果が観測されたので、検出限界を再度見積もった。検出限界値はヨウ素同位体比で10-14レベルであった。これらの結果から判断するとこのヨウ素ラインは原子力施設のモニタリングだけでなく年代測定やトレーサー利用といった地球環境科学分野に応用できる可能性を有している。

35000042
Computer simulation of reaction-induced self-assembly of cellulose via enzymatic polymerization
川勝 年洋; 田中 宏和; 小泉 智; 橋本 竹治
Journal of Physics; Condensed Matter 18(36), p.S2499-S2512(2006) ; (JAEA-J 01591)
 水溶液中における酵素分子の特異場でのセルロース分子の人工合成と、合成反応に誘起されたセルロース分子の自己組織化過程についての中性子小角散乱、及び電子顕微鏡観察結果を、計算機シミュレーションにより理論解析した。

35000043
μSR studies of Pu metal and the Pu-based superconductor PuCoGa5
Heffner, R. H.; Bauer, E. D.*; Chung, B.*; Fluss, M. J.*; 髭本 亘; 伊藤 孝; MacLaughlin, D. E.*; Morales, L. A.*; Morris, G. D.*; 大石 一城; Sarrao, J. L.*; Shu, L.*
Journal of the Physical Society of Japan 75(Suppl.), p.14-19(2006) ; (JAEA-J 01592)
 Puの磁性及びPuCoGa5の超伝導について報告する。Pu金属の基底状態、特に磁気的状態は固体物理における基本的かつ興味深い問題である。われわれはμSR法を用いてα型及びδ型のプルトニウム金属についての測定を行い、実験的に存在しえる磁気モーメントの上限を決定した。またPuCoGa5において磁場侵入長の測定を行い、温度に比例して増加することを見いだすとともに時間反転対称性があることを確認した。これらの結果は偶パリティを持つ超伝導状態と一致する。

35000044
Neutron and X-ray scattering studies of relaxors
廣田 和馬*; 脇本 秀一; Cox, D. E.*
Journal of the Physical Society of Japan 75(11), p.111006_1-111006_13(2006) ; (JAEA-J 01593)
 本論文は白根元博士とその共同研究者らにより行われたリラクサー強誘電体の中性子及びX線散乱実験をレビューしたものである。彼らが1999年以降に発表した50編に及ぶ学術論文のなかでも、特に重要な3つの成果は、(1)PMN(PZN)-xPT系のmorphotropic phase boundaryにおけるモノクリニック相の発見,(2)リラクサーにおける横光学ソフトモードの存在とその役割の解明,(3)リラクサーの特異な性質の根源となる微小分極領域の、特に散漫散乱からの、詳細な研究である。本論文ではこれらの話題に焦点を当て、以上の研究がリラクサー強誘電体の理解にいかなるインパクトを与えたかを議論する。

35000045
Ferroelectricity induced by incommensurate-commensurate magnetic phase transition in multiferroic HoMn2O5
木村 宏之*; 鎌田 陽一*; 野田 幸男*; 金子 耕士; 目時 直人; 近 桂一郎*
Journal of the Physical Society of Japan 75(11), p.113701_1-113701_4(2006) ; (JAEA-J 01594)
 RMn2O5(R=rare earth, Bi, Y)は巨大電気磁気効果(CMR効果)を示す物質として知られている。CMR効果を示す物質の共通な性質として、磁気秩序と誘電秩序が共存するマルチフェロイック状態があるが、二つの秩序の微視的な相関はまだ明らかにされていない。われわれはその微視的相関を明らかにするために、磁場中中性子回折実験を行って、磁場誘起微視的磁性と誘電性との関係を調べた。その結果、磁場印加によって強誘電相が出現するHoMn2O5において、誘電相転移と同時に格子不整合−整合磁気相転移が起こることを見いだした。得られた結果から誘電性及び磁性における相境界が完全に一致し、格子整合磁気相でのみ強誘電相が現れることがわかった。このことは、この系で現れる誘電相転移が磁気相転移によって引き起こされ、さらに強誘電相にとって格子整合磁気構造が必須であることを示している。

35000046
Charge fluctuations in geometrically frustrated charge ordering system
妹尾 仁嗣; 筒井 健二*; 小形 正男*; Merino, J.*
Journal of the Physical Society of Japan 75(11), p.114707_1-114707_8(2006) ; (JAEA-J 01595)
 低次元電荷秩序系における幾何学的フラストレーションの効果を、おもに動的性質に注目し理論的に調べた。さまざまな電荷移動型分子性導体や遷移金属酸化物の有効モデルである、異なる電荷秩序パターンを安定化するサイト間クーロン相互作用を含む1/4-fillingの拡張ハバードモデルを取り扱う。以前の研究からフラストレーションが強い領域では電荷秩序絶縁体が不安定化し、広い金属相が相互作用の強い領域まで広がることが知られている。ランチョス厳密対角化法を適用し、この金属領域において異なる電荷秩序の揺らぎが共存し特徴的な低エネルギーモードが動的相関関数に現れることがわかった。

35000047
Magnetic field-induced martensitic transformation of Heusler-type Ni2MnGa system
井上 和子*; 山口 泰男*; 石井 慶信; 山内 宏樹; 宍戸 統悦*
Materials Science Forum 539-543, p.3267-3272(2007) ; (JAEA-J 01596)
 室温付近にキュリー点と一致するマルテンサイト変態点を有するホイスラー型Ni2MnGa系合金について、単結晶のマルテンサイト変態過程に対する磁場効果を明らかにするために、8テスラまで磁場を印加して中性子回折実験を行った。その結果、マルテンサイト変態点近傍の温度において印加した磁場が、温度変化による変態と極めてよく似た効果をもたらすことを初めて見いだした。

35000048
Down-regulation of radioresistance by LexA2 in Deinococcus radiodurans
佐藤 勝也; 大庭 寛史; Sghaier, H.; 鳴海 一成
Microbiology 152(11), p.3217-3226(2006) ; (JAEA-J 01597)
 デイノコッカス・ラジオデュランスは、DNA損傷応答にかかわる蛋白質の発現を制御する因子としてLexA2蛋白質を持っているが、その機能は未解明であった。そこで、DNA損傷応答機構におけるLexA2蛋白質の役割を明らかにするため、lexA2遺伝子破壊株を作製し、γ線に対する感受性及びDNA修復促進蛋白質PprAの発現制御機構への関与について解析を行った。γ線に対して、lexA2遺伝子破壊株は野生株よりも高い抵抗性を示したことから、LexA2蛋白質によってDNA修復蛋白質の発現が抑制されていると考えられた。さらに、pprA遺伝子の発現に必要であるプロモーターの活性化変動を解析した。その結果、lexA2遺伝子破壊株では野生株よりも高いプロモーター活性を示したことから、lexA2遺伝子破壊株が持つ高いγ線抵抗性の一端は、pprA遺伝子プロモーター活性化の増強によることを明らかにした。

35000049
Studies of fast-ion transport induced by energetic particle modes using fast-particle diagnostics with high time resolution in CHS
磯部 光孝*; 東井 和夫*; 松下 啓行*; 後藤 和幸*; 鈴木 千尋*; 永岡 賢一*; 中島 徳嘉*; 山本 聡*; 村上 定義*; 清水 昭博*; 吉村 泰夫*; 秋山 毅志*; 南 貴司*; 西浦 正樹*; 西村 伸*; Darrow, D. S.*; Spong, D. A.*; 篠原 孝司; 笹尾 真実子*; 松岡 啓介*; 岡村 昇一*; CHSチーム*
Nuclear Fusion 46(10), p.S918-S925(2006) ; (JAEA-J 01598)
 将来の核融合炉におけるアルファ粒子等の高速イオンによるMHD不安定性の励起とそれに伴うアルファ粒子の異常損失の危惧から、近年、高速粒子モード(EPM)やTAEモードといったMHD不安定性と高速イオンとの相互作用、並びにその結果生ずる高速イオン輸送・損失に関する研究が重要視されるようになってきている。核融合科学研究所のCompact Helical System(CHS)では、シンチレータを利用した高速イオンプローブ,高速中性粒子分析器、並びに多チャンネルHalpha光計測システム等を駆使して上記を研究対象とした実験を進めている。最近の研究から、中性粒子ビーム(NB)加熱プラズマにおいて発生するバースト的EPMモード(m/n=3/2)により、入射エネルギー近傍のエネルギーを持つ高速イオンのみが大半径方向外側へ排出されていることがわかった。磁場揺動レベルが最大に達した頃に高速イオンの排出が始まり、磁場揺動の周波数は、排出が始まると同時にダウンシフトを示す。高速イオン排出が収まるのとほぼ同時に磁場揺動も収まり、これらの観測結果は、このモードは入射エネルギー近傍の高速ビームイオンによりいわば共鳴的に励起されていることを示唆している。また、TAEモードについては、2機のNBを低密度プラズマに接線co-入射した場合に、顕著な高速イオンの排出が確認された。

35000050
Charged-particle spectrometry using a pencil-beam DT neutron source for double-differential cross-section measurement
近藤 恵太郎; 村田 勲*; 落合 謙太郎; 宮丸 広幸*; 久保田 直義; 高木 智史*; 志度 彰一*; 高橋 亮人*; 西谷 健夫
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 568(2), p.723-733(2006) ; (JAEA-J 01599)
 重水素−三重水素核融合反応(DT反応)による中性子誘起荷電粒子放出二重微分断面積(DDXc)は、核融合炉における核発熱や照射損傷を評価するために必要である。特に軽元素のDDXc精密測定のため、ペンシルビーム状中性源とシリコン表面障壁型検出器によるカウンターテレスコープを利用した新しい測定手法を提案した。この手法により、これまでに報告されている測定手法に比べ高いS/N比,良好なエネルギー・角度分解能,幅広い測定エネルギー,良好な粒子弁別能が実現された。測定手法の妥当性評価のため、27Al(n,xα)反応からのα粒子測定と1H(n,n)反応による弾性反跳陽子の測定を行った。この結果に基づき、本測定手法の妥当性と優位性を結論した。

35000051
Loop formation by ion irradiation in yttria stabilized zirconia
北條 智博*; 山本 博之; 相原 純; 古野 茂実*; 沢 和弘; 佐久間 隆*; 北條 喜一
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 250(1-2), p.101-105(2006) ; (JAEA-J 01600)
 イットリア安定化ジルコニア(YSZ)は原子炉材料として優れた特性が期待されている。このためYSZの耐照射性を評価することはその利用のうえで不可欠である。本研究ではYSZに30keV, Ne+を723-1123Kで照射し、その際に生じる構造変化について透過型電子顕微鏡を用いその場観察を行った。この結果、1023Kでは欠陥クラスター及びバブルが均一に生成することが確認された。一方1123Kでは照射初期においてバブルの生成がみられたが、照射量の増加に伴い転位ループの形成が顕著となった。さらに確認されたバブルはその多くがループ面に沿って観測されること,転位ループはおもに(100), (111), (112)面に存在することなどを明らかにした。

35000052
Radiation effects on MgAl2O4-yttria stabilized ZrO2 composite material irradiated with Ne+ ions at high temperatures
北條 智博*; 山本 博之; 相原 純; 古野 茂実*; 沢 和弘; 佐久間 隆*; 北條 喜一
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 250(1-2), p.123-127(2006) ; (JAEA-J 01601)
 スピネル及び安定化ジルコニアは原子炉材料として優れた特性が期待されている。従来までのわれわれの研究によって、60keV, Xe+照射によりスピネルの非晶質化が観測される一方、安定化ジルコニアについては非晶質化が認められないことを明らかにした。本研究ではスピネル−安定化ジルコニア複合材料における欠陥生成過程について透過型電子顕微鏡を用いたイオン照射中のその場観察を行った。30keV, Ne+を923, 1473Kにおいて毎秒5×1013ions/cm2照射した結果、923Kでは欠陥クラスター及びバブルがジルコニア粒内に均一に生成することが観測された。一方1473Kではバブルの生成のみが観測され、照射量の増加に伴い特にスピネル粒内でバブル径が顕著に増大することを明らかにした。

35000053
Structural changes in anatase TiO2 thin films irradiated with high-energy heavy ions
石川 法人; 山本 春也; 知見 康弘
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 250(1-2), p.250-253(2006) ; (JAEA-J 01602)
 230MeV Xeイオン照射したアナターゼ型TiO2薄膜における電子励起効果をX線回折法により調べた。X線回折強度の照射量依存性は、指数関数的に減少することがわかった。この照射による損傷挙動は約10nmサイズのトラック形成によるものである。イオン照射したルチル型TiO2薄膜と異なる損傷挙動を示すこともわかった。X線回折法が、トラック構造に関する定量的情報を抽出する有力な方法であることを示すことができた。

35000054
A System design study of a fast breeder reactor hydrogen production plant using thermochemical and electrolytic hybrid process
近澤 佳隆; 中桐 俊男; 此村 守*; 内田 正治*; 土山 佳彦*
Nuclear Technology 155(3), p.340-349(2006) ; (JAEA-J 01603)
 ハイブリッド熱化学法は硫酸を用いた熱化学法であるウェスティングハウス法にSO3ガス電気分解を併用することにより500℃程度の温度で水素を生成する手法である。本研究ではナトリウム冷却高速炉を熱源とした水素製造プラントを想定し、耐硫酸性の観点から水素製造系の系統仕様と主要機器の概念設計を行い、水素製造系物量及び水素製造効率等を評価した。系統仕様の工夫により鉄系の材料を用いて水素製造系機器の設計が可能であり、高効率の電気分解を前提とすれば水素製造効率44%程度が達成可能であることが明らかとなった。

35000055
Numerical study of nuclide migration in a nonuniform horizontal flow field of a high-level radioactive waste repository with multiple canisters
Doo-Hyun, L.
Nuclear Technology 156(2), p.222-245(2006) ; (JAEA-J 01604)
 水飽和した高レベル放射性廃棄物処分場の不均質な流れの場における核種移行について、複数キャニスターと不均質な流れの場を結合させた2次元数値モデルを用いて解析した。不均質な流れの場は、空間に依存した地下水の流速ベクトルについて有限要素法を用いて数学的に作り出した。核種の移行については、ランダムウォーク法を用い、instantaneous-pulse-inputをソースコンディションとしてシミュレーションを行った。現段階の研究において、処分場における核種の移行量は、処分ピットを(処分坑道に対して)垂直に配置した場合に、キャニスターの形状ばかりではなく流れの境界条件においても、顕著に影響を受けていることが明らかとなった。なお、このときの地下水の流れの方向と処分坑道を配置する面とは平行であるとみなした。動水勾配の方向の影響を核種の移行に適用した場合の影響は、キャニスターの数が1つの場合は無視して良い程度であるが、キャニスターの数が増加するに伴ってより顕著となる。また、キャニスターの数が増えるにしたがって、核種の移行は動水勾配の方向の変化の影響をより大きく受けるようになる。動水勾配の方向が処分坑道と直交する場合、放射性核種の隔離において有利である様子が観察された。単一キャニスターの場合、動水勾配の方向を変化させた場合においても、複数のキャニスターを配置した場合に比べて保守的なシミュレーション結果となった。

35000056
New limits on the ordered moments in α-Pu and Ga-stabilized δ-Pu
Heffner, R. H.; Morris, G. D.*; Fluss, M. J.*; Chung, B.*; MacLaughlin, D. E.*; Shu, L.*; Anderson, J. E.*
Physica B; Condensed Matter 374-375, p.163-166(2006) ; (JAEA-J 01605)
 プルトニウム金属における最初のμSR実験の結果について報告する。プルトニウムの基底状態は不明であったが本研究で上限でも10-3μB以下の大きさしか持たないことが明らかになった。

35000057
Methane molecular motion in clathrate hydrate host framework
加美山 隆*; 関 直樹*; 岩佐 浩光*; 内田 努*; 海老沼 孝郎*; 成田 英夫*; 井川 直樹; 石井 慶信; Bennington, S. M.*; 鬼柳 善明*
Physica B; Condensed Matter 385-386(1), p.202-204(2006) ; (JAEA-J 01606)
 メタンハイドレートの中性子非弾性散乱実験を行い、メタンハイドレートホストネットワーク中に内包されるメタン分子の挙動を解析した。その結果、メタンハイドレートに内包されているメタンは自由回転運動をしてるが、そのほかに10meV以下のエネルギー範囲に自由回転運動以外に起因する散乱ピークが観察された。これらのピークはメタンハイドレートの2種類のカゴ中でのメタンの局所的並進運動によるものであることを明らかにした。

35000058
Dynamic and static fluctuations in polymer gels studied by neutron spin-echo
金谷 利治*; 高橋 伸明; 西田 幸次*; 瀬戸 秀樹*; 長尾 道弘*; 武田 隆義*
Physica B; Condensed Matter 385-386(1), p.676-681(2006) ; (JAEA-J 01607)
 中性子スピンエコー法により三種類のポリビニルアルコール(PVA)ゲルについて研究した。第一にジメチルスルホキシド(DMSO)と水を体積混合比60対40で混合したものを溶媒とするもの、第二にPVAのホウ酸水溶液、そして第三に化学架橋のPVAゲルである。中間散乱関数I(q,t)/I(q,0)はそれぞれ大きく異なった。最初のゲルと第三のゲルは、非減衰項を含むが、第二のゲルは含まなかった。これは非減衰項が静的濃度揺らぎに起因して起こることを示唆している。静的濃度揺らぎと動的濃度揺らぎはそれぞれ、ゲル網目による運動の制限とZimmモードに起因する高分子鎖セグメントの運動を示していることが明らかとなった。

35000059
Rheo-SANS study on gelation of poly(vinyl alcohol)
高橋 伸明; 金谷 利治*; 西田 幸次*; 高橋 良彰*; 新井 正敏
Physica B; Condensed Matter 385-386(1), p.810-813(2006) ; (JAEA-J 01608)
 われわれはポリビニルアルコールの重水素化ジメチルスルホキシド/重水混合溶液の物理ゲル化過程におけるせん断流動印加効果を時間分割二次元小角中性子散乱測定により研究した。サンプル溶液を100℃から25℃へクエンチした直後から定常せん断を印加し、時間分割測定を行った。観測した二次元散乱パターンは等方的であったが、散乱強度はゲル化に伴い増加した。また散乱強度の増加の度合いは、印加したせん断速度に依存することが明らかとなった。これまでの研究から本系のゲル化プロセスは、高分子鎖の結晶化により形成した微結晶が網目の架橋点として働くことが明らかとなっており、測定Q範囲は架橋点、及び網目構造を反映したものであることから、当該Q範囲の散乱強度から結晶化速度を評価し、定常せん断速度に対してプロットした。その結果、結晶化速度は、せん断速度5sec-1以下ではせん断速度の増加に伴いエンハンスされること,それ以上の高速せん断下においては結晶化速度が静置場よりも下がることが明らかとなった。この結果は、フレキシブルな高分子鎖の部分的な配向が、微弱な定常せん断を印加することにより誘起されていることを示唆しており、同時に、高速せん断下においては高分子鎖がより強く配向されているはずであるが、一旦形成した結晶核が破壊されることによるものと推測される。

35000060
Study of converging neutron guides for the cold neutron double-chopper spectrometer at J-PARC
梶本 亮一; 中村 充孝; 長壁 豊隆; 佐藤 卓*; 中島 健次; 新井 正敏
Physica B; Condensed Matter 385-386(2), p.1236-1239(2006) ; (JAEA-J 01609)
 J-PARCに建設が予定されている冷中性子ダブルチョッパー分光器(CNDCS)のための中性子ガイド管の性能の検討を行った。この分光器はEi<80meVのエネルギー範囲での中性子非弾性散乱法による物性研究に用いられる。弱い非弾性散乱シグナルを検出するためには試料位置での中性子強度をできるだけ上げ、かつ検出器位置でのバックグラウンドを抑える必要がある。その点、中性子ガイド管は多くの中性子を試料まで輸送することができる一方、曲管にすることで不要な中性子が検出器に到達するのを抑えることもできる重要なデバイスである。ガイド管の性能は、その形状,配置に依存するが、ガイド管形状が直線状,曲線状,テーパー状,放物線状,楕円状などのときの中性子強度のエネルギー依存性や空間分布,角度分布をモンテカルロシミュレーションによって求め、CNDCS分光器にとって最適な形状について比較検討した。

35000061
Microscopic structure of a quantized vortex core in atomic fermi gases
町田 昌彦; 大橋 洋士*; 小山 富男*
Physical Review A 74(2), p.023621_1-023621_5(2006) ; (JAEA-J 01610)
 原子物理学研究の最前線に位置する原子ガスの研究では、最近、ガスを極低温に冷却することにより超流動転移が確認されたほか、ガスを回転させると、超流動特有の渦の量子化が起こることが直接観察されるなど、急速に研究が進展している。本研究では、この原子ガスにおいて観察された渦の構造を微視的な方程式を数値シミュレーションすることにより明らかにし、実験結果との比較を行った。その結果、シミュレーションは実験事実を定性的によく再現する一方、いかに渦の構造が原子間相互作用により変化するかといった詳細な情報を初めて明らかにした。この成果は、原子間相互作用が極めて強く、未知の超強結合超流動状態における渦構造を示した一方、超流動を超伝導に焼き直すことで、未だ実現していないが、室温超伝導の渦構造を予言するものであり、原子物理学だけでなく、超伝導物理学の分野にもインパクトを与える成果であると位置づけられる。

35000062
Time-dependent ginzburg-landau theory for atomic fermi gasses near the BCS-BEC crossover
町田 昌彦; 小山 富男*
Physical Review A 74(3), p.033603_1-033603_6(2006) ; (JAEA-J 01611)
 原子物理学の最前線で最も研究が盛んに行われているのは、極低温に冷却した原子気体であり、その振る舞いは従来の物理学の枠組みでは理解することができないため、新しい理論的枠組みが提出されている。本研究成果は、その理論的枠組みの中でも、物理(原子ガス)系の時間発展を記述する新理論であり、新しい予言を含んでいる。中でも、最もインパクトのある予言は、原子ガスの超流動状態では、渦は量子化されるが、その構造はスパイラルになるという点であり、従来、超流動,超伝導と広く、研究されてきた量子渦の全く新しい形であり、その実験的確認が期待される。

35000063
Unified theory for magnetic and electric field coupling in multistacked Josephson junctions
町田 昌彦; 酒井 滋樹*
Physical Review B 70(14), p.144520_1-144520_6(2004) ; (JAEA-J 01612)
 高温超伝導体は、その結晶構造が超伝導及び絶縁体(物質によっては半導体や金属)の積層構造からなっており、積層方向に対して弱くジョセフソン結合していることが知られている。また、最近、超伝導体に対するナノファブリケーション技術が発達してきたため、人工的にも積層型のジョセフソン接合が作られるようになっている。本論文では、この積層型ジョセフソン接合の超伝導位相のダイナミクスを記述する理論を構築し、基本方程式を導出した。また、この基本方程式から、超伝導位相の微小振動(プラズマモード)の分散関係を示し、超伝導プラズマモードがどのように励起されるかを示した後、縦プラズマを励起してモード変換により電磁波へと変換可能であること等を議論し、電磁波発振源としての可能性についても記している。

35000064
Neutron scattering study of magnetic structure and metamagnetic transition between low- and high-moment states of NpNiGa5
本多 史憲; 目時 直人; 金子 耕士; 浄念 信太郎; 山本 悦嗣; 青木 大*; 本間 佳哉*; 芳賀 芳範; 塩川 佳伸*; 大貫 惇睦*
Physical Review B 74(14), p.144413_1-144413_12(2006) ; (JAEA-J 01613)
 中性子回折実験によりNpNiGa5の磁気構造,メタ磁性についての詳細な研究を行った。実験の結果NpNiGa5は30K以下で強磁性(FM)、18K以下で自発磁化を持つcant反強磁性秩序(cAFM)を示すことを明らかにした。この物質のFM相では約0.5μB/NpのNpのモーメントがc軸を向いている。cAFM相では面内の反強磁性成分が成長し、隣り合うモーメント間が約80°のcant相が出現する。さらにこの相に入ることでFM成分も突然増加してモーメントの大きさは約0.8μB/Npに増大することがわかった。cAFM相からFM相へのメタ磁性転移では、AFMが完全に消失し、強磁性成分も磁場中で減るため、Np自身のモーメントは0.5μB/Npにまで減少する。さまざまな磁場・温度で磁気モーメントの大きさ、cant角を詳しく調べた結果、cAFM-FM転移は単に磁気モーメントが傾くだけではなく、高いモーメント状態のFMと低いモーメント状態のcAFMの転移であることがわかった。また正方晶構造では単一イオン異方性を考えると容易軸は通常c軸に平行か垂直になるが、ここではcant構造が現れている点が興味深い。このようなcant磁性は5f電子の複数の軌道が絡んだ現象であると考えられるので、磁気モーメントの大きさの変化や、cant磁性の出現は5f電子状態の大きな変化によって引き起こされていると結論づけられる。

35000065
Localization of electrons in the sugar/phosphate backbone in DNA investigated via resonant Auger decay spectra
馬場 祐治; 関口 哲弘; 下山 巖; 平尾 法恵*; Nath, K. G. *
Physical Review B 74(20), p.205433_1-205433_5(2006) ; (JAEA-J 01614)
 生体分子薄膜は、バイオセンサー,バイオチッブなど種々の機能性電子材料としての応用が期待されており、これらの開発においては薄膜の持つ電気伝導度が重要な物性となっている。特にDNA分子が一次元方向に電気伝導性を持つかどうかについては種々の議論があるが、一次元状の分子に直接電極を取り付けることが困難なため、未解決の問題となっている。そこで、本研究では分子に直接電極を取り付ける必要のない分光学的手法である共鳴オージェ電子分光法により1本鎖のDNA分子を測定し、価電子帯の電子の局在性について議論した。リン原子のK-吸収端近傍の放射光を照射したときのオージェ電子スペクトルを詳細に測定した結果、P 1s→π*共鳴励起状態では、ワイドギャップ絶縁体特有のオージェ電子ピークの分裂が明瞭に認められた。これは、P 1s軌道から励起された電子が価電子帯の非占有軌道に局在していることを示しており、1本鎖のDNA分子においてはリン酸−糖を骨格とした一次元方向は極めて局在性の強い電子構造を持つことが明らかとなった。これらの結果は、DNA分子の一次元方向は完全な絶縁体であることを示唆するものである。

35000066
Crystalline beams in dispersion-free storage rings
池上 将弘*; 岡本 宏巳*; 百合 庸介
Physical Review Special Topics; Accelerators and Beams 9(12), p.124201_1-124201_11(2006) ; (JAEA-J 01615)
 偏向電磁石によって誘起される運動量分散のために、テーパー冷却と呼ばれる特殊な冷却力がなければ、蓄積リングにおいてクリスタルビームの形成は困難であることが知られている。しかし、磁場偏向領域に電場を加えることによって、リング全周にわたって運動量分散を消すことが可能である。そのようなデフレクタを有する蓄積リングでは、通常の冷却力を用いて多次元クリスタルビームの形成が可能となる。これを確かめるため、分子動力学シミュレーションを実施し、無分散蓄積リングにおけるビーム結晶化について解析した。シミュレーション結果によれば、テーパー冷却なしでさまざまなクリスタルビームの形成が可能である。

35000067
Self-organization in electron temperature gradient driven turbulence
井戸村 泰宏
Physics of Plasmas 13(8), p.080701_1-080701_4(2006) ; (JAEA-J 01616)
 第一原理ジャイロ運動論シミュレーションによって、弱磁気シア配位のスラブ電子温度勾配駆動(ETG)乱流における帯状流生成機構が二次元回転流体乱流における乱流スペクトルカスケードによる自己組織化であることを示した。エネルギー逆カスケード及びRhinesスケール長と一致する帯状流波数のスケーリングを確認した。スラブETG乱流に対して、密度勾配に依存するこのスケーリングの乱流構造や輸送への影響を示した。

35000068
New detection device for thomson parabola spectrometer for diagnosis of the laser-plasma ion beam
森 道昭; 神門 正城; Pirozhkov, A.; 林 由紀雄; 余語 覚文; 吉村 憲久; 小倉 浩一; 高井 満美子; 匂坂 明人; 織茂 聡; 加道 雅孝; 福見 敦*; Li, Z.*; 中村 衆*; 野田 章*; 大道 博行
Plasma and Fusion Research (Internet) 1(9), p.042_1-042_4(2006) ; (JAEA-J 01617)
 レーザープラズマイオンビーム源のエネルギー分布を評価するための検出素子の実演を行った。保護層のないイメージングプレートをトムソンパラボラ分光器の検出素子として用いた。イメージングプレートトムソンパラボラ分光器(IPTPS)は光電的なデジタル技術により、レーザー駆動イオンビームのエネルギー分布に使えるものである。

35000069
Transient response of divertor plasma during transition to ELM free H-mode phase in JT-60U
竹永 秀信; 大山 直幸; 朝倉 伸幸
Plasma and Fusion Research (Internet) 1(10), p.046_1-046_9(2006) ; (JAEA-J 01618)
 JT-60Uでは、Hモードプラズマへの遷移時におけるダイバータプラズマの過渡応答を調べるために、ミリ波(周波数183GHz)を用いた干渉計を整備してきた。同計測装置を用いてELM free Hモード状態への遷移時にDα発光強度の減少とともに、ダイバータ密度の急速な減少を観測した。ダイバータ密度減少の時間スケールは、数msから数十msの範囲である。2次元流体ダイバータコードUEDGEによるシミュレーションにおいて、リサイクリング係数が一定のもとで主プラズマ周辺部での熱及び粒子拡散係数を瞬時に減少させた場合、ダイバータ密度減少の時間スケールは数十msから百msの範囲と評価された。リサイクリング係数がダイバータ板への熱流速の減少とともに減少,粒子束の減少とともに増加すると仮定したモデルのもとで主プラズマ周辺部での熱拡散係数を瞬時に減少させた場合、ダイバータ密度減少の時間スケールは数msと評価された。これらの結果により、数ms程度の時間スケールでDα発光強度の減少とともに観測されるダイバータ密度の急速な減少は、ダイバータ板への熱流速に依存したプラズマ壁相互作用の変化によって引き起こされていることを示した。

35000070
Numerical analysis of the spatial nonuniformity in a Cs-seeded H- ion source
高戸 直之*; 花谷 純次*; 水野 貴敏*; 加藤 恭平*; 畑山 明聖*; 花田 磨砂也; 関 孝義; 井上 多加志
Review of Scientific Instruments 77(3), p.03A533_1-03A533_3(2006) ; (JAEA-J 01619)
 負イオンビームの空間的非一様性発生の原因を明らかにするため、負イオン生成及び輸送過程の数値解析を行った。モンテカルロ法を用いた原子及び負イオンの3次元輸送コードを、セシウム添加型負イオン源に適用した。その結果、電子温度の高い領域で局所的に原子が生成され、プラズマ電極表面への原子フラックスが非一様となることが明らかとなり、負イオン生成分布に影響を与えることが明らかとなった。加えて、生成された負イオンの引出し確率は電子温度依存性が弱いことが明らかとなった。

35000071
Numerical analysis of primary electrons in a tandem-type negative ion source
加藤 恭平*; 高戸 直之*; 畑山 明聖*; 花田 磨砂也; 関 孝義; 井上 多加志
Review of Scientific Instruments 77(3), p.03A535_1-03A535_3(2006) ; (JAEA-J 01620)
 タンデム型負イオン源におけるプラズマの非一様性発生の原因を明らかにするため、フィラメント陰極より放出された一次電子の軌道解析を行った。モンテカルロ法を用いた3次元輸送コードを、実形状の磁場分布を考慮したJAEA10アンペア負イオン源に適用した。また、中性粒子との主な非弾性衝突反応も合わせて考慮した。その結果、ドライバ領域の高速電子はドリフトにより引出し領域へと失われ得ること、及びそのドリフト方向は負イオン源上下端で逆方向となることが明らかになった。

35000072
Performance of the solid state neutral particle analyzer array on the national spherical torus experiment
Liu, D.*; Heidbrink, W. W.*; Darrow, D. S.*; Roquemore, A. L.*; Medley, S. S.*; 篠原 孝司
Review of Scientific Instruments 77(10), p.10F113_1-10F113_4(2006) ; (JAEA-J 01621)
 プリンストンプラズマ物理学研究所のNSTXの半導体検出器中性粒子アナライザアレイ(SSNPA)は正接半径がそれぞれ60, 90, 100, 120cmの4視線からなる。それぞれの視線はシリコンフォトダイオードを使用しており、荷電交換高速中性粒子のエネルギー分布を観測するべく、その信号は高速にサンプリングされている。電磁遮蔽,高速サンプリング,ソフトウェアベースの波高弁別解析によりSSNPAの性能は大幅に改善し、エネルギー分解能は約10keV、時間分解能は2msに達した。これによりMHDによる高速イオンの振る舞いの計測が可能になった。

35000073
Simultaneous measurements of ion and electron currents using a novel compact electrostatic end-loss-current detector
平田 真史*; 三宅 泰宏*; 長 照二*; 小波蔵 純子*; 沼倉 友晴*; 清水 清昭*; 伊藤 万梨絵*; 木南 瀬里奈*; 森本 直道*; 平井 克明*; 山岸 徹*; 宮田 良明*; 中嶋 洋輔*; 三好 昭一*; 小椋 一夫*; 近藤 貴; 假家 強*
Review of Scientific Instruments 77(10), p.10E719_1-10E719_3(2006) ; (JAEA-J 01622)
 開放端磁場プラズマにおいて端損失するイオン及び電子の同時測定を目的として、小型の静電型端損失電流検出器を提案した。この検出器は、自己収集原理に基づき、金属コレクターからの二次電子放出を抑える。プラズマ閉じ込め磁場を利用することで、付加磁場が不要であるという特徴を持つ。そのため、プラズマ閉じ込め磁場を乱さずに計測が可能で、かつ非常に小型化できる。検出器は、磁場に平行に配置されたバイアスされた陽極と、静電シールドされた陰極から構成される。タンデムミラー装置GAMMA10のエンド部の磁場を模擬したヘルムホルツ・コイルと、イオンビームラインを用いて特性を調べた。この開発した計測器を用いて、GAMMA10において電子サイクロトロン加熱によって生成された高エネルギー電子とイオンの同時入射の条件で、端損失電流計測に適用した。

35000074
Rutile and anatase mixed crystal TiO2 thin films prepared by pulsed laser deposition
北澤 真一; Choi, Y.*; 山本 春也; 八巻 徹也
Thin Solid Films 515(4), p.1901-1904(2006) ; (JAEA-J 01623)
 レーザー蒸着法により二酸化チタン薄膜のエピタキシャル成長を行った。雰囲気酸素圧力,レーザー強度,蒸着基板による生成膜の結晶構造に対する影響を調べた。結晶構造は、X線回折法により評価し、α-Al2O3基板ではルチルとアナターゼの混晶,LaAlO3基板ではアナターゼとなる結果を得た。微結晶の大きさについては、回折ピークにシェラーの式を適用し、10nm程度との結果を得た。この大きさは、酸素圧力を上げると増加した。混晶成長の発生は、この過程が結晶格子のミスフィットと熱力学的安定性の競争過程であるからと考えられる。

35000075
A Monte Carlo neutron/photon transport code MVP, 2
長家 康展; 奥村 啓介; 森 貴正
Transactions of the American Nuclear Society 95, p.662-663(2006) ; (JAEA-J 01625)
 日本原子力機構では、1980年後半より汎用中性子・光子輸送計算モンテカルロコードMVP及びGMVPの開発を行っている。これらのコードは初期の段階においてベクトル計算機向けに設計され、その後、ワークステーションクラスタを含むさまざまな並列計算機向けに並列化された。コードの初版はJENDLやENDF/Bなどの断面積ライブラリとともに1994年に国内において公開された。それ以来、多くの機能が追加され、日本中、特に原子炉解析の分野において幅広く用いられてきている。最近、これらの機能を含むMVP/GMVP第2版が世界に向けて公開された。この論文ではMVP第2版の主な特徴と新しい機能について述べられている。

35000076
非アスペリティのマッピングから地殻内部の常時監視へ
鶴我 佳代子; 笠原 順三; 三ケ田 均*; 山岡 耕春; 藤井 直之
地学雑誌 115(1), p.51-71(2006) ; (JAEA-J 01626)
 本論文は、巨大地震が発生する沈み込みプレート境界における地震発生場をより詳細に知るための考え「アスペリティのマッピングとモニタリング」(Exploration of Asperities-Reflectors System, EARS)を提案する。最近の研究成果から、プレート境界には、地震発生時に大部分の地震モーメントを開放するような固着度の大きい領域(アスペリティ、asperity)と、プレート間で数日〜数年以上で変位し、短周期の地震波動が放出するひずみエネルギーに相当あるいはそれ以上のひずみエネルギーを放出するような比較的固着度の低い領域(本論文では「非アスペリティ(non-asperity)」と呼ぶ)があることがわかってきた。ここでは、非アスペリティでのすべりの加速がそれと隣接するアスペリティのすべりを引き起こし、巨大地震の発生に関与するという考えに基づいて論旨を進める。すなわち地殻構造とプレート境界からの反射波の反射強度とその空間分布を調査することで、非アスペリティの物性と広がりをマッピングし、間接的にアスペリティの分布を知ることにつながると考える。さらに、弾性波アクロスなどの能動監視システムにより、ターゲット領域からの地震波の反射強度の時間変化を常時監視(モニター)することの重要性と、海域のプレート境界の監視海底ケーブル式地震計の将来性について述べる。

35000077
北海道北部,幌延地域における大曲断層の三次元分布と水理特性
石井 英一; 安江 健一; 田中 竹延*; 津久井 朗太; 松尾 公一*; 杉山 和稔*; 松尾 重明*
地質学雑誌 112(5), p.301-304(2006) ; (JAEA-J 01627)
 北海道北部、第三紀珪質岩分布域において地表踏査,反射法地震探査、及びAMT探査を実施し、当域に分布する大曲断層の位置,連続性,構造,水理特性,変位センス、及び断層形態などについて検討した。その結果、大曲断層は、(1)ダメージゾーンを主体とした幅120m程度の断層帯であり、その透水性は高く、透水性異方性は弱い。(2)後期鮮新世〜前期更新世以降に形成された東側隆起の左斜めすべり断層であるが、それ以前の活動可能性についても今後検討する必要がある。(3)地表ではover-stepし、地下では、flower structureの形態をなして収斂する特徴を持つものと推定された。

35000078
中性子及び放射光による残留応力測定とその相補利用
鈴木 裕士; 菖蒲 敬久
ふぇらむ 11(11), p.701-708(2006) ; (JAEA-J 01629)
 本稿では、中性子回折法と高エネルギー放射光X線を利用した応力測定技術について、それらの基本原理や測定技術、さらにはそれらの応用例について紹介するとともに、これらの応力測定技術を相補的に利用することの重要性について述べた。

35000079
JRR-3の新中性子反射率計SUIREN
山崎 大; 曽山 和彦; 盛合 敦; 田村 格良; 中村 清
波紋 16(3), p.174-176(2006) ; (JAEA-J 01631)
 現在、JRR-3ビームホールにおいて中性子反射率計SUIRENの立ち上げが行われており、JRR-3の平成18年度第5サイクルより外部利用にも供される予定である。この春よりテスト測定を行っており、試料自体からのバックグラウンドが無視できれば、10-6以下の反射率まで測定可能であることを示した。本稿では、SUIRENの立ち上げの現状,テスト測定の結果,今後の施設共用の概要と将来計画について述べる。

35000080
超イオン伝導性ガラスにおける高いイオン伝導と低エネルギーダイナミクスの関係
中村 充孝
波紋 16(4), p.209-213(2006) ; (JAEA-J 01632)
 超イオン伝導性ガラスの高いイオン伝導度は物性科学における未解決問題の一つとして国内外で精力的に研究されている。われわれは大強度パルス中性子源に設置されたチョッパー分光器を用いて超イオン伝導性ガラス(AgI)x(Ag2S)x(AgPO3)1-2xの中性子非弾性散乱実験を行った。その結果、超イオン伝導性ガラスでは過剰な低エネルギー励起が出現し、その強度変化が直流イオン伝導度と密接に関係していることを見いだした。さらには、超イオン伝導性ガラスに特異な運動量依存性が低エネルギー領域に現れることも見いだしている。このような低エネルギー領域での特異な物性は超イオン伝導性ガラスの機構解明に新たな視点を与えるものである。

35000081
日本原子力研究開発機構・放射線標準施設棟4MVファン・デ・グラーフ加速器の設置から運用まで
藤井 克年; 古渡 意彦; 川崎 克也
保健物理 41(3), p.175-179(2006) ; (JAEA-J 01634)
 日本原子力研究開発機構東海研究開発センター原子力科学研究所放射線標準施設棟は、1980年6月の竣工以来、放射線測定器のγ(X)線,β線,中性子線に関する性能試験及び校正に国内外で広く利用されてきた。近年の大型加速器の研究開発によって、これまでより広範囲なエネルギーの中性子や、高エネルギーγ線に対する線量評価法や放射線防護のための計測技術の確立が求められてきた。そこで、放射線標準施設棟の付帯施設として中性子標準校正棟を2000年6月に増設した。中性子標準校正棟では、最大4MVのイオンを加速できるファン・デ・グラーフ型加速装置を設置し、中性子や高エネルギーγ線の計測技術や線量評価法に関する研究・技術開発を推進するとともに、これらの照射装備を用いた放射線測定器の性能試験及び校正を行っている。本報では加速器の設置から運用までの状況について、校正場のトレーサビリティ,施設共用計画などを含めて紹介する。

35000082
Development of rapid dose assessment program from activated sodium in human body for criticality accident
高橋 史明; 遠藤 章; 山口 恭弘; 小田 啓二*
保健物理 41(3), p.180-187(2006) ; (JAEA-J 01635)
 臨界事故時に体内に生成される放射化ナトリウム(ナトリウム-24)量に基づき、迅速な線量評価を可能とする線量評価システムRADAPASを開発した。このシステムは、汎用のパーソナルコンピュータで動作する。仮想した幾つかの事故現場について、モンテカルロ計算で既に解析したエネルギースペクトル及びそれに対応した換算係数データをシステムに内蔵している。線量評価に必要な情報は、インターフェイス画面を用いて対話形式で入力する。被ばくにより受けた人体への吸収線量は、内蔵したデータ及びユーザーが与えた情報に基づき、ナトリウム-24の放射能測定値より迅速に換算評価される。また、過渡臨界実験装置(TRACY)における実験及び過去の臨界事故の重度被ばく者に対する線量評価により、RADAPASの適用性を検証した。その結果は、RADAPASが事故直後の線量評価の初期的な推定に十分適用であることを示した。

35000083
核燃料関連施設事故に学ぶ線量管理と除染の課題
宮部 賢次郎
放射線防護医療 (2), p.11-14(2006) ; (JAEA-J 01636)
 原子力施設で事故が発生した場合には、事故の状況に応じて防災業務計画等に基づいた対応を行う。この際、放射線防護あるいは緊急被ばく医療の観点から被災者に対する的確な被ばく線量の評価及び身体除染等の措置が必要になる。本発表においては、サイクル工学研究所(旧東海事業所)の核燃料施設で発生した作業者の内部被ばく及び汚染の対応経験を踏まえ、原子力施設での事故時の従業員等に対する被ばく線量の評価及び身体汚染時の除染措置にかかわる課題等について紹介する。

35000084
MHD解析から見たELM
水口 直紀*; 小関 隆久
プラズマ・核融合学会誌 82(9), p.590-596(2006) ; (JAEA-J 01638)
 MHD安定性解析に基づくEdge Localized Mode(ELM)の理解の進展を概説する。ELM発生のトリガーと考えられている中間のトロイダルモード数に対する巨視的MHD安定性コードの開発が進み、プラズマ周辺領域の線形安定特性が明らかになってきている。実験と計算の比較から、type I ELMはピーリング・バルーニングモード又は高トロイダルモード数バルーニングモードで励起されることが示されている。非線形MHDシミュレーションにより、最近の実験で観測されたフィラメント構造の形成が示されており、天体プラズマにおける太陽フレアと同様な爆轟(detonation)が現れることが示されている。また、核融合の燃焼プラズマの予測・解析に向けて、ELMを含むプラズマ周辺及び境界プラズマの物理モデルの統合化が、MHD, 輸送,ダーバータ,乱流の各コードをもとに進められている。

35000085
核融合炉の炉内機器の構造を理解する,2; ダイバータの構造を理解する
鈴木 哲; 秋場 真人; 齊藤 正克*
プラズマ・核融合学会誌 82(10), p.699-706(2006) ; (JAEA-J 01639)
 核融合装置炉内機器の中で最も高い熱負荷を受けるダイバータについて、必要となる機能やその機能を満たすために要求される条件及び構造上の特徴や設計の考え方などを、主として国際熱核融合実験炉ITERを例にとって熱・構造工学的な視点から解説するとともに、核融合原型炉ダイバータへの展望についても述べる。

35000086
世界を対象とした高速増殖炉サイクルの研究開発投資効果
川崎 弘嗣
RIST News (42), p.22-34(2006) ; (JAEA-J 01640)
 高速増殖炉(FBR)サイクル研究開発を将来の実用化に向けて推進していくため、投資に対する便益を評価し、事業計画の妥当性を検討する一つの手段として、FBRサイクル研究開発投資効果の評価を実施した。FBRサイクルを世界規模で導入した場合の投資効果を評価するため、世界のエネルギー需給シナリオにおいて、将来、原子力エネルギーが一定のシェアを持つことを前提に、そのシェアが徐々に軽水炉発電からFBR発電に置き換わっていくことを想定した。その場合の経済的効果を将来に渡って得られる効果額として試算した。本報告では、将来FBRサイクルを実現することにより、研究開発投資を上回る経済効果が期待できることを述べる。

35000087
低酸素濃度下におけるチタンの腐食速度と水素吸収挙動
鈴木 宏幸*; 谷口 直樹
材料と環境 55(11), p.485-494(2006) ; (JAEA-J 01641)
 高レベル放射性廃棄物の地層処分におけるオーバーパックには1000年間以上の寿命が要求されており、その候補材料の一つとしてチタンが挙げられている。チタンをオーバーパック材料として用いる場合に評価すべき項目の一つとして水素脆化が挙げられるが、地層処分で想定される中性から弱アルカリ性の低酸素濃度環境におけるチタンの耐食性や水素吸収挙動について十分な知見が得られていない。よってチタンの腐食速度及び水素吸収挙動について信頼性の高いデータを取得するために、長期浸漬試験及び完全密封容器試験を実施した。環境因子をパラメーターとした試験の結果、高炭酸塩(1M)条件と高pH環境(pH13)でおもにアノード反応の促進によると思われる腐食速度の顕著な増加が認められた。それ以外の条件では、腐食速度は10-3〜10-2μm/yオーダーの値となった。また腐食により発生した水素のほとんど(98%以上)がチタン中に吸収されていたことがわかった。チタンの長期吸収について安全側の評価として水素吸収量の経時変化を直線則で近似すると1000年間で400〜500ppmの水素を吸収することが示唆された。

35000088
Crystalline beams at high energies
Wei, J.*; 岡本 宏巳*; 越智 秀太*; 百合 庸介; Sessler, A. M.*; 町田 慎二*
Proceedings of 10th European Particle Accelerator Conference (EPAC '06) (CD-ROM) , p.2841-2843(2006) ; (JAEA-J 01642)
 高エネルギーイオンビーム衝突実験において、各々の衝突ビームがクリスタルビームであれば、ビーム・ビーム相互作用の強さの指標であるビーム・ビームチューンシフトがより大きな値まで許容できることが以前に示されている。その結果、より高いルミノシティが達成可能になる。ところで、クリスタルビームは円形加速器のトランジションエネルギー未満のエネルギーでのみ生成可能である。ここでは、分子動力学シミュレーションに基づき、高トランジションエネルギーを有するラティスにおける高エネルギークリスタルビームの生成について検証する。

35000089
A Large-scale simulation on two-phase flow characteristics around duel rods in a tight-lattice core
高瀬 和之; 吉田 啓之; 小瀬 裕男*; 秋本 肇
Proceedings of 2006 ASME International Mechanical Engineering Congress & Exposition (IMECE 2006) (CD-ROM) , 8p.(2006) ; (JAEA-J 01643)
 革新的水冷却炉の稠密炉心内の水−蒸気二相流構造を解明するために、稠密燃料集合体をフルサイズで模擬した体系で大規模二相流シミュレーションを行った。解析には、気液界面挙動を高精度で予測できる界面追跡法をベースにした二相流直接解析コードTPFITを使用した。大規模3次元計算には地球シミュレータやAltix3700Bx2などの超高性能スーパーコンピュータを利用した。今回の結果から、燃料棒間狭隘部や軸方向スペーサ部周りの流速,圧力,ボイド率等の3次元分布が定量的に明らかになり、稠密炉心の二相流構造に関して有益な知見が得られた。今回の結果をより大規模に拡張することによって、シミュレーションを主体とした炉心熱設計手法を確立できる見通しが得られた。

35000090
Calibration standards in radiation protection dosimetry at the NSRI of JAEA
三枝 純; 清水 滋; 山口 恭弘; Kim, B.-H.*
Proceedings of 2006 Autumn Conference of the Korean Association for Radiation Protection , p.238-239(2006) ; (JAEA-J 01644)
 日本原子力研究開発機構原子力科学研究所では、放射線標準施設(FRS)において、放射線防護用測定器の校正を行うためのX, γ,β線及び中性子校正場を整備している。ここでは、FRSの概要について解説するとともに、トレーサビリティ体系における施設の位置づけ,認定制度の取得計画,外部機関への施設共用の現状及びJAEA/KAERIの二国間研究協力活動について述べる。

35000091
Study on evaluation method for potential impacts of "Natural Phenomena" on a HLW disposal system
川村 淳; 大井 貴夫; 牧野 仁史; 梅田 浩司; 新里 忠史; 石丸 恒存; 瀬尾 俊弘
Proceedings of 2006 East Asia Forum on Radwaste Management Conference (2006 EAFORM Conference) , p.350-367(2006) ; (JAEA-J 01645)
 高レベル放射性廃棄物処分における天然現象影響評価技術の高度化として、事例研究成果を適切にシナリオに取り込み、そのうえで「影響のバリエーションを適切に整理したうえでシナリオを現実の特徴を失わない程度に適切に単純化すること」及び「影響の伝搬等の因果関係を明らかにすること」に着目した「作業フレーム」を構築した。本論で検討した「作業フレーム」により、シナリオの「現実性」のみならず「透明性」,「追跡性」,「整合性」を向上させることができた。また、シナリオ構築あるいは影響解析の作業向上の観点から必要となる、天然現象に関するデータ・知見の種類や量あるいは品質情報、及び現状におけるそれらの過不足などについて作業を通じて明らかにできると考えられる。このことは今後、天然現象の研究者が現象理解の研究フレームを効率的かつ適切に構築することにも役立ち、さらには将来の現実性や精度の高い評価の実施へつながっていくものと考えられる。

35000092
Nonperturbative effects of energetic ions on Alfv'en eigenmodes
藤堂 泰*; 中島 徳嘉*; 篠原 孝司; 武智 学; 石川 正男; 山本 聡*
Proceedings of 20th IAEA Fusion Energy Conference (FEC 2004) (CD-ROM) , 8p.(2004) ; (JAEA-J 01646)
 JT-60Uにおける高エネルギーイオン駆動不安定性の線形性質及び非線形時間発展を磁気流体と高エネルギー粒子のためのシミュレーションコードを用いて調べた。不安定モードの空間分布は安全係数分布が平坦なプラズマ中心付近で最大値をとる。この不安定モードの実周波数は、実験における速い周波数掃引モードの開始周波数に近い値である。シミュレーション結果は、高エネルギーイオン軌道幅と高エネルギーイオン圧力が不安定モード動径方向分布幅を非常に大きくすることを示している。調べた高エネルギーイオン軌道幅の中で最小値の場合は、不安定モードは小半径の20%以内に局在している。これは、磁気流体効果のみで誘導できる空間分布幅の上限を与える。JT-60Uの実験条件においては、高エネルギーイオンは不安定モード空間分布の半径方向の幅を、最小軌道幅の場合と比較して3倍に広げている。この不安定モードは主として高エネルギー粒子によって誘導されているのである。非線形発展においては、速い周波数掃引モードに近い率で周波数が上下に変化することが示される。JT-60Uにおける高エネルギー粒子モードに加えて、ヘリカル座標系のためのシミュレーションコードによるLHD的プラズマにおけるTAEの研究が報告される。

35000093
ELM propagation and fluctuations characteristics in H- and L-mode SOL plasmas on JT-60U
朝倉 伸幸; 大野 哲靖*; 川島 寿人; 三好 秀暁*; 松永 剛; 大山 直幸; 高村 秀一*; 上杉 喜彦*; 武智 学; 仲野 友英; 久保 博孝
Proceedings of 21st IAEA Fusion Energy Conference (FEC 2006) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 01647)
 熱・粒子がダイバータ板及び第一壁へ輸送される機構を理解するため、JT-60Uの低磁場側赤道面とダイバータさらに高磁場側に設置した3台の可動静電プローブにより、ELMプラズマ及びプラズマ揺動を高速測定(500kHz)した。低磁場側赤道面でのイオン飽和電流の揺動レベルは、高磁場側SOL及びX点と比較して大きいことから低磁場側赤道面での揺動の理解が重要と考えられる。揺動の特性は確率分布関数(PDF)を利用した統計的手法により解析され、イオン飽和電流に正のバーストが特にLモードで多く発生し7-8cm外側まで観測された。さらに、ELMy HモードではELMプラズマの放出による熱・粒子の輸送が問題となるが、SOLでの粒子束の変化を高速測定した。ELMが発生したとき、静電プローブ位置において観測されたピークの(磁場揺動の増加からの)時間遅延を測定し、半径方向のELMプラズマの輸送速度が1.3-2.5km/sであることが明らかとなった。揺動及びELMによる粒子束の輸送について比較を行う。

35000094
Technology development for the construction of ITER superconducting magnet system
奥野 清; 中嶋 秀夫; 杉本 誠; 礒野 高明; 河野 勝己; 小泉 徳潔; 濱田 一弥; 布谷 嘉彦; 名原 啓博; 喜多村 和憲; 押切 雅幸; 高野 克敏; 堤 史明
Proceedings of 21st IAEA Fusion Energy Conference (FEC 2006) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 01648)
 ITER超伝導マグネット・システムの建設では、日本が7極中、最大の調達分担を行うことが決まった。特にトロイダル磁場(TF)コイルでは、サイト極であるEUを凌いで、相当部分の調達を分担することになった。これら超伝導マグネットの調達をITER計画のスケジュールに従って実施するため、原子力機構が主体となり、産業界の協力の下、各企業が有する優れた製作技術・生産能力を有効に活用し、調達準備活動を実施している。Nb3Sn超伝導導体技術では、マグネットの設計変更によりNb3Sn素線の臨界電流値に関する要求値が引き上げられたが、変更後の目標値をクリアーする素線の量産技術に見通しが得られた。さらに、高さ14m,幅9m,1個の重量310tという大きなTFコイルを、所定の性能(68kA, 12T)が得られるように製作する技術開発を実施し、コイル容器用の高強度低温構造材を数十トンレベルで量産する技術の実証、及び機械加工・溶接の併用による大型コイル容器の製作技術の確立など、多くの成果が得られている。

35000095
Plasma-surface interaction, scrape-off layer and divertor physics; Implications for ITER
Lipschultz, B.*; 朝倉 伸幸; Bonnin, X.*; Coster, D. P.*; Counsell, G.*; Doerner, R.*; Dux, R.*; Federici, G.*; Fenstermacher, M. E.*; Fundamenski, W.*; Ghendrih, P.*; Herrmann, A.*; Hu, J.*; Kallenbach, A.*; Krasheninnikov, S.*; Krieger, K.*; Kirnev, G.*; Kreter, A.*; Kukushkin, A. S.*; Kurnaev, V.*; LaBombard, B.*; Li, J.*; Lisgo, S.*; Loarte, A.*; 仲野 友英; Neu, R.*; 大野 哲靖*; Pacher, H.*; Paley, J.*; Pan, Y.*; Pautasso, G.*; Philipps, V.*; Riccardo, V.*; Rohde, V.*; Roth, J.*; Rudakov, D.*; Stangeby, P. C.*; 高村 秀一*; 田辺 哲朗*; Tsitrone, E.*; Whyte, D.*; Yang, Y.*; Zhu, S.*
Proceedings of 21st IAEA Fusion Energy Conference (FEC 2006) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 01649)
 国際トカマク物理活動(ITPA)スクレイプオフ層(SOL)及びダイバータ物理トピカルグループが、各国のトカマク実験データを検討した成果を発表する。(1)ELMによりSOLへ排出されたプラズマが極性ドリフトにより第一壁方向へ輸送されるモデルを、リミターでの熱負荷計測結果に基づき提案した。この場合、ITERにおいてELMによるリミターが受ける熱負荷は損失エネルギーの10-20%と考えられる。(2)ディスラプション時のダイバータへの熱負荷について最近のデータをまとめた。高密度ディスラプションでは、熱崩壊時以前に最大80%のエネルギーが放射損失により失われること,熱崩壊時は熱流束の幅が広がることなどが実験データベースから明らかとなった。ITERにおけるダイバータへの熱負荷は以前の予測よりも減少した。ただし、内部輸送障壁の崩壊や垂直変異イベントでは大きな熱負荷と考えられる。また、不純物のガスジェット及びペレット入射による熱負荷の緩和結果についても述べる。ほかに(3)ITERにおけるトリチウムの蓄積量の予測,(4)タングステンタイル、及び炭素タイルにおける複合プラズマ材料相互作用に関してもまとめる。

35000096
Analysis of FEL oscillations in a perfectly synchronized optical cavity
西森 信行
Proceedings of 28th International Free Electron Laser Conference (FEL 2006) (CD-ROM) , p.107-110(2006) ; (JAEA-J 01650)
 光共振器の完全同期長における自由電子レーザー(FEL)発振を1次元FEL方程式を用いて解析する。完全同期長光共振器に蓄積されたFEL光は、高ゲイン低ロス領域において高強度数サイクルパルスに発展することを示す。FEL光の先頭部からピークまでの立ち上がり部の成長に着目し、高強度数サイクルパルスの生成に重要な役割を果たすことを示す。共振器型FELといえども、1パス目は自己増殖自発放射光(SASE)FELと同じとみなせるので、2パス目において、電子はSASE FELの出力と相互作用する。光パルスの立ち上がり部と電子とのFEL相互作用に注目し、電子の位相空間分布の時間発展を解析的に求める。得られた2パス目のFEL出力の立ち上がり部は、1パス目で得られたものよりも急峻であるが、SASE FELの出力とほぼ同じとみなすことができる。ただし、この場合通常のFELパラメーターρよりも大きな値を持つ。このようにして、2パス目の光出力の立ち上がり部をSASE FELの解を用いて表すことができるので、同じ手法を3パス目以降にも用いることができる。飽和状態において、FELの出力のピーク強度とパルス長は電子ビーム密度と光共振器ロスで表すことができることも示す。

35000097
FEL oscillation with a high extraction efficiency at JAEA ERL FEL
西森 信行; 羽島 良一; 飯島 北斗; 菊澤 信宏; 峰原 英介; 永井 良治; 西谷 智博; 沢村 勝
Proceedings of 28th International Free Electron Laser Conference (FEL 2006) (CD-ROM) , p.265-272(2006) ; (JAEA-J 01651)
 エネルギー回収リニアックを用いたオシレーター型自由電子レーザー(FEL)が直面している技術的なチャレンジの一つに、FELの変換効率をできるだけ高くするという目標がある。高い変換効率を持つFELの実現が、高出力FEL達成に必要なトータル電流を減らすことやFELミクロパルスの幅を狭くすること(さまざまな応用研究にとって重要)につながる。JAEA ERL FELではエネルギーアクセプタンス7%のエネルギー回収ループが用いられていたが、最近電子バンチの繰り返し周波数を2倍に増やすことで、FELの発振効率2%以上を達成し、それに伴い現状のエネルギーアクセプタンスを超えるエネルギー幅を持つ電子ビームをエネルギー回収ループに通す必要が出てきた。講演では、JAEA ERL FELで達成された高効率FEL発振について開発の現状をまとめる。

35000098
Development of frequency-resolved optical gating for measurement of correlation between time and frequency of chirped FEL
飯島 北斗; 羽島 良一; 峰原 英介; 永井 良治; 西森 信行
Proceedings of 28th International Free Electron Laser Conference (FEL 2006) (CD-ROM) , p.308-311(2006) ; (JAEA-J 01652)
 チャープされた中赤外領域のFELは分子内振動再分配を起こさずに多原子分子の解離を行うのに有用である。われわれのグループはこれまでにエネルギー回収型線形加速器を用いて高出力の中赤外FEL発振の研究を行ってきた。この際、電子パルスが長いことを利用してチャープされたFELの発振に成功している。これまでフリンジ分解SHG自己相関による測定で中心波長23μm,パルス幅320fsのパルスに対してΔω/ω0=14%であることを測定した。しかしながら、パルス内における周波数変化を直接測定できていない。そこでパルス内の時間・周波数相関を測定するために周波数分解光ゲート(FROG)を構築することとした。FROGは自己相関を測定する部分に加えて、周波数情報を得るための波長計測部からなる。自己相関を測定する部分では、倍波を発生させるため、基本波の強度,偏向方向のパラメータを押さえることが必要になる。そのため、基本波の強度,周波数分布,偏向方向を測定した。

35000099
Beam current doubling of JAEA ERL-FEL
永井 良治; 羽島 良一; 飯島 北斗; 菊澤 信宏; 峰原 英介; 西森 信行; 西谷 智博; 沢村 勝
Proceedings of 28th International Free Electron Laser Conference (FEL 2006) (CD-ROM) , p.312-315(2006) ; (JAEA-J 01653)
 原子力機構では高出力自由電子レーザー(FEL)のためのエネルギー回収型リニアック(ERL)の開発を行っている。ERLの最大の利点は加速器の高周波源の容量を超えるビーム電流を加速できることにある。ミクロパルス繰返しを二倍にし、加速電流を二倍にするために、電子銃,入射器の高周波源,ローレベル高周波制御装置,加速器制御システムの改良を行ってきた。この結果、高周波源の容量を超える電流である10mAの加速に成功しFEL出力としては0.7kWを得ることができた。

35000100
Simulation of long-term behaviour of 137Cs and 239,240Pu in the Japan Sea
中野 政尚; 武石 稔; 古田 定昭
Proceedings of 2nd Asian and Oceanic Congress Radiological Protection (AOCRP-2) (CD-ROM) , p.795-799(2006) ; (JAEA-J 01654)
 核燃料サイクル施設からの放出に伴う世界的・広域的な環境影響を評価するため、LAMER(海洋環境放射能による長期的地球規模リスク評価モデル)を開発した。LAMERの一部として、海洋大循環モデルと組合せた移流・拡散・スキャベンジングモデルを日本海について開発し、日本海における137Cs及び239,240Pu濃度鉛直分布の実測値と比較・検証したところ、137Cs及び239,240Pu濃度の計算値は実測値とおおむねよく一致した。日本海では水平拡散係数が3×107cm2s-1、鉛直拡散係数が0.3cm2 s-1の場合に計算値と実測値が最もよく一致した。本研究でのシミュレーションは、日本海における137Cs及び239,240Puの定量的由来,挙動を明らかにした。また、日本海における137Cs及び239,240Puの挙動は太平洋での挙動とは大きく異なっていることがわかった。

35000101
Roadmap toward the commercialization of FR cycle system in Japan
丹羽 元
Proceedings of 5th Korea-Japan Symposium on Nuclear Thermal Hydraulics and Safety (NTHAS-5) , p.29-31(2006) ; (JAEA-J 01655)
 日本のFRサイクル実用化戦略調査研究の進捗を報告するとともに、第2期研究で主概念として選定されたナトリウム冷却MOX燃料高速炉の革新技術について紹介し、実用化までの道筋について述べる。また、国際協力の重要性を強調する。

35000102
Electrical characteristics of p-channel 6H-SiC MOSFETs irradiated with γ-rays
菱木 繁臣; 大島 武; 岩本 直也; 河野 勝泰*; 伊藤 久義
Proceedings of 7th International Workshop on Radiation Effects on Semiconductor Devices for Space Application (RASEDA-7) , p.173-176(2006) ; (JAEA-J 01656)
 六方晶炭化ケイ素(6H-SiC)エピタキシャル膜上にpチャンネル6H-SiC金属−酸化膜−半導体(MOSFET)を作製し、γ線を8.70, 4.35, 0.87kGy/hourの線量率で照射し、電気特性の変化を調べた。γm線の線量率が8.70, 0.87kGy/hourと4.35kGy/hourの場合ではしきい値電圧の変化量は異なり、その原因として界面準位の発生量が異なることが見いだされた。一方、γ線照射による酸化膜中の固定電荷の発生量に違いは観測されなかった。また、γ線照射試料のアニーリング効果を調べた結果、界面準位はアニーリング温度の増加とともに減少し350℃付近でほぼ消失するが、酸化膜中の固定電荷密度は変化しないことがわかった。

35000103
Observation of charge collection efficiency of 6H-SiC n+p diodes irradiated with Au-ions
岩本 直也; 大島 武; 佐藤 隆博; 及川 将一*; 小野田 忍; 菱木 繁臣; 平尾 敏雄; 神谷 富裕; 横山 琢郎*; 坂本 愛理*; 田中 礼三郎*; 中野 逸夫*; Wagner, G.*; 伊藤 久義; 河野 勝泰*
Proceedings of 7th International Workshop on Radiation Effects on Semiconductor Devices for Space Application (RASEDA-7) , p.185-188(2006) ; (JAEA-J 01657)
 六方晶炭化ケイ素(6H-SiC) n+pダイオードに12MeVの金イオンを照射し、ダイオードの電荷収集効率をイオンビーム励起過渡電流(TIBIC)によって評価した。酸素(O)及びシリコン(Si)イオンの照射では電荷収集効率(CCE)は100%であったが、金イオンでは約50%であった。イオン入射によって6H-SiC n+pダイオードで発生した電子−正孔対の濃度をKobetich & Katz(KK)モデルを使って評価すると、電子−正孔対の濃度は入射イオンの原子番号が大きくなると増加することが明らかとなった。したがって、金イオンを入射した6H-SiC n+pダイオードにおけるCCEの減少は、高濃度の電子−正孔対内での電子と正孔の再結合に起因することが示唆される。

35000104
Perspectives on application and flexibility of LWR vitrification technology for high level waste generated from future fuel cycle system
塩月 正雄; 青嶋 厚; 野村 茂雄
Proceedings of International Waste Management Symposium 2006 (WM '06) (CD-ROM) , 10p.(2006) ; (JAEA-J 01658)
 高レベル廃棄物処理方法として現在世界的に採用されているガラス固化溶融技術について、将来の高燃焼度軽水炉及びプルサーマルから発生する高レベル廃棄物並びにFBRサイクルから発生する高レベル廃棄物への適用性及び柔軟性を、各サイクルから発生する高レベル廃液の組成から評価した。各燃料サイクルから発生する高レベル廃棄物処理方法として、溶融条件等の改良や最適化を図ることにより、現行のガラス固化溶融技術を適用できる見通しがあり、加えてFBRサイクルにおいて開発中の新しい湿式再処理法においては、高レベル廃棄物の減容化が図れるものと考えられる。さらに、現在開発中の白金族元素対策等の技術開発が将来の燃料サイクルからの高レベル廃棄物のガラス固化処理においても重要であることが確認された。

35000105
核データとライブラリ
深堀 智生
モンテカルロ計算ハンドブック , p.10-19(2006) ; (JAEA-J 01661)
 日本原子力学会「モンテカルロ計算法高度化」研究専門委員会編集のハンドブックのうち、第1部「基礎編」,第3章「核データとライブラリ」として、モンテカルロ計算に必要な核データ及びコードのライブラリについて取りまとめた。内容は以下の通りである。(1)輸送計算に必要な核データ,(2)核データ,(3)ライブラリ。

35000106
連続エネルギーモンテカルロコードMCNPとMVP
長家 康展
モンテカルロ計算ハンドブック , p.20-26(2006) ; (JAEA-J 01662)
 日本原子力学会の「モンテカルロ計算法高度化」研究専門委員会では、現行核燃料サイクル施設及び未来型原子力技術(高エネルギー加速器核変換施設)を対象として、モンテカルロ法の技術的問題を摘出し、考え方及び解決方法を明確にすることを行っている。その結果として、原子力機構各種研究委員会及び本会研究専門委員会の研究成果を再検討し、考えられる技術項目の洗い出しを行い、優先度の高い技術項目を中心にハンドブックにまとめた。筆者はこのハンドブックにおいて、第4章「連続エネルギーモンテカルロコードMCNPとMVP」の執筆を担当した。

35000107
乱数
長家 康展
モンテカルロ計算ハンドブック , p.35-38(2006) ; (JAEA-J 01663)
 日本原子力学会の「モンテカルロ計算法高度化」研究専門委員会では、現行核燃料サイクル施設及び未来型原子力技術(高エネルギー加速器核変換施設)を対象として、モンテカルロ法の技術的問題を摘出し、考え方及び解決方法を明確にすることを行っている。その結果として、原子力機構各種研究委員会及び本会研究専門委員会の研究成果を再検討し、考えられる技術項目の洗い出しを行い、優先度の高い技術項目を中心にハンドブックにまとめた。筆者はこのハンドブックにおいて、第6章「乱数」の執筆を担当した。

35000108
摂動論
長家 康展
モンテカルロ計算ハンドブック , p.75-80(2006) ; (JAEA-J 01664)
 日本原子力学会の「モンテカルロ計算法高度化」研究専門委員会では、現行核燃料サイクル施設及び未来型原子力技術(高エネルギー加速器核変換施設)を対象として、モンテカルロ法の技術的問題を摘出し、考え方及び解決方法を明確にすることを行っている。その結果として、原子力機構各種研究委員会及び本会研究専門委員会の研究成果を再検討し、考えられる技術項目の洗い出しを行い、優先度の高い技術項目を中心にハンドブックにまとめた。筆者はこのハンドブックにおいて、第10章「摂動論」の執筆を担当した。

35000109
燃焼計算法
奥村 啓介
モンテカルロ計算ハンドブック , p.81-92(2006) ; (JAEA-J 01665)
 日本原子力学会の「モンテカルロ計算法高度化」研究専門委員会では、現行核燃料サイクル施設及び未来型原子力技術(高エネルギー加速器核変換施設)を対象として、モンテカルロ法の技術的問題を摘出し、考え方及び解決方法を明確にすることを行っている。その結果として、日本原子力研究開発機構各種研究委員会及び本会研究専門委員会の研究成果を再検討し、考えられる技術項目の洗い出しを行い、優先度の高い技術項目を中心にハンドブックにまとめた。筆者はこのハンドブックにおいて、第12章「燃焼計算法」の執筆を担当した。

35000110
高エネルギー粒子輸送計算コード開発の現状とその宇宙開発への応用
佐藤 達彦
モンテカルロ計算ハンドブック , p.202-212(2006) ; (JAEA-J 01666)
 近年、モンテカルロ計算コードは、その開発の主目的であった原子炉や加速器の遮へい設計のみならず、宇宙飛行士や航空機乗務員の被ばく線量評価,粒子線治療の線量評価,半導体ソフトエラー発生率の評価など、幅広い分野で利用されている。そのような利用分野の拡大に伴い、MCNP4やMVPでは扱えない高エネルギー中性子・陽子・重イオン・パイオン・ミューオンなどに対する輸送を模擬可能なモンテカルロコードの開発が、世界各国で精力的に進められている。本章では、それら高エネルギー粒子輸送計算コード開発の現状を紹介するとともに、その使用時における留意点について整理する。また、具体的な応用例として、それら計算コードを用いた宇宙飛行士の被ばく線量評価法について解説する。

35000111
Absorbed doses to the urinary bladder wall considering radiosensitive cells
渡部 陽子; 木名瀬 栄; 斎藤 公明
KEK Proceedings 2006-4 , p.81-87(2006) ; (JAEA-J 01668)
 体内に摂取あるいは投与された放射性核種は、尿などに排泄されるため、尿が一定時間貯留される膀胱の線量評価は、放射線防護や放射線診断の観点から重要である。特に放射線診断に用いられる放射性医薬品は、膀胱の線量を最小限にするよう開発される必要があるため、その線量評価法が極めて重要となる。内部被ばくによる線量評価では、一般に比吸収割合(SAF)が用いられている。米国核医学会内部被ばく線量委員会や国際放射線防護委員会は、膀胱内容物に均一に分布した放射性核種から放出される放射線についての膀胱SAFを、光子においてはモンテカルロ計算により、電子においては膀胱壁による二分の一吸収仮定に基づく簡易計算により整備している。より信頼性の高い線量評価を行うには、放射性感受性の高い細胞を考慮すべきであるが、従前の線量評価法では膀胱壁中の放射線感受性の高い細胞である基底細胞については直接考慮されていない。本研究では、信頼性の高い線量評価を行うため基底細胞を考慮した膀胱モデルを開発し、光子及び電子に対する基底細胞などのSAFをモンテカルロ計算により求めた。また、評価したSAFを用いて、9種の放射性核種についてのS値を算出した。

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