学会誌等掲載論文
※下記の研究開発成果は資料名順に並んでいます。

2007年2月


35000120
Finite size effects of nanoparticles on the atomic pair distribution functions
樹神 克明; 飯久保 智; 田口 富嗣; 社本 真一
Acta Crystallographica Section A 62(6), p.444-453(2006) ; (JAEA-J 01669)
 原子対相関関数に対するナノ粒子の有限サイズ効果を、シート,ベルト,ロッド,チューブ,球といったさまざまな形状の粒子に対して、連続体近似を用いて動径分布関数を計算することによって議論した。対相関関数や動径分布関数のふるまいが粒子のサイズと形状に依存することがわかった。それらの有限サイズ効果を取り入れた対相関関数を用いた構造解析手法(PDF解析)に用いる公式を新たに与え、さらにそれが実験結果を再現できることを確認した。

35000121
Vibrationally assisted dissociative adsorption of oxygen on Ru(0001)
高橋 真*; 藤本 洋介*; 寺岡 有殿; 吉越 章隆; 有賀 哲也*
Chemical Physics Letters 433(1-3), p.58-61(2006) ; (JAEA-J 01671)
 Ru(0001)表面での酸素分子の解離吸着を超音速分子ビームと放射光を用いた高分解能X線光電子分光(XPS)で調べた。酸素の直接解離吸着に対する振動励起の影響を並進エネルギーと同様に調べた結果、酸素分子の振動励起によってRu(0001)表面での解離吸着が増速されることがわかった。これはポテンシャルエネルギー曲面がこの反応系の場合に後期障壁型であることを表している。

35000122
Attosecond electron dynamics with linear combination of floating Gaussian type basis function
朽津 敬史*; 立川 仁典*; 志賀 基之
Chemical Physics Letters 433(1-3), p.193-198(2006) ; (JAEA-J 01672)
 パルスレーザーにより電子状態を制御すると、通常の状態とは異なる多様なダイナミクスが見られるが、この現象のシミュレーションを行うためにはアト秒からフェムト秒の間の電子状態の変化を追跡することが必要で、その技術はまだあまり進歩していない。本研究では、その候補として電子状態を動的なガウス基底関数の重ね合わせで記述することによって第一原理的に計算する手法を述べ、その手法により水素原子やヘリウム原子が急激に変化する電場の中でどう応答するかを数値的に観察した。

35000123
Kinetic simulations of turbulent fusion plasmas
井戸村 泰宏; 渡邉 智彦*; 洲鎌 英雄*
Comptes Rendus Physique 7(6), p.650-669(2006) ; (JAEA-J 01673)
 3次元配位空間で記述される中性流体乱流とは対照的に、無衝突磁化プラズマ乱流は5次元位相空間におけるプラズマの簡約化運動論モデルであるジャイロ運動論モデルを用いて研究されてきた。近年の計算機技術やシミュレーションモデルの進歩により、トロイダル配位かつ実験に近いパラメータにおけるプラズマ乱流の直接数値シミュレーションが可能になった。このような運動論シミュレーションは核融合プラズマにおける乱流輸送を研究するための必要不可欠なツールとして確立してきた。本オーバービューでは、乱流核融合プラズマの運動論シミュレーションの進展をその物理モデル・数値モデル及び5次元ジャイロ運動論シミュレーションから得られた物理的発見に焦点をあてて概説する。

35000124
Measurement of evaporation residue cross-sections of the reaction 30Si+238U at subbarrier energies
西尾 勝久; Hofmann, S.*; Hessberger, F. P.*; Ackermann, D.*; Antalic, S.*; Comas, V. F.*; Gan, Z.*; Heinz, S.*; Heredia, J. A.*; 池添 博; Khuyagbaatar, J.*; Kindler, B.*; Kojouharov, I.*; Kuusiniemi, P.*; Lommel, B.*; Mann, R.*; Mazzocco, M.*; 光岡 真一; 永目 諭一郎; 大槻 勤*; Popeko, A. G.*; Saro, S.*; Schott, H. J.*; Sulignano, B.*; Svirikhin, A.*; 塚田 和明; 鶴田 薫*; Yeremin, A.*
European Physical Journal A 29(3), p.281-287(2006) ; (JAEA-J 01674)
 重イオン融合反応30Si+238UによりSg同位体を合成し、この生成断面積を調べた。実験は、ドイツ重イオン研究所(GSI)で行った。反応エネルギーEc.m.=144MeVにおいて、263Sgから始まる3つのα崩壊連鎖を観測した。断面積は、67pbであった。サブバリヤエネルギーEc.m.=133MeVで、新同位体264Sgを3つ合成し断面積10pbを得た。これは自発核分裂で崩壊し、半減期は120msであった。これら断面積を統計モデル計算と比較した。融合過程においては、238Uの変形を取り入れたチャンネル結合法で捕獲断面積を決定した。この値は、原子力機構のタンデム加速器を用いて行った30Si+238Uの核分裂断面積とよく一致した。Ec.m.=133MeVでの断面積の値は、一次元モデルに比べて104倍大きな値であり、ウランの変形によるサブバリヤでの断面積の増加で説明できた。しかし、計算との不一致から、準核分裂が何割か存在することが示唆された。クーロン障壁より高いエネルギーEc.m.=144MeVでは30Siは238Uの赤道面と接触できる。263Sgの生成断面積65pbは、統計モデル計算値によく一致し、融合に阻害がなかった。これは、赤道面衝突が融合に有利であることを示唆している。

35000125
Impacts of particle fuelling on confinement and pedestal parameter in JT-60U
竹永 秀信; 大山 直幸; 浦野 創; 神谷 健作; 三代 康彦; 西山 友和; 笹島 唯之; 正木 圭; 平塚 一; 市毛 尚志; Bucalossi, J.*; Tsitrone, E.*; Gunn, J.*; Grisolia, C.*; Polevoi, A. R.*; 鎌田 裕; 三浦 幸俊
Europhysics Conference Abstracts (CD-ROM) 30I, 4p.(2006) ; (JAEA-J 01675)
 核融合炉では、高密度にて高閉じ込め状態を実現することが必要であり、そのためには高効率・高信頼性の粒子供給システムの確立が重要である。本発表では、ペレット入射及びガスパフによる粒子供給時のプラズマ閉じ込めとペデスタル特性、及び新粒子供給装置(改良ペレット入射装置,ガスジェット装置)の開発について報告する。高磁場側ペレット入射では、ペレットの侵入長は、λ/a=0.1-0.3と評価された。この侵入距離は、中性ガス遮蔽モデルによるペレット溶発の計算結果より長く、ペレット溶発雲のドリフトを考慮したSMARTモデルの計算と一致した。高βpHモードプラズマに高磁場側からペレットを入射した結果、ne/nGW 〜0.7でH89PL〜2を得た。一方、ガスパフを使用した場合は、ne/nGW>0.6でH89PLは1.6以下に低下した。ペデスタル圧力もペレット入射時の方が高い。ガスパフの有無に対しては、ペレット入射によるコールドパルスの伝搬にも違いが見られた。ガスパフ無しの場合は、内部輸送障壁で温度低下量の増加が観測されたが、その内側にはコールドパルスが伝搬しなかった。ガスパフ有りの場合は、中心部までコールドパルスの伝搬が観測され、温度分布の硬直性が強い。さらに、ペレット入射装置の長時間化,カダラッシュ研究所との研究協力にて設置したガスジェット装置の開発について報告する。

35000126
Investigation of toroidal rotation as a result of reduction of toroidal magnetic field ripple by installing ferritic steel in JT-60U
吉田 麻衣子; 小出 芳彦; 竹永 秀信; 浦野 創; 大山 直幸; 神谷 健作; 坂本 宜照; 鎌田 裕; JT-60チーム
Europhysics Conference Abstracts (CD-ROM) 30I, 4p.(2006) ; (JAEA-J 01676)
 トロイダル回転速度分布は圧力分布や電流分布とともに、輸送特性及びMHD安定性を決定する重要なパラメータであり、プラズマ回転の駆動機構と制御性の解明はプラズマの高性能化にとり重要な研究課題である。本研究の目的は、JT-60Uにおいてフェライト鋼設置により低減したトロイダル磁場リップルのトロイダル回転速度への影響を明らかにすることである。フェライト鋼設置によるトロイダル磁場リップルの減少で、NB入射時のプラズマ周辺部での逆方向回転は緩和し、順方向への回転制御が可能になった。また、逆方向回転の駆動源となっている高速イオンの損失は、計測結果から周辺部で起きていることが示唆するデータが得られており、このことは粒子軌道追跡モンテカルロ・シミュレーションの結果と一致した。以上のことは、リップルによる高速イオン損失が、径電場形成を介してプラズマ回転の一つの駆動機構となっていることを示している。また、摂動運動量輸送解から求めた輸送係数(拡散項)と対流項を導出し、リップル損失の少ない領域では、運動量の輸送でトロイダル回転分布を説明できることを見いだした。

35000127
Overview of design and R&D of test blankets in Japan
榎枝 幹男; 秋場 真人; 田中 知*; 清水 昭比古*; 長谷川 晃*; 小西 哲之*; 木村 晃彦*; 香山 晃*; 相良 明男*; 室賀 健夫*
Fusion Engineering and Design 81(1-7), p.415-424(2006) ; (JAEA-J 01677)
 我が国のブランケット開発は核融合会議において策定された開発計画に従って、固体増殖ブランケットを第一候補に、液体増殖方式を先進的な候補として開発を進めるものである。ITERをテストベッドとし、試験モジュールを試験するテストブランケット試験計画の作業部会においても、我が国として主体的に試験に参加し、試験を実施するために、試験モジュールの設計と研究開発を両候補ブランケットについて進め、固体増殖方式では要素技術開発が終了、液体増殖方式では、最重要課題の解明が進んできた。本報告は、日本におけるテストブランケットの設計と研究開発の最新の成果を総合的に取りまとめ報告するものである。

35000128
Possibility of tritium self-sufficiency in low aspect ratio tokamak reactor with the outboard blanket only
林 孝夫; 飛田 健次; 西尾 敏; 佐藤 聡; 西谷 健夫; 山内 通則
Fusion Engineering and Design 81(23-24), p.2779-2784(2006) ; (JAEA-J 01678)
 低アスペクト比トカマク炉において強磁場中のインボード側の構造を簡素化するために、アウトボード側のみのブランケットを用いたトリチウム増殖の可能性を検討した。インボード反射材として中性子増倍材である鉛やベリリウムを用いることによりアウトボードブランケットのトリチウム増殖比(TBR)が増加した。プラズマ対向壁に対する増殖材料の割合を0.78とすると、局所的なTBRは1.35より大きい必要がある。鉛のインボード反射材とアウトボードブランケットの組合せでは、アスペクト比が2.9より小さいときに局所TBRが1.35を上回った。この結果は低アスペクト比トカマク炉においては、アウトボード側ブランケットのみで核融合炉の運転継続に必要なトリチウムの増殖ができる可能性を示している。一方インボード及びアウトボードの両方にベリリウム(Be)及び酸化リシウム(Li2O)を用いたペブル増殖ブランケットを設置した場合には局所TBRが1.5を超えた。化学的安全性はBe12Ti及びLi2TiO3を用いたブランケットの方が優れており、この組合せではアスペクト比が2〜4の間で局所TBRがわずかに1.35を上回った。

35000129
Activation experiment with D-T neutrons on materials relevant to liquid blankets
Li, Z.*; 田中 照也*; 室賀 健夫*; 佐藤 聡; 西谷 健夫
Fusion Engineering and Design 81(23-24), p.2893-2897(2006) ; (JAEA-J 01679)
 Li/V合金,Flibe/V合金先進液体ブランケットシステムに用いられる材料の放射化特性を調べるために、FNSにおいてDT中性子照射実験を行った。V合金構造材,MHD圧力損失低減用のEr2O3電気絶縁皮膜,Flibe中におけるフッ素の放射化特性を調べるために、V-4Cr-4Ti合金(NIFS-HEAT2),金属Er箔,テフロンフォイルを試料として用いた。単色14MeV中性子の直接照射とともに、特に、低エネルギー中性子に対する応答を調べるためにBeモックアップ内に設置した試料に対する照射を実施した。照射後のGe検出器を用いたγ線エネルギースペクトル測定から161Er, 167Ho, 168Ho, 171Er, 18F, 51Ti, 52V, 48Scの放射能を分析し、MCNP-4C及びJENDL3.3により得られた中性子スペクトルとFISPCT-2001コードを用いて計算された誘導放射能との比較を行った。分析値と計算値は約20%以内で一致したものの、168Hoに関しては約40%の違いが見られた。

35000130
The Integral experiment on beryllium with D-T neutrons for verification of tritium breeding
Verzilov, Y. M.; 佐藤 聡; 落合 謙太郎; 和田 政行*; Klix, A.*; 西谷 健夫
Fusion Engineering and Design 82(1), p.1-9(2007) ; (JAEA-J 01680)
 増殖ブランケット核特性実験に使用するベリリウムの核的特性の検証を目的として、ベリリウム体系の積分ベンチマーク実験を原子力機構FNSで実施した。直径628mm,厚さ355mmの疑似円柱体系に14MeV中性子を照射し、体系内に埋め込んだ炭酸リチウムペレットのトリチウム生成率を液体シンシレーションカウンタ法で測定した。実験結果は、中性子モンテカルロコードMCNP-4Cで解析した。なお中性子輸送用核データとしてはFENDL/MC-2.0及びJENDL-3.2/3.3、リチウムの反応率用にはJENDLドジメトリファイル及びENDF/B-VIを使用した。どの核データを使用した計算も、実験値と誤差10%以内で一致し、ベリリウムの核的特性に大きな問題はないことを確認した。

35000131
Mass transfer process of hydrogen via ceramic proton conductor membrane of electrochemical hydrogen pump
河村 繕範; 磯部 兼嗣; 山西 敏彦
Fusion Engineering and Design 82(2), p.113-121(2007) ; (JAEA-J 01681)
 核融合炉増殖ブランケットのトリチウム回収システムへの適用が提案されているプロトン導電体膜を用いた電気化学水素ポンプの利点は、電位差を駆動力とするため低水素分圧の系への適用が可能であることや化学形態別の処理が不要となることである。SrCe0.95Yb0.05O3-αのようなペロブスカイト型セラミックは水素ポンプ用プロトン導電体の候補であり、電気的水素輸送特性が調べられている。本研究では、総括物質移動係数として見かけのプロトン伝導度を用いた物質移動速度式を提案し、実験値との比較により見かけの伝導度を求めた。また、求めた見かけの伝導度を用いて物質移動過程の議論を行った。

35000132
Transient currents generated by heavy ions with hundreds of MeV
小野田 忍; 平尾 敏雄; Laird, J. S.*; 三島 健太; 河野 勝泰*; 伊藤 久義
IEEE Transactions on Nuclear Science 53(6), p.3731-3737(2006) ; (JAEA-J 01682)
 宇宙環境に存在する数十MeV〜数百GeVの高エネルギー重イオンが半導体素子に誘起するシングルイベント(SE)効果の発生機構を調べるためには、微細な高エネルギーイオンビームを半導体素子の任意の領域に照射する技術が必要となる。そのため、百MeV級の重イオンのビーム径を絞って任意の位置に照射し、その際発生するSE過渡電流の強度をマッピングすることができるTIBIC(Transient Ion Beam Induced Current)システムを開発し、数十から数百μmの感受領域を持つ半導体素子に対してTIBICイメージを実測した。その結果、エネルギーが高くなるに従いSE過渡電流の波高が高くなることがわかった。重イオンが半導体中に誘起する電子・正孔分布(プラズマトラック)の計算を実施し、シノプシス製TCAD10を用いてデバイスシミュレーションした結果、エネルギーが高くなるほどプラズマ密度が低くなり、また、低密度であるほどプラズマ中のキャリア拡散が速くなるため、キャリアが高速で収集されSE過渡電流の波高が高くなることが明らかとなった。

35000133
Local crystal structures of Ge2Sb2Te5 revealed by the atomic pair distribution function analysis
社本 真一; 樹神 克明; 飯久保 智; 田口 富嗣; 山田 昇*; Proffen, T.*
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 45(11), p.8789-8794(2006) ; (JAEA-J 01685)
 パルス中性子の特徴を利用した構造解析法の一つである結晶PDF解析法を用いた研究例として、光相変化記録材料DVD-RAMとして実用化されているGe2Sb2Te5の結晶相とナノ相の局所構造解析を紹介した。ナノ相は格子定数が広がっており、GeSb2Te4と思われ、この異なる組成が結晶成長の核となる理由から、この系では核生成により結晶成長を起こすことがわかった。またそのアモルファス中に埋もれたナノ粒子の粒径分布を求める新しい試みについても報告した。

35000134
A Screening method for uranium particles in safeguards environmental samples based on etching behavior of fission tracks
Lee, C. G.; 井口 一成; 江坂 文孝; 間柄 正明; 桜井 聡; 臼田 重和
Japanese Journal of Applied Physics, Part 2 45(42), p.L1121-L1123(2006) ; (JAEA-J 01686)
 原子力関連施設内外で採取したスワイプ試料中に含まれるウラン粒子をフィッショントラック法によって検出する際、濃縮度別粒子検出法について検討を行った。ウラン粒子によるFTのエッチング速度は高濃縮度の粒子のFTほど、その速度は速くなる。すなわち、粒子の濃縮度が高くなるほど、短いエッチング時間で検出される。これは、FT検出器のエッチング時間を制御することにより、ウラン粒子の濃縮度別検出が可能であることを示唆する。本法の有効性を検証するために濃縮度混合試料(35%濃縮ウラン+天然組成ウラン)を用い、粒径の違いによる影響を避けるために2段式粒子吸引法を用い粒径が揃った粒子を回収し検出器を作製した。35%濃縮ウランと天然組成ウランがそれぞれ十分検出されるエッチング時間を用い、検出された粒子を表面電離型質量分析計により同位体比測定を行った。その結果、エッチング時間のみを制御では完全な濃縮度別検出ができなかったが、エッチング時間の制御とともにフィッショントラックの形状を比較することにより濃縮度別検出が可能であることが示された。

35000135
Chemical thermodynamic analysis of americium-containing UO2 and (U,Pu)O2
逢坂 正彦; 黒崎 健*; 山中 伸介*
Journal of Alloys and Compounds 428(1-2), p.355-361(2007) ; (JAEA-J 01687)
 Amを含有するUO2及び(U,Pu)O2の酸素ポテンシャルを、Lindemerらによって提案された化学熱力学モデルにより解析した。酸化物中のAm及びUの価数(それぞれ3価及び5価)を考慮して、Am0.8O1.2もしくはAm2O3及びAm4/3U4/3O16/3をマスパラメータとして新規に導入した。実験値のより良い再現のために、マスパラメータの組成とその相互作用を最適化した。本解析を通じて熱力学データが得られた。実験値を本モデルにより良好に再現することができた。

35000136
Detailed structural analysis and dielectric properties of silicon nitride film fabricated using pure nitrogen plasma generated near atmospheric pressure
早川 竜馬*; 中永 麻里*; 吉村 毅*; 芦田 篤*; 藤村 典史*; 上原 剛*; 田川 雅人*; 寺岡 有殿
Journal of Applied Physics 100(7), p.073710_1-073710_8(2006) ; (JAEA-J 01688)
 大気圧プラズマ(AP)法で形成されたシリコン酸窒化膜について詳細な構造分析と絶縁特性の測定を行った。その結果をRFプラズマの場合と比較した。AP法の場合は298から773Kの範囲でSi3N3.5O0.7の組成を持つ1.8nmの膜が形成される。1486.6eVの単色Al-Ka線と高分解能ラザフォード後方散乱分光からN原子がNSi3結合に関与する割合はAPプラズマの方が10%以上大きいことがわかった。298から773Kの範囲ではリーク電流密度は変わらない。298Kで形成した膜のそれは5MV/cmの電界強度のとき7×10-2A/cm2である。この値はRFプラズマの場合に比べて一桁小さい。

35000137
Local structure of relaxor Pb(In0.5Nb0.5)O3 ferroelectrics
米田 安宏; 鈴谷 賢太郎; 水木 純一郎; 小原 真司*
Journal of Applied Physics 100(9), p.093521_1-093521_4(2006) ; (JAEA-J 01689)
 鉛系ペロブスカイトPb(In0.5Nb0.5)O3は、結晶作製後のポストアニールによって反強誘電性やリラクサー性を示し、その巨大な誘電率と大きな電気機械結合係数を利用したデバイスの作製が試みられている。一方で、リラクサー状態では結晶構造が強誘電性を許されないCubic構造であるため、強誘電性発現機構が未だ解明されていない。われわれはこの物質の局所構造に注目し、高エネルギーX線回折を用いたPair-distribution function(PDF)解析によって、局所構造を調べた。その結果、リラクサー状態の平均構造はCubicであるが、局所構造では鉛が大きく変位しており、分極を発生していることがわかった。またこの鉛の変位はランダムであり、リラクサー特有のランダムフィールドも、この鉛の動きによって生じていることがわかった。

35000138
Static analysis of the thermochemical hydrogen production IS process for assessment of the operation parameters and the chemical properties
笠原 清司; 小貫 薫; 野村 幹弘*; 中尾 真一*
Journal of Chemical Engineering of Japan 39(5), p.559-568(2006) ; (JAEA-J 01690)
 ISプロセスの定常フローシートについて、操作パラメータと物性の感度解析を行った。熱物質収支をもとに、熱効率,物質流量,交換熱量についてパラメータと物性の評価を行った。最も重要なパラメータは、電解電気透析セルでのHI濃縮濃度とセル内膜のプロトン輸率であった。物性では、HI分解工程入口の組成とHIx溶液の擬共沸組成の影響が大きかった。この評価をもとにパラメータや物性の検討すべき順序を提案した。

35000139
H/D isotope effect on the dihydrogen bond of NH4+・BeH2 by ab initio path integral molecular dynamics simulation
林 愛子*; 志賀 基之; 立川 仁典*
Journal of Chemical Physics 125(20), p.204310_1-204310_7(2006) ; (JAEA-J 01691)
 ab initio経路積分分子動力学法により二水素結合系分子クラスターNH4+・BeH2の分子構造を詳細に解析した。この系では重水素置換により水素結合交替が起こりやすくなるが、それは特異なトンネル効果によるものであることがわかった。

35000140
Application of extraction chromatography to the separation of thorium and uranium dissolved in a solution of high salt concentration
藤原 亜佐子; 亀尾 裕; 星 亜紀子; 原賀 智子; 中島 幹雄
Journal of Chromatography A 1140(1-2), p.163-167(2007) ; (JAEA-J 01692)
 UTEVA樹脂を用いる抽出クロマトグラフィを多元素を含む対照試料と模擬廃棄物の溶融固化体を溶解して作製した試料に含まれるThとUの分離に適用した。硝酸濃度1Mから5Mの対照試料中のThとUは、UTEVA樹脂に抽出され、0.1Mの硝酸と0.05Mのシュウ酸を含む溶液によって回収され、結果としてほかの金属元素から分離された。溶融固化体の試料中のウランは対照試料と同様の溶離挙動を示した。一方、トリウムは硝酸濃度5Mの試料からは抽出されたが、硝酸濃度1Mの試料からは抽出されなかった。フッ化物イオンがThの抽出を妨害していると考え、Thよりもフッ化物イオンとの安定度定数が大きいAlやFeの硝酸塩を添加したところ、硝酸濃度1Mの試料からもThが抽出された。

35000141
γ-rays radiation-induced homopolymerization of trifluorovinyl heptafluoropropyl ether
成田 正*; 榎本 一之*; 前川 康成; 吉田 勝; 市川 充*; 浜名 浩*
Journal of Fluorine Chemistry 128(1), p.52-54(2007) ; (JAEA-J 01693)
 フッ素系樹脂は、化学的安定性,耐熱性,光学特性に優れていることから、燃料電池用の電解質膜などへの応用が期待されている。しかし、官能基を持ったフッ素系ビニルモノマーは、四フッ化エチレンなどとの共重合体が得られるのみで、その単独重合体は報告されていない。そこで、重合開始剤となるラジカルを継続的に発生できる放射線重合に着目し、パーフルオロビニルエーテルであるheptafluoropropyl ether(FVPE)のラジカル重合を試みた。FVPE液体に、減圧下、γ線を2000kGy照射したところ、粘性の高い(固有粘度:0.47)液体に変化した。NMR, IR測定より、フッ化ビニル基のラジカル重合により、FVPEの単独重合体が生成していることが確認できた。

35000142
Post-irradiation examination on particle dispersed rock-like oxide fuel
白数 訓子; 蔵本 賢一*; 山下 利之; 市瀬 健一; 小野 勝人; 二瓶 康夫
Journal of Nuclear Materials 352(1-3), p.365-371(2006) ; (JAEA-J 01694)
 岩石型燃料の照射挙動の評価を行うため、Puの代わりに20%濃縮ウランを用いて照射試験を行った。試験に供した燃料は、UO2固溶安定化ジルコニア(U-YSZ)単相燃料,U-YSZの粉砕片とスピネルまたはコランダムを混合した粒子分散型燃料の計3種である。U-YSZ粒子は、仮焼したU-YSZペレットを粉砕,分級することにより調製した。照射は、日本原子力研究開発機構JRR-3において13サイクル,約300日間行った。X線透過撮影の結果、燃料ペレットには亀裂が見られたものの、燃料ピンの外観変化はほとんど観測されなかった。γ線スキャニングの結果、不揮発性核種はペレット内に存在していることが確認された。一方、燃料内におけるCsの移行が多少観察された。またプレナム部において、137Csと134Csの分布の違いが見られた。燃料ペレットの取り出しを行ったところ、すべての燃料でボンディングが見られなかった。前回よりも低い照射温度にて行われた今回の照射試験では、スピネルの分解及び組織の再編成は見られなかった。

35000143
Separation behaviors of actinides from rare-earths in molten salt electrorefining using saturated liquid cadmium cathode
加藤 徹也*; 井上 正*; 岩井 孝; 荒井 康夫
Journal of Nuclear Materials 357(1-3), p.105-114(2006) ; (JAEA-J 01695)
 アクチノイド及び希土類元素を含むLiCl-KCl溶融塩中において、液体カドミウム陰極中に固溶限度を超える10wt%以上のアクチノイドを回収するための電解試験を実施した。飽和したカドミウム陰極中に、アクチノイド及び希土類元素はPuCd11型のMCd11を形成して回収された。(液体カドミウム陰極中のRE/Pu)/(塩中のRE/Pu)で定義されるPuに対するREの分離係数は、未飽和のカドミウムについて報告されている平衡値よりも若干大きめの値を示した。

35000144
Nuclear energy and waste management; Pyroprocess for system symbiosis
小川 徹; 湊 和生; 岡本 芳浩; 西原 健司
Journal of Nuclear Materials 360(1), p.12-15(2007) ; (JAEA-J 01696)
 増大する核拡散への懸念や長期の環境負荷への意識からアクチノイド管理は原子力の主要問題の一つとなっている。超ウラン元素の燃焼による廃棄物管理は、軽水炉,高速炉,加速器駆動システムからなるシステム共生系によって行うことが可能である。新しいリサイクル技術は共通技術基盤のうえにこれら共生システムの多様な燃料を処理できるものであることが望ましい。溶融塩を用いた乾式プロセスはその有力な候補である。原子力機構では超ウラン元素の高温化学の研究のための施設が整備された。超ウラン元素の酸化物,窒化物の溶融塩中の化学に関する基礎データを計算コードと結合して溶融塩電解精製法による再処理プロセスの予測評価に用いることができる。

35000145
Molecular dynamics studies of americium-containing mixed oxide fuels
黒崎 健*; 安達 淳*; 片山 将仁*; 逢坂 正彦; 田中 健哉; 宇埜 正美*; 山中 伸介*
Journal of Nuclear Science and Technology 43(10), p.1224-1227(2006) ; (JAEA-J 01697)
 Am含有混合酸化物燃料,(U0.7-xPu0.3Amx)O2(x = 0, 0.016, 0.03, 0.05, 0.1, 0.15)の格子定数,熱容量及び熱伝導度を評価するために、300から2500Kの温度範囲において、分子動力学法(MD)による計算を行った。格子定数の計算値は、Vegard則に従うことが示された。MD計算結果から、熱容量及び熱伝導度はすべての組成範囲において同程度、すなわちこれらは15%までのアメリシウム添加にほとんど影響されないことが明らかとなった。

35000146
Numerical consideration for multiscale statistical process control method applied to nuclear material accountancy
鈴木 美寿; 堀 雅人; 麻生 良二; 臼田 重和
Journal of Nuclear Science and Technology 43(10), p.1270-1279(2006) ; (JAEA-J 01698)
 大型再処理施設の在庫差(MUF)を説明する目的で、数値計算による多重尺度統計的プロセス制御手法(MSSPC)を適用する。商業用再処理施設では年間のプルトニウム取扱い量が5000kg以上となるが、核燃料物質の取扱い量が増えれば増えるほど、計量管理測定に伴う累積誤差が1SQ(=8kgPu)を越えることが予想され、近実時間物質収支法(NRTA)とプロセスモニタリング法がIAEAの保障措置基準を満足するために必要とされている。本研究では、模擬のバッチ運転データに種々の誤差や乱れが重畳されたプロセスデータを連続ウエーブレット関数を用いて展開し、データに含まれる誤差や乱れが時間と周波数領域で分解されることを示す。ウエーブレット展開を用いたMSSPCは広範囲の異常現象に対して効果的に適用できるので、事前には知らされていないゆっくりとした又は急な転用損失を保障措置対策として検知することができる。MSSPCによる診断法を通常データから異常現象を分離することに適用し、主成分分析(PCA)を用いて先の二つのタイプの転用ロスの検知方法を示す。MUFのデータは一般的に自己相関的な時系列データと仮定することが可能で、この時系列データにMSSPCを用いた定量的な効果について、非検知確率βと比較するためにモンテカルロ計算による平均的な遅れ時間を用いて示す。物質収支におけるバイアス補正(BC)に関する最近の議論を紹介し、MUFをBCを用いずに説明できる評価手法を示す。

35000147
Verification of homogenization in fast critical assembly analyses
千葉 豪
Journal of Nuclear Science and Technology 43(11), p.1395-1405(2006) ; (JAEA-J 01699)
 高速臨界実験解析における均質化誤差を評価した。この体系特有の中性子束の角度依存性を、二重ガウス求積セットよりも少ない積分点で評価できる新たな求積セットを開発した。非均質全炉心解析結果との比較により、格子計算における臨界バックリングの使用、カレントを重みとした輸送断面積の均質化が妥当であることを明らかにした。中性子漏洩の取り扱いについて、従来の手法とTIBERE法を比較し、両者に大きな相違がないことを確認した。従来の均質化手法は、臨界性において0.15%dk程度の誤差を生じさせることを示した。加えて、ボイド反応度の漏洩成分を9%程度過大評価する可能性があることを示した。

35000148
Conceptual design study of 180 MWt small-sized reduced-moderation water reactor core
中野 佳洋; 大久保 努; 内川 貞夫
Journal of Nuclear Science and Technology 43(12), p.1471-1480(2006) ; (JAEA-J 01700)
 熱出力180MWの、小型低減速軽水炉(S-RMWR)の炉心概念設計を行った。S-RMWRは、大型発電プラントである低減速軽水炉(RMWR)の商業化のための要素技術の実証と燃料照射などの試験,開発を目的とした原子炉である。RMWRは沸騰水型軽水炉であるが、燃料棒を稠密な三角格子に配列しかつ炉心平均ボイド率を高めて、軽水による中性子の減速を極力抑えている。燃料には混合酸化物燃料(MOX)を用い、燃料集合体の軸方向の構成は、劣化ウランからなる内部ブランケットを二つの扁平なMOX領域が上下から挟み、さらにその上下にブランケットを有する。これらの軸方向構成と、上記の極力中性子減速を抑える工夫により、1を超える転換比を達成する。S-RMWRは、小型炉心であるため中性子の漏洩が大きくなる。そこで、大型炉には不必要な径方向ブランケットを配置し、MOX領域のPu富化度や軸方向の各領域高さを調節して、転換比1.0,負のボイド反応度係数を有する炉心概念を構築した。

35000149
Determination of trace elements using multi-parameter coincidence spectrometry
初川 雄一; 藤 暢輔; 大島 真澄; 木村 敦; Gharaie, M. H. M.
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 271(1), p.43-45(2007) ; (JAEA-J 01701)
 多重γ線検出法を中性子放射化分析と組合せた新たな微量元素分析法を環境,地質試料に適応した。19台のGe検出器からなるGEMINI-IIを用いて多重γ線放射化分析を行い環境試料中のヨウ素-129については安定ヨウ素と比で10-13及び地質試料中のイリジウムにおいては10pptの検出限界を有する高感度分析であることを示した。

35000150
Coverage of whole proteome by structural genomics observed through protein homology modeling database
由良 敬; 山口 昌太*; 郷 通子*
Journal of Structural and Functional Genomics 7(2), p.65-76(2006) ; (JAEA-J 01702)
 ゲノム塩基配列から推定される全ORFがコードするタンパク質の立体構造をホモロジーモデリング法により可能な限り推定しデータベース(FAMSBASE)を構築してきた。現在FAMSBASEには368724ORF由来のタンパク質の立体構造が格納されている。FAMSBASEに格納されているタンパク質立体構造の年次変化を調べることで、全生物の全タンパク質の立体構造がいつ判明するかが推定できる。その結果原核生物の全タンパク質立体構造は15年後に、真核生物の全タンパク質立体構造は25年後にホモロジーモデリングが可能になることがわかった。

35000151
Formation of silicone carbide membrane by radiation curing of polycarbosilane and polyvinylsilane and its gas separation up to 250℃
Wach, R. A.; 杉本 雅樹; 吉川 正人
Journal of the American Ceramic Society 90(1), p.275-278(2007) ; (JAEA-J 01703)
 2種類のケイ素高分子材料の混合材料から合成されたSiCセラミック薄膜を積層して水素分離膜を形成し、その表面や断面の形態、並びにガス分離能を調べた。その結果、混合高分子材料を用いるとSiCセラミック薄膜の表面平坦性が向上した。また薄膜の積層により形成された界面は多数回の焼成で消失することがわかった。一方、ガス分離能については、SiCセラミック薄膜を2回積層した場合には、ピンホールを有するSiCセラミック薄膜が示す理論的な水素/窒素の分離比3.73と同等の値を示したが、4回積層した場合には温度上昇に伴って水素/窒素の分離比が増大する分子ふるい効果が現れ、その値が250℃において約100を示した。これにより、ケイ素高分子材料から合成されるSiCセラミック薄膜の積層技術が、高温で使用可能な水素分離膜を作製する技術として有効であることが確かめられた。

35000152
Hsc70 ATPase; An Insight into water dissociation and joint catalytic role of K+ and Mg2+ metal cations in the hydrolysis reaction
Boero, M.*; 池田 隆司; 伊藤 悦朗*; 寺倉 清之*
Journal of the American Chemical Society 128(51), p.16798-16807(2006) ; (JAEA-J 01704)
 QM/MMハイブリッド法と近年導入されたメタダイナミクス法を組合せてbovine Hsc70 ATP合成酵素のシミュレーションを実行することにより、Mg2+金属カチオンのどの水和水がATP加水分解反応の初期段階のトリガーとして働くかを示した。さらに、実験で調べることが困難な反応機構の詳細を明らかにした。

35000153
Influence of self-irradiation damage on the Pu-based superconductor PuCoGa5 probed by muon spin rotation
大石 一城; 伊藤 孝; 髭本 亘; Heffner, R. H.
Journal of the Physical Society of Japan 75(Suppl.), p.53-55(2006) ; (JAEA-J 01705)
 PuCoGa5Tc=18Kと既存で同様の結晶構造を持つ115系の中でも非常に高い転移温度を有する超伝導体として知られている。これまでのμSR実験の結果から磁場侵入長λの温度依存性が報告されており、Δλ (T)=λ (T)-λ(0)∝ TであることからPuCoGa5はline nodeを有するd波超伝導体であることが示唆されている。さらにPuCoGa5における超伝導秩序変数に関する知見を得るため、われわれはλの磁場依存性の測定を行った。発表当日は、既存のλの温度依存性の結果と今回新たに測定した磁場依存性の結果から、PuCoGa5の超伝導秩序変数について議論する。また、本系と同じ結晶構造を有するPuRhGa5においても同様の測定を行い、超伝導秩序変数の対称性について議論する予定である。

35000154
Magnetism and superconductivity in CePt3Si probed by muon spin relaxation
髭本 亘; 芳賀 芳範; 松田 達磨; 大貫 惇睦; 幸田 章宏*; Saha, S. R.*; 大石 一城; 門野 良典*
Journal of the Physical Society of Japan 75(Suppl.), p.180-182(2006) ; (JAEA-J 01706)
 ミュオンスピン回転,緩和法を用いて調べた多結晶CePt3Siの磁性,磁場侵入長及びナイトシフト測定の結果について報告する。ゼロ磁場中では試料の全体積において磁性が観測された。また17kOeにおいて20mKまでの範囲で測定したミュオンナイトシフトでは3つの異なるナイトシフトが観測された。この結果に基づいた超伝導電子対の対称性についての議論を行う。

35000155
Possible magnetic chirality in optically chiral magnet [Cr(CN)6][Mn(S)-pnH(H2O)](H2O) probed by muon spin rotation and relaxation
大石 一城; 髭本 亘; 幸田 章宏*; Saha, S. R.*; 門野 良典*; 井上 克也*; 今井 宏之*; 東川 大志*
Journal of the Physical Society of Japan 75(6), p.063705_1-063705_5(2006) ; (JAEA-J 01707)
 分子磁性体[Cr(CN)6][Mn(S)-pnH(H2O)](H2O)(以下、S体と省略。以下で述べる光学異性体のR体は(S)-pn部分が(R)-pnで置換された物質)はTC=38Kでフェリ磁性転移することが知られている。本物質の結晶構造は、空間群P212121に属し空間反転対称性を持たない。このように結晶構造で空間反転対称性が破れた物質の磁気構造が、結晶構造同様に空間反転対称性が破れているのか否か、注目を集めている。そこでわれわれはこれらの磁気構造に関する情報を得るため、S体及びその光学異性体であるR体を用いてμSR測定を行った。その結果、S体及びR体の両方の試料でTC以下でフェリ磁性転移に伴うミュオンスピン回転が観測され、その回転周波数及び温度依存性は全く同じ振る舞いを示した。ミュオンは一定の格子間位置に止まってそこでの内部磁場を見るわけだが、ミュオンサイト自体は静電相互作用で決まっていて磁気構造自体には左右されず、S体とR体の間で鏡像関係にあると考えられる。したがって、S体とR体で同じ回転周波数及び温度依存性が観測されたということは、すなわち、磁気構造がS体とR体で鏡映関係にあることを示唆しており、本物質の磁気構造が空間反転対称性を持たないことを示す結果を得た。

35000156
Structural transformation on the pressure-induced metal-insulator transition in PrFe44P12
川名 大地*; 桑原 慶太郎*; 佐藤 正志*; 高木 正俊*; 青木 勇二*; 神木 正史*; 佐藤 英行*; 佐賀山 基*; 長壁 豊隆; 岩佐 和晃*; 菅原 仁*
Journal of the Physical Society of Japan 75(11), p.113602_1-113602_4(2006) ; (JAEA-J 01708)
 充填スクッテルダイト化合物PrFe4P12は常圧で金属状態であり、TA=6.5K以下で非磁性秩序相を持つ。PC=2.4GPaの圧力下でこの非磁性秩序相は消失し、高温下では金属状態であるが、低温下で絶縁体秩序相へと相転移する。われわれはこの物質に対し、単結晶X線回折実験を行った。その結果、PC以上で、金属−絶縁体転移が生じる温度で、立方晶から斜方晶への結晶構造の転移を発見した。同時に格子定数の不連続な飛びを観測し、この圧力下での転移が一次転移であることを発見した。また、PC及びTA以下の非磁性秩序相で観測された(100)超格子反射が、PC以上で低温下の絶縁体相で消失することを発見した。格子定数の変化や超格子ピークが消失する実験事実は、PC以上で低温下の絶縁体相が(高圧下中性子回折実験で明らかにされた)反強磁性秩序相であることを考慮すると、よく説明されることがわかった。

35000157
Magnetic and transport properties in ferromagnet UTeS
池田 修悟; 酒井 宏典; 松田 達磨; 青木 大*; 本間 佳哉*; 山本 悦嗣; 中村 彰夫; 塩川 佳伸*; 芳賀 芳範; 大貫 惇睦*
Journal of the Physical Society of Japan 75(12), p.124706_1-124706_5(2006) ; (JAEA-J 01709)
 キュリー温度87Kの強磁性体UTeSを、磁化,磁化率,電気抵抗,磁気抵抗,ホール抵抗,比熱測定から研究した。磁化は、非常に異方性があることがわかった。磁化容易軸は[001]方向であることがわかり、[100]方向の磁化困難軸の磁化は、キュリー温度で、反強磁性のような折れ曲がりを示す。電気抵抗もまた、キュリー温度でピーク構造を示す。これらの結果は、UTeSの磁気モーメントがキャントしている可能性を示唆する。大きな負の磁気抵抗もキュリー温度付近で観測された。ホール抵抗測定の結果から、UTeSは半金属であることがわかった。この結果は、電気抵抗の絶対値が大きいこと、及び電子比熱係数が小さい結果と一致している。

35000158
Effective crystalline electric field potential in a j-j coupling scheme
堀田 貴嗣; 播磨 尚朝
Journal of the Physical Society of Japan 75(12), p.124711_1-124711_5(2006) ; (JAEA-J 01710)
 j-j結合描像に基づくf電子モデルに結晶場ポテンシャルの効果を有効的に取り入れるための系統的手法を、スピン・軌道相互作用λの逆数に関する摂動展開によって開発した。λが無限大の極限における結晶場項やクーロン相互作用に加えて、1/λのオーダーの補正項を正しく考慮することにより、LS結合描像の結晶場スキームがj-j結合描像でも定量的に正しく再現されるようになる。このような修正j-j結合描像の応用例として、Th群の対称性を持つ充填スクッテルダイトの結晶場スキームを議論する。

35000159
Observation of nuclear excitation of 19F by synchrotron radiation
原見 太幹; 依田 芳卓*; 藤原 守*
Journal of the Physical Society of Japan 75(12), p.125002_1-125002_2(2006) ; (JAEA-J 01711)
 19Fの放射光による核励起を初めてSPring-8ビームラインで観測した。励起エネルギー110keVは今まで放射光で観測された中で最も高いエネルギーである。検出器の効率が低いこと,核の寿命が0.6nsと比較的短いことという難しい観測技術にもかかわらず、核励起をうまく検出できた。19Fの核励起は薬剤中のフッ素の検出,同定,定量の手段として利用できる。また、素粒子物理の分野では、パリテイ非保存効果の研究にも利用できる。

35000160
Effect of pressure on the electronic state in antiferromagnets UPt2Si2 and UIr2Si2
池田 修悟; 中島 美帆*; 松田 達磨; 立岩 尚之; 山本 悦嗣; 中村 彰夫; 芳賀 芳範; 辺土 正人*; 上床 美也*; 大貫 惇睦*
Journal of the Physical Society of Japan 75(12), p.125003_1-125003_2(2006) ; (JAEA-J 01712)
 反強磁性体UPt2Si2(TN=34K)とUIr2Si2(TN}=6.3K)に関して、8GPaまでの圧力下電気抵抗測定を行った。UPt2Si2のネール温度は、圧力の増加とともに緩やかに減少することがわかった。反強磁性が消失する圧力は、約10GPaと推定される。一方、UIr2Si2のネール温度は、圧力に対してほとんど変化が見受けられなかった。

35000161
Incorporation of metal nanoparticles into a double gyroid network texture
安達 雅幸*; 奥村 有道*; Sivaniah, E.*; 橋本 竹治
Macromolecules 39(21), p.7352-7357(2006) ; (JAEA-J 01713)
 この研究では、まず二元ブロック共重合体バルクが形成する秩序の高いミクロ相分離構造の一つの相を空孔にした新奇なナノ構造を有する鋳型を形成した。ついで、この鋳型にパラジウムナノ微粒子を導入することを目的とした。このためにまずポリイソプレン−ポリビニルピリジン二元ブロック共重合体を試料として用いて、ポリイソプレン相がマトリックス相でポリビニルピリジン相がネットワークを形成する共連続二重ジャイロイド秩序構造を構築した。次いでマトリックス相をオゾン分解処理して、空孔の体積分率が64%の高空孔率を有し、かつ高比表面積を有する二重ジャイロイドネットワーク構造を構築した。これをパラジウムイオンを含むベンゼン/プロパノール混合溶液中に含浸し、パラジウムイオンを還元することにより、二重ジャイロイドネットワーク構造中にパラジウムナノ微粒子を形成させた。ナノ微粒子の成長機構を解明するとともに、ナノ微粒子の数密度,粒子直径(5から10ナノメートル)を制御することに成功した。

35000162
Divacancy model for P6/P7 centers in 4H- and 6H-SiC
Son, N. T.*; 梅田 享英*; 磯谷 順一*; Gali, A.*; Bockstedte, M.*; Magnusson, B.*; Ellison, A.*; 森下 憲雄; 大島 武; 伊藤 久義; Janz'en, E.*
Materials Science Forum 527-529, p.527-530(2006) ; (JAEA-J 01714)
 電子常磁性共鳴(EPR)を用いて六方晶炭化ケイ素(4H-, 6H-SiC)中の欠陥センターであるP6/P7の構造同定を行った。試料はn型,p型の4H-及び6H-SiC及び高品質半絶縁4H-SiCを用いた。室温または850℃での3MeV電子線照射(2×1018〜1×1019/cm2)によりP6/P7センターを導入した。低温(8K及び77K)での13C及び29Siの超微細相互作用を調べた結果、P6及びP7センターは、それぞれ、結晶のC軸に垂直または平行なシリコン空孔(VSi)と炭素空孔(VC)の複空孔(VC-VSi0)であると決定できた。

35000163
Electron paramagnetic resonance study of the HEI4/SI5 center in 4H-SiC
梅田 享英*; Son, N. T.*; 磯谷 順一*; 森下 憲雄; 大島 武; 伊藤 久義; Janz'en, E.*
Materials Science Forum 527-529, p.543-546(2006) ; (JAEA-J 01715)
 六方晶炭化ケイ素(4H-SiC)中の欠陥センターであるSI5を電子常磁性共鳴(EPR)法を用いて調べた。従来、SI5は高抵抗4H-SiC基板中に存在することが知られていたが、低濃度であるため解析が難しく、欠陥構造の同定がなされていなかったが、本研究では、800℃での高温で電子線(3MeV)を照射することで大量のSI5を導入できることを見いだし、その構造同定を試みた。試料にはn型の4H-SiCを用い、800℃にて3MeV電子線を1×1018/cm2照射しSI5を導入した。100KにてSI5の超微細構造を詳細に調べることで、SI5が、負に帯電した炭素空孔(VC)とシリコンサイトを置換した炭素(CSi)の複合欠陥(VC-CSi-)であることを決定した。さらに、SI5の構造が55K以下ではC3v対称からC1h対称となることを明らかにした。

35000164
Shallow P donors in 3C-, 4H-, and 6H-SiC
磯谷 順一*; 片桐 雅之*; 梅田 享英*; Son, N. T.*; Henry, A.*; Gali, A.*; 森下 憲雄; 大島 武; 伊藤 久義; Janz'en, E.*
Materials Science Forum 527-529, p.593-596(2006) ; (JAEA-J 01716)
 炭化ケイ素(SiC)中のリン(P)ドナーを電子常磁性共鳴(EPR)により調べた。試料は化学気相成長中にPを導入した立方晶(3C-)SiC,六方晶(4H-, 6H-)SiCを用いた。また、高品質高抵抗SiC基板にPイオン(9〜21MeV)を注入し、Ar中1650℃で30分間熱処理を行った試料も用いた。低温(6K及び60K)でのEPR測定の結果、3C-SiCではP, 4H-SiCではPk, 6H-SiCではPk1, Pk2というPドナーに起因するシグナルの観測に成功した。また、イオン注入によりPを導入したSiC基板から得られるEPRシグナルを詳細に調べることで、炭素サイトを置換したP不純物シグナルであるPa及びPbも合わせて観測できた。

35000165
Grain boundary decohesion by sulfur segregation in ferromagnetic iron and nickel; A First-principles study
山口 正剛; 志賀 基之; 蕪木 英雄
Materials Transactions 47(11), p.2682-2689(2006) ; (JAEA-J 01717)
 第一原理計算により、強磁性FeΣ3(111)[1=10], NiΣ5(012)[100]対称傾角粒界における硫黄の偏析による粒界強度低下をシミュレートした。具体的には、硫黄原子の偏析エネルギー,偏析したときの粒界強度,粒界凝集エネルギーを計算した。この計算により、ある程度の量(2原子層、14.4atoms/nm2)の硫黄偏析がエネルギー的に可能であり、そのときの粒界強度は最初の10分の1程度にまで低下することが示された。

35000166
Effect of photobleaching on radiation-induced transmission loss of fused-silica-core optical fibres under γ-ray and 14 MeV neutron irradiation
藤 健太郎*; 四竃 樹男*; 永田 晋二*; 土屋 文*; 山内 通則; 西谷 健夫
Measurement Science and Technology 17(5), p.955-959(2006) ; (JAEA-J 01718)
 光ファイバを放射線環境下で使用する場合、照射誘起損失と呼ばれる光透過率の減少(着色)が生じる。着色はカラーセンタと呼ばれる照射欠陥に起因するものであり、その生成は光ファイバの組成,放射線種,吸収線量率等によって複雑に変化する。したがって放射線環境下で光ファイバを利用するためには、照射誘起損失の挙動を正確に把握するとともに、その生成を抑制する必要がある。そこで本研究では、シリカコア光ファイバの照射誘起損失に対するフォトブリーチング効果(光消尽:光によるカラーセンタの抑制)の知見を得るため、高速中性子線及びγ線照射下でのフォトブリーチング効果に関する試験と評価を行った。その結果、可視光領域でのカラーセンタ、すなわちE'センタ及びNBOHC(Non-Bridging Oxygen Hole Centre)に起因する損失に関するフォトブリーチング効果を確認したところ、高速中性子線及びγ線照射下で生じる誘起損失を抑制することができることがわかった。

35000167
Eu isotope measurements on single SiC grains from the Murchison meteorite; A New probe of s-process conditions in parent Asymptotic Giant Branch stars
寺田 健太郎*; 伊藤 勝範*; 日高 洋*; 吉田 敬*; 岩本 信之; 青木 和光*; Williams, I. S.*
New Astronomy Reviews 50(7-8), p.582-586(2006) ; (JAEA-J 01719)
 Eu同位体組成は漸近巨星分枝星や超新星で起こる中性子捕獲反応を調べるうえで重要なプローブとなり得る。それは、151Smと153Smでの(中性子捕獲かβ崩壊かの)分岐が中性子数密度や温度に依存するためである。この研究では、高感度高分解能イオンマイクロプローブを使用して、始原隕石中のSiCグレインに対してEu同位体の組成解析を行った。そして、その結果をs過程モデルから予想されるEu同位体比と比較し、解析されたSiCグレインのEu同位体組成から漸近巨星分枝星でのs過程が起こる条件(中性子数密度や温度)に制限をつけた。

35000168
Observation of confinement degradation of energetic ions due to Alfv'en eigenmodes in JT-60U weak shear plasmas
石川 正男; 武智 学; 篠原 孝司; 草間 義紀; 松永 剛; Krasilnikov, V. A.*; Kashuck, Y.*; 磯部 光孝*; 西谷 健夫; 助川 篤彦; 笹尾 真実子*; Cheng, C. Z.*; Gorelenkov, N. N.*; Kramer, G. J.*; Nazikian, R.*; JT-60チーム
Nuclear Fusion 46(10), p.S898-S903(2006) ; (JAEA-J 01720)
 JT-60Uの弱磁気シアプラズマでは、負イオン源中性粒子ビーム(NNB)入射中に、安全係数(qmin)の減少とともに、周波数掃引を伴ったMHD不安定性が励起し、その後周波数は一定になる不安定性が確認されている。この不安定性に対して、前者はRSAE、後者はTAEとして説明することができる。これまで、それらの不安定性の励起機構に関する研究は進められてきたものの、高エネルギー粒子の閉じ込めにどのように影響を与えているかは実験的に観測されていなかった。本研究では、RSAE, TAE発生中の全中性子発生量を、輸送コード(OFMC)を用いて不安定性がないとしたときに計算される中性子発生量とを比較することで、初めてRSAE, TAE発生中の高エネルギー粒子の閉じ込め劣化を定量的に示した。特に、RSAEからTAEへの遷移中に高エネルギー粒子の閉じ込め劣化が最も大きくなることを突き止めた。

35000169
Compatibility of reduced activation ferritic steel wall with high performance plasma on JFT-2M
都筑 和泰; 神谷 健作; 篠原 孝司; Bakhtiari, M.*; 小川 宏明; 栗田 源一; 武智 学; 河西 敏; 佐藤 正泰; 川島 寿人; 上原 和也; 星野 克道; 草間 義紀; 山本 正弘; 柴田 孝俊; 菊池 一夫; 雨宮 宏*; 定本 嘉郎*; 永島 芳彦*; 江尻 晶*; 日野 友明*; 広畑 優子*; 筒井 広明*; 嶋田 隆一*; 井戸 毅*; 浜田 泰司*; JFT-2Mグループ 
Nuclear Fusion 46(11), p.966-971(2006) ; (JAEA-J 01721)
 JFT-2Mでは、発電実証炉のブランケット構造材の有力候補である低放射化フェライト鋼のプラズマへの適用性を調べる「先進材料プラズマ試験」を段階的に進めてきた。核融合原型炉では壁安定化効果を利用して規格化ベータ3.5〜5.5程度のプラズマを生成することが想定されているため、フェライト鋼のような強磁性体壁をプラズマに近づけた時のMHD安定化への影響を評価することは応用上重要である。そこで、壁とプラズマとの距離を変え、安定化効果を調べる実験を行った。まずプラズマの位置,圧力をより正確に評価するための平衡計算コードの改良を行った。改良後のコードを実験と比較し、良い一致が見られた。そのうえでプラズマを壁に近づける実験を行い、プラズマ小半径で規格化した壁との距離が1.3程度の範囲までフェライト鋼壁と高規格化ベータプラズマが共存し得ることを実証した。また、壁との距離以外の条件が共通しているデータセットを抽出し、壁に近い配位の方が(1)β限界が上昇する,(2)コラプスに至る時定数が長くなるなど、壁安定化効果の存在を示唆するデータが得られた。

35000170
Amino acid residue doublet propensity in the protein-RNA interface and its application to RNA interface prediction
Kim, O. T. P.*; 由良 敬; 郷 信広
Nucleic Acids Research 34(22), p.6450-6460(2006) ; (JAEA-J 01722)
 タンパク質とRNAとの相互作用は、RNAの転写,加工,修復などの場面でみられる。RNAはタンパク質のどのような部分と相互作用するのかよく研究されていない。そこで、86個の原子分解能タンパク質-RNA相互作用構造データを用いて、相互作用部位の傾向を調べた。特にわれわれは新しい統計解析法としてタンパク質表面にあるアミノ酸残基のペアがどのようにRNAと相互作用するのかを解析した。これで得られた統計量を利用して、タンパク質の表面のどの部分にRNAが相互作用するかを推定することもかなり高い精度でできるようになった。

35000171
Field-induced antiferroquadrupolar order in the heavy fermion superconductor PrOs4Sb12
金子 耕士; 目時 直人; 松田 達磨; 桑原 慶太郎*; 神木 正史*; 椎名 亮輔*; Mignot, J. M.*; Gukasov, A.*; Bernhoeft, N.*
Physica B; Condensed Matter 378-380, p.189-191(2006) ; (JAEA-J 01723)
 PrOs4Sb12は、Tsc=1.85,KのPr系初の重い電子系超伝導体である。基底状態が非磁性一重項であることに加え、H||[1,0,0]磁場下で誘起される反強磁性成分が、磁場誘起反強四極子秩序の実現として理解できることから、この系では四極子相互作用が支配的であると考えられている。[1,0,0]に加え、[1,1,0], [1,1,1]方向についても磁場誘起秩序相の存在が報告されている。今回、H||[1,1,0]磁場下での単結晶磁場中中性子回折実験を行い、磁場誘起秩序相について調べた結果、磁場の印加により、5T以上でq=(1,0,0)の反強磁性反射が出現することを見いだした。また反強磁性モーメントは磁場と並行に誘起されていることを明らかにした。この結果は磁気的な相互作用では説明することができず、反強四極子相互作用が支配的であること、さらにその秩序変数はOxyが主であることを示している。これらの結果から、PrOs4Sb12において、Oxy型の反強四極子相互作用が主であることを明らかにした。

35000172
Low energy vibrational excitations characteristic of superionic glass
中村 充孝; 岩瀬 裕希; 新井 正敏; Kartini, E.*; Russina, M.*; 横尾 哲也*; Taylor, J. W.*
Physica B; Condensed Matter 385-386(1), p.552-554(2006) ; (JAEA-J 01724)
 超イオン伝導体ガラスにおける高いイオン伝導機構はサイエンスの未解決の問題の一つである。われわれは、ISISに設置されているMARI分光器を用いて(AgI)x(Ag2S)x(AgPO3)1-2x系超イオン伝導体ガラスの非弾性中性子散乱測定を行った。その結果、超イオン伝導体ガラスにおいて1meVから3meVに渡るエネルギー領域でのQ依存性が、Q=1.8Å -1 を超えたところで絶縁体ガラスよりも過剰な強度を持つことを見いだした。同じような現象は、HMIに設置されているNEAT分光器を用いた高分解能測定によって、別の超イオン伝導体ガラス(AgI)0.5(AgPO3)0.5においても観測された。これらの結果は明らかに、特異な低エネルギー振動励起が超イオン伝導体ガラスに普遍的な特徴であることを示唆するものである。

35000173
Structural study on optical recording materials Ge2Sb2+xTe5 and GeBi2Te4
社本 真一; 山田 昇*; 松永 利之*; Proffen, T.*
Physica B; Condensed Matter 385-386(1), p.574-577(2006) ; (JAEA-J 01725)
 光記録材料Ge2Sb2+xTe5とGeBi2Te4の結晶構造を、高速相変化機構との関連から、粉末パルス中性子回折データをもとに、実空間及び逆格子空間のリートベルト解析により研究を行った。これらの結晶相は、大きな局所構造歪みを持っており、加えて、GeBi2Te4の結晶子サイズが約150Å と非常に小さいことがわかった。これらの結果は、結晶子とアモルファス相とのエントロピーの類似性が、高速相転移機構に重要な役割をしていることを示している。

35000174
In situ and real-time small-angle neutron scattering studies of living anionic polymerization process and polymerization-induced self-assembly of block copolymers
田中 宏和; 山内 一浩*; 長谷川 博一*; 宮元 展義; 小泉 智; 橋本 竹治
Physica B; Condensed Matter 385-386(1), p.742-744(2006) ; (JAEA-J 01726)
 重水素化ベンゼン中でスチレンモノマーとイソプレンモノマーを共存させ、sec-ブチルリチウムを開始剤としてリビングアニオン重合を行った。これによりポリスチレンとポリイソプレンからなるブロック共重合体を合成した。この合成過程を中性子小角散乱(SANS),ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC),紫外可視光吸収スペクトル(UV-vs)により時間分割的に測定し、重合に伴う構造形成の様子をその場・実時間観察した。その結果、重合初期にはまずイソプレンモノマーが優先的に重合されてポリイソプレンが生成し、系内のイソプレンモノマーが消費されたのちスチレンモノマーの重合が始まり、ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体が生成することがGPC, UV-vsの結果から明らかとなった。また、この重合過程において、溶液内で高分子鎖は単独では存在せず、数本が集まって会合体を形成していることがSANSから明らかとなった。さらには、重合初期のポリイソプレンが生成している時間領域では、その会合数が4であるが、重合後期にスチレンモノマーの重合が始まると、会合数が2に急激に減少することが明らかとなった。

35000175
Aggregation behavior of polyisoprene chain ends during living anionic polymerization as investigated by time-resolved small-angle neutron scatting
宮元 展義; 山内 一浩*; 長谷川 博一*; 橋本 竹治; 小泉 智
Physica B; Condensed Matter 385-386(1), p.752-755(2006) ; (JAEA-J 01727)
 イソプレン及びスチレンのリビングアニオン重合過程を時間分解中性子小角散乱(SANS)及びゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定し、イオン性のリビング末端が形成する会合体について以下のことを明らかにした。反応の溶媒には重水素化ベンゼン、開始剤にはsec-BuLiを用いた。イソプレンの系(最終分子量5300g/mol)では時間とともに散乱強度が増加する様子が観察された。GPCにより測定した分子量の時間変化に関するデータを用いることで、時間分解SANSにより得られる散乱曲線を定量的に解析し、会合数の時間変化を明らかにした。一方、リビング重合を停止させるとSANSプロファイルは大きく変化し、散乱強度は大きく減少した。この結果は、重合停止に伴う末端会合の解消を示唆している。

35000176
Small-angle neutron scattering studies of chemical reaction and reaction-induced self-assembly
田中 宏和; 小泉 智; 橋本 竹治; 黒崎 一裕*; 大前 仁*; 小林 四郎*
Physica B; Condensed Matter 385-386(1), p.814-817(2006) ; (JAEA-J 01728)
 酵素重合により人工合成されたセルロースの自己集合過程を、小角中性子散乱を用いたその場・時分割測定により、観察した。得られた結果は以下の通りである。(1)反応溶液中で集合構造を形成している酵素の集合体の、なめらかな表面上あるいは表面近くに位置する酵素の特別な反応サイトにおいて、セルロース分子は合成される。(2)合成されたセルロース分子は、拡散律速凝集により凝集体を形成し、結晶化してフィブリルとなる。(3)フィブリルはさらにフィブリル同士で凝集体を形成し、それらが、反応時間の経過とともになめらかな酵素集合体の表面上に堆積して、表面フラクタルの次元を2から2.3へ増加させる。

35000177
A Magnetic neutron lens based on an extended Halbach-type permanent sextupole magnet
奥 隆之; 山田 悟; 笹尾 一*; 鈴木 淳市; 篠原 武尚*; 広田 克也*; 池田 一昭*; 津崎 剛*; 鬼柳 善明*; 古坂 道弘*; 清水 裕彦
Physica B; Condensed Matter 385-386(2), p.1225-1228(2006) ; (JAEA-J 01729)
 六極磁場は、中性子に対して理想的なレンズとしての機能を有する。われわれは、これまで、この六極磁場に基づく中性子磁気レンズの開発研究を進めてきた。今回、われわれは、中性子散乱研究における中性子磁気レンズの実用化を目的として、比較的安価で、小型,メンテナンスフリーという特徴を有する永久磁石型中性子磁気レンズを開発した。われわれは、発展型ハルバッハ六極磁気回路を採用することにより、永久磁石でありながら、φ30mmの大口径と、実用レベルの中性子集光能力を兼ね備えた磁気レンズの開発に成功した。会議では、偏極中性子を用いた磁気レンズの評価実験の結果をもとに、磁気レンズの性能について詳細に報告するとともに、中性子磁気レンズの応用方法についても議論する予定である。

35000178
Development of neutron supermirror with large-scale ion-beam sputtering instrument
丸山 龍治; 山崎 大; 海老澤 徹*; 日野 正裕*; 曽山 和彦
Physica B; Condensed Matter 385-386(2), p.1256-1258(2006) ; (JAEA-J 01730)
 中性子スーパーミラーは、中性子ビームの輸送,収束に用いられる重要な中性子光学素子となっている。われわれはそのミラーを、密度が高く、結晶粒が小さい良質な膜が得られるイオンビームスパッタ装置を用いて開発してきた。また、多層膜の界面粗さを抑えるために、イオンポリッシュ法の研究も行ってきた。われわれは、実効臨界角の大きなスーパーミラーガイド及びベンダーの実現に向けて、新しく直径500mmの有効積層面積を持つイオンビームスパッタ装置を導入した。本発表では、その装置を用いて積層したスーパーミラーの性能及びスーパーミラーを用いた将来の中性子光学素子開発について議論する。

35000179
Lattice parameters and thermal expansion of superconducting boron-doped diamonds
Brazhkin, V. V.*; Ekimov, E. A.*; Lyapin, A. G.*; Popova, S. V.*; Rakhmanina, A. V.*; Stishov, S. M.*; Lebedev, V. M.*; 片山 芳則; 加藤 健一*
Physical Review B 74(14), p.140502_1-140502_4(2006) ; (JAEA-J 01731)
 二つの異なった高圧技術を用いて、われわれは不純物濃度が0.045%から4%まで(7×1019から7×1021atom/cm3まで)のボロンドープダイヤモンドを作成し、その格子定数と熱膨張係数を90Kから300Kの温度範囲で調べた。どちらの方法で作成した試料も、濃度とともに格子定数は同じように増加し、最大の格子定数の変化は0.011Å だった。われわれは、高濃度ドープダイヤモンドが、ドープしていないダイヤモンドに対し、異常に高い熱膨張を示すこと、及び、格子定数と超伝導転移の特性温度がほぼ比例関係にあることを明らかにした。

35000180
Doubly magic nucleus 270108Hs162
Dvorak, J.*; Br"uchle, W.*; Chelnokov, M.*; Dressler, R.*; D"ullmann, Ch. E.*; Eberhardt, K.*; Gorshkov, V.*; J"ager, E.*; Kr"ucken, R.*; Kuznetsov, A.*; 永目 諭一郎; Nebel, F.*; Novackova, Z.*; Qin, Z.*; Sch"adel, M.*; Schausten, B.*; Schimpf, E.*; Semchenkov, A.*; Th"orle, P.*; T"urler, A.*; Wegrzecki, M.*; Wierczinski, B.*; Yakushev, A.*; Yeremin, A.*
Physical Review Letters 97(24), p.242501_1-242501_4(2006) ; (JAEA-J 01732)
 超重核領域で理論的に予想されていた変形した二重魔法核270108Hs162を初めて実験的に確認した。実験はドイツ重イオン研究所(GSI)で行った。248Cm+26Mg反応で合成されたHs同位体を、迅速気相化学分離法で選択に分離し、α壊変エネルギーとそれに伴う15事象の壊変連鎖から270108Hsを同定した。またα壊変エネルギーからQα値を9.02 ± 0.03と決定した。270108Hsの生成断面積は約3pbであった。

35000181
Effects of ripple loss of fast ions on toroidal rotation in JT-60U
吉田 麻衣子; 小出 芳彦; 竹永 秀信; 浦野 創; 大山 直幸; 神谷 健作; 坂本 宜照; 鎌田 裕; JT-60チーム
Plasma Physics and Controlled Fusion 48(11), p.1673-1681(2006) ; (JAEA-J 01733)
 トロイダル回転速度分布は、輸送特性及びMHD安定性を決定する重要なパラメータの一つであり、プラズマ回転の駆動機構の解明はプラズマの高性能化にとり重要な研究課題である。本研究の目的は、JT-60においてフェライト鋼設置により低減したトロイダル磁場リップルのトロイダル回転速度への影響を明らかにすることである。フェライト鋼設置前後におけるデータから、垂直方向の中性粒子ビーム加熱時のプラズマ周辺部での逆方向回転速度が、高速イオン損失と強く相関することを広いダイナミックレンジにわたり初めて系統的に示した。さらに、垂直ビーム摂動入射実験により、逆方向回転の駆動源がプラズマ周辺部にあること,その領域が粒子軌道追跡モンテカルロ・シミュレーションから求めた高速イオン損失の発生領域と一致することを見いだした。以上により、リップル損失が、径電場形成を介してプラズマ回転の一つの駆動源となっていることを示した。また、摂動輸送解析により、Lモードプラズマにおける運動量の輸送係数(拡散項)と対流項を導出し、リップル損失の少ないプラズマ中心領域では、運動量の輸送でトロイダル回転分布を説明できることを見いだした。

35000182
PHITS; A Particle and heavy ion transport code system
仁井田 浩二*; 佐藤 達彦; 岩瀬 広*; 野瀬 裕之*; 中島 宏; Sihver, L.*
Radiation Measurements 41(9-10), p.1080-1090(2006) ; (JAEA-J 01734)
 粒子・重イオン輸送計算コードPHITSを開発した。本論文では、PHITSに組み込まれた2つの重要なモデル(JAM及びJQMD)について詳細に記述するとともに、その応用例として、核破砕中性子源の設計・重粒子線治療計画・宇宙飛行士に対する被ばく線量評価にPHITSを適用した結果を紹介する。それらの結果は、PHITSが3次元空間内における粒子・重イオンの挙動を精度よく模擬できることを示唆している。

35000183
Applicability of particle and heavy ion tansport code PHITS to the shielding design of spacecrafts
佐藤 達彦; 仁井田 浩二*; 岩瀬 広*; 中島 宏; 山口 恭弘; Sihver, L.*
Radiation Measurements 41(9-10), p.1142-1146(2006) ; (JAEA-J 01735)
 宇宙には数多くの重イオンが存在する。したがって、宇宙船を設計する際、重イオンの宇宙船内での輸送を正確に模擬し、宇宙飛行士の線量を評価する必要がある。そこで、原子力機構が他機関と共同して開発している重イオン輸送計算コードPHITSを用いて、宇宙船内の中性子スペクトル及び宇宙飛行士の線量を評価し、実験値と比較検討した。その結果、計算と実験は極めてよく一致することがわかり、PHITSが宇宙飛行士の線量評価において有用なツールであることが示された。

35000184
Radiolytic degradation of octachlorodibenzo-p-dioxin and octachlorodibenzofuran in organic solvents and treatment of dioxin-containing liquid wastes
Zhao, C.; 広田 耕一; 田口 光正; 瀧上 真知子*; 小嶋 拓治
Radiation Physics and Chemistry 76(1), p.37-45(2007) ; (JAEA-J 01736)
 ダイオキシン類の分析廃液の処分を目的とした、放射線処理技術を開発した。具体的には八塩素化ダイオキシンとフランの分解についてエタノール,ノナン及びトルエン溶媒中の分解挙動や分解生成物の同定を行った。この結果、同一線量では極性であるエタノール中の方が八塩素化ダイオキシンやフランが分解しやすいことがわかった。さらに、ノナン及びトルエン中のダイオキシンを含む分析有機廃液に、エタノールを加えて放射線照射を行うことにより、廃液中のダイオキシン類を90%分解し、毒性当量濃度を0にできることを明らかにした。

35000185
Initial yields of DNA double-strand breaks and DNA fragmentation patterns depend on linear energy transfer in tobacco BY-2 protoplasts irradiated with helium, carbon and neon ions
横田 裕一郎; 山田 真也*; 長谷 純宏; 鹿園 直哉; 鳴海 一成; 田中 淳; 井上 雅好*
Radiation Research 167(1), p.94-101(2007) ; (JAEA-J 01737)
 イオンビームが植物細胞を致死あるいは変異させる能力は線エネルギー付与(LET)に依存するが、その損傷メカニズムはよくわかっていない。本研究では、高LETイオン照射したタバコプロトプラストにおいてDNA2本鎖切断(DSB)をDNA断片サイズ分析法で定量した。植物単細胞のモデルとしてタバコBY-2プロトプラストにLETの異なるヘリウム,カーボン及びネオンイオンとγ線を照射した。照射後、パルスフィールドゲル電気泳動法でDNA断片を分離した。DNA断片化についての情報はゲルをSYBR Green Iで染色することにより得た。DSB初期収量(Gbp-1 Gy-1)はLETに依存し、生物学的効果比は124及び241keV/μmのカーボンイオンで最大となった。高LETのカーボン及びネオンイオンはγ線と比べて短いDNA断片を効率的に誘発した。以上の結果は植物において高LETイオンが引き起こす大きな生物効果を部分的に説明するものである。

35000186
High-repetition CO2 laser for collective Thomson scattering diagnostic of α particles in burning plasmas
近藤 貴; 林 利光; 河野 康則; 草間 義紀; 杉江 達夫; 三浦 幸俊; 小関 良治*; 河原 吉博*
Review of Scientific Instruments 77(10), p.10E505_1-10E505_3(2006) ; (JAEA-J 01739)
 燃焼プラズマ中に閉じ込められたα粒子の診断法を確立するために、パルス炭酸ガスレーザーを用いた協同トムソン散乱(CTS)計測法を開発している。国際熱核融合実験炉(ITER)では、閉じ込められたα粒子の速度分布と空間分布の測定として、空間分解能をプラズマ小半径の1/10で、時間分解能を0.1sで計測することが要求されている。ITERの時間分解能の必要条件を満たし、S/N比を改善するために工業用レーザー(澁谷工業Co., Ltd (SEL4000))をもとに、新しいレーザー・システム(エネルギー10J以上,繰り返し10Hz)を開発した。レーザーは4mの長さの不安定共振器と、高繰返し運転のためにガスの熱交換器を有する放電電極部を持つ。この新しいレーザー・システムを用いてJT-60Uプラズマにて、CTS計測の原理実証実験を行う。

35000187
Fast collimated neutron flux measurement using stilbene scintillator and flashy analog-to-digital cenverter in JT-60U
石川 正男*; 糸賀 俊朗*; 奥地 俊夫*; Nakhostin, M.*; 篠原 孝司; 林 孝夫; 助川 篤彦; 馬場 護*; 西谷 健夫
Review of Scientific Instruments 77(10), p.10E706_1-10E706_3(2006) ; (JAEA-J 01740)
 JT-60Uでは、中性子発生分布計測においてスチルベン中性子検出器を使用して中性子の計測を行ってきた。しかし、このスチルベン中性子検出器は中性子とγ線との弁別性能に優れた特徴を有するが、アナログ回路を利用して弁別を行っているため、最大計数率は105cps程度となり、統計誤差が大きくまたダイナミックレンジが低い等の欠点もあった。この度、これを克服するためにFlash-ADCを用いて直接アノード信号の波形を取得,保存し、ソフトウェアによって波形弁別をする手法を開発した。これにより106cps以上の高計数率での測定を可能になる。本講演では、JT-60Uにおける初期の実験結果を報告する。

35000188
Diffusion of tritium in intermetallic compound β-LiAl; Relation to the defect structure
須貝 宏行
Solid State Ionics 177(39-40), p.3507-3512(2007) ; (JAEA-J 01741)
 原子力機構で実施した37TBq(1kCi)規模の核融合燃料用トリチウムの試験製造においては、Li合金及びLi化合物のターゲットを原子炉照射することで6Li(n,α)3H反応により生成したトリチウム(3H)を、ターゲットを加熱することで抽出し、回収した。ターゲットに用いたβ-LiAl金属間化合物は、熱伝導性が高いため照射中の除熱が容易であり、加えて、融点(966K)が比較的低いため、ターゲットを加熱溶融することで容易にトリチウムを抽出できるなどの特徴を持つ。β-LiAlは、Li原子とAl原子それぞれがダイヤモンド構造の副格子を構成し、室温でも3at% 以上のLi原子空孔等を構造欠陥として含む特異な化合物である。また、格子欠陥構造の違いがトリチウムの拡散に大きく影響する。従来は、全く考慮されていなかった700K以下と700K以上における格子欠陥構造の違いを考慮し、この領域におけるβ-LiAl中のトリチウムの拡散係数及びその活性化エネルギーの正確な値を得た。

35000189
Stream flow forecasting by artificial neural network (ANN) model trained by real coded genetic algorithm (GA); A Case study when role of groundwater flow component in surface runoff is small
Sohail, A. R.*; 渡辺 邦夫*; 竹内 真司
地下水学会誌 48(4), p.233-262(2006) ; (JAEA-J 01742)
 流域の管理を行ううえで重要な河川流出量の予測を行うための流出解析を3つの方法を用いて行った。その方法として、遺伝的アルゴリズムを組み込んだニューラルネットワークモデル(GAANN),誤差伝播法を用いたニューラルネットワークモデル(BPANN)及び多変量自己回帰モデル(MARMA)を用いた。これらのうち、後2者は前者のモデルの妥当性を検討するために実施した。その結果、小流域での流出特性には季節変化があること,夏季の強度の大きい降雨ではニューラルネットワークによる予測がMARMAよりも精度が高いことを明らかにした。また予測精度は予測時間が長いほど低下することなどがわかった。

35000190
国内超大深度立坑工事の地山崩壊形態から見た崩壊発生機構に関する考察
櫻井 春輔*; 清水 則一*; 芥川 真一*; 吉田 秀典*; 佐藤 稔紀; 山地 宏志*
土木学会論文集,F 62(4), p.662-673(2006) ; (JAEA-J 01743)
 超大深度地下開発のアプローチとなる超大深度立坑は、その重要性を再認識されつつある。しかし、国内石炭産業の縮小に伴い、深度1,000m級の立坑はほぼ20年以上施工されていない。筆者らは超大深度立坑技術の継承と、定量的な立坑設計技術の確立を目的として、過去に施工された超大深度立坑の技術文献調査、及びかつて施工に従事された技術者からの聞き取り調査を実施し、立坑工事において発生する蓋然性の高い崩壊形態を調査した。その結果、立坑における崩壊のほとんどは高抜けと異常地圧による覆工破損の二つに分類されることが明らかとなった。さらに、その発生状況を検証したところ、この二つの現象は同じ原因により発生するものと判断された。

35000191
雷放電発生の謎と放射線
鳥居 建男
原子力eye 53(1), p.68-71(2007) ; (JAEA-J 01746)
 雷放電がなぜ発生するかはまだ解明されていない。その有力候補の一つとして雷雲中の電場によって電子が加速されて逃走電子が生成され、それがトリガーとなって電子なだれが発生し放電が誘起されるという逃走絶縁破壊説がある。筆者等の冬季雷活動時における放射線観測結果とモンテカルロ計算によるシミュレーションによって、雷雲中で逃走絶縁破壊が起きている可能性が出てきた。本稿ではそのメカニズムについて解説するとともに、最近の研究成果として高エネルギーミュオンを用いた誘雷手法の考え方について紹介する。

35000192
JRR-3における三代目冷中性子源装置減速材容器からの中性子スペクトルと冷中性子源10倍化計画への期待
金子 耕士; 目時 直人; 羽沢 知也; 永堀 和久; 中村 清
波紋 16(3), p.177-178(2006) ; (JAEA-J 01747)
 JRR-3における三代目冷中性子源装置減速材容器からの中性子スペクトル及び中性子束をガイドホールのC2-1ビームポートにて測定した。その結果、中性子束とスペクトル形状の双方が、冷中性子の液体水素タンクの交換前後で再現されていることを確認した。原子力機構では将来計画として、新型液体水素タンクとスーパーミラーの更新により、冷中性子束強度を10倍にする計画を進めている。

35000193
日本海における放射性核種移行の解明
外川 織彦
Isotope News (633), p.19-22(2007) ; (JAEA-J 01749)
 本報告は、1994年から2002年まで原子力機構が実施した、あるいは原子力機構が参加した18回に及ぶ日本海海洋調査(第1期)の概要を紹介するものである。これらの調査では、対象海域内において水温,塩分,海流等の海洋学データを取得するとともに、海水,海底土及び沈降粒子試料を採取し、それらに含まれる放射性核種,金属元素,化学トレーサ等の分析を行った。これまで実施した海洋調査によって、現時点で調査可能な日露双方の排他的経済水域をほぼ網羅し、広く連続した放射性核種等分析データ及び海洋学データを取得することができた。これまでの測定・分析で得られた、海水及び海底土における人工放射性核種の濃度,沈降粒子中の主成分と微量元素及び放射性核種の濃度など各種データを海洋学的データと併せて解析し、日本海における放射性核種移行のメカニズムを解明するうえで重要かつ新たな成果を得ることができた。

35000194
熱化学水素製造法ISプロセスにおける高濃度ヨウ化水素分離法の検討; リン酸抽出蒸留法の基礎試験
岩月 仁; 伊地知 雅典; 久保 真治; 小貫 薫; 日野 竜太郎
化学工学論文集 32(6), p.524-527(2006) ; (JAEA-J 01751)
 熱化学水素製造法ISプロセスの熱効率を向上させるうえで、HIx溶液(HI-I2-H2Oの混合溶液)から効率的にヨウ化水素を分離させることが主要な課題となっている。この解決方法としてGA社から提案されているリン酸を用いる抽出蒸留法について、その成立性検討の一環として、リン酸によるHIx溶液からのヨウ化水素抽出、及び抽出液の単蒸留を一連のバッチ操作として行い、HIx溶液から水分同伴量の少ない高濃度ヨウ化水素が分離できることを確認した。

35000195
密度汎関数法による光吸収ダイオキシン類の解離特性
山内 俊彦; 小林 清二*; 伊藤 伸一*; 山崎 和彦; 亀井 康孝*; 管野 善則*
環境科学会誌 19(6), p.507-515(2006) ; (JAEA-J 01752)
 Gaussian03を用いた密度汎関数法(B3LYP)計算を行い、ダイオキシン類の特性及び脱塩素化について明らかにした。まず、2個のベンゼン環の面構造は、Co-PCBでは2面が結合軸を中心に37.8度でねじれ、それ以外のPCBでは90度でねじれている。一方、ダイオキシンTCDD及びTCDFで構造最適化すると、2つのベンゼン環は同一平面構造である。また、ダイオキシンの赤外吸収光によるC-Clのストレッチ振動数778cm-1等を決定した。次に、C-Clの結合性軌道エネルギー曲線から求めた結合エネルギーは4.1〜5.5eVである。また、塩素原子エネルギーとダイオキシンラジカルエネルギーの和とダイオキシンエネルギーとの差から求めた結合解離エネルギーは3.8〜3.9eVである。それゆえ零点エネルギーは0.38〜1.65eVである。また、結合解離エネルギーは、塩素原子の個数に反比例している。最後に、ほかの脱塩素化のモデルとして水素原子の塩素への接近反応を試行したところ、水素原子による塩素原子引き抜きによる脱塩素化反応が見られた。脱塩素化(引き抜き反応及び光解離)の反応時間は、22〜40fsである。

35000196
東海地方の中間温帯における中期更新世以降の植生変遷; 内陸小盆地堆積物の花粉分析から
守田 益宗*; 神谷 千穂*; 佐々木 俊法*; 宮城 豊彦*; 須貝 俊彦*; 柳田 誠*; 古澤 明*; 藤原 治*; 守屋 俊文*
季刊地理学 58(3), p.123-139(2006) ; (JAEA-J 01753)
 長期間に渡る植生変遷を明らかにするため、本州中部の瑞浪市大湫の小盆地で掘削された長さ25.3m、過去30万年以上に及ぶボーリングコアの花粉分析を行った。分析の結果、下位より上位へと15の花粉帯を区分した。それらは周期的な植生変遷を示し、そこからは5つの温暖期と4つの寒冷期が示された。それぞれの温暖期及び寒冷期は、MIS9からMIS1に対比できた。その結果、MIS5はMIS7,MIS9の温暖期よりも気温が高く、MIS9の気温はそれほど高くなかったことが明らかになった。

35000197
μSRで探る有機キラル磁性体の磁気構造
大石 一城; 門野 良典*
固体物理 41(10), p.663-668(2006) ; (JAEA-J 01754)
 結晶構造がカイラリティーを持つ磁性体において、その磁気構造は同じくカイラリティーを持つのか否か、非常に興味を集めている。この関係を調べるための注目物質として、分子磁性体[Cr(CN)6][Mn(S)-pnH(H2O)](H2O)(以下、S体と省略。S体の光学異性体をR体と呼ぶことにする)が新たに作成された。本物質はTC=38Kでフェリ磁性転移する。また、結晶構造は空間群P212121に属し空間反転対称性を持たない。われわれはこの物質の磁気構造に関する情報を得るため、S体及びその光学異性体であるR体を用いてμSR測定を行った。その結果、S体及びR体の両方の試料でTC以下でフェリ磁性転移に伴うミュオンスピン回転が観測され、その回転周波数及び温度依存性は全く同じ振る舞いを示した。この結果は磁気構造がS体とR体で鏡映関係にあることを示唆しており、本物質の磁気構造がカイラリティーを有する可能性を示す結果を得た。

35000198
希土類金属水素化物の高圧下の構造・電子転移
青木 勝敏; 綿貫 徹; 町田 晃彦; 大村 彩子
固体物理 41(11), p.84-92(2006) ; (JAEA-J 01755)
 イットリウム金属を流体水素中で圧縮することにより絶縁体である3水素化物YH3が合成された。YH3は10GPa付近で六方晶から面心立方格子へと構造転移を示し、さらに加圧すると23GPa付近でバンドギャップが閉じる電子転移が観測された。放射光X線回折と赤外吸収スペクトル測定によって見いだされた圧力誘起構造相転移と電子転移を解説する。

35000199
ITER及び核融合における電磁力設計
中平 昌隆
日本AEM学会誌 14(2), p.203-208(2006) ; (JAEA-J 01756)
 この解説記事は、日本AEM学会の依頼により、ITERプロジェクトの概要を紹介するとともに、筆者の経験から核融合装置の電磁力に関する設計について、設計・評価手法に関する話題を提供する。筆者は、ITER工学設計活動当初よりITERプロジェクトに参加し、主としてプラズマ真空容器の設計,技術開発に携わってきた。ここでは、導入としてITERプロジェクトの歴史や概要を述べ、設計例としての真空容器設計を紹介したうえで、筆者が直面した設計上の課題と考察例を提示し、今後の核融合装置設計の体系化に関する話題の一つを圧力容器設計との比較を行いながら提供する。

35000200
酸化物電解法MOX電解共析の反応解析
佐藤 史紀; 水口 浩司; 中西 繁之; 明珍 宗孝
日本原子力学会和文論文誌 5(4), p.268-281(2006) ; (JAEA-J 01757)
 酸化物電解法の主工程の一つであるMOX電解共析に関して、試験及び解析の両面による検討を行った。まず基礎試験として、U-Puを用いたパラメーター試験を実施し、溶融塩の分極特性,電流効率,析出物中PuO2濃度等の基礎的なデータを取得した。また、これと合わせて公開文献より入手した物性値を用い、電解挙動、特に溶融塩の分極特性に関するモデル化を試みた。このモデルについては、実際の試験結果に関する解析を行い、妥当性を確認した。最後に、開発したモデルを用いてMOX電解共析の制御因子に関する検討を行った。

35000201
米国の加圧水型原子力発電所におけるAlloy 600製圧力バウンダリ−構成機器の一次冷却水応力腐食割れ事例の傾向分析
高原 省五; 渡邉 憲夫
日本原子力学会和文論文誌 5(4), p.282-291(2006) ; (JAEA-J 01758)
 PWRの圧力バウンダリ(RCPB)を構成するAlloy 600製機器にPWSCCが発生し、一次冷却材の漏えいに至る事象が報告されている。近年では、漏えいによって堆積したホウ酸により圧力容器上蓋に著しい減耗が生じた事例や、RCPBを構成する小口径ノズルに両端破断を引き起こしうる周方向の貫通き裂が確認されるなど、安全上重要な事例が米国で報告されている。我が国でも、RCPB構成機器に生ずるPWSCCは、補修・取替が困難であるという観点からPWRの高経年化に伴い考慮すべき問題の1つであり、実際に敦賀2号機や大飯3号機などにおいてPWSCCに起因する漏えいが確認されている。そこで本報告では、我が国での今後の対応において参考となる情報を提供することを目的とし、1999年から2005年にかけて米国PWRで報告されたPWSCC起因の漏えい事例の設置者事象報告(LER)を収集して、損傷機器及び修理方法等について傾向分析を行った。この結果、高温環境下に曝されている機器や、特定の製造業者の製品に損傷が集中している傾向を抽出した。また、修理方法も機器の種類に対応している傾向があり、それぞれの箇所で適した方法が用いられていることが示唆された。

35000202
動特性解析コードを用いた高温ガス炉に接続する水素製造システムの評価
佐藤 博之; 大橋 弘史; 稲葉 良知; 西原 哲夫; 林 光二; 稲垣 嘉之
日本原子力学会和文論文誌 5(4), p.292-304(2006) ; (JAEA-J 01759)
 日本原子力研究開発機構(原子力機構)は文部科学省から「核熱利用システム技術開発」を受託し、その中でHTTRと水蒸気改質法による水素製造設備との接続について技術開発を行った。熱利用系として水素製造設備等のような化学プラントを原子炉に接続したことは世界的に例がなく、水素製造設備の負荷変動は原子炉の運転に影響を与えるため、水素製造設備に起因する熱外乱の評価,システムの過渡挙動を把握するための動特性解析コードの開発等が必要である。本報では、HTTRと接続する水素製造システムの中で、水素製造設備を対象とした動特性解析コードを開発し、模擬試験装置の試験結果を用いて検証解析を行った。本研究により、本解析コードを用いてHTTRと接続する水素製造システムの過渡挙動を予測できることを確認できた。また、プロセスガス系をISプロセスに置き換えた場合においても、原子炉への熱過渡の影響の評価が可能である。

35000203
軽水炉シビアアクシデント時ソースタームの不確実さ評価
石川 淳; 村松 健; 渡邉 憲夫
日本原子力学会和文論文誌 5(4), p.305-315(2006) ; (JAEA-J 01760)
 確率論的安全評価(PSA)の結果は、原子力の安全規制,アクシデントマネージメント,防護対策そして安全目標などさまざまな分野に使用されている。しかしながら、PSAの結果には不確実さが存在しており、内在する不確実さの定量化がPSA研究において重要性を増している。本研究では、国内ではほとんど公開されていないソースタームの不確実さについて、シビアアクシデント解析コード用いた評価手順を構築し、それをMark-II格納容器型BWRプラントのソースターム評価に適用した。評価では、発生頻度の観点から支配的な格納容器が過圧破損に至るシナリオを対象に、シビアアクシデント解析コードTHALES2コードを用いてソースタームの不確実さ評価を実施し、各シナリオに対する環境へのFPの放出開始時刻,環境へのFPの放出割合,支配的となるパラメータなどの不確実さ情報を得た。支配的なパラメータは、事故シナリオにより異なるが、格納容器の破損圧,FP放出率(炉内又は炉外)、そして格納容器又は建屋での沈着がソースタームに大きく影響する。

35000204
VHTR水素製造システムにおける水素ガスの漏洩拡散特性及び爆風圧評価の考え方
村上 知行; 寺田 敦彦; 西原 哲夫; 稲垣 嘉之; 國富 一彦
日本原子力学会和文論文誌 5(4), p.316-324(2006) ; (JAEA-J 01761)
 現在、日本原子力研究開発機構では、原子炉から発生する高温の熱エネルギーを水素製造に活用する原子力水素製造システムの実用化に向けて、高温ガス炉(VHTR)と水素製造試験設備を安全かつ合理的に接続するための研究開発を行っている。本システムでは可燃性の水素ガスを扱うことから、万一漏洩,爆発に至った場合でも、原子炉施設に対する安全性が損なわれないことを保証することが設計上重要な課題である。本報は、VHTR水素製造システムにおいて、水素ガスが配管破断等により大気中に漏洩した場合を想定した漏洩拡散解析を実施し、可燃性混合気の移流拡散距離とそれに影響を及ぼすさまざまなパラメータとの相関について定量化した。また、本評価結果に基づき、爆発時における爆風圧が原子炉施設に及ぼす影響度を安全かつ合理的に評価する新たな方法について提案した。

35000205
電力水素併産型高温ガス炉(GTHTR300C)の安全設計方針
西原 哲夫; 大橋 一孝; 村上 知行; 國富 一彦
日本原子力学会和文論文誌 5(4), p.325-333(2006) ; (JAEA-J 01762)
 日本原子力研究開発機構ではガスタービン発電システムの設計をベースとして、電力水素併産型高温ガス炉システム(GTHTR300C)の設計を行っている。水素経済性を確保し、非原子力産業から参入意欲を得られるようなGTHTR300Cの安全設計方針を検討した。水素製造設備はガスタービン発電システムの上流に設置される中間熱交換器の2次ヘリウム系に接続され、一般産業施設として設計できることを目指す。基本的な原子炉安全は原子炉システムに設置された機器により確保する。2次ヘリウム系の機能である1次ヘリウムの冷却,2次ヘリウム圧力保持及びトリチウムを含む不純物の除去は通常運転を維持するために要求される機能である。これらの機能をガスタービンシステムや原子炉システムにより維持し、水素製造設備には期待しないことで、水素製造設備の運転状態に依存せず発電を継続する方法を提案した。可燃性ガスや毒性ガスの放出といった外部事象に対する防護対策についても検討を行った。

35000206
モール状捕集システムによる海水ウラン捕集のコスト試算
玉田 正男; 瀬古 典明; 笠井 昇; 清水 隆夫*
日本原子力学会和文論文誌 5(4), p.358-363(2006) ; (JAEA-J 01763)
 本検討では、放射線グラフト重合法で製造したモール状捕集の捕集材を用い、ウラン年間捕集量1200トンの捕集システムによる海水ウランコストの試算を行った。コスト評価についてはモール状捕集材システムを「捕集材製作工程」,「ウラン捕集工程」,「溶離・精製工程」に分けて実施し、変動条件とし捕集材のウランの吸着性能及び脱吸着の繰返し使用回数として、コストへの影響を検討した。その結果、捕集材のウラン捕集性能の向上により、各工程の占める割合は同じように減少する。しかし、捕集材の耐久性の向上の影響は、繰返し回数が増えるに従いウラン製造工程が著しく減少した。現状の2g-U/kg-捕集材,捕集材の繰返し使用回数が6回でのコストはウラン1kgあたり約9万円であるが、到達可能な4g-U/kg-捕集材及び18回の繰り返し使用では2万5千円となった。

35000207
原子力の理解促進にむけた効果的アウトリーチ活動の実践について
郡司 郁子
日本原子力学会誌 48(12), p.955-960(2006) ; (JAEA-J 01764)
 アウトリーチ活動とは、事業者から多様な利害関係者(Stakeholder)に働きかける双方向のコミュニケーションである。原子力の理解促進とさらなる発展のため、事業に伴う成果やリスクを積極的かつ率直に社会へ伝えていくことが重要である。本稿では、米国原子力関連の先行事例,アウトリーチ活動におけるリスクコミュニケーションの重要性,専門的人材の養成,日本原子力研究開発機構での活動事例について解説し、より効果的なアウトリーチ活動とは何かについて述べていく。

35000208
量子大規模固有値問題における共役勾配法の収束性; 適応的シフト前処理の収束性の評価
山田 進; 今村 俊幸*; 町田 昌彦
日本計算工学会論文集(インターネット) 2006(27), 8p.(2006) ; (JAEA-J 01765)
 共役勾配法の理論に基づく固有値計算の収束性は前処理に大きく依存している。本論文では、計算過程で得られる近似固有値の情報を利用した前処理方法を提案した。この前処理方法を実際に量子問題に現れるハミルトニアン行列の基底状態の計算に利用したところ、一般に利用されている前処理方法と比較し、問題のパラメータによっては収束性が2倍以上向上することが確認できた。また、量子問題以外の行列に対する収束性も評価したところ、多くの場合で収束性が向上することが確認できた。

35000209
高空げき率多孔性材料を設置した円管流路の伝熱性能
一宮 浩市*; 武田 哲明; 植村 拓也*; 範国 哲也*
日本機械学会論文集,B 72(723), p.2747-2752(2006) ; (JAEA-J 01766)
 本研究は、銅細線を多孔性材料として円管流路内に挿入し、空隙率が極めて1に近い状態で伝熱流動実験を行い、伝熱性能を評価するものである。その結果、代表長さとして水力学的相当直径を使用し、ヌセルト数,摩擦係数をレイノルズ数と空隙率との関係で整理することができた。さらに、これらの関係を使用して、多孔性材料の有無によるヌセルト数比を求めると低レイノルズ数で空隙率が1に近い方が効果的であることを明らかにした。エントロピー生成評価では、エントロピー生成量を最小にするレイノルズ数の存在を示し、低レイノルズ数で比較的低空隙率で使用すると効果的であることを明らかにした。

35000210
深層ボーリング孔を用いた岩盤中の地下水の採取方法; 地下水の酸化還元状態の把握のために
井岡 聖一郎; 古江 良治*; 岩月 輝希
日本水文科学会誌 36(4), p.181-190(2006) ; (JAEA-J 01767)
 地下深部環境の利用や水資源の需要増大に伴い岩盤中の地下水の水文学的,地球化学的挙動を解明することを目的とした研究の必要性が高まっている。本研究では、地球化学的観点から地下深部岩盤中における酸化還元状態を明らかにするために必要な地下水採取方法を提示することを目的として、ボーリング孔から調査までの手順について検討を行った。地下深部岩盤中における真の酸化還元状態に近い地下水を採取するためには、深層ボーリング孔掘削時にその掘削孔が鉛直下方の動水勾配を有し、さらに顕著な掘削水の逸水が認められる場合には、調査対象深度ごとに採水区間を他深度から隔離し地下水の採取を行いながら、最終的にボーリング孔の予定深度まで掘削を実施する必要がある。一方、鉛直下方の動水勾配を有しながら、掘削水の逸水がほとんど認められない深層ボーリング孔の場合には、裸孔状態が数十日間続いたとしても多区間パッカーを設置後、地下水を排水することにより地下深部岩盤中における酸化還元状態に近い地下水を採取することができることを示した。

35000211
ブランケットの構造を理解する
鈴木 哲; 秋場 真人; 齊藤 正克*
プラズマ・核融合学会誌 82(11), p.768-774(2006) ; (JAEA-J 01768)
 核融合装置炉においてダイバータとともに炉内機器を構成するブランケット(第一壁を含む)について、必要となる機能やその機能を満たすために要求される条件及び構造上の特徴や設計の考え方などを、主として国際熱核融合実験炉ITERを例にとって熱・構造工学的な視点から解説するとともに、核融合原型炉ブランケットへの展望についても述べる。

35000212
Evaluation of absorbed doses for photon and electron to the urinary bladder wall considering radiosensitive cells
渡部 陽子; 木名瀬 栄; 斎藤 公明
Radioisotopes 55(12), p.719-725(2006) ; (JAEA-J 01769)
 体内に摂取された放射性核種の一部は尿中に排泄されるため、膀胱の線量評価は放射線防護や放射線診断の観点から重要である。信頼性の高い線量評価を行うには、膀胱壁中の放射線感受性の高い細胞を考慮したモデルを構築すべきである。本研究では、光子及び電子に対する膀胱壁全体や放射性感受性の高い細胞である基底細胞位置(伸縮の程度により変化:70-140μm,基底細胞直径:5-10μm)の比吸収割合(SAF)をモンテカルロシュミレーションにより計算し、9核種(11C, 13N, 15O, 18F, 89Sr, 90Sr, 90Y, 99mTc, 123I)についてのS値を評価した。その結果、光子に対する基底細胞位置のSAFは、(1)10-30keVの間で膀胱壁全体のSAFよりも極めて高い値となること,(2)電子に対する基底細胞位置のSAFは、10keVから4MeVの間でエネルギーが高くなるにつれて増加すること,(3)低エネルギー放射線を放出する核種のS値は放射線防護分野において利用されているS値に比べ大きく変化することがわかった。以上から、より現実的な線量評価を行うためには放射線感受性の高い細胞位置を決定することが必要であると考える。

35000213
Selective detection using pulse time interval analysis for correlated events in Rn-progeny with a microsecond lifetime
眞田 幸尚; 小林 博英; 古田 定昭; 根本 和彦*; 川井 啓一*; 橋本 哲夫*
Radioisotopes 55(12), p.727-734(2006) ; (JAEA-J 01770)
 時間間隔解析法を利用したウラン系列子孫核種によるバックグラウンドを低減しアルファ線を測定する方法を開発した。まず、時間間隔解析法の理論を用いて222Rnの子孫核種で半減期の短い214Po(164microsecond)とその上位核種である214Biの相関事象ペアを測定する方法について検討を行った。検討結果から、測定に必要な装置の設計・開発を行った。測定システムには、検出器にSi半導体検出器を用い、システム全体として不感時間ができ得る限り短くなるような設計とした。製作したシステムについて、230Th電着線源を使用し相関事象を測定できることを確認するとともに、測定効率である相関事象率の測定を行った。また、実際に作業環境中で空気粉塵を採取し、相関事象の測定を行った。今回の研究から以下の事項が確認された。(1)時間間隔解析法による214Poの測定理論が示された。(2)214Poを測定できる装置を開発した。(3)相関事象測定の確認方法として、230Th電着線源を使用する方法を示した。今後、トリウム系列の子孫核種の測定方法等を検討し、実際の放射線管理に反映する予定である。

35000214
内部被曝線量評価システムの開発
波戸 真治; 本間 俊充
RIST News (41), p.33-41(2006) ; (JAEA-J 01771)
 放射性核種を吸入や経口摂取したことによる内部被曝線量は、ICRPが刊行物等に示している線量係数により評価が行われる。これらICRPの示している線量係数は、預託期間が一般公衆で70歳まで、作業者で50年間である。生涯の評価の場合にはこれらの預託期間で十分であるが、原子力施設の事故評価では健康影響を推定する際のようにより詳細な評価が必要となる場合がある。このため、預託期間やその他のさまざまなパラメータを変えた線量係数を算出できる内部被曝線量評価システムを開発した。本報告では、内部被曝線量評価モデルの概要及び開発したシステムについて述べる。

35000215
低放射化コンクリートの14MeV中性子照射実験
前川 利雄*; 梅津 朋岳*; 野中 英*; 吉松 賢二*; 佐藤 孝一*; 佐藤 聡; 西谷 健夫
セメント・コンクリート (719), p.26-31(2007) ; (JAEA-J 01772)
 コンクリートの放射化特性は、セメントと骨材の2つの構成材料の組成比に依存する。これまで提案された低放射化コンクリートでは、不純物質を多く含む骨材を低放射化させる観点から、石灰石骨材などの純度の高い材料を適用することによって低放射化特性を実現している。このようなコンクリートでは、セメントに由来する不純物質成分による誘導放射能が大きな影響を及ぼすようになる。そこで、本開発では従来の骨材選別に加えて、セメントの一部を不純物質成分の少ない石灰石微粉末材料に置換する調合設計手法を導入し、セメント由来の不純物量を低く抑えるコンクリートを製作した。原子力機構の核融合中性子源装置FNSにおいて、試作した低放射化コンクリート及び普通コンクリートに対しDT中性子を照射し、放射化特性を実験的に評価した。その結果、開発した低放射化コンクリートでは、普通コンクリートに比べて24Naの誘導放射能が約1/7に低減することを実験的に確認した。長寿命核種の22Na(半減期2.6年)については、普通コンクリートでは、照射後10日において約20Bq/g検出したが、低放射化コンクリートでは検出しなかった。

35000216
冬季雷活動時における高エネルギー放射線の観測
鳥居 建男; 杉田 武志*; 村木 綏*
大気電気研究 (69), p.30-31(2006) ; (JAEA-J 01773)
 冬季雷活動時の放射線と電界強度の変動測定を実施した。その結果、雷放電の数10秒前から放射線レベルが上昇し、雷放電とともに元に戻る事象が観測された。使用した検出器(比例計数管)の特性から、入射した放射線は高エネルギー電子と考えられ、雷雲中で逃走絶縁破壊が発生していること,また放電前の電界強度の上昇とともに電磁シャワーが発生していること,その一部が地表まで達していることを示している。

35000217
雷雲電界中でのラドン子孫核種β·γ線の変動シミュレーションと東アジア域におけるラドンの移流拡散
鳥居 建男; 杉田 武志*; 城戸 寛子*; 菅野 光大*; 黒澤 直弘*
大気電気研究 (69), p.32-33(2006) ; (JAEA-J 01774)
 雷雲中で逃走絶縁破壊をもたらす可能性のある荷電粒子として2次宇宙線とラドン子孫核種があげられる。本研究では、ラドン子孫核種が放出するβ·γ線の雷雲電界中での挙動解析を行った。その結果、雷雲中で光子束は変動しないものの、電子束は急激に増加するため、雷雲中の電子密度上昇にラドンが寄与している可能性があることがわかった。また、地域気象モデルを用いたラドンの移流拡散計算では、冬季は中国大陸からの移流によるラドンが支配的であり、雷雲が高電界領域を形成する高度1〜2kmでもラドン濃度が高いことがわかった。このことから、大陸からのラドンが雷活動に寄与している可能性が出てきた。

35000218
ショートステップ立坑の変形挙動に関する計測と解析
延藤 遵*; 福田 和寛*; 佐藤 稔紀; 黒田 英高
トンネル工学報告集 16, p.1-8(2006) ; (JAEA-J 01775)
 瑞浪超深地層研究所の立坑は切羽を掘削後順次コンクリート覆工で巻き立てていくショートステップ工法で掘削している。本報ではこのショートステップ立坑における変形メカニズムを理解するために、覆工コンクリートが存在し、ゆるみの生じる地山における立坑切羽付近の岩盤と覆工コンクリートの力学挙動を予備的に解析し、その特徴を調べた。また、現場計測で、立坑切羽付近の各種挙動を計測し、その結果と予備解析結果の比較検討を行った。さらに、平面ひずみによる逆解析を試行し、ショートステップ立坑に対する適用性についても考察した。

35000219
瑞浪超深地層研究所の研究坑道における掘削損傷領域を考慮した掘削影響解析
郷家 光男*; 多田 浩幸*; 瀬野 康弘; 中間 茂雄; 佐藤 稔紀
トンネル工学論文集 16, p.35-45(2006) ; (JAEA-J 01776)
 本研究では、不連続性岩盤を対象とした掘削損傷領域のモデル化について検討し、掘削損傷領域を考慮した掘削影響解析を行い、発破掘削時に形成される掘削損傷領域の影響について検討した。掘削損傷領域のモデル化に際しては、坑道周辺岩盤の変形挙動に対してはクラックテンソルモデルを、透水性変化に対しては仮想割れ目モデルを拡張し、これらのモデルを超深地層研究所計画の研究対象となっている土岐花崗岩に適用して、研究坑道の掘削影響解析を行った。研究の結果、不連続性岩盤の掘削損傷領域での剛性低下は、新規の割れ目が発生することにより生じるとの解釈のもと定式化が可能なこと,掘削損傷領域を考慮した解析の結果、坑道周辺岩盤の変位は増加するものの、局所安全率にはほとんど影響しないこと,水理学的影響は非常に大きく、坑道周辺岩盤の透水係数が著しく増加することがわかった。

35000220
大深度立坑における湧水抑制対策としてのポストグラウト試験施工
久慈 雅栄; 佐藤 稔紀; 原 雅人; 見掛 信一郎; 南出 賢司
トンネル工学報告集 16, p.469-476(2006) ; (JAEA-J 01777)
 瑞浪超深地層研究所では、現在大深度の立坑を掘削中であるが、この立坑掘削に伴い多量の湧水が発生し、施工上の課題の一つとなっている。解決策の一つとして、湧水をできるだけ抑制することが必要と考えられ、ここでは実績の多いグラウト工法を基本にすることとした。既に掘削が終了した範囲については、ポストグラウト工法があるものの、その事例は非常に少ない。そこで、本報告では立坑におけるポストグラウト工法について基本検討を行い、それに基づいて試験施工を行った。検討の結果、覆工からカバーロックを兼ねた無注入区間を確保し、その先で一時的な止水領域を形成し、その外側に本格的な注入を行うこととした。今回は、立坑1/4周の試験施工区間を2か所設け、このうち1か所で注入仕様を定め、残り1か所でその仕様に基づいた注入による効果を確認した。その結果、試験後の注入範囲内ではルジオン値及び透水係数ともに1/5程度に低減し、湧水はほとんど認められないなど、今回のポストグラウト試験施工は比較的良い結果が得られたと判断される。

35000221
Proton diffusion in ice bilayers
青木 勝敏
Hydrogen-Transfer Reactions, Vol.2 , p.737-750(2007) ; (JAEA-J 01778)
 氷中のプロトン移動は物質科学主要な問題であるが、常圧氷中での拡散速度は極めて小さく、実測不可能であることからその実験的研究はなされていなかった。数万気圧の高圧下では氷の融点が数百度にも上昇することから拡散運動が加速され、拡散過程の測定が可能になる。2GPa以上の広い圧力領域で存在する氷VII中のプロトン拡散過程を温度,圧力の関数として光学的手法を用いて初めて観測に成功した。実験法及びそれから得られた拡散係数の圧力依存性を議論する。

35000222
Compilation of wavelengths and energy levels of tungsten, W III through W LXXIV
Kramida, A. E.*; 白井 稔三*
Journal of Plasma and Fusion Research SERIES, Vol.7 , p.334-337(2006) ; (JAEA-J 01779)
 タングステンはスパッタリング率が低く、優れた熱特性を持つので、将来のトカマク型核融合炉のプラズマ対向面材料として有望である。しかし、プラズマ対向面材料として使用されたタングステンがプラズマ壁相互作用によって炉心プラズマに混入すると、放射損失を増大し炉心プラズマの性能劣化をまねく。炉心プラズマに混入したタングステンイオンの挙動を分光診断するには、タングステンイオンのスペクトルに関するデータが必要である。ここでは、タングステン多価電離イオンのエネルギー準位,波長,電離エネルギーのデータ評価,収集に用いる方法について報告する。データ評価において生じる問題に関して、幾つかの例をあげて議論する。

35000223
Beam based alignment strategy for the group controlled magnets system
林 直樹; Lee, S.*; 外山 毅*
Proceedings of 10th European Particle Accelerator Conference (EPAC '06) (CD-ROM) , p.1160-1162(2006) ; (JAEA-J 01780)
 ビームを使ったBPMの位置アライメントは、COD補正のため重要な手段となってきている。普通は、四極磁場を独立に制御できる必要がある。四極電磁石の電流を変化させ、軌道位置が変化しないところを見つけるのである。しかし、J-PARCのRCSは、7つの四極電磁石ファミリーを持ち、ファミリーごとにしか制御できない。独立の電源も補助巻き線も持っていないからである。複雑ではあるが、個別制御できる場合と同様なアライメント方法は、適用可能である。一番が簡単な系でも、3つの磁石がグループ化されているので、4つの異なる軌道について、3箇所のBPMで測定する位置情報が必要である。J-PARC/RCSの場合で、方法とシミュレーション結果について報告する。

35000224
A Prototype of residual gas ionization profile monitor for J-PARC RCS
佐藤 健一郎; 林 直樹; Lee, S.*; 外山 毅*
Proceedings of 10th European Particle Accelerator Conference (EPAC '06) (CD-ROM) , p.1163-1165(2006) ; (JAEA-J 01781)
 J-PRAC 3GeVシンクロトロン用残留ガスビームプロファイルモニターの試作機を開発した。この試作機は、ビームの残留ガス電離作用よって生成するイオン・電子対を収集するための電場生成用電極,2次電子を増幅検出するマイクロチャンネルプレート(MCP), MCPの増幅率のばらつきを補正するための電子源,電子収集のための磁場を発生させるウィグラー型電磁石から成っている。この試作機をKEKの陽子シンクロトロン主リングに設置し、陽子ビームを使ったテストを行った。本会議ではビームテストの結果を報告する。

35000225
Investigation of the EDZ using high-resolution GPR with modulating frequency
須山 泰宏*; 戸井田 克*; 升元 一彦*; 竹内 真司
Proceedings of 12th European Meeting of Environmental and Engineering Geophysics (Near Surface 2006) (CD-ROM) , 5p.(2006) ; (JAEA-J 01782)
 放射性廃棄物の性能評価では、原位置における坑道掘削影響領域(EDZ)の把握が必要である。EDZを把握する手法の開発として、可変周波数による高精度地中レーダーの現場適用性を東濃鉱山坑道内で実施した。その結果、本手法はEDZの構造を高精度で把握する手法であることがわかった。

35000226
Two-dimensional optical measurement of waves on liquid lithium jet simulating IFMIF target flow
伊藤 和宏*; 伊藤 太郎*; 久木田 豊*; 小寺澤 裕行*; 近藤 浩夫*; 山岡 信夫*; 堀池 寛*; 井田 瑞穂; 中村 秀夫; 中村 博雄; 室賀 健夫*
Proceedings of 14th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-14) (CD-ROM) , 6p.(2006) ; (JAEA-J 01783)
 液体リチウムの流れを乱すことなく自由表面の波形を求めるためレーザーを用いた非接触の測定法を考案し、大阪大学のリチウムループにて測定を実施した。限られた視野角から得られたレーザー光反射角度データを最小二乗法で補間することにより表面波の波形を求めたところ、流速1.2m/sでは、波長3.8mm,振幅0.05mmであることを明らかにした。

35000227
A New developed interface for CAD/MCNP data conversion
Shaaban, N.*; 益田 福三*; Nasif, H.*; 山田 政男*; 澤村 英範*; 諸田 秀嗣*; 佐藤 聡; 飯田 浩正; 西谷 健夫
Proceedings of 14th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-14) (CD-ROM) , 7p.(2006) ; (JAEA-J 01784)
 CADデータは、平面及び曲面で構成されたソリッド形状の組合せで3次元立体を表現している。一方、モンテカルロ放射線輸送計算コードMCNPのセル形状入力データは、基本的に平面及び曲面の要素レベルで面の特性を面方程式で定義し、これらの面要素の集合演算(ブール演算)によりセルデータを構築している。したがって、CADからMCNPの変換の際には、CADデータをそのまま用いることはできず、いったん面要素まで展開したデータを作成し、これを用いてMCNPデータへ変換することになる。この変換においては、(1)面要素の領域は明示しない,(2)面要素からのセル構成化は集合演算のみで行う,(3)凹稜線を含む場合は接続する面を統合する等のMCNP固有の方法や要求を反映させる必要がある。本研究ではParasolidフォーマットのCADファイルを、前述の要求条件を考慮してMCNP入力データに変換する効率的なアルゴリズム開発を行っている。本論文では、種々の形状データ変換に対するCAD/MCNPインターフェースに用いる基本アルゴリズムについて述べる。

35000228
Sulfurization of rare-earth oxides in simulated spent fuel
篠原 元輝*; 佐藤 修彰*; 桐島 陽*; 杤山 修*; 佐藤 宗一
Proceedings of 16th Iketani Conference: Masuko Symposium , p.153-160(2006) ; (JAEA-J 01785)
 使用済燃料からウランを回収するために、硫化を利用した再処理方法を提案した。このプロセスは、使用済燃料をボロキシデーションし硫化した後に、磁気分離あるいは選択溶解する工程からなる。今回は、希土類酸化物(R2O3)のCS2を用いた硫化挙動について述べる。模擬使用済燃料中の(R2O3)の選択的硫化反応について試験を行い、結果を熱化学的に考察した。NdとEuの酸化物はCS2, 500℃の雰囲気で選択的に硫化され、Nd2S3, EuSとなった。一方、ウランはUO2のまま残った。硫化温度と時間についても評価した。

35000229
Study of irradiation induced restructuring of high burnup fuel; The New cross-over project (NXO) to study rim-structure formation
木下 幹康*; Geng, H. Y.*; Chen, Y.*; 金田 保則*; 岩沢 美佐子*; 大沼 敏治*; 園田 健*; 安永 和史*; 松村 晶*; 安田 和弘*; 左高 正雄; 石川 法人; 知見 康弘; 中村 仁一; 天谷 政樹
Proceedings of 2006 International Meeting on LWR Fuel Performance (TopFuel 2006) (CD-ROM) , p.248-254(2006) ; (JAEA-J 01786)
 ニュー・クロスオーバー・プロジェクト(NXO)は、核燃料物質に対する核分裂放射線照射の影響を大学,国立・私立の研究所に渡る横断的な協力研究により検討している。加速器照射実験及び計算科学的手法を使用して、高燃焼度軽水炉燃料ペレットでリム構造を構成する機構を解明するためのシミュレーション研究が実施されている。加速器照射,高エネルギー電子線照射,核分裂エネルギー粒子線及び希ガス原子のイオン注入等が実施されている。照射試料としては、CeO2を核燃料の模擬物質として使用した。最初の成果として、高エネルギー電子照射による平面構造形成、及び、高線量の高エネルギー粒子放射による結晶粒微細化に似た表面改質が観察された。第一原理及び分子動力学(MD)計算を用いた解析を実施し、UO2とCeO2の点欠陥形成エネルギー及び点欠陥を伴ったXe原子の相互作用についての情報が得られた。

35000230
Behaviour of high burnup PWR fuels during simulated reactivity-initiated accident conditions
更田 豊志; 杉山 智之; 梅田 幹; 富安 邦彦; 笹島 栄夫
Proceedings of 2006 International Meeting on LWR Fuel Performance (TopFuel 2006) (CD-ROM) , p.273-277(2006) ; (JAEA-J 01787)
 NSRRにおけるパルス照射実験の成果をもとに、反応度事故(RIA)条件下における高燃焼度PWR燃料の挙動について論じる。欧州の動力炉で使用されたZIRLO, MDA, NDA, M5被覆管を備えた燃焼度67〜79MWd/kgUの高燃焼度PWR燃料を対象に実施した最新の実験の結果を示すとともに、燃料破損しきい値,被覆管の変形挙動,FPガス放出に対する燃焼の進行,被覆管の腐食,ペレット結晶粒径の影響などについて記す。燃料ペレット/被覆管機械的相互作用(PCMI)による燃料破損に至った実験の結果は、燃料破損しきい値(破損時燃料エンタルピ)が被覆管外周部の水素化物集積層の厚さと強い相関を持ち、結果として、被覆管外面酸化膜厚さと相関を持つことを示している。FPガス放出はピーク燃料エンタルピが高くなるほど増加するが、燃料ペレットの大粒径化がFPガス放出を抑制する効果を有することが示された。被覆管表面における沸騰遷移を生じたケースにおける被覆管の大きな変形は、燃料棒の内圧上昇と温度上昇による被覆管降伏応力の低下とが起因となるが、一方、被覆管の温度上昇が僅かなPCMIの段階では、燃料棒の変形は燃料ペレットの固体熱膨張のみに支配される。

35000231
Performance of a conventional analog Φ-A type low-level RF controller
永井 良治; 羽島 良一; 飯島 北斗; 菊澤 信宏; 峰原 英介; 西森 信行; 西谷 智博; 沢村 勝
Proceedings of 28th International Free Electron Laser Conference (FEL 2006) (CD-ROM) , p.316-318(2006) ; (JAEA-J 01788)
 原子力機構ではエネルギー回収型リニアック(ERL)をベースとした自由電子レーザー(FEL)や次世代放射光源の開発を行っている。これら実現のためには加速電場の非常に高い安定性が求められており、ローレベルRF制御装置の改良を行ってきた。このローレベルRF制御装置の評価のために、位相安定度の計測を行った。その結果、さまざまな負荷に対して0.01deg-rms程度の安定度を実現できていることがわかった。

35000232
JAEA photocathode DC-gun for an ERL injector
西谷 智博; 羽島 良一; 飯島 北斗; 永井 良治; 沢村 勝; 菊澤 信宏; 西森 信行; 峰原 英介; 田渕 雅夫*; 則竹 陽介*; 林谷 春彦*; 竹田 美和*
Proceedings of 28th International Free Electron Laser Conference (FEL 2006) (CD-ROM) , p.319-322(2006) ; (JAEA-J 01789)
 ERL放射光源には、大電流,極小エミッタンスの電子ビームが要求される。この要求性能を満たす電子銃の実現のために、われわれは光陰極直流型電子銃及び新型光陰極デバイスの開発に着手した。この電子銃は、極高真空のNEA表面作成チャンバーと250keV加速チャンバーから構成される。NEA表面を保持するために極高真空は不可欠であるため、この電子銃の各チャンバー間の光陰極結晶搬送には、ロードロックシステムを採用している。これまでに250keV加速チャンバーと250kV高圧印加タンクを作成し、高圧印加試験に成功している。さらにわれわれは、光陰極そのものの開発として、新型超格子光陰極の提案もまた行ってきた。この新型光陰極の開発は、これまでにMBE結晶作成装置を用いてサンプル作成を行った。このサンプルを用いた性能評価試験において、従来技術を二倍越える高い量子効率とNEA表面寿命性能の大幅な向上を達成した。

35000233
Radiation protection feature and research at nuclear fuel cycle engineering laboratories, JAEA
古田 定昭; 宮部 賢次郎
Proceedings of 2nd Asian and Oceanic Congress Radiological Protection (AOCRP-2) (CD-ROM) , p.928-932(2006) ; (JAEA-J 01790)
 原子力機構のサイクル工学研究所では、1972年にMOX燃料製造施設において高速実験炉「常陽」燃料の製造が開始され、また、1977年には0.7t/日の処理能力を持つ我が国初の再処理工場が運転を開始し、2006年3月までに合計1,116tのおもに軽水炉使用済燃料を順調に処理している。このほか同研究所にはこれらの施設に付随する多くの核燃料取扱い施設が存在する。ここでは研究所における放射線防護の特徴と最近の研究開発の取り組みについて紹介する。

35000234
Visualization and quantitative evaluation of aperture distribution, fluid flow and tracer transport in a variable aperture fracture
Xiao, J.; 佐藤 久*; 澤田 淳; 武部 篤治*
Proceedings of 4th Asian Rock Mechanics Symposium (ARMS 2006) (CD-ROM) , 8p.(2006) ; (JAEA-J 01791)
 高レベル放射性廃棄物の地層処分の安全評価においては、地下深部の岩盤における水理及び物質移行特性を把握することが重要である。地下深部の岩盤では、亀裂などの不連続面が支配的な移行経路になる可能性があることから、岩盤内亀裂の幾何学的特性や水理・物質移行特性をより詳細に把握したうえで評価する必要がある。本研究では、単一亀裂モデルの信頼性向上に資するため、LED面光源を用いた画像可視化計測技術を開発し、単一岩体亀裂を模擬した透明試験体を用いた透水・トレーサー試験へ適用した。また、粒子画像流速測定法(Particle Image Velocimetry)を用いて、亀裂内の流速分布の推定を行った。その亀裂内の水理・物質移動の過程を直接観察することにより、亀裂内開口幅分布,亀裂内濃度分布変化や流れ速度ベクトル分布等の情報を収集し、それを画像分析することで、水理・物質移行挙動の詳細な検討を行った。以上のことから、LED面光源を用いた画像可視化計測技術と粒子画像流速測定法を組合せた手法が亀裂内の水理・物質移行の把握において有効であることを確認した。

35000235
Transient behavior of gas entrainment caused by surface vortex
江連 俊樹; 木村 暢之; 林 謙二; 上出 英樹
Proceedings of 5th Korea-Japan Symposium on Nuclear Thermal Hydraulics and Safety (NTHAS-5) , p.94-99(2006) ; (JAEA-J 01792)
 コンパクトなナトリウム冷却炉は高速増殖炉の重要な候補の一つであり、実用化のための研究が行われている。炉容器径のコンパクト化に伴って、ナトリウム冷却材自由表面からのガス巻き込みが設計上の重要な問題の一つとなっており、評価手法や裕度を明らかにすることが必要である。本研究では、水−空気の実験体系にて、自由表面渦によるガス巻き込み現象とその過渡変化に着目して可視化による実験を行った。加えて、循環とガスコア長過渡的な変化の様子を粒子画像流速測定法と渦の可視化を用いて計測した。結果、ガスコア長は渦周囲の循環の発達に遅れて発達することを見いだした。

35000236
Condensation of a large-scale bubble in subcooled liquid; Experimental verification of the SIMMER-III code
守田 幸路*; 松元 達也*; 福田 研二*; 飛田 吉春; 佐藤 一憲; 山野 秀将
Proceedings of 5th Korea-Japan Symposium on Nuclear Thermal Hydraulics and Safety (NTHAS-5) , p.211-218(2006) ; (JAEA-J 01793)
 本研究では、凝縮を伴う大スケール気泡の過渡挙動に対する一連の実験が実施された。実験で観察された気泡挙動の特徴は、炉心安全解析コードSIMMER-IIIを用いた実験解析を通じて評価された。SIMMER-IIIによるシミュレーションによって、大気泡の凝縮に及ぼす非凝縮性ガスの凝縮抑制効果は小さいことが示された。また、実験で観察された大気泡内には気相と液相が分散することにより混合され、非凝縮性ガス層が発達することはなかったと推測される。本研究により、SIMMER-IIIは非凝縮性ガス存在下の大スケール気泡の凝縮過程を物理的に十分詳細に模擬できることが示された。

35000237
Radiation induced surface activation (RISA) effect on flow-boiling heat transfer; In-pile experiment in JMTR
柴本 泰照; 与能本 泰介; 中村 秀夫
Proceedings of 5th Korea-Japan Symposium on Nuclear Thermal Hydraulics and Safety (NTHAS-5) , p.226-233(2006) ; (JAEA-J 01794)
 本試験では、原子力機構材料試験炉を用いて実機相当の放射線照射環境下の沸騰伝熱実験を行い、放射線誘起表面活性(RISA)効果による熱伝達率向上の有無を検討した。炉内照射環境に加えて、同じ試験部を用いて炉外非照射環境でも実験を行い、限界熱流束までの沸騰曲線を取得し、両データを比較することで照射によるRISA効果を検証した。これまでのRISA関連実験で行われてきたプール沸騰ではなく、高い蒸気クオリティを伴う強制対流場かつ実機相当の強い放射線環境の条件で実験を行っており、RISAに関連したこのような実験例はこれまでにない初めての試みである。試験部は直径2-mm×長さ100-mmのステンレス製の円管で、圧力が420kPa,質量流束が180〜630kg/m2s,入口サブクール度が180〜630kJ/kgの範囲で実験を実施している。熱流束評価に伴う誤差評価と入口サブクール度の補正を行い、得られたデータの評価と比較を行った。その結果、原子炉での照射により沸騰曲線が数℃高過熱度側に移動するとともに、限界熱流束が平均約10%上昇した。この結果は、RISA効果による伝熱面の濡れ性向上が熱伝達特性に影響を与えたものと考えられる。

35000238
A Study on thermal feasibility of 1356 MWe high conversion type innovative water reactor for flexible fuel cycle (FLWR)
Liu, W.; 大貫 晃; 呉田 昌俊; 高瀬 和之; 秋本 肇
Proceedings of 5th Korea-Japan Symposium on Nuclear Thermal Hydraulics and Safety (NTHAS-5) , p.340-345(2006) ; (JAEA-J 01795)
 原子力機構が開発した稠密バンドル用BT相関式をTRAC-BF1に組み込み、1350MWe級高転換炉心における熱水力特性を評価した。MCPRが1.3になるように必要な冷却材流量を算出した。また、強制循環並びに自然循環で水冷却増殖炉で想定された最も厳しい異常な過渡変化及び事故事象−「ポンプトリップによる流量低下事象」に対して、過渡解析を行い、沸騰遷移が発生しないことを確認した。

35000239
Experimental study on gas entrainment at free surface in reactor vessel for a compact sodium cooled fast reactor; Evaluation of dominant factors and mechanism for gas entrainment in large scale partial model
木村 暢之; 江連 俊樹; 飛田 昭; 上出 英樹
Proceedings of 5th Korea-Japan Symposium on Nuclear Thermal Hydraulics and Safety (NTHAS-5) , p.391-397(2006) ; (JAEA-J 01796)
 ナトリウム冷却高速炉では、経済性向上を図るためプラントシステムのコンパクト化として、原子炉容器径に対する炉出力の増加を検討している。炉出力増加に伴い、冷却材の流速が上昇するため、原子炉容器内の自由液面からカバーガスを巻込むことが懸念されている。そこで、自由液面の下方に水平板(ディッププレート、D/P)を設置することで、液面近傍の流速低下を図ることとしている。ガス巻込み現象に対し、発生が懸念されている箇所を部分的にモデル化した装置により、試験を実施した。本試験では、液位や流速をパラメータとして、ガス巻込み発生条件マップを作成し、それによってガス巻込みの支配因子の抽出を行った。ガス巻込みは、大きく分類して2つのパターンで発生し、いずれも実機設計定格条件より大きく離れていた。一つは、周方向流速(水平流速)が大きくなることによって、コールドレグ配管の後流で発生する渦に起因して発生するものであり、もう一つは、下降流速の増加及び液位の低下によって、H/L配管と炉容器壁の間の領域で発生するものであった。これらについて、PIVを適用し、詳細な流速計測を行うことにより、発生メカニズムを解明した。

35000240
Applicability of numerical simulation to gas entrainment phenomena
伊藤 啓; 堺 公明; 大島 宏之; 田中 伸厚*
Proceedings of 5th Korea-Japan Symposium on Nuclear Thermal Hydraulics and Safety (NTHAS-5) , p.398-405(2006) ; (JAEA-J 01797)
 ガス巻込み現象に対する数値解析手法の適用性を調査するため、基礎試験体系におけるガス巻込み現象を対象とした解析を実施した。実炉への適用を念頭に置き、計算コストを減らすためにかなり粗いメッシュ分割を用いた解析を行い、解析結果の流速分布から伸長渦理論に基づく手法を用いて計算されたガス巻込み判定パラメータを用いて、ガス巻込みの評価を実施した。各解析ケースの結果及び得られた判定パラメータは、実験結果や他のケースで得られた結果と比較を行い、解析精度の評価を行った。その結果、かなり粗いメッシュ分割を用いた場合であっても、数値解析手法が流速の変動挙動やガス巻込み判定パラメータを正しく導くことが明らかになり、また、液深を変化させた場合の挙動も正しく評価されることが明らかになった。さらに、乱流モデル及びメッシュ分割がガス巻込み評価に与える影響について検討し、これらの要素が与える影響は大きくないことが確認された。これらの結果から、本件で用いたガス巻込み評価手法が適切であることが示された。

35000241
Proposal of design criteria for gas entrainment from vortex dimples based on a computational fluid dynamics method
堺 公明; 江口 譲*; 文字 秀明*; 岩崎 隆*; 伊藤 啓; 大島 宏之
Proceedings of 5th Korea-Japan Symposium on Nuclear Thermal Hydraulics and Safety (NTHAS-5) , p.406-413(2006) ; (JAEA-J 01798)
 高速炉内の自由液面においてくぼみ渦が誘起する2種類のガス巻込み現象に関して、数値解析(CFD)手法を用いたガス巻込み防止設計基準の検討を実施した。1種類目のガス巻込み現象は、ガスコアが出口配管まで伸長されることによって発生し、比較的大量のガスが系統内に吸込まれる。もう1つは、ガスコア先端から継続的に気泡が離脱することによって発生する。自由液面のくぼみ渦に関する基礎試験を対象としたCFD結果に基づき、ガス巻込み防止設計基準を判定するための値として、局所的なCFD無次元数を定義した。その結果、CFD無次元数は、設計においてガス巻込み発生の有無を評価するために有用であることが明らかになった。

35000242
Numerical prediction of gas entrainment in the 1/1.8 scaled partial model of the upper plenum
内堀 昭寛; 堺 公明; 大島 宏之
Proceedings of 5th Korea-Japan Symposium on Nuclear Thermal Hydraulics and Safety (NTHAS-5) , p.414-420(2006) ; (JAEA-J 01799)
 ナトリウム冷却高速炉の実用化において炉容器内自由液面からのガス巻込みを防止することが重要な課題となっているため、数値解析を利用したガス巻込み発生判定手法の開発を進めている。本研究では、まず、1/1.8スケール上部プレナム部分モデル水流動試験を対象に数値解析を行い、流況再現性について検討した。数値解析では、流路内に障害物として存在するホットレグやコールドレグの周囲に間欠的に渦が発生する結果となったが、渦の発生位置,渦近傍の速度分布,渦の循環等を実験結果と比較したところ良い一致がみられた。次に、この数値解析結果からガス巻込み発生判定を行い、これまでの研究で開発してきた判定手法の適用性を検討した。すべての解析ケースについて、試験結果に整合する判定結果が得られ、判定手法の適用性について見通しを得た。

35000243
Study on thermal stratification in a compact reactor vessel of advanced sodium cooled reactor
上出 英樹; 小川 博志; 木村 暢之; 林 謙二; 飛田 昭
Proceedings of 5th Korea-Japan Symposium on Nuclear Thermal Hydraulics and Safety (NTHAS-5) , p.421-428(2006) ; (JAEA-J 01800)
 ナトリウム冷却高速炉においてスクラム過渡時の温度成層化現象は、炉容器の主要な熱荷重の一つである。原子力機構で検討している大型ナトリウム冷却炉の温度成層化現象を対象に、1/10縮尺水試験を実施した。設計された炉容器はコンパクト化され、多孔板で構成される炉上部機構(UIS)には燃料取り扱い機構のための切り込みを設けている。炉内には、この切り込みを通る速い流れが形成される。試験によりUIS切込み部の近傍では、温度成層界面の上下で急峻な温度分布が形成されるとともに温度変動が観測された。これらは切り込みを通るジェットが成層界面に衝突することに起因することがわかった。また、温度変動の主要な周期は成層界面上下の温度差と界面下の流速により影響を受けることを明らかにした。

35000244
The Eagle project to eliminate the recriticality issue of fast reactors; Progress and results of in-pile tests
小西 賢介; 久保 重信*; 佐藤 一憲; 小山 和也*; 豊岡 淳一; 神山 健司; 小竹 庄司*; Vurim, A. D.*; Gaidaichuk, V. A.*; Pakhnits, A. V.*; Vassiliev, Y. S.*
Proceedings of 5th Korea-Japan Symposium on Nuclear Thermal Hydraulics and Safety (NTHAS-5) , p.465-471(2006) ; (JAEA-J 01801)
 FBRの実用化に向けて、炉心安全上の重要課題である再臨界問題排除の技術的見通しを得るために、EAGLEプロジェクトを進めている。EAGLEプロジェクトは、FBRの炉心損傷事故を想定しても、溶融した燃料が早期に炉心外に流出することにより、再臨界問題の排除が可能であることを示すことを目的としている。本プロジェクトは、カザフ共和国の試験炉IGR及び関連施設を用い、炉内試験と炉外試験の特長を生かした試験計画としている。炉内試験計画は、8kgの燃料溶融を実現しナトリウムの存在する条件で燃料流出挙動を観察する炉内大規模ナトリウム試験を2回実施することにより実証性の高い実験的知見を得ることを目的として、小規模試験,中規模試験,大規模ドライ(ナトリウムなし)試験とステップアップするものとした。現在までに炉内大規模ナトリウム試験の1回目までを順次実施し、溶融燃料の早期の炉心外流出を示唆する試験結果を得た。これまでに得られた結果は、今後実施する最終試験の結果と併せて、実機評価の妥当性確認に活用される。

35000245
Multi-physics and multi-scale simulation for core disruptive accidents in fast breeder reactors
越塚 誠一*; Liu, J.*; 守田 幸路*; 有馬 立身*; 飛田 吉春; 山野 秀将; 伊藤 高啓*; 白川 典幸*; 細田 誠吾*; 荒木 和博*; 内藤 正則*; 山本 雄一*; 小境 博*; 氷見 正司*; 平野 悦丈*; 清水 泉介*; 大上 雅哉*
Proceedings of 5th Korea-Japan Symposium on Nuclear Thermal Hydraulics and Safety (NTHAS-5) , p.472-479(2006) ; (JAEA-J 01802)
 文部科学省革新的原子力システム研究開発事業の枠組みの中で2005年会計年度から5年間の研究プロジェクトを開始した。それはMOX燃料及び金属燃料を対象として高速増殖炉のシビアアクシデントのさまざまな複雑現象を解析するため、Moving Particle Semi-implicit(MPS)手法を用いてCOMPASS(Computer Code with Moving Particle Semi-implicit for Reactor Safety Analysis)と名づけられたコンピューターコードを開発することである。また、金属燃料と被覆材間の共晶反応は分子動力学及び分子軌道法により研究される。MPSにより、凝固を伴う溶融金属流れが解析されるとともに、ラッパ管の弾性解析もまた実施された。その結果は実験及び商用コードと比較された。共晶反応は分子動力学で計算され、参考文献と比較された。以上の数値解析手法は高速増殖炉の炉心損傷事故のマルチフィジックス・マルチスケール現象に有効であることがわかった。

35000246
Numerical simulation of flow field in wire-wrapped fuel pin bundle of sodium cooled fast reactor using "SPIRAL"
大島 宏之; 今井 康友*
Proceedings of 5th Korea-Japan Symposium on Nuclear Thermal Hydraulics and Safety (NTHAS-5) , p.480-487(2006) ; (JAEA-J 01803)
 有限要素法コードSPIRALを用いて、高速炉のワイヤースペーサ型燃料集合体体系における流れ場の数値シミュレーションを実施した。このシミュレーションではメッシュ分割の解に与える影響や、3つの高レイノルズ数型乱流モデル,修正k-eモデル,RNG k-eモデル,代数応力モデルの予測特性を明らかにした。また、コード検証の一環として、19本ピンバンドル解析を実施し実験データとの比較により、その妥当性を確認した。

35000247
An Evaluation of CDA event sequences in a gas-cooled fast reactor
山野 秀将; 飛田 吉春
Proceedings of 5th Korea-Japan Symposium on Nuclear Thermal Hydraulics and Safety (NTHAS-5) , p.716-723(2006) ; (JAEA-J 01804)
 実用化戦略調査研究における安全設計評価のため、炭酸ガス冷却高速炉の炉心損傷事故(CDA)の事象推移解析を実施した。代表的なCDA起因事象として冷却材流量喪失時スクラム失敗(ULOF)事象を選定した。本解析から、炉心から被覆管が溶融移動することにより出力バーストが生じるが、これにより溶融燃料は主として下方へ流出し、反応度は未臨界状態に静定する事象推移を得た。本解析対象とした設計では、下部軸ブランケット(LAB)が短いため再臨界回避方策は不要である。高増殖比を狙ってLABを拡張した場合のため、検証された燃料固化モデルを用いて炉心崩壊直後のLAB領域への燃料浸入長を評価した。長いLABを採用した炉心には、早期燃料流出促進のための設計方策を提示した。

35000248
An analysis of CDA event sequences in lead-bismuth cooled fast reactor
飛田 吉春; 山野 秀将
Proceedings of 5th Korea-Japan Symposium on Nuclear Thermal Hydraulics and Safety (NTHAS-5) , p.724-729(2006) ; (JAEA-J 01805)
 鉛ビスマス冷却MN(混合窒化物)燃料高速炉のULOF事象解析を実施し、重金属冷却高速炉の炉心損傷事故における事象推移特性と支配現象を明らかにした。鉛ビスマス冷却MN燃料高速炉の炉心損傷事故では、燃料スウェリングによる燃料浮上の有無が事象推移に大きな影響を与えることが示された。今後は、現在JAEAが実施しているNifti試験の知見から得られる窒化物燃料の燃料スウェリング特性を評価に反映する予定である。また、核的事象終息後の崩壊熱除去過程の評価を進め、事故影響の炉内格納性の検討を行う。

35000249
Analysis of radiation response and recovery characteristics of amorphous silicon solar cells
島崎 一紀*; 今泉 充*; 大島 武; 伊藤 久義; 岐部 公一*
Proceedings of 7th International Workshop on Radiation Effects on Semiconductor Devices for Space Application (RASEDA-7) , p.49-52(2006) ; (JAEA-J 01806)
 タンデム型のアモルファスシリコン太陽電池へ50keV〜10MeVの陽子線,500keV〜2MeVの電子線を照射し、発電特性の劣化を調べた。劣化挙動をMott-Rutherford断面積及びZiegler-Biersack-Littmark遮蔽ポテンシャルを考慮したNIEL(Non Ionizing Energy Loss)により解析したところ、すべてのエネルギーでの照射結果が「はじき出し損傷線量(Displacement Damage Dose: Dd)」で統一的に表現できることが見いだされ、アモルファスシリコン太陽電池の放射線劣化も単結晶半導体を用いた太陽電池と同様にDdが劣化を表す良い指標であることが判明した。また、照射後70及び130℃での熱処理を行ったところ、劣化した特性が未照射時と同じ値まで回復することが観測された。

35000250
Flight demonstration of Cu(In,Ga)Se2 thin-film solar cells using micro-satellite
川北 史朗*; 今泉 充*; 岐部 公一*; 大島 武; 伊藤 久義; 依田 真一*; 中村 友哉*; 中須賀 真一*
Proceedings of 7th International Workshop on Radiation Effects on Semiconductor Devices for Space Application (RASEDA-7) , p.61-64(2006) ; (JAEA-J 01807)
 次世代の高効率薄膜太陽電池として有望なCu(In,Ga)Se2(CIGS)太陽電池の宇宙実証を行った。CIGS太陽電池は地上での照射試験及び宇宙実証試験衛星つばさ(MDS-1)での宇宙実証の結果、非常に優れた耐放射線性を有することが判明している。今回は、宇宙に大量に存在する低エネルギー電子線や陽子線の遮蔽に用いるカバーガラスを取り付けないCIGS太陽電池を用いて実証を行った。カバーガラス無しCIGS太陽電池は人工衛星「ナノマイクロサットXI-V」に搭載され2005年の10月27日にLEO(Low Earth Orbit)軌道に打ち上げられた。250日間の運用期間中、CIGS太陽電池の発電特性の劣化は全く観測されなかった。軌道での太陽電池の温度及び放射線(電子線・陽子線)量を考慮して解析をしたところ、放射線により発電特性は劣化するが、同時に温度による特性回復が起こるため結果として劣化が生じないと結論できた。

35000251
Si substrate suitable for radiation-resistant space solar cells
松浦 秀治*; 川北 史朗*; 大島 武; 伊藤 久義
Proceedings of 7th International Workshop on Radiation Effects on Semiconductor Devices for Space Application (RASEDA-7) , p.157-160(2006) ; (JAEA-J 01808)
 CZ(Czochralski)法,MCZ(Magnetic Czochralski)法及びFZ(Floating Zone)法で作製したボロン(B)ドープシリコン(Si)基板の正孔濃度と10MeV陽子線及び1MeV電子線の照射量の関係をHall測定により調べた。その結果、CZ法のSi基板は陽子線,電子線照射量の増加とともに正孔濃度は減少し、電子線では1×1017/cm2で、陽子線では2.5×1014/cm2で伝導型がp型からn型になることが判明した。MCZに関しても、CZに比べ正孔濃度減少率は小さいものの1×1017/cm2の電子線照射で正孔濃度が未照射の3×1015から1×1012/cm3まで減少することが明らかとなった。一方、FZ法Si基板では正孔濃度の減少率は非常に小さく1×1017/cm2の電子線照射においてもほとんど変化がないことが判明した。製造法により基板の酸素含有が異なり、FZ, MCZ, CZの順で酸素濃度が増加することを考えると、キャリア濃度減少の原因は酸素と空孔欠陥の複合欠陥であることが示唆される。以上より宇宙用Si太陽電池基板としてはFZ法が最も適していると帰結できる。

35000252
Electron radiation-induced defects in lattice mismatched InGaAs solar cells
佐々木 拓生*; 高本 達也*; 今泉 充*; 大島 武; 伊藤 久義; 山口 真史*
Proceedings of 7th International Workshop on Radiation Effects on Semiconductor Devices for Space Application (RASEDA-7) , p.165-168(2006) ; (JAEA-J 01809)
 格子不整合系の高効率多接合太陽電池のミドルセルとして期待されるInGaAs太陽電池へ1MeV電子線を照射し、発生する欠陥をDLTS(Deep Level Transient Spectroscopy)により調べた。InGaAsはGaAs基板上に有機金属化学気相成長(MOCVD)法により作製した。作製の際に行った熱サイクル処理(TCA)の回数と電子線照射により発生する欠陥の関係を調べた結果、TCA回数の増加とともにH1(EV+0.26meV),E1(EC-0.32meV),E2(EC-0.52meV)のすべての欠陥ピークは減少し、残留する欠陥濃度はTCAにより減少していくことが見いだされた。TCAにより結晶性が向上することから、格子不整合系では未照射時における結晶性が耐放射線性にとって重要であり、TCAを行うことで照射欠陥の生成量を低減できることが判明した。

35000253
Sutdy on optimum structure of AlInGaP top-cells for triple-junction space solar cells
森岡 千晴*; 今泉 充*; 大島 武; 伊藤 久義; 岐部 公一*
Proceedings of 7th International Workshop on Radiation Effects on Semiconductor Devices for Space Application (RASEDA-7) , p.169-172(2006) ; (JAEA-J 01810)
 InGaPより優れた耐放射線性を有することから次期の宇宙用三接合太陽電池のトップセルに期待されているAlInGaP太陽電池の基板キャリア濃度や膜厚と耐放射線性の関係を調べた。有機金属化学気相成長(MOCVD)法によりGaAs基板上に作製した膜厚(500〜1500nm)やキャリア濃度(3×1016〜3×1017/cm3)の異なるAlInGaP太陽電池へ3MeV陽子線を照射し発電特性の劣化を調べた。その結果、膜厚によらず開放電圧(VOC)の初期特性及び劣化量は同じであること、短絡電流(ISC)は膜厚が厚いものほど初期値が高いが1×1014/cm2照射後には膜厚によらず同じ値になることが見いだされた。一方、キャリア濃度が低いものほどISCの初期特性は高く劣化が少ないこと、VOCはキャリア濃度が高いものほど初期値は高いが、劣化も大きいことが判明した。以上の結果を総合的に判断することで、今回の範囲での最適な膜厚及びキャリア濃度は、それぞれ1250nm及び3×1016/cm3であると結論できた。

35000254
Decrease in hole concentration in Al-doped 4H-SiC by irradiation of 200 keV electrons
松浦 秀治*; 蓑原 伸正*; 高橋 美雪*; 大島 武; 伊藤 久義
Proceedings of 7th International Workshop on Radiation Effects on Semiconductor Devices for Space Application (RASEDA-7) , p.181-184(2006) ; (JAEA-J 01811)
 電子線照射による炭化ケイ素(SiC)中の正孔濃度の変化をホール測定により調べた。試料はアルミ(Al)添加六方晶(4H)SiCを用い、200keV電子線を室温にて照射した。正孔濃度の温度依存性を測定・解析することでアクセプタ準位,アクセプタ濃度及び補償濃度を見積もったところ、200meV程度の活性化エネルギーを有するAlアクセプタ濃度は電子線照射により減少すること、それに伴い370meV程度の活性化エネルギーを有する深いアクセプタ濃度が増加することが見いだされた。200keVの電子線ではSiC中の炭素(C)のみはじき出されることから、370meVの深いアクセプタ準位はC空孔に関連する欠陥であることが示唆される。

35000255
Pasta structures in compact stars
丸山 敏毅; 巽 敏隆*; 遠藤 友樹*; 千葉 敏
Recent Research Developments in Physics, Vol.7 , p.1-57(2006) ; (JAEA-J 01813)
 超新星や中性子星,クォーク星などのコンパクトな天体における物質の非一様なパスタ構造(球状,棒状,板状,棒状穴,球状穴の規則的な格子構造)に関する最近の一連の研究を概観した。まず、相対論的平均場を用いた数値計算により、超新星と中性子星表面での低密度原子核物質での、液相気相相転移と中性子析出相転移による混合相を調べ、パスタ構造の出現の様子と物質の状態方程式とを明らかにした。次に中性子星内部での高密度の物質で通常原子核物質とK中間子凝縮物質の混合相でパスタ構造が現れることを確かめた。また、パスタ構造に対するクーロン力と表面張力の効果を調べ、荷電粒子によるクーロン遮蔽がパスタ構造のサイズや出現する密度範囲に影響することを明らかにした。最後に、さらに高密度でのハドロンクォーク相転移の混合相を調べ、そこでのパスタ構造とクーロン遮蔽効果を議論した。特に、多成分系の一次相転移では本来正しくないはずのMaxwell構成法が、クーロン遮蔽により近似的に有効となることを示した。

35000256
孔壁画像の画像処理による岩相区分効率の改善
天野 健治
日本応用地質学会平成18年度研究発表会講演論文集 , p.525-526(2006) ; (JAEA-J 01821)
 ボーリング調査の一環として実施される岩芯の地質観察のうち、岩相は対象とする地盤・岩盤の基盤的な性状を示す情報として欠くことのできないデータの一つである。しかしながら、岩相が極端に不均質である場合や細かいスケールで変化する場合には、岩相区分の作業効率に大きな負担が生じるほか、統一的な区分基準がない場合、観察者の技術的能力や主観的な判断に応じてデータの精度が異なるといった問題があった。そこで本検討では、ボアホールTVで撮影された孔壁画像の低ノイズ性と高い解像度に着目し、画像処理技術を適用した岩相区分を試みた。その結果、画像処理で区分される岩相と肉眼観察から区分される岩相とは、精度の良い一致を示していることが明らかとなった。これにより、岩芯観察時における岩相区分の作業効率や誤認率を大幅に改善できる可能性があるほか、岩芯のない条件下においても、孔内の岩相が比較的簡便に推定できるものと期待される。

35000257
高輝度NEA-AlGaAsフォトカソード電子源の開発
西谷 智博; 田渕 雅夫*; 則竹 陽介*; 林谷 春彦*; 羽島 良一; 飯島 北斗; 永井 良治; 沢村 勝; 菊澤 信宏; 西森 信行; 峰原 英介; 竹田 美和*
Proceedings of 3rd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 31st Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.45-47(2006) ; (JAEA-J 01822)
 電子源の高輝度性能化は、次世代放射光源であるERL放射光源の実現のみならず、生体分子の観察や3次元構造解析可能な電子顕微鏡の実現の鍵となる不可欠な技術要素である。特にERL放射光源を実現するにあたって、電子源には、エネルギー幅が極めて小さく、大電流の高輝度性能が要求されている。このような電子源として、バルク状GaAsフォトカソードが、負電子親和力の表面を持つ利点から要求性能を満たす電子源として期待されている。しかし、従来技術であるバルク状GaAsフォトカソードは、量子効率が5%程度と小さく、大電流引き出しの際に励起レーザーの高出力問題を抱えている。そこでわれわれは、従来のバルク状GaAsフォトカソードを遥かに越える量子効率で、室温レベルの極小のエネルギー幅の電子ビームを実現する新型GaAsフォトカソードの開発に着手した。

35000258
J-PARC RCS及び50GeV MRリング用残留ガスプロファイルモニターの開発
佐藤 健一郎; Lee, S.*; 外山 毅*; 林 直樹
Proceedings of 3rd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 31st Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.115-117(2006) ; (JAEA-J 01823)
 現在建設中のJ-PARC施設3GeV RCSリングは1MWビームを、50GeV MRリングは0.75MWビームを加速する。このような大電流ビームのプロファイルを非破壊観測するために、残留ガスプロファイルモニター(IPM)が現在開発中である。われわれはIPMの有用性を確かめるために試験機を製作し、KEK陽子シンクロトロン主リング(KEK-PS)に設置し、KEK-PSからの陽子ビームを用いてイオン収集・電子収集両方の運転モードについてテストを行ってきた。得られたデータから実機の検出精度を議論する。

35000259
J-PARC L3BTの現状
大川 智宏; 青 寛幸; 池上 雅紀*
Proceedings of 3rd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 31st Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.355-357(2006) ; (JAEA-J 01824)
 L3BTは、J-PARC(Japan Proton Accelerator Research Complex)の線形加速器と3GeV RCS(Rapid Cycling Synchrotron)を結ぶビーム輸送系である。L3BTの建設はほぼ完了し、L3BTのビームコミッションがまもなく開始される。一方、われわれは、スクレーパ部でのビームハローの削除とその際に生じるビーム損失を評価するためにIMPACTを用いて3次元粒子シミュレーションを実施した。この論文では、L3BTのビームシミュレーションの結果について報告する。また、L3BTの建設状況についても簡単に報告する。

35000260
J-PARCリニアック324MHz RFテストスタンドの現状
山崎 正義; 千代 悦司; 小林 鉄也; 堀 利彦; 鈴木 浩幸; 長谷川 和男; 穴見 昌三*; 川村 真人*; 福井 佑治*; 南茂 今朝雄*; Fang, Z.*; 福田 茂樹*; 山口 誠哉*
Proceedings of 3rd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 31st Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.391-393(2006) ; (JAEA-J 01825)
 J-PARCリニアックの第1期計画の高周波源には周波数324MHzのMアノード型パルスクライストロンを20台使用する。要求電力の異なる各加速空洞(RFQ, DTL1-3, SDTL1-15, Debuncher1)に最適な出力のクライストロンを配置するため、大電力試験により各種のRF特性測定及びパラメータを取得する目的でテストスタンドを立ち上げた。このテストスタンドは、クライストロンギャラリの一区画(SDTL12, 13ステーション)を管理区域に設定して、2台のクライストロンが独立で運転できる配置とした。そして、長期保管された324MHzクライストロン(東芝電子管デバイス社製、E3740A)23本の各種特性試験を行いデータ取得した。これに際してクライストロンの出力に不安定現象が発生したが、磁界を最適化することにより安定した出力を確認し、さらに加速空洞の要求電力に対しても十分な出力であることも確認された。これら試験の繰り返しによりメンテナンス(交換作業等)作業の効率化を図るための手順を確立した。以上実施した試験調整の結果について報告する。

35000261
J-PARCリニアック高周波基準信号分配システムの性能
小林 鉄也; 穴見 昌三*; 山口 誠哉*; 道園 真一郎*; 千代 悦司
Proceedings of 3rd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 31st Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.394-396(2006) ; (JAEA-J 01826)
 J-PARCリニアックの据付(第I期)はほぼ完了し、今年の12月からビームコミッショニングが始まる予定になっている。本リニアックの高周波基準信号分配システムでは基準信号を光信号により増幅・分配しクライストロンギャラリーに並ぶ約60か所の高周波加速制御装置へと伝送する。これまでの研究会でシステムの全体構成や各光コンポーネントの開発について報告してきた。昨年度、実機における基準信号分配システムが完成し、その位相安定性を評価した結果、期待される性能(位相変動±0.3度以内)が達成されてることを確認した。

35000262
J-PARCリニアックテストスタンドの324MHzクライストロンデータ収集システム
福井 佑治*; 穴見 昌三*; 山口 誠哉*; Fang, Z.*; 川村 真人*; 南茂 今朝雄*; 三川 勝彦*; 門倉 英一*; 鈴木 浩幸; 堀 利彦; 山崎 正義; 小林 鉄也; 千代 悦司
Proceedings of 3rd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 31st Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.403-405(2006) ; (JAEA-J 01827)
 大強度陽子加速器計画(J-PARC)リニアックの前段部分(RFQ, DTL1〜3, SDTL1〜16)の高周波源には周波数324MHzのM·アノード型パルスクライストロンが20台使用される。要求電力の異なる各空洞にクライストロンを適切に配置するため、クライストロンのRF特性測定や各種パラメータを取得する目的で、本年2月から6月までの約5か月間、クライストロン2台を運転できるテストスタンドを整備し大電力試験を行った。本報告ではこのクライストロン大電力試験で使用したデータ収集システムの概略について述べる。

35000263
JAEA ERL-FELにおけるミクロパルス繰返しの二倍化
永井 良治; 羽島 良一; 西森 信行; 沢村 勝; 菊澤 信宏; 飯島 北斗; 西谷 智博; 峰原 英介
Proceedings of 3rd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 31st Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.514-516(2006) ; (JAEA-J 01828)
 原子力機構では高出力自由電子レーザー(FEL)のためのエネルギー回収型リニアック(ERL)の開発を行っている。ERLの最大の利点は加速器の高周波源の容量を超えるビーム電流を加速できることにある。ミクロパルス繰返しを二倍にし、加速電流を二倍にするために、電子銃,入射器の高周波源,ローレベル高周波制御装置,加速器制御システムの改良を行ってきた。この結果、高周波源の容量を超える電流である10mAの加速に成功しFEL出力としては0.7kWを得ることができた。

35000264
JAEA-ERLにおけるCSRスペクトルの観測
高橋 俊晴*; 峰原 英介; 羽島 良一; 西森 信行; 沢村 勝; 永井 良治; 菊澤 信宏; 飯島 北斗; 西谷 智博; 奥田 修一*
Proceedings of 3rd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 31st Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.523-525(2006) ; (JAEA-J 01829)
 エネルギー回収型ライナック(ERL)は、放射光リングに比べてバンチが短く、また既存のライナックよりも大電流を加速できるなど優れた特長を持ち、ほかの手法では実現できない大強度のコヒーレント放射光(CSR)を発生させることが可能であることから、テラヘルツ領域での新たな光源として期待されている。国内唯一のERLである原子力機構ERLでは、高強度テラヘルツCSRの本格利用を目指しており、本研究では昨年の報告時よりも安定したマシンの状態でのCSRスペクトルを改めて測定するとともに、大出力赤外FEL(発振波長20μm)を発振させることによるCSRスペクトルの変化を観測した。

35000265
ERL光量子源のためのフォトカソードDC電子銃開発の現状
飯島 北斗; 西谷 智博; 永井 良治; 羽島 良一; 峰原 英介
Proceedings of 3rd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 31st Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.529-531(2006) ; (JAEA-J 01830)
 現在われわれが推し進めているエネルギー回収型の加速器を利用した次世代光量子源では、大電流電子ビームの加速(100mA, 5〜6GeV),低エミッタンスビーム(0.1mm·mrad)によるコヒーレントX線の発生,フェムト秒科学への利用のために極短電子バンチ(100fs)の発生を行う。この3つの性能を達成するための重要な要素の1つに電子銃がある。大電流と低エミッタンスを実現するカソードとしては負電子親和力(NEA)表面のGaAsカソードが存在するが、大電流を引き出すためには超格子構造にする必要がある。また、量子効率と寿命を保持するために電子銃の真空を10-12Torr程度にする必要などがある。現在、このカソードが実機で必要な性能を出せることを実証するために電子銃のテストベンチを構築している。この電子銃はこれまでわれわれが開発してきたJAEA ERL-FEL加速器の電子銃をもとに熱カソードからNEA-GaAsフォトカソードに変えて設計を行った。高圧印加に関しては、SF6ガスを充填したタンク内に高圧部を収納する形式を取っている。カソードはロードロック方式で電子銃と一体化した真空槽内でNEA表面に仕上げたGaAsを導く方式を取っている。

35000266
ERL放射光源のためのロードロック型電子銃の設計
永井 良治; 飯島 北斗; 西谷 智博; 羽島 良一; 西森 信行; 沢村 勝; 菊澤 信宏; 峰原 英介
Proceedings of 3rd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 31st Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.559-561(2006) ; (JAEA-J 01831)
 原子力機構では次世代放射光源のためのNEA-GaAsを光陰極とした電子銃の実証試験を進めている。NEA-GaAs陰極の調整,運用には非常に高い真空度が求められる。この真空度を容易に達成し、陰極の試験を潤滑に進めていくためにロードロック型の電子銃を開発している。このための真空チャンバについての設計・検討を行った。また、検討の結果を裏付けるためのポンプの試験及び加速管からのガス放出速度の測定を行っている。

35000267
大強度重イオンビーム加速のための直接プラズマ入射法における加速ビーム波形の考察
柏木 啓次; 岡村 昌宏*; 服部 俊幸*; Jameson, R. A.*; 山本 和男*; 藤本 哲也*; 神谷 富裕
Proceedings of 3rd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 31st Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.570-572(2006) ; (JAEA-J 01832)
 直接プラズマ入射法(DPIS)は、大強度の重イオンビームを生成することを目的とした、イオン源から加速器へのビーム入射方法であり、その有効性が実験的に証明されている。だが一方、DPISによる加速ビーム波形はイオン源から出射するビームの波形と異なる原因が不明であるという問題がある。これまでDPISのシミュレーション手法が確立されていなかったため、DPISの加速ビーム波形や加速電流値の予測を行うことができず、この原因を解明することができなかった。これらの2つのビームパルス波形の関係を明らかにするため、実測データを初期値としたビーム引き出しシミュレーション及びビーム加速シミュレーションを行った。ビーム引き出しシミュレーションよりRFQ線形加速器に入射するビームパラメーターの時間変化が明らかになり、その結果を用いたビーム加速シミュレーションによって実験で得られた加速ビーム波形が再現された。これらの結果から、高ビーム電流領域において入射ビームと加速器のアクセプタンスの間でミスマッチが生じていることが明らかになり、入射ビーム波形と加速ビーム波形が異なる原因が解明された。

35000268
JAEA-FELにおけるチャープパルス計測の現状
飯島 北斗; 永井 良治; 羽島 良一; 峰原 英介
Proceedings of 3rd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 31st Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.738-740(2006) ; (JAEA-J 01833)
 これまでわれわれのグループはエネルギー回収型超伝導加速器(ERL)を用いた中赤外超短パルス高出力FELの開発を進めてきた。この加速器から発振される波長約20μmのチャープされたFELは、例えば多原子分子の解離などに応用した場合、現状の技術よりも飛躍的に高い解離効率が期待される。これまでの研究で、波長23.3μm,パルス幅319fs(FWHM),チャープ量Δω/ω0=14.3%のFEL発振に成功し、これを自己相関により測定した。現在はこのチャープされたFELの時間と周波数の相関を直接観測するために、frequency-resolved opticalgrating(FROG)による計測の準備を進めている。FROGは自己相関を測定する部分に加えて、周波数情報を得るための波長計測部分からなる。自己相関を測定する部分では、倍波を発生するために基本波の強度,偏向方向のパラメータを押さえることが必要となる。そのため、基本波の強度,波長分布,変更方向を測定した。

35000269
ベイズ法による小型ヘリウム冷凍機の故障率の評価
菊澤 信宏
Proceedings of 3rd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 31st Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.768-770(2006) ; (JAEA-J 01834)
 原子力機構ERL-FELでは、4台の超伝導加速器のそれぞれに冷却系に小型ヘリウム冷凍機を組み込んだ無蒸発型冷却方式を開発した。この冷却方式は運転員が常駐する必要がないという利点がある反面、故障時には冷凍機の交換で対応する必要があり、その間は液体ヘリウムが蒸発するため、短時間で復旧させなければならないという欠点がある。2000年以前は冷凍機の故障回避を目的として施設の計画停電にあわせて1年に1度の定期保守点検を行っていたが、保守コスト削減のため2000年以降は故障時の緊急保守へと対応を変えた。加速器施設の利用などを考えると定期保守で対応することが望ましいが、適正な定期保守を行うためには装置に関する故障率などに関するデータが必要である。しかし大量生産品ではない場合には信頼できるデータが得られない。本研究では、統計的に少ないデータから推定できるベイズ推定を適用し、過去の故障記録から冷凍機の故障率を求めた。

35000270
低速度重イオン加速用超伝導2芯1/4波長型空洞共振器の開発
株本 裕史; 竹内 末広; 松田 誠; 飯島 明彦*; 吉田 崇広*; 宇佐見 孝弘*; 飛田 哲史*
Proceedings of 3rd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 31st Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.819-821(2006) ; (JAEA-J 01835)
 原子力機構東海タンデム加速器では安定核・短寿命核ビームを発生するJAEA·KEK共同研究施設の建設を進めており、昨年度より運転を開始した。当初はエネルギー1.1MeV/核子で運転を行うが、将来的にはイオンを超伝導ブースターで再加速し約5〜8MeV/核子のビームを得る計画を進めている。イオンを超伝導ブースターで効率よく再加速するためには1.1MeV/核子のビームを2.0MeV/核子まで加速する前段加速器が必要であり、低速度重イオン加速用超伝導空洞共振器の開発を進めている。

35000271
アナログ位相・振幅制御型RF制御装置の位相安定度測定
永井 良治; 沢村 勝; 羽島 良一; 西森 信行; 菊澤 信宏; 飯島 北斗; 西谷 智博; 峰原 英介
Proceedings of 3rd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 31st Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.838-840(2006) ; (JAEA-J 01836)
 原子力機構ではエネルギー回収型リニアック(ERL)をベースとした自由電子レーザー(FEL)や次世代放射光源の開発を行っている。これら実現のためには加速電場の非常に高い安定性が求められており、ローレベルRF制御装置の改良を行ってきた。このローレベルRF制御装置の評価のために、位相安定度の計測を行った。その結果、さまざまな負荷に対して0.01deg-rms程度の安定度を実現できていることがわかった。

35000272
原子力機構AVFサイクロトロンにおけるビーム位相幅制御のための中心領域の開発
宮脇 信正; 奥村 進; 倉島 俊; 柏木 啓次; 吉田 健一; 石堀 郁夫; 百合 庸介; 奈良 孝幸; 上松 敬; 福田 光宏*
Proceedings of 3rd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 31st Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.907-909(2006) ; (JAEA-J 01837)
 原子力機構AVFサイクロトロンでは、ディー電極とインフレクター電極に取り付けられたRFシールドカバーの間で起こる放電現象によるビームの不安定性の問題を解決するため、またマイクロビーム形成に向けたビーム位相幅の制御向上のため、中心領域の改造を行った。インフレクター電極とそのRFシールドカバーを分離することによってビームの安定性は改善された。中心領域での位相スリットを用いたビーム位相幅は、加速ハーモニックモード1(H=1)に対して4.5rf度(FW)、H=2で3.6rf度(FW)とマイクロビーム形成の必要条件を満たすことがわかった。

35000273
原子力機構AVFサイクロトロンビームのエネルギー幅計測
奥村 進; 倉島 俊; 宮脇 信正; 柏木 啓次; 吉田 健一; 石堀 郁夫; 百合 庸介; 奈良 孝幸; 上松 敬
Proceedings of 3rd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 31st Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.919-921(2006) ; (JAEA-J 01838)
 サイクロトロンのビームエネルギー幅計測システムを開発した。原子力機構AVFサイクロトロンでは、4連四重極レンズを用いたビーム集束方式によって、数百MeV級重イオンマイクロビーム形成を目指している。レンズでの色収差の影響を抑制して1μm以下のビーム径及び照準位置精度を達成するためにはビームエネルギー幅を従来の0.1%程度から0.02%へ縮小化する必要がある。そこで、フラットトップ加速などを用いたエネルギー幅縮小化を進めている。このため、ビーム輸送系に設置されている分析電磁石を用いたエネルギー幅計測システムを開発した。本計測システムの性能を、半導体検出器で計測したビームエネルギー値を用いて評価を行った。また、シングルターン引き出しビームとマルチターン引き出しビームのエネルギー幅を計測し、シングルターン引き出しビームではエネルギー幅が半減したことを確認した。

35000274
国際核融合材料照射施設(IFMIF)計画の現状
中村 博雄
プラズマ・核融合学会九州・沖縄・山口支部第10回支部大会研究発表論文集 , p.9-11(2006) ; (JAEA-J 01839)
 国際核融合材料照射施設(IFMIF)は、核融合炉材料開発のための高エネルギー中性子照射施設である。IFMIF計画は、国際エネルギー機関(IEA)のもとで、日,欧,米,露の国際協力で、2000年から2002年に渡り要素技術確証活動を実施した。現在、移行期活動を実施中であり、次段階の工学設計・工学実証活動(EVEDA)フェーズの、平成19年からの開始を目指して、EVEDAが、「幅広いアプローチ」の一部として、日欧間で検討が進められている。IFMIFでは、DEMO炉に使用する第1壁材料の照射挙動と設計データベースの取得が行われるほか、核分裂炉等の照射データとの相関の確立や、商用炉に向けた先進材料の開発の端緒を開く役割を担う。本報告では、IFMIF計画の最近の活動と次段階の工学設計・工学実証活動について述べる。

35000275
「常陽」照射試験に向けた金属燃料製造技術の開発; U-8.5wt%Pu-10wt%Zr合金の射出鋳造
中村 勤也*; 加藤 徹也*; 岩井 孝; 荒井 康夫
電力中央研究所報告(L05011) , 14p.(2006) ; (JAEA-J 01845)
 「常陽」照射試験に向けた金属燃料製造技術確立を目的に、溶融塩電解槽から回収したPu合金を原料として、上端閉じの透明石英菅を鋳型に用いて、射出鋳造法によるU-Pu-Zr合金スラグの製造試験を行った。スラグの組成は、FBR実用化戦略調査研究の中で設計している金属燃料高速炉の内側炉心燃料を想定して決定した。鋳造した三元合金スラグの品質検査結果から、外径,密度,真直性及び化学組成は、照射試験用燃料の目標仕様を満足することを確認した。また、三元合金スラグは全長にわたり金属光沢を示し、鋳肌は滑らかであった。

35000276
ホウレンソウ水溶性画分中のウラン分析
渡部 陽子; 桑原 潤; 山口 紀子*
KEK Proceedings 2006-5 , p.19-22(2006) ; (JAEA-J 01847)
 人間に対する放射性核種による内部被ばくの影響を考える際、体内に取り込まれるまでの一連の経路について明らかにする必要がある。現在、環境での放射性核種の移行や循環挙動等を明らかにするため、大気浮遊塵,土壌、陸水,海水等の放射性核種分析や、それらの化学形態分析に関する研究が盛んに進められている。しかしながら、植物中の放射性核種の化学形態に関する知見はほとんどない。本研究では微量ながらもほとんどの物質に含まれているウランに着目し、植物中ウランの化学形態を明らかにすることを目的として農作物のうち比較的ウランの移行係数が高いホウレンソウを用いて実験を行った。その結果、ホウレンソウ水溶性画分中ウランは20.8-45.1%の割合で100Da以上の高分子量成分に結合していることがわかった。しかし、高濃度のNaClによりウランが高分子量成分から脱離したことから、その結合は弱いと推測した。

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