学会誌等掲載論文
※下記の研究開発成果は資料名順に並んでいます。

2007年3月


35000300
Characterization of thin-foil preformed plasmas for high-intensity laser plasma interactions
匂坂 明人; 大道 博行; Pirozhkov, A.; 小倉 浩一; 織茂 聡; 森 道昭; 西内 満美子; 余語 覚文; 加道 雅孝; 中村 衆*; 岩下 芳久*; 白井 敏之*; 野田 章*; 長友 英夫*
Acta Physica Hungarica B 26(3-4), p.327-333(2006) ; (JAEA-J 01848)
 高強度レーザーと薄膜との相互作用により生成される高エネルギーのX線,イオン,電子は、テーブルトップの放射線源として注目されさまざまな応用が提案されている。ここでレーザーと薄膜との相互作用の物理過程を調べるうえで、レーザーのプリパルスによって生成されるプリプラズマを評価しておく必要がある。本実験では、原子力開発機構設置のチタンサファイアレーザー(JLITE-X)を集光用のポンプ光と計測用のプローブ光に分け、ポンプ光をチタン薄膜ターゲットに照射し、発生するプリプラズマをプローブ光の干渉計測によって測定した。ポンプ光の集光強度は〜2×1017W/cm2であり、プローブ光は、2倍高調波(400nm)を用いて計測を行った。ポンプ光とプローブ光の時間差を調整し、メインパルスの約50ps前でのプリプラズマを測定したところ、レーザー入射側にプリプラズマが生成されていることがわかった。さらにプリプラズマサイズに対するプロトン発生の依存性を調べた結果、プリプラズマを抑制することでプロトンの発生量が大きく変化することがわかった。このような結果は、メインパルスと薄膜との相互作用の解明にとって有用である。

35000301
Development of a two-color interferometer for observing wide range electron density profiles with a femtosecond time resolution
匂坂 明人; Pirozhkov, A.; 大道 博行; 福見 敦*; Li, Z.*; 小倉 浩一; 余語 覚文; 大石 祐嗣*; 名雪 琢弥*; 藤井 隆*; 根本 孝七*; 織茂 聡; 高井 満美子; 林 由紀雄; 森 道昭; 加道 雅孝; 中村 衆*; 野田 章*; Choi, I. W.*; Sung, J. H.*; Ko, D.-K.*; Lee, J.*
Applied Physics B 84(3), p.415-419(2006) ; (JAEA-J 01849)
 高強度レーザーと薄膜との相互作用により生成される高エネルギーのX線,イオン,電子は、テーブルトップの放射線源として注目されさまざまな応用が提案されている。ここでレーザーと薄膜との相互作用の物理過程を調べるうえで、レーザーのプリパルスによって生成されるプリフォームドプラズマを評価しておく必要がある。本研究では、高強度レーザーを金属ターゲットに照射した際のプリフォームドプラズマを測定するため、2波長干渉計の開発を行った。実験は、電力中央研究所設置のチタンサファイアレーザー(中心波長800nm,パルス幅65fs)を集光用のポンプ光と計測用のプローブ光に分け、ポンプ光を銅テープターゲットに照射し、発生するプリフォームドプラズマをプローブ光の干渉計測によって測定した。ポンプ光の集光強度は〜2×1018W/cm2であり、プローブ光は、基本波(800nm)と2倍高調波(400nm)の2波長を用いて計測を行った。二つの波長によって得られた電子密度分布を組合せることにより、これまでの単一波長による計測よりも広い密度領域の計測に成功した。この計測法は、メインパルスと薄膜との相互作用の解明に有用な方法である。

35000302
Tunnel magnetoresistance in Co nanoparticle/Co-C60 compound hybrid system
境 誠司; 薬師寺 啓*; 三谷 誠司*; 高梨 弘毅*; 楢本 洋; Avramov, P.; 鳴海 一雅; Lavrentiev, V.; 前田 佳均
Applied Physics Letters 89(11), p.113118_1-113118_3(2006) ; (JAEA-J 01850)
 本論文では、Co-C60ハイブリッド薄膜におけるスピン依存伝導について初めての結果を報告する。Co-C60ハイブリッド薄膜は超高真空中でCoとC60を交互に蒸着して作成したもので、Co-C60化合物の母相中にCoナノ粒子が分散した状態であることが同定された。Co-C60ハイブリッド薄膜は、印加バイアスに強く依存する特有なトンネル磁気抵抗効果を示し、磁気抵抗は低バイアス下で数10%であったが、高バイアス下では最大で80%に達することを見いだした。この磁気抵抗の大きさは、ナノグラニュラー薄膜の磁気抵抗効果として異常に大きな値である。磁気抵抗のバイアス依存性から、観測されたトンネル磁気抵抗効果はCo-C60化合物の電子構造との関連が推察される。

35000303
Innovative separation method for advanced spent fuel reprocessing based on tertiary pyridine resin
小澤 正基; 小山 真一; 鈴木 達也*; 藤井 靖彦*
Czechoslovak Journal of Physics 56(Suppl.D), p.D579-D587(2006) ; (JAEA-J 01851)
 イオン交換法に基づく多機能再処理プロセスを研究するための分離検討試験を行った。3級ピリジン樹脂を試験に使用し、高速実験炉「常陽」で高燃焼度まで照射したMOX燃料を使用済燃料のリファレンスとして適用した。分離試験の結果、わずか3ステップのイオン交換により、照射済燃料から106Ru+125Sb, 137Cs+155Eu+144Ce, Pu, Am及びCmを分離できた。最終製品として得られたAm中の137Cs及び3価ランタニド核種(155Eu, 144Ce)の除染係数は、それぞれ39,000及び100,000を超えた。また、相互分離した243Cmと241Amについて、243Cmの除染係数は2,200より大きく、Am製品に含まれる137Cs,3価ランタニド核種及び243Cmの純度は2ppm未満であった。これらの結果は、提案した簡素な分離プロセスが分離変換利用概念(先進オリエントサイクル)に基づく将来の高度先進再処理プロセス候補としての実現性を示唆するものである。

35000304
The Azimuthal dependent oxidation process on Cu(110) by energetic oxygen molecules
盛谷 浩右; 岡田 美智雄*; 福山 哲也*; 寺岡 有殿; 吉越 章隆; 笠井 俊夫*
European Physical Journal D 38(1), p.111-115(2006) ; (JAEA-J 01852)
 本研究ではCu(110)表面の酸化の初期過程である酸素解離吸着過程について調べるために、超音速分子線法を用い入射酸素分子の運動エネルギーを制御し、Cu表面の酸化過程の酸素分子並進運動エネルギー依存性を放射光を用いたX線光電子分光(XPS)によりO1sの光電子ピークを追跡し調べた。並進運動エネルギー2.3eVの超熱酸素分子線を表面垂直方向または45°方向から入射しCu(110)表面に酸素を吸着させた。2.3eVの超熱酸素分子ビームを45°の入射角で表面の[100]方向に沿って入射した場合は表面に垂直に入射した場合と反応が進行する速度は変わらない。しかし45°の入射角で表面の[110]方向に沿って入射した場合は反応速度が小さくなることがわかった。これは酸素吸着時にできるp(2×1)-added row構造が障害となり酸素が活性サイトにアクセスするのを妨害しているためと考えられる。

35000305
Diagnostics of relativistic runaway electrons in a tokamak plasma based on laser inverse Compton scattering
河野 康則; 近藤 貴; 波多江 仰紀
Europhysics Conference Abstracts (CD-ROM) 30I, 4p.(2006) ; (JAEA-J 01853)
 トカマクプラズマのディスラプション時に発生する高エネルギーの逃走電子は、その衝突によりトカマク構成機器に損傷を与える恐れがあることから、逃走電子の制御を的確に行うことが重要な課題となっている。そのためには、逃走電子の挙動の理解を深めることが必要であり、この目的で、われわれは、レーザ逆コンプトン散乱に基づく能動的な逃走電子計測法に関する研究を進めている。この計測法により、特に逃走電子のエネルギー分布に関する詳細な情報を得られるものと考えている。本講演では、エネルギー分布が異なる逃走電子を対象にした場合の、レーザ逆コンプトン散乱光子のスペクトルの変化について議論を行う。また、逃走電子と密接に関連する光放射(制動放射,シンクロトロン放射、及び逆コンプトン散乱)について議論を行う。これらの光放射は、レーザ逆コンプトン散乱計測における背景光となる一方、逃走電子の情報を含み有用であることから、そのスペクトル,強度,計測における課題に関して検討を行う。

35000306
Stabilization effects of wall and plasma rotation on resistive wall mode in JT-60U
松永 剛; 武智 学; 栗田 源一; 坂本 宜照; 小出 芳彦; 諌山 明彦; 鈴木 隆博; 藤田 隆明; 相羽 信行; 小関 隆久; 鎌田 裕; JT-60チーム
Europhysics Conference Abstracts (CD-ROM) 30I, 4p.(2006) ; (JAEA-J 01854)
 抵抗性壁モード(RWM)は自由境界β限界値を超えた領域で発生し到達β値を制限するため、このモードの安定化は高β定常維持に向けて重要なテーマである。このモードの安定化にはプラズマと壁との距離又はプラズマ回転が重要であることが予想されている。JT-60Uにおいて導体壁の安定化効果を調べるために電流駆動RWMに対する壁距離スキャンを行い、壁をプラズマに近づけるとRWMの成長率が小さくなることを確認した。またプラズマ回転による安定化効果を調べるために、β値を一定に制御しプラズマ回転のみを接線入射NBの組合せで変化させた実験を行い、q=2の有理面の回転が減速するとn=1のRWMが発生しプラズマ崩壊に到ることを観測した。これらの実験結果は、壁距離又はプラズマ回転がRWMの安定化に有効であることを示唆している。本会議ではこれらの実験の詳細な結果について発表する。

35000307
Fast data acquisition system based on digital oscilloscopes for fluctuation measurements in a long pulse JT-60U tokamak plasma
松永 剛; 武智 学; 東井 和夫*
Fusion Engineering and Design 82(2), p.207-213(2007) ; (JAEA-J 01855)
 これまでのトカマク実験装置におけるデータ収集系では、高速(1MHzサンプリング)かつ長時間(約1分)の両立は機器性能の制限により困難であった。そこで、大容量収集メモリを搭載したディジタルオシロスコープをベースにした高速大容量データ収集系をJT-60Uにおける揺動計測のために開発した。本システムは、計測機器近くに配置した複数のディジタルオシロスコープをEthernetネットワークにて結び、制御用PCと大容量ストレージによって放電シーケンスに同期してデータ収集を行うものである。現在96チャンネルが使用可能であり、磁気揺動計測,BES(Beam Emission Spectroscopy)や光学測定に適用され、10GB/shotのデータを処理している。1分近い放電においても全時間で高速計測が可能になり、閉じ込めを左右する不安定性の発生・成長又は減衰過程が観測可能になった。

35000308
Electrical and structural properties of YHx(x 〜3) under high pressure
松岡 岳洋*; 北山 貴靖*; 清水 克哉*; 中本 有紀*; 加賀山 朋子*; 青木 勝敏; 大石 泰生*; 竹村 謙一*
High Pressure Research 26(4), p.391-394(2006) ; (JAEA-J 01856)
 イットリウム水素化物YHxの電気的,構造的性質を電気抵抗,X線回折によって86GPaまで観測した。電気抵抗は10GPaまで増加し、そこでhcp-fcc構造転移を反映して極大値をとる。fcc相では電気抵抗は加圧によって著しく減少するが依然として金属イットリウムよりも4桁大きい。23GPaでの絶縁体から金属への転移は確認できなかった。40〜60GPaで電気抵抗はfcc構造を保ったまま再度極大を示すことが観測された。

35000309
Ratio of transverse diffusion coefficient to mobility of electrons in high-pressure xenon and xenon doped with hydrogen
小林 進悟*; 長谷部 信行*; 細島 岳大*; 石崎 健士*; 岩松 和弘*; 三村 光輝*; 宮地 孝*; 宮島 光弘*; Pushkin, K.*; 手塚 千幹*; 道家 忠義*; 小林 正規*; 柴村 英道*; 石塚 晃弘
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 45(10A), p.7894-7900(2006) ; (JAEA-J 01858)
 高圧のキセノンとキセノン水素混合ガス中での電子の特性エネルギーの測定を行い、その値を初めて取得した。測定結果から、特性エネルギーの非線形成分の密度効果は、1MPaまでは15%以下であることを断定できる。また、高圧キセノン中に水素を混合することで電子の特性エネルギーを減少させることができることがわかり、このことを利用すれば、キセノンガスを用いた放射線撮像装置の解像度劣化要因である電子の拡散を抑えることができる。

35000310
Generation of broadband mid-infrared pulses by noncollinear difference frequency mixing
杉田 明宏; 横山 啓一; 山田 秀尚; 井上 典洋*; 青山 誠; 山川 考一
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 46(1), p.226-228(2007) ; (JAEA-J 01859)
 非同軸差周波混合(DFM)による広帯域中赤外光(MIR)レーザーパルスの発生について報告した。AgGaS2結晶による非同軸位相整合を用いてチタンサファイアレーザーからの2つの波長の異なるフェムト秒レーザーパルスを混合させた。この結果、発生させたMIRパルスの相対帯域は中心波長の23%であることを観測し、これまでのほかの報告に比べ最も広い帯域であった。また、この方法においてタイプ2結晶を用いるより、タイプ1結晶を用いた方が位相整合条件範囲が広いことを見いだした。

35000311
Structural studies of phase transitions in crystalline and liquid Halides (ZnCl2, AlCl3) under pressure
Brazhkin, V. V.*; 片山 芳則; Lyapin, A. G.*; Popova, S. V.*; 稲村 泰弘*; 齋藤 寛之; 内海 渉
JETP Letters 82(11), p.713-718(2005) ; (JAEA-J 01860)
 ZnCl2とAlCl3ハライドの相図と対応する融体の近距離秩序を6.5GPaまでの圧力でエネルギー分散型X線回折法によって調べた結果を報告する。ZnCl2結晶が圧縮されると、γ相(HgI2構造)からδ相(不規則CdI2構造,WTe2型)への転移が起きる。ZnCl2とAlCl3の液体状態の構造研究は 両者の4面体ネットワークの中距離相関が1.8GPa(ZnCl2)及び2.3GPa(AlCl3)までの圧力増加で急激に減少することを示している。さらなる圧縮によって、両者の融体で短距離秩序の構造の変化と配位数の増加を伴った転移が起きる。AlCl3の転移は4GPaで急激に起きるのに対し、ZnCl3の転移は2-4GPaの圧力範囲で3GPaを中心に次第に起きる。よってAlCl3とZnCl2化合物もまた、2つの現象、すなわち中距離秩序の緩慢な消失とより鋭い液体−液体配位数転移の両者が起きる例となることが示された。

35000312
Synthesis and characterization of oriented graphitelike B-C-N hybrid
Uddin, M. N.*; 下山 巖; 馬場 祐治; 関口 哲弘; Nath, K. G. *; 永野 正光*
Journal of Applied Physics 99(8), p.084902_1-084902_5(2006) ; (JAEA-J 01861)
 六方晶グラファイトと同様の構造を持つホウ素−炭素−窒素系ハイブリッド薄膜の作成条件の検討と構造解析を行った。試料は、配向性グラファイト表面にベンゼン状の有機分子であるボラジン(B3N3H6)イオンプラズマを注入することにより作成した。表面の構造は、X線光電子分光法(XPS)及び直線偏光した放射光を用いたX線吸収微細構造法(NEXAFS)によりその場観察した。XPS測定の結果、作成したB-C-N薄膜中のホウ素原子は、B-C, B-N, B-C-Nなどさまざまな結合状態をとることがわかった。ホウ素K-吸収端のNEXAFSスペクトルには、B 1s軌道から価電子帯のσ*軌道及びπ*軌道への共鳴吸収ピークが明瞭に認められた。このことは、ホウ素原子が、となりの原子とsp2結合を形成することを示唆している。800℃において作成したB-C-N薄膜のホウ素K-吸収端のNEXAFSスペクトルにおけるB 1s→π*共鳴吸収ピークは、グラファイトのC 1s→π*共鳴吸収ピークと同様の偏光依存性を示した。この結果から、六方晶グラファイトと同様の配向性を持つB-C-Nハイブリッド薄膜が安定に存在することを明らかにした。

35000313
Real-time X-ray observation of solidification from undercooled Si melt
長汐 晃輔*; 安達 正芳*; 樋口 健介*; 水野 章敏*; 渡辺 匡人*; 栗林 一彦*; 片山 芳則
Journal of Applied Physics 100(3), p.033524_1-033524_6(2006) ; (JAEA-J 01862)
 微細化した組織は、しばしば金属や半導体の過冷却融液からの凝固に伴い外部の力なしに自発的に得られる。この微細化は主としてデンドライトの断片化によるものであると報告されているが、それは凝固後の組織の分析による推測であるため、デンドライトの断片化の動的なプロセスはよくわかっていない。ここに、われわれはシリコンの過冷却融体からの凝固の時間分解2次元X線回折実験について報告する。低い過冷却度(Δ T<100K)では、回折スポットの数はプラトー状態で増加しないのに対し、中程度の過冷却度(100K<Δ T<200K)では、回折パターンは裾のあるスポットから時間とともにリング状に変化した。リカレッセンス後の融点では、核生成は起きないと考えられるため、本実験と高速度ビデオ観察の結果はデンドライトの高次の枝が主幹からほぼ分離することを示唆する。低い過冷却度では複数のスポットが観察されたが、高い過冷却度(Δ T>200K)ではそれとは全く異なり、リングが観測される。これは、デンドライトの高次の枝とともに主幹も完全に断片化していることを示している。この完全な断片化のため微細化した組織ができる。

35000314
Plasma generation using high-power millimeter-wave beam and its application for thrust generation
小田 靖久*; 小紫 公也*; 高橋 幸司; 春日井 敦; 坂本 慶司
Journal of Applied Physics 100(11), p.113307_1-113307_4(2006) ; (JAEA-J 01863)
 核融合プラズマ加熱用に開発した170GHz大電力ジャイロトロンを用いた推進力生成実験において、170GHzマイクロ波のパワー密度が75kW/cm2以上であると生成した大気プラズマの伝搬速度が音速程度になることが観測された。また、円錐型推進器モデルにおいて、プラズマ伝搬速度が音速程度のときに、推進器の性能指標である運動量結合係数、Cm値が350N/MWを超えることが判明した。

35000315
Tunneling chemical reactions D+H2→DH+H and D+DH→D2+H in solid D2-H2 and HD-H2 mixtures; An Electron-spin-resonance study
熊田 高之
Journal of Chemical Physics 124(9), p.094504_1-094504_9(2006) ; (JAEA-J 01864)
 古典的な熱活性型反応と異なり、量子力学的トンネリングによって反応障壁をくぐり抜けるトンネル反応には、非常に大きな同位体効果があることが指摘されてきた。しかしながら、その効果があまりに大きく、それを実験的に定量的評価をされることはほとんどなかった。発表者は固体水素中に添加したDI分子の紫外線解離により、従来の方法より100倍短い時間のうちに大量のD原子を発生されることに成功し、その手法を用いてトンネル反応D+H2→DH+H(1)及びD+DH→D2+H(2)の研究を行った。実験の結果、固体水素中において隣り合うD原子-H2分子間の反応(1)の速度定数は4Kにおいて1×10-2 s-1,D原子-HD分子間の反応(2)のは8×10-6と求まった。これらの値はTruhlerら及び高柳らによる理論計算値と約1桁の精度で一致する。

35000316
Selection of the alkylamino group introduced into the polymer chain grafted onto a porous membrane for the impregnation of an acidic extractant
土門 さや香*; 浅井 志保; 斎藤 恭一*; 渡部 和男; 須郷 高信*
Journal of Membrane Science 262(1-2), p.153-158(2005) ; (JAEA-J 01865)
 無機イオンの定量には、前処理として化学分離が必要である。本研究では、化学分離の迅速化を目的とし、多孔性中空糸膜にアルキルアミノ基を導入した疎水性グラフト高分子鎖を付与し、疎水性相互作用によって酸性の抽出試薬HDEHPを担持した。グラフト重合に使用するアルコール溶媒及び疎水性基として導入するアルキルアミンの炭素数を選択し、高透水性かつ高吸着容量を実現できる作製方法を確立した。グラフト重合溶媒として、メタノールを用いた場合は最も高い透過流束が得られた。グラフト鎖へ導入するアルキルアミンは、C12及びC18の場合、抽出試薬担持量が多く、しかも漏出しないことがわかった。それぞれの膜にイットリウム溶液を透過すると、膜に担持したHDEHP中のイットリウム吸着に寄与したHDEHPの割合は、C12膜が1.0、C18膜は0.8となり、C12膜の場合、担持したHDEHPすべてがイットリウム吸着に寄与していることがわかった。したがって、担持されたHDEHPは金属イオンの選択性を損なうことなく安定にアルキルアミノ基へ担持されていることを実証できた。

35000317
Preparation of ETFE-based fuel cell membranes using UV-induced photografting and electron beam-induced crosslinking techniques
Chen, J.; 浅野 雅春; 前川 康成; 坂村 高洋*; 久保田 仁*; 吉田 勝
Journal of Membrane Science 283(1-2), p.373-379(2006) ; (JAEA-J 01866)
 UV照射によるスチレングラフトプロセス及び電子線によるグラフト膜架橋導入を併用して新規な燃料電池用電解質膜の合成法を開発した。グラフトプロセスでは、ガス相及び液相でのスチレンのグラフト化を検討した。スチレンをグラフトしたETFE膜を電子線照射することで、架橋構造導入による耐久性向上が実現できた。本論文の特徴は、(1)UVグラフト法によるスチレンのETFE膜全体へのグラフト化,(2)合成した電解質膜の高プロトン導電性,(3)ガス相グラフト法より液相グラフト法で合成した電解質膜の高導電性,(4)これらの電解質膜の異方性プロトン導電性,(5)電子線架橋による耐久性向上と電解質膜表面への高濃度導電基の確保である。

35000318
A Continuous flow system for in-situ XANES measurements of change in oxidation state of Ce(III) to Ce(IV)
大貫 敏彦; 吉田 崇宏*; 南川 卓也; 尾崎 卓郎; 香西 直文; 坂本 文徳; 鈴木 義規*; Francis, A. J.*
Journal of Nuclear and Radiochemical Sciences 6(1), p.65-67(2005) ; (JAEA-J 01867)
 元素の酸化数の変化を測定するため、連続流入方式を採用したXANESその場測定システムを確立した。Ce(III)溶液のDFO溶液との混合によるCe(IV)への酸化過程をシステムにより測定した結果、XANESスペクトルにおいて接触時間の経過とともにCe(IV)のピーク強度の増加を確認できた。測定時間を増した際の酸化状態の安定性及びスペクトルの変動について検討した。

35000319
Associations of Eu(III) with Gram-Negative Bacteria, Alcaligenes faecalis, Shewanella putrefaciens, and Paracoccus denitrificans
尾崎 卓郎; 木村 貴海; 大貫 敏彦; Francis, A. J.*
Journal of Nuclear and Radiochemical Sciences 6(1), p.73-76(2005) ; (JAEA-J 01868)
 グラム陰性菌であるアルカリジェネス,シュワネラ,パラコッカス菌へとEu(III)との相互作用をバッチの吸着試験とレーザー分光法による化学種の同定を組合せて検討した。その結果、それぞれの菌へのEu(III)の吸着は速やかに進み、5分後には最大となった。その後、吸着濃度の減少が観測されたことから、溢泌物排出により吸着したEu(III)の脱離が起こったと推察した。さらに、レーザー分光結果から、吸着したEu(III)の配位環境は微生物により異なることを明らかにした。

35000320
Measurement of effective capture cross section of americium-243 for thermal neutrons
太田 雅之; 中村 詔司; 原田 秀郎; 藤井 俊行*; 山名 元*
Journal of Nuclear Science and Technology 43(12), p.1441-1445(2006) ; (JAEA-J 01869)
 243Am(n,γ)244Am反応の実効熱中性子捕獲断面積を、放射化法により測定した。照射後十分な冷却期間をとり、照射によって生じた244mAm及び244gAmを十分に244Cmへ崩壊させた。243Amと244Cmからのα線を計測し、244Cm/243Am比から反応率を求めた。実効熱中性子捕獲断面積の結果として174.0±5.3bを得た。

35000321
In-situ measurement of UO22+ concentration in molten NaCl-2CsCl by differential pulse voltammetry
永井 崇之; 上原 章寛*; 藤井 俊行*; 白井 理*; 山名 元*
Journal of Nuclear Science and Technology 43(12), p.1511-1516(2006) ; (JAEA-J 01870)
 酸化物電解法プロセスにおけるUO22+濃度のその場測定法として、ディファレンシャル・パルス・ボルタンメトリー(DPV)技術の適用性を確認するため、溶融NaCl-2CsCl中におけるUO2Cl2のDPV測定について研究を行った。923Kの溶融NaCl-2CsCl中において、適切な条件(電位掃引速度-0.1V/s,パルス周期0.1s,パルス幅10ms,パルス電圧50mV)で、UO22+のDPV測定を行った結果、-0.9V vs. Cl2/Cl-に、UO22+からUO2+への還元反応に起因する電流ピークが認められた。この電流ピークの高さとUO22+濃度の関係は、0.06mol/l以下の濃度範囲では良い比例関係を示し、0.4mol/l以下のUO22+濃度測定にDPVが適用できることを確認した。次に、核分裂生成物元素が共存した条件でのUO22+濃度測定への影響を確認するため、PdCl2,NdCl3,SmCl3,CeCl3を含む溶融NaCl-2CsCl中において、UO22+濃度のDPV測定を行い、同様に濃度測定できることが認められた。さらにPdを除去する前、Pd2+からPdへの還元による電流ピークが-0.7V vs. Cl2/Cl-に認められ、UO22+からUO2+への還元による-0.9V vs. Cl2/Cl-の電流と区別できることがわかった。これらの結果、酸化物電解法プロセスにおけるUO22+濃度のその場モニター技術に、DPV測定の適用を提案する。

35000322
Uncertainty analyses of neutron cross sections for Nitrogen-15, Lead-206,207,208, Bismuth-209, Plutonium-238, Americium-242m, and Curium-244 in JENDL-3.3
柴田 恵一; 中川 庸雄
Journal of Nuclear Science and Technology 44(1), p.1-9(2007) ; (JAEA-J 01871)
 JENDL-3.3に収納されている15N, 206,207,208Pb, 209Bi, 238Pu, 242mAm, 244Cm中性子断面積の共分散を核変換技術開発に用いられる加速器駆動未臨界炉の設計研究のために評価した。共分散はJENDL-3.3断面積データがもとにしている実験データ及び理論計算から求められた。共分散が導出された物理量は15N弾性散乱断面積,206,207,208Pb及び209Bi非弾性散乱断面積,238Pu, 242mAm, 244Cm中性子捕獲及び核分裂断面積である。238Pu, 242mAm, 244Cmに関しては、分離共鳴パラメータの誤差も推定した。評価結果はENDF-6フォーマットで編集され、JENDL-3.3データに組み込んだ。

35000323
Calculation of neutron nuclear data on calcium isotopes for JENDL-4
柴田 恵一
Journal of Nuclear Science and Technology 44(1), p.10-20(2007) ; (JAEA-J 01872)
 評価済核データライブラリーJENDL-4のために40, 42, 43, 44, 46, 48Ca中性子核データの理論計算を実施した。計算した物理量は全断面積,弾性・非弾性散乱断面積,(n,p), (n,α), (n,γ), (n,2n), (n,3n), (n,np), (n,nα)反応断面積,放出中性子角度分布及び放出粒子・γ線のエネルギー分布である。これらの物理量は統計模型により計算された。複合核過程に加えて、前平衡過程及び直接反応過程も考慮した。今回の計算結果は既存の実験値をよく再現しており、JENDL-3.3の評価値よりも優るものであった。特に、計算結果は測定されたγ線生成データとよく一致している。

35000324
Thermal neutron capture cross sections of Zirconium-91 and Zirconium-93 by prompt γ-ray spectroscopy
中村 詔司; 原田 秀郎; Raman, S.*; Koehler, P. E.*
Journal of Nuclear Science and Technology 44(1), p.21-28(2007) ; (JAEA-J 01873)
 93Zr(n,γ)94Zr反応で放出される即発γ線を測定し、熱中性子捕獲断面積の下限値を、0.63±0.02bと求めた。今回得られた値は、評価値よりずっと小さいという結果になった。本測定では、さらに、91Zrの熱中性子捕獲断面積の下限値を求め、1.30±0.04bを得た。得られた結果は、評価値と誤差の範囲で一致した。

35000325
Retrospective estimation of the spatial dose distribution and the number of fissions in criticality accident using area dosimeters
曽野 浩樹; 大野 秋男; 小嶋 拓治; 山根 義宏*
Journal of Nuclear Science and Technology 44(1), p.43-53(2007) ; (JAEA-J 01874)
 臨界事故時における空間線量分布及び核分裂数を遡及的に推定する手法を提案する。この手法は、低フェーデング・人体組織等価という特長を有するアラニン線量計とホウ酸リチウム線量計の2つをエリア線量計として用いるもので、(1)エリア線量計による線量計測,(2)線源中心の探査,(3)空間線量分布の推定、及び(4)核分裂数の推定の4つの手順から成る。本手法をTRACY施設で模擬した臨界事故状況下に適用し、その実用性を実証した。本手法は、原理上、事後調査となるものの、エリア線量計を早期に回収することができれば、緊急被ばく医療や事後対策の方針決定に有用な事故規模や危険度に関する情報を提供することも可能である。

35000326
Gap width effect on critical power based on tight-lattice 37-rod bundle experiments
玉井 秀定; 呉田 昌俊; Liu, W.; 佐藤 隆; 大貫 晃; 秋本 肇
Journal of Nuclear Science and Technology 44(1), p.54-63(2007) ; (JAEA-J 01875)
 水対燃料の体積比を0.2程度以下にすることにより高増殖比及び超高燃焼度の特徴を有する超高燃焼水冷却増殖炉の技術的及び工学的成立性の確立を目指した要素技術開発として、稠密格子炉心熱特性試験を実施している。本論文では、燃料棒間ギャップ幅の異なる二つの37本バンドル試験体(ギャップ幅1.0, 1.3mm)を用いて、除熱限界に対する燃料棒間ギャップ幅の効果を調べた。水冷却増殖炉の定格運転条件を内包する広い試験条件(圧力・流量・局所出力係数等)範囲における定常時限界出力試験を実施した結果、限界出力に対する基本的な特性は二つの試験体間で同様であった。また、質量速度に対する限界クオリティ特性を比較した結果、低質量速度の場合はギャップ幅1.0mmの試験体での限界クオリティが約10パーセント低くなる傾向があったが、高質量速度の場合はほぼ同じ限界クオリティであり除熱特性に明確な差異は見られなかった。

35000327
Structure of exotic nuclei in the sd-pf shell region and its relation to the effective interaction
宇都野 穣; 大塚 孝治*; 水崎 高浩*; 本間 道雄*
Journal of Physics; Conference Series 49, p.126-131(2006) ; (JAEA-J 01876)
 近年、不安定核構造・反応に関する実験に著しい進展が見られ、安定核と異なった特質が明らかになってきた。その特質のうち、安定核で見られた魔法数が不安定核で消滅したり、逆に不安定核のみに魔法数が出現する現象は、おもに核力のスピン・アイソスピン依存性に起因するものであると考えられてきている。著者らはこれまで中性子数20近傍の魔法数にかかわる研究を殻模型を用いて行ってきたが、これらの研究から最近、テンソル力が魔法数の生成・消滅に大きく関与していることがわかってきた。この招待講演では、殻構造が不安定核において大きく変化するという現象論、それを説明するために重要なモノポール相互作用のスピン・アイソスピン依存性をまとめる。さらに、そこから導かれる、今後未知の核図表領域へ進むために必要な殻模型相互作用構築の一般論について、特にテンソル力の重要性に焦点を当てて議論し、sd-pf殻領域全体に通用する相互作用作成の処方を提案する。

35000328
Characterization of preformed plasmas using a multi-dimensional hydrodynamic simulation code in the study of high-intensity laser-plasma interactions
匂坂 明人; 内海 隆行*; 大道 博行; 小倉 浩一; 織茂 聡; 高井 満美子; 林 由紀雄; 森 道昭; 余語 覚文; 加道 雅孝; 福見 敦*; Li, Z.*; 中村 衆; 野田 章*; 大石 祐嗣*; 名雪 琢弥*; 藤井 隆*; 根本 孝七*; Bulanov, S. V.; Esirkepov, T. Z.; Pirozhkov, A.; 若林 大輔*; 守田 利昌*; 山極 満
Journal of Plasma Physics 72(6), p.1281-1284(2006) ; (JAEA-J 01877)
 高強度レーザーと物質との相互作用により、高エネルギー粒子(イオン,電子)やX線が生成される。ここで発生した高エネルギー粒子等は、さまざまな応用が提案されテーブルトップの放射線源として注目されている。このような高強度レーザーと物質との相互作用の物理過程を調べるうえで、レーザーのプリパルスによって生成されるプリプラズマを評価しておく必要がある。本研究では、高強度レーザーを金属ターゲットに照射した時のプラズマ密度プロファイルを干渉計測により測定し、測定結果を多次元流体シミュレーションコードによる計算と比較した。実験は、チタンサファイアレーザー(中心波長800nm,パルス幅50fs)を集光用のポンプ光と計測用のプローブ光に分け、ポンプ光をアルミターゲットに照射し、発生するプリプラズマをプローブ光の干渉計測によって測定した。ポンプ光の集光強度は〜5×1016W/cm2であり、干渉縞はバイプリズムを用いてレーザービームの波面を傾けることによって生成した。ポンプ光とプローブ光の時間差を調整することにより、メインパルスの約10ps前からプリプラズマの測定を行った。測定結果を多次元流体シミュレーションコードによる計算と比較し、プリパルスとの関連性を調べた。

35000329
Distinct modes of cell death by ionizing radiation observed in two lines of feline T-lymphocytes
柿崎 竹彦; 浜田 信行*; 和田 成一*; 舟山 知夫; 坂下 哲哉; 宝達 勉*; 佐野 忠士*; 夏堀 雅宏*; 小林 泰彦; 伊藤 伸彦*
Journal of Radiation Research 47(3-4), p.237-243(2006) ; (JAEA-J 01878)
 哺乳動物由来の浮遊系細胞であるFeT-J及びFL-4という2種のネコTリンパ球株のin vitroにおける60Coγ線に対する放射線感受性及び放射線応答を解析した。コロニー形成能を指標にγ線に対する感受性を調べたところ、2種の細胞間で生存率に有意差はなく、平均致死線量(D0)は両細胞とも1.9Gyであり、2Gyを照射したときの生存率はFeT-J株で0.30、FL-4株で0.48であった。しかし、γ線を15Gy照射して4日後のアポトーシス誘発率をTUNEL法により求めたところ、FeT-Jでは40%以上を示したのに比べ、FL-4では10%以下とアポトーシス誘発の有意な抑制が見られた。一方、同じく15Gy照射後4日目の照射細胞を顕微鏡観察したところ、分裂期細胞死に至った細胞の割合がFeT-Jは16.0%であったのに比べ、FL-4では60.3%と有意に上昇した。すなわち、FeT-Jではおもにアポトーシス、FL-4ではおもに分裂期細胞死ひいてはネクローシスにより、γ線による細胞死がもたらされることが明らかになった。FL-4でアポトーシスと異なる細胞死に至る過程が示されたことから、ネコTリンパ球において分裂期細胞死とアポトーシスとを支配し、細胞死を調節する因子が存在していることが示された。

35000330
Progress of neutral beam injection system on JT-60U for long pulse operation
池田 佳隆; 粒子ビーム加熱システム開発グループ; トカマク国内重点化装置設計チーム
Journal of the Korean Physical Society 49, p.S43-S47(2006) ; (JAEA-J 01879)
 JT-60Uでは2種類のNBI装置があり、1つは正イオンを用いて80-85keVのビームエネルギーの粒子入射を行うP-NBI、もう1つは負イオンを用いて350keV以上のビームエネルギーの粒子入射を行うN-NBIである。最近、長パルスのプラズマ研究のため、NBI装置のパルス幅を30秒にすることが求められた。4つの接線入射P-NBIユニットは85keV, 2MWで30秒化改造を行った。残りの7つの垂直入射P-NBIユニットは10秒入射を繋ぐことで30秒入射を実現した。N-NBIに関しては、イオン源電極の熱負荷を軽減する改造を行い、350keV, 約1MWで25秒の入射を達成した。さらに次段階として、超電導コイルを導入するJT-60Uの改造(NCTと呼ぶ)では、NBI装置の100秒化が計画されている。本論文では、最近のJT-60UにおけるNBI装置の進展とNCTに向けたNBI改造設計について報告する。

35000331
Possible unconventional superconductivity and magnetism in CePt3Si probed by muon spin rotation and relaxation
髭本 亘; 芳賀 芳範; 松田 達磨; 大貫 惇睦; 大石 一城; 伊藤 孝; 幸田 章宏*; Saha, S. R.*; 門野 良典*
Journal of the Physical Society of Japan 75(12), p.124713_1-124713_5(2006) ; (JAEA-J 01880)
 重い電子系超伝導体CePt3Siは、空間反転対称性の破れた構造を有し、その超伝導がどのような状態にあるかは大きな興味が持たれている。われわれはμSR法を用いてこの物質の超伝導状態と磁性の研究を行った。その結果、超伝導状態におけるナイトシフトに温度依存性が見られないことが明らかになった。この結果は超伝導電子対の状態を考察するうえで大きな情報となる。また他の試料で見られていたものと同様な磁気的状態にあることがわかった。このことは、磁性には試料依存性がほとんどないことを示唆するものと考えられる。

35000332
Finite-temperature phase transitions in quasi-one-dimensional molecular conductors
妹尾 仁嗣; 求 幸年*; 加藤 岳生*
Journal of the Physical Society of Japan 76(1), p.013707_1-013707_4(2007) ; (JAEA-J 01881)
 1/4充填の擬一次元分子性導体の相転移を、鎖間クーロン斥力によって結合し電子格子相互作用を考慮した拡張ハバード鎖を用いて理論的に研究する。鎖間項を平均場近似によって扱い、有効一次元モデルに対して数値的量子転送行列法を適用する。電荷秩序,ダイマーモット転移(格子二量体化)、及びスピンパイエルス転移(格子四量体化)の有限温度における性質を調べた。またあるパラメータ領域において、本質的な二量体化が不在でも、誘電性を有する電荷秩序と格子二量体化が共存する領域が見つかった。

35000333
Magnetic and electrical properties in CePtSi3 without inversion symmetry in the crystal structure
河井 友也*; 奥田 悠介*; 宍戸 寛明*; Thamizhavel, A.*; 松田 達磨; 芳賀 芳範; 中島 美帆*; 竹内 徹也*; 辺土 正人*; 上床 美也*; 摂待 力生*; 大貫 惇睦*
Journal of the Physical Society of Japan 76(1), p.014710_1-014710_6(2007) ; (JAEA-J 01882)
 反転中心を持たない化合物CePtSi3の単結晶育成に成功した。二つの反強磁性転移を4.8及び2.4Kにおいて見いだした。秩序モーメントはCeあたり1.15μBであり、[100]方向を容易軸方向とする。同じ構造で圧力超伝導を示すCeIrSi3と比較すると、磁気異方性は似ているが、CePtSi3はより強い磁性を示す。

35000334
Killing of feline T-lymphocytes by γ-rays and energetic carbon ions
柿崎 竹彦; 浜田 信行*; 舟山 知夫; 坂下 哲哉; 和田 成一*; 宝達 勉*; 夏堀 雅宏*; 佐野 忠士*; 小林 泰彦; 伊藤 伸彦*
Journal of Veterinary Medical Science 68(12), p.1269-1273(2006) ; (JAEA-J 01883)
 線エネルギー付与(LET)の高い重粒子線は、生物学的効果比(RBE)が大きく、さらに線量分布に優れていることから、ヒトの放射線治療に臨床応用がなされている。しかしネコに対しては臨床応用されておらず、放射線生物学的な基礎データも報告されていない。本研究ではネコ由来Tリンパ球(FeT-J)における低LETのγ線(0.2keV/μm)と高LETの炭素線(114keV/μm)を照射したときの生物効果を比較検討した。クローン原性試験の結果、10%生存線量(D10)における炭素線のRBEはγ線と比較して2.98であり、また不活性化断面積はγ線で0.023μm2、炭素線で38.9μm2であることがわかった。TdT-mediated dUTP-biotin nick end labeling(TUNEL)法を用いてアポトーシス発現を測定したところ、TUNEL陽性率は同一吸収線量の照射では炭素線はγ線よりも高値を示したが、それぞれのD10線量の照射では炭素線とγ線の結果に有意な差は認められなかった。以上の結果から、炭素線はγ線と比べ同じ物理的線量を照射した場合の細胞致死効果は高く、また生物学的線量が等しいときの細胞応答に違いはないことが示され、よって炭素線治療はネコに対しても有用性が高いことが示された。

35000335
Analysis of the Chernobyl accident from 1:19:00 to the first power excursion
望月 弘保
Nuclear Engineering and Design 237(3), p.300-307(2007) ; (JAEA-J 01884)
 多くの研究者は、チェルノブイリ事故の根本原因がまだ明らかになっていないと報告している。多くの研究者は、詳細な熱流動の解析を行わないで事故を検討しているため、核計算と結合した熱水力計算をチェルノブイリ4号炉で記録されたデータに基づいて行った。1時19分から最初の核暴走が起こるまでのプラント諸量がトレースできた。1βより若干小さな量のポジティブスクラム現象が直接の原因である可能性が高く、この現象は原子炉の出力を暴走させるための引き金になった。

35000336
InSb cryogenic radiation detectors
神野 郁夫*; 菱木 繁臣*; 杉浦 修*; Xiang, R.*; 中村 龍也; 片桐 政樹
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 568(1), p.416-420(2006) ; (JAEA-J 01885)
 開発研究を進めているInSb半導体を用いた放射線検出器について、α線,γ線及び中性子に対する検出特性とInSbの基本特性についての研究状況を報告した。ショットキーバリア型InSb検出器について4.2Kから40Kまで温度を変化させて、5.5MeVのα線のエネルギースペクトルを測定した結果、40Kでもピークとして検出可能であることが確認できた。PN接合型InSb検出器を用いて、γ線検出を試みた結果、ピークにはならないが60keVのγ線を検出できることを確認した。以上の研究結果をベースに今後InSb半導体放射線検出器の特性改善を進める。

35000337
A Compact loop-type fast reactor without refueling for a remote area power source
近澤 佳隆; 岡野 靖; 此村 守; 澤 直樹*; 島川 佳郎*; 田中 俊彦*
Nuclear Technology 157(2), p.120-131(2007) ; (JAEA-J 01886)
 実用化戦略調査研究の一環として、小型炉の多様な特徴を生かした金属燃料ナトリウム冷却炉概念の検討を行った。平成16年度は小型炉の魅力を整理し高価な燃料輸送費のため発電単価が高い僻地用小型電源として電気出力5万kWe,運転サイクル30年の長寿命炉心採用型概念を検討した。原子炉型式はループ型を採用し、運転サイクル30年である特徴を利用したノズル方式の原子炉容器と冷却系1ループ化を採用することにより、大幅にNSSS物量削減が可能であり、僻地電源として魅力ある概念と成り得ることが示された。

35000338
Time-resolved small-angle neutron scattering study on soap-free emulsion polymerization
元川 竜平; 小泉 智; 橋本 竹治; 中平 隆幸*; 安中 雅彦*
Physica B; Condensed Matter 385-386(1), p.780-782(2006) ; (JAEA-J 01887)
 ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPA)とポリエチレングリコール(PEG)から構成されるPNIPA-PEGジブロック共重合体(NE)は、ソープフリー乳化重合により合成可能である。本重合過程では、合成されるNEが水溶媒中で相分離を起こすため、PNIPAをコア、PEGをコロナとするミセル構造を自発的に形成することを、われわれは既に報告している。今回の発表では、このミセル構造の特性とラジカル重合反応の持続性との関係を明らかにするために、原研JRR-3の中性子小角散乱装置(SANS-J, PNO)を用いて、ナノメートルからマイクロメートルに渡る広い空間スケールを観察し、ミセル重合場のサイズ,空間分布等を詳細に決定した。その結果、このジブロック共重合体(NE)の下限臨界溶液温度(34度)以上の重合条件下で形成されるミセル重合場のコアは、脱水和により強い疎水性を有し、かつ固体的であることが明らかになった。この固体的なコアに閉じ込められた生長末端ラジカルの2分子停止反応は著しく抑制され、その結果、ラジカル重合が長時間に渡り持続することが明らかとなった。また、34度以下の重合温度における重合過程についてもSANSを用いてその場観察を行ったので、この結果についても報告する。

35000339
Focusing and Polarized Neutron ultra-small-angle scattering spectrometer (SANS-J-II) at research reactor JRR3, Japan
小泉 智; 岩瀬 裕希; 鈴木 淳市; 奥 隆之; 元川 竜平; 笹尾 一*; 田中 宏和; 山口 大輔; 清水 裕彦; 橋本 竹治
Physica B; Condensed Matter 385-386(2), p.1000-1006(2006) ; (JAEA-J 01888)
 既存のピンホール型中性子小角散乱装置(SANS-J)に集光レンズと偏極素子を導入することで集光型偏極中性子小角散乱装置(SANS-J-II)へと高度化することに成功した。その結果、これまで観測が不可能であった数マイクロメートル(波数で0.0001 reciprocal angstromに相当)まで観測領域を拡大することに成功したのでこの成果を発表する。

35000340
Gamow-Teller decay of the T=1 nucleus 46Cr
大西 健夫*; Gelberg, A.*; 櫻井 博儀*; 米田 健一郎*; 青井 考*; 今井 伸明*; 馬場 秀忠*; Brentano, P. von*; 福田 直樹*; 市川 雄一*; 石原 正泰*; 岩崎 弘典*; 亀田 大輔*; 岸田 隆*; Lisetskiy, A. F.*; Ong, H. J.*; 長田 光史*; 大塚 孝治*; 鈴木 賢*; 上 浩二*; 宇都野 穣; 渡邊 寛*
Physical Review C 72(2), p.024308_1-024308_7(2005) ; (JAEA-J 01889)
 46Crのベータ崩壊を理化学研究所のサイクロトロン加速器を用いて初めて測定し、B(GT)値0.64±0.20が得られた。この実験値をpf殻模型空間を仮定した殻模型計算と比較し、その相互作用依存性を調べた。KB3, FPD6, GXPF2相互作用はそれぞれ実験値を誤差棒の範囲内で説明することはできるが、これらの理論値は1.5倍ほどの開きがあり、どの相互作用が優れているかは今後の精密測定が待たれることとなった。この比較的大きなベータ崩壊確率は、準重陽子描像により定性的に議論可能であることがわかった。

35000341
High spin structure and intruder configurations in 31P
Ionescu-Bujor, M.*; Iordachescu, A.*; Napoli, D. R.*; Lenzi, S. M.*; Marginean, N.*; 大塚 孝治*; 宇都野 穣; Ribas, R. V.*; Axiotis M.*; Bazzacco, D.*; Bizzeti-Sona, A. M.*; Bizzeti, P. G.*; Brandolini, F.*; Bucurescu, D.*; Cardona, M. A.*; de Angelis, G.*; de Poli, M.*; Della Vedova, F.*; Farnea, E.*; Gadea, A.*; Hojman, D.*; Kalfas, C. A.*; Kr"oll, Th.*; Lunardi, S.*; Mart'inez, T.*; Mason, P.*; Pavan, P.*; Quintana, B.*; Rossi Alvarez, C.*; Ur, C. A.*; Vlastou, R.*; Zilio, S.*
Physical Review C 73(2), p.024310_1-024310_12(2006) ; (JAEA-J 01890)
 イタリア・レニャーロ国立研究所のタンデム加速器を用いて、31Pの高スピン準位を24Mg(16O,2α p)反応によって測定した。この実験から、正パリティ状態については17+/2まで、負パリティ状態については15-/2までのイラスト状態及び何本かの非イラスト状態を同定した。観測されたそれぞれの状態からの脱励起γ線の寿命から、E2, M1, E1遷移確率を導出した。この実験により、sd殻領域における殻模型の再現性を侵入者配位まで拡大してテストすることが可能になった。原子力機構でなされたモンテカルロ殻模型計算の結果を今回の実験値と比べたところ、正パリティ状態のみならず、負パリティ状態の位置とほとんどすべての電磁遷移確率を正しく再現できることがわかった。この一致から、モンテカルロ殻模型に代表される大規模殻模型計算がこれまで多くの研究がなされてきた低励起状態のみならず、イラスト線近傍の高励起状態においてもよく予言されることが示された。

35000342
Half-life of 184Re populated by the (γ,n) reaction from laser Compton scattering γ rays at the electron storage ring NewSUBARU
早川 岳人; 宮本 修治*; 林 由紀雄; 川瀬 啓悟*; 堀川 賢*; 千葉 敏; 中西 康介*; 橋本 尚信*; 太田 岳史*; 神門 正城; 望月 孝晏*; 梶野 敏貴*; 藤原 守
Physical Review C 74(6), p.065802_1-065802_5(2006) ; (JAEA-J 01891)
 相対論工学によって達成された逆コンプトンγ線による185Re(γ,n)184Re反応を用いて生成した184Reの半減期を報告する。この逆コンプトンγ線はニュースバルの電子蓄積リングにおいて生成された。これまで、184Reの3-のスピン・パリティーを持つ基底状態の半減期測定は、重水素ビームを用いて行われた。その結果、38.0±0.5日の半減期が計測されている。しかし、この時点では184Reに8+のスピン・パリティーを持つアイソマーの存在は知られていなかった。そのため、このアイソマー(半減期は169±8日)の寄与があるはずであり、本来の値より長くなっている可能性が極めて高い。一般に粒子ビームの入射反応と比較して、(γ,n)反応は原子核に持ち込む角運動量が小さいために小さいスピンを持つ基底状態を生成しやすいという長所を有する。本実験によって、35.4±0.7日の半減期が得られた。これは、これまで奨励されていた半減期より約7%も短い。この結果は、放射化法を用いた応用研究に直接的に影響を与える。

35000343
Probing the coulomb interaction of the unconventional superconductor PuCoGa5 by phonon spectroscopy
Raymond, S.*; Piekarz, P.*; Sanchez, J. P.*; Serrano, J.*; Krisch, M.*; Janousova, B.*; Rebizant, J.*; 目時 直人; 金子 耕士; Jochym, P. T.*; Ole's, A. M.*; Parlinski, K.*
Physical Review Letters 96(23), p.237003_1-237003_4(2006) ; (JAEA-J 01892)
 重い電子系超伝導体について、線非弾性散乱から室温でのフォノンの分散関係を測定した。実験結果は、電子間のクーロン相互作用U˜3eVを考慮にいれて行った理論計算と良い一致を示していることを明らかにした。

35000344
Direct numerical simulation on turbulent channel flow under a uniform magnetic field for large-scale structures at high reynolds number
佐竹 信一*; 功刀 資彰*; 高瀬 和之; 小瀬 裕男*
Physics of Fluids 18(12), p.125106_1-125106_8(2006) ; (JAEA-J 01893)
 高速増殖炉,核融合炉,加速器駆動炉などでは液体金属による冷却が考えられている。なかでも核融合炉では 高温プラズマを閉じ込めるために発生させる磁場の影響によって、液体金属の流動特性が非磁場条件とは異なることが報告されている。冷却性能に関して高い予測精度を得るためには、冷却材流路を流れる液体金属の速度分布や温度分布を正確に把握しなければならないが、高磁場中での高レイノルズ数液体金属流の熱流動特性を詳細に計測することは容易ではない。そこで、熱設計ツールの検証用データベース構築を目的として、ローレンツ力による磁場効果を考慮した大規模乱流直接解析を実施した。スペクトル法の改良,差分スキームの高次化等を行って、10万以上のレイノルズ数領域に対しても高精度で安定な高並列計算を可能にした。また、計算結果のポスト処理には並列版AVSを使用し、従来よりも大量のデータを効率的に可視化表示できることを実証した。本研究によって高磁場中における高レイノルズ数液体金属流挙動が定量化され、熱設計精度を向上できた。

35000345
New features in the computational infrastructure for nuclear astrophysics
Smith, M. S.*; Lingerfelt, E. J.*; Scott, J. P.*; Nesaraja, C. D.*; Chae, K.*; 小浦 寛之; Roberts, L. F.*; Hix, W. R.*; Bardayan, D. W.*; Blackmon, J. C.*
Proceedings of Science (Internet) , 5p.(2006) ; (JAEA-J 01894)
 「天体核物理のためのコンピュータインフラストラクチャー」は、これまで天体物理シミュレーションにおける最新の核物理データの包含を能率化するように開発された。この「インフラストラクチャー」はnucastrodata.orgで自由にオンライン利用可能なコンピュータコードの集まりで、プラットホームに依存しないように構成されている。 今回、原子核質量模型の可視化ツールにおいて反応・崩壊Q値,安定核種,魔法数,r過程経路などの表示/非表示など、新しい機能を追加し、利便性をより高めた。

35000346
Charge screening effect in the hadron-quark mixed phase
遠藤 友樹*; 丸山 敏毅; 千葉 敏; 巽 敏隆*
Progress of Theoretical Physics 115(2), p.337-353(2006) ; (JAEA-J 01895)
 高密度で予想されているクォーク−ハドロン一次相転移における混合相で、クーロン相互作用と表面張力の効果を調べた。これらの2つの有限サイズの効果は、混合相の性質とそれが現れる領域の幅を大きく制限することがわかった。特に、荷電遮蔽効果によって混合相のパスタ構造内での密度分布が変化し、荷電中性な分布に近づく。これによって、状態方程式を求める際に多成分系には適用できないMaxwell構成法が、近似的に適用可能になることを示した。

35000347
Estimation of photon dose generated by a short pulse high power laser
林 由紀雄; 福見 敦*; 松門 宏治*; 森 道昭; 小瀧 秀行; 神門 正城; Chen, L.; 大東 出; 近藤 修司; 金沢 修平; 山崎 淳; 小倉 浩一; 西内 満美子; 加道 雅孝; 匂坂 明人; 中村 衆; Li, Z.*; 織茂 聡; 本間 隆之; 大道 博行
Radiation Protection Dosimetry 121(2), p.99-107(2006) ; (JAEA-J 01896)
 短パルス高出力レーザーとターゲットの相互作用で前方方向に放出されるX線線量に対し著者は新しい評価式を導出した。この式は非常に単純な式であるため、相互作用で生成される線量評価を実施するうえで有益である。電子温度が3MeV以上の場合、線量は電子温度に比例し、3MeV以下の場合線量は電子温度の自乗に比例する事がこの式より明らかになった。モンテカルロ計算で評価した線量計算結果とこの計算式が、おおよそ一致することも確認した。さらに幾つかの仮定等を行うと、他研究所での線量測定結果,線量計算結果をこの式で説明することが明らかになった。

35000348
Extraction behavior of rutherfordium into tributylphosphate from hydrochloric acid
羽場 宏光*; 塚田 和明; 浅井 雅人; 豊嶋 厚史; 石井 康雄; 當銘 勇人; 佐藤 哲也; 西中 一朗; 市川 隆俊; 市川 進一; 永目 諭一郎; 佐藤 渉*; 松尾 啓司*; 北本 優介*; 田代 祐基*; 篠原 厚*; 斎藤 順子*; 伊藤 摩耶*; 池沢 孝明*; 坂牧 雅巳*; 後藤 真一*; 工藤 久昭*; 菊永 英寿*; 新井 理太*; 鎌滝 真次*; 横山 明彦*; 秋山 和彦*; 末木 啓介*; 大浦 泰嗣*; Sch"adel, M.*; Br"uchle, W.*; Kratz, J. V.*
Radiochimica Acta 95(1), p.1-6(2007) ; (JAEA-J 01897)
 逆相抽出クロマトグラフ法を用い、7.2-8.0M塩酸溶液中におけるラザホージウム(Rf)並びにその軽同族体Zr, Hfのトリブチルりん酸(TBP)への溶媒抽出挙動を調べた。Rf, Zr並びにHfの抽出率が塩酸濃度の増加とともに増加し、抽出されやすさの順列がZr>Hf〜Rfであることが明らかとなった。これら三元素の塩化物錯体の形成順列を考慮すると、Rf四塩化物のTBP錯体の安定性がZr, Hfよりも低いことが示唆される。

35000349
Applications of phase conjugate mirror to Thomson scattering diagnostics (invited)
波多江 仰紀; 内藤 磨; 中塚 正大*; 吉田 英次*
Review of Scientific Instruments 77(10), p.10E508_1-10E508_6(2006) ; (JAEA-J 01898)
 誘導ブリルアン散乱位相共役鏡を応用し、トムソン散乱計測の測定性能改善を図った。液体フロン化合物を用いた位相共役鏡はレーザー平均出力145W(50Hz)の入力で95%以上の反射率を示した。トムソン散乱への直接的な応用としては、位相共役鏡によりレーザービームを往復させ、迷光を著しく増加させることなく散乱光を倍増させる手法(ダブルパス散乱)を開発した。初期実験ではJT-60に位相共役鏡を取り付けダブルパス散乱させた結果、散乱光を1.6倍に増加させることができた。ダブルパス散乱を発展させ、一対の位相共役鏡間にレーザー光を閉じ込め、数倍以上の散乱光を発生することができるマルチパス散乱も考案した。また、散乱光のS/N改善のため、位相共役鏡を既存のレーザー装置に組み込み、レーザー装置の高出力化を行った。位相共役鏡は高出力増幅器で誘起される波面歪みを効果的に補正し、レーザー出力が当初の8倍を超える373W(7.46J×50Hz)に到達した。この結果からITERの周辺トムソン散乱用レーザーで必要とされる5J, 100Hzの出力を得る見通しがついた。これらを踏まえ位相共役鏡を搭載した、最適化されたITER用レーザーシステムの検討を行った。

35000350
Escaping ion measurement with high time resolution on CHS
篠原 孝司; 磯部 光孝*; Darrow, D. S.*
Review of Scientific Instruments 77(10), p.10E521_1-10E521_4(2006) ; (JAEA-J 01899)
 損失イオンプローブではスリットから入ってきた損失イオンがシンチレーションスクリーンに衝突し、衝突した位置が発光する。この発光した点の座標から損失イオンのエネルギーとピッチ角がわかる。シンチレーションスクリーンをビデオカメラを用いて撮影することで損失イオンのエネルギーとピッチ角の2次元の時間発展を計測できる。しかしながら、既存のカメラの時間分解能は17ミリ秒であり、バースト的な大強度の磁気振動の時間スケールの1〜3ミリ秒に比べて長く、時間分解能が不十分である。そこで、既存のカメラを高速のカメラに置き換えるべく光学系を製作し、高速カメラを設置し、時間分解能を0.07ミリ秒まで改善した。結果、これまで観測できなかった磁気振動が損失高速イオンに与える影響を観測すること(例えば、磁気振動があるときにだけ計測に受かるイオンを観測)に成功した。本講演では本システムの概要と初期実験結果について講演する。

35000351
Location of deuterium atoms in BaSn0.5In0.5O2.75+α by neutron powder diffraction at 10 K
伊藤 剛*; 長崎 正雅*; 岩崎 航太*; 吉野 正人*; 松井 恒雄*; 井川 直樹; 石井 慶信
Solid State Ionics 178(1-2), p.13-17(2007) ; (JAEA-J 01900)
 典型的なプロブスカイト型プロトン伝導体であるBaSn0.5In0.5O2.75+αについて、プロトン伝導経路を明らかにするためにそのプロトンの位置を中性子回折法によって解析した。重水素溶解前後の試料について10Kの低温における中性子回折をJRR-3に設置した高分解能中性子回折装置(HRPD)によって測定した。得られた中性子回折パターンについて、リートベルト解析法及びマキシマムエントロピー法を併用することで詳細な結晶構造を解析し、さらに重水素溶解前後の結晶構造を比較することで、試料中の水素位置を決定した。その結果、BaSn0.5In0.5O2.75+αの空間群はPm3mであり、重水素は12hサイトを占有すること、また、酸素−重水素の原子間距離は0.97Aであることが明らかになった。

35000352
Structural analysis of Si(111)-√21×√21-Ag surface by reflection high-energy positron diffraction
深谷 有喜; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
Surface Science 600(16), p.3141-3146(2006) ; (JAEA-J 01901)
 Si(111)-√3×√3-Ag表面上に微量のAg原子を吸着させるとSi(111)-√21×√21-Ag超構造が形成される。この表面構造は他の貴金属原子やアルカリ金属原子を吸着させた場合にも共通して見られる構造であり、Si(111)-√3×√3-Ag表面に比べて急激な電気伝導度の上昇を示す。√21×√21超構造は、これまで走査型トンネル顕微鏡やX線回折などを用いて調べられてきたが、その詳細はほとんどわかっていない。本研究では、最表面原子の原子配列に敏感な手法である反射高速陽電子回折(RHEPD)を用いて、Si(111)-√21×√21-Ag超構造の決定を行った。RHEPD強度のロッキング曲線と回折パターンを測定し、動力学的回折理論に基づいて強度解析を行った。ロッキング曲線の解析から、余剰Ag原子の被覆率は0.14原子層であることがわかった。これは単位格子あたり3個吸着していることに相当する。また、余剰Ag原子の垂直位置は、下地のAg原子層から0.53Å と従来考えられていた値より1Å 程度低いことが初めて明らかになった。パターン解析から、余剰Ag原子は、下地のAg原子から構成される三角形の中心に位置し、単位格子の角に正三角形状に配置した構造であることがわかった。

35000353
Structural analysis of Ge(111)-3×3-Sn surface at low-temperature by reflection high-energy positron diffraction
深谷 有喜; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
Surface Science 600(18), p.4086-4088(2006) ; (JAEA-J 01902)
 Ge(111)-(√3)×(√3)-Sn表面は、半導体表面上に形成した2次元金属構造として詳細に研究されている。この表面は、約220K以下になると相転移を起こし、(√3)×(√3)からより対称性の低い3×3構造に変化する。これまでの研究から、相転移のモデルとして、表面の電荷密度波(CDW)の形成やSn原子の動的揺らぎなどが報告されているが、現在のところコンセンサスは得られていない。さらに原子配置の詳細、特に表面垂直成分に関しては解明されていない。本研究では、最表面に位置するSn原子の正確な原子位置と熱振動やSn原子の揺らぎを詳細に調べるために、最表面構造に非常に敏感な反射高速陽電子回折(RHEPD)を用いて研究を行う。110Kと室温においてRHEPD強度のロッキング曲線の測定を行い、動力学的回折理論に基づく強度解析から、それぞれの温度における表面構造を決定する。さらに、臨界温度近傍でのSn原子の熱的振る舞いを調べるために、さまざまなスポットに対してRHEPD強度の温度依存性の測定を行う。以上の解析結果から、Ge(111)-(√3)×(√3)-Sn表面における3×3から(√3)×(√3)構造への相転移について議論する。

35000354
放射性核種の迅速分離を実現する抽出試薬担持型グラフト多孔性膜
浅井 志保
ぶんせき 2006(10), p.530-534(2006) ; (JAEA-J 01903)
 放射性核種の分析では、作業者の被ばくや汚染物品の発生を最小限にするため、分離時間が短いこと、また分離スケールが小さいことが重要である。グラフト鎖を付与した多孔性膜を分離材料として採用すると、溶液中のイオンが拡散する時間を最小化できる。このため分離時間が大幅に短縮される。本研究では、疎水性基を導入したグラフト鎖を持つ多孔性膜に酸性の抽出試薬HDEHPを担持して、イットリウム定量のための化学分離材料を設計した。グラフト鎖へ担持したHDEHPによってイットリウムの吸着または溶出時に漏出することなく、イットリウムを迅速に分離できることを実証した。

35000355
JRR-3ガイドホールにおけるT2-3多目的単色熱中性子ビームポート「武蔵」(Multi-Purpose Thermal Neuron Application and Science)の新設
目時 直人; 金子 耕士
波紋 16(2), p.120-122(2006) ; (JAEA-J 01906)
 JRR-3ガイドホールのT2-3ビームポートを再立ち上げを行った。新たな多目的熱中性子T2-3ビームポート「MUSASI」は2つの単色熱中性子ビームを同時に供与することが可能で、強磁場,超低温などの極限環境下での実験や、J-PARCに向けた中性子検出器や光学素子の開発やそのテスト,産業利用として残留応力測定などへの利用が予定されている。十分なマシンタイムを所外、外部のユーザーに供出することが可能であり、定常炉JRR-3とパルス中性資源J-PARCの相補的な利用に向け、このポートの有効活用に関して、中性子コミュニティからの積極的な提言・批判を受け付けている。

35000356
「ファントムの開発及び利用に関する専門研究会」に関する報告,1
斎藤 公明; 木名瀬 栄; 藤崎 達也*; 平岡 武*; 齋藤 秀敏*; 津田 修一; 佐藤 薫; 高島 房生*
保健物理 41(3), p.158-168(2006) ; (JAEA-J 01907)
 日本保健物理学会の「ファントムの開発及び利用に関する専門研究会」は、平成16年度と17年度の2年間活動を実施した。ファントムは放射線防護,医療,放射線影響解析等の分野で不可欠なツールとして用いられてきたが、最近の医療画像技術や計算科学技術の発展に支えられて、さまざまなファントムが開発され、その利用は急速に拡大しつつある。本専門研究会では、物理ファントムと数学ファントムの両方を対象として、最新の情報を収集・整理するとともに、ファントムはどうあるべきか,今後どのように使用して行くべきか等の議論を行う場を提供することを目的に活動を行った。本稿では、この活動の中で得られた情報と議論をまとめて2回のシリーズで紹介する。第1回は、光子及び中性子を対象とした組織等価材,ボクセルファントム,内部被ばく線量評価に関する話題を取り上げている。

35000357
大気・波浪・海洋結合モデルによるハリケーンカトリーナの高潮場のシミュレーション
Kim, K.; Lee, H.*; Haggag, M.*; 山下 隆男*
海岸工学論文集 53, p.416-420(2006) ; (JAEA-J 01909)
 一般に、浅い海域が長く続けば続くほど、白波砕波の発生率が増え海水流動が活発化し、吹き寄せ効果が大きくなる。また、外洋や広い湾では旋回する台風の強風域に引きずられるような循環流が発達し、これが陸によって遮られると急激な水位上昇が発生する。このため、陸棚の幅が広く水深が浅い海域では、同一規模の低気圧でもより大きな高潮が発生する。2005年のハリケーンカトリーナの高潮もこのケースである。本研究では、大気・波浪・海洋結合モデルを用いて、上述のような陸棚上での高潮の増幅機構を考慮したハリケーンカトリーナの高潮場の数値シミュレーションを行った結果を示す。

35000358
有機溶媒中ダイオキシン類の放射線分解; ダイオキシン類分析廃液処理法の開発
広田 耕一; Zhao, C.*; 小嶋 拓治; 星 正敏*
環境と測定技術 33(8), p.23-28(2006) ; (JAEA-J 01910)
 近年のダイオキシン類の分析需要の増加により、ダイオキシン類分析機関には、現在多量のダイオキシン類分析廃液がPCB同様保管されている。有機溶媒廃液の最も一般的な処理法には焼却法があるが、処理施設の建設費用が膨大になるほか、処理プロセスが複雑でトラブルも発生しやすい。そこで、既存の60Coγ線照射施設を活用して、分析廃液に0-160kGyの範囲でγ線を照射し、ダイオキシン類を無毒化する技術の開発を行った。ノナン,トルエン,エタノールを溶媒として、8塩素化ダイオキシン及びフランを溶解させた各模擬分析廃液に照射を行った結果、エタノールが最も毒性低減に優れていることがわかった。低塩素化異性体の濃度変化解析の結果、エタノール中ダイオキシン及びフランは、低吸収線量域では脱塩素を、高吸収線量域では酸化分解を起こすことが明らかになった。そこで、分析実廃液をエタノールで100倍希釈し、100kGy照射したところ、ダイオキシン類を毒性換算でほぼ100%、モル換算で90%で分解することに成功した。また、この条件下でコスト試算を行い、3Lの分析廃液の場合、5万円程度で処理が可能であることを明らかにした。

35000359
核融合/大型液体ヘリウム製造装置の負荷変動帰還制御へのPLC計装の活用
岡野 文範; 本田 敦; 大島 克己; 秋野 昇; 菊池 勝美; 沼澤 呈*
計装 49(3), p.22-26(2006) ; (JAEA-J 01912)
 日本原子力研究開発機構那珂核融合研究所では、核融合実験装置(JT-60U)を用いて高性能プラズマ長時間維持を目指した研究開発を行っている。核融合実験装置において臨界プラズマ条件を成立させるためにはプラズマを追加熱する必要があり、その加熱装置の一つとして中性粒子ビーム入射装置(NBI)がある。NBIは14基のビームラインから構成されており、ビーム入射運転時に動作ガスとして1基あたり3〜5Pam3/sの重水素ガスが導入される。そのために、冷媒として極低温である液体ヘリウムを用いたクライオポンプ(1基あたり1,400m3/s)が各ビームラインに設置されている。クライオポンプへの液体ヘリウムの供給は、国内最大級の冷凍能力を有する液体ヘリウム製造装置(高圧ガス製造施設)で行っている。本液体ヘリウム製造装置は約20年前に導入された設備であり、制御システムは、DCS計算機システム(総ループ数:約400)で行っていた。近年、DCSの性能低下等による故障頻度が著しく、また、本システムは、製造中止後10年経過しているため部品調達も困難な状況になっており、実験運転に支障をきたし始めてきた。これを機に新しい試みとして、PLC計装を用いた大規模な制御システムの改造を実施した。なお、本改造は、エンジニアリングメーカーに頼らず日本原子力研究開発機構の職員が自ら実施したものである。本稿では、これらの改造への取り組み及び成果について報告する。

35000360
金属の環境中動態における鉱物と微生物の役割
大貫 敏彦
検査技術 11(11), p.9-17(2006) ; (JAEA-J 01913)
 環境中における金属の移行挙動における鉱物及び微生物の役割について、研究事例を紹介しながら解説する。オーストラリア,クンガラウラン鉱床やガボン共和国,オクロウラン鉱床などで行った調査から、ウランが百万年以上の期間に数百から数キロメートルにわたって移動した現象を支配していたのが数ミクロンの領域における地下水と鉱物との相互作用であることを明らかにした。一方、微生物の細胞表面へのウランの濃集機構としては、細胞表面への吸着や細胞から排出されるリン酸との反応による鉱物化であることを明らかにした。

35000361
圧力下のミュオンスピン回転・緩和測定実験
髭本 亘; 佐藤 一彦*
固体物理 41(9), p.583-592(2006) ; (JAEA-J 01914)
 高圧下のミュオンスピン回転,緩和測定の概要について解説した。これまでわれわれはピストンシリンダー型の高圧セルを用いた研究を行っている。μSR実験のためにはセルの材質,圧力媒体などどのような素材を用いるのが良いか、また得られる信号はどのようなものか、さらに問題点と将来への展望を概観した。また、研究成果としてCeRh2Si2とTlCuCl3の高圧下のμSR測定を紹介し、高圧により反強磁性状態が変化する様子を述べた。

35000362
光電子ホログラフィーと立体原子写真法による原子配列の観測
松下 智裕*; Guo, F. Z.*; 安居院 あかね; 松井 文彦*; 大門 寛*
まてりあ 45(11), p.791-796(2006) ; (JAEA-J 01915)
 光電子,オージェ電子の放出角度分布は、原子配列が記録されたホログラムとみなすことができる。既存の装置には感度の不均一性があり、原子配列を再構成する計算に使えるほどの精度はなかった。われわれはこの不均一性を軽減する方法を考案し、立体的な原子配列を高精度で得ることができた。この方法を用い原子廃立を立体原子写真法で観測する方法を解説した。

35000363
ハイブリッド熱化学法水素製造プラント用構造材料の腐食試験
高橋 亨; 加藤 章一; 中桐 俊男; 青砥 紀身
日本原子力学会和文論文誌 5(4), p.347-357(2006) ; (JAEA-J 01917)
 ハイブリッド熱化学法水素製造プロセスによる水素製造プラントでは、約95mass%の高濃度硫酸の使用が想定され、プラント各部で硫酸温度は室温から最高約550℃まで変化する。このため、気相・液相さらには硫酸蒸発面での使用材料の耐食性の確保が必要である。そこで、本研究ではプラント各部の候補材料の腐食挙動を把握するために、実使用環境を模擬した短時間腐食試験を実施し、その耐食性について検討した。

35000364
粒子・重イオン輸送コードPHITSが開く世界
中村 尚司*; 仁井田 浩二*; 岩瀬 広*; 佐藤 達彦
日本原子力学会誌 48(12), p.949-954(2006) ; (JAEA-J 01919)
 加速器の工業,医療等の幅広い分野での利用に伴い、施設の放射線遮蔽設計に粒子輸送モンテカルロシミュレーションが重要な役割を果たしている。J-PARCの建設に向けて開発されたPHITS(Particle and Heavy Ion Transport code System)は、高エネルギー粒子の輸送に加えて、重イオン(原子核)の輸送をも扱えるコードとして、加速器分野だけでなく、航空宇宙分野,粒子線がん治療などの医療分野でも広く利用されている。最近、PHITSではミクロな領域での放射線挙動に重要な強度分布などの観測量を扱えるようになった。この試みは世界でも初めてのものであり、これにより、放射線影響のよりミクロな視点からの解明や、物質,生命のマイクロドシメトリー的なアプローチへの橋渡しが可能となる。エネルギーと輸送粒子の拡張によってもたらされたPHITSの担う原子力の幅広い分野をつなぐ横糸としての役割と、マクロとミクロをつなぐこの新しい縦糸として役割について展望する。

35000365
新第三紀珪質岩における断層の解析事例
石井 英一; 福島 龍朗
応用地質 47(5), p.280-291(2006) ; (JAEA-J 01921)
 岩盤中には地下水の流れや物質移動に大きな影響を及ぼす割れ目がしばしば存在することから、地質構造モデルを構築する際には、これらの割れ目を十分に考慮する必要がある。そこで本研究では、水みちの可能性のある断層の調査手法の開発の一環として、新第三紀珪質岩中に分布する断層の地質学的特徴と形成過程を露頭観察・ボーリングコア観察・孔壁観察の結果から検討し、その検討結果に基づいて、断層の水理特性の評価や水理学的に重要と思われる断層を考慮した地質構造概念モデルの構築を試みた。その結果、褶曲構造が発達する新第三紀珪質岩中の充填鉱物や熱水変質の認められない断層について、(1)分類を行う際には、断層方向の褶曲軸並びに層理面との関係,変位センス、及び変位量への着目,(2)形成過程を検討する際には、断層同士の切り切られの関係の観察,褶曲運動との関係の検討、及び小断層解析による断層運動時の応力場の推定,(3)水理特性を検討する際には、地表付近における断層沿いの酸化状況,断層の分布密度,断層の形成過程、及び断層の方向と応力場との関係の検討が効果的であった。

35000366
放射線を利用したメタノール型燃料電池膜の開発
浅野 雅春; Chen, J.; 前川 康成; 吉田 勝
プラスチックス 57(5), p.9-15(2006) ; (JAEA-J 01922)
 本論文は、液体のメタノールをそのまま燃料として供給する直接メタノール型燃料電池用電解質膜の開発に特化し、放射線重合と放射線架橋という2つの放射線照射プロセスを高度に組合せることにより実現した高性能化の成果を中心にまとめたものである。具体的には、このプロセスにより、ビスビニルフェニルエタン(BVPE)及びジビニルベンゼン(DVB)の2成分の架橋剤とビニルトルエン(MeSt)及びt-ブチルスチレン(tBuSt)の2成分のスルホン化可能なモノマーを組合せた4元系電解質膜を作製した。耐久性加速試験の結果、この膜は従来のポリスチレンスルホン酸電解質膜に比べて6倍耐久性が向上することがわかった。また、4元系成分をグラフトした膜を室温,真空下で放射線架橋(500kGy)した後、スルホン化した電解質膜は、メタノール透過がナフィオンの1/10まで抑制できることもわかった。

35000367
Development of alumina ceramics vacuum chamber for J-PARC
金正 倫計; 齊藤 芳男*; 壁谷 善三郎*; 荻原 徳男
真空 49(12), p.728-733(2006) ; (JAEA-J 01926)
 J-PARC 3GeVシンクロトロンに使用するアルミナセラミックス製真空ダクトの開発に成功した。このダクトは、両端にチタンフランジを持ち、外表面には、ダクトの抵抗値を低減させるためのRFシールが施されている。現在、製作工程は確立され、量産を行っている。

35000368
超音速窒素分子ビームを用いたTi(0001)表面窒化反応のリアルタイム光電子分光観察
小川 修一*; 高桑 雄二*; 石塚 眞治*; 吉越 章隆; 寺岡 有殿; 水野 善之*
真空 49(12), p.775-779(2006) ; (JAEA-J 01927)
 Ti(0001)-1×1表面を超音速窒素分子ビームで窒化し、リアルタイム光電子分光法で吸着反応ダイナミクスを調べた。調べたすべての窒素供給量において、N1s内殻準位の光電子スペクトルは二つの化学シフトした成分から成り立ち、その結合エネルギーは396.9と396.6eVである。その二つの成分で初期吸着確率はともに入射エネルギーに対して減少傾向を示した。ただし、0.3eVと1.5eVに極小がみられた。そのような入射エネルギー依存性は二つの成分の化学結合状態が類似していることを表している。0.3eV以下では物理吸着状態を経由した吸着過程、0.3eV以上では活性化吸着がおもに起こると考えられる。

35000369
Neutrino-nucleus reactions induced by supernova neutrinos
鈴木 俊夫*; 千葉 敏; 岩本 修; 梶野 敏貴*
AIP Conference Proceedings 847 , p.479-481(2006) ; (JAEA-J 01930)
 元素の起源を理解するために、超新星爆発時に発生するニュートリノと軽い原子核の反応の計算を行った。まず、スピン・アイソスピン相互作用の重要な側面を適切に考慮したp-殻原子核の殻模型ハミルトニアンを用いて、4He及び12Cの、ニュートリノによる荷電交換及び中性カレント励起スペクトルと励起確率の計算を行った。励起された原子核からの崩壊確率は、Hauser-Feshbachの統計模型を用いて、角運動量,パリティー及びアイソスピンの保存を考慮して計算した。これにより、従来宇宙線起源とされてきた7Liや11B等の軽元素が超新星爆発におけるニュートリノによる反応で生成された可能性,超新星爆発機構や、ニュートリノ振動パラメータを決定する可能性を議論する。

35000370
First principles molecular dynamics simulation of solution
Boero, M.*; 池田 隆司; 平田 勝
Annual Report of the earth Simulator Center April 2005 - March 2006 , p.267-270(2007) ; (JAEA-J 01931)
 本研究課題は溶液内化学反応のシミュレーションに必要な技術開発を行うことにより、材料研究やバイオ関連研究のさらなる高度化を目指した共同プロジェクトである。昨年度にQM/MM(量子化学/分子力学)法を導入することで計算コスト低減を実現し、さらにメタダイナミクスを導入し自由エネルギー面の探査を可能とした。これらの手法を用いて、今年度はDNAでの電荷移動過程の詳細を検討したところ、グアニン基間の電荷移動とプロトン移動が連動していることを明瞭に示す結果を得た。

35000371
Current status and potential needs of burn-up credit in Japan
須山 賢也; 奥野 浩; 内山 軍蔵; 山本 徹*
Need for Post Irradiation Experiments to Validate Fuel Depletion Calculation Methodologies , p.31-34(2006) ; (JAEA-J 01932)
 日本においては、燃焼度クレジット(BUC)は六ヶ所再処理工場(RRP)の使用済燃料(SNF)受け入れプール及び溶解槽において導入されているが、他の施設においては進んでいない。これは(1)RRPにおける使用済燃料受け入れが開始されたことと、(2)リサイクル燃料貯蔵(RFS)による乾式金属キャスクを使用した青森での中間貯蔵施設建設の提案によって、日本では使用済燃料蓄積の圧力がしばらくは弱まったためである。しかしながら、BUC適用と関連技術の向上への潜在的要求は依然高い。BUCに関連した技術開発は照射後試験(PIE)のような燃焼解析と原子炉物理実験の分野で一貫して行われてきた。このことは、BUCが日本において魅力的な概念であり、使用済燃料管理工程においてさらなる適用が予想されることを示している。

35000372
Current status of spent fuel isotopic composition database SFCOMPO and related technical development by JAEA
須山 賢也; 奥野 浩; 内山 軍蔵
Need for Post Irradiation Experiments to Validate Fuel Depletion Calculation Methodologies , p.151-156(2006) ; (JAEA-J 01933)
 使用済燃料の臨界安全評価について、日本原子力研究開発機構は継続的な研究開発を行ってきた。それは、照射後試験(PIE)による使用済燃料同位体組成データを取得することと、燃焼計算コードSWATとORIGEN2コード用の新ライブラリを最新の核データより作成することから成っている。また、旧日本原子力研究所は使用済燃料同位体組成データベースSFCOMPOの開発を行ってきた。本レポートにおいて、日本原子力研究開発機構におけるSFCOMPO及び燃焼度クレジットに関する技術開発の概要、すなわち、旧日本原子力研究所で得られたPIEデータの燃焼度再評価について述べる。

35000373
Resonance self-shielding effect in covariance processing
千葉 豪
Perspectives on nuclear data for the next decade , p.227-232(2007) ; (JAEA-J 01934)
 エネルギー群で平均化された核反応断面積の共分散は、共鳴自己遮蔽効果により、着目体系での共鳴核種の希釈断面積に依存する。本報では、その依存性を共分散処理コードERRORJを用いて評価した。共鳴自己遮蔽効果を考慮した場合には、大きい幅をもつ共鳴ピークのみならず、小さい幅の共鳴ピークの共分散データが重要になることを示した。また、共鳴パラメータから核特性への誤差伝播計算における自己遮蔽効果を評価した。

35000374
Wideband low-output-impedance RF system for the second harmonic cavity in the ISIS synchrotron
入江 吉郎; Dooling, J.*; Horan, D.*; Kustom, R.*; Middendorf, M.*; Pile, G.*; Bayley, D.*; Cross, G.*; Gardner, I.*; Glover, M.*; Jenkins, D.*; Morris, A.*; Seville, A.*; Stoneham, S.*; Thomason, J.*; Western, T.*; 福本 貞義*; 武藤 建一*; 大木 俊征*; 高木 昭*; 高野 進*
Proceedings of 10th European Particle Accelerator Conference (EPAC '06) (CD-ROM) , p.321-323(2006) ; (JAEA-J 01935)
 広帯域で低出力インピーダンス第2高調波空洞が日米英の3か国協力により開発された。低出力インピーダンスの特性は、陽極からグリッド電極へのフィードバックループにより実現される。30オーム以下の出力インピーダンスをもつこのシステムは、周波数2.7〜6.2メガヘルツ,繰返し周波数50ヘルツの条件で大電力試験を行い、安定した高電圧発生(加速間隙あたり12キロボルト)に成功した。英国ラザフォード研究所のISISシンクロトロンにこの装置を適用した場合、精度良いビーム平坦化が可能となり空間電荷力が緩和される。その結果、大強度陽子シンクロトロンにおけるビーム損失の低減に大いに役立つことが期待される。

35000375
Development of the feedforward system for beam loading compensation in the J-PARC RCS
田村 文彦; Schnase, A.; 野村 昌弘; 山本 昌亘; 吉井 正人*; 穴見 昌三*; 絵面 栄二*; 原 圭吾*; 大森 千広*; 高木 昭*
Proceedings of 10th European Particle Accelerator Conference (EPAC '06) (CD-ROM) , p.1319-1321(2006) ; (JAEA-J 01936)
 J-PARCの速い繰り返しのシンクロトロン(RCS)においては、大電流の陽子ビームを加速するために、ビームローディング補償が必須である。J-PARC RCSでは、ビームフィードフォワードによるビームローディング補償が採用される。この発表では、フィードフォワードシステムの開発について述べる。今回、フルデジタルのシステムを開発したが、これは効率的なローディング補償のために必要である。RF空胴はQ=2でありワイドバンドであるため、ウェーク電圧には高調波成分も含まれるため、これも補償しなければならない。システムはマルチハーモニクスで動作する。システムの前半では、ビーム電流信号からI/Q検波により選択したハーモニクスの信号のみを取り出す。後段では、適切なゲインと位相でもって、RF空胴にウェーク電圧をキャンセルする電流を流すようなRF信号を生成する。開発中のモジュールのテスト結果についても述べる。

35000376
Statistical characteristics of turbulent transport dominated by zonal flow dynamics
松本 太郎; 岸本 泰明; Li, J.*
Proceedings of 21st IAEA Fusion Energy Conference (FEC 2006) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 01938)
 高温トカマクプラズマでは、さまざまな時定数及び特徴的長さを持つ乱流揺動と、それによって二次的に生成される帯状流及び一般化ケルビンヘルムホルツ等の大きな乱流構造とが、相互作用しつつ輸送過程に影響を及ぼす。このような時空間スケールが異なる揺らぎが混在している系における輸送の解析には、シミュレーションによる再現とともに、それらの揺らぎの特性をさまざまな側面から同定し、特徴付けることが重要である。本研究では、ジャイロ流体モデルを用いた電子温度勾配モード乱流の3次元スラブ配位シミュレーションを行い、異なる磁場及び温度勾配の条件の下で、帯状流の形成や間歇的な熱流束等の輸送特性と、揺動から得られる相関次元との関係を明らかにした。また、電場と圧力揺動とのクロススペクトル解析から、帯状流による乱流輸送の低減が、異なる二つの素過程に起因することを明らかにした。さらに、バイスペクトル解析から、帯状流に支配され乱流におけるモード間のエネルギー輸送に関して、一般化ケルビンヘルムホルツモードが主要な役割を担っていることを明らかにした。

35000377
Development of on-line monitoring system for Nuclear Power Plant (NPP) using neuro-expert, noise analysis, and modified neural networks
Subekti, M.*; 大野 富生*; 工藤 和彦*; 鍋島 邦彦; 高松 邦吉
Proceedings of 5th American Nuclear Society International Topical Meeting on Nuclear Plant Instrumentation, Controls, and Human Machine Interface Technology (NPIC & HMIT 2006) (CD-ROM) , p.75-82(2006) ; (JAEA-J 01939)
 ニューロエキスパートは過去の加圧水型原子炉(PWR)の監視システムの研究において利用されてきた。その研究において、ニューロエキスパート,一般的なノイズ分析及び改良したニューラルネットワークは監視システムを改善してきた。また、平行法の適用においては、リアルタイム処理を機能させるためにコンピュータネットワークの分散型アーキテクチャを必要とした。本研究においては、センサー劣化を検出できる監視システムの改良、及び高温工学試験研究炉(HTTR)の監視の実証を目的とする。PWRのオンラインシミュレータ、及びRSG-GAS(インドネシアの30MW研究炉)でテストされた手法をもととして改良した本監視システムは、さらに複雑なHTTRの監視に十分活用できると思われる。

35000378
Generation of nanometer-sized silicon tadpoles irradiated with a high intensity laser pulse
匂坂 明人; 東 博純*; 大道 博行; 神谷 信雄*; 伊藤 忠*; 竹内 昭博*; 鈴木 教友*; 西村 昭彦; 森 道昭; 織茂 聡; 小倉 浩一
Proceedings of 4th International Congress on Laser Advanced Materials Processing (LAMP 2006) (Internet) , 3p.(2006) ; (JAEA-J 01942)
 電磁材料等においてナノサイズの柱状結晶が形成されれば、その電磁特性としてこれまで得られなかった特性を得ることが期待できる。ここで、高輝度のフェムト秒レーザー照射したシリコンの飛散粒子に注目すると、レーザーと物質との相互作用による強い電場を受けるのでナノ秒レーザー照射とは異なる飛散粒子の形態が予測される。そのため本研究では、原子力機構設置のチタンサファイアレーザーを用いてシリコンターゲットに照射した。集光強度は〜5×1016W/cm2であった。そして、シリコンターゲットからのアブレータを採取し、高分解能の透過型電子顕微鏡や電子線回折等でその構造などを詳細に調べた。その結果、多結晶成分とアモルファス成分をもつタッドポール粒子の発生を確認した。

35000379
幌延深地層研究計画における地下研究施設掘削に伴う地下水流動予測解析; 地上からの調査結果に基づく水理地質構造のモデル化と解析
熊本 創*; 下茂 道人*; 操上 広志
地下水流動解析とモデル化に関するシンポジウム発表論文集 , p.43-50(2007) ; (JAEA-J 01943)
 本研究は、これまでの地表からの調査結果に基づいて構築された水理地質構造モデルを用いて、研究坑道の掘削過程を模擬した地下水流動解析を行い、掘削に伴う研究坑道への湧水量や周辺の水位,水圧変化等の予測解析を実施したものである。解析の結果、小断層帯が湧水量や周辺の水圧へ与える影響が大きく、またその分布の違いによる予測湧水量のばらつきが大きいことが明らかとなった。

35000380
気候・海水準変動が地下水流動に与える影響に関する解析的検討; 幌延地域を例として
操上 広志; 安江 健一; 新里 忠史; 今井 久*; 塩崎 功*; 山下 亮*
地下水流動解析とモデル化に関するシンポジウム発表論文集 , p.59-66(2007) ; (JAEA-J 01944)
 本論は、幌延地域を事例として、現在から将来にわたる長期的な地質環境の変化を予測しモデル化する方法論の整備を目的として、天然現象が地質環境に与える影響のうち、気候・海水準変動が地下水流動に与える影響を解析的に検討するものである。

35000381
J-PARCリニアック大電力高周波源の冷却水システム
堀 利彦; 千代 悦司; 山崎 正義; 長谷川 和男
第17回分子科学研究所技術研究会報告集(CD-ROM) , 4p.(2006) ; (JAEA-J 01945)
 J-PARCリニアックの大電力高周波源の基盤施設である高周波系冷却水システムの設計が2002年度から開始された。われわれはこのシステムの中心である冷却水分配用の冷却水ヘッダの評価を2003年の春から開始し、実機で使用する合計22台の製作を2003年秋までに完了した。約1年半の原子力機構内での保管期間を経て、2005年春からは新築リニアック棟への据付け,配管,調整作業などを実施し、秋にはシステムの一部運用を開始した。本論文では、このシステムの設計・評価・実機での運用などについて報告する。

35000382
AE計測とDEM解析に基づく堆積軟岩の破壊過程に関する研究
青木 謙治*; 水戸 義忠*; 黒川 進*; 松井 裕哉; 丹生屋 純夫; 南 将行*
第36回岩盤力学に関するシンポジウム講演論文集 , p.235-238(2007) ; (JAEA-J 01946)
 本研究では、堆積軟岩の破壊過程における応力変化とAE挙動の関連性を把握することを目的として、堆積軟岩の高剛性三軸圧縮試験時にAE計測を行うことで、AEパラメータと応力変化の関係を検討した。さらに、応力変化と破壊現象の関連性を把握することを目的として、粒状体個別要素法によって高剛性三軸圧縮試験のシミュレーションを行うことで、応力変化と破壊過程の関係を検討した。これらの検討の結果、卓越AE周波数の変化が堆積軟岩の破壊過程の評価に対して有効なAEパラメータであることが明らかとなると同時に、応力変化と破壊過程の関連性が明らかになった。また、実際に観測されたボアホール・ブレイクアウト現象をシミュレートし、原位置岩盤への適用性を検討した。

35000383
亀裂性岩盤におけるボーリング調査に基づく水理学的有効間隙率の設定について
澤田 淳; 竹内 真司; 三枝 博光; 天野 健治
第36回岩盤力学に関するシンポジウム講演論文集 , p.273-278(2007) ; (JAEA-J 01947)
 高レベル放射性廃棄物の地層処分における安全評価など深部岩盤中での物質の移行評価においては、地下水の移行経路に当たる岩盤の間隙中での地下水流速が重要なパラメータの一つとなる。一般に、岩盤の間隙中の地下水流速はダルシー流速を有効間隙率で除すことにより求められ、その有効間隙率の設定に際しては、地下水の移行に寄与する間隙を適切に評価する必要がある。本論では、亀裂性岩盤における水理学的有効間隙率の設定について既往の研究例を紹介するとともに、地上からのボーリング調査で取得されたデータを活用した検討事例と課題について報告する。

35000384
圧力溶解現象を考慮した珪藻質岩石の透水性評価
安原 英明*; 操上 広志; 木下 尚樹*; 岸田 潔*
第36回岩盤力学に関するシンポジウム講演論文集 , p.283-286(2007) ; (JAEA-J 01948)
 高レベル放射性廃棄物の地層処分において、処分坑道周辺の岩盤・岩石の力学及び水理学特性を長期に渡り評価・予測することは非常に重要である。処分坑道近傍では、廃棄体からの発熱により化学作用が活発化し、岩盤・岩石の力学及び水理学特性に大きな影響を及ぼすことが考えられる。本報告では、圧力溶解現象を考慮した概念モデルを用いて、熱・水・応力下における化学作用を定量化し、珪藻質岩石の透水性評価を行った。特に、珪藻質岩石の構成主要素である石英,クリストバライト,アモルファスシリカの溶解特性に着目し、深地層下における圧力,廃棄体からの発熱を考慮し、透水特性変化を定量的に評価した。その結果、90℃以下の温度条件下でも時間とともに透水性が低くなる傾向が得られた。また、クリストバライト,アモルファスシリカを多く有する珪藻質岩石は、石英系岩石よりも化学作用が大きく、透水性変化がより顕著となることが確認された。

35000385
バクテリアの放射線耐性
鳴海 一成
光合成微生物の機能と応用 , p.311-317(2006) ; (JAEA-J 01950)
 生命の遺伝情報を担うDNAは常に損傷を被る環境に曝されており、太陽からの紫外線などの外的要因,細胞呼吸によって生じる活性酸素種などの内的要因によってDNAが傷つけられる。これに対抗するために、生物はDNAの損傷を防御する機構と傷ついたDNAを修復する機構を進化の過程で獲得してきた。地球上の生物はすべて自然放射線が存在する環境のもとで生命活動を営んでいるのである。ところが、生物の放射線耐性は生物の種の違いによって大きく異なっている。無芽胞性細菌であるにもかかわらず、自然放射線の3億倍以上の強い放射線を浴びても死滅しないバクテリアが存在する。このような放射線に極めて強い無芽胞性細菌を総称して放射線抵抗性細菌と呼んでいる。筆者は、「光合成微生物の機能と応用」の第8章「光合成の微生物の宇宙・放射線への応用」で、デイノコッカス属の放射線抵抗性細菌,その他の放射線抵抗性細菌,放射線耐性獲得の起源について最新の論文を取り上げて解説した。

35000386
空間的制約条件下における深層ボーリング調査計画の最適化
江口 孝夫; 天野 健治
日本応用地質学会平成18年度研究発表会講演論文集 , p.175-178(2006) ; (JAEA-J 01952)
 地下を対象とした応用地質学的研究においては、対象とする岩盤が不均質に分布するといった自然条件に起因する問題のほか、利用可能な調査範囲やコスト,時間などに空間的・社会的な制約条件を抱えることが少なくない。このような条件下での調査計画立案に際しては、通常、目標や優先度などに基づいた調査レイアウトや調査項目が立案されるものの、調査計画案選定の際に客観的な地質情報の分析や意思決定システムによらない場合、調査計画の客観性が保てなくなり、最善案を選択できない可能性がある。本発表では、実際の深層ボーリング調査を例として、調査実施前の地質情報の不確実性を定量的に評価するとともに、空間的制約条件下のもとで立案された複数の調査レイアウトについて、AHPなどの数理モデルを用いて客観的に比較を試みたので、その評価事例について示す。

35000387
多変量解析を利用した断層分布区間の判定
鐙 顕正; 天野 健治
日本応用地質学会平成18年度研究発表会講演論文集 , p.263-266(2006) ; (JAEA-J 01953)
 地下構造物の建設工事をはじめとする多くの応用地質学的調査においては、地下水の流動を規制し、かつ岩盤の力学的安定性に大きく影響する可能性のある破砕部や変質部を伴う断層区間を正確に把握することが地質技術者に求められる。しかしながら、ボーリング調査など情報が限られた条件下での断層分布区間の認定は容易ではなく、特に主要せん断面から離れた領域におけるその影響区間の判定は、得られたデータの質・量のみならず、地質技術者の知識や経験差などに大きく左右される。本研究では、これらの課題解決を目的に、既存ボーリング孔における岩芯観察結果と物理検層値を変量とした多変量解析を導入し、断層分布区間を客観的に判定することを試みた。

35000388
流体流動電位法を用いた瑞浪超深地層研究所周辺の地下水流動モニタリング
松岡 稔幸; 仙波 毅; 石垣 孝一; 杉本 芳博*; 田上 正義*; 成田 憲文*
日本応用地質学会平成18年度研究発表会講演論文集 , p.331-334(2006) ; (JAEA-J 01954)
 日本原子力研究開発機構では、地層処分研究開発の基盤となる「深地層の科学的研究」の一環として、岐阜県瑞浪市において建設工事を進めている瑞浪超深地層研究所の用地内とその周辺において、花崗岩中の地下水流動を規制すると考えられる断層や割れ目(帯)などを把握するための調査技術の開発を行っている。この一環で、地下施設の建設に伴い地下水流動に影響を及ぼす地質構造を直接に抽出することができる物理探査技術の開発を目的に、研究所用地内で掘削中の2つの立坑(主立坑:内径6.5m,換気立坑:内径4.5m)からの排水に伴う周辺地下水の移動による流動電位の発生を利用した流体流動電位法による地下水流動のモニタリング調査を試みた。その結果、排水に伴って流動する大局的な地下水の流動を規制する断層を抽出するとともに、それを境にして地下水の流動が異なっている様子を推定することができた。

35000389
堆積岩の層序区分・対比における多変量データ解析の導入
菊地 輝行; 天野 健治
日本応用地質学会平成18年度研究発表会講演論文集 , p.521-524(2006) ; (JAEA-J 01955)
 地下構造物の建設工事においては、立地地点やその周辺における地下の地質分布の予測が安全な設計・施工を行ううえで特に重要な意味を有する。例えば、堆積岩を対象とした調査では、大量の湧水を伴う層準の位置やその連続性をボーリングデータなど離散的で限られた情報に基づいて推定する必要がある。一般に層序区分・対比は、岩相の分布状況や特定の鍵層の識別に基づいて実施されるものの、定性的な判断に依存しているため絶対的な根拠に乏しく、また精密な解釈を行うためには、地球化学データなど別の観点からの追加情報が必要となる。そこで本研究では、層序を反映すると考えられる指標として、調査現場で簡易に測定可能な帯磁率と一般的な物理検層によって得られる各種物性値を新たに取得し、多変量データとして、客観的な層序区分・対比の解析を試みたので、その評価事例について報告する。

35000390
J-PARCリニアックのEMC設備
千代 悦司; 小林 鉄也; 鈴木 浩幸; 山崎 正義; 堀 利彦; Fang, Z.*; 福井 祐治*; 川村 真人*; 山口 誠哉*; 穴見 昌三*
Proceedings of 3rd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 31st Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.962-964(2006) ; (JAEA-J 01957)
 大強度陽子加速器施設(J-PARC)のリニアック棟は平成17年4月に建屋が完成し、加速器機器の据付調整が行われている。現在、ほぼすべての機器の据付が完了し、調整作業を行っている。本発表では、インピーダンスを低く抑えるために施された接地系について報告するほか、漏れ電波測定や高調波フィルターなどについても報告する。

35000391
J-PARC 3-GeV RCS入射バンプシステムの実験と解析
高柳 智弘; 植野 智晶; 金正 倫計; 竹田 修; 山崎 良雄; 吉本 政弘; 神谷 潤一郎; 渡辺 真朗; 倉持 勝也; 入江 吉郎
Proceedings of 3rd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 31st Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.74-76(2006) ; (JAEA-J 01958)
 J-PARC 3GeV RCSの入射バンプシステムは、Linacからの入射ビーム(H-)とRCSの周回ビーム(H+)を合流させ、大強度の陽子ビームを生成する重要な機器の一つである。このうち、1号機を製作した水平シフトバンプ電磁石の磁場分布の測定と、コイル,端板、及び、側板の温度分布測定を行った。また、水平ペイントバンプ電磁石電源の24時間の連続通電試験を行った。その結果、Linacの初期ビーム出力となる181MeVビーム入射の仕様を十分満足することを確認した。

35000392
がん細胞をピンポイントで狙う
荒川 和夫
Proceedings of 3rd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 31st Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.85-89(2006) ; (JAEA-J 01959)
 近年、数MeVの高いエネルギーに加速したイオンビームを極めて細く集束させるマイクロビーム形成技術が開発され、がん細胞をピンポイントで正確に狙い撃ちすることができるようになった。その精度は、1マイクロメートルである。このマイクロビームの形成を可能にしたのが、フラットトップ加速,電磁石磁場強度の高安定化,加速電圧の高安定化などの加速器技術である。本講演では、これらのイオン加速器技術とマイクロビーム形成技術を紹介するとともに、1個の癌細胞内への抗癌剤の取り込みの様子や、個別細胞の狙い撃ちによる放射線応答機構を調べる研究などのマイクロビーム利用の現状と小さな癌を切らずに治すマイクロサージェリー治療技術について紹介する。

35000393
Uncut core loaded cavity with parallel inductor to reach Q=2 for J-PARC RCS
Schnase, A.; 長谷川 豪志; 野村 昌弘; 田村 文彦; 山本 昌亘; 穴見 昌三*; 絵面 栄二*; 原 圭吾*; 橋本 義徳*; 大森 千広*; 高木 昭*; 戸田 信*; 吉井 正人*
Proceedings of 3rd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 31st Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.145-147(2006) ; (JAEA-J 01960)
 J-PARC RCSの加速空胴の最適なQ値はQ=2である。まずカットコアを用いる構成を検討した。カットコア空胴の場合、タンクの中の半割りのコア間距離を適切にすることにより、要求されるQ値を実現する一方、インピーダンスは保たれる。しかし、間隔の狭いカットコア空胴の実現には困難が伴うことがわかった。次に、Q=2のハイブリッド空胴を検討した。6個のタンクのうち4個はアンカットコア(Q=0.6)で満たされ、2個はより広い距離(Q=4)のカットコアで満たされる。Q=4のカットコアは、Q=2の場合より間隔が広く、より製作がしやすい。しかし、カットコアの製造には未だ問題が残っていたため、day-1オペレーションはアンカットコア空胴で開始される予定となった。しかし、Q=0.6の場合、最大ビームパワーに制限がある。この発表では、ハイブリッド空胴に基づき、アンカットコア空胴に高いQ値のインダクタとコンデンサーの平行な回路を加えることで、共振周波数をアンカットコア空胴の場合の1から1.7MHzに変えるとともに、Q値を0.6から2に変えるための実現方法を示す。その結果アンカットコアで満たされた空胴により、ほぼ完全なビームパワーでのオペレーションが可能となる。

35000394
Construction of the J-PARC L3BT control system
Shen, G.; 渡邊 和彦*; 加藤 裕子; 榊 泰直; 佐甲 博之; 伊藤 雄一; 吉川 博; 塙 勝詞*; 水野 誠二*
Proceedings of 3rd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 31st Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.364-366(2006) ; (JAEA-J 01961)
 現在、J-PARCの制御系構築が進められている。そして、L3BT部のハードウエア設置が終了し、マグネット電源や真空システムのオンライン制御の試験運転(コミッショニング)が始まった。これらのコンポーネントは、機器製作と制御ソフトウエア開発が分離されて実施されており、統合試験がまだ実施されていない。そのため、今回設置が終了した後に初めてEPICSのランタイムDBと遠隔グラフィカルユーザーインターフェースにより組合せ遠隔制御を行った。本報告は、L3BTの制御系開発の現状と、これらの制御システムを用いたコミッショニングについて述べられている。

35000395
J-PARCリニアック運転・管理用インターロックシステムの構築
榊 泰直; 高橋 博樹; 石山 達也*; 川瀬 雅人; 佐甲 博之; 加藤 裕子; 伊藤 雄一; 吉川 博; 上田 晋司*; 鈴木 隆洋*
Proceedings of 3rd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 31st Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.367-369(2006) ; (JAEA-J 01962)
 大強度陽子加速器(J-PARC)リニアックでは、放射線施設として法令(予防規程)に則った人員保護を目的とするインターロックシステム(Personnel Interlock System: PP)以外に、大強度陽子ビームを扱うがゆえに、自主規制としてJ-PARC加速器施設内で起こりえる突発的なビームロストラブルを回避する目的の機器保護インターロックシステム(Machine Protection System: MPS)にて、機器を安全に保護するシステムになっている。本報告では、J-PARCリニアックのインターロックシステム、特に原子力機構の独自の技術が投入された高速・高信頼性にすぐれたMPSに関係する部分と、その他、リニアック内に設置される真空系やRF系のインターロックシステムについて説明する。

35000396
J-PARCリニアックのMPSの制御画面構築
石山 達也*; 吉川 博; 榊 泰直; 佐甲 博之; 高橋 博樹; 伊藤 雄一; 加藤 裕子; 川瀬 雅人; 上田 晋司*; 杉本 誠*; 鈴木 隆洋*; 池田 浩*
Proceedings of 3rd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 31st Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.370-372(2006) ; (JAEA-J 01963)
 大強度陽子加速器(J-PARC)では、加速陽子ビームが加速器コンポーネントに衝突するようなイベントが発生した場合、コンポーネントに大きなエネルギー付与が行われる可能性がある。このような、高エネルギーのビームが衝突した場合の熱衝撃損傷ダメージから、機器を保護・回避をするためのインターロックシステムとして、MPSが導入されている。J-PARCのリニアックは、全長約350mあり、その全域に渡りMPSユニットが設置されている。これほど、広範囲に設置されているMPSユニット一台一台をローカルで制御するのは、非常に非効率的である。そこで、J-PARCリニアックにおける、すべてのMPSユニットを一台の計算機上で、遠隔により監視・制御を行うためのGUIの構築を行った。

35000397
J-PARCリニアックにおけるデータベースシステムとコミッショニングへの応用,2
佐甲 博之; 榊 泰直; 高橋 博樹; 吉川 博; 伊藤 雄一; 加藤 裕子; 川瀬 雅人; Shen, G.; 清道 明男; 上窪田 紀彦*; 杉本 誠*; 渡邊 和彦*; 池田 浩*
Proceedings of 3rd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 31st Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.373-375(2006) ; (JAEA-J 01964)
 J-PARCリニアック制御系の基盤となるデータベースシステムの開発を行っている。J-PARCリニアックは2006年12月からビームコミッショニングを行う予定である。このシステムは機器の基本パラメータを保存するDB1,EPICSデータを収集・記録するDB2,運転パラメータの履歴記録を行う運転ログDB、さらにシミュレーション、機器のgeometry,commissioningに関する情報を取り扱うcommissioning DBから構成される。これらの各DBの開発状況について報告する。またこれらのDBを駆使したcommissioningのためのソフトウエア統合系の開発状況について報告する。

35000398
Stabilization of accelerating field using FPGA for J-PARC linac
Fang, Z.*; 穴見 昌三*; 道園 真一郎*; 山口 誠哉*; 小林 鉄也; 鈴木 浩幸
Proceedings of 3rd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 31st Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.397-399(2006) ; (JAEA-J 01965)
 J-PARCリニアックでは、加速電界の位相・振幅をそれぞれ1度,1%の精度で安定化するために、cPCIボードに組み込んだFPGAを用いてデジタルフィードバック制御を行う。また同様にDSPによって空洞の自動チューナー制御やcPCIホストCPUとの交信などを行う。FPGAでは12MHzにダウンコンバートされた加速電界信号をADCでI, Q成分に変換し、PI制御により電界を安定化させる。電界フィードバック制御と自動チューナー制御のためのソフトウェアを改善し最適化を行った。ここでは2006年の6月,7月に試験を行った。その試験結果を報告する。

35000399
J-PARC RCSの四極電磁石に隣接した電磁石による磁場干渉の測定
谷 教夫; 渡辺 泰広; 安達 利一*; 染谷 宏彦*; 五十嵐 進*
Proceedings of 3rd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 31st Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.415-417(2006) ; (JAEA-J 01966)
 J-PARC Rapid Cycle Synchrotron(RCS)の主電磁石は偏向電磁石24台,四極電磁石60台,六極電磁石18台,補正電磁石52台から構成されている。大強度陽子施設の主要加速器の一つであるRCSは、1MWの陽子ビームを発生させるために空間電荷力を抑制するうえでアパーチャを大きく取らなければならない。そのために陽子ビームを周回させる電磁石は、大口径の磁極間隙が必要となる。また、電磁石は25Hzの速い繰り返しで磁場を変化させるため、磁極端部での漏れ磁場や渦電流の影響が問題となる。特に偏向電磁石以外の電磁石は、鉄芯長と磁極間隙(ボア径)の比が小さいことから漏れ磁場による影響が懸念される。したがって、隣接する電磁石による磁場の干渉効果から高次の多極磁場成分がどのような影響を受けるのか評価することはビームロスを低減させる運転パラメータを決めるうえで重要となってくる。本論文では、四極電磁石に隣接した補正電磁石や六極電磁石の磁場の干渉効果を評価するために行った測定試験について報告する。

35000400
J-PARC RCS電磁石の磁場測定における位置調整システムの開発
芳賀 浩一; 谷 教夫; 渡辺 泰広; 染谷 宏彦*; 安達 利一*
Proceedings of 3rd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 31st Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.418-420(2006) ; (JAEA-J 01967)
 現在、高エネルギー加速器研究機構及び日本原子力開発機構共同において、J-PARC 3GeVシンクロトロン棟に高精度に設置される電磁石の磁場測定を行っている。電磁石群は、加速器の中核を占め、目標とする仕様の陽子ビームをコントロールするため、高精度な電磁石の磁場分布測定が必要である。そのため、電磁石の機械中心に対する磁場分布との関係を正確に把握することが重要となってくる。そのためには、当然、磁場測定前の電磁石のアライメントを精密に行う必要がある。そこで今回、多量の電磁石のアライメントを行う時に電磁石を易しく・高精度に位置決め、及び作業効率を向上することが可能な位置調整システムを開発した。また、3Gevシンクロトロン棟に電磁石への据付・アライメント時の際も同時にこれらの位置調整システムが使用・応用が可能となるようにした。

35000401
J-PARC RCS出射キッカ電磁石の磁場測定
倉持 勝也; 神谷 潤一郎; 金正 倫計; 竹田 修; 吉本 政弘; 高柳 智弘; 渡辺 真朗; 山崎 良雄; 植野 智晶
Proceedings of 3rd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 31st Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.421-423(2006) ; (JAEA-J 01968)
 J-PARCにおける3GeV RCSキッカ電磁石の実機が完成し、真空環境下において60kV, 25ppsでの磁場測定を行った。磁場の安定性、及び、同型キッカ電磁石の比較をし、議論を行う。

35000402
J-PARC RCS共振電源における電流制御系の開発
渡辺 泰広; 谷 教夫; 安達 利一*; 五十嵐 進*; 染谷 宏彦*
Proceedings of 3rd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 31st Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.424-426(2006) ; (JAEA-J 01969)
 J-PARC Rapid Cycle Synchrotron(RCS)の主電磁石電源は、偏向電磁石電源1台,四極電磁石電源7台から構成されており、各電源のトラッキングを取るための電流制御が必要となる。電磁石の電流波形はDCバイアスが重畳した25Hzの正弦波電流であり、電磁石はチョークトランス及び共振コンデンサから構成される共振回路を通して励磁する。本論文では、計算機制御による共振電源の電流制御系について検討を行い、RCSの主電磁石の磁場測定用に製作した試験電源を用いて実証試験を行った。

35000403
J-PARC 3-GeV RCS入射用パルス電磁石の振動測定
植野 智晶; 高柳 智弘; 金正 倫計; 竹田 修; 山崎 良雄; 吉本 政弘; 神谷 潤一郎; 渡辺 真朗; 倉持 勝也
Proceedings of 3rd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 31st Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.427-429(2006) ; (JAEA-J 01970)
 大強度陽子加速器施設(J-PARC)の3GeV RCS入射用のパルス電磁石は、大電流による高速立ち上げと立ち下げを繰り返すため電磁石は振動する。また、渦電流を抑えるためにセラミックスダクトを使用するが、電磁石の振動により割れる可能性がある。そこで、本研究では高速・高精度CCDレーザー変位計を用いて、入射用水平シフトバンプ電磁石の振動測定を行った。

35000404
J-PARCシンクロトロンRF空胴の開発
野村 昌弘; 田村 文彦; Schnase, A.; 山本 昌亘; 長谷川 豪志; 穴見 昌三*; 絵面 栄二*; 原 圭吾*; 戸田 信*; 大森 千広*; 高木 昭*; 吉井 正人*
Proceedings of 3rd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 31st Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.454-456(2006) ; (JAEA-J 01971)
 J-PARCシンクロトロンの加速空胴は、6個の水タンクからなり、各水タンクには3枚の金属磁性体コアが装填されている。冷却方式は水による直接冷却方式を採用し、加速ギャップは3か所である。この加速空胴の特長は、高い加速電圧(45kV/Cavity)を達成するために金属磁性体コアを採用している点である。このような高加速電圧の条件で金属磁性体コアを用いた例はないため、300時間の連続通電試験等を行い金属磁性体コアの開発を進めている。本発表では、この金属磁性体コアの開発状況について述べる。

35000405
J-PARC RF空胴用金属磁性体カットコアのダイヤモンド研磨
長谷川 豪志; 野村 昌弘; Schnase, A.; 田村 文彦; 山本 昌亘; 吉井 正人*; 大森 千広*; 原 圭吾*; 戸田 信*; 高木 昭*; 穴見 昌三*; 絵面 栄二*; 上野 健治*; 舟橋 義聖*
Proceedings of 3rd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 31st Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.457-459(2006) ; (JAEA-J 01972)
 J-PARC RF空胴では、高電圧運転のため従来のフェライト磁性体コアから金属磁性体(MA)コアの空胴を採用している。また、空胴のQ値を自由に調整する手法としてカットコアの技術を用いている。コアのカット法としてこれまでは、高圧力水を用いたWater Jet(WJ)法,砥石を用いた切断法を行ってきた。しかし、WJ法では切断面の粗さや切断面の層間短絡が原因でRFを印可したときにギャップ近傍に局所的な発熱が観測された。また、砥石切断では、切断面の表面処理にエッチング工程が含まれるために、そこに残留する酸が表面酸化の問題になっていた。そこで、新しい手法として導入したのが、細かなダイヤモンド粉末を用いた研磨法である。この手法の利点は、製造過程でオイルや酸を用いないため残留物によるリスクがないことである。この手法は、WJで切断した切断面を研磨する手法であるが、MAコアの層間絶縁の善し悪しは、研磨量と仕上げ面の状態に因っている。現在、ダイヤモンド研磨したコアは空胴に組み込み、長時間の検証試験を開始した。

35000406
J-PARC RCSのシンクロナイゼーションシステム
田村 文彦; Schnase, A.; 野村 昌弘; 山本 昌亘; 長谷川 豪志; 吉井 正人*; 大森 千広*; 原 圭吾*; 戸田 信*; 高木 昭*; 穴見 昌三*; 絵面 栄二*
Proceedings of 3rd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 31st Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.460-462(2006) ; (JAEA-J 01973)
 J-PARCのRCSのビームは、適切なタイミング,位相で取り出され、中性子ターゲット、及びMRに入射されなければならない。中性子ターゲットで発生した中性子はフェルミチョッパーを中心とする分光器に入射されるが、エネルギーの分解能精度を上げるために、チョッパーの開口部とビームの位相は非常に高精度で制御される必要がある。また、MR入射に際しては、適切な空きバケツに入射するだけでなく、不要なダイポール振動を避けるためには、RFバケツの中心に入射しなければならない。この発表では、RCSのビームシンクロナイゼーションに関する要求,その動作原理,製作中のモジュールについて述べる。

35000407
加速空洞チューナーコントローラのノイズ対策
鈴木 浩幸; 千代 悦司; 伊藤 崇; 長谷川 和男; 穴見 昌三*; 山口 誠哉*; 道園 真一郎*; Fang, Z.*; 内藤 富士雄*; 田中 宏和*
Proceedings of 3rd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 31st Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.493-495(2006) ; (JAEA-J 01974)
 J-PARC用加速空洞自動チューナーコントローラは加速空洞内の共振周波数を調整するための装置で温度による共振周波数のズレをカップの出し入れによって制御する装置である。しかしチューナーの現在位置(カップの挿入量)を計測する方式はポテンションメータからのアナログ値を使い表示させているため、ノイズによる影響が顕著に表れる。そのため、RFの要求スペック324MHzに対してチューナー感度10ミクロン(位相では0.17DEG)と言う精度での制御が確保することが難しいことから、チューナーコントローラのノイズ対策を施した。それにより対策前のノイズのふらつき±30ミクロンが対策後は±10ミクロンまで精度が上がった。

35000408
IOT高周波出力特性
沢村 勝
Proceedings of 3rd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 31st Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.832-834(2006) ; (JAEA-J 01975)
 JAEA ERL-FELで使用している500MHz-IOTと現在計画中のERL実証機用高周波源の1つと考えられる1.3GHz-IOTについて出力特性の測定を行った。500MHz-IOTに関しては利得22dB,バンド帯6.5MHz,効率66%の結果を得た。1.3GHz-IOTに関しては出力30kW,利得22dBとなった。

35000409
Status of beryllium R&D in Japan
河村 弘; 土谷 邦彦; 三島 良直*; 吉田 直亮*; 宗像 健三*; 石田 清仁*; 波多野 雄治*; 柴山 環樹*; 佐藤 芳幸*; 内田 宗範*; 田中 知*
INL/EXT-06-01222 , p.1-7(2006) ; (JAEA-J 01976)
 高い発電効率を目指した原型炉用高温発電ブランケットに必要な「高温・高照射量に耐えうる先進的機能材料であるベリリウム金属間化合物開発」を全日本規模の産学官連携で実施し、平成16〜17年度に得られた新しい結果と今後の開発についてまとめた。その結果、Be12Tiは既存のベリリウム金属と比較して、構造材料等との両立性が良いこと、スエリングが小さいこと、トリチウムインベントリが小さいことなどの優れた特性を有することを国内での産学官連携により明らかにした。

35000410
長崎及び熊本地方に飛散した長崎原爆由来のプルトニウム分析
國分 陽子; 安田 健一郎; 間柄 正明; 宮本 ユタカ; 桜井 聡; 臼田 重和; 山崎 秀夫*; 吉川 周作*
KEK Proceedings 2006-5 , p.36-40(2006) ; (JAEA-J 01979)
 プルトニウム型原爆が長崎に投下され60年が経った。放出されたプルトニウムは、半減期が長く、環境中に蓄積する。これまでわれわれは、爆心地から約3km東の長崎市西山地区で最も多くの原爆由来プルトニウムが蓄積しており、さらに東は熊本県の一部まで及んでいることを明らかにした。本研究では調査地域を広げ、長崎県及び熊本県に飛散した長崎原爆のプルトニウムの詳細な蓄積分布を明らかにすることを試みた。分析は土壌からプルトニウムを抽出し、ICP-MSによって240Pu/239Pu比を測定した。土壌中の240Pu/239Pu比がグローバルフォールアウトの値より低い地域は、長崎県では長崎市東部,島原半島東部、さらに熊本県では、荒尾市,玉名市,合志町,阿蘇市に広がっていた。これは、長崎原爆から放出されたプルトニウムは、爆心地から東2kmの地点から約100kmに広がり、南北は約30kmに飛散したことを示す。飛散地域は、長崎県内では原爆雲の通過地域と一致した。また熊本県のプルトニウム飛散地域は長崎県の飛散地域の風下にあたり、プルトニウムは風によって運ばれたと思われる。

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