学会誌等掲載論文
※下記の研究開発成果は資料名順に並んでいます。

2007年4月


35000507
Vacancy-type defects induced by He-implantation in ZnO studied by a slow positron beam
Chen, Z.-Q.*; 河裾 厚男
Acta Physica Sinica 55(8), p.4535-4540(2006) ; (JAEA-J 01980)
 20keVから100keVのヘリウムイオンを酸化亜鉛単結晶に全ドーズ量4E+15cm-3で注入した。注入時導入欠陥を研究するために、低エネルギー陽電子ビームを用いて消滅γ線のドップラー拡がり測定を行った。測定結果から、注入後には複原子空孔とさらに大きな原子空孔集合体が生成していることが明らかになった。400℃における熱処理により、ヘリウム原子が原子空孔集合体を占有することがわかった。さらなる熱処理で原子空孔集合体のサイズが増加することが見いだされた。800℃において、ヘリウム原子は原子空孔集合体から脱離し、原子空孔集合体も消失することが明らかになった。

35000508
Experimental study on Kα X-ray emission from intense femtosecond laser-solid interactions
Xu, M.-H.*; Chen, L.-M.; Li, Y.-T.*; Yuan, X.-H.*; Liu, Y.-Q.*; 中島 一久; 田島 俊樹; Wang, Z.-H.*; Wei, Z.-Y.*; Zhao, W.*; Zhang, J.*
Acta Physica Sinica 56(1), p.353-358(2007) ; (JAEA-J 01981)
 p分極されたフェムト秒のレーザー固体相互作用によって発生する相対論的な領域でKαのX線源の特徴を実験的に調べた。ナイフエッジのイメージ法を用いてCCDの単一光子カウントを行うことにより、KαのX線サイズ,スペクトル及び変換効率を測定した。実験結果はKαの光子の変換効率がシミュレーションの結果と異なり1.6×1018W/cm2のレーザーの強度で最適値7.08×10-6/srに達すること。X線変換効率が10%であること、及びレーザー強度1.6×1018W/cm2のときに前方芳香に電子が加速されることを発見した。

35000509
Plasma enhanced chemical vapor deposition of B-C-N films
Mannan, M. A.*; 木田 徹也*; 永野 正光*; 平尾 法恵*; 馬場 祐治
Advanced Ceramic Processing International 3(1), p.51-54(2006) ; (JAEA-J 01982)
 プラズマ誘起化学蒸着法によりホウ素-炭素-窒素系薄膜を作成し、その構造と物性を調べた。化学蒸着法の原料物質としては、液体状の有機分子であるトリスージメチルアミンボラン及びトリメチルアミンボランを用いた。フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)及びX線光電子分光法(XPS)測定の結果、作成した薄膜は、ホウ素,炭素及び窒素が相互に結合した化合物からできていることがわかった。X線回折測定及び走査型電界電子顕微鏡観察の結果、作成したB-C-N薄膜は非晶質であり、4.2-4.5ミクロンの微粒子であることが明らかとなった。得られた微粒子の硬度は2-7GPaであり、上記有機分子を用いたプラズマ誘起化学蒸着法がB-C-N薄膜作成に有効であることがわかった。

35000510
A Novel methodology for characterizing strand-break termini and damaged bases in plasmid DNA exposed to ionizing radiation
赤松 憲
Analytical Biochemistry 362(2), p.229-235(2007) ; (JAEA-J 01983)
 DNAの放射線損傷の特徴を調べるための新しい方法論を開発した。ヘビ毒ホスホジエステラーゼ(SVPD)と子牛腸アルカリ・ホスファターゼ(CIAP)から成る酵素システムを、鎖切断末端の3'側を調べるのに使用した。この研究では、鎖切断末端を2つのカテゴリー、CIAP非依存的SVPD部位とCIAP依存的SVPDに分けた。前者はSVPDがCIAP処理なしで直接認識できる鎖切断末端であり、後者はSVPDの認識にCIAP処理が必要な鎖切断末端である。SVPDで15分間処理する間に産生された未損傷デオキシヌクレオチドを定量することで放射線化学収率(G値)を見積もることができる。この方法で、Co-60γ線照射された乾燥DNAの全鎖切断G値は〜0.1μmol/Jであることがわかった。また、CIAP依存的SVPD部位のG値は0.078、CIAP非依存的SVPD部位のそれは0.024と見積もることができた。これらの結果は、生じた鎖切断3'末端'にはリン酸が残りやすいことを示している。

35000511
129I/127I ratios in Scottish coastal surface sea water; Geographical and temporal responses to changing emissions
Schnabel, C.*; Olive, V.*; 安藤 麻里子; Dougans, A.*; Ellam, R. M.*; Freeman, S.*; Maden, C.*; Stocker, M.*; Synal, H.-A.*; Wacker, L.*; Xu, S.*
Applied Geochemistry 22(3), p.619-627(2007) ; (JAEA-J 01984)
 スコットランドの海水中129I/127Iを2003年から2005年にかけて測定し、西スコットランドにおける最初の129I/127Iデータを含む全体的な分布を示した。南西スコットランドにおける129I/127I比は2004年において3×10-6であった。北東スコットランドにおける129I/127Iは1992年から2003年の間に約6倍に増加しており、セラフィールド再処理工場からの129I液体放出の上昇を反映している。

35000512
129I/127I ratios in surface waters of the English Lake District
安藤 麻里子; Schnabel, C.*; Cook, G.*; MacKenzie, A. B.*; Dougans, A.*; Ellam, R. M.*; Freeman, S.*; Maden, C.*; Olive, V.*; Synal, H.-A.*; Xu, S.*
Applied Geochemistry 22(3), p.628-636(2007) ; (JAEA-J 01985)
 英・セラフィールド再処理工場に近い湖水地方において、海水,湖水及び河川水中の129I/127Iを2004年及び2005年に加速器質量分析装置(AMS)を用いて測定した。アイリッシュ海の129I/127I比は2.8×10-6から8.2×10-6であり、再処理工場からの液体放出の増加を反映して、1992年の測定結果の約10倍に増加した。湖水地方の湖水中129I/127Iは0.7×10-6から6.4×10-6であり、再処理工場からの距離に応じて指数関数的に減少した。

35000513
Low-density tin targets for efficient extreme ultraviolet light emission from laser-produced plasmas
奥野 智晴*; 藤岡 慎介*; 西村 博明*; Tao, Y.*; 長井 圭治*; Gu, Q.*; 上田 修義*; 安藤 強史*; 西原 功修*; 乗松 孝好*; 宮永 憲明*; 井澤 靖和*; 三間 圀興*; 砂原 淳*; 古河 裕之*; 佐々木 明
Applied Physics Letters 88(16), p.161501_1-161501_3(2006) ; (JAEA-J 01986)
 レーザー生成プラズマからのEUV光の発生効率に対する初期密度の影響について実験的及び理論的に解析した。Sn密度が固体の7%の低密度フォームターゲットを波長1μmのYAGレーザーで照射する条件で、波長13.5nm, 2%帯域への変換効率が、固体ターゲットの場合の1.7倍(2.2%)まで向上することがわかった。効率の改善の理由は、ターゲットのマイクロストラクチャの効果及び、低密度化による膨張ダイナミックスの変化やオパシティの減少の効果,それによる発光スペクトルの狭窄化によると考えられる。

35000514
Structural basis for the fast phase change of Ge2Sb2Te5; Ring statistics analogy between the crystal and amorphous states
小原 真司*; 加藤 健一*; 木村 滋*; 田中 均*; 臼杵 毅*; 鈴谷 賢太郎; 田中 宏志*; 守友 浩*; 松永 利之*; 山田 昇*; 田中 義人*; 壽榮松 宏仁*; 高田 昌樹*
Applied Physics Letters 89(20), p.201910_1-201910_3(2006) ; (JAEA-J 01987)
 アモルファス-結晶相変化型記録(DVD)材料として代表的なアモルファスGe2Sb2Te5の3次元的原子配置を放射光X線回折と逆モンテカルロシミュレーションによって明らかにした。その結果、アモルファスGe2Sb2Te5の構造は、4と6の偶数個の原子がつくるリングから成り立っており、Ge2Sb2Te5結晶がNaCl型で4員環(4角形)のみからなることと類似している。一方、あまり相変化記録速度の速くないアモルファスGeTeでは、Ge-Ge結合が優先的にできてしまうために奇数個の原子からなるリングも多数存在する。こうした結晶とのトポロジカルな類似性がアモルファスGe2Sb2Te5の相変化(結晶化)速度を速め、DVD材料として適当とならしめていることが明らかになった。

35000515
Existence of ferroelectric ice in the universe
深澤 裕; 星川 晃範; 石井 慶信; Chakoumakos, B. C.*; Fernandez-Baca, J. A.*
Astrophysical Journal 652(1, Part2), p.L57-L60(2006) ; (JAEA-J 01988)
 強誘電体の氷は低温で安定構造として存在するのだろうか?この問題は固体物理の分野はもとより天文学の分野(例えば、冥王星に強誘電体の氷は存在するのか?)でも関心が高い。私たちは、中性子回折の研究から、最も少ないレベルの不純物のドープによって最大の強誘電体氷が形成される温度条件を見いだした。この発見は、強誘電体の氷が安定構造であることを明瞭に示している。したがって、本研究で見いだした温度条件を満たす宇宙空間において自然に発生した強誘電体の氷が存在するものと予見される。

35000516
A Remote valency control technique; Catalytic reduction of Uranium(VI) to Uranium(IV) by external ultrasound irradiation
虎石 貴; 木村 貴海; 有阪 真
Chemical Communications (3), p.240-241(2007) ; (JAEA-J 01989)
 本研究では、白金黒触媒による超音波照射誘起化学反応の増強効果について報告している。水溶液に対する超音波照射は水素ラジカルやOHラジカルを生成するため、水溶液内の金属イオンの酸化還元を引き起こすことが知られている。これまでも超音波照射によってアクチノイドイオンの原子価が変化することは知られていたが、その効果は弱く、アクチノイド分離に必要な酸化還元力をもたらすことは不可能であると考えられてきた。本研究では、白金黒固体触媒が超音波照射によって引き起こされる化学反応を著しく増強することを初めて発見し、この増強効果の実証のために、白金黒触媒共存下における6価ウランを超音波照射によって4価へと還元した。なお、還元を進行させるためには、酸化剤としてはたらくOHラジカル捕捉のために、2-propanolで飽和させたArガスのバブリングによる2-propanolの継続供給が必須条件であることも明らかにした。

35000517
An Electrochemical sensor array for in-situ measurements of oxide film electric resistance in high temperature water
内田 俊介; 佐藤 智徳; 柿沼 永郎*; 宮澤 孝裕*; 佐藤 義之*; M"akel"a, K.*
ECS Transactions 2(25), p.39-50(2007) ; (JAEA-J 01990)
 沸騰水型原子炉の1次系における腐食環境は酸素,過酸化水素、もしくはほかの腐食性放射線分解生成種により決定される。共存酸素濃度を最小化した状態で過酸化水素濃度を制御可能な高温高圧水ループ装置を腐食環境における過酸化水素の役割を評価するために作成し、酸素及び過酸化水素を含む高温水中に浸漬させたステンレス鋼の腐食における静的挙動として腐食電位(ECP)を、動的挙動として周波数依存複素インピーダンス(FDCI)を測定した。同時に高温水中において試験片表面に形成される酸化被膜の電気抵抗をin-situ測定により同定した。高温水中における測定により、過酸化水素濃度がECP測定とFDCI測定の複合測定により決定可能であることを確認した。この過酸化水素濃度のデータは、原子炉の炉内構造材の応力腐食割れの発生や進展挙動の評価に役に立てることができる。

35000518
Real-time observation of initial thermal oxidation on Si(110)-16×2 surface by photoemission spectroscopy
末光 眞希*; 加藤 篤*; 富樫 秀晃*; 今野 篤史*; 山本 喜久*; 寺岡 有殿; 吉越 章隆; 遠田 義晴*; 成田 克*
ECS Transactions 3(2), p.311-316(2006) ; (JAEA-J 01991)
 Si(110)表面の初期熱酸化過程を放射光を活用したリアルタイムX線光電子分光法で調べた。Si(110)表面の初期酸化は酸素ガス導入直後の急激な酸化の存在で特徴付けられる。O1s光電子ピークのピーク分離によると少なくとも二つの独立した酸化サイトの存在が示唆された。それらはSi(110)-16×2表面の複雑な構造を反映しているようである。

35000519
Anomalous magnetic moment of 9C and shell quenching in exotic nuclei
宇都野 穣
European Physical Journal A 25(S1), p.209-212(2005) ; (JAEA-J 01992)
 近年、不安定核構造の研究の進展とともに殻構造において不安定核と安定核とでは大きな相違があることがわかりつつあり、魔法数の認識の変更が迫られている。このことは実験で得られた基底状態の核構造と殻模型に代表される微視的な理論研究との比較によって明らかになったものである。発表者らはこれまでN=20領域の不安定核の殻構造についておもに研究してきたが、本講演では、N=8魔法数が同様に消滅するかどうか、さらにそれが核構造にどのような影響を与えうるかを殻模型により研究した成果を発表する。1995年に初めて測定された陽子過剰核9Cの基底状態における磁気モーメントは基底状態における非常に大きなスピン期待値を与えるため、その明確な理論的解釈はこれまで与えられてこなかった。われわれはN(Z)=8の魔法数が消滅することに着目し、まず不安定核における殻の縮まりの程度を現象論的に取り入れた。さらに、9Cは弱束縛系であるためトーマス・エルマン効果によってさらに殻ギャップが狭まりうるが、それを取り入れると9CではZ=8の魔法数を破った配位が増大し、実験値の磁気モーメントを再現することを示した。この計算結果は不安定核の殻の縮まりの程度が従来考えられていたよりも大きく、それが核構造に大きな影響を与えうることを示したものである。

35000520
Evidence for p-process nucleosynthesis recorded at the solar system abundances
早川 岳人; 岩本 信之; 静間 俊行; 梶野 敏貴*; 梅田 秀之*; 野本 憲一*
European Physical Journal A 27(S1), p.123-128(2006) ; (JAEA-J 01993)
 ビックバンで、水素からリシウムまでの軽元素が生成された。より重い元素は、銀河系内に存在した、さまざまな恒星の中の核反応で生成され、星間物質に蓄積されていった。その中から、約46億年前に太陽系が誕生した。そのため、太陽組成には過去に行われた銀河系内の元素合成が記録されている。鉄より重い重元素の約99%は、2つの中性子捕獲反応過程で生成されたことが判明している。その一方で、中性子では生成できないp核と呼ばれる原子核が存在しており、過去50年間にわたり天体起源が研究されてきた。これまで提案された仮説は、高エネルギー宇宙線により破砕反応,中性子のX線バーストによる急速な陽子捕獲反応,超新星爆発の光核反応による生成,超新星爆発のニュートリノ反応による生成等である。われわれは、太陽組成から、このp核が、中性子で生成された種となる原子核から、超新星爆発のような膨大な光による光核反応で生成された証拠を発見した。

35000521
Scattering of 11Be halo nucleus from 209Bi at coulomb barrier
Mazzocco, M.*; Signorini, C.*; Romoli, M.*; De Francesco, A.*; Di Pietro, M.*; Vardaci, E.*; 吉田 光一*; 吉田 敦*; Bonetti, R.*; De Rosa, A.*; Glodariu, T.*; Guglielmetti A.*; Inglima, G.*; Commara, M. La*; Martin, B.*; Pierroutsakou, D.*; Sandoli, M.*; Soramel, F.*; Stroe, L.*; Kanungo, R.*; Khai, N.*; 本林 透*; 野村 亨*; 石川 智子*; 石山 博恒*; Jeong, S.*; 宮武 宇也; 田中 雅彦*; 菅井 勲*; 渡辺 裕*
European Physical Journal A 28(3), p.295-299(2006) ; (JAEA-J 01994)
 弱く束縛されたハロー核 11Beの209Bによる散乱を40MeVで測定した。低強度・低エミッタンスの放射性ビームによる実験であったが、8個のSiテレスコープからなる大立体角(〜2π sr)かつコンパクトな検出器により測定が可能となった。9,11Beの散乱角度分布と相対的な核反応断面積は、似たような振る舞いであることがわかった。このことは、クーロン障壁近傍におけるハロー構造あるいは弱く束縛された系の反応機構に与える影響は余り大きくないことを示唆するものである。

35000522
Excited states in neutron-rich 188W produced by an 18O-induced 2-neutron transfer reaction
静間 俊行; 石井 哲朗; 牧井 宏之; 早川 岳人; 重松 宗一郎; 松田 誠; 井手口 栄治*; Zheng, Y.*; Liu, M.*; 森川 恒安*; Walker, P. M.*; 大井 万紀人*
European Physical Journal A 30(2), p.391-396(2006) ; (JAEA-J 01995)
 186W(18O,16O)反応を用いて中性子過剰核188Wの励起状態を生成した。高分解能のシリコンΔ E-E検出器を用いて散乱粒子を測定し、放出γ線との同時計測を行った。その結果、188W核の基底状態回転帯について、Iπ=8+の状態までの観測に成功した。また、γバンド,オクタポールバンド及び2準粒子配位に基づく状態を新たに発見した。自己無撞着HFBクランキング模型を用いることにより、基底状態回転帯の励起エネルギーをよく再現できることがわかった。また、188W核は、3軸非対称性がやや強いことを明らかにした。さらに、blocked-BCS模型を用いて、2準粒子配位のエネルギー準位の計算を行い、Iπ=7-10 -状態が核異性体となる可能性が高いことを明らかにした。

35000523
Studies of 213g,mRa and 214g,m by α and γ decay
Kuusiniemi, P.*; Hessberger, F. P.*; Ackermann, D.*; Antalic, S.*; Hofmann, S.*; 西尾 勝久; Sulignano, B.*; Kojouharov, I.*; Mann, R.*
European Physical Journal A 30(3), p.551-559(2006) ; (JAEA-J 01996)
 214Raと213Raの崩壊核分光実験をα及びγ崩壊の測定によって調べた。これらの原子核は170Er(48Ca,xn)218-xRa又は170Er(50Ti,3n)217Thで生成される217Thのα崩壊核種として生成した。蒸発残留核は、ドイツGSIにおける反跳生成核分離装置SHIPで分離され、焦点におけるシリコン検出器でα崩壊を測定し、ゲルマニウム検出器でγ線を測定した。本実験から、次のことが明らかになった。(1)209Rnの励起準位に崩壊する213Raのα線とγ線のコインシデンスデータから、新たに3つの209Rnの励起準位のスピン・パリティを決定した。このうち、511keVの励起準位に遷移するα崩壊を初めて観測した。(2)214Raの8+アイソマーから、210Rnの8+アイソマに遷移するα崩壊を初めて観測した。計算で決定したHindrance Factorが1.0であることから、同じスピン間の遷移であることを確認した。

35000524
Alpha-γ decay studies of 255Rf, 251No and 247Fm
Hessberger, F. P.*; Hofmann, S.*; Ackermann, D.*; Antalic, S.*; Kindler, B.*; Kojouharov, I.*; Kuusiniemi, P.*; Leino, M.*; Lommel, B.*; Mann, R.*; 西尾 勝久; Popeko, A. G.*; Sulignano, B.*; Saro, S.*; Streicher, B.*; Venhart, M.*; Yeremin, A. V.*
European Physical Journal A 30(3), p.561-569(2006) ; (JAEA-J 01997)
 255Rf, 251No及び247Fmについて、α線とγ線の検出による崩壊核分光実験を行った。実験は、ドイツ重イオン研究所の線形加速器施設UNILACにおける反跳生成核分離装置SHIPを用いて行った。SHIPで分離された蒸発残留核を焦点に設置したシリコン検出器に打ち込んだ。この検出器でα崩壊を検出し、また近くに設けたGe検出器でγ線を検出した。これら同位体は、207Pb(50Ti,2n)255Rf及びこの255Rfのα崩壊核種として生成し、さらに206Pb(48Ca,3n)251No反応及びこの251Noのα崩壊核種として生成した。解析から次のことがわかった。(1)251Noには半減期1.0秒のアイソマがあることがわかっていたが、このエネルギー準位が106keVであることがわかった。(2)また、251Noには2μsの半減期を持つ第2のアイソマがあり、206Pb(48Ca,3n)251No反応で直接生成されることがわかった。このアイソマは、2本のγ線とコインシデンスし、解析から励起エネルギーが1700keV以上の準位にあることが示唆された。この2本のγ線は、255Rfのα崩壊につづくγ遷移と一致した。

35000525
Enhanced ELMy H-mode performance with reduced toroidal field ripple in JT-60U
大山 直幸; 浦野 創; 吉田 麻衣子; 竹永 秀信; 篠原 孝司; 櫻井 真治; 正木 圭; 神谷 健作; 諌山 明彦; 鈴木 隆博; 小出 芳彦; 都筑 和泰*; 井手 俊介; 仲野 友英; 朝倉 伸幸; 久保 博孝; 武智 学; 坂本 宜照; 鎌田 裕; 藤田 隆明; 三浦 幸俊; Gormezano, C.*; JT-60チーム
Europhysics Conference Abstracts (CD-ROM) 30I, 4p.(2006) ; (JAEA-J 01998)
 トロイダル磁場リップル低減のため、JT-60Uではフェライト鋼を真空容器内に設置した。その結果、加熱用中性粒子ビームの損失低減やトロイダル回転分布の変化が観測されるとともに、改善閉じ込めモードの性能を大幅に向上することに成功した。リップル低減効果の大きい体積の大きな配位では周辺部輸送障壁の圧力が10〜15%上昇し、閉じ込め改善度も10〜15%上昇した。周辺部輸送障壁の幅と勾配をフェライト鋼設置前後で比較して見ると、幅が広くなるとともに勾配も大きくなっており、輸送とMHD安定性の両方が改善していることを示唆している。また、中性粒子ビームの損失低減による実効的な加熱パワーの増加とトロイダル回転の変化に伴う閉じ込め性能改善の結果、高い規格化ベータ値(βN)と高いthermal成分の閉じ込め性能(H98)の維持時間を伸張することができた。H98が1程度でβNが2.3以上の放電をq95〜3.3において23.1秒間(電流拡散時間の12倍程度)維持した。このとき達成したβNH98は2.2以上であり、ITERの標準運転シナリオでの値である〜1.8を上回っている。

35000526
A Simulation study on stable current shutdown in non-inductive reversed shear tokamak discharges
武井 奈帆子; 牛込 雅裕*; 鈴木 隆博; 中村 幸治; 高瀬 雄一*
Europhysics Conference Abstracts (CD-ROM) 30I, 4p.(2006) ; (JAEA-J 01999)
 国際熱核融合実験炉ITERの定常運転モードとして有望な負磁気シアプラズマではMHD不安定性が起き易く、小規模なMHD変動と自律的な回復を繰り返すマイナー・ディスラプション現象がしばしば観測されている。JT-60Uの負磁気シアプラズマでは、外部駆動電流が消失した後、メジャー・ディスラプションには至らなかったものの小規模なMHD変動と自律的な回復を繰り返す未解明な現象が観測されている。このようなプラズマ内部で強い分布構造を持つ非誘導的な自発電流と外部駆動電流挙動を明らかにすることは、特に、ディスラプションを回避しながらプラズマ電流を立ち下げる際の制御手法を検討するうえで重要となってくる。本研究では、プラズマの輸送改善モデルや外部導体との電磁相互作用を組み込んだMHDシミュレーションによって、外部駆動電流が消失した後の非誘導電流駆動プラズマ挙動を考察する。

35000527
Compact toroid injection system for JFT-2M
福本 直之*; 小川 宏明; 永田 正義*; 宇山 忠男*; 柴田 孝俊; 柏 好敏; 鈴木 貞明; 草間 義紀; JFT-2Mグループ
Fusion Engineering and Design 81(23-24), p.2849-2857(2006) ; (JAEA-J 02001)
 JFT-2Mでは、兵庫県立大学との協力研究で先進燃料補給法であるコンパクト・トロイド(CT)入射による粒子補給法の開発を進めてきた。CTプラズマの性能(速度,密度)は、入射装置の生成電源,加速電源の性能に強く依存する。そのため、高性能で安定な電源が必要とされる。JFT-2M用入射装置の加速電源には、電流値400kA,立上がり時間10μs以下の高速大電流電源を使用している。通常このような電源のスイッチにはギャップスイッチが使用されるが、JFT-2M用入射装置では放電時のノイズを低減するため、イグナイトロンを使用した設計となっている。そのため、放電回路のインダクタンスの低減と耐電圧から生成電源では6本、加速電源では14本のイグナイトロンを使用する構成となった。これらのイグナイトロンを同時に駆動するために、印加するスタートパルスの波形や電圧を最適化した。その結果、生成電源,加速電源とも1μs以下の精度で放電のタイミングを制御することができた。この電源を使用したCTプラズマの生成加速実験で、生成電源の放電開始から加速電源の放電開始までの遅延時間には最適値があり、1μsの違いにより生成されるCTプラズマの性能が大きく変化することが明らかとなった。

35000528
Suppression of fast electron leakage from large openings in a plasma neutralizer for N-NB systems
柏木 美恵子; 花田 磨砂也; 山名 貴志*; 井上 多加志; 今井 剛*; 谷口 正樹; 渡邊 和弘
Fusion Engineering and Design 81(23-24), p.2863-2869(2006) ; (JAEA-J 02002)
 核融合発電炉用中性粒子入射装置(N-NB)に必要なシステム効率(50%以上)を達成するためには、現在のガス中性化セル(中性化効率60%)に変わり、中性化効率80%以上のプラズマ中性化セルの開発が重要となっている。ここでは、低ガス圧・高電離プラズマ、例えば1MeVの負イオンに対して0.08Pa以下,電離度30%以上で3m長のプラズマが必要である。しかし、このような低ガス圧下では、電離に寄与する高速電子の平均自由行程は装置長より長くなるため、プラズマ中性化セルのビーム通過用大開口部からの高速電子損失が問題となっている。この高速電子漏洩を抑制するために、電子軌道解析により開口部に印加する横磁場を設計検討した。その結果を反映し、アーク放電型プラズマ中性化セル(長さ2m,直径60cm)の大開口部(20cm直径)近傍に約30ガウスの弱い横磁場を印加した。ラングミュアプローブによる電子エネルギー分布関数測定から、多数の漏洩高速電子が、横磁場印加後、プラズマ内に戻されたことがわかり、アーク効率(プラズマ密度/アークパワー)は0.08Pa以下の低ガス圧においても1.5倍となった。これにより、30ガウス程度の弱い横磁場印加が、プラズマ中性化セルの開口部からの高速電子漏洩の抑制、及びアーク効率の増大に有効であることを明らかにした。

35000529
Kinetic analysis of carbon-11-labeled carbon dioxide for studying photosynthesis in a leaf using positron emitting tracer imaging system
河地 有木; 阪本 浩一*; 石井 里美; 藤巻 秀; 鈴井 伸郎; 石岡 典子; 松橋 信平
IEEE Transactions on Nuclear Science 53(5), p.2991-2997(2006) ; (JAEA-J 02003)
 植物の光合成機能の環境応答を生体組織・器官レベルで解明することは、農学的に重要であるだけでなく、植物生理学における栄養素収支の理解のためにも重要である。本研究では光合成産物の輸送元である葉に注目し、葉における炭素の動態を解析することで、光合成における主要プロセスである二酸化炭素固定及び光合成産物送り出しの定量を可能にする解析法を開発した。解析モデルには2コンパートメントモデルを適用し、11Cで標識した二酸化炭素をPETISで撮像する実験を行った。測定データと解析モデルが推定した炭素濃度時間変化に一致が見られたため解析法の妥当性が示され、二酸化炭素固定速度及び光合成産物送り出し率の定量を可能にした。その結果、光強度を増加させると葉の炭素固定速度は単調に増加するが、光合成産物の送り出しへの影響は少ないことがわかった。

35000530
Comparison of above bandgap laser and MeV ion induced single event transients in high-speed Si photonic devices
Laird, J. S.*; 平尾 敏雄; 小野田 忍; 伊藤 久義; Johnston, A.*
IEEE Transactions on Nuclear Science 53(6), p.3312-3320(2006) ; (JAEA-J 02004)
 ピコ秒の単一パルスレーザー(788nm)及び単一イオンが誘起するシングルイベント過渡電流の比較を行った。パルスレーザーを用いてイオンを模擬することが可能となれば、実験時間の短縮や実験費用の削減に繋がる。実験に使用したパルスレーザー及びイオンのビーム径はおよそ1μmとした。実験とデバイスシミュレータにより求めた過渡電流を比較した結果、アンバイポーラ拡散が起因となって発生する電流については、パルスレーザーでイオンを模擬することができないことが明らかとなった。しかしながら、アンバイポーラ拡散の後に発生するドリフト電流成分については、パルスレーザーでイオンを模擬することができることが明らかとなった。

35000531
Flowsheet study of the thermochemical water-splitting iodine-sulfur process for effective hydrogen production
笠原 清司; 久保 真治; 日野 竜太郎; 小貫 薫; 野村 幹弘*; 中尾 真一*
International Journal of Hydrogen Energy 32(4), p.489-496(2007) ; (JAEA-J 02005)
 日本原子力研究開発機構(JAEA)は、高温ガス冷却炉(HTGR)の1000℃付近の核熱を用いて効率よく水素を製造する熱化学的水素製造法ISプロセスの研究開発を行っている。JAEAではこれまでに連続水素製造のためのプロセス制御,HI分解工程,耐食性構造材料の予備的スクリーニングの研究を行ってきている。ここでは、膜を用いたHI分解工程のフローシート研究に焦点をおいて、研究開発の現状の解説を行う。

35000532
Estimation of radiation tolerance to high LET heavy ions in an anhydrobiotic insect, Polypedilum vanderplanki
渡邊 匡彦*; 坂下 哲哉; 藤田 昭彦*; 黄川田 隆洋*; 中原 雄一*; 浜田 信行*; 堀川 大樹*; 和田 成一*; 舟山 知夫; 小林 泰彦; 奥田 隆*
International Journal of Radiation Biology 82(12), p.835-842(2006) ; (JAEA-J 02006)
 本研究の目的は、乾燥耐性昆虫として知られるネムリユスリカP. vanderplankiの高LET放射線に対する抵抗性を線量応答等に関して特徴づけることである。LETが16.2から321keV/μmである3種の重イオン線を1から7000Gyの線量で非乾燥幼虫と乾燥幼虫に照射し、幼虫の生存率、及びその後の形態変化について調べた。すべての高LET放射線に関して、低LET放射線であるγ線照射の結果と同様に、乾燥幼虫は、非乾燥幼虫と比べて、一貫して、放射線に対してより抵抗性であった。抵抗性の要因としてはトレハロースの寄与が示唆されるが、今後の詳細な検討が必要である。また、RBE値は、116keV/μmで最大値を示した。一方、近縁種との比較から、非乾燥幼虫において、近縁種よりも高LET放射線に対してネムリユスリカがより抵抗性であることがわかった。

35000533
Radiation tolerance in the tardigrade Milnesium tardigradum
堀川 大樹*; 坂下 哲哉; 片桐 千仭*; 渡邊 匡彦*; 黄川田 隆洋*; 中原 雄一*; 浜田 信行*; 和田 成一*; 舟山 知夫; 東 正剛*; 小林 泰彦; 奥田 隆*; 桑原 幹典*
International Journal of Radiation Biology 82(12), p.843-848(2006) ; (JAEA-J 02007)
 クマムシとは、体長がおよそ0.1〜1.0mmの緩歩動物門に属する動物群の総称である。陸生のクマムシは、通常80%程度である体内の水分含量率がおよそ1%にまで脱水してanhydrobiosis (無水生命)という無代謝状態に移行する特徴がある。クマムシは、無水生命状態において、さまざまな極限環境(高温・低温・高圧・有機溶媒などへの暴露)に耐性を示す。本研究では、この生物における放射線耐性に着目し、クマムシの一種であるオニクマムシ(Milnesium tardigrdum)に対し、活動状態及び無水生命状態において60Co-γ線(1〜7kGy)あるいは4Heイオンビーム(12.5MeV/amu, LET: 16.2keV/μm; 1〜8kGy)を照射し、照射直後から照射後31日間飼育後までの短期・長期生存率及び生殖能への影響を調べた。照射48時間後の半致死線量(LD50)は、活動状態では5.0kGy(γ線)及び6.2kGy(4Heイオンビーム)であり、無水生命状態では4.4kGy(γ線)及び5.2kGy(4Heイオンビーム)であった。活動状態でも無水生命状態でも、照射したγ線の線量に応じた寿命短縮効果が見られた。2kGy以上のγ線照射によってほとんどすべての個体で産卵が阻害され、例外的に3個産卵した唯一の個体の場合も、その卵は孵化しなかった。

35000534
In situ hydraulic tests in the active fault survey tunnel, Kamioka mine, excavated through the active Mozumi-Sukenobe fault zone and their hydrogeological significance
野原 壯; 田中 秀実*; 渡辺 邦夫*; 古川 昇*; 高見 明*
Island Arc 15(4), p.537-545(2006) ; (JAEA-J 02008)
 陸域地下構造フロンティア研究の一環として、茂住-祐延断層を貫く活断層調査トンネルにおいて、活断層の水理地質構造の調査を行った。茂住-祐延断層は、地下では分岐断層として観察される。地表から地下約300mのトンネルまで、主要な水みちとなる導管様の構造が、断層近傍に偏在する。この水みちは、破砕の進んだ断層角礫帯に一致せず、また、断層粘土とも一致しない。共役リーデル剪断面を構成する高角断層が観察されるダメージゾーンと断層角礫の混在部分が、この主要な水みちとなる構造を提供している。この構造は、跡津川断層系における"conjugate Riedel shears"として形成されたことが示唆される。

35000535
Particle modeling of transport of α-ray generated ion clusters in air
Tong, L.*; 南部 健一*; 平田 洋介*; 泉 幹雄*; 宮本 泰明; 山口 大美
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 45(10B), p.8217-8220(2006) ; (JAEA-J 02009)
 α線で電離したイオンの空気輸送を解析するためのテスト粒子モンテカルロ法を開発した。得られた結果は、α放射能計測装置の設計・開発に有用なデータである。構築したイオン-分子衝突モデルは実測値とよく合う。正負イオンの再結合はNanbu & Denpohの方法で扱った。0.001〜1atmのガス圧力に対し、イオン流れ場の定常状態を実現できた。

35000536
Orientation of thin films synthesized from silicon phthalocyanine dichloride on a highly oriented pyrolytic graphite investigated using near edge X-ray absorption fine structure
Deng, J.; 関口 哲弘; 馬場 祐治; 平尾 法恵*; 本田 充紀
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 46(2), p.770-773(2007) ; (JAEA-J 02010)
 直線偏光放射光を用いたX線吸収端微細構造法により、有機デバイスの候補材料として期待されているシリコンフタロシアニン化合物薄膜の配向性について調べた。高配向性グラファイト表面に、スピンコート法によりシリコンフタロシアニン2塩化物の溶液を滴下した後、空気中で345℃に加熱することにより、Si-C結合が解裂し、空気中の酸素によりSi-Oに変化することがわかった。この試料のについて、直線偏光した放射光を用いたSi K-吸収端のX線吸収端微細構造スペクトルを測定した結果、Si 1sから価電子帯の非占有軌道への共鳴吸収ピークの強度に顕著な偏光依存性が認められた。偏光解析の結果、Si-N結合軸は表面に平行に近いのに対して、Si-O軸は表面に垂直に近いことがわかった。この結果から、(1)シリコンフタロシアニン2塩化物はシリコンフタロシアニン酸化物結晶を容易に合成するためのよい前駆体であること,(2)この方法で作成したシリコンフタロシアニン酸化物薄膜は基板表面に対して配向しているため良質な電子物性を持つ有機薄膜となりうること、の2点が明らかとなった。

35000537
Structure of beam tracks induced by swift heavy ions in Bi2Sr2CaCu2O8 superconductors
笹瀬 雅人*; 岡安 悟; 山本 博之; 倉田 博基*; 北條 喜一
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 46(2), p.783-786(2007) ; (JAEA-J 02011)
 数MeV程度以上の高エネルギー重イオンが絶縁体,半導体等の固体に照射された場合、その飛程に沿って円柱状の欠陥が生成する。高温超伝導体における円柱状欠陥は、磁束のピン止め点として臨界電流密度の向上に寄与することから、イオン照射条件と生成する円柱状欠陥の形状との関係を把握し、欠陥生成における支配的な要因を見いだすことが特性向上の鍵となり得る。本研究では、60〜600MeVの重イオン(Au+, I+, Br+, Ni+)をBi2Sr2CaCu2O8超伝導薄膜に照射し、各照射条件下で得られた円柱状欠陥の径について高分解能透過型電子顕微鏡を用いて評価した。この結果、イオン速度の増加に伴い円柱状欠陥の径が減少すること、及び径の分布の標準偏差が小さくなることを見いだした。本実験条件下におけるイオンの平均自由行程の計算値との比較から、核衝突により生成したカスケードが径の分布に影響を与えていることが示唆された。これらの結果はイオン速度が欠陥生成に影響を与えていることを示しており、数MeV以上の重イオン照射においても核衝突の効果が無視できないことが明らかとなった。

35000538
Generation and application of ultrahigh monochromatic X-ray using high-quality 57FeBO3 single crystal
三井 隆也; 瀬戸 誠; 菊田 惺志*; 平尾 直久*; 大石 康生*; 武居 文彦*; 小林 康浩*; 北尾 真司*; 東谷口 聡*; 増田 亮*
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 46(2), p.821-825(2007) ; (JAEA-J 02012)
 57Feを富化した反強磁性体57FeBO3単結晶のネール温度近傍における純核ブラッグ反射を利用して、SPring-8の日本原子力研究開発機構の専用ビームラインBL11XUにおいて、neVオーダーのエネルギー分解能を持つ超単色のシングルラインX線を12000cpsの世界最高の強度で発生することに成功した。本実験では、得られた超単色X線のビーム特性と放射光メスバウアースペクトル測定におけるパフォーマンスが調べられた。放射光の微小ビームを利用した典型例として、ダイアモンドアンビルセル内の超高圧下における鉄多結晶の圧力誘起磁気転移も観測された。

35000539
Spectroscopic and electrochemical properties of europium(III) ion in hydrophobic ionic liquids under controlled condition of water content
永石 隆二; 有阪 真; 木村 貴海; 北辻 章浩
Journal of Alloys and Compounds 431(1-2), p.221-225(2007) ; (JAEA-J 02013)
 イオン液体(IL)中でのユウロピウムEu(III)イオンの配位状態とその物理化学的挙動を解明するため、負イオン(bis(trifluoromethanesulfonyl)imide=tfsi)と正イオン(イミダゾリウム又はアンモニウム)から構成される疎水性IL中で、Eu(III)の分光及び電気化学特性を水分量の関数として調べた。分光学的研究では、発光寿命から決定したEu(III)の内圏水和数の増加とともに、Eu(III)の配位子場の非対称性を示す発光スペクトルのピーク強度比が減少した。水和数9の場合Eu(III)がIL中で水和イオンのような分光特性を示すこと,水和数9未満でtfsiイオンがEu(III)への内圏配位と励起Eu(III)の消光に関与することを明らかにした。電気化学的研究では、Eu(III)/(II)の酸化波又は還元波を測定し、水溶液での結果と比較して、ピーク電位の正側へのシフトとピーク電流の減少をIL中で確認した。これらは、Eu(II)が水溶液中に比べ安定に存在できること、IL中でのEuの動きがILのイオン対により阻害されることを示す。

35000540
Hydration of alkali ions from first principles molecular dynamics revisited
池田 隆司; Boero, M.*; 寺倉 清之*
Journal of Chemical Physics 126(3), p.034501_1-034501_9(2007) ; (JAEA-J 02014)
 常温常圧下でのLi+, Na+、及び、K+の水和構造とそのダイナミクスを第一原理分子動力学により調べた。シミュレーションにより3つのアルカリイオンの異なる水和挙動が再現された。水分子の自己拡散係数と回転相関時間のイオン濃度依存性を解析することにより、Li+とK+は、それぞれ構造形成イオン,構造破壊イオンに分類されるが、Na+は弱い構造破壊イオンとして働くことが示唆された。電子構造を解析することにより、Na+とK+の第一水和殻内にある水分子の双極子モーメントが約0.1Debye減少することがわかった。

35000541
Time-integrated monitoring of radon progeny around a closed uranium mine in Japan
石森 有
Journal of Environmental Radioactivity 93(1), p.51-61(2007) ; (JAEA-J 02015)
 著者らによって開発された積分型ラドン子孫核種測定器の実用化研究が数年間、あるウラン鉱山跡地及びその周辺において実施された。その測定器による監視の妥当性が他の監視結果と過去のわれわれの調査との良い一致により確認された。ラドン子孫核種はそのサイトの外側でほぼ同濃度で、対照地区で得られた濃度の範囲内であった。このことはその鉱山サイトの外側の地区の人々の被ばく線量への影響がほとんどないことを示す。得られたデータは敷地外の公衆への被曝線量へ鉱山サイトの影響がほとんどないことを示した。人形峠周辺の平衡係数は全体として約0.4であったが、サイト及びサイト周辺ではそれより低い値が観測され、人口の多い地区ではそれより高いがUNSCEARレポートの0.6に近い値が観測された。

35000542
Process of in vivo cyst formation from the implanted larval integument in the sweet potato hornworm, Agrius convolvuli; A Simple model for studying wound healing
深本 花菜; 白井 孝治*; 佐藤 茂*; 金勝 廉介*; 木口 憲爾*; 小林 泰彦
Journal of Insect Biotechnology and Sericology 75(3), p.99-106(2006) ; (JAEA-J 02016)
 昆虫の体内に、別の幼虫から採取した皮膚片を、真皮細胞層を外側にして半分に折りたたみ移植すると、その後移植された真皮細胞の端が互いに癒着し内側にクチクラを分泌して、シストと呼ばれる真皮細胞の球を形成する。エビガラスズメ幼虫を用いて、経時的にシスト形成過程を光学顕微鏡並びに電子顕微鏡観察し、真皮細胞の検出のためにeCBP(epidermal carotenoid binding protein)を、真皮細胞のDNA合成の検出にはBrdUを使用した結果、シスト形成は大きく分けて五つの過程を経ることが明らかになった。(1)まず移植直後に皮膚の切断面に血球が集まり、(2)その後、それらの血球が細胞塊を形成する。(3)さらに切断面付近だけではなく比較的広範囲にわたって真皮細胞がDNA合成を行い、(4)前述の細胞塊の間を縫うようにして伸張する。(5)最後に、互いに伸張することで断絶部分が閉塞した真皮細胞から、内側に向かってクチクラを分泌する。この一連のシスト形成過程は、観察が容易であることや比較的単純な系であることなどから、創傷の治癒機構、特にダメージを受けた領域を閉塞する真皮細胞の伸張を詳細に研究するうえで非常に有用であると考えられる。

35000543
Effects of heavy-ion irradiation on the differentiation of epidermal cells in the silkworm, Bombyx mori
深本 花菜; 志村 幸子*; 白井 孝治*; 金勝 廉介*; 木口 憲爾*; 坂下 哲哉; 舟山 知夫; 小林 泰彦
Journal of Insect Biotechnology and Sericology 75(3), p.107-114(2006) ; (JAEA-J 02017)
 カイコ幼虫の真皮細胞に重粒子線を照射した後の分化過程への影響を調査した。5齢一日目のカイコ幼虫に400Gy相当の炭素イオンを照射しても形態上の変化は観察されず、TUNEL法によるアポトーシス細胞の検出頻度も対照と同程度であったが、成虫になると照射領域で鱗毛の欠失が生じた。光学顕微鏡及び電子顕微鏡による観察で、照射領域の真皮細胞は成虫のクチクラを正常に分泌できるが、成虫鱗毛を形成するための細胞(ソケット細胞,生鱗細胞)への分化抑制や、コブ形成阻害が観察された。これは照射後に真皮細胞の分裂が阻害されることによると考えられた。

35000544
Enhancement of relaxation rates in the normal state of superconductor PuRhGa5:NQR relaxation study
酒井 宏典; 神戸 振作; 徳永 陽; 藤本 達也; Walstedt, R. E.*; 安岡 弘志; 青木 大*; 本間 佳哉*; 山本 悦嗣; 中村 彰夫; 塩川 佳伸*; 中島 邦久; 荒井 康夫; 松田 達磨; 芳賀 芳範; 大貫 惇睦*
Journal of Magnetism and Magnetic Materials 310(2, Part1), p.e118-e119(2007) ; (JAEA-J 02018)
 超伝導体PuRhGa5においてゼロ磁場核四重極共鳴(NQR)緩和率測定を行った。比較のため、同じ結晶構造を持つパウリ常磁性体であるLuCoGa5においても同様の測定を行った。PuRhGa5のNQR緩和率は、約30K以下で(T1T)-1一定の振る舞いを見せるが、その値は、非超伝導体LuCoGa5のそれよりも増大していることが明らかになった。

35000545
High-quality single crystal growth and physical properties in a ferromagnet UIr
山本 悦嗣; 芳賀 芳範; 池田 修悟; 松田 達磨; 赤澤 輝彦*; 小手川 恒*; 小林 達夫*; 大貫 惇睦*
Journal of Magnetism and Magnetic Materials 310(2, Part1), p.e123-e125(2007) ; (JAEA-J 02019)
 UIrは反転対称性のない単斜晶構造をとり、常圧ではキュリー温度が46Kのイジング型の強磁性体である。われわれはテトラアーク炉においてチョクラルスキー法で純良単結晶を育成し、単結晶インゴットを超高真空下において固相電解法によってアニールした。この純良単結晶において圧力下で強磁性と共存する転移温度0.14Kの超伝導が見いだされた。

35000546
Magnetism, superconductivity and fermi surfaces of plutonium compounds
芳賀 芳範; 青木 大*; 山上 浩志*; 松田 達磨; 中島 邦久; 荒井 康夫; 本間 佳哉*; 塩川 佳伸*; 山本 悦嗣; 中村 彰夫; 大貫 惇睦*
Journal of Magnetism and Magnetic Materials 310(2, Part1), p.e149-e151(2007) ; (JAEA-J 02020)
 プルトニウム化合物PuRhGa5及びPuIn3の単結晶育成に成功した。PuRhGa5では超伝導上部臨界磁場の異方性の決定に成功し、伝導電子の有効質量に異方性があることを指摘した。一方、PuIn3では、プルトニウム化合物としては初めてドハース・ファンアルフェン振動の観測に成功し、フェルミ面を実験的に観測した。これにより、5f電子が遍歴電子となって動いていることを示した。

35000547
Resonant X-ray scattering of PrRu4P12
石井 賢司; 筒井 智嗣*; Hao, L.*; 長谷川 朋生*; 岩佐 和晃*; 坪田 雅己; 稲見 俊哉; 村上 洋一*; Saha, S. R.*; 菅原 仁*; 佐藤 英行*
Journal of Magnetism and Magnetic Materials 310(2, Part1), p.e178-e180(2007) ; (JAEA-J 02021)
 充填スクッテルダイトPrRu4P12は、TMI=62Kで構造相転移を伴った金属絶縁体転移を示す。4f電子のないLaRu4P12が転移を示さないことから、Prの4f電子が転移に重要な役割を果たしていると考えられており、このようなPrの電子状態に関する知見を得るために、PrのL2, L3吸収端での共鳴X線散乱実験を行った。TMIにおいて、q=(1,0,0)に対応する超格子反射でエネルギーに依存しない格子ひずみに加えて共鳴散乱成分が観測された。したがって、単位胞内の2つのPr原子は、確かに異なる電子状態になっているといえる。さらに、散乱光の偏光を分離した実験を行ったところ、両吸収端とも偏光が変わるような散乱は非常に小さいことがわかった。これは、2つのPrの散乱テンソル(つまり、共鳴散乱の中間状態であるPrの5d電子状態)の差が等方的であることを意味している。

35000548
Magnetic property of a single crystal UCu2Ge2
松田 達磨; 芳賀 芳範; 池田 修悟; 山本 悦嗣; 大貫 惇睦
Journal of Magnetism and Magnetic Materials 310(2, Part1), p.422-424(2007) ; (JAEA-J 02022)
 UCu2G2は、強相関電子系の化合物の結晶構造としてよく知られたThCr2Si2型の結晶構造を持つ。蒸気圧の高い銅を含むことから、純良な単結晶を育成することが難しく、磁気異方性など詳細な物性研究がなされていない。最近われわれは、フラックス法と呼ばれる方法で単結晶育成に成功した。これにより磁気異方性などの磁気特性の測定を行い、関連物質との比較を行った。

35000549
AC calorimetry study on the pressure-induced superconductor UIr
立岩 尚之; 芳賀 芳範; 山本 悦嗣; 松田 達磨; 池田 修悟; 大貫 惇睦*
Journal of Magnetism and Magnetic Materials 310(2, Part1), p.637-639(2007) ; (JAEA-J 02023)
 圧力誘起超伝導UIrについて高圧下比熱測定を1.6GPaまで行った。その結果を報告する。UIrは常圧でキュリー温度TC1=46Kの強磁性物質であるが、このキュリー温度TC1で比熱異常が観測された。高圧下ではTC1が低温側にシフトして行くことが本比熱測定で確認された。その圧力依存性は過去の電気抵抗・磁化率測定による結果と一致している。

35000550
Resonant X-ray magnetic diffraction experiments on SmB2C2
稲見 俊哉; 本間 徹生*; 筒井 智嗣*; 犬童 健太郎*; 小野寺 秀也*; 石井 賢司; 大和田 謙二; 葛下 かおり*; 中尾 裕則*; 村上 洋一*
Journal of Magnetism and Magnetic Materials 310(2, Part1), p.748-750(2007) ; (JAEA-J 02024)
 われわれはSmB2C2TN2=37KとTN1=51Kの逐次相転移を共鳴X線回折で調べた。強い共鳴回折がSmのL3吸収端でTN2以下では101反射に観測され、一方、中間相では、非整合なQ=(1±δ, ±δ,1)の位置に観測された(δ=0.13)。したがって、SmB2C2の逐次相転移は整合-非整合磁気相転移であることがわかった。

35000551
Therapeutic effects of a 186Re-complex-conjugated bisphosphonate for the palliation of metastatic bone pain in an animal model
小川 数馬*; 向 高弘*; 浅野 大悟*; 河嶋 秀和*; 絹谷 清剛*; 柴 和弘*; 橋本 和幸; 森 厚文*; 佐治 英郎*
Journal of Nuclear Medicine 48(1), p.122-127(2007) ; (JAEA-J 02025)
 転移性骨腫瘍の疼痛緩和を目的とした薬剤として、高い安定性を示す186Re-MAG3錯体結合ビスホスホネート(186Re-MAG3-HBP)を開発した。この化合物は、従来から検討されている186Re-HEDPに比べて、正常マウスにおいて、骨指向性薬剤として優れた体内分布を示した。186Re-MAG3-HBPの治療効果を骨転移モデル動物を用いて評価した。治療効果と副作用を評価するために、腫瘍の大きさと末梢血球数を計測し、骨痛の疼痛緩和は、機械刺激を加えるテスト法により評価した。その結果、186Re-HEDP投与群においては、腫瘍の大きさは未治療群と同等であった。それに対して、186Re-MAG3-HBP投与群においては、有意に腫瘍増殖は抑制された。さらに、骨転移によって生じる痛みは、186Re-MAG3-HBP又は186Re -HEDPの投与により減弱した。しかも、その効果は、186Re-MAG3-HBP投与群の方が強い傾向を示した。これら結果は、186Re-MAG3-HBPが転移性骨腫瘍の疼痛緩和薬剤として有用である可能性を示唆するものである。

35000552
Thermal neutron capture cross section of palladium-107
中村 詔司; 原田 秀郎; Raman, S.*; Koehler, P. E.*
Journal of Nuclear Science and Technology 44(2), p.103-108(2007) ; (JAEA-J 02026)
 107Pd試料の熱中性子捕獲により放出される即発γ線を解析した。基底状態に遷移するγ線強度の和を取ることにより、熱中性子捕獲断面積の下限値を求め、9.16±0.27bを得た。今回得られた結果は、共鳴データから計算された評価値より5倍大きい。

35000553
Ion current prediction model considering columnar recombination in alpha radioactivity measurement using ionized air transportation
内藤 晋*; 平田 洋介*; 泉 幹雄*; 佐野 明*; 宮本 泰明; 青山 佳男; 山口 大美
Journal of Nuclear Science and Technology 44(2), p.121-128(2007) ; (JAEA-J 02027)
 空気イオンの輸送を用いたアルファ放射能測定における、改良されたイオン電流予測モデルを報告する。われわれの過去のモデルは、測定イオン電流の定性的な傾向を説明したものの、その絶対値はかなり過大評価されていた。今回、定量性を得るため、モデルは柱状再結合効果を考慮して改良された。改良されたモデルは、イオン拡散の初期段階におけるかなりの量のイオン損失を説明し、イオン電流のモデル計算値と実測値の間の差を縮めた。本モデルは、また、汚染された表面に高速の空気流を吹き付けることにより、柱状再結合によるイオン損失は抑えられることを示した。このことは、実験的に調査され確認された。結論として、アルファ放射能とイオン電流の理論的関係は、層流下及び管内乱流下において定量的に明らかになった。

35000554
Development of a statistical method for evaluation of estimated criticality lower-limit multiplication factor depending on uranium enrichment and H/uranium-235 atomic ratio
奥野 浩
Journal of Nuclear Science and Technology 44(2), p.137-146(2007) ; (JAEA-J 02028)
 核燃料サイクル施設の臨界安全評価において評価に用いる解析手法の計算誤差は、評価対象とする体系ごとに信頼性の高い類似体系の臨界実験に対する検証計算結果を用いて、保守側に推定する。計算誤差を考慮して、未臨界と判断してよいと考えられる中性子増倍率の上限値を統計的な手法により定め、この上限値は推定臨界下限増倍率と呼ばれる。臨界ベンチマーク計算結果がウラン濃縮度、H/235U原子個数比などのパラメータに依存する場合に推定臨界下限増倍率の計算式を多重回帰分析及び非心t分布に関する統計理論に基づき導出した。低濃縮均質ウラン燃料体系を対象にMVP IIコードとJENDL3.3ライブラリーの組合せで実施したベンチマーク計算結果への適用例を示した。

35000555
In-pile experiment in JMTR on the radiation induced surface activation (RISA) effect on flow-boiling heat transfer
柴本 泰照; 与能本 泰介; 中村 秀夫; 久木田 豊*
Journal of Nuclear Science and Technology 44(2), p.183-193(2007) ; (JAEA-J 02029)
 放射線誘起表面活性(RISA)効果による熱伝達改善の可能性を調査するために炉内で流動沸騰実験を行った。テスト部は、SUS-316L製の円柱ブロックに直径2mm・長さ100mmの流路孔を開けたもので、電気ヒーターにより加熱される。テスト部を内包した照射キャプセルを材料試験炉(JMTR)の照射孔の一つに挿入し、準定常的な実験を実施した。実験は、照射前(炉外及び炉内原子炉起動前)と照射中・照射後(炉内)の条件で、同じ境界条件下で同じテスト部を使って実施した。このような手法により、実験データの比較を通してRISA効果の直接的な評価を行うことができる。圧力420kPa,質量流束180〜630kg/(m2s)の環状噴霧流条件に対して、ドライアウト開始点までの沸騰曲線を取得した。照射中及び照射後に得られた限界熱流束は照射前のそれよりも平均で約10%増加するという結果を示した。一方で、限界熱流束以下の壁面過熱度は照射前よりも全般的に増加する傾向を示した。

35000556
Development of a non-conservative radionuclides dispersion model in the ocean and its application to surface cesium-137 dispersion in the Irish Sea
小林 卓也; 乙坂 重嘉; 外川 織彦; 林 圭佐
Journal of Nuclear Science and Technology 44(2), p.238-247(2007) ; (JAEA-J 02030)
 浅海域における非保存性放射性物質の移行挙動を評価するために、海水循環モデルPOMとランダムウォークモデルSEA-GEARNから構成される数値シミュレーションシステムを開発した。海洋中に存在する放射性物質は3種類の相(海水溶存相,懸濁物質吸着相,海底土吸着相)に存在するものとしてモデル化した。溶存相と懸濁相間の吸脱着プロセスは統計的手法を用いて求められる力学的輸送係数を用いて解く。浮遊粒子の堆積過程及び海底土の再浮遊過程も考慮した。本システムを英国セラフィールドのBNFL核燃料再処理施設から実際に放出された137Csの長期拡散計算に適用した。計算結果はアイリッシュ海における溶存137Csの主な移行パターンをよく再現した。

35000557
Customized morphologies of self-condensed multisegment polymer nanowires
佃 諭志*; 関 修平*; 杉本 雅樹; 田川 精一*
Journal of Physical Chemistry B 110(39), p.19319-19322(2006) ; (JAEA-J 02031)
 高エネルギーイオンビームによりケイ素系高分子薄膜中に形成されるナノワイヤーは、その長さが薄膜の厚さで、その太さがイオントラックに与える線エネルギー付与密度や分子量等で制御可能であることがわかっている。本稿はこの製造工程中において、ワイヤー同士を直接結合する新規な形状制御法について報告する。平滑な基板上にケイ素高分子薄膜を形成し、その上に膨潤しやすい親水性の高分子、さらにケイ素高分子を塗布した3層構造の高分子薄膜を作製した。これにイオンビームを照射してナノサイズの架橋部を形成し、未照射部分を溶媒で洗浄除去したところ、親水性の中間層部分に対応するナノワイヤーが縮れて凝集し、ケイ素高分子ナノワイヤーが凝集点で複数束ねられたナノ構造体(多岐ナノワイヤー)を得ることに成功した。

35000558
In-situ XAFS and XRD studies of pressure-induced local structural change in liquid AgI
有馬 寛*; 大高 理*; 服部 高典; 片山 芳則; 内海 渉; 吉朝 朗*
Journal of Physics; Condensed Matter 19(7), p.076104_1-076104_7(2007) ; (JAEA-J 02032)
 液体AgIの圧力誘起構造変化を調べるために、約1200K, 6GPaの温度圧力範囲において高温高圧XAFS及びXRDを行った。XANESスペクトル及びS(Q)の変化は液体AgIの短距離秩序が変化することを示している。約2GPaまでのAg-I距離の増大は、局所構造が配位数が4から4より大きなものへと変化することを示している。約2GPaより高い圧力下での、Ag-I距離の減少は、2GPaで上記構造変化が完了し、高圧Formが安定になることを示している。Ag-I距離の結晶相におけるものとの比較から、液体の高圧Formの構造は、空孔を含んだ岩塩構造に類似していることを示している。

35000559
Shape coexistence and mixing in N〜20 region
宇都野 穣; 大塚 孝治*; 水崎 高浩*; 本間 道雄*
Journal of Physics; Conference Series 20, p.167-168(2005) ; (JAEA-J 02033)
 原子核における変形共存現象は軽い核から重い核に至るまで広範にわたって見つかっているが、その中でもN〜20領域における変形共存と配位混合領域は安定核から中性子過剰核に移るにつれ基底状態が球形から変形へと遷移する点で独特の個性を持っている。変形共存現象はこれまではおもに平均場理論によって研究されてきたが、最近のモンテカルロ殻模型に代表される大規模殻模型計算によってこの領域の変形共存現象が殻模型によって理解可能となったので、この講演でその結果を発表する。N=20核ではZ=15から18にかけてpf殻に2中性子励起する変形バンドが知られているので、そのエネルギー準位を殻模型によって計算し、実験値を再現することを示す。さらに、この変形バンドについて、殻模型空間におけるハートリーフォック計算に基づいた平均場的理解を与え、角運動量射影をはじめとする相関の重要性を議論する。さらに、これまでよく行われてきた、配位混合を抑制した近似的殻模型計算との結果を比較し、モンテカルロ殻模型のような多粒子励起との混合を取り入れた計算が必要であることを示す。こうした配位混合は磁気モーメントに敏感に反映することを議論する。

35000560
Quest for the high-filed phase of CdCr2O4 using an X-ray diffraction technique
稲見 俊哉; 大和田 謙二; 坪田 雅己; 村田 悠人*; 松田 康弘*; 野尻 浩之*; 植田 浩明*; 村上 洋一*
Journal of Physics; Conference Series 51, p.502-505(2006) ; (JAEA-J 02034)
 幾何学的フラストレーションのある立方晶スピネルCdCr2O4の31Tまでのパルス強磁場下単結晶X線回折実験を行った。この化合物は8Kで反強磁性秩序を示すと同時に正方晶への構造変化を起こし、これにより部分的にフラストレーションを解消する。28T以上で飽和磁化の半分の磁化を示す磁化プラトー相が実現し、ここでは、磁気構造に対応して結晶構造が菱面体晶か立方晶になると予想されている。この28Tでの構造変化を観測するためにSPring-8のBL22XUでX線回折実験を実行した。広大な逆空間で何処に現れるかわからない鋭いBraggピークを探すのは簡単な仕事ではない。われわれはこの目的に2次元検出器が有用であることを見いだした。X線シャッターとチョッパーで生成した短いX線パルスと磁場を同期させることにより、高磁場相の逆空間のみを観測した。これによりCdCr2O4の28Tでの磁場誘起構造変化を観測することに成功した。

35000561
Zonal flow and GAM dynamics and associated transport characteristics in reversed shear tokamaks
宮戸 直亮; 岸本 泰明; Li, J.*
Journal of Plasma Physics 72(6), p.821-824(2006) ; (JAEA-J 02035)
 反転磁気シアトカマク中の帯状流の振る舞い及びその乱流輸送に対する影響を、イオン温度勾配駆動乱流のグローバルシミュレーションにより調べた。安全係数を減らすと、安全係数最小の領域で帯状流が振動帯状流から静的帯状流に変化し、乱流輸送が効果的に抑制される。この結果は、安全係数最小の領域での帯状流の振る舞いの変化がイオンの輸送障壁形成の引き金を引いているかもしれないことを示す。

35000562
Roles of the double tearing mode on the formation of a current hole
津田 孝; 栗田 源一; 藤田 隆明
Journal of Plasma Physics 72(6), p.1149-1152(2006) ; (JAEA-J 02036)
 中心を外れた自発電流や電流駆動が十分に大きいときは中心部に電圧が逆にかかり逆方向の電流が流れるはずである。しかし実験ではほとんどゼロの電流密度の領域(電流ホール)が観測される。以前の論文において磁気流体シミュレーションにより電流ホール形成機構を解析した。ところが電流ホールを持つ配位はダブル・テアリング・モードが不安定となる可能性があるため、磁気流体シミュレーションにより電流ホール形成にこのモードが果たす役割を検討した。

35000563
Magnetic island evolution in rotating plasmas
石井 康友; 安積 正史*; Smolyakov, A. I.*
Journal of Plasma Physics 72(6), p.1243-1248(2006) ; (JAEA-J 02037)
 本研究では、トカマクプラズマの性能劣化を引き起こす磁気島形成の機構を、プラズマ中の流れを考慮して、数値シミュレーションにより調べた。トカマクプラズマでは磁気島形成を引き起こすティアリング不安定性に対して、独立状態では安定と考えられる磁気面において磁気島が形成される現象が観測されている。このような安定な磁気面での磁気島形成は、外部摂動に起因すると考えられているが、その詳細過程は未解明である。これまでの理論的予測では、プラズマ流が存在すると、磁気島を形成するための外部摂動の臨界値が存在し、その臨界値が抵抗値及び粘性値に依存すると考えられていた。本研究では数値シミュレーションにより、現実のトカマク放電のパラメータ領域近傍では、この臨界値が抵抗値には依存するが、粘性値にはほぼ依存しないことを明らかにした。また、流れのあるプラズマ中でのこのような磁気島の成長には、散逸依存領域と散逸非依存領域が存在することを見いだした。

35000564
Neutron diffraction and X-ray absorption study of Ag5Pb2O6
吉井 賢資; 水牧 仁一朗*; 加藤 和男*; 宇留賀 朋哉*; 阿部 英樹*; 中村 彰夫; 下条 豊; 石井 慶信; 森井 幸生
Journal of Solid State Chemistry 180(1), p.377-381(2007) ; (JAEA-J 02038)
 標記の銀鉛酸化物につき、中性子散乱と放射光を用いた吸収分光法により、その結晶構造と電子状態を観測した。中性子散乱からは、結晶構造は三方晶P 31m構造であり、これは過去のX線回折の結果と一致する。求まった結晶パラメータから、銀及び鉛イオンの原子価は約1+及び3.7+であった。X線吸収分光からは、銀の原子価はほぼ1+、鉛の原子価は3+と4+の中間であった。これらの結果は、鉛電子がこの物質の金属伝導と超伝導の期限であることを示唆するものであり、バンド計算の結果とも定性的に一致する。

35000565
Review of recent steady-state advanced tokamak research and its further pursuit by reduction of TF ripple on JT-60U
篠原 孝司; JT-60チーム
Journal of the Korean Physical Society 49, p.S56-S62(2006) ; (JAEA-J 02039)
 JT-60の最新の研究成果として、高ベータ放電(規格化ベータ2.3)を長時間(電流緩和時間の約13倍)維持したこと,長時間放電に伴う粒子の壁飽和の観測などについて報告する。また、現在設置が進行中であり、最新のプロジェクトであるフェライト鋼設置によるトロイダル磁場リップル低減について、その位置づけ・効能,設計検討について発表する。その際、このプロジェクトに影響を与えたJFT-2Mにおけるフェライト鋼設置に関する先駆的成果についても報告する。

35000566
Stability of double tearing mode in current hole configuration
津田 孝; 栗田 源一; 藤田 隆明
Journal of the Korean Physical Society 49, p.S83-S86(2006) ; (JAEA-J 02040)
 トカマクでは自発電流や周辺部への電流駆動が大きい場合、中心部に掛かる電圧が逆向きになる場合がある。このとき中心部の電流は逆方向には流れず、ほぼ電流密度がゼロの領域が出現する。このような凹状の電流分布ではダブル・テアリング・モードが不安定となることが予想される。実際、JETの実験では電磁現象が観測されている。一方、JT-60の電流ホール実験ではそのような揺動は観測されていない。簡約化磁気流体コードを用いたシミュレーションにより、電流ホール現象においてダブル・テアリング・モードが果たしている役割を明らかにする。

35000567
Applications of stimulated brillouin scattering phase conjugate mirror to Thomson scattering diagnostics in JT-60U and ITER
波多江 仰紀; 内藤 磨; 北村 繁; 佐久間 猛*; 濱野 隆*; 中塚 正大*; 吉田 英次*
Journal of the Korean Physical Society 49, p.S160-S164(2006) ; (JAEA-J 02041)
 誘導ブリルアン散乱位相共役鏡を応用し、トムソン散乱計測の測定性能改善を図った。液体フロン化合物を用いた位相共役鏡はレーザー平均出力145W(50Hz)の入力で95%以上の反射率を示した。トムソン散乱への直接的な応用としては、位相共役鏡によりレーザービームを往復させ、迷光を著しく増加させることなく散乱光を倍増させる手法(ダブルパス散乱)を開発した。初期実験ではJT-60に位相共役鏡を取り付けダブルパス散乱させた結果、散乱光を1.6倍に増加させることができた。ダブルパス散乱を発展させ、一対の位相共役鏡間にレーザー光を閉じ込め、数倍以上の散乱光を発生することができるマルチパス散乱も考案した。また、散乱光のS/N改善のため、位相共役鏡を既存のレーザー装置に組み込み、レーザー装置の高出力化を行った。位相共役鏡は高出力増幅器で誘起される波面歪みが効果的に補正し、レーザー出力が当初の8倍を超える368W(7.4J×50Hz)に到達した。この結果からITERの周辺トムソン散乱用レーザーで必要とされる5J, 100Hzの出力を得る見通しがついた。これらを踏まえ位相共役鏡を搭載した、最適化されたITER用レーザーシステム、さらに高空間分解型LIDARトムソン散乱用レーザーシステムの設計・検討を行った。

35000568
Neutron scattering study on UTGa5 and NpTGa5
目時 直人
Journal of the Physical Society of Japan 75(Suppl.), p.24-29(2006) ; (JAEA-J 02044)
 最近原研で行われたUTGa5及びNpTGa5の中性子散乱による研究をまとめて招待講演として報告する。UTGa5及びNpTGa5の磁気構造の多彩さと5f電子状態との関連、そして、磁気及び四極子相互作用の競合に伴う逐次転移や四極子秩序について報告する。

35000569
A-Type antiferromagnetic ordering and the transition of the 5f electronic state accompanied by unusual moment reorientation in NpRhGa5
浄念 信太郎; 目時 直人; 本多 史憲; 金子 耕士; 山本 悦嗣; 芳賀 芳範; 青木 大*; 本間 佳哉*; 塩川 佳伸; 大貫 惇睦
Journal of the Physical Society of Japan 75(Suppl.), p.41-43(2006) ; (JAEA-J 02045)
 中性子散乱実験によりNpRhGa5はTN1=36KとTN2=33Kの二段の磁気転移、q=(0 0 1/2)反強磁性ベクトルを持つA-typeの反強磁性秩序を示すことを明らかにした。この物質の磁気構造は面内では強磁性そしてTN2<T<TN1でNpの磁気モーメントがc軸方向、T<TN2では[1 1 0]に平行であることが、磁気構造解析及び10テスラ高磁場中性子散乱実験によって明らかになった。TN2において非常に大きな磁気モーメントのとびが生じ、磁気モーメントの方向が変わるとともに5f電子状態に大きな変化が生じることを明らかにした。磁気形状因子の測定によりNpRhGa5の磁性がおもに軌道磁気モーメントによって担われていることを明らかにし、また5f電子が遍歴性を示していることがわかった。

35000570
NMR studies of actinide compounds; The NMR of actinide nuclei
Walstedt, R. E.*; 徳永 陽; 加藤 治一*; 酒井 宏典; 藤本 達也; 神戸 振作; 安岡 弘志
Journal of the Physical Society of Japan 75(Suppl.), p.77-81(2006) ; (JAEA-J 02046)
 本論文ではこれまでわれわれが行ってきたアクチノイド核NMRについて総括する。UO2及びUSb2では反強磁性秩序相において235U-NMRの直接観測に成功し、さらにURh3では103Rhと235Uの2重共鳴を利用して235UのT1(T)を常磁性状態で初めて見積もることができた。最近行われたNpO2のNMR実験では、17O核の1/T1の温度依存性に非常に大きな磁場依存性が観測され、その解析からNp核の緩和時間T1Npが約40nsと初めて見積もられた。解析からはさらに17O-237Np核間に伝導電子を介した非常に強い間接的相互作用が存在することが示された。

35000571
Single crystal growth and magnetic properties of UTe2
池田 修悟; 酒井 宏典; 青木 大*; 本間 佳哉*; 山本 悦嗣; 中村 彰夫; 塩川 佳伸; 芳賀 芳範; 大貫 惇睦
Journal of the Physical Society of Japan 75(Suppl.), p.116-118(2006) ; (JAEA-J 02047)
 UTe2は、空間群がImmmの斜方晶の結晶構造を持つ。ウラン原子は、a軸方向に一列に並んでおり、この結晶構造上の特徴のため、磁気異方性が大きいことが期待される。しかしながら、現在まで、UTe2の磁気異方性について研究した報告例はない。われわれは、この点を研究するため、まずヨウ素による化学輸送法を用いて、UTe2の単結晶を育成した。この単結晶を用いて、磁化率の温度依存性を測定したところ、やはりa軸と他の軸では、低温に行くに従い大きな異方性があることがわかった。また150K以上の温度領域では、磁化率の温度依存性が、キュリー・ワイス則に従っていた。ここから見積もられる有効磁気モーメントは、どの軸でも3.2-3.6μBであり、局在5f2(5f3)電子状態から期待される値とほぼ同じであることもわかった。

35000572
Coexistence of antiferromagnetism and heavy-fermion superconductivity in CePt3Si studied by neutron scattering
金子 耕士; 目時 直人; Bernhoeft, N.*; 松田 達磨; 芳賀 芳範; 安田 敬*; 竹内 徹也*; 摂待 力生*; 大貫 惇睦
Journal of the Physical Society of Japan 75(Suppl.), p.177-179(2006) ; (JAEA-J 02048)
 反転対称性のない重い電子系超伝導体の反強磁性構造と、磁場温度相図,結晶場励起、さらに単結晶試料を用いた超伝導及び常伝導状態における磁気励起の測定結果について報告する。測定された温度磁場領域において、反強磁性構造に変化はないが、磁場によって磁気モーメントが増加し、その偏曲点の位置が相図と一致することを明らかにした。また、反強磁性が超伝導状態で共存する初めてのCe4f電子系であることを明らかにした。反強磁性ベクトルごく近傍の狭い領域で重い電子状態に由来する準弾性散乱を観察し、スピン波と結合して分散を示すことを明らかにした。これはUPd2Al3などとも共通の現象であるが、磁気励起に超伝導温度で明瞭な変化は観察されなかったことが決定的に異なる。

35000573
Investigation of bulk superconductivity in PrPt5
伊藤 孝; 西田 信彦*; 大石 一城; 髭本 亘; 柄木 良友*; 石本 英彦*
Journal of the Physical Society of Japan 75(Suppl.), p.189-191(2006) ; (JAEA-J 02049)
 PrPt5は核断熱消磁冷却の冷媒として知られる物質であり、低温において核磁性と電子による一般的な磁性の中間的な性質をもった磁性を示す。最近、PrPt5多結晶試料において超伝導転移を示唆する抵抗及び磁化の異常が観測された。これがバルクの超伝導であるならば、「増強された核磁性」との共存という観点から非常に興味深い。われわれはμSR法を用いて微視的な視点からPrPt5の超伝導特性の研究を行い、混合状態におけるミュオンスピン緩和率の測定から磁場侵入長に関する知見を得た。

35000574
Multipole ordering and fluctuations in f-electron systems
久保 勝規; 堀田 貴嗣
Journal of the Physical Society of Japan 75(Suppl.), p.232-237(2006) ; (JAEA-J 02050)
 アクチノイド化合物における特異な磁性や超伝導が興味を持たれている。そのなかでも、本講演では二つのトピックスについて、微視的観点から議論する。一つはNpO2に代表される立方晶の系における多極子秩序である。もう一つは正方晶の系における多極子の揺らぎである。そのようなf電子系に特有な揺らぎは、高い転移温度を持つPu-115化合物(PuCoGa5 and PuRhGa5)の超伝導に関連している可能性がある。

35000575
Relativistic band-structure calculation for PrCoIn5; A Theoretical approach to Pr-based compound from itinerant picture
眞榮平 孝裕*; 堀田 貴嗣
Journal of the Physical Society of Japan 75(Suppl.), p.262-265(2006) ; (JAEA-J 02051)
 局所密度近似の交換相関ポテンシャルを用いた自己無撞着な相対論的線形化増強平面波法に基づいて、PrCoIn5のエネルギーバンド構造とフェルミ面を明らかにする。HoCoGa5型正方晶構造を持つ希土類及びアクチノイド化合物において共通に見られるように、フェルミ準位近くのエネルギーバンドは、おもにPrの4f電子とInの5p電子の混成によってできている。そのフェルミ面は、大きな準2次元的なホール面から成ることがわかった。われわれの得た理論的なフェルミ面をPrCoIn5の実験結果と比較する。

35000576
Multipole correlations in low-dimensional f-electron systems
大西 弘明; 堀田 貴嗣
Journal of the Physical Society of Japan 75(Suppl.), p.266-269(2006) ; (JAEA-J 02052)
 最近、NpO2の八極子秩序の可能性が理論と実験の両面から議論されるなど、f電子系における多極子自由度に起因する電子物性が注目を集めている。本研究では、j-j結合描像に基づく多体f電子模型を、密度行列繰り込み群法によって数値的に調べる。講演では、結晶場ポテンシャルやf電子数を変化させた場合の詳細な解析結果を報告し、f電子系における多極子相関を議論する。

35000577
Kondo effect in an electron system with dynamical Jahn-Teller impurity
堀田 貴嗣
Journal of the Physical Society of Japan 76(2), p.023705_1-023705_5(2007) ; (JAEA-J 02053)
 ヤーンテラーフォノンと動的に結合するアンダーソン模型における近藤効果を調べた。電子の擬スピン(軌道)モーメントとフォノンの回転モーメントの和である全角運動量を伝導電子が遮蔽することによって近藤効果が起こることが明らかになった。すなわち、フォノン自由度が一重項基底状態の形成に本質的な寄与をする。動的ヤーンテラーフォノンによる近藤現象の特徴的温度(近藤温度)は、非断熱領域においてヤーンテラーアンダーソン模型から導出された異方的交換相互作用を持つs-dモデルによってよく説明される。

35000578
Single crystal growth and magnetic properties of antiferromagnet Ce2Pd3Si5
Nguyen, D.; 芳賀 芳範; 松田 達磨; 山田 勉*; Thamizhavel, A.*; 奥田 悠介*; 竹内 徹也*; 杉山 清寛*; 萩原 政幸*; 金道 浩一*; 摂待 力生*; 大貫 惇睦*
Journal of the Physical Society of Japan 76(2), p.024702_1-024702_6(2007) ; (JAEA-J 02054)
 斜方晶Ce2Pd3Si5の単結晶育成に成功し、その構造を決定したほか電気抵抗,比熱,磁化測定を行った。7.2Kにおいて反強磁性秩序を確認し、比較的大きな電子比熱係数77mJ/K2·mol·Ceを有することを明らかにした。磁化容易軸は001方向で、μs=1.3μB/Ceの飽和磁化を持つ。これらの磁性は結晶場モデルによって良く理解でき、励起状態は87Kと504Kにあると見積もられた。

35000579
High-magnetic-field X-ray absorption spectroscopy of field-induced valence transition in YbInCu4
松田 康弘*; 稲見 俊哉; 大和田 謙二; 村田 悠人*; 野尻 浩之*; 村上 洋一*; 太田 寛人*; Zhang, W.*; 吉村 一良*
Journal of the Physical Society of Japan 76(3), p.034702_1-034702_6(2007) ; (JAEA-J 02055)
 YbInCu4の磁場誘起価数転移を41Tまでの磁場下におけるYbのLIII吸収端のX線吸収分光法で研究した。磁場誘起価数転移は吸収スペクトルの大きな変化として明確に観測された。Ybの価数の低温での磁場依存性が初めて直接決定された。メタ磁性転移の上の価数はYb2.96+と高温相の値にまで回復することがわかった。価数の変化も磁場-温度平面上で0<B<41T, 5<T<50Kの範囲で求められた。

35000580
Development of beam-pointing stabilizer on a 10-TW Ti:Al2O3 laser system JLITE-X for laser-excited ion accelerator research
森 道昭; Pirozhkov, A.; 西内 満美子; 小倉 浩一; 匂坂 明人; 林 由紀雄; 織茂 聡; 福見 敦*; Li, Z.*; 加道 雅孝; 大道 博行
Laser Physics 16(7), p.1092-1096(2006) ; (JAEA-J 02056)
 レーザープラズマ相互作用などのパラメーターサーチ的な研究において、レーザーの安定的な供給は実験結果の信頼性を確保する意味で重要な課題である。本研究では、実験データの信頼性向上を目的に、最終的には従来の10TWレーザー装置に付加的にレーザーポインティングスタビライザーを設置する形で開発を進めている。これまでに装置本体の開発を終え、別のテラワットレーザーを用いて、100uradのポインティング安定性を10uradまで向上させることを実証している。これは、f/1の集光光学系で実験を行った場合に集光強度のゆらぎが40%〜3%以下に抑制されていることを意味する。

35000581
Correlation between roughness of nanowires and polymer backbone conformation
関 修平*; 佃 諭志*; 田川 精一*; 杉本 雅樹
Macromolecules 39(21), p.7446-7450(2006) ; (JAEA-J 02057)
 高エネルギーイオンビームによりケイ素高分子薄膜中にナノサイズの架橋体を形成し、未架橋部を溶媒で除去することでナノワイヤーの形成が可能である。しかしながら、溶媒により未架橋部の除去を行うと、ナノワイヤーが膨潤して縮れ、波打った表面形状のナノワイヤーしか得られなかった。そこで、異なる分子量のケイ素高分子薄膜でナノワイヤーを作製し、その表面形態を原子間力顕微鏡で観察して膨潤のメカニズムを探った。その結果、ナノワイヤー側面の粗さと分子量に明確な相関関係が認められ、マルク-ホウインクの式により評価可能であることがわかった。ナノワイヤー側面の粗さの制御は、ナノリソグラフィーなどへの応用において重要な技術になると考えられる。

35000582
Dynamical heterogeneity of protein dynamics studied by elastic incoherent neutron scattering and molecular simulations
中川 洋; 徳久 淳師*; 上久保 裕生*; 城地 保昌*; 北尾 彰朗*; 片岡 幹雄*
Materials Science and Engineering A 442(1-2), p.356-360(2006) ; (JAEA-J 02058)
 中性子非干渉性弾性散乱と分子シミュレーションによって球状タンパク質の動的不均一性を調べた。中性子非干渉性弾性散乱のq依存性はガウス近似からのずれ、非ガウス性を示した。非調和性も非ガウス性に寄与するが、われわれは動的不均一性によって実際の散乱プロファイルの非ガウス性を説明することができた。分子シミュレーションにより、1meV程度の低いエネルギー分解能では非ガウス性はおもに動的不均一性に由来することを確認した。一方、非調和性の非ガウス性に対する寄与は10μeV程度の高エネルギー分解能では無視できないが、それでも動的不均一性は非ガウス性の主な原因であった。

35000583
DNA deformability and hydration studied by molecular dynamics simulation
米谷 佳晃*; 河野 秀俊; 藤井 聡*; 皿井 明倫*; 郷 信広
Molecular Simulation 33(1-2), p.103-107(2007) ; (JAEA-J 02059)
 5'AATT3'と5'TTAA3'の2種類の塩基配列のDNAについて分子動力学シミュレーションを行い、構造変化と水和の関係を調べた。シミュレーションから、5'AATT3'では、DNAは構造変化しにくく、水和水は構造化しやすいが、5'TTAA3'では、DNAは構造変化しやすく、水和水は構造化しやすいことが明らかになった。この結果に基づいてDNAの構造変化と水和の関係について議論した。

35000584
Predicted effects of local conformational coupling and external restraints on the torsional properties of single DNA molecules
松本 淳; Olson, W. K.*
Multiscale Modeling & Simulation 5(4), p.1227-1247(2006) ; (JAEA-J 02060)
 新たに開発した粗視化DNAモデルの基準振動解析法を改良し、DNA2重らせんのねじれ特性を研究できるようにした。最新の1分子DNA計測実験により決定されたDNAのねじれに関する力学定数は、今まで他の実験で得られてきた値よりもかなり大きい。われわれの計算でも、実際のDNA2重らせんと同様の構造特性を持つDNAモデルの両端に、1分子実験同様に外力をかけた場合、ねじれの力学定数は、かなり大きくなることが示された。そのほか、塩基対がDNAのらせん軸に対して傾いている場合、さらに、DNAの局所構造があるパターンに従って変化する場合にも、力学定数が大きくなることが示された。

35000585
Verification of NETFLOW code using plant data of sodium cooled reactor and facility
望月 弘保
Nuclear Engineering and Design 237(1), p.87-93(2007) ; (JAEA-J 02061)
 軽水の単相流,二相流に関して開発されたモデルに基づいて、パソコン上で液体金属炉に適用できるNETFLOWコードが開発されてきた。このコードの機能は、軽水流動体系とナトリウム流動体系での個別効果試験で検証されてきた。このコードを、ナトリウム冷却の高速炉に適用するために、50MW蒸気発生器や「もんじゅ」のデータを用いて、幾つかの機能について検証が行われた。最終的に、「もんじゅ」でのタービントリップ試験の解析を行い、試験結果との比較がなされた。これらの検証において良い一致が得られた。この研究の結果、コードが学生の教育用ツールとして利用できそうである。

35000586
Core performance tests for the JOYO MK-III upgrade
青山 卓史; 関根 隆; 前田 茂貴; 吉田 昌宏; 前田 幸基; 鈴木 惣十; 竹田 敏一*
Nuclear Engineering and Design 237(4), p.353-368(2007) ; (JAEA-J 02062)
 高速実験炉「常陽」は、照射能力向上のため、MK-III炉心への改造を行った。MK-III炉心では、二領域炉心を採用して出力を平坦化し、制御棒配置を変更した。また、原子炉熱出力が1.4倍に増加したことに伴い、冷却系の改造を行って除熱能力を向上させた。MK-III性能試験では、低出力状態で炉心核特性確認のための臨界近接,過剰反応度測定,制御棒校正,等温温度係数測定を実施した。そして、段階的に原子炉熱出力を増加させながら核計装応答,ヒートバランスを確認し、定格の140MWt出力を達成した後、燃焼係数を測定した。本論文は、これらのMK-III性能試験結果のうち、炉心核特性に関する測定・解析評価結果をまとめたものである。

35000587
Multipass beam breakup in energy recovery linacs
Pozdeyev, E.*; Tennant, C.*; Bisognano, J. J.*; 沢村 勝; 羽島 良一; Smith, T. I.*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 557(1), p.176-188(2006) ; (JAEA-J 02063)
 多周回,多バンチ加速におけるビーム不安定性(BBU)の研究は大電流のエネルギー回収型リニアック(ERL)の電流を制限する要因として重要である。この不安定性は軸をずれたビームによって励起される高調波モードが周回してきた電子ビームによって増幅されるときに起こる。この現象をシミュレーションする計算コードBBU-Rを開発し、ERLの閾値電流の計算を行った。このコードのほかにも世界各地でBBUをシミュレーションする計算コードが開発されている。これらの問題解決のためのアプローチや計算手法などを比較し、BBU研究の今後の課題等について議論する。

35000588
Magnetic and superconducting phase diagram in oxybromite cuprate Ca2-xNaxCuO2Br2
黒岩 壮吾*; 銭谷 勇磁*; 山澤 眞紀*; 富田 葉子*; 秋光 純*; 大石 一城; 幸田 章宏*; Saha, S. R.*; 門野 良典*; 渡邉 功雄*; 大平 聖子*
Physica B; Condensed Matter 374-375, p.75-78(2006) ; (JAEA-J 02064)
 Ca2-xNaxCuO2Br2x≥0.15で超伝導転移することが知られているが、それ以下の組成では磁化率が非常に小さいことから本物質の磁性に関しては未だ明らかにされていない。そこでわれわれは本系の磁気相図を明らかにするためμSR測定を行った。その結果、x≤0.03のNaドープ量が少ない試料では零磁場スペクトルに明確な回転シグナルが観測され、反強磁性長距離磁気秩序が発達していることが判明した。一方で、0.04≤ x≤0.15の組成では回転スペクトルは観測されず、低温でスピングラス様な振る舞いが観測された。得られた磁気相図は、La2-xSrxCuO4及びCa2-xNaxCuO2Cl2と定量的に同様であることを示した。

35000589
Magnetic response in the superconducting state of 1H-Ca(Al0.5Si0.5)2 studied by μSR
黒岩 壮吾*; 高際 實之*; 山澤 眞紀*; 富田 葉子*; 秋光 純*; 大石 一城; 幸田 章宏*; Saha, S. R.*; 門野 良典*; 髭本 亘
Physica B; Condensed Matter 374-375, p.251-254(2006) ; (JAEA-J 02065)
 1H-Ca(Al0.5Si0.5)2は既存の5H-Ca(Al0.5Si0.5)2及び6H-Ca(Al0.5Si0.5)2に比べて新しい結晶構造を有する。これらの物質はすべてAlB2型結晶構造を有するが、既存の物質ではc軸方向に5倍周期もしくは6倍周期の超格子構造をとることが報告されている。今回新たに作成された1H-Ca(Al0.5Si0.5)2はこのような超格子構造を持たない。本物質も既存の物質と同様超伝導を示すが、上部臨界磁場Hc2の値は既存の2種類の超伝導体に比べてHc2H|| a及びHc2H|| cともに非常に小さい値を示した。この新しい超伝導体の秩序変数を調べるためμSR測定を行った結果、磁場侵入長の磁場依存性から1H-Ca(Al0.5Si0.5)2超伝導の対称性は異方的であることを示唆した。

35000590
Electron irradiation-induced defects in ZnO studied by positron annihilation
Chen, Z. Q.*; 前川 雅樹; 河裾 厚男; 境 誠司; 楢本 洋
Physica B; Condensed Matter 376-377, p.722-725(2006) ; (JAEA-J 02066)
 酸化亜鉛(ZnO)結晶にエネルギー3MeV,照射量5.5×1018cm-2の電子線照射を行い、格子欠陥の発生及び熱アニールによる欠陥回復過程を陽電子消滅法を用いて評価した。照射後には陽電子寿命及びドップラー広がり幅(Sパラメータ)の増大が見られた。これはZn空孔に関連した欠陥の発生を示している。この照射欠陥のほとんどは200度までの熱アニールにより消失した。しかし、400度でのアニールを行ったところ、これとは異なった種類の欠陥が生成することがわかった。700度の熱アニールでは、すべての種類の空孔型欠陥が消失した。

35000591
Multipolar ordering in NpO2 probed by NMR
徳永 陽; 本間 佳哉*; 神戸 振作; 青木 大*; 酒井 宏典; 山本 悦嗣; 中村 彰夫; 塩川 佳伸; Walstedt, R. E.; 安岡 弘志
Physica B; Condensed Matter 378-380, p.929-930(2006) ; (JAEA-J 02067)
 本研究で対象としたNpO2の低温での秩序相は、転移点で比熱に大きな跳びが観測されるにもかかわらず、明確な磁気双極子モーメントが存在しないことから、その秩序変数は長い間謎であった。ところが最近、この秩序相が八重極モーメントによる新しい秩序状態である可能性が指摘され注目を集めている。そこで本研究では、この秩序相の起源を明らかにすべくNpO2におけるNMR測定を行った。その結果、秩序相において2つの異なる酸素サイトが出現すること、さらにこのとき観測される特異な超微細磁場が、縦triple-q型反強四極子構造を反映した磁場誘起反強磁性モーメントによるものであることを明らかにした。これらの結果は共鳴X線散乱の結果ともよく一致しており、この系における縦triple-q型多極子秩序の存在を微視的観点から強く支持するものである。

35000592
Anomalous magnetic correlations in heavy fermion Pauli paramagnet UIr3B2; 11B NMR study
藤本 達也; 酒井 宏典; 徳永 陽; 神戸 振作; Walstedt, R. E.; 池田 修悟; 松田 達磨; 芳賀 芳範; 大貫 惇睦
Physica B; Condensed Matter 378-380, p.997-998(2006) ; (JAEA-J 02068)
 UIr3B2の電子相関を明らかにするため、われわれは純良単結晶を用いた11B原子核のFourier変換NMRを行った。Knightシフト及び核スピン-格子緩和時間の解析から、T* 〜 50K以上の温度領域で強磁性相関が発達していることを明らかにした。また、T*以下の温度になると、磁気ダイナミックスの様相が変化し、高温で見られた強磁性相関が抑制される一方で反強磁性相関が新たに出現することがわかった。基底状態における強磁性相関と反強磁性相関の共存を説明するために、われわれは結晶構造の特異性に由来する1次元f電子物性の可能性を提案した。

35000593
Phonons in UCoGa5
目時 直人; 金子 耕士; Raymond, S.*; Sanchez, J. P.*; Piekarz, P.*; Parlinski, K.*; Ole's, A. M.*; 池田 修悟; 松田 達磨; 芳賀 芳範; 大貫 惇睦; Lander, G. H.*
Physica B; Condensed Matter 378-380, p.1003-1004(2006) ; (JAEA-J 02069)
 UCoGa5の中性子散乱を用いた低エネルギー音響格子振動の研究結果と、第一原理の計算結果との比較について報告する。UCoGa5については、多くの対称な軸上で明瞭な音響フォノンと一部の光学フォノンが観察された。第一原理計算との一致はだいたい良好であるが、M点におけるフォノン分散のソフトニングが室温では観察されなかった。低温の結果も含めて報告する。

35000594
Unconventional superconductivity in PuRhGa5; Ga NMR/NQR study
酒井 宏典; 徳永 陽; 藤本 達也; 神戸 振作; Walstedt, R. E.; 安岡 弘志; 青木 大*; 本間 佳哉*; 山本 悦嗣; 中村 彰夫; 塩川 佳伸; 中島 邦久; 荒井 康夫; 松田 達磨; 芳賀 芳範; 大貫 惇睦
Physica B; Condensed Matter 378-380, p.1005-1006(2006) ; (JAEA-J 02070)
 Tc=9Kの超伝導体PuRhGa5の単結晶を用いて、69,71Ga核磁気共鳴による研究を行った。核磁気緩和率1/T1測定から、PuRhGa5が非従来型の異方的超伝導ギャップを持っていることがわかった。さらに、約30K以下でコリンハ的振る舞い(1/T1Tが一定)が観測され、超伝導発現直前の常伝導状態では、フェルミ流体となっていることが示唆される。

35000595
Magnetic structure and successive phase transition in NpRhGa5
浄念 信太郎; 目時 直人; 本多 史憲; 金子 耕士; 青木 大*; 本間 佳哉*; 山本 悦嗣; 芳賀 芳範; 塩川 佳伸; 大貫 惇睦
Physica B; Condensed Matter 378-380, p.1018-1020(2006) ; (JAEA-J 02071)
 磁気構造を明らかにするため中性子弾性散乱実験を行った。NpRhGa5はTN1=36KとTN2=33Kの二段の磁気転移,q=(0 0 1/2)の反強磁性ベクトルを持つ反強磁性秩序を示す。磁気散乱強度の解析からTN2<T<TN1でNpの磁気モーメントがc軸方向、T<TN2では面内[1 1 0]方向に向くことを明らかにした。さらにTN2において非常に大きな磁気モーメントのとびが生じ、5f電子状態に大きな変化が生じることを明らかにした。また磁気形状因子の測定によりNpRhGa5の磁性がおもに軌道磁気モーメントに担われていることを明らかにした。

35000596
Single crystal growth and observation of the de Haas-van Alphen effect in ThIn3
松田 達磨; 芳賀 芳範; 宍戸 寛明*; 池田 修悟; 播磨 尚朝*; 摂待 力生*; 大貫 惇睦
Physica B; Condensed Matter 378-380, p.1021-1022(2006) ; (JAEA-J 02072)
 ThIn3は、AuCu3-typeの立方晶である。トリウム(Th)は、その電子配置にf電子を持たない。そのため特異な磁性は期待できないものの、金属間化合物中において価数は4価をとり、これはセリウム化合物において、f電子が遍歴した状態と価数としては対応する。そのため、強相関f電子系化合物研究において、トリウム化合物との電子状態の研究は、f電子に起因する特異な磁性や超伝導状態を明らかにするうえで極めて重要である。最近われわれは、ThIn3の物質の純良単結晶育成を行い、ドハース・ファンアルフェン効果というフェルミ面の電子状態を反映する量子振動の観測に成功した。これにより、フェルミ面の極値断面積に対応する9.0×106から9.37×108Oeのブランチを観測した。これらの結果を、圧力下において特異な超伝導状態を示すCeIn3の実験結果や、さらにはエネルギーバンド計算との結果と比較を行った。

35000597
Electronic structure and the Fermi surface of ThRhIn5 in comparison with uranium and transuranium compounds
眞榮平 孝裕*; 堀田 貴嗣
Physica B; Condensed Matter 378-380, p.1027-1028(2006) ; (JAEA-J 02073)
 線形化された相対論的増強平面波法を用いて、トリウム化合物ThRhIn5のエネルギーバンド構造とフェルミ面を明らかにした。われわれは、CeTIn5(T=Ir and Co), PuTGa5(T=Co and Rh)やAmCoGa5とよく似た複数の円筒形フェルミ面を見いだした。この結果をもとに、f電子数の異なる希土類あるいはアクチノイドイオンを含む物質間の電子構造の類似性を議論する。

35000598
Hydration-coupled protein boson peak measured by incoherent neutron scattering
中川 洋; 片岡 幹雄*; 城地 保昌*; 北尾 彰朗*; 柴田 薫; 徳久 淳師*; 筑紫 格*; 郷 信広
Physica B; Condensed Matter 385-386(2), p.871-873(2006) ; (JAEA-J 02074)
 スタフィロコッカルヌクレアーゼを用いてタンパク質のボソンピークの水和との関連を調べた。ボソンピークは合成高分子,ガラス性物質,アモルファス物質に共通に見られるものであるが、その起源は十分には理解されていない。ボソンピークに寄与する運動は調和振動である。水和によりピークの位置は高周波数側にシフトし、振動の力学定数は増加した。このことはタンパクのエネルギー地形が変化したことを示す。タンパク質が水和することでエネルギー地形がより凸凹になり、極低温ではエネルギー極小に振動がトラップされる。タンパク質のボソンピークの起源はこのエネルギー地形の凹凸と関係しているかもしれない。

35000599
Tandem analyzer crystals system doubles counting rate for Bonse-Hart ultra-small-angle neutron-scattering spectrometer
山口 大輔; 小泉 智; 元川 竜平; 熊田 高之; 相澤 一也; 橋本 竹治
Physica B; Condensed Matter 385-386(2), p.1190-1193(2006) ; (JAEA-J 02075)
 新規なタンデム検出システムを日本原子力研究開発機構付属の二結晶型中性子超小角散乱(USANS)装置に導入した。通常のUSANSのセットアップでは、ステップスキャンという、一時に1つのqでのみ散乱波を検出する測定方式を採用しているため、全q範囲(2×10-4nm-1<q<7×10-2nm-1、ただしqは散乱ベクトルの大きさ)の散乱強度プロファイルの測定には膨大な時間を要していた。この問題点を克服するために、2つのアナライザー結晶を直列に配置し、それぞれの結晶に異なるqの散乱波を検出させるようにした。その結果、2つの異なるqを同時に測定することが可能となり、測定時間を半分に短縮することに成功した。

35000600
Development status of the general control system of the Material and Life Science Experimental Facility (MLF) of J-PARC
酒井 健二; 木下 秀孝; 甲斐 哲也; 大井 元貴; 神永 雅紀; 加藤 崇; 古坂 道弘*
Physica B; Condensed Matter 385-386(2), p.1324-1326(2006) ; (JAEA-J 02076)
 物質生命科学実験施設(MLF)は、ミュオン・中性子ターゲット,ターゲットステーション,実験ホールなどを含むMLFの各設備のシステム全体を統括的に制御することが要求される。したがってMLFは独自の全体制御システム(MLF-GCS)を持つ必要があるが、一方で、MLF-GCSはJ-PARCの加速器や他のユーザー施設の制御システムと協調しながら稼動することが要求される。MLF-GCS構築の現状は、全体設計は既に済んで、各部の詳細設計と調整を進めている段階である。本論文では、MLF-GCSの概要と開発状況について報告する。

35000601
Pulsed operation of the 972 MHz prototype cryomodule for ADS superconducting linac
加古 永治*; 野口 修一*; 大内 徳人*; 宍戸 寿郎*; 土屋 清澄*; 赤岡 伸雄*; 千代 悦司; 堀 利彦; 小林 秀樹*; 仲田 守浩*; 大内 伸夫; 山崎 正義
Physica C 441(1-2), p.220-224(2006) ; (JAEA-J 02077)
 加速器駆動核変換システム(ADS)用超伝導リニアック開発の一環として、β=0.725,周波数972MHzの9セル超伝導空洞2台を実装したクライオモジュール試作器を製作した。温度2Kまでの冷却と、972MHzのパルスクライストロンを用いた大電力高周波試験を行った。パルス巾3ms,繰返し25Hzのパルス運転モードで高周波電力350kWを入力結合器を通して空洞に投入することに成功した。これにより、双方の超伝導空洞について加速電界強度14MV/mを達成した。これは、設計目標値10MV/mを大きく上回るものである。また、超伝導空洞のローレンツ力による離調をピエゾ素子によって補正することにも成功した。

35000602
On-site pairing and microscopic inhomogeneneity in confined lattice fermion systems
町田 昌彦; 山田 進; 大橋 洋士*; 松本 秀樹*
Physical Review A 74(5), p.053621_1-053621_6(2006) ; (JAEA-J 02078)
 高温超伝導体は、超伝導の強さを特徴づける超伝導ギャップの大きさが空間的に変化しており、本質的に非一様な超伝導状態が実現している可能性が指摘されている。その一方、フェルミ原子ガスでは、相互作用が制御できるうえ、二つの対向するレーザーにより周期ポテンシャルが実現できることから、高温超伝導体と同じ状態を実験できるといった提案がなされている。そこで、本研究では、この別々の分野における二つのトピックスに同時に回答を与え、非一様性を持つ超伝導(超流動)がなぜ、現れるのかを両者を特徴づける典型的物理モデルを数値シミュレーションし、明らかにすることを目標とした。その結果、系統的なシミュレーションにより、強い引力とそして、並進対称性の破れから、超伝導(超流動)を引き起こすクーパーペア間に強い相関が働き、非一様性が生じ、超伝導(超流動)と共存することがわかり、高温超伝導体で見られる非一様性は、単なる結晶の乱れではなく、本質的な乱れであると結論づけられる。

35000603
Magnetic field-induced quasiparticle excitation in Nb3Sn; Evidence for anisotropic s-wave pairing
門野 良典*; 佐藤 宏樹*; 幸田 章宏*; 永田 貴志*; 古川 はづき*; 鈴木 淳市; 松田 雅昌; 大石 一城; 髭本 亘; 黒岩 壮吾*; 高際 實之*; 秋光 純*
Physical Review B 74(2), p.024513_1-024513_5(2006) ; (JAEA-J 02079)
 ミュオンスピン回転法及び中性子小角散乱実験法を用いてNb3Snの磁束状態の研究を行った。その結果、中性子小角散乱実験から比較的低磁場(2-3T)で磁束格子が三角格子から四角格子へと変形する様子が観測された。またミュオンスピン回転法から得られた磁場侵入長の磁場依存性は、外部磁場が増加するにつれて磁場侵入長は徐々に大きくなることから、Nb3Snは異方的なs波超伝導体(もしくはマルチギャップを有する超伝導体)であると結論づけた。

35000604
Neutron diffraction study of magnetic structure and successive 5f electronic transition in the itinerant antiferromagnet NpRhGa5
浄念 信太郎; 目時 直人; 本多 史憲; 金子 耕士; 山本 悦嗣; 芳賀 芳範; 青木 大*; 本間 佳哉*; 塩川 佳伸*; 大貫 惇睦*
Physical Review B 74(14), p.144412_1-144412_8(2006) ; (JAEA-J 02080)
 中性子散乱実験によりNpRhGa5はq=(0 0 1/2)反強磁性ベクトルを持つA-typeの反強磁性秩序を示すことが明らかにした。この物質の磁気構造はTN2<T<TN1でNpの磁気モーメントがc軸方向、T<TN2では<1 1 0>に平行である。TN2において非常に大きな磁気モーメントの飛びが生じ、磁気モーメントの方向が変わるとともに5f電子が低モーメント状態から高モーメント状態に変化し、5f電子状態に大きな変化が生じることを明らかにした。この二段の磁気転移は、異なる5f電子状態・軌道の間の磁気的及び四極子相互作用の競合によって生じていると解釈された。磁気形状因子の測定によりNpRhGa5の磁性がおもに軌道磁気モーメントによって担われていることを明らかにした。また、軌道磁気モーメントの寄与がNp3+の自由イオンの値よりわずかに小さく、遍歴性を反映していると考えられる。

35000605
Deactivation of nitrogen donors in silicon carbide
Schmid, F.*; Reshanov, S. A.*; Weber, H. B.*; Pensl, G.*; Bockstedte, M.*; Mattausch, A.*; Pankratov, O.*; 大島 武; 伊藤 久義
Physical Review B 74(24), p.245212_1-245212_11(2006) ; (JAEA-J 02081)
 六方晶炭化ケイ素中に含まれる窒素ドナーの電気的活性化率と欠陥の関係を調べた。p型エピタキシャルSiCに500℃で窒素(N)イオン注入及び1700℃までの熱処理を行いn型領域を形成した。併せて、N注入後にシリコン(Si),炭素(C)及びネオン(Ne)注入した試料も作製した。また、200keV電子線を室温照射した試料も作製した。Si, C, Ne注入量とNドナー濃度,補償中心濃度の関係を調べたところ、N注入,Ne/N注入,C/N注入試料では濃度の増加とともにNドナー濃度は減少し補償中心が増加するのに対し、Si/N注入試料のみNドナー濃度と補償中心濃度の両方が低下することが見いだした。また、熱処理を行ったところ、Si/N及び電子線照射試料のみ1450℃の熱処理温度以上では、Nドナー濃度と補償中心濃度の両方が低下することが判明した。理論解析を試みたところ高温では4個のC置換位置NとSi空孔の複空孔((NC)4-VSi)が安定な欠陥であると帰結された。Si/N注入では過剰なNがVSiを減少させること,低エネルギー電子線照射ではCのみはじき出されることを考えると補償中心はVSi関連欠陥であり、高温では(NC)4-VSiの形成によりNドナーの活性化率が減少することが帰結された。

35000606
Magnetic excitations from the singlet dimerized state in Na2Co2(C2O4)3(H2O)2
松田 雅昌; 脇本 秀一; 加倉井 和久; 本多 善太郎*; 山田 興治*
Physical Review B 75(1), p.012405_1-012405_4(2007) ; (JAEA-J 02082)
 Na2Co2(C2O4)3(H2O)2では、Co2+モーメントが2本足梯子格子型に配列している。さらに、Co2+モーメントがS=1/2を持ち、弱いイジング異方性があると予想されるため、S=1/2イジング梯子反強磁性の研究に適していると考えられる。この物質の磁性が実際に梯子構造に由来するものかを判定し、さらに磁気相互作用に関する情報を得るためには中性子非弾性散乱実験が不可欠である。粉末試料を用いて中性子散乱実験を行った結果、1.7meVと3.4meV付近に鋭い磁気励起ピークが観測された。また、分散幅は小さく、孤立ダイマー系から予想される結果に近いと考えられる。解析の結果、Na2Co2(C2O4)3(H2O)2はイジング異方性を持ったS=1/2孤立ダイマー系としてよく記述されることを明らかにした。

35000607
Spin-orbital gap of multiorbital antiferromagnet with geometrical frustration
大西 弘明; 堀田 貴嗣
Physical Review B 75(1), p.014410_1-014410_8(2007) ; (JAEA-J 02083)
 ジグザグ鎖上のeg軌道ハバード模型の低エネルギー状態を、密度行列繰り込み群法を用いて解析し、多軌道系におけるスピンギャップ形成を議論する。まず、二軌道が縮退していて軌道自由度が活性な場合には、自発的に完全分極した軌道状態を取り、その軌道の異方性のため、スピンフラストレーションが解消される。そして、弱結合した反強磁性ジグザグスピン鎖と同様にスピンギャップが抑制されることがわかった。一方、結晶場効果として二軌道間のレベル分裂を考慮すると、軌道モーメントは分極したまま、レベル分裂に応じてその向きが徐々に変化することがわかった。とりわけ、レベル分裂が大きい場合にはスピンフラストレーションが有効となり、スピン一重項基底状態とスピン三重項励起状態の間にエネルギーギャップが存在する。これは、単一軌道系であればいわゆるスピンギャップであるが、今の場合、スピンと軌道の多体相関のため、スピン状態の変化は必然的に軌道状態の変化を伴うので、このスピン励起エネルギーギャップは「スピン軌道ギャップ」として解釈される。

35000608
β-delayed γ spectroscopy of neutron rich 27,28,29Na
Tripathi, V.*; Tabor, S. L.*; Hoffman, C. R.*; Wiedeking, M.*; Volya, A.*; Mantica, P. F.*; Davies, A. D.*; Liddick, S. N.*; Mueller, W. F.*; Stolz, A.*; Tomlin, B. E.*; 大塚 孝治*; 宇都野 穣
Physical Review C 73(5), p.054303_1-054303_10(2006) ; (JAEA-J 02084)
 アメリカ・ミシガン州立大学にある超伝導サイクロトロンを用いて生成された中性子過剰のネオン同位体のベータ崩壊により、その娘核のナトリウム同位体のエネルギー準位を測定した。その一部のデータは、同じ著者により既にPhysical Review Letters誌に発表されたが、この論文は27,28,29Naの3種類の核種のデータをまとめたものである。この研究で、29Naでは魔法構造を破った状態が非常に低い励起状態で現れることを初めて見いだした。これは、原子力機構で行っているモンテカルロ殻模型を用いた理論計算との対応で初めて明らかになったことである。また、27,28Naでは、正常パリティ状態の範囲内では低励起状態においてそのような状態を発見することはできなかったが、このことはやはり理論計算と一致する。これら一連の研究で、ナトリウムのような陽子数の少ない同位体においては、中性子数20の殻ギャップが小さく、むしろ16の殻ギャップの影響が大きいことという理論が妥当と確かめられた。

35000609
Measurement of the spin and magnetic moment of 23Al
小澤 顕*; 松多 健策*; 長友 傑*; 三原 基嗣*; 山田 一成*; 山口 貴之*; 大坪 隆*; 百田 佐多夫*; 泉川 卓司*; 炭竃 聡之*; 中島 良樹*; 藤原 裕樹*; 神代 真一*; 松宮 亮平*; 太田 雅洋*; 篠島 大亮*; 田中 秀樹*; 安野 琢磨*; 中島 真平*; 鈴木 健*; 吉田 光一*; 村中 九水*; 前村 尚*; 千葉 明子*; 宇都野 穣; 福田 光順*; 田中 鐘信*; 谷畑 勇夫*; 野尻 洋一*; 南園 忠則*; Alonso, J. R.*; Krebs, G. F.*; Symons, T. J. M.*
Physical Review C 74(2), p.021301_1-021301_4(2006) ; (JAEA-J 02085)
 理化学研究所のリングサイクロトロンで、陽子過剰核23Alのg因子を初めて測定した。実験的に測定されたg因子の絶対値は、1.557±0.088と決められた。この原子核は、鏡像核23Neのエネルギー準位から見ると、基底状態は1/2+もしくは5/2+と考えられる。決められたg因子と殻模型計算によるg因子との比較から1/2+は明らかに否定されるため、基底状態のスピンは5/2+と与えられた。これまで、23Alは陽子ハロー構造のため、1/2+状態が基底状態になる可能性が議論されてきたが、この実験により少なくとも基底状態にハロー構造が存在しないことがはっきりした。また、23Neの磁気モーメントの実験値から、23Alの基底状態におけるアイソスカラー固有スピンの期待値が求められるが、その値は9Cのように異常な値を示さず、正常であることがわかった。

35000610
Neutrino signals from the formation of a black hole; A Probe of the equation of state of dense matter
住吉 光介*; 山田 章一*; 鈴木 英之*; 千葉 敏
Physical Review Letters 97(9), p.091101_1-091101_4(2006) ; (JAEA-J 02086)
 最終的にブラックホールが生成される大質量星の重力崩壊を、高密度核物質の状態方程式として2種類のセットを用いてニュートリノ輸送を取り入れた一般相対論的流体力学計算により研究した。内部殻のバウンスとショック波の停滞に続いて起こる質量降着による原始中性子星のブラックホールへの崩壊が状態方程式の違いによって異なる時間スケールで起こることが判明した。それに伴うニュートリノ放出は、エネルギーと光度を増加させながら0.5から1.5秒で終結する。超新星爆発の際に放出されるニュートリノのこのような性質は、ブラックホール生成のシグナルとして、また高密度物質の状態方程式を決定するために用いることができる可能性がある。

35000611
Ultrarelativistic electron generation during the intense, ultrashort laser pulse interaction with clusters
福田 祐仁; 赤羽 温; 青山 誠; 林 由紀雄; 本間 隆之; 井上 典洋*; 神門 正城; 金沢 修平; 桐山 博光; 近藤 修司; 小瀧 秀行; 益田 伸一*; 森 道昭; 山崎 敦*; 山川 考一; Echkina, E. Yu.*; Inovenkov, I. N.*; Koga, J. K.; Bulanov, S. V.*
Physics Letters A 363(2-3), p.130-135(2007) ; (JAEA-J 02087)
 高強度レーザー励起航跡場による電子加速は、レーザープラズマ加速器の原理検証や極短パルスX線源開発にとって重要な役割を果たしている。最近、準単色の電子発生が報告され注目を浴びているが、電子注入過程のコントロールによる準単色電子のエネルギー制御と安定化が今後の研究課題となっている。本研究では、強光子場中でのクラスター媒質を用いた電子加速実験を行い、レーザープラズマ加速におけるクラスターの役割について調べた。その結果、クラスター媒質を用いて初めて、指向性を有する相対論電子の発生に成功した(最大エネルギー=58MeV)。電子エネルギー分布は、温度の異なる2つの成分から構成されている。2D-PICシミュレーションによる解析から、高エネルギー成分を構成する電子は、レーザー光との相互作用によってクラスターから生成した電子が、レーザー光に注入され、その後、レーザー光によって直接加速されて生成したものであることが明らかとなった。

35000612
Direct evidence for the onset of intruder configurations in neutron-rich Ne isotopes
Terry, J. R.*; Basin, D.*; Brown, B. A.*; Campbell, C. M.*; Church, J. A.*; Cook, J. M.*; Davies, A. D.*; Dinca, D.-C.*; Enders, J.*; Gade, A.*; Glasmacher, T.*; Hansen, P. G.*; Lecouey, J. L.*; 大塚 孝治*; Pritychenko, B.*; Sherrill, B. M.*; Tostevin, J. A.*; 宇都野 穣; 米田 健一*; Zwahlen, H.*
Physics Letters B 640(3), p.86-90(2006) ; (JAEA-J 02088)
 アメリカ・ミシガン州立大学にある超伝導サイクロトロンを用いて生成された、中性子過剰核28Neの一中性子ノックアウト反応により、27Neの低励起状態を探索した。その結果、885keVの765keVの二つの励起状態が見つかった。中性子数20の魔法数が良いと仮定したsd殻模型計算では、この原子核では中性子分離エネルギーまでに一つしか励起状態がないとされるため、少なくともこれらのうち一つは魔法数を規定する20の殻ギャップを超えて中性子が励起した状態と結論づけられる。原子力機構で行ったモンテカルロ殻模型計算によると、中性子数20の殻ギャップがNe同位体ではかなり縮まるため、1粒子1空孔励起した配位が主である負パリティ状態が1MeV以下の低い励起エネルギーに出現することが予言されている。この実験結果はまさにそのような状態が存在することを示したものであり、Neにおける殻ギャップについて大きな知見を与えた。

35000613
Modeling of plasma current decay during disruptions caused by massive impurity injection
大脇 浩和*; 杉原 正芳; 畑山 明聖*
Plasma and Fusion Research (Internet) 1(3), p.016_1-016_6(2006) ; (JAEA-J 02089)
 大量不純物入射に伴うディスラプション時のプラズマ電流減衰の数値モデルを作成した。このモデルはジュール加熱と不純物による放射損失のパワーバランスから熱クエンチ後のプラズマ温度と電荷状態を決定するものである。本モデルをITERの冷却水流入事象やディスラプション緩和を模擬したJFT-2Mの大量N2ガス入射実験に適用したところ実験結果をうまく説明する結果が得られた。

35000614
Impact of reflector on calculation accuracy of tritium production in DT neutronics blanket experiment
佐藤 聡; 和田 政行*; 西谷 健夫; 今野 力
Plasma and Fusion Research (Internet) 2(2), p.002_1-002_4(2007) ; (JAEA-J 02090)
 FNSでは、これまで、DT中性子源を用いて、固体増殖ブランケット核特性実験を行い、ブランケットモックアップ中のトリチウム生成量を測定している。DT中性子源の周囲に中性子反射体を付けた体系と反射体なしの体系で行っている。これらの実験結果から、モンテカルロ法による計算精度を評価している。反射体付の体系では計算精度が、反射体なしの体系に比べて、悪くなっている。本論文では、トリチウム生成量計算精度に関する反射体の影響を調べた。個々の中性子の飛行経路を、モンテカルロ計算によって評価し、積算トリチウム生成量に関して、反射体から散乱された中性子によるものは、全生成量の24%〜57%の範囲であることがわかった。計算結果の実験結果に対する比の1からのずれは、反射体から散乱された中性子の割合が増加するにつれて、増大している。計算結果の実験結果に対する比の1からのずれの増大は、反射体から散乱された中性子によって引き起こされていると考えられる。したがって、後方散乱中性子の計算を改善することによって、トリチウム生成量の計算精度を向上させることが可能である。

35000615
Observation of coherent bicoherence and biphase in potential fluctuations around geodesic acoustic mode frequency on JFT-2M
永島 芳彦*; 伊藤 公孝*; 伊藤 早苗*; 星野 克道; 藤澤 彰英*; 江尻 晶*; 高瀬 雄一*; 矢木 雅敏*; 篠原 孝司; 上原 和也; 草間 義紀; JFT-2Mグループ
Plasma Physics and Controlled Fusion 48(5A), p.A377-A386(2006) ; (JAEA-J 02091)
 JFT-2M周辺部で観測された低周波(1kHz),高周波(10-15kHz)、及び背景乱流の電位揺動に関するバイスペクトル解析と包絡線の変調解析について発表する。低周波揺動,高周波揺動はそれぞれ低周波帯状流と測地音波モードと推定している。高周波揺動のみならず低周波揺動も背景乱流と三波相互作用していることをバイコヒーレンス(非線形結合度),バイフェーズ,包絡線変調関係から明示できた。見かけ上、高周波揺動の低周波揺動による振幅変調が示唆されたが、両者間のバイコヒーレンスは小さく、変調関係が結論づけられないことが判明した。すなわち、非線形相互作用は、帯状流-帯状流系に対しては存在しないか、存在しても線形であるという描像が推定される。顕著な非線形相互作用は、乱流-帯状流系に対してのみ起きていることを明らかにした。

35000616
Effect of plasma-wall separation on the stability of resistive wall modes in the JT-60U tokamak
松永 剛; 武智 学; 栗田 源一; 小関 隆久; 鎌田 裕; JT-60チーム
Plasma Physics and Controlled Fusion 49(1), p.95-103(2007) ; (JAEA-J 02092)
 プラズマを取り囲む導体壁の有限抵抗により、理想MHD不安定性は壁の沁み込み時間程度で成長する抵抗性壁モード(RWM)となる。このモードは自由境界β限界値を超えた領域で最大到達β値を制限すると言われており、その物理的性質及び安定化機構の解明は高βプラズマ定常維持プラズマにおいて重要である。そこでRWMの物理的性質解明のために、JT-60Uトカマクにおいて電流駆動型RWMを発生させ、プラズマと壁との距離をスキャンする実験をオーミックプラズマを用いて行った。その結果、プラズマを壁に近づけると成長率が小さくなることを確認し、導体壁の壁位置によるRWMの安定化効果を実験的に観測した。

35000617
Effects of ripple-induced ion thermal transport on H-mode plasma performance
L"onnroth, J.-S.*; Parail, V.*; Hyn"onen, V.*; Johnson, T.*; Kiviniemi, T.*; 大山 直幸; Beurskens, M.*; Howell, D.*; Saibene, G.*; de Vries, P.*; 波多江 仰紀; 鎌田 裕; Konovalov, S.*; Loarte, A.*; 篠原 孝司; 飛田 健次; 浦野 創; JET-EFDA Contributors
Plasma Physics and Controlled Fusion 49(3), p.273-295(2007) ; (JAEA-J 02093)
 JET/JT-60U比較実験の結果をMHD安定性の観点から説明できるかどうか試みた結果、実験結果を再現することはできなかった。そこで、リップル損失がHモード性能に与える影響について調べた結果、熱化イオンのリップル損失がHモードプラズマの性能に敏感に影響を与えることがわかった。軌道追跡計算の結果、拡散的な輸送は径方向に広範囲に渡るイオン熱拡散係数に影響を与えること、非拡散的な輸送は周辺部に局在していることがわかった。非拡散的な損失に対応するエネルギーのシンク項を導入したシミュレーションコードを用いて、ELM周波数の増加とペデスタル性能の劣化を再現することができた。

35000618
Dynamics of secondary large-scale structures in ETG turbulence simulations
Li, J.*; 岸本 泰明; Dong, J.*; 宮戸 直亮; 松本 太郎
Plasma Science and Technology 8(1), p.110-113(2006) ; (JAEA-J 02094)
 電子温度勾配(ETG)駆動乱流中の2次的大スケール構造のダイナミクスを磁気シアのあるスラブ配位におけるジャイロ流体シミュレーションによって調べた。帯状流が支配的な状態とストリーマ的な状態への構造分岐が、ETG乱流揺動のスペクトルの非等方性(これは磁気シアーによって支配されている)に依存していることを発見した。電子の乱流輸送は増強された帯状流によって抑制される。しかしながら、たとえ強い磁気シアでのETG乱流でストリーマが形成されたとしても、乱流輸送は低いままである。この低い輸送は最も不安定な成分のビート波あるいは変調不安定性による、長波長ポロイダルモードの2次的な励起に関係している可能性を示した。この低周波,長波長の大スケール構造は、ポロイダルモード結合を通してETG揺動を飽和させる、あるいは少なくとも飽和に寄与すると考えられる。この結果はETG乱流が低い揺動レベルになることを示唆するものである。

35000619
Coulomb and surface effects on the pasta structure in nuclear matter
丸山 敏毅; 巽 敏隆*; Voskresensky, D. N.*; 谷川 知憲*; 遠藤 友樹*; 千葉 敏
Proceedings of Science (Internet) , 10p.(2006) ; (JAEA-J 02095)
 超新星や中性子星で存在する、低密度原子核物質や高密度での中間子凝縮物質において出現する「パスタ」構造について研究する。われわれの手法は相対論的平均場とThomas Fermi近似をとりいれた密度氾関数法による数値計算で、特に、クーロンポテンシャルと荷電粒子密度分布を無撞着な形で含んでいる。これを用いて低密度原子核物質や高密度でのK中間子凝縮物質での非一様なパスタ構造を計算し、クーロン力と表面張力がこの構造にどのように影響しているかを調べる。

35000620
Extreme ultraviolet diagnostics of preformed plasma in laser-driven proton acceleration experiments
Ragozin, E. N.*; Pirozhkov, A. S.; 余語 覚文; Ma, J.; 小倉 浩一; 織茂 聡; 匂坂 明人; 森 道昭; Li, Z.*; 西内 満美子; 大道 博行
Review of Scientific Instruments 77(12), p.123302_1-123302_6(2006) ; (JAEA-J 02097)
 フェムト秒パルスチタンサファイヤレーザー装置JLITE-Xを用いて、厚さ5ミクロンのチタン薄膜ターゲットからのプロトン加速実験を行ったので報告する。波長13.5ナノメートルのプラズマ発光を湾曲多層膜ミラーを用いて測定した。ここでは、薄膜の表面と裏面でのプラズマイメージを硬X線フォトダイオードと軟X線CCDカメラで測定した。また、飛行時間オンライン分析法によって、加速されたプロトンの同時計測を行った。高速プロトンの発生とXUVプラズマ発光の間に強い相関性が見いだされた。とくに、長いレーザープリパルスの誘起するXUVプラズマ発光が測定されたとき、プロトンのエネルギーが減少する結果が得られた。これは高強度レーザー-薄膜相互作用測定装置としてXUV発光が有用であることを意味する。

35000621
Possible weak magnetism in MB6 (M: Ca, Ba) probed by muon spin relaxation and muon level-crossing resonance
黒岩 壮吾*; 高際 實之*; 山澤 眞紀*; 秋光 純*; 幸田 章宏*; 門野 良典*; 大石 一城; 髭本 亘; 渡邉 功雄*
Science and Technology of Advanced Materials 7(1), p.12-16(2006) ; (JAEA-J 02098)
 CaB6はキュリー温度TC=600Kの強磁性体である可能性を指摘した論文が発表されて以来、本物質の強磁性の起源に関する研究は理論及び実験の両側面から精力的に行われてきた。われわれはμSR法を用いてMB6(M=Ca, Ba)の磁性を調べることを目的に研究を行った。その結果、CaB6では130K,BaB6では110K以下でミュオン緩和率の増大を観測したが、磁気秩序の発達に伴うミュオンスピン回転スペクトルは観測されなかった。またCaB6におけるミュオン準位交差共鳴実験の結果から、炭素サイトでの電場勾配が110Kでステップ状に変化することが判明した。これらの結果から、ミュオン緩和率の増大は電場勾配の変化により微小な内部磁場が出現した可能性を示唆する。

35000622
Comparative study of oxidation on Cu and Cu3Au surfaces with a hyperthermal O2 molecular beam
岡田 美智雄*; 盛谷 浩右; 福山 哲也*; 水谷 啓慶*; 吉越 章隆; 寺岡 有殿; 笠井 俊夫*
Surface Science 600(18), p.4228-4232(2006) ; (JAEA-J 02099)
 Cu3Au(100)表面での超熱酸素分子ビームの解離吸着を放射光光電子分光で調べた。Cu3Au表面での酸素吸着曲線をCuのそれと比較すると酸素分子の解離吸着がより活性障壁を持つ、すなわち、低反応性であることがわかった。低エネルギー電子線回折像(LEED)は清浄表面でC(2×2)であるが、超熱酸素分子ビームによる酸化によって1×1パターンに変化した。これは酸素の吸着で表面にCuが析出したためと解釈されている。

35000623
Particle isolation for analysis of uranium minor isotopes in individual particles by secondary ion mass spectrometry
江坂 文孝; 江坂 木の実; Lee, C. G.; 間柄 正明; 桜井 聡; 臼田 重和; 渡部 和男
Talanta 71(3), p.1011-1015(2007) ; (JAEA-J 02100)
 環境試料中の個々のウラン粒子の234U/238U及び236U/238U同位体比を分析する方法として、電子顕微鏡観察下での粒子移送と二次イオン質量分析法を組合せた方法を開発した。本法の有効性を確認するために、ウラン標準粒子とPb粒子を混合して作成した模擬環境試料の分析を行った。その結果、粒子移送によりPb分子イオンによる影響を排除することができ、認証値とよく一致したウラン同位体比測定結果が得られた。本法は実試料の分析にも適用され、その有効性が確認された。

35000624
高速原子・分子ビームで誘起される表面ナノプロセス
寺岡 有殿
電気学会論文誌,C 127(2), p.118-125(2007) ; (JAEA-J 02101)
 表面反応では温度と圧力が反応制御パラメータになる。例えばSi酸化の場合、低温/高圧なら「酸化膜形成」、高温/低圧なら「エッチング(SiO脱離)」、条件によっては「それらの共存」という三つの反応様式を選択できる。最近ではO2分子の運動エネルギーによっても酸化を制御できることが見いだされている。イオンビームのような高速粒子照射では結晶構造が乱れて深くまで原子が進入するが、低エネルギーの原子・分子ビームの反応は極表面での吸着反応に限られる。その場合、原子・分子の運動エネルギーがポテンシャルエネルギー障壁を超えれば物理吸着状態を経由しない直接解離吸着が起こることがある。その障壁は数eVであるために超熱エネルギー領域の原子・分子ビームによっても表面励起プロセスが可能となる。原子・分子ビームはサブナノメーターオーダーの成膜やエッチングを精密に制御するためには非常に有効な技術である。さらに、配向分子ビームを活用することによって表面立体化学反応ダイナミクスを研究する道が開かれる。温度と圧力に加えて運動エネルギーは第3の反応制御パラメータであるが、さらに分子配向も有効な第4の反応制御パラメータになる可能性を秘めている。本解説では原子・分子ビームの発生方法と低運動エネルギーでの表面反応誘起の研究例を幾つか紹介し、原子・分子ビームによる表面励起ナノプロセスを展望する。

35000625
Si(001)表面における酸化膜形成とSiO脱離の共存機構
寺岡 有殿; 吉越 章隆; 盛谷 浩右*
電気学会論文誌,C 127(2), p.133-139(2007) ; (JAEA-J 02102)
 Si(001)表面での酸素分子による酸化反応を900Kから1300Kの温度範囲で実時間その場光電子分光法と質量分析法で研究した。実時間その場光電子分光法はシリコンと酸素原子の化学結合状態を解析するために、質量分析法は同時に脱離するSiO分子の脱離収率を測定するために用いられた。酸素分子は超音速分子線として供給し、X線光電子スペクトルの取得には軟X線放射光を用いた。900Kから1000Kの範囲では、酸素分子の入射エネルギーが大きくなるにつれてSiO脱離収率が低下した。また、Si2p光電子スペクトルの時間発展からは、大きな並進運動エネルギーの作用でSiO2構造が表面に形成されやすく、その被覆率増加はSiO脱離収率の減少と相関があることがわかった。Si2p光電子スペクトルとSiO脱離収率の同時計測によって、SiO脱離収率の減少はシリコンのサブオキサイドの中でも特にSi2+と相関し、酸化膜厚が0.22nmでSiO脱離は停止することがわかった。これらの事実は、SiO脱離はSi(001)最表面のシリコン二量体から起こり、その前駆体はいわゆるTサイト、すなわち、酸素原子がシリコン二量体のダングリングボンドに結合した状態であることを示している。結局、従来の「二つの酸化物」モデルでいうところの二つの酸化状態M1とM2は、それぞれ、Tサイト、及び、Si2+であることが明らかになった。

35000626
超音速酸素分子ビームによる並進運動エネルギー誘起Ti(0001)表面酸化反応
小川 修一*; 高桑 雄二*; 石塚 眞治*; 吉越 章隆; 寺岡 有殿; 盛谷 浩右*; 水野 善之*
電気学会論文誌,C 127(2), p.140-145(2007) ; (JAEA-J 02103)
 酸素分子が室温のTi(0001)-1×1表面に吸着するときの初期吸着確率を並進運動エネルギーの関数としてリアルタイム光電子分光法で測定した。O 1s光電子スペクトルは三つの成分(A, B, C)でよくフィッティングできた。成分Aの結合エネルギーは528.8eVであり、成分BとCはそれからそれぞれ+0.7eV, +1.6eVシフトしている。酸素ビームを照射していくと成分AとCがおもに現れて、成分Bは潜在時間を置いて後に現れてくる。これは二種類の化学吸着状態が初期に形成されることを意味している。初期吸着確率の入射エネルギー依存性は成分AとCで大きく異なることがわかった。すなわち、成分Cの初期吸着確率は入射エネルギーとともに単調に減少し、0.5eV以上ではほぼ一定であるが、成分Aのそれは0.5eVまで急激に減少し、その後、緩やかに増加して再び減少し、0.9eVと1.8eVで極大を示した。成分AとCで観察された初期吸着確率の入射エネルギー依存性は物理吸着状態を経た解離吸着や直接的な解離吸着と解釈された。

35000627
海水中の希少金属の回収; ウラン補修方法による海水ウランの回収技術
玉田 正男
土木施工 48(3), p.78-82(2007) ; (JAEA-J 02105)
 海水1トンには、3.3mgのウランが溶けている。放射線グラフト重合法により、厳しい海象条件や自然環境において長期間に渡り強度を維持でき、ウラン捕集性能に優れた材料の開発が可能となった。布状のウラン捕集材を積層した捕集材カセットを浮体から垂下して、3年間で計9回の海水ウランの捕集実験を行い、1kgのウラン(イエローケーキ換算)を捕集することに成功した。ウラン捕集のコスト低減化のため、モール状捕集材を考案した。モール状捕集材は、ウラン捕集糸を製紐装置でモール状に加工して製作した。年間1200トンのウランを捕集するためには、60mの長さのモール状捕集材を海中に167万本係留する必要がある。海域面積は、134km2必要であるが、沖縄から土佐湾にかけての海域でウランの捕集に適した海域は6,000km2もある。沖縄海域で行ったウラン捕集試験では4g-U/kg-捕集材の性能が達成できる見込みがあるため、現状で到達可能性の高い回収コストは25千円となる。

35000628
FBRサイクル実用化研究開発; FaCTプロジェクトが始動
向 和夫; 佐賀山 豊; 近藤 悟; 岩村 公道; 杉山 俊英
原子力eye 53(3), p.24-33(2007) ; (JAEA-J 02107)
 FBRサイクルの実用化戦略調査研究フェーズ2の国による評価が終了し、これから「FBRサイクル実用化研究開発」が始まる。革新的な技術の具体化と「もんじゅ」における開発成果を踏まえ、実用施設・実証施設の概念構築を中心に、原子力機構の主要プロジェクトとして集中的な研究開発が進められる。2010年には、その開発成果を評価し、高い確度を持った見通しで革新技術の採否を判断する予定である。また、FBRサイクルの研究開発に関し、グローバル原子力エネルギー・パートナーシップ構想,第4世代原子力システム国際フォーラム,革新的原子炉及び燃料サイクル国際プロジェクトなど、世界的な動向が活発化している。

35000629
海外における高速増殖炉サイクル技術開発の動向; グローバル原子力エネルギー・パートナーシップの行方
佐賀山 豊
原子力eye 53(3), p.34-37(2007) ; (JAEA-J 02108)
 FBRサイクルの研究開発に関し、グローバル原子力エネルギー・パートナーシップ構想,第4世代原子力システム国際フォーラム,革新的原子炉及び燃料サイクル国際プロジェクト等、世界的な動向が活発化している。

35000630
海水からウラン,温泉からスカンジウム; グラフト捕集材による有用金属の回収
玉田 正男
原子力eye 53(4), p.68-71(2007) ; (JAEA-J 02109)
 海水1トンには、3.3mgのウランが溶けている。放射線グラフト重合法により、厳しい海象条件や自然環境において長期間に渡り強度を維持でき、ウラン捕集性能に優れた材料の開発が可能となった。布状のウラン捕集材を積層した捕集材カセットを浮体から垂下して、3年間で計9回の海水ウランの捕集実験を行い、1kgのウラン(イエローケーキ換算)を捕集することに成功した。ウラン捕集のコスト低減化のため、モール状捕集材を考案した。沖縄海域で行ったウラン捕集試験では4g-U/kg-捕集材の性能が達成できる見込みがあるため、現状で到達可能性の高い回収コストは25千円となる。群馬県の草津温泉にある万代源泉の含有成分調べた結果、原子番号の最も小さい希土類元素であるスカンジウムが溶けていることがわかった。スカンジウムは、アルミニウム合金の耐熱性の向上や燃料電池の電解質に有用な元素として注目されている。濃度がそれぞれ18, 40ppbである草津温泉の酸性温泉排水(pH1.8, 36℃)及び源泉(pH1.4, 92℃)中にリン酸型捕集材片(2×5cm)を浸漬した。23時間の浸漬でそれぞれ捕集材1kgあたり0.2g, 1.5gのスカンジウムを吸着できることがわかった。

35000631
岩石の時間依存性挙動と周圧の影響に関する最近の研究
羽柴 公博
Journal of MMIJ 123(1), p.10-16(2007) ; (JAEA-J 02112)
 地下の岩盤は三軸圧縮応力状態であり、地下構造物の長期的な挙動を評価するためには、岩石の周圧下での時間依存性挙動を調べることが重要であることは言うまでもない。例えば、高レベル放射性廃棄物地層処分施設は地下数百m以深に建設される予定であり、施設閉鎖後も数千年から数万年にわたる安定性が要求される。しかし、一軸圧縮応力下に比べると、周圧下での岩石の時間依存性挙動に関する研究は格段に少ないのが現状である。著者はこれまで、地下深部に設けられる構造物の長期安定性評価手法の確立を目指して、周圧下での岩石の時間依存性挙動に関する研究を行ってきた。そこで、研究を遂行するにあたって調査したこの分野の現状と課題を、レビュー論文としてまとめた。本報では、まず、比較的強固な岩石を対象とした、最近の実験的研究及び理論的研究の成果について述べた。その際、岩石の時間依存性挙動に及ぼす周圧の影響に着目した。次いで、周圧下での岩石の時間依存性挙動を調べるための実験装置と、実務に適した実験方法を紹介した。さらに、この分野の今後の課題については各章で取り上げた。

35000632
JENDL High Energy Fileを用いた大気中の宇宙線輸送計算
佐藤 達彦
核データニュース (86), p.47-54(2007) ; (JAEA-J 02114)
 大気中における宇宙線由来の中性子エネルギースペクトルは、航空機乗務員の被ばく線量評価だけでなく、地表面における半導体ソフトエラー発生率推定の際に、極めて重要となる。そのため、大気中における宇宙線由来の中性子スペクトルを予測することは、近年、重要な研究課題として認識されている。しかし、従来の予測モデルでは、宇宙線が引き起こす大気中の窒素や酸素との核反応を計算するモデルの精度が不十分なため、地表面から航空機高度まで幅広い高度範囲における測定値を再現することが困難であった。そこで、最新の核反応モデルを組み込んだ放射線輸送計算コードPHITSと、最新の核データライブラリJENDL高エネルギーファイルを組合せて大気中における宇宙線挙動を模擬し、大気中の任意地点における中性子スペクトルを精度よく予測することに成功した。本報告では、その宇宙線輸送計算におけるJENDL高エネルギーファイルの役割について重点的に解説する。

35000633
高温工学試験研究炉(HTTR)用中間熱交換器の開発
濱本 真平; 七種 明雄; 篠原 正憲; 橘 幸男
高温学会誌 32(1), p.43-49(2006) ; (JAEA-J 02116)
 高温工学試験研究炉(HTTR)の中間熱交換器(IHX)は、HTTRの高温機器の1つであり、交換熱量10MWのHe/Heタイプの熱交換器である。ハステロイXRで作られている伝熱管のような内部構造物は、通常900℃以上の高温で使用されており、1次系ヘリウムと2次系ヘリウムの間で原子炉圧力バウンダリを構成している。それらのクリープ荷重とクリープ疲労は、高温構造上設計指針に基づいて評価されている。IHXは、原子炉で使用される最初の高温熱交換器である。それゆえ、IHXを構成する重要な要素について一連の試験を実施した。本報では、(1)外圧クリープ座屈試験,(2)高温ヘッダ部構造試験,(3)伝熱管群振動試験,(4)伝熱管群伝熱流動試験,(5)伝熱管供用期間中検査、について、その目的と試験手順,結果を報告する。

35000634
INPRO(革新的原子炉及び燃料サイクル国際プロジェクト)の活動状況と今後の計画
尾本 彰*; 森脇 正直*; 杉本 純; 中井 良大
日本原子力学会誌 49(2), p.89-111(2007) ; (JAEA-J 02118)
 INPROは、原子力エネルギーの利用が人類の持続的発展に貢献できることを確実なものにするために、期待される革新的原子炉及び燃料サイクルの開発と導入に向けて考え協力する国際フォーラムでIAEAが事務局となっている。最近の日本及び米国の参加によりメンバー数は現在28を数え、原子力発電をまだ持たない5か国をも含んだユーザーと技術保有国によるユニークなフォーラムとなっている。これまでのフェーズ1では、将来に向けて原子力システムが持つべき特性を明確にし、種々の原子力システムを評価する手法の開発が活動の中心であったが、2006年7月からフェーズ2に移行し、手法の改良,制度的な課題への取り組み,技術開発のコーディネイトの3つの分野を追求する活動計画となっている。

35000635
低放射化フェライト鋼のクリープ特性評価
中田 隼矢; 谷川 博康; 芝 清之; 駒崎 慎一*; 藤原 幹夫*; 幸野 豊*; 香山 晃*
日本金属学会誌 71(2), p.239-243(2007) ; (JAEA-J 02120)
 本研究では、靱性の改善などを目的に製作されたF82H mod3について、靱性改善などの処理がクリープ強度へ及ぼす影響について検討を行った。F82H mod3のクリープ試験を行った結果、F82H IEA-heatと比べ、高応力短時間側の試験結果では著しい強度低下が認められた。これは、低放射化と高純度化の観点から窒素量を減じた(mod3:0.0014%, IEA-heat:0.0060%)ことが要因として考えられる。一方で、負荷応力を下げると破断時間が大幅に長時間側にシフトする傾向が確認された。この結果より、長時間側では両鋼の強度差はほとんどなくなるものと考えられる。両鋼の析出物を抽出残差法によって解析した結果、IEA-heatでは高温域の試験後に析出物が減少しているものの、mod3では析出物の量はほとんど変わらなかったことが確認された。これら、析出物とクリープ特性の関係について検討を行った。

35000636
低放射化フェライト鋼の介在物形成に及ぼすTiの影響
澤畠 篤司; 谷川 博康; 芝 清之; 榎本 正人*
日本金属学会誌 71(2), p.244-248(2007) ; (JAEA-J 02121)
 核融合炉用構造材料の第一候補材料である低放射化フェライト鋼F82Hの重要な課題の一つとして照射脆化の問題がある。現在、脱酸剤として添加したAlがTaと介在物を形成すること、介在物が靱性低下の原因となっていること、またTiが靭性低下を招くことが明らかになりつつある。そこでTiの靭性低下の原因と介在物形成との関係を調べるために、Tiをなるべく含んでいない高純度材と一般純度材のF82鋼を用いてシャルピー衝撃試験,微細組織観察・分析(FE-SEM)を行った。高純度材,低純度材ともにAl2O3とTa2O5の複合介在物, Al2O3を含まないTa2O5介在物が観察された。また、複合介在物のTa2O5部分にはTi, Vが含まれており、一般純度材の介在物は全体的にTiのEDSピークが高かった。また、高純度材には1μm以下のTa2O5介在物が多く、一般純度材で多く見られた複合介在物はほとんどなかった。シャルピー衝撃特性は高純度(-64℃)が一般純度材(-16℃)よりも低いDBTTを示すことから、不純物元素であるTiの低減は複合介在物を減少と、良好な衝撃特性を得るには有効な手段であると考えられる。

35000637
ELM崩壊の空間構造とダイナミクス
大山 直幸; 森田 繁*
プラズマ・核融合学会誌 82(9), p.575-581(2006) ; (JAEA-J 02122)
 近年の周辺プラズマ計測器の時間・空間分解能の向上に伴い、Edge Localized Mode(ELM)の発生によりペデスタル構造が崩壊していく様子を詳細な2次元像として観測することも可能になりつつあり、ELM研究が新しい展開を見せている。このような現状を踏まえ、本章ではELM崩壊のダイナミクスに関するトカマク装置での最近の実験結果について報告する。通常のHモード放電で観測される振幅の大きなtype I ELMに加え、grassy ELMとtype II ELMという2種類の小振幅ELMについて振幅が低減する物理機構の違いに着目して比較する。また、ヘリカルプラズマにおいてもトカマクのELMに類似した振舞いが観測されており、ヘリカル装置におけるELM研究の現状についても概観する。

35000638
スクレイプオフ層とダイバータにおけるELMプラズマ輸送研究の進展
朝倉 伸幸; 大野 哲靖*
プラズマ・核融合学会誌 82(9), p.582-589(2006) ; (JAEA-J 02123)
 近年、ELMによりスクレイプオフ層(SOL)に排出されたプラズマの磁力線方向及び磁力線を横切る方向への動的な輸送の研究が進展している。特に、赤外や可視テレビカメラなど2次元計測器の開発(高速化)などにより低磁場側の第一壁へ向かい磁力線を横切るプラズマ輸送やその空間構造が明らかになってきた。ITERでは、繰り返されるELMによるダイバータ板や第一壁への大きな熱負荷が最もその寿命を左右すると考えられ、これらの研究結果はプラズマ対向材やその形状を選択するうえで大きく影響する。本解説では、ELM発生時における磁力線に沿う熱流・粒子流の動的輸送、及び磁力線を横切る輸送を中心に、ITERにおける対向材選択と非接触プラズマでのELMプラズマ輸送現象についても触れまとめる。

35000639
真空容器の構造を理解する
小野塚 正紀*; 中平 昌隆
プラズマ・核融合学会誌 82(9), p.599-608(2006) ; (JAEA-J 02124)
 核融合装置にてプラズマの閉じ込めに要する真空を維持する真空容器について、必要となる機能,その機能を満たすために要求される条件,構造上の概念などを例示し、解説するとともに、真空容器の設計に要する構造規格について概要を紹介する。また、真空容器に関する一般的な設計の進め方を例示するとともに、現在建設が推進されているITERの真空容器の構造設計例を紹介する。

35000640
極低温構造材料
濱田 一弥
プラズマ・核融合学会誌 83(1), p.33-38(2007) ; (JAEA-J 02126)
 トカマク型核融合炉の超伝導コイル・システムは、トロイダル磁場(TF)コイル,ポロイダル磁場(PF)コイル及び中心ソレノイド(CS)から構成され、それぞれのコイルがさまざまな通電パターンで運転される。コイルの高磁場化と大電流化により、発生する電磁力は大きく、また複雑である。したがって核融合炉用超伝導コイル・システムでは電磁力を支持するための構造物の占める役割は極めて大きい。ITERの建設には、超伝導線材の種類や、要求される強度等の機能に応じて、従来の規格にない、あるいは規格にあってもほとんど製作経験がないような高強度・極低温用ステンレス鋼を使用する必要がある。日本は早くから核融合炉を志向した高強度極低温用ステンレス鋼の開発に着手し、ITERでは、日本が開発したJJ1鋼やJK2鋼が採用されるに至っている。論文では、ITERを例にとり、構造材料への機械強度要求と、これを満足する特性を持つ、JJ1, JK2鋼及び高強度型SUS316LNを紹介し、原型炉用構造材料の開発課題を提起する。

35000641
超伝導材料と導体
竹内 孝夫*; 木須 隆暢*; 小泉 徳潔
プラズマ・核融合学会誌 83(1), p.44-49(2007) ; (JAEA-J 02127)
 核融合炉では高磁場中で数万アンペアの大電流導体が大量に必要となり、臨界電流密度が高く、コストを低減するために長尺性や量産性にも優れた超伝導線が必要とされる。これら超伝導導体の開発、及び技術的課題について解説する。また、大電流超伝導導体で観測される特有の不安定現象についても解説し、これの解決のために実施された研究成果についても紹介する。

35000642
おわりに
西村 新*; 奥野 清
プラズマ・核融合学会誌 83(1), p.55-56(2007) ; (JAEA-J 02128)
 磁場閉じ込め核融合炉を目指した大型超伝導マグネットシステムの構成材料にスポットを当て、これまでの研究成果を概観する。核融合炉用超伝導マグネットの開発を進めるには、大型超伝導マグネットシステムの特徴を理解する必要があり、そのためには、超伝導・低温工学の専門家ばかりでなく、機械・材料工学,中性子工学,プラズマ物理学などの幅広い分野の研究者,技術者との情報交換・交流が必要である。その一方で、これまでいろいろな型式による核融合炉の設計がなされてきているが、これらの設計上の問題は超伝導・低温工学の研究者には伝わらないことが多く、相互理解を促進する必要がある。さらに、ITER後の原型炉などの将来の核融合装置では、発生する中性子の量はさらに多くなり、このような厳しい環境に耐えることのできる材料・マグネット技術が益々重要となり、このような視点に立った研究開発が必要である。

35000643
幌延深地層研究計画の概要と現状について
瀬谷 正巳; 畑中 耕一郎; 福島 龍朗
佐藤工業技術研究所報 (31), p.49-56(2006) ; (JAEA-J 02130)
 原子力エネルギーは有効なエネルギー源であるが、高レベル放射性廃棄物の処理・処分という問題がある。我が国では高レベル放射性廃棄物は地層処分される予定であり、日本原子力研究開発機構(以下、「原子力機構」という)を中核として地層処分技術の信頼性向上を目的とした研究開発が進められている。幌延深地層研究計画は原子力機構が進めている地層処分にかかわる深地層の研究施設計画の一つであり、北海道幌延町に分布する堆積岩を調査・研究の対象としている。本報告は、幌延深地層研究計画の概要及び現状について紹介する。

35000644
幌延深地層研究センター地下施設の建設について
瀬谷 正巳; 森岡 宏之; 福島 龍朗
佐藤工業技術研究所報 (31), p.57-62(2006) ; (JAEA-J 02131)
 日本原子力研究開発機構の幌延深地層研究センターでは、高レベル放射性廃棄物の地層処分のための研究施設として深度約500mの立坑及び水平坑道から成る大深度地下施設を建設中である。本報告では、その施工計画の概要と施工計画の中で特に環境対策として排水処理,掘削土(ズリ)処理について、そして安全にかかわる項目として防災対策,情報化施工について紹介する。

35000645
東濃ウラン鉱床でのナチュラルアナログ研究からみた古水理地質研究の役割
笹尾 英嗣; 岩月 輝希; 天野 由記
資源地質 56(2), p.125-132(2006) ; (JAEA-J 02132)
 東濃ウラン鉱床は1千万年前と考えられるその形成以降、隆起・侵食などの影響を受けてきたにもかかわらず、ほとんどのウランは保存されてきた。これはウランの保存に適した地質環境が維持されてきたことによる。日本列島のような変動帯において、高レベル放射性廃棄物の地層処分システムの長期的な安全性に対する信頼性を向上させるためには、隆起・侵食などの地質事象が地質環境にどのような影響を及ぼすのかについて理解する必要がある。東濃ウラン鉱床を対象とした研究からこのような点に貢献するためには、地質環境の長期的な変化やその安定性を評価していく必要がある。地下の地質環境は、地下水流動系,微生物,水-岩石反応などの多くの要因に影響されるため、過去の地質環境を知るためには、古水理地質学的なアプローチが必要である。

35000646
Si(110)とSi(100)表面の初期酸化過程の違い; リアルタイム光電子分光測定から
末光 眞希*; 加藤 篤*; 富樫 秀晃*; 今野 篤史*; 山本 喜久*; 寺岡 有殿; 吉越 章隆; 成田 克*
信学技報 106(108), p.61-63(2006) ; (JAEA-J 02133)
 Si(110)-1×2表面の初期酸化過程をリアルタイム光電子分光法により評価し、Si(100)面酸化と比較した。Si(110)表面ドライ酸化は酸素導入開始直後に表面の数分の1原子層が直ちに酸化される急速初期酸化を示す。急速初期酸化は結合エネルギーの小さいO1s状態の発展を伴い、酸化の進行にしたがってより結合エネルギーの大きなO1s状態がより強く発展する。急速初期酸化は1×2再配列構造に含まれるとされるSi(111)面と類似した表面アドアトム近傍の酸化と関係付けられる。

35000647
国際熱核融合実験炉"ITER"の工学設計活動から建設へ
島本 進*; 高橋 良和; 奥野 清
低温工学 41(12), p.542-552(2006) ; (JAEA-J 02135)
 磁気閉じ込め方式では、高磁界を発生する超伝導技術と核融合炉との関係は非常に密接であり、実験炉建設コストの四分の一強が超伝導コイルに費やされる。逆に、超伝導・極低温という専門分野においても、そこで核融合が占める割合は同じく四分の一強と見られる。この状況を見つめつつ日本原子力研究所(「原研」、現在は「日本原子力研究開発機構」)は長年にわたってトカマク炉のための超伝導・極低温の技術開発を、企業・大学と一致協力して推進してきた。そこには幾つかの独自のプロジェクト及び国際協力による作業があり、段階的に進展した技術が今日に至っている。本論分では、ITERの設計活動を概説し、ITERの内容について超伝導・極低温の側面から紹介する。次に、これまでの工学R&Dとして進められてきた成果とITERの設計との関係を記し、さらに国際協力による建設の作業分担の模様を示す。これによってITERの経緯と建設に立ち向かう姿について広範囲の読者に理解を得ることを目的としている。他方、ITERの最初の活動が始まってから20年近くを経過しており、担当者の世代交代も見られるので、その間の理解を図ることも目的の一つとしている。

35000648
Stripe charge ordering in triangular-lattice systems
大西 弘明; 堀田 貴嗣
AIP Conference Proceedings 850 , p.1075-1076(2006) ; (JAEA-J 02136)
 最近、三角格子コバルト酸化物の超伝導が見いだされ、その特異な性質が注目を集めている。また、関連物質では磁気相転移が観測されているが、そうした多彩な振る舞いの起源として、三角格子上でのt2g軌道自由度の効果が盛んに議論されている。本講演では、三角格子上のt2g軌道縮退ハバード模型の基底状態を、電子密度5.5の場合について、厳密対角化法によって解析した結果を報告する。まず、非磁性相では、三軌道のうち一軌道あるいは二軌道が完全に占有され、軌道自由度が部分的に抑制されることがわかった。また、隣接サイト間クーロン相互作用によって電荷秩序状態が安定化されるが、そこでは直線状に電化が整列したいわゆる電荷ストライプ構造を取ることがわかった。

35000649
Fabrication and evaluation of a multilayer laminar-type holographic grating and its application to a high efficiency grazing incidence monochromator for the 1-8 keV region
小池 雅人; 石野 雅彦; Heimann, P. A.*; 今園 孝志; 竹中 久貴*; 畑山 雅俊*; 笹井 浩行*; Gullikson, E. M.*; 佐野 一雄*
AIP Conference Proceedings 879 , p.647-650(2007) ; (JAEA-J 02137)
 ホログラフィック法と反応性イオンビームエッチング法により作成されたラミナー型回折格子は少なくとも溝の凸部において初期研磨面の良い面粗さが保存されるため波長と面粗さがほぼ同等のスケールとなる軟X線回折格子として適している。また、この回折格子面上にマグネトロンやイオンビームスパッタリング法により多層膜を蒸着すると回折効率の高い多層膜回折格子が作成できる。幾つかの多層膜材料を用いて多層膜ラミナー型ホログラフィック回折格子を作成し、その回折効率を米国ローレンスバークレー研究所先進光源施設(Advanced Light Source, ALS)BL-5.3.1とBL6.3.2及び立命館大学SRセンタ-BL-11で0.6〜6keVの範囲で回折効率を測定した。回折格子の刻線密度は1200本/mm、溝深さは3〜4nm、デューティ比(凸部の幅/格子定数)は0.4〜0.5、多層膜の周期は6-7nm、総膜層数は60〜100、有効面積は36×36mm2である。その結果W/C多層膜を付加した場合、8keVで38.1%、CoSiO2多層膜を付加した場合、4keVで40.9%の回折効率を示した。さらに。これらの高回折効率回折格子の利用として、1-8keV領域を測定領域とする可変偏角不等間隔溝平面回折格子分光器の設計例を示し、実験的に得られた回折効率を取り入れた分光器としてのスループットの見積計算,光線追跡によるシミュレーションの結果から予測される分解能についても議論を行う。

35000650
Theoretical investigation of transmission-type phase shifter made with muscovite mica crystal for 1-keV region
今園 孝志; 小池 雅人
AIP Conference Proceedings 879 , p.690-693(2007) ; (JAEA-J 02138)
 0.7-1keV領域で機能する単結晶を用いた移相子を開発し、それを用いて偏光光源の偏光状態を決定するために、天然産出の白雲母単結晶(KAl2(AlSi3O10)(OH)2)の偏光性能を動力学回折理論に基づくシミュレーション計算により考察した。計算の結果、対称ブラッグケースにおける白雲母(002)を透過した光のs偏光とp偏光の間にできる位相変化量は結晶厚とともに増加し、一方、平均透過率は指数関数的に減少することがわかった。3μm厚の場合、位相変化量は+5.2°(44.95°)及び-7.2°(44.99°)であった(平均透過率は約0.4%)。これらの値は、偏光状態を決定するのに十分な性能であると言えることから、白雲母結晶は0.88keVで機能する透過型移相子として有力な物質であると結論付けられる。

35000651
Wide band energy beamline using Si(111) crystal monochromators at BL22XU in SPring-8
菖蒲 敬久; 戸澤 一清*; 塩飽 秀啓; 小西 啓之; 稲見 俊哉; 原見 太幹; 水木 純一郎
AIP Conference Proceedings 879 , p.902-906(2007) ; (JAEA-J 02139)
 SPring-8原子力機構専用ビームラインBL22XUでは、さまざまな研究を行うために3-70keVの広範囲のエネルギーを高強度で使用することが要求されている。そこで、Si(111)面を使用した2つの分光器をタンデムに配置し、使用するエネルギーに応じて使い分けるシステムを導入した。本発表では、得られるX線の性質、及び周期的に振動するX線の対策について紹介する。

35000652
Energy dispersive XAFS in the high energy region at BL14B1, SPring-8
岡島 由佳; 松村 大樹; 西畑 保雄; 小西 啓之; 水木 純一郎
AIP Conference Proceedings 879 , p.1234-1237(2007) ; (JAEA-J 02140)
 BL14B1では、DXAFS(Energy Dispersive XAFS)装置の開発を行っている。偏向電磁石からの水平方向に発散した白色X線を有効に利用すれば、測定に十分なフラックスを確保でき、なおかつ80keVまでをカバーする広いエネルギー領域でのスペクトルが得られる。入射X線は光学ハッチ1内に設置されている長さ1mのシリコン製ミラー(表面はRhコート)2枚で高調波を除去し、同時に垂直方向の集光を行うことが可能である。光学ハッチ2内には分光結晶(ポリクロメータ)及び試料ステージ,検出器が乗った円弧状レールが敷設されており、θ-2θ回折計の役割を担っている。また、ミラー使用時にはその傾きにより変化する白色X線の高さに対して分光結晶や試料,検出器を調整できる上下方向の駆動機構が備えられている。ポリクロメータはSi(422)をラウエ配置で使用し、湾曲形状は円弧状で曲率半径はR=1000mm及び2000mmである。検出器は蛍光体を内蔵したビームモニターとCCDカメラから構成されるCCDカメラシステムを用いた。これまでの実験では、試料位置での焦点サイズは0.2mm(FWHM)以下を実現している。また、Pd-K吸収端(24.348keV)及びPt-K吸収端(78.395keV)のPd箔及びPt箔のスペクトルが100ms以下の時間分解能で良好に得られている。また、高温状態において酸化・還元雰囲気中でのLaCoO3のスペクトル変化の様子を200msの時間分解能で追跡することに成功している。

35000653
Strain measurements using high energy white X-rays at SPring-8
菖蒲 敬久; 金子 洋; 水木 純一郎; 小西 啓之; 柴野 純一*; 平田 智之*; 鈴木 賢治*
AIP Conference Proceedings 879 , p.1581-1585(2007) ; (JAEA-J 02141)
 高エネルギー白色X線を用いた応力測定技術開発をSPring-8,BL14B1で行った。測定は半導体検出器を用いたエネルギー分散法により、SUS304鉄鋼材に加圧を加えながら内部のひずみ測定を行った。この結果、加圧によるひずみの変化を計測することに成功したが、測定誤差をはじめとするさまざまな問題点も挙げられた。

35000654
Design factor using a SiC/SiC composites for core component of gas cooled fast reactor, 1; Hoop stress
Lee, J.-K.; 永沼 正行
Ceramics in Nuclear and Alternative Energy Applications , p.55-63(2006) ; (JAEA-J 02142)
 ガス冷却高速炉研究の一環として、ヘリウムガス冷却高速炉の炉心要素設計研究を行った。炉心要素の構造材料としてセラミックスが期待される中、特に炭化ケイ素繊維強化炭化ケイ素複合材料(SiC/SiC)は優れた特性を持っている。しかし、現在の高速炉設計要素はミーゼスの降伏条件のように金属の等方性をもとにしている。そこでセラミックス複合材料の特性を考慮した設計要素を研究し、その特徴を有限要素法で模擬した。改善した設計要素はGFRの炉心要素だけではなく、SiC/SiC複合材料の改善方向にも参考になると見積もられる。

35000655
Seismogeology of the Atotsugawa strike-slip fault system in the Hida mountains, central Japan; With the special reference to the investigation gallery across the branch Mozumi-Sukenobe fault
竹内 章*; 武部 晃充*; Ongirad, H.*; 道家 涼介*
Geodynamics of Atotsugawa Fault System , p.1-10(2007) ; (JAEA-J 02143)
 本論文では中部日本の主要横ずれ構造の一つ、跡津川断層系(AFS)に焦点を絞り、中部日本北部後期新生代構造発達を包括的に説明する。地形地質研究からは、AFSの形態が詳細に明らかになった。跡津川断層(AG)と牛首断層(UK)の主要2断層は、矩形ブロックを形成する。AGの地表トレースは連続的であるが、UKは右雁行する。AFSの一員、茂住-祐延断層(MS)はAG東端からUK西部に向かって分岐し、活動もAGに同調し従属的である。以上の様相は断層系内部及び周辺で行われている局所応力場の再編を示唆する。地震地質学的研究からは、AGとMSの最新イベントが1858年飛越地震とされた。AG東部の平均再来周期は約3,000年である。AGとMSで活動の同時性が認められるが、平均再来周期はMSが約13,500年であり、AGより有意に長い。UKの最新イベントは約1000年前であり、AD762年もしくは863年の可能性がある。結局、中部日本北部の最近の構造発達を以下のように解釈した。AFSの成立は飛騨地域の広域応力場の発現が原因である。AGとUKともその両端は、鮮新-更新世の火山深成作用で高温となり延性変形が起こる脆弱帯に位置する。AGとUKでは0.4-0.8Maに右横ずれが始まり、遅れてMSが主断層AGから分岐した。その分岐位置は、圧縮性外力が矩形ブロックの両端から掛かる場合の最大剪断帯と合致する。

35000656
Geomorphology and geology along the eastern part of the Ushikubi fault of the Atotsugawa fault system, central Japan
道家 涼介*; 竹内 章*
Geodynamics of Atotsugawa Fault System , p.11-16(2007) ; (JAEA-J 02144)
 牛首断層は飛騨高原北縁に沿いNE-SW走向で長さ約52kmの右横ずれ断層である。本研究では、牛首断層東部地域において地形・地質学的な調査を実施した。その結果、北東延長部の地質断層において新たな活断層露頭及び変位地形を確認し、この地域が第四紀後期になって断層活動が活発化したことが明らかになった。また、牛首断層では東部(南東側隆起)と西部(北東側隆起)で上下変位センスに相違があり、断層の転位モデルで末端付近に予想される水平変位パタンとも異なることから、牛首断層が少なくとも2つ以上の地震性変位セグメントに区分される可能性がある。過去5年間に観測されたGPS測地データもこの考えを指示する。

35000657
Imaging of the Mozumi-Sukenobe fault, Hida district, central Japan, by the seismic reflection method
伊藤 谷生*; 津村 紀子*; 竹内 章*; 石丸 恒存; 高見 明*; 井川 秀雅*; 駒田 希充*; 山本 修治*; 菊池 伸輔*; 宮内 崇裕*; 川中 卓*; 井川 猛*
Geodynamics of Atotsugawa Fault System , p.17-24(2007) ; (JAEA-J 02145)
 1995年の兵庫県南部地震以降、地震発生域における活断層の構造解明に関心が拡がる中で、地下構造解明の有力な手段である反射法地震探査を高角な断層に適用する方法の開発が急務となっていた。こうして、詳細な地下構造情報が得られている神岡鉱山を通過する茂住祐延断層をターゲットに1995年11月、準3次元的な反射法探査の実験が行われたのである。実験は、同断層が走向N65E,傾斜84SEであることを明らかにしたが、同時により詳細な構造解明のためには、オフライン型レコーダの新規開発が必要であることも示した。これを受けて2002年までに同レコーダの開発が行われ、その後の地震探査における強力な武器となっている。この意味で同実験はパイオニアの役割を果たしたのである。

35000658
Dense GPS array observations across the Atotsugawa fault system in central Japan
平原 和朗*; 大園 真子*; 鷺谷 威*; 細 善信*; 和田 安男*; 安藤 雅孝*
Geodynamics of Atotsugawa Fault System , p.25-44(2007) ; (JAEA-J 02146)
 中部日本のひずみ集中帯に位置する跡津川断層周辺の地殻変動を明らかにするために、断層を横切る全長さ30kmで、7観測点からなるGPSアレーを設置した。4年間の観測で、25km離れた2観測点では5mm/年で東西に収束しているが、断層に近づくにつれ、速度は減少し、運動方向は東南東-西南西方向に変わっていくのがわかった。これらの観測を説明する簡単なモデルとして、15kmの厚さの弾性ブロックが20mm/年の速度で東西に衝突しているというものが考えられる。

35000659
Seismic activity from routine and temporary observations of earthquakes in the northwest Chubu district, central Honshu, Japan
伊藤 潔*; 和田 博夫*; 大見 士朗*; 平野 憲雄*; 上野 友岳*
Geodynamics of Atotsugawa Fault System , p.45-63(2007) ; (JAEA-J 02147)
 京都大学上宝観測所で30年間以上にわたって続けられてきた高感度地震観測及び陸域活断層フロンティア計画による臨時観測データに気象庁のデータを加えて、中部地方北西部の地震活動、特に跡津川断層帯付近の地震断層について詳細な調査を行った。その結果、新潟-神戸ひずみ集中帯の一部とされる跡津川断層帯付近を境に、地震が北西側では南西側に比べて深くなることがわかった。これはひずみ集中帯を境に地下構造又は応力が異なることを示している。また、断層帯の中でも跡津川断層と茂住祐延断層の地震はそれぞれ、地震発生層の下部15kmまでは、独立の断層面を有することがわかった。

35000660
Crustal structure from seismic surveys and seismicity in the northern Chubu district with special reference to the Atotsugawa fault area
伊藤 潔*; 上野 友岳*; 和田 博夫*; 松村 一男*
Geodynamics of Atotsugawa Fault System , p.65-78(2007) ; (JAEA-J 02148)
 中部地方北部、特に跡津川断層付近で実施された人工地震による地下構造調査のデータを用いて、地殻構造調査を行い地震活動との関連を調べた。地殻内には深さ15及び25km付近に顕著な地震波反射面が存在する。前者は地震発生層の下限に対応し、大地震が地震発生層の下部から破壊開始する際の構造的な根拠を与える。また、跡津川断層付近を境に速度境界は、北西側に深くなり、これは地震の下限の深さ変化と対応する。さらに、表層付近の構造は断層帯付近で浅くなる。このことはひずみ集中帯の成因に地下構造の変化が関連していることを示している。

35000661
Properties of seismic scattering along the Atotsugawa fault system, central Japan; Preliminary analysis of the fault zone heterogeneous structure
西上 欽也*
Geodynamics of Atotsugawa Fault System , p.79-83(2007) ; (JAEA-J 02149)
 跡津川断層系周辺の地殻内部における地震波散乱係数の三次元空間分布を推定した。解析には、上宝観測所の10観測点で記録された28個の地震,120個の地震波形トレースを使用した。その結果は、跡津川断層系の東端付近で散乱係数が相対的に大きいことを示す。これは、この付近で微小地震活動が活発なことと合わせて、媒質のクラック密度が高い(不均質性が強い)ことを示すと考えられる。また、牛首断層に沿って散乱係数が相対的に小さく、この断層では固着が強いことを示唆する。跡津川断層のクリープ域,固着域における断層構造の違いを検出するためには、さらにデータを追加することが必要である。

35000662
Temporary seismic observation at the Atotsugawa fault, central Japan; Study on fault-zone trapped waves and attenuation of S waves
西上 欽也*; 藤沢 泉*; 田所 敬一*; 水野 高志*; 儘田 豊*
Geodynamics of Atotsugawa Fault System , p.85-92(2007) ; (JAEA-J 02150)
 2001年から2002年にかけて跡津川断層周辺において臨時の地震観測を実施した。断層のクリープ域直上(土観測点)に設置した地震計により、分散性を示す明瞭な断層トラップ波が検出された。トラップ波は観測点より北東側の跡津川断層近傍に発生した地震に対して観測されたが、南西側に震源を持つ地震に対しては観測されなかった。これは、土観測点の南西側、すなわち跡津川断層の中央部付近に断層破砕帯の不連続(セグメント境界)が存在することを示唆する。また、S波のスペクトル解析からS波の減衰定数(Qs値)を推定し、その水平分布を求めた。その結果は、跡津川断層に沿って地震波減衰が特に大きいことを示した。

35000663
Shallow structure of Mozumi-Sukenobe fault zone imaged by simulation of fault zone waves generated by near-fault explosion experiments
儘田 豊*; 西上 欽也*; 伊藤 久男*; 桑原 保人*
Geodynamics of Atotsugawa Fault System , p.93-102(2007) ; (JAEA-J 02151)
 茂住-祐延断層で行われた発破による人工地震を、断層を横断する地下300mに掘られたトンネル内に設置した直線状の地震計アレイで観測した。記録には25Hz程度までの明瞭な高周波地震波が含まれており、断層破砕帯のイメージングに有効であるヘッドウェーブ,破砕帯中を伝播したP波,断層トラップ波と解釈できるフェーズが検出できた。3次元波動場の数値シミュレーションを用い、これらのフェーズの波形モデリングを行った結果、断層破砕帯の走向方向の不連続性を検出した。本観測で得られたような高品質な記録は断層破砕帯内外におけるP波速度の推定や、不連続性(セグメンテーション)など複雑な断層構造の検出を可能にすることを示唆する。

35000664
Descriptions of meso- and microscopic structures of fault zone rocks obtained from tunnel penetrated across the Mozumi-Sukenobe fault, central Japan
田中 秀実*; 伊藤 谷生*; 野原 壯; 安藤 雅孝*
Geodynamics of Atotsugawa Fault System , p.103-121(2007) ; (JAEA-J 02152)
 茂住-祐延断層は、西北西-東南東走向、ほぼ垂直の姿勢を持つ跡津川断層系に属する右横ずれ断層である。地震フロンティアプロジェクトによって、この断層を垂直に横切るトンネルが掘削され、露出した壁面及び床面から直接活断層の断層岩類が採取された。その結果、断層帯の分布及び活断層帯のアーキテクチャについて次の知見が得られた。(1)茂住-祐延断層は2つの大きな破砕帯からなる。それぞれA、及びB破砕帯と呼ぶ。A破砕帯は幅15m、B破砕帯は幅50mであり、いずれも断層角礫からなる厚いダメージゾーンと葉理を持つ断層ガウジからなる断層コアからなる。断層コアはA破砕帯では8cmの厚さで一枚、B破砕帯では10cmのものが複数枚認められる。(2)断層角礫,断層ガウジともに面構造が卓越することから、変形は脆性流動を主要な機構としていることがわかる。断層コア中軸部には、高速度の変形を示す超微粒カタクレーサイトが分布し、葉理を持つ断層ガウジと共切断の関係にある。このことは流動と高速すべりの繰り返しを現している。(3)断層岩類の鉱物組合せの解析の結果、いずれの断層岩類も、スメクタイト,雲母系粘土鉱物、及び緑泥石に富んでいる。これらの鉱物は断層帯に安定滑りをもたらすと考えられている。以上の結果から、茂住-祐延断層の東部で想定されている年間1-2mmの超低速クリープは滑り面の粘土鉱物のレオロジー的な性質によるものと考えられる。

35000665
Geochemical investigation around the Mozumi-Sukenobe fault survey tunnel
佐竹 洋*; 北 裕一郎*; 林 はる奈*; 村田 正信*
Geodynamics of Atotsugawa Fault System , p.123-148(2007) ; (JAEA-J 02153)
 茂住祐延断層調査坑道において、地下水や炭酸塩について化学組成・溶存ガス組成や各種同位体などの地球化学的調査を行った。断層周辺地下水の化学組成はCa-HCO3型であったが破砕帯ではNa-HCO3型であった。これは断層における岩石風化作用の結果、Naが地下水に溶出して変化したと考えられた。また破砕帯内の地下水はNa/Ca比の変動が大きく、岩石の変形などにより地下水流動経路が変わり、その比が大きく変化したと考えられた。断層調査坑道の地下水は氷河期の水であり、この古い水には地下深部起源の窒素やヘリウムが認められ、断層が地下深部流体の通路となっていることが判明した。このように地下水の化学成分・同位体は断層運動と密接な関連があることが明らかになった。

35000666
Observation of fault-zone trapped waves in the subsurface survey tunnel excavated through the Mozumi-Sukenobe fault, central Japan
西上 欽也*; 伊藤 久男*; 桑原 保人*; 水野 高志*; 儘田 豊*
Geodynamics of Atotsugawa Fault System , p.149-156(2007) ; (JAEA-J 02154)
 茂住祐延断層を掘り抜く地下観測坑道内において約15m間隔で32点の地震計アレイを設置した。茂住祐延断層の近傍に発生した地震に対して明瞭な断層トラップ波が観測され、そのモデル計算から、断層破砕帯の幅:160-400m,S波速度低下率:周辺岩盤の85-90%、及びQs値:60-90を得た。この低速度層の幅は、坑道内で地質学的に観察された破砕度の大きい領域(A, B)の全体の幅とおおむね一致する。また、地震計アレイを通過する直達P波及びS波の見かけ速度から、破砕帯A, Bに対応する2か所の低速度域が、アレイ直下(深さ数100m)に存在することが見いだされた。

35000667
Interesting phenomena detected by the continuous observation of strain and in-situ stress mesurements in the vicinity of the active Mozumi-Sukenobe fault
石井 紘*; 山内 常生*; 浅井 康広*; 松本 滋夫*; 向井 厚志*
Geodynamics of Atotsugawa Fault System , p.157-162(2007) ; (JAEA-J 02155)
 この研究では、茂住祐延断層(活断層)で歪みについての観測と応力の測定を連続的に行った。断層破砕帯の両側に設置された2つの歪み計による特徴的な歪みパターンは、右横ずれの動きであることを示した。応力に関してもそれらと整合的なパターンを示した。その理由としてわれわれは、断層破砕帯が応力を累積できないことを提案する。歪み変化の挙動は、断層活動が構造的な応力の変化によってもたらされるが、その応力の累積は断層の周辺で小さいことを示した。

35000668
Monitoring of pore pressure changes using closed borehole wells; Interpretations based on poroelasticity
加納 靖之*; 柳谷 俊*; 北川 有一*; 山下 太*
Geodynamics of Atotsugawa Fault System , p.163-171(2007) ; (JAEA-J 02156)
 われわれは密閉したボアホール井戸を用いて正確に間隙水圧を測定する方法を開発した。これは、従来の開放井戸の周波数応答を改善するものである。1999年から2003年に、茂住調査坑道の2本の密閉したボアホール井戸を用いて間隙水圧のモニタリングを行った。間隙水圧の地球潮汐に対する応答や地震に対する応答(ハイドロサイスモグラム)を解析し、岩盤の変形と間隙水圧変化の関係を間隙弾性論に基づいて調べた。そして、間隙水も含めた岩盤の変形を間隙弾性論によって記述できることを確かめた。

35000669
Variation in groundwater levels, pore pressures and crustal strain related to earthquakes in the upper granite and sedimentary formations in the area of western Tono, Japan
吾妻 瞬一*; 石井 紘*; 浅井 康広*; 北川 有一*; 脇田 宏*; 山内 常生*; 浅森 浩一
Geodynamics of Atotsugawa Fault System , p.173-179(2007) ; (JAEA-J 02157)
 東濃地科学センターと東濃地震科学研究所は数本のボアホールにおいて地下水位,間隙水圧や歪の連続観測を日本の中央部東濃の西の地域において実施している。現在まで地震に関連した次のような変化が数本のボアホールにおいて観測されている。(1)地震発生後に1か月程度持続する地下水位と間隙水圧の増加が東濃鉱山周辺の上部花崗岩とその上の土岐夾炭類層下部においてしばしば観測された。これらの増加は観測ボアホールの領域よりも高い水頭を持つ領域からの地下水の流入によって説明できる。(2)地震前の地下水位の増加は土岐夾炭類層下部において観測された。1999年の地震の場合には地震前に主歪とズレ歪の変化が観測されたが面積歪には観測されなかったがこれは常に3成分歪の観測がされるべきであることを意味する。体積歪のみの観測ではそのような地震前の歪変化が観測できないからである。

35000670
In situ detection of resistivity changes produced by pressurized water-injection at the active fault zone using the AC dipole-dipole method with the GPS synchronized phase-sensitive-detection technique
柳谷 俊*; 山下 太*
Geodynamics of Atotsugawa Fault System , p.181-186(2007) ; (JAEA-J 02158)
 野島断層サイト近傍における圧力注水に伴う比抵抗変化を、新たに開発したPSDを用いた交流ダイポール測定法を用いて観測した。フィールドではとてもノイズ・レベルが高いので、そのような劣悪なる状況下でも測定できる機器を新たに開発したわけである。この手法では、電流の地下への送信・受信に、従来のDCの代わりにACを使い、その周波数をGPSの基準信号と同期させ、PSDを適用した。この結果、圧力注水に伴う比抵抗変化が検出できた。この結果の解釈のため、比抵抗モデルを作って検討したところ、検出された比抵抗変化は、岩盤への水の流入による比抵抗変化ではなく、注水によって岩盤が圧縮されたことによって生じたことを確かめた。

35000671
Application of ECW to the JT-60U Tokamak
星野 克道; JT-60チーム
Proceedings of 14th Joint Workshop on Electron Cyclotron Emission and Electron Cyclotron Resonance Heating (EC-14) , p.26-36(2006) ; (JAEA-J 02160)
 JT-60Uの電子サイクロトロン波(ECW)パルス幅は、放電の長時間化に伴って伸長してきており、ECWはJT-60Uのプラズマの性能向上をめざした実験研究に重要な手段となっている。ECWは、プラズマへの近接性がよく、局所的な加熱や電流駆動ができることが特長である。JT-60Uでは、これらの特長を活かしてECWは、新古典テアリングモードの抑制の物理解明,鋸歯状振動の制御,輸送係数の解明,輸送障壁への効果,電流ホールの解明などの最新の研究課題の解明に貢献している。また、他の高周波加熱法と比較して、真空とのマッチングの良さから、予備電離やトカマクの中心ソレノイドなしの電流立ち上げ、また、入射系がディスラプションの影響を受けにくい利点から、壁が飽和に近い状態でのプラズマ立ち上げやたち下げに際しての有効なディスラプション回避手段となり、放電洗浄の回数を減らすことに貢献している。以上のような、ECWの利点を活かした最近の研究について招待講演を行う。

35000672
Evaluation of ECE spectra on the oblique propagation and application to electron temperature measurement in a reactor grade tokamak
佐藤 正泰; 諌山 明彦
Proceedings of 14th Joint Workshop on Electron Cyclotron Emission and Electron Cyclotron Resonance Heating (EC-14) , p.205-210(2006) ; (JAEA-J 02161)
 磁場閉じ込め装置の高温プラズマにおける電子サイクロトロン放射(ECE)の相対論的効果を明らかにするために数値計算を行った。炉心級プラズマにおけるECEの電子温度測定においては、磁場に直交な視線の場合、相対論的効果の影響を考慮する必要があることはよく知られている。視線を磁場に対して直交から斜めにした場合、ドップラー効果が大きくなるが、相対論的効果が少なくなることが期待される。それぞれの影響を評価するために、ECEの放射輝度の数値計算を行った。まず、相対論的球対称Maxwell分布に対する斜め伝搬ECEの放射率を導出した。この式は、視線が磁場に直交する場合のTrubnikovの式の拡張にあたる。この式をもとに放射輸送の式を解いて、観測方向を全立体角にわたってスキャンし、斜め伝搬のECEを評価した。電子温度が25keV以下であれば、観測方向を水平面から斜めにすることにより、中心の電子温度を測定することができる。しかし、それより高い温度では、従来用いられている2倍高調波から求める方法では中心温度を求めることができない。光学長を評価し2倍高調波の吸収を考慮する方法により、測定できる可能性があることを指摘する。

35000673
The Physics base for NTM stabilization by ECCD in ITER
Zohm, H.*; 林 伸彦; La Haye, R. J.*; 諌山 明彦; Maraschek, M. E.*; Sauter, O.*; Urso, L.*
Proceedings of 14th Joint Workshop on Electron Cyclotron Emission and Electron Cyclotron Resonance Heating (EC-14) , p.334-339(2006) ; (JAEA-J 02162)
 ITERにおいては電子サイクロトロン電流駆動(ECCD)により新古典テアリングモード(NTM)を安定化することを想定しているが、その際の重要課題の1つとして、NTMを完全に安定化するために必要な電流量を高い確度で予測するということがある。本論文は、NTM安定化に必要とされるjECCD/jBSに関する予測計算の結果について記述している。ここにjECCD, jBSは、それぞれNTM発生位置における電子サイクロトロン駆動電流密度、及び自発電流密度である。ASDEX-U, DIII-D, JET, JT-60Uの実験データを用いた装置間比較研究により,完全安定化の条件としてjECCD/jBS〜1という結果が得られた。また、電子サイクロトロン波を変調した場合における安定化効果に関するシミュレーションも行った。その結果、磁気島幅がECCD幅よりも2倍程度以上のときは変調しない場合の方が安定化効果が30%程度大きいが、磁気島幅がECCD幅程度以下になると変調した方が安定化効果が2倍以上になることが明らかになった。

35000674
Feasibility of current ramp-up by electron cyclotron wave in DEMO reactor at JAEA
佐藤 正泰; 西尾 敏; 飛田 健次; 坂本 慶司
Proceedings of 14th Joint Workshop on Electron Cyclotron Emission and Electron Cyclotron Resonance Heating (EC-14) , p.385-390(2006) ; (JAEA-J 02163)
 経済性の高い核融合炉概念の構築を目指して、中心ソレノイド(CS)を小型化した低アスペクト比のトカマク型原型炉の検討を行っている。この炉概念の課題は、非誘導電流駆動が必要になる点であり、本研究では、中性粒子入射(NBI)装置を用いずに、おもに電子サイクロトロン波(ECW)を用いて、この原型炉の電流立ち上げシナリオについて検討した。ECWの使用のメリットは、電流分布制御性に優れることと、入射パワー密度が高いためブランケットのカバレージを低下させない点にある。他方、電流駆動効率がNBIより低いことが問題点である。低プラズマ電流時にシャインスルー値を低く抑える必要があるNBIを用いた場合に比べ、ECWを用いた場合、βpε<1(βp:ポロイダルベータ値,ε:逆アスペクト比)を満足する領域まで十分パワーを入射可能であり、入射パワーの制約は少ない。CSにより初期プラズマを生成した場合について、プラズマ電流の時間変化を評価した。全ECパワー130MWで、プラズマ電流2MAからフラットトップ16.7MAまで、約4時間で立ち上げることができる。NBIに比べ、パワー,立ち上げ時間とも約1.5倍程度必要であるが、十分NBIの代わりに原型炉の電流駆動装置に成り得る。また、修正ラザフォード式を基本にしたコードにより、新古典拡散テアリングモードの抑制に必要なECパワーを評価し、その結果も発表する。

35000675
Study on current drive capability of lower hybrid waves and neutral beam in an ITER steady state scenario
及川 聡洋; 嶋田 道也; Polevoi, A. R.*; 内藤 磨; Bonoli, P. T.*; 林 伸彦; Kessel, C. E.*; 小関 隆久
Proceedings of 21st IAEA Fusion Energy Conference (FEC 2006) (CD-ROM) , 7p.(2007) ; (JAEA-J 02164)
 ITER定常運転シナリオにおける低域混成波(LH)による電流駆動性能を相対論的1次元フォッカープランクコードとトロイダル光線追跡コードを用いて評価した。現在のLHランチャー設計では電流駆動効率1.8×1019AW-1m-2を実現し、LH駆動電流分布は周辺分布となり負磁気シア配位の形成に有利である。LHパワースペクトルのさらなる最適化についても検討した。また、中性粒子電流駆動(NBCD)について異なる計算手法を採る理論コードを使って検討した。バウンス平均したフォッカープランク方程式に基づくNBCD理論コードはトロイダル系での粒子の軌道効果を含むので、粒子軌道追跡モンテカルロコードによる結果と良い一致を示した。

35000676
Characteristics of the H-mode pedestal in improved confinement scenarios in ASDEX Upgrade, DIII-D, JET and JT-60U
Maggi, C. F.*; Groebner, R. J.*; 大山 直幸; Sartori, R.*; Horton, L. D.*; Sips, A. C. C.*; Suttrop, W.*; ASDEX Upgradeチーム; Leonard, T.*; Luce, T. C.*; Wade, M. R.*; DIII-Dチーム*; 鎌田 裕; 浦野 創; JT-60Uチーム; Andrew, Y.*; Giroud, C.*; Joffrin, E.*; la Luna, E. de.*; EFDA-JET Contributors* for the Pedestal and Edge Physics and the Steady State Op
Proceedings of 21st IAEA Fusion Energy Conference (FEC 2006) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 02165)
 ASDEX-U(AUG), DII-D, JET, JT-60U装置において、改善閉じ込めモードと通常のHモードについて、ペデスタルやグローバルなプラズマパラメータを比較した。加熱パワーの増加とともにペデスタル圧力も上昇しており、通常のHモードから改善閉じ込めモードへは連続的に変化しているように見える。AUG装置では、改善閉じ込めモードでペデスタル圧力が上昇する際に密度と温度がともに上昇するのに対し、DIII-D装置ではおもに温度の上昇によってペデスタル圧力が上昇する。JT-60Uでは、安全係数と三角度の高い高ベータポロイダルHモードではペデスタル部の蓄積エネルギー上昇により全体の蓄積エネルギーが上昇しているが、負磁気シアHモードではコアプラズマの蓄積エネルギー上昇によるものが大きい。JET装置の1.4MAで行われたハイブリッドモードでは、加熱パワーと三角度の上昇によってペデスタル部の蓄積エネルギー上昇により、全体の蓄積エネルギーが上昇する。どの装置でも、全体のポロイダルベータ値が上昇するにつれてペデスタル部の安定性が改善している。また、ペデスタル部のポロイダルベータ値の上昇に伴い、閉じ込め改善度も上昇する。

35000677
Theoretical analysis and predictive modelling of ELMs mitigation by enhanced toroidal ripple and ergodic magnetic field
Parail, V. V.*; Evans, T. E.*; Johnson, T.*; Lonnroth, J.*; 大山 直幸; Saibene, G.*; Sartori, R.*; Salmi, A.*; de Vries, P.*; Becoulet, M.*; Corrigan, G.*; Hastie, J.*; Gimblett, C.*; Greenfield, C. M.*; 波多江 仰紀; Howell, D.*; Hyn"onen, V.*; 鎌田 裕; Kiviniemi, T.*; Kurki-Suonio, T.*; Loarte, A.*; Nardon, E.*; 篠原 孝司; JET-EFDA Contributors
Proceedings of 21st IAEA Fusion Energy Conference (FEC 2006) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 02166)
 現在のトカマクやITERでのELM低減化手法としてトロイダル磁場リップルの増大と外部より供給するセパラトリックス近傍への共鳴磁場摂動(RMP)が検討されている。これらの手法は、異なる物理に基づいて輸送を増加しているが、この増加した輸送がプラズマダイナミクスやELM低減化へ与える影響は補完的、もしくは似たものである。本論文では、リップルやRMPによりもたらされる輸送に関する物理プロセスの理論解析の結果とともに予測モデルについて報告する。現在のトカマク装置での実験結果との比較も行う。

35000678
Investigation of collective fast ion instability-induced redistribution or loss in the National Spherical Torus Experiment
Medley, S. S.*; Andre, R.*; Bell, R. E.*; Darrow, D. S.*; Fredrickson, E. D.*; LeBlanc, B. P.*; Levinton, F. M.*; Menard, J. E.*; Stutman, D.*; Roquemore, A. L.*; 篠原 孝司; Tritz, K.*; Yuh, H.*; NSTX Research Team*
Proceedings of 21st IAEA Fusion Energy Conference (FEC 2006) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 02167)
 プリンストンプラズマ物理学研究所の球状トカマク実験装置(NSTX)における高速イオン駆動不安定性とこれによる高速イオンの輸送に関する研究である。最近、モーショナルシュタルク効果電流分布計測器(MSE)とシンチレータ高速損失イオンプローブ(sFLIP)が設置され、高速イオンの輸送の理解が進んだ。中心部の高速イオンの輸送に伴い、ビーム電流駆動分布が変化していることが観測された。また、特定の Hモード放電では、sFLIPと中性粒子束計測器による計測からNB入射エネルギー近辺の非捕捉イオンの損失を観測した。このような実験結果をTRANSP輸送解析コードによる解析結果とともに報告する。

35000679
Improved performance in long-pulse ELMy H-mode plasmas with internal transport barrier in JT-60U
大山 直幸; 諌山 明彦; 鈴木 隆博; 小出 芳彦; 竹永 秀信; 井手 俊介; 仲野 友英; 朝倉 伸幸; 久保 博孝; 武智 学; 坂本 宜照; 鎌田 裕; 浦野 創; 吉田 麻衣子; 都筑 和泰*; 松永 剛; Gormezano, C.*; JT-60チーム
Proceedings of 21st IAEA Fusion Energy Conference (FEC 2006) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 02168)
 フェライト鋼を設置しトロイダル磁場リップルを低減したJT-60Uにおいて、長時間のELMy Hモード放電の閉じ込め性能を改善することができた。加熱用中性粒子ビームの損失低減による実効的な加熱パワーの増加とトロイダル回転の変化に伴う閉じ込め性能改善の結果、高い規格化ベータ値(βN)と高いthermal成分の閉じ込め性能(H98)の維持時間を伸張することができた。H98が1程度でβNが2.3以上の放電を安全係数が3.3程度のプラズマにおいて23.1秒間(電流拡散時間の12倍程度)維持した。このとき達成したβNH98は2.2以上であり、ITERの標準運転シナリオでの値である1.8を上回っている。これらの放電は、ITERの長時間運転モードとして提案されているハイブリッド運転モードとして適用することが可能である。

35000680
Plasma rotation and wall effects on resistive wall mode in JT-60U
武智 学; 松永 剛; 小関 隆久; 相羽 信行; 栗田 源一; 諌山 明彦; 小出 芳彦; 坂本 宜照; 藤田 隆明; 鎌田 裕; JT-60チーム
Proceedings of 21st IAEA Fusion Energy Conference (FEC 2006) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 02169)
 磁場によるブレーキングを用いずにNBIの運動量を換えることによりプラズマの回転を変えてRWMの起こるプラズマ回転を調べる初めての実験を行った。JT-60Uでは新しくフェライト鋼を導入することによりNBIの高速イオンのリップル損失を減らすことにより壁近くで自由境界限界を超える実験が可能となった。回転がない場合、自由境界限界付近でRWMが発生したが、回転が大きい場合には小さい場合に比べ高いベータを得ることが可能となった。これらの結果をプラズマの圧力及び回転,電流の分布を用いて理論予測との比較を行った。また、RWMの起こるプラズマ回転の閾値はこれまで他のトカマクでの報告の値より半分未満であった。

35000681
Ferritic insertion for reduction of toroidal magnetic field ripple on JT-60U
篠原 孝司; 櫻井 真治; 石川 正男; 都筑 和泰*; 鈴木 優; 正木 圭; 内藤 磨; 栗原 研一; 鈴木 隆博; 小出 芳彦; 藤田 隆明; 三浦 幸俊; JT-60チーム
Proceedings of 21st IAEA Fusion Energy Conference (FEC 2006) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 02170)
 JT-60Uでは、実効的な加熱パワーの増加,壁安定化の利用,RFアンテナとプラズマの結合の改善等に有効と考えられるトロイダル磁場リップルの低減を目指して、フェライト鋼を導入した。導入にあたっては、完全3次元磁場粒子追跡モンテカルロコード(F3D OFMC)を利用し、運転領域を広く確保しつつ、高速イオンの閉じ込めの改善が十分に得られる、経済的な導入案を引き出すことができた。フェライト鋼はトロイダル磁場だけでなく、プラズマの平衡にかかわるポロイダル磁場も生成する。フェライト鋼とプラズマの距離は数cm程度離れているため、フェライト鋼がプラズマ自身に与える影響は小さいが、磁気センサの幾つかはフェライト鋼と1cm程度の距離しかなく、精度よくプラズマを制御したり、平衡の再構築をしたりするためには、フェライト鋼の磁気センサへの影響を考慮する必要がある。JT-60Uでは実時間制御と平衡解析のコードにフェライト鋼の磁気センサとプラズマへの影響を考慮した補正を導入し、制御と再構築に初めて成功した。また、フェライト鋼の導入により期待された高速イオンの閉じ込めの改善をF3D OFMCを用いた数値計算との比較により明らかにした。

35000682
Particle simulation analysis of energetic-particle and Alfv'en-mode dynamics in JT-60U discharges
Vlad, G.*; Briguglio, S.*; Fogaccia, G.*; 篠原 孝司; 石川 正男; 武智 学; Zonca, F.*
Proceedings of 21st IAEA Fusion Energy Conference (FEC 2006) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 02171)
 JT-60Uの負イオン源中性粒子ビームを用いたアルベン固有モード実験に対するHMGC particle-in-cellコードを用いた粒子数値計算である。ALEと呼ばれている不安定性について、線形成長過程では、高エネルギーイオン圧力勾配の強いところにたつアルベン連続スペクトルと強く相互作用した高エネルギー粒子駆動不安定性であることがわかった。非線形過程では高エネルギーイオンの輸送が観測され、時間スケールも含め、実験データを再現している。

35000683
Simulation of the hybrid and steady state advanced operating modes in ITER
Kessel, C. E.*; Giruzzi, G.*; Sips, A. C. C.*; Budny, R. V.*; Artaud, J. F.*; Basiuk, V.*; Imbeaux, F.*; Joffrin, E.*; Schneider, M.*; Luce, T.*; 村上 匡且*; John, Holger St.*; 及川 聡洋; 林 伸彦; 滝塚 知典; 小関 隆久; Na, Y.-S.*; Park, J. M.*; Garcia, J.*; Tucillo, A. A.*
Proceedings of 21st IAEA Fusion Energy Conference (FEC 2006) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 02172)
 国際トカマク物理活動の定常運転グループでは統合シミュレーションコードのベンチマークを始めており、CRONOS, ONETWO, TRANSP, TOPICS, ASTRAといった複数の1.5次元輸送コードを用いてITERハイブリッド運転のシミュレーションを行った。平衡配位,加熱電流駆動機器のジオメトリ,熱・粒子輸送モデル等について共通ガイドラインを設けて極力同じ計算条件となるようにしている。世界的に利用されている輸送コードのほとんどが参加したベンチマークは初めてであり、結果の違いについて結論できる段階には至っていないが、各コードにおいて改良すべき点を客観的に評価できることを明らかにした。

35000684
Engineering feature in the design of JT-60SA
松川 誠; 日欧サテライトトカマクワーキンググループ; JT-60SA設計チーム
Proceedings of 21st IAEA Fusion Energy Conference (FEC 2006) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 02173)
 ブローダーアプローチ計画の一環として、サテライトトカマク計画(JT-60SA)につき日本とEUが協力して検討を行った。これにより、装置本体を含む、プラズマ加熱・電流駆動及び電源などに大幅な設計変更が加えられた。本論文は、その概要を述べるものである。超伝導トロイダル磁場コイルは、磁場強度(2.7T@R=3m)とプラズマ断面形状のフレキシビリティ(アスペクト比2.6〜3.1)を確保しつつ、ニオブアルミ導体から安価なニオブチタン導体に変更した。ITER模擬配位(プラズマ電流3.5MA,グリンワルド密度0.85)で100秒間のフラットトップ期間を維持するため、センターソレノイドは最大磁場10Tの導体に増強した。プラズマ追加熱の増大(41MW-100秒)に伴い1放電あたりの中性子発生量が2×1019個に増加したが、真空容器とクライオスタットの遮蔽設計構造を強化して、トロイダル磁場コイルの核発熱を、インボード側で0.23mW/cc,アウトボード側で0.15mW/ccに抑制した。発表では、ダイバータや電源システムの設計変更についても言及する。

35000685
ITER limiters moveable during plasma discharge and optimization of ferromagnetic inserts to minimize toroidal field ripple
伊尾木 公裕; Chuyanov, V.*; Elio, F.*; Garkusha, D.*; Gribov, Y.*; Lamzin, E.*; 森本 将明; 嶋田 道也; 杉原 正芳; 寺澤 充水; Utin, Y.*; Wang, X.*
Proceedings of 21st IAEA Fusion Energy Conference (FEC 2006) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 02174)
 ITERの真空容器と容器内構造物について2つの重要な設計改善が行われた。一つはプラズマ放電中に位置調整可能なリミタの導入であり、もう一つはトロイダル磁場リップルをさらに軽減するための、強磁性体挿入物の配置最適化である。新しいリミタ設計では、プラズマがダイバータ配置になると、リミタを約8cm引っ込ませることができる。これにより、デスラプションやELMなどによる熱負荷を軽減し、また、ICRHのカップリングを改善できる可能性がある。強磁性体挿入物については、真空容器水平ポートにおけるNB用と通常のものとの配置の相違による複雑さのため、この周辺で設置していなかった。しかしながら、そのため、1%という比較的大きいリップル,約10mmの磁力線の波打があることが明確となり、強磁性体挿入物を追加することとした。

35000686
Benchmarking of lower hybrid current drive codes with application to ITER-relevant regimes
Bonoli, P. T.*; Harvey, R. W.*; Kessel, C. E.*; Imbeaux, F.*; 及川 聡洋; Schneider, M.*; Barbato, E.*; Decker, J.*; Giruzzi, G.*; Forest, C. B.*; 井手 俊介; Peysson, Y.*; Schmidt, A. E.*; Sips, A. C. C.*; Smirnov, A. P.*; Wright, J. C.*
Proceedings of 21st IAEA Fusion Energy Conference (FEC 2006) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 02175)
 ITER定常運転プラズマを対象として、複数の低域混成波(LH)電流駆動計算コードを比較した。LH計算コードには2次元速度空間で定義されたFokker-Planck方程式をもとにしたコード及び1次元Fokker-Planck方程式をもとにしたコードがあり、2次元Fokker-Planckコードは最も適切な取り扱いをしていると考えられる。2次元コードは1次元コードに比べて40%程度大きいLH駆動電流を与えた。また、捕捉粒子効果の考慮も重要であることもわかった。さらに、バウンス平均したオペレータの導入が必要であり、バウンス平均していないオペレータを使った場合30%程度計算結果が異なる。また、核融合生成物である3.5MeVのアルファ粒子によるLH波の吸収を評価した。アルファ粒子の異常輸送によりLH波吸収領域でのアルファ粒子密度が増加する場合でも、LH波周波数3.7GHzにおいてアルファ粒子により吸収されるLHパワーは7.7%と小さく、LH機器の設計値である5GHzに対して周波数選択の余地があることを示した。

35000687
Measurement and analysis of the fluctuations and poloidal flow on JFT-2M tokamak
星野 克道; 井戸 毅*; 永島 芳彦*; 篠原 孝司; 小川 宏明; 神谷 健作; 川島 寿人; 都筑 和泰*; 草間 義紀; 大麻 和美; 上原 和也; 河西 敏; 浜田 泰司*; 江尻 晶*; 高瀬 雄一*; JFT-2Mグループ
Proceedings of 21st IAEA Fusion Energy Conference (FEC 2006) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 02176)
 JFT-2Mトカマクでのプラズマポテンシャルや密度の揺動とポロイダル流の研究について発表する。測地的音波モード(GAM)を同定し、その電場構造を明らかにした。GAMは背景乱流と3波相互作用をし、ドリフト波-帯状流理論と整合することを明らかにした。さらにGAMは背景密度揺動を変調し、揺動抑制は流速の方向や勾配に依存するという動的性質をもち理論と整合する。Hモード中は負電場が形成され、乱流の抑制によるGAMの消滅がある。周辺輸送障壁に帯状流があるかどうかは興味深い。そこで、Hモード中の低周波ポテンシャル揺動に着目しウェーブレット解析を行い、ごく低周波(数百Hz)領域にLモード時やELM時に消滅する特徴的ポテンシャル揺動を見いだした。ポロイダル流と揺動の抑制は強く関係するが、Hモードの径電場は、GAM径電場の約20倍程度でありポロイダル流も強い。定常帯状流はGAMと異なり、周波数がゼロで揺動観測にかからないはずであるが、ポテンシャル構造の不均一性がある場合は流速から、その周波数は数百Hzと近い。この低周波静電揺動が径電場流や帯状流に由来する可能性があると考えられる。

35000688
Experimental progress on zonal flow physics in toroidal plasmas
藤澤 彰英*; 井戸 毅*; 清水 昭博*; 岡村 昇一*; 松岡 啓介*; 浜田 泰司*; 星野 克道; 永島 芳彦*; 篠原 孝司; 中野 治久*; 大島 慎介*; 三浦 幸俊; 伊藤 公孝*; 伊藤 早苗*; Shats, M.*; Xia, H.*; Dong, J. Q.*; Yan, L. W.*; Zhao, K. J.*; Conway, G. D.*; Stroth, U.*; Melnikov, A.*; Eliseev, L. G.*; Lysenko, S. E.*; Perfilov, S. V.*; Hidalgo, C.*; Tynan, G. R.*; Mckee, G. R.*; Holland, C.*; Fonck, R. J.*; Gupta, D. K.*; Diamond, P. H.*
Proceedings of 21st IAEA Fusion Energy Conference (FEC 2006) (CD-ROM) , 12p.(2007) ; (JAEA-J 02177)
 帯状流に関する実験の現状についてまとめる。測定の進歩により、帯状流の存在,時間空間特性,乱流との関係,閉じ込めとの関係などが明らかになりつつある。特に、帯状流の一種である測地的音波モードの測定結果の集積により、これを記述できる理論の構築が必要となっている。これらの帯状流と閉じ込めの解明をさらに進めるためには、装置間の横断的研究が非常に有効であると考えられる。

35000689
Some comments on current system of dosimetric quantities
小田 啓二*; 高橋 史明; 日本保健物理学会放射線防護に用いる線量概念の専門研究会
Proceedings of 2nd Asian and Oceanic Congress Radiological Protection (AOCRP-2) (CD-ROM) , p.52-55(2006) ; (JAEA-J 02178)
 日本保健物理学会は、2005年4月に放射線防護に用いる線量概念に関する専門研究会を設立した。同専門研究会は、以降、国際放射線防護委員会(ICRP)及び国際放射線単位測定委員会(ICRU)が定義する諸量について、議論してきた。論点の一つは、さまざまな放射線種における生物学的効果比を考慮するために定義された線質係数及び放射線荷重係数である。また、ICRPが勧告する防護量及びICRUが測定を目的として定義する実用量といった種々の線量についても、議論を重ねてきた。特に、この防護量と実用量の関係は、専門研究会の議論でも最も重要な位置づけを占めている。専門研究会は、放射線防護において共通認識として受け入れられる線量システムを提言する予定である。本会議においては、専門研究会でのこれまでの議論の経過を報告する。

35000690
Interoperability between UNICORE and ITBL
鈴木 喜雄; 南 貴博; 谷 正之; 中島 憲宏; Keller, R.*; Beisel, T.*
Proceedings of 7th International Meeting on High Performance Computing for Computational Science (VECPAR '06)/Workshop on Computational Grids and Clusters (WCGC '06) (CD-ROM) , 9p.(2006) ; (JAEA-J 02179)
 異なるサイエンスグリッドシステム間の相互接続は、大規模実験施設及び大規模スーパーコンピュータの世界的な利用に不可欠である。相互接続を達成する最も簡単な方法の一つは、異なるサイエンスグリッドシステム間でそれらの変更なしに、メッセージを変換することである。そのような考えに基づき、UNICOREとITBLの相互接続について、媒体として働くサーバーを用いることにより、それらシステムをほとんど変更することなく相互接続することに成功した。国際的標準化が確立されるまでの間は、異なるサイエンスグリッドシステム間でのメッセージ変換の方法は、相互接続を達成する方法として有望である。

35000691
Effects of γ and heavy ion damage on the time-resolved gain of a low breakdown voltage Si avalanche photodiode
Laird, J. S.*; 小野田 忍; 平尾 敏雄; Becker, H.*; Johnston, A.*; 伊藤 久義
Proceedings of 7th International Workshop on Radiation Effects on Semiconductor Devices for Space Application (RASEDA-7) , p.37-40(2006) ; (JAEA-J 02180)
 はじき出し損傷及びトータルドーズ効果が低電圧駆動型シリコンアバランシェフォトダイオード(Si APD: Silicon Avalanche Photodiode)に及ぼす影響を電流-電圧計測システム及びピコ秒パルスレーザーシステムを用いて評価した。本研究では、100kGyまでのγ線照射を行うことでトータルドーズ効果を、重イオン照射を行うことではじき出し損傷効果を導入した。照射後にリーク電流及びゲインの過渡応答を測定した。その結果、トータルドーズ効果によりリーク電流が増加することがわかった。しかしながら、ゲインには有意な差が現われなかった。これまで、はじき出し損傷効果よりもトータルドーズ効果によりSi APDの特性が劣化すると言われていた。しかしながら、本研究で使用したAPDは、その静特性(リーク電流)に照射劣化が見られるものの、APDを使用するうえで最も重要なゲインについては、100kGyまでの照射に耐えられることが明らかとなった。

35000692
Optimization for SEU/SET Immunity on 0.15 μm Fully Depleted CMOS/SOI Digital Logic Devices
槇原 亜紀子*; 浅井 弘彰*; 土屋 義久*; 天野 幸男*; 緑川 正彦*; 新藤 浩之*; 久保山 智司*; 小野田 忍; 平尾 敏雄; 中嶋 康人*; 高橋 芳浩*; 大西 一功*
Proceedings of 7th International Workshop on Radiation Effects on Semiconductor Devices for Space Application (RASEDA-7) , p.95-98(2006) ; (JAEA-J 02181)
 RHBD(Radiation Hardness by Design)技術を用いてSEU(Single Event Upset)/SET(Single Event Transient)対策ロジックセルを、沖電気の完全空乏型0.15μm CMOS/SOI民生プロセスを用いて設計し、製造したサンプルデバイスの放射線評価を実施した。SETフリーインバータと呼ばれるSET対策付きインバータ構造を有するロジックセルは、非常に優れたSET耐性を示すが、面積・動作スピード・消費電力のペナルティも大きいため、本研究では、最低限の耐性を維持しつつペナルティを低減するための設計の最適化をMixedモードのTCAD(Technology Computer Aided Design)シミュレータを用いて行った。その結果、LET(Linear Energy Transfar)が64MeV/(mg/cm2)までは、本研究により最適化されたロジックセルが宇宙用として有用であることを示した。

35000693
Analysis of transient current in SiC diodes irradiated with MeV ions
小野田 忍; 大島 武; 平尾 敏雄; 菱木 繁臣; 三島 健太; 岩本 直也; 神谷 富裕; 河野 勝泰*
Proceedings of 7th International Workshop on Radiation Effects on Semiconductor Devices for Space Application (RASEDA-7) , p.115-118(2006) ; (JAEA-J 02182)
 耐放射線性素子への期待が大きい六方晶炭化ケイ素(6H-SiC)pn接合ダイオードに対して、MeV級のイオンを照射し、誘起されるシングルイベント過渡電流(Single Event Transient Current: SETC)を測定することによって、その電荷収集挙動を調べた。さらに、電荷収集過程を明らかにするため、デバイスシミュレータ(Technology Computer Aided Design: TCAD)を使用してシミュレーションを行った。さまざまな物理モデルを比較・検討することによって、SiC中のSETCをシミュレーションするために最適な物理モデルを検討した結果、移動度モデルが重要であり、移動度の不純物依存性,キャリア散乱,高電界効果,異方性等を考慮してシミュレーションを行うことで精度が向上することを見いだした。

35000694
Status of reduced enrichment program for research reactors in Japan
中込 良廣*; 宇根崎 博信*; 佐川 尚司
Proceedings on 27th International Meeting on Reduced Enrichment for Research and Test Reactors 2005 (RERTR 2005) (Internet) , 10p.(2006) ; (JAEA-J 02183)
 日本の試験研究炉の低濃縮化計画の現状を京都大学の中込教授及び宇根崎助教授と共同発表する。現在、原子力機構の試験研究炉はすべて低濃縮燃料を使用している。一方、京都大学は2006年までの予定で高濃縮ウラン燃料を使用しているが、2007年以降に低濃縮燃料を使用する計画である。

35000695
Ferromagnetism in undoped manganites
堀田 貴嗣
Progress in Ferromagnetism Research , p.19-38(2006) ; (JAEA-J 02184)
 マンガン酸化物における強磁性金属相は、遍歴eg電子と局在t2gスピンの間の強いフント結合に基づく二重交換機構によって理解されてきた。そのため、長年にわたって、マンガン酸化物の金属強磁性状態の出現には、ホールドーピングが必要不可欠であると信じられてきた。しかし、最近、ヤーンテラー歪みと結合するeg軌道縮退ハバード模型に基づいて、ドープしていないマンガン酸化物においても、強磁性相で金属絶縁体転移が起こる可能性が理論的に指摘された。その結果を詳細に解説する。

35000696
Repository design
梅木 博之
Radioactivity in the Environment, Vol.9 , p.112-143(2007) ; (JAEA-J 02185)
 人工バリアの目的は、廃棄物から処分場周囲の母岩への放射性核種の移行を制限あるいは遅延させることである。人工バリアを構成するサブシステムあるいは要素それぞれには満たすべき要件が課せられる。また人工バリアは、システムとして統合化された状態での機能もあり、あるバリア要素には、隣接するバリア要素が所期の機能を発揮できるよう、好ましい物理化学条件を与えることなども求められる。ある特定の処分システムで設計される人工バリアの役割は、対象とする期間にわたって起こりうると考えられる条件,規制側の要件及び想定される天然バリア性能に依存する。より効率的なものにするためには、人工バリアはそれが機能する環境条件に則したものとすべきである。本章は、処分場設計の最適化を図る枠組みの鍵となる要素について、どのようにそれを用いて設計していくかの観点から検討を行ったものである。

35000697
地層処分における電磁法解析技術の開発,6; 北海道幌延町におけるAMT法3次元調査
吉村 公孝*; 坂下 晋*; 大久保 秀一*; 山根 一修*; 瀬谷 正巳
物理探査学会第115回(平成18年度秋季)学術講演会論文集 , p.209-212(2006) ; (JAEA-J 02186)
 高レベル放射性廃棄物地層処分地域における電磁法探査をより高度化するために3次元MTインバージョン解析の開発が行われている。原環センター(RWMC)では、その適用性を確認するために2005年に北海道幌延の低比抵抗地域で適用試験を行った。その結果、1Ωmより低い比抵抗領域での3次元MTインバージョン解析では、地下水中の塩分濃度の影響の大きいことがわかった。

35000698
海洋構造物の腐食に及ぼすマクロセル形成の影響
山本 正弘; 松岡 和巳*
第158回腐食防食シンポジウム , p.17-24(2007) ; (JAEA-J 02187)
 腐食反応における電気化学的な影響をマクロセル形成の観点から検討した結果をレビューする。マクロセル形成の影響が起きやすい海洋構造物の腐食現象を対象として、複数の試験片に流れるマクロセル電流と電位変動の連続測定により、マクロセル形成の腐食に及ぼす影響、特に海水の干満の影響を検討した。その結果、従来の干満部のみが影響を与えているという考え方とは異なり、海中部深い部分もマクロセル形成により局部腐食に影響を与えていることを明らかにした。

35000699
TIARAにおけるクラスターイオン加速の現状
齋藤 勇一; 千葉 敦也; 鳴海 一雅; 阿達 正浩
第19回タンデム加速器及びその周辺技術の研究会報告集 , p.13-16(2007) ; (JAEA-J 02188)
 効率的なクラスター加速のためには、荷電変換ガスとの衝突の際の、電離と解離の割合を最適化させることが重要である。この割合はガス圧のほか、荷電変換ガスの種類にも大きく依存すると考えられる。そこで今回、窒素,二酸化炭素,六フッ化硫黄の3種類のガスを用いて、加速効率を比較した。その結果、それぞれのガスの最大加速効率は、通常荷電変換ガスとして用いている窒素を基準にして、二酸化炭素で約8割、六フッ化硫黄で約7割となり、この3つの中では分子量が少ないほど加速効率がよくなる傾向を見いだした。また、クラスターイオンの加速エネルギー領域の拡大のため、多価クラスターイオン利用の可能性を利用頻度の高い金クラスターイオンについて探った。その結果、Au3の2価イオンを70pfA程度の電流で照射することに成功し、最大エネルギーが6MeVから9MeVに拡大することができた。応用研究としては、クラスターと物質との相互作用の研究の一環として、薄膜通過後の炭素クラスターの電荷状態の、クラスター構造依存性について調べた。その結果、C3クラスターの場合、もとの構造が鎖状と三角形状では、薄膜通過後の平均電荷が異なることがわかった。

35000700
原科研タンデム加速器での発生トラブルとその対応
沓掛 健一; 中村 暢彦; 松田 誠; 花島 進; 堀江 活三
第19回タンデム加速器及びその周辺技術の研究会報告集 , p.92-94(2007) ; (JAEA-J 02189)
 原子力科学研究所タンデム加速器で近年発生したトラブルの内、エレクトロニクス関連の障害2件について報告する。第1は、高電圧端子内の変更電磁石電源内の水冷配管破断である。対策として老朽化したゴムホースをすべて交換修理したほか、新たにリザーバタンクに水位計を設置した。これは、今回の障害が初めに加速器に電圧が印加されなくなったことで発見されたが、直接的に漏水を知ることができなかったことへの反省による。またこの水位計は、小規模の漏水の検知にも有効と考えている。第2のトラブルは同じ電源の電流制御用のDA変換回路に生じた。20ビットのうちMSBから14ビット目の制御ができなくなった。これはビームトランスポート調整時において故障が疑われ、定期整備時に調査した結果判明した。DA変換はケルビンバーレー分圧回路をリレーで駆動するものである。修理後のテストで、変換誤差の大きい桁が発見されたため、補正を行った。補正は最小の手術で結果を出せる範囲で行い、DA変換器の当初の仕様を満たすところまでは行っていない。研究会では老朽化対策と診断の考え方について報告・議論する。

35000701
フラーレン(C60)イオン生成におけるサポートガスの影響
山田 圭介; 大越 清紀; 齋藤 勇一; 水橋 清; 横田 渉
第19回タンデム加速器及びその周辺技術の研究会報告集 , p.106-109(2007) ; (JAEA-J 02190)
 原子力機構TIARAの400kVイオン注入装置では、新たなイオン種としてC60イオンビームの提供が可能となり、クラスターイオン照射効果の解明等の実験に利用されている。C60イオンの生成にはフリーマン型イオン源を用いているが、一般的なイオン種ではアーク電流の増加とともに増えるイオン電流が逆に減ってしまうなど振る舞いが異なり、通常のパラメータではビーム電流を最大にすることができない。そこで、C60イオン生成のためのイオン源パラメータの最適化と大電流化を目的としてNe, Ar及びXeの3種類のサポートガスについて、ガス流量(イオン源部真空度)とビーム電流の関係を測定した。その結果、ビーム電流はアーク放電が保たれる最少ガス流量付近で最大となること,同じ真空度ではXe, Ar, Neの順に大きくなることがわかった。これにより、質量数が大きいサポートガスの方がビーム電流を得られる可能性があると考えられる。

35000702
地山の時間依存性挙動を考慮した坑道掘削時の安定性解析
小川 豊和*; 青木 智幸*; 城 まゆみ*; 松井 裕哉; 堀井 秀之*
第36回岩盤力学に関するシンポジウム講演論文集 , p.39-44(2007) ; (JAEA-J 02191)
 地下深部の堆積軟岩中に空洞を掘削する場合、坑道掘削時においても掘削による弾性的な変形に加え時間依存性変形が生じるので、地下施設の合理的な設計・施工,操業時の安全性確保の観点からも時間依存挙動が坑道の安定性に及ぼす影響を評価しておく必要があると考えられる。本論文では、坑道掘削時に生じる地山の時間依存挙動が坑道の安定性に及ぼす影響を調べるために適用した、室内試験・数値解析を組合せた工学的な一手法を紹介する。具体的には、室内クリープ試験結果に基づきレオロジカルモデルのパラメータを決定し、二次元平面ひずみ応力変形解析を実施して、時間依存挙動が坑道周辺岩盤並びに支保の安定性に及ぼす影響を検討した。また、弾性的な変形に対する時間依存性変形の大きさと変形速度に関する指標を定義し、支保設置後からの地山の変形量や支保軸力に及ぼす時間依存性特性の影響を整理した。

35000703
実用化段階のFBRサイクルシステムに対する諸要求と実現方策について
中井 良大
第38回原子力安全研究総合発表会講演論文集 , p.33-42(2006) ; (JAEA-J 02192)
 原子力エネルギーを21世紀の持続的なエネルギーとして具現化するには、FBRサイクル技術が不可欠である。社会ニーズに適合していくためには、FBRサイクルの特徴を活用する方策を用いるのが合理的である。すなわち、TRUリサイクルにより環境負荷低減を図りつつ、核拡散抵抗性の向上を実現する。また、低除染サイクルにより、再処理プロセスの簡素化を図るとともに核拡散抵抗性の向上を実現する。加えて、革新技術を導入し、安全性を確保しつつ経済性の向上を図ることが事業として成立するために肝要である。今後、低除染TRU高燃焼度燃料の照射実証と革新的なプラント技術の開発と実証を進め、FBRサイクルの実用化を目指していく。社会のニーズに応じた合理的な概念を追求するためには、諸要求への適合度を定量的に評価し最適化を図る必要があるが、これまでに総合的な適合度を検討する手法の見通しが得られており、それらを活用しつつ魅力あるFBRサイクル概念を実現していく。

35000704
放射性廃棄物に関する知見と課題の展開
山村 修
エネルギー政策研究特別号,3 , p.53-58(2006) ; (JAEA-J 02193)
 放射性廃棄物問題のうち、中・低放射性廃棄物の管理と減容への課題として東海再処理工場における低放射性廃棄物の管理の事例を紹介するとともに、今後の展開について私見を記す。また、高放射性廃棄物の処分問題として海外施設の動向を紹介しながら日本への知見の反映に関する私見を記す。

35000705
QMSガス分析装置による呼気アルコールの測定
新井 貴; 平塚 一; 長谷川 浩一; 秦野 歳久; 根本 正博; 阿部 哲也
平成18年度名古屋大学総合技術研究会分析・環境技術研究会報告集 , p.76-79(2007) ; (JAEA-J 02196)
 昨今、飲酒運転による事故がニュースで頻繁に取り上げられ、飲酒量や飲酒時刻等の検証が高い関心を持たれている。血中のアルコール量と呼気に含まれるアルコール濃度には相関があると言われており、これに基づいて呼気中のアルコール濃度を測定する機器が報告されている。われわれは、高精度測定が可能な四重極型質量分析計(QMS)ガス分析装置「グラビマス」の応用として呼気分析を実施している。今回、呼気中のアルコール濃度を測定し、アルコール検出に対する本装置の性能を調べ、呼気中アルコール濃度の時間変化を高精度で測定した。さらに、アルコール以外の物質変化をも同時に観察することによりアルコール摂取時の呼気組成の変化も合わせて測定することができた。これらの結果は、QMSを用いた呼気分析の有用性を示すものである。

35000706
実時間制御用タイミング信号発生機器の開発
赤坂 博美; 高野 正二; 佐藤 朋樹; 川俣 陽一
平成18年度名古屋大学総合技術研究会回路・計測・制御技術研究会報告集 , p.106-109(2007) ; (JAEA-J 02197)
 JT-60のタイミングシステム(TS)は、JT-60実験運転時に各種計測・制御機器の動作に必要なトリガー信号や基準クロックを各設備に送信するシステムである。このTSを構成しているCAMACモジュールは高経年化による故障が増加している一方製造中止により保守部品の入手は不可能な状況である。また、機能面ではタイマー最大設定が65sまでというハードウェア上の制約、基準クロック1msを250μsに分周して動作しているプラズマ位置形状制御計算機は、20sを超える放電ではその精度が問題となっている。現在、TS構成機器の上記問題を解決することを目指し、改修後のJT-60で適用可能なTSの開発を開始した。開発にあたっては2つの設計方針を採用した。(1)遅れ時間を最小にするため、タイミング信号出力の論理演算がプログラミング可能な半導体集積回路であるFPGA(Field Programmable Gate Array)を用いたシステムとする。(2)高精度化のために基本クロックを40MHzとする。本研究会では、新TSのシステム構成の検討結果と開発を開始した実時間制御用タイミング信号発生機器について報告する。

35000707
ITER計画の最新動向と大型超電導マグネットの先進技術
奥野 清
平成19年電気学会全国大会講演論文集,5 , p.S7-3-S7-6(2007) ; (JAEA-J 02198)
 ITER計画では、本年11月にITER協定が7極により署名され、建設に向けた活動が本格化される運びとなった。また、建設サイトがカダラッシュに決定されて以来、機構長予定者として池田要氏が、主席副機構長予定者にノルベルト・ホルトカンプ氏(欧州)がそれぞれ指名されるなど、ITER機構の構築に向けた動きも加速されている。ITERでは、日本には7極の中でも「準ホスト極」として、非常に重要な役割が期待されており、本体機器の調達やITER機構への職員派遣などでホスト国に次いで大きな貢献を行うことになっている。特に超伝導マグネットでは、これまでの開発実績が広く認められ、Nb3Sn超伝導導体やトロイダル磁場コイルの多くを分担し、その貢献分はITER参加極中で最大となった。現在、産業界との協力の下、大型超伝導コイルや構造材の実規模での製作技術の実証など、調達に向けた技術活動を展開している。本発表では、これらITERの最近の動向やITERで得られた超伝導マグネット技術の進展について述べる。

35000708
カラー図解,プラズマエネルギーのすべて
高村 秀一*; 門 信一郎*; 藤井 隆*; 藤山 寛*; 高部 英明*; 足立 和郎; 森宮 脩; 藤森 直治*; 渡辺 隆行; 林 泰明; 坂和 洋一*; 田中 雅慶; 長 照二*; 沖野 晃俊*; 坂本 慶司; 井上 多加志; 神藤 正士; 小西 哲之*; 波多江 仰紀; 秋場 真人; 永嶺 謙忠*; 岡野 邦彦*; 栗原 研一; 石田 真一; 佐藤 浩之助*; 菊池 満; 鎌田 裕; 山田 弘司*; 熊澤 隆平*; 白神 宏之*; 児玉 了祐*; 長井 圭治*; 堀岡 一彦*; 松田 慎三郎; 藤原 正巳*; 乗松 孝好*; 高津 英幸; 室賀 健夫*; 小泉 徳潔; 宮永 憲明*; 時松 宏治*; 犬竹 正明*; 小川 雄一*; 柏木 美恵子; 宮沢 順一*; 沼倉 友晴*
カラー図解,プラズマエネルギーのすべて , p.164(2007) ; (JAEA-J 02200)
 核融合並びにプラズマに興味を持ってもらい、またその有用性,将来性を広く理解してもらうための一般向け解説書として、プラズマ・核融合学会の企画(日本実業出版社から出版予定)に共同執筆で出版するものである。読者の対象範囲は、理科に興味を持つ高校生,大学生・一般社会人,ある種のプラズマに仕事で関連している人で、他分野からのヒントを求める人など、広い層に読んでもらえることを想定している。(目次:はじめに/プラズマってなんだ?/プラズマ技術のひろがり/実験室の超先端プラズマ/核融合プラズマエネルギーとは?/プラズマエネルギーへの道/核融合プラズマエネルギー発電所を目指して/プラズマエネルギーと未来社会)

35000709
J-PARC 50mA RFQ試作機の製作と低電力試験
近藤 恭弘; 上野 彰; 長谷川 和男
Proceedings of 3rd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 31st Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.388-390(2006) ; (JAEA-J 02201)
 大強度陽子加速器計画(J-PARC)のリニアックは立ち上げ初期において、ピークビーム電流30mAの負水素を加速する予定であるが、できるだけ早い段階でピーク電流50mAを達成するよう求められている。そのため、日本原子力研究開発機構では、50mA加速に不可欠な、50mA用高周波4重極リニアック(RFQ)の開発を行ってきた。J-PARC 50mA用RFQでは、将来の高デューティー運転に対応するため、空洞構造として、銅の削りだし材を冶金的結合する構造を採用した。4分割された部品を結合するのに、今回新たに、レーザー溶接による結合を試みた。レーザー溶接によるRFQの製作は、世界で初めての試みである。本発表では、J-PARC 50mA RFQのプロトタイプとして製作した、試作空洞の製作と、低電力試験について発表する。この試作空洞は、実機の長手方向への1/3部分に相当し、実機として使用することを前提に開発された。この空洞において、機械精度の測定でも、低電力試験結果からの計算においても、必要な精度(ヴェーン先端で20μm以下)が達成され、レーザー溶接によるRFQ製作の実現性が実証された。

35000710
Design of "NeutrOn Beam-line for Observation & Research Use (NOBORU)" for JSNS of J-PARC
前川 藤夫; 及川 健一; 田村 昌也; 原田 正英; 池田 裕二郎; 渡辺 昇
LA-UR-06-3904 1, p.129-138(2006) ; (JAEA-J 02209)
 J-PARC計画のJSNSでは、合計23本の中性子ビームラインが設置される。そのうちの1本は、物質・生命科学実験施設(MLF)に割り当てられ、MLFではJSNSの中性子性能を実証し、観測するための中性子ビームライン(NOBORU)を建設する。NOBORUの大部分、つまりビームダクト,遮蔽体,ビームストップ,スリット,測定キャビン,ジブクレーン,試料台等は2004年3月に既に発注済みで、2007年中に設置が完了する。T0チョッパー,フレームオーバーラップチョッパー,検出器システム,試料等は、今後の発注となる。試料位置は非結合型減速材から14mの位置である。試料室の概寸は、広さ3×2.5m,高さ3mである。遮蔽構造は、詳細な3次元構造を考慮した遮蔽計算により決定した。会合では、このNOBORUの設計について発表する。

35000711
A Preliminaly investigation on the satellite building of MLF; Beamline shielding analysis
及川 健一; 前川 藤夫; 田村 昌也; 原田 正英; 加藤 崇; 池田 裕二郎; 仁井田 浩二*
LA-UR-06-3904 2, p.139-145(2006) ; (JAEA-J 02210)
 MLFに設置される予定の長尺分光器のための附属建家の予備的な検討が進められている。その長尺建家建築の総額を見積もるため、MCNPX及びPHITSを用いて中性子ビームラインの遮蔽解析を行った。計算では、最新のビームライン設計と中性子スペクトラムを用いた。

35000712
Estimation of JSNS moderator flowing condition based on impinging jet heat transfer
麻生 智一; 門出 政則*; 佐藤 博; 達本 衡輝; 加藤 崇; 池田 裕二郎
LA-UR-06-3904 2, p.385-394(2006) ; (JAEA-J 02211)
 J-PARCのMW級核破砕中性子源(JSNS)では、水素をモデレータ材料として用いる。水素モデレータは過酷な中性子場による核発熱条件下にあり、モデレータ容器の効率的な冷却が要求される。水素密度が大きく変化しないように衝突噴流による容器冷却を提案したが、モデレータ容器内の狭い空間内における衝突噴流部の熱伝達特性が不明だったため、水による実規模モデルのモデレータ容器を用いた熱伝達実験を実施した。2次元定常熱伝導の逆問題解を円筒座標系に適用し、熱伝達率を求める手法を確立して容器内熱伝達特性を把握するとともに、中性子性能や液体水素の強制循環に影響を及ぼさないような運転条件を評価した。

35000713
Numerical analysis for the emergency discharge of the hydrogen loop of JSNS
長谷川 勝一; 加藤 崇; 麻生 智一; 牛島 勇*; 達本 衡輝; 大都 起一*; 池田 裕二郎
LA-UR-06-3904 2, p.402-407(2006) ; (JAEA-J 02212)
 JSNSではモデレーターとして超臨界圧水素を採用しており、現在このための水素循環システム並びに輸送配管の設計を行っている。想定外事象が発生した場合には安全性の観点より速やかに水素を外部放出する必要がある。このため緊急時には水素輸送配管の真空断熱層内にヘリウムガスを注入,入熱を行い放出時間の短縮を行う方法を検討している。この際の放出水素の圧力変動と放出速度の数値解析を行った。水素放出中、水素放出配管内の圧力上昇は設計圧力である0.1MPa以下である必要がある。この条件を満たすためには真空層内に注入するヘリウムの圧力を0.04MPaに保つ必要がある。このときの水素放出速度は放出開始150秒後に最大で0.047Kg/sに達する。5分後には系内水素の90%の放出が完了する。この評価によって安全な水素の緊急放出方法の確立が行われた。

35000714
Numerical analysis for heat transfer from a Cd poison in cryogenic hydrogen
達本 衡輝; 加藤 崇; 麻生 智一; 長谷川 勝一; 牛島 勇*; 大都 起一*; 池田 裕二郎
LA-UR-06-3904 2, p.426-434(2006) ; (JAEA-J 02213)
 JSNSでは、パルス幅の短い中性子を得るために、ポイゾン材にCdを採用した。Cdの採用にあたり、ポイゾン材のCdと補強材であるAlとの接合に関する問題があり、その研究開発を行っている。しかしながら、未だ、十分な接合が得られていない。そこで、CdとAlの接合が不十分な場合の低温水素への熱伝達を数値解析コード(STAR-CD)を用いて解析し、Cdの温度上昇を評価した。接合率が5%であっても、Cdの最大温度は75Kまでしか上昇していない。接合が不十分な場合でも、低温水素の強制対流熱伝達でポイゾン板の核発熱を除去できるので、Cdポイゾンは、どんな接合方法でも適用できることがわかった。

35000715
Deterioration of pulse characteristics and burn-up effects with an engineering model in Japanese spallation neutron source
原田 正英; 渡辺 昇; 勅使河原 誠; 甲斐 哲也; 前川 藤夫; 加藤 崇; 池田 裕二郎
LA-UR-06-3904 2, p.700-709(2006) ; (JAEA-J 02214)
 JSNSにおいて、全ての中性子ビームラインに対するパルス特性データは、装置設計において不可欠である。詳細な計算モデルを構築し、PHITSコード及びMCNP-4Cコードを使用して評価を行った。これらの結果は、2004年9月よりJ-PARCのホームページ上で、公開している。製作設計を行っている中で、モデレータ形状の変更により、パルス特性(特にパルステールで)が低下していた。計算から、デカップラーと反射体容器設置する中性子吸収ライナーとの隙間からの漏洩中性子が原因であることがわかった。現在、製作設計の最終段階で、パルス特性を低下させるほかの要因を注意深く見つけ、製作設計にできるだけ反映させようとしている。さらに、デカップラー,ライナー及びポイズンの不均一な燃焼を考慮したパルス特性評価,各中性子ビームホールでのGeVまでの高エネルギー中性子エネルギースペクトルの導出も行った。

35000716
Orbit following calculation of energetic ions for design of ferritic insertion on JT-60U
篠原 孝司; 鈴木 優; 櫻井 真治; 正木 圭; 藤田 隆明; 三浦 幸俊
NIFS-PROC-63 , p.158-162(2006) ; (JAEA-J 02215)
 JT-60トカマクでは、先進トカマク運転に立脚した定常・高ベータプラズマの研究開発を進めてきた。さらなる性能向上には、(1)壁安定化効果の利用,(2)実効加熱パワーの増大,(3)長時間にわたるRFによる電流分布制御の実現,(4)周辺部閉じ込め改善モード(Hモード)を制限していると考えられる高速イオンの損失によるプラズマ回転の抑制が重要である。これらの観点から高速イオンの閉じ込めの改善が重要である。そこでトロイダル磁場リップルを低減することで高速イオンの損失を低減することを目的として強磁性体であるフェライト鋼の設置を行った。ここではフェライト鋼装着のための設計について高エネルギーイオン粒子の振舞の観点から発表する。JFT-2Mのフェライト鋼装着プログラムで開発された完全3次元磁場OFMCコードを用いて高エネルギーイオンの閉じ込めや第一壁への不都合な熱負荷がないことを数値的に検証し、設計を行った。最終的な設計配置では、トロイダル磁場1.9テスラの大体積プラズマにおいて高エネルギーイオンの閉じ込めが約1.3倍改善する。

35000717
環境試料の極微量ウラン,トリウム及び鉛の分析; 陰イオン交換法による分離の検討
宮本 ユタカ; 國分 陽子; 間柄 正明; 桜井 聡; 臼田 重和
KEK Proceedings 2006-5 , p.30-35(2006) ; (JAEA-J 02216)
 環境試料中の極微量ウラン,トリウム,鉛の定量及び同位体組成を正確に分析するためには試料から目的元素を分離・精製する過程で混入するプロセスブランクを低く抑えることが重要である。陰イオン交換カラム一本と高純度の溶離液を用いてこれらの目的元素を簡単に分離できれば、分離操作が削減されることによりプロセスブランク量が低減できるのではないかと考え、分離法を検討した。その結果、メタノール+塩酸混合溶媒及び塩酸を溶離液に用いると目的元素を系統的に分離することができた。また、メタノール+塩酸+硝酸の混合溶媒を用いると希土類元素を含めた系統的分離も可能であることがわかった。

[ page top ]
JAEA > JAEA図書館 > JOPSS > 学会誌等掲載論文[バックナンバー] >  2007年4月
Copyright (C), Japan Atomic Energy Agency (JAEA)