学会誌等掲載論文
※下記の研究開発成果は資料名順に並んでいます。

2007年6月


35000875
Crystallization of porcine pancreatic elastase and a preliminary neutron diffraction experiment
木下 誉富*; 玉田 太郎; 今井 啓介*; 栗原 和男; 大原 高志; 黒木 良太
Acta Crystallographica Section F 63(4), p.315-317(2007) ; (JAEA-J 02433)
 ブタ膵臓エラスターゼは、炎症性疾患の原因となる好中球エラスターゼによく似た特徴を有することから、代表的な創薬標的タンパク質の一つである。エラスターゼに共有結合した阻害剤の水素原子を含む構造的な特徴を調べるために、蒸気拡散法により0.2M硫酸ナトリウムを含む重水緩衝液(pD=5.0)中で1.6mm3の大きさの単結晶を作製した。この結晶を用いることにより原子力機構のJRR-3に設置されたBIX3中性子回折計で測定を行った結果、空間群P212121,格子長a=51.2Å , b=57.8Å , c=75.6Å , 2.3Å 分解能の中性子回折データの取得に成功した。

35000876
Extraction of uranium from simulated ore by the supercritical carbon dioxide fluid extraction method with nitric acid-TBP complex
Dung, L. T. K.*; 今井 智紀*; 富岡 修; 中島 幹雄; 高橋 邦明; 目黒 義弘
Analytical Sciences 22(11), p.1425-1430(2006) ; (JAEA-J 02434)
 抽出剤として硝酸とリン酸トリブチルの錯体を含む超臨界二酸化炭素を用いる超臨界流体抽出法(SFE)を数種のリン酸ウラニル化合物と模擬ウラン鉱物からのウランの抽出に適用した。静的抽出工程と動的抽出工程からなる抽出法を構築し、圧力,温度,抽出時間などの実験因子を最適化した。リン酸ウラニル及び模擬鉱石のどちらからも効果的にウランを抽出できることを見いだし、SFE法が鉱石中のウラン分析のための前処理法として有用であることを明らかにした。

35000877
The Connection between γ-ray bursts and extremely metal-poor stars; Black hole-forming supernovae with relativistic jets
冨永 望*; 前田 啓一*; 梅田 秀之*; 野本 憲一*; 田中 雅臣*; 岩本 信之; 鈴木 知治*; Mazzali, P. A.*
Astrophysical Journal 657(2, Part2), p.L77-L80(2007) ; (JAEA-J 02435)
 長い継続時間を持つγ線バースト(GRB)は明るく大きなエネルギーを持ったIc型超新星(このような超新星は極超新星(HNe)と呼ばれる)と関連があると考えられている。しかし、最近発生したGRB060505と060614では、超新星が観測されなかった。このことから超新星の明るさの上限は、GRBに付随するHNe(GRB-HNe)の約100倍も暗いと推測された。この上限値は、放出された56Niの質量では、約10-3MΟに対応する。このように少ない56Ni放出量は、暗いII型超新星として観測されている。HNeや暗い超新星は金属欠乏星の形成にも関連していると考えられている。この論文では、相対論的ジェットにより誘発された40MΟの爆発モデルを用いて、爆発や元素合成が計算されている。このモデルは、GRB-HNeや明るい超新星を伴わないGRBを統一的な手法で説明することができる。その結果として、われわれは、明るい超新星を持たないGRBでは10-4-10-3MΟ、又は、10-6MΟ56Niが合成されていると予想する。

35000878
Spectroscopic studies of extremely metal-poor stars with the subaru high-dispersion spectrograph, 4; The α-element-enhanced metal-poor star BS 16934-002
青木 和光*; 本田 敏志*; Beers, T. C.*; 比田井 昌英*; 岩本 信之; 冨永 望*; 梅田 秀之*; 野本 憲一*; Norris, J. E.*; Ryan, S. G.*
Astrophysical Journal 660(1, Part1), p.747-761(2007) ; (JAEA-J 02436)
 以前の元素組成解析で、MgとScが非常に豊富であることが知られていた超金属欠乏星BS16934-002に対して、さらに詳しい元素組成解析を行った。典型的な金属欠乏星であるHD122563の組成との比較から、BS16934-002は、O, Na, Mg, Al、並びにScの過剰が明らかとなった。しかしながら、炭素,窒素、及びα-元素の過剰で知られる超金属欠乏星CS22949-037とCS29498-043とは異なり、炭素と窒素の過剰は見られなかった。このような特異な組成を持った星の元素組成の起源を説明できるモデルはこれまで存在しなかったので、この研究では超新星爆発を起こす前に多くの外層質量を失った大質量星モデルを仮定し、超新星爆発後の元素合成結果との比較及び議論をしている。

35000879
Design, synthesis, and evaluation of [188Re]Organorhenium-labeled antibody fragments with renal enzyme-cleavable linkage for low renal radioactivity levels
上原 知也*; 小池 美穂*; 中田 英夫*; 花岡 宏史*; 飯田 靖彦*; 橋本 和幸; 秋澤 宏行*; 遠藤 啓吾*; 荒野 泰*
Bioconjugate Chemistry 18(1), p.190-198(2007) ; (JAEA-J 02437)
 抗体を標識母体とする薬剤は、その緩やかな血液クリアランスのため骨髄障害が広汎な応用を妨げる。標識母体を低分子化抗体(Fab)やペプチドに変換することで骨髄障害は解消されるが、腎臓への放射能滞留による腎障害が問題とされる。本研究では、腎臓刷子縁膜酵素の作用で標識Fabから尿排泄性の放射性代謝物を遊離する放射性レニウム標識薬剤を新規開発し、腎障害の解消を検討した。シクロペンタジエニルトリカルボニルレニウム(CpTR)をRe標識試薬の基本構造に選択し、CpTRにカルボン酸とグリシンを結合したCpTR-Glyの体内動態を検討した。その結果、CpTR-Glyは、マウス血清中で安定であること,血漿蛋白との結合が少ないことを明らかにした。また、CpTR-Glyをマウスに投与したとき、いずれの臓器にも滞留することなく、腎臓から速やかに尿中へと排泄されることを認めた。次に腎臓刷子縁膜酵素の作用でCpTR-GlyをFabから選択的に遊離するアミノ酸配列(マレイミド基)を導入した新規薬剤([188Re]CpTR-GK-Fab)を設計・合成し、マウス体内放射能動態を検討した。その結果、[188Re]CpTR-GK-Fabは、尿排泄性の放射性代謝物[188Re]CpTR-Glyを遊離して、腎臓への放射能集積を投与早期から大きく低減することを認めた。以上より、刷子縁膜酵素を利用した標識薬剤の設計は、金属RI標識低分子化抗体の腎臓への放射能集積の低減に有用であることを明らかにした。

35000880
Design, fabrication, and study of wideband multilayer X-ray mirrors
Kozhevnikov, I. V.*; Voronov, A. S.*; Roshchin, B. S.*; Asadchikov, V. E.*; Mednikov, K. N.*; Pirozhkov, A. S.; Ragozin, E. N.*; Wang, Z.*; Zhong, Z.*; Wang, F.*
Crystallography Reports 51(6), p.1075-1081(2006) ; (JAEA-J 02438)
 Multilayer depth-graded (aperiodic) W/Si and W/B4C mirrors with a period changing over depth have been designed, fabricated, and investigated. The mirrors have almost constant reflectance (from 25 to 35% for different mirrors) at a wavelength of 0.154 nm in a wide range of grazing angles (the reflection bandwidth ranges from 0.25° to 0.4°). It is shown that the main reason for the distortions observed on the plateau of the reflection curve is incorrect consideration of the interlayers formed at the interface of neighboring films during fabrication of the structures. The mirrors with sharp interfaces (for example, WSi2/Si) are preferential for practical purposes.

35000881
PDF analysis on semiconductive CdTe-ZnTe alloy
米田 安宏; 鈴谷 賢太郎; 小原 真司*; 水木 純一郎
Ferroelectrics 339, p.165-174(2006) ; (JAEA-J 02439)
 CdTe-ZnTe半導体混晶はzinc-blendeタイプの構造を持つ物質として、初めて強誘電性が確認された。しかし、強誘電性領域においても構造が変化しないことから、強誘電性発現機構がいまだ明らかにはなっていない。われわれは実験室系のX線回折においてZn原子の温度因子が大きく変化することを見いだした。これは熱的揺動だけではなく、静的なdisorderが生じていると考えられる。そこで、disorderな構造を明らかにするために、高エネルギーX線回折とPDF解析を用いて改めてこのCdTe-ZnTe半導体混晶の構造解析を行った。その結果、平均構造位置からのdisorderはZn, Cdサイトだけではなく、むしろTeサイトで支配的に起こっていることがわかった。これらの原子のdisorderの結果、分極が生じ強誘電性を発現していると考えられる。

35000882
High power and high efficiency operation of 170GHz gyrotron
春日井 敦; 南 龍太郎*; 高橋 幸司; 小林 則幸; 假家 強*; 満仲 義加*; 坂本 慶司
Fusion Science and Technology 51(2T), p.213-216(2007) ; (JAEA-J 02440)
 原子力機構では、ITER用170GHzジャイロトロンの開発を精力的に継続している。長パルス化を阻害する要因として、発振に重要な役割を果たす電子ビーム電流が、動作中に徐々に減少し、それに伴い出力が減少するあるいはほかの不要モードを誘起し目的の発振モードを維持できないという課題が指摘されていた。そこでこの課題を解決し、ジャイロトロンの長パルス動作を実証するために、カソードヒータの制御にプレプログラミング制御を導入し、ビーム電流を維持することを試みた。その結果、安定なビーム電流制御に成功し、200kWの出力ではあるものの、ITERで必要とされる1000秒間の安定な発振を実現するとともに、プレプログラミング制御の有効性を実証した。出力はジャイロトロンの出力をダミーロードまで導くための伝送系内部の発熱により制限されたが、ジャイロトロンに搭載されているモード変換器のモード変換効率を向上させることで、伝送系内部の高周波損失も抑制することができる。そこで今回新たに、モード変換効率を向上させたジャイロトロンを製作し、実験を開始した。放射器内部のわずかな歪みも排除するように製作上や輸送上の問題点を克服し、ジャイロトロン内部の位相補正を行わずミラー枚数を減らした結果、RFの内部損失がこれまでの約10パーセントから約2パーセントへ大幅に改善できた。これにより、エネルギー回収を行った場合のジャイロトロンの総合効率が、1MW出力において50パーセントとなった。ITER用170GHzジャイロトロンの開発に向けた大きな成果である。

35000883
Dynamics of SOL-divertor plasmas after an ELM crash in tokamak H-mode plasma
滝塚 知典; 細川 哲成*
Fusion Science and Technology 51(2T), p.271-273(2007) ; (JAEA-J 02441)
 Hモードプラズマ中のELM崩壊後のダイバータ板への増大した粒子束と熱束は板に過大な負荷をもたらす。これらの粒子と熱束について、静電的PIC法とモンテカルロ二体衝突モデルを組合せた粒子シミュレーションコードPARASOLを用いて調べた。ELM崩壊後の電子の熱パルスはダイバータ板に高速で伝搬する。次にイオンの熱パルスとプラズマ粒子パルスが音速の時間スケールでゆっくりと板に到達する。SOL-ダイバータプラズマの動的挙動に対するELM源の非対称性とリサイクリングの非対称性の効果を調べた。非対称性を伴う動態には、SOL電流が大きな役割を担っている。

35000884
Fast measurement of ion temperature using filter charge exchange recombination spectroscopy system towards real-time plasma control in JT-60U
吉田 麻衣子; 小林 進二*; 竹永 秀信; 坂田 信也; 鎌田 裕; JT-60チーム
Fusion Science and Technology 51(2T), p.301-303(2007) ; (JAEA-J 02442)
 新型の高速荷電交換再結合分光(CXRS)装置を開発し、JT-60において速いイオン温度とプラズマ回転計測を行った。高速CXRS装置は中心波長の異なる3つの干渉フィルターでCXR光を分光し、干渉フィルターを透過した信号強度の比からイオン温度及びプラズマ回転速度を導出する。本計測の特徴は、マクスウェル分布を仮定し、予め信号強度比に対するイオン温度とプラズマ回転速度の関係をマトリックスで求めるため、高速測定(最小サンプリング: 0.16ms)が可能となっている。しかしながら、計測される信号強度比はスペクトルを導出するのに最小測定点であるため、強度の不確定性は温度と回転の値に大きなエラーを生む。本研究では、干渉フィルターのバンド幅の調整や反射ミラーを用いることで信号対ノイズ比を改善し、チャンネル数を増やすことで、測定可能な空間点を増設した。これにより、〜1ms程度の時間分解能で速いイオン温度とプラズマ回転速度計測を実現した。また、本高速CXRS装置を用い、アドバンスト・トカマクプラズマのオペレーションに向けたイオン温度実時間制御の基幹となる実験を開始した。

35000885
Relationship between helium isotopes and heat flux from hot springs in a non-volcanic region, Kii Peninsula, Southwest Japan
梅田 浩司; 坂川 幸洋*; 二ノ宮 淳; 浅森 浩一
Geophysical Research Letters 34(5), p.L05310_1-L05310_5(2007) ; (JAEA-J 02443)
 紀伊半島は、非火山地帯に位置するにもかかわらず、高いヘリウム同位体比を有する高温の温泉が多く分布する。これらの温泉の熱源については、沈み込むフィリピン海スラブに含まれる含水鉱物が高温・高圧下で脱水し、それが地殻浅所にもたらされたといったモデルが提唱されている。今回、物質科学的な側面からそのモデルを検証するため、紀伊半島の温泉ガスのヘリウム同位体比のデータを蓄積するとともに、ボーリングの温度プロファイルを収集し、ペクレ数解析によりそれぞれのボーリング地点の熱流束を計算した。その結果、ヘリウム同位体比と熱流束,ペクレ数には明瞭な相関が認められることから、温泉の温度や同位体比は、地下深部から上昇する流体のフラックスの大きさに起因していることが明らかになった。

35000886
Structure of beam tracks induced by swift heavy ions in Bi2Sr2CaCu2O8 superconductors
笹瀬 雅人*; 岡安 悟; 山本 博之; 倉田 博基*; 北條 喜一
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 46(2), p.783-786(2007) ; (JAEA-J 02444)
 重イオン照射によって半導体や絶縁体に円柱状欠陥が導入される。この形成には照射イオンの電子的素子能が重要な要素であると考えられている。しかしながら、われわれの最近の成果からイオンの速度もまた重要な要素であることがわかってきた。この論文では超伝導体Bi2Sr2CaCu2O8 (Bi-2212)に重イオン(Au8+,12+, I8+,29+, Br12+, and Ni11+、60-600MeV)を照射し、生成される円柱状欠陥を透過電子顕微鏡で調べた。イオンの速度大きくなると円柱状欠陥の平均の直径が小さくなり、またその分布も狭くなる。このことは照射イオンの平均自由行程の計算から核衝突の効果であることが説明できる。つまり、高速重イオン照射でも円柱状欠陥の生成には核衝突も少なからず影響を与えていることを示している。

35000887
Real-time observation of initial thermal oxidation on Si(110)-16×2 surfaces by O 1s photoemission spectroscopy using synchrotron radiation
末光 眞希*; 加藤 篤*; 富樫 秀晃*; 今野 篤史*; 山本 義久*; 寺岡 有殿; 吉越 章隆; 成田 克*; 遠田 義晴*
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 46(4B), p.1888-1890(2007) ; (JAEA-J 02445)
 リアルタイムX線光電子分光法を用いてSi(110)の所期酸化が調べられた。O 1s光電子スペクトルの時間発展はわずかに1.5L相当の酸素導入によっても急速に酸化が進むことを示した。最初の酸化は比較的小さい結合エネルギー成分が主であるが、徐々に比較的大きな結合エネルギー成分に置き換わる。従来知られているSi(111)のドライ酸化のO 1s光電子スペクトルと比較して、Si(110)-16×2表面のアドアトムかその周辺で酸化が起こると推察される。

35000888
Observation of initial oxidation on Si(110)-16×2 surface by scanning tunneling microscopy
富樫 秀晃*; 高橋 裕也*; 加藤 篤*; 今野 篤史*; 朝岡 秀人; 末光 眞希*
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 46(5B), p.3239-3243(2007) ; (JAEA-J 02446)
 Si(110)面は、デバイスの高速化及び高集積化の点から新たな基板表面として注目を集めており、その極薄酸化膜初期形成に伴う表面Si原子のエッチング効果の理解はデバイス作製に欠かせない。われわれは走査型トンネル顕微鏡(STM)を用い、清浄表面の原子レベルの酸化過程を解析した。その結果、Si(001)面とは異なり、酸化に伴うSiエッチングが極めて抑制され酸化層とのシャープな界面が作製可能であることを明らかにした。

35000889
Comparative study on the preparation and properties of radiation-grafted polymer electrolyte membranes based on fluoropolymer films
Chen, J.; Septiani, U.*; 浅野 雅春; 前川 康成; 久保田 仁*; 吉田 勝
Journal of Applied Polymer Science 103(3), p.1966-1972(2007) ; (JAEA-J 02447)
 本研究では、フッ素系高分子膜であるETFE, PVDF及び放射線架橋したPTFEを用いて、放射線グラフト重合及びスルホン化による燃料電池用高分子電解質膜を作製し、膜の特性を比較検討した。それらの高分子電解質膜(イオン交換容量が1.0mmolg-1)のプロトン導電性及び化学安定性を調べたところ、ETFEをベースとした電解質膜は比較的高い耐酸化性を持っているが、プロトン導電性が低いことがわかった。一方、架橋したPTFEをペースとした電解質膜は優れたプロトン導電性を示したが、耐酸化性はETFEをベースとした膜より低かった。このような特性の違いは基材フィルムの結晶性及び化学構造と密接な関連性があると結論した。

35000890
Oriented crystallization of crosslinked cis-1,4-polybutadiene rubber
西条 賢次*; Zhu, Y.*; 橋本 竹治; Wasiak, A.*; Brzostowski, N.*
Journal of Applied Polymer Science 105(1), p.137-157(2007) ; (JAEA-J 02448)
 架橋したcis-1,4-ポリブタジエン(PB)ゴムは、力学変形により配向結晶化することが知られている。本研究では、さまざまな分子配向度を有するPBゴムに発現する分子配向に誘起された結晶化過程を小角X線散乱,広角X線回析,応力緩和実験によりその場,実時間観測・解析を行った。一定の分子配向度の下での等温結晶化については、無配向,弱-中程度配向,高配向度の三種類の試料を用い、結晶化温度の関数として実験した。無配向,弱-中程度配向試料については核形成-成長による結晶化,高配向試料については、スピノーダル結晶化が発現することを世界で初めて明らかにした。

35000891
Parisi function for the ising spin glass in cluster approximations
横田 光史
Journal of Magnetism and Magnetic Materials 310(2, Part2), p.e518-e519(2007) ; (JAEA-J 02449)
 イジングスピングラスをスピングラス転移温度近傍で調べた。さまざまなクラスター近似を用いて、秩序関数であるパリシ関数と、磁場中でのレプリカ対称性の破れを表すAT線を求めた。バビエラらによるクラスター近似,ベーテ近似、及びカクタス近似を用いて、レプリカ対称性に対する揺らぎの影響を調べた。揺らぎは、秩序関数の傾きを小さくして、レプリカ対称性の破れを大きくすることを示した。クラスター近似で求めたAT線の位置は、平均場近似から変化するが、その変化の仕方は、クラスターにループが含まれるかどうかに依存していることを示した。

35000892
Influence of pre-irradiation atmosphere on the properties of polymer electrolyte membranes prepared using radiation grafting method
Septiani, U.*; Chen, J.; 浅野 雅春; 前川 康成; 吉田 勝; 久保田 仁*
Journal of Materials Science 42(4), p.1330-1335(2007) ; (JAEA-J 02450)
 電解質膜の開発において、耐久性の向上は重要な課題になっている。本論文では、ETFE膜にスチレンモノマーを放射線グラフトした後、スルホン化して得た高分子電解質膜の耐久性に及ぼす照射雰囲気の影響について検討した結果をまとめた。10kGy照射したETFE膜(50μm)にアルゴンガスをバブリングしたスチレンモノマー(40vol%)とトルエン(60vol%)の混合溶液を充填して50℃でグラフト重合を行った。この前照射の場合、アルゴン雰囲気中及び酸素雰囲気中で行った。前照射・後グラフト重合法によるETFE膜へのスチレンをグラフト重合後、スルホン化して得た電解質膜の耐酸化性を検討した。耐酸化性試験には、1.0mmol/gのイオン交換容量を持つ電解質膜を用いた。耐酸化性は60℃、3%過酸化水素水溶液中に電解質膜を浸漬した後の重量変化から評価した。その結果、アルゴン雰囲気下で照射して得た電解質膜の耐久性は、酸素雰囲気下で照射して得た電解質膜に比べて、2倍高いことがわかった。酸素雰囲気下で照射して得た電解質膜の耐久性が低い理由として、主鎖とグラフト鎖の間にあるエーテル結合に起因していると推察した。

35000893
Polymer electrolyte hybrid membranes prepared by radiation grafting of p-styryltrimethoxysilane into poly(ethylene-co-tetrafluoroethylene) films
Chen, J.; 浅野 雅春; 前川 康成; 吉田 勝
Journal of Membrane Science 296(1-2), p.77-82(2007) ; (JAEA-J 02451)
 高導電性及び高耐熱性を同時に持つハイブリッド電解質膜を作製するために、芳香族ビニルシランであるスチリルトリメトキシシランのエチレン-テトラフロオロエチレン共重合体フィルムへの放射線グラフト重合を試みた。グラフトしたスチリトリメトキシシランをクロロスルホン酸によりスルホン化し、次に塩酸水溶液中で加水分解・シラン縮合することにより高性能ハイブリッド型電解質膜を合成することができた。このハイブリッド型電解質膜は従来のナフィオン電解質膜と比べ、導電性,含水性及び耐熱性などに優れた特性を持つことがわかった。

35000894
Repetition rate multiplication capability for a high energy resolution mode of DIANA at J-PARC
高橋 伸明; 柴田 薫; 佐藤 卓*; 新井 正敏
Journal of Neutron Research 15(1), p.61-67(2007) ; (JAEA-J 02452)
 J-PARC, MLFに建設予定の逆転配置型非弾性中性子散乱分光器は、散乱ベクトル・エネルギー範囲がそれぞれ0.1-3.9Å -1, 2μeV-35meVを達成するように設計されている。通常の測定においては、25Hzで回転する幅広いウインドウを持つ三枚のパルス整形チョッパーを通り得た白色中性子を入射ビームとして用い、サンプルにより散乱された中性子をPG, Ge二種類の結晶アナライザーで特定エネルギーの中性子のみを反射し、検出器によりカウントされる中性子の飛行時間からエネルギー変化を見積もる原理となっている。一方、本分光器は超高エネルギー分解能を必要とする測定にも耐え得る設計となっており、それはサンプルに照射される入射中性子エネルギー幅、及び検出器に入る散乱中性子エネルギー幅ともに非常に狭くすることにより達成される。超高速(300Hz)で交互回転するウインドウ幅の狭いチョッパーを三枚のチョッパーよりも上流に設置し、なおかつ内部異方性の小さいSi単結晶をアナライザーに用いることにより、エネルギー分解能2.5μeVが達成されるが、入射中性子エネルギーを狭く選別することはモデレータから出る中性子のほとんどを捨てることと等価であり、測定効率としては決して高くはない。そこでわれわれは、入射中性子パルス数を増加させることによりエネルギー分解能を損なうことなく測定効率を上げる方法を検討したので報告する。

35000895
Microstructural evolution of SINQ irradiated austenitic stainless steels
沢井 友次; 橘内 裕寿*; 斎藤 滋; 菊地 賢司
Journal of Nuclear Materials 356(1-3), p.118-121(2006) ; (JAEA-J 02453)
 スイスPSIの保有する核破砕中性子源SINQを用いて、2種類のオーステナイトステンレス鋼,JPCAと316Fに対して、250-300℃の範囲で、10dpa程度の照射を行い、透過電子顕微鏡によって照射後のミクロ組織観察を行った。JPCAのフランクループは、316Fで観察されたものよりサイズが小さく、本実験条件において、JPCAの方が転位バイアスが小さく、耐照射性が高いと推定される。観察したいずれの試料においても、ボイドは観察されなかった。

35000896
Conceptual design of Innovative Water Reactor for Flexible Fuel Cycle (FLWR) and its recycle characteristics
内川 貞夫; 大久保 努; 久語 輝彦; 秋江 拓志; 竹田 練三*; 中野 佳洋; 大貫 晃; 岩村 公道
Journal of Nuclear Science and Technology 44(3), p.277-284(2007) ; (JAEA-J 02454)
 軽水炉技術に立脚し、現行軽水炉燃料サイクルに適合したプルトニウム有効利用を実現し、将来的には同一炉心構成の下で増殖型への発展が可能な革新的水冷却炉概念(FLWR)を、低減速軽水炉概念を発展させて構築した。本論文では、軽水炉技術によるプルトニウム利用高度化の考え方,FLWRの基本構成と主要特性を報告する。

35000897
Progress on the plant design concept of sodium-cooled fast reactor
菱田 正彦*; 久保 重信; 此村 守; 戸田 幹雄*
Journal of Nuclear Science and Technology 44(3), p.303-308(2007) ; (JAEA-J 02455)
 実用化戦略調査研究では、開発目標を達成するようJSFRと名づけられたナトリウム冷却高速炉の革新的な概念が構築され、改良されてきている。この改良概念には、ナトリウム-水反応に対する安全性を向上させることのできる直管二重管型の蒸気発生器が採用されている。さらに、この蒸気発生器に適した崩壊熱除去系が選定され、保守・補修性の改良も行われている。この検討の結果、安全性及び経済性に関するプラント概念成立性が評価され、その見通しが得られている。

35000898
A Study on precipitation behavior of plutonium and other transuranium elements with N-cyclohexyl-2-pyrrolidone for development of a simple reprocessing process
森田 泰治; 川田 善尚*; 峯尾 英章; 古志野 伸能*; 浅沼 徳子*; 池田 泰久*; 山崎 和彦*; 近沢 孝弘*; 田巻 喜久*; 菊池 俊明*
Journal of Nuclear Science and Technology 44(3), p.354-360(2007) ; (JAEA-J 02456)
 沈殿法のみによる使用済燃料の簡易再処理プロセス開発のため、焼却可能な有機試薬であるNCP(N-シクロヘキシル-2-ピロリドン)によるPu及びほかの超ウラン元素の沈殿挙動を検討した。Puのみの硝酸溶液では、NCPによりPu(VI)でもPu(IV)でも沈殿したが、U(VI)沈殿の場合よりも多くのNCPを必要とした。U(VI)とPu(IV)の混合溶液において、NCPを[NCP]/[U]=1.4の比で加え、十分な時間撹拌することで、U(VI)の選択的沈殿を達成した。また、U(VI)-Pu(VI)溶液或いはU(VI)-Pu(IV)溶液において十分な量のNCPを加えることでU及びPuをともに定量的に沈殿させることができた。このU-Pu共沈殿では、沈殿物の物理的性状からPuの原子価はVI価が望ましい。そこで、Pu(IV)のPu(VI)への酸化について検討し、溶液を加熱する方法が本プロセスでは適切な方法であることを見いだした。さらに、選択的U沈殿においてもU-Pu共沈殿においても、Am(III)及びNp(V)は沈殿しないことを明らかにした。以上の結果から、NCP沈殿法による再処理の成立性を実証した。

35000899
Separation of actinide elements by solvent extraction using centrifugal contactors in the NEXT process
中原 将海; 佐野 雄一; 駒 義和; 紙谷 正仁; 柴田 淳広; 小泉 務; 小山 智造
Journal of Nuclear Science and Technology 44(3), p.373-381(2007) ; (JAEA-J 02457)
 NEXTプロセスと名付けられた先進湿式再処理プロセスに関連して、環境負荷低減の観点から簡素化溶媒抽出法によりU, Pu及びNpの共回収、SETFICS法によりAm及びCmの回収が試みられている。単サイクルフローシートを用いたU, Pu及びNpの共回収は、フィード溶液又は洗浄液の高硝酸濃度条件下にて実施した。このうち、フィード溶液を高硝酸濃度に調整した条件においては、フィード溶液中だけでなく、抽出段においてもNp(VI)への酸化を促進することができた。これにより、NpはTBPにより抽出され、U, Pu及びNpを共回収することができた。SETFICS法においては、金属装荷度を増加させるため、TRUEX溶媒を0.2M CMPO/1.0M TBPから0.2M CMPO/1.4M TBPへ変更した。また、「ソルトフリー」の観点から、硝酸ナトリウムに代えて硝酸ヒドロキシルアミンを適用した。この結果、Am及びCmをプロダクト溶液へと回収することができた。高装荷フローシートにおいては、以前のフローシートを比べ、水相廃液及び廃溶媒の流量は、それぞれ47%及び54%ほど減少が見込まれた。本研究では、NEXTプロセスにおける簡素化溶媒抽出法及びSETFICS法のフローシートの有用性を実証することができた。

35000900
Extraction of various metal ions from nitric acid to n-dodecane by Diglycolamide (DGA) compounds
佐々木 祐二; Zhu, Z.-X.*; 須郷 由美; 木村 貴海
Journal of Nuclear Science and Technology 44(3), p.405-409(2007) ; (JAEA-J 02458)
 TODGA(テトラオクチルジグリコールアミド)を用いて、硝酸溶液からn-ドデカンへの多様な金属の抽出を調べた。その結果、2価のCa, 3価(イオン半径: 87-113pm)、及び4価(イオン半径: 83-94pm)のイオンの分配比が高いことを見いだした。Ca, Nd、及びZrの抽出容量(LOC: limit of metal concentration)について、4種の抽出溶媒(TODGA/n-ドデカン,TODGA-DHOA/n-ドデカン,TDDGA/n-ドデカン,TDdDGA/n-ドデカン)を調べた。DHOAはN,N-dihexyloctamide、TDDGAはN,N,N',N'-tetradecyldiglycolamide、及びTDdDGAはN,N,N',N'-tetradodecyldiglycolamideの略である。LOCがDHOA濃度やDGAの窒素原子に結合するアルキル基の長さに強く依存することを明らかにした。

35000901
Trial operation of the advanced volume reduction facilities for LLW at JAEA
中塩 信行; 樋口 秀和; 門馬 利行; 小澤 一茂; 藤平 俊夫; 須藤 智之; 満田 幹之; 黒澤 重信; 邉見 光; 石川 譲二; 加藤 貢; 佐藤 元昭
Journal of Nuclear Science and Technology 44(3), p.441-447(2007) ; (JAEA-J 02459)
 日本原子力研究開発機構は、低レベル放射性固体廃棄物を溶融,高圧圧縮処理等によって減容,均一,安定化できる高減容処理施設を建設整備した。本施設の運転によって、処分に適した廃棄体を作製できるだけでなく、現在貯蔵している廃棄物も減らすことができる。本施設は、大型廃棄物の解体設備を有する解体分別保管棟と、溶融設備,高圧圧縮設備を有する減容処理棟からなる。解体分別保管棟の解体設備は1999年7月に供用を開始した。これまでの処理廃棄物は750m3に達し、減容比は1.7-3.7であった。減容処理棟では、2003年2月より作業者の訓練や溶融処理における廃棄物均一化条件把握を目的とするコールド運転を実施している。2005年度より減容処理棟の前処理設備において実廃棄物を用いた運転を一部開始した。

35000902
Research and development program on accelerator driven subcritical system in JAEA
辻本 和文; 大井川 宏之; 大内 伸夫; 菊地 賢司; 倉田 有司; 水本 元治; 佐々 敏信; 斎藤 滋; 西原 健司; 梅野 誠*; 田澤 勇次郎*
Journal of Nuclear Science and Technology 44(3), p.483-490(2007) ; (JAEA-J 02460)
 日本原子力研究開発機構(原子力機構)では、マイナーアクチノイド等の放射性廃棄物を核変換することを目的とした加速器駆動核変換システム(ADS)の開発を進めている。ADSの工学的成立性検証に必要な知見と要素技術を得ることを目的に、原子力機構では2002年から総合的な研究開発計画を実施してきた。本論文では、2005年までのプログラム第1期の概要と得られた成果について述べる。この計画では、以下に示すADS特有の3つの技術分野にわたって研究開発を進めてきた。(1)超伝導線形加速器,(2)核破砕ターゲット及び炉心冷却材としての鉛ビスマス共晶合金技術,(3)未臨界炉心の設計と炉物理。超伝導線形加速器の研究開発では、クライオモジュールの試作・試験を行い、良好な加速性能が得られことを確認した。鉛ビスマスに関する技術開発では、鋼材腐食・純度管理,伝熱流動特性,放射性物質挙動についてのさまざまな技術情報を得ることができた。未臨界炉心の設計では、定常状態及び過渡状態におけるADSの技術的成立性を検討し、十分成立性が見込める炉心概念を提示した。また、未臨界度測定技術開発のために臨界集合体において基礎的な炉物理実験を行った。

35000903
Sequential forecasting of the surface and subsurface conditions in the Japan Sea
広瀬 直毅*; 川村 英之; Lee, H. J.*; Yoon, J.-H.*
Journal of Oceanography 63(3), p.467-481(2007) ; (JAEA-J 02461)
 本研究は、渦解像度海水循環モデルに人工衛星データを同化することにより、日本海の現実的な変動を再現・予測するものである。このシステムでは、近似カルマンフィルターと緩和法によるデータ同化手法が重要な役割を果たしている。また、多数の人工衛星海面高度計データは時空間的に不規則に得られるため、逐次的に誤差共分散を修正した方が誤差共分散の漸近解を用いる場合より精度が高いことがわかった。最も精度が良い実験では、人工衛星海面水温データに対して平均二乗誤差が1.2℃の差となり、海面高度計データの約半分の海面変動を計算できることが確認された。予報実験においては、持続性が予報変数・水深・海域により大きく異なることが示された。

35000904
Compilation of wavelengths, energy levels, and transition probabilities for W I and W II
Kramida, A. E.*; 白井 稔三*
Journal of Physical and Chemical Reference Data 35(1), p.423-683(2006) ; (JAEA-J 02462)
 タングステンの中性原子(W I),1価電離イオン(W II)のスペクトル線のエネルギー準位,波長,遷移確率を収集した。入手可能な文献を収集評価することによって、観測された波長とその波長から導いたエネルギー準位を得た。観測された幾つかの遷移については測定された遷移確率を刊行された文献から収集した。

35000905
Comparison of the stopping powers calculated by using rate equations with those by the Monte Carlo method
森林 健悟
Journal of Physics; Conference Series 58, p.192-194(2007) ; (JAEA-J 02463)
 この研究の目的は、重粒子線と生体との間の相互作用で生じる原子分子データの評価を行い、そのデータをもとにブラッグピーク付近での重粒子線のエネルギー付与の空間分布(飛跡構造)及び重粒子・生体間の相互作用から生じる二次電子のエネルギー分布,X線の計算を行い、DNA損傷の解析に必要なデータを生産するコードを作成し、データを生産することである。今回の発表では、固体密度程度(1022/cm3)の水素分子中でのヘリウム,リチウム,炭素イオンの振舞いに関して、ブラッグピーク付近での飛跡構造計算を行い、原子分子過程の役割に関して議論する。原子分子過程としてイオン衝突電離過程(AZ++B→AZ++B+、AZ+:入射イオン,B:標的分子)のみを考慮した場合とそのほかに電荷移行(AZ++B→AZ-1++B+),電子損失(AZ++B→A(Z+1)++B)過程を考慮した場合の計算を行った。ブラッグピーク付近で粒子の阻止能を評価したところ原子番号が大きくなるほど両者の差が大きくなることがわかった。炭素イオンの場合、ブラッグピークの位置,飛程において両者の計算で数10μmから100μm程度の差が生じた。この長さは、細胞一個分程度の大きさである。生体研究の場合、標的は、おもに水で、今回対象とした水素分子とは異なるが、マイクロビームを用いた一細胞照射実験では、原子分子過程による電荷数の変化が大きく影響する可能性があることを示唆している。

35000906
Study on transient void behavior during reactivity initiated accidents under low pressure condition; Development and application of measurement technique for void fraction in bundle geometry
佐藤 聡; 丸山 結; 浅香 英明; 中村 秀夫
Journal of Power and Energy Systems (Internet) 1(2), p.154-165(2007) ; (JAEA-J 02464)
 原子力機構では、燃料の一層の高燃焼度化に備え、反応度事故時におけるボイド反応度フィードバックを考慮した、最大燃料エンタルピのより現実的な評価に資する知見の取得を目的に、炉外過渡ボイド挙動試験を実施している。本報では、バンドル体系の長尺試験体を用いた、低圧の低温零出力条件を模擬する試験(低圧・長尺試験)を実施するにあたり、バンドル体系内のボイド率の過渡変化を計測する手法を開発し、電場解析,模型試験及び定常沸騰試験により、その適用性を確認した。また、低圧・長尺試験体を用いた過渡ボイド試験に本ボイド率計を適用することにより、バンドル内における過渡的なボイド率変化に関する知見を取得した。さらに、ヒーターピン出力及びサブクール度が、過渡ボイド挙動に大きな影響を与えることを確認した。

35000907
Development in fission track- thermal ionization mass spectrometry for particle analysis of safeguards environmental samples
Lee, C. G.; 井口 一成; 伊奈川 潤; 鈴木 大輔; 江坂 文孝; 間柄 正明; 桜井 聡; 渡部 和男; 臼田 重和
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 272(2), p.299-302(2007) ; (JAEA-J 02465)
 フィッショントラック(FT)-表面電離質量分析(TIMS)法によるパーティクル分析法は、二次イオン質量分析計では分析が難しい粒径1μm以下のウラン粒子に対しても同位体比分析が可能であることから、有効な保障措置環境試料分析手法とされている。われわれがすでに開発したFT-TIMS法は、核分裂性物質を含む粒子をFT検出器の中に閉じこめるので、高い検出効率,試料調製の簡便さ,ウラン濃縮度別検出の可能性などの長所がある。しかし、検出器エッチングの際、ウラン粒子の一部が溶解する恐れがある。そこで、粒子と検出器部を分離した2層式FT試料調製法の開発を行っている。従来の2層式試料では、検出器のFTから目的粒子の検出の際、検出器と粒子層とのずれにより目的粒子検出に困難を伴う。われわれが新たに開発している方法では検出器と粒子層の一段を固定することによりそのずれを解決した。その結果、数回のエッチング後も検出器と粒子層のずれが生じないことを確認した。また、本法により検出した天然組成のウラン粒子(NBL950a)のTIMSによる同位体比測定の結果、234U/238U及び235U/238U同位体比の誤差はそれぞれ5.8%, 1.5%以内であった。発表では、試料調製法の詳細及びTIMSによる同位体比測定結果について報告する。

35000908
Recent progress on the development and analysis of the ITPA global H-mode confinement database
McDonald, D. C.*; Cordey, J. G.*; Thomsen, K.*; Kardaun, O. J. W. F.*; Snipes, J. A.*; Greenwald, M.*; Sugiyama, L.*; Ryter, F.*; Kus, A.*; Stober, J.*; DeBoo, J. C.*; Petty, C. C.*; Bracco, G.*; Romanelli, M.*; Cui, Z.*; Liu, Y.*; 三浦 幸俊; 篠原 孝司; 都筑 和泰*; 鎌田 裕; 滝塚 知典; 浦野 創; Valovic, M.*; Akers, R.*; Brickley, C.*; Sykes, A.*; Walsh, M. J.*; Kaye, S. M.*; Bush, C.*; Hogewei, D.*; Martin, Y. R.*; Cote, A.*; Pacher, G.*; Ongena, J.*; Imbeaux, F.*; Hoang, G. T.*; Lebedev, S.*; Chudnovskiy, A.*; Leonov, V.*
Nuclear Fusion 47(3), p.147-174(2007) ; (JAEA-J 02467)
 国際トカマク物理活動(ITPA)全体的Hモード閉じ込めデーターベースの第3版(DB3)に関し1994年から2004年の期間に行われた更新と解析について、この論文は記述する。エネルギー閉じ込め時間とその制御パラメータの巨視的データを、異なったサイズと形状の次の18装置から集めた。ASDEX, ASDEX Upgrade, C-Mod CoMPASS-D, DIII-D, JET, JFT-2M, JT-60U, MAST, NSTX, PBX-M, PDX, START, T-10, TCV, TdeV, TFTR及びUMAN-3M。このDB3データベースに基づき、幅広い物理研究が行われた。特に中心部と周辺部の振る舞いの分離,無次元解析、及びデータベースと1次元輸送コードとの比較に進展があった。データーベースは、ITERのような次期装置の閉じ込め特性の基盤を評価することを主要な目的としており、この論文でも解析結果を踏まえて次期装置を議論する。

35000909
Development of a wide-range paired scintillator with optical fiber neutron monitor for BNCT irradiation field study
石川 正純*; 熊田 博明; 山本 和喜; 金子 純一*; Bengua, G.*; 宇根崎 博信*; 櫻井 良憲*; 田中 憲一*; 小佐古 敏荘*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 551(2-3), p.448-457(2005) ; (JAEA-J 02468)
 ホウ素中性子補足療法(BNCT)の中性子照射中の熱中性子を計測するため、光ファイバーとシンチレータを組合せた広域熱中性子検出器(SOFモニタ)を開発した。このSOFモニタを使うことで、従来の金線放射化法に代わり、BNCT中に患者に付与される熱中性子束をリアルタイムで計測して線量評価を実施することが可能となる。開発したSOFモニタの測定精度を検証するため、JRR-4の中性子ビーム設備を使って水ファントムを用いた照射実験を実施し、ファントム内に配置した金線による熱中性子束との比較を行った。この結果から金線測定値とSOFモニタによる計測値がよく一致することを確認した。またSOFモニターでの計測では、中性子ビーム強度の変化に対してリニアリティがあることを確認した。今後実際のBNCTにも適用して検証を行い、BNCTへの適用性を評価するとともに、線量評価システムと組合せたリアルタイム線量評価技術の開発をすすめる。

35000910
Amorphization of carbon materials studied by X-ray photoelectron spectroscopy
高廣 克己*; 寺井 睦*; 大泉 信之助*; 川面 澄*; 山本 春也; 楢本 洋
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 242(1-2), p.445-447(2006) ; (JAEA-J 02469)
 高配向性黒鉛,等方性黒鉛,ガラス状炭素,C60などの炭素同素体にイオン照射した結果誘起される非晶質状態をX線光電子分光法及びラマン分光法により調べた。その結果、イオン照射量の増加に伴い「C 1s」線の非対称性が増すことを見いだした。「C 1s」線の非対称性は、黒鉛のドメインサイズとは無関係で、結合角の乱れなどの局所の構造乱れと関係するとの結論を得た。

35000911
Effect of Al and Be ions pre-implantation on formation and growth of helium bubbles in SiC/SiC composites
田口 富嗣; 井川 直樹; 若井 栄一; 實川 資朗; Snead, L. L.*; 長谷川 晃*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 256(2), p.669-674(2007) ; (JAEA-J 02470)
 SiC/SiC複合材料は、核融合炉用構造材料としての応用が期待されている。核融合炉環境では、14MeVという高エネルギー中性子に晒されるため、複合材料内にHeやHといったガス原子以外にも、AlやBeといった核変換生成物が生成する。これまでに、はじき出し損傷とHeやHとの共存により、複合材料内にHeバブルが形成することを示した。本研究では、これらHeバブルの形成に及ぼすAlやBe等の核変換生成物の影響を検討した。SiC/SiC複合材料に、AlもしくはBeを1000at.ppm予注入し、その後Si, He及びHを用いた多重イオン同時照射により核融合炉環境を模擬した照射を行った。照射温度は、1000℃とした。その結果、AlもしくはBeを予注入した複合材料にも、Heバブルが形成することを確認した。AlもしくはBeイオンを予注入した複合材料内に生成したHeバブルの直径分布は、2つの最頻値を持つ分布であった。また、AlもしくはBeを予注入することによりHeバブルの平均径が増大し、Alの注入量が増加するとともにHeバブルの平均径が増加することがわかった。このことから、Heバブルの成長に核変換生成物であるAlやBeが影響を及ぼすことを明らかにした。

35000912
Sputter etching effect of the substrate on the microstructure of β-FeSi2 thin film prepared by ion beam sputter deposition method
笹瀬 雅人*; 志村 憲一郎*; 山口 憲司; 山本 博之; 社本 真一; 北條 喜一
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 257(1-2), p.186-189(2007) ; (JAEA-J 02471)
 ベータ鉄シリサイド(β-FeSi2)はその受発光特性などから将来の化合物半導体の一つとして注目される物質である。本研究では高品質な薄膜作製を目指し、基板の表面処理におけるスパッタエッチングの効果を検証することを目的として、あらかじめ1〜4keV, Ne+で表面処理後1073Kで30分加熱回復を行ったSi(100)基板上に鉄をスパッタ蒸着することによりβ-FeSi2成膜を試みた。得られた薄膜を透過型電子顕微鏡による断面観察を行った結果、1keVで照射の場合は基板・薄膜ともほとんど欠陥が確認されず、極めて高配向のβ-FeSi2(100)薄膜が生成していることを明らかにした。この結果イオン照射による表面処理が高品質な薄膜作製に有効であるとともに原子レベルで平滑な界面が得られることを見いだした。

35000913
Assessment of 186Re chelate-conjugated bisphosphonate for the development of new radiopharmaceuticals for bones
上原 知也*; Jin, Z. L.*; 小川 数馬*; 秋澤 宏行*; 橋本 和幸; 中山 守雄*; 荒野 泰*
Nuclear Medicine and Biology 34(1), p.79-87(2007) ; (JAEA-J 02472)
 186Reとビスホスホネートの一つであるHEDPとが形成する186Re-HEDP多核錯体は、癌性骨転移の疼痛緩和剤として、その臨床応用が期待されている。しかしながら、血液からの消失速度が遅いため、骨髄被曝が危惧されている。そのため、速やかな血液クリアランスを示す186/188Re標識薬剤の開発が望まれている。そこで、ビスホスホネート部位(APD)に安定な放射性レニウム錯体([186Re]CpTR-Gly)を結合させた薬剤として、[186Re]CpTR-Gly-APDを設計・合成し、そのマウス体内動態を186Re-HEDPと比較検討し、その有用性を評価した。まず、生体内で非常に安定であることが確認された。また、マウス体内動態の実験から、[186Re]CpTR-Gly-APDは186Re-HEDPに比べて骨への有意に高い集積を示す一方で、血液から速やかな放射能消失を示した。さらに、186Re-HEDPで観察された胃への放射能集積は観察されなかった。以上の結果は[186Re]CpTR-Gly-APDの設計の有用性を示すものであり、生体内で安定かつ血漿タンパク質との結合が少なく、さらに低濃度の配位子による標識が可能な二官能性キレート構造をビスホスホネートと結合させることにより、より有用な薬剤の開発が可能となると考えられる。

35000914
Spiral spin structure in the Heisenberg pyrochlore magnet CdCr2O4
松田 雅昌; 武田 全康; 中村 充孝; 加倉井 和久; 大沢 明*; Leli`evre-Berna, E.*; Chung, J.-H.*; 植田 浩明*; 高木 英典*; Lee, S.-H.*
Physical Review B 75(10), p.104415_1-104415_6(2007) ; (JAEA-J 02473)
 CdCr2O4はスピネル型構造をしており、正四面体の頂上にあるCr3+モーメント間に幾何学的フラストレーションが存在している。非偏極中性子回折実験を行ったところ、転移温度7.8K以下で波数ベクトルQ=(0, δ, 1)(δ 〜0.09)を持つ非整合磁気構造をとることがわかった。転移点においてc軸が伸びて、立方晶から正方晶への構造相転移も同時に起こっている。一次元偏極中性子回折実験により、スピンの容易軸(あるいは面)を調べたところ、容易面がac面であることがわかった。この結果から、基本構造はac面を容易面とするスパイラル構造であることが示唆される。さらに詳細な構造を調べるために、TAS-1に設置されたCRYOPADを用いて三次元偏極中性子解析を行った。その結果、磁気構造が単純な円形のスパイラル構造ではなく、楕円形のスパイラル構造をとっていることが明らかになった。

35000915
Identification of a low plasma-rotation threshold for stabilization of the resistive-wall mode
武智 学; 松永 剛; 相羽 信行; 藤田 隆明; 小関 隆久; 小出 芳彦; 坂本 宜照; 栗田 源一; 諌山 明彦; 鎌田 裕; JT-60チーム
Physical Review Letters 98(5), p.055002_1-055002_4(2007) ; (JAEA-J 02474)
 抵抗性壁モード(RWM)を安定化させるために必要なプラズマ回転の最小値を接線中性粒子ビームによる外部からの運動量入力を用いてプラズマ回転を制御することにより調べた。観測された閾値はアルフヴェン速度の0.3%でこれまでの磁気ブレーキを用いた実験結果に比べて非常に小さい。この低い閾値は理想壁のある場合でのベータ限界付近までほとんどベータ依存性を持たない。これらの結果は将来の核融合炉のような小さな回転でしか回転しない大きなプラズマにおいて、RWMを安定化させるための帰還制御の性能の要求を大きく低減することを示唆している。

35000916
ELM frequency dependence on toroidal rotation in the grassy ELM regime in JT-60U
大山 直幸; 鎌田 裕; 諌山 明彦; 浦野 創; 小出 芳彦; 坂本 宜照; 武智 学; 朝倉 伸幸; JT-60チーム
Plasma Physics and Controlled Fusion 49(3), p.249-259(2007) ; (JAEA-J 02475)
 ダイバータ板への熱負荷が少ないgrassy ELMが出やすい三角度と安全係数が高いプラズマにおいて、接線入射と垂直入射のNBIの組合せを変更することでトロイダル回転やポロイダルベータ値を変化させた場合のELM特性の変化を系統的に観測した。プラズマ電流と同じ向きのプラズマ回転が減少し、反対向きの回転が増加するに連れて、ELMの周波数が増加することがわかった。また、この傾向はポロイダルベータ値に依存しない。特筆すべきは、プラズマのトロイダル回転がほとんどない場合でも、ELM周波数が400Hz程度に増加することが明らかになった点である。なお、これら一連の実験において、ペデスタル圧力に劣化は見られていない。

35000917
Optimisation of a laser-plasma soft X-ray source excited in a pulsed xenon jet
Levashov, V. E.*; Mednikov, K. N.*; Pirozhkov, A. S.; Ragozin, E. N.*
Quantum Electronics 36(6), p.549-552(2006) ; (JAEA-J 02476)
 A "clean" (debris-free) pulsed soft X-ray (12.5 - 25 nm) source excited by nanosecond neodymium laser pulses in a pulsed xenon jet was optimised. The source efficiency in the λ < 15 nm range is improved due to the weakening of photoabsorption in the peripheral regions of the gas jet in going over to the supersonic regime of xenon gas flow into vacuum, as well as due to the laser beam focusing onto the plateau edge in the radial gas density profile nearest to the observer. The source efficiency at 13.5 nm is 0.22% into a solid angle of 2π sr into a 0.5 nm band.

35000918
Coherent X-ray diffraction for domain observation
大和田 謙二; 並河 一道; 水木 純一郎; 下村 晋*; 中尾 裕則*; 伊藤 和輝*; 松下 三芳*; 米田 安宏; 村上 洋一*; 廣田 和馬*
Transactions of the Materials Research Society of Japan 32(1), p.7-10(2007) ; (JAEA-J 02477)
 第三世代放射光の登場によりコヒーレントX線回折(CXD)が現実的になってきた。その手法は固体物理に適用されることが期待されている。CXDによるX線スペックルパターンは物質内部の粒子やドメインの配列をよく反映する。そのような配列を理解することは誘電体,圧電体,フォトニック結晶など物質の機能発現を理解するうえで重要となる。われわれはスプリングエイトのBL22XUにおいてCXDができるように装置群を整備した。それらを使い、合金Cu3Au,誘電体PZN-9%PT,Sr-doped BaTiO3のスペックルパターンの観測に成功した。それらの二次元フーリエ像は空間自己相関関数を与え、ミクロスケールのドメイン配列の情報を与える。

35000919
Direct observation of non-strain-free style domain in BaTiO3 crystal by synchrotron X-ray topography
米田 安宏; 香村 芳樹*; 鈴木 芳生*; 森村 亮太*; 小島 彬*; 水木 純一郎
Transactions of the Materials Research Society of Japan 32(1), p.31-34(2007) ; (JAEA-J 02478)
 放射光の持つ高いコヒーレント特性を生かしてチタン酸バリウムにおけるドメイン観察を行った。われわれは既に強誘電体のドメイン境界には格子歪みが存在することを証明していたが、さらに高い分解能のX線を用いてドメイン境界に存在する格子歪みを詳細に調べた。その結果、ドメインの格子歪みは相転移温度よりもはるかに下の温度で消失することがわかった。これは高重らが示唆していた歪みフリードメインを構成しているためと考えられ、放射光を用いた歪み測定から、直接的に歪みがなく、このドメインの存在によって結晶性が向上したことを明らかにすることができた。

35000920
Magnetic and dielectric behavior of the ruthenium double perovskite oxides R2MRuO6 (R=La, Pr and Nd, M=Mg, Co, Ni and Zn)
吉井 賢資; 池田 直*; 森 茂生*; 米田 安宏; 水牧 仁一朗*; 谷田 肇*; 河村 直己*
Transactions of the Materials Research Society of Japan 32(1), p.51-54(2007) ; (JAEA-J 02479)
 ルテニウムを含むダブルペロブスカイト酸化物R2MRuO6(R=La, Pr, Nd, M=Co, Ni, Zn, Mg)の磁性と誘電性について調べた。粉末X線構造解析から、結晶構造はMイオンとRuイオンが結晶額的に整列する構造を取っていることがわかった。磁化測定からは、MがCoとNiイオンのときのみ、20-30Kに反強磁性転移が起こるが、これは磁性MイオンとRuイオンの磁気相互作用によるものである。MイオンがMgイオン及びZnイオンの非磁性の場合には、磁気転移は起こらなかった。誘電率測定からは、MイオンがCo及びNiの場合のみ、5000程度の大きな誘電率が観測された。結晶構造及び磁化測定の結果から、この誘電率は、磁性あるいは電子移動による短距離の誘電領域が形成されたことによると考えられる。M=Niに対する放射光を使った吸収分光から、Ruイオンは4+、Niイオンは2+に近い状態で、過去の論文に提案されているようなバンド形成による電荷状態のずれは観測されなかった。

35000921
Gasochromic coloration of non-stoichiometric WO3-x films
井上 愛知; 山本 春也; 永田 晋二*; 高野 勝昌; 吉川 正人; 四竈 樹男*
Transactions of the Materials Research Society of Japan 32(1), p.107-110(2007) ; (JAEA-J 02480)
 水素ガスと反応して着色する酸化タングステン膜による光学式水素センサーの開発を行うため、反応性マグネトロンスパッタ法を用いて不定比性酸化タングステン膜を作製し、その元素組成比と着色性能の関係を調べた。成膜雰囲気中のアルゴン分圧を150mPaに保ち、酸素分圧を0〜80mPaの範囲で変化させながら金属タングステンターゲットをスパッタして作製した試料に対して、ラザフォード後方散乱法(RBS)及び反跳粒子検出法(ERD)を用いて組成を調べた結果、膜の酸素組成比が増加するに伴って含有水素量は増加し、WO3膜では最大約H0.7WO3まで水素が含有していることが明らかになった。また、石英基板上に同様な条件で堆積させた酸化タングステン膜表面に約15nmのパラジウムを堆積させた試料に対して着色性能を調べたところ、組成がWO3に近づくほど、また含有水素が多いほど光の透過強度が低下する傾向にあった。

35000922
Effect of tungsten valences on gasochromic coloration in tungsten oxide thin films
高野 勝昌; 井上 愛知; 山本 春也; 宮下 敦巳; 吉川 正人
Transactions of the Materials Research Society of Japan 32(1), p.159-162(2007) ; (JAEA-J 02481)
 酸化タングステン(WO3)薄膜の着色速度の向上を目的として、入射エネルギー350keVの4He+をWO3薄膜に照射した。照射後、着色速度との関連が指摘されている不完全な酸素結合を持つ4価、あるいは5価のタングステン(W4+、あるいはW5+)の総量を、X線光電子分光法により調べた結果、1×1017ions/sm2のイオン照射により、W4+及びW5+の総量がそれぞれ4%及び17%増大したことがわかった。一方、同じ試料に触媒金属薄膜を蒸着し着色速度を調べた結果、照射前に比べ着色速度が7.5倍上昇したことがわかった。この結果から、不完全な酸素結合を持つタングステン原子の増加が着色速度を大幅に改善させること,改善手法としてイオン照射が有効であることがわかった。

35000923
Polarized neutron reflectometry as a nondestructive tool for studies on the buried interfaces in magnetic thin films
武田 全康
Transactions of the Materials Research Society of Japan 32(1), p.199-202(2007) ; (JAEA-J 02482)
 中性子反射率計は現在、物性研究から生体物質の研究に及ぶ非常に幅広い分野で使われている。X線反射率計と中性子反射率計を比較した時に、最も大きな特徴は、中性子は物質中の磁気モーメントに対して感度を有することである。そのため、中性子反射率計は磁性薄膜,磁性多層膜の研究に唯一かつ非破壊的な、非常に強力な研究手段である。反射率法では、層状構造の厚さ方向に対する変化をとらえるだけでなく、表面から奥深くに埋もれた界面の面内方向に関する構造情報も調べることができる。そのような情報はTMR磁気読み取りヘッドなどの磁気デバイスの性能向上に対して非常に有用である。本講演では、磁性薄膜の研究分野と磁気デバイス開発での中性子反射率法の実際の使われ方を紹介するとともに、スピンラベル法という、これまでにない原理を利用した新しい中性子反射率測定への国外の取り組みについても触れる。

35000924
In-situ X-ray diffraction study of InAs/GaAs(001) quantum dot growth
高橋 正光; 海津 利行; 水木 純一郎
Transactions of the Materials Research Society of Japan 32(1), p.209-214(2007) ; (JAEA-J 02483)
 放射光施設SPring-8のBL11XUにおいて、X線回折計とMBE成長槽とを一体化した装置を用い、量子ドット成長中のその場・リアルタイムX線測定を実現した。この装置とX線CCD検出器を組合せることで、InAs/GaAs(001)量子ドットの成長過程を10秒以下の時間分解能でX線測定する方法を開発した。この手法をInAsの連続的な成長過程·As雰囲気中でのアニール過程・GaAsによる埋め込み過程・積層量子ドット成長過程に適用した。X線は、ガス雰囲気中でも使用することができるため、ここで開発した手法は、分子線エピタキシャル成長だけでなく、有機金属化学気相成長にも適用可能である。したがって産業応用にも向いている。

35000925
インドに見るアジアの原子力開発; 原子力新時代の幕開け(後編)
藤家 洋一*; 佐藤 浩司
エネルギーレビュー 27(4), p.38-42(2007) ; (JAEA-J 02484)
 地球人口の過半数を抱え、近年中国,インドをはじめ多くの国が目覚しい経済発展を遂げるアジアでは、21世紀にエネルギー問題や環境問題が次第に深刻さを増していくことが考えられる。その解決には原子力が不可欠であり、原爆に反対し平和利用に専念してきた日本に多くの期待がかけられている。筆者は、昨年12月にインドを訪問し、多くの原子力界のリーダーと面談し意見交換するとともに、原子力施設等を視察する機会を得た。このインド訪問について2回に分けて紹介する。前報(前編)では、昨年12月のインド訪問を前にして考えたこと、誰と会い何を話したか、インドといかに向き合うべきかについての考え方を示した。本報(後編)では、インドで何を見、何を感じたかインドの原子力開発の現状に照らして紹介する。

35000926
サイエンス・パートナーシップ・プロジェクト(SPP)における放射線教育とその効果
柳澤 和章; 笹川 澄子*; 中野 光士*
放射線教育 10(1), p.23-48(2006) ; (JAEA-J 02486)
 文科省及び科学技術振興機構の平成18年度SPP事業で、群馬県立藤岡工業高等学校は旧原研高崎量子応用研究所他と知的連携を組み、学習活動(地元工業高校生が学ぶ原子力技術とその未来)を実施した。その結果、放射線や原子力エネルギーに関する知識をメカニズム中心にインプットすると学習効果が3倍上昇した。近い将来、労働現場に立つであろう工業高校生に、教科書に書かれていないような基礎と応用を、SPPを活用して総合的に体系的に教えていくことは、自然で効果的な知識普及活動・理解活動のあり方の1つであり、結果として、放射線や原子力に対する理解者を増やすことにつながると期待される。

35000927
高圧下における結晶学国際ワークショップ報告
服部 高典
高圧力の科学と技術 17(1), p.75-76(2007) ; (JAEA-J 02487)
 2006年9月28日〜10月1日にロシアのDubnaで開催された「高圧下における結晶学国際ワークショップ」の報告を行った。高圧下における結晶学国際ワークショップは、IUCr高圧委員会とJoint Institute for Nuclear Research(JINR)国際総合研究所の共同開催で行われ、約80名の参加者により執り行われた。下記に示すセッションからなり総計31件の口頭発表,36件のポスター発表がなされた。Simple elements, Molecular Solids, Physical Properties of magnetic structures, Materials Sciences and high-pressure synthesis, Mineral physics and geophysics, Technical developments, Organics, Liquids and Amorphous Materials, Carbon and nano materials.特筆すべき点として、通常行われている実験手法に加え、JINRの特徴を活かした高圧家になじみの薄い研究(中性子散乱やγ線角相関)の成果も発表されていた。また、Excursionとして見学したIBR-2パルス中性子施設及びそこで行われている実験手法の紹介を行った。

35000928
硫酸の流動沸騰実験結果
野口 弘喜; 大田 裕之; 久保 真治; 小貫 薫; 日野 竜太郎
日本原子力学会和文論文誌 6(1), p.1-4(2007) ; (JAEA-J 02488)
 熱化学ISプロセスの主要機器である硫酸分解器を設計するために必要な硫酸の沸騰伝熱流動特性を把握するために、硫酸の沸騰領域の伝熱特性を測定した。硫酸の濃縮が確認され、単成分系の沸騰熱伝達に比べて硫酸の沸騰熱伝達率は低い値を示していることが確認できた。

35000929
ステアリン酸亜鉛の熱分解特性評価モデルの検討
阿部 仁; 田代 信介; 三好 慶典
日本原子力学会和文論文誌 6(1), p.10-21(2007) ; (JAEA-J 02489)
 施設の安全性を総合的に確認するためには、万が一臨界事故が発生したと仮定した場合の環境影響を定量的に評価することが重要であり、そのためには事故時の印加反応度や反応度添加速度を現実的に模擬し総核分裂数や出力の時間履歴等を解析・評価するための基礎データ及び手法の整備が必要である。計画されているMOX燃料加工施設のMOX粉末調整工程では、密度調整等のためにMOX粉末に対してステアリン酸亜鉛が添加される。ステアリン酸亜鉛は中性子減速効果を有するため、誤操作等によって過剰に添加された場合には、MOX燃料の臨界特性に影響を与える可能性がある。ステアリン酸亜鉛の過剰添加によって、万が一、臨界事象が引き起こされた場合には、ステアリン酸亜鉛は、加熱されて融解や熱分解等の物理・化学的変化を受ける。これらの変化はMOX燃料の核的な動特性に対して影響を及ぼす。また、熱分解によるステアリン酸亜鉛の消費は、臨界事象の停止機構の一つとなりえるものと考えられる。本報では幾つかの熱分析装置を用いてステアリン酸亜鉛の吸発熱特性データ及び熱分解ガス発生特性データを取得するとともに、これらを適用した事故時のステアリン酸亜鉛の熱分解特性評価モデルの検討を行った。

35000930
HTTR-IS水素製造システムにおける安全設計の考え方
大橋 一孝; 西原 哲夫; 國富 一彦
日本原子力学会和文論文誌 6(1), p.46-57(2007) ; (JAEA-J 02490)
 日本原子力開発機構(以下、原子力機構)では、核熱による水素製造の実用化を目指して、超高温ガス炉(VHTR)原子炉システムとIS法を用いた水素製造システムの研究開発を推進中である。その一環として、原子力機構では、高温工学試験研究炉(HTTR)へIS試験設備を接続することにより、その技術的成立性を実証する計画である。本論文では、想定される異常事象の選定,各異常の事象推移の検討,原子炉安全の確保の観点からISシステムに要求される安全機能の検討等を行い、HTTR-IS水素製造システムの安全設計にかかわる基本的な考え方の提案を行った。さらに、ISシステムを非「原子炉施設」として区分するための方策についても提案を行った。

35000931
大規模地下施設の建設に伴う周辺地下水環境の変化
岩月 輝希; 天野 由記; 井岡 聖一郎; 三枝 博光; 竹内 竜史
日本原子力学会和文論文誌 6(1), p.73-84(2007) ; (JAEA-J 02491)
 瑞浪超深地層研究所において、大規模な地下施設建設に伴う周辺地下水環境の変化にかかわる調査研究を行った。地下水の水圧と水質を連続的に観察した結果、低透水層が水理化学的擾乱を軽減するバリアとして、逆に高透水性層は優先的な地下水流動経路として機能することが明らかになった。地下水の水質変化は、異なる水質を持つ地下水の混合割合の変化により生じていた。地下水の水圧と水質を高透水性の岩層でモニタリングすることは、周辺環境の変化を評価するうえで非常に重要である。また、施設建設前に水理地質構造や水理化学的な初期状態を理解しておくことが不可欠である。本研究では、約4か月間にわたる、地下施設の冠水とその後の排水時の観測により、水理学的な応答速度や地球化学的な緩衝能力を評価することができた。

35000932
シグマ委員会の2003, 2004年度における核データ研究活動
井頭 政之*; 渡辺 幸信*; 深堀 智生; 奥村 啓介; 片倉 純一; 千葉 敏; 柴田 恵一; 山野 直樹*; 中川 庸雄; 小田野 直光*; 安藤 良平*; 岡嶋 成晃
日本原子力学会和文論文誌 6(1), p.85-96(2007) ; (JAEA-J 02492)
 本技術資料は、2003〜2004年度におけるシグマ委員会の活動報告をまとめたものである。当該年度に、特殊目的ファイルとして公開したJENDL-HE-2004とJENDL-PD-2004について、その概要を示した。また、その他の活動として、核燃料照射後試験の解析,核図表の作成,天体物理のための核データ評価についても述べた。

35000933
日本原子力研究開発機構のGNEP構想への取組み
佐賀山 豊
日本原子力学会誌 49(3), p.172-178(2007) ; (JAEA-J 02493)
 本年2月の米国エネルギー省(DOE)によるGNEP(Global Nuclear Energy Partnership)構想発表から現在に至るまで、JAEAのかかわりを中心に背景,経緯,原子力機構のスタンスなどについて記載するとともに、JAEAで検討中のGNEP構想への協力内容・取組み方法について概説し、JAEAの立場から今後のGNEP構想の行方について総括的な展望を行う。

35000934
核融合炉ブランケットの先進中性子増倍材料としてのベリリウム金属間化合物の開発
土谷 邦彦; 河村 弘; 三島 良直*; 吉田 直亮*; 田中 知*; 内田 宗範*; 石田 清仁*; 柴山 環樹*; 宗像 健三*; 佐藤 芳幸*; 岩切 宏友*; 大沼 郁雄*
プラズマ・核融合学会誌 83(3), p.207-214(2007) ; (JAEA-J 02495)
 原型炉用増殖ブランケットに必要な「高温・高照射に耐えうる先進中性子増倍材料」の開発について、ベリリウム金属間化合物であるBe12Ti等に着目し、各種特性(機械的特性,化学的特性,照射特性等)及び微小球製造技術開発を全日本規模の産学官連携のもとで実施している。この先進中性子増倍材料の開発における最近の成果について紹介する。

35000935
溶媒抽出法を用いた加速器質量分析法による海水中129Iの定量
賀佐 信一*; 澤藤 奈都子*; 甲 昭二; 木下 尚喜; 天野 光; 河村 日佐男*
Radioisotopes 56(4), p.155-162(2007) ; (JAEA-J 02496)
 溶媒抽出による前処理法を用いた加速器質量分析(AMS)によって、海水中の129Iを定量するための実用的な方法を開発した。この方法は、1Lの海水から海水中のヨウ素酸イオンをアスコルビン酸によってヨウ化物イオンに還元した後、全無機ヨウ素をn-ヘキサンを用いて溶媒抽出するものである。溶媒抽出の回収率は、イオンクロマトグラフを用いて全ヨウ化物イオンを定量することによって求めた。分析精度及びその正確さは、希釈したNIST SRM 3230 Level I標準溶液を添加した海水と濃度既知の海水で確認し、AMS測定の繰り返し精度は、海水試料及び硝酸銀とヨウ化カリウムから調製したヨウ化銀によって確認した。これらの分析の結果、分析精度及びその正確さは十分満足できるものであった。また、前処理を含む分析の繰り返し精度は約10%であった。本法は十分な分析精度及び正確さを有しており、129I濃度レベルの低い海水の定量に利用できる。

35000936
核実験を監視する
直井 洋介; 篠原 伸夫
テクノカレント (440), p.1-12(2007) ; (JAEA-J 02497)
 核兵器とは技術的にどのようなものであり、核実験はなぜ行われるのか、また、包括的核実験禁止条約(CTBT)で構築されている検証体制と検証技術について解説する。

35000937
電磁アクロス長距離送受信実証実験
中島 崇裕; 長尾 大道*; 佐柳 敬造*; 野田 洋一*; 長尾 年恭*; 熊澤 峰夫; 羽佐田 葉子*
東海大学海洋研究所研究報告 (28), p.21-28(2007) ; (JAEA-J 02498)
 中部地域において、電磁アクロスの信号が数十kmの遠方でも観測できるかを確かめるために、試験観測を行った。遠方まで届くと予想される周波数帯域を選び、精密同期,常時送信をすることにより、伝播してきた信号を確認することができた。この信号レベルは、通常はノイズに埋もれている大きさしかないので、他の観測を妨害しない。今回は、送信電流ダイポール軸の方向により受信信号の振幅の違いが確認された。この原因は地下構造の異方性によると考えられるので、今回の結果だけでなく、近傍の観測と照らし合わせながら、明らかにしていく必要がある。この異方性の変動は地下応力の変動と対応することが予想される。本試験では、狭い周波数帯での信号のみを扱ったが、周波数によって電磁波伝播の影響する範囲が異なるので、その周波数依存性も地下の情報として重要である。

35000938
隕石の統計に見える文化,科学,経済
大澤 崇人
統計情報 56(4), p.46-50(2007) ; (JAEA-J 02499)
 全国統計協会連合会から発行されている機関誌「統計情報」において、「おもしろ社会ウォッチング」という一般向けの話題として執筆した。隕石に関するさまざまな統計データを収集・紹介し、そのデータから科学だけではなく文化や経済など、多角的に人間社会を読み解こうと試みた。

35000939
レーザショックピーニングされたチタン合金の残留応力分布の高エネルギー放射光による測定
鈴木 賢治*; 菖蒲 敬久; 田中 啓介*
材料 56(3), p.217-222(2007) ; (JAEA-J 02500)
 9mm厚で表面にレーザショックピーニングを施したTi6Al4V材の内部残留応力測定を行った。測定は、70keVの高エネルギー放射光X線を使用し、透過型及び反射型ひずみスキャンニング法により行った。Tiの004及び112反射による面内及び面外ひずみ測定を行った結果、面内の2方向のひずみはほとんど一致していることから面内で等2軸応力状態であることがわかった。一方、面外ひずみに関して、面内応力より計算された面外ひずみと測定結果を比較した場合に、112反射はほとんど一致するのに対して、004反射ではかなり異なっていることがわかった。この理由は、塑性変形異方性が起点となる粒間ひずみによるものであり、112反射に対して004反射はその影響が強いためであると考えられる。以上から、112反射より残留応力を求めた結果、表面部は-500MPaの圧縮応力で、1.8mm程度の深さまでその影響は含まれていることがわかった。

35000940
Wave propagation behavior of a multi-connected structure
西田 明美
Proceedings of 13th International Congress on Sound and Vibration (ICSV-13) (CD-ROM) , 7p.(2006) ; (JAEA-J 02501)
 原子力プラントにおいてその安全性と機能性を維持し続けることは、非常に重要な課題である。特に、最近配管系の損傷による事故が発生し、配管系構造物の挙動解明の必要性が強く要求されている。著者らは、配管系構造物における応力波伝播現象及び減衰機構の解明を目的とし、非周期的かつ複雑な組立構造物の波動伝播特性に関する研究開発を行っている。これまでに、波動伝播特性解明のために有効な手法であるスペクトル要素法(SEM)をねじれ波,せん断波を考慮できるように拡張し、定式化を行った。本論文では、拡張されたSEMを用いて数値シミュレーションを行い、模型実験結果と比較し、本手法の有効性を述べる。

35000941
Study on chemical reactivity control of liquid sodium; Research program
斉藤 淳一; 荒 邦章; 杉山 憲一郎*; 北川 宏*; 岡 伸樹*; 吉岡 直樹*
Proceedings of 15th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-15) (CD-ROM) , 5p.(2007) ; (JAEA-J 02502)
 液体ナトリウムは熱伝導率や液体温度範囲が広いことから高速炉の冷却材として使われている。しかしながら、ナトリウムの水や酸素との反応性は非常に高い。そこで、ナトリウムの化学的活性度を抑制する革新的な技術の開発が望まれている。本研究の目的は液体ナトリウム中にナノメートルサイズの金属微粒子を分散させることにより、ナトリウムの化学的活性度を抑制することである。本研究のサブテーマはナノ粒子の製造,反応抑制効果の評価と高速炉への適用性評価である。本発表では研究計画について述べる。

35000942
Test results of volatile radionuclide evaporation from liquid lead-bismuth and their comparison with test from sodium pool
大野 修司; 宮原 信哉; 倉田 有司
Proceedings of 15th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-15) (CD-ROM) , 6p.(2007) ; (JAEA-J 02503)
 鉛ビスマス中の210Po, Cs, Teなど揮発性放射性物質が気相へ移行する挙動を調べるために平衡蒸発試験を実施してきた。試験では、典型的な蒸気圧測定法である「トランスパイレーション法」を用いている。この方法を使ったナトリウム体系での試験研究によって、過去にナトリウムプール中のCs, NaI, Teなど核分裂生成物の蒸発挙動も調べられているため、鉛ビスマスとナトリウムの2種類の冷却材に対する放射性不純物の揮発性を比較することも可能である。本論文では、まずナトリウム中の核分裂生成物の蒸発特性をレビューし、次に鉛ビスマス中の核分裂生成物や放射化生成物の蒸発試験結果を報告する。また、鉛ビスマス冷却型原子炉システムのカバーガス空間における蒸気量を見積もり、210Poの蒸発挙動の重要性に言及する。さらに、ナトリウムと鉛ビスマスの2種類の冷却材を対象として、それに混入したCsとTeの揮発性を試験データに基づいて比較する。これらの実験で蓄積された知見は、液体金属冷却型原子炉システムの安全評価ツールに活用される重要なデータベースとなるものである。

35000943
Thermal-hydraulic design of high conversion type core of FLWR
小林 登; 大貫 晃; 大久保 努; 内川 貞夫
Proceedings of 15th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-15) (CD-ROM) , 6p.(2007) ; (JAEA-J 02504)
 革新的水冷却炉(FLWR)の高転換型炉心の熱設計を実施した。高転換型FLWR炉心は炉システムを変更することなく燃料集合体を入替えるだけで増殖型炉心に移行できることが要求されている。高転換型炉心は増殖型炉心と燃料棒間ギャップが大きく異なるが、高転換型炉心には増殖型炉心と同じ自然循環冷却を適用する。熱設計には、TRAC-BF1コードを用いた。高転換型炉心と増殖型炉心で、自然循環を駆動するためのチムニー長さ及び炉心入口オリフィスの設定を同じにし、下部タイプレートの形状損失係数をそれぞれの炉心に適したものにすることで、自然循環流量を制御することとした。高転換型炉心では、平均ボイド率を低下させるため、給水温度を調節した。TRAC計算結果から、同一の炉システムで高転換型炉心及び増殖型炉心とも自然循環冷却可能な設計を実現できる見通しを得た。

35000944
Validation of neutronics calculation codes for VHTR nuclear design using HTTR experimental data
後藤 実; 中川 繁昭; 高松 邦吉; 武田 哲明
Proceedings of 15th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-15) (CD-ROM) , 6p.(2007) ; (JAEA-J 02505)
 VHTRの核設計に対する核計算コードの適応性を検証するために、HTTRの炉心特性の解析を行った。また、核データライブラリの違いがHTTRの炉心計算に及ぼす影響について検討した。MVPコードによる室温条件でのHTTRの過剰反応度の計算結果は試験結果に対して0.4%Δk/k以内の差異で一致したのに対し、SRACによる計算結果は、試験結果を1.5%Δk/k過大評価した。MVPによるHTTRの炉心計算結果と試験結果との比較から、JENDL-3.3, ENDF/B-VI.8、及びJEFF-3.1を用いたHTTRの過剰反応度の計算結果と試験結果の差異は、それぞれ、0.4%Δk/k, 0.7%Δk/k、及び0.7%Δk/kとなった。

35000945
Countermeasures planned for reducing water inflow into deep shafts at the Mizunami Underground Research Laboratory
久慈 雅栄; 佐藤 稔紀; 見掛 信一郎; 原 雅人; 南出 賢司; 杉原 弘造
Proceedings of 15th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-15) (CD-ROM) , 7p.(2007) ; (JAEA-J 02506)
 瑞浪超深地層研究所(MIU)が建設中である。MIUは深さ1,000mの2本の立坑と水平坑道群から構成される。主立坑の直径は6.5m、換気立坑の直径は4.5mである。2本の立坑を接続する水平トンネルは100m間隔で掘削される。深さ約500mに中間ステージ、及び深さ約1,000mに最深ステージが、科学的研究のために設置される予定である。主立坑,換気立坑の2006年11月時点の深度はそれぞれ180mと191mである。掘削の進行に伴い立坑への湧水量が増加し、プロジェクト進行に支障が生じている。湧水量を低減するために、ポストグラウトとプレグラウトが計画されている。換気立坑においてポストグラウト試験施工を実施され、その適用性が評価された。

35000946
Development of design technology on thermal-hydraulic performance in tight-lattice rod bundles, 1; Approach and verification
大貫 晃; 呉田 昌俊; 吉田 啓之; 玉井 秀定; Liu, W.; 三澤 丈治; 高瀬 和之; 秋本 肇
Proceedings of 15th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-15) (CD-ROM) , 7p.(2007) ; (JAEA-J 02507)
 革新的水冷却炉(FLWR)の稠密炉心熱流動特性を調べる研究開発プロジェクトを2002年から進めてきた。本シリーズ発表では大型熱特性試験(実機模擬37本バンドル試験),モデル実験と先進的数値シミュレーション技術開発により得られた成果をまとめて報告する。本報告では全体計画とFY2005までに得られた成果を紹介する。稠密炉心体系での熱流動特性が調べられ成立性を実験的に確認するとともに、燃料集合体形状効果を解析的に評価できる3次元二相流解析技術を開発した。

35000947
Data analysis on glovebox size reduction activity in glovebox dismantling facility
北村 哲浩; 中道 晋哉; 岡田 尚
Proceedings of 15th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-15) (CD-ROM) , 7p.(2007) ; (JAEA-J 02508)
 グローブボックス解体設備におけるグローブボックス解体データを分析し、ある程度の精度で作業単位ごとの必要時間の算出を試みた。例えば、変動差が30%程度以下であれば、ほぼ定型化作業とみなせ作業時間の見積もりが可能である。また変動が大きくとも作業時間が少なければ、ある程度小さな上限値で押さえることができ、作業時間の見積もりが可能である。すなわち、ある程度時間のかかる作業で変動が30%程度以内のものを「作業予測が可能」な作業と定義し、大きな変動はあっても時間のかからない作業を「抑制可能」な作業と定義し、それ以外を、「作業予測が不可能」な作業と定義し分別整理した結果、ほぼすべての作業の推定が可能となることがわかった。

35000948
Study of rock-like oxide fuels under irradiation
白数 訓子; 蔵本 賢一; 中野 佳洋; 山下 利之; 小川 徹
Proceedings of 15th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-15) (CD-ROM) , 7p.(2007) ; (JAEA-J 02509)
 岩石型燃料の照射挙動を評価するために、照射後試験を行った。試験に供した燃料はUO2固溶安定化ジルコニア(U-YSZ)単相燃料,U-YSZの粉砕片とスピネル又はコランダムを混合した粒子分散型燃料の計3種である。照射は、JRR-3にて約280日行った。燃焼度はおよそ11%FIMAである。パンクチャーテストにてガス放出率を測定した結果、コランダム型燃料が極めて高いガス放出率を示すことが明らかになった(88%)。また、ジルコニア単相燃料は、その低い熱伝導率より一番高い温度での照射となったが、大変低いガス放出率を示した(5%)。SEMやEPMAを用いて燃料の微小分析を行った。1400K以下の照射温度では、スピネルの分解及び組織の再編成は見られなかった。コランダム型燃料の組織も一様であり、組織変化は見られなかった。

35000949
Conceptual design of Innovative Water Reactor for Flexible Fuel Cycle (FLWR)
大久保 努; 内川 貞夫; 中野 佳洋; 秋江 拓志; 小林 登; 深谷 裕司
Proceedings of 15th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-15) (CD-ROM) , 7p.(2007) ; (JAEA-J 02510)
 成熟した軽水炉技術に立脚して、将来の持続的なエネルギー供給を確保するため、革新的水冷却炉(FLWR)の概念検討が原子力機構で実施されている。本概念は、MOX燃料を装荷した稠密炉心を使用するもので、2つのステップから構成されている。第1ステップは高転換型炉心(HC-FLWR)で現行の軽水炉やプルサーマルからのスムーズな技術的連続性を目指したものである。第2ステップは、低減速軽水炉(RMWR)概念であり、1.0を超える高い転換比を実現してプルトニウムの多重リサイクルを達成するものである。重要な点は、この2つの炉心概念では、同じ大きさの燃料集合体を使用する点であり、このため、将来の燃料サイクル環境に柔軟に対応しながら同じ原子炉システムにおいて前者から後者へ移行できる点である。本論文では、FLWRの概念設計の結果を示す。HC-FLWRの概念設計は最近改良され、核熱結合計算によって炉心特性詳細な評価を行った。本炉心では、55GWd/t程度の燃焼度を達成可能である。

35000950
Experimental and modeling studies on sorption and migration of americium in porous sedimentary materials
田中 忠夫; 中山 真一
Proceedings of 15th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-15) (CD-ROM) , 7p.(2007) ; (JAEA-J 02511)
 再処理施設等から発生するTRU廃棄物のうち、アルファ核種濃度が低い廃棄物の相当量は浅地中処分が対象となる。TRU核種は浅地中環境で種々の化学形態をとるばかりではなく、土壌や岩石との相互作用も複数のメカニズムが関与しているとされている。このようなTRU核種の移行現象は、固液間相互作用として従来から用いられている単一の分配係数を用いるモデルでは十分に説明できない。本研究では、種々の土壌を対象としてアメリシウムの移行挙動をカラム実験で調べ、さらにカラム内移行メカニズム及び収着メカニズムを検討した。また、実験結果に基づき、移行現象を説明するための現象解析モデルを提案し、その適用性を検証した。

35000951
Thermodynamic understanding on swelling pressure of bentonite buffer
佐藤 治夫
Proceedings of 15th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-15) (CD-ROM) , 7p.(2007) ; (JAEA-J 02512)
 スメクタイトは、地層処分において使用される人工バリア材及び埋め戻し材を構成する重要粘土鉱物である。本研究では、熱力学理論とスメクタイト中の層間水の熱力学データに基づいてベントナイト緩衝材の膨潤圧を解析した。スメクタイトの乾燥密度0.6-0.9Mg/m3の範囲において、含水比をパラメータにスメクタイト表面の水の相対部分モルギブスの自由エネルギー(ΔG)を測定した。ΔGは含水比の減少に伴い低下し、過去に報告されたクニピアFと同様な傾向であった。水と含水したスメクタイト間での平衡状態における水の化学ポテンシャルバランスからΔGに基づいて膨潤圧を計算し、さまざまな種類のベントナイトや種々の条件で取得された実測値と比較した結果、計算値は実測値と一致した。このことは、さまざまなベントナイトの圧縮条件における膨潤圧を含水比に対するΔGとの関係に基づいて評価できることを示している。さらに、膨潤圧に及ぼすイオン強度の影響やエンタルピー及びエントロピーについても検討する。

35000952
Establishing priorities for HLW R&D in the 21st century
梅木 博之; 内藤 守正; 牧野 仁史; 大澤 英昭; 中野 勝志; 宮本 陽一; McKinley, I. G.*
Proceedings of 15th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-15) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 02513)
 事業段階へ移行した21世紀に入ってから、日本の地層処分計画を取り巻く状況は急速に変化し、とりわけパブリックアクセプタンスへの関心が高まり、また原子力ルネサンスとも関連して処分技術に求められる要件への柔軟性を確保することの必要性が大きくなっている。このため、そのような複雑なプロジェクトを支援するための研究開発を進めるうえで、要件や成果の品質,知識ベースなどを体系的に管理することが極めて重要となってきている。本稿では、現行の4万本のガラス固化体を処分する処分場概念を出発点に、廃棄物の多様化,次世代の処分場概念とその構築に必要な設計/安全評価のツールとデータベース,意思決定の支援に必要な管理ツールなど、幾つかの重要な課題について包括的に論じる。

35000953
SIMMER-III; A Coupled neutronics-thermohydraulics computer code for safety analysis
山野 秀将; 飛田 吉春; 藤田 哲史; 鈴木 徹; 神山 健司; 守田 幸路*; Maschek, W.*; Pigny, S.*
Proceedings of 15th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-15) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 02514)
 ナトリウム冷却高速炉の炉心損傷事故における複合現象を模擬するため、JAEAでは二次元多速度場多相多成分オイラー型流体力学コードに燃料ピン及び空間・エネルギー依存核計算モデルを結合したSIMMER-IIIコードを開発してきている。最近では、SIMMER-IIIと同等の物理モデルを有しつつ三次元化されたSIMMER-IVも開発された。本論文では、SIMMER-III/IVのモデル及び手法について、最近のモデル改良を強調して簡単にレビューする。また、コード検証計画の主要な成果を述べた後、コード適用計算例について記述する。SIMMER-IVを用いた三次元計算によって、より現実的な事故シナリオを描くとともに、この計算結果はまた事故後物質移動・再配置過程を研究するための崩壊炉心状態に供される。

35000954
Two-dimensional stress corrosion cracking model for reactor structural materials
五十嵐 誉廣; 三輪 幸夫; 加治 芳行; 塚田 隆
Proceedings of 15th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-15) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 02515)
 粒界型応力腐食割れ(IGSCC)の特徴の一つである分岐き裂を再現する2次元粒界型応力腐食割れ進展モデルの開発を行った。モデルでは、粒界の長さ,粒界強度などの「結晶粒スケール」の要因によりIGSCC進展が実現される。特に、粒界腐食と粒界に作用するせん断応力をパラメータとしてモデルに導入した。本モデルを用いて、幾つかの荷重条件,せん断応力条件におけるIGSCC進展の計算機シミュレーション解析を行った。解析結果より、き裂分岐は粒界に対するせん断応力の影響により実現されること、そしてせん断応力と粒界腐食の相乗的影響によって、荷重方向に対し斜めに進展する傾向が見られることがわかった。

35000955
Present state of crack growth and crack initiation studies performed in the Halden reactor
中野 純一; Karlsen, T. M.*; Hogberg, N. W.*
Proceedings of 15th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-15) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 02516)
 照射誘起応力腐食割れ(IASCC)へ影響を及ぼす因子を評価するため、OECDハルデン炉プロジェクトは、ハルデン沸騰水炉において照射下き裂進展及びき裂発生研究を実施している。き裂成長研究においては、9.0×1020〜1.2×1022n/cm2(E>1MeV)の範囲の中性子フルエンスを有する照射済みステンレス鋼、すなわち、316NG, 347, 304L及び304からコンパクト引張(CT)試験片を作製し、沸騰水型炉(BWR)及び加圧水型炉(PWR)を模擬した環境中においてき裂成長を測定した。き裂発生試験においては、8.0×1021n/cm2(E>1MeV)まで照射された304Lステンレス鋼から微小引張試験片を作製し、それらをBWR模擬した環境中に保持した。2002年5月の試験開始より試験片の破断を示す5つの信号が検知されている。

35000956
Study on thermal stratification in a compact reactor vessel; Effects of Richardson number and upper plenum geometries
中山 王克; 小川 博志*; 木村 暢之; 林 謙二; 飛田 昭; 上出 英樹
Proceedings of 15th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-15) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 02517)
 局所的に鉛直方向の速い流れを有する原子炉容器におけるスクラム時温度成層化現象について、1/10スケール炉上部プレナム試験体を用いた原子炉トリップ時の温度分布計測を実施した。その結果、界面の上昇速度がリチャードソン数によって整理でき、界面の温度勾配は温度差及び炉心出口流速によって影響されることがわかった。また、プレナム内の構造物位置を変更することで、界面の温度勾配は大きく緩和されることがわかった。

35000957
Development of fast reactor structural integrity monitoring technology using optical fiber sensors
松場 賢一; 伊藤 主税; 川原 啓孝; 青山 卓史
Proceedings of 15th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-15) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 02518)
 ナトリウム冷却型高速炉では、運転温度が高温であり、原子炉出入口温度差も大きいため、構造材に有意な熱応力が発生する。したがって、高速炉の構造健全性を担保するためには、1次系配管の温度変化や熱応力を監視することが重要である。構造健全性監視技術を高度化する手段として、温度やひずみの連続分布,変位や振動を測定可能な光ファイバを適用することが有効である。高速実験炉「常陽」では、高速炉の構造健全性監視への光ファイバの適用性実証を目的として、FBGセンサを用いた1次系配管の変位及び振動の測定を実施している。原子炉運転に伴う高放射線線量率環境下で測定を行い、原子炉運転約120日分に相当する積算γ線線量4×104Gyまでの照射では、反射光強度の低下による測定への有意な影響はなかった。また、1次系配管サポートの変位測定結果は、当該部の温度変化量に線熱膨張係数を乗じて求めた熱変位量の計算値とおおむね一致した。さらに、配管サポートの振動スペクトルの主なピーク周波数が加速度計による測定結果とおおむね一致した。これらの測定結果は、高放射線環境下の変位や振動監視への光ファイバの適用性を示すものである。

35000958
Grouting methodology in crystalline rock
延藤 遵*; 小林 信二*; 西垣 誠*; 見掛 信一郎; 佐藤 稔紀
Proceedings of 15th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-15) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 02519)
 地層処分技術に関する研究開発の一環として、湧水抑制対策等の施工技術に関する研究を実施している。本報告においては、まず深部岩盤における坑道掘削時に想定されるグラウト工法の適用形態を整理し、適用形態に応じたグラウト材料の候補材料を整理している。次に、セメントやベントナイト材料等の懸濁型グラウト材を用いて高い止水性能を実現する方法について検討した。最後に、水平坑道におけるプレグラウト工法に焦点を当てて、効率的な注入方法について検討した。

35000959
Application of bias factor method with use of virtual experimental value to prediction uncertainty reduction in void reactivity worth of breeding light water reactor
久語 輝彦; 森 貴正; 小嶋 健介; 竹田 敏一*
Proceedings of 15th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-15) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 02520)
 MOX燃料稠密格子軽水炉のためにFCA22-1炉心を用いた臨界実験結果を活用して、水冷却増殖炉のボイド反応度価値の予測誤差の低減を評価した。本研究では、仮想実験値として累乗化した実験値を用いてバイアス因子法を拡張した。この拡張による実機炉心特性の予測誤差の低減について定式化した。数値計算の結果、本概念により誤差が低減することが示された。本概念の導入は、実験データを有効に活用するとともに、バイアス因子法の適用方法を拡張するものであると結論づけられる。

35000960
ITB-events and their triggers in T-10 and JT-60U
Neudatchin, S. V.*; 滝塚 知典; 坂本 宜照; 林 伸彦; 諌山 明彦; Kislov, A. Ya.*; Krylov, S. V.*; Pavlov, Yu. D.*; 白井 浩; Borshegovskii, A. A.*
Proceedings of 21st IAEA Fusion Energy Conference (FEC 2006) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 02521)
 内部輸送障壁(ITB)の内部及び近傍で発生する非局所的な分岐現象であるITB事象はJT-60Uにおける負磁気シアや正磁気シアプラズマで見つけられた。T-10におけるオフセンター電子サイクロトロン加熱プラズマ中の加熱切断で生じる内向き冷パルス伝播が中心付近で急激に伝播が遅くなることが観測されているが、これもITB事象のひとつと考えられる。このITB事象は安全係数q=1面が存在するとき発生しやすい。JT-60Uの負磁気シアプラズマ中の低パワー加熱時に起きるITB事象は最小安全係数が3.5, 3, 2.5を横切るときに多く観測される。また、JT-60Uにおいてトロイダルモード数n=1の内部MHD活動もITB事象の引き金となっている。この論文では、負磁気シアプラズマ中のq=2.5面で発生する小内部崩壊もITB事象の引き金になることを示す。また、正磁気シアの高ポロイダルベータプラズマ中では周辺局在モード(ELM)に相関してITB事象が起きている。このとき、小半径方向0.3〜0.7の広い範囲で熱流が急激に減少している。この新しく見つけられたITB事象は、ELM様のMHD揺動によるITB形成制御の可能性を示唆している。

35000961
Studies on behavior of tritium in components and structure materials of tritium confinement and detritiation systems of ITER
小林 和容; 磯部 兼嗣; 岩井 保則; 林 巧; 洲 亘; 中村 博文; 河村 繕範; 山田 正行; 鈴木 卓美; 三浦 秀徳*; 鵜澤 将行*; 西川 正史*; 山西 敏彦
Proceedings of 21st IAEA Fusion Energy Conference (FEC 2006) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 02522)
 トリチウム閉じ込め・除去は、核融合炉の安全性の要となる重要な課題である。本研究では、上記閉じ込め・除去システムの機器及び構造材料におけるトリチウムの挙動に関する基礎実験研究を行い、(1)トリチウムのコンクリート壁中の浸透挙動,(2)異常時の触媒性能における放出の恐れのあるSF6ガスのトリチウム除去設備に対する触媒被毒効果の影響,(3)除去設備の再生水を処理するシステムの主要機器である電解セルの対放射線耐久性を明らかにした。

35000962
Prevention of the 2/1 neoclassical tearing mode in DIII-D
Prater, R.*; La Haye, R. J.*; Luce, T. C.*; Petty, C. C.*; Strait, E. J.*; Ferron, J. R.*; Humphreys, D. A.*; 諌山 明彦; Lohr, J.*; 長崎 百伸*; Politzer, P. A.*; Wade, M. R.*; Welander, A. S.*
Proceedings of 21st IAEA Fusion Energy Conference (FEC 2006) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 02523)
 DIII-Dでは、ITERハイブリッドシナリオと同等の運転領域で局所的な電子サイクロトロン電流駆動(ECCD)を用いることにより、m/n=2/1の新古典テアリングモード(NTM)の発生を予防することに成功した(mはポロイダルモード数,nはトロイダルモード数)。モーショナルシュタルク効果計測の結果を用いて実時間で平衡計算を行いq=2の場所を追跡することが可能になった結果、NTMが発生していなくてもq=2の場所に電流駆動を行うことが可能となった。この制御システムを用い、ITERハイブリッドシナリオと同等の運転領域で2/1モードを回避し、良好な閉じ込め性能を1秒間以上維持することに成功した。このときのベータ値は、導体壁がないときの理想キンクモードの安定性限界と同等であった。またこの実験結果は、修正Rutherford式を使ったモデル計算でよく説明できることも明らかになった。

35000963
Integrated simulation of ELM energy loss determined by pedestal MHD and SOL transport
林 伸彦; 滝塚 知典; 小関 隆久; 相羽 信行; 大山 直幸
Proceedings of 21st IAEA Fusion Energy Conference (FEC 2006) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 02524)
 プラズマ性能に対する周辺部局在モード(ELM)とスクレイプオフ層(SOL)の自己矛盾のない効果を明らかにするために、ピーリングバルーニングモード安定性コードとSOLモデルを統合化した輸送シミュレーションコードを開発した。実験的に観測されたELMによるエネルギー損失の衝突周波数依存性が、ブートストラップ電流とSOL輸送の両方により引き起こされることを明らかにした。ブートストラップ電流は、衝突周波数の増加とともに、減少し、ペデスタル領域の磁気シアを強める。増加した磁気シアは、不安定モードの固有関数の幅を狭め、その結果、ELMにより増幅される輸送の範囲とセパラトリックス近傍の値を小さくする。一方、ELM崩壊が起きると、エネルギーがSOLに流れ、SOLプラズマ温度が急激に上昇する。上昇したSOL温度は、セパラトリックス端の勾配を平坦化し、ELMエネルギー損失を低下させる。磁力線平行方向の電子の熱伝導がSOL温度の上昇を決めるので、高衝突周波数では、熱伝導が低下し、SOLの電子温度がさらに上昇する。以上2つの物理機構により、ELMエネルギー損失が、衝突周波数の増加とともに、減少することがわかった。

35000964
Evaluating electron cyclotron current drive stabilization of neoclassical tearing modes in ITER; Implications of experiments in ASDEX upgrade, DIII-D, JET, and JT-60U
La Haye, R. J.*; Prater, R.*; Buttery, R. J.*; 林 伸彦; 諌山 明彦; Maraschek, M. E.*; Urso, L.*; Zohm, H.*
Proceedings of 21st IAEA Fusion Energy Conference (FEC 2006) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 02525)
 新古典テアリングモード(NTM)は理想MHD限界より低いベータ領域で発生してプラズマの性能を制限する。本論文では、ASDEX-Upgrade, DIII-D, JET, JT-60UにおけるNTM実験の結果を反映したNTM安定化のモデルを構築し、ITERにおける電子サイクロトロン電流駆動(ECCD)によるNTM安定化の予測計算を行った結果を記述している。NTMに起因する磁気島幅は、ある値まで小さくなったときに自発的に消滅するという性質がある。ASDEX-Upgrade, DIII-D, JETにおいてベータ値を徐々に下げて磁気島幅を小さくした実験、及び、ASDEX-Upgrage, DIII-D, JT-60UにおけるECCDによるNTM安定化実験の結果から、この幅はイオンバナナ幅の2倍に比例することが実験的に明らかになった。この結果を反映し、ITERの前側ミラー駆動方式、及び後側ミラー駆動方式のECCDシステムを用いたNTM安定化のシミュレーションを行った。その結果、前側ミラー駆動方式ではECCD幅が狭くできるために、安定化に必要なパワーが小さくできる反面、その場合はECCD位置のずれの許容範囲は小さくなることが明らかになった。

35000965
Development of advanced tritium breeders and neutron multipliers for DEMO solid breeder blankets
土谷 邦彦; 星野 毅; 河村 弘; 三島 良直*; 吉田 直亮*; 寺井 隆幸*; 田中 知*; 宗像 健三*; 加藤 茂*; 内田 宗範*; 中道 勝; 山田 弘一; 八巻 大樹; 林 君夫
Proceedings of 21st IAEA Fusion Energy Conference (FEC 2006) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 02526)
 原型炉用増殖ブランケットに必要な「高温・高照射環境に耐えうる先進トリチウム増殖材料及び中性子増倍材料」の開発を全日本規模の産学官連携のもとで実施した。それらの開発に関する最近の成果について報告する。トリチウム増殖材料に関しては、Li2TiO3に酸化物を添加した材料の開発を行い、少量(約1mol%)の酸化物(CaO等)を添加することで、水素を添加したスイープガス中でもTiの還元を抑制することができる材料の開発に成功した。中性子増倍材料に関しては、ベリリウム金属間化合物であるBe12Tiに着目し、各種特性を定量的に評価し、比強度が高いこと、高い耐酸化特性を有していること、1%の水蒸気を含んだアルゴンガス雰囲気中における水素生成速度が1/1000以下になることなどを明らかにした。以上の知見により、原型炉用増殖ブランケットの開発に明るい見通しを得た。

35000966
Interplay between zonal flows/GAMs and ITG turbulence in tokamak plasmas
宮戸 直亮; 岸本 泰明; Li, J. Q.*
Proceedings of 21st IAEA Fusion Energy Conference (FEC 2006) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 02527)
 トカマクプラズマ中の帯状流の振舞いと、それが乱流輸送に及ぼす影響を静電的なイオン温度勾配駆動乱流のグローバル流体シミュレーションによって調べた。高安全係数領域で現れるGeodesic Acoustic Mode(GAM)と呼ばれる、時間的に振動する帯状流はプラズマの小半径方向に同一の周波数を持つという非局所性を示す。正磁気シアトカマクにおいてρ*=ρ i/aiはイオンのラーモァ半径,aはプラズマの小半径)を変化させたシミュレーションを行い、非局所性を特徴づける長さΔ rが√ρi aに比例することを明らかにするとともに、GAMが支配的な高輸送領域と静的帯状流が支配的な低輸送領域とをつなぐ領域の長さがΔ rと関係があることを示した。また、反転磁気シアプラズマにおける帯状流の振る舞いについても明らかにした。

35000967
Radiation processes of impurities and hydrogen in detached divertor plasmas of JT-60U
仲野 友英; 久保 博孝; 朝倉 伸幸; 清水 勝宏; 木島 滋; 藤本 加代子; 川島 寿人; 東島 智
Proceedings of 21st IAEA Fusion Energy Conference (FEC 2006) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 02528)
 MARFEを伴う非接触ダイバータプラズマで、C4+と電子の体積再結合により、C3+が生成されることが初めて観測された。C4+からC3+への再結合束はC3+からC4+への電離束と同程度であることに加え、2次元分光計測の結果をもとに発光の空間分布をコンピュータ・トモグラフィーを用いて再構築したところ体積再結合が発生するのはX点直上で、電離が発生する場所の直下であることがわかった。この結果から、ダイバータプラズマの放射パワーの6割から8割を占める、C3+は体積再結合によりおもに生成される。

35000968
Turbulent transport associated with GAM dynamics near critical gradient regime; GAM intermittency
岸本 泰明; 三木 一弘*; 宮戸 直亮; Li, J. Q.*; Anderson, J.*
Proceedings of 21st IAEA Fusion Energy Conference (FEC 2006) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 02529)
 トロイダルイオン温度勾配駆動乱流のグローバルジャイロ流体シミュレーションを行い、臨界勾配領域近傍での帯状流生成及びgeodesic acoustic mode(GAM)に関連した新しいタイプの輸送の間欠的ダイナミクスを発見した。間欠的なバーストは、乱流エネルギーがある閾値を超えたときに起きる、空間的に伝播するGAMの発生でトリガーされる。静的な帯状流は準周期的な間欠的バーストをいくつも経て徐々に成長し、乱流揺動は徐々に抑えられる。これは線形臨界勾配の非線形的な上方シフト、いわゆるDimitsシフトにつながる。間欠性の周期は温度勾配の増加とともに短くなる。シミュレーションで得られた間欠的ダイナミクスを定性的に記述するモデルも開発し、背景にある物理メカニズムを議論する。

35000969
Inter-machine comparison of intrinsic toroidal rotation
Rice, J. E.*; Ince-Cushman, A.*; de Grassie, J. S.*; Eriksson, L.-G.*; 坂本 宜照; Scarabosio, A.*; Bortolon, A.*; Burrell, K. H.*; Fenzi-Bonizec, C.*; Greenwald, M. J.*; Groebner, R. J.*; Hoang, G. T.*; 小出 芳彦; Marmar, E. S.*; Pochelon, A.*; Podpaly, Y.*
Proceedings of 21st IAEA Fusion Energy Conference (FEC 2006) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 02530)
 多くのトカマクで観測される自発的なトロイダル回転速度のパラメータ依存性を検討し、将来の装置への外挿を試みた。JET, Alcator C-Mod, Tore Supra, DIII-D, JT-60U, TCVでは共通して自発回転速度が蓄積エネルギーに比例することがわかった。また、幾つかの装置ではプラズマ電流に反比例する傾向を示した。これらの依存性を無次元パラメータで表現すると、マッハ数が規格化ベータ値に比例すると解釈できる。この傾向だけでは、バルーニング不安定性のようなMHD現象が回転を駆動する乱流過程に作用すると結論づけることはできない。しかしながら、この依存性から規格化ベータ=2.6のITERでは自発回転速度のマッハ数が0.02に達すると予測されるため、外部からの運動量入力がなくても自発回転だけで抵抗性壁モードの安定化が期待されると解釈できる。

35000970
Active control of neoclassical tearing modes toward stationary high-beta plasmas in JT-60U
諌山 明彦; 大山 直幸; 浦野 創; 鈴木 隆博; 武智 学; 林 伸彦; 長崎 百伸*; 鎌田 裕; 井手 俊介; 小関 隆久; JT-60チーム
Proceedings of 21st IAEA Fusion Energy Conference (FEC 2006) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 02531)
 新古典テアリングモード(NTM)はベータ値の高い運転領域で発生しプラズマの高性能化を阻害することから、能動的な制御手法を確立することが非常に重要である。JT-60では、プラズマ中心部にco方向の電子サイクロトロン電流駆動(ECCD)を行うことによりm/n=3/2のNTMの成長を能動的に制御できることを世界で初めて明らかにした(mはポロイダルモード数,nはトロイダルモード数)。また、安全係数qが2の場所に局所的にECCDを行うことによりm/n=2/1のNTMを完全に安定化することに成功するとともに、ECCD位置がq=2の場所からずれたときの安定化効果に関して、(1)ECCD位置のずれが磁気島幅の半分程度(約5cm)以内のときのみ安定化効果が強く現れる,(2)ECCD位置が磁気島幅程度ずれたときには不安定化効果が現れる、ということを実験的に明らかにした。さらに、NTMを記述する修正Rutherford式を輸送コードTOPICSに組み込みシミュレーションを行った結果、上記実験結果と良い一致を示すことが明らかになった。

35000971
Simulations on the nonlinear mode coupling in multiple-scale drift-type turbulence with coherent flow structures
Li, J.*; 鵜沢 憲*; Lin, Z.*; 岸本 泰明; 宮戸 直亮; 松本 太郎; Dong, J. Q.*
Proceedings of 21st IAEA Fusion Energy Conference (FEC 2006) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 02532)
 トカマクプラズマ中の多階層乱流において、定常波として振る舞う2次の非等方コヒーレント構造、すなわち、帯状流/平衡流,ストリーマー及び低周波長波長の揺動などのダイナミクスを3次元シミュレーション及び2次元モデル解析によって調べる。とりわけ、イオン温度勾配(ITG)及び電子温度勾配(ETG)駆動乱流と2次構造間の相互作用における非線形モード間結合の役割を議論する。非線形モード間結合の重要性を示す2つの結果を得た。(1)2次的な帯状流と長波長モードが非線形モード間結合を通して生成される一方、それらは乱流の慣性領域のスペクトル構造をべき則から指数則へと変化させる。(2)最も不安定なETGモードから駆動されるストリーマー様の長波長揺動が、トカマクプラズマにおけるトロイダルモード結合に相当するモード間結合を通してスラブETG乱流を飽和させうる。これは低いETG揺動レベルと電子輸送を示すものである。さらにITG乱流により生成される帯状流を、ETG乱流での帯状流生成における平衡流とみなした場合の効果も、非線形モード間結合の役割に重きをおいて議論する。

35000972
Extended steady-state and high-beta regimes of net-current free heliotron plasmas in the large helical device
本島 修*; 山田 弘司*; 小森 彰夫*; 大藪 修義*; 金子 修*; 川端 一男*; 三戸 利行*; 武藤 敬*; 居田 克巳*; 今川 信作*; 長山 好夫*; 下妻 隆*; 渡邊 清政*; 増崎 貴*; 宮沢 順一*; 森崎 智宏*; 森田 繁*; 大舘 暁*; 大野 哲靖*; 斉藤 健二*; 榊原 悟*; 竹入 康彦*; 田村 直樹*; 東井 和夫*; 時谷 政行*; 横山 雅之*; 吉沼 幹朗*; 池田 勝則*; 諌山 明彦; 石井 亀男*; 久保 伸*; 村上 定義*; 長崎 百伸*; 関 哲夫*; 高畑 一也*; 竹永 秀信; LHD実験グループ*
Proceedings of 21st IAEA Fusion Energy Conference (FEC 2006) (CD-ROM) , 12p.(2007) ; (JAEA-J 02533)
 大型ヘリカル装置(LHD)では、加熱パワーの増大及び粒子の排気/供給能力の向上と併せ、無電流ヘリオトロンプラズマの革新的な運転シナリオの開発を行った。その結果、高密度,長時間運転,高ベータに関して運転領域を拡大することに成功した。LHDにおける多様な研究の結果、無電流ヘリオトロンプラズマの特長が明らかになった。特に、ローカルアイランドダイバータによる排気とペレット入射によるプラズマ中心部への粒子供給を組合せることにより内部拡散障壁(IDB)を形成し、5×1020m-3という超高密度のプラズマが得られた。この結果は魅力的な超高密度核融合炉へ道を開くものである。また、4.5%の体積平均ベータ値や、54分間(総入力エネルギー: 1.6GJ,平均パワー: 490kW)の放電維持時間を得ることにも成功した。本論文では、IDB,高ベータプラズマ,長時間運転に関する最近2年間の成果を概括する。

35000973
Numerical analysis of unsteady gas entrainment phenomena using dynamic SGS model
坂井 雅之*; 田中 伸厚*; 大島 宏之
Proceedings of 5th Korea-Japan Symposium on Nuclear Thermal Hydraulics and Safety (NTHAS-5) , p.301-304(2006) ; (JAEA-J 02534)
 工業機器の経済性を向上させるためには、機器中に存在する気体又は液体の流れの品質を高めることが重要である。本研究は、局所スケール間平衡仮定(LISEA)に基づく乱流渦流れ解析コードを用いて、非定常ガス巻込み現象の解析を行い、LES解析を適用性やメッシュ分割に対する感度について調査を行った。その結果、次の結果が得られた。(1)LESはDNSよりもメッシュ分割の影響を受ける。そのため、適切な解を得るためにはメッシュ分割に対する十分な検討が必要である。(2)本研究の範囲においては、DNSはメッシュ分割の影響をあまり受けない。(3)LESを用いた解析において、適切な解析パラメータを設定する必要がある。

35000974
Direct numerical simulation of gas entrainment from free-surface
功刀 資彰*; 河原 全作*; 小瀬 裕男*; 伊藤 啓; 堺 公明
Proceedings of 5th Korea-Japan Symposium on Nuclear Thermal Hydraulics and Safety (NTHAS-5) , p.385-390(2006) ; (JAEA-J 02535)
 従来の設計と比較して、コンパクト化・高冷却材流速化したFBRを設計するために、原子炉内の冷却材自由液面において生じ、ホットレグ配管を通じて熱交換器に気泡を導く可能性のあるカバーガスの巻込みについて、その発生基準を明確化する必要がある。ガス巻込みを生じる流動形態として、くぼみ渦,潜り込み及び液面の乱れ、の3つが存在すると考えられている。本研究では、くぼみ渦によるガス巻込み現象を評価するため、MARS法(Multi-interfaces Advection and Reconstruction Solver)を用いて、非定常渦流れによるガス巻込み実験を対象とした直接数値解析を実施した。本論文では、くぼみ渦によるガス巻込み現象発生の予測に対する直接数値解析手法の適用性が述べられる。

35000975
Application of supercritical fluid extraction to metal separation in the field of nuclear technology
目黒 義弘; 富岡 修; 高橋 邦明; 和田 隆太郎*; 山本 誠一*; 福里 隆一*
Proceedings of 8th International Symposium on Supercritical Fluids (ISSF 2006) (CD-ROM) , 6p.(2006) ; (JAEA-J 02536)
 反応容器の大きさが約4000cm3の工学規模の超臨界二酸化炭素リーチング装置を作成した。この装置に、物質移動速度を促進するための、超音波振動,圧力変調,攪拌装置を設置した。ウラン酸化物を付着させた海砂,焼却灰,多孔質アルミナブロックを模擬試料として作成し、同装置を用いてこれら試料から硝酸-トリブチルリン酸錯体を反応剤として含む超臨界二酸化炭素中へのウランの分離を試みた。一回の分離試験に用いる反応剤の量を150g、錯形成工程の圧力を15MPa、温度を60℃、時間を15分とし、溶解操作の圧力を20MPa、温度を60℃、使用CO2量を15kgとして、ウランの分離を行った結果、数回の分離操作によって海砂試料及びアルミナブロック試料から99%以上のウランを分離することができた。物質移動速度促進装置を作動させることによって、ウランの分離効率が向上することを確認した。これによって焼却灰試料からも99%以上のウランを分離できた。

35000976
Knowledge retention at JAERI and 8 resembled foreign research institutes
柳澤 和章
Proceedings of American Nuclear Society Conference on Nuclear Training and Education (CONTE 2007) (CD-ROM) , p.93-94(2007) ; (JAEA-J 02537)
 原子力施設における研究活動の結果から輩出された貴重で保存可能な知識は、明確な研究論文という形で確保されるべきである。本報は、旧日本原子力研究所及び国外の8類似研究機関で保存されている研究論文を使い、計量書誌学的な方法で研究機関比較を実施した。その結果、旧日本原子力研究所のみならず対象とした8類似国外研究機関においては、INIS及びECDというデータベースの形式により50年以上にわたって原子力知識が捕獲されていることを見いだした。捕獲知識は論文を使った研究機関間の比較をできるレベルにあった。そこで、1978年から2002年という期間で論文数による機関比較を実施してみたところ、いずれのデータベースでもORNLが第1位であった。旧日本原子力研究所は、INISで第2位、ECDでは第7位であった。

35000977
Status of reduced enrichment program for research reactors in Japan
木名瀬 政美; 佐川 尚司; 中込 良廣*; 宇根崎 博信*
Proceedings of International Meeting on Reduced Enrichment for Research and Test Reactors 2006 (RERTR 2006) (Internet) , 10p.(2006) ; (JAEA-J 02538)
 日本におけるRERTRに関連する研究炉はJRR-3, JRR-4, JMTR及びKURである。JRR-3, JRR-4及びJMTRは既に低濃縮化されており、低濃縮化後燃料に関する問題は生じていない。KURは、低濃縮化に向け2006年2月に運転を一旦停止し、今後、設置許可変更を経て、炉心全体の低濃縮化を2008年までに行う予定である。また、U.S.のFRRSNFA計画に基づき行われている研究炉の使用済燃料の対米輸送について、JRR-3, JRR-4及びJMTRは継続して使用済燃料の輸送を行う予定であり、KURは2008年3月を目標にすべての高濃縮燃料をU.S.に輸送する。

35000978
A Three-dimensional meso-scale modeling for helium bubble growth in metals
鈴土 知明; 蕪木 英雄; 若井 栄一
Proceedings of Joint International Topical Meeting on Mathematics & Computations and Supercomputing in Nuclear Applications (M&C+SNA 2007) (CD-ROM) , 10p.(2007) ; (JAEA-J 02539)
 金属中のヘリウムバブル成長を計算機シミュレーションするための、モンテカルロ法を用いた3次元メソスケールシミュレーション法を提案する。このモデルの主要なメリットはTEMの画像から得られた微細構造と計算から得られた微細構造を視覚的に比較できることである。また、単純なモデリング法を用いているためパラメータ調整によって容易にモデルを制御することができる。シミュレーション結果の正しさは理想気体と気泡の平衡論から検証することができる。

35000979
A Challenge for computing in the 21st century; Radwaste knowledge management
梅木 博之
Proceedings of Joint International Topical Meeting on Mathematics & Computations and Supercomputing in Nuclear Applications (M&C+SNA 2007) (CD-ROM) , 11p.(2007) ; (JAEA-J 02540)
 廃棄物処分を含む放射性廃棄物管理は、ほかのほとんどの産業に比べ、より広範に渡る学際的な知識を必要とする。また、100年にも渡る事業期間とその後100万年に渡る長期安全性確保という点で、比類のない時間スケールが対象となる。最新の科学の進展に伴い指数関数的に増大する情報爆発の影響を何よりも受けることから、この分野における知識管理は大きな課題に直面している。本件は、これを打破すべく、原子力機構で現在取り組んでいる、データベース開発/管理,サーチエンジン,エキスパートシステム,管理支援システム,セキュリティ/アーカイブといった最先端の技術を駆使した知識管理システムの開発を紹介するものである。また、本件は限られた範囲をスコープに置いているが、その問題の多くはほかの産業に共通するものであることから、将来的には幅広く適用していくことが可能である。

35000980
科学技術図書館の現在と未来; 日本原子力研究所図書館の現場から
仲本 秀四郎*; 板橋 慶造; 石川 正; 米澤 稔; 羽原 正
科学技術図書館の現在と未来; 日本原子力研究所図書館の現場から , 185p.(2007) ; (JAEA-J 02542)
 専門図書館の現状と将来に関して、日本原子力研究所図書館という一図書館の現場から紹介する。本図書館は、原子力という比較的新しいビッグサイエンスを専門領域とし、研究所に付属し、その研究所は国策として建てられた国内最大級の研究組織で、地理的にも東京の東北120kmにある。置かれた立場と経緯から、国内原子力情報センターとしての活動を課せられて、図書資料の収集・保管・提供という図書館機能に加え情報発信機能を合わせて運営されており、国際協力の情報活動の役割も担っている。創設以来50年、図書館がいかに変貌したかについては、それなりの理由と環境があり、その経緯の説明を試みる。さらに、専門図書館の進むべき姿を模索する試みの一つとして、現在図書館が新たに取り組んでいる業務あるいは関連機関に進められているプロジェクトの一端を紹介する。

35000981
Pressure-induced structural changes in liquid III-V compounds
服部 高典; 多賀 尚仁*; 高杉 幸伸*; 木下 智裕*; 鳴島 崇*; 辻 和彦*; 亀掛川 卓美*
Photon Factory Activity Report 2005, Part A , p.42-43(2006) ; (JAEA-J 02547)
 放射光を用いたX線回折実験によって、液体III-V化合物の構造の圧力変化を約20万気圧まで系統的に調べた。得られた構造因子,二体分布関数から、高圧下における液体の構造は2つの局所構造(ベータスズ的構造とbcc的構造)によって記述でき、それらの割合が圧力とともに連続的に変化することがわかった。また、III-V化合物は、融解とともに金属的な伝導性を示すが、それにもかかわらず液体中においても広い圧力領域にわたって、共有結合的な構造を保持していることが明らかとなった。

35000982
「常陽」高経年化に対応した保守管理
須藤 正義; 市毛 聡; 礒崎 和則
UTNL-R-0459 , p.5_1-5_9(2007) ; (JAEA-J 02548)
 高速実験炉「常陽」は、昭和52年(1977年)4月に初臨界を達成して以来、これまで約30年間順調に運転してきた。「常陽」が今後も順調な運転を継続していくためには、高経年化対策を的確に実施していく必要があり、法令に基づき高経年化に対する評価を実施するとともに、保全計画を策定した。平成16年(2004年)11月26日から平成18年(2006年)5月15日の期間に行われた第14回施設定期検査では、この保全計画にしたがって、保全活動を実施した。本稿では、同保全活動の実施状況について、事例を交えて報告する。

35000983
「常陽」の燃料洗浄廃液の処理について
中野 朋之
UTNL-R-0459 , p.7_1-7_10(2007) ; (JAEA-J 02549)
 高速実験炉「常陽」の使用済燃料は、燃料洗浄設備において付着ナトリウムの洗浄を行った後、使用済燃料貯蔵プールに貯蔵している。この洗浄により発生した燃料洗浄廃液は、廃棄物処理建家(JWTF)に移送し、処理を行っている。燃料洗浄廃液は、高放射性物質濃度の強アルカリ性廃液であり、年間約30m3発生し、平成14年度にはMK-III 炉心移行のための燃料交換に伴い約130m3発生した。燃料洗浄廃液は、JWTFにおいて中空糸膜フィルタ処理,蒸発濃縮処理及びマイクロ波固化処理等を行い、放射性物質濃度の低減及び濃縮廃液の安定固化を図っている。中空糸膜フィルタ処理では500程度の除染係数が得られ、下流側の高線量化を防止した。また、蒸発濃縮処理装置及びマイクロ波固化装置等も安定した運転を継続している。MK-III炉心移行時の燃料洗浄廃液には、放射性物質濃度が高い外側反射体の洗浄廃液が多く含まれたことから、本廃液の受入れ処理に伴い設備機器等周辺の空間線量率が上昇したが、遮へい壁によって区画した部屋構造等により作業員の被ばくを防止するとともに、希硝酸等による系統洗浄により空間線量率を1/2〜1/3に低減した。

[ page top ]
JAEA > JAEA図書館 > JOPSS > 学会誌等掲載論文[バックナンバー] >  2007年6月
Copyright (C), Japan Atomic Energy Agency (JAEA)