学会誌等掲載論文
※下記の研究開発成果は資料名順に並んでいます。

2007年9月


35001296
Development of multilayer laminar-type diffraction gratings to achieve high diffraction efficiencies in the 1-8 keV energy region
石野 雅彦; Heimann, P. A.*; 笹井 浩行*; 畑山 雅俊*; 竹中 久貴*; 佐野 一雄*; Gullikson, E. M.*; 小池 雅人
Applied Optics 45(26), p.6741-6745(2006) ; (JAEA-J 02874)
 1-8keVのエネルギー領域のX線には、元素の吸収端が数多く存在することから元素分析や物質の構造解析等の分野で広く利用されている。しかし、回折格子分光器は2keVよりも高エネルギーでは効率が極端に減少することから実用上問題が多い。われわれは1-8keVのX線領域において高い効率を実現する回折格子として、多層膜をコーティングしたラミナー型多層膜回折格子の生成と評価を行った。多層膜としては1-8keVで高い反射率が期待できるW/C多層膜及びCo/SiO2多層膜を選択し、マグネトロンスパッタリング法及びイオンビームスパッタリング法により回折格子基板上に成膜を行った。そして、回折効率を米国ローレンスバークレー国立研究所の放射光施設であるAdvanced Light SourceのBL5.3.1, BL6.3.2, 立命館大学SRセンターのBL-11、そしてX線回折装置を用いて測定した。その結果、Co/SiO2多層膜回折格子が6.0keVにおいて47%の回折効率を、W/C多層膜回折格子が8.0keVにおいて38%の回折効率を示した。このことから、開発した多層膜回折格子は1-8keV領域において十分実用となることを見いだした。これらの測定結果は今まで報告されている効率の中で最も高い値である。そして粗さを考慮した理論計算からCo/SiO2多層膜回折格子の粗さをσ=0.7-1.3nm, W/C多層膜回折格子の粗さをσ=0.8-1.0nmと評価した。これは回折格子基板の持つ表面粗さから考えて、妥当な値である。

35001297
Phase-contrast X-ray imaging with intense Ar Kα radiation from femtosecond-laser-driven gas target
Chen, L. M.; 神門 正城; Ma, J.; 小瀧 秀行; 福田 祐仁; 林 由紀雄; 大東 出; 本間 隆之; 小倉 浩一; 森 道昭; Pirozhkov, A. S.; Koga, J. K.; 大道 博行; Bulanov, S. V.; 木村 豊秋; 田島 俊樹; 加藤 義章
Applied Physics Letters 90(21), p.211501_1-211501_3(2007) ; (JAEA-J 02875)
 新しい硬X線源を開発した。この線源は、高強度,準単色で、通常の研究室でいろいろな実験をするうえで十分に小型であるという特徴がある。70fs, 200mJのチタンサファイアレーザーを1017W/cm2の強度でArガスに照射し発生するX線で小動物のイメージングを行った。このX線のスペクトルは、Ar Kαの特性X線のピークを持ち、通常とは異なり連続X線が抑制され、高エネルギーX線成分が消えた構造を持っており、Kα X線に含まれる単位立体角あたりの光子数は、1010個という高い値であることがわかった。

35001298
Direct insertion of oxygen atoms into the backbonds of subsurface Si atoms using translational energies of oxygen atom beams
田川 雅人*; 横田 久美子*; 裙本 晋之助*; 十河 千恵*; 吉越 章隆; 寺岡 有殿
Applied Physics Letters 91(3), p.033504_1-033504_3(2007) ; (JAEA-J 02876)
 Si(001)表面のSi原子の直接酸化反応をエリプソメトリ及び放射光光電子分光法で研究した。その場エリプソメトリ測定から、2.7-5.0eVの運動エネルギーを有する酸素原子ビームでは酸化膜厚が0.6-0.7nmまで直線則に従うが、1.8eVの運動エネルギーでは0.3nmで直線則から外れることが明らかになった。これらの結果は、2.7-5.0eVの運動エネルギーを有する酸素原子ビームを用いるとSiのバックボンドが直接酸化されることを示唆している。

35001299
Heavy ion microbeam irradiation induces ultrastructural changes in isolated single fibers of skeletal muscle
日野 瑞城*; 和田 成一*; 多鹿 友喜*; 森村 吉博*; 浜田 信行*; 舟山 知夫; 坂下 哲哉; 柿崎 竹彦; 小林 泰彦; 依藤 宏*
Cell Structure and Function 32(1), p.51-56(2007) ; (JAEA-J 02877)
 単離骨格筋線維にマイクロビームにより重イオンを局所的に照射し、電子顕微鏡観察により超微形態変化を解析した。照射直後は細胞膜での不規則な形態の陥凹や突出,細胞内でのフィラメント配列の乱れが認められる一方で、時間経過に伴い多くの自食胞が観察された。このことから、重イオンは細胞の超微構造を変化させ、その回復には自家食が関与している可能性が示唆された。

35001300
Thermal-swing extraction of Cadmium(II) by thermosensitive polymer gel crosslinked with Encapsulating hexadentate ligand
竹下 健二*; 石田 圭吾; 中野 義夫*; 松村 達郎
Chemistry Letters 36(8), p.1032-1033(2007) ; (JAEA-J 02879)
 ポリ-N-イソプロピルアクリルアミド(NIPA)を六座の窒素ドナー配位子であるN,N,N',N'-tetrakis(4-propenyl-oxy-2-pyridylmethyl)ethylenediamine(TPPEN)によって架橋された感温性ゲルによる、Cd(II)の温度スイング抽出について調べた。Cd(II)は5℃において選択的に抽出され、40℃においてゲルが収縮すると放出された。高温時と低温時における分配比の違いは約30倍であった。

35001301
A Global collisionless PIC code in magnetic coordinates
Jolliet, S.*; Bottino, A.*; Angelino, P.*; Hatzky, R.*; Tran, T. M.*; Mcmillan, B. F.*; Sauter, O.*; Appert, K.*; 井戸村 泰宏; Villard, L.*
Computer Physics Communications 177(5), p.409-425(2007) ; (JAEA-J 02880)
 グローバルプラズマ乱流シミュレーションコードORB5について報告する。コードの大きな特徴は、直線磁力線座標を用い磁力線に沿ったフーリエフィルターを適用することによる数値ノイズ低減や時間ステップ幅の伸長により、処理性能を大幅に向上させたことである。また、もう一つの特徴は任意の軸対称理想MHD平衡配位を取り扱えることである。帯状流の解析解、及び、ほかのコードとの線形及び非線形テストにおいてコードの妥当性を検証した。

35001302
Computer modeling of radiation effects
大内 則幸
Data Science Journal (Internet) 6(Suppl.), p.S278-S284(2007) ; (JAEA-J 02881)
 低線量放射線により生物影響、つまり低線量リスク評価は医療被曝も含むさまざまな被曝や放射線防護の観点から年々重要性を増してきている。今回われわれが発表するのは、それら低線量の放射線影響を調べるためのコンピュータによるシミュレーションとモデル化についてである。コンピュータシミュレーション及びモデリングは、低線量の放射線影響のように実験的に調べるのが困難であるようなスケールの空間、及び時間領域の現象が対象であるため、非常に有効である。今回われわれの発表では、おもに分子原子レベルから細胞レベルまでに関する3つのステージ、(1)放射線によるDNA鎖切断,(2)分子動力学によるDNA損傷修復の研究,(3)細胞レベルの腫瘍形成ダイナミクス、に関する研究を紹介する。

35001303
Characterization of H-mode pedestal width based on hydrogen and deuterium discharges in JT-60U
浦野 創; 滝塚 知典; 鎌田 裕; 大山 直幸; 竹永 秀信; JT-60チーム
Europhysics Conference Abstracts (CD-ROM) 30I, 4p.(2006) ; (JAEA-J 02883)
 軽・重水素放電のHモード実験を実施することによって、ペデスタル幅の無次元パラメータ依存性を調べた。従来、このペデスタル幅の無次元パラメータ依存性は装置ごとに異なる結果が示されてきた。この相違が生じる原因の1つは、プラズマ境界近傍での規格化ポロイダルラーマ半径とポロイダルベータ値の強い正相関にあると思われる。そこで、本研究では規格化ポロイダルラーマ半径の質量依存性に着目し、軽水素及び重水素での実験を比較することによって、両無次元パラメータの分離を行った。もしペデスタル幅が規格化ポロイダルラーマ半径に依存する量であれば、軽・重水素の両放電において同一の周辺圧力勾配を維持しつつ、ペデスタル幅を一致させることは不可能であるが、実験結果は軽水素放電において重水素放電時の約2倍の加熱パワーでほぼ同一の周辺プラズマ分布を得、単純にペデスタル幅が規格化ポロイダルラーマ半径で評価できないことを示した。

35001304
Advanced diagnostics for burning plasma experiments
笹尾 真実子*; 山田 弘司*; 馬場 護*; 近藤 貴; Peterson, B. J.*; 川端 一男*; 間瀬 淳*; 吉川 正志*; 疇地 宏*; 東井 和夫*; 吉田 直亮*; 西谷 健夫; 草間 義紀
Fusion Science and Technology 51(2T), p.40-45(2007) ; (JAEA-J 02884)
 近い将来、ITERにおいて、燃焼プラズマの未知の物理課題を解明するための実験が行われる。これらの研究を実行するためには、核融合生成物を測定するシステムや、各種プラズマパラメーターを高分解能で高い信頼性で計測する、革新的な計測システムを開発することは必要不可欠である。「プラズマ燃焼のための先進計測」は2004年に文部科学省により科研費特定領域研究として認められ、現在20以上の研究がこの領域の下で進行中である。ITER計測に適用するために、幾つかの新概念の実現可能性が研究され、その計測システム実現のための構成要素の開発が進められている。

35001305
Progress in microwave diagnostics and physics issues in magnetically confined plasmas
間瀬 淳*; 近木 祐一郎*; 北條 仁士*; 吉川 正志*; 板倉 昭慶*; 長 照二*; 徳沢 季彦*; 川端 一男*; 長山 好夫*; 大山 直幸; Luhmann Jr., N. C.*; Park, H. K.*; Mazzucato, E.*
Fusion Science and Technology 51(2T), p.52-57(2007) ; (JAEA-J 02885)
 磁場閉じ込め装置で生成した高温プラズマを計測するためにマイクロ波技術が用いられてきた。干渉計,反射計,散乱計,放射計といった計測器によって、安定性・波動現象・揺動による異常輸送といったプラズマの物理研究のため、プラズマの主要パラメータが計測されている。近年のマイクロ波技術やコンピューター技術の進展に伴い、プラズマの2・3次元像を計測することが可能な次世代の計測技術が開花しつつある。その一つである、マイクロ波を用いたイメージング計測は、プラズマの物理研究を行ううえで期待されている。本論文では、最近のマイクロ波計測技術の進展とそれらを用いた実験結果についてレビューする。

35001306
Progress in development of edge Thomson scattering system for ITER
波多江 仰紀; 中塚 正大*; 吉田 英次*; 海老沢 克之*; 草間 義紀; 佐藤 和義; 勝沼 淳*; 久保村 浩之*; 信夫 克也*
Fusion Science and Technology 51(2T), p.58-61(2007) ; (JAEA-J 02886)
 ITERの周辺トムソン散乱計測装置では、測定領域としてr/a>0.9,電子温度0.05〜10keV,電子密度5×1018〜3×1020m-3,測定周期10ms,空間分解能5mmの測定性能が要求されている。本研究では、おもに計測用レーザーシステム,ポートプラグ内光学系(集光光学系,レーザー入射光学系)の検討を行った。計測用レーザーシステムには、波長1064nm,エネルギー5J,繰り返し周波数100Hz,パルス幅10nsの性能が要求される。この要求を満たすため、(1)高効率のCr,Nd:YAGセラミックスの使用,高平均出力レーザー増幅器で誘起される熱的影響はJT-60で実証された位相共役鏡で補正することを検討した。位相共役鏡を効果的に動作させるためには、特に単一縦モード性能が重要であり、レーザーダイオード励起のリング共振器型のレーザー発振器の試作を行った。さらに、フラッシュランプ励起方式ではフラッシュランプの寿命が問題となり、寿命の伸長を図るために、6本のフラッシュランプを内蔵した高平均出力レーザー増幅器の試作を行った。ポートプラグ内光学系はITER工学設計活動(EDA)中に初期検討が行われた。この検討では、(a)プラズマから比較的近い位置にレンズが配置されており、放射線による光学特性の劣化が懸念される。(b)真空境界がポートプラグの中央部に位置しており保守が容易でない、などの問題が考えられる。そこで、真空境界はポートプラグの終端部とし、ポート内光学系の最適化を行った。

35001307
CO2 laser collective Thomson scattering diagnostic of α-particles in burning plasmas
近藤 貴; 林 利光; 河野 康則; 草間 義紀; 杉江 達夫; 平田 真史*; 三浦 幸俊
Fusion Science and Technology 51(2T), p.62-64(2007) ; (JAEA-J 02887)
 国際熱核融合実験炉(ITER)等の燃焼プラズマにおける核融合生成α粒子の診断は、α粒子のプラズマ加熱と不安定性の励起への寄与の理解に必要であり、燃焼プラズマの実現にとって重要である。しかしその有効な測定方法は確立されていない。そこで、二酸化炭素(CO2)レーザー(波長10.6μm)を用いた協同トムソン散乱(CTS)計測を開発している。CO2レーザーを用いたCTS計測は、レーザーのプラズマ中での屈折が小さく、プラズマ中のレーザー光の追跡が容易であるという特徴がある。CTS計測を実現させるために、高繰り返し横方向励起大気圧(TEA)炭酸ガスレーザーを開発した。CTS計測のために必要となる単一モード出力を得るために、不安定共振器を構成し、単一モードの種レーザーを入射した。これにより、10Hz周期で出力エネルギー10Jの単一モードレーザーを実現した。また、安定型共振器の構成では36Jの最大出力エネルギーが得られた。今後このレーザーを用いて、JT-60UトカマクにおいてCTS計測の原理実証試験を行う。また、CTS計測のタンデムミラー装置への応用について述べる。

35001308
Observation of radial particle transport induced by the fluctuation measured with a gold neutral beam probe
小島 有志; 石井 亀男*; 宮田 良明*; 垣内 秀人*; 海藤 展弘*; 吉川 正志*; 板倉 昭慶*; 市村 真*; 長 照二*
Fusion Science and Technology 51(2T), p.274-276(2007) ; (JAEA-J 02888)
 静電揺動や乱流による熱・粒子輸送は核融合プラズマにおいて重要なテーマの一つである。コアプラズマから周辺プラズマへの輸送など、揺動によって粒子や熱が輸送される過程は揺動の特徴やプラズマの分布によって異なるため、実験的に揺動輸送を評価することは、輸送制御に対する手がかりとなる。本研究ではミラー型プラズマにおけるドリフト波による揺動輸送を実験的に検討する。金の中性粒子ビームプローブは重イオンビームプローブの一種であり、ビーム強度から密度揺動、ビームエネルギーから電位揺動を同時計測し、コアプラズマにおける揺動粒子束を計測する唯一の手段である。本研究ではコアプラズマの密度,電位揺動の間の位相差を計測し、揺動と位相差の相関,揺動輸送との関連性を検討した。ドリフト波が成長するとともに揺動粒子束が発生し、その粒子束によって密度分布が緩和してドリフト波の成長が飽和する現象が見られ、揺動輸送自体が揺動の成長を妨げる可能性があることが知れた。

35001309
Progress on design and development of ITER equatorial launcher; Analytical investigation and R&D of the launcher components for the design improvement
高橋 幸司; 小林 則幸; 大森 順次; 鈴木 哲; 春日井 敦; 坂本 慶司
Fusion Science and Technology 52(2), p.266-280(2007) ; (JAEA-J 02889)
 ITER水平ECランチャー設計の進展について、フロントシールド設計の信頼性向上と可動ミラーの改良設計の構造成立性及び駆動機構開発を中心に記述する。フロントシールドについては、熱的構造に関する改良設計に対して電磁力解析を実施し、支持構造設計の指針を得た。可動ミラーについては、構造の簡素化を目的とした改良設計に対して熱・構造解析と電磁力解析を行った。最大応力は内部のステンレス製冷却管内面にて得られ336MPaとなることがわかった。一方、電磁力に伴うミラー上のトルクは700N・mで、いずれの値もミラーの構造に影響を及ぼすものではなく解析的に構造成立性を示す結果である。また、ミラーモックアップの実熱負荷実験(3000ショット)や冷却水供給用スパイラル配管の繰返し応力負荷試験(10万回)により、実験的にも構造成立性を示す結果も得ている。駆動機構開発では、駆動源として検討している超音波モータの構成材(一部は代替材)の中性子照射実験を行い、ITER運転期間中に想定している照射量でも材料特性に劣化がほぼないといった結果を得るとともに、次世代核融合炉における使用可能性を示唆する結果も得た。

35001310
Development of 241Am lung monitoring system using an imaging plate
廣田 昌大*; 栗原 治; 高田 千恵; 高崎 浩司; 百瀬 琢麿; 出路 静彦*; 伊藤 茂樹*; 佐瀬 卓也*; 西澤 邦秀*
Health Physics 93(1), p.28-35(2007) ; (JAEA-J 02890)
 イメージングプレートシステムを使用する遮へいを使わない新しい241Am肺モニタリングシステムが考案された。241Am肺を含むローレンス・リバモア国立研究所の実際的な胴体ファントムは遮光袋に入れられたイメージングプレートによって覆われた。イメージングプレートシステムは胴体ファントムの肺形の特徴を示す241Am肺画像を表した。60分間の照射による14Bq及び300分間で6Bqのイメージングプレートシステムの低い検出限界は、遮へいされた部屋にあるホスウィッチ検出器及びゲルマニウム検出器の検出限界と同じレベルであった。60分の照射のイメージングプレートシステムは241Am吸入による740Bqの年間の限度の約2%を検出した。イメージングプレートを使った肺モニタリングシステムは、241Am肺モニタリングに適用可能である。

35001311
Thermodynamic study on non-centrosymmetric superconductor UIr by ac calorimetry under high pressure
立岩 尚之; 芳賀 芳範; 松田 達磨; 山本 悦嗣; 池田 修悟; 大貫 惇睦*
High Pressure Research 26(4), p.471-474(2006) ; (JAEA-J 02891)
 結晶に反転対称性のない重い電子系超伝導物質CePt3SiとUIrについて行った高圧下比熱測定による研究結果について報告する。CePt3Siでは反強磁性秩序状態の臨界圧力PAFが0.6GPa程度であることが明らかとなった。一方超伝導相は常圧から1.5GPaまでの幅広い圧力範囲に存在し、新奇な超伝導を反映した大変特徴のある圧力相図が明らかにされた。UIrは常圧でキュリー温度TC1=46Kの強磁性物質である。高圧下比熱測定によりTC1の圧力依存性を調べた。その結果は過去の電気抵抗・交流磁化率測定によるものと一致した。

35001312
Synchrotron radiation Mössbauer spectroscopy using Doppler-shifted 14.4 keV single line 57Fe-Mössbauer radiation
三井 隆也; 瀬戸 誠; 増田 亮; 桐山 幸治; 小林 康浩*
Japanese Journal of Applied Physics, Part 2 46(28), p.L703-L705(2007) ; (JAEA-J 02893)
 従来の硬X線による吸収分光や非弾性散乱は、分光結晶の回折角変化で入射X線のエネルギーを変化させることでeV-meV分解能のスペクトル測定が行われる。一方、われわれがSPring-8で実用化したneV分解能を持つ超単色X線による分光測定では、neV以下での精密なX線エネルギー変調技術が必要となるが、回折角変化による従来の方法では実現不可能である。本研究では、運動するSi単結晶からのX線回折で生じる光のドップラー効果を利用した超精密X線エネルギー変調光学素子を開発し、neVのエネルギー分解能を有し、かつneV以下の精度でエネルギー変調可能なビームの生成に成功し、放射光メスバウアー分光の最初の測定を実現した。このようなビームを利用することで、超高圧,強磁場,超低温を組合せた多重極限条件下における吸収散乱(メスバウアー分光,非弾性散乱)による未踏研究が実現するものと期待される。

35001313
Hierarchical structure of niobate nanosheets in aqueous solution
山口 大輔; 宮元 展義; 小泉 智; 中戸 晃之*; 橋本 竹治
Journal of Applied Crystallography 40(s1), p.s101-s105(2007) ; (JAEA-J 02894)
 中性子,X線を使った超小角散乱,小角散乱法を相補的に活用し1nmから10μmの5桁に渡る空間スケールを横断的に観察することで、層状ニオブ酸化物結晶K4Nb6O17を水中で剥離して得られるナノシート(厚み1.6nm)が形成する液晶構造、及びその構造階層性を解明した。本研究ではナノシートサイズを数100nmから数μmに制御し、シートサイズが液晶の階層構造に及ぼす影響について以下の点を明らかにした。シートサイズより小さな100nm〜数nmの小角散乱の空間スケールでは、ナノシートが形成するラメラ状積層構造が観察された。ここではシート間距離、また積層構造の秩序性はシートサイズに大きく依存することが明らかとなった。一方、数100nm〜10μmの超小角散乱の空間スケールではナノシートと溶媒である水との間の濃度揺らぎに起因するフラクタル構造の存在を確認した。またこのフラクタル構造はシートサイズに依存しないことが明らかとなった。これらの液晶構造の階層性は、従来の光学顕微鏡などの巨視的観察では得ることのできない知見であり本国際会議で口頭発表する。

35001314
Wide-q observation from 10-4 to 2.0Å -1 using a focusing and polarized neutron small-angle scattering spectrometer, SANS-J-II
岩瀬 裕希; 小泉 智; 鈴木 淳市; 奥 隆之; 笹尾 一*; 田中 宏和*; 清水 裕彦*; 橋本 竹治
Journal of Applied Crystallography 40(s1), p.s414-s417(2007) ; (JAEA-J 02895)
 これまで推進してきたJRR-3に設置された小角散乱装置SANS-Jの高度化によって、測定可能な波数範囲を、3×10-4 Å -1から2Å -1と、従来の2ケタから4ケタに拡張することに成功したので、この成果について発表する。中性子集光物質レンズと高分解能二次元検出器を用いることで、低波数の観測限界を3×10-3Å -1から3×10-4Å -1に拡張することに成功した。さらに新規に設置した高角度検出器を活用することで、高波数の観測限界を0.2Å -1から2Å -1に拡張することに成功した。一台の小角散乱装置で、超小角領域を含む4ケタの波数領域を観測できる装置はこれまでに類がなく、世界に先駆けて実現した。

35001315
Synthesis, crystal structure and magnetic properties of Yb8Ag18.5Al47.5, Yb2Pd2Cd and Yb1.35Pd2Cd0.65
Dhar, S.*; 摂待 力生*; 大貫 惇睦; Galatanu, A.*; 芳賀 芳範; Manfrinetti, P.*; Pani, M.*
Journal of Magnetism and Magnetic Materials 308(1), p.143-152(2007) ; (JAEA-J 02896)
 本論文では以下の3つの新しいYb化合物の合成結果を報告する。本研究では単結晶及び多結晶試料の構造解析により、Yb8Ag18.5Al47.5(立方晶Yb8Cu17Al49-型), Yb2Pd2Cd(立方晶Mo2B2Fe-型)とYb1.35Pd2Cd0.65(正方晶MnCu2Al-型)の三つの新物質について構造パラメーター等が決定された。Yb8Ag18.5Al47.5とYb1.35Pd2Cdには等価な2つのYbイオンのサイトがある。磁化・比熱測定の結果から、4f電子と伝導電子の構成効果はYb8Ag18.5Al47.5において強く、Yb2Pd2Cdでは弱いことが明らかとなった。さらにYb2Pd2Cdでは重い電子系的振る舞いが観測された。C/Tの値は1.8Kで600mJ/molK2の値になり、電気抵抗は1.4Kから5Kまで温度に対して線型の依存性をする。一方、Yb1.35Pd2Cd0.65は1.4Kで磁気転移する。

35001316
Pressure effect of electrical resistivity and AC specific heat in CePtAl
中島 美帆*; 植田 泰輝*; 清水 克哉*; 中島 弘*; Thamizhavel, A.*; 立岩 尚之; 芳賀 芳範; 辺土 正人*; 上床 美也*; 摂待 力生*; 大貫 惇睦; 井澤 公一*; Knebel, G.*; Salce, B.*; Flouquet, J.*
Journal of Magnetism and Magnetic Materials 310(2, Part1), p.e9-e11(2007) ; (JAEA-J 02897)
 キャントした強磁性物質であるCePtAlについてダイヤモンドアンビルセルを用いた高圧下電気抵抗・比熱測定を行った。圧力が増加すると磁気転移温度TC1は単調に増加して8GPa以上で一定値を示す。さらに圧力を加えると転移温度は急激に減少し10.3から10.9GPaまでの狭い圧力範囲で消滅する。磁気臨界点は一次相転移点であると推測される。交流比熱測定でも類似の結果が得られた。

35001317
Electrical resistivity measurements of single crystalline α-Mn under high pressure
三宅 厚志*; 金政 泰介*; 八木 良平*; 加賀山 朋子*; 清水 克哉*; 芳賀 芳範; 大貫 惇睦
Journal of Magnetism and Magnetic Materials 310(2, Part1), p.e222-e224(2007) ; (JAEA-J 02898)
 アルファマンガンの単結晶試料を用いて高圧下電気抵抗測定を行った。アルファマンガンは転移温度95Kの反強磁性物質であり、結晶学的に異なる4つのマンガンサイトがある。アルファマンガンの磁気転移温度は加圧とともに低温側にシフトし、転移温度における鋭い抵抗異常は鈍いkinkへと変化し、異なる磁気秩序相が高圧下で形成されていることを示唆された。1.9GPaの相境界では、残留抵抗が急減に減少し、電気抵抗のT2の係数Aがピークを形成することが明らかにされた。

35001318
Cu NMR study in a heavy-electron system, CaCu3Ru4O12
加藤 治一*; 鶴田 拓也*; 西岡 孝*; 松村 政博*; 酒井 宏典; 神戸 振作
Journal of Magnetism and Magnetic Materials 310(2, Part1), p.251-253(2007) ; (JAEA-J 02899)
 f電子を含まないが重い電子系的な振る舞いを示すCaCu3Ru4O12においてCu NMR測定を行った。磁場掃印スペクトルは、軸対称性のない場合の核四重極相互作用による粉末図形として理解できることが明らかとなった。Cu核の電気四重極パラメータとナイトシフトが導かれた。

35001319
Elastic anomalies of UGe2
桑原 慶太郎*; 酒井 祟史*; 神木 正史*; 芳賀 芳範; 大貫 惇睦
Journal of Magnetism and Magnetic Materials 310(2, Part1), p.362-364(2007) ; (JAEA-J 02900)
 UGe2の超音波実験を4-120Kの範囲で行った。30Kの特性温度T*に着目した。3つのc11, c55, c66モードは温度降下とともに増大し、強磁性転移温度で異常を示した。c11モードのT*近辺の異常はブロードでT*が相転移温度ではないことが示唆される。c55c66モードの弾性定数はT*で何の異常も示さなかった。

35001320
9Be-NMR studies of the heavy-fermion superconductor UBe13
藤 秀樹*; 津川 敬彦*; 世良 正文*; 芳賀 芳範; 大貫 惇睦
Journal of Magnetism and Magnetic Materials 310(2, Part1), p.706-708(2007) ; (JAEA-J 02901)
 重い電子系超伝導物質UBe13について、0.35-1.5Kの温度範囲で、9Be-NMRスペクトルの角度依存性を調べた。[001]方向では9BeのNMRスペクトルが10のピーク(ライン)で構成される。1つはBe(I)から9つはより低対称のBe(II)サイトからの寄与であることがわかった。NMRスペクトルの角度依存性からNQRパラメーターを決定した。超伝導状態では9BeNMRのKnight shiftは全く変化ないことがわかった。この結果はスピン三重項の超伝導状態を示唆する。

35001321
NMR/NQR study of the quadrupole orders in binary uranium-palladium intermetallic compound
藤本 達也; 芳賀 芳範; 酒井 宏典; 徳永 陽; 神戸 振作; 大貫 惇睦*
Journal of Magnetism and Magnetic Materials 310(2, Part1), p.746-747(2007) ; (JAEA-J 02902)
 UPd3は3つの温度(TQ0=7.5K, TQ1=6.8K, TQ2=4.5K)で磁気・四極子複合転移を示す。TQ0は四極子自由度のみによる転移であり、偏極中性子回折(PND)や共鳴X線散乱(RXS)から準立方対称位置を占めるウラン副格子で(1/2,0,1/2)の周期性を持つ四極子秩序状態が実現していることがわかっている。一方、TQ1以下の温度では、その秩序状態が解明されているわけではない。まずPNDによると、TQ1の温度ではab面方向にTriple-q型の四極子秩序を持つと提案されているが、RXSによると(1/2,0,1/2)の周期性を保ったまま四極子モーメントが傾斜した状態にあると主張され、互いの意見が分かれている。さらにTQ2以下になると非常に小さな磁気モーメント(0.01μB)が反強磁性秩序を示すことが示唆されているが、その磁気構造等詳細は不明である。われわれは四極子秩序の局所対称性を同定することを目指して核磁気共鳴法(NMR),核四重極共鳴法(NQR)をUPd3に適用し、この物質では世界で初めてとなる105Pd核からのNQR信号を観測することに成功した。論文では105Pd核の性質やそこから得られた四重極秩序状態の情報について報告する。

35001322
Deuterium depth profiling in JT-60U tiles using the D(3He, p)4He resonant nuclear reaction
林 孝夫; 杉山 一慶*; Krieger, K.*; Mayer, M.*; Alimov, V. Kh.*; 田辺 哲郎*; 正木 圭; 宮 直之
Journal of Nuclear Materials 363-365, p.904-909(2007) ; (JAEA-J 02904)
 D(3He, p)4He核反応分析法を用いてJT-60Uタイルを分析した。最も重水素濃度が高かったのは外側ドームウィングの排気スロット近傍であり、深さ16μmまでの重水素の面密度は≈2.5×1022 D/m2であった。ここではミクロンオーダーの堆積層がタイル表面に観察されており、共堆積により多量の重水素量が蓄積したと考えられる。また中性粒子ビーム入射加熱(NBI)に起因する重水素が外側ドームウィングやドームトップタイルに高粒子束で入射し、重水素蓄積に寄与していると考えられる。深さ分布については約2.5μmにD/C≈0.05の緩やかなピークがあった。これは大気解放前にプラズマ対向壁からトリチウムを除去するための軽水素放電により表面近傍の重水素が軽水素に置換したためである。一方、第一壁領域では最も重水素量の多いところで≈1.0×1022 D/m2であった。

35001323
Tensile and transient burst properties of advanced ferritic/martensitic steel claddings after neutron irradiation
矢野 康英; 吉武 庸光; 山下 真一郎; 赤坂 尚昭; 小野瀬 庄二; 高橋 平七郎*
Journal of Nuclear Materials 367-370(1), p.127-131(2007) ; (JAEA-J 02905)
 被覆管の引張特性及び急速加熱バースト特性に及ぼす高速中性子照射効果の影響を調査した。試験片は、材料照射リグを用いて照射した。照射温度は、773〜1013Kで、照射量は11〜102dpaであった。照射後引張試験と急速加熱バースト試験を実施した。873K以下の照射温度では、引張強度と破裂強度の低下は見られなかった。このように強度を維持した理由は析出物が優先的に旧オーステナイト粒界に析出し、粒界強化に寄与したためだと考えられた。また、903K以上の照射温度では、両強度とも低下していた。これは、ラス組織の回復と再結晶に起因していると考えられる。

35001324
Nano-mesoscopic structural characterization of 9Cr-ODS martensitic steel for improving creep strength
大塚 智史; 鵜飼 重治; 酒瀬川 英雄; 藤原 優行; 皆藤 威二; 成田 健
Journal of Nuclear Materials 367-370(1), p.160-165(2007) ; (JAEA-J 02906)
 実用化段階での高速炉用燃料被覆管材料として開発を進めている9Cr-ODSマルテンサイト鋼のクリープ強度と微細組織に及ぼすT濃度と固化温度の影響を検討した。Ti濃度を0.3〜0.35wt%に増加させることにより、残留α相(δフェライト)が増加し、クリープ強度が著しく改善されることがわかった。熱間押出温度を上げるとクリープ強度は低下するが、残留α相は逆に増加していることがわかった。これら試料の微細組織観察を実施し、これら実験結果を説明可能な9Cr-ODSマルテンサイト鋼のクリープ変形メカニズムについて検討した。

35001325
Microstructural development of a heavily neutron-irradiated ODS ferritic steel (MA957) at elevated temperature
山下 真一郎; 赤坂 尚昭; 鵜飼 重治; 大貫 惣明*
Journal of Nuclear Materials 367-370(1), p.202-207(2007) ; (JAEA-J 02907)
 中性子照射した酸化物分散強化型(ODS)フェライト鋼(MA957)の微細構造観察を実施した。MA957は既にさまざまな観点で調査が進められているため、本研究では〜973Kの高温環境下で重照射した酸化物の挙動(相安定性も含む)に着目した。TEM観察からは、Y-Ti複合酸化物粒子は相対的にTi酸化物よりも粒子径が細かく、約10分の1程度であることが明らかとなった。照射後の酸化物の平均径,数密度の変化は、照射下における酸化物粒子の反跳溶解を示唆している。一方、973Kで照射したサンプルにおいては、Y-Ti複合酸化物が転位と相互作用している様子が捉えられており、酸化物粒子が転位の回復を遅滞化させ、かつよりマクロな伸長結晶粒をも安定化していることが示された。100dpa程度の高温照射下で、ODS鋼中の酸化物粒子が転位運動を阻害し有効な転位ピニング効果が発揮されていることを示した例は過去に報告されておらず、ODS鋼の照射研究において大変貴重な知見が得られたものと考える。

35001326
Compatibility between Be-Ti alloys and F82H steel
土谷 邦彦; 河村 弘; 石田 卓也
Journal of Nuclear Materials 367-370(2), p.1018-1022(2007) ; (JAEA-J 02908)
 Be-TiやBe-Vのようなベリリウム系合金は、高温で高い化学的安定性を有しており、核融合原型炉の先進中性子増倍材料として期待されている。そこで、Be-Ti合金と構造材料(F82H)との両立性試験を行い、その両立性及び反応素過程について調べた。Be-Ti合金としては、Be12Ti相とαBe相が共存するBe-3at%Ti,Be-5at%Ti、及びBe-7at%Tiを用いた。接触面のX線回折の結果、反応生成物はBe2Feであった。また、SEM観察による反応層厚さ測定から、600℃加熱後には2μm程度の薄い反応層が生成するのみであり、反応層厚さはBeの場合と比較して1/5以下であった。以上の結果より、Be-Ti合金がF82Hと良好な両立性を有することを初めて明らかにした。

35001327
SCC behavior of solid-HIPed and irradiated type 316LN-IG stainless steel in oxygenated or hydrogenated water at 423-603 K
三輪 幸夫; 塚田 隆; 實川 資朗
Journal of Nuclear Materials 367-370(2), p.1175-1179(2007) ; (JAEA-J 02909)
 照射及び非照射316LN-IGステンレス鋼の熱間等方圧接合材の応力腐食割れ感受性に及ぼす水化学の影響を調べた。中性子照射は約200℃で約1dpaまで行った。応力腐食割れ感受性を調べるために、溶存酸素を10ppm又は溶存水素を1ppm含む150〜330℃の高温水中で、低ひずみ速度試験を行った。非照射材では、溶存酸素又は溶存水素を含むいずれの高温水中でも、粒界型応力腐食割れが330℃で発生した。照射材では、水化学の影響が240℃と300℃で異なった。溶存水素を含む高温水中では、300℃では照射誘起応力腐食割れが抑制された。

35001328
Properties of friction welds between 9Cr-ODS martensitic and ferritic-martensitic steels
上羽 智之; 鵜飼 重治; 中井 辰良*; 藤原 優行*
Journal of Nuclear Materials 367-370(2), p.1213-1217(2007) ; (JAEA-J 02910)
 酸化物分散強化型鋼ODS鋼と11Cr-0.5Mo-2W,V,Nbフェライトマルテンサイト鋼(PNC-FMS)を異材接合することを目的として、摩擦圧接法の適用性を検討した。摩擦圧接では、アップセット圧をパラメータとした。これらの材料を摩擦圧接合すると、摩擦圧接まま状態で熱影響部が焼入れ硬化を生じるため、熱処理を施すことにより硬化を回復させた。熱処理によって、接合界面に軟化層が生じたため、熱処理の冷却速度を変化させ、軟化層を発生させない条件を検討した。熱処理後、異材接合部から試験片を採取し、硬さ分布,組織状態と引張強度を評価した。さらに、接合後の圧延性を評価するため、ロール圧延試験を実施し、圧延された接合材の引張試験により圧延後の健全性を評価した。

35001329
The Feasibility of recycling and clearance of active materials from fusion power plants
Zucchetti, M.*; El-Guebaly, L. A.*; Forrest, R. A.*; Marshall, T. D.*; Taylor, N. P.*; 飛田 健次
Journal of Nuclear Materials 367-370(2), p.1355-1360(2007) ; (JAEA-J 02911)
 核融合炉から発生する放射性物質のリサイクル及びクリアランスに関する日米欧の研究成果を整理し、今後の研究の方向性や見通しを提示した。クリアランスに関しては、IAEA文書や各国のクリアランス法案には包括されないが、クリアランスの判定上重要と考えられる核融合特有の放射性核種があり、これらクリアランス決定核種の抽出を行った。クリアランスに分類できない放射性物質については管理下でのリサイクルが可能である。各極の評価から、クリアランス及びリサイクルの導入により、核融合からの廃棄物のうち4分の3は何らかの形で資源として利用できるという結論を得た。核融合特有の問題として廃棄物中にトリチウムが含まれるという問題があり、これは廃棄物の輸送という観点で大きな制約となりうる。この問題に対処するため、廃棄物中トリチウム濃度管理の重要性を指摘した。

35001330
Recent results on beryllium and beryllides in Japan
三島 良直*; 吉田 直亮*; 河村 弘; 石田 清仁*; 波多野 雄治*; 柴山 環樹*; 宗像 健三*; 佐藤 芳幸*; 内田 宗範*; 土谷 邦彦; 田中 知*
Journal of Nuclear Materials 367-370(2), p.1382-1386(2007) ; (JAEA-J 02912)
 高い発電効率を目指した核融合原型炉ブランケットに必要な「高温・高照射量に耐えうる先進機能材料であるベリリウム金属間化合物の開発」を全日本規模の産学官連携で実施し、平成16〜17年度に得られた新たな結果と今後の研究開発計画についてまとめた。その結果、Be-Ti合金は既存の中性子増倍材料であるベリリウム金属と比較して、構造材料(F82H)等との両立性が良いこと、トリチウムインベントリーが小さいことなどの優れた特性を有することを明らかにした。

35001331
High energy heavy ion induced structural disorder in Li2TiO3
中沢 哲也; 内藤 明*; 有賀 武夫; Grismanovs, V.*; 知見 康弘; 岩瀬 彰宏*; 實川 資朗
Journal of Nuclear Materials 367-370(2), p.1398-1403(2007) ; (JAEA-J 02913)
 高エネルギーXeイオンを照射したLi2TiO3の構造変化をラマン分光法を用いて調べた。Li2TiO3のラマン信号強度が照射により減少した。ラマン信号強度の減少は構造単位(TiO6, LiO6, LiO4)におけるTiやLi周辺の酸素原子の配置に関する秩序の消失、すなわち無秩序化に起因している。このような構造単位の無秩序化は照射量や電子的エネルギー付与量より電子的阻止能と密接に関連していることが示された。

35001332
Estimation of total amounts of anthropogenic radionuclides in the Japan Sea
伊藤 集通; 乙坂 重嘉; 川村 英之
Journal of Nuclear Science and Technology 44(6), p.912-922(2007) ; (JAEA-J 02914)
 日本海における人工放射性核種「90Sr, 137Cs, 239+240Pu」の全存在量を初めて見積もった。各調査地点における海水及び海底堆積物中の核種インベントリ、そしてその合計である全インベントリは調査地点の水深に対応して変動することがわかった。そして90Sr, 137Cs, 239+240Puに対する全インベントリはそれぞれ、0.52-2.8kBqm-2, 0.64-4.1kBqm-2, 27-122Bqm-2の範囲にあった。海水,海底堆積物中の核種インベントリの測点水深への依存性と格子化水深データを用いて見積もられた日本海における全存在量は90Srで約1.2±0.4PBq, 137Csで約1.8±0.7PBq, 239+240Puで約69±14TBqとなり、これらの総量はおよそ3.1PBqであった。これら3核種の存在量比(90Sr:137Cs:239+240Pu)は1.0:1.6:0.059でプルトニウムの選択的な蓄積を示唆した。これは存在量と供給量のバランスからも支持されており、それは、90Srと137Csについては存在量と供給量がほぼ同じレベルにあるが、239+240Puにおいては存在量が 40%弱の超過になっていることを示した。なお、この研究は、日本とロシアの排他的経済水域を網羅して、1997-2003年に実施された広域調査プロジェクト「日本海海洋調査」で得られたデータに基づいて行われた。

35001333
Interaction of low-energy ions and atoms of light elements with a fluorinated carbon molecular lattice
Avramov, P.; Yakobson, B. I.*
Journal of Physical Chemistry A 111(8), p.1508-1514(2007) ; (JAEA-J 02916)
 2-40eV H, H+, He, LiとC6H6, C6F12, C60, C60F48分子との相互作用を非経験的分子動力学シミュレーションと量子化学計算を使って研究した。"C6H6 + H+"と"C60 + H+"においては、芳香族分子からH+への電荷移行が1に近い確率で起こり、この過程によりH+は水素原子に、中性のC6H6とC60はカチオンラジカルになる。低エネルギーH+とC6F12, C60F48との相互作用はこれとは本質的に異なり、定性的には中性分子と点電荷との相互作用として考えることができる。補償していないH+の電荷とフッ素原子のマリケン電荷との相互作用から生じるクーロン摂動によって、H+、及びC6F12, C60F48に局在する電子状態のエネルギーが反転し、その結果、エネルギー的に不利になるため電荷移行は起こらない。また、H+の透過に対するC6F12とC60F48のポテンシャルバリアーは、C6H6とC60の場合に比べて2-4倍低い。He原子とLi+イオンの透過に対するバリアーはおもに入射粒子の実効半径に依存する。

35001334
Temperature effect on the absorption spectrum of the hydrated electron paired with a lithium cation in deuterated water
Lin, M.; 熊谷 友多; Lampre, I.*; Coudert, F.*; 室屋 裕佐*; Boutin, A.*; Mostafavi, M.*; 勝村 庸介
Journal of Physical Chemistry A 111(18), p.3548-3553(2007) ; (JAEA-J 02917)
 The absorption spectra of the hydrated electron in 1.0 to 4.0 M LiCl or LiClO4 D2O solutions were measured by pulse radiolysis techniques from room temperature to 300℃ at a pressure of 25 MPa. The results show that when the temperature is increased and the density is decreased, the spectrum of the electron in presence of a lithium cation is shifted to lower energies. Quantum classical molecular dynamics (QCMD) simulations of an excess electron in bulk water and in the presence of a Li+ have been performed to compare with the experimental results. According to the QCMD simulations, the change in the shape of the spectrum is due to one of the three p-like excited states of the solvated electron destabilized by core repulsion. The study of s to p transition energies for the three p excited states reveals that for temperatures higher than room temperature, there is a broadening of each individual s to p absorption band due to a less structured water solvation shell.

35001335
Buckling instability in amorphous carbon films
Zhu, X. D.*; 鳴海 一雅; 楢本 洋*
Journal of Physics; Condensed Matter 19(23), p.236227_1-236227_6(2007) ; (JAEA-J 02919)
 イオンビーム援用蒸着法によってサファイヤ(0001)基板上に作製した非晶質炭素膜の座屈不安定性について報告する。基板温度が150℃で蒸着した膜では、応力の解放に伴う興味深いパターン(ネットワーク状,膨れ,π字型の正弦波パターン,非常に長い規則正しい正弦波パターン)が見いだされた。この正弦波パターンは、中心部の不規則な座屈から発して、外側の座屈領域に伸びる。この規則正しいパターンは、高さ〜500nm,波長〜8.2μmで、最大で長さ396μmに達する。しかし、蒸着時の基板温度が550℃になると、長さは70μmに減少し、さらに温度を上げると、正弦波パターンの代わりに薄膜の剥離が起こる。この結果は、Crosby(1999 Phys. Rev. E 59 R2542)による理論予測に対応する。

35001336
An Attempt for determining 235U/238U ratio for a trace amount of uranium: Search for an extinct radionuclide 247Cm in the early solar system
Chai, J.; 宮本 ユタカ; 國分 陽子; 間柄 正明; 桜井 聡; 臼田 重和; 大浦 泰嗣*; 海老原 充*
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 272(2), p.397-401(2007) ; (JAEA-J 02920)
 Cm-247は半減期が1600万年で、代表的な消滅核種I-129とほぼ等しく、これらの核種が太陽系初期に隕石中に取り込まれるとすれば、その核合成過程であるr-プロセスが太陽系形成の直前まで継続して起こっていなければならない。このような消滅核種の太陽系形成時における存在度は、それらの核種を生成した核合成プロセスばかりでなく、太陽系形成プロセスを考えるうえで非常に大きな制約条件を与えるものと考えられる。Cm-247はα壊変によりU-235になるので、ウランの同位体比(U-235/U-238)に変動を与える可能性がある。ウランに対してキュリウムが濃縮されている鉱物相を分離できれば、そこでのウランの同位体組成には変動が見いだされる可能性が大きい。そこで、二重収束型ICP-MSを用いてウランの同位体比を高精度で測定することとした。その結果、ウランの同位体比,ウラン及び希土類元素の定量値のデータから、太陽系初期におけるCm-247の存在度はU-235に対して0.003以下であった。

35001337
Molecular size distribution of Pu in the presence of humic substances in river and groundwaters
長尾 誠也*; 坂本 義昭; 田中 忠夫; Rao, R. R.*
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 273(1), p.135-139(2007) ; (JAEA-J 02921)
 放射性核種の地下水中での溶存形態は、地下水を経由して移行する放射性核種の挙動を評価・予測するうえで重要な情報である。本研究では、環境中での溶存形態が多様であるPuに着目して溶存有機物の影響を評価するため、河川水,地下水,湖水から分離精製した7種類の腐植物質と錯形成したPuの溶存形態を分子サイズの観点から検討した。腐植物質濃度10mg/lの水溶液に4価のPuを添加し1週間反応させた後、分子サイズ100000, 30000, 10000, 5000daltonsのフィルターで限外ろ過し、画分中のPuと有機物の存在割合を比較した。各画分中におけるPuの存在割合は、7種類の腐植物質について全く異なる分布傾向を示したが、別途手法で確認した腐植物質の存在割合の傾向と同じであり、腐植物質がPuの化学形態を支配する重要な要因であることを示した。また、各画分中のPu濃度と腐植物質濃度の相関性を調べた結果、一部の腐植物質について、10000から30000daltonsの腐植物質にPuが選択的に濃集されており、Puの溶存形態を支配するのは分子サイズだけではなく、併せて官能基の種類や不均一性も重要な要因であることを示した。

35001338
Neutron powder diffraction experiments on the layered triangular-lattice antiferromagnets RbFe(MoO4)2 and CsFe(SO4)2
稲見 俊哉
Journal of Solid State Chemistry 180(7), p.2075-2079(2007) ; (JAEA-J 02922)
 層状三角格子反強磁性体RbFe(MoO4)2とCsFe(SO4)2の粉末試料を作成し、粉末中性子回折実験を行って磁気構造を決めた。どちらの化合物も磁気構造は三角面内は、いわゆる120度構造で、面間は非整合構造であった。秩序モーメントはab面内にあった。RbFe(MoO4)2については190KでP3m1からP3への結晶構造変化も見いだした。

35001339
Ultra large-scale exact-diagonalization for confined fermion-hubbard model on the earth simulator; Exploration of superfluidity in confined strongly-correlated systems
山田 進; 今村 俊幸*; 叶野 琢磨; 大橋 洋士*; 松本 秀樹*; 町田 昌彦
Journal of the Earth Simulator 7, p.23-35(2007) ; (JAEA-J 02923)
 閉じ込めた強相関系の量子状態を探査するため、その系を表現するハバードモデルの物理的性質を利用した地球シミュレータ向きの厳密対角化アルゴリズムを開発した。さらに、厳密対角化に伝統的に用いられてきたランチョス法の代替手法として共役勾配法に基づく固有値計算方法を採用することで、3〜5倍の高速化を達成した。これらの研究開発により、系統的なシミュレーションが可能になり、これまで知られていなかった超流動状態の可能性を発見することができた。

35001340
Characteristic high-field magnetization in a transuranium antiferromagnet NpRhGa5
杉山 清寛*; 中島 弘*; 青木 大*; 芳賀 芳範; 山本 悦嗣; 中村 彰夫; 本間 佳哉*; 塩川 佳伸*; 金道 浩一*; 萩原 政幸*; 大貫 惇睦
Journal of the Physical Society of Japan 75(9), p.094707_1-094707_6(2006) ; (JAEA-J 02927)
 2段階の反強磁性転移を示すNpRhGa5の高磁場磁化測定を行った。この物質の相転移温度はTN1=36K, TN2=32Kであり、秩序モーメントの大きさは0.96μB/Npである。磁化容易軸である[100]方向に磁場を加えると、磁場は26Tでメタ磁性転移を示して38T以上で磁化は飽和した。飽和値は0.44μB/Npである。これらの実験結果を磁気構造モデルを用いて解析した。

35001341
Muon spin relaxation study of crossover from S=1/2 to S=1 of composite haldane spin chains in IPA-CuCl3
真中 博貴*; 山田 勲*; 髭本 亘
Journal of the Physical Society of Japan 76(1), p.014704_1-014704_4(2007) ; (JAEA-J 02928)
 混成ハルデン鎖化合物IPA-CuCl3においてミュオンスピン緩和測定を行った。零磁場下においてミュオンスピン緩和のわずかな増大が見られたが、長距離秩序を示す振動は観測されなかった。12Kと2.0Kの間における内部磁場の出現はS=1/2のスピン状態からS=1の混成ハルデンスピン状態へのクロスオーバーを示している可能性がある。

35001342
The Unconventional superconductivity of skutterudite PrOs4Sb12; Time-reversal symmetry breaking and adjacent field-induced quadrupole ordering
青木 勇二*; 田山 孝*; 榊原 俊郎*; 桑原 慶太郎*; 岩佐 和晃*; 神木 正史*; 髭本 亘; MacLaughlin, D. E.*; 菅原 仁*; 佐藤 英行*
Journal of the Physical Society of Japan 76(5), p.051006_1-051006_13(2007) ; (JAEA-J 02929)
 本論文では非通常型超伝導体PrOs4Sb12の実験的現状について報告している。スクッテルダイト化合物について簡単に紹介した後、われわれはPrOs4Sb12の超伝導状態が特に常伝導状態においてどのように他の重い電子超伝導体と異なるのかを議論している。

35001343
Anomalous magnetic phase in an undistorted pyrochlore oxide Cd2Os2O7 induced by geometrical frustration
幸田 章宏*; 門野 良典*; 大石 一城; Saha, S. R.*; 髭本 亘; 米澤 茂樹*; 村岡 祐治*; 広井 善二*
Journal of the Physical Society of Japan 76(6), p.063703_1-063703_4(2007) ; (JAEA-J 02930)
 ミュオンスピン緩和法を用いて調べた金属非金属転移を示すパイロクロア酸化物Cd2Os2O7の磁性を報告した。転移温度以下では強いスピン揺らぎが現れ、これはスピンのフラストレーションが影響しているためであると考えられる。さらに低温では非整合のスピン密度波が見られ、局所的なスピンのダイナミクスの変化を伴う異常な磁気的変化であることが提唱された。

35001344
Single crystal growth and fermi surface property in ThRhIn5
松田 達磨; 芳賀 芳範; 山本 悦嗣; 池田 修悟; 宍戸 寛明*; 摂待 力生*; 播磨 尚朝*; 大貫 惇睦
Journal of the Physical Society of Japan 76(6), p.064712_1-064712_7(2007) ; (JAEA-J 02931)
 HoCoGa5-タイプの正方晶構造を持つThRhIn5の単結晶育成を世界で初めて成功した。この単結晶を用いたX線構造解析から、格子定数等の構造パラメータを決定した。また、電気抵抗とドハース・ファンアルフェン効果測定を行った。ドハース・ファンアルフェン効果測定から得られたメインブランチは、4f電子状態が遍歴的であると考えられる超伝導物質CeCoIn5のフェルミ面から得られる特徴に酷似している。一方で、サイクロトロン有効質量は、1〜2桁近くも違っていることを明らかにし、またこのフェルミ面の特性は、FLAPW法によるエネルギーバンド計算によってよく説明されることを明らかにした。

35001345
Vulnerability of feline T-lymphocytes to charged particles
柿崎 竹彦; 浜田 信行*; 坂下 哲哉; 和田 成一*; 原 孝光*; 舟山 知夫; 宝達 勉*; 夏堀 雅宏*; 佐野 忠士*; 小林 泰彦; 伊藤 伸彦*
Journal of Veterinary Medical Science 69(6), p.605-609(2007) ; (JAEA-J 02932)
 重イオンの優れた生物学的・物理学的特性から獣医領域での応用が期待されるが、これまでに伴侶動物細胞に対する感受性は明らかにされていない。そこで、本研究では、ネコ由来Tリンパ球に対する感受性を解析し、重イオンの線量と線エネルギー付与に依存して細胞死が誘発されることを明らかにした。

35001346
Combined in situ and time-resolved SANS and SAXS studies of chemical reactions at specific sites and self-assembling processes of reaction products; Reduction of palladium ions in self-assembled polyamidoamine dendrimers as a template
田中 宏和*; 小泉 智; 橋本 竹治; 伊藤 秀明*; 佐藤 正秀*; 中 建介*; 中條 善樹*
Macromolecules 40(12), p.4327-4337(2007) ; (JAEA-J 02933)
 非水溶液溶媒中における第一世代ポリアミンデンドリマー(G1-NH2)/酢酸パラジウム混合系に対して、パラジウム微粒子及びデンドリマー微粒子集合体の自己組織化機構を明らかにした。自己組織化過程は、酢酸パラジウムのモル濃度とG1-NH2の1級アミンのモル濃度比を一定値3.3に固定した条件下で、二種の安定な溶液(酢酸パラジウムのDMF溶液とG1-NH2のメタノール溶液)をあらかじめ調整した後それらを混合することによりもたらされた。混合後に発生するデンドリマーの自己組織化並びに化学反応に誘起されたパラジウム原子の自己組織過程は、中性子小角散乱及びX線散乱法を用いてその場観察した。その結果、デンドリマー分子集合体の自己組織化がまず起こること、この分子集合体が引き続き起こるパラジウムイオンの還元とパラジウム原子のナノ微粒子への自己組織化の鋳型(テンプレート)の役割を演じ、微粒子の寸法を制御していることを発見した。

35001347
Elasticity study of the irradiation-induced polymerization and decomposition of C60 solid
谷本 久典*; 山田 海成; 水林 博*; 境 誠司; 鳴海 一雅; 楢本 洋*
Materials Science and Engineering A 442(1-2), p.319-322(2006) ; (JAEA-J 02934)
 本研究では、内部摩擦法弾性測定を用いて、高エネルギーイオン照射によるフラーレン(C60)固体のポリマー化及び分解過程を調べた。15MeVのC4+イオンの照射効果について、1×1013ion/cm2の照射により、ヤング率がわずかに増大し、135Kと250Kにラムダ型の緩和が観測された。これらは、1×1015ion/cm2の照射により消失した。これらの現象から、イオン照射によりC60ポリマー化とfcc結晶構造の破壊が並行して生じること、及び、1×1015ion/cm2以上の照射により250Kでの相転移が抑制されることを結論した。

35001348
Crystal nucleation behavior caused by annealing of SiC irradiated with Ne at liquid nitrogen temperature or at 573K
相原 純; 北條 喜一; 古野 茂実*; 北條 智博; 沢 和弘; 山本 博之; 本橋 嘉信*
Materials Transactions 48(7), p.1896-1900(2007) ; (JAEA-J 02935)
 炭化珪素(SiC)のTEM試料を30keVN+で1.9又は2.3×1020Ne+/m2まで573K又は98Kで照射して非晶質化させた後、1273Kで30分焼鈍した。2.3×1020Ne+/m2まで照射した試料においてはどちらの照射温度でも焼鈍後結晶核生成及び再結晶化に伴うバブル粗大化が観察された。核生成した結晶のデバイ・シェラーリングは母相のネットパターンによく重なったが、β-SiCの(200)に相当するリングは観察されなかった。本実験の範囲では結晶核生成の照射温度依存性は見られなかった。

35001349
Multiterminal nanowire junctions of silicon; A Theoretical prediction of atomic structure and electronic properties
Avramov, P.; Chernozatonskii, L. A.*; Sorokin, P. B.*; Gordon, M. S.*
Nano Letters 7(7), p.2063-2067(2007) ; (JAEA-J 02936)
 経験的スキームを使って、20面体状中心核(Si-IC)とその頂点から伸びる5角形の花びら(Si-PP)をベースに新奇なシリコンナノクラスターを作り上げた。Si-IC/Si-PP界面が形成される方がエネルギー的に好ましいことがわかった。また、実際に観測されているシリコンナノ構造の幾つかは本研究で提案するナノ構造の存在により説明できる。さらに、拡張ヒュッケル法による電子構造計算によって、本研究で提案したナノ構造がナノスケールのトンネル接合として振る舞う可能性を示した。

35001350
Achievement of robust high-efficiency 1 MW oscillation in the hard-self-excitation region by a 170 GHz continuous-wave gyrotron
坂本 慶司; 春日井 敦; 高橋 幸司; 南 龍太郎*; 小林 則幸; 梶原 健
Nature Physics 3(6), p.411-414(2007) ; (JAEA-J 02937)
 発振モードTE31,8の170GHzジャイロトロンにおいて、効率が55%以上の安定1MW発振を世界で初めて達成した。複数のジャイロトロンパラメータを発振中能動的に制御する手法を世界で初めて開発し、その結果、発振条件をいわゆる高効率発振が得られる難自己発振領域に容易に確立できることを実証した。さらに、目的のTE31,8モードが、近傍のTE30,8モードの寄生モードとして成長し、最終的に系を支配してしまうという新たな非線形過程を発見した。この効果により、TE31,8モードの安定自己発振領域が大きく広がることを見いだした。

35001351
Progress in the ITER physics basis, 7; Diagnostics
Donné, A. J. H.*; Costley, A. E.*; Barnsley, R.*; Bindslev, H.*; Boivin, R.*; Conway, G.*; Fisher, R.*; Giannella, R.*; Hartfuss, H.*; von Hellermann, M. G.*; Hodgson, E.*; Ingesson, L. C.*; 伊丹 潔; Johnson, D.*; 河野 康則; 近藤 貴; Krasilnikov, A.*; 草間 義紀; Litnovsky, A.*; Lotte, P.*; Nielsen, P.*; 西谷 健夫; Orsitto, F.*; Peterson, B. J.*; Razdobarin, G.*; Sanchez, J.*; 笹尾 真実子*; 杉江 達夫; Vayakis, G.*; Voitsenya, V.*; Vukolov, K.*; Walker, C.*; Young, K.*; ITPA Topical Group on Diagnostics*
Nuclear Fusion 47(6), p.S337-S384(2007) ; (JAEA-J 02938)
 「ITER物理基盤」は、その名の通りITERプラズマの物理基盤を与えるために編纂されたレビュー論文であり、Nuclear Fusion誌の特集号として1999年に発刊された。本「ITER物理基盤の進展」は、「ITER物理基盤」発刊以降に得られた研究開発成果を纏めたレビュー論文である。そのうち、第7章は、ITERにおけるプラズマ計測について包括的に取り扱うものである。主な項目は以下の通り。(1)ITERでの計測に対する要求性能,(2)ITERに適用する計測の原理と手法,(3)ITERでの計測の実現のために必要な技術開発項目,(4)ITERトカマク装置への計測機器の統合,(5)「ITER物理基盤」で提起された主要課題の進展状況,(6)ITERにおける計測性能の評価,(7)将来の核融合炉に向けてITERで学習すべき課題。

35001352
Measurement of tritium production rate in water cooled pebble bed multi-layered blanket mockup by DT neutron irradiation experiment
佐藤 聡; 落合 謙太郎; Verzilov, Y.*; 和田 政行*; 久保田 直義; 近藤 恵太郎; 山内 通則; 西谷 健夫; 今野 力
Nuclear Fusion 47(7), p.517-521(2007) ; (JAEA-J 02939)
 水冷却ペブル充填ブランケットのトリチウム生成率の予測精度を明らかにするために、第一壁パネル,40%濃縮Li2TiO3ブロック,ベリリウムブロック,隔壁パネルから成る多層構造モックアップ、及び酸化リチウムペブル充填層モックアップを構築し、FNSを用いてDT中性子照射核特性実験を行い、トリチウム生成率分布を測定した。トリチウム生成率検出器として、多層構造モックアップでは40%濃縮Li2CO3ペレット、ペブル充填層モックアップではペブルそのものを適用し、詳細なトリチウム生成率分布の取得に成功した。実験解析はモンテカルロコードMCNP及び核データライブラリーFENDL-2.1, JENDL-3.3を用いて行い、計算結果と実験結果の比は、多層構造ブランケットモックアップでは0.89〜1.10、ペブル充填層モックアップでは0.95〜1.13であり、ほとんどの計算結果は、10%以内で実験結果と一致した。ベリリウム近傍では、計算結果と実験結果の比の1からのずれが増大している。このずれは、ベリリウムの後方散乱断面積データに起因する可能性が高く、今後、この核データの改善を行っていく。

35001353
Characteristics of the H-mode pedestal in improved confinement scenarios in ASDEX Upgrade, DIII-D, JET and JT-60U
Maggi, C. F.*; Groebner, R. J.*; 大山 直幸; Sartori, R.*; Horton, L. D.*; Sips, A. C. C.*; Suttrop, W.*; ASDEX Upgradeチーム; Leonard, A.*; Luce, T. C.*; Wade, M. R.*; DIII-Dチーム*; 鎌田 裕; 浦野 創; JT-60Uチーム; Andrew, Y.*; Giroud, C.*; Joffrin, E.*; la Luna, E. de.*; EFDA-JET Contributors* for the Pedestal and Edge Physics and the Steady State Op
Nuclear Fusion 47(7), p.535-551(2007) ; (JAEA-J 02940)
 ASDEX Upgrade(AUG)装置,DIII-D装置,JET装置,JT-60U装置において、改善閉じ込めモードと通常のHモードについて、ペデスタルやグローバルなプラズマパラメータを比較した。加熱パワーの増加とともにペデスタル圧力も上昇しており、通常のHモードから改善閉じ込めモードへは連続的に変化しているように見える。AUG装置では、改善閉じ込めモードでペデスタル圧力が上昇する際に密度と温度がともに上昇するのに対し、DIII-D装置ではおもに温度の上昇によってペデスタル圧力が上昇する。JET装置の1.4MAで行われたハイブリッドモードでは、加熱パワーと三角度の上昇によってペデスタル部の蓄積エネルギー上昇により、全体の蓄積エネルギーが上昇する。JT-60Uでは、安全係数と三角度の高い高ベータポロイダルHモードではペデスタル部の蓄積エネルギー上昇により全体の蓄積エネルギーが上昇しているが、負磁気シアHモードではコアプラズマの蓄積エネルギー上昇によるものが大きい。どの装置でも、全体のポロイダルベータ値が上昇するに連れてペデスタル部の安定性が改善している。また、ペデスタル部のポロイダルベータ値の上昇に伴い、閉じ込め改善度も上昇する。

35001354
Integrated simulation of ELM energy loss determined by pedestal MHD and SOL transport
林 伸彦; 滝塚 知典; 小関 隆久; 相羽 信行; 大山 直幸
Nuclear Fusion 47(7), p.682-688(2007) ; (JAEA-J 02941)
 プラズマ性能に対する周辺部局在モード(ELM)とスクレイプオフ層(SOL)の自己矛盾のない効果を明らかにするために、輸送コードをベースにピーリング・バルーニングモード安定性コードとSOLモデルを統合化したシミュレーションコードTOPICS-IBを開発した。実験的に観測されたELMによるエネルギー損失の衝突周波数依存性が、ブートストラップ電流とSOL輸送の両方に起因することを明らかにした。ブートストラップ電流は、衝突周波数の増加とともに減少し、ペデスタル領域の磁気シアを強め、その結果、ELMにより増幅される輸送の範囲とセパラトリックス近傍の値を小さくする。一方、ELM崩壊時にエネルギーが掃き出され、SOLプラズマ温度が急激に上昇し、セパラトリックス端の小半径方向勾配が平坦化され、エネルギー損失が低下する。磁力線平行方向の電子熱伝導がSOL温度の上昇を決めるので、高衝突周波数では熱伝導が低下し、SOL電子温度がさらに上昇する。以上2つの物理機構により、ELMエネルギー損失が、衝突周波数の増加とともに減少することを明らかにした。

35001355
Improved performance in long-pulse ELMy H-mode plasmas with internal transport barrier in JT-60U
大山 直幸; 諌山 明彦; 鈴木 隆博; 小出 芳彦; 竹永 秀信; 井手 俊介; 仲野 友英; 朝倉 伸幸; 久保 博孝; 武智 学; 坂本 宜照; 鎌田 裕; 浦野 創; 吉田 麻衣子; 都筑 和泰*; 松永 剛; Gormezano, C.*; JT-60チーム
Nuclear Fusion 47(7), p.689-697(2007) ; (JAEA-J 02942)
 フェライト鋼を設置することによって、高速イオンのリップル損失が1/2から1/3に低減した。同じ入射パワーに対して吸収パワーが増加するため、あるプラズマ圧力を維持するために必要なNBIユニット数を減らすことができた。その結果、低いリサイクリングと周辺密度を長時間維持できるようになり、中心にピークした圧力分布を維持するために重要な周辺部の温度を高く維持することができた。さらに、外部からのトルク入力の自由度を増やすことができた結果、プラズマ電流と同方向に回転するプラズマが得られるようになり、電子系の内部輸送障壁の性能が向上した。これらの利点を活用し、高い規格化ベータ値と高い熱化プラズマの閉じ込め改善度の維持時間を伸長することができた。閉じ込め改善度が1程度で規格化ベータ値が2.3以上の放電を、電流拡散時間の12倍程度である23.1秒間維持した。このとき得られた閉じ込め改善度と規格化ベータ値の積は、ITERの標準運転シナリオを超える2.2を上回っており、ITERの長時間運転モードとして提案されているハイブリッド運転モードとして適用することが可能である。

35001356
H-mode pedestal structure in the variation of toroidal rotation and toroidal field ripple in JT-60U
浦野 創; 大山 直幸; 神谷 健作; 小出 芳彦; 竹永 秀信; 滝塚 知典; 吉田 麻衣子; 鎌田 裕; JT-60チーム
Nuclear Fusion 47(7), p.706-713(2007) ; (JAEA-J 02943)
 JT-60Uにおいてトロイダル回転とトロイダル磁場(TF)リップルの周辺ペデスタル構造及びELMに対する影響を調べた。フェライト鋼タイル(FST)の導入によってTFリップルの大きさを変化させた。プラズマ周辺部においてトロイダル回転速度VTを順方向側にシフトさせると、ELM周波数fELMは減少し、ELMのエネルギーロスΔ WELMは増大した。順方向回転時に見られるこの大きなELMロスでは、電子温度分布におけるELMによる崩壊領域をより径方向内側に広げることがわかった。また、順方向回転時には、ELM間の熱輸送が低減し、ペデスタル圧力ppedが若干上昇する傾向が見られた。FSTの効果は大体積プラズマで明確に確認され、ppedが上昇した。一方で、小体積プラズマにおいてはppedの変化は小さく、トロイダル回転分布に影響を及ぼしているTFリップルの大きさがペデスタル圧力に対して重要な役割を果たしていると言える。さらに、順方向回転時やTFリップル低減時にppedが増加する時には、Hモードの境界輸送障壁幅が広がる傾向が見られた。

35001357
Dispersion matching at the injection from a high-intensity linac to a circular accelerator
大川 智宏; 池上 雅紀*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 576(2-3), p.274-286(2007) ; (JAEA-J 02944)
 分散マッチングは、大強度ビームを線形加速器から円形加速器に入射する際に重要であることが知られている。中心運動量のジッターや運動量拡がりがそれぞれ空間電荷のない場合の分散と空間電荷の影響が有る場合の分散に依存して横方向のビームの運動に影響を与えるので、両方の場合の分散を円形加速器の入射点で最適化する必要がある。この目的のために、空間電荷の影響がある場合の分散関数を即座に計算する方法を確立し、その手法に基づいた最適化手順を実際のビーム輸送系を用いて実証した。

35001358
Magnetic fusion energy studies in Japan
小川 雅生*; 飯尾 俊二*; 小森 彰夫*; 川端 一男*; 金子 修*; 井上 多加志; 鎌田 裕
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 577(1-2), p.30-36(2007) ; (JAEA-J 02945)
 本論文は、重イオンビーム慣性核融合国際シンポジウムにおいて、磁場核融合研究の進展を紹介するレビュー論文である。JT-60は日本における磁場核融合エネルギー研究の旗艦としての役割を果たしてきた。JT-60ではNBIとRF加熱により、電子温度10keV以上のDDプラズマを得て、規格化ベータ値2.3を22秒間に渡って維持した。またJT-60チームは高ポロイダルベータ放電において、従来から知られていた周辺部輸送障壁(ETB)に加えて内部輸送障壁(ITB)を発見し、ITBを形成した運転によりプラズマ閉じ込めを劇的に改善した。核融合科学研究所の大型ヘリカル装置(LHD)は世界最大の超電導磁石システムであり、最大磁場は3T、蓄積磁気エネルギーは1GJに達する。ICRF及びECRFを用いて、電子密度4×1018m-3,電子温度約1keVのプラズマを54分間、定常的に維持することに成功している。これまでに最高電子密度5×1020m-3(電子温度1keV)を達成している。本論文では、ITERに関連した磁場核融合研究の進展を報告する。

35001359
Ion-species dependence of swift heavy ion-induced ferromagnetism of Fe-50at.%Rh alloy at low temperatures
図子 善大*; 福住 正文*; 知見 康弘; 石川 法人; 小野 文久*; 岩瀬 彰宏*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 256(1), p.434-437(2007) ; (JAEA-J 02946)
 Fe-50at.%Rh合金に高速重イオン(120MeV Ni, 150MeV Kr, 200MeV Xe, 200MeV Au)を照射することによって、低温で反強磁性状態だったものが強磁性状態に変化する現象について、照射量依存性及びイオン種依存性を調べた。その結果、飽和磁化の照射量依存性の振る舞いは、イオン種によって異なるが、弾性衝突によってターゲットに伝達されるトータルのエネルギー量に対して一つの曲線でスケールされることがわかった。

35001360
Focusing high-energy heavy ion microbeam system at the JAEA AVF cyclotron
及川 将一*; 佐藤 隆博; 酒井 卓郎; 宮脇 信正; 柏木 啓次; 倉島 俊; 奥村 進; 福田 光宏*; 横田 渉; 神谷 富裕
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 260(1), p.85-90(2007) ; (JAEA-J 02947)
 高エネルギーの重イオンマイクロビームシステムがJAEA高崎のTIARAで開発された。これはAVFサイクロトロン加速器からの10MeV/n以上のエネルギーを持つ重イオンビームを集束する装置としては世界で最初の試みである。これまでTIARAで開発してきたマイクロビーム装置と同様に本装置は、4重極電磁石レンズ,多段のビームスリット、及びビームスキャナを装備し、各パラメータを最適化した。ここで、サイクロトロン加速器からのイオンビームは、静電加速器に比べ、より大きいエネルギー幅と、より大きいビーム電流不安定性を持つため、われわれはこれらのマイクロビーム形成で最も大きい問題である色収差の削減に取り組む必要があった。本論文は、今回開発した新しい集束システムについて概説して、二次電子マッピング法とシングルイオンヒット実験から、真空中で1μmの空間分解能を達成した結果について報告する。

35001361
Effect of Ti content on compatibility between Be-Ti and SS316LN
土谷 邦彦; 河村 弘; 石田 卓也
Nuclear Technology 159(3), p.228-232(2007) ; (JAEA-J 02949)
 Be-TiやBe-Vのようなベリリウム系合金は、高温で高い化学的安定性を有しており、核融合原型炉の中性子増倍材料として期待されている。そこで、Be-Ti合金とSUS316LNとの両立性試験を行い、反応素過程を検討するとともに、αBe量に対する両立性への影響を調べた。Be-Ti合金としては、Be12Ti相とαBe相が共存するBe-3at%Ti、Be-5at%Ti及びBe-7at%Ti、Be12Ti相であるBe-8.5at%Tiを用いた。αBeの占有面積は、それぞれ55%,35%,15%、及び0%であった。SEM観察による反応層厚さ測定の結果、加熱温度が600℃のとき、反応相厚さはαBe占有面積にかかわらず、ほぼ同じであった。一方、加熱温度が800℃のとき、αBe占有面積が35%以上で占有面積の増加に伴い、反応層厚さも増加することが明らかになった。以上より、αBe占有面積とブランケット使用温度における両立性の関係を把握することが可能となった。

35001362
A Modular metal-fuel fast reactor with one-loop main cooling system
近澤 佳隆; 岡野 靖; 此村 守; 佐藤 浩司; 澤 直樹*; 住田 裕之*; 中西 繁之*; 安藤 将人*
Nuclear Technology 159(3), p.267-278(2007) ; (JAEA-J 02950)
 小型炉は小型特有の合理化対策,設計規格化,習熟効果により投資及びR&Dリスクを削減しつつ大型炉に匹敵する経済性を達成する可能性がある。ここでは多数基設置時において大型炉と同等の経済性を達成する可能性のある300MWeナトリウム冷却小型炉の概念設計を実施した。燃料型式はPu-U-Zr3元合金の金属燃料、炉心型式は金属燃料において炉心出口温度550℃を達成可能なZr密度含有率2領域単一Pu富化度炉心を採用した。冷却系は電磁ポンプを直列2基設置することにより、1ループ化し、1次系電磁ポンプは中間熱交換器内部に組み込む方式とした。燃料貯蔵設備は原子炉建屋容積低減を考慮して原子炉容器内貯蔵(IVS)として、使用済燃料の4年間貯蔵を想定した貯蔵容量を確保した。また、1主冷却系1ループ化については最も厳しいと考えられる配管破断を想定した過渡解析により成立性を評価した。発電プラント初号基とそれに対応した小規模の燃料製造・再処理設備の組合せによる実証設備における建設費評価を行い、小規模かつ商用運転に転用可能な設備において燃料サイクル全体の工学規模における実証が可能であることを示した。

35001363
Multi-millijoule, diode-pumped, cryogenically-cooled Yb:KY(WO4)2 chirped-pulse regenerative amplifier
小川 奏; 赤羽 温; 青山 誠; 辻 公一; 時田 茂樹*; 河仲 準二*; 西岡 一*; 山川 考一
Optics Express 15(14), p.8598-8602(2007) ; (JAEA-J 02951)
 イットリビウム(Yb)系のレーザー材料は、次世代のレーザーダイオード(LD)励起レーザー(DPSSL)用材料として近年盛んに研究が行われている。吸収帯域が広く長い蛍光寿命を持つYb系材料はLD励起に最適であり、高効率なレーザー動作が可能である。本研究は、そのようなYb系材料の1つであるYb:KYW結晶を増幅媒質として用いることで、高エネルギーと広帯域を維持しつつ1kHz以上の高繰り返しで動作可能なCPAレーザーの開発を目的としている。本実験では、Yb:KYW結晶を用いてLD励起低温冷却型再生増幅器の開発を行い、励起パルス幅0.5ms時において5.5mJの出力エネルギー(吸収エネルギー39mJ)と14%を超える光-光変換効率を得ることができた。

35001364
Highly polarized cold neutron beam obtained by using a quadrupole magnet
奥 隆之; 山田 悟; 篠原 武尚; 鈴木 淳市; 三島 賢二*; 広田 克也*; 佐藤 広海*; 清水 裕彦
Physica B; Condensed Matter 397(1-2), p.188-191(2007) ; (JAEA-J 02952)
 四極磁石を用いた中性子偏極装置の開発研究を行っている。中性子が四極磁石内に入射すると、磁石が形成する磁場勾配により、正極性成分と負極性成分が空間的に分離する。そこで、そのうちの一成分を抽出することにより、偏極中性子ビームを得るものである。この方法では、中性子が物質により散乱されたり、吸収されたりすることがないため、非常に高い偏極度の中性子ビームを高効率で得ることが可能である。これまでに、四極永久磁石を用いて冷中性子ビームの偏極実験を行った結果、偏極度P0.999を達成することに成功した。会議では、実験結果の詳細について発表するほか、この偏極装置の中性子散乱実験への応用方法について議論する予定である。

35001365
X-ray diffuse scattering from carbon-ion-irradiated diamond
須貝 宏行; 前田 裕司*; 松本 徳真*; 加藤 輝雄; 春名 勝次*; 左高 正雄; 小野 文久*
Physica Status Solidi (C) 4(8), p.2963-2966(2007) ; (JAEA-J 02955)
 人工ダイヤモンドは、高温や放射線等の過酷な環境に耐えうる有望な耐環境素子材料の一つである。ここでは、100 MeV炭素イオン照射した人工ダイヤモンド単結晶中の格子欠陥をX線による格子定数測定とX線散漫散乱により調べた。イオン照射及びX線測定は、室温で行った。格子定数は照射量に比例して増加した。われわれが従来から行ってきた不純物濃度の異なる天然及び人工ダイヤモンド単結晶に関する結果との比較から、照射によって生成した格子間原子及び原子空孔は、(100)面に転位ループをつくることが明らかとなった。

35001366
Band-gap unification of partially Si-substituted single-wall carbon nanotubes
Avramov, P.; Sorokin, P. B.*; Fedorov, A. S.*; Fedorov, D. G.*; 前田 佳均
Physical Review B 74(24), p.245417_1-245417_8(2006) ; (JAEA-J 02957)
 Siで置き換えた炭素ナノチューブ,SiCシート、そして一連の単層SiCナノチューブの原子構造と電子構造を平面波近似を用いた局所密度近似法によって計算した。金属的な(8,8)単層炭素ナノチューブ(SWCNT)では、C原子をSi原子で順に置き換えていくとバンドギャップが生じ、Siの濃度に依存してほぼ2次関数的にバンドギャップが大きくなっていく。半導体的な(10,0)SWCNTの場合は、Si濃度が〜25%でバンドギャップが最小(0.27eV)になる。Si濃度が12-18%の領域では、いずれのタイプのナノチューブもΓ-Γ点において0.5eVより小さい直接型バンドギャップを持つ。キラル型(8,2)SWSi0.15C0.85NTは、同様の直接型バンドギャップ(0.6eV)を持つ。時間に依存する密度汎関数法によって、Siでの置き換えが近赤外領域における光学遷移の全確率をほぼ一桁増やすことを示した。これは、金属的SWCNTにおける直接型バンドギャップの生成,あらゆるSWCNTのバンドギャップとその性質の統合,動径方向の積分<Si3p|r|Si3s>が大きいこと、及び価電子帯・伝導帯の双方で化学結合にSi3d状態が寄与することによって引き起こされる。

35001367
Experimental evidence for ferromagnetic spin-pairing superconductivity emerging in UGe2: A 73Ge-nuclear-quadrupole-resonance study under pressure
原田 敦之*; 川崎 慎司*; 椋田 秀和*; 北岡 良雄*; 芳賀 芳範; 山本 悦嗣; 大貫 惇睦; 伊藤 公平*; Haller, E. E.*; 播磨 尚朝*
Physical Review B 75(14), p.140502_1-140502_4(2007) ; (JAEA-J 02958)
 本研究で、異なったタイプの超伝導オーダパラメータがUGe2の強磁性相で実現していることが、圧力下73Ge-核四重極共鳴実験を通して明らかにされた。 核格子緩和時間(1/T1)の測定から、超伝導状態ではアップスピンバンドはラインノードの超伝導ギャップが開いているものの、ダウンスピンバンドは超伝導ギャップが開かないことが明らかにされた。この実験結果は、強磁性的に配列したスピンを持つ2電子間に超伝導クーパー対が形成されるというモデルで説明されることが明らかとなった。本研究結果は強磁性状態下における一次相転移点近傍に存在する強磁性的スピンのゆらぎによって媒介される強磁性超伝導の研究に重要な示唆を与えるものである。

35001368
Density-functional theory study of the electronic structure of thin Si/SiO2 quantum nanodots and nanowires
Avramov, P.; Kuzubov, A. A.*; Fedorov, A. S.*; Sorokin, P. B.*; Tomilin, F. N.*; 前田 佳均
Physical Review B 75(20), p.205427_1-205427_8(2007) ; (JAEA-J 02959)
 本研究では、狭い界面を持つ5角形のSi/SiO2量子ナノドット(QDs,直径1.6nm)及びナノワイヤ(NWs)を提案し、元となるシリコンの準安定構造(直径1.2nm)とともに、その原子構造と電子構造を、クラスター近似B3LYP/6-31G*及び周期的境界条件(PBC)平面波近似(PW)擬ポテンシャル(PP)局所密度近似法を用いて計算した。最も小さい擬球状QD(Si85)の全状態密度(TDOS)はPBC PW PP LDAで計算した結晶性シリコンのTDOSによく一致した。伸長したSiQDsとSiNWsは金属的特性を持った電子構造を示す。しかし、表面に酸化層を持つとSi/SiO2クラスターのTDOS中にバンドギャップができる。これらの粒子の価電子帯の上端と伝導帯の底は、核となるSiに由来した電子状態によって形成される。理論的に予測されるバンドギャップの幅は、Si/SiO2クラスターの長さによって決定され、さらに、シリカに埋め込まれたナノシリコンのフォトルミネッセンススペクトルにおけるサイズ効果を高い精度で説明できる。

35001369
Pairing symmetry in a two-orbital Hubbard model on a square lattice
久保 勝規
Physical Review B 75(22), p.224509_1-224509_8(2007) ; (JAEA-J 02960)
 揺らぎ交換近似によって、正方格子上の2軌道ハバードモデルの超伝導を調べた。このモデルでは、軌道状態はs軌道の対称性を持つものとした。そして、われわれはs波・スピントリプレット・軌道反対称状態とp波・スピンシングレット・軌道反対称状態がフント結合が大きいときに現れることを見いだした。偶振動数依存性を持つ状態を考えると、これらの状態は単軌道モデルでは禁止されているが、多軌道系では許される状態である。われわれは、この2軌道ハバードモデルと軌道の対称性を除いて等価になるモデルの超伝導対称性も議論する。最後に、2つのフェルミ面を持つ系では、無磁場下であっても有限の全運動量を持つ対状態が可能であることを示す。

35001370
Thermal evolution of defects in as-grown and electron-irradiated ZnO studied by positron annihilation
Chen, Z. Q.*; Wang, S. J.*; 前川 雅樹; 河裾 厚男; 楢本 洋*; Yuan, X. L.*; 関口 隆史*
Physical Review B 75(24), p.245206_1-24520_9(2007) ; (JAEA-J 02961)
 酸化亜鉛中の育成時導入欠陥と電子線照射誘起欠陥について、陽電子消滅による研究を行った。その結果、育成時導入欠陥は亜鉛空孔に起因するものが存在することがわかった。この欠陥は600℃までの焼鈍で消失する。電子線照射後にも、亜鉛空孔が主要な欠陥種であるが、ほとんどが200℃の焼鈍で格子間原子との結合によって消失することがわかった。また、400℃の焼鈍で二次欠陥が生成することがわかった。電子運動量分布の詳細な解析から、この二次欠陥は、亜鉛空孔とは異なる化学状態にあることが判明した。

35001371
Andreev bound states and tunneling characteristics of a noncentrosymmetric superconductor
Iniotakis, C.*; 林 伸彦; 澤 雄生*; 横山 毅人*; May, U.*; 田仲 由喜夫*; Sigrist, M.*
Physical Review B 76(1), p.012501_1-012501_4(2007) ; (JAEA-J 02962)
 常伝導金属とCePt3Siのような空間反転対称性のない超伝導体とから構成される接合系を理論的に調べた。特徴的なゼロバイアス・アノーマリーが、混成パリティの超伝導相の存在によって、特定のトンネル方向に対して現れることを明らかにした。接合面におけるアンドレーエフ束縛状態の形成がその起源である。このトンネル特性から、混成パリティの超伝導ペアリング対称性を検証することができる。

35001372
Anisotropic spin fluctuations and anomalies of nuclear quadrupole interactions in the itinerant antiferromagnet NpCoGa5; 59Co NMR and 69,71Ga NMR/NQR studies
酒井 宏典; 神戸 振作; 徳永 陽; 藤本 達也*; Walstedt, R. E.*; 安岡 弘志; 青木 大*; 本間 佳哉*; 山本 悦嗣; 中村 彰夫; 塩川 佳伸*; 大貫 惇睦
Physical Review B 76(2), p.024410_1-024410_14(2007) ; (JAEA-J 02963)
 TN=47Kのネール点を示す遍歴反強磁性体NpCoGa5においてNMR/NQR法を用いた研究を行った。NMRスペクトルはTNの上下の温度で測定し、ナイトシフト,核四重極パラメータの決定を行った。超微細結合定数の異方性も決定した。核四重極パラメータの温度依存は、TNを境に大きく変化した。また、ゼロ磁場NQR/NMRスペクトルの観測にも成功した。NMR/NQR緩和率の測定から、スピン揺らぎの異方性について議論した。

35001373
NMR study of the semimetallic compound UCoGa5
神戸 振作; 酒井 宏典; 加藤 治一*; 徳永 陽; 藤本 達也*; Walstedt, R. E.*; 池田 修悟; 眞榮平 孝裕*; 芳賀 芳範; 大貫 惇睦
Physical Review B 76(2), p.024411_1-024411_6(2007) ; (JAEA-J 02964)
 HoCoGa5(115)構造を持つUCoGa5のNMR研究を報告する。これはd波超伝導体PuCoGa5と同じ構造である。スピン格子緩和率はほかにアクチナイド115化合物に比べて小さかった。これは、この化合物のde Haas-van Alphen効果とバンド計算で示唆されて半金属的性質と整合している。異なったGaやCoサイトのスピン格子緩和率を比較し、2つの異なった性質を持つバンド構造が明らかになった。

35001374
Momentum-dependent charge excitations of a two-leg ladder; Resonant inelastic X-ray scattering of (La,Sr,Ca)14Cu24O41
石井 賢司; 筒井 健二*; 遠山 貴己*; 稲見 俊哉; 水木 純一郎; 村上 洋一*; 遠藤 康夫*; 前川 禎通*; 工藤 一貴*; 小池 洋二*; 熊谷 健一*
Physical Review B 76(4), p.045124_1-045124_7(2007) ; (JAEA-J 02965)
 (La,Sr,Ca)14Cu24O41は銅酸化物高温超伝導体との関連で注目されている物質である。ほとんどの銅酸化物超伝導体の共通ユニットであるCuO2面を持たないにもかかわらず、Sr0.4Ca13.6Cu24O41は高圧下で超伝導体となる。銅のK吸収端で行った(La,Sr,Ca)14Cu24O41の共鳴非弾性X線散乱の結果について報告する。モットギャップを越えるバンド間励起とギャップ内に現れるバンド内励起の運動量依存性がホール濃度に対してどのように変化するかに注目する。得られた実験結果は理論の予想と一致している。

35001375
α-decay spectroscopy of the new isotope 192At
Andreyev, A. N.*; Antalic, S.*; Ackermann, D.*; Franchoo, S.*; Heßberger, F. P.*; Hofmann, S.*; Huyse, M.*; Kojouharov, I.*; Kindler, B.*; Kuusiniemi, P.*; Lesher, S. R.*; Lommel, B.*; Mann, R.*; Münzenberg, G.*; 西尾 勝久; Page, R. D.*; Ressler, J. J.*; Streicher, B.*; Saro, S.*; Sulignano, B.*; Van Duppen, P.*; Wiseman, D. R.*
Physical Review C 73(2), p.024317_1-024317_11(2006) ; (JAEA-J 02966)
 Decay properties of the new neutron-deficient nuclide 192At have been studied in the complete fusion reaction 144Sm(51V,3n)192At at the velocity filter SHIP of GSI. Two isomeric states with half-lives of 88(6) ms and 11.5(6) ms, respectively, and with complex α-decay schemes were identified in 192At. The decay pattern of one of the isomers suggests that it is based on the oblate-deformed π2f7/2 × ν1i13/2 configuration, which confirms the expected onset of deformation in the At isotopes by approaching the neutron midshell at N=104.

35001376
α-decay of the new isotope 187Po; Probing prolate structures beyond the neutron mid-shell at N = 104
Andreyev, A. N.*; Antalic, S.*; Ackermann, D.*; Franchoo, S.*; Heßberger, F. P.*; Hofmann, S.*; Huyse, M.*; Kojouharov, I.*; Kindler, B.*; Kuusiniemi, P.*; Lesher, S. R.*; Lommel, B.*; Mann, R.*; Münzenberg, G.*; 西尾 勝久; Page, R. D.*; Ressler, J. J.*; Streicher, B.*; Saro, S.*; Sulignano, B.*; Van Duppen, P.*; Wiseman, D.*; Wyss, R.*
Physical Review C 73(4), p.044324_1-044324_8(2006) ; (JAEA-J 02967)
 The new neutron-deficient isotope 187Po has been identified in the complete fusion reaction 46Ti+144Sm → 187Po+3n at the velocity filter SHIP of GSI. Striking features of the 187Po α decay are the strongly-hindered decay to the spherical ground state and unhindered decay to a surprisingly low-lying deformed excited state at 286 keV in the daughter nucleus 183Pb. Based on the potential energy surface calculations, the 187Po ground state and the 286 keV excited state in 183Pb were interpreted as being of prolate origin.

35001377
Disappearance of antiferromagnetic spin excitations in overdoped La2-xSrxCuO4
脇本 秀一; 山田 和芳*; Tranquada, J. M.*; Frost, C. D.*; Birgeneau, R. J.*; Zhang, H.*
Physical Review Letters 98(24), p.247003_1-247003_4(2007) ; (JAEA-J 02968)
 高温超伝導体La2-xSrxCuO4の過剰ドープ領域における試料(x=0.25, 0.30)の磁気励起を100meV付近まで、中性子飛行時間分光法を用いて調べた。反強磁性ブリルアンゾーンにおいて積分した中性子散乱強度を過剰ドープ試料とLa1.875Ba0.125CuO4について比較した結果、20meVから80meVのエネルギー領域における磁気散乱は過剰ドープにより減少し、x=0.30で超伝導と同時に消失することを発見した。この結果は(揺らぎを伴った)反強磁性領域の減少により説明でき、超伝導と反強磁性の強調関係を示している。またこれまで長く議論されてきた銅酸化物超伝導体の格子非整合磁気励起の起源について、フェルミ面ネスティングによる準粒子の励起によるモデルと、残留反強磁性相関によるモデルでは、後者が確からしいという重要な洞察を与える。

35001378
In-beam γ-ray study of the neutron-rich nuclei of 240U, 246Pu, and 250Cm produced by the (18O, 16O) reaction
石井 哲朗; 重松 宗一郎*; 牧井 宏之; 浅井 雅人; 塚田 和明; 豊嶋 厚史; 松田 誠; 牧嶋 章泰*; 静間 俊行; 金子 順一*; Hossain, I.*; 當銘 勇人; 小原 雅子*; 市川 進一; 河野 俊之*; 小川 雅生*
Physics of Atomic Nuclei 70(8), p.1457-1461(2007) ; (JAEA-J 02969)
 中性子過剰核240U, 246Pu, 250Cmの励起準位構造をインビームγ線分光法により研究した。これらの原子核は、原子力機構・東海タンデム加速器施設において、238U, 244Pu, 248Cm(18O, 16O) 2中性子移行反応により生成した。Si Δ E-E検出器を用いて散乱粒子16Oを識別し、さらに16Oの運動エネルギーを選択することにより、残留核240U, 246Pu, 250Cmの脱励起γ線を同定した。γ線測定の結果より、これらの原子核の基底回転バンドを12+ 状態まで確立した。回転バンドの慣性能率より、中性子数152の変形閉殻が陽子数96のCmまでは存在し、陽子数94のPuでは消失することを明らかにした。

35001379
Negative ion production in high electron temperature plasmas
戸張 博之; 関 孝義*; 高戸 直之*; 花田 磨砂也; 井上 多加志; 柏木 美恵子; 畑山 明聖*; 坂本 慶司
Plasma and Fusion Research (Internet) 2, p.022_1-022_4(2007) ; (JAEA-J 02970)
 外部磁気フィルタ付き負イオン源では、フィルタ磁場中の高速電子のドリフトによりソースプラズマが局在化し、局所的に電子温度が高い(3-4eV)領域が形成される。従来、電子温度が1eV以上のプラズマ中では負イオンの消滅反応が著しく促進されるため不向きとされてきたが、セシウム添加型負イオン源では、電子温度の高い領域からより多くの負イオンビームが引き出されることが観測された。このことを検証するために、(1)カソードフィラメントをプラズマ電極近傍に配置,(2)外部磁気フィルタ強度を低減、させることでプラズマ電極近傍に電子温度の高い水素プラズマを生成し、負イオンビーム引き出しを行った。これらの結果より、セシウム添加時には、プラズマ中の高エネルギー電子が電子,解離に寄与し、より多くの水素原子/イオン束が生成され、消滅反応を上回る表面生成により多量の負イオンが生成されることが示唆された。

35001380
Reduction behavior of uranium in the presence of citric acid
鈴木 義規; 南川 卓也; 吉田 崇弘*; 尾崎 卓郎; 大貫 敏彦; Francis, A. J. ; 津島 悟*; 榎田 洋一*; 山本 一良*
Radiochimica Acta 94(9-11), p.579-583(2006) ; (JAEA-J 02971)
 クエン酸存在下、pH2-7におけるUO22+の還元挙動をカラム電極電解法を用いて調べた。UO22+は、pH2で1段階の還元反応により、pH3-5で2段階の還元反応によりU(IV)まで還元された。UO22+の還元電位は、pHが2から7に増加するのにしたがって低電位にシフトした。pH6-7では、-0.8V以下の電位でもUO22+は完全に還元されなかった。紫外可視吸収スペクトル分析及び化学種計算から、クエン酸存在下におけるUO22+の化学種は、pH2-3ではおもにUO22+, pH3-5でおもに[(UO2)2Cit2]2-, pH5-7では3量体以上の化学種であった。これらの結果から、UO22+は中性pH付近でクエン酸と多量体を形成し、還元されにくくなることがわかった。

35001381
Location of deuterium atoms in BaSn0.5In0.5O2.75+α at 77-473 K by neutron powder diffraction
伊藤 剛*; 長崎 正雅*; 岩崎 航太*; 吉野 正人*; 松井 恒雄*; 深澤 裕; 井川 直樹; 石井 慶信
Solid State Ionics 178(7-10), p.607-613(2007) ; (JAEA-J 02972)
 重水を含有させたBaSn0.5In0.5O2.75+αについて77Kから473Kまでの温度範囲で粉末中性子回折実験を行い、Rietveld解析及びマキシマムエントロピー法解析を併用して試料中の重水素位置を解析した。温度によらず重水素位置は12hサイトを占有するものの、温度の上昇によってその存在分布が広がりを見せ、特に100面での酸素との相関が強くなる傾向があることを明らかにした。

35001382
Conceptual design study of exchange of the in-vessel components by remote handling system for JT-60SA
林 孝夫; 櫻井 真治; 正木 圭; 玉井 広史; 吉田 清; 松川 誠
Transactions of the American Nuclear Society 96, p.783(2007) ; (JAEA-J 02973)
 JT-60SAはDEMO炉に向けてITERに寄与及び補完するトカマク型核融合装置である。JT-60SAの大きな特徴の一つはその高パワー及び長時間放電であり、その結果として、多量のDD中性子が発生する。真空容器の予想される放射化線量は、10年運転3か月冷却で1mSv/hを超えるため、真空容器内への人によるアクセスは制限される。そのため真空容器内機器を交換及び修理するために遠隔操作システムが必要とされている。本発表は、JT-60SAの遠隔操作システムに関するものであり、特に真空容器内機器の交換について詳細に述べる。JT-60SAのリモートハンドリング(RH)は、全18セクションのうち4か所の水平部大口径ポート(高さ1.8m,幅0.6m)を用いる。またRH装置は、重量物用と軽量物用の2種類のマニピュレータを備えている。ダイバータカセット等は重量物用マニピュレータを用いて交換し、第一壁アーマタイル等は軽作業用マニピュレータを用いて交換する。

35001383
Evaluation of melting temperature in (Pu0.43Am0.03U0.54)O2.00
中道 晋哉; 加藤 正人; 森本 恭一; 菅田 博正*; 鹿志村 元明; 安部 智之
Transactions of the American Nuclear Society 96, p.191-192(2007) ; (JAEA-J 02974)
 日本原子力研究開発機構では、高速炉燃料として20-32%Pu含有MOX燃料について開発を行ってきた。照射時の燃料ペレットの大きな温度勾配によりPu及びUの再分布が生じ、ペレット中心部でPu含有率が43%に増加する。照射中の燃料ペレットの設計温度はペレットの融点により制限される。そこで43%Pu含有MOXの融点を評価することが重要となる。本研究では、Re内容器を用いたサーマルアレスト法によって決定した融点の、直下の温度で熱処理することにより、43%Pu含有MOXが溶解しないことの確認を行った。43%Pu-MOX試料についてRe内容器を使って2978Kで40秒間の熱処理を行った。金相観察及びXRDの結果から、熱処理温度が固相温度以下の温度であることが示された。(Pu0.43Am0.03U0.54)O2.00は2978K±20Kで固相状態であることが確かめられた。

35001384
The Effect of O/M ratio on the melting of plutonium and uranium mixed oxides
加藤 正人; 森本 恭一; 菅田 博正*; 小無 健司*; 鹿志村 元明; 安部 智之
Transactions of the American Nuclear Society 96, p.193-194(2007) ; (JAEA-J 02975)
 核燃料の融点は、燃料の最高温度を制限するため、燃料開発を進めるうえで重要な物性データの一つである。MOX燃料は、O/M比が2.00より低い領域で用いられるため、融点に及ぼすO/Mの影響を調べることが重要である。MOXの融点測定は、タングステンカプセルに封入した試料によりサーマルアレストにより測定されてきた。最近、著者らは、タングステンカプセルによる測定は、試料との反応が起こるため、正しい融点を測定していないことを見いだした。カプセル材との反応を防ぐためにレニウム容器を用いて融点測定を行った。40%及び46%Puを含むMOXの融点をサーマルアレスト法により測定した。固相線温度は、O/Mの低下で上昇することが確認できた。得られた測定結果は、タングステンカプセルで測定された従来の測定結果より50-100K高い温度である。

35001385
Advances in fast reactor cycle technology development project
岩村 公道
Transactions of the American Nuclear Society 96, p.743-744(2007) ; (JAEA-J 02976)
 将来の多様な社会ニーズに対応可能な高速増殖炉サイクルシステムを明確化することを目的として、実用化戦略調査研究を実施した。フェーズ2の結果として、ナトリウム冷却高速炉(酸化物燃料),先進湿式法再処理,簡素化ペレット法燃料製造の組合せが、最も有望な概念として選定された。2006年3月には、内閣府の総合科学技術会議により、高速増殖炉サイクル技術が国家基幹技術として選定された。その後、文部科学省及び経済産業省によってとりまとめられた原子力技術開発に関する報告書において、2025年までの実証炉の運転開始及び2050年より前の商業炉の導入がうたわれた。これらの目標を実現するため、高速増殖炉サイクル実用化研究開発(FaCTプロジェクト)が開始された。このプロジェクトでは、概念設計研究と革新技術開発が2015年まで実施される予定である。

35001386
電解シミュレーション技術の開発; 使用済み酸化物燃料の乾式再処理プロセスの解析
林 博和; 赤堀 光雄; 湊 和生; 水口 浩司*; 川辺 晃寛*; 藤田 玲子*
電気化学および工業物理化学 75(7), p.528-534(2007) ; (JAEA-J 02977)
 使用済み燃料の乾式再処理シミュレーションコードSPR(Simulation code for Pyrochemical Reprocessing)の概要及び酸化物電解プロセスを模擬した計算結果について報告する。SPRコードでは電極反応と塩浴内での化学反応及び電流電位分布を併せた解析を行うことができる。使用済み(U, Pu)O2燃料を塩素化溶解したNaCl-2CsCl塩浴中に塩素/酸素混合ガスを吹き込みながら電解を行うことによってUO2とPuO2を共析させる酸化物電解プロセスのMOX電解共析工程を模擬した計算により、Pu4+/Pu3+循環反応と不純物として混入する鉄の影響、及び電極配置の影響などの試験結果を再現することができた。これによって、本コードを用いたシミュレーションを用いることにより、従来試験を重ねなければ把握することができなかったMOX電解共析工程における挙動を把握すること、及び乾式再処理プロセスの主要設備である溶融塩電解槽の設計を効率的に進めることが可能であることを示した。

35001387
Cu-Cr-Zr合金の強度特性に及ぼす熱処理条件の影響
青木 庄治*; 和田 正彦*; 山道 哲雄*; 毛利 憲介; 榎枝 幹男; 廣瀬 貴規; 鈴木 一彦
銅と銅合金 45(1), p.125-130(2006) ; (JAEA-J 02978)
 ITERにおいてブランケット,ダイバータ等で代表されるITER真空容器内構造機器に使用される構造材料の一つとして、析出強化型銅合金であるクロムジルコニウム銅合金が検討されている。本合金は、溶体化処理と直後の焼き入れ冷却によりCr, Zrを過飽和固溶体化し、その後の時効処理により微細なCr, Zr系析出物を析出させる方法で、高強度を得ている。ブランケットの製作においては、析出強化済の本合金を部材としてそのまま使用するこれまでの使用方法とは異なり、強度の低下を招く高温下での異種材料接合処理を施す必要があるため、高強度を再び得るために新たにこれら一連の析出強化処理を製品に施す方法を採っている。しかし、製品であるがため焼き入れ速度の差異により本合金の強度が大幅に変化することが危惧されている。そこで、本研究では、本合金の性能を引き出すために必要となる熱処理条件を把握することを目的として、本合金における幅広い熱処理条件下での機械的特性及び導電率の特性変化の調査を実施した。具体的には、溶体化焼き入れ速度の条件を0.05K/s-141K/sで変化させ738Kの時効処理を施した試験片の各状態(溶体化時の過飽和固溶体化状態,時効時の時効析出状態)における導電率を測定するとともに引張試験により強度を測定した。その結果、溶体化焼き入れ速度が強度に極めて大きな影響を与えることが判明し、ブランケットの製品強度を保証するうえで溶体化焼き入れ速度の管理がいかに重要であるかが、改めて明確になった。

35001388
地層処分技術に関する知識の伝承; 社会共通の知的財産作りに向けて
河田 東海夫
エネルギー 40(6), p.6-11(2007) ; (JAEA-J 02979)
 高レベル放射性廃棄物地層処分は、事業の長期性と安全確保の長期性から、地層処分技術に関しては実施主体や規制機関の活動を支えるための知識基盤として体系化し、それを次世代に向けて伝承していくことが不可欠である。日本原子力研究開発機構は、知識マネジメントの考え方を用いて、地層処分技術に関する知識を管理し次世代に伝承するための枠組みを提案している。本稿では、この地層処分技術に関する知識の伝承の枠組みを紹介する。

35001389
原子力への光ビーム利用; 廃炉,超伝導送電など新しい道開く
峰原 英介; 森下 喜嗣; 水木 純一郎
エネルギーレビュー 26(8), p.15-18(2006) ; (JAEA-J 02981)
 最先端光技術(放射光とレーザー)を原子力エネルギー分野など多くの分野に応用して、多種多様な現実の困難を解決すること、また新しい多くの知見を得ることが日本原子力研究開発機構量子ビーム応用研究部門で進められている。ここではそのような活動のうちから3つを紹介し、説明したい。ここでは、(1)原子炉解体のための高出力レーザーによる狭幅切断,(2)放射性同位元素(RI)に汚染された表面を非熱レーザー剥離を用いた完全除染、さらに(3)放射光ビームによる高温超伝導体発現メカニズムの解明を例として紹介する。

35001390
「もんじゅ」プラントデータ収録システムへの取り組み
橋本 大輔*; 小松 恵一*; 江口 健二*; 森薗 孝次
FAPIG (175), p.23-28(2007) ; (JAEA-J 02982)
 高速増殖原型炉もんじゅ(以下、もんじゅという)では、その性能試験等において得られる貴重な実機プラントのプロセス計測データを収集・蓄積し、有効に利用することを目的として、プラントデータ収録システム(Monju Integrated Data Acquisition System、以下、MIDASという)を設置している。もんじゅは現在、1995年に発生したナトリウム漏えい事故のため運転を停止中であるが、本年5月にはナトリウム漏えい対策に関する改造工事の本体工事が完了し、その機能試験が本格化するなど運転再開の機運が高まっている。そのような中、MIDASについてもこのほど性能試験の再開を前に更新することとなった。本稿は、今回更新したMIDASについて、紹介するものである。

35001391
中性子ラジオグラフィの基礎と応用
松林 政仁
ふぇらむ 12(4), p.199-205(2007) ; (JAEA-J 02983)
 中性子ラジオグラフィはX線ラジオグラフィと相補的な非破壊放射線透過検査法である。本解説では中性子ラジオグラフィの基礎から応用までを対象としてJRR-3熱中性子ラジオグラフィ装置を具体例として取り上げた。中性子ラジオグラフィ装置を中性子源,コリメータ及び撮像系の構成要素に大別し、それぞれの役割及び特徴を説明した。さらに、JRR-3熱中性子ラジオグラフィ装置の概要を述べるとともに、利用可能な撮像システムとして高解像度撮像システム及び高速度撮像システムを紹介した。応用分野としては、一般的な事例に加えて、熱流動現象の可視化,水素吸蔵合金開発への応用,農学関係への応用,古文化財への応用及び金属製品の非破壊検査について具体的な事例を示しながら幅広く解説した。

35001392
放射線抵抗性細菌のDNA修復機構の研究
鳴海 一成
放影協ニュース (52), p.7-8(2007) ; (JAEA-J 02984)
 デイノコッカス・ラジオデュランスはDNA損傷の中でも最も修復が困難な損傷であるDNA2本鎖切断を修復する能力に優れている。この細菌から分離された放射線感受性変異株の原因遺伝子を同定し、新規DNA修復促進タンパク質PprAを発見した。PprAタンパク質は、放射線照射後の細胞内で生合成が活発になり、放射線によってDNA鎖が切れた部分を認識して結合することにより、DNA鎖切断の修復を高効率で促進する作用を持つことがわかった。このタンパク質の機能を利用した高効率DNA修復試薬が開発され、国内のバイオ試薬メーカーから発売されている。さらなるDNA修復機構研究の進展により、DNA修復遺伝子やタンパク質の産業利用にも新たな展開が期待される。本解説では、財団法人放射線影響協会の第1回放射線影響研究奨励賞受賞研究の概要と今後の展望について紹介している。

35001393
遠隔パーティクルカウンターを用いたエアロゾルの選別計測; レーザー誘起蛍光を利用した飛散アスベストの可視化計測法
大図 章
クリーンテクノロジー 17(7), p.54-57(2007) ; (JAEA-J 02986)
 レーザー照射によりエアロゾルから発するレーザー誘起蛍光を可視化することにより、特定の物質から構成されるエアロゾル粒子のみを選別して計測する手法を開発している。本手法を実現する装置は、エアロゾル数量の遠隔計測用に開発された遠隔パーティクルカウンター技術をベースに構築され、YAGレーザー発振器,高速シャッター付高感度CCDカメラ及び制御装置から構成される。同装置には、エアロゾル粒子からのレーザー散乱光を除去し、散乱光の光波長と異なるレーザー誘起蛍光を検出するためのローパス光学フィルターが装備されている。本方法を色素が溶解されたアルコールエアロゾルミスト及びアスベスト粒子の識別計測に適用した。その結果、着目したエアロゾルのみを首尾よく可視化計測することができた。本手法は、特定の物質で構成されるエアロゾルのリアルタイム識別計測法として期待される。

35001394
原子力と社会の相互作用に関する考察
篠田 佳彦
日本原子力学会和文論文誌 6(2), p.97-112(2007) ; (JAEA-J 02987)
 本報は、原子力をめぐる社会問題(以下、社会問題)に対する検討とそれから導く対応策案の提示を行うものである。最初に、社会問題に対して原子力関係者が実施している対応策や原子力などを題材として研究している社会科学者の成果や活動などから社会問題に対する意識を明らかにし、それぞれが考えている社会問題像を紐解く。次に、社会問題の本質をより明確化するためにこれまでに実施された意識調査などからその要因を読み解く。そこから、社会問題の本質をつかみ取るとともに、人々の原子力に対する賛否態度を規定する因子(賛否態度規定因=意識構造)をモデル化する。以上の検討項目から、社会問題に対する取りうるべき方策について提言をまとめる。ここでは、市民と政策の決定,研究開発や事業の運営・運転を担う原子力関係者との間で相互の信頼感を築き上げていくことの重要性と手続き的公正を遵守した政策決定システムを構築することによって信頼を築く必要性を示す。

35001395
高温ガス炉水素電力コジェネレーションシステム用中間熱交換器の設計,1; 伝熱管のスペック選定及び1次応力評価
加藤 竜馬; 西原 哲夫; 國富 一彦
日本原子力学会和文論文誌 6(2), p.141-148(2007) ; (JAEA-J 02988)
 日本原子力研究開発機構では、水素製造設備とガスタービン発電システムを組合せた高温ガス炉水素電力コジェネレーションシステム(GTHTR300C)の設計検討を行っている。GTHTR300Cの主要な機器として中間熱交換器(IHX)がある。GTHTR300C用の中間熱交換器は交換熱量170MWtで、高温工学試験研究炉(HTTR)で実績のあるシェル&チューブ型中間熱交換器の技術をベースに設計を進めている。概念設計として、伝熱計算による伝熱管基本緒元の設定,概念構造検討,設計条件での1次応力の評価を行った。その結果、GTHTR300Cに用いられる大型のシェル&チューブ型中間熱交換器の技術的成立性の見通しが得られた。

35001396
DLVO理論に基づく地下水中でのモンモリロナイトゲルからの粒子の分散性に関する評価
黒澤 進; 長崎 晋也*; 田中 知*
日本原子力学会和文論文誌 6(2), p.205-213(2007) ; (JAEA-J 02989)
 DLVO理論を適用して、モンモリロナイトゲルの粒子間の剪断応力に相当する相互作用ポテンシャルを評価した。そして、Stokes則に従い、その相互作用ポテンシャルに相応する地下水流速を算定した。その結果、モンモリロナイト粒子の分散が生じるには、約10-5〜10-4m/sの範囲の地下水流速が必要であることが示された。この流速範囲は、我が国の地下深部の地下水流速よりも速いものである。また、熱運動に起因したモンモリロナイトのゲル粒子の易動性をMaxwell-Boltzmannの分布式を適用して検討した。その結果、ゲル状態にあるモンモリロナイト粒子の熱運動による易動性は、地下水中の溶存イオンの一般的な濃度条件のもとでは起こらないことが示された。本研究から、高レベル放射性廃棄物地層処分の性能評価において、核種移行におけるモンモリロナイト粒子の影響はほとんどないものと推測された。

35001397
軽水炉から高速炉への移行期にそなえて
河田 東海夫
日本原子力学会誌 49(6), p.410-415(2007) ; (JAEA-J 02990)
 昨今の化石燃料調達に関する国際競争の激化で原子力への期待が高まる中、主要国では高速炉開発も再活性化の兆しを見せている。そうした中我が国では官民の関係機関からなる「五者協議会」が設けられ、高速炉への移行シナリオを含む開発戦略に関する議論が開始されつつある。高速炉への移行期には、プルサーマル燃料を含む中間貯蔵軽水炉燃料の再処理と高速炉燃料再処理が並行的に行われることになる。本報では、このような移行期の問題を、高レベル廃棄物処分とプルトニウムバランスの観点から検討を行い、主要課題を明らかにする。

35001398
内包流体の温度成層化により円筒容器に生じる熱応力の評価線図
古橋 一郎*; 川崎 信史; 笠原 直人
日本機械学会論文集,A 73(730), p.686-693(2007) ; (JAEA-J 02991)
 内包流体の温度成層化により円筒容器に生じる熱応力の簡易評価の高精度化を目的に、流体との熱伝達及び熱伝導を考慮した容器の定常温度解析及びその結果を用いたシェル応力解析を行い、以下の結果を得た。ステップ状あるいはランプ状の流体温度に対し、容器の板厚平均温度は温度減衰係数bを用いて高精度に評価できる。容器の熱応力は係数比b/β(シェル係数)と無次元成層区間巾βLのみに依存する。この特性を利用して、容器の最大熱応力及びその発生位置を求める線図を作成した。線図を用いることにより、容器の定常熱応力の高精度の簡易評価が可能となった。設計コストの低減と設計合理化に寄与するであろう。

35001399
熱過渡応力評価線図の適用範囲の拡張; 両面熱伝達を受ける平板の熱過渡応力
古橋 一郎*; 笠原 直人; 柴本 宏
日本機械学会論文集,B 72(721), p.2083-2090(2006) ; (JAEA-J 02992)
 火力,原子力等の高温プラントの構造設計での熱過渡応力評価の充実化に資するため研究を実施し、次の成果を得た。これらの成果は設計基準における熱応力評価線図として使え、実構造の高温構造設計の熱過渡応力評価に役立てられる。オンライン損傷モニタリングとしても活用できる。(1)両面で熱伝達を受ける平板の非定常熱伝導及び熱応力の理論解析を行い、各種線図を作成した。片面熱伝達に対する従来のHeisler線図,Mcneil-Brock線図等と比べ適用範囲が大幅に拡張された。(2)流体温度がステップあるいは線形変化した場合の温度及び熱応力の応答線図を作成した。任意時点の表面温度,板厚平均温度,表面応力,曲げ応力及びピーク応力を線図から求めることができる。(3)流体温度がステップ変化あるいはランプ変化した場合の熱応力最大値及びその時点を求める線図を作成した。ステップ変化がランプ変化に変わることによる熱応力低減率が線図から直接読み取れるようになった。(4)定常温度で規格化した無次元温度ψ及び背面温度固定の定常熱応力で規格化した無次元熱応力βを導入した。これにより線図の読み取り精度が向上した。

35001400
核融合炉トリチウム水処理システムの研究開発動向
山西 敏彦; 岩井 保則; 磯部 兼嗣; 杉山 貴彦*
プラズマ・核融合学会誌 83(6), p.545-559(2007) ; (JAEA-J 02993)
 核融合炉施設は核融合を起こす燃料として、放射性物質であるトリチウムガス及び副次的に生じる高濃度トリチウム水を大量に取り扱う施設であり、施設内に設ける燃料循環システムにて処理を行い、燃料サイクルを施設内に閉じてしまうことが必要となる。したがって、核融合炉の安全確保と燃料サイクルの確立を目指すうえで、トリチウム水の処理は鍵となる技術である。本報では、ITERにおけるトリチウム水処理システムの開発経緯,第一壁冷却水やブランケット冷却水の処理までを見通した核融合原型炉に向けた水処理総合システムの研究開発状況を紹介する。

35001401
Degenerate optical parametric chirped-pulse amplifier pumped by an Yb:YLF chirped-pulse amplification laser
青山 誠; 赤羽 温; 小川 奏; 辻 公一; 杉山 僚; 張本 鉄雄*; 河仲 準二*; 西岡 一*; 藤田 雅之*; 山川 考一
レーザー研究 35(6), p.398-399(2007) ; (JAEA-J 02994)
 高輝度アト秒光量子ビーム生成を目指し高強度数サイクル光パラメトリックチャープパルス増幅(OPCPA)システムの開発を行っている。このレーザーシステムに要求される条件の一つに、パルス幅が光電場の数サイクルに相当する400nm程度の超広帯域レーザー光の増幅が挙げられる。この増幅帯域を実現するため、広帯域光源によりOPAを励起する方法を用い、システム開発を進めている。この励起光源には所属グループで開発した半導体直接励起Yb CPAレーザーシステムを用いる。この励起レーザーシステムは、われわれが提唱しているOPCPA方式に必要とされる広帯域レーザー光を発生させることが可能であり、Yb結晶を半導体直接励起することで、非常に高い電力-光変換効率を実現している。この論文では、おもに増幅帯域,増幅利得の実験結果について報告する。

35001402
Reduction of outgassing for suppressing electrical breakdown in the kicker magnet of J-PARC RCS
神谷 潤一郎; 金正 倫計; 荻原 徳男; 倉持 勝也; 植野 智晶; 高柳 智弘; 竹田 修; 渡辺 真朗; 山ア 良雄; 吉本 政弘
真空 50(5), p.371-377(2007) ; (JAEA-J 02995)
 J-PARC RCSにおける3GeVビーム取出し用キッカー電磁石は数10kVもの高電圧がかかるパルス電磁石である。そのため電磁石全体が真空中に設置される。その際にいかにして放電を防ぐかが、安定して長期的に電磁石を運転するうえで重要となる。本論文では、放電を防ぐために施されたキッカー電磁石の構造の改善、及び部材段階からの徹底したアウトガス低減による放電抑制の結果について報告する。

35001403
Visualization of 2D diffusion phenomena in rock by means of X-ray CT
佐藤 晃*; 深堀 大介*; 菅原 勝彦*; 澤田 淳; 武部 篤治*
Advances in X-ray Tomography for Geomaterials , p.315-321(2006) ; (JAEA-J 02996)
 単一の平行平板亀裂を含む岩石試料を対象とした二次元拡散実験を実施し、非収着性トレーサーが亀裂から岩石マトリクスへ拡散する様子についてX線CTを用いた可視化を行った。密度の高いトレーサーが亀裂から岩石マトリクスへ二次元的に拡散することによるCT値の増加を観察することができ、これに画像処理技術を適用することでより鮮明な画像を得るとともに、拡散現象の解析に有用なデータを得ることができた。二次元拡散試験の結果は数値解析結果とも比較可能で、適切な画像処理技術を用いることでX線CTを用いた岩石中の拡散現象の可視化手法の適用性を明示できた。

35001404
Doping Momentum dependence of charge dynamics in Nd2-xCexCuO4 (x=0, 0.075, and 0.15) studied by Resonant inelastic X-ray scattering
石井 賢司; 筒井 健二*; 遠藤 康夫*; 遠山 貴己*; 前川 禎通*; Hoesch, M.; 葛下 かおり; 稲見 俊哉; 坪田 雅己; 山田 和芳*; 村上 洋一; 水木 純一郎
AIP Conference Proceedings 850 , p.403-404(2006) ; (JAEA-J 02997)
 共鳴非弾性X線散乱(RIXS)による電子ドープ型高温超伝導体Nd1.85Ce0.15CuO4の電荷励起の研究について報告する。低エネルギーにある電荷励起を観測できるように実験条件を適切にあわせることで、フェルミエネルギーを越えるバンド内励起とバンド間励起を初めて分離することができた。バンド内励起では幅に運動量(q)依存があるような分散関係が現れるのに対し、バンド間励起では強度がゾーン中央で2eV付近に集中する。これらの実験結果は、ハバードモデルに基づくRIXSスペクトルの理論的な計算と一致している。

35001405
Momentum dependence of Mott gap excitations in optimally doped YBa2Cu3O7-δ studied by resonant inelastic X-ray scattering
石井 賢司; 筒井 健二*; 遠藤 康夫*; 遠山 貴己*; 葛下 かおり; 稲見 俊哉; 大和田 謙二; 前川 禎通*; 増井 孝彦*; 田島 節子*; 村上 洋一; 水木 純一郎
AIP Conference Proceedings 850 , p.445-446(2006) ; (JAEA-J 02998)
 共鳴非弾性X線散乱により最適ドープにある高温超伝導体YBa2Cu3O7-δ(Tc=93K)の研究を行った。非双晶の結晶を用いることでab面内における異方的なスペクトルを観測することができた。一次元CuO鎖からの励起はb*方向のゾーン端で2eVあたりに強度が増大するのに対し、1.5-4eVにあるCuO2面からの励起は運動量にほとんど依存しない。一次元及び二次元ハバードモデルに基づく理論計算では、異なったクーロンエネルギーを取り入れることで、観測したスペクトルを再現することができる。CuO鎖のモットギャップの大きさはCuO2面に比べて小さいことが明らかになった。

35001406
The Effect of argon and helium glow discharge cleaning on boronized surface in LHD
木津 要; 柳生 純一; 石本 祐樹*; 仲野 友英; 都筑 和泰*; 宮 直之; 芦川 直子*; 西村 清彦*; 相良 明男*
Annual Report of National Institute for Fusion Science; April 2005 - March 2006 , p.65(2006) ; (JAEA-J 02999)
 核融合科学研究所の大型ヘリカル装置(LHD)では、近年、金属壁へのヘリウム(He)蓄積を避けるために、Heグロー放電(He-GDC)ばかりでなく、Neグロー放電(Ne-GDC)も積極的に行っている。そこで、ヘリウムより大きな原子番号を持つ希ガスを用いたグロー放電のボロナイゼーション壁に対する影響を調査した。静岡大学でボロナイゼーションした試料(Si, F82H)をLHDのHe-及びAr-GDCに6時間,12時間(Arは6.5及び13時間)さらす前後でSIMS深さ分析を行ったところ、Heグローでは最大24nm程度しかボロン膜は損耗しなかったが、Arグローの場合は、6.5時間では平均150nm、13時間では平均190nmの膜厚の減少が観測された。LHDのグロー放電の条件では、ArとHeによる物理スパッタは同程度であるが、今回両者で大きな差異が出たことは、ArとHeグロー放電では電流密度の分布が異なり、局所的に大きなスパッタリングが起こっていることを示している。

35001407
Analysis of tracer migration process in the crack by means of X-ray CT
佐藤 晃*; 澤田 淳
Proceedings of 11th Congress of the International Society for Rock Mechanics (ISRM 2007), Vol.1 , p.15-18(2007) ; (JAEA-J 03000)
 割裂により岩石試料内部に作成した亀裂についてトレーサー試験を実施し、亀裂内部をトレーサーが移行する際のプロセスをX線CT法により可視化するとともに、X線CT法により評価した亀裂開口幅と移行プロセスとの関係についての考察を行った。その結果、X線CT法による可視化によりトレーサー移行の観察が可能であり、亀裂内のトレーサー濃度の時間変化から亀裂内の流れの不均質性が示唆された。

35001408
Radiation shielding study for the J-PARC project
中島 宏; 柴田 徳思; 中根 佳弘; 増川 史洋; 松田 規宏; 岩元 洋介; 平山 英夫*; 鈴木 健訓*; 三浦 太一*; 沼尻 正晴*; 中尾 徳晶*
Proceedings of 14th Biennial Topical Meeting of the ANS Radiation Protection and Shielding Division (CD-ROM) , p.267-282(2006) ; (JAEA-J 03001)
 大強度・高エネルギー陽子加速器コンプレックスである大強度陽子加速器施設(J-PARC)は、600MeVリニアック、1MW出力3GeVシンクロトロン,0.75MW出力50GeVシンクロトロンから構成される。これらの加速器はそれぞれ、核変換実験施設に200kW, 600MeVビームを、物質生命科学実験施設に1MW, 3GeVビームを、ハドロン実験施設に0.75MW, 50GeVのビームを供給する予定である。これらJ-PARCの特徴ゆえ、放射線遮蔽の観点からは、克服すべき問題が多数存在する。これらに対して、J-PARCでは合理的な遮蔽設計を行うために、多様な遮蔽計算手法を、それぞれ、その妥当性を検証しながら用いている。そこで、ここでは、J-PARCのために行われている放射線遮蔽研究の現状について報告する。

35001409
Recent progress on design and development of the ITER equatorial EC launcher
高橋 幸司; 小林 則幸; 春日井 敦; 坂本 慶司
Proceedings of 14th Joint Workshop on Electron Cyclotron Emission and Electron Cyclotron Resonance Heating (EC-14) , p.477-482(2006) ; (JAEA-J 03002)
 ITER水平ランチャー設計・開発の進展について発表する。ランチャーは、フロントシールドと可動ミラーや導波管伝送機器,内部遮蔽体などを設置するポートプラグから構成され、可動ミラーによる20MWのRFビームパワーのトロイダル入射可変とランチャー機器やコイルを中性子から守る十分な遮蔽性能が要求される。設計及び各種解析から、フロントシードは熱的な構造健全性は担保するものの、支持構造が電磁力に対して厳しく、電磁力低減のためのスリット構造や分離型構造を検討する必要があることが判明した。可動ミラーについては、想定熱負荷及び電磁力に対して構造健全性が確保できることを確認した。可動ミラーの駆動源として超音波モータを適用し、駆動機構モックアップの実験を行うと同時に耐放射線性超音波モータの開発も行っている。また、RFビームの逆方向入射が可能となるような設計オプションの検討も行い、構造的な実現性を確認した。

35001410
Effects of residual stress by weld overlay cladding and PWHT on the structural integrity of RPV during PTS
宇田川 誠; 勝山 仁哉; 鬼沢 邦雄
Proceedings of 2007 ASME Pressure Vessels and Piping Division Conference/8th International Conference on Creep and Fatigue at Elevated Temperatures (PVP 2007/CREEP-8) (CD-ROM) , 7p.(2007) ; (JAEA-J 03003)
 原子炉圧力容器の健全性を評価する際、容器内表面の肉盛溶接部を貫通する表面き裂を想定して破壊力学解析を行う。この解析のためには、原子炉圧力容器内面の肉盛溶接部の残留応力を考慮して、想定き裂の応力拡大係数を精度よく評価することが重要である。そこで、肉盛溶接,溶接後熱処理,耐圧試験及び運転状態を対象として、肉盛溶接部近傍の残留応力を有限要素法に基づく熱弾塑性クリープ解析により求めた。溶接後熱処理の後では、肉盛溶接部には室温で400MPa程度の高い引張応力が生じている。溶接残留応力解析結果に基づいて、加圧熱衝撃事象時における原子炉圧力容器の構造健全性に関して、表面き裂の深さや加圧熱衝撃(PTS)の種類に対する溶接残留応力の影響を評価した。

35001411
Direct damage evaluation method for thermal fatigue based on power spectrum density functions
酒井 信介*; 本田 圭*; 岡島 智史*; 泉 聡志*; 笠原 直人
Proceedings of 2007 ASME Pressure Vessels and Piping Division Conference/8th International Conference on Creep and Fatigue at Elevated Temperatures (PVP 2007/CREEP-8) (CD-ROM) , 7p.(2007) ; (JAEA-J 03004)
 原子力プラントの高低温流体の合流部では、サーマルストライピング現象による疲労損傷に対する健全性の評価が求められる。笠原らは、本現象によって配管壁面に発生する、熱応力のパワースペクトル密度(PSD)を評価する手法を提案している。評価された応力PSDから、応力変動のシミュレーションとレインフロー法による応力振幅の計数を行うことで、疲労損傷量の評価が可能である。しかしこの手順は、設計時にパラメータスタディを行うためには計算負荷が大きく、より簡便な評価手法が求められている。そこで、応力PSDの統計的特徴量から疲労損傷量を簡易評価する手法として有望な、損傷量近似値及び上下限値を評価可能なLCC法を取り上げ、本現象への適用性を調査し、それに基づき本現象に適した簡易評価手法を開発した。

35001412
Effect of stress intensity factor estimation scheme on the failure probability of RPV during pressurized thermal shock
鬼沢 邦雄; 小坂部 和也
Proceedings of 2007 ASME Pressure Vessels and Piping Division Conference/8th International Conference on Creep and Fatigue at Elevated Temperatures (PVP 2007/CREEP-8) (CD-ROM) , 7p.(2007) ; (JAEA-J 03005)
 加圧熱衝撃(PTS)事象の発生時には、原子炉圧力容器内面の肉盛溶接部は、溶接部と母材部との熱膨張係数の相違により高い引張応力を受けることに加えて応力の不連続を生じる。このような条件下での原子炉圧力容器の健全性評価を精度よく行うため、前報で新たに提案した、想定欠陥に対する応力拡大係数算出法を、確率論的破壊力学解析コードPASCALに導入した。精度の高いこの新たな応力拡大係数算出法を用いて、PTS時における表面き裂及び肉盛下き裂に対する条件付き裂進展確率を計算し、弾性応力解析に基づく従来法による結果との比較を行った。想定き裂の設定条件や数種類のPTS事象に対して、中性子照射量の関数としてき裂進展確率を定量的に評価した。また、新たな応力拡大係数算出法により、表面き裂の場合には従来法と比較してき裂進展確率が大幅に低減されることが示された。

35001413
Spectra thermal fatigue tests under frequency controlled fluid temperature variation; Strength tests
川崎 信史; 長谷部 慎一; 小林 澄男; 笠原 直人
Proceedings of 2007 ASME Pressure Vessels and Piping Division Conference/8th International Conference on Creep and Fatigue at Elevated Temperatures (PVP 2007/CREEP-8) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 03006)
 熱疲労試験設備SPECTRAを用いて、正弦波状の流体温度変動を与える熱疲労試験が実施された。流体温度変動の周波数は、0.05, 0.2, 0.5Hzが用いられている。所定の熱疲労サイクル数の疲労試験ののち、円筒試験体の内表面にき裂発生を確認した。0.05Hzの温度変動にて発生したき裂は、0.5Hzの温度変動のき裂と比較し、同一温度振幅,同一試験サイクル条件で、発生き裂個数が多く、き裂深さもより深いものであった。また、0.05Hz条件でのき裂発生領域は、0.5Hz条件のものよりも大きかった。周波数応答関数法を用い、疲労寿命の評価を実施し、試験結果と比較した。試験結果には、疲労寿命に対する周波数依存性が観察され、周波数応答関数法は、この依存性を評価できていた。試験結果は、周波数応答関数法に基づく疲労評価が妥当であることを示している。

35001414
Crack growth analyses of SCC under various residual stress distributions near the piping butt-welding
勝山 仁哉; 浅野 航*; 鬼沢 邦雄; 望月 正人*; 豊田 政男*
Proceedings of 2007 ASME Pressure Vessels and Piping Division Conference/8th International Conference on Creep and Fatigue at Elevated Temperatures (PVP 2007/CREEP-8) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 03007)
 低炭素ステンレス鋼で製作された再循環系配管の溶接部近傍において応力腐食割れが見いだされたことから、配管溶接部における溶接残留応力とき裂進展挙動を把握することが重要な課題となっている。本研究では、有限要素法を用いた熱弾塑性解析により配管突合せ継手の多層溶接による溶接残留応力を算出するとともに、求めた溶接残留応力下におけるき裂進展解析を影響関数法を用いて行った。配管形状(直径,肉厚),溶接条件,溶接線からの距離等が、応力腐食割れによるき裂進展挙動に及ぼす影響について詳細に評価を行った。この結果、き裂進展速度は直径が大きく、肉厚が薄いほど速くなることがわかった。また、溶接線からの距離により、き裂進展挙動が異なることが明らかとなった。

35001415
Evaluation of strength characteristics considering microscopic heterogeneity of structural steels and weld zone by using FEM-MD coupling method
望月 正人*; 樋口 良太*; 勝山 仁哉; 豊田 政男*
Proceedings of 2007 ASME Pressure Vessels and Piping Division Conference/8th International Conference on Creep and Fatigue at Elevated Temperatures (PVP 2007/CREEP-8) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 03008)
 構造鋼やその溶接部の強度特性は、微視的不均質性に影響を受ける。このような領域では変位ミスマッチに伴う応力集中が生じると考えられることから、粒界やその隣同士の相関を考慮した破壊のメカニズム及び材料設計を行うためには、応力分布を調査することが重要である。FEM-MD結合数値解析法は、微視的不均質性に起因する変位ミスマッチを取り扱うことのできる手法である。本研究では、FEM-MD結合法について提案し、FEM-MD法により調査した鉄鋼及びその溶接熱影響部における微視不均質性の影響について検討を行う。

35001416
Fatigue strength evaluation of perforated plate at elevated temperature using stress redistribution locus method
渡部 修*; Bubphachopt, B.*; 川崎 信史; 笠原 直人
Proceedings of 2007 ASME Pressure Vessels and Piping Division Conference/8th International Conference on Creep and Fatigue at Elevated Temperatures (PVP 2007/CREEP-8) (CD-ROM) , 9p.(2007) ; (JAEA-J 03009)
 応力集中を受ける有孔平板の疲労特性に対する形状の影響を応力再配分軌跡法(SRL法)を適用し検討した。試験温度は、550℃であり、SUS304製の有孔平板を用いて疲労試験が実施された。有孔平板は、孔数と孔径をパラメータとした。試験体の幅方向に1つあるいは2つの孔を配置している。孔径は2mmから8mmである。

35001417
Creep-fatigue strength evaluation of perforated plate at elevated temperature using stress redistribution locus method
Bubphachopt, B.*; 渡部 修*; 川崎 信史; 笠原 直人
Proceedings of 2007 ASME Pressure Vessels and Piping Division Conference/8th International Conference on Creep and Fatigue at Elevated Temperatures (PVP 2007/CREEP-8) (CD-ROM) , 9p.(2007) ; (JAEA-J 03010)
 有孔平板の高温疲労特性に対するクリープの影響を、応力再配分軌跡法(SRL法)を適用し検討した。試験温度は、550℃であり、SUS304製の有孔平板を用いてクリープ疲労試験が実施された。有孔平板は、孔数と孔径をパラメータとした。試験結果は、SRL法と時間消費則を用いて評価した。

35001418
IAEA coordinated research project on master curve approach to monitor fracture toughness of RPV steels; Applicability for highly embrittled materials
Planman, T.*; 鬼沢 邦雄; Server, W.*; Rosinski, S.*
Proceedings of 2007 ASME Pressure Vessels and Piping Division Conference/8th International Conference on Creep and Fatigue at Elevated Temperatures (PVP 2007/CREEP-8) (CD-ROM) , 9p.(2007) ; (JAEA-J 03011)
 破壊靱性マスターカーブ法では、原子炉圧力容器鋼等に対して一定の温度依存性が仮定されている。この温度依存性は、高照射量や熱時効材などの高脆化材にも適用されるが、上部遷移温度域では、低い破壊靱性値が観察される場合がある。国際原子力機関IAEAでは、照射材などの関連する原子炉圧力容器鋼の破壊靱性データを収集・分析し、マスターカーブの形状に関する確認を行うことを目的の1つとした国際協力研究を開始した。粒界破壊の発生する場合も含めたこれまでのデータレビューの結果、全般的にマスターカーブ法が適用できることを確認した。粒界破壊が多い場合においても、非均質材料に適用可能な手法を適用することにより、実測値は予測値と非常によく対応することが示された。

35001419
Concept of compact low aspect ratio demo reactor, SlimCS
飛田 健次; 西尾 敏; 佐藤 正泰; 櫻井 真治; 林 孝夫; 芝間 祐介; 礒野 高明; 榎枝 幹男; 中村 博文; 佐藤 聡; 江里 幸一郎; 林 巧; 廣瀬 貴規; 井上 多加志; 河村 繕範; 小泉 徳潔; 中村 幸治; 毛利 憲介; 野本 恭信; 大森 順次; 大山 直幸; 坂本 慶司; 鈴木 哲; 鈴木 隆博; 谷川 博康; 土谷 邦彦; 鶴 大悟
Proceedings of 21st IAEA Fusion Energy Conference (FEC 2006) (CD-ROM) , 8p.(2006) ; (JAEA-J 03012)
 コンパクトな原型炉を実現するための新概念を提案する。原型炉で見通しうる保守的な設計パラメータでありながら、経済的実用炉の設計例ARIES-RS, CRESTと同規模にコンパクトな原型炉が実現できる可能性を示した。本研究で提案する炉SlimCSは、主半径5.5m,アスペクト比2.6,最大磁場16.4T,核融合出力2.95GWの原型炉であり、規格ベータ値2,規格化密度0.4のときにゼロ電気出力、規格ベータ値4.3,規格化密度1.1の定格運転では1GW程度の正味電気出力を発生する。この概念の特徴は、小規模な中心ソレノイド(CS)を設置することによって形状制御等の炉心プラズマにかかわる技術的困難を回避しつつ、トロイダル磁場コイルをできる限り中心軸に近づけて設置し、プラズマを低アスペクト比化したことである。これによりトロイダル磁場コイルの蓄積エネルギーが大幅に減少し、トロイダル磁場コイルの物量、ひいては炉本体の建設コストの削減に寄与しうる。また、低アスペクト比のため高楕円度及び高ベータ限界が期待され、このようなコンパクトな原型炉が構想可能になる。

35001420
Off-axis current drive and current profile control in JT-60U
鈴木 隆博; 井手 俊介; 及川 聡洋; 藤田 隆明; 石川 正男*; 関 正美; 松永 剛; 武智 学; 内藤 磨; 濱松 清隆; 末岡 通治; 細山 博己; 中里 命; JT-60チーム
Proceedings of 21st IAEA Fusion Energy Conference (FEC 2006) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 03013)
 モーショナルシュタルク効果偏光計を用い、中性粒子ビーム(NB)による周辺部駆動電流密度分布を初めて測定し、空間的に局在化していることを明らかにした。電流駆動位置は中性子分布計測と合致し、全駆動電流は表面の周回電圧の減少と合致する。周辺部での電流駆動はプラズマ中心部の安全係数を上げプラズマの性能を制限する不安定性を抑制することができる。LH波による周辺部電流駆動を用い、安全係数最小値(qmin)の実時間制御システムを開発した。本システムを高βプラズマ(βN=1.7, βp=1.5)に適用し、qminを上昇させて不安定性を抑制した結果、蓄積エネルギーは16%上昇した。

35001421
Enhanced H-mode pedestal and energy confinement by reduction of toroidal field ripple in JT-60U
浦野 創; 大山 直幸; 神谷 健作; 小出 芳彦; 竹永 秀信; 滝塚 知典; 吉田 麻衣子; 鎌田 裕; JT-60チーム
Proceedings of 21st IAEA Fusion Energy Conference (FEC 2006) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 03014)
 JT-60Uでのフェライト鋼装着によるトロイダル磁場リップル低減に伴ってペデスタル圧力及びエネルギー閉じ込め性能が向上した。特に大体積配位におけるNBの順方向入射時には、フェライト鋼によりトロイダル回転分布の逆方向成分が減少し、ペデスタル圧力が増加した。このときELM周波数は減少し、ELMエネルギーロスは増加した。ペデスタル圧力の増加には、ペデスタル幅の増加を伴うことがわかった。順方向のトロイダル回転の増加及びトロイダル磁場リップルの低下に伴ってエネルギー閉じ込め性能が向上することがわかった。

35001422
Edge pedestal physics and its implications for ITER
鎌田 裕; Leonard, A. W.*; Bateman, G.*; Becoulet, M.*; Chang, C. S.*; Eich, T.*; Evans, T. E.*; Groebner, R. J.*; Guzdar, P. N.*; Horton, L. D.*; Hubbard, A. E.*; Hughes, J. W.*; 居田 克巳*; Janeschitz, G.*; 神谷 健作; Kirk, A.*; Kritz, A. H.*; Loarte, A.*; Lonnroth, J. S.*; Maggi, C. F.*; Maingi, R.*; Meyer, H.*; Mukhovatov, V.*; Onjun, T.*; Osipenko, M.*; Osborne, T. H.*; 大山 直幸; Pacher, G. W.*; Pacher, H. D.*; Pankin, A. Y.*; Parail, V.*; Polevoi, A. R.*; Rognlien, T.*; Saibene, G.*; Sartori, R.*; 嶋田 道也*; Snyder, P. B.*; 杉原 正芳*; Suttrop, W.*; 浦野 創; Wade, M. R.*; Wilson, H. R.*; Xu, X. Q.*; 吉田 麻衣子; ITPA周辺及びペデスタルの物理トピカルグループ
Proceedings of 21st IAEA Fusion Energy Conference (FEC 2006) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 03015)
 周辺ペデスタル研究の進展とITERへ向けた予測について、最近の世界の研究をレビューする。周辺ペデスタル構造を決めるパラメータリンケージを明らかにするとともに、プラズマ過程と原子分子過程の両方がペデスタル幅を決定すること,周辺圧力勾配がピーリングバルーニング理論で系統的に説明できること,計測機器の進展によってELMの発展が明らかとなり非線形理論で説明可能であること,小振幅ELMの系統的同定がすすんだことなど、大きな発展があった。これらに基づいて、ITERのプラズマ性能の予測,ELMの小規模化等の検討が大きく進んだ。

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Particle control under wall saturation in long-pulse high-density H-mode plasmas of JT-60U
久保 博孝; 仲野 友英; 朝倉 伸幸; 竹永 秀信; 都筑 和泰; 大山 直幸; 川島 寿人; 清水 勝宏; 浦野 創; 藤本 加代子; JT-60チーム
Proceedings of 21st IAEA Fusion Energy Conference (FEC 2006) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 03016)
 短時間放電では、第一壁が水素を吸収することにより、排気の役目を担っている(壁排気)。短時間放電ではこの壁排気はプラズマの密度制御に有効であるが、将来の長時間放電では壁の水素蓄積量が飽和に達するため壁排気が効かなくなると考えられている。JT-60では、30秒間のELMy Hモード放電を繰り返し行うと、放電中に壁飽和が観測された。この壁飽和状態における粒子制御及び粒子挙動に関して報告する。JT-60Uでは、壁が飽和し壁排気が有効でない場合、さらにはダイバータ板の温度上昇によりダイバータ板からガス放出がある場合において、ダイバータ排気を用いることにより高密度ELMy Hモードプラズマの密度制御が可能であることを実証した。粒子挙動に関しては、第一壁に水素が蓄積し飽和する過程,ダイバータ板の温度上昇によりガスが放出される過程,プラズマ壁相互作用の変化により壁からの粒子の入射と放出が変化する過程に関して議論する。

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Hydrogen retention and carbon deposition in plasma facing wall and shadowed area of JT-60U
正木 圭; 田辺 哲朗*; 広畑 優子*; 大矢 恭久*; 柴原 孝宏*; 林 孝夫; 杉山 一慶*; 新井 貴; 奥野 健二*; 宮 直之
Proceedings of 21st IAEA Fusion Energy Conference (FEC 2006) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 03017)
 本研究では、炉内の水素同位体残留量の定量評価及び残留過程を明らかにすることを目的として、従来のダイバータ領域に加え、第一壁及びプラズマから影の部分における炭素の損耗/再堆積分布及び水素同位体蓄積分布を評価した。真空容器内全体でプラズマ対向壁を観察した結果、おもに外側ダイバータ及び上部第一壁が損耗領域であり、内側ダイバータ及び内側第一壁が堆積領域であった。トロイダル方向の対称性を仮定したダイバータ領域全体の損耗/再堆積量は損耗量0.34kg、再堆積量(ダスト含む)0.55kgであり、この差0.21kgが第一壁領域の損耗が寄与していると考えられる。また、最も厚い再堆積層(内側ダイバータ)に蓄積された水素同位体蓄積濃度を評価した結果、(H+D)/C〜0.02であった。真空容器ベーキング温度を150℃に下げた運転後、プラズマから影の部分であるダイバータ下部を調べた結果、約2μmの堆積層があり(H+D)/Cが約0.8と高いことがわかった。しかし、この領域における炭素堆積率は、8×1019atoms/sとタイル表面の炭素堆積率(6×1020atoms/s)と比較すると約一桁小さい値であった。

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Investigation of transmission characteristic in corrugated waveguide transmission lines for fusion application
高橋 幸司; 梶原 健; 春日井 敦; 小林 則幸; 坂本 慶司
Proceedings of 8th IEEE International Vacuum Electronics Conference (IVEC 2007) , p.275-276(2007) ; (JAEA-J 03019)
 ITER用ミリ波伝送部に相当するコルゲート導波管や7個のマイターベンドから構成される伝送系の170GHz,大電力長パルス伝送実験を行った。その結果、ITER仕様値と同等レベルの92%という伝送効率が得られることを実証した。伝送時に導波管の温度上昇が観測されたが、基本伝送モードであるHE11とベンド等で励起され得るHE12やHE13の高次モードのビート波長に相当する間隔での導波管温度上昇は見られず、一方、ベンド間あるいはその近傍において比較的高い温度上昇が観測された。この結果から、高次モードの励起割合は極めて低いもののベンドでの励起と反射が生じ、導波管の温度を上昇させていると考えられる。

35001426
Parametric studies on nuclear criticality safety design of MOX fuel fabrication facility
清水 義雄; 水津 祐一; 村上 龍敏; 由利 明哉
Proceedings of 8th International Conference on Nuclear Criticality Safety (ICNC 2007), Vol.1 , p.335-340(2007) ; (JAEA-J 03020)
 高速増殖炉のためのMOX燃料製造施設に対する臨界安全評価を実施した。次の3つのケースに対してSCALEを用いたパラメトリックな検討を行った。(1)Pu*(235U, 239Pu, 241Pu)質量管理におけるプルトニウム同位体組成の影響を評価し、運転時の管理条件下における核的制限値の設定条件を設定した。(2)MOX燃料製造施設で用いられる有機物に対する減速効果として、有機物含有率と等価な水分含有率を評価した。(3)MOXと水の不均一効果として、2層モデル及びSMORESを用いて、均一モデルとの差を評価した。

35001427
Real-time HTTR condition monitoring with neural networks
鍋島 邦彦; 中川 繁昭; 牧野 純*; 工藤 和彦*
Proceedings of International Symposium on Symbiotic Nuclear Power Systems for 21st Century (ISSNP) (CD-ROM) , p.142-147(2007) ; (JAEA-J 03021)
 2つのタイプのニューラルネットワークを用いて、HTTRの実時間状態監視を行った。自己相関型多層パーセプトロン(MLP)で、プラント全体の動特性をモデル化し、いろいろな種類の異常事象を検知することができた。もう一つのニューラルネットワークは、MLPが異常を検知した後、ヘリウム漏洩の発生時間と漏洩量を推定することができる。

35001428
High quality education & training towards Monju re-operation
澤田 誠; 桜井 直人
Proceedings of International Symposium on Symbiotic Nuclear Power Systems for 21st Century (ISSNP) (CD-ROM) , p.275-283(2007) ; (JAEA-J 03022)
 1995年12月にナトリウム漏洩事故を起こした高速増殖原型炉「もんじゅ」は、2008年の再初臨界を目指して改造工事が進められている。「もんじゅ」の安全運転の可否は核燃料サイクルの開発に影響を与える重要な課題である。ゆえに、「もんじゅ」の安全運転を確実に行うためには質の高い教育研修が求められる。「もんじゅ」事故の教訓をもとに「もんじゅ」では教育研修体系枠組みの新構築,「もんじゅ」FBR学校の新規開校,シミュレータ研修の高度化など教育研修体系を大幅に改訂した。現在、「もんじゅ」の運転再開に向けて計29コースの教育研修が行われている。

35001429
1356MWe低減速軽水炉(FLWR)の熱工学的成立性評価
Liu, W.; 呉田 昌俊; 吉田 啓之; 大貫 晃; 高瀬 和之; 秋本 肇
第12回動力・エネルギー技術シンポジウム講演論文集 , p.103-106(2007) ; (JAEA-J 03024)
 原子力機構が開発した稠密バンドル用限界出力相関式、及びMartinelli-Nelson二相増倍係数をTRAC-BF1に集約し、コード改良を行い、低減速軽水炉用熱設計コードが開発された。本研究は、開発したコードを用いて、900体の燃料集合体から構成される1356MWe増殖型低減速軽水炉の実機炉心の熱工学的成立性を評価した。評価にあたって、通常運転時及び運転時異常な過渡変化において、沸騰遷移を許容しないという従来BWR熱設計方針を用いた。評価手順は、まず運転時異常な過渡変化におけるMCPRの変化量ΔMCPRを評価し、これに基づいて通常運転時必要なMCPR及び冷却材流量を算出した。その結果、強制循環型低減速軽水炉の熱工学成立条件は、運転制限MCPRが1.32(炉心平均質量速度が640kg/m2s)以上にすることである。また、自然循環型の熱工学成立条件は、運転制限MCPRが1.19(炉心平均質量速度が560kg/m2s)以上にすることである。

35001430
高温ガス炉の炉特性・安全性解析手法の高度化; 冷却材流量喪失試験
高松 邦吉; 武田 哲明; 中川 繁昭; 後藤 実
第12回動力・エネルギー技術シンポジウム講演論文集 , p.213-214(2007) ; (JAEA-J 03025)
 日本原子力研究開発機構では、高い固有の安全性と経済性を有するVHTRシステムの開発に資するために、高温工学試験研究炉(HTTR)における安全性実証試験の実測データを用いて、原子炉動特性解析コードを開発し、高温ガス炉の事故時における動特性挙動の評価手法を高度化する研究を行っている。本研究では、多領域反応度フィードバックを考慮した炉心モデルを用いて冷却材流量部分喪失試験、及び冷却材流量喪失試験の解析を実施した。冷却材流量部分喪失試験については実測値と一致していることを確認した。さらに本解析モデルを用いて冷却材流量喪失試験の解析を行った結果、循環機停止直後に原子炉出力は崩壊熱レベルまで低下し、再臨界が生じても原子炉出力は直に低下することを確認した。

35001431
原科研タンデム加速器ターミナル180°偏向電磁石電源の更新計画
花島 進
第19回タンデム加速器及びその周辺技術の研究会報告集 , p.50-53(2007) ; (JAEA-J 03026)
 原子力科学研究所タンデム加速器は折り返し型構造のため高電圧端子内に180°偏向磁石を持っている。公称250A40Vのこの電源は、作られてから20年以上経過し、さまざまな故障が発生するようになった。そこで、電源を作り直すことにした。この電源は、原子力科学研究所タンデム加速器高電圧端子内(ターミナル)の特殊な環境で動作する必要がある。すなわち、(1)通常6気圧のSF6ガス内で動作,(2)一次電源は400Hz三相200V、及び(3)加速器の静電気放電のサージ電圧に耐えることが要求される。また、(4)電力効率の良いこと,(5)加速器の制御システムとの整合性がよく、磁場負帰還制御技術を組み込めるようにすること,(6)小電流出力時にも制御性が良いことが求められる。本研究会では現在設計中の電源本体の設計,タンデム加速器の中に設置してテストしている制御用の回路などについて報告する。

35001432
エネルギー回収型リニアックによる新しい光量子源
羽島 良一
電気学会研究会資料,光・電子デバイス研究会(OQD-07-30〜35) , p.1-5(2007) ; (JAEA-J 03027)
 高輝度電子ビームを大電流で連続加速できるエネルギー回収型リニアック(ERL)は、新しい光量子源を実現する有用な加速器である。本報では、次世代X線放射光源を中心に、ERLを用いた新しい光量子源を紹介する。

35001433
珪質岩盤中の坑道掘削に伴う水-応力連成挙動に関する数値解析的検討
真田 祐幸; 松井 裕哉; 山本 卓也*; 青木 智幸*; 小川 豊和*; 城 まゆみ*; 藤井 義明*
平成19年度資源・素材学会北海道支部総会及び春季講演会講演要旨集 , p.9-10(2007) ; (JAEA-J 03028)
 現在、日本原子力研究開発機構は、高レベル放射性廃棄物の地層処分に関する研究開発の一環として、北海道幌延町で幌延深地層研究計画と称する地下研究施設(掘削深度500m)の建設を伴う研究プロジェクトを進めている。この地下研究施設周辺に分布する岩石は、多孔質でかつ低透水性であるという特徴を有する。このため、岩盤中に坑道を掘削すると、坑道周辺岩盤中に大きな過剰間隙水圧が生じ、坑道周辺の岩盤が不安定になる可能性がある。本研究では、このような水-応力の連成挙動が周辺岩盤及び支保に与える影響を数値解析により検討した。その結果、等方圧でない場合は、坑道奥部に過剰間隙水圧が発生し、かつその消散がゆっくり進むことにより長期に渡る特徴的な坑道の変形が生じる可能性が示唆された。一方、支保工の耐力は発生支保応力に対し、十分な裕度があることがわかった。

35001434
低放射性固体廃棄物に付着するPuの定量方法の検討
牧野 理沙; 富川 裕文; 雛 哲郎; 大曽根 隆; 黒巣 一敏; 福原 純一; 小林 健太郎; 株木 俊英*
核物質管理学会(INMM)日本支部第27回年次大会論文集(CD-ROM) , 7p.(2006) ; (JAEA-J 03029)
 再処理技術開発センターは、低放射性固体廃棄物に付着する核物質量を保管廃棄物として適正に計量管理するため、測定方法の検討を行ってきた。TRPから発生した廃棄物中の核物質量を推定するために、数種類の既存の非破壊測定装置を使用して、小型廃棄物容器(カートンボックス)単位やドラム缶単位で測定を行ったところ、表面線量率の高い廃棄物にはPuが微量に含まれる傾向が見られたものの、TRPから発生する廃棄物は、含まれるCmの影響が大きく、Pu量を正確に測定することはできなかった。今後は、上記の試験を踏まえて、TRPの廃棄物測定に適した非破壊装置の調査・設計を行い、Puを定量する予定である。

35001435
超音波による流速ベクトル分布計測システムの開発
大林 寛生; 山口 浩平*; 今 誓志*; 武田 靖*
日本流体力学会年会2006講演要旨集(CD-ROM) , 4p.(2006) ; (JAEA-J 03030)
 超音波流速分布計測法は、計測される速度成分が計測線上の1方向に限定されるため流動場全体の挙動を把握する際には、一般的により複雑な計測システムの構築が必要である。これに対し、本研究では簡略化した構成で計測により得られる速度情報量の向上を目的とした新たなシステム(Vector-UVP)の開発を行い、実験計測における有効性について評価を行った。計測対象は定常流(定常回転円筒内流体の流れ),非定常流(円柱後流)とし、理論値との比較,時系列情報からの流動構造変動周期やテイラー凍結仮説を用いての渦度情報の抽出等を行った。

35001436
原子力機構エネルギー回収型リニアックの現状 (2006)
羽島 良一; 沢村 勝; 永井 良治; 菊澤 信宏; 西森 信行; 飯島 北斗; 西谷 智博; 峰原 英介
Proceedings of 3rd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 31st Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.251-253(2006) ; (JAEA-J 03031)
 2005年10月に、日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構が統合し、日本原子力研究開発機構が発足した。これに合わせて、自由電子レーザー研究グループはERL光量子源開発研究グループ(量子ビーム応用研究部門先進光源開発研究ユニットに所属)となった。これまでに蓄えた超伝導加速器の経験をもとにして、高出力自由電子レーザーに加えて、ERL型次世代放射光源の要素技術開発を行っている。本報では、ERLグループの現況を報告する。

35001437
ERL実証機のための入射器の設計
羽島 良一; 永井 良治; 飯島 北斗; 西谷 智博; 西森 信行; 大沢 哲*; 坂中 章悟*; 宮島 司*
Proceedings of 3rd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 31st Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.753-755(2006) ; (JAEA-J 03032)
 ERL型次世代放射光源を目指したR&Dが、KEKとJAEAを中心として進められている。本R&Dでは、必要な要素技術開発を行い、続いて実証機(小型ERL)での総合試験を行った後に、ERL放射光施設の建設に進む予定である。要素技術開発の重要なテーマの一つが、大電流,低エミッタンス電子ビームを発生し安定に加速できる入射器の設計製作である。われわれは、次世代放射光源が要求する仕様、平均電流100mA,規格化エミッタンス0.1mm-mradを満たすために、NEA表面を持つ光陰極(熱エミッタンスが小さい)を備えたDC電子銃と超伝導入射加速器の組合せを採用し、設計の最適化を進めている。

35001438
高強度・高コントラストOPCPA/Ti:sapphireハイブリッドレーザーシステム
桐山 博光; 森 道昭; 大東 出; 小瀧 秀行; 金沢 修平; 近藤 修司; 中井 善基; 下村 拓也*; 田上 学*; 圷 敦; 岡田 大; 本村 朋洋*; 大道 博行; Bulanov, S. V.; 木村 豊秋
レーザー学会第362回研究会報告; 高機能固体レーザーとその応用 , p.33-37(2007) ; (JAEA-J 03033)
 相対論領域における高強度レーザーと物質との相互作用の研究のために、従来のチタンサファイアチャープパルス増幅(CPA)と光パラメトリックチャープパルス増幅(OPCPA)を組合せた高強度・高コントラストレーザーの開発を行った。10Hzの繰り返し動作で、パルス圧縮前でパルスあたりのエネルギー2.9Jを得た。再圧縮されたパルス幅は19fsであり、ピークパワーは80TWに達する。OPCPAを前置増幅器として導入することにより、従来よりも3から4桁高い数ピコ秒領域で7×10-9以下の高いコントラストを達成した。また、最終段のチタンサファイア結晶を77K以下に冷却することにより、最大励起時で4kmの長い熱レンズ焦点距離を得た。

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