学会誌等掲載論文
※下記の研究開発成果は資料名順に並んでいます。

2008年1月


36000017
Extraction behavior and separation of lanthanides with a diglycol amic acid derivative and a nitrogen-donor ligand
下条 晃司郎; 長縄 弘親; 野呂 純二*; 久保田 富生子*; 後藤 雅宏*
Analytical Sciences 23(12), p.1427-1430(2007) ; (JAEA-J 03342)
 炭素C,水素H,酸素O,窒素NのみからなるCHON型抽出剤は環境調和型の配位子として注目を浴びている。本研究ではこのCHON型抽出剤としてN, N-dioctyldiglycol amic acid (DODGAA)とN, N, N', N'-tetrakis(2-pyridylmethyl)ethylenediamine (TPEN)を用い、ランタノイドの抽出分離について検討した。その結果、DODGAAは重ランタノイドに対して高い抽出能と選択性を有しており、リン酸系抽出剤に匹敵する能力を持っていた。また、TPENにおいては軽ランタノイドに対して前例にないほど高い選択性を示した。さらに両抽出剤を組合せることにより、軽,中,重ランタノイドの相互分離を達成した。

36000018
Highly selective extraction of TcO4-, ReO4- and MoO42- by the new ligand, 2,2'-(Methylimino)bis(N,N-Dioctylacetamide) (MIDOA)
佐々木 祐二; 北辻 章浩; 木村 貴海
Chemistry Letters 36(11), p.1394-1395(2007) ; (JAEA-J 03344)
 新規に開発したテトラオクチル-3-メチルイミノジグリコールアミド(TOMIDGA)によるオキソ酸イオンの抽出を研究した。TOMIDGAは高い疎水性を持ち、ドデカン等あらゆる溶媒に溶解することを確認した。TOMIDGAを用いて硝酸溶液からドデカン溶媒への金属イオンの抽出を検討した。プロセス適応性を明らかにするため、幾つかのイオンを試験した結果、TcO4-, ReO4-, Cr2O72-, MoO42-、及びWO42-などのイオンに高い分配比を示すことを明らかにした。

36000019
Magnetically induced ferroelectricity in multiferroic compounds of RMn2O5
木村 宏之*; 小林 悟*; 脇本 秀一; 野田 幸男*; 近 圭一郎*
Ferroelectrics 354, p.77-85(2007) ; (JAEA-J 03345)
 マルチフェロイック物質であるRMn2O5のさまざまな種類の希土類金属を用いた試料について、中性子散乱とバルク測定により磁性と誘電性を温度と磁場の関数で調べた結果についてレビューする。低温で反強磁性転移と強誘電転移が温度低下に伴い連続して起こり、反強磁性と強誘電が同時に実現する複合フェロ状態を観測した。この系における強誘電性は磁場により誘起または消滅するが、磁場中中性子散乱実験から、強誘電性の発現には反強磁性磁気構造の格子整合性が不可欠であることを明らかにした。また磁気構造上、強誘電性が磁場により誘起される背景には希土類金属の磁気モーメントも重要な役割を果たすことを明らかにした。

36000020
Design study of a new antenna system for steering microwave beam in electron cyclotron heating/current drive system
森山 伸一; 関 正美; 藤井 常幸
Fusion Engineering and Design 82(5-14), p.785-790(2007) ; (JAEA-J 03346)
 ミリ波を用いる電子サイクロトロン加熱(ECH)装置には、局所的かつ効果的な電子加熱,電流駆動ができる長所があるが、実時間でのパワー計測が難しいという欠点がある。伝送路途中にセラミック板を挿入し、その誘電損失による発熱によってパワーを測定する手法の開発に着手した。板端部温度は0.2秒程度の時定数で変化することを計算で確かめたうえで、極細熱電対を用いたMW級測定試験を行い、1秒以下程度の応答速度を確認した。一方、特殊な反射面を有する反射鏡を直線駆動させ、電磁波ビームの反射面への入射位置変化によって反射角度を変化させる直線駆動アンテナにより、回転機構を排除し、かつビーム入射角度制御が可能なECHアンテナが実現できる。内部を冷却配管として兼用できる剛性の高い支持シャフトによって反射鏡の直線駆動を行うこのアンテナは、基本的に保守,交換の必要がなく、高放射線,高温,高真空環境に適する。反射曲面の形状を適切に設計して、ビームの質の変化を許容範囲に抑えながらコンパクトなアンテナが実現可能であることを計算により確証した。

36000021
Technical design of NBI system for JT-60SA
池田 佳隆; 秋野 昇; 海老沢 昇; 花田 磨砂也; 井上 多加志; 本田 敦; 鎌田 正輝; 河合 視己人; 椛澤 稔; 菊池 勝美; 菊池 満; 小又 将夫; 松川 誠; 藻垣 和彦; 能登 勝也; 岡野 文範; 大賀 徳道*; 大島 克己; 竹之内 忠; 玉井 広史; 棚井 豊; 梅田 尚孝; 薄井 勝富; 渡邊 和弘; 山ア 晴幸
Fusion Engineering and Design 82(5-14), p.791-797(2007) ; (JAEA-J 03347)
 ITERや原型炉に向けた研究を強化するため、JT-60Uを超伝導化するJT-60SA計画が進められている。この計画におけるNBI加熱装置は、入射パワーは1基あたりの入射パワー2MW(85keV)の正イオンNBI加熱装置が12基、入射パワー10MW(500keV)の負イオンNBI加熱装置が1基から構成され、総計34MW,100秒のビーム入射を行う予定である。一方、これまでにJT-60Uにおいては、正イオンNBIで2MW(85keV),30秒、負イオンNBIで3.2MW(320keV),20秒入射を既に達成している。これらの運転において両イオン源の加速電極の冷却水温度上昇は約20秒以内で飽和していることから、改修計画に向けては、電源の容量強化や負イオンNBIの加速エネルギー向上が鍵となると考えられる。講演では、JT-60SA計画における、NBI加熱装置の増力に関する工学設計を報告する。

36000022
Development of optimum manufacturing technologies of radial plates for the ITER toroidal field coils
中嶋 秀夫; 濱田 一弥; 奥野 清; 阿部 加奈子*; 清水 辰也; 角井 日出雄*; 山岡 弘人*; 丸山 直行*; 高柳 貞敏*
Fusion Engineering and Design 82(5-14), p.1473-1480(2007) ; (JAEA-J 03348)
 ITERのトロイダル磁場コイルでは、コイルに作用する大電磁力を支えるため、外径約14m×9m,幅約611mm,厚さ約112mmのラジアル・プレートと呼ばれる両側に溝を加工したD型の大型ステンレス構造物が使用される。このような大型のステンレス構造物の製作経験はこれまでにないことに加え、ラジアル・プレートには平面度2mm以内という厳しい製作精度が要求される。さらに、9コイル分のラジアル・プレート63個を約4年という短期間で製作する必要があり、ラジアル・プレートの製作方法の最適化がITER実現には必須となる。そこで、原子力機構では、ラジアル・プレートの製作方法を検討するとともに、必要となる製作技術の開発を行い、最適製作方法を考案した。本発表では、製作技術開発のために実施した試験の結果とこの結果に基づいて考案した最適製作方法について発表する。

36000023
Superconducting tokamak JT-60SA project for ITER and DEMO researches
細金 延幸; JT-60SA設計チーム; 日欧サテライト・トカマク作業グループ
Fusion Science and Technology 52(3), p.375-382(2007) ; (JAEA-J 03349)
 JT-60SAは柔軟なプラズマ形状制御性を持つシングル及びダブルヌルダイバータの超伝導トカマク装置であり、41MWの強力な加熱パワーにより臨界プラズマ級の高温プラズマを100秒間閉じ込める能力を持つ。JT-60SAは国内重点化トカマク装置NCT(JT-60Uの改修装置)を基本に設計されており、元となるNCTの性能を強化して、日欧の10年間の幅広いアプローチ(BA)計画におけるITERサテライト・トカマクとして提案された。JT-60SA計画はBA計画と国内のNCT計画を合体した計画である。BA計画ではITER支援計画を目的とし、物理課題の理解を発展させ、ITERの運転シナリオを最適化すること等を目指す。NCT計画ではおもに、原型炉に繋がる定常高ベータの運転シナリオを総合的に探求することを目的とする。建設期間は7年で、実験を3年間(ただし、延長の可能性を含む)実施する。詳細なJT-60SAの設計は日欧合同で進行中である。会議では、計画の概要と設計状況について発表する。

36000024
Recent activities on tritium technologies for ITER and fusion reactors at JAEA
林 巧; 磯部 兼嗣; 小林 和容; 岩井 保則; 河村 繕範; 中村 博文; 洲 亘; 有田 忠昭; 星 州一; 鈴木 卓美; 山田 正行; 山西 敏彦
Fusion Science and Technology 52(3), p.651-658(2007) ; (JAEA-J 03350)
 ITERへの日本の貢献の1つとして、JAEAでは雰囲気トリチウム除去設備の設計研究を実施してきている。燃料トリチウム処理技術に関しては、主としてモレキュラーシーブや電気化学ポンプを用い、ITERのテストブランケットからのトリチウム回収システムの研究開発に集中して取り組んでいる。一方、トリチウム安全取扱技術に関しては、閉じ込め障壁を構成する材料中のトリチウム挙動,計測・計量技術や除染・除去技術に関する一連の基礎研究を、ITER及びDEMO炉に向けた中心的活動として実施している。本論文では、ITERや将来の核融合炉に向け、これらJAEAのトリチウムプロセス研究棟におけるトリチウム技術開発の最近の成果をまとめる。

36000025
Tritium behavior on the water-metal boundary for the permeation into cooling water through metal piping
林 巧; 中村 博文; 磯部 兼嗣; 小林 和容; 山西 敏彦; 奥野 健二*
Fusion Science and Technology 52(3), p.687-691(2007) ; (JAEA-J 03351)
 高温増殖ブランケットにおいていかにトリチウムを閉じ込めるかが、核融合炉の安全性及び経済性に関する鍵となる課題である。特に、冷却水へのトリチウムの透過は重要であるが、冷却ガスへの透過と比較してほとんど系統的な実験報告はない。よって、今回、圧力と温度を制御した水ジャケット中に1kPaの高純度トリチウムを封入した純鉄配管を設置し、水中への配管を介したトリチウムの移行実験を実施した。水中へ移行したトリチウムは化学形別に測定を試みた。また、金属表面層でのトリチウムの分布と存在状態もオートラジオグラフィー等により測定した。本論文では、これらのトリチウム移行実験をまとめるとともに、金属-水界面でのトリチウムの挙動について議論する。

36000026
Fundamental study on purity control of the liquid metal blanket using solid electrolyte cell
山本 善彦*; 山西 敏彦; 河村 繕範; 磯部 兼嗣; 山本 靖*; 小西 哲之*
Fusion Science and Technology 52(3), p.692-695(2007) ; (JAEA-J 03352)
 固体電解質(イオン導電体)を用いた液体金属中の酸素,水素の濃度測定及び制御を目的として、プロトン導電体であるSrCe0.95Yb0.05O3-xと酸素イオン導電体であるイットリア安定化ジルコニアの基礎的な電気化学特性(分圧に対する起電力,イオン導電率等)を測定し、イオン導電体を用いた測定デバイスの実現性について検討した。

36000027
Study for the behavior of tritiated water vapor on organic materials
小林 和容; 林 巧; 中村 博文; 山西 敏彦; 大矢 恭久*; 奥野 健二*
Fusion Science and Technology 52(3), p.696-700(2007) ; (JAEA-J 03353)
 ITER及び将来の核融合炉建設に向けて、環境へのトリチウム放出や作業従事者被ばくを低減し安全を確保する観点から、材料表面におけるトリチウムの汚染挙動を把握することは非常に重要である。特に、ホットセルでのメンテナンス時等において各種材料は高濃度のトリチウムに曝される。それら各種材料のトリチウム汚染挙動を把握するために、建屋内に用いられる有機系材料であるアクリル樹脂,ブチルゴム及びエポキシについてトリチウム水蒸気への曝露・除染試験をし、脱離係数を求めるとともに、その後さらにパージガス中の水分濃度をパラメーターに、材料表面に残留するトリチウムの除染効果について検討した。

36000028
Self-decomposition behavior of high concentration tritiated water
伊藤 剛士*; 林 巧; 磯部 兼嗣; 小林 和容; 山西 敏彦
Fusion Science and Technology 52(3), p.701-705(2007) ; (JAEA-J 03354)
 核融合炉では、高濃度のトリチウム水をどのように取り扱うかが安全管理の鍵となる課題の1つである。高濃度のトリチウム水は自分で放射線分解し、最終的には、気相中では水素と酸素を生成し、水相中では過酸化水素を生成する。γ線照射での水のG値の報告は多くあるが、トリチウム水の自己放射線分解に関する報告は、その安全取扱上の困難さからほとんどない。日本原子力研究開発機構のトリチウムプロセス研究棟では、最高2EB/m3までの幅広い濃度範囲のトリチウム水の性質について10年以上研究しており、トリチウム水の自己放射線分解における実効的な水素と過酸化水素のG値を、密封容器中に保管したトリチウム水試料での各成分の濃度の経時変化の情報から評価した。本論文では実効的なG値を整理するとともに、それらのトリチウム濃度及び温度依存性について議論する。

36000029
Isotope effect of hydrogen rapidly supplied from the metal storage bed
林 巧; 鈴木 卓美; 洲 亘; 山西 敏彦
Fusion Science and Technology 52(3), p.706-710(2007) ; (JAEA-J 03355)
 ITERのトリチウム貯蔵供給設備においては、DT燃料の同位体比をいかに制御するかが、安定した最適な運転のための鍵となる課題の1つである。基本的には、水素-金属系での平衡圧には、大きな同位体効果(PH2<PD2<PT2)があるが、ITERのトリチウム貯蔵設備の条件下で真空ポンプにより急速供給した水素の同位体組成に関する情報は非常に少ない。したがって、その急速供給した水素の同位体組成を調べるため、ITERの1/10スケールの貯蔵ベッドとスクロールポンプを用い、温度(573K〜623K)と初期貯蔵時の水素同位体組成(H:D=1:9〜9:1)をパラメーターとして一連の急速供給実験を実施した。水素同位体組成はインラインの質量分析計で連続的に計測した。本論文では、これらの結果をまとめ、その同位体効果について議論する。また、その同位体比の効率的な制御手法についても、ベッドの設計条件がより優しくなる方向で議論する。

36000030
Oxidation performance test of detritiation system under existence of SF6
小林 和容; 三浦 秀徳*; 林 巧; 星 州一; 山西 敏彦
Fusion Science and Technology 52(3), p.711-715(2007) ; (JAEA-J 03356)
 建屋に漏洩したトリチウムは、触媒により酸化され、吸着剤により除去される構成となっているトリチウム除去設備(ADS)により除去される。ITERでは、絶縁ガスとしてSF6が用いられるが、このSF6は、異常時に漏洩する可能性がある。SF6は、トリチウム除去設備の除去性能に影響を及ぼす可能性があるが、未だにその報告はない。そこで、本研究では、SF6存在下でのトリチウムの酸化性能について実施したので報告する。SF6は、673K以上で分解され、そのガスと473Kで酸化され生成した水が、773Kで反応し、水が還元された。その結果トリチウム除去性能としては、100以上だったものが50程度まで低下することが明らかになった。

36000031
Activation analysis for sequential reactions of a fusion Demo-reactor
山内 通則; 西谷 健夫; 西尾 敏; 堀 順一*; 川崎 弘光*
Fusion Science and Technology 52(4), p.781-785(2007) ; (JAEA-J 03357)
 Demo炉では種々の低放射化材料が用いられるが、中性子と材料の核反応で大量に生成される荷電粒子と材料の2次的な反応(シーケンシャル反応)によって生じる放射化が問題となる可能性がある。そこで本研究では、Demo炉の候補材に対し、原子力機構で核融合炉用に開発したACT4コードを用いてこの放射化問題を検討した。材料としては、ブランケット構造材としてF82Hとバナジウム合金,遮蔽材として水素化バナジウム,液体増殖材としてFLiBe,リチウム鉛及び液体リチウムに着目し、Demo炉の想定照射条件で放射化量を計算した。その結果、中,長期の冷却でシーケンシャル反応による放射能からのγ線量率が問題になる場合が多々あり、取り出し後の機器の処分,保守作業,液体増殖材ループの遮蔽設計等で考慮が必要なことがわかった。

36000032
Progress in neutronics studies for the water cooled pebble bed blanket
西谷 健夫; 佐藤 聡; 落合 謙太郎; 沓掛 忠三; 田中 滋; 阿部 雄一; 今野 力
Fusion Science and Technology 52(4), p.791-795(2007) ; (JAEA-J 03358)
 核融合中性子源FNSを用いて、水冷却固体増殖型のITERテストブランケットモジュールの開発のための中性子工学研究を行っている。これまでの研究では、チタン酸リチウムの増殖材,ベリリウムの増倍材,低放射化フェライト鋼F82Hの構造材の平板模擬体系を用いた実験を行ったが、今回はさらに、水冷却層と増殖材ペブル層を加えた実験を実施した。模擬体系にD-T中性子を照射し、増殖材層中に埋め込んだ、炭酸リチウムのペレットを照射後取り出し、トリチウム生成率を測定し、中性子モンテカルロ計算と比較した結果、5%の範囲内で一致することを確認した。またITERテストブランケットモジュールの中性子計装の検討を行った。ITERの環境下でテストブランケットモジュールの核特性の確認を行うためには、ブランケット内の中性子束とスペクトルを測定することが不可欠であり、それぞれマイクロフィッションチェンバーと小型の放射化箔気送管装置を提案した。

36000033
Recent progress in solid breeder blanket development at JAEA
西谷 健夫; 榎枝 幹男; 秋場 真人; 山西 敏彦; 林 君夫; 谷川 博康
Fusion Science and Technology 52(4), p.971-978(2007) ; (JAEA-J 03359)
 日本はITERテストブランケットモジュール計画において水冷却固体増殖ブランケットのリード極となることを想定している。原子力機構は国内のその主要機関として、低放射化を構造材,チタン酸リチウムをトリチウム増殖材,金属ベリリウム又はベリライドを中性子増倍材とする水冷却固体増殖ブランケットの設計・開発を進めている。第1壁部の製作法開発の第1段階として、矩形冷却管を埋め込んだ第1壁のモックアップをHIP法で製作することに成功した。また先進増倍材としてBe12Tiのペブル試作に成功し、水蒸気との反応性が金属ベリリウムの約1/1000であることを確認した。

36000034
Tritium release behavior from steels irradiated by high energy protons
中村 博文; 小林 和容; 山西 敏彦; 横山 須美; 斎藤 滋; 菊地 賢司
Fusion Science and Technology 52(4), p.1012-1016(2007) ; (JAEA-J 03360)
 照射材料中のトリチウム輸送現象の把握は核融合炉のトリチウム透過やトリチウムインベントリ評価の観点から重要な課題の一つである。本研究では、本現象の理解のために、高エネルギー陽子照射され照射欠陥とトリチウムが同時に生成された316ステンレス鋼及びF82Hフェライトマルテンサイト鋼からのトリチウムの昇温脱離挙動を測定し、照射材料中でのトリチウム挙動を調べた。陽子照射はスイスのSINQターゲットで行われ、316ステンレス鋼は5.0〜5.9dpaまで、F82H鋼は6.3〜9.1dpaの照射量であった。実験の結果、SS316からのトリチウムの放出ピークは1つのみであり、トリチウムのトラップサイトとなる欠陥は1種類のみであることが観察されたことに対して、F82H鋼からの放出ピークは2つ観察され、最低2種類のトラップサイトとなる欠陥が存在していることが示唆された。また、各材料中に存在するトリチウム量は照射により生成されたトリチウムの1割から2割程度であり、トラップサイトに補足されていないトリチウムはそのほとんどが照射後の保管期間に放出されてしまうことが示唆された。

36000035
Electron cyclotron heating applied to the JT-60U tokamak
星野 克道; 鈴木 隆博; 諌山 明彦; 井手 俊介; 竹永 秀信; 久保 博孝; 藤田 隆明; 鎌田 裕; 藤井 常幸; 津田 孝; JT-60チーム; 居田 克巳*; 稲垣 滋*
Fusion Science and Technology 53(1), p.114-129(2008) ; (JAEA-J 03361)
 電子サイクロトロン加熱(ECH)のJT-60Uトカマクへの適用結果について報告する。ECHは、そのプラズマへの局所的結合特性の良さからJT-60Uの先進トカマク研究に、(1)新古典テアリング不安定性(NTM)の抑制,(2)内部輸送障壁研究,(3)不純物排気,(4)中心ソレノイドなしの電流立ち上げ,(5)電流ホール研究,(6)閉じ込め輸送研究、及び(7)プラズマ立ち上げ時や立ち下げ時の補助手段として貢献していることを示した。

36000036
Difference between local and average structures of La3Ga5SiO14 crystal
米田 安宏; 武田 博明*; 塩嵜 忠*; 水木 純一郎
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 46(10B), p.7163-7166(2007) ; (JAEA-J 03362)
 La3Ga5SiO14(通称ランガサイト)は水晶と同じ点群に属しながら、融点まで相転移を示さずその圧電特性を保つため、近年、高温用圧電トランスデューサーや燃焼圧素子用の新素材として注目されている。一方で、ランガサイトは酸化物圧電体結晶のなかではとりわけ結晶性が良いため、X線光学素子としての利用も期待されている。ランガサイト単結晶を高周波数で発振させることによって放射光X線の連続スペクトルを時間的に切り出し時分割実験に利用することや、弾性表面波を利用したアッテネータなどへの利用が検討されている。このような光学素子利用のためのランガサイト単結晶の評価を行った。

36000037
Magnetic and dielectric properties of Tb0.5Ca0.5MnO3
平光 雄介*; 吉井 賢資; 米田 安宏; 水木 純一郎; 中村 彰夫; 下条 豊; 石井 慶信*; 森井 幸生; 池田 直*
Japanese Journal of Applied Physics, Part 1 46(10B), p.7171-7174(2007) ; (JAEA-J 03363)
 ペロブスカイト構造を持つTb0.5Ca0.5MnO3酸化物につき、その磁性と誘電性を調べた。磁化測定からは、マンガンの電荷秩序(300K),反強磁性転移(120K),スピングラス転移(50K)の3つの転移が観測された。中性子散乱実験から得られたデータは、マンガンイオンの電荷秩序と反強磁性が重畳した状態を仮定することでフィットすることができた。交流誘電率測定からは、室温で5000ほどの大きな誘電率が観測された。また、マンガンイオンの電荷秩序温度直下の280K付近で誘電率の温度依存性に変化が観測された。これは、この系の誘電性が電荷秩序状態と関係があることを示唆する。誘電率の損失項からは、誘電ドメインの反転エネルギーが交流抵抗の活性化エネルギーに近いことが見いだされた。すなわち、この系の誘電性は、マンガン電子の局在性と遍歴性の両方の性質に由来するものと考えられる。

36000038
Variable-frequency nuclear monochromator using single-line pure nuclear bragg reflection of oscillating 57FeBO3 single crystal
三井 隆也; 瀬戸 誠; 増田 亮
Japanese Journal of Applied Physics, Part 2 46(38), p.L930-L932(2007) ; (JAEA-J 03364)
 放射光の高輝度,パルス性,偏光特性等の優れた特性を継承する放射光メスバウアー放射は、従来のメスバウアー分光では困難な材料の基礎,応用的な分析法の開発に極めて有効なプローブ光である。一方、最近、われわれは、反強磁性体57FeBO3単結晶のシングルライン純核共鳴ブラッグ散乱により実用強度の放射光メスバウアービームの生成に成功している。本研究では、新たな試みとして、57FeBO3単結晶を核共鳴ブラッグ反射面に精密に平行振動可能な駆動機構の開発を行い、大強度放射光と光ドップラー効果を利用することにより定位置出射でエネルギー可変の放射光メスバウアービームの高出力生成に世界に先駆けて成功した。本論文では、本核モノクロメーターの原理及びメスバウアー分光利用における利点を報告する。

36000039
X-ray spectroscopic diagnostics of ultrashort laser-cluster interaction at the stage of the nonadiabatic scattering of clusters
Faenov, A. Y.; Magunov, A. I.*; Pikuz, T. A.*; Skobelev, I. Y.*; Giulietti, D.*; Betti, S.*; Galimberti, M.*; Gamucci, A.*; Giulietti, A.*; Gizzi, L. A.*; Labate, L.*; Levato, T.*; Tomassini, P.*; Marques, J. R.*; Bourgeois, N.*; Dobosz-Dufrenoy, S.*; Ceccotti, T.*; Monot, P.*; Reau, F.*; Popescu, H.*; D'Oliveira, P.*; Martin, P.*; 福田 祐仁; Boldarev, A. S.*; Gasilov, S. V.*; Gasilov, V. A.*
JETP Letters 86(3), p.178-183(2007) ; (JAEA-J 03365)
 X-ray spectroscopy diagnostics of laser-cluster interactions at a stage of non-adiabatical cluster expansion and formation of the spatially homogeneous plasma channel is carried out for the first time. It is shown, that X-ray line emission spectra of light elements, allows to determine parameters of the plasma formed at the time moment 10 ps from the beginning of femtosecond laser with relatively high plasma temperature Te 100 eV iand electron density Ne about 1019 - 1020 cm-3.

36000040
Magnetic structure study of antiferromagnet NpPtGa5 by neutron diffraction
浄念 信太郎; 目時 直人; 山本 悦嗣; 本間 佳哉*; 青木 大*; 塩川 佳伸*; 大貫 惇睦
Journal of Alloys and Compounds 448(1-2), p.84-88(2008) ; (JAEA-J 03366)
 中性子散乱実験によりNpPtGa5は26K以下ではq=(0 0 1/2)の反強磁性ベクトルを持つA-typeの反強磁性秩序を示すことを明らかにした。また、この物質の磁気モーメントは0.38μBであり、<100>方向に向いていることがわかった。この磁気モーメントの小さな値は、大きな電子比熱係数、γ=123mJ/(K2·mol)が示すNpPtGa5の重い電子状態と矛盾しない。磁場[100]方向の帯磁率で観察された二段の異常は反強磁性ドメイン構造の変化によって生じることを明らかにした。

36000041
Hydrogen incorporation and gasochromic coloration of tungsten oxide films
永田 晋二*; 井上 愛知; 山本 春也; 土屋 文*; 高野 勝昌; 藤 健太郎*; 四竈 樹男*
Journal of Alloys and Compounds 446-447, p.558-561(2007) ; (JAEA-J 03367)
 触媒金属を表面に担持した酸化タングステン膜は、水素と反応することにより着色することが知られている(ガスクロミック現象)。しかしながら、水素によるガスクロミック着色の詳細なメカニズムは、未だに明らかになっていない。本研究では、ガスクロミック着色のメカニズムを解明することを目的に、種々の組成の酸化タングステン膜を作製し、酸化タングステン膜中の水素の挙動と着色現象の関係について調べた。反応性スパッター法により成膜中の酸素分圧を制御し、O/W原子数比を2.5〜3.0まで変化させた酸化タングステン膜を作製した。薄膜試料中の水素は、ヘリウムイオンビームを用いた反跳粒子検出法により評価した。実験の結果、O/W原子数比が3.0近傍の酸化タングステン膜が最も良い着色性能を示した。さらに、水素に曝して着色させると薄膜中の水素濃度が2割程度増加することが確認できた。これより、この着色がタングステンブロンズ(HWO3)の形成と関連していることがわかった。

36000042
Pressure-induced structural change from hexagonal to fcc metal lattice in scandium trihydride
大村 彩子; 町田 晃彦; 綿貫 徹; 青木 勝敏; 中野 智志*; 竹村 謙一*
Journal of Alloys and Compounds 446-447, p.598-602(2007) ; (JAEA-J 03368)
 Scは同属のLa, Yと同様に水素化物を形成することが知られており、2水素化物(ScH2)及び3水素化物(ScH3)は過去に高温・高水素圧下で生成されている。ScH2は蛍石型構造をとり金属状態であることが広く知られているが、ScH3は大気圧下で不安定なため母体金属の構造以外はほとんど報告がなかった。そこで、われわれは高圧発生装置ダイヤモンドアンビルセルを用いて、高密度の流体水素とScを直接反応させて室温・高圧力下で水素化物を合成し、高圧力下でのSc水素化物のX線回折及び赤外分光を行った。合成したSc水素化物を加圧すると、ScH2の形成を経て、圧力5GPa付近でScH3が現れた。さらに加圧すると25GPa付近から約20GPaの広い圧力領域で回折パターンは連続的に変化し、45GPaでfccで指数付けできる回折パターンに落ち着いた。

36000043
Structural development of dynamically asymmetric polymer blends under uniaxial stretching
武野 宏之*; 上原 宏樹*; 村上 昌三*; 竹中 幹人*; Kim, M.*; 長澤 尚胤; 佐々木 園*
Journal of Applied Crystallography 40(s1), p.s656-s661(2007) ; (JAEA-J 03369)
 吸収線量の空間分布を制御することによる新しい反応場を設計する目的で、成分高分子のガラス転移温度に大きな差を有する高分子ブレンドであるポリ2-クロロスチレン/ポリビニルメチルエーテルブレンドに対して、時分割小角X線散乱法を用いて伸張下における構造発展を調べた。また、この伸張下での構造発展における電子線照射によって生じる高分子架橋の効果を調べた。成分高分子の動的非対称性が顕著になる条件下で伸張を行うと、散乱像は異方的になり、高分子溶液のシェア下での構造で見られる「バタフライ散乱像」に似た散乱像が観測された。電子線架橋の照射量が多い試料ほど、この散乱像の異方性は大きい。この結果は、電子線架橋が濃度揺らぎの緩和を遅くすることが大きな要因であると考えられる。このように伸張下での構造は伸張による構造の異方性と熱運動によって元の等方的な形に戻ろうとする力のバランスによって決まると考えられる。

36000044
Extracting ion emission lines from femtosecond-laser plasma X-ray spectra heavily contaminated by spikes
Gasilov, S. V.*; Faenov, A. Y.; Pikuz, T. A.*; Villoresi, P.*; Poletto, L.*; Stagira, S.*; Calegari, F.*; Vozzi, C.*; Nisoli, M.*
Journal of Applied Physics 102(6), p.063303_1-063303_7(2007) ; (JAEA-J 03370)
 Charged-coupled device (CCD) detectors are widely used nowadays for the registration of X-ray spectra of multicharged ions, generated in a plasma during interaction of ultrashort, ultraintenselaser pulses with solid targets. In this work we propose "mean to median" algorithm for the removal of noise from the X-ray spectra of femtosecondlaser plasma. Series of spectra is necessary for the identification of corrupted data points by the developed method. The algorithm was tested with model spectra and was used for extracting information about spectral lines of Ne like ions of Fe XVII and He like Al ions which allowed to calculate plasma parameters. It is demonstrated that M2M method is able to clean spectra with more then 0.1 of corrupted pixels. The method is also valid if variations in spectral lines induced by fluctuations in laser beam intensity are present.

36000045
Convergence acceleration of parallel CG-FEM with controlled domain decomposition for singularity problems
櫛田 慶幸; 奥田 洋司*
Journal of Computational Science and Technology (Internet) 1(1), p.2-13(2007) ; (JAEA-J 03371)
 構造物応力解析において、応力特異性はしばしば確認される。応力特異性は、有限要素法などの数値計算において求解までの時間を長くすることがわかっている。これは、並列有限要素法において特に顕著になる。本研究では、並列有限要素法において、並列計算時に必須である領域分割法の様式を変化させることで応力特異性を含む問題における、求解までの時間を、最大で15%短縮した。

36000046
Sequential variation of atmospheric mercury in Tokai-mura, seaside area of eastern central Japan
大澤 崇人; 上野 隆; Fu, F.*
Journal of Geophysical Research 112(D19), p.D19107_1-D19107_9(2007) ; (JAEA-J 03372)
 現在建設中のJ-PARCのターゲットとして水銀が用いられることから、環境中の水銀濃度の基礎データを得るために、東海村(本州太平洋岸の小都市)で0価の水銀ガス(GEM)の濃度を2005年10月から2006年8月まで連続して測定した。夏,秋の大気中の水銀の濃度は冬,春より高く、1時間の測定値の11か月間の平均は3.78±1.62ng/m3(n=7551)であった。本研究の結果は、東海村のGEMレベルにおける変化が温度と相対湿度に相関しているが、風速と風向から独立した事象であることを示している。またGEMの日サイクル観測から、その大部分は正午により高い濃度を示し、他方正午に低い濃度を示すパターンは11月に観測されるだけであることがわかった。本研究の結果は、石炭火力発電所とごみ焼却施設という2つの人為水銀発生源候補がほとんどGEMに影響を与えないことを示している。本研究により、東海村における水銀濃度の長期間の推移を明らかにすることができた。

36000047
Effect of truncation of electron velocity distribution on release of dust particle from plasma-facing wall
冨田 幸博*; Smirnov, R.*; 中村 浩章*; Zhu, S.*; 滝塚 知典; Tskhakaya, D.*
Journal of Nuclear Materials 363-365, p.264-269(2007) ; (JAEA-J 03373)
 プラズマ中のダスト粒子の挙動の研究では、プラズマはマクスウェル分布していると通常仮定している。ダスト粒子が導体壁上にあるとき、それを取り囲むプラズマはマクウェル分布と大きく異なっている。この論文では、電子速度分布の先端が切り取られていることにより、球形ダスト粒子がプラズマ対向壁から離脱するための条件がどう影響されるかを調べる。先端切取りの効果により、壁上の電場は、マクスウェル分布のときに比べ大きくなる。この増大された壁上電場のために、重力が壁から離れる向きにあるときのダスト粒子離脱条件領域は小さくなる。

36000048
Effect of heat treatments on tensile properties of F82H steel irradiated by neutrons
若井 栄一; 安堂 正巳; 沢井 友次; 谷川 博康; 田口 富嗣; Stroller, R. E.*; 山本 敏雄; 加藤 佳明; 高田 文樹
Journal of Nuclear Materials 367-370(1), p.74-80(2007) ; (JAEA-J 03374)
 核融合炉の実証炉等に向け、構造材料として研究開発を進めているF82H鋼(Fe-8Cr-2W-0.1C系マルテンサイト鋼)に関して、照射硬化と脆化をコントロールさせるための熱処理法の検討を行った。本研究では焼き戻し温度を750℃から800℃まで振り、その時間を0.5時間から10時間まで振った。これらをパラメータにして照射硬化量の変化及び引張試験温度に対する硬化量の変化を調べた。JMTR炉で微小引張試験片(SS-3タイプ)を150℃と250℃で約2dpaまで中性子照射を行った。照射後、引張試験を室温から500℃まで行った。750℃で焼き戻しを行った場合、室温試験において、硬化量が100〜240MPa程度であったが、500℃の試験ではいずれの試料においても、硬化量がほとんどなくなった。一方、焼き戻し温度をやや高めに(780℃又は800℃で0.5時間)した試料では、室温試験で硬化量は約300MPa程度であった。また、500℃試験では硬化量が130〜R200MPa程度まで保持された。このことから、やや高めで焼き戻し処理をした試料では、高温まで比較的安定に存在する照射欠陥クラスターが形成されていると考えられる。以上のように、照射硬化量は照射前に施す焼き戻しの温度と時間に依存して変化するため、照射硬化と脆化の抑制には熱処理法による調整が有効な方法であると考えられる。

36000049
Effect of solute elements in Ni alloys on blistering under He+ D+ ion irradiation
若井 栄一; 江澤 正思*; 武中 剛志*; 今村 淳子*; 田辺 哲朗*; 大嶋 隆一郎*
Journal of Nuclear Materials 367-370(1), p.478-482(2007) ; (JAEA-J 03375)
 ガス原子が生成する照射環境下で使用される合金に関して、合金中の溶質原子が組織発達に及ぼす役割等を検討した。本研究ではモデル合金であるNi合金などを用いて、ヘリウムと重水素がスエリング及びブリスター形成に及ぼす溶質原子の体積因子の効果について調べた。ヘリウムは25keVのエネルギーで8×1021ions/m2まで、重水素は20keVのエネルギーで4×1021ions/m2まで、室温及び500℃にて試料に注入した。本研究に用いた溶質原子の体積因子の大きさは-5.8%から+63.6%までである。これらのガス原子を注入した後、SEM, STEM, TEMによって、表面形態や内部組織を観察した。照射によって形成したキャビティの数密度は溶質原子の体積因子の増加に伴って増加することがわかった。約4×1021ions/m2までHeイオンを注入した試料ではブリスターの形成が観察されたのに対して、重水素ではこの注入量の範囲においても、ブリスターの形成が観察されなかった。また、溶質原子の体積サイズの大きさに伴って、ブリスターの面積密度が増加するのに対して、ブリスターの大きさは逆に小さくなることがわかった。一方、ブリスター形成の機構に関しては、組織の解析の結果から、500℃照射ではブリスター形成の原動力はキャビティ内のガス圧によるものであり、室温照射では照射によって内部に生じた応力及びキャビティ内のガス圧の両方がその形成に関与していることが判明した。

36000050
Critical power characteristics in 37-rod tight lattice bundles under transient conditions
Liu, W.; 呉田 昌俊; 玉井 秀定; 大貫 晃; 秋本 肇
Journal of Nuclear Science and Technology 44(9), p.1172-1181(2007) ; (JAEA-J 03376)
 ロッド間ギャップ幅が異なる二つの37本稠密バンドル(ロッド直径: 13mm; ロッド間ギャップ幅: 1.3mmと1.0 mm)を用いて、強制循環並びに自然循環水冷却増殖炉で想定される異常な過渡変化に対して、その限界出力特性に関する研究を行った。想定される流量低下と出力上昇事象に対して、初期条件(初期質量速度や初期出力),流量低下速度や出力上昇速度,最低下時流量や最高出力をパラメータとして多くの過渡試験を行った。その結果、稠密二重炉心体系においても、想定される異常な過渡変化において、その限界出力は準定常と見なすことができることを実験から確かめた。また、原子力機構が開発した最新版限界出力相関式を過渡解析コードTRAC-BF1に組み込み、過渡時の限界出力の予測性能を評価した。改良TRAC-BF1が高精度で過渡限界出力を評価できることを確認した。稠密二重炉心体系における過渡時沸騰遷移の判定は、準定常近似が可能、すなわち定常用限界出力相関式を過渡解析コードに組み込むことで相関式の計算誤差の範囲内で評価が可能であることがわかった。

36000051
Electrochemical studies on uranium in the presence of organic acids
鈴木 義規; 南川 卓也; 尾崎 卓郎; 大貫 敏彦; Francis, A. J.*; 榎田 洋一*; 山本 一良*
Journal of Nuclear Science and Technology 44(9), p.1227-1232(2007) ; (JAEA-J 03377)
 シュウ酸,マロン酸,コハク酸,アジピン酸,リンゴ酸又は酒石酸の存在下におけるウラニルイオンの酸化還元反応をサイクリックボルタンメトリーにより調べた。各有機酸水溶液においてUO22+/UO2+の酸化還元反応及びU(IV)の酸化反応が観測された。UO22+の還元ピーク電位は、1:1 UO22+-有機酸錯体の錯形成定数の対数値に比例して減少することがわかった。また、マロン酸又はシュウ酸の存在下におけるUO22+/UO2+の酸化還元電位のpH依存性を調べ、pHによる酸化還元反応の変化を明らかにした。

36000052
REIDAC; A Software package for retrospective dose assessment in internal contamination of radionuclides
栗原 治; 波戸 真治; 金井 克太; 高田 千恵; 高崎 浩司; 伊藤 公雄; 池田 浩*; 大枝 幹拓*; 黒澤 直弘*; 福津 久美子*; 山田 裕司*; 明石 真言*; 百瀬 琢麿
Journal of Nuclear Science and Technology 44(10), p.1337-1346(2007) ; (JAEA-J 03378)
 放射性核種による体内汚染時において、放射線防護の観点から内部被ばく線量評価が必要となる。この目的のために、国際放射線防護委員会(ICRP)では、種々の放射性核種の線量係数や残留/排泄率を示している。しかしながら、これらの諸量は、代表的な条件でのみ計算されたものであり、事故時において体内汚染時の詳細な状況や個人の代謝特性等を考慮して遡及的に線量評価を行わなければならない場合には必ずしも十分ではない。本研究では、このような観点から、遡及的な詳細な線量評価を行うことを目的としたソフトウエア(REIDAC)の開発を行った。本論文では、REIDACの概要について紹介するとともに、検証結果及び具体的な適用例について示した。

36000053
Development of three-dimensional numerical model for 222Rn and its decay products coupled with a mesoscale meteorological model, 1; Model description and validation
西沢 匡人; 永井 晴康; 茅野 政道; 森泉 純*; 吉岡 勝廣*; 大倉 毅史; 山澤 弘実*; 飯田 孝夫*; 向井 人史*; 遠嶋 康徳*; 織田 伸和*; 島野 富士雄*
Journal of Nuclear Science and Technology 44(11), p.1458-1466(2007) ; (JAEA-J 03379)
 メソスケール気象モデルと結合した222Rnとその壊変生成物のための3次元オイラー型数値モデルを開発し、モデル性能の検証のために日本における222Rn濃度の日・月変動、210Pb沈着量の月変動、そして日本海沿岸部における寒冷前線通過後のγ線量率の上昇事象の再現に適用した。得られた結果は次の通りである。(1)モデルは離島における地上222Rn濃度の月変動を再現した。しかし内陸では過小評価した。理由としてモデルの地上付近における粗い鉛直解像度が挙げられる。(2)モデルは、降水量が適切に再現されているならば観測された210Pb沈着量の季節変動を再現できる。(3)モデルは寒冷前線通過時の降水によるγ線量率の上昇を再現した。特に、融解した雪とあられに含まれた222Rnの壊変生成物がγ線量率の上昇に寄与した。

36000054
Unravelling the role of steps in Cu2O formation via hyperthermal O2 adsorption at Cu(410)
岡田 美智雄*; Vattuone, L.*; Gerbi, A.*; Savio, L.*; Rocca, M.*; 盛谷 浩右*; 寺岡 有殿; 笠井 俊夫*
Journal of Physical Chemistry C 111(46), p.17340-17345(2007) ; (JAEA-J 03380)
 われわれは高分解能電子エネルギー損失分光法と放射光によるX線光電子分光法を用いて、Cu(410)表面の酸化過程を研究した。超熱エネルギーの酸素分子ビームは室温でCu2O極薄膜を形成するための有効な道具になる。反応初期段階でのCu2O形成の効率は分子ビームの入射角度に依存する。ステップの乱れ、これは移動する前駆体Cuアドアトムの供給源として作用し、酸素原子のバルクへの拡散の契機になるが、Cu2O形成速度を決定する鍵となる性質であると言える。

36000055
Pressure and temperature dependence of cuprous oxide nucleation on Cu(410)
岡田 美智雄*; Vattuone, L.*; 盛谷 浩右*; Savio, L.*; 寺岡 有殿; 笠井 俊夫*; Rocca, M.*
Journal of Physics; Condensed Matter 19(30), p.305022_1-305022_7(2007) ; (JAEA-J 03381)
 酸素ガス暴露によるCu(410)の酸化が高分解能電子エネルギー損失分光で調べられた。Cu2Oの生成が19meVと79meVのロスピークによって同定された。後者のピーク強度をモニタすることによって、Cu2Oの形成が表面温度と酸素ガス圧に強く依存することが明らかになった。また、それは入射酸素の供給律速になっている。ステップ端からCu原子の脱離を誘発する熱的に励起されたステップの乱れが動き回るCu原子の供給源になり、Cu2Oの核形成が引き続いて起こることが見いだされた。

36000056
Development of a neutron radiography three-dimensional computed tomography system for void fraction measurement of boiling flow in tight lattice rod bundles
呉田 昌俊
Journal of Power and Energy Systems (Internet) 1(3), p.211-224(2007) ; (JAEA-J 03382)
 発熱する稠密バンドル流路内を流れる沸騰流の3次元ボイド率分布の計測及び可視化を実現するため、中性子ラジオグラフィ3次元CT(NR3DCT)技術を開発した。本報では、主として新開発したNR3DCTシステム,データ処理法,計測誤差評価法に関して記す。実験データの信頼性向上のため、γ線ノイズ除去法などさまざまな種類の実際的なデータ補正法やデータ処理法を研究開発した。研究用原子炉JRR-3と開発したNR3DCTシステムを用いて、直接通電加熱された稠密14本バンドル内のボイド率分布を沸騰開始から高ボイド率条件まで系統的に計測した。取得したデータを用いて種々のデータ処理法が実験結果に及ぼす影響も議論した。本技術開発により、発熱するバンドル内沸騰流の詳細なボイド率分布が明らかとなり、詳細二相流数値解析コードの検証用ボイド率データを整備することができた。

36000057
Magnetic and magnetotransport properties in nanogranular Co/C60-Co film with high magnetoresistance
境 誠司; 薬師寺 啓*; 三谷 誠司*; 菅井 勇; 高梨 弘毅*; 楢本 洋*; Avramov, P.; Lavrentiev, V.*; 鳴海 一雅; 前田 佳均
Materials Transactions 48(4), p.754-758(2007) ; (JAEA-J 03383)
 10-80%のトンネル磁気抵抗効果を示す交互蒸着法によるC60-Co薄膜の磁気的性質を調べた。磁化特性の磁場及び温度への依存性について、Coナノ粒子に起因するブロッキング温度が約40Kの超常磁性が明らかになった。磁化応答は粒径分布を考慮したランジュバン関数で表され、それによりCoナノ粒子の平均粒径は3.1nm,粒径分布1nmと見積もられた。磁気的性質の測定結果に基づいて、C60-Co薄膜の構造と磁気伝導現象の詳細を議論した。

36000058
Effect of helium and hydrogen production on irradiation hardening of F82H steel irradiated by ion beams
若井 栄一; 安堂 正己; 沢井 友次; 大貫 惣明*
Materials Transactions 48(6), p.1427-1430(2007) ; (JAEA-J 03384)
 F82H鋼の照射硬化に及ぼすヘリウムと水素の効果をTIARAイオン照射実験によって調べた。照射は500℃にて50dpaまで、鉄とヘリウムの2重イオン同時照射又は、鉄とヘリウムと水素の3重イオン同時照射を行った。HeとHの注入比は15appm-He/dpa及び15(150)appm-H/dpaで行った。照射後、微小硬さ測定を行った結果、2重同時照射した試料では、18dpaで材料の軟化が観察され、50dpaで軟化から硬化に特性が転じることがわかった。また、3重イオン照射した試料の硬さは、2重イオン照射した場合より、硬化することがわかった。この効果は水素の量の増加に伴い、促進することがわかった。

36000059
Inter-subassembly heat transfer of sodium cooled fast reactors; Validation of the NETFLOW code
望月 弘保
Nuclear Engineering and Design 237(19), p.2040-2053(2007) ; (JAEA-J 03385)
 本論文は、NETFLOWコードのナトリウム冷却高速炉集合体出口温度予測適用について述べている。これまで、原子力教育ツールとしてのこのプラント動特性解析コードは、水やナトリウム冷却体系での施設や原子炉で得られたデータで検証されてきた。高速実験炉常陽では100MW照射炉心を用いて、自然循環試験が行われ、高速増殖炉原型炉「もんじゅ」ではタービントリップ試験が行われた。これらの試験結果が、集合体間熱移行を計算するためのモデルを検証するデータとして選定された。常陽の1次系と2次系の自然循環試験解析を通じて、集合体間の径方向熱移行を計算するモデルは、集合体出口温度を適切に評価した。「もんじゅ」の集合体出口温度についても良い一致が得られた。これらの検証を通じて、一次元のプラント動特性コードNETFLOWが、インターラッパーフローによる伝熱を考慮しない集合体間熱移行モデルでも出口温度を評価できることが示された。

36000060
Confinement degradation and transport of energetic ions due to Alfvén eigenmodes in JT-60U weak shear plasmas
石川 正男; 武智 学; 篠原 孝司; Cheng, C. Z.*; 松永 剛; 草間 義紀; 福山 淳*; 西谷 健夫; 森岡 篤彦; 笹尾 真実子*; 馬場 護*; JT-60チーム
Nuclear Fusion 47(8), p.849-855(2007) ; (JAEA-J 03386)
 JT-60Uの弱磁気シアプラズマでは、負イオン源中性粒子ビーム入射中に、安全計数分布の変化とともに、周波数が大きく変化し、その後一定となる不安定性が観測された。このような振る舞いをする不安定性に対しては、前者はReversed-Shear-induced Alfvén Eigenmode(RSAE)、後者はTroidicity-induced Alfvén Eigenmode(TAE)として説明することができる。本研究では、RSAE, TAE発生中の中性子発生量を、高エネルギーイオンの軌道追跡モンテカルロコードを用いて、不安定性がないとしたときに計算される中性子発生量と比較することで、不安定性発生中の高エネルギーイオンの閉じ込め劣化を定量的に評価するとともに、RSAEからTAEの遷移中に閉じ込め劣化が最大になることを突き止めた。さらに、中性子発生分布の測定結果から、不安定生によりプラズマ中心部(r/a<0.6)の高エネルギーイオンが周辺部へ輸送されることを初めて示した。また、中性粒子計測から、輸送される高エネルギーイオンのエネルギー領域は、不安定性との共鳴相互作用条件を満たすことを初めて突き止めた。

36000061
ITER activities and fusion technology
関 昌弘
Nuclear Fusion 47(10), p.S489-S500(2007) ; (JAEA-J 03387)
 第21回IAEA核融合エネルギー会議では約460件の報告があり、そのうち、ITER活動に関して68件、核融合工学に関して67件の報告があった。ITERの性能予測,工学R&Dの成果やITERの建設準備状況に関する報告は、ITERの実現に確信を与えるに足るものであった。また本会議の直前に中国の超伝導トカマク装置であるEASTが最初のプラズマ着火に成功したことは特筆すべきであり、KSTAR等の他の新しい実験装置の建設も着実に進んでいる。将来の核融合炉の概念設計においては、コンパクト化と定常運転へ向けた取り組みが成された。ITERテストブランケットモジュール計画を含めたブランケットと原型炉に向けた材料開発に関する炉工学研究では、R&Dと設計の両面で進展が見られた。

36000062
Extended steady-state and high-beta regimes of net-current free heliotron plasmas in the Large Helical Device
本島 修*; 山田 弘司*; 小森 彰夫*; 大藪 修義*; 武藤 敬*; 金子 修*; 川端 一男*; 三戸 利行*; 居田 克巳*; 今川 信作*; 長山 好夫*; 下妻 隆*; 渡邊 清政*; 増崎 貴*; 宮沢 順一*; 森崎 智宏*; 森田 繁*; 大舘 暁*; 大野 哲靖*; 斉藤 健二*; 榊原 悟*; 竹入 康彦*; 田村 直樹*; 東井 和夫*; 時谷 政行*; 横山 雅之*; 吉沼 幹朗*; 池田 勝則*; 諫山 明彦; 石井 亀男*; 久保 伸*; 村上 定義*; 長崎 百伸*; 関 哲夫*; 高畑 一也*; 竹永 秀信; LHD実験グループ*
Nuclear Fusion 47(10), p.S668-S676(2007) ; (JAEA-J 03388)
 大型ヘリカル装置(LHD)では、加熱パワーの増大及び粒子の排気/供給能力の向上に加え、革新的な運転シナリオの発見により、無電流ヘリオトロンプラズマの性能を改善することに成功した。その結果、特に、高密度,長時間運転,高ベータに関して運転領域を拡大することに成功した。LHDにおける多様な研究の結果、無電流ヘリオトロンプラズマの特長が明らかになった。特に、ローカルアイランドダイバータによる排気とペレット入射によるプラズマ中心部への粒子供給を組合せることにより内部拡散障壁(IDB)を形成し、5×1020m-3という超高密度のプラズマが得られた。4.5%の体積平均ベータ値や、54分間の放電時間(総入力エネルギー: 1.6GJ,平均入力パワー: 490kW)を達成することにも成功した。本論文では、IDB,高ベータプラズマ,長時間運転に関する最近2年間の成果を概括する。

36000063
Studies on impact of electron cyclotron wave injection on the internal transport barriers in JT-60U weak shear plasmas
井手 俊介; 竹永 秀信; 諌山 明彦; 坂本 宜照; 吉田 麻衣子; Gormezano, C.*
Nuclear Fusion 47(11), p.1499-1505(2007) ; (JAEA-J 03389)
 電子サイクロトロン波(ECRF)の内部輸送障壁(ITB)に対する影響をJT-60Uの弱磁気シアプラズマにおいて調べた。ECRF入射により、弱磁気シアプラズマのイオン温度分布が劣化することがわかっている。今回さらに詳細な実験を行い、この劣化のさまざまなパラメータに対する依存性を明らかにした。すなわち、入射ECパワー,プラズマ電流,ターゲットプラズマのトロイダル回転分布,入射位置(on-axis入射とoff-axis入射)などである。これにより、劣化のメカニズムは、ECRFパワーには正に依存するが、ECRFによる電流駆動にはよらないこと、一方、プラズマ電流が大きくなる程影響が小さくなること、ターゲットの回転分布を常に平坦化すること、また、弱磁気シアプラズマのITBは非局所的な構造を持っていること、等々が明らかになった。

36000064
Controllability of large bootstrap current fraction plasmas in JT-60U
坂本 宜照; 竹永 秀信; 藤田 隆明; 井手 俊介; 鈴木 隆博; 武智 学; 鎌田 裕; 大山 直幸; 諫山 明彦; 小出 芳彦; JT-60チーム
Nuclear Fusion 47(11), p.1506-1511(2007) ; (JAEA-J 03390)
 定常核融合炉に必要な高自発電流割合を持つ負磁気シアプラズマの長時間維持とその応答特性について報告する。負磁気シアプラズマは、安全係数の極小値が時間とともに低減しつつ定常解に到達するが、その値が整数値となる近傍で圧力勾配を駆動源とする不安定性が発生しプラズマの維持時間が制限される。不安定性を回避するためには、安全係数の極小値が整数となる直前にプラズマ回転制御により一時的に圧力勾配を低減することが有効である。そこで、回転制御に対するプラズマの応答特性を調べた。制御を開始するタイミングが早いか適用期間が長い場合には圧力勾配の低減後に再び増大することができない。一方で、制御を開始するタイミングが遅いか適用期間が短い場合には圧力勾配が低減する前に不安定性が発生する。そこで実時間で安全係数分布を検出するシステムを応用し、安全係数の極小値が設定した範囲内にある時に、設定した時間の間、回転制御を適用する実時間制御ロジックを開発した。その結果、ITERの標準運転である高閉じ込めモードの1.8倍の閉じ込め性能を持つ高性能負磁気シアプラズマを世界最長の8秒間維持することに成功した。

36000065
Design optimization for plasma performance and assessment of operation regimes in JT-60SA
藤田 隆明; 玉井 広史; 松川 誠; 栗田 源一; Bialek, J.*; 相羽 信行; 土屋 勝彦; 櫻井 真治; 鈴木 優; 濱松 清隆; 林 伸彦; 大山 直幸; 鈴木 隆博; Navratil, G. A.*; 鎌田 裕; 三浦 幸俊; 高瀬 雄一*; Campbell, D.*; Pamera, J.*; Romanelli, F.*; 菊池 満
Nuclear Fusion 47(11), p.1512-1523(2007) ; (JAEA-J 03391)
 プラズマ制御の観点から、JT-60U改修装置,JT-60SAの設計を最適化し、運転領域を評価した。弱磁気シアあるいは負磁気シアを得るために、負イオン源NBIのビームラインを下方に移動し中心をはずれた電流駆動を可能とした。安定化板の開口部に沿って設置された帰還制御コイルにより、抵抗性壁モードを抑制し、理想導体壁の安定性限界に近い高いベータ値が維持できることが示された。供給磁束量から誘導電流駆動によるプラズマ電流維持時間を評価した。高パワー加熱の高ベータプラズマ(βN〜2.9)では、非誘導電流駆動割合は50%近くに達し、高密度領域でも100秒間維持が可能である。加熱・電流駆動パワーの増強により完全非誘導電流駆動の領域も拡大された。高非円形度,高三角度の低アスペクト比配位において、核融合炉心相当の高い規格化ベータ値(βN〜4.4)と自発電流割合(fBS〜0.7)での100秒間の完全非誘導電流駆動運転が期待される。

36000066
Hydrogen retention and carbon deposition in plasma facing components and the shadowed area of JT-60U
正木 圭; 田辺 哲朗*; 広畑 優子*; 大矢 恭久*; 柴原 孝宏*; 林 孝夫; 杉山 一慶*; 新井 貴; 奥野 健二*; 宮 直之
Nuclear Fusion 47(11), p.1577-1582(2007) ; (JAEA-J 03392)
 本研究では、炉内の水素同位体残留量の定量評価及び残留過程を明らかにすることを目的として、従来のダイバータ領域に加え、第一壁及びプラズマから影の部分における炭素の損耗/再堆積分布及び水素同位体蓄積分布を評価した。真空容器内全体でプラズマ対向壁を観察した結果、おもに外側ダイバータ及び上部第一壁が損耗領域であり、内側ダイバータ及び内側第一壁が堆積領域であった。トロイダル方向の対称性を仮定したダイバータ領域全体の損耗/再堆積量は損耗量0.34kg、再堆積量(ダスト含む)0.55kgであり、この差0.21kgが第一壁領域の損耗が寄与していると考えられる。また、最も厚い再堆積層(内側ダイバータ)に蓄積された水素同位体蓄積濃度を評価した結果、(H+D)/C〜0.02であった。真空容器ベーキング温度を150℃に下げた運転後、プラズマから影の部分であるダイバータ下部を調べた結果、約2μmの堆積層があり(H+D)/Cが約0.8と高いことがわかった。しかし、この領域における炭素堆積率は、8×1019 atoms/sとタイル表面の炭素堆積率(6×1020 atoms/s)と比較すると約一桁小さい値であった。

36000067
Reevaluation of secondary neutron spectra from thick targets upon heavy-ion bombardment
佐藤 大樹; 黒澤 忠弘*; 佐藤 達彦; 遠藤 章; 高田 真志*; 岩瀬 広*; 中村 尚司; 仁井田 浩二*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 583(2-3), p.507-515(2007) ; (JAEA-J 03393)
 既に公開した重イオン入射による厚いターゲットからの二次中性子スペクトルの系統的な実験データについて、中性子検出器の検出効率を最新の計算コードを用い再評価しデータを改訂した。また、核子あたり400MeV及び800MeVの炭素イオンビームを利用し、炭素ターゲットからの二次中性子スペクトルのデータを新たに取得した。これらすべての実験データを、汎用重イオン輸送コードPHITSによる計算結果と比較した。その結果、PHITSが広いエネルギー領域において、重イオン入射による二次中性子スペクトルを適切に再現可能であることが検証された。

36000068
PHITS; Benchmark of partial charge-changing cross sections for intermediate-mass systems
Mancusi, D.*; Sihver, L.*; Gustafsson, K.*; La Tessa, C.*; Guetersloh, S.*; Zeitlin, C.*; Miller, J.*; Heilbronn, L.*; 仁井田 浩二*; 佐藤 達彦; 中島 宏; 村上 健*; 岩田 佳之*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 254(1), p.30-38(2007) ; (JAEA-J 03394)
 宇宙飛行士に対する被ばく線量を精度よく評価するためには、中間質量領域における電荷核変換反応断面積を精度よく予測可能な粒子輸送計算コードを開発する必要がある。そこで、粒子輸送計算コードPHITSを用いてその電荷核変換反応断面積を計算し、測定値と比較した。その結果、現在用いている核反応モデルでは、実験値を再現できない問題点が明らかとなった。この結果は、さらなるモデルの改良や、実験データのより系統的な整備が必要であることを示唆している。

36000069
Syntheses of amine-type adsorbents with emulsion graft polymerization of glycidyl methacrylate
瀬古 典明; Bang, L. T.*; 玉田 正男
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 265(1), p.146-149(2007) ; (JAEA-J 03395)
 放射線グラフト重合法は目的とする官能基を膜,不織布,ホロファイバーなどの高分子基材に導入することができる。グリシジルメタクリレート(GMA)は活性なエポキシ基を有するため、容易に化学修飾できるため、グラフト重合によく使用されるモノマーである。GMAは有機溶媒に可溶なため、メタノールやジメチルスルフォキシドなどの溶媒を用いて、グラフト重合が行われている。GMAは界面活性剤を用いて、ミセル化することにより、水を溶媒としてグラフト重合できることがわかった。そのため、界面活性剤としてTween20を用い、水系でグラフト重合を行い、線量,GMA濃度,界面活性剤の濃度,反応時間,反応温度の影響について、検討した。ポリエチレン繊維に電子線を30kGy照射し、5%GMA, 0.5%Tween20, 94.5%水のエマルションを用いて、40℃でグラフト重合を行った結果、一時間でグラフト率は300%に達した。得られたグラフト重合体にアミン誘導体を反応させることにより、コバルト,ニッケル,鉛等を吸着する金属捕集材を作製することができた。

36000070
Radiation effects on hydroxypropyl methylcellulose phthalate in aqueous system
Xu, L.*; Yue, Z.*; Wang, M.*; Zhai, M.*; 吉井 文男; 瀬古 典明; Peng, J.*; Wei, G.*; Li, J.*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 265(1), p.394-398(2007) ; (JAEA-J 03396)
 水に対して不溶性のヒドロキシプロピルメチルセルロースのフタル酸エステルをナトリウム型に転化した後、ペースト状態でγ線照射することにより橋かけさせることに成功した。また、メチルN,Nビスアクリルアミド(MBA)やエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)などの橋かけ助剤を用いることで、MBAについては架橋後のゲルが剛直になり、EGDMAについては、より柔らかく、加工しやすい特性を有するゲルを作製できることがわかった。

36000071
Sequence-dependent DNA deformability studied using molecular dynamics simulations
藤井 聡*; 河野 秀俊; 竹中 繁織*; 郷 信広; 皿井 明倫*
Nucleic Acids Research 35(18), p.6063-6074(2007) ; (JAEA-J 03397)
 タンパク質がDNAを認識するには、DNAとの水素結合や静電相互作用による直接的な認識とDNAの構造特性に由来した間接的な認識がある。われわれは、後者の間接的な認識を定量化するために、DNAの構造特性を分子動力学計算によって調べた。結果、これまで2塩基対で特徴づけられていた構造は、その特性を記述するのに不十分であること、塩基対の配列依存性が2つ先の塩基対までかなり影響することなどを示した。さらに、間接認識ポテンシャルを作成し、それが細胞内で見られるDNAのヌクレオソーム構造形領域を予測できることを示した。

36000072
Spectral phase measurement of attosecond pulses using the quantum beat between the P1/2 and P3/2 levels of alkali-metal atoms
板倉 隆二
Physical Review A 76(3), p.033810_1-033810_8(2007) ; (JAEA-J 03398)
 コヒーレントに励起されたアルカリ金属のスピン-軌道分裂状態P1/2P3/2に対してアト秒パルスによる角度分解光電子スペクトルの測定を行うことで、アト秒パルスのスペクトル位相が決定できることを理論的に示す。本研究では、理論的な定式化を行い、光電子エネルギーに依存して観測される2準位間の量子ビートの位相のずれから、直接的にアト秒パルスのスペクトル位相を求めることができ、この手法は、フーリエ限界に近いパルスに限られない一般的な手法である。実際の観測の実現性を示すために、Csに関して数値計算がなされ、これまで使われてきたアト秒パルス計測法に比べ、簡便な条件で測定ができることを示す。

36000073
Multiply inner-shell excited states produced through multiple X-ray absorption relevant to X-ray pulses
森林 健悟
Physical Review A 76(4), p.042705_1-042705_6(2007) ; (JAEA-J 03399)
 レーザー励起X線源やX線自由電子レーザーのようにX線の輝度が大きくなると通常のX線源では、無視できる多重内殻励起状態の生成が重要であることを本論文の著者が中心となって以前に発見した。本論文においては、この研究をさらに発展させた結果得た以下の発見,発案を発表する。多重X線吸収で生成する多重内殻励起状態から放出されるX線が励起X線源よりもパルス幅が短くなることを明かにした。このことは、多重内殻励起状態から発生するX線のスペクトル測定やオージェ電子スペクトルを観測することにより、超高速の構造計測技術につながる可能性があることも明らかになった。さらに、励起X線のパルスを短くすると効率よく多重内殻励起状態が生成することをシミュレーションより明らかにした。

36000074
Pressure-induced structural change of liquid InAs and the systematics of liquid III-V compounds
服部 高典; 辻 和彦*; 宮田 恭尚*; 菅原 崇行*; 下條 冬樹*
Physical Review B 76(14), p.144206_1-144206_10(2007) ; (JAEA-J 03400)
 液体III-V化合物の圧力誘起構造変化を系統的に理解するために、放射光X線回折と第一原理分子動力学計算(AIMD)を用いて液体InAsの構造の圧力変化を調べた。X線回折実験から、液体の圧縮挙動が約9GPa近傍で一様なものから非一様なものへと変化することがわかった。その際に、約9GPaまで一定であった配位数がより高圧下で6から7.5へと上昇することがわかった。AIMD結果から、この変化は3つの部分構造の圧力変化に起因することがわかった。その変化は特に、As-As間の相関に現れており、低圧側では、部分配位数CNAsAsを保ったまま、As-As間距離が減少するという等方的な収縮を示すが、高圧側ではAs-As間距離を保ったまま、CNAsAsが上昇するという局所構造の変化を見せている。これらの結果を他の液体GaSb, InSbと比較し、液体III-V化合物の圧力変化の系統性を議論した。

36000075
Role of multiparticle-multihole states in 18,19O in thermal neutron capture of 18O
永井 泰樹*; 瀬川 麻里子; 大崎 敏郎*; 松江 秀明; 武藤 一雄*
Physical Review C 76(5), p.051301_1-051301_6(2007) ; (JAEA-J 03401)
 陽子数・中性子数が魔法数8の二重閉殻核である酸素16に中性子が2個加わった18Oの基底状態の構造は、酸素16の芯の周りを2個の中性子が運動する成分に加え2粒子4孔状態の成分が10%程度混在していることが知られている。さらにこの酸素18に1個中性子が加わった19Oの96keVにある第一励起状態はスピンパリティーが3/2+の(d(5/2))3粒子状態という極めて特異な状態であることが過去の研究から知られている。そこで本研究では18Oの熱中性子捕獲反応で上記特異な性質がどのような影響をもたらすかを研究した。その結果、反応後即発的に放出される複数のE1(電気双極子)遷移γ線のうち、捕獲状態からそれぞれ18keV低い状態(3/2-)と729keV低い状態(1/2-)への遷移を比較すると前者のほうが20万倍大きいこと、さらにこの3/2-状態からの遷移は、基底状態の5/2+(d5/2)より96keVの3/2+状態(d5/2)3への方が6倍も遷移しやすいことを突き止めた。これら異常なγ線遷移の観測は世界初の発見である。この研究により中間状態の3/2-状態が、20年前に予言され長年に渡りその検証が待たれていた課題であった1粒子4孔状態であることを初めて解明できた。

36000076
Suppression of cavitation inception by gas bubble injection; A Numerical study focusing on bubble-bubble interaction
井田 真人; 直江 崇; 二川 正敏
Physical Review E 76(4), p.046309_1-046309_10(2007) ; (JAEA-J 03402)
 ガス気泡注入が持つキャビテーション抑制効果を明らかにするため、負圧下でのキャビテーション気泡とガス気泡の挙動を数値的に解析した。われわれの最近の研究により、機械衝撃を受けた水銀中でキャビテーションが発生すること、そしてそれが核破砕中性子源(J-PARC水銀ターゲット)に深刻なダメージを与えるだろうことが明らかになった。本論文でわれわれは、水銀中に先在するガス気泡との相互作用までを考慮した理論モデルにより、水銀中キャビテーション気泡の挙動に関する数値的・理論的検討を行った。この検討により、注入されたガス気泡が放射する正の圧力波が水銀中の負圧を低減し、それによってキャビテーションの発生が抑制されることが明らかになった。この結果はガス気泡注入がキャビテーション損傷を低減する効果を持つことを示すものである。

36000077
Genetic characterization of mutants resistant to the antiauxin p-chlorophenoxyisobutyric acid reveals that AAR3, a gene encoding a DCN1-like protein, regulates responses to the synthetic auxin 2,4-dichlorophenoxyacetic acid in Arabidopsis roots
Biswas, K. K.*; 大浦 千春*; 樋口 可南子*; 宮崎 裕士*; Nguyen, V. V.*; Rahman, A.*; 内宮 博文*; 清末 知宏*; 小柴 共一*; 田中 淳; 鳴海 一成; 大野 豊
Plant Physiology 145(3), p.773-785(2007) ; (JAEA-J 03403)
 植物ホルモンオーキシンに対する新しい変異体を分離するため、アンチオーキシンとして知られるPCIBを用いて根の伸長を指標にスクリーニングを行った。量子ビーム等を利用して11系統の変異体が得られた。遺伝学的なマッピングにより、これらはTIR1AtCUL1といったこれまで知られているオーキシン関連の遺伝子座を含め少なくとも5つの独立した遺伝子座に存在することが明らかになった。antiauxin-resistantと名付けたaar3-1, aar4及びaar5は根の伸長試験で2,4-ジクロロフェノキシ酢酸にも抵抗性があることがわかった。aar3-1のポジショナルクローニングにより、AAR3遺伝子がDUF298というこれまでオーキシンとの関連性が知られていなかった機能不明のドメインを持つタンパク質を暗号化していることが明らかになった。またこのタンパク質は核局在シグナルと思われる配列を持ち、DUF298ドメインを介してdefective in cullin neddylation 1(DCN-1)というタンパク質と相同性を有していた。さらに、本研究の結果は、PCIBがオーキシンやオーキシンに関連する因子の同定に有効であることを示している。

36000078
AtREV1, a Y-family DNA polymerase in Arabidopsis, has deoxynucleotidyl transferase activity in vitro
高橋 真哉*; 坂本 綾子; 田中 淳; 清水 喜久雄*
Plant Physiology 145(3), p.1052-1060(2007) ; (JAEA-J 03404)
 AtREV1はシロイヌナズナにおいて誤りがちなDNA損傷乗り越え複製にかかわることが予想されている。今回、さらに詳細な研究を行うために、大腸菌タンパク質過剰発現系を用いてAtREV1組み換えタンパク質を作成し、精製を行った。得られた精製タンパク質をプライマー伸長法で解析し、塩基挿入活性の測定を行った。その結果、AtREV1組み換えタンパク質はプライマー末端に1から2個の塩基を挿入した。特に、鋳型DNAの塩基にかかわらずシトシンを挿入する活性が高いことがわかった。また、AtREV1は、脱塩基部位を持つ鋳型DNAに対してもシトシンを挿入した。脱塩基部位は、細胞内の生理活性によって自発的につくられるほか、細胞をさまざまなDNA変異原に曝した際につくられることがわかっている。しかし、AtREV1は紫外線によってつくられる損傷を持つ鋳型DNAに対しては、塩基を挿入することができなかった。AtREV1は、マグネシウムイオン存在下では、ある程度の基質特異性を示したが、マンガンイオンの存在価では、より緩やかな基質特異性を示すことがわかった。以上の結果から、AtREV1タンパク質が"忠実度の低い"DNAポリメラーゼであることが明らかとなった。

36000079
Advanced fabrication method of planar components for plasma diagnostics
伊藤 直樹*; 間瀬 淳*; 近木 祐一郎*; 瀬古 典明; 玉田 正男; Shen, Z.*; Yang, L.*; Domier, C. W.*; Luhmann, N. C. Jr.*; 坂田 栄二*
Plasma and Fusion Research (Internet) 2, p.S1042_1-S1042_4(2007) ; (JAEA-J 03405)
 アンテナ材料をミリ波適応材料として作製するために、低電力損失の特性を有するフッ素高分子を用いてその評価を行った。これまで、銅との蒸着面とフッ素高分子表面との接着性が弱いという問題が挙げられていた。この問題を解決するために、放射線グラフト重合によりフッ素基板表面に親水性モノマーであるアクリル酸を導入し、フッ素高分子表面の改質を図った。その結果、銅と基板との接着率を1.5倍に向上させることができた。

36000080
Development of real-time measurement system of charge exchange recombination spectroscopy and its application to feedback control of ion temperature gradient in JT-60U
小林 進二*; 吉田 麻衣子; 竹永 秀信; 坂田 信也; 鎌田 裕; 坂本 宜照; 小出 芳彦; JT-60チーム
Plasma and Fusion Research (Internet) 2, p.S1049_1-S1049_4(2007) ; (JAEA-J 03406)
 JT-60においてイオン温度とその温度勾配の実時間帰還制御を目標として、荷電交換再結合分光(CXRS)の実時間計測システムの開発を進めた。本システムでは通常のCXRS計測と異なり、最小自乗法フィッティングを使わずに、干渉フィルターを通過した CXR光の発光強度比から直接イオン温度を評価することができる。この手法により空間4点で10msごとの温度の評価が可能になった。本システムを用いたイオン温度勾配制御実験を実施し、ELMy H-modeプラズマにおいて、比例・微分ゲインの最適化により、指令値にほぼ追随して温度勾配を制御することができた。

36000081
Development of impurity influx monitor (Divertor) for ITER
小川 宏明; 杉江 達夫; 河西 敏; 勝沼 淳*; 原 玲丞*; 草間 義紀
Plasma and Fusion Research (Internet) 2, p.S1054_1-S1054_4(2007) ; (JAEA-J 03407)
 ダイバータ不純物モニターは、ITERのダイバータ部における不純物,重水素及びトリチウムのスペクトル線の強度分布を測定し、不純物制御及びダイバータプラズマ制御にフィードバックするデータを提供するための計測装置である。光学設計に基づき先端部光学系の機械設計を進めた。設計に際しては上部ポート光学系では、内径300mmのパイプ内に光学系を一体で設置することとし、水平ポート光学系では他機器との干渉を避けた分散型の配置とした。熱解析によリ、核発熱による温度上昇を評価したところ、上部ポートでは最大で50℃程度の上昇にとどまっているのに対し、水平ポートでは最大で150℃であった。次に、これらの温度分布より求めた熱歪みが光学性能に与える影響を評価した。その結果、上部ポート光学系では測定位置が約20mm移動する程度であるが水平ポート光学系では測定位置が150mm程度移動することがわかった。一連の解析により、冷却流路を確保しやすい一体型構造の方が除熱の観点からは優れていることが示された。

36000082
Development of ITER diagnostic upper port plug
佐藤 和義; 大森 順次; 海老沢 克之*; 草間 義紀; 閨谷 譲
Plasma and Fusion Research (Internet) 2, p.S1088_1-S1088_4(2007) ; (JAEA-J 03408)
 ITER計画において日本が調達する予定の上部計測ポートプラグは、長さ約6m,重量約22tの片持ち構造であるため、高い剛性が要求される。また、ポートプラグには計測のための開口部及び光学路を有するため、これらを考慮した電磁力及び中性子遮蔽解析による評価が不可欠である。このため、製作性を考慮したポートプラグの構造について検討するとともに、中性子の遮蔽や保守時の作業スペースを考慮したポートプラグ内への計測機器の配置を検討した。その結果、汎用品である板材とリブを組合せることにより設計案の鍛造品で構成される構造と同等の剛性を有することを見いだした。また、ポートプラグ内にすべての計測機器,関連する冷却管や信号線を組み込むとともに互いに干渉せず作業空間も確保した配置案を提案した。本提案に基づき電磁力解析を実施したところ、片持ち構造の根本であるフランジ部にかかる最大モーメントとして約1MNmが得られ、設計基準値を十分に下回る可能性を見いだした。

36000083
Sensitivity study for the optimization of the viewing chord arrangement of the ITER poloidal polarimeter
山口 太樹; 河野 康則; 草間 義紀
Plasma and Fusion Research (Internet) 2, p.S1112_1-S1112_4(2007) ; (JAEA-J 03409)
 国際熱核融合実験炉(ITER)におけるプラズマ電流分布計測にポロイダル偏光計測装置が用いられる。ポロイダル偏光計測装置は、レーザー光をプラズマ中に入射し、透過レーザー光の偏光面のファラデー回転角を検出するものであるが、ポート部の幾何学的な形状からレーザー視線数は15チャンネル程度に制限される。したがって、十分な精度でプラズマ電流分布が得られるよう、限られた視線数を最適に配置することが求められる。しかし、平衡再構築法によってプラズマ電流分布の同定精度を評価し、全パターンの視線配置を評価することは現実的に不可能である。そこで、本研究ではMHD平衡解析コードを用いたセンシティビティスタディにより、平衡再構築法で評価する視線配置を絞り込むことを目的とする。本研究では、従来報告されている正磁気シアプラズマに対するセンシティビティに加え、ベータ値の変化に起因したプラズマ電流分布の変化や、負磁気シアにおけるプラズマ電流分布の変化に対するセンシティビティを新たに示した。これらのセンシティビティをもとに、平衡再構築法で評価する視線配置のパターンを挙げる。

36000084
Biodegradability of poly(3-hydroxybutyrate) film grafted with vinyl acetate; Effect of grafting and saponification
和田 勇生; 瀬古 典明; 長澤 尚胤; 玉田 正男; 粕谷 健一*; 三友 宏志*
Radiation Physics and Chemistry 76(6), p.1075-1083(2007) ; (JAEA-J 03410)
 放射線グラフト重合法を用いてポリ(3-ヒドロキシブチレート)(PHB)フィルムに酢酸ビニルを重合した。その結果、グラフト率が5%を超えるとフィルム表面がグラフトした酢酸ビニルによって覆われてしまうため、完全に酵素分解性を消失した。しかし、酢酸ビニルグラフトPHBフィルムをアルカリ溶液中、最適条件下でケン化すると酵素分解性は再現した。これは、ケン化反応によりグラフト鎖が生分解性を有するポリビニルアルコール(PVA)に転化されたためである。

36000085
Circulation in the northern Japan Sea studied chiefly with radiocarbon
荒巻 能史*; 千手 智晴*; 外川 織彦; 乙坂 重嘉; 鈴木 崇史; 北村 敏勝; 天野 光; Volkov, Y. N.*
Radiocarbon 49(2), p.915-924(2007) ; (JAEA-J 03411)
 2002年夏季に日本海北部海域における放射性炭素を測定した。北緯45度以北の表層海水では、高水温と低塩分とともに50‰という高いΔ14Cが観測された。これは、対馬暖水が北部海域まで北上していることを意味する。深層海水におけるΔ14Cは海水密度とともに小さくなり、最小値は-70‰であった。この結果から、この海域における深層水の滞留時間は短いことが示唆される。北部海域で冬季に形成されると考えられる高密度水は北緯47度以北の表層海水で観測されたが、海水の深層への沈み込みを示す指標は見られなかった。

36000086
Space environmental effects on MoS2 and diamond-like carbon lubricating films; Atomic oxygen-induced erosion and its effect on tribological properties
田川 雅人*; 横田 久美子*; 松本 康司*; 鈴木 峰男*; 寺岡 有殿; 北村 晃*; Belin, M.*; Fontaine, J.*; Martin, J. M.*
Surface & Coatings Technology 202(4-7), p.1003-1010(2007) ; (JAEA-J 03412)
 低軌道宇宙環境における5eV原子状酸素の影響を、二硫化モリブデンスパッタ膜並びにダイヤモンドライクカーボン潤滑剤に対して実験的に検証した。X線光電子分光の結果から、二硫化モリブデン表面のモリブデンの酸化と、硫黄の気化が顕著であることが示された。深さ方向分析の結果、これらの変化は表面から3nmと極めて浅い領域で生じていることが示された。これは表面で酸化したモリブデンが保護膜の役目を果たし、酸素原子の影響を防いでいるためであると考えられる。このような組成変化は摩擦係数にも影響を及ぼすが、表面層が磨耗によって除去されるとその影響は見られない。しかし、モリブデン酸化物のアブレシブ磨耗の結果、原子状酸素照射のある条件下では二硫化モリブデンの寿命が極端に低下することが示された。一方、ダイヤモンドライクカーボンでは表面の炭素の酸化状態は原子状酸素によっても大きく変化しないことが放射光光電子分光から明らかになったが、ラザフォードバックスキャッタリングの結果、膜自体の気化劣化が激しいことが示され、宇宙環境におけるDLCの利用には保護膜形成等の措置が必要である。

36000087
R&D of lifetime extension for primary materials by active chemistry control for coolant helium; Corrosion tests of heat resistant alloy
竹田 陽一*; 濱本 真平; 坂場 成昭
Transactions of the American Nuclear Society 97, p.677(2007) ; (JAEA-J 03413)
 ヘリウムガス炉の伝熱管等の高温材料として使用されるハステロイXRの腐食特性評価のため、腐食試験装置を製作した。腐食試験はヘリウム中に微量の化学的不純物を混合し、不純物組成が高温環境下において材料に与える影響を評価した。一酸化炭素濃度をパラメータとした腐食試験後の走査電子顕微鏡による表面観察の結果、ウィスカ状の酸化物の下地に針状酸化物が分布するが、一酸化炭素濃度の違いによりその成長過程に差があることを見いだした。加えて、質量評価の結果、酸化による質量増加と脱炭による質量減少の進行速度に相違があることを突き止めた。今後さらなる試験を通して、より定量的に解明する。

36000088
Measurement of thermal conductivity of (U0.68Pu0.3Am0.02)O2-x in high temperature region
米野 憲; 森本 恭一; 加藤 正人; 鹿志村 元明; 小笠原 誠洋*; 砂押 剛雄*
Transactions of the American Nuclear Society 97, p.616-617(2007) ; (JAEA-J 03414)
 MOX燃料の熱伝導率は照射挙動評価のために重要な熱物性の一つである。熱伝導率は温度,O/M比,組成などによる影響を受ける。以前、900Kから1770Kの温度範囲におけるMOX燃料の熱伝導率に及ぼすO/M比の影響を報告したが、高温域までの測定は行ってはおらず、ほかの報告例は少ない。本報告では、Pu含有率約30%,Am含有率(Am/Metal)約2%のMOX試料を用い、最高温度2200Kまでの高温度域にて熱拡散率測定を行い、O/M比及び温度をパラメータとする高温領域での熱伝導率について評価した。

36000089
Evaluation of thermal conductivity of (U, Pu, Am)O2-x
森本 恭一; 加藤 正人; 米野 憲; 鹿志村 元明
Transactions of the American Nuclear Society 97, p.618-619(2007) ; (JAEA-J 03415)
 高速炉燃料として、高いPu含有率を持つMOX燃料の開発が進められている。MOX燃料の熱伝導率は燃料ロッドの設計や照射挙動評価のために重要な熱物性値の一つである。高Pu含有率のMOX燃料の熱伝導率評価は少なく、Amを含有したMOX燃料の熱伝導率の研究は以前にわれわれが行った研究以外にはない。本研究ではJAEAにて取得されたPu含有率: 30%のMOX燃料の熱伝導率データを用いて、熱伝導率に対する密度,O/M,Am含有率の影響を考慮した熱伝導率評価式を導出した。

36000090
Three-dimensional X-ray CT image of irradiated FBR fuel assembly
勝山 幸三; 永峯 剛; 中村 保雄; 浅賀 健男; 古屋 廣高
Transactions of the American Nuclear Society 97, p.620-621(2007) ; (JAEA-J 03416)
 高速炉で照射した燃料集合体の横断面CT画像を合成することにより、三次元画像を取得することに成功した。この技術を利用することにより燃料集合体内の変形状況等が容易に把握できるようになった。また、取得した三次元画像から軸方向の中心空孔の形成状況を連続的に観察することが可能となった。

36000091
R&D of lifetime extension for primary materials by active chemistry control for coolant helium; A Study of chemical equilibrium in the HTGR core
坂場 成昭; 濱本 真平; 竹田 陽一*
Transactions of the American Nuclear Society 97, p.678-680(2007) ; (JAEA-J 03417)
 ヘリウムガス冷却炉の固有の安全性は、冷却材に使用するヘリウムガスの化学的不活性さによるところが大きい。ヘリウムガスは希ガスであり、相変化がなく化学的に極めて安定であるが、ヘリウムに内包する化学的不純物は高温材料の表面に作用し、その寿命に影響を与える。従来、冷却材ヘリウム中の不純物管理は、炉心黒鉛の酸化防止の観点から純化設備による単純除去を行ってきた。しかし、この方法では、例えば高温機器のクリープ破断時間を支配する冷却材中の炭素活量と酸素分圧のバランスを制御することができないため、1次系構造材の劣化を管理することができなかった。高温機器を経済的かつ合理的に設計するためには、不純物濃度をソフト的手法により最適制御することが重要である。そこで、ヘリウム中原子炉機器の長寿命化を目指し、化学状態に呼応しながら化学的不純物をヘリウム中に積極的に注入可能なパルス状アクティブ制御法を開発する。研究開発の第一段階として、炉心における高温放射線下の化学平衡の解明を行う。化学的不純物の生成は、熱平衡に加え炉心における放射線分解(ラジカル反応,イオン反応)が相互に影響した結果、化学平衡的に決定される。本報では、支配的条件における化学平衡式の温度別な解明及び化学的不純物相互の影響を検討し、かつHTTRにおける実験データを適宜参照しながら、炉内における支配的な化学平衡を明らかにした。

36000092
Development of sheet-type hydrogen sensors
高野 勝昌; 井上 愛知; 山本 春也; 杉本 雅樹; 杉山 僚; 吉川 正人
Transactions of the Materials Research Society of Japan 32(3), p.673-676(2007) ; (JAEA-J 03418)
 水素の吸着により黄色から青へ変色する酸化タングステン薄膜を、ポリエチレンテレフタレートあるいはポリ塩化ビニリデン等の安価な不定形基材表面に、スパッタリング法により堆積させ作製することに成功した。性能評価を行った結果、数分で濃度1%の水素に対して変色し、目視による検知が可能であることがわかった。爆発下限濃度が空気雰囲気中で4%の水素を安全に取り扱うには、その漏洩を速やかに検知する技術の開発が欠かせない。本シートは次世代のクリーンエネルギー源である水素の漏洩を簡便に確認できる安価な検知シートとして役立つと考えられる。

36000093
燃料研究棟におけるグローブボックスの解体撤去作業
岩井 孝; 菊地 啓修; 荒井 康夫
デコミッショニング技報 (36), p.54-63(2007) ; (JAEA-J 03419)
 日本原子力研究開発機構大洗研究開発センター(旧日本原子力研究所大洗研究所)の燃料研究棟101号室(調製室)に設置されていた金相観察用のグローブボックス121-D及び122-Dの2台は、設置後約30年近く使用してきた。新しい研究テーマに着手するにあたり、同スペースに新たな研究設備を装備したグローブボックスの設置を計画し、当グローブボックスを解体撤去することとした。本報告は、グローブボックス解体撤去作業における、技術的知見,評価及び作業内容をまとめたものである。

36000094
ポジトロンイメージングによる植物機能の可視化
松橋 信平
電気評論 92(10), p.63-67(2007) ; (JAEA-J 03420)
 原子力機構が開発した植物ポジトロンイメージング技術は、炭素や窒素,必須金属元素など植物の生育に不可欠な栄養成分や、カドミウムなどの有害物質が植物に取り込まれた後、どのように体内を移行するかを非侵襲でその場観察することができるユニークな技術である。本稿では、ポジトロンイメージング技術の原理,計測の実際,得られたデータの解析による植物の生理機能の定量などについて解説する。また、食糧の安全確保で問題となるカドミウムについて、イネによるカドミウムの吸収・輸送の可視化に成功した研究を紹介し、同技術の有用性及び応用の可能性を論じる。

36000095
下北半島,むつ燧岳火山地域の変質帯と変質岩の熱ルミネッセンス年代
富山 眞吾*; 梅田 浩司; 花室 孝広; 高島 勲*; 林 信太郎*; 根岸 義光*; 増留 由起子*
岩石鉱物科学 36(4), p.111-121(2007) ; (JAEA-J 03421)
 第四紀火山活動に伴う熱水活動の履歴を明らかにするため、むつ燧岳火山地域における変質帯の分布と性状及び変質年代に関する研究を実施した。変質分帯及び変質年代の検討の結果、むつ燧岳火山の活動に伴う熱水活動により形成された変質帯は、断裂発達箇所を中心として分布し、当時の火山体内及び基盤の断裂ないしは高透水性の岩相を通路として側方に広がっていたものと考えられる。また、流体包有物の均質化温度測定の結果から、熱水活動による変質は最も高温部で200〜250℃程度に達したと考えられる。

36000096
屋内ラドンリスクに関する疫学研究とその評価
米原 英典*; 石森 有; 秋葉 澄伯*; 飯田 孝夫*; 飯本 武志*; 甲斐 倫明*; 下 道国*; 床次 真司*; 山田 裕司*; 吉永 信治*; 米澤 理加
保健物理 42(3), p.201-213(2007) ; (JAEA-J 03422)
 日本保健物理学会では、屋内ラドンの肺がんリスクにかかわる最近の研究論文や国際的な動きに対応するため「屋内ラドンのリスク評価とその対応に関する専門研究会」を設置し、2005年4月から2007年3月まで活動した。近年の屋内ラドンのリスク評価に関する欧州及び北米での疫学調査研究結果の内容を検討し、それを我が国への適用の観点から評価し「屋内ラドンリスクに関する疫学研究とその評価」としてまとめた。

36000097
Transport processes of radionuclides in the Japan Sea obtained by JAEA's expeditions
外川 織彦; 伊藤 集通; 乙坂 重嘉
保健物理 42(3), p.234-246(2007) ; (JAEA-J 03423)
 原子力機構は、日本海における海水循環及び放射性核種移行過程を解明するために、日本海の日露双方の排他的経済水域での海洋調査を10年に渡って実施してきた。原子力機構による日本海海洋調査は、1994年と1995年における日韓露共同海洋調査へ参加することで始まった。18回に及ぶ海洋調査を通じて、現時点で調査可能な日本海の全域をほぼ網羅することができた。この結果、日本海の人工放射性核種分布マップを作成するとともに、放射性核種の移行過程を概観することができた。さらに、日本海の海水循環及び海洋学的特徴に関する結果も取得した。本解説は、原子力機構による日本海海洋調査で得られた代表的かつ重要な結果をまとめている。本研究で作成された人工放射性核種分布に関するデータセットは、日本海における放射性廃棄物投棄の場合、あるいは日本海内・周辺海域での放射性核種の事故放出に対する原子力緊急時対策の場合に、放射線影響を評価するための基礎データとなる。

36000098
Traceability on radon measurements at the JAEA Ningyo-toge
石森 有
保健物理 42(3), p.247-254(2007) ; (JAEA-J 03424)
 原子力機構人形峠のラドン測定にかかわるトレーサビリティ確立と維持に関する研究を論証した。一次標準はNBS(現NIST)より提供されたラジウム溶液であり、二次標準はこれにより校正されたガス封入型電離箱法である。ラドン標準校正チェンバが、その他の測定器の校正実験において、標準試料を提供するために使用されている。国内外の標準機関との相互比較実験を通じて、原子力機構人形峠の測定技術の信頼性と安定性が1984年以来維持されていることを確認した。このことは校正と測定技術にかかわるトレーサビリティがよく維持されていたことを示している。ラドン測定については、国内に標準場がなく、また標準法がJISなどで定められていないのが現状である。この論文は原子力機構人形峠のラドン測定にかかわる信頼性と精度について示すだけでなく、日本国内の標準化にかかわる有益な情報を提供する。

36000099
放射線誘起の雷現象
鳥居 建男
放射線防護医療 (3), p.10-13(2007) ; (JAEA-J 03425)
 近年、雷活動に起因すると考えられる放射線レベルの上昇が日本の冬季雷をはじめ、山岳雷や米国での夏季雷でも観測されている。また、米国では雷雲内の電界強度の観測が気球観測等により行われているが、これまでの観測結果から、ほとんどが1気圧換算で二百数十kV/m程度の電界強度しか観測されていない。実験室での放電実験では放電開始電圧は約3,000kV/mであるのに対して1桁も低い値である。なぜ雷雲では1桁も低い電界強度で放電(雷)が発生するのか、地球物理学上の謎ともなっている。本稿では、この雷からの放射線発生現象と雷放電の発生メカニズムの鍵となる逃走絶縁破壊について報告する。さらに、核実験時に雷が発生することはよく知られているが、その事象についても触れる。

36000100
武力攻撃等原子力災害における指定公共機関としての日本原子力研究開発機構の役割
福本 雅弘
放射線防護医療 (3), p.22-24(2007) ; (JAEA-J 03426)
 日本原子力研究開発機構(JAEA)は、武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律の指定公共機関であり、国民保護措置に関する諸施策の基本をJAEA国民保護業務計画で定めている。茨城県における国民保護実動訓練(平成18年)を参照例にして、国民保護法に基づく原子力災害における指定公共機関としての役割を述べる。原子力災害対策特別措置法に基づく原子力災害と武力攻撃等原子力災害の相違点としては武力攻撃等に関する屋内退避,避難の検討が必要なことなどが挙げられ、これらを踏まえ、今後も国民保護実動訓練等により我が国の武力攻撃等原子力災害対策の実効性が向上され、JAEAにおいても国内外事例の調査等に基づき情報発信を行うことや技術的支援能力の向上に努めることが肝要である。

36000101
中国の核実験と放射線環境監視
渡辺 均
放射線防護医療 (3), p.28-30(2007) ; (JAEA-J 03427)
 核燃料サイクル工学研究所では、使用済核燃料再処理施設のほか多くの研究施設を有しており、これら施設の周辺環境に与える影響をモニタリングするため、放射線量率や各種環境試料中の放射性物質の測定を実施している。これら原子力施設周辺の環境モニタリングを実施するにあたって考慮しなければならないのは核実験の影響(フォールアウト)である。核実験は1945年から始まり1962年までアメリカ,ソ連,イギリスにより延べ数百回に及ぶ大気圏内核実験が実施されフォールアウトの影響を受けてきている。中国の核実験は、1964年から1980年かけて行われその影響が日本各地で観測されている。本報告では、核実験等が行われたときに実施する放射線環境監視と中国核実験の過去の影響や特徴について報告する。

36000102
放射線を使って環境浄化を行い、私たちが目指すこと
瀬古 典明
放射線化学 (84), p.37-43(2007) ; (JAEA-J 03428)
 放射線グラフト重合技術を用いて作製した環境浄化材料は、水中に溶存する金属に対して良好な吸着性能を示す。海洋,河川などに溶け込んでいる希少金属や環境排水中に溶存している有害金属を除去・回収することは環境保全や資源の確保の観点から重要なことである。そして、これらの金属を回収する材料として高速処理が可能で高容量の吸着材の開発が要望されている。本稿では、放射線グラフト重合技術を用いて作製した吸着材を海水中のウラン回収や漁業廃棄物を資源へ適合させた例などを紹介する。

36000103
高速増殖炉用抵抗方式ナトリウム温度計測システム
山崎 弘郎*; 本多 敏*; 上田 雅司; 遠藤 昭*; 笛木 学*
計測自動制御学会論文集 43(9), p.756-761(2007) ; (JAEA-J 03430)
 高速増殖炉は、輸入に依存するウラニウム資源を有効に活用できるため、日本のエネルギー事情に適した動力炉として期待されている。一方、同炉の炉心では、熱出力密度が著しく大きいために、冷却材として熱伝達特性が優れた液体ナトリウムが使用される。本論文は液体ナトリウムの温度を管路の外側から電気抵抗方式により計測する新しい温度計測手法について、理論的解析,数値シミュレーション,試作検討結果などを述べたものである。

36000104
Preparation of polylactic acid nonwoven fabric-based metal adsorbent by radiation-induced graft polymerization
植木 悠二; 瀬古 典明; 保科 宏行; 玉田 正男
日本イオン交換学会誌 18(4), p.214-219(2007) ; (JAEA-J 03431)
 放射線グラフト重合技術を用いて作製したイオン交換繊維は、環境水や大気中に含まれる溶存金属を効率的に回収・除去することができる。これまでの金属吸着材は、石油由来の繊維や不織布を基材としたものが主流であり、石油資源への依存や産業廃棄物の生成などの問題を含んでいる。そこで本研究では、植物由来の天然高分子であるポリ乳酸製不織布を基材とする金属吸着材の開発を試みた。メタクリル酸グリシジル(GMA)のグラフト重合条件の最適化を図った結果、不織布の目付を120g/m2,照射線量を50kGy,GMA濃度を4wt%,Tween20濃度を0.1wt%,反応温度を40℃とした場合、4時間以上の反応時間でグラフト率が200%程度となるグラフト重合体(4.7mmol-GMA/g-吸着材)を得ることができた。さらにこのグラフト重合体にイミノジ酢酸(IDA)基の導入を試みたところ、官能基量が500μmol-IDA/g-吸着材となるポリ乳酸を基材とする金属吸着材の作製に成功した。この吸着材の金属選択性は、Cu2+>Pb2+>Ni2+>Zn2+>Cd2+>Co2+>Ca2+>Mg2+の順となり、また、各種金属イオンの飽和吸着量は、488, 418, 423, 317, 284, 244, 207, 111μmol/g-吸着材となった。

36000105
Preparation of graft adsorbent having amine groups and its Au(III) adsorption performance
瀬古 典明; 植木 悠二; 保科 宏行; 玉田 正男
日本イオン交換学会誌 18(4), p.232-235(2007) ; (JAEA-J 03432)
 金を回収するための方法として青化法やキレート樹脂ビーズを用いたイオン交換法などがあるが、それぞれ毒性の強いシアン化物の発生やキレート樹脂ビーズ内で金属イオンの拡散が律速になり、濃縮率が低い等の欠点があった。そこで、放射線グラフト重合によりアリルアミン(AAm)とN-ビニルアセトアミド(NVA)を共重合させて得られる金回収用の吸着材を合成し、その吸着特性を評価した。その結果、AAmとNVAの導入量を各々50%共重合させた吸着材の性能が最も高く、100ppbの金溶液中に24時間浸漬させた際に6万倍に濃縮することがわかった。この値は市販のアミン型のキレート樹脂ビーズと比較して15倍の性能であった。さらに、カラムを用いた吸着試験では、空間速度(流量を吸着材体積で割った値)が各々260h-1, 520h-1, 1040h-1のときに、破過点(カラム出口濃度/入り口濃度が5%の時点)の通液倍率は、163, 150, 144で、それに対応する吸着材の吸着容量は、それぞれ2.7, 2.1, 1.9mmol/gと若干低下する傾向が見られた。しかし、この1040h-1という通液速度は、市販の樹脂ビーズと比較して、100倍の速度で通液できたことになる。

36000106
Synthesis of graft adsorbent with N-methyl-D-glucamine for boron adsorption
保科 宏行; 瀬古 典明; 植木 悠二; 玉田 正男
日本イオン交換学会誌 18(4), p.236-239(2007) ; (JAEA-J 03433)
 N-メチル-D-グルカミン(NMDG)を官能基に持った吸着材は選択的にホウ素を吸着することで知られている。本研究ではグラフト重合法を用いて、ポリエチレン製不織布にグリシジルメタクリレート(GMA)を導入したのち、NMDGを反応させ、ホウ素を高速処理できる吸着材を開発した。グラフト重合法によって作製した吸着材はカラム吸着試験にて評価を行った。ホウ素吸着性能について市販粒状樹脂と比較した結果、通液速度10, 50, 100h-1におけるグラフト吸着材の破過吸着容量は209, 162, 110mmol/Lであり、通液速度10, 50h-1における市販粒状樹脂の破過吸着容量は119, 32mmol/Lであった。これは、通液速度50h-1におけるグラフト吸着材の破過吸着容量が市販粒状樹脂の5倍の値であることを示している。また、通液速度100h-1におけるグラフト吸着材の破過吸着容量は、通液速度10h-1における粒状樹脂の破過吸着容量と同等であったことから、粒状樹脂と比べてグラフト吸着材は10倍の速さでのホウ素処理が可能であることがわかった。

36000107
Solvent extraction of various metals including actinides by bidentate and tridentate diamides
佐々木 祐二; 木村 貴海; 小熊 幸一*
日本イオン交換学会誌 18(4), p.354-359(2007) ; (JAEA-J 03434)
 多様なジアミド化合物を合成し、アクチノイドイオン(An(III), (IV), (V)、及び(VI))抽出のために利用した。3座配位子として働くジグリコールアミド(DGA)化合物は非常に高いAn抽出特性を示した。疎水性を高めるため、より長いアルキル基を修飾したDGA化合物を合成し抽出性能を調べた。その結果、TODGA(tetraoctyl-diglycolamide),TDDGA(tetradecyl-diglycolamide)は無極性溶媒に高い溶解度を示す一方で水中にほとんど溶解しない。TODGAを用いたさまざまな金属の溶媒抽出結果は、イオン半径90〜120pmの2, 3, 4価金属に高い分配比を示した。幾つか置換基を交換した化合物の特性を調べた結果に基づき、優れた抽出性能を示すDGA化合物を提案する。

36000108
HFIR照射された低放射化フェライト鋼の照射下クリープ挙動
安堂 正己; 谷川 博康; 芝 清之; 實川 資朗; 幸野 豊*; 香山 晃*; Li, M.*; Stoller, R. E.*
日本金属学会誌 71(7), p.559-562(2007) ; (JAEA-J 03435)
 本研究では、各種低放射化フェライト鋼の小型圧力管試験片を用い、5dpa, 300/500℃までHFIRで照射された圧力管の径変化を測定することにより、照射下クリープデータの解析を行った。300℃, 5dpaにおいては、周応力と歪量の関係は各鋼類似の傾向となった。周応力300MPa以下までは、照射クリープ歪はほぼ一定の割合で増加した。また、より高い応力条件(400MPa)では、急激な歪量の増加が見られた。最も歪量が大きかったのは周応力400MPaのJLF-1鋼であり、0.24%となった。この原因のひとつとして、JLF-1鋼の照射前の強度が低かったことが考えられる。またボロン,マンガン添加材については、今回の条件では無添加鋼と比べて、特に顕著な相違は見られなかった。500℃, 5dpa照射材においては、高応力側の試験片は破損していたが、おおむね150MPa以下では周応力と歪の関係は直線関係にあることがわかった。

36000109
放射線橋かけ技術による柔らかく弾力性のあるポリ乳酸の開発
長澤 尚胤; 玉田 正男; 金澤 進一*; 早崎 俊克*
プラスチックス 58(11), p.45-48(2007) ; (JAEA-J 03436)
 ポリ乳酸に橋かけ剤であるトリアリルイソシアヌレートを5phr濃度添加して、電子線で橋かけした。橋かけしたポリ乳酸分子の網目中に可塑剤を保持させることにより、室温で柔らかく、変形しても元の形状に戻る弾力性のある透明なポリ乳酸材料を創り出すことに成功したので、その作製法及び物性について解説した。

36000110
レーザー生成スズプラズマからの極端紫外光発生の放射流体シミュレーション
砂原 淳*; 佐々木 明; 田沼 肇*; 西原 功修*; 西川 亘*; 小池 文博*; 藤岡 慎介*; 青田 達也*; 山浦 道照*; 島田 義則*; 西村 博明*; 井澤 靖和*; 宮永 憲明*; 三間 圀興*
プラズマ・核融合学会誌 83(11), p.920-926(2007) ; (JAEA-J 03438)
 次世代の半導体露光用光源として注目されるレーザー生成スズプラズマからの極端紫外光(Extreme Ultra-Violet: EUV)を一次元、及び二次元の放射流体コードを用いて解析した。われわれは輻射過程を正確に計算するために、詳細原子コードを用いてスズプラズマのX線放射率,吸収率を計算し、その遷移エネルギーの精度を実験的に確認した。精度が検証された原子データをもとに光励起を考慮した一次元放射流体シミュレーションを行い、EUV光のプラズマ中での自己吸収が輻射輸送において重要であることを見いだした。さらにプラズマのスケール長がレーザースポットサイズと同等か、もしくは大きい場合には多次元的なプラズマの膨張が無視できないため、二次元放射流体コードを用いて解析を行った。その結果、プラズマの多次元な膨張が無視できない場合にはEUVの吸収スペクトルが減少し、EUV出力が増大することを見いだした。また、計算で得られたスペクトルは実験値をよく再現している。

36000111
被ばく線量評価のためのファントム開発,2; 人体組織等価材の研究開発
木名瀬 栄
Radioisotopes 56(10), p.625-628(2007) ; (JAEA-J 03439)
 人体組織等価材は、放射線防護や放射線医学など、さまざまな分野において利用されている。それぞれの分野において等価材を利用する際には、対象とする放射線の種類やエネルギーに応じたそれぞれの特性を留意することが重要である。本報告では、人体組織等価材を認識する一助として、放射線計測分野における人体組織等価材の要件を整理するとともに、我が国を含む世界諸国において、近年研究開発された固体系の人体組織等価材についてレビューし、今後の研究開発の展望を述べる。

36000112
中性子イメージングの美術品・史跡出土品検査への応用
松林 政仁; 増澤 文武*
Radioisotopes 56(11), p.763-775(2007) ; (JAEA-J 03440)
 経筒のような金属製容器の中に入った経巻や金属と有機物とが組み合わさった文化財の有機質部分をX線ラジオグラフィ(XR)で可視化することは、金属に対するX線の減衰が大きく有機物のそれが著しく小さいため、困難である。これを補完するものとして中性子ラジオグラフィ(NR)が取り上げられた。古代で用いられる主要な金属元素は金,銀,水銀,銅,錫,鉛,鉄であり、X線の場合、それらに対する減衰係数は、有機物を構成する元素:水素,炭素,酸素,窒素のそれに比べ著しく大きい。一方、中性子の場合は、これらの金属元素の中で水銀を除いて有機物のそれに比べ著しく小さい。それゆえに金属と有機物で構成される複合試料の場合、XRは金属部分の調査には適するが、有機物の観察は困難又は不可能である場合が多い。これに対してNRは金属容器内部にある、又は共存する有機物を画像として捉え観察できる。本報では、遺物等の検査の事例を紹介するとともに、美術品(絵画)への中性子イメージングの応用についても簡単に解説を行った。

36000113
ポゾランを高含有した吹付けコンクリート
三浦 律彦*; 小西 一寛*; 入矢 桂史郎*; 中山 雅; 松井 裕哉
セメント・コンクリート (728), p.63-67(2007) ; (JAEA-J 03441)
 半減期の長い核種を含む高レベル放射性廃棄物の処分施設は、地下深部に建設して多重バリアシステムにより、放射性核種を生物圏から隔離するコンセプトが採用されている。放射性廃棄物処分場は、地下数百mに建設されるが、日本の岩盤条件を考えると、特に堆積岩の場合、支保工なしに掘削することは困難と思われる。支保工としての吹付けコンクリートには普通ポルトランドセメントが広く用いられるが、高レベル放射性廃棄物処分場に要求される数千年を越える超長期の性能評価においては、セメント系材料からの浸出水が示す高アルカリ(pH12.5以上)の影響により、人工バリアや天然バリアを変質させる可能性が懸念されている。筆者らは、浸出水のpHを低下させる改善策としてポゾラン反応に着目し、シリカフュームやフライアッシュといったポゾラン材料をOPCに対して50%以上置換した低アルカリ性セメント(HFSC)の研究を行い、浸出水のpHを11程度とすることが可能との結論を得た。本報ではポゾランを高含有したHFSCを用いた低アルカリ性吹付けコンクリートの諸特性について紹介する。

36000114
重イオンマイクロビームを用いた細胞1個の狙い撃ち照射
小林 泰彦
真空 50(9), p.564-568(2007) ; (JAEA-J 03442)
 放射線の生物作用は、生体分子に対する局所的なエネルギー付与、すなわち空間的にも時間的にも離散的な物理的相互作用の過程から始まる。したがって、照射細胞における直接の放射線障害だけでなく、照射細胞と非照射細胞が互いに影響を及ぼし合う過程を定量的に解析することが、放射線適応応答やホルミシス効果など低線量域放射線に特有の生体応答を解明する鍵となる。さらに細胞内の特定部位へのピンポイント照射によって、生体分子の照射損傷の感知から修復機構の誘導過程,細胞内及び細胞間シグナル伝達,アポトーシスなどにいたる一連の細胞応答の分子機構を、また高エネルギー粒子線のトラック構造における局所的エネルギー付与分布と生物効果のLET依存性などの特徴的な現象との関係を、それぞれダイレクトに解析することが可能となる。そこでわれわれは、TIARA(高崎研イオン照射研究施設)重イオンマイクロビームを用いて個別の細胞を狙って正確な個数の重イオンを照射し、その影響を長時間追跡観察するシステムを開発した。本システムの概要と最近の研究成果を紹介する。

36000115
J-PARC中性子源と低温水素システム
加藤 崇; 麻生 智一; 達本 衡輝; 長谷川 勝一; 大都 起一
低温工学 42(8), p.244-254(2007) ; (JAEA-J 03443)
 日本原子力研究開発機構と高エネルギー加速器研究機構は大強度陽子加速器研究施設(J-PARC)を建設している。J-PARCでは、4つの科学実験施設、すなわち物質・生命科学実験施設,原子核・素粒子実験施設,ニュートリノ実験施設及び核変換実験施設(将来計画)が建設されている。中性子散乱実験により物質や生体サンプル等の構造の解析実験が行われる物質・生命科学実験施設では、世界最大のパルス強度を有する中性子ビームを実験者に供給できる核破砕中性子源が建設されている。核破砕反応によって生成される中性子はMeVオーダーのエネルギーを有するが、実験に用いられる中性子エネルギーはmeVオーダーである。よって、中性子のエネルギーをおよそ9桁も下げる効果的な減速材が必要とされる。そのような減速材は超臨界水素であり、核破砕中性子源に中性子エネルギーを減速するシステムへ超臨界水素を供給する極低温水素システムが備えられるゆえんである。本論文では、核破砕中性子源及びその建設中の中性子源に整備される極低温水素システムについて解説する。

36000116
J-PARC中性子源用低温水素システムの安全設計
加藤 崇; 麻生 智一; 達本 衡輝; 長谷川 勝一; 大都 起一
低温工学 42(8), p.255-264(2007) ; (JAEA-J 03444)
 日本原子力研究開発機構は高エネルギー加速器研究機構と協力してJ-PARCを建設している。物質・生命科学実験施設(MLF)はJ-PARCの科学実験施設の一つとして建設されている。高エネルギー陽子ビーム入射による核破砕反応で中性子を発生させ、その中性子を実験者へ供給する装置である核破砕中性子源がMLF内に建設されている。水素原子核は、発生した中性子のエネルギーをMeVからmeVまで減速する中性子減速材として用いられる。よって、減速材としての極低温水素を供給するため核破砕中性子源に極低温水素システムが装備されている。本論文はこの極低温水素システムの安全設計を紹介する。特に、本システムは高圧ガス保安法の適用を受け、本邦で初めて冷凍保安規則の適用を受けた水素冷凍システムである。この規則の適用において議論された技術的な内容についても解説する。

36000117
ITER用ケーブル・イン・コンジット導体におけるNb3Sn生成熱処理による熱歪の評価
松井 邦浩; 小泉 徳潔; 名原 啓博; 礒野 高明; 高橋 良和; 奥野 清
低温工学 42(9), p.311-316(2007) ; (JAEA-J 03445)
 ITERのTFコイルには、Nb3Sn素線を用いたケーブル・イン・コンジット(CIC)導体が使用される。CIC導体では、Nb3Sn素線とステンレス製ジャケット間の熱膨張率の差により、Nb3Sn生成熱処理時に熱歪が発生する。TFコイル巻線や導体間ジョイントの設計においては、熱歪による導体の伸縮や導体内の残留力を考慮する必要がある。導体の伸縮量や導体内に残留する力を評価するために、新たな装置を開発し、TFコイル用導体の伸縮量及び残留力を測定した。その結果、導体の最大伸縮量は0.02%,最大残留力は35kNであった。これらの結果をもとにして、TFコイル巻線の製作方法を提案した。

36000118
Development of new treatment process for low level liquid waste at Tokai reprocessing plant
齋藤 恭央; 高野 雅人; 田中 憲治; 小林 健太郎; 大谷 吉邦
Proceeding of International Symposium on Radiation Safety Management 2007 (ISRSM 2007) , p.275-280(2007) ; (JAEA-J 03446)
 低放射性廃棄物処理技術開発施設(LWTF)は、軽水炉からの使用済燃料の再処理によって発生する低レベルの液体廃棄物を安全で、かつ、合理的,経済的に処理・処分することを目的として、東海再処理施設に建設され、現在、コールド試験を実施中である。LWTFでは、核種分離やROBE固化などの新しい方法で処理を行う一方、多くの硝酸ナトリウムを含んだ低レベル液体廃棄物を安全でかつ経済的に処理するために触媒還元法を用いた硝酸イオンの分解処理やセメント固化処理のR&Dを行っている。このR&D結果は、将来的にLWTFに適用する計画である。本発表では、LWTFの廃液処理の概要と将来の最終処分をより合理的,経済的に達成するための技術開発を紹介する。

36000119
Flow sheet evaluations for the thermochemical water-splitting Iodine-Sulfur process, 2
久保 真治; 今井 良行; 大橋 弘史; 笠原 清司; 田中 伸幸; 奥田 泰之; 小貫 薫
Proceedings of 2007 AIChE Annual Meeting (CD-ROM) , 5p.(2007) ; (JAEA-J 03447)
 原子力機構が提案している高効率ISプロセスフローシートにおいて、未分解のヨウ化水素(HI)を再び反応場へ戻すリサイクルが不可欠である。HIと水素を分離するためには低温気液分離が有効であるが、その際、HIの凝縮潜熱が所用熱量増大の一因である。本研究では、HI凝縮液を蒸留操作における必要還流量だけリサイクルするとともに、凝縮HIの再蒸発にヒートポンプを適用し、さらにサブ蒸留塔による生成ヨウ素分離と分解操作を複数回数繰り返すことにより、所用熱量を低減させるフローシートを提案した。本フローシートの所用熱量を概算したところ、HI分解部(HI蒸留塔,HI分解器等)の所用熱量を合計200kJ/mol-H2程度できることを示した。

36000120
Control techniques for Bunsen reaction solution to regulate process condition
久保 真治; 中島 隼人; 今井 良行; 笠原 清司; 小貫 薫
Proceedings of 2007 AIChE Annual Meeting (CD-ROM) , 5p.(2007) ; (JAEA-J 03448)
 ブンゼン反応溶液の組成コントロールは、熱化学法ISプロセスによる安定水素製造のためキー技術である。本研究は、ブンゼン反応器物質収支の基礎考察,ギブスの自由度を減少させることによる簡便なコントロール方法を示すとともに、超音波固体ヨウ素検出法による同コントロール法の実現手段について述べたものである。

36000121
Flow sheet evaluations for the thermochemical water-splitting Iodine-Sulfur process, 1
久保 真治; 伊地知 雅典*; 程塚 正敏; 吉田 光徳*; 笠原 清司; 井坂 和義; 田中 伸幸; 今井 良行; 小貫 薫
Proceedings of 2007 AIChE Annual Meeting (CD-ROM) , 7p.(2007) ; (JAEA-J 03449)
 熱化学法ISプロセスの研究開発において、高熱効率を達成することは重要課題の一つである。この手段として原子力機構が提案した電気透析によるポリヨウ化水素酸濃縮法を適用したフローシートに関するプロセスシミュレーションを実施した。熱物質収支を計算したところ、電気透析器の性能向上,ブンゼン反応溶液の低不純物化,硫酸工程の所用熱量低減、及びプロセス内循環流量最適化を行った場合には、熱効率が40%(HHV)に達することを示した。

36000122
Strategic recycling of fission products in nuclear fuel cycle as for hydrogen production catalyst
小澤 正基; 藤田 玲子*; 小山 真一; 鈴木 達也*; 藤井 靖彦*
Proceedings of 9th OECD/NEA Information Exchange Meeting on Actinide and Fission Product Partitioning and Transmutation , p.315-324(2007) ; (JAEA-J 03450)
 核燃料サイクルにおける希少金属核分裂生成物の分離・回収のため、触媒的電解採取(CEE)法を研究開発している。放射性廃液中のPd2+イオンはそれ自身効率よく回収されるとともに共存イオン、RuNO3+, ReO4-, TcO4-、等に対しメディエータ(Pd2+)及びプロモータ(Pdadatom)としてそれらの析出を促進する。CEE法により製造した4元系の電極触媒はアルカリ水あるいは人工海水の電解水素製造プロセスにおいて白金電極の2倍程度の高活性を示した。触媒活性の支配元素は主としてRu他であり、Pdは「造粒剤」の役割を果たすと考えられた。CEE法並びにイオン交換クロマト法を主分離法とし、高度にアクチニドや核分裂生成物を分離する「先進オリエントサイクル」は、物質の核変換・利用により放射性廃棄物の大幅な低減に寄与することができる。

36000123
Vitrification experience and new technology development in Tokai vitrification facility
青嶋 厚; 上野 勤; 塩月 正雄
Proceedings of European Nuclear Conference 2007 (ENC 2007) (CD-ROM) , 5p.(2007) ; (JAEA-J 03451)
 東海再処理工場(TRP)では、平成17年度末に、約30年に渡る電力会社との再処理契約に基づく運転を完了し、平成18年度からは、「ふげん」のMOX使用済燃料を用いて技術開発のための試験運転を実施している。一方、TRPの運転に伴う高放射性液体廃棄物の処理は、平成7年よりガラス固化処理技術開発施設(TVF)にて行っており、今後さらに固化処理を継続する予定である。TVFでは、溶融炉が主たる装置であるが、現状では高温ガラスの腐食性のため、その設計寿命は5年間に制限されており、今後製造する固化体本数を考慮した場合、約10年後の溶融炉の交換が必要になる。また、溶融炉の運転では、白金族元素の円滑な抜き出しが安定運転のためには重要であり、今後、TVFの円滑な運転のために、既設溶融炉からの白金族元素の確実な抜き出しを確保するとともに、大幅な長寿命化及び白金族元素抜き出し性能向上を図った新型溶融炉の開発が必要となる。このため、JAEAでは、必要となる新技術の絞込みを行い、その開発計画を作成し、それに基づき精力的に開発を進めている。

36000124
Use of WWR-K reactor for long-term trials of lithium ceramic Li2TiO3 for fusion reactor blanket
Tazhibayeva, I. L.*; Kenzhin, E. A.*; Chachrov, P. V.*; Arinkin, F. M.*; Gasatulin, Sh. Kh.*; Bekamukhabetov, E. S.*; Shestakov, V. P.*; Chikhray, E. V.*; Kulsartov, T. V.*; Kuykabaeva, A. A.*; 河村 弘; 土谷 邦彦
Questions of Atomic Science and Technology; Series the Thermonuclear Fusion, 2 , p.3-10(2007) ; (JAEA-J 03452)
 本論文は、高中性子照射下における核融合炉用リチウムセラミックスの照射試験に関して記述したものである。照射試験は、カザフスタン共和国立原子力センターのWWR-K原子炉で行った。6Li濃縮度96%のLi2TiO3のリチウムセラミックスを照射試料として用い、20%以上のLi燃焼時まで照射した。照射試料の特性に関する照射データは、材料選定及び核融合炉の設計のために活用される。

36000125
Advanced ORIENT cycle, toward realizing intensified transmutation and utilization of radioactive wastes
小澤 正基; 小山 真一; 鈴木 達也*; 藤田 玲子*; 三村 均*; 藤井 靖彦*
Proceedings of International Conference on Advanced Nuclear Fuel Cycles and Systems (Global 2007) (CD-ROM) , p.451-457(2007) ; (JAEA-J 03453)
 核燃料サイクル由来の環境負荷の極少化を図るため、先進オリエントサイクルと称する、新しい研究開発戦略を構築した。先進的分離技術の核心は3級ピリジン樹脂によるイオン交換クロマト法(IXC)と触媒的電解採取法(CEE)で、前者は使用済燃料から直接、3ステップの分離により高純度のAm, Cm及びPu/U/Npの3フラクションの分離を可能とし、MAリサイクルの効率化に大きく寄与することが明らかとなった。一方、Pdアダトムを利用する後者技術については、特に塩酸媒体で希少元素FP(Ru, Rh, Pd, Tc, Re)の分離効率が著しく増大することが明らかとなり、回収元素の水素製造触媒利用などの実現に向け大きな技術的進展があった。他、機能性イオン交換剤によるCs及びSrの分離が研究開発中で、さらにレーザー化学法などによるLLFP(Cs, Se, Sn)の同位体分離法の基礎研究に着手した。

36000126
Some advanced technologies for low-level radioactive waste treatment in JAEA
目黒 義弘; 富岡 修; 山口 大美; 高橋 邦明
Proceedings of International Symposium on EcoTopia Science 2007 (ISETS '07) (CD-ROM) , p.1043-1046(2007) ; (JAEA-J 03454)
 低レベル放射性廃棄物の処分コストを下げるためには、廃棄物中の放射能濃度を下げる,廃棄物量を減らす,処分に影響する物質を取り除くなどの廃棄物処理技術が不可欠である。著者らはJAEAにおいて4つの廃棄物処理技術を開発している。それらは、超臨界二酸化炭素除染法,か焼法,化学還元脱硝法,水蒸気改質法である。これらの方法が廃棄物処理法として将来性のある方法であることを実証した。

36000127
Uranium crystallization study with irradiated MOX fuel
野村 和則; 中原 将海; 矢野 公彦; 佐野 雄一; 柴田 淳広; 鷲谷 忠博
Proceedings of International Symposium on EcoTopia Science 2007 (ISETS '07) (CD-ROM) , p.1058-1061(2007) ; (JAEA-J 03455)
 The uranium crystallization study has been carried out with various solutions. Several tens % of uranium was recovered from the simulated dissolver solution. As the results of the tests, pre-adjustment of the plutonium valence to (+4) was necessary to prevent plutonium co-crystallizing with uranium. Among the fission products, cesium behavior in some trials with the actual dissolver solution was different from that with the simulated dissolver solution. Decontamination factor of cesium to uranium crystals was about 100 in the simulated dissolver solution tests. From the other trials, however, it was suggested that the cesium was precipitated, and accompanied with uranium crystals. This cesium behavior is under investigation while the modification of the process conditions of the uranium crystallization and a new technology of crystal purification has been studying.

36000128
Corrosion study on cold crucible for pyrochemical reprocessing of spent nuclear fuel
竹内 正行; 荒井 陽一; 加瀬 健; 小泉 務
Proceedings of International Symposium on EcoTopia Science 2007 (ISETS '07) (CD-ROM) , p.1084-1088(2007) ; (JAEA-J 03456)
 核拡散抵抗性や経済性の観点から、溶融塩を用いた高温化学再処理法が世界的に検討が進められており、その一つに酸化物電解法が挙げられる。本研究では、腐食環境の厳しい酸化物電解法に対して、それらプロセスを行う電解槽にコールドクルーシブル技術を適用するための腐食研究を実験的に行った。われわれは、数種類の金属材料を対象に、腐食性ガスを通気した2CsCl-NaCl溶融塩中で材料腐食試験を実施し、空冷方式によって、材料表面温度と腐食速度の関係を評価した。その結果、ハステロイ材は表面温度を200℃まで下げることで腐食速度は0.1mm/y以下となり、プロセス温度である650℃の条件よりも腐食速度は1/1000まで抑制されることがわかった。このように、コールドクルーシブルは構造材料の腐食を飛躍的に抑制するうえで有効な技術であり、酸化物電解法が抱える腐食問題を解決するための有望な見通しを与えた。

36000129
Thermal fatigue evaluation method considering fluid-structure interaction against fluid temperature fluctuation
笠原 直人; 川崎 信史; 上出 英樹; 酒井 信介*; 岡島 智史*
Proceedings of International Symposium on Research for Aging Management of Light Water Reactors and Its Future Trend , p.23-1-23-16(2007) ; (JAEA-J 03457)
 機器,配管において温度が異なる冷却材が合流する領域では、流体混合による不規則な温度ゆらぎが生じるため、繰り返し熱応力による構造材の高サイクル疲労破損に注意する必要があり、サーマルストライピングと称されている。高温と低温の流体が混合すると主流中に温度ゆらぎが生じ、境界層内での流体温度ゆらぎ,熱伝達を経て、構造表面での温度ゆらぎとなる。この後熱伝導によって構造内の温度が変動し熱膨張変形が拘束されて熱応力となる。それが多数回繰り返されると応力振幅の大きさにより構造表面での高サイクル疲労き裂が生じる。この過程で流体構造連成に起因するさまざまな減衰要因があることから、これらを考慮し、ゆらぎの周波数に依存した減衰効果を取り入れた熱疲労評価法を開発した。JAEAでは軽水炉用の日本機械学会ガイドラインと整合する、評価ガイドラインを開発する計画である。

36000130
Variation of volume transport of the Tsugaru Warm Current in the period from 2000 to 2002
伊藤 集通; 川村 英之; 中山 智治*; 島 茂樹*; 大西 光代*; 磯田 豊*
Proceedings of International Workshop on Monitoring and Forecasting of the Rapid Change in Ocean-Atmosphere Environment in the East Asia , p.13-14(2007) ; (JAEA-J 03458)
 本研究では、2000年4月から2002年6月の期間の、フェリー搭載音響ドップラー流向流速分布計(ADCP)観測から見積もられた、津軽暖流の流量変動について解析した。この期間の流量は0.6-2.5Sv(=106m3s-1)の幅で変動し、その平均として1.3±0.3Svを得た。観測期間の前半は季節変動よりも20-30日周期の変動が卓越し、逆に後半では季節変動(春最小,秋最大)が卓越した。この変動と海峡周辺の水位差の変動との間にはよい相関が見られた。これについては予想の範囲内であった。一方で、流量変動に海峡周辺の局地風が影響していることを示唆する結果も得られた。

36000131
原子力機構におけるERL開発の現状,2007
永井 良治; 羽島 良一; 沢村 勝; 西森 信行; 菊澤 信宏; 飯島 北斗; 峰原 英介
Proceedings of 4th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 32nd Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.16-18(2007) ; (JAEA-J 03465)
 原子力機構ERLグループではERL型FELの開発実績をもとにさまざまなERL光量子源の提案とそのための要素技術開発を行ってきている。本発表ではERL光量子源についての提案及びERL要素技術開発などERLグループの研究の現状について報告する。

36000132
イオンマイクロサージェリー治療用ペンシルビーム形成システムの検討
荒川 和夫; 及川 将一*; 島田 博文*; 神谷 富裕; 中野 隆史*; 遊佐 顕*; 加藤 弘之*; 佐藤 隆博; 上松 敬; 柏木 啓次; 福田 光宏*; 酒井 卓郎; 奥村 進; 倉島 俊; 宮脇 信正; 百合 庸介; 齋藤 勇一; 石井 保行; 横田 渉; 岸 章治*; 佐藤 拓*; 堀内 康史*; 山田 聰*
Proceedings of 4th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 32nd Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.279-281(2007) ; (JAEA-J 03466)
 サブミリサイズに集束したイオンビームを用い、微小な病変部位を高精度で治療する技術はイオンマイクロサージェリー治療と呼ばれている。本研究では、脳下垂体腫瘍と眼疾患である加齢黄斑変性症を想定症例として、イオンマイクロサージェリー治療用ビーム形成システムを検討した。イオンマイクロサージェリー治療には、ビーム径0.1mmから1.0mmの平行度の高いペンシルビームの形成が要請されている。そこで、ペンシルビーム形成システムとして、ビームのエミッタンスを規定する2組のスリットシステム,エネルギー分析機能を有する2台の45°偏向電磁石,3連四重極電磁石等から構成され、アイソセンターにおいて1:1で結像するようなテレスコピックな系を検討した。TRANSPORTコードを用いてイオン光学計算を行い、ペンシルビーム形成に必要な電磁石等の必要数量とその最適配置を求めた。さらに、加齢黄斑変性症に対する照射位置決めシステムを検討するとともに、重イオンビーム照射実験により眼底造影剤からの誘起蛍光画像の観測とスペクトルの計測に成功した。

36000133
Lowβ超伝導加速空洞の性能試験
株本 裕史; 竹内 末広; 石崎 暢洋; 松田 誠; 乙川 義憲
Proceedings of 4th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 32nd Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.469-471(2007) ; (JAEA-J 03467)
 原子力機構東海タンデム加速器では安定核・短寿命核ビームを発生するJAEA・KEK共同研究施設(TRIAC)の建設を終了し、2004年度からウラン標的による短寿命核の加速を開始した。当初はイオンのエネルギー1.1MeV/uで運転を行うが、将来的にはイオンを超伝導ブースターで再加速しクーロン障壁を越える約5〜8MeV/uのビームを得る計画を進めている。イオンを超伝導ブースターで効率よく加速するためには1.1MeV/uのビームを2.0MeV/uまで加速する前段加速器が必要である。その候補として低速度重イオンを効率よく加速できるLowβ超伝導加速空洞(Twin-QWR)の開発を進めており、2005年度にプロトタイプの空洞を製作した。2006年度には空洞の性能試験を行ったのでその結果を報告する。

36000134
偏心フルートの高周波特性
沢村 勝; 梅森 健成*; 古屋 貴章*; 坂中 章悟*; 高橋 毅*; 諏訪田 剛*; 阪井 寛志*; 篠江 憲治*
Proceedings of 4th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 32nd Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.472-474(2007) ; (JAEA-J 03468)
 高調波モード(HOM)はBeam Breakup(BBU)等を引き起こし、加速電流を制限するなどの弊害をもたらすため、通常HOMカップラーやHOMダンパーで吸収される。このうちHOMダンパーで吸収させる場合、ビームパイプでのHOMの伝播を可能にするため大口径ビームパイプやフルート構造ビームパイプが使用される。しかしどちらとも四重極モードに対してはあまり有効でない。そこで四重極HOMを減衰させるためのものとして「偏心フルート」を提案する。偏心フルートは通常のフルート構造をビームパイプ中心でV字に折り曲げたような構造をしている。このように四重極に対して非対称にすることにより、偏心フルートは四重極モードから双極モードへのモード変換のような働きをする。また曲げ角度を最適化することにより、縮退している2つの四重極モード両方に作用させることができる。本研究会ではこの偏心フルートのさまざまなパラメータの違いによる高周波特性に関してMAFIAによる計算結果とローパワーモデルによる測定結果について報告する。

36000135
ERL型大強度γ線源による放射性廃棄物中の核種検出
菊澤 信宏; 羽島 良一; 早川 岳人; 峰原 英介
Proceedings of 4th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 32nd Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.577-579(2007) ; (JAEA-J 03469)
 われわれはERL型加速器を利用した大強度の準単色γ線発生装置による放射性同位元素の同定法を提案し、放射性廃棄物の処理処分への応用の可能性について研究している。この応用可能性の評価を行うために、GEANT4をベースにして光核反応を計算できるシミュレーションコードを開発し、核種検出について計算を行った。ERLを利用した大強度γ線源と、核種検出シミュレーションの結果について議論する。

36000136
多重極電磁石を用いた均一ビーム照射のためのビームプロファイルの改良に関する研究
百合 庸介; 奥村 進; 湯山 貴裕; 上松 敬; 宮脇 信正; 石堀 郁夫; 石坂 知久
Proceedings of 4th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 32nd Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.607-609(2007) ; (JAEA-J 03470)
 高崎量子応用研究所TIARAのサイクロトロン施設では、多重極電磁石を用いたイオンビーム均一照射システムを開発中である。多重極電磁石がつくる非線形集束力を用いてビーム強度分布を均一化するには初期のビーム分布がガウス分布である必要があるが、実際にサイクロトロンから引き出されたビームの分布はガウス分布ではなく非対称である。そこで、TIARAのサイクロトロンから引き出された非対称なビーム形状を散乱体を用いてガウス分布に近づける実験を行った。輸送系のある場所に設置した薄膜にビームを透過させ、多重散乱によるプロファイルの変化をプロファイルモニタ等で計測し、分布がガウス関数型に近づくことを確認し、その度合いが散乱体からプロファイルモニタまでのベータトロン振動の位相に依存することがわかった。また、薄膜散乱によるエミッタンスの増大の影響をQスキャン法を用いて計測した。

36000137
エネルギー回収型リニアックにおけるHOM-BBU閾値電流の評価
永井 良治; 羽島 良一; 沢村 勝; 西森 信行; 飯島 北斗; 菊澤 信宏; 峰原 英介
Proceedings of 4th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 32nd Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.637-639(2007) ; (JAEA-J 03471)
 エネルギー回収型リニアック(ERL)はリニアックと蓄積リングの長所を兼ね備え、高輝度・大電流の電子ビームを生成できる加速器として注目されている。ERL特有の問題として超伝導加速空洞においてビームによって励起される高次モード(HOM)によりBBUを起こすことが知られている。ここではシミュレーション・コードによりHOM-BBU閾値電流の評価を行った。この結果通常の構成のERLではERL放射光源の目標とされている100mAは十分達成可能であり、さらに加速減速を2回行う2ループ構成も検討する価値のあることがわかった。

36000138
DC光陰極電子銃のためのエミッタンス補償用ソレノイド
永井 良治; 羽島 良一; 西森 信行; 飯島 北斗; 沢村 勝; 菊澤 信宏; 峰原 英介
Proceedings of 4th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 32nd Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.673-675(2007) ; (JAEA-J 03472)
 原子力機構ではERLのための電子源としてDC光陰極電子銃の開発を行っている。DC光陰極電子銃では電子ビームが陰極を出た直後に空間電荷力によりスライスごとの位相空間分布に差が生じてしまいエミッタンスが大きくなってしまう。この効果を補正するためのソレノイド電磁石についての検討と設計を行った。その結果、このソレノイドでエミッタンス補償が十分にできることがわかった。

36000139
ERL放射光源用DC電子銃に必要とされる高電圧安定度
永井 良治; 羽島 良一; 飯島 北斗; 西森 信行; 沢村 勝; 菊澤 信宏; 峰原 英介
Proceedings of 4th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 32nd Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.676-678(2007) ; (JAEA-J 03473)
 原子力機構ではERL放射光源のための電子源としてDC光陰極電子銃の開発を行っている。ERL放射光源用のDC電子銃に必要とされる高電圧の安定度とその実現の方法について検討を行った。現在試験を行っている250kVの電子銃ではLC型フィルタにより変動を抑える方法を試みており、良好な結果が得られている。この結果をもとに500kVの電子銃の設計を行えば比較的コンパクトな電源で十分な安定度が得られることがわかった。

36000140
高電圧端子内重イオン入射装置の開発
松田 誠; 仲野谷 孝充; 沓掛 健一; 花島 進; 竹内 末広
Proceedings of 4th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and 32nd Linear Accelerator Meeting in Japan (CD-ROM) , p.736-738(2007) ; (JAEA-J 03474)
 原子力機構タンデム加速器では高電圧端子内の入射装置に10GHzの永久磁石型電子サイクロトロン共鳴イオン源(ECRIS)が設置され、イオンビームの強度及びエネルギーの増強が行われている。このイオン源から引き出されるイオンビームを有効に利用するため、高電圧端子の低エネルギー側に設置する新たな入射装置を開発した。この配置では十分な磁場強度と分解能を有する180°偏向電磁石をビーム分析に使用するので、質量電荷比の大きなイオンが利用でき、かつ加速管へ入射するビームの精度よい分離が可能である。新入射装置では質量電荷比の大きなXe7+(A/q˜20)イオンなども利用可能になったことで50MeVの低エネルギービームの加速が可能となり、50MeV〜300MeVの広範なエネルギー領域のビームが利用できる唯一の加速器となった。新たな入射装置の開発とその利用状況について報告する。

36000141
MT法データのロバスト・スムージング手法の開発とスタッキングへの応用
根木 健之; 梅田 浩司; 松尾 公一*; 浅森 浩一
社団法人物理探査学会第117回(平成19年度秋季)学術講演会講演論文集 , p.195-198(2007) ; (JAEA-J 03475)
 本研究では、MT法スペクトル・データのスタッキングにおいて、従来、熟練技術者が行ってきた目視スタッキングの流れを取り入れたスタッキング・ルーチンを開発した。本ルーチンを極めて低品質な実データに適用した結果、熟練技術者によるマニュアル・スタッキング以上の品質を持つスタッキング結果を短時間で出力し、その実用性と有効性が認められた。このことから、本スタッキング・ルーチンは、ノイズレベルが極めて高い地域におけるMT法においても、迅速・安定に品質の向上が見込まれる実用的かつ効果的なデータ処理手法として期待される。

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