学会誌等掲載論文
※下記の研究開発成果は資料名順に並んでいます。

2008年12月


36001557
Effects of neutron-irradiation-induced intergranular phosphorus segregation and hardening on embrittlement in reactor pressure vessel steels
西山 裕孝; 鬼沢 邦雄; 鈴木 雅秀; Anderegg, J. W.*; 永井 康介*; 外山 健*; 長谷川 雅幸*; 亀田 純*
Acta Materialia 56(16), p.4510-4521(2008) ; (JAEA-J 04829)
 中性子照射した原子炉圧力容器鋼で、粒界のリン偏析と照射硬化が延性脆性遷移温度(DBTT)に及ぼす影響を、オージェ電子分光分析,局所電極型アトムプローブ、及び陽電子消滅法による組織分析を用いながら検討した。中性子照射により粒界のリン偏析が誘起されることを示した。また、材料中のリン含有率が高くなると照射硬化が大きくなることを示した。これは、照射によって生成した空孔によって安定化されたリン集合体によるものであることを明らかにした。粒界のリン濃度及び照射硬化とDBTTの関係、並びに破面観察から、中性子照射によって粒界におけるリンの脆化能が小さくなる現象を見いだし、脆化の主要因は照射硬化によることを示した。

36001558
SR-PES and STM observation of metastable chemisorption state of oxygen on Si(110)-16 ×2 surface
山本 喜久*; 富樫 秀晃*; 加藤 篤*; 高橋 裕也*; 今野 篤史*; 寺岡 有殿; 吉越 章隆; 朝岡 秀人; 末光 眞希*
Applied Surface Science 254(19), p.6232-6234(2008) ; (JAEA-J 04831)
 Si(110)-16 ×2表面に室温吸着させた酸素分子の吸着状態と、その後の加熱による吸着構造の変化を放射光光電子分光により研究した。その結果、微量の酸素暴露でもSi1+だけでなく、Si2+, Si3+成分が現れることがわかった。これは、O2分子が既に酸素が吸着しているサイトの近辺に選択的に吸着されるため生じている可能性が高い。また加熱後のSi2+, Si3+成分の結合エネルギーが増加し、熱酸化膜の値に近くなっていることから、室温で準安定状態にあった酸素原子が加熱によりSi-O結合長とSi-O-Si結合角を緩和させたことが示唆される。

36001559
Empirical abundance scaling laws and implications for the γ process in core-collapse supernovae
早川 岳人; 岩本 信之; 梶野 敏貴*; 静間 俊行; 梅田 秀之*; 野本 憲一*
Astrophysical Journal 685(2), p.1089-1102(2008) ; (JAEA-J 04832)
 太陽系には約290種類の安定同位体が存在している。鉄より重い元素の約99%は中性子の捕獲反応で生成されたことが判明している。その一方で、陽子過剰領域側には中性子の捕獲反応では生成できないp核と呼ばれる35核種類の同位体が存在している。われわれは太陽組成を分析してp核の組成に関する経験則を発見した。この経験則は35核種類のp核のうち27核種が超新星爆発の光核反応で生成された証拠である。さまざまな天体環境における超新星爆発の元素合成モデル計算を行い、この経験則が発現するメカニズムを解明した。また、残りの8核種のp核の天体起源について議論した。

36001560
Intracellular changes of metal elements by fucoidan extracted from brown seaweed; Cladosiphon okamuranus
長嶺 竹明*; 高田 久嗣*; 草壁 孝彦*; 中里 享美*; 酒井 卓郎; 及川 将一*; 神谷 富裕; 荒川 和夫; 伊波 匡彦*
Biological Trace Element Research 124(1), p.60-69(2008) ; (JAEA-J 04833)
 本研究は、オキナワモズクから抽出したフコイダンの投与による金属元素の細胞内変化を調べるために行った。TRL1215細胞(ラット正常肝細胞)にフコイダン0, 0.1及び1.0mg/mLを加えて処理し、細胞内元素分布を大気マイクロPIXE法で測定した。フコイダンを投与した細胞にはAl, Mg, Fe及びZnが集積されることを見いだすとともに、Br(BrdU)が細胞核に局在して集積し、Brの分布とAlの分布が空間的によく一致していることを見いだした。この結果は、フコイダンに結合しているAlが核内に移動していることを示唆するものである。

36001561
Subcellular changes of essential metal shown by in-air micro-PIXE in oral cadmium-exposed mice
中里 享美*; 長嶺 竹明*; 鈴木 慶二*; 草壁 孝彦*; Moon, H. D.*; 及川 将一*; 酒井 卓郎; 荒川 和夫
Biometals 21(1), p.83-91(2008) ; (JAEA-J 04834)
 Cd毒性に対する必須金属の役割を明らかにするために、1.5年から2年間で100mg/LのCdを経口投与した4匹のマウスを用い、メタロチオネインによる評価と大気マイクロPIXE法による必須金属元素の細胞内分布の測定を行った。その結果、Cdを曝露したマウスの肝臓と腎臓には亜鉛が著しく集積していることが見いだされた。1.5年間Cdを曝露したマウスの元素分布では大部分のCdが亜鉛と結合しており、亜鉛は経口投与されたCd毒に対する保護に寄与していることが示唆された。

36001562
Hydration affects both harmonic and anharmonic nature of protein dynamics
中川 洋; 城地 保昌*; 北尾 彰朗*; 片岡 幹雄
Biophysical Journal 95(6), p.2916-2923(2008) ; (JAEA-J 04835)
 To understand the effect of hydration on protein dynamics, inelastic neutron scattering experiments were carried out on Staphylococcal nuclease samples at differing hydration levels: dehydrated, partially hydrated and hydrated. At cryogenic temperatures, hydration affected the collective motions with energies lower than 5 meV, while the high energy localized motions were independent of hydration. The prominent change was a shift of boson peak toward higher energy by hydration, suggesting hardening of harmonic potential at local minima on the energy landscape. The 240 K transition was observed only for the hydrated protein. Significant quasi-elastic scattering at 300 K was observed only for the hydrated sample, indicating that the origin of the transition is the motion activated by hydration water. The neutron scattering profile of the partially hydrated sample was quite similar to that of the hydrated sample at 100 and 200 K, while it was close to the dehydrated sample at 300 K, indicating that partial hydration is sufficient to affect the harmonic nature of protein dynamics, and that there is a threshold hydration level to activate the anharmonic motions. Thus, hydration water controls both the harmonic and anharmonic protein dynamics, by differing means.

36001563
Electron-beam-induced color imaging of acid-chromic polymer films
前川 康成; 湯浅 加奈子*; 榎本 一之; 松下 晴美*; 加藤 順*; 山下 俊*; 伊藤 和男*; 吉田 勝
Chemistry of Materials 20(16), p.5320-5324(2008) ; (JAEA-J 04837)
 電子線記録システムに適用できる、電子ナノビームによりクロミック挙動を示す有機薄膜の創製を目的に、電子線で酸を発生する分子(酸発生剤)と酸性で発色または蛍光を呈する環境クロミック分子を含む高分子薄膜について、電子線によるクロミック分子の反応挙動と、電子線描画装置によるナノ発色パターン形成性を検討した。酸発生剤(phenyl-p-toluenesulfonate)存在下、環境クロミック分子であるrhodamine B base(RB)及び4,4'-bis(dimethylamino)benzhydrol(BH)のpolymethylmethacrylate(PMMA)薄膜は、それぞれ、照射線量の増加に伴い560nm及び610nmの吸収が単調増加し赤色及び青色を呈した。このことは、クロミック分子が電子線により発生した酸(H+)でプロトン化し、選択的にRB-H+体及びBH-H+体を与えることで発色したことを意味する。次いで、酸発生効率が高く可視領域の吸収変化が大きく変化したBH/PMMA薄膜の電子線描画装置(50nm径)によるナノ発色パターン形成性を評価した。照射線量10μC/cm2での電子線描画後、露光部と未露光部とで色調が変化し、ドットパターンで200nm、L/Sパターンでは100nmの分解能を示す発色パターンが観察された。

36001564
Spontaneous fission of neutron-deficient fermium isotopes and the new nucleus 241Fm
Khuyagbaatar, J.*; Hofmann, S.*; Heßberger, F. P.*; Ackermann, D.*; Burkhard, H. G.*; Heinz, S.*; Kindler, B.*; Kojouharov, I.*; Lommel, B.*; Mann, R.*; Maurer, J.*; 西尾 勝久; Novikov, Y.*
European Physical Journal A 37(2), p.177-183(2008) ; (JAEA-J 04838)
 Spontaneous fission of neutron-deficient fermium isotopes with neutron number N<144 was investigated. The nuclei were produced in fusion-evaporation reactions of 40Ar beams with 204,206-208Pb targets. The new isotope 241Fm was identified, and the half-life 0.73 ms was determined. The half-life was significantly longer than the neighboring even-even isotopes 242,244Fm, and the hindrance factor were calculated by the to be 1.1 ×104 for 241Fm and 5.2 ×104 for 243Fm, being associated with the lower tunneing probability for nuclei having nuclear spins. The result suggests also the possible production and detection of 239,237Fm becalsue of the stabilization against spontaneous fission.

36001565
Heavy-ion microbeams; Development and applications in biological studies
舟山 知夫; 浜田 信行*; 坂下 哲哉; 小林 泰彦
IEEE Transactions on Plasma Science 36(4), p.1432-1440(2008) ; (JAEA-J 04844)
 高いLETを持つ重イオンは、重粒子がん治療やイオンビーム育種に応用されている。また、宇宙放射線のリスク評価においても、重イオンの生物作用機構の解明は重要である。重イオンマイクロビーム装置は、重イオンの生物作用を解明するうえで、極めて有効な手段であり、同時に、さまざまな生物現象を解明するうえでのラジオマイクロサージェリーツールとしても利用できる。本総説では、世界の重イオンマイクロビーム装置それぞれと、それらの装置を用いてこれまでに行われてきた、多岐に渡る生物学的研究について概説する。

36001566
Transient behaviour of low enriched uranium silicide plate-type fuel for research reactors during reactivity initiated accident
柳澤 和章
International Journal of Nuclear Energy Science and Technology 4(2), p.97-110(2008) ; (JAEA-J 04845)
 軍事転用不可能な低密度(4.8gU/cc)シリサイド小型板状燃料を用い、燃料の健全性確認のための照射試験を実施した。(1)燃料温度が400度以下では、燃料破損や寸法安定性の喪失は起こらなかった。この温度を超えると寸法安定性が徐々に悪くなる。(2)板状燃料は82cal/g以下では健全性を維持したが、94cal/g以上となると、焼き割れによる破損や燃料溶融による破損を生じた。したがって燃料破損しきい値はこの二つの値の間にあると推定される。

36001567
Local structure of BiFeO3-BaTiO3 mixture
米田 安宏; 吉井 賢資; 小原 真司*; 喜多川 修二*; 森 茂生*
Japanese Journal of Applied Physics 47(9), p.7590-7594(2008) ; (JAEA-J 04846)
 BiFeO3とBaTiO3を固溶させた(1-x)BiFeO3-xBaTiO3に関しては、Kumarによって室温での構造がx=0.33近傍でcubic構造となり、誘電率が増加することが報告されている。また、この混晶の電子顕微鏡観察が森らによって行われており、x=0.33の試料では電子回折パターンに散漫散乱が現れ、暗視野像においてツイードパターンが観察されることが報告された。平均構造がcubicであるにもかかわらず、何だかの強誘電的ドメインが観察されるということは、長距離構造には現れないローカルな強誘電性発現機構が存在することを示している。そこで、高エネルギーX線回折で得たデータを元にpair-distribution function解析を行うことで、(1-x)BiFeO3-xBaTiO3の局所構造を明らかにし、強誘電的性質とのかかわりを示すことを試みた。その結果、BiO12ポリヘドロンはBiのlone-pair電子のために歪んだ構造をしており、この局所的な歪みが分極発現機構となっていることがわかった。

36001568
Magnetic and dielectric properties of HoFe2O4 and R1-xR'xFe2O4 (R, R': rare earths)
吉井 賢資; 米田 安宏; 真栄田 大介*; 横田 祐輔*; 道内 尊正*; 小松 拓磨*; 池田 直*; 松尾 祥史*; 森 茂生*
Japanese Journal of Applied Physics 47(9), p.7599-7602(2008) ; (JAEA-J 04847)
 新規強誘電体RFe2O4(R=Y,Ho-Lu)の性質を明らかにするため、標記酸化物の物性を調べた。RFe2O4のうち、物性の報告例のないHoFe2O4を合成し、磁性と誘電性を調べた。誘電率は室温で1000程度であり、ほかのRFe2O4と類似であるが、誘電応答における系の乱れと磁気転移温度は明瞭な違いが見られた。この違いは、酸素量の違いに由来すると推測される。また、希土類サイトの置換を行い、物性を調べた。最もイオン半径の異なるYとLuの間で混晶が作成でき、その物性が非混晶系と類似であることから、R=Y,Ho-Luの間で混晶が作成でき、物性も非混晶系と本質的に同じと推測された。さらに、LuFe2O4のLuの一部を、希土類の中で最も小さいScに置換した。X線回折からは、20%ほどのSc置換が上限であることがわかった。誘電性はLuFe2O4と類似であったが、磁気転移温度はSc置換により、250Kから200Kへと大幅に下がった。このことは、希土類サイトの置換により、物性コントロールが可能なことを示唆する。

36001569
Numerical analysis of the production profile of H0 atoms and subsequent H- ions in large negative ion sources
高戸 直之*; 戸張 博之; 井上 多加志; 花谷 純次*; 畑山 明聖*; 花田 磨砂也; 柏木 美恵子; 坂本 慶司
Journal of Applied Physics 103(5), p.053302_1-053302_12(2008) ; (JAEA-J 04848)
 3次元モンテカルロ輸送コードを用いて、H0原子の輸送と生成の数値シミュレーションを行った。表面生成H-イオンの空間分布を求めるために、本コードをCs添加条件下の大型のJAEA10アンペア負イオン源に適用した。H0原子の輸送過程では、H-イオンの表面生成に影響を及ぼすH0原子のエネルギー緩和過程を考慮した。その結果、H0原子の生成が局所的に促進されている高電子温度領域においてH-イオンの表面生成が促進されることが明らかになった。

36001570
Interlaboratory comparison of positron annihilation lifetime measurements for synthetic fused silica and polycarbonate
伊藤 賢志*; 岡 壽崇*; 小林 慶規*; 白井 泰治*; 和田 健一郎*; 松本 昌高*; 藤浪 真紀*; 平出 哲也; 誉田 義英*; 細見 博之*; 永井 康介*; 井上 耕治*; 斎藤 晴雄*; 榊 浩司*; 佐藤 公法*; 島津 彰*; 上殿 明良*
Journal of Applied Physics 104(2), p.026102_1-026102_3(2008) ; (JAEA-J 04849)
 同一の溶融石英とポリカーボネートを試料に用い、陽電子消滅寿命測定及び解析を12の研究室において実施し、その比較を行った。各研究室で得られた陽電子寿命のばらつきは、測定方法と解析方法を統一することで、過去に報告されている、何も制約を与えずに行われた試験結果に比較して、小さくできることがわかった。

36001571
Mechanisms of unexpected reduction in hole concentration in Al-doped 4H-SiC by 200 keV electron irradiation
松浦 秀治*; 蓑原 伸正*; 大島 武
Journal of Applied Physics 104(4), p.043702_1-043702_6(2008) ; (JAEA-J 04850)
 電子線照射による炭化ケイ素(SiC)半導体中のキャリア濃度の減少効果を明らかにするため、アルミニウム(Al)添加p型六方晶(4H)SiCへ200keV電子線を照射した。ホール係数測定をすることで、正孔濃度の変化を調べた。その結果、照射量の増加とともに正孔濃度が減少することが判明した。また、正孔濃度の温度依存性より、アクセプタ準位を求めたところ、Alのアクセプタ準位である200eVに加え、380keV程度の深いアクセプタ準位も存在することが見いだされた。照射量とアクセプタ濃度の関係を調べたところ、照射量の増加とともにAlアクセプタは減少し、深いアクセプタは増加することが判明した。200keV電子線がSiC中のC原子のみをはじき出すエネルギーであることを考えると、深いアクセプタ準位はAlとC空孔が関与した複合欠陥であると推測される。一方、キャリアの補償中心に注目すると、照射量の増加によって濃度変化はなく一定であることが判明した。このことから、200keV電子線による正孔濃度減少は、Alアクセプタ近傍のCがはじき出され、Alと複合した深いアクセプタ準位となることでAlアクセプタ濃度が減少するためと推測される。

36001572
Carcinogen adsorbent prepared from DNA complex by γ-ray irradiation
古澤 和也*; 北 恵里香*; 佐伯 俊彦*; 長澤 尚胤; 西 則雄*; 土橋 敏明*
Journal of Biomaterials Science; Polymer Edition 19(9), p.1159-1170(2008) ; (JAEA-J 04851)
 デオキシリボ核酸(DNA)は発ガン性物質をインターカーション吸着する働きがあることから、このDNAを不溶化することによって、天然高分子由来の環境浄化材料を開発することが可能となる。そこで、本研究では食品加工残渣の鮭白子DNAを選定し、多糖類誘導体やタンパク質にブレンド後、放射線橋かけしてハイブリッドゲルを創製し、得られたゲルのゲル分率,膨潤度を調べるとともに、発ガン物質のモデル物質であるアクリジルオレンジを用いて吸着特性を評価した。カルボキシメチルセルロース,ゼラチン,アルブミンを用いた場合に効率よく橋かけし、50kGy照射でゲル分率が60%以上になり、その吸水特性は約200倍であることを見いだした。10kGy照射して得られたゼラチン/DNAゲルのアクリジルオレンジの吸着量は、DNA無添加に比べて10倍以上(1.8μg/g)に増加し、環境浄化材料としての有用性を確認できた。

36001573
Anti-FGF23 neutralizing antibodies show the physiological role and structural features of FGF23
山崎 雄司*; 玉田 太郎; 笠井 規行*; 浦川 到*; 青野 友紀子*; 長谷川 尚*; 藤田 敏郎*; 黒木 良太; 山下 武美*; 福本 誠二*; 島田 孝志*
Journal of Bone and Mineral Research 23(9), p.1509-1518(2008) ; (JAEA-J 04852)
 線維芽細胞増殖因子(FGF)23は生体内でリン及びビタミンD代謝を調節する分子であり、FGF23の体内循環レベルに異常をきたすとミネラル代謝異常に伴うさまざまな疾患が引き起こされる。本研究では、FGF23のN及びC末端側領域を認識する抗体(FN1及びFC1)を用いてFGF23の生理的役割を解析するとともに、抗FGF23抗体の中和活性機構をin vitro, in vivoの双方で確認した。さらにFGF23/FN1-Fab複合体の構造解析を実施し、取得した構造情報からはFN1がFGF23(N末端側領域)と既知のFGF受容体の結合を阻害することにより中和活性を示すと思われた。また、生化学的解析結果はFC1がFGF23(C末端側領域)と新規受容体であるKlothoとの結合を阻害することを示した。これらの知見から、FGF23のN及びC末端側領域は各々別の受容体を認識しており、この受容体認識機構がFGF23の生理的活性発現に必須であると考えられた。

36001574
Ab inito study on the ground and low-lying excited states of cesium iodide (CsI)
黒崎 譲; 松岡 雷士; 横山 啓一; 横山 淳
Journal of Chemical Physics 128(2), p.024301_1-024301_7(2008) ; (JAEA-J 04853)
 基底及び低励起状態のヨウ化セシウム(CsI)分子のポテンシャルエネルギー曲線(PEC)をMRSDCI法により計算した。7つのΛ-S状態に対するPECをまず計算し、次にspin-orbit効果を考慮した13のΩ状態に対するPECを求めた。求めたX0+状態PECについての分光学定数は実験と良い一致を示した。平衡核間距離付近でのX0+とほかのΩ状態の間の遷移双極子モーメント(TDM)を計算したところ、X0+A0+状態の間のTDMが最も大きく、X0+B0+状態の間のTDMはその次に大きいことが予測された。最後に、133CsIと135CsI分子のX0+状態PECの振動固有状態を数値的に求め、振動レベルのずれに対する同位体効果について調べた。その結果、133CsIあるいは135CsIのv=136状態が隣接する状態から最もエネルギー的に離れていることがわかった。

36001575
Effects of ion irradiation on the hardness properties of graphites and C/C composites by indentation tests
奥 達雄*; 車田 亮*; 今村 好男*; 石原 正博
Journal of Nuclear Materials 381(1-2), p.92-97(2008) ; (JAEA-J 04855)
 4種類の黒鉛材料及び2種類の炭素繊維強化炭素複合材料に対して、175MeVのアルゴンイオンを照射した。照射後、微小硬さ試験により押込み荷重-押込み深さ特性を調べ、微小硬さ,強度及びヤング率と密接に関連するとされるBパラメータ及びDパラメータの照射効果を検討した。その結果、微小硬さ及びパラメータB, Dともにアルゴンイオン照射に伴い増加し、これら微小硬さ特性がdpaの関数として表せること、さらに既存の中性子照射によるデータも含めてdpaの関数として照射効果が表現できることがわかった。

36001576
Effect of sodium nitrate on the diffusion of Cl- and I- in compacted bentonite
石寺 孝充; 宮本 真哉*; 佐藤 治夫
Journal of Nuclear Science and Technology 45(7), p.610-616(2008) ; (JAEA-J 04858)
 TRU廃棄物処分の安全評価においては、14C, 36Cl及び129Iといった核種のデータ取得が必要であるとともに、硝酸塩の溶出やセメント材料の溶解による地下水の高pH化の影響を評価する必要がある。よって、ケイ砂混合率及びNaNO3濃度をパラメータとして、高pH条件でCO32-, Cl-及びI-のベントナイト中の透過拡散試験を実施し、実効拡散係数(以下、Deの取得を行った。その結果、CO32-, Cl-、及びI-Deは10-12∼10-11m2/s程度の値が得られた。これらのイオンのDeは、NaNO3濃度の増加に伴ってそれぞれ増大する傾向が見られ、これは、NaNO3濃度の増加に伴う陰イオン排除効果の低下によるものであると考えられた。また、CO32-はクニゲルV1中に含まれる方解石との化学平衡により、クニゲルV1中に保持されると考えられた。

36001577
Corrosion products from carbon steel formed in compacted bentonite under reducing conditions
石寺 孝充; Xia, X.*; 出光 一哉*; 菊池 芳郎*
Journal of Nuclear Science and Technology 45(8), p.763-772(2008) ; (JAEA-J 04859)
 オーバーパック腐食生成物が圧縮ベントナイト中の放射性核種の収着挙動,拡散挙動へ及ぼす影響を調べるため、あらかじめ電解腐食させた炭素鋼を圧縮ベントナイトに接触させて鉄腐食生成物をベントナイト中へ移行させ、圧縮ベントナイト間隙中の鉄腐食生成物の存在形態を調べた。圧縮ベントナイトをスライスし、スライス片の選択溶解抽出を行い鉄腐食生成物の結晶化の程度を調べ、鉄腐食生成物の価数を調べた結果、室温で数年の範囲内では、鉄腐食生成物は非晶質のFe(OH)2及びFe(OH)3として存在していることが推測された。XRD分析の結果より、鉄腐食生成物によってNa型スメクタイトのFe型化はほとんど起こっておらず、鉄腐食生成物はスメクタイト粒子間に存在していることが示唆された。また、あらかじめ大気下で生成した3価の鉄腐食生成物は、圧縮ベントナイト間隙中では容易に2価に還元されないものと考えられた。

36001578
Mitigation technologies for damage induced by pressure waves in high-power mercury spallation neutron sources, 2; Bubbling effect to reduce pressure wave
二川 正敏; 粉川 広行; 長谷川 勝一; 直江 崇; 井田 真人; 羽賀 勝洋; 涌井 隆; 田中 伸厚*; 松本 洋一郎*; 池田 裕二郎
Journal of Nuclear Science and Technology 45(10), p.1041-1048(2008) ; (JAEA-J 04860)
 高出力パルス中性子源水銀ターゲットに大強度陽子ビームを入射したときに生じる圧力波はキャビテーションを生じ、水銀容器の寿命を著しく低下させる。圧力波を低減するための技術として、微小気泡を水銀中に注入することを試みた。衝撃圧負荷装置を水銀ループに接続させて、流動水銀に微小気泡を注入し、それにより生じる変化を圧力応答及び損傷の観点から調べた。その結果、圧縮衝撃圧に気泡注入による変化は見られないが、損傷が著しく軽減した。この結果について、数値解析を行い考察し、気泡によりキャビテーションの発生が抑えられたことが理解された。

36001579
Experimental study on gas entrainment at free surface in reactor vessel of a compact sodium-cooled fast reactor
木村 暢之; 江連 俊樹; 飛田 昭; 上出 英樹
Journal of Nuclear Science and Technology 45(10), p.1053-1062(2008) ; (JAEA-J 04861)
 ナトリウム冷却高速炉では、経済性向上を図るためプラントシステムのコンパクト化として、原子炉容器径に対する炉出力の増加を検討している。炉出力増加に伴い、冷却材の流速が上昇するため、原子炉容器内の自由液面からカバーガスを巻込むことが懸念されている。そこで、自由液面の下方に水平板(ディッププレート)を設置することで、液面近傍の流速低下を図ることとしている。ガス巻込み現象に対し、発生が懸念されている箇所を部分的にモデル化した装置により、試験を実施した。本試験では、液位や流速をパラメータとして、ガス巻込み発生条件マップを作成し、それによってガス巻込みの支配因子の抽出を行った。ガス巻込みは、大きく分類して2つのパターンで発生し、いずれも実機設計定格条件より大きく離れていた。一つは、周方向流速(水平流速)が大きくなることによって、コールドレグ配管の後流で発生する渦に起因して発生するものであり、もう一つは、下降流速の増加及び液位の低下によって、ホットレグ配管と炉容器壁の間の領域で発生するものであった。これらについて、PIVを適用し、詳細な流速計測を行うことにより、発生メカニズムを解明した。

36001580
Corrosion phenomenon of stainless steel in boiling nitric acid solution using large-scale mock-up of reduced pressurized evaporator
上野 文義; 加藤 千明; 本岡 隆文; 市川 史郎*; 山本 正弘
Journal of Nuclear Science and Technology 45(10), p.1091-1097(2008) ; (JAEA-J 04862)
 使用済核燃料再処理施設の機器の寿命評価のため、減圧式サーモサイフォン型蒸発缶の大型モックアップ試験装置を用いて約36,000時間の腐食試験を行い、極低炭素304系ステンレス鋼製の伝熱管の沸騰硝酸溶液中の腐食機構を検討した。その結果、粒界侵食と脱粒が交互に起こるときに腐食量と腐食速度の増加傾向が飽和し、一定の速度で腐食が進行した。この結果は寿命評価に対して直線予測が適用可能であることを意味する。観察した位置の異なる3か所の腐食量が異なるにもかかわらず粒界侵食深さに違いは見られなかった。また、腐食量は主として伝熱管表面の温度と熱流束に支配されることが明らかとなり、最大の腐食量は伝熱管表面温度の高い沸騰開始点と管の上端で認められた。

36001581
Evaluation of self-absorbed doses for the kidneys of a voxel mouse
木名瀬 栄; 高橋 聖; 斎藤 公明
Journal of Nuclear Science and Technology, Supplement 5 (June 2008) , p.268-270(2008) ; (JAEA-J 04863)
 Self-AFs for photons and electrons in the kidneys of a voxel mouse were evaluated using Monte Carlo simulation. The self-AFs for the kidneys of the voxel mouse were compared with those for the voxel humans. In addition, self-S values for 90Y and 18F of potential interest in the kidney dosimetry were assessed using the self-AFs. It was found that photon self-AFs for the voxel mouse are significantly smaller than those for the voxel humans and that the electron self-AFs for the voxel mouse are consistent with those for the voxel humans in the energy range 10 -100 keV, followed by a sharp fall. The self-S values for the voxel mouse were found to be much larger than those for the voxel humans. Consequently, it may be concluded that a translation of the dose-response relationships in mice into those in humans requires the reliable dosimetry based on each sophisticated model.

36001582
Deep sea circulation of particulate organic carbon in the Japan Sea
乙坂 重嘉; 田中 孝幸; 外川 織彦; 天野 光; Karasev, E. V.*; 皆川 昌幸*; 乗木 新一郎*
Journal of Oceanography 64(6), p.911-923(2008) ; (JAEA-J 04864)
 日本海の3海域(北東部,北西部,南東部)やその周辺地域で得た粒子状有機物(POC)について、放射性炭素(14C)同位体比分析を行い、その時空間変化から、日本海におけるPOCの輸送過程を解析した。日本海における沈降POC中の14C同位体比の変動範囲は、POCの沈降速度から予想されるそれに比べて極めて大きかった。沈降粒子中の陸起源成分の濃度と有機態14C同位体比との間には直線関係が見られ、その関係は海盆ごとに異なっていた。これらのことから、日本海におけるPOCは、表層の生物活動で生産された新鮮なPOCと、陸域などからの供給による難分解性のPOCの2成分の混合であると説明された。それぞれのPOCの成分について粒子束の変化を解析した結果、(1)新鮮なPOCと難分解性POCの両方が日本海北西部で春季に沈降する,(2)北西部の深層で分解を間逃れた難分解性POCが「POCプール」を形成し、難分解性POCは東方へ輸送される,(3)日本海南部では、北西部とは別の経路で難分解性POCが供給され、比較的素早く海底に蓄積される、といったPOCの輸送過程が示唆された。

36001583
Carbon alloy catalysts; Active sites for oxygen reduction reaction
池田 隆司; Boero, M.*; Huang, S.-F.*; 寺倉 清之*; 尾嶋 正治*; 尾崎 純一*
Journal of Physical Chemistry C 112(38), p.14706-14709(2008) ; (JAEA-J 04865)
 窒素をドープした炭素材をもとにした触媒が固体高分子形燃料電池の白金代替電極触媒として注目されている。本研究では、カーボンアロイ触媒における可能な酸素の吸着状態と吸着した酸素の還元過程をシミュレーションにより調べた。カソードの環境を模擬した分子動力学シミュレーションにより酸素分子の吸着は触媒材料のモルフォロジーと原子構造に依存することがわかった。また、カーボンアロイの特定の位置に窒素をドープすると金属がなくても触媒活性を示すことが明らかとなった。

36001584
Progress and issues in understanding the physics of ELM dynamics, ELM mitigation, and ELM control
大山 直幸
Journal of Physics; Conference Series 123, p.012002_1-012002_17(2008) ; (JAEA-J 04866)
 本論文では、ITERにおける重要課題の1つになっているELMのダイナミクス・低減・制御に関する最新の研究成果をレビューする。ELMのダイナミクスに関しては、前兆振動,ペデスタル崩壊時のフィラメント構造,ELMにより失われるエネルギーのトロイダル回転依存性,周辺部安定性等に関する研究が進展した。ELMの低減に関しては、NSTX装置で観測されているtype V ELMの運転領域拡大,JT-60Uで観測されているGrassy ELMにおけるELM周波数とトロイダル回転の依存性,DIII-DやJT-60Uで観測されているQHモードのEHO発生とトロイダル回転の関係等に関する研究成果が報告されている。ELMの制御に関しては、ペレットや外部コイルを用いた能動的ELM制御についてITERへの適用性を議論した。ELMに関する3項目すべてにおいてトロイダル回転が重要なパラメータとなっており、ITERプラズマでのトロイダル回転の予測研究の重要性が高まった。

36001585
Effect of toroidal field ripple and toroidal rotation on H-mode performance and ELM characteristics in JET/JT-60U similarity experiments
大山 直幸; Saibene, G.*; 鎌田 裕; 神谷 健作; Loarte, A.*; Lönnroth, J.*; Parail, V.*; 坂本 宜照; Salmi, A.*; Sartori, R.*; 篠原 孝司; 竹永 秀信; 浦野 創; de Vries, P.*; 吉田 麻衣子; JT-60チーム; JET-EFDA Contributors
Journal of Physics; Conference Series 123, p.012015_1-012015_13(2008) ; (JAEA-J 04867)
 JETとJT-60Uにおいてトロイダル磁場リップルと周辺トロイダル回転がHモード・ペデスタル性能やELM特性に与える影響を調べた。JT-60Uでは、フェライト鋼の設置により平均磁場リップルを約1.2%から約0.5%に低減することができた。一方、JETでは、コイル電流を変えることでリップル率を能動的に変化できる。どちらの装置も、リップル率を増やすとプラズマ電流方向(co方向)のトロイダル回転が減少する。しかし、同じリップル率0.5%で比較しても、JETの回転よりJT-60Uの回転は小さい。一連のパワースキャン,密度スキャンの結果、小さいリップル率か大きなco方向回転が高いペデスタル性能と閉じ込め性能には適していることがわかった。ELM特性に関しては、大きなco方向回転がELMによるエネルギー損失を増加させると考えられる。

36001586
Calculation of dose contributions of electron and charged heavy particles inside phantoms irradiated by monoenergetic neutron
佐藤 大樹; 高橋 史明; 遠藤 章; 大町 康*; 宮原 信幸*
Journal of Radiation Research 49(5), p.503-508(2008) ; (JAEA-J 04868)
 中性子の生物影響評価において、生物体内での二次粒子生成を含めた放射線挙動の情報は重要である。本研究ではモンテカルロシミュレーション技術を応用することにより、中性子被ばくにおける生物体内の放射線輸送及びエネルギー沈着過程を解析した。さまざまな照射条件及び照射対象に対する荷電粒子種毎の吸収線量や沈着エネルギーの分布を、汎用粒子輸送コードPHITSを用い計算した。本研究で示すエネルギー沈着過程の微視的な解析は、PHITSのイベントジェネレータモードにより実現されたものであり、従来の線量計算手法では不可能であった。サイズの異なる球ファントムへの中性子照射シミュレーションから、電子の吸収線量への寄与が、ファントムのサイズ増加及び照射中性子のエネルギー減少に伴い増加することを明らかにした。また、マウスのボクセルファントムへの2.0MeV中性子照射により、マウス体内では吸収線量は均一に分布し、おもに荷電重粒子によりエネルギーを沈着することを示した。これらの計算を通して、モンテカルロシミュレーションが、中性子被ばくにおける電子及び重荷電粒子による線量寄与の解析に有用であることがわかった。

36001587
Production of 67Cu via the 68Zn(p,2p) 67Cu reaction and recovery of 68Zn target
片渕 竜也*; 渡辺 智; 石岡 典子; 飯田 靖彦*; 花岡 宏史*; 遠藤 啓吾*; 松橋 信平
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 277(2), p.467-470(2008) ; (JAEA-J 04869)
 The radionuclide 67Cu was produced via the 68Zn(p,2p) 67Cu reaction by irradiating enriched 68Zn targets with 70-MeV proton beam. 67Cu was chemically separated from target zinc material by an ion-exchange chromatography method using Chelex-100 chelating ion-exchange resin. Procedure for recovery of the enriched 68Zn was developed. The target recovery yield in this method was evaluated to be more than 97%.

36001588
Superconducting properties of CePt3Si and CeIrSi3 without inversion symmetry in the crystal structure
大貫 惇睦; 宮内 裕一朗*; 辻野 真彦*; 伊田 勇輝*; 摂待 力生*; 竹内 徹也*; 立岩 尚之; 松田 達磨; 芳賀 芳範; 播磨 尚朝*
Journal of the Physical Society of Japan 77(Suppl.A), p.37-42(2008) ; (JAEA-J 04870)
 反転中心を持たない重い電子系超伝導体CePt3Si及びCeIrSi3の超伝導上部臨界磁場を詳細に研究した。反強磁性と共存するCePt3Siでは比較的等方的な臨界磁場が観測されたのに対し、共存しないCeIrSi3では極めて大きな異方性が観測されている。これらを重い電子状態の形成と関連して議論する。

36001589
Heavy fermion superconductivity with the strong Pauli paramagnetic effect on NpPd5Al2
青木 大*; 芳賀 芳範; 松田 達磨; 立岩 尚之; 池田 修悟*; 本間 佳哉*; 酒井 宏典; 塩川 佳伸*; 山本 悦嗣; 中村 彰夫; 摂待 力生*; 大貫 惇睦
Journal of the Physical Society of Japan 77(Suppl.A), p.159-164(2008) ; (JAEA-J 04871)
 新しいネプツニウム超伝導体NpPd5Al2の物性を詳細に研究した。大きな電子比熱係数,磁気及び超伝導の異方性、そして強い常磁性効果は、スピン一重項異方的超伝導状態が実現していることを示唆する。

36001590
Antiferro-quadrupole state of orbital-degenerate Kondo lattice model with f2 configuration
大西 弘明; 堀田 貴嗣*
Journal of the Physical Society of Japan 77(Suppl.A), p.199-201(2008) ; (JAEA-J 04872)
 To clarify a key role of f orbitals in the emergence of antiferro-quadrupole structure of PrPb3, we investigate the ground-state property of an orbital-degenerate Kondo lattice model by numerical diagonalization techniques. By analyzing an orbital correlation function, it is found that an antiferro-orbital state is favored by the so-called double-exchange mechanism which is characteristic of multi-orbital systems. We will report detailed results of correlation functions and discuss its possible relevance to antiferro-quadrupole structure in PrPb3.

36001591
31P-NMR study of the neptunium-based filled-skutterudite NpFe4P12
徳永 陽; 青木 大*; 本間 佳哉*; 酒井 宏典; 中堂 博之; 神戸 振作; 松田 達磨; 池田 修悟; 山本 悦嗣; 中村 彰夫; 芳賀 芳範; 塩川 佳伸*; 大貫 惇睦; 安岡 弘志
Journal of the Physical Society of Japan 77(Suppl.A), p.211-213(2008) ; (JAEA-J 04873)
 超ウラン元素を含む初めての充填スクッテルダイト化合物NpFe4P12について行った31P-NMR測定の結果について発表する。磁場角度分解NMRスペクトルの測定から明らかになったPサイトにおける超微細磁場の磁場角度依存性を報告し、以前に報告されているUFe4P12やPrFe4P12における結果との比較を行う。またスピン-格子緩和時間の測定結果も報告し、磁気励起の特性について局在f電子モデルの立場から議論を行う。

36001592
Visualization of anharmonic thermal vibration in filled skutterudite compounds
金子 耕士; 目時 直人; 木村 宏之*; 野田 幸男*; 松田 達磨; 神木 正史*
Journal of the Physical Society of Japan 77(Suppl.A), p.245-247(2008) ; (JAEA-J 04874)
 充填スクッテルダイト化合物において、重い電子状態の形成や超伝導の発現と関連して、ラットリングの重要性が指摘されている。単結晶中性子回折とMEM解析の組合せにより、PrOs4Sb12におけるPrの熱振動について、モデル依存性なくその実態を明らかにすることが可能である。結果、室温ではPrが大きく拡がった、台形型の核密度分布を持ち、その半値幅が0.6Åにも達することを明らかにした。一方低温の8Kでは、ガウス型の鋭い等方的な分布で、最大密度はカゴの中心にあることを明らかにした。これらの結果は、Sbカゴ中のPrのポテンシャルの非調和性が強いことを示している。

36001593
Pressure effect on ferromagnet UTeS
池田 修悟*; 酒井 宏典; 松田 達磨; 立岩 尚之; 青木 大*; 本間 佳哉*; 中村 彰夫; 山本 悦嗣; 塩川 佳伸*; 辺土 正人*; 上床 美也*; 芳賀 芳範; 大貫 惇睦
Journal of the Physical Society of Japan 77(Suppl.A), p.359-361(2008) ; (JAEA-J 04875)
 強磁性体UTeSの電気抵抗を超高圧8GPaまで測定し、キュリー温度の圧力依存性を調べた。転移温度は圧力とともに増大し、同時に電気抵抗が減少し、キャリア数が増大すると考えられる。このことは、磁気転移温度と電気伝導の強い相関を示している。

36001594
Super clean sample of URu2Si2
松田 達磨; 青木 大*; 池田 修悟; 山本 悦嗣; 芳賀 芳範; 大國 仁*; 摂待 力生*; 大貫 惇睦
Journal of the Physical Society of Japan 77(Suppl.A), p.362-364(2008) ; (JAEA-J 04876)
 アクチノイド化合物の単結晶育成過程では、可能な限り原料のアクチノイドメタルの使用量を少なくしたい。その点において、フラックス法は、最も有効な方法の一つである。充填型スクッテルダイト化合物を含め、新たなアクチノイド化合物の育成条件を調べてきた。これらの試行過程において、幾つかの希土類やアクチノイドの単結晶育成に成功した。UCu2Si2, UCu2Ge2, ThCu2Ge2, CeCu2Si2, YbCu2Si2がそれらの例である。中でもUCu2Si2やYbCu2Si2では、ドハース・ファンアルフェン効果測定によりシグナルの観測にも成功した。またごく最近、Czochralski-引き上げ法と呼ばれる結晶育成方法により、世界最高純度の単結晶育成に成功した。

36001595
Magnetic and superconducting properties of CeTX3 (T:transition metal and X:Si and Ge) with non-centrosymmetric crystal structure
河井 友也*; 村中 大志*; Measson, M.-A.*; 下田 哲哉*; 土井 裕介*; 松田 達磨; 芳賀 芳範; Knebel, G.*; Lapertot, G.*; 青木 大*; Flouquet, J.*; 竹内 徹也*; 摂待 力生*; 大貫 惇睦
Journal of the Physical Society of Japan 77(6), p.064716_1-064716_9(2008) ; (JAEA-J 04877)
 反転中心を持たないセリウム化合物CeTX3の単結晶による物性研究を行った。電気抵抗及び磁化の測定に加え、圧力効果を調べたところ、CeCoGe3では5.4GPa以上の圧力で反強磁性が消失し、超伝導が発現することを明らかにした。

36001596
Split Fermi surface properties of LaTGe3 (T:transition metal) and PrCoGe3 with the non-centrosymmetric crystal structure
河井 友也*; 村中 大志*; 遠藤 豊明*; Nguyen, D.; 土井 裕介*; 池田 修悟*; 松田 達磨; 芳賀 芳範; 播磨 尚朝*; 摂待 力生*; 大貫 惇睦
Journal of the Physical Society of Japan 77(6), p.064717_1-064717_15(2008) ; (JAEA-J 04878)
 反転中心を持たない化合物LaTGe3及びPrCoGe3のフェルミ面を、ドハース・ファンアルフェン効果を用いて研究した。スピン起動相互作用によるバンドの分裂が明瞭に観測された。これらの電子状態は、反転中心がない場合の超伝導の理解に極めて重要である。

36001597
Lattice dynamics of LaFeAsO1-xFx and PrFeAsO1-y via inelastic X-ray scattering and first-principles calculation
福田 竜生; Baron, A. Q. R.*; 社本 真一; 石角 元志; 中村 博樹; 町田 昌彦; 内山 裕士*; 筒井 智嗣*; 伊豫 彰*; 鬼頭 聖*; 水木 純一郎; 新井 正敏; 永崎 洋*; 細野 秀雄*
Journal of the Physical Society of Japan 77(10), p.103715_1-103715_4(2008) ; (JAEA-J 04879)
 X線非弾性散乱により、LaFeAsO1-xFx(x=0, 0.1)及びPrFeAsO1-y(y∼0.1)の格子振動の測定を行った。3種類の粉末試料の測定により格子振動の状態密度が、PrFeAsO1-y単結晶試料の測定により格子振動の分散関係が決定される。その結果、室温での全測定結果を矛盾なく説明するモデルは、第一原理計算の計算結果においてFe-As間のバネ定数を30%弱めることで得られることがわかった。

36001598
Positronium formation in room temperature ionic liquids
平出 哲也
Materials Science Forum 607, p.232-234(2009) ; (JAEA-J 04880)
 ポジトロニウム(電子と陽電子の結合状態)形成を利用して、イオン液体中の溶媒和されるまでの電子の状態を調べるために、陽電子消滅寿命(PAL)及び時間分解陽電子消滅γ線エネルギー(AMOC)の測定を行った。絶縁物質中のポジトロニウム形成は、スパー反応モデルでうまく説明できる。入射された陽電子は周囲原子分子をイオン化・励起し、スパー形成を繰り返し、陽電子自身は最後のスパーで熱化することになる。そこで陽電子はイオン化の際に放出された電子とポジトロニウムを形成する機会を得る。一旦、電子と陽電子がどこかに局在すると移動度が大きく減少するために、ポジトロニウム形成は起こらなくなる。つまり、ポジトロニウム形成は電子と陽電子が局在する以前に起こるため自由に拡散している電子の情報を得ることができる。例えば、電子が比較的長い時間、自由に拡散していると、その間ポジトロニウム形成が可能となる。通常、電子はピコ秒程度までには局在すると考えられるが、イオン液体中では従来の多くの物質中の現象と異なり、数十ピコ秒程度まで電子が自由に拡散していることが明らかとなった。

36001599
Interlaboratory comparison of positron annihilation lifetime measurements
伊藤 賢志*; 岡 壽崇*; 小林 慶規*; 白井 泰治*; 和田 健一郎*; 松本 昌高*; 藤浪 真紀*; 平出 哲也; 誉田 義英*; 細見 博之*; 永井 康介*; 井上 耕治*; 斎藤 晴雄*; 榊 浩司*; 佐藤 公法*; 島津 彰*; 上殿 明良*
Materials Science Forum 607, p.248-250(2009) ; (JAEA-J 04881)
 現在までに陽電子消滅寿命測定(PAL)の標準化が行われたことはない。標準がないと各々の研究室データの比較における信頼性の欠如に繋がる。そこで標準化への第一歩として、金属,高分子,シリカガラスの3種類の試料において合意した測定、及び解析手法で測定を行い、研究室間において比較を行った。金属試料では1寿命成分、それ以外では3寿命成分で解析を行った。陽電子寿命、及びオルソーポジトロニウム寿命に関して、研究室間における測定結果の違いが起こる原因について考察した。その結果、研究室ごとに使用している検出器の形状,配置などが異なり、コンプトン散乱された低エネルギーのγ線がもう一方の検出器に入ることで寿命スペクトル上にゆがみができるためと考えられた。検出器間に薄い金属板を挿入することで、各研究室間の違いが低減されることを確認した。

36001600
Angle-correlated spectrum measurement for two neutrons emitted from (n,2n) reaction with the coincidence detection technique using a pencil-beam DT neutron source
村田 勲*; 高木 智史*; 近藤 恵太郎; 四間 公章*; 宮丸 広幸*; 満田 幹之; 前川 藤夫; 落合 謙太郎; 西谷 健夫
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 595(2), p.439-446(2008) ; (JAEA-J 04883)
 日本原子力研究開発機構の核融合中性子源施設(FNS)のDT中性子ビームを利用した、同時計数法に基づく(n,2n)反応からの放出中性子の角度相関エネルギースペクトルの測定手法を開発した。本手法による(n,2n)反応断面積測定の妥当性を検証するため、放射化法による(n,2n)反応断面積の測定例が多数存在する55Mn(n,2n)反応について、三重微分断面積を測定した。この三重微分断面積を角度とエネルギーで積分することによって導出した(n,2n)反応断面積は、JENDL-3.3の評価値とよく一致し、このことから本手法の妥当性を確認した。Mnのような中重核や重核の(n,2n)反応では、通常は放出中性子間の角度相関が弱いので、数回の測定で(n,2n)反応断面積を得ることができる。本手法はまた、ベリリウムのような軽元素の複雑な核反応機構を解明するための角度相関中性子スペクトルの測定手段にも使える。

36001601
Feasibility of lead-bismuth-cooled accelerator-driven system for minor-actinide transmutation
辻本 和文; 大井川 宏之; 菊地 賢司; 倉田 有司; 水本 元治; 佐々 敏信; 斎藤 滋; 西原 健司; 梅野 誠*; 武井 早憲
Nuclear Technology 161(3), p.315-328(2008) ; (JAEA-J 04884)
 放射性廃棄物中のマイナーアクチノイドを核変換することを目指した鉛ビスマス冷却加速器駆動核変換システム(ADS)の工学的成立性を検討した。液体鉛ビスマスは高温領域において腐食性が高いために、燃料被覆管温度はできるだけ下げなければならない。またADSの設計では、核破砕ターゲットとビーム窓の工学的成立性が最も重要な開発要素である。したがって、燃料集合体とビーム窓に対する熱流動解析及び構造解析を行った。これらの解析では、定常状態での解析に加えて、異常な過渡変化や仮想事故等の過渡特性の解析も行った。解析の結果、通常運転時の工学的成立性は十分見込めるものであることがわかった。また、ADSの異常な過渡変化のうちで最も頻繁に起こることが予想されるビームトリップに対しては、ビーム窓の健全性の観点から許容される回数は105回であることがわかった。仮想事故時のADSの安全性に関しては、事故時にビーム停止ができなかった場合には、冷却材流量喪失事故が最も大きな影響を与えることがわかった。これらの解析結果から、ADSの実現のためにはビーム停止の信頼性を高めることが必要なことを示した。

36001602
Characteristics and sinterability of MOX powder prepared by the microwave heating denitration method
朝倉 浩一; 加藤 良幸; 古屋 廣高
Nuclear Technology 162(3), p.265-275(2008) ; (JAEA-J 04885)
 マイクロウェーブ加熱脱硝(MH)法,ADU法及びシュウ酸沈殿法により各々調整された二酸化ウラン,二酸化プルトニウム及びウラン・プルトニウム混合酸化物を用い、これらの粉末のBET比表面積,空気透過法による平均粒径,かさ密度,タップ密度,安息角,スパチュラー角及び凝集度を測定した。BET比表面積と平均粒径から算出した表面積の比から表面粗さの程度を評価し、カーの理論に基づき粉末流動性を評価した。異なる粉末や調整条件の異なる粉末に関するこれらの評価結果について、焙焼温度をパラメータとした比較を行った。MH-MOX粉末の表面粗さについては、ADU-UO2粉末のそれよりも大きく、シュウ酸沈殿法によるPuO2のそれよりも小さな結果となった。これらの結果については、セラミックス物質においては一般に用いられているヒューティグ・タンマン温度の概念を用いることにより理解できる。既に、一般の論文でも報告されているように、MH-MOX及びADU-UO2粉末の流動性は圧縮度の増加とともに減少した。しかし、その値は50以下であった。カーの理論によると、流動性の良い粉末と悪い粉末の境界は、流動性指数が60から69である。それゆえ、MOXペレット製造工程の成型機へ流動性の良い原料粉を供給するには、原料であるMH-MOX粉末,ADU-UO2粉末及び乾式回収MOX粉末の混合粉末を造粒する必要がある。

36001603
Development of analytical procedures of two-phase flow in tight-lattice fuel bundles for Innovative Water Reactor for Flexible Fuel Cycle
吉田 啓之; 大貫 晃; 三澤 丈治; 高瀬 和之; 秋本 肇
Nuclear Technology 164(1), p.45-54(2008) ; (JAEA-J 04886)
 An R&D project to investigate thermal-hydraulic performance in the tight-lattice rod bundles of the Innovative Water Reactor for Flexible Fuel Cycle (FLWR) has been in progress at Japan Atomic Energy Agency (JAEA) in collaboration with power companies, reactor vendors, and universities since 2002. The FLWR can realize favorable characteristics such as effective utilization of uranium resources, multiple recycling of plutonium, high burn-up and long operation cycle, based on matured LWR technologies. MOX fuel assemblies with tight lattice arrangement are used because they increase the conversion ratio by reducing the moderation of neutrons. Increasing the in-core void fraction also contributes to the reduction of neutron moderation. Information about the effects of the gap width and grid spacer configuration on the flow characteristics in the FLWR core is still insufficient. Thus, we are developing procedures for qualitative analysis of thermal-hydraulic performance of the FLWR core using an advanced numerical simulation technology. In this study, an advanced two-fluid model is developed to economize on the computing resources. In the model, interface structures larger than computational cells (such as liquid film) are simulated by the interface tracking method, and small bubbles and droplets are estimated by the two-fluid model. In this paper, we describe the outline of this model and the numerical simulations we performed to validate the model performance qualitatively.

36001604
Observation of 5f electrons in the itinerant limit; Three-dimensional electronic structure of UB2
大河内 拓雄; 藤森 伸一; 山上 浩志*; 岡根 哲夫; 斎藤 祐児; 藤森 淳*; 芳賀 芳範; 山本 悦嗣; 大貫 惇睦*
Physical Review B 78(16), p.165110_1-165110_5(2008) ; (JAEA-J 04888)
 軟X線角度分解光電子分光を用いて、遍歴ウラン系化合物であるUB2の3次元バンド構造とフェルミ面を観測した。ウランの5f状態に由来した明瞭なエネルギー分散とフェルミ面を観測でき、局所密度近似によるバンド計算及びdHvA測定の結果との比較を行った。その結果、フェルミ面の形状及びサイズに関して定性的な一致を見ることができた。一方で、フェルミ準位近傍でのバンド構造は、計算の結果と微妙に異なった。これは、非常に遍歴的な5f化合物においても、LDAによる理論計算では表現できない動的な電子相関効果が存在するためであると考えられる。

36001605
Nature of magnetic coupling between Mn ions in as-grown Ga1-xMnxAs studied by X-ray magnetic circular dichroism
竹田 幸治; 小林 正起*; 岡根 哲夫; 大河内 拓雄; 岡本 淳*; 斎藤 祐児; 小林 啓介*; 山上 浩志; 藤森 淳; 田中 新*; 岡林 潤*; 尾嶋 正治*; 大矢 忍*; Hai, P. N.*; 田中 雅明*
Physical Review Letters 100(24), p.247202_1-247202_4(2008) ; (JAEA-J 04889)
 希薄磁性半導体(DMS)Ga1-xMnxAsは、半導体スピントロニクス分野で注目を集めているが、室温強磁性は達成されていない。現状の試料作成技術では、MnイオンはGaイオンと置換される一方で、GaAs格子間にも侵入してしまい、この格子間に侵入したMnイオンの役割(影響)が不明であった。格子間に侵入した磁性イオンに関する同様の問題は、他のDMSにも多く存在する。今回の詳細なXMCD測定によって、格子間に侵入したMnイオンが、Gaイオンと置換されたMnイオン間の強磁性秩序の妨げになっていることが明らかになった。これは、格子間に侵入した磁性イオンの排除が多くのDMSの室温強磁性達成のために不可欠であるという試料作成に対する明確な方針を示すものである。

36001606
Transition between internal transport barriers with different temperature-profile curvatures in JT-60U tokamak plasmas
居田 克巳; 坂本 宜照; 竹永 秀信; 大山 直幸; 伊藤 公孝*; 吉沼 幹朗*; 稲垣 滋*; 小渕 隆*; 諫山 明彦; 鈴木 隆博; 藤田 隆明; 松永 剛; 小出 芳彦; 吉田 麻衣子; 井手 俊介; 鎌田 裕; JT-60チーム
Physical Review Letters 101(5), p.055003_1-055003_4(2008) ; (JAEA-J 04890)
 JT-60Uトカマクの負磁気シアプラズマの内部輸送障壁において、異なるイオン温度分布の空間2回微分で特徴付けられる2つの準安定状態間を自発的に遷移する現象が観測された。遷移フェーズでは、イオン温度分布の空間2回微分から評価した曲率の非対称係数が、対称曲率の場合の0.08から非対称曲率の場合の-0.43に変化する。

36001607
Superconducting Pb island nanostructures studied by scanning tunneling microscopy and spectroscopy
西尾 隆宏*; 安 東秀*; 野村 淳士*; 宮地 浩輔*; 江口 豊明*; 坂田 英明*; Lin, S.*; 林 伸彦; 中井 宣之; 町田 昌彦; 長谷川 幸雄*
Physical Review Letters 101(16), p.167001_1-167001_4(2008) ; (JAEA-J 04891)
 超伝導コヒーレンス長の0.8から2.5倍の半径を持つナノスケールサイズのPb(鉛)アイランドについて、その磁場中での超伝導特性を、低温走査型トンネル顕微鏡を用いて研究した。超伝導状態の空間プロファイルが、ゼロバイアス電圧でのトンネル伝導度測定から得られた。それぞれのPbアイランドにおいて、磁束の侵入と排斥に対する臨界磁場、及び超伝導破壊に対する臨界磁場を測定した。それらの臨界磁場がアイランドのサイズに依存することと、アイランドへの磁束侵入が可能となる最小のサイズが存在することを観測した。

36001608
The Conjugate variable method in Hamilton-Lie perturbation theory; Applications to plasma physics
徳田 伸二
Plasma and Fusion Research (Internet) 3, p.057_1-057_10(2008) ; (JAEA-J 04892)
 The conjugate variable method, which is an essential ingredient in the path-integral formalism of classical statistical dynamics, is used in order to apply the Hamilton-Lie perturbation theory to a system of ordinary differential equations that does not have the Hamilton dynamic structure. The method endows the system with the Hamilton dynamic structure by doubling the independent variables; hence the canonical Hamilton-Lie perturbation theory becomes applicable to the system. The method is applied to two classical problems in plasma physics, a non-linear oscillator that can explode and the guiding center motion of a charged particle in a magnetic field, to demonstrate the effectiveness and to study the property of the conjugate variable method.

36001609
X-ray absorption spectrum for guanosine-5'-monophosphate in water solution in the vicinity of the nitrogen K-edge observed in free liquid jet in vacuum
鵜飼 正敏*; 横谷 明徳; 藤井 健太郎; 斎藤 祐児
Radiation Physics and Chemistry 77(10-12), p.1265-1269(2008) ; (JAEA-J 04895)
 水和構造を有するDNAの電子状態を調べるため、われわれは液体分子ジェット試料に対する電子分光が可能となる装置を開発し、高輝度放射光軟X線(SPring-8, BL23SU)に設置した。本論文では、初めて得られたDNAの構成成分に対する窒素K吸収端近傍における全電子収量の測定結果を発表する。グアノシン-5'-1リン酸の水溶液を試料として用い、真空中に導出した液体分子ジェットに対して、集光した「水の窓」領域に当たるエネルギーの軟X線ビームを水平方向から照射した。得られたスペクトルは個体薄膜試料のそれとよく似た形状を示したことから、グアニン塩基中にのみ存在する窒素周囲の化学環境は、塩基の疎水性のため周囲の水との相互作用により受ける影響は弱いことが示唆された。

36001610
The Small-molecule Bcl-2 inhibitor HA14-1 sensitizes cervical cancer cells, but not normal fibroblasts, to heavy-ion radiation
浜田 信行*; 片岡 啓子*; 楚良 桜*; 原 孝光*; 大村 素子*; 舟山 知夫; 坂下 哲哉; 中野 隆史*; 小林 泰彦
Radiotherapy and Oncology 89(2), p.227-230(2008) ; (JAEA-J 04896)
 This is the first study to demonstrate that the small-molecule Bcl-2 inhibitor HA14-1 renders human cervical cancer cells and their Bcl-2 over expressing radioresistant counterparts, but not normal fibroblasts, more susceptible to heavy ions. Thus, Bcl-2 may be an attractive target for improving the efficacy of heavy-ion therapy.

36001611
Energetic heavy ions overcome tumor radioresistance caused by overexpression of Bcl-2
浜田 信行*; 原 孝光*; 大村 素子*; 舟山 知夫; 坂下 哲哉; 楚良 桜; 横田 裕一郎; 中野 隆史*; 小林 泰彦
Radiotherapy and Oncology 89(2), p.231-236(2008) ; (JAEA-J 04897)
 Overexpression of Bcl-2 is frequent in human cancers and has been associated with the radioresistance. Here we investigated the potential impact of heavy ions on Bcl-2 overexpressing tumors. Bcl-2 cells (Bcl-2 overexpressing HeLa cells) and Neo cells (neomycin resistant gene-expressing HeLa cells) exposed to γ-rays or heavy ions were assessed for the clonogenic survival, apoptosis and cell cycle distribution. Whereas Bcl-2 cells were more resistant to γ-rays and helium ions (16.2 keV/μm) than Neo cells, heavy ions (76.3-1610 keV/μm) gave the comparable survival regardless of Bcl-2 overexpression. Carbon ions (108 keV/μm) decreased the difference in the apoptotic incidence between Bcl-2 and Neo cells, and prolonged G2/M arrest that occurred more extensively in Bcl-2 cells than in Neo cells. High-LET heavy ions overcome tumor radioresistance caused by Bcl-2 overexpression, which may be explained at least in part by the enhanced apoptotic response and prolonged G2/M arrest. Thus, heavy-ion therapy may be a promising modality for Bcl-2 overexpressing radioresistant tumors.

36001612
Measurement of derivative of ion temperature using high spatial resolution charge exchange spectroscopy with space modulation optics
居田 克巳; 坂本 宜照; 吉沼 幹朗*; 稲垣 滋*; 小渕 隆*; 松永 剛; 小出 芳彦
Review of Scientific Instruments 79(5), p.053506_1-053506_6(2008) ; (JAEA-J 04898)
 空間モジュレーション光学系を有する荷電交換再結合分光システムを用いてイオン温度の空間1回微分と2回微分を測定する手法を新たに開発した。この放置では、光ファイバーバンドルの前面に設置した対物レンズをピエゾ駆動装置を用いて30Hzで0.5mm移動させることで、プラズマ上の測定位置を6cmスキャンすることができる。フーリエ解析を用いて、測定されたイオン温度のモジュレーション成分からイオン温度の空間1回微分と空間2回微分を導出した。

36001613
Absolute calibration of microfission chamber in JT-60U
林 孝夫; 西谷 健夫; 助川 篤彦; 石川 正男; 篠原 孝司
Review of Scientific Instruments 79(10), p.10E506_1-10E506_3(2008) ; (JAEA-J 04899)
 DD及びDT反応を利用した核融合装置では、核融合出力の評価において核融合反応により発生する中性子の計測が非常に重要である。ITERでは、核燃料物質を内蔵した小型円筒形の電離箱であるマイクロフィッションチャンバー(MFC)を中性子モニタとして真空容器内に設置する予定である。今回、磁場中(∼2T)での中性子モニタとしての健全性を評価するために、原子力機構が設計開発したMFC(長さ:200mm,直径:14mm,UO2:12mg,ウラン濃縮度:90%)をJT-60Uの真空容器外側でトロイダルコイルの内側に設置し、Cf-252中性子源による較正及び実際のプラズマによる計測を行った。Cf-252中性子源による較正では、MFC及び既設中性子モニタの検出効率はそれぞれ、5.38 ×10-9及び1.77 ×10-8であった。また実際の重水素プラズマによる測定では、MFCの検出効率は既設中性子モニタの約0.3倍であり、Cf-252中性子源を用いた結果と一致した。

36001614
Buried H monolayer at hetero-interface between highly mismatched Sr films and Si substrates
山崎 竜也; 朝岡 秀人; 武田 全康; 山崎 大; 田口 富嗣; 鳥飼 直也*; 豊島 安健*; 社本 真一
Transactions of the Materials Research Society of Japan 33(3), p.611-614(2008) ; (JAEA-J 04901)
 われわれはSrTiO3のテンプレートとなるSrやSrO薄膜とSi基板との格子不整合の緩衝域として水素,重水素単原子バッファー層を挿入し、12%もの格子不整合を克服した薄膜成長に成功した。単原子のナノレベル緩衝域の存在で、このような大きな格子不整合を克服しヘテロエピタキシー成長が成立したケースは極めて稀で、このユニークな薄膜の界面構造を解明することによって、新たな異種物質接合形態を見いだせる可能性が高い。しかしこの埋もれた界面は、通常の顕微鏡的な方法による直接的な観測が困難なため、これまで成膜後も界面に水素単原子層が残存しているか否か未だ実験的検証が十分になされておらず、水素表面への吸着原子の影響や、安定性について不明な点が多い。本研究では、埋もれた微小領域の水素界面層を実測する目的で、水素界面層を重水素に置換し中性子に対するコントラストを変化させ、解析精度を上げた中性子反射率測定を行った。また同時に多重内部反射赤外分法(MIR-FTIR)法を用いて、その場観察による基板直上の埋もれた水素・重水素界面での原子振動・結合状態の精密評価を行っている。これら複合的な手法による埋もれた界面解析の試みを紹介する。

36001615
Fabrication of Ni2In3 alloy nanotubes
北澤 真一
Vacuum 83(3), p.649-652(2008) ; (JAEA-J 04902)
 合金ナノチューブを、自己組織化により創成した。レーザー蒸着法により作製した炭素-ニッケル-インジウム混合薄膜を熱処理することにより生成した。形状は、走査型及び透過型電子顕微鏡により観察した。チューブの径は数10nmで、アスペクト比は2500程度である。熱処理の温度が合金の融点よりも少し低いために過冷却状態となることに基づいた成長モデルを構築した。

36001616
横手盆地東縁断層帯の後期鮮新統∼更新統のフィッション・トラック年代
楮原 京子; 小坂 英輝*; 野原 壯; 三輪 敦志*; 今泉 俊文*
地学雑誌 117(5), p.851-862(2008) ; (JAEA-J 04903)
 奥羽脊梁山脈及びその周辺に分布する後期鮮新世以降の地層は、東北日本の短縮変形ステージに属し、奥羽脊梁山脈周辺の断層褶曲帯の発達に伴い堆積したものと考えられる。奥羽脊梁山脈西縁を限る断層褶曲帯及び周辺の地質構造の発達過程を明らかにするために、奥羽脊梁山脈西縁に分布する後期鮮新統∼更新統(田沢層・栗沢層・千屋層)において露頭観察と地層中に挟在する酸性火山岩5試料のFT年代測定を行った。その結果、本断層褶曲帯の活動変遷に関連する地層の年代として、2.7±0.4∼0.93±0.14Maが得られた。また層相の特徴を踏まえると、本地域で酸性火山活動のあった1Ma以前に断層活動に伴う地形変化が生じた可能性が高い。

36001617
IAEAの放射性廃棄物安全基準; 経緯,現状,将来展望
日置 一雅
原安協だより (226), p.3-10(2008) ; (JAEA-J 04905)
 国際原子力機関(IAEA)の放射性廃棄物管理に関する安全基準策定の経緯,現状,将来展望について解説する。

36001618
海水ウラン捕集材の開発状況
玉田 正男
原子力eye 54(11), p.13-16(2008) ; (JAEA-J 04907)
 2007年6月にウラン価格がこれまでの10倍の136ドルに高騰したため、海水からのウラン捕集の可能性が浮上してきた。海水中のウラン濃度は3.3ppbであるが、その総量は45億トンと鉱山ウランの1,000倍量ある。このウランの回収には、ウランに対して選択性の高い捕集材が必要である。放射線グラフト重合法を用いると、海水中に係留可能な強度も有する捕集材が合成可能である。これまで、グラフト重合で合成された捕集材を用いて、海水からの1kgのウランの捕集が実証されている。また、実用的な捕集システム用にモール状捕集材が開発され、年間1200トンのウラン回収規模では、25,000円/kg-Uの達成の可能性が示されている。今後、捕集材の繰り返し使用耐性の改良が必要であるが、ウランと同時に備蓄金属に指定されているバナジウムも捕集されることから、実用化に向けた研究開発が期待されている。

36001619
IAEAの核検証能力; 核の番人IAEAは本当に機能しているのか?
久野 祐輔
原子力eye 54(12), p.64-67(2008) ; (JAEA-J 04909)
 国際核不拡散体制の中でも、特に重要な役割を担ってきたのが、国際原子力機関(IAEA)による「保障措置(Safeguards:核物質が平和目的以外に転用されていないことの検証)」である。本紙では、IAEAの保障措置とは、どのようなもので、本当に機能しているのか、いかなる問題が潜んでいるのか、今後、期待して良いのか、などについて議論する。

36001620
高エネルギー中性子校正場について
志風 義明
放計協ニュース (42), p.2-3(2008) ; (JAEA-J 04910)
 20MeV以上の中性子エネルギーに関しては、中性子標準場が国内で整備されていない。そこで、原子力機構・高崎量子応用研究所TIARAの数十MeV領域の高エネルギー準単色中性子照射場を利用して、45, 60, 75MeVの3エネルギー点について校正場及び校正技術の開発を進めている。ここでは、まず、TIARAの中性子施設について概説する。また、校正場を整備するうえで必要な場の特性評価の結果や進捗状況(照射野・中性子エネルギースペクトルの測定,中性子フルエンスの絶対測定,中性子フルエンスモニタ用の検出器を開発)について報告する。

36001621
放射線防護に用いる線量の変遷
高橋 史明
保健物理 43(3), p.226-233(2008) ; (JAEA-J 04911)
 国際放射線防護委員会(ICRP)は、等価線量,実効線量のように、放射線防護に用いる線量を勧告してきた。これらの放射線防護に用いる線量は、作業者,公衆の線量限度を与える際に変更がされてきた。そこで、例えば、1990年勧告において、実効線量が導入されたときのように、新しい量が定義された場合、多くの議論がなされた。加えて、ICRPは最近、新しい基本勧告である2007年勧告を公開した。そこで、本稿では、2007年勧告を含めて、放射線防護に用いられてきた線量の変遷を記す。

36001622
チェルノブイリ事故で放出された131Iデータを用いた環境評価モデルの妥当性検証及び防護措置効果の評価; IAEA EMRAS計画の活動
本間 俊充
保健物理 43(3), p.234-245(2008) ; (JAEA-J 04912)
 公衆及び環境の放射線防護を目的として利用される放射生態学的な評価やモデルに関する国際的な協力計画は、国際原子力機関(IAEA)を中心にここ20年近くにわたって進められてきた。2003年から始まった「放射線安全のための環境モデリングEMRAS(Environmental Modelling for Radiation Safety)計画」は2007年秋の第5回合同会合が最終の会合となり、報告書の作成が進められている。本解説では、初めにEMRAS計画以前の国際協力計画の変遷とEMRAS計画の概要について述べ、次いで131Iに関するワーキンググループ(IWG)の活動の概要を報告する。欧州各地で収集されたチェルノブイリ事故によるフォールアウトデータは、陸域や水系における汚染に対する環境評価モデルの信頼性を検証するまたとない機会を提供した。IWGでは、ヨウ素の環境移行モデル,線量評価モデルの予測性能を検証し、さらにそれらのモデルを適用し防護措置の効果を検証した。

36001623
JAERI型肺ファントムの肺部開発と肺モニタ計数効率評価
木名瀬 栄
保健物理 43(3), p.278-281(2008) ; (JAEA-J 04913)
 本研究では、信頼性の高い肺モニタの校正技術開発を目的として、多様な肺内線源分布を可能にする、肺等価材から構成される肺ファントムを開発した。また、開発した肺ファントムを用いて、実測により、肺内239Puや241Am不均一分布に対する肺モニタの感度変化を評価した。開発した肺ファントムは、IAEAアジア人標準トルソファントムであるJAERIファントムの肺部と同形とし、密度240kgm-3の肺等価材から構成した。開発した肺ファントムの肺尖部のみに239Puや241Am点線源を充填した場合、肺モニタの計数効率は、肺内均一分布に対する計数効率に対し、10分の1から10分の3程度になることを明らかにした。

36001624
重粒子線誘発バイスタンダー効果; 照射された細胞から照射されていない周囲の細胞への情報伝達
浜田 信行*; 岩川 眞由美*; 今井 高志*; 小林 泰彦
放射線科学 51(8), p.31-41(2008) ; (JAEA-J 04914)
 重粒子線治療の際、巨視的にみれば、標的のがん病巣以外に存在する生体内のすべての細胞を、バイスタンダー細胞と考えることができる。バイスタンダー効果に関連して、右肺のがんを光子放射線で照射した場合に、左肺のがんも縮小するというような遠達効果という現象も報告されている。薬剤によって誘発されるバイスタンダー効果が臨床応用されているように、重粒子線誘発バイスタンダー効果もがん治療に利用することはできないであろうか。光子放射線の照射によって誘発されるバイスタンダー効果の程度については、100名以上のヒトに由来する組織を用いた実験から個人差、そして、マウス個体を用いた実験から性差が報告されている。動物個体を用いた重粒子線誘発バイスタンダー効果の報告はこれまでにないが、生体における意義、すなわち、治療への寄与の程度や宇宙飛行士へのリスクを推定するために必要である。

36001625
量子臨界点にあるCeIrSi3のスピンシングレットとスピントリプレットが混ざり合った超伝導
摂待 力生*; 河井 友也*; 宮内 裕一朗*; 奥田 悠介*; 大貫 惇睦; 竹内 徹也*; 立岩 尚之; 松田 達磨; 芳賀 芳範; 播磨 尚朝*
固体物理 43(8), p.459-474(2008) ; (JAEA-J 04916)
 CeIrSi3は反強磁性体であるが圧力を加えるとネール温度が減少し、やがて超伝導が発現する。この物質は結晶構造に反転中心を持たないため、通常とは異なる対称性の超伝導状態が実現している可能性がある。特に、量子臨界点付近で上部臨界磁場が異常に増大するなどの特徴が観測された。

36001626
大深度立坑とその湧水抑制対策; 瑞浪超深地層研究所の事例
久慈 雅栄*; 浅井 秀明; 見掛 信一郎; 原 雅人
前田建設技術研究所報(CD-ROM) , 8p.(2008) ; (JAEA-J 04917)
 日本原子力研究開発機構では、高レベル放射性廃棄物地層の処分研究開発の基盤となる深地層の科学的研究の一環として、瑞浪超深地層研究所を建設中である。研究所では、研究坑道の掘削に伴って発生する湧水の処理が課題となった。さらに、今後掘削する領域を調査した結果、特定の深度で大量湧水が発生する可能性が高いことがわかった。そこで、湧水抑制対策としてグラウチング工法を採用することとし、既に掘削している領域を対象としたポストグラウチング試験施工,坑道掘削に先行して注入するプレグラウチングを実施した。その結果、ポストグラウチングについては注入領域での大幅な透水性の低下(止水性の向上)、プレグラウチングでは湧水発生の抑制を図ることができた。

36001627
液体金属・半導体の圧力誘起構造変化と化学結合性
服部 高典; 辻 和彦*
まてりあ 47(10), p.507-512(2008) ; (JAEA-J 04918)
 四配位共有結合性物質の液体の圧力誘起構造変化を、放射光を用いたX線回折実験によって調べた。その結果、それらの液体は化学結合の共有結合性/イオン性によってさまざまな構造変化を示すことがわかった。すなわち、イオン性の小さな物質(液体GaSb, InSb, InAS等)は、数十万気圧に渡るきわめて広い圧力領域に渡って構造変化するのに対し、イオン性の大きな物質(液体CdTe, AgI等)は、数万気圧という比較的狭い圧力範囲で構造変化が終了する。本稿では、これらの結果をイオン性が与える局所構造の安定性という点から議論する。

36001628
ロシア余剰核兵器解体プルトニウム処分の現状と日本の協力; バイパックMOX燃料協力の10年を振り返って
舟田 敏雄; 川太 徳夫; 千崎 雅生
日本原子力学会誌 50(11), p.33-37(2008) ; (JAEA-J 04920)
 米露「余剰核兵器解体プルトニウム処分協定」が2000年9月に合意されてから約8年が経過し、ロシアの処分シナリオは、2007年11月の米露共同声明で、従来の軽水炉(VVER-1000)による処分から、原子力機構がロシアと共同研究を進めてきたバイパック燃料高速炉オプション(運転中のBN-600と建設中のBN-800を用いる処分)へと大きく方向を転換した。一方、米国では軽水炉を用いる処分を堅持し、2007年8月、仏アレバの技術を導入してウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料製造施設の建設を開始するなど、ようやく実施への動きが見えてきた。本稿では、米露協議を巡る状況の変化と協議経過を辿るとともに、1999年以来、原子力機構がロシアの研究所と進めてきたバイパックMOX燃料を用いた処分協力の10年を振り返って、高速炉オプションの選択への過程と今後のロシア解体プルトニウム処分協力の行方について述べる。

36001629
照射された低放射化フェライト鋼の引張強度特性-硬さの相関
安堂 正己; 若井 栄一; 谷川 博康; 川崎 泰
日本金属学会誌 72(10), p.785-788(2008) ; (JAEA-J 04921)
 低放射化フェライト鋼F82H鋼は、核融合炉第一壁・ブランケット構造材料の第一候補材として開発が進められており、そのうち照射特性評価については、現在米国HFIR炉を用いた日米協力照射実験にて、重照射データの取得が行われているところである。取得されたデータの信頼性を高めるため、硬さ試験による破壊試験片ごとの照射挙動の確認や、イオン照射実験から得られる硬化挙動・ミクロ組織変化評価からの補間が必要となる。本報告では、これまでにF82H鋼を中心として実施したイオン照射材からの照射硬化挙動,HFIRやJMTR炉による引張試験・ビッカース硬さ試験の結果から、これらの相関関係について明らかにすることを目的とする。微小硬さ(H)-ビッカース硬さ(Hv)の対応については、熱処理条件を変化させたF82H鋼により相関関係が得られており、この結果より異なる照射場での硬さ変化の比較がある程度可能となった。また、引張特性については中性子照射材の結果より、引張強さ(UTS)はUTS=(3±0.2) ×Hvとして得られることが確認された。これらの結果より強度変化に対する照射量依存性,熱処理効果,ヘリウム効果等について評価した結果について報告する。

36001630
線形回帰モデルと遺伝的アルゴリズムを用いた観測井戸の地下水位変動データ分類
若松 尚則*; 渡辺 邦夫*; 竹内 真司; 三枝 博光
応用地質 49(3), p.126-138(2008) ; (JAEA-J 04922)
 先行降雨や気圧などの気象変動や、他の井戸の水位変動を説明変数とした線形回帰モデルを作り、その中のパラメータを遺伝的アルゴリズムを使って求めて井戸間の類似度を評価する方法を提案した。この方法によれば、各説明変数の寄与度とモデル全体の適合度を指標に各井戸地点の地下水流れの類似性を評価できる。今回この方法を岐阜県東濃地区内の12本の浅井戸の地下水位変動に適用した。これらの井戸の水位変動は基本的に降雨と揚水要因により影響されているが、地質条件が異なるため、それらの要因に対して異なった応答を示す。本研究では、先行降雨と気圧を説明変数に用いた線形回帰モデルと他井戸の水位を説明変数としたモデルについて検討した結果、当地区の井戸の地下水変動は、おもに、地質条件の違いによる降雨浸透に伴う水圧伝播の速さの違いによってグループ化しうることがわかった。また、他井戸の水位を説明変数とした場合の適合度と先行降雨等の想定される要因を説明変数としたときの適合度を比較することにより、それらの要因の影響度をある程度評価しうることがわかった。

36001631
ITER中性子ストリーミング研究の現状
落合 謙太郎; 飯田 浩正; 佐藤 聡; 高倉 耕祐; 今野 力
プラズマ・核融合学会誌 84(9), p.594-599(2008) ; (JAEA-J 04923)
 本格的なDT核燃焼実験を行うITERは真空容器に大口径の加熱ポートや計測ポート等の開口部を有しており、中性子ストリーミングによる超伝導コイルの核発熱や作業被曝線量評価が遮蔽設計の重要課題である。遮蔽設計の計算精度は、使用する核反応データベース(核データライブラリ)の精度,計算コードで用いられている手法の近似度並びに遮蔽対象をどれくらい正確にモデル化しているかによって決まる。また遮蔽設計の計算精度は計算だけで評価することはできず、適切なベンチマーク実験を実施してその計算精度を検証する必要がある。原子力機構の核融合中性子源施設FNSでは、ITER工学設計活動の一環で、ITERの遮蔽ブランケット,種々のポートを対象に、ストリーミング実験を実施し、ITERの遮蔽設計の計算精度評価を詳細に行ってきた。また最近ではITER移行措置活動の一環として、DT中性子照射によるポートプラグ周辺のギャップ模擬体系による中性子ストリーミング実験を実施し、モンテカルロ法及びSn法による計算値との比較検証を進めている。特にSn法に関してはITER核設計でもその使用が検討されている3次元解析コードAttilaによる計算結果との比較検証も行っている。本発表ではこれまでFNSで実施したITERストリーミング実験結果を中心に、現在のITER遮蔽設計とその計算技術の現状と今後の展望について報告する。

36001632
熱力学的手法を用いた物質挙動シミュレーションによる使用済み電解質再生プロセスの予備的構築
天本 一平; 小藤 博英; 明珍 宗孝; 寺井 隆幸*
シミュレーション 27(3), p.189-197(2008) ; (JAEA-J 04925)
 乾式再処理プロセスから発生する使用済み電解質の処理について、ロシアの原子炉科学研究所(RIAR)では、NaCl-KCl等を媒質としており、これにNa3PO4やNa2CO3を添加することにより塩中に溶け込んでいる成分を沈殿させ、沈殿物をフツリン酸ガラス等で固化する方法を提案している。媒質の種類は異なるものの、RIARの沈殿法と沈殿物のリン酸塩固化技術が、当方の研究対象であるLiCl-KCl系の電解質処理に適用できれば、FPを固化体に35%程度充填できるため、廃棄物発生量の少ない処理技術と成り得る。このような考えに基づき、リン酸塩転換法の開発を進めていきたいが、直ちに試験を行うことは、核物質を使用していくうえでさまざまな制約があること、及び実施前に各物質の挙動を理論的に把握したうえで試験を行った方が、より合理的であることから、ここでは、熱力学的な手法を用いて、対象とする物質のリン酸塩転換挙動をシミュレートすることにより、実現性のある「使用済み電解質処理プロセス」の構築の予備的な考察を行い、リン酸塩転換法を用いたプロセスの有効性について予備的な確認をすることができた。

36001633
画像検出器と回転電場偏向電極を用いた飛行時間型質量分析装置の開発
片山 淳; 亀尾 裕; 中島 幹雄
質量分析 56(5), p.229-234(2008) ; (JAEA-J 04926)
 回転電場と画像検出器を用いた微量同位体測定技術の開発を行った。回転電場は、正6角形に配置された電極に多相正弦波が印加することにより生じさせる。イオンがこの電場に進入すると偏向を受け、渦巻き状の軌跡が画像検出器に観測される。この軌跡の位置情報が到達したイオンのm/zであり、発光強度がイオンの存在量を示す。また、画像検出器をゲート動作させることにより、存在度の大きな同位体の影響を排除することができた。この開発により、41Caの微量同位体の計測に必要な7桁レベルのアバンダンス感度が得られた。

36001634
Interpretation of extremely metal-poor stars as candidates of first generation stars
西村 高徳*; 合川 正幸*; 岩本 信之; 須田 拓馬*; 藤本 正行*; Iben, I. Jr.*
AIP Conference Proceedings 1016 , p.421-423(2008) ; (JAEA-J 04927)
 金属量が太陽の1/300より少ない環境では、小中質量星の進化は金属過剰星の進化とは異なり、TP-AGB段階で熱パルスによって発生した対流層が外側の水素外層に達する。この現象により陽子がヘリウム対流層内に混ぜられ、中性子が発生する。この中性子やα粒子が捕獲されることによって多様な元素が合成される。この研究では陽子混合によって発生した対流層内での詳細な元素合成計算を行った。その結果として、重元素のない始原的な環境では12C(n,γ)13C(α,n)16Oや16O(n,γ)17O(α,n)20Neなどの中性子のリサイクリング反応を通じて酸素からマグネシウム、さらにはより重い元素が合成されることを明らかにした。この研究から、現在知られている最も金属量の少ない星は始原ガスから生まれた種族IIIの星であると考えられる。

36001635
Hydrogeological conceptual model determined from baseline and construction phase groundwater pressure and surface tiltmeter data at the Mizunami Underground Research Laboratory, Japan
竹内 真司; 竹内 竜史; Salden, W.*; 三枝 博光; 新井 孝志*; 松木 浩二*
Proceedings of 11th International Conference on Environmental Remediation and Radioactive Waste Management (ICEM '07) (CD-ROM) , 8p.(2007) ; (JAEA-J 04931)
 瑞浪超深地層研究所計画において、研究坑道の掘削前から掘削中において計測した地下水水圧及び地表傾斜データを用いて水理地質構造の概念モデルを構築した。その結果、地表からの調査段階で2本の立坑間に予測した地下水流動に対する遮水性断層の存在を、研究坑道掘削中の上記モニタリングデータ等の解析によって確認した。

36001636
Replacement of the criticality accident alarm system in the Tokai reprocessing plant
眞田 幸尚; 根本 誠*; 鈴木 敬*; 川井 啓一*; 百瀬 琢麿
Proceedings of 12th International Congress of the International Radiation Protection Association (IRPA-12) (CD-ROM) , 7p.(2008) ; (JAEA-J 04932)
 東海再処理施設における臨界警報装置更新に際し、検出器の配置位置を再設計した。設計のための最小臨界事故時の線量評価の結果から、保守的な設計条件を設定した(γ線検出器; 機器からの距離10m以下、140cm以下のコンクリート遮へい; 中性子検出器; 機器からの距離15m以下、60cm以下のコンクリート及び鉄遮へい)結果的に検出器は7個所設置することとした。本設計を実際の更新工事に反映した。

36001637
Analysis for relocation strategy using the method of probabilistic accident consequence assessment
高原 省五; 本間 俊充
Proceedings of 12th International Congress of the International Radiation Protection Association (IRPA-12) (CD-ROM) , 8p.(2008) ; (JAEA-J 04933)
 移転は、長期的な放射線防護措置の一つであり、環境中へ放出された放射性物質の影響を低減するために実施される。従来、移転の最適化では、移転対象となる住民の便益(移転で回避できる線量)と移転費用が着目されてきた。しかし、移転が実施されるような長期的な被ばく状況では、移転の終了後に汚染地域へ復帰した住民や、移転対象ではないが汚染地域に生活する住民も継続的に被ばくを受けているため、これらの健康影響も考慮して移転の実施を検討しなければならない。本研究では、こうした影響も考慮し、移転の導入及び解除に関する最適な基準を検討した。各住民の被ばく線量は、確率論的事故影響評価手法を用いて計算し、ソースタームには一般的なレベル2 PSAの結果を用いた。

36001638
Performance test of the electronic personal neutron dosemeter in neutron fields simulating workplaces of MOX fuel fabrication facilities
辻村 憲雄; 吉田 忠義; 高田 千恵; 布宮 智也*; 青山 敬*
Proceedings of 12th International Congress of the International Radiation Protection Association (IRPA-12) (CD-ROM) , 8p.(2008) ; (JAEA-J 04934)
 二個のシリコン半導体検出器からなる電子式中性子個人線量計の性能評価試験を実施した。試験は、252Cf中性子線源と減速材を組合せて作成した減速中性子校正場で行われた。その結果、個人線量計による中性子線量当量の指示精度は-30%∼+10%であることがわかった。

36001639
Development and characterization of a neutron personal dose equivalent monitor
辻村 憲雄; 吉田 忠義; 布宮 智也*; 青山 敬*
Proceedings of 12th International Congress of the International Radiation Protection Association (IRPA-12) (CD-ROM) , 9p.(2008) ; (JAEA-J 04935)
 中性子個人線量当量(Hp(10))測定器を新たに開発した。本測定器は、減速材付中性子線量当量率モニタの一部と入射角度依存性を調節するためのボロンポリエチレン遮へいからなる。感度特性がHp(10)のエネルギー依存性と入射角度依存性に合致するようモンテカルロ計算により詳細構造を設計した。単色中性子場及び252Cf減速中性子校正場での中性子照射試験から、本測定器が優れた特性を有していることを確認した。実際の作業場で中性子個人線量計のフィールド実験を行う場合に、当該場所における基準中性子線量当量を決定することができる。

36001640
Seismic transient change of natural frequency estimation by adaptive filtering scheme
桐田 史生; 金澤 健司*; 北村 春幸*
Proceedings of 14th World Conference on Earthquake Engineering (WCEE-14) (CD-ROM) , 8p.(2008) ; (JAEA-J 04936)
 建築物の構造健全性を評価する構造ヘルスモニタリングに関する研究の中で、地震継続中における建築物の固有振動数の変化を詳細に把握する適応回帰型カルマンフィルタを開発した。地震中における建築物の固有振動数の変化を詳細に把握することによって、その変化の傾向から建築物の地震の影響をより詳細に評価することができると考えられる。適応回帰型カルマンフィルタとは従来のカルマンフィルタに対して3つの点を改良したシステム同定手法である。3つの点とは、(1)忘却係数による固有振動数の変動追従性の向上,(2)時間軸に対して順方向及び逆方向の解析プロセスを繰り返すことによる固有振動数の初期値の修正と解析結果の平滑化,(3)変数列更新アルゴリズムの適用による解析精度の向上である。開発手法の精度を検証するために数値シミュレーションを行い、その妥当性を評価した。さらに、実建物で観測された地震観測記録に開発手法を適用し、地震中における建築物の固有振動数の変動を評価した。

36001641
Study on enhanced performance sodium-cooled metal fuel core concepts by adopting advanced fuel and flexible design criteria
小林 登; 小川 隆; 大木 繁夫; 水野 朋保; 尾形 孝成*
Proceedings of 16th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-16) (CD-ROM) , 9p.(2008) ; (JAEA-J 04937)
 ナトリウム冷却金属燃料炉心はMOX燃料炉心に比較して、重金属密度が高く、そのため中性子スペクトルが硬く、中性子経済が良好であるという特性を持っている。本研究では、これらの特性を活かした金属燃料炉心の設計を目指し、金属燃料仕様を幅広く検討し、ナトリウムボイド反応度や炉心圧損などの設計条件を柔軟に持たせて、高増殖,コンパクト,低インベントリ,低ボイド反応度,高MA変換率などの種々の炉心概念を検討することが目的である。これらの炉心概念のうち、本報では高増殖炉心について設計検討を行った。設計条件として、ボイド反応度が8$以下、炉心高さが150cm以下、被覆管最高温度は650℃以下で、バンドル部圧損を0.4MPa以下とした。その結果、ブランケットなしで増殖比が1.34と得られることがわかった。

36001642
Efforts toward the restart of fast breeder reactor Monju
森薗 孝次; 竹内 則彦; 高山 宏一; 弟子丸 剛英; 向 和夫
Proceedings of 16th Pacific Basin Nuclear Conference (PBNC-16) (CD-ROM) , 5p.(2008) ; (JAEA-J 04938)
 高速増殖原型炉もんじゅは、日本初の研究開発のための高速増殖炉プラントであり、発電プラントとしての信頼性の実証とナトリウム取扱技術の確立などの研究開発を目的としている。もんじゅは1985年に建設を開始し、1994年に初臨界、1995年に40%出力を達成したが、同年末の試験運転中に発生したナトリウム漏えい事故により、以来、12年間に渡って停止状態にある。本件では、この長期停止プラントの再起動に向けた取り組みについて紹介する。

36001643
Effects of γ-ray irradiation on the high temperature oxidation of austenitic stainless steel in supercritical water
中原 由紀夫; 山本 正弘; 唐澤 英年*; 木内 清; 勝村 庸介*
Proceedings of 16th Pacific Basin Nuclear Conference (PBNC-16) (CD-ROM) , 6p.(2008) ; (JAEA-J 04939)
 3種類の汎用オーステナイト系ステンレス鋼,304L,316L、及び310Sを、25MPa, 550℃の脱気超臨界水中へCo60にてγ線照射を行いながら合計1000時間浸漬した。超臨界水中での吸収線量率を評価した結果、5∼15kGyh-1だった。試験後の表面には多孔質の鉄酸化物の外層と鉄,クロム及びニッケルを含むち密な内層とによって構成される二層の酸化皮膜が形成されていた。SS304LとSS310Sの見かけの重量変化は放物線則に従い、その速度定数はγ線の線量率が大きくなるに従って減少した。γ線照射により、皮膜外層がマグネタイト(Fe3O4)からヘマタイト(Fe2O3)に変化した。また、γ線照射により、内層皮膜と金属界面でCr濃度の増加が見られた。これらの結果は、γ線照射により過酸化水素などが生成し超臨界水環境がより高酸化状態になっていることを示唆するもので、腐食環境がγ線照射により厳しくなることを明らかにした。

36001644
Code development for multi-physics and multi-scale analysis of core disruptive accidents in fast reactors using particle methods
越塚 誠一*; 守田 幸路*; 有馬 立身*; Zhang, S.*; 飛田 吉春; 山野 秀将; 伊藤 高啓*; 白川 典幸*; 内藤 正則*; 岡田 英俊*; 上原 靖*; 長峰 康雄*; 山本 雄一*; 氷見 正司*; 平野 悦丈*; 清水 泉介*; 大上 雅哉*
Proceedings of 16th Pacific Basin Nuclear Conference (PBNC-16) (CD-ROM) , 6p.(2008) ; (JAEA-J 04940)
 ナトリウム冷却高速炉(SFR)における炉心損傷事故(CDA)のさまざまな複合現象に対して、COMPASSと名づけられたコンピューターコードを開発している。COMPASSコードは、Moving Particle Semi-implicit(MPS)手法という枠組みの中で、熱流動・構造・相変化を含むマルチフィジックス問題を解析するように設計されている。その開発プロジェクトが、2005年度から2009年度までの5年間で、6組織により実施されてきた。本論文では、2007年度におけるプロジェクトの成果が報告される。検証計画に従って、融体固化・閉塞形成,溶融プール沸騰,ダクト壁破損の3つの検証計算が行われた。また、COMPASSコード開発をサポートするため、数値計算手法の基礎研究,金属燃料の共晶反応に関する物質科学、及びSIMMER-IIIによる解析が行われた。

36001645
Application of PSA to model facility for MOX fuel fabrication
玉置 等史; 吉田 一雄; 濱口 義兼*
Proceedings of 16th Pacific Basin Nuclear Conference (PBNC-16) (CD-ROM) , 6p.(2008) ; (JAEA-J 04941)
 確率論的安全評価では、総合的かつ構造化された手法を用いて原子力施設の安全性を評価する。これにより得られるリスク情報は、原子力施設に対する効果的な規制活動及び安全機能の効率的な保守に利用できる可能性がある。原子力機構では、MOX燃料加工施設に適したPSA実施手順を構築した。この実施手順は、簡易的なPSA手法を用いて施設全体を評価する概略的PSAと、概略的PSAにより選別されたリスク上重要と考えられる事象を対象に原子炉施設のレベル1及びレベル2PSAに相当する分析を行う詳細なPSAの2つのステップで構成される。この実施手順を用いて計画中のMOX燃料工場の公開情報を参考に設定した実規模のモデルプラントを対象にPSAを実施し、得られた結果をリスクプロファイルとしてまとめ、これを用いて重要な事故シナリオを同定する方法を示した。

36001646
Commissioning status of the rapid-cycling synchrotron at J-PARC
林 直樹
Proceedings of 16th Pacific Basin Nuclear Conference (PBNC-16) (CD-ROM) , 6p.(2008) ; (JAEA-J 04942)
 J-PARCは、中性子・ミューオンを使った物質生命科学,ハドロンやニュートリノビームを使った原子核素粒子物理のための多目的の研究センターである。J-PARCの陽子加速器は、2006よりコミッショニングを開始した。2番目の加速器、3GeV Rapid-Cycling Synchrotron(RCS)は、2008年初期にcommissioningが行われ、3番目の加速器50GeV MRと実験施設がそれに続いて行われた。本論文は、RCSのコミッショニングを中心に、RCSのパワーアップ計画など今後の計画とともに、ビームコミッショニングについて報告する。

36001647
Study on perturbation scenario for uplift and denudation in performance assessment of a HLW disposal system
川村 淳; 安江 健一; 新里 忠史; 常盤 哲也; 江橋 健; 大井 貴夫; 牧野 仁史; 石丸 恒存; 梅田 浩司
Proceedings of 2008 East Asia Forum on Radwaste Management Conference (2008 EAFORM 2nd Conference) (USB Flash Drive) , 6p.(2008) ; (JAEA-J 04944)
 隆起・侵食は火山活動などとは異なり広域的で緩慢な現象であるため、現象に起因する地質環境条件の変化をサイトにおける地質環境調査などから明示的に捉えることが困難である。本研究では、隆起・侵食による地質環境条件の変化を地史及びモダンアナログの観点から捉える方法論を検討した。その結果、地史及びモダンアナログに基づくことにより、隆起・侵食速度や場(山地,平野部あるいは沿岸域など)の差異による現象のバリエーションと推移のパターン、及びそれらに起因して生ずる可能性のある地質環境条件の変動パターンとそれらの時間的な変遷を温度-水理-力学-化学-幾何形状(THMCG)の情報として系統的に把握できるようになった。また、既に開発された現象論に基づき現実的かつ段階的に天然現象の発生から処分への影響を取り扱い評価シナリオやモデルを構築する枠組みをこの検討手順に適用することにより、現実に即した隆起・侵食シナリオを構築できる見通しを得た。

36001648
Effects of earthquakes and faulting on the deep geological environment based on case studies in Japan
石丸 恒存; 丹羽 正和; 黒澤 英樹; 楮原 京子
Proceedings of 2008 East Asia Forum on Radwaste Management Conference (2008 EAFORM 2nd Conference) (USB Flash Drive) , 6p.(2008) ; (JAEA-J 04945)
 高レベル放射性廃棄物の地層処分の安全性確保にあたっては、変動帯に位置する我が国では、地震・断層活動が地質環境に与える影響を評価することが重要となる。地震・断層活動が地質環境に与える影響のうち、断層活動に伴う岩盤変位は、直接的な岩石の破壊のみならず周辺岩盤に透水性の高い破砕帯を形成するため、水理学的な影響を及ぼす可能性がある。本研究においては、我が国の代表的な横ずれ断層である跡津川断層帯を対象とした事例研究を行い、活断層に沿った破砕帯の分布頻度は、断層から500m離れると減少することがわかった。また、活断層沿いで行った断層水素ガス測定の結果からは、水素ガスの放出量と破砕帯の内部構造との関連性が見いだされ、断層水素ガスを利用した調査手法は破砕帯内の流体移行経路の把握に役立つという見通しを得た。

36001649
Behavior of americium in pyrochemical process of the nitride fuel cycle
林 博和; 柴田 裕樹; 赤堀 光雄; 荒井 康夫; 湊 和生
Proceedings of 2008 Joint Symposium on Molten Salts (USB Flash Drive) , p.910-915(2008) ; (JAEA-J 04946)
 原子力機構における窒化物燃料サイクルの研究開発によって明らかとなった窒化アメリシウムの陽極溶解及び液体カドミウム陰極へのアメリシウムの回収及び液体カドミウム陰極に回収されたアメリシウムの再窒化など乾式再処理プロセスにおけるアメリシウムの挙動について報告する。Am3+イオンを含んだLiCl-KCl共晶溶融塩中でのAmNの電解挙動をAmNディスク試料,液体Cd電極又はMo電極及び参照電極(Ag/AgCl電極)を用いた三電極法によって測定した結果、サイクリックボルタモグラムにおいてAmNの溶解に伴う酸化電流が見られた。また、定電位電解によってAmN試料の電解を行い、窒素放出を観測した。また、液体Cd陰極に得られた電解回収物中には、金属間化合物AmCd6が含まれていることを明らかにした。さらに、液体Cd陰極に回収したAmをCdの蒸留とAmの窒化の二つの工程を一度に行う蒸留窒化法によって再窒化し、AmN粉末試料を調製できることを明らかにした。

36001650
Redox equilibria of the U4+/U3+ and U3+/U couples in molten LiCl-RbCl eutectic
永井 崇之; 上原 章寛*; 藤井 俊行*; 白井 理*; 佐藤 修彰*; 山名 元*
Proceedings of 2008 Joint Symposium on Molten Salts (USB Flash Drive) , p.927-932(2008) ; (JAEA-J 04947)
 溶融LiCl-RbCl共晶塩中におけるU4+/U3+対及びU3+/U対の見かけ上の酸化還元電位を、サイクリックボルタンメトリーにより求めた。これら酸化還元電位は、溶融LiCl-KCl共晶塩中よりも低い値を示し、溶融NaCl-CsCl共晶塩中とほぼ同等の値を示した。これらアルカリ塩化物における酸化還元電位は、溶融塩のアルカリ陽イオンの平均半径と相関が見られる。

36001651
Reductive extraction of minor actinides from molten chloride into liquid gallium
戸田 太郎*; 丸山 雄大*; 森谷 公一*; 森山 裕丈*; 林 博和
Proceedings of 2008 Joint Symposium on Molten Salts (USB Flash Drive) , p.933-938(2008) ; (JAEA-J 04948)
 溶融塩と液体金属を溶媒として用いる還元抽出法はマイナーアクチノイド(MA)の分離回収に有効な方法であると考えられている。本研究では、優れたMA分離性能を示すことが期待されているガリウムを用いる系におけるMA/希土類分離性能を評価するため、773KにおけるLiCl-KCl/Ga系のAm及びCeの分配係数を測定した。系にZrCl4を共存させることによってCeO+イオン及びAmO+イオン等の生成を防ぎ、酸化物イオンの影響を小さくすることができた。本研究で得られた酸化物イオンの影響が小さい場合のAmとCeの分離係数は約100であった。本実験結果を他の既報告値及び理論的予想値と比較することによって、AmとCeの分離係数はAl>Ga>Bi>Cdの順序であることを明らかにした。

36001652
Implementing interoperability between the AEGIS and DIET GridRPC middleware to build an international sparse linear algebra expert system
Caniou, Y.*; 櫛田 慶幸; 手島 直哉
Proceedings of 2nd International Conference on Advanced Engineering Computing and Applications in Sciences (ADVCOMP 2008) (CD-ROM) , p.205-210(2008) ; (JAEA-J 04949)
 本論文では、国際的疎行列解法エキスパートシステムの構築に向けたAEGIS-DIETグリッドミドルウェアの相互運用法について、その方法論及び構造について明らかにした。ここでは、相互運用の実現のために、特に、各グリッドミドルウェアが独自に持つプロトコル(通信方法)の変換に注目し実現を行った。エキスパートシステムのなかで用いられる疎行列解法はコンピュータの特性により性能が変化するため、相互運用によりもたらされる計算機の多様性は、エキスパートシステムの精度に良いインパクトをもたらす。

36001653
Pressure fluctuation characteristics of the short-radius elbow pipe for FBR in the postcritical reynolds regime
白石 直*; 渡壁 寿人*; 佐郷 ひろみ*; 小竹 庄司; 山野 秀将
Proceedings of 2nd International Conference on Jets, Wakes and Separated Flows (ICJWSF 2008) (CD-ROM) , 11p.(2008) ; (JAEA-J 04950)
 JAEAのナトリウム冷却高速炉のため、1/3縮尺モデルを用いてホットレグの圧力変動に着目した実験研究がなされた。全圧力損失係数は既往データと一致することを確認したうえで、レイノルズ数が8.0 ×106まで幾つかの試験データを追加した。その結果、超臨界域における流況はレイノルズ数に依存しない。また、統計データ分析により、配管壁への変動圧力は平均流速には依存するが、流体粘性には依存しないことがわかった。高流速条件では負の圧力スパイクが見られた。これらの実験データに基づき、モデルの縮尺や流体粘性に対しては相似則があるが、流速に対してはないことが明らかとなった。また、その変動圧力の実機ホットレグ条件への外挿性について考察した。

36001654
Validation of ecological 131I transfer models using experimental data of the "Plavsk scenario"
Zvonova, I.*; Krajewski, P.*; Berkovskyy, V.*; Ammann, M.*; Duffa, C.*; Filistovic, V.*; 本間 俊充; Kanyár, B.*; Nedveckaite, T.*; Simon, S.*; Vlasov, O.*; Webbe-Wood, D.*
Proceedings of 7th International Conference on Nuclear and Radiochemistry (NRC-7) (CD-ROM) , 5p.(2008) ; (JAEA-J 04951)
 Environmental Modelling for Radiation Safety (EMRAS) programme was organized by IAEA in 2003. Within this project experimental data of 131I measurements following the Chernobyl accident in the Plavsk district of Tula region, Russia, This scenario was used to validate the calculation results of some ecological models. Results of model calculations and observed data comparison are presented in the report. Discrepancies between the average thyroid doses estimations produced by most participants did not exceed a factor of ten. The time when cows were brought to the pasture is the most bearing factor for thyroid dose estimations.

36001655
Technical considerations for emergency preparedness with a probabilistic accident consequence assessment model
本間 俊充; 木村 仁宣; 松原 武史*; 石川 淳
Proceedings of 9th International Probabilistic Safety Assessment and Management Conference (PSAM-9) (CD-ROM) , 6p.(2008) ; (JAEA-J 04952)
 It is recognized that good preparedness in advance of an emergency can substantially improve the emergency response to a nuclear or radiological accident. This paper presents the methodology and results of the technical considerations for off-site emergency planning using a probabilistic accident consequence assessment model. Calculations of the off-site consequence have been made of postulated accidents with source terms derived from a generic level 2 PSA of the reference plant in Japan. The preliminary results provided the insights of technical guidance for the development of protective actions such as sheltering, evacuation, and administration of stable iodine.

36001656
Use of uncertainty importance measures to complement risk importance measures in PSA
劉 峭; 本間 俊充
Proceedings of 9th International Probabilistic Safety Assessment and Management Conference (PSAM-9) (CD-ROM) , 7p.(2008) ; (JAEA-J 04953)
 確率論的安全評価における基事象の重要度を評価する際、フッセル・ベイズリ(FV)指標とリスク達成価値(RAW)がよく使われている。二つの重要度指標はともにリスクの点推定値に基づくものである。しかし、実際、基事象の発生確率はある程度の不確実さが存在するため、モデルを介してモデルのアウトプット変数であるリスクの不確実さを引き起こす。そのため、ある基事象のリスクへの寄与度を評価する際に、基事象発生確率の不確実さ問題を配慮する必要がある。二つのフォールトツリーモデルを用いて、FV(またはRAW)指標及び二つの不確実さ重要度指標による各基事象の重要度を評価した結果、必ずしも同じ順番でないことがわかった。不確実さ重要度指標はFVまたRAWと異なる視点で基事象の重要度を評価するため、補完的な使用を考慮する必要がある。

36001657
Dose evaluation with closed space in vector space composed of radiation detector outputs
橋本 周; 飯本 武志*; 小佐古 敏荘*
Proceedings of International Symposium commemorating the First Anniversary of the Foundation of GoNERI "Key to the Future; Energy Security and Nuclear Education & Research" , p.247-252(2008) ; (JAEA-J 04957)
 中性子場の変動に柔軟に対応する中性子線量評価手法を開発している。そのために、多検出器法を導入した。多検出器法では、複数検出器の出力と目的量の比で構成される位相ヴェクトル空間における凸集合を活用する。凸集合は、周囲の状況に基づいて、目的量を求めるための換算係数が取り得る範囲を与えることができる。凸集合体は、それぞれの中性子場を形成する要素中性子スペクトルにより改善される。混合ガス比例計数管を用いて、凸集合を用いた線量評価手法の有効性について評価した。

36001658
A Large scale simulation for impact and blast loading issues
中島 憲宏; 新谷 文将; 西田 明美; 鈴木 喜雄; 井田 真人; 山田 知典; 櫛田 慶幸; Kim, G.; 木野 千晶; 武宮 博
Proceedings of International Symposium on Structures under Earthquake, Impact, and Blast Loading 2008 , p.119-123(2008) ; (JAEA-J 04958)
 日本は第4のエネルギー消費国といわれているが、その消費資源である石油や天然ガスといった化石燃料資源はほとんど保有しておらず、それらの消費量の多くは輸入に依存しているために、安定したエネルギー供給が一つの問題になっている。一方、温室効果ガス制限のために、省エネルギー化の推進は、重要課題となっている。このような背景において、1966年に始まった日本の商業原子力発電は、今日ではそのエネルギー供給が日本の電気の消費量の約3割を占めるに至っている。日本の土地柄、地震対策は、社会基盤の運用上重要な課題である。その対策確保のために、計算科学的アプローチだけでなく、さまざまなアプローチにより多くの社会基盤の耐震性を検証してきている。本論では、地震対策のための計算科学的アプローチの一つとして、FIESTA(組立構造物のための有限要素解析)による大規模なシミュレーション技術を提案する。本論では、原子力分野で検討すべき衝撃荷重の事例を紹介するとともに、そのシミュレーション課題を議論する。

36001659
Risk analysis of practical model facility for MOX fuel fabrication
玉置 等史; 吉田 一雄; 濱口 義兼*
Proceedings of International Topical Meeting on Probabilistic Safety Assessment and Analysis (PSA 2008) (CD-ROM) , 12p.(2008) ; (JAEA-J 04959)
 MOX燃料加工施設の原子炉施設と異なる特徴として、物理形状の異なる核燃料が工程内に存在し、また、発生する可能性のある事故の種類は多岐に渡ることが挙げられる。JAEAでは、このような特徴を考慮したMOX燃料加工施設に適用できる確率論的安全評価(PSA)実施手順を構築し、改良を続けている。本報告では、建設計画中の商用MOX燃料加工工場の公開情報を参考に設定した実規模のモデルプラントに、構築したPSA実施手順を適用し、主要な事故シナリオ及び主要な事故シーケンスで構成されるリスクプロファイルを作成した。得られたリスクプロファイルが施設全体のリスクを表すものとみなせることを確認し、これを用いて重要な事故シナリオを同定した。また、異なる事故シナリオ間の機器の重要度を比較するため、手順を構築し、その手順による試解析を行うことで課題を抽出した。

36001660
Transient behaviour of low enriched uranium silicide plate-type fuel for research reactors during reactivity initiated accident
柳澤 和章
Transactions of International Topical Meeting on Safety of Nuclear Installations (ENS TOPSAFE 2008) (Internet) , p.A3_035.1-A3_035.13(2008) ; (JAEA-J 04960)
 シリサイド小型板状燃料を用いたパルス照射試験を実施した。主たる結果は以下のとおりである。(1)400度以下では、燃料破損や寸法安定性の喪失は発生しなかった。この温度を超えると温度の上昇とともに寸法安定性が徐々に失われる。(2)燃料は82cal/g以下では健全性を維持したが、94cal/g以上では健全性を喪失した。燃料破損しきい値はこの二つの値の間にある。

36001661
放射線抵抗性細菌
鳴海 一成
微生物の事典 , p.688-690(2008) ; (JAEA-J 04962)
 生物の放射線耐性は、生物の種によって大きく異なっている。生物の中でも極めて放射線に強い微生物群を総称して、放射線抵抗性細菌と呼んでいる。本著書「微生物の事典」では、放射線抵抗性細菌の代表であるDeinococcus属細菌の分離源と菌種の諸性質,放射線耐性機構研究の現状, Deinococcus属細菌以外の放射線抵抗性真正細菌,放射線耐性超好熱古細菌,放射線耐性獲得の起源、並びに放射線抵抗性細菌の遺伝子資源の利用について最新の情報を解説した。

36001662
阿寺断層がやって来た!
安江 健一
ミュージアムレクチャー2008; 阿寺断層がやって来た! , 19p.(2008) ; (JAEA-J 04963)
 日本で代表的な活断層の一つである阿寺断層における既往研究の成果、本断層を事例とした活断層や地形変化の調査方法,活断層の動きの説明方法などについて一般の方を対象に紹介する。具体的には、本断層沿いで得られている変位速度や過去の活動時期に関する情報,それらの情報から推測されている将来の活動,断層が活動した時期を調べる方法,断層周辺の堆積物からわかる地形変化などについて説明する。また、断層の動きについてお菓子を使った説明方法を紹介する。

36001663
多孔板有効応力概念の管板構造設計への適用性評価
笠原 直人*; 高正 英樹*; 川崎 信史; 安藤 勝訓
日本機械学会M&M2008材料力学カンファレンス講演論文集(CD-ROM) , 2p.(2008) ; (JAEA-J 04964)
 熱交換器に使用される多数の伝熱管を集合させる多孔板は形状が複雑であることから、マクロな等方性に着目して等価な中実板に置き換えた解析が行われている。等価中実板を用いた非弾性解析を可能とするため、構成式に依存しない汎用的な弾塑性クリープ等価物性を決定する手法の研究を筆者らは進めている。本報では前報にて紹介した有効応力比に基づく等価中実板の管板構造設計への適用性を報告する。従来の平管板に加えて、高速増殖実証炉での採用が期待されている球形管板についても適用範囲を調べ、設計用解析モデルを提案した。

36001664
ウラン探査における物理探査
茂田 直孝
最新の物理探査適用事例集 , p.61-68(2008) ; (JAEA-J 04965)
 ウラン探査の歴史は浅いが、物理探査を駆使することにより、探査活動の開始からわずか50年ほどの間に多くの鉱床が発見された。効率的な探査のためには、多様なウラン鉱床とその周囲の岩石の物性や、地表条件等の地域特性を適切にモデル化し、それに基づいて探査フローを選択する必要がある。経済的価値の観点から最も重要と考えられてきた不整合関連型鉱床については、1990年代に動力炉・核燃料開発事業団により探査フローの新たな構築や改善が図られた。鉱床モデルと探査フローは、探査データの最新の解釈に基づき、さまざまな技術的な課題を克服しつつ、常に更新されるべきである。1990年代以降、鉱床発見効率(探査経費あたりの発見量)は著しく低下しており、モデルと探査フローの大幅な見直しが必要な状況と考える。

36001665
高レベル放射性廃棄物の地層処分における物理探査の役割と深地層の科学的研究における物理探査技術開発
茂田 直孝
最新の物理探査適用事例集 , p.257-264(2008) ; (JAEA-J 04966)
 高レベル放射性廃棄物の地層処分の安全性を担保するうえで、地質環境にはおもに二つの機能、すなわち、長期に渡る処分場の安定性及び、人工バリアの設置と天然バリアに適した特性が求められる。地層処分における地質環境調査では、地質環境に擾乱を与えることなく地下深部までの情報を取得可能な物理探査の果たす役割は大きい。原子力機構は、その前身の時代から、実際の地質環境への適用を通して体系的な地質環境調査技術の構築を進めており、その過程で物理探査についても、幾つかの重要な知見を得ている。

36001666
花崗岩を対象とした立坑掘削工事振動を利用した物理探査技術の開発; 地震波干渉法の適用
程塚 保行; 松岡 稔幸; 鶴田 忠彦; 山田 信人*; 石垣 孝一*; 山口 伸治*
社団法人物理探査学会第119回(平成20年度秋季)学術講演会講演論文集 , p.61-64(2008) ; (JAEA-J 04967)
 地震波干渉法は、地表に設置された受振器群で地中からの振動を透過波として測定し、それらの相互相関処理を行うことにより、地上の反射法地震探査を実施した場合と同じ記録を取得することができる近年注目されている手法である。本手法は、地上の反射法地震探査のように測線上に等間隔で規則的な震源を必要とせず、従来の探査手法ではノイズとされていた微弱な振動を信号として利用することが可能であることから、震源の制約から地上において十分に反射法地震探査を実施できないケースの補完手法としての利用が期待できる。また、逆VSPの測定に利用すれば逆VSP反射断面の可視化領域(通常、受振器の孔口からの最大オフセット距離の半分)を通常の反射法地震探査断面の領域に広げることができる。そこで、本報では、現在、瑞浪超深地層地層研究所の建設工事に合わせて実施している逆VSP探査測線を利用して、建設工事で発生するさまざまな振動についてデータ取得を行い、各振動(震源)の反射イメージングの有効性について検討を行った。その結果、地震波干渉法を立坑の掘削工事振動を利用して実施する際には、ボーリング掘削振動と発破振動の利用が有効であり、それらを複数深度に渡って測定し利用することが最も効果的であることを確認した。

36001667
花崗岩を対象とした立坑掘削工事振動を利用した物理探査技術の開発; 逆VSP探査の適用
松岡 稔幸; 程塚 保行; 鶴田 忠彦; 石垣 孝一*; 山田 信人*; 山口 伸治*
社団法人物理探査学会第119回(平成20年度秋季)学術講演会講演論文集 , p.65-67(2008) ; (JAEA-J 04968)
 地上反射法地震探査や通常のVSP探査等の地上発振型の探査においては、社会的・環境的な要請から特に震源の選択において制約が生じ理想的な探査を実施できないケースが少なくない。一方、「孔内発振-地上受振」型のボーリング孔を利用した逆VSP探査では、地上で震源を必要としないことから地上における測定レイアウトに関する制約は小さくなるものの、ボーリング孔壁の崩壊を避ける必要性などから、孔内における震源の規模が制約されるため、精度の高いデータ取得を行うには限界がある。瑞浪超深地層研究所のように地下に構造物を設置する場合には、掘削工事等に伴う振動を震源として利用することにより、前述の2つの課題の制約を受けることなく、精度の高い探査の実施を期待することができる。そこで、地下構造物周辺の地質構造を三次元的に把握する手法の開発を目的として、立坑掘削工事振動を利用した逆VSP探査を実施した。その結果、既存の反射法地震探査と同様に、逆VSP探査においても堆積岩中及び花崗岩上面などに対応した明瞭な反射イベントを抽出することができ、地質構造を推定できることが確認された。このことから、逆VSP探査は、制約を受けることの多い地上の反射法地震探査を補完し(特に未調査領域やより深部の地質構造に関する情報の補完)、地下の構造物周辺における地質構造を三次元的に把握するうえで有効な手法であると考えられる。

36001668
幌延沿岸域を対象とした地質環境の調査・評価技術の整備
山中 義彰; 松岡 稔幸; 浅森 浩一; 太田 久仁雄
社団法人物理探査学会第119回(平成20年度秋季)学術講演会講演論文集 , p.73-75(2008) ; (JAEA-J 04969)
 日本原子力研究開発機構では、資源エネルギー庁の委託事業「地質環境総合評価技術高度化開発」の柱として、調査計画の立案などを支援する次世代型サイト特性調査情報統合システム(ISIS:Information Synthesis and Interpretation System)の開発を行っている。ISISが必要とする地質環境調査・評価に関する「知識」(ノウハウや判断根拠)のうち、沿岸域の「知識」の体系化と信頼性を向上させるため、北海道幌延町の沿岸域をフィールドとした研究を開始した。これまでの物理探査の計画立案において重要視された地質構造の抽出のみならず地下水流動解析のためのデータ収集を目的とした測線計画を提案した。今後は、浅海域も含めた物理探査などの調査結果を取り入れ、地質環境のモデル化や地下水流動解析を繰り返し行うことにより、調査・評価技術の整備を図る計画である。

36001669
日本原子力研究開発機構図書館
中嶋 英充
図書館・アーカイブズとは何か , p.282-283(2008) ; (JAEA-J 04970)
 原子力機構図書館が所蔵する技術レポートに焦点を当て、収集と管理にかかわる経緯と実務経験を紹介する。原子力機構図書館は200万件を超える技術レポートを所蔵しており、これが最大の特徴である。原子力分野における研究開発では、歴史的に技術レポートによる成果の記録と普及が行われてきた背景がある。技術レポートの収集は、1955年に原子力機構図書館が米国原子力委員会(AEC)から寄託図書館と認定され、米国から大量の技術レポートが提供されたことが契機となった。一方、初期の技術レポートは、印画紙に焼き付けたマイクロ・カードと呼ばれる形態で提供されているため、専用のリーダーを用いなければ読むことができないという利用上の課題がある。原子力機構図書館では、歴史的価値の高いマイクロ・カードを次世代に継承するため、より利用しやすいマイクロ・フィッシュやCDの媒体に変換する作業を行っている。

[ page top ]
JAEA > JAEA図書館 > JOPSS > 学会誌等掲載論文[バックナンバー] >  2008年12月
Copyright (C), Japan Atomic Energy Agency (JAEA)